説明

多層材料中の被覆上層の色の寄与を低減させる方法

多層物品(10)中の上層の固有色の寄与を低減させる方法が開示される。それによって製造された物品は黄変の減少を示し、したがって物品の所望色を達成するために添加しなければならない色補正用顔料及び染料の量が少なくなる。多層物品(10)は、表面フィルム(12)、基材(14)、及びこれらの間に位置する中間層(13)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性多層物品、並びに多層物品中の上層の固有色の寄与を低減させ、かくして物品の所望色を達成するために添加しなければならない色補償用顔料及び染料の量を減少させる方法に関する。物品を白色にすべき場合、本発明の方法は黄変を低減させ、明るい白色を得ることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
各種のポリマー物品は、長期色不安定性の問題を有している。これはポリマーの黄変を引き起こし、その透明度及び魅力を損なう。時間の経過に伴って起こり得る別の望ましくない特性は、光沢の低下である。
【0003】
ポリマーの黄変は大抵は紫外線の作用で引き起こされ、そのような理由でかかる黄変はしばしば「光黄変」と呼ばれる。光黄変を抑制するために多数の手段が使用され提唱されてきた。これらの多くは、ポリマー中に紫外線吸収化合物(UVA)を混入することを含んでいる。大抵の場合、UVAは低分子量化合物であり、ポリマーの物理的性質(例えば、衝撃強さ)及び高温特性(例えば、熱変形温度)の低下を回避するために比較的低いレベル(通例は1重量%以下)で使用しなければならない。しかし、低レベルのUVAは十分な保護を与えるには不適当な場合があり、ポリマーの光黄変はなお起こり得る。
【0004】
樹脂物品を光黄変及び光沢の低下から保護するための一方法は、耐候性の第二のポリマーからなるコーティングを適用することである。本明細書中で使用する「耐候性」という用語は、かかる現象に対する抵抗性を意味する。レゾルシノールアリーレート単位を含むポリエステルから形成したコーティングは、大抵は良好な耐候性を有している。アリーレート部分は、通例はイソフタレート単位、テレフタレート単位、及び特にイソフタレート単位とテレフタレート単位の混合物を含んでいる。レゾルシノールとイソフタレート及びテレフタレート連鎖単位の混合物とのポリエステルは、通例は良好な耐候性を有しており、樹脂基材上に被覆した場合に光黄変に対する保護をもたらすことができる。
【0005】
レゾルシノールアリーレート連鎖単位を含むポリエステルは、米国特許第4127560号及び特開平01−201326号に開示されたような溶融法で製造できる。かかる方法は、イソフタレート及びテレフタレート連鎖単位を含むポリエステルを与え得るが、30モル%を超えるテレフタレートの導入はできない。加えて、得られるポリエステルは淡い黄色ないしこはく色を有しており、これは多くの場合に許容されない。
【0006】
レゾルシノールアリーレート連鎖単位を含むポリエステルは、界面法でも製造できる。界面法は、水及び水と実質的に混和しない1種以上の有機溶媒を含む溶媒混合物の使用を伴う。米国特許第3460961号及びEareckson,Journal of Polymer Science,vol.XL,pp.399−406(1959)に従えば、イソフタレート及びテレフタレート連鎖単位の混合物を含むレゾルシノールアリーレートポリエステルの製造は、水酸化ナトリウム水溶液の存在下においてレゾルシノール及び二塩化イソフタロイル又は二塩化テレフタロイル或いはこれらの混合物を1:1の化学量論比で使用しながら、水及び水と混和しない溶媒(例えば、クロロホルム又はジクロロメタン)中での界面法で実施できる。
【0007】
レゾルシノールイソフタレート及びテレフタレートポリエステル連鎖単位を二酸又はジオールアルキレン連鎖単位(いわゆる「ソフトブロック」連鎖単位)と共に含むコポリエステルが、米国特許第5916997号に開示されている。これらのコポリマーは、優れた耐候性及びたわみ性を有している。レゾルシノールイソフタレート及びテレフタレートポリエステル連鎖単位をカーボネート連鎖単位と共に含むコポリエステルカーボネートが、米国特許第6559270号に開示されている。これらのコポリマーも、優れた耐候性を有すると共に、ブレンド中でポリカーボネートとの相溶性を有する。
【0008】
レゾルシノールアリーレート単位を含むポリエステルの良好な耐候性は、主として、前記ポリマーが紫外(UV)光に対して及ぼし得る遮断効果に由来すると考えられる。UV光に暴露すると、レゾルシノールアリーレート連鎖単位を含むポリマーは光化学的フリース転位を受け、ポリマーの少なくとも一部がポリエステル連鎖単位からo−ヒドロキシベンゾフェノン型連鎖単位に転化することがある。o−ヒドロキシベンゾフェノン型連鎖単位は、追加のUV光を遮断してレゾルシノールアリーレート含有組成物中のUV感受性成分を保護するように働く。レゾルシノールアリーレート連鎖単位を含むポリマーの良好な耐候性により、これらのポリマーはブレンド中で特に有用であると共に、前記ポリマーが感受性の高い基材成分に対する保護層として働き得る多層物品中で特に有用である。
【0009】
レゾルシノールアリーレート含有ポリエステルから形成された層を含む多層物品が、Cohen et al.,J.Poly.Sci.,Part A−1,9,3263−3299(1971)、並びにMonsanto Companyの若干の関連米国特許(即ち、米国特許第3444129号、同第3460961号、同第3492261号及び同第3503779号)に記載されている。これらに開示された耐候性ポリマーの適用方法は、溶液塗布後に溶媒を蒸発させるというものである。
【0010】
特開平01−199841号には、90モル%以上のポリ(エチレンテレフタレート)を含む基材層と、レゾルシノール及びイソフタル酸のポリエステルであって、任意にはテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又は他の様々な特記されたジカルボン酸のような別のジカルボン酸から導かれるコポリエステル単位を含むポリエステルであるガスバリヤーコーティング層とを有する物品が開示されている。開示された物品は共射出成形を含む一連の操作で製造でき、これらの操作が本質的にすべて溶融状態で実施されることで溶液塗布に付随する問題のいくつかが解消される。
【0011】
