説明

多層抄き耐油板紙及びその製造方法並びにそれを用いた耐油性紙製容器

【課題】本発明は、製造時において耐油剤のロスが発生せず、耐油剤による設備汚れも生じず、臭気が少なく、更に紙製容器に加工するときには特殊な接着剤を使用する必要がない多層抄き耐油板紙及びその製造方法並びにそれを用いた紙製容器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る多層抄き耐油板紙は、少なくとも表層、裏層及び中間層を有する多層抄きの基紙を支持体とし、中間層は中間層原料パルプ100質量部に対してサイズ剤を固形分換算で0.05〜0.50質量部の範囲で含有し、表層及び裏層はサイズ剤を含有せず、表層及び裏層の坪量はそれぞれ40〜80g/mであり、かつ、基紙の両面は、フッ素樹脂系耐油剤がサイズプレスされて、更にその上には水溶性高分子だけからなるバインダーを含む塗工層が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層抄き板紙に関し、特にフライドポテト,唐揚げ,ドーナツ,コロッケ,餃子等の油分を有する食品などを収容する紙製容器に用いられる多層抄き耐油板紙及びその製造方法、並びに、この多層抄き耐油板紙から形成される紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フライドポテト,唐揚げ,ドーナツ,コロッケ,餃子等の油分を有する食品などを収容する容器としては、プラスチック製のトレーの他に、高級白板紙からなるケースの内側にプラスチック製のトレーを収納したもの、内側にポリエチレン等の樹脂をラミネートした白板紙からなるケース、又は、内側にアクリル樹脂をグラビア塗工機等で塗工した白板紙からなるケース等が用いられているが、いずれも使用材料、製造工程が増えて製造コストが高くなるという問題がある。
【0003】
この課題に対し、外層に耐水性又は撥水性をもたせ、中層に吸水性をもたせ、内層に吸湿性、耐油性、剥離性をもたせた食品用白板紙に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−207498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で例示される従来技術では、トレーやケースなどの容器に加工するときに、内層の耐油面と外層の撥水層を貼り合わせるには、特殊な接着剤を使用しなければならないという課題がある。
【0006】
また、内層に配合された耐油剤等が、食品用白板紙の製造時に使用する水に流出してロスが発生すると共に、その流出によって製造工程における設備の汚れを生じる課題ある。
【0007】
そこで本発明は、製造時において耐油剤のロスが発生せず、耐油剤による設備汚れも生じず、臭気が少なく、更に紙製容器に加工するときには特殊な接着剤を使用する必要がない多層抄き耐油板紙及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この多層抄き耐油板紙を用いて、特にフライドポテト,唐揚げ,ドーナツ,コロッケ,餃子等の油分を有する食品などを収容するのに好適な紙製容器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、油分を有する食品などを収容する紙製容器に用いられる多層抄き耐油板紙において、容器の外面となる基紙の表層及び食品と接する容器の内面となる裏層にはサイズ剤を含有させずに中間層にだけ所定量のサイズ剤を含有させ、基紙の両面にフッ素樹脂系耐油剤をサイズプレスで塗布し、かつ、最後にその両面に水溶性高分子だけからなるバインダーを含む塗工層を設けることで前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。具体的には、本発明に係る多層抄き耐油板紙は、少なくとも表層、裏層、及び前記表層と前記裏層との間に設けられる1層又は複数層からなる中間層を有する多層抄きの基紙を支持体とし、前記中間層は中間層原料パルプ100質量部に対してサイズ剤を固形分換算で0.05〜0.50質量部の範囲で含有し、前記表層及び前記裏層はサイズ剤を含有せず、前記表層及び前記裏層の坪量はそれぞれ40〜80g/mであり、かつ、前記基紙の両面は、フッ素樹脂系耐油剤がサイズプレスで塗布されて、更にその上には水溶性高分子だけからなるバインダーを含む塗工層が設けられる。なお、表層と裏層を形成するための原料スラリーを同一組成とする場合もあり、この場合は、実質、表層と裏層とは同一であるため、便宜上、一方の層を表層とし、他方の層を裏層とする。
