説明

多層抄きインクジェット用はがき用紙

【課題】本発明は、古紙パルプ配合のインクジェット記録用はがきに関し、夾雑物が少なく、インクジェットプリンター印字で滲みがなく、宛名面における水性ペンでの筆記性に優れ、古紙パルプを含ませたときに増加する蛍光によるバーコード読み取りの不良の問題を生じさせず、更には印刷強度などの印刷適性を良好とする。
【解決手段】本発明に係る多層抄きインクジェット用はがき用紙は、3層以上の多層抄きの基紙の片面側に顔料を主体として含有するインク受容層を設け、基紙の反対面側にはインク受容層を設けずに基紙を剥き出しの状態とし、かつ、基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%以上であり、基紙の層のうち、インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層、中間に位置する層を中間層としたとき、中間層が1層以上で形成され、かつ、中間層の古紙パルプ配合割合が50質量%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙パルプを含有したインクジェット記録用はがき用紙に関するものであり、夾雑物が少なく、インクジェットプリンター印字後の滲みがなく、宛名面における水性ペンでの筆記性に優れ、更には印刷強度などの印刷適性が良好なインクジェット用はがき用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式が一般大衆へ普及するに伴い、はがきにも採用されるようになってきており、インクジェット記録用のはがきに関する技術もある(例えば、特許文献1又は特許文献2を参照。)。
【0003】
はがきには、通常、郵便番号枠、切手貼り付け枠、又はお年玉付き年賀はがきの抽選番号等が宛名面側に印刷されるが、近年、印刷速度の高速化に伴い、宛名面の表面強度をはじめとする印刷適性への要求が大きくなっている。
【0004】
また、近年、紙製品での環境配慮としてのリサイクル、すなわち、古紙パルプを多く配合することが重要であり、ユーザーからの要求も大きくなっている。
【0005】
古紙パルプを配合したはがきに関して、特定の填料を使用又は使用するパルプの離解フリーネスに着目した技術が開示されている(例えば、特許文献3又は特許文献4を参照。)。
【0006】
さらに、多層抄きインクジェット用紙とした技術も開示されている(例えば、特許文献5又は特許文献6を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−297148号公報
【特許文献2】特開2005−67166号公報
【特許文献3】特開2001−260527号公報
【特許文献4】特開2006−289813号公報
【特許文献5】特開2002−127592号公報
【特許文献6】特開2004−177461号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「情報用紙 ’95」、紙業タイムス社、1995年4月20日発行、p.176
【非特許文献2】http://www.post.japanpost.jp/whats_new/2008/0822_02_c01.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
古紙パルプの配合割合が高くしたとき、次のような弊害が発生する。
1.古紙パルプに含まれる残留インキや除去しきれないゴミなどの影響によって夾雑物が増加すること。
2.リサイクルが進むと繊維の角質化、短繊維化などの影響によって各種強度(例えば、紙力、内部結合強度、引張強度、引裂強度、破裂強度など)が低下すること。
3.前記2を解消するために、過度な紙力増強剤の使用、過度なパルプの叩解が必要となるが、結果としてインクジェット印字適性が低下すること。
4.古紙処理工程で使用する脱墨剤などの界面活性剤が残留するため、基紙が剥き出しである宛名面に印字したときにはフェザリングが発生すること(フェザリングとは、非特許文献1に記載のとおり、いわゆるインク受容層を特別に設けない紙基材表面での滲みを表現するものである。)。
5.インク受容層を設ける場合にも、塗工液の浸透ムラが発生しやすくなる。結果としてインク受容層表面での滲みが発生すること。
6.郵便はがきは、その宛名面に自動区分機を通るときに無色透明の蛍光染料インク(不可視インク)によってバーコードを印字するが(郵便番号と宛名住所を同時に読み取り、その読み取った住所情報をバーコード化して郵便はがきに印字する。)、市場にある古紙の大半が蛍光染料を使用したものであるため、当然これを使用すると蛍光強度の高いはがき用紙となるので、このバーコードを読み取ることができず、後に自動区分する(郵便はがきを配達順に並べ替える(道順組立))ときに支障を来たすこと(非特許文献2参照。)。
【0010】
古紙パルプを用いた基紙の夾雑物を少なくする対策として、通信面にインク受容層を設ける方法がある。しかし、宛名面については、古紙パルプ中の夾雑物の影響がそのまま出てしまう。古紙パルプ中の夾雑物を減少させる対策としては、古紙処理工程を設ける方法がある。しかし、古紙処理工程の除塵強化がなされ、また脱墨薬品及び漂白薬品の増加を伴うこととなるので、古紙パルプ繊維を傷め、劣化せてしまう。痛んだ古紙パルプは、リサイクルに不適となる。特に脱墨剤の増加は、水性ペンの滲みやフェザリングなどのインクジェット適性にも悪影響を与える。
【0011】
印刷強度を上げる対策として、表面強度を高くする方法があり、その手段として被覆性の高いポリビニルアルコール等の塗布が挙げられる。しかし、インクジェット用インクの吸収が悪くなり滲みが大きくなる。また、パルプの叩解を進め強度を向上させる方法もあるが、基紙が緻密になるため、同様にインクジェット用インクの吸収が悪くなり、滲みが大きくなる。
【0012】