溶媒の使用を必要とすることなく物品に耐候性ポリマーを適用するための他の方法も公知であり、米国特許第6572956号に記載されているように溶融状態でコーティング層を適用する方法が含まれる。
【0012】
多層材料では、材料の所望色を得るため、1以上の層に顔料及び染料が添加しなければならない。これらの層の1以上が固有の基本色(例えば、黄色の色合い)を有する材料から形成される場合には、固有の基本色を補償するために余分の着色剤(即ち、顔料及び染料)を添加しなければならない。多層物品中にレゾルシノール系アリーレートを使用する際の問題点の1つは、これらが樹脂基材の光黄変抵抗性を向上させるとはいえ、レゾルシノール系アリーレート自体がしばしば黄色がかった色合いを有することである。
【0013】
このように、上層に固有の黄色の色合いを有する材料を含む白色の多層物品を製造するためには、無彩白色光を作るために余分の青色及び赤色着色剤を添加しなければならない。しかし、青色及び赤色着色剤の添加は色の総合明度も低下させる。
【0014】
固有の基本色(即ち、黄色)が強い材料では、十分な明度(即ち、物品の知覚反射率)をもった白色の物品を製造することが可能でない場合もある。さらに、上層が固有の基本黄色を有すると共に、補償用着色剤をそれに添加できない場合(例えば、光沢に悪影響を及ぼすことなく、黄色を低減させるのに十分な量で着色剤をできない場合)には、1以上の下層に補償用青色及び赤色着色剤を添加して明るい白色の物品を得るという課題がさらに一段と困難になる。
【0015】
上層からの色(特に黄色)の寄与を低減させることで、添加しなければならない補償用着色剤の量を減少させて明るい白色の物品の製造を可能にする多層物品を製造することができれば望ましいであろう。
【特許文献1】米国特許第4127560号明細書
【特許文献2】特開平01−201326号公報
【特許文献3】米国特許第3460961号明細書
【特許文献4】米国特許第5916997号明細書
【特許文献5】米国特許第6559270号明細書
【特許文献6】米国特許第3444129号明細書
【特許文献7】米国特許第3460961号明細書
【特許文献8】米国特許第3492261号明細書
【特許文献9】米国特許第3503779号明細書
【特許文献10】特開平01−199841号公報
【特許文献11】米国特許第6572956号明細書
【非特許文献1】Eareckson,Journal of Polymer Science,vol.XL,pp.399−406(1959)。
【非特許文献2】Cohen et al.,J.Poly.Sci.,Part A−1,9,3263−3299(1971)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、耐候性を有すると共に向上した色特性を有する多層物品を提供する。この多層物品は、3以上の層、即ち基材、透明な表面フィルム、及びこれらの間に配設されて表面フィルムの屈折率より低い屈折率を有する透明な中間層を有している。
【0017】
一態様では、本発明は、第一の材料からなる1以上の基材、中間層、及びその上に配設されて前記中間層と異なる熱可塑性ポリエステルからなる表面フィルムを含んでなる多層物品であって、表面フィルム及び中間層は共に透明であり、中間層は表面フィルムの屈折率より低い屈折率を有する多層物品に関する。
【0018】
本発明の物品中の基材層は、密着性中間層を受容し得る任意の材料であり得る。好適な材料には、金属、セラミック、セルロース系製品及び樹脂がある。適用可能な樹脂には、熱硬化性ポリマー及び(特に)熱可塑性ポリマーがあり、これらは付加又は縮合のいずれで製造されたものであってもよい。
【0019】
中間層は、表面フィルムの屈折率より低く、好ましくは基材の屈折率よりも低い屈折率を有する透明ポリマー材料である。本明細書中で使用する「透明」及び「透明性」という用語は、互換的に使用され、材料を透視した場合に材料の反対側にあるものがはっきりと見える程度に光波を散乱せずに透過させ得る材料を意味する。「透明」という用語は、透明なものばかりでなく「ほぼ透明な」ものも含むすべてのグレードの熱可塑性ポリマーを包含するものである。中間層は多層物品から放出される黄色光の量を低減させ、それによって物品の色特性を向上させる。好ましい実施形態では、ポリ(メチルメタクリレート)が中間層として使用される。
【0020】
表面フィルムは、物品の耐候性及び耐溶剤性を向上させると共に、熱可塑性材料の色及び外観を修正するために使用できる。透明な表面フィルムは、好ましくは、レゾルシノールポリアリーレート、又はイソフタレート/テレフタレート/レゾルシノール(「ITR」)ポリアリーレートのようなレゾルシノールポリアリーレートコポリマーである。
【0021】
本発明の別の態様は、基材に中間層を適用し、次いでそれに表面フィルムを適用することを含んでなる多層物品の製造方法である。別法として、中間層を表面フィルムに適用し、次いで二者を基材に適用することもできる。好ましくは、中間層が、表面フィルムを基材に付着させて固着性の多層物品を形成し得る接着剤として作用する。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、上述の方法で製造した多層物品である。一実施形態では、表面フィルム、中間層及び基材が多層フィルムを形成し、次いでそれが第二の基材に適用される。
【0023】
図面の簡単な説明
図1は、中間層なしに基材上に表面フィルムを有する物品の光透過を示す図である。
【0024】
図2は、表面フィルムの屈折率より低い屈折率を有する中間層を介して基材上に表面フィルムを有する物品の光透過を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の多層物品には、特に限定されないが、基材層、基材層上の中間層、及び中間層上の表面フィルムを含んでなるもの、基材層と、前記基材層のそれぞれの側に位置する中間層及び表面フィルムとを含んでなるもの、並びに基材層、中間層及び1以上の表面フィルムと共に、基材層と中間層の間又は中間層と表面フィルムの間に位置する1以上の追加の介在層を含んでなるものが含まれる。任意の介在層は、透明なもの及び/又は添加剤(例えば、着色剤又は金属フレークのような装飾材料)を含むものであり得る。所望ならば、例えば耐摩耗性又は耐引っかき性を付与するため、表面フィルム上にオーバーコート層を含めることもできる。基材、中間層、表面フィルム、及び任意の介在層又はオーバーコート層は、好ましくは互いに接触して重なり合っている。本発明の一態様では、基材、中間層及び表面フィルムが次いで第二の基材に適用される。
