説明

多層構造体および多層構造体の製造方法

【課題】高湿度条件下でのガスバリア性に優れる多層構造体を提供する。
【解決手段】基材、第1の層および第2の層の少なくとも3層からなる多層構造体において、前記第1の層が無機微粒子から形成される層であり、前記第2の層が無機層状化合物および樹脂を含む樹脂組成物から形成される層であって、かつ前記第1の層と第2の層とが隣接して積層され、前記基材と第2の層との間に第1の層が配されてなることを特徴とする多層構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層構造体および多層構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる成形体は、その優れた力学的性質や耐熱性、透明性等により、食品分野、化粧品分野、農薬分野、医療分野等の多くの分野で、広く包装材料として用いられている。熱可塑性樹脂製成形体を包装材料として用いる場合には、内容物が酸素により劣化することを防ぐため、ガスバリア性が求められることが多い。このようなガスバリア性を有する包装材料として、例えば特許文献1には、樹脂と無機層状化合物である合成ヘクトライトからなる層が基材フィルム上に一層積層されてなる包装材料が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平03−30944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記のように、樹脂と無機層状化合物からなる層を一層有する包装材料は、高湿度条件下でのガスバリア性が不十分であった。
【0005】
本発明は、高湿度条件下でのガスバリア性に優れる多層構造体および高湿度条件下でのガスバリア性に優れる多層構造体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材、第1の層および第2の層の少なくとも3層からなる多層構造体において、前記第1の層が無機微粒子から形成される層であり、前記第2の層が無機層状化合物および樹脂を含む樹脂組成物から形成される層であって、かつ前記第1の層と第2の層とが隣接して積層され、前記基材と第2の層との間に第1の層が配されてなる多層構造体である。
また本発明は、他の面において、基材、第1の層および第2の層の少なくとも3層からなる多層構造体の製造方法において、以下の工程(1)、(2)を順に含む多層構造体の製造方法である。
(1)無機微粒子および第1の液体媒体を含む第1の塗工液を基材上に塗工し、次いで第1の液体媒体を除去して、無機微粒子からなる第1の層を形成する工程
(2)樹脂、無機層状化合物および第2の液体媒体を含む第2の塗工液を、前記第1の層上に塗工し、次いで第2の液体媒体を除去して、無機層状化合物および樹脂を含む樹脂組成物からなる第2の層を前記第1の層上に形成する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明の多層構造体は、高湿度条件下でのガスバリア性に優れる。また本発明の多層構造体の製造方法によれば、高湿度条件下でのガスバリア性に優れる多層構造体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の多層構造体は、基材、無機微粒子から形成される第1の層、および該第1の層と隣接しており、無機層状化合物および樹脂を含む樹脂組成物から形成される第2の層の少なくとも3層を有する。
【0009】
本発明における第1の層は、無機微粒子から形成される層である。第1の層を形成する無機微粒子の種類は特に限定されるものではないが、例として金属微粒子、金属酸化物微粒子、金属水酸化物微粒子、金属炭酸塩微粒子、金属硫酸塩微粒子等が挙げられる。金属微粒子の金属元素としては、金、パラジウム、白金、銀などが例示される。金属酸化物微粒子、金属水酸化物微粒子、金属炭酸塩微粒子、金属硫酸塩微粒子における金属元素としては、珪素、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、セリウム、ニッケル、スズなどが例示される。無機微粒子が緻密にかつ均一に充填された層を容易に形成できることから、金属酸化物微粒子または金属水酸化物微粒子を用いることが好ましく、特に珪素またはアルミニウムの酸化物微粒子もしくは水酸化物微粒子が好ましく、アルミニウムおよび/または酸化アルミニウムがさらに好ましく用いられる。また、無機微粒子は2種類以上を併用してもよい。
【0010】
第1の層を形成する無機微粒子の平均粒径は、1μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがさらに好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以下であることが最も好ましい。このような平均粒径の無機微粒子を用いることにより、得られる多層構造体はガスバリア性に優れ、さらに透明性にも優れるものとなり、また該多層構造体を製造する際の製膜性にも優れる。ここでいう無機微粒子の平均粒径とは、使用する無機微粒子について後述する無機層状化合物の平均粒径測定方法により測定した値であってもよく、また第1の層の表面あるいは断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)等の顕微鏡観察して測定した値であってもよい。顕微鏡観察によって無機微粒子の平均粒径を求める場合には、各無機微粒子の長径を平均した値を該無機微粒子の平均粒径とする。無機微粒子の平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、通常0.001μm以上である。
【0011】
