説明

多層材料シートの製造方法、多層材料シートおよびそれらの使用

本発明は、一方向性高性能繊維を含んでなる多層材料シートの製造方法に関し、その方法は、繊維を平行に位置決めする工程と、繊維を圧密化して単層を得る工程と、ひとつの単層内の繊維の方向が、隣接する単層内の繊維の方向に対して角度αを成すように少なくとも2つの単層を積重する工程と、少なくとも2つの単層の積層体を、少なくとも2秒間、圧力処理および温度処理を施した後、圧力下で120℃以下の温度まで、冷却することによる固着工程とを備える。本発明は、さらに、本発明に係る方法で獲得可能な多層材料シートに関する。この多層材料シートは、低減された液体吸収量を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、多層材料シートの製造と、多層材料シート自体と、防弾用途におけるそれらの使用とに関する。
【0002】
多層材料シートの製造方法は、欧州特許出願公開第A−0191 306号明細書から知られている。この公報は、実施例のひとつにおいて、一方向性高強度ポリエチレン繊維の配向と、溶媒としてジクロロメタンに溶かした27.3重量%のクレイトン(Kraton)エラストマー溶液でその繊維を含浸することとを開示する。得られたシートは、ドラムワインダ上で作製され、通常は、結果として2未満の長さ/幅の比を有するシートとなる。
先行技術に従った方法で製造される多層材料シートが液体と接触する際に、これらの液体のある程度の吸収が起こりうる。このようなことは、防弾チョッキを例えば液体洗剤で洗う場合でありうる。別の場合は、耐弾性製品が例えば灯油または水と接触する場合でありうる。液体吸収量が高い多層材料シートは好ましくない。
【0003】
本発明の目的は、既知の多層材料シートよりも液体吸収量が低い多層材料シートの製造方法を提供することである。
【0004】
この目的は、一方向性高性能繊維を含んでなる多層材料シートの製造方法により達成され、その方法は、
a.繊維を平行に位置決めする工程と、
b.繊維を圧密化して単層を得る工程と、
c.ひとつの単層の繊維方向が、隣接する単層の繊維の方向に対して角度αを成すように、少なくとも2つの単層を積重する工程と、
d.少なくとも2つの単層の積層体が圧力処理および温度処理を施されることによる固着工程であって、
圧力処理の所要時間が、少なくとも0.5MPaの圧力で、繊維の融点もしくは分解温度よりも低い温度(どちらでもその繊維のうちで繊維にとって最も低い温度)で、少なくとも2秒であり、その後、圧力下で120℃以下、好ましくは80℃以下の温度まで、少なくとも2つの単層の積層体を冷却することを特徴とする工程と
を備える。
【0005】
この方法を用いて、低減された液体吸収量を有する多層材料シートが得られる。さらなる利点は、多層材料シートの良好な突き刺し抵抗性の増大である。
【0006】
本発明に係る方法で使用される高性能繊維は、少なくとも1.0GPaの引張強さと少なくとも40GPaの引張弾性率とを有し、それ自体公知である。繊維は、その長さ寸法が、それらの幅、厚さもしくは断面よりも大きい長尺形状を有する。用語「繊維」には、モノフィラメント、マルチフィラメント糸、テープ、ストリップ、スレッド、ステープル繊維糸および規則的または不規則な断面を有する他の長尺体が含まれる。特定の一実施形態において、繊維は、1〜5の断面縦横比を有する長尺形状を伴う物体に関する。本明細書において断面縦横比は、最も大きい繊維断面の寸法を最も小さい繊維断面の寸法で除したものである。例えば、円形の断面を有する繊維は、断面縦横比1を有する。耐弾性物品に繊維を適用するためには、繊維が、高い引張強さ、高い引張弾性率および/または高いエネルギー吸収を有することが不可欠である。繊維が、少なくとも1.2GPaの引張強さと少なくとも40GPaの引張弾性率とを有することが好ましく、繊維が少なくとも2.0GPaの引張強さを有することがさらに好ましく、繊維が少なくとも3.0GPaの引張強さを有することがなおさらに好ましく、繊維が少なくとも3.6GPaの引張強さを有することが最も好ましい。
【0007】
高性能繊維は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、特にポリ(p−フェニレンテラフタルアミド)、液晶ポリマーおよび梯子状ポリマー、例えば、ポリベンゾイミダゾールまたはポリベンゾオキサゾール、特にポリ(1,4−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、またはポリ(2,6−ジイミダゾ[4,5−b−4’,5’−e]ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)からなる群から選択されるポリマーを含有するのが好ましい。