【0009】
本発明に係る多層抄き耐油板紙では、前記塗工層は、顔料を更に含有することが好ましい。良好な印刷適性が得られる。
【0010】
本発明に係る多層抄き耐油板紙の製造方法は、サイズ剤を配合していない表層用原料スラリーと、サイズ剤を配合していない裏層用原料スラリーと、原料パルプ100質量部に対してサイズ剤を固形分換算で0.05〜0.50質量部の範囲で含有するように配合した中間層用原料スラリーとを調製し、坪量が40〜80g/mの表層と、坪量が40〜80g/mの裏層と、前記表層と前記裏層との間に設けられる1層又は複数層からなる中間層とを抄き合わせて多層抄き基紙を形成し、該基紙の両面に、フッ素樹脂系耐油剤を配合した液をサイズプレスで塗布した後、更にその両面に、水溶性高分子だけをバインダーとして配合した塗工液を塗工することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る耐油性紙製容器は、本発明に係る多層抄き耐油板紙を使用したことを特徴とする。
【0012】
なお、水系高分子とは、水系分散物、すなわち分散剤を加えることで水に分散可能な樹脂(エマルジョン)をいい、水溶性高分子とは、水に常温又は加温によって溶解する樹脂、ポリビニルアルコール(以後PVAと表記する。),デンプン等の高分子をいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る多層抄き耐油板紙は、製造時において耐油剤のロスが発生せず、耐油剤による設備汚れも生じず、臭気が少なく、更に紙製容器に加工するときには特殊な接着剤を使用する必要がない。本発明に係る多層抄き耐油板紙の製造方法は、製造時において耐油剤のロスが発生せず、耐油剤による設備汚れも生じない。また、本発明に係る紙製容器は、この多層抄き耐油板紙を用いて、特にフライドポテト,唐揚げ,ドーナツ,コロッケ,餃子等の油分を有する食品などを収容するのに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0015】
本実施形態に係る多層抄き耐油板紙は、少なくとも表層、裏層、及び表層と裏層との間に設けられる1層又は複数層からなる中間層を有する多層抄きの基紙を支持体とする。表層、裏層及び中間層を形成するために使用する原料パルプとしては、叩解によって容易に強度が向上する木材、靱皮、雁皮などからなるパルプである。本発明においては、特に木材パルプが、入手が容易である点で好ましい。木材パルプの具体例としては、針葉樹晒クラフトパルプ(N−BKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(N−UKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(L−UKP)などがある。
【0016】
ここで、所定の効果を得るために、表層及び裏層にはサイズ剤を配合せず、その坪量は、表層及び裏層それぞれ40〜80g/m、より好ましくは40〜70g/m、更に好ましくは40〜60g/mとする。
【0017】
表層及び裏層にサイズ剤を配合すると、フッ素樹脂系耐油剤を配合した液をサイズプレスで塗布するときに、浸透が不均一になり、耐油性が発現し難くなる。
【0018】
表層及び裏層の坪量が40g/m未満であると、所定の耐油性を得ることが困難である。一方、80g/mを超えると、所定の製品坪量を得るためには、中間層の坪量を小さくしなければならないため、本発明の効果を得ることが困難である。なお、表層及び裏層の坪量は、必ずしも同一量とする必要は無く、いずれか一方を多くしてもよい。中間層の坪量は、40g/m以上、より好ましくは45g/m以上、更に好ましくは50g/m以上である。
【0019】
また、中間層は、中間層原料パルプ100質量部に対してサイズ剤を固形分換算で0.05〜0.50質量部の範囲で含有するように配合することが好ましい。より好ましくは0.05〜0.45質量部、更に好ましくは0.05〜0.40質量部である。サイズ剤の含有量が0.05質量部未満であると、サイズ剤のサイズ効果が少なく耐水性への効果が少ない。一方、サイズ剤の含有量が0.50質量部を超えても耐水性改善への効果が乏しくコスト的に損失が大きいからである。なお、サイズ剤としては、酸性又は中性のサイズ剤であれば、公知のものを用いることができる。
【0020】