また、インク受容層の塗工量が適性でないと、インクジェット印字したときの画像が損なわれるだけでなく、高価になり、更に宛名面の印刷時にも悪影響をもたらす。
【0013】
最近では、インクジェットプリンターの普及及び高解像度化に伴い、いわゆる通信面側には写真ライクな高精細な画像が望まれている。
【0014】
前述したように、はがきに要求される特性は多岐に渡り、従来技術ではこれらの特性を十分に満足させるまでには至っていなかった。
【0015】
特許文献3又は特許文献4に記載されている特定の填料を使用又は使用するパルプの離解フリーネスに着目した技術では、非塗工面の耐刷力に乏しく事実上印刷をすることはできない。
【0016】
さらに、特許文献5又は特許文献6に記載された多層抄きインクジェット用紙は、古紙パルプの配合については触れておらず、この製造方法では前記特性を十分に満足させるという課題を解決することができない。
【0017】
したがって、本発明は、このような従来の技術がもっていた問題を解決しようとするものであり、古紙パルプ配合のインクジェット記録用はがきに関し、夾雑物が少なく、インクジェットプリンター印字で滲みがなく、宛名面における水性ペンでの筆記性に優れ、
古紙パルプを含ませたときに増加する蛍光によるバーコード読み取りの不良の問題を生じさせず、更には印刷強度などの印刷適性が良好なインクジェット用はがき用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは鋭意検討の結果、基紙全体での古紙パルプ配合割合を20質量%以上とした場合において、基紙を多層抄きとし、片面側のみインク受容層を設け、中間の層に古紙パルプ配合割合を50質量%以上として古紙パルプを多く配合することで、はがき表裏面の夾雑物が少なく、インクジェットプリンター印字後の滲みがなく、印刷強度などの印刷適性が良好な高いインクジェット用はがき用紙を完成するに至った。具体的には、本発明に係る多層抄きインクジェット用はがき用紙は、3層以上の多層抄きの基紙の片面側に顔料を主体として含有するインク受容層を設け、前記基紙の反対面側にはインク受容層を設けずに基紙を剥き出しの状態とし、かつ、前記基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%以上である多層抄きインクジェット用はがき用紙において、前記基紙の層のうち、前記インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層、該表面層と該裏面層との中間に位置する層を中間層とそれぞれ表記したとき、該中間層が1層以上で形成され、かつ、該中間層の古紙パルプ配合割合が50質量%以上であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る多層抄きインクジェット用はがき用紙では、前記表面層の古紙パルプ配合割合を0質量%以上50質量%未満とすることが好ましい。
【0020】
本発明に係る多層抄きインクジェット用はがき用紙は、前記裏面層の古紙パルプ配合割合を0質量%以上20質量%未満とすることが好ましい。
【0021】
本発明に係る多層抄きインクジェット用はがき用紙は、前記表面層、中間層及び裏面層の離解フリーネスがすべて350ml以上600ml以下であることが好ましい。
【0022】
本発明に係る多層抄きインクジェット用はがき用紙は、前記古紙パルプは、未叩解の古紙パルプであるか、又は、未叩解の古紙パルプのフリーネスを基準としてフリーネスの差異値がCF100ml以内の叩解した古紙パルプであることが好ましい。
【0023】
本発明に係る多層抄きインクジェット用はがき用紙は、前記インク受容層の乾燥塗工量が4〜15g/mであることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る多層抄きインクジェット記録用はがきは、前記の構成をとることによって、基紙全体の古紙パルプ配合割合を20質量%以上にした場合においても夾雑物が少なく、インクジェット印字後の滲みがなく、宛名面における毛筆、水性ペンなどでの筆記性に優れ、印刷強度をはじめとする良好な印刷適性を有する。また、古紙パルプを含ませたときに増加する蛍光によるバーコード読み取りの不良の問題も生じさせない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0026】
本実施形態に係る多層抄きインクジェット用はがき用紙は、基紙の片面側に顔料を主体として含有するインク受容層を設け、基紙の反対面側にはインク受容層を設けずに基紙を剥き出しの状態としている。そして、基紙は、(1)3層以上の多層抄きであり、(2)基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%以上であり、(3)インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層、該表面層と該裏面層との中間に位置する層を中間層とした場合、中間層を1層以上とし、かつ、該中間層の古紙パルプ配合割合を50質量%以上とする。
【0027】
基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%未満であると、古紙を再利用し、リサイクル率を高め環境に配慮するという本発明の目的を達成しにくくなる。基紙全体の古紙パルプ配合割合は、高いほうが環境配慮とすることができる。しかし、夾雑物が少なく、インクジェット印字後の滲みがなく、宛名面における毛筆、水性ペンなどでの筆記性に優れ、印刷強度をはじめとする良好な印刷適性を付与するためには、後述するとおり、基紙全体の古紙パルプ配合割合の上限を70質量%とすることが好ましい。
【0028】