【0008】
好適な一実施形態において、ポリオレフィンは、ポリエチレンおよびポリプロピレンを含んでなる。ポリオレフィンが、少なくとも400,000g/モル、さらに好ましくは少なくとも800,000g/モルの重量平均分子量を有する、なおさらに好ましくは少なくとも1,200,000g/モルの重量平均分子量を有する高分子量ポリエチレンを含んでなるのが好ましく、ポリオレフィンが、少なくとも2,500,000g/モルの重量平均分子量を有する超高分子量ポリエチレンを含んでなるのが、さらに好ましい。例えば英国特許出願公開第A−2042414号明細書および英国特許出願公開第A−2051667号明細書に記載のゲル紡糸法によって調製されるポリエチレンフィラメントからなるポリエチレン繊維を利用するのが好ましい。
【0009】
別の好適な一実施形態において、高性能繊維は、好ましくはテレフタル酸モノマーを基準とするポリアミド、所謂アラミド繊維、例えば、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンテレフタルアミド)、およびコ−ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド3,4’オキシジフェニレンテレフタルアミド)のような共重合体を含有する。
【0010】
本発明に係る方法において、繊維を平行に位置決めすることは、繊維を同一平面で平行に向けるように、例えばボビンフレーム上の繊維ボビンからコームを横切って多数の繊維を引張ることにより、実施されうる。繊維の圧密化は、例えば塑性材料に少なくとも一部分の繊維をはめ込むことにより繊維がそれらの平行を維持するように実施され、この方法において塑性材料は、マトリックス材料として働き、繊維を一緒に結合もしくは保持する。平行配向した繊維を単層に圧密化するための少なくとも一部分の繊維の塑性材料へのはめ込みは、当技術分野においてよく知られており、例えば溶液または分散液としてマトリックス材料を繊維に供給した後、例えば溶媒を蒸発させることにより、実施されてもよい。この方法において、繊維がそれらの平行を維持するように、ほぼ平行な繊維の層が圧密されていることを意味する単層が得られる。
マトリックス材料として働く塑性材料は、ポリマー材料からなってもよく、任意選択により、ポリマーに通例利用される充填材を含有してもよい。ポリマーは、熱硬化性でも熱可塑性でも双方の混合でもよい。
【0011】
塑性材料として適切な熱硬化性および熱可塑性材料は、例えば国際公開第A−91/12136号パンフレット(15ページ26行目〜21ページ23行目)に列挙されている。ビニルエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂が、熱硬化性ポリマーの群からマトリックス材料として選択されるのが好ましい。これらの熱硬化性ポリマーは、通例、圧密化前の部分硬化状態(所謂B段階)において単層である。熱可塑性ポリマーの群から、ポリウレタン、ポリビニル、ポリアクリル、ポリオレフィンまたは熱可塑性エラストマーのブロック共重合体、例えば、ポリイソプレン−ポリエチレン−ブチレン−ポリスチレンまたはポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体が、マトリックス材料として選択されるのが好ましい。
【0012】
好適な一実施形態において、軟塑性材料が使用され、詳細には、可塑性マトリックス材料が、参照により本明細書に全てが組み込まれる欧州特許出願公開第A−0191 306号明細書に記載されるように、25℃で最大で41MPaの引張弾性率(25℃でASTM D638に準拠して測定)を有するエラストマーであることが好ましい。塑性材料の破断時伸びは、強化繊維の破断時伸びよりも大きいのが好ましい。マトリックスの破断時伸びは、3〜500%であるのが好ましい。
【0013】
別の好適な一実施形態において、ポリウレタンを含有するマトリックス材料を使用する。ポリウレタンは、ポリエーテルジオールに基づくポリエーテルウレタンであるのが広い温度範囲にわたって良好な性能を提供するので、さらに好ましい。特定の一実施形態において、ポリウレタンまたはポリエーテルウレタンは、多層材料シートの色安定性をさらに改善するため、脂肪族ジイソシアナートに基づく。