【0026】
本発明の物品中で基材層をなす第一の材料は、密着性中間層を受容し得る任意の材料であり得る。好適な材料には、ガラス、金属、セラミック、セルロース系製品及び樹脂がある。適用可能な樹脂には、熱硬化性ポリマー及び(特に)熱可塑性ポリマーがあり、これらは付加又は縮合のいずれで製造されたものであってもよい。
【0027】
代表的な金属基材には、黄銅、アルミニウム、マグネシウム、クロム、鉄、鋼、銅、及び他の金属又は合金、或いはこれらを含む物品からなるものがあり、これらはUV光又は他の天候現象からの保護を必要とする場合がある。
【0028】
熱硬化性ポリマー基材としては、エポキシ樹脂、シアン酸エステル、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート、アクリル樹脂、アルキド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂(ノボラック及びレゾールを含む)、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ビスマレイミド、PMR樹脂、ベンゾシクロブタン、ヒドロキシメチルフラン及びイソシアン酸エステルから導かれるものが挙げられる。本発明には、シート成形コンパウンド(SMC)のような充填材入り熱硬化性樹脂基材層を含む多層物品も包含されるが、好適な充填材は後述する。
【0029】
基材として使用できるセルロース系材料には、木材、紙、厚紙、ファイバーボード、パーティクルボード、構造用紙、クラフト紙、及び類似のセルロース含有材料がある。本発明には、1種以上のセルロース系材料と、1種以上の熱硬化性ポリマー(好ましくは接着性熱硬化性ポリマー)又は1種以上の熱可塑性ポリマー(好ましくは、PETやポリカーボネートのような再生利用熱可塑性ポリマー)、或いは1種以上の熱硬化性ポリマー及び1種以上の熱可塑性ポリマーの混合物とのブレンドも包含される。
【0030】
好適な縮合ポリマー基材には、芳香族ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル及びポリアミドがある。好適なポリカーボネートには、次式の構造単位を含むホモポリカーボネート及びコポリカーボネートがある。
【0031】
【化1】

式中、A及びAの各々は単環式二価アリール基であり、YはAとAとを1又は2の炭素原子で隔てる橋かけ基である。例えば、A及びAは通例は非置換フェニレン又はその置換誘導体を表す。橋かけ基Yは大抵は炭化水素基であり、特にメチレン、シクロヘキシリデン又はイソプロピリデンのような飽和基である。最も好ましいポリカーボネートは、A及びAの各々がp−フェニレンであってYがイソプロピリデンであるビスフェノールAポリカーボネートである。好ましくは、初期ポリカーボネート組成物の重量平均分子量は約5000〜約100000、さらに好ましくは約15000〜約65000の範囲内にあり、約18000〜約35000の範囲が最も好ましい。また、ポリカーボネートはコポリエステルカーボネートであってもよい。かかるポリマーは、式Iのカーボネート単位に加えて、通例はイソフタレート及び/又はテレフタレートのような芳香族ジカルボキシレート基に結合したA−Y−A部分を含むエステル単位を含んでいる。
【0032】
基材として使用できる好適なポリエステルには、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、特にポリ(エチレンテレフタレート)(以後時には「PET」という)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(以後時には「PBT」という)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(以後時には「PTT」という)、ポリ(エチレンナフタレート)(以後時には「PEN」という)、ポリ(ブチレンナフタレート)(以後時には「PBN」という)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノール−コ−エチレンテレフタレート)(以後時には「PETG」という)及びポリ(1,4−シクロヘキサンジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)(以後時には「PCCD」という)がある。
【0033】
好適な付加ポリマー基材には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニル−コ−塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(アクリロニトリル)、(メタ)アクリルアミドのポリマー又はアルキル(メタ)アクリレートのポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」))のようなアクリルポリマーなどの、脂肪族オレフィンホモポリマーやコポリマー及び官能化オレフィンポリマー、並びにポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレンを含む)のようなアルケニル芳香族化合物のポリマーがある。多くの目的にとって好ましい付加ポリマーは、ポリスチレン並びに特にいわゆる「ABS」及び「ASA」コポリマーであり、これらのコポリマーはそれぞれブタジエン及びアルキルアクリレートのエラストマー性基礎ポリマー上にグラフトされた熱可塑性で非エラストマー性のスチレン−アクリロニトリル側鎖を含んでいる。
【0034】
上述のポリマーのいずれかのブレンドも使用できる。その中には、熱硬化性ポリマーと、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド又はポリエステルのような熱可塑性ポリマーとのブレンドが含まれる。熱可塑性ポリマーは、通例、硬化前に熱硬化性モノマー混合物と混合される。また、セルロース系材料と熱硬化性ポリマー及び/又は熱可塑性ポリマーとのブレンドも含まれる。ブレンドの中では、熱可塑性樹脂ブレンドがしばしば好ましい。特に好ましいのは、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンのブレンド、ポリカーボネートとポリエステル、ABSコポリマー及び/又はASAコポリマーとのブレンド、並びにポリフェニレンオキシドとポリアミドのブレンドであり、ポリカーボネート−ポリエステルブレンドが多くの場合に最も好ましい。ブレンドは、耐衝撃性改良剤、相溶化剤などの常用添加剤を含み得る。