表面層、中間層、裏面層に均一に古紙パルプを配合した場合又は単層抄きの場合には、夾雑物は古紙パルプ配合割合に相関して多くなってしまう。さらに、表面層、裏面層への古紙パルプ配合割合が高くなれば、更に夾雑物は増加する。夾雑物が増加すると見た目が悪くなるだけでなく、宛名面となる裏面の場合では、郵便番号が自動区分機で読み取れなくなる、お年玉付き年賀はがきの抽選番号等が読み取れなくなる、更には住所が読み取り難くなるなどの弊害が発生する。そこで、中間層の古紙パルプ配合割合を50質量%以上とする。さらに、中間層の古紙パルプ配合割合を表面層、裏面層よりも高めることが好ましい。古紙パルプ配合割合を高くした場合には、褪色の弊害を少なくする観点からも、中間層により多くの古紙を配合することが好ましい。また、古紙パルプを含ませたときに増加する蛍光によるバーコード読み取りの不良の問題を生じさせないためには、より内側である中間層に古紙パルプを使用することが好ましい。
【0029】
なお、古紙パルプ配合割合は、数1によって算出する。
(数1)古紙パルプ配合割合(%)=古紙パルプ配合量÷(バージンパルプ配合量+古紙パルプ配合量)×100
【0030】
また、生産時には自己回流損紙が発生するが、この自己回流損紙を使用しても支障は無い。ただし、自己回流損紙は、古紙パルプ配合量に含めないにもかかわらず古紙パルプを実質含むため、基紙の表裏に出ないように中間層で使用することが好ましい。さらには、オンマシンでインク受容層を塗工する場合は、インク受容層塗設済みの自己回流損紙を使用するので、プレスパート及びドライヤー汚れを軽減するために中間層で使用することがより好ましくなる。以上のことから単層抄きの場合は、夾雑物の面だけでなく抄紙機上の工程汚れの面でも不利となる。
【0031】
表面層、中間層、裏面層に均一に古紙パルプを配合した場合又は単層抄きの場合には、印刷強度は古紙パルプ配合割合に相関して低下してしまう。さらに、裏面層への古紙パルプ配合割合が高くなれば、更に印刷強度は低下する。印刷強度が低下すると、紙剥け、ピッキングなどの品質上の問題だけでなく、ブランケットへのパイリング等も発生し印刷作業性にも支障を来たす。
【0032】
中間層だけに古紙パルプを配合することによって、所望の、基紙全体に対する古紙パルプ配合割合を達成することができる場合には、表面層及び裏面層には、古紙パルプを配合せずともよい。
【0033】
基紙全体に対する古紙パルプ配合割合を高くしたい場合、中間層だけに古紙パルプを配合しただけでは所定の配合割合に到達しない場合は、表面層にも古紙パルプを配合することができる。例えば、基紙全体に対する古紙パルプ配合割合を25質量%以上にしたい場合である。その場合、表面層への古紙パルプ配合割合は50質量%未満、好ましくは40質量%未満、より好ましくは30質量%未満なるように古紙パルプを配合する。ここで、表面層への古紙パルプ配合割合は50質量%未満となるように、中間層に配合する古紙パルプ配合割合を高くする方針で配合を決める。表面層が古紙パルプ配合割合50質量%以上では、インク受容層を設けても夾雑物が隠しきれず、また古紙パルプに残留する脱墨剤の影響によって基紙表面のサイズ性付与が困難となり、インク受容層を塗工するときにムラが発生するなどの弊害となる。また、褪色の弊害が出やすい。
【0034】
基紙全体に対する古紙パルプ配合割合を更に高くしたい場合、中間層及び表面層に古紙パルプを配合しただけでは所定の配合割合に到達しない場合は、更に裏面層にも古紙パルプを配合することができる。例えば、基紙全体に対する古紙パルプ配合割合を30質量%以上にしたい場合である。その場合、裏面層への古紙パルプ配合割合は20質量%未満、好ましくは15質量%未満となるように古紙パルプを配合する。ここで、表面層への古紙パルプ配合割合は50質量%未満、かつ、裏面層への古紙パルプ配合割合が20質量%未満となるように、中間層に配合する古紙パルプ配合割合を高くする方針で配合を決定する。裏面層が古紙パルプ配合割合20質量%以上では、夾雑物が多く見た目が悪くなるだけでなく、宛名面となる裏面の場合、郵便番号が自動区分機で読み取れなくなる、お年玉付き年賀はがきの抽選番号等が読み取れなくなる、更には住所が読み取り難くなるなどの弊害が発生する。また、古紙パルプに残留する脱墨剤の影響によって基紙表面のサイズ性付与が困難となり、水性ペンでの筆記性やインクジェット印字した場合にもフェザリング発生などの弊害が発生する。また、褪色の弊害が出やすい。
【0035】
なお、前記説明においては、中間層に古紙パルプを多く含ませることで、表面層及び裏面層に含ませる古紙パルプを少なくする形態を示したが、表面層及び裏面層に悪影響が出ない範囲で、古紙パルプを配合し、その残りを中間層に配合してもよい。実操業では自己回流損紙の使用、各層のバランスを考慮すると、中間層だけに古紙パルプを配合する場合の好適な基紙全体の古紙パルプ配合割合は20〜35質量%となり、中間層と表面層とに、又は中間層と裏面層とに古紙パルプを配合する場合の好適な基紙全体の古紙パルプ配合割合は20〜50質量%となり、中間層、表面層及び裏面層すべてに古紙パルプを配合する場合の好適な基紙全体の古紙パルプ配合割合は25〜70質量%となる。この場合において、基紙全体の古紙パルプ配合割合よりも中間層の古紙パルプ配合割合を高くすることが好ましい。
【0036】
基紙に用いる各層のパルプの離解フリーネスは、いずれも350ml以上600ml以下、好ましくは400ml以上570ml以下とする。350ml未満では、基紙が緻密となりインクジェットプリンター適性が悪化する。また、600mlを超えると繊維間結合が弱くなり、紙力の低下が生じ印刷に耐えうることができず支障をきたす。本発明における離解フリーネスは、基紙を各層に分離しTappi離解機(JIS P 8220:1998に準拠)を用いて固形分濃度1質量%とし、25分間離解調製したスラリーをカナダ標準形ろ水度試験機(JIS P 8121:1995に準拠)で測定することによって得られる。
【0037】