【0014】
このようなマトリックス材料は、多層材料シートの吸収量をなおさらに低減させる。
単層中の塑性材料の含有率は、例えば重量を軽減するように十分に低く選択される。塑性材料の含有率は、単層の総重量に対して30重量%未満であるのが好ましい。含有率が、20重量%未満であるのがさらに好ましく、15重量%未満であるのがなおさらに好ましい。単層中の塑性材料の含有率が、10重量%未満であるのが最も好ましい。
【0015】
このような単層の少なくとも2つは、1つの単層における繊維方向が、隣接する単層の繊維方向に対して、0度でない角度αを成すように、積重される(および回転される)。この角度αが、少なくとも30度、好ましくはこの角度αが、少なくとも45度である場合に、良好な結果が得られる。この角度αが、50〜90度であるのがさらに好ましく、この角度αが、75〜90度であるのがなおさらに好ましい。
【0016】
積層体は、長さ方向が、幅方向の少なくとも10倍、さらに好ましくは幅方向の少なくとも30倍、最も好ましくは幅方向の少なくとも30倍であることを意味する連続積層体である。少なくとも2つの繊維層の積層体、好ましくは少なくとも2つの単層の積層体が、例えばカレンダ処理によって、さもなければ少なくとも2つの繊維層もしくは少なくとも2つの単層を少なくとも局所的に密着することによって、相互に連結されているのが好ましい。カレンダ処理の条件、例えば、温度および圧力は、積層体の層剥離を回避するために十分に高く、ただし一方で、例えば繊維の溶融(DSCのような公知の技術により10℃/分の加熱速度で適切に測定されうる)或いは、非溶融繊維の場合、繊維の機械的特性がかなり、つまり20%超、低下される温度(動的機械分析のような公知の技術により、10℃/分の加熱速度で適切に測定されうる)による繊維特性の劣化を回避するために、高すぎないように、選択される。繊維特性のこのような劣化は、防弾性能の低下とみなしてよい。典型的な温度範囲は、例えばポリエチレン繊維の場合、75〜155℃の間が好ましく、典型的な圧力は、少なくとも0.05MPaが好ましいだろう。それによって、当業者は、通常の実験により、温度および圧力に関する良好な条件を見出すことが可能である。カレンダの温度および圧力を選択する際、カレンダにおける接触は、2つのカレンダロール間の線接触であり、それによって、圧力および温度が、短い、通常は0.5秒未満の間に材料に加えられることに注意すべきである。局所的な密着は、例えば縫合によってされてもよい。
【0017】
少なくとも2つの単層の積層体の固着は、少なくとも0.5MPaの圧力、繊維の融点もしくは分解温度よりも低い温度で、所要時間少なくとも2秒、積層体に圧力処理および温度処理を施した後、少なくとも2つの単層の積層体を圧力下で、80℃以下の温度まで冷却することにより、実施される。圧力処理および温度処理の所要時間は、少なくとも5秒であるのが好ましく、圧力処理および温度処理の所要時間は、少なくとも10秒であるのがさらに好ましく、これは、液体吸収量のなおさらに良好な低減を付与する。圧力処理および温度処理の所要時間が、少なくとも20秒であるのがなおさらに好ましく、圧力処理および温度処理の所要時間が、少なくとも40秒であるのが最も好ましい。原則的には、所要時間に関して制限はないが、実践的な理由のため、所要時間は、一般的に120秒未満であろう。
【0018】
本発明の特定の一実施形態において、繊維層の相互連結および同一平面に平行に向けられる繊維の圧密化は、固着中に行われてもよい。このような方法において、本発明のプロセス工程b、cおよびdは、少なくとも部分的に組み合わされてもよい。本実施形態において、同一平面に平行に向けられた少なくとも一組の繊維が、単層における繊維方向が隣接層の繊維との方向に対して、0度でない角度αを成すような方法で、少なくとも1つの単層と共に固着工程へ供給される。このような実施形態の利点は、なおさらに少量のマトリックス材料を用いてもよいことである。
【0019】
固着中の圧力は、少なくとも0.5MPaであり、この圧力が、少なくとも1.0MPaであるのが好ましく、この圧力が、少なくとも1.5MPaであるのがさらに好ましく、この圧力が、少なくとも2.0MPaであるのがなおさらに好ましく、この圧力が、少なくとも2.5MPaであるのが最も好ましい。一般的に、この圧力は、10MPa未満、好ましくは8.0MPa未満を選択されるだろう。
【0020】