前記の如く配合された各層のパルプスラリーを抄紙機で抄紙して、基紙を形成するが、抄紙機は円網式抄合せ抄紙機でも長網式抄合せ抄紙機でも両方を組み合わせたコンビネーション式抄合せ抄紙機でもよい。基紙のパルプスラリーには、必要に応じて従来公知の填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤等の各種添加剤を1種以上用いてもよい。
【0021】
前記の方法によって形成した基紙の両面に、オンマシンサイズプレスでフッ素樹脂系耐油剤を配合した液を塗布することによって、耐油性を付与する。なお、表層と裏層とが同一組成に形成されていれば、実質、表層と裏層とは同一であるため、便宜上、一方の層を表層とし、他方の層を裏層とする。用いる耐油剤として、フッ素樹脂系耐油剤であれば、公知のものをいずれも用いることができる。サイズプレスで塗布する液には、表面強度を付与するためにPVAやデンプンなどの水溶性高分子を用いることができる。また、イソプロピルアコールなどを浸透剤として用いることができる。
【0022】
フッ素樹脂系耐油剤を配合した液によってサイズプレス処理を行った後に、水溶性高分子だけをバインダーとして配合した塗工液をロッド,エアーナイフ,ブレード方式等の塗工機を用いて、両面に塗工する。こうすることで、基紙の表面は、フッ素樹脂系耐油剤がサイズプレスされて、更にその上には水溶性高分子だけからなるバインダーを含む塗工層が設けられる。一般に、紙製容器の加工時に用いられる接着剤は、水系高分子又は水溶性高分子を主成分とする。本発明に係る多層抄き耐油板紙では、水溶性高分子を配合した塗工液を塗布することによって前記塗工層を予め設けておくため、当該塗工層と紙製容器の加工時仕様の接着剤との相性が良好となり、接着性が向上する。したがって、強い接着力を得るために特殊な接着剤を使用する必要がなくなる。
【0023】
また、水溶性高分子は、水系高分子の水系分散物と比較して、残モノマーが少なく、分散剤を含まないため、臭気が少ない多層抄き耐油板紙を得ることができる。
【0024】
前記塗工層は、顔料を更に含有することが好ましい。より好ましくは、表層側に設けた前記塗工層に顔料を含有させる。容器の外面となる表層には印刷が施されることが多いので、顔料とバインダーとして水溶性高分子だけを主成分として配合した塗工液を塗布すれば、より良好な印刷適性を得ることができる。
【0025】
塗工後の乾燥方式としては、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥などが挙げられるが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0026】
本発明に係る多層抄き耐油板紙は、サイズプレスで両面に耐油性が付与されているため、いずれの面を食品と接する内層として耐油性紙製容器を形成してもよい。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0028】
(実施例1)
(原料スラリー)
表層用、裏層用として、針葉樹晒クラフトパルプ(N−BKP)20質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)80質量部とを配合した後に、叩解機によってカナダ標準濾水度(CSF)500mlとなるように叩解処理した。この原料パルプ100質量部に対して固形分換算で、硫酸バンド1質量部、紙力増強剤(ネオタック40T,カチオンデンプン,日本食品化工株式会社製)を1質量部含有するように添加して原料スラリーを調成した。次に、中間層用として、針葉樹晒クラフトパルプ20質量部と広葉樹晒クラフトパルプ80質量部とを配合した後に、叩解機によってカナダ標準濾水度500mlとなるように叩解処理した。この中間層用の原料パルプ100質量部に対して固形分換算で、サイズ剤(AL1200,中性ロジンサイズ剤,星光PMC株式会社製)0.08質量部、硫酸バンド1質量部、紙力増強剤(ネオタック40T,カチオンデンプン,日本食品化工株式会社製)1質量部を含有するように添加して原料スラリーを調成した。
(基紙)
次に、これらの原料スラリーを用いて、円網式5層抄合せ抄紙機にて表層、中間層(1)、中間層(2)、中間層(3)及び裏層を抄合せて、表層の坪量を45g/m、中間層(1)の坪量を44g/m、中間層(2)の坪量を50g/m、中間層(3)の坪量を44g/m、裏層の坪量を45g/mとした基紙を得た。
(サイズプレス)