【0035】
基材層用として好ましい熱可塑性ポリマーは、大抵は、ポリカーボネート、ABSコポリマー、ASAコポリマー、並びにポリカーボネートとポリエステル、ABSコポリマー及びASAコポリマーとのブレンドである。他の熱可塑性ポリマーも基材層中に存在し得るが、上述のポリマー又はブレンドがその大部分をなすことがさらに好ましい。
【0036】
基材には、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン、石粉、ガラス繊維又はガラス球、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、炭酸カルシウム、タルク、雲母、リトポン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、けいそう土、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化第二クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、粉砕石英、か焼クレー、タルク、カオリン、石綿、セルロース、木粉、コルク、木綿及び合成紡織繊維のような充填材、特にガラス繊維及び炭素繊維のような補強充填材、並びに金属フレーク、ガラスフレークやガラスビーズ、セラミック粒子、他のポリマー粒子、染料及び含有のような着色剤(これらは有機物質、無機物質又は有機金属物質であり得る)を混入することもできる。
【0037】
多層物質の所望色が白色である場合、好適な着色剤には、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、二酸化ジルコニウム、鉛白、硫酸鉛、塩化鉛、アルミン酸鉛、フタル酸鉛、三酸化アンチモン、ホワイトビスマス、酸化スズ、ホワイトマンガン、ホワイトタングステン、及びこれらの組合せがある。加えて、物品の明度を高めるために蛍光増白剤、UV安定剤及び光安定剤を添加することもできる。
【0038】
本発明の多層物品の次の層は、表面フィルムの屈折率より低い屈折率を有する透明材料からなる中間層である。本発明に従って使用するための好適な中間層には、実質的に脂肪族のポリマーが含まれる。屈折率が許容範囲内にある限りは、かかるポリマー中に若干の芳香族基が存在することも許される。好適なポリマーには、ポリ(フッ化ビニル)及びアクリレートコポリマー、ポリ(二フッ化ビニリデン)及びアクリレートコポリマー、ポリ(塩化ビニル)及びコポリマー、ポリ(二塩化ビニリデン)及びコポリマー、ポリ(オキシメチレン)、ポリ(オキシエチレン)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(ビニルアルキルエーテル)、シリコーン(ポリ(ジメチルシロキサン)及びその官能性誘導体を含む)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(N−アルキルアミド)、ポリ(ビニルアルカノエート)(例えば、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルブチレート)など、及び混合エステル)、セルロースアルカノエート(例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなど、及び混合エステル)、セルロースベンゾエート、ポリエチレン(すべての密度)、ポリエチレンイオノマー、ポリプロピレン(すべての立体規則性)、ポリ(ブチレン)(すべての立体規則性)、ポリ(イソブチレン)(すべての立体規則性)、ポリ(イソプレン)、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(シクロヘキシルジメチルシクロヘキシルジカルボキシレート)及び関連構造)、脂肪族ポリカーボネート(例えば、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート))、脂肪族ポリウレタン(例えば、脂肪族ジイソシアネートと任意の脂肪族ジアミンとの生成物)、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)(EPRゴム)、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)イオノマー、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクロレイン)、天然ゴム、ポリ(ブタジエン)ゴム、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、並びに脂肪族エポキシ樹脂がある。いずれの場合にも、アルキルという用語の使用はC1−16炭化水素(線状、枝分れ、環式及び不飽和)を包含し、フッ素及び塩素置換基を含み得る。多くの場合、上述の物質のコポリマーも使用でき、場合によってはホモポリマーに比べて優れた性質を有する。加えて、これらのポリマー同士のブレンド、又はこれらのポリマーと1〜50%の芳香族ポリマーとのブレンドも使用できる。
【0039】
好ましくは、中間層としてポリ(アルキルメタクリレート)が使用され、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)が最も好ましい。
【0040】
中間層は、表面フィルムの屈折率より低く、好ましくは基材の屈折率よりも低い屈折率を有する。好ましくは、約1.60より低く、さらに好ましくは約1.3〜約1.55の範囲内の屈折率を有する。PMMAが中間層である場合、屈折率は約1.49である。
【0041】
本発明の多層物品では、中間層上に透明な表面フィルムも存在している。好ましくは、表面フィルムは、1,3−ジヒドロキシベンゼンオルガノジカルボキシレートから導かれる構造単位を有する熱可塑性ポリエステルである。この目的のために好適なポリマー、特にアリーレートポリマーは、米国特許第6143839号に開示されている。約80℃以上のガラス転移温度を有すると共に、結晶融解温度を有しないアリーレートポリマー(即ち、非晶質のもの)が最も好ましい。
【0042】
アリーレートポリマーは、典型的には次式の構造単位を含む1,3−ジヒドロキシベンゼンイソフタレート/テレフタレートであり、