固着中の温度は、繊維特性の劣化を回避するために、高すぎないように選択するべきである。例えばポリエチレン繊維に関して、この温度は、好ましく75〜145℃の間、さらに好ましくは85〜135℃の間である。この処理後、少なくとも2つの単層の積層体は、圧力下で、120℃以下、好ましくは80℃以下の温度まで、さらに好ましくは50℃以下の温度まで冷却される。冷却する時間は、固着温度間の温度差によって異なり、例えば、ポイルエチレン(polyethylen)では145℃、圧力下での冷却後の望ましい温度は、例えば80℃である。一般的に、この時間は、少なくとも1秒、好ましくは少なくとも2秒であってよい。通常、このような冷却は、120秒以内に達成されるだろう。
【0021】
固着工程を実施するのに適切な機器は、ベルトプレス、好ましくは加熱部に続いて冷却部を有するベルトプレスであってもよい。
【0022】
ベルトプレスは、積層体の表面の一面に均一に配分される一定圧力を意味する等圧を印加できるプレスであるのが好ましい。この圧力は、静水圧として適切に印加されてもよく、表面の位置と関係なく本質的に同じ値を有する。等圧条件下で作動するベルトプレスはそれ自体公知である。固着を実行するのに適切な装置は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許第0529214号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0023】
本発明に係る方法は、例えばドラムワインダによって生産される別々の多層材料シートを作製することにより、不連続な方法で実施されてもよく、その後に、これらのシートは、例えばベルトプレスにおいて本発明に従って圧力処理を施されてもよい。例えばドラムワインダ上で不連続に生産されるシートの場合は、例えば僅かに重なり合わせて、そしてロールに付けることができる製品を形成するように上記の別々の多層材料シートを密着しうる連続的な多層材料シートを作製するのが好ましい。本発明に係る連続多層材料シートが、例えばベルトプレス、好ましくは等圧ベルトプレスの形態で固着装置と組み合わせられる、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,766,725号明細書に記載される方法に従って作製されるのが、さらに好ましい。
【0024】
本発明の方法で獲得できる一方向性高性能繊維を含んでなる多層材料シートは、既知の多層材料シートと比較した場合、低減された液体吸収量を有する。その結果として、本発明は、一方向性高性能繊維を含んでなるこのような多層材料シートにも関する。
【0025】
好適な一実施形態において、本発明に係る多層材料シートは、さらに少なくとも1種の可塑性フィルムも含んでなる。このような可塑性フィルムは、多層材料シートの一方もしくは両方の外面に密着されるのが好ましい。このような密着は、少なくとも2つの単層が積重する間に、或いは少なくとも2つの単層の積層体の固着工程において、適切に実施されてよい。このような可塑性フィルムは、例えば、軟質の弾道物(例、防弾チョッキ等)に使用される多層材料シートの積層体において、多層材料シートを互いにスライドさせる。従って、このような多層材料シートは、防弾チョッキもしくは他の用品に適切に用いられてもよい。この可塑性フィルムは、ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含むポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラートを含むポリエステル、ポリアミド6を含むポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタンおよび同等なポリマー類から選択されるポリマーに適切に基づいてもよい。LLDPEを利用するのが好ましい。フィルムの厚さは、1〜30μm、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは3〜15μmの範囲であってもよい。
【0026】
別の好適な一実施形態において、本発明に係る多層材料シートは、硬質の物品、好ましくは硬質の弾道物品の製造に適切に使用されてもよい。このような物品の例は、例えば車両を装甲するためのパネル、および、例えばヘルメットおよびレードーム等の曲線の物品である。このような使用において、本発明に係る多層材料シートは、可塑性フィルムを含まないのが好ましい。
【0027】
[試験方法]