第1の層を形成する無機微粒子の形状は球状、棒状、羽毛状等特に限定されるものではないが、球状であることが好ましい。また無機微粒子は、粒径および形状が均一なものを用いることが、ガスバリア性の観点から好ましい。
【0012】
第2の層は、無機層状化合物および樹脂を含む樹脂組成物から形成される。該無機層状化合物としては液体媒体への膨潤性、劈開性を有する無機層状化合物が好ましく用いられ、粘土鉱物がより好ましく用いられる。
本発明で用いる無機層状化合物とは、原料の状態として、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を形成している化合物であり、この原料の状態の構造において第1の層を形成する無機微粒子とは区別される。なお層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス等の弱い結合力によってほぼ平行に積み重なった構造をいう。
無機層状化合物の中でも特に溶媒への膨潤性を持つ粘土鉱物が好ましく用いられる。
【0013】
粘土鉱物は、一般に(i)シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、(ii)シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を両側から挟んでなる3層構造を有するタイプに分類される。(i)の2層構造タイプの粘土鉱物としては、カオリナイト族およびアンチゴライト族等の粘土鉱物が挙げられる。(ii)の3層構造タイプの粘土鉱物としては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、およびマイカ族等の粘土鉱物が挙げられる。
【0014】
これらの粘土鉱物としては、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等が挙げられる。また、これら粘土鉱物を有機化剤でイオン交換等の処理し、分散性等を改良した有機修飾粘土鉱物も、アルカリ金属イオン供与化合物として用いることができる(有機修飾粘土鉱物の種類、製造方法については、例えば前野昌弘、「粘土の科学」、174−181、1993年、日刊工業新聞社を参照)。有機化剤の例としては、ジメチルジステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩やフォスフォニウム塩、イミダゾリウム塩等を挙げることができる。
【0015】
上記粘土鉱物の中でもスメクタイト族、バーミキュライト族およびマイカ族の粘土鉱物が好ましく、スメクタイト族が特に好ましい。スメクタイト族としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライトが挙げられる。本発明における無機層状化合物は、モンモリロナイトであることが最も好ましい。また無機層状化合物として、2種類以上を用いてもよい。
【0016】
第2の層を形成する樹脂組成物に含まれる無機層状化合物のアスペクト比は、200〜10000の範囲であることが好ましく、200〜5000の範囲であることがより好ましい。このようなアスペクト比の無機層状化合物を用いることにより、よりガスバリア性に優れる多層構造体となる。
【0017】
多層構造体のガスバリア性の観点から、第2の層を形成する樹脂組成物に含まれる無機層状化合物の平均粒径は、30μm以下であることが好ましい。また第2の層を後述するように塗工により形成する場合には、製膜性にも優れる。本発明の多層構造体を特に透明性が求められる用途に用いる場合には、該無機層状化合物の平均粒径は1μm以下であることが好ましい。
【0018】
前記した無機層状化合物のアスペクト比(Z)とは、Z=L/aで定義される値である。ここで、Lは無機層状化合物の平均粒径であり、aは、無機層状化合物の単位厚さ、即ち、無機層状化合物の単位結晶層の厚みを示し、粉末X線回析法(「機器分析の手引き(a)」(1985年、化学同人社発行、塩川二朗監修)69頁参照)により求められる。
【0019】
本発明における無機層状化合物の平均粒径とは、液体媒体に無機層状化合物を分散させて、回折/散乱法により求めた粒径(体積基準のメジアン径)である。具体的には、無機層状化合物30gを液体媒体1,500ml中に徐々に加え、分散機(浅田鉄工株式会社製、デスパMH−L、羽根径52mm、回転数3,100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて、周速8.5m/分、23℃で90分間分散させた分散液に光を通過させたときに得られる回折/散乱パターンから、ミー散乱理論等により、上記回折/散乱パターンに最も矛盾のない粒度分布を計算することにより、無機層状化合物の平均粒径を求めることができる。例えば粒度分布の測定範囲を適当な区間に分け、それぞれの区間について、代表粒子径を決定し、本来連続的な量である粒度分布を離散的な量に変換させて計算する方法が挙げられる。本発明では、後述するような、第2の液体媒体、無機層状化合物および樹脂を含む第2の塗工液を塗工することにより第2の層を形成する場合には、該第2の塗工液に含まれる液体媒体と同じ液体媒体に、無機層状化合物を充分に膨潤させ、劈開させて平均粒径を求める。
【0020】
第2の層を形成する樹脂組成物に含まれる無機層状化合物としては、下記の膨潤性試験による膨潤値が5以上のものが好ましく、膨潤値が20以上のものがより好ましい。また、下記の劈開性試験による劈開値が5以上のものが好ましく、劈開値が20以上のものがより好ましい。
【0021】
〔膨潤性試験〕
100mlメスシリンダーに液体媒体100mlを入れ、これに無機層状化合物2gを徐々に加える。23℃にて24時間静置後、上記メスシリンダー内における無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を読む。この数値(膨潤値)が大きい程、膨潤性が高いことを示す。