この基紙に、オンマシンサイズプレスを使用して、水に固形分換算で、PVA(PVA−117K,株式会社クラレ製)0.5質量%、耐油剤(AG E−060,フッ素樹脂系耐油剤,旭硝子株式会社製)1.5質量%を配合した液を両面の合計で乾燥質量1.0g/m塗布した。
(塗工層)
続いてエアーナイフ方式の塗工機を用いて、処方A:「デンプン(MS−3800,酸化デンプン,日本食品化工株式会社製)の3.0質量%液」を、表層と裏層に各0.5g/m塗工(乾燥質量)して、坪量が230g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0029】
(実施例2)
中間層(2)の坪量を40.5g/mに変更して、エアーナイフ方式の塗工機を用いて、表層へ塗工する液を、処方B(固形分濃度29.0質量%):「沈降炭酸カルシウム(Brilliant−15,白石工業株式会社製)70質量部,軽質炭酸カルシウム(TP−123,奥多摩工業株式会社製)30質量部,デンプン(MS−4600,エステル化デンプン,日本食品化工株式会社製)10質量部,PVA(PVA−117K,株式会社クラレ製)13.5質量部」に変更して、塗工量(乾燥質量)を10g/mにしたほかは実施例1と同様にして、坪量が230g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0030】
(実施例3)
基紙の各層の坪量を、表層の坪量を75g/m、中間層(1)の坪量を39g/m
、中間層(2)の坪量を0g/m、中間層(3)の坪量を39g/m、裏層の坪量を75g/mにしたほかは実施例1と同様にして、坪量が230g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0031】
(実施例4)
中間層用原料スラリーへのサイズ剤含有量を0.40質量部にしたほかは実施例1と同様にして、坪量が230g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0032】
(比較例1)
表層用,裏層用原料スラリーへのサイズ剤含有量を0.08質量部にしたほかは実施例1と同様にして、坪量が230g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0033】
(比較例2)
中間層用原料スラリーへのサイズ剤含有量を0.02質量部にしたほかは実施例1と同様にして、坪量が230g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0034】
(比較例3)
基紙の各層の坪量を、表層の坪量を95g/m、中間層(1)の坪量を19g/m
、中間層(2)の坪量を0g/m、中間層(3)の坪量を19g/m、裏層の坪量を95g/mにしたほかは実施例1と同様にして、坪量が230g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0035】
(比較例4)
基紙の各層の坪量を、表層の坪量を25g/m、中間層(1)の坪量を59g/m、中間層(2)の坪量を60g/m、中間層(3)の坪量を59g/m、裏層の坪量を25g/mにしたほかは実施例1と同様にして、坪量が230g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0036】
(比較例5)
表層へ塗工する液を、処方C(固形分濃度40.0質量%):「沈降炭酸カルシウム(Brilliant−15,白石工業株式会社製)70質量部,軽質炭酸カルシウム(TP−123,奥多摩工業株式会社製)30質量部,デンプン(MS−3800,酸化デンプン,日本食品化工株式会社製)3質量部,スチレン−ブタジエン樹脂ラテックス(L−1432,旭化成株式会社製)26質量部」に変更したほかは実施例2と同様にして、坪量が230g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0037】
(比較例6)
表層へ塗工する液を、処方D(固形分濃度40.0質量%):「沈降炭酸カルシウム(Brilliant−15,白石工業株式会社製)70質量部,軽質炭酸カルシウム(TP−123,奥多摩工業株式会社製)30質量部,スチレン−ブタジエン樹脂ラテックス(L−1432,旭化成株式会社製)28質量部」に変更したほかは実施例2と同様にして、坪量が230g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0038】
(比較例7)