・ 分子量、Mw:固有粘度は、Mのような実際のモル質量パラメーターよりも容易に決定できる分子量の尺度である。IVとMの間にいくつかの実験式があるが、このような式は、モル質量分布に大きく左右される。本発明において、式M=5.37×10[IV]1.37(欧州特許出願公開第0504954A1号明細書参照)により、Mに合致するIVが、測定される。8dl/gのIVは、約930kg/モルのMに相当するだろう。
・ IV:固有粘度は、PTC−179法(Hercules Inc.Rev.1982年4月29日)に従い、デカリン中135℃で、溶解時間を16時間とし、DBPCを酸化防止剤として溶液中2g/lの量で用い、種々の濃度で測定された粘度を濃度ゼロに外挿することにより、測定される。
・ ポリマーの融点は、10℃/分の加熱速度でインジウムとスズで較正される力補正(power−compensation)パーキンエルマー(PerkinElmer)DSC−7計器に基づいてDSCにより、測定される。DSC−7計器の較正(2地点の温度較正)に関して、約5mgのインジウムと約5mgのスズを用い、両方とも少なくとも小数第2位で秤量した。インジウムを温度較正と熱流較正の両方に用いる。スズを温度較正のみに用いる。
・ 引張特性(25℃で測定):引張強さ(または強度)、引張弾性率(またはモジュラス)および破断伸び(またはeab)は、500mmの繊維の公称ゲージ長、50%/分のクロスヘッド速度を用いて、ASTM D885Mにおいて規定されるマルチフィラメント糸において定義および決定される。測定される応力−ひずみ曲線に基づいて、モジュラスは、0.3〜1%の間でひずみを傾斜させて決定される。モジュラスおよび強度を計算するために、測定される引張力は、10メートルの繊維を秤量することによって決定されるタイターで除され、GPaの値は、0.97g/cmの密度を仮定して算出される。薄いフィルムの引張特性は、ISO1184(H)に準拠して測定した。
・ 耐弾性:V50およびEabsは、スタナッグ(Stanag)2920に準拠した試験手順で、9×19mmFMJパラベラム(Parabellum)弾丸(ディナミット・ノーベル(Dynamit Nobel)製)を用いて、21℃で決定した。21℃、相対湿度65%に少なくとも16時間コンディショニングした後、Caran D’Acheバッキング材で充填された支持体(35℃でプレコンディショニングした)上に可撓性ストラップを用いて、シートの積層体を固着した。
【0028】
本発明は以下の実施例および比較例によって、これらに限定されることなく、説明される。
【0029】
[比較例A]
繊維を平行配向し、マトリックスとして18重量%のクレイトン(Kraton)スチレン−イソプレン−スチレンのトリブロック共重合体を加えて、3.5GPaの強度を有する、DSM Dyneemaにより製造された超高分子量ポリエチレン繊維を含んでなる多層材料シートを作製した。単層の総重量は、65.5グラムであった。2つの単層間の繊維方向が、90°の角度になるように、このような単層の2つを積重した。両外面に7マイクロメートルの厚さを有するLLDPEフィルムを加え、温度135℃およびライン圧力45N/mmで、積層体をカレンダ処理して、多層材料シートを得た。カレンダ処理におけるプレス時間は、0.15秒であった。
【0030】
この多層材料シートから、40×40cmの正方形を切り取り、水95重量%と市販の洗剤5重量%とを含んでなる洗剤溶液に含浸させた。含浸を30分間行った後、多層材料シートをペーパータオルで拭き、増えた重量(含浸前の重量と比較)を記録した。
【0031】
[実施例1]
圧力8MPa、温度130℃で10.5秒間、ダブルベルトプレスを介して、比較例Aで作製した超高分子量ポリエチレン繊維を含んでなる多層材料シートを供給した後、ダブルベルトプレスを出る前に、圧力下で80℃まで冷却した。40×40cmの試料を切断して、比較例Aと同じ方法で液体吸収量を決定した。
【0032】
[比較例B]
Gold Flex(登録商標)95638/AD266の名称で市販されている、一方向に配向されたアラミド繊維のクロスプライの単層を含んでなる多層材料シートを取り、40×40cmの試料を切断した。30分間灯油に含浸させた後、多層材料シートをペーパータオルで拭き、増えた重量(含浸前の重量と比較)を記録して、これらの試料から、灯油吸収量を測定した。さらに、総重量の3キログラム/mを有するGold Flexシートの積層体の耐弾性を決定した。液体を吸収する前に耐弾性を決定し、以下の表にエネルギー吸収量(Eabs)として示す。
【0033】
[実施例2]