【0022】
〔劈開性試験〕
無機層状化合物30gを液体媒体1,500ml中に徐々に加え、分散機(浅田鉄工株式会社製、デスパMH−L、羽根径52mm、回転数3,100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて、周速8.5m/分、23℃で90分間分散させた後、この分散液100mlをメスシリンダーに採取する。60分静置後、上記メスシリンダー内における層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を読む。この数値(劈開値)が大きい程、劈開性が高いことを示す。
【0023】
前記膨潤性試験および劈開性試験に用いる液体媒体は、無機層状化合物が親水性の膨潤性粘土鉱物の場合には、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられるが、とりわけ水、アルコール、水−アルコール混合物が好ましい。
無機層状化合物が有機修飾粘土鉱物の場合には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類、クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、メタクリル酸メチル、フタル酸ジオクチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、シリコンオイルなどを液体媒体として用いることができる。
【0024】
本発明における第2の層を形成する樹脂組成物は、樹脂を含む。該樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、多糖類、ポリアクリル酸およびそのエステル類、ウレタン系樹脂を挙げることができる。
水系の液体媒体に容易に溶解させることができ、取り扱いが容易であることや、得られる多層構造体のガスバリア性の観点から、第2の層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂は、水酸基を有する樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、PVA、EVOH、セルロースを挙げることができる。
【0025】
多層構造体のガスバリア性の観点から、第2の層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂は、(i)一分子中に、水酸基、および該水酸基と反応し得る第2の官能基を有する樹脂、あるいは(ii)水酸基を有する樹脂と、水酸基と反応し得る第2の官能基を有する樹脂との混合物であることが好ましい。以下、(i)の場合と(ii)の場合とをあわせて、「水酸基および第2の官能基を有する樹脂成分」と称することがある。
【0026】
前記水酸基と反応し得る第2の官能基はカルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシレート基、アンモニウム基等の極性基であることが好ましく、該水酸基と該第2の官能基同士が共有結合、あるいはイオン結合をし得ることが好ましい。
【0027】
一分子中に水酸基と第2の官能基を含む樹脂としては、ビニルアルコール−アクリル酸共重合体、ビニルアルコール−メタアクリル酸共重合体、ビニルアルコール−ビニルアミン共重合体、アクリル酸−ビニルアミン共重合体、メタアクリル酸−ビニルアミン共重合体等が挙げられる。
【0028】
水酸基と反応し得る第2の官能基を有する樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリビニルアミン、アクリル酸−メタアクリル酸共重合体、ビニルアミン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
第2の層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂が、水酸基を有する樹脂と、水酸基と反応し得る第2の官能基を有する樹脂との混合物である場合には、水酸基を有する樹脂がポリビニルアルコールであり、水酸基と反応し得る第2の官能基を有する樹脂がポリアクリル酸および/またはポリメタアクリル酸であることが好ましい。
【0029】
ポリビニルアルコールとは、ビニルアルコールのモノマー単位を主成分として有するポリマーである。このような「ポリビニルアルコール」としては、例えば、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分を加水分解して得られるポリマー(正確にはビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体となったものや、トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、tert−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体等を加水分解して得られるポリマーが挙げられる(「ポリビニルアルコール」の詳細については、例えば、ポバール会編、「PVAの世界」、1992年、(株)高分子刊行会;長野ら、「ポバール」、1981年、(株)高分子刊行会を参照することができる)。ポリビニルアルコールにおける「けん化」の程度は、70モル%以上が好ましく、85モル%以上のものがより好ましく、98%モル以上のいわゆる完全けん化品がさらに好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