本発明の基紙に用いる古紙パルプは、未叩解の古紙パルプであるか、又は、未叩解の古紙パルプのフリーネスを基準としてフリーネスの差異値がCF100ml以内の叩解した古紙パルプであることが好ましい。未叩解のフリーネスと叩解によるフリーネスとの差異値(以下、「フリーネス差異値」と略す。)をCF100ml以内、好ましくは80ml以内とし、使用する。古紙パルプは、少なくとも一回以上離解、叩解、乾燥を経ているためフレッシュパルプよりも短繊維化・角質化が進んでいる。このため過度な叩解を施した古紙パルプは、急激に基紙を緻密にすると推測され、そのため古紙パルプのフリーネス差異値がCF100mlを超えた場合、インクジェットの印字適性が低下してしまう。
【0038】
基紙に用いる古紙パルプは、大きく上質系、中質系に分けられるが、褪色を避けるために上質系古紙パルプを使用することが好ましい。上質系古紙パルプとしては、上白・罫白・カード・模造・色上・ケント・白アート・ミルクカートンなどの古紙から調製されたパルプが挙げられる。本発明に使用される古紙として離解、除塵処理だけでなく、好ましくは、脱墨、漂白、インク分散、洗浄などの各工程を経た後の古紙パルプを使用する。特に多層抄きの場合、抄き合わせ後にプレスパートで加圧脱水するときに、微細なインクは別の層へ移動することがある。したがって、古紙処理工程には微細インクを除去できる洗浄装置を設置し、当該装置による洗浄工程を経ることがより好ましい。
【0039】
中質系古紙パルプの代表として、新聞、雑誌、切付、中質反古、茶模造、段ボール、台紙・地券、ボール紙などから調製されるパルプが挙げられる。
【0040】
基紙に用いるパルプとしては、古紙パルプの他に、バージンパルプとして広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、機械パルプ(GP、TMP、BCTMP)などを有利に用いる。また、必要に応じて、木材パルプ以外に、非木材パルプ、合成パルプ、合成繊維などを適宜用いてもよい。
【0041】
本発明においては、基紙に填料を添加してもよい。具体的には、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミノケイ酸塩、焼成クレー、合成樹脂填料などの公知の填料を併用することができる。
【0042】
所定のフリーネスに叩解されたパルプスラリーは、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機又は円網抄紙機によって3層以上の多層で抄紙される。これらの抄紙機のコンビーネーションでもかまわない。この場合、必要に応じて分散助剤、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、pH調節剤、染料、有色顔料、蛍光増白剤なども適宜添加することが可能である。ここで叩解方法は、フレッシュパルプと古紙パルプとを混合してから叩解するいわゆる混合叩解を行う方法、又はフレッシュパルプと古紙パルプとを別々に叩解するいわゆる単独叩解を行ってから混合する方法でもどちらでもよい。
【0043】
表面層、中間層、裏面層を設けた3層以上の多層で抄紙されるが、各層の坪量は均等である必要はなく、例えば中間層の坪量を、表面層の坪量及び裏面層の坪量よりも相対的に大きくすることも可能である。さらに、表面層及び裏面層を各1層とし中間層を2層以上にすることも可能である。
【0044】
本発明では、前記のようにして多層抄き合せによって抄造された基紙の表面に必要に応じてサイズ液を塗布してもよい。基紙の表面としては、インク受容層を設ける予定の面又は及びその裏面である。具体的には、酸化澱粉、自家変成澱粉、尿素リン酸化澱粉、ポリアクリルアマイド、ポリビニルアルコールなどの表面サイズ剤、pH調節剤、染料、有色顔料、蛍光増白剤などの公知の資材を使用することができる。
【0045】
サイズ液の塗布方式としては、コンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファー方式のサイズプレス、エアナイフコーター、ロッドコーターなどを用いることができる。
【0046】
また、必要に応じてフィルムトランスファー方式のサイズプレス、エアナイフコーター、ロッドコーターなどを用いて裏面(宛名面側)だけの塗布としてもよい。
【0047】
このようにして製造した基紙(紙支持体)に直接にインク受容層を設けてもよいが、予め基紙表面を平滑化する目的で、マシンカレンダー、ソフトカレンダー、熱キャレンダー、ラスタープレスなどの処理を施すことが好ましい。
【0048】
インク受容層に用いる顔料としては、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイトなどの白色無機顔料はもちろんのこと、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂などの有機顔料も使用することができるが、コストと高いインク吸収性の点から、合成非晶質シリカが好ましく用いられる。
【0049】
インク受容層には、顔料のほか、次のバインダーを用いる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレン酢酸ビニル、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、でんぷん、変性でんぷん、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カゼイン、ゼラチン、テルペン等の水溶性バインダーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビスクロロメチルオキサシクロブタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリ−p−キシリレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体等のエマルジョン型バインダー、又はエマルジョン型であるウレタン樹脂バインダーを例示することができる。これらのバインダーの重合度、ケン化度、ガラス転移温度、最低造膜温度は、限定されない。また、これらの分子鎖中に架橋性の官能基を付加しても構わない。