【0043】
【化2】

(式中、各Rは置換基、特にハロ又はC1−12アルキルであり、pは0〜3である。)
任意には次式の構造単位も含み得る。
【0044】
【化3】

(式中、R及びpは前記に定義した通りであり、Rは二価C4−12脂肪族基、脂環式基又は混合脂肪族−脂環式基である。)
コハク酸、アジピン酸又はシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸のような脂肪族ジカルボン酸、或いは1,8−ナフタレンジカルボン酸のような他の芳香族ジカルボン酸から導かれるもののような他の酸基が、好ましくは約30モル%以下の量でコーティング層中に存在することも本発明の技術的範囲内にある。また、少なくともある割合でアリーレートポリマーと混和し得る他のポリエステルが存在することも本発明の技術的範囲内にある。これらは、PBT、PET、PTT及びPCCDで例示される。しかし、大抵の場合には、コーティング層のポリマーは式IIの単位からなり、任意には式IIIの単位を含み得る。
【0045】
式IIの単位は、レゾルシノール部分、又はいずれかのR基がC1−4アルキル(即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチル)である置換レゾルシノール部分を含んでいる。これらのアルキル基は好ましくは第一又は第二アルキル基であり、メチルが最も好ましい。最も好ましい部分はpが0であるレゾルシノール部分であるが、pが1である部分も本発明に関しては優れている。前記レゾルシノール部分は、好ましくはイソフタレート部分及び/又はテレフタレート部分に結合している。
【0046】
式IIIの任意のソフトブロック単位では、やはりレゾルシノール又は置換レゾルシノール部分が、二価C4−12脂肪族基、脂環式基又は混合脂肪族−脂環式基であるRと共にエステルを生成して存在している。Rは好ましくは脂肪族基であり、特にC8−12直鎖脂肪族基である。
【0047】
本発明の物品中で有用なアリーレートポリマーは、当技術分野で公知である通常のエステル化反応で製造できる。例えば、かかる反応は界面で、溶液中で、溶融状態で、又は固相条件下で実施できる。界面製造条件及びそれによって製造される多層物品は、米国特許第6306507号、同第6265522号、同第6291589号、同第6294647号及び同第5916997号に記載されている。
【0048】
また、米国特許第6559270号に記載されたブロックコポリエステルカーボネートも本発明に係るアリーレートポリマーとして有用である。これらの中には、次式の部分を含むブロックコポリマーが包含される。
【0049】
【化4】

式中、R及びpは前記に定義した通りであり、各Rは独立に二価有機基であり、mは約10以上であり、nは約4以上である。式IIIに対応するソフトブロック部分も存在し得る。かくして、アリーレートブロックは非置換又は置換1,3−ジヒドロキシベンゼン部分を含んでいる。最も好ましい部分は、この場合にもpが0であるレゾルシノール部分である。
【0050】
前記1,3−ジヒドロキシベンゼン部分は、単環式(例えば、イソフタレート又はテレフタレート)又は多環式(例えば、ナフタレンジカルボキシレート)であり得る芳香族ジカルボン酸部分に結合している。好ましくは、芳香族ジカルボン酸部分はイソフタレート及び/又はテレフタレートである。前記部分のいずれか一方又は両方が存在し得る。大抵の場合には、両方が約0.25〜4.0:1、好ましくは約0.4〜2.5:1、さらに好ましくは約0.67〜1.5:1、最も好ましくは約0.9〜1.1:1の範囲内のイソフタレート/テレフタレートモル比で存在している。
【0051】
一実施形態では、アリーレートポリマーは界面法で製造され、式IIの単位を含み、好ましくはレゾルシノールイソフタレート及びテレフタレート単位の組合せを約0.25〜4.0:1、好ましくは約0.4〜2.5:1、さらに好ましくは約0.67〜1.5:1、最も好ましくは約0.9〜1.1:1の範囲内のモル比で含んでいる。かかる実施形態では、式IVのソフトブロック単位の存在は不要である。式IIIの単位の比がこの範囲外にある場合、特にこれらの単位がイソフタレート又はテレフタレートのみである場合には、界面製造を容易にするためにソフトブロック単位の存在が好ましいことがある。ソフトブロック単位を含む特に好ましいアリーレートポリマーは、8.5:1.5〜9.5:0.5のモル比のレゾルシノールイソフタレート単位及びレゾルシノールセバケート単位からなるものである。
【0052】
ブロックコポリエステルカーボネートは二段階法で製造できる。この方法では、最初に、(好ましくは)レゾルシノール又はアルキルレゾルシノール若しくはハロレゾルシノールであり得る1,3−ジヒドロキシベンゼンを水性アルカリ性反応条件下で1種以上の芳香族ジカルボン酸塩化物(好ましくは塩化イソフタロイル、塩化テレフタロイル又はこれらの混合物)に接触させる。アルカリ性条件は、通例はアルカリ金属水酸化物(通常は水酸化ナトリウム)の導入で得られる。通常、触媒(大抵は第三アミン、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、ハロゲン化テトラアルキルホスホニウム又はハロゲン化ヘキサアルキルグアニジニウム)も存在し、また一般には水と混和しない溶媒である有機溶媒(好ましくは塩化メチレンのような塩素化脂肪族化合物)も存在する。かくして、反応は一般に二相系で実施される。
【0053】
ヒドロキシ末端停止ポリエステル中間体を得るため、レゾルシノールと塩化アシルのモル比は好ましくは1:1を超え、例えば1.01〜1.90:1の範囲内にある。塩基は、ハロゲン化アシルに対して約2〜2.5:1のモル比で存在し得る。触媒は、通常、ハロゲン化アシルの合計量を基準にして約0.1〜10モル%の量で使用される。反応温度は、大抵は約25〜50℃の範囲内にある。
【0054】
ポリエステル中間体製造の完了後、相分離に先立ち、二相系の水性相を弱酸で酸性化することが時には有利である。次いで、ポリエステル中間体を含む有機相に対し、ブロックコポリエステルカーボネート生成反応である第二の段階が施される。しかし、酸性化又は分離なしに前記第二の段階まで進行させることも想定されており、これは大抵は収率又は純度の低下なしに可能である。
【0055】
また、当該液体に可溶な塩基の使用により、有機液体中だけでポリエステル中間体を製造することも可能である。かかる用途のために好適な塩基には、トリエチルアミンのような第三アミンがある。