サイズプレス後の表層と裏層へのエアーナイフ方式の塗工機によるデンプン液の塗工を行わないほかは実施例1と同様にして、坪量が229g/mの多層抄き耐油板紙を得た。
【0039】
(サラダ油耐油性の評価)
市販のサラダ油をサンプルの裏面に滴下後、60℃の温度条件でのサラダ油の浸透状態を評価した。
○:6時間後でも浸透が見られず、実用できる。
△:1時間後でも浸透が見られず、実用できる。
×:30分以内で浸透が見られ、実用できない。
【0040】
(接着性の評価)
紙箱加工用接着剤(AV−650,日栄化工製)を使用して表面と裏面を接着し、接着力及び剥離状態を評価した。
○:一般的な多層抄き板紙と同等な接着力を有し、破壊が紙層まで達し、実用できる。
△:一般的な多層抄き板紙より接着力がやや劣り、破壊が紙層まで及ばず、実用できる。
×:接着しせず、実用できない。
【0041】
(耐水性の評価)
JIS P 8122:2004「紙及び板紙―サイズ度試験方法―ステキヒト法」に準拠してステキヒト・サイズ度(耐水度)を測定した。
○:60秒以上で、実用に耐える。
△:10秒以上60秒未満で、実用に耐える。
×:10秒未満で、実用に耐えない。
【0042】
(臭気の官能評価)
無作為に選出した人(15名)によって、サンプルからの臭気の有無を評価した。
○:半数以上〜全員が臭気を感じず、実用に耐える。
×:半数未満の人が臭気を感じ、実用に耐えない。
【0043】
以上の評価結果を表1に示す。実施例1〜実施例4は、いずれもサラダ油耐油性、接着性及び耐水性が良好であり、かつ、臭気が感じられなかった。一方、比較例1は、表層及び裏層にサイズ剤が含有されているため、サイズプレス液の浸透が均一でなく、耐油性に劣った。比較例2は、中間層に含有させたサイズ剤が少量であったため、耐水性に劣った。比較例3は、表層と裏層の坪量が大きく、中間層の坪量が小さいため、耐水性に劣った。比較例4は、表層と裏層の坪量が小さいため、耐油性に劣った。比較例5及び比較例6は、表層へ塗工する液のバインダーとして水系高分子を使用したため、臭気が感じられた。比較例7は、サイズプレス後のデンプン液の塗工を行わなかったので接着性が劣った。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
フライドポテト,唐揚げ,ドーナツ,コロッケ,餃子等の油分を有する食品などを収容する紙製容器に用いられる耐油板紙、特に臭気の発生が問題となるものの包装材等として利用が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表層、裏層、及び前記表層と前記裏層との間に設けられる1層又は複数層からなる中間層を有する多層抄きの基紙を支持体とし、
前記中間層は中間層原料パルプ100質量部に対してサイズ剤を固形分換算で0.05〜0.50質量部の範囲で含有し、前記表層及び前記裏層はサイズ剤を含有せず、前記表層及び前記裏層の坪量はそれぞれ40〜80g/mであり、かつ、
前記基紙の両面は、フッ素樹脂系耐油剤がサイズプレスで塗布されて、更にその上には水溶性高分子だけからなるバインダーを含む塗工層が設けられていることを特徴とする多層抄き耐油板紙。
【請求項2】
前記塗工層は、顔料を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の多層抄き耐油板紙。
【請求項3】
サイズ剤を配合していない表層用原料スラリーと、サイズ剤を配合していない裏層用原料スラリーと、原料パルプ100質量部に対してサイズ剤を固形分換算で0.05〜0.50質量部の範囲で含有するように配合した中間層用原料スラリーとを調製し、
坪量が40〜80g/mの表層と、坪量が40〜80g/mの裏層と、前記表層と前記裏層との間に設けられる1層又は複数層からなる中間層とを抄き合わせて多層抄き基紙を形成し、
該基紙の両面に、フッ素樹脂系耐油剤を配合した液をサイズプレスで塗布した後、更にその両面に、水溶性高分子だけをバインダーとして配合した塗工液を塗工することを特徴とする多層抄き耐油板紙の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の多層抄き耐油板紙を使用したことを特徴とする耐油性紙製容器。

【公開番号】特開2011−32617(P2011−32617A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182749(P2009−182749)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】