【0050】
インク受容層には、インクジェットインクの定着性と発色性を向上させるために、カチオン性高分子を主成分とする次のようなインク定着剤を用いる。このようなカチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリビニルピリジウムハライド、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリスチレン共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドアミド共重合物、ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、メラミン樹脂酸コロイド、尿素系樹脂、カチオン変性PVA、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型化合物、その他第4級アンモニウム塩類、ポリアミンなどが用いられる。
【0051】
インク受容層に用いる塗工液には、必要に応じて分散剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、保水剤、増粘剤、架橋剤、離型剤、防腐剤、柔軟剤、ワックス、導電防止剤、帯電防止剤、サイズ剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤などを適宜選定して添加することができる。また、例えばシリカスラリーに含有させる、バインダーに含有させるなど、これらを添加する場所、方法についても限定されない。
【0052】
インク受容層に関しては、一般の塗工機、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、リップコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ダイコーター、チャンブレックスコーター、チップブレードコーターなどによってオフマシン又はオンマシンで塗工する。
【0053】
塗工液は、乾燥塗工量が通信面に4〜15g/m、好ましくは5〜13g/mの範囲で塗工する。乾燥塗工量が4g/m未満の場合は、インクジェット印字品質が低下する。乾燥塗工量が15g/mを超えるとインクジェットプリンター内で塗工層の脱落などが発生し印字汚れを発生し、更には宛名面の印刷時にも、はがき用紙のエッジ部からの粉落ち原因になる。当然薬品費も掛かるので、コスト面でも不利となる。
【0054】
塗工後の乾燥方式としては、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥等が挙げられるが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0055】
また、塗工層の乾燥後に、必要に応じてマシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどの処理を行ってもよい。本発明においては、処理方式は特に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、「部」及び「%」は、特に明示しない限り質量部及び質量%を示す。なお、配合において示す部数は、実質成分の数量である。
【0057】
(実施例1)
<基紙の作製>
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100部(表面層の離解フリーネス500ml)、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ10部及び未叩解上質系古紙パルプ90部(中間層の離解フリーネス500ml)、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100部(裏面層の離解フリーネス500ml)の各パルプ原料に対して、表面層、中間層、裏面層共通でカチオン化澱粉(ネオタック40T、日本食品加工社製)を1.0部、酸性ロジンサイズ剤0.1部(AL1212、星光PMC製)、液体硫酸バンド1部、及びタルクを灰分5%になるよう添加量を調整して配合した紙料を各々長網抄紙機にて抄紙し、表面層坪量60g/m、中間層坪量60g/m、裏面層坪量60g/mの3層を抄き合わせ180g/mの基紙を製造した。
<サイズ液の塗布>
酸化澱粉(王子エースA:王子コーンスターチ社製)糊液をサイズ液とし、基紙の両面に乾燥塗工量が片面当たり1g/mとなるようにサイズプレスで塗布し、シリンダードライヤーで乾燥した。スチールカレンダーを用いて線圧40kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行った。
<インク受容層用塗工液の調製>
合成非晶質シリカ(ニップジェルBY400:東ソーシリカ社製)100部に、水とpH調整剤として酢酸0.5部を添加し、カウレス分散機で28%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーにポリビニルアルコール15部(PVA−117:クラレ社製)、ポリエチレン酢酸ビニルバインダー35部(スミカフレックス450:住友化学社製)、及びインク定着剤15部(SR1001:田岡化学社製)を添加・攪拌し、更に水を添加し、固形分濃度が20%の塗工液を得た。
<インク受容層の形成>
得られたインク受容層用塗工液を通信面に乾燥塗工量が8g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、エアドライヤーで熱風乾燥した。さらに、ソフトカレンダーを用いて線圧30kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行い、インクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0058】