【0056】
第二の段階で使用するジヒドロキシ芳香族化合物は、通例は式HO−R−OH(式中、Rは前記に定義した通りである。)を有している。ビスフェノールAが一般に好ましい。ハロゲン化カルボニルは、好ましくはホスゲンである。この反応は、好適な界面重合触媒及びアルカリ性試薬(この場合にも好ましくは水酸化ナトリウム)並びに任意には枝分れ剤(例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン)及び/又は連鎖停止剤(例えば、フェノール又はp−クミルフェノール)を使用しながら、当技術分野で公知の界面法に従って(即ち、やはり二相系で)実施できる。ブロックコポリマーのスクランブリングを抑制するため、ホスゲン化反応の初期部分については、pHを比較的低いレベル(通例は約5〜9の範囲内)に維持する。前記反応の後期部分では、pHを約10〜13に上昇させることができる。
【0057】
両反応の完了後、ブロックコポリエステルカーボネートを通常の方法で単離できる。これらの方法としては、例えば、アンチソルベントによる沈殿、乾燥、及び押出しによるペレット化が挙げられる。また、芳香族ジエステル及び1,3−ジヒドロキシベンゼンを溶媒中又は溶融状態で使用するエステル交換反応で例示されるように、他のエステル生成方法で第一の段階を実施することも想定されている。
【0058】
表面フィルムは約1.65〜約1.59の範囲内の屈折率を有し得るが、大抵のレゾルシノールポリアリーレートについては約1.625の屈折率を有する。
【0059】
好ましい一実施形態では、表面フィルムはレゾルシノールポリアリーレート又はレゾルシノールポリアリーレートコポリマーの実質的に透明な層であり、中間層はPMMAのようなポリ(アルキルメタクリレート)であり、基材層は光散乱性顔料を含む(ビスフェノールAカーボネートのような)ポリカーボネートである。
【0060】
本発明の方法では、基材に中間層が適用され、次いで中間層に表面フィルムが適用される。表面フィルムは基材と同じものであってよいが、中間層は基材及び表面フィルムと異なっている。好ましくは、中間層は特に基材と表面フィルムとの間に良好な接着をもたらすように選択される。基材中、表面フィルム中、又はその両方に着色剤が存在し得るが、表面フィルムに添加される着色剤は表面フィルムの透明性に影響を及ぼすべきでない。基材、表面フィルム又はその両方と同じ材料から形成し得る介在層を、中間層と表面フィルムの間、中間層と基材の間、又はその両方に含めることもできる。若干の実施形態では、着色剤が介在層に添加される。
【0061】
好適な適用方法には、基材の作製に続いて第二の材料を基材に適用して中間層を形成し、次いで第三の材料を中間層に適用して表面フィルムを形成するというものがある。別法として、表面フィルムを形成し、それに中間層を適用し、次いで中間層に基材を適用することもできる。
【0062】
本発明の物品は、溶液塗布で、又は共射出成形、共押出し、オーバー成形、マルチショット射出成形及びシート成形のような溶融法で製造することもできる。また、通例は射出成形装置内で、基材の表面上に中間層材料のフィルムを配置して2つの層を付着させ、次いで同様にして中間層に表面フィルムを適用することでも製造できる。若干の例(例えば、多層共押出し)では、これらの層の同時形成が可能な場合もある。
【0063】
また、表面フィルム、中間層及び介在層からなる構造物を溶融状態の基材に適用することも本発明の技術的範囲内にある。これは、例えば、射出成形用金型に表面フィルム、次いで中間層、次いで介在層を装入し、次いで基材を注入することで達成できる。この方法によれば、絵付成形などが可能になる。基材層の両面がこれらの層を受容し得るが、通常は片面のみに適用することが好ましい。
【0064】
本発明の物品は、熱又は接着剤の使用による層のラミネーションで製造することもできる。上述の通り、脂肪族ポリウレタン、シリコーン及びアクリルポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート))を中間層として使用できる。これらの材料はいずれも公知の接着剤であるので、これらの実施形態では、中間層は基材に表面フィルムを接合するための接着剤として働き、固着性の多層物品を形成する。
【0065】
一実施形態では、基材を押し出し、溶液塗布でそれに中間層を適用し、次いで溶液塗膜から溶媒を除去した後に表面フィルムをその上にラミネートすることができる。別法として、まず表面フィルムを形成し、溶液塗布でそれに中間層を適用し、次いで溶液塗膜から溶媒を除去した後に二者を基材上にラミネートすることもできる。
【0066】
また、基材、中間層及び表面フィルムを含む多層物品を製造し、次いでこの多層物品を第二の基材に適用することも本発明の技術的範囲内にある。かかる場合には、第二の基材は好適な基材として上述した任意の材料であり得る。
【0067】
本発明の樹脂物品中における各種樹脂層の厚さは、大抵は次の通りである。基材は約125μ(ミクロン)以上、好ましくは約250μ以上、さらに好ましくは約400μ以上であり、中間層は約1〜1000μ、好ましくは約5〜500μ、最も好ましくは約10〜100μであり、表面フィルムは約2〜2500μ、好ましくは約10〜1000μ、最も好ましくは約10〜250μであり、介在層(存在する場合)は約2〜2500μ、好ましくは約10〜250μ、最も好ましくは約50〜175μであり、全体は約125μ以上、好ましくは約250μ以上、さらに好ましくは約400μ以上である。
【0068】
本発明の物品は、基材層が有する通常の有益な性質、耐紫外線性の向上及び光沢の維持で証明される向上した耐候性、並びに向上した色特性で特徴づけられる。本発明に従えば、多層系中の材料の固有の基本色を解消するために添加しなければならない補償用着色剤の量を低減させることができる。これは、少ない補償用着色剤を添加することで高い白色明度を達成する能力を含んでいる。
【0069】
低い屈折率を有する中間層を設けることの利益を図1及び2に示す。いずれの図でも、多層材料10は固有の黄色の色合いを有する表面フィルム12を含んでいるが、いかなる補償用着色剤も含んでいない。基材14は顔料及び染料を含んでいて不透明である。表面フィルム12及び基材14の屈折率は、ほぼ同一又は同一である。図1に示すように、中間層が存在しない場合、上方から材料10に入射した光は表面フィルム12を通過して基材14に入射し、そこで散乱され吸収される。散乱された光は、大きい角度で基材14を出て黄色の表面フィルム12中を進行し、長い実効光路長を生じることがある。そのため、たとえ表面フィルム12が薄くても、黄色の強い光が材料から出射するので材料は黄色がかった色に見える。