以下の条件(圧力8MPa、温度150℃で20秒間)下で、ダブルベルトプレスを介して、比較例Bで使用したアラミド繊維を含んでなる多層材料シートを供給した後、ダブルベルトプレスを出る前に、圧力下で80℃まで冷却した。再び、比較例Bと同じ方法で液体吸収量および耐弾性を決定した。
【0034】
[比較例C]
圧力8MPa、温度130℃で10.5秒間、ダブルベルトプレスを介して、多層材料シートを供給することにより、実施例1を繰り返す。この実験において、圧力下での冷却を全く実施しない。
【0035】
試験の結果を以下の表に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
上の表は、本発明に係る方法で得られた多層材料シートの液体吸収量が低減したことを明らかに示す。さらに、より高いEabsとして表される高い耐弾性も見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向性高性能繊維を含んでなる多層材料シートの製造方法であって、前記方法が、
a.前記繊維を平行に位置決めする工程と、
b.前記繊維を圧密化して単層を得る工程と、
c.ひとつの単層内の前記繊維の方向が、隣接する単層内の前記繊維の方向に対して角度αを成すように少なくとも2つの単層を積重する工程と、
d.少なくとも2つの単層の積層体が圧力処理および温度処理を施されることによる固着工程であって、前記圧力処理の所要時間が、少なくとも0.5MPaの圧力で、前記繊維の融点もしくは分解温度よりも低い温度で、少なくとも2秒であり、その後、圧力下で80℃以下の温度まで、前記少なくとも2つの単層の積層体を冷却することを特徴とする工程と
を備える方法。
【請求項2】
前記高性能繊維が、少なくとも1.2GPaの引張強さと少なくとも40GPaの引張弾性率とを有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高性能繊維が、高性能ポリオレフィン繊維、好ましくは高性能ポリエチレン繊維である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記高性能繊維が、アラミド繊維である請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記高性能ポリオレフィン繊維が、ゲル紡糸法によって得られる請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ベルトプレスが使用される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
固着中の前記圧力処理が、等圧条件下で実施される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記単層が、最大で20重量%の濃度でマトリックス材料をさらに含んでなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法で獲得可能な一方向性高性能繊維を含んでなる多層材料シート。
【請求項10】
前記一方向性高性能繊維が、ポリオレフィン繊維である請求項9に記載の多層材料シート。
【請求項11】
前記一方向性高性能繊維が、ポリエチレン繊維、好ましくは超高分子量ポリエチレン繊維である請求項9または10に記載の多層材料シート。
【請求項12】
前記一方向性高性能繊維が、アラミド繊維である請求項9〜11のいずれか1項に記載の多層材料シート。
【請求項13】
少なくとも1種の可塑性フィルムを、好ましくは前記多層材料シートのひとつの外面にさらに含んでなる請求項8〜12のいずれか1項に記載の多層材料シート。
【請求項14】
軟質の弾道物品の製造における請求項8〜13のいずれか1項に記載の多層材料シートの使用。
【請求項15】
硬質の物品、好ましくは硬質の弾道物品の製造における請求項8〜13のいずれか1項に記載の多層材料シートの使用。

【公表番号】特表2013−514206(P2013−514206A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543760(P2012−543760)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069939
【国際公開番号】WO2011/073331
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】