(実施例2)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ60部及び未叩解上質系古紙パルプ40部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ50部及び未叩解上質系古紙パルプ50部(中間層の離解フリーネス500ml)とした以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0059】
(実施例3)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ80部及び未叩解上質系古紙パルプ20部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ30部及び未叩解上質系古紙パルプ70部(中間層の離解フリーネス500ml)とし、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100部(裏面層の離解フリーネス500ml)とした以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0060】
(実施例4)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ25部及び未叩解上質系古紙パルプ75部(中間層の離解フリーネス500ml)とし、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ85部及び未叩解上質系古紙パルプ15部(裏面層の離解フリーネス500ml)とした以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0061】
(実施例5)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ20部及び未叩解上質系古紙パルプ80部(中間層の離解フリーネス500ml)とし、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ90部及び未叩解上質系古紙パルプ10部(裏面層の離解フリーネス500ml)とした以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0062】
(実施例6)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ60部及び未叩解上質系古紙パルプ40部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ20部及び未叩解上質系古紙パルプ80部(中間層の離解フリーネス500ml)とし、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ85部及び未叩解上質系古紙パルプ15部(裏面層の離解フリーネス500ml)とした以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、45%となった。
【0063】
(実施例7)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ80部及び未叩解上質系古紙パルプ20部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を未叩解上質系古紙パルプ100部(中間層の離解フリーネス500ml)とし、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ85部及び未叩解上質系古紙パルプ15部(裏面層の離解フリーネス500ml)とした以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、45%となった。
【0064】
(実施例8)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ60部及び未叩解上質系古紙パルプ40部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ15部及び未叩解上質系古紙パルプ85部(中間層の離解フリーネス500ml)とし、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ90部及び未叩解上質系古紙パルプ10部(裏面層の離解フリーネス500ml)とした以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、45%となった。
【0065】
(実施例9)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ40部及び未叩解上質系古紙パルプ60部(中間層の離解フリーネス500ml)、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100部(裏面層の離解フリーネス500ml)とし、表面層坪量45g/m、中間層を坪量45g/mの層で2層抄き合せ、裏面層坪量45g/mを抄き合わせ180g/mとしたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0066】
(実施例10)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ55部及び未叩解上質系古紙パルプ45部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ10部及び未叩解上質系古紙パルプ90部(中間層の離解フリーネス500ml)とし、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ85部及び未叩解上質系古紙パルプ15部(裏面層の離解フリーネス500ml)とし、表面層坪量45g/m、中間層を坪量45g/mの層で2層抄き合せ、裏面層坪量45g/mを抄き合わせ180g/mとしたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、60%となった。