【0070】
図2に示すように、長い実効光路長を短縮して表面フィルム12の黄色の寄与を低減させるため、基材14及び表面フィルム12の屈折率より低い屈折率を有する薄い透明な中間層13が基材14と表面フィルム12との間に挿入される。この場合、上方から材料10に入射した光は表面フィルム12及び中間層13を通過し、次いで基材14中の着色剤で散乱され吸収される。基材14から脱出できる唯一の光は、屈折の法則(即ち、スネルの法則)に基づき、上下方向にかなり集束した光である。この場合、基材14を出た光は材料表面の法線に接近した方向に沿って進行し、したがって短い実効光路長を有するので黄色の寄与は少なくなる。
【0071】
本発明に従って製造される物品は、広範囲の様々な用途のために適している。上述の通り、多層物品は第二又はそれ以上の基材を含み得る。本発明に従って製造できる物品には、自動車をはじめとする屋外乗物及び装置用の外部車体パネル及び部品、標識のような保護グラフィックス、電気通信ボックスや電気接続ボックスのような屋外囲い、並びに屋根セクションや壁パネルや窓ガラスのような建設用途がある。本発明はさらに、特に限定されないが、成形、絵付成形、ペイント炉内焼付け、ラミネーション及び/又は熱成形のような、前記物品に対する追加の加工操作も想定している。
【0072】
本発明の多層物品には、詳しくはその寿命期間中に(自然又は人工の)UV光に暴露される物品が含まれ、最も詳しくは屋外物品(即ち、屋外使用を想定したもの)が含まれる。好適な物品は、自動車やトラックや軍用乗物やオートバイの外部及び内部部材(パネル、クォーターパネル、ロッカーパネル、装備品、フェンダー、ドア、デッキの蓋、トランクの蓋、フード、ボンネット、屋根、バンパー、フェーシア、グリル、ミラーハウジング、支柱のアップリケ、被覆材、車体のサイドモール、ホイールカバー、ハブキャップ、ドアハンドル、スポイラー、窓枠、前照灯ベゼル、前照灯、尾灯、尾灯ハウジング、尾灯ベゼル、ナンバープレートの囲い、ルーフラック及び歩み板を含む)、屋外乗物や装置用の囲い、ハウジング、パネル、部品及び装備品、電気装置や電気通信装置用の囲い、屋外用家具、航空機部材、ボート及び船舶設備(装備品、囲い及びハウジングを含む)、船外発動機ハウジング、測深機ハウジング、個人用船舶、ジェットスキー、プール、温泉、ホットタブ、階段、階段の覆い、建築及び建設用途(窓ガラス、屋根、カウンター天板、窓、窓の縁飾り、床、装飾用の窓装備品又は処理材を含む)、写真や絵画やポスターや類似の展示品用の処理ガラスカバー、反射器、蛍光灯用さや、スリーブガード、壁パネル、ドア及びドア装備品、保護グラフィックス、屋外用及び屋内用看板、自動金銭出納機(ATM)用の囲い、ハウジング、パネル及び部品、芝生用や園芸用トラクター、芝刈り機、及び芝生用や園芸用道具をはじめとする道具用の囲い、ハウジング、パネル及び部品、窓及びドア装備品、スポーツ設備及び玩具、スノーモービル用の囲い、ハウジング、パネル及び部品、レクリエーション用乗物のパネル及び部材、運動場の設備、プラスチック−木材の組合せから製造された物品、ゴルフコースマーカー、ユーティリティピットカバー、コンピューターハウジング、デスクトップコンピューターハウジング、ポータブルコンピューターハウジング、ラップトップコンピューターハウジング、パームヘルドコンピューターハウジング、モニターハウジング、プリンターハウジング、キーボード、ファックス装置ハウジング、コピー機ハウジング、電話機ハウジング、携帯電話ハウジング、ラジオ送信機ハウジング、ラジオ受信機ハウジング、照明器具、照明装置、ネットワークインターフェース装置ハウジング、変圧器ハウジング、空気調和機ハウジング、公共輸送機関用の被覆材又は座席、列車や地下鉄やバス用の被覆材又は座席、メーターハウジング、アンテナハウジング、衛星放送アンテナ用被覆材、被覆ヘルメット及び人体防護用具、被覆合成繊維織物又は天然繊維織物、被覆写真フィルム及び写真プリント、被覆塗装物品、被覆染色物品、被覆蛍光物品、被覆発泡物品並びに類似の用途で例示される。
【実施例】
【0073】
以下の非限定的実施例で本発明を例示する。
【0074】
実施例1
ラミネート1−A(対照試料)を製造するため、金型内で、5%の二酸化チタンを含む(General Electric Company(ニスカユナ、米国ニューヨーク州)から商業的に入手できる)Lexan 140グレードのポリカーボネートからなる射出成形平板上に10ミルのレゾルシノールポリアリーレートフィルムを配置した。レゾルシノールポリアリーレートは、米国特許第6559270号に従って製造したレゾルシノールポリアリーレート及びBPAポリカーボネート(比率80:20)のブロックコポリマーであり、厚さ10ミルのフィルムとして押し出した。金型を研磨した板で覆い、175℃に加熱したプラテンを備えた水圧プレス内に配置し、500psiの圧力で3分間、4000psiで1分間、6000psiで1分間プレスした。冷却後、レゾルシノールポリアリーレートフィルムは白色のポリカーボネート基材に強固に付着していた。
【0075】
10ミルのレゾルシノールポリアリーレートフィルムと白色のポリカーボネート基材との間に1ミルのポリ(メチルメタクリレート)フィルムを配置した点を除き、全く同様にしてラミネート1−Bを製造した。厚さ1ミルのPMMAフィルムは、Elvacite 2041グレードのPMMAをクロロホルムに溶解して20%溶液を作り、ドクターブレードを用いてガラス板上に広げて6ミルの湿潤フィルムを形成し、次いでそれを乾燥させることで製造した。
【0076】
0.75W/mの放射束密度を用いた点を除き、ASTM G26に規定された条件下において、Atlas Ci35aキセノンアークウェザロメーター(Atlas Material Testing Technology LLC、シカゴ、米国イリノイ州)内でラミネート1−A及び1−Bを露光した。平板の色は、GretagMacbeth ColorEye 7000a分光計(GretagMacbeth LLC、ニューウィンザー、米国ニューヨーク州)上での反射で測定し、ASTM D1925に従った黄色度指数として報告する。色シフトを下記表1中に示す。PMMA中間層を組み込んだラミネート(ラミネート1−B)は、一貫して対照試料(ラミネート1−A)より約2単位少ない黄色度指数の変化を有していた。