【0067】
(実施例11)
上質系古紙パルプの未叩解のフリーネスは、500mlであり、これを、ビーターを用いて4%濃度で単独叩解して、フリーネスを430mlとした。したがって、フリーネス差異値を70mlとした。フリーネス差異値が70mlの上質系古紙パルプを用いた以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。中間層の離解フリーネスは437ml、基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0068】
(実施例12)
表面層、中間層、裏面層の離解フリーネスを各々550mlとしたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0069】
(実施例13)
表面層、中間層、裏面層の離解フリーネスを各々400mlとしたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0070】
(実施例14)
インク受容層の乾燥塗工量を6g/mとしたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0071】
(実施例15)
インク受容層の乾燥塗工量を12g/mとしたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0072】
(実施例16)
中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ40部及び未叩解上質系古紙パルプ60部(中間層の離解フリーネス500ml)としたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、20%となった。
【0073】
(実施例17 )
表面層、中間層、裏面層の離解フリーネスを各々600mlとしたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0074】
(実施例18)
表面層、中間層、裏面層の離解フリーネスを各々350mlとしたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0075】
(実施例19)
インク受容層の乾燥塗工量を4g/mとしたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0076】
(実施例20)
インク受容層の乾燥塗工量を15g/mとしたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0077】
(比較例1)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ65部及び未叩解上質系古紙パルプ35部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100(中間層の離解フリーネス500ml)とし、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ75部、未叩解上質系古紙パルプ25部(裏面層の離解フリーネス500ml)とした以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0078】
(比較例2)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ15部及び未叩解上質系古紙パルプ85部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100(中間層の離解フリーネス500ml)とし、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ85部、未叩解上質系古紙パルプ15部(裏面層の離解フリーネス500ml)とした以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0079】
(比較例3)
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ60部及び未叩解上質系古紙パルプ40部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100(中間層の離解フリーネス500ml)とし、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ50部、未叩解上質系古紙パルプ50部(裏面層の離解フリーネス500ml)とした以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0080】
(比較例4)
単層抄きでパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ70部及び未叩解上質系古紙パルプ30部(表面層の離解フリーネス500ml)とし、180g/mの基紙を製造した以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。
【0081】
(比較例5)
中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ45部及び未叩解上質系古紙パルプ55部(中間層の離解フリーネス500ml)としたこと以外は、実施例1に準じインクジェット用はがき用紙を作製した。ここでの基紙全体の古紙パルプ配合割合は、18%となった。
【0082】