【0077】
【表1】


実施例2
フィルムの押出し前に3%のベンゾオキサジノンUV吸収剤(Cyasorb UV3638吸収剤(Cytec Industries Inc.、ウェストパターソン、米国ニュージャージー州)をレゾルシノールポリアリーレート−ビスフェノールAポリカーボネートコポリマーに添加した点を除き、実施例1の手順を繰り返した。実施例1に記載したように、ラミネート2−Aはレゾルシノールポリアリーレートコポリマーフィルムを用いて製造し、ラミネート2−Bはレゾルシノールポリアリーレートコポリマーフィルム及びPMMAフィルムを用いて製造した。試料を可視光に91時間暴露し、次いで実施例1に記載したようにキセノンアークウェザロメーター内で露光した。色シフトを下記表2中に示す。PMMA中間層を組み込んだラミネート(ラミネート1−B)は、一貫して対照試料(ラミネート1−A)より約2単位少ない黄色度指数の変化を有していた。
【0078】
【表2】


以上、典型的な実施形態で本発明を例示し説明してきたが、本発明の技術的思想から決して逸脱せずに様々な修正や置換を行うことができるので、本発明は示された細部に限定されるわけではない。したがって、当業者には、日常的な実験を用いるだけで本明細書中に開示した本発明のさらなる修正例や同等例を想起することができ、かかる修正例や同等例のすべてが特許請求の範囲で定義される本発明の技術的思想及び技術的範囲内に含まれると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】中間層なしに基材上に表面フィルムを有する物品の光透過を示す図である。
【図2】表面フィルムの屈折率より低い屈折率を有する中間層を介して基材上に表面フィルムを有する物品の光透過を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
10 多層物品
12 表面フィルム
13 中間層
14 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の材料からなる1以上の基材、
中間層、及び
前記中間層と異なる熱可塑性ポリエステルからなる表面フィルム
を含んでなる多層物品であって、表面フィルム及び中間層は共に透明であり、中間層は表面フィルムの屈折率より低い屈折率を有する、多層物品。
【請求項2】
1以上の基材が1種以上のポリカーボネート、ポリエステル、又はアルケニル芳香族化合物の付加ポリマーからなる、請求項1記載の物品。
【請求項3】
中間層が、ポリ(フッ化ビニル)及びアクリレートコポリマー、ポリ(二フッ化ビニリデン)及びアクリレートコポリマー、ポリ(塩化ビニル)及びコポリマー、ポリ(二塩化ビニリデン)及びコポリマー、ポリ(オキシメチレン)、ポリ(オキシエチレン)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(ビニルアルキルエーテル)、シリコーン、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(N−アルキルアミド)、ポリ(ビニルアルカノエート)、セルロースアルカノエート、セルロースベンゾエート、ポリエチレン、ポリエチレンイオノマー、ポリプロピレン、ポリ(ブチレン)、ポリ(イソブチレン)、ポリ(イソプレン)、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリウレタン、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)(EPRゴム)、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)イオノマー、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクロレイン)、天然ゴム、ポリ(ブタジエン)ゴム、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、これらのコポリマー、並びにこれらのブレンドからなる、請求項1記載の物品。
【請求項4】
表面フィルムが、イソフタレート及び/又はテレフタレート部分に結合したレゾルシノール部分を含むアリーレートポリマーからなる、請求項1記載の物品。
【請求項5】
ポリカーボネートからなる1以上の基材、
ポリ(メチルメタクリレート)からなる中間層、及び
イソフタレート及び/又はテレフタレート部分に結合したレゾルシノール部分を含むアリーレートポリマーからなる表面フィルム
を含んでなる多層物品であって、表面フィルム及び中間層は共に透明であり、中間層は表面フィルムの屈折率より低い屈折率を有する、多層物品。
【請求項6】
表面フィルムがさらに1種以上の着色剤を含む、請求項1又は5記載の物品。
【請求項7】
さらに、中間層と基材との間に配設された介在層を含む、請求項1又は5記載の物品。
【請求項8】
多層物品の製造方法であって、
ガラス、金属、セラミック、セルロース系製品及び樹脂からなる群から選択される1種以上の材料で1以上の基材を形成する段階、
1以上の基材に中間層を適用する段階、及び
中間層に表面フィルムを適用する段階
を含んでなり、表面フィルム及び中間層は共に透明であり、中間層は表面フィルムの屈折率より低い屈折率を有する、方法。
【請求項9】
多層物品を製造する複数の段階が、溶液塗布、共射出成形、共押出し、オーバー成形、マルチショット射出成形、シート成形及びラミネーションからなる群から選択される方法による、請求項8記載の方法。
【請求項10】
中間層を適用する段階が、表面フィルムを1以上の基材に付着させて多層物品を形成する接着剤として中間層を使用することを含む、請求項8記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−524526(P2007−524526A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517557(P2006−517557)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020047
【国際公開番号】WO2005/005144
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】