以上の実施例及び比較例において得られたインクジェットはがき用紙について、表1に表面(通信面)及び裏面(宛名面)の夾雑物視感評価、インクジェット印字適性、宛名面ペン書きサイズ度評価、印刷適性(印刷強度及び作業性)評価の結果を示す。表2に実施例比較例における古紙パルプ配合割合を示す。
【0083】
<評価方法>
得られたインクジェット記録用はがきは、23℃−50%RHの恒温恒湿室で24時間調湿後、同環境下でそれぞれ次に示す方法によって、評価を行った。
【0084】
<夾雑物測定>
紙塵測定装置DF1000(Ver3.00)(王子計測機器社製)を用いて夾雑物の合計面積を測定した。なお、測定条件として、M.D.A.(minimum detection area)=0.05mm、しきい値を34とした。
【0085】
前記結果及び視感評価を基に次に示す要領によって記述することにした。
◎…夾雑物の視感が非常に少なく、夾雑物の合計面積が3.0mm/m未満(実用レベル)、○…夾雑物の視感が少なく、夾雑物の合計面積が3.0mm/m以上10.0mm/m未満(実用レベル)、△…夾雑物の視感がやや多く、夾雑物の合計面積が10.0mm/m以上20.0mm/m未満(実用下限レベル)、×…夾雑物の視感が非常に多く、夾雑物の合計面積が20.0mm/m以上(実用に適さない)。
【0086】
<インクジェット印字適性>
市販のフルカラーインクジェットプリンター(商品名:PM−900C、セイコーエプソン社製)を用いて、通信面には写真画像をフルカラーインクで印字し、宛名面にはブラックインクだけで文字を印字し、通信面は画像細部のムラの他、境界部の滲み、発色の鮮やかさなどを目視観察、宛名面はフェザリングなどを目視観察してインクジェット印字適性を評価した。
【0087】
前記インクジェット印刷適性の評価は、次に示す要領によって記述することにした。
◎…優れている(実用レベル)、○…良い(実用レベル)、△…やや劣る(実用下限レベル)、×…劣る(実用に適さない)。
【0088】
<ペン書きサイズ度評価>
J TAPPI紙パルプ試験方法No12−76で規定する測定方法に従い、宛名面のペン書きサイズ度を測定し評価した。
【0089】
前記試験方法に従って、0から6等級で報告したものを、次に示す要領によって記述することにした。
◎…6(実用でき、良好)、○…5(実用下限)、△…4(不適)、×…3以下(不適)。
【0090】
<印刷適性評価>
実機印刷機(リョービ社製、リョービ3302M)を用いて、宛名面側に郵便番号枠、切手貼り付け枠、及びテストパターンを印刷し、白抜け部、剥けの有無によって印刷強度を評価、ブランケットの汚れの程度によって作業性を評価した。
【0091】
前記印刷強度及び作業性評価は、次に示す要領によって記述することにした。なお、印刷強度は印刷面のピック、剥けを、作業性はブランケット汚れ、版汚れを目視評価した。
印刷面の評価:◎…実用レベル以上、○…実用レベル、△…やや支障あり(実用下限)、×…印刷不可。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によってインクジェット用はがき用紙に関し、夾雑物が少なく、インクジェットプリンター印字後の滲みがなく、宛名面における水性ペンでの筆記性に優れ、更に印刷強度をはじめとする印刷適性が良好な性能及びはがき投函後に実施する自動区分によるバーコード読み取り作業(道順組立)の効率においてすべてバージンパルプを用いたはがき用紙と同等の性能を得ることができた。したがって、古紙パルプを配合したインクジェットはがき用紙への利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の多層抄きの基紙の片面側に顔料を主体として含有するインク受容層を設け、前記基紙の反対面側にはインク受容層を設けずに基紙を剥き出しの状態とし、かつ、前記基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%以上である多層抄きインクジェット用はがき用紙において、
前記基紙の層のうち、前記インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層、該表面層と該裏面層との中間に位置する層を中間層とそれぞれ表記したとき、該中間層が1層以上で形成され、かつ、該中間層の古紙パルプ配合割合が50質量%以上であることを特徴とする多層抄きインクジェット用はがき用紙。
【請求項2】
前記表面層の古紙パルプ配合割合を0質量%以上50質量%未満とすることを特徴とする請求項1に記載の多層抄きインクジェット用はがき用紙。
【請求項3】
前記裏面層の古紙パルプ配合割合を0質量%以上20質量%未満とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層抄きインクジェット用はがき用紙。
【請求項4】
前記表面層、中間層及び裏面層の離解フリーネスがすべて350ml以上600ml以下であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の多層抄きインクジェット用はがき用紙。
【請求項5】
前記古紙パルプは、未叩解の古紙パルプであるか、又は、未叩解の古紙パルプのフリーネスを基準としてフリーネスの差異値がCF100ml以内の叩解した古紙パルプであることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の多層抄きインクジェット用はがき用紙。
【請求項6】
前記インク受容層の乾燥塗工量が4〜15g/mであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5の多層抄きインクジェット用はがき用紙。


【公開番号】特開2010−240926(P2010−240926A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90534(P2009−90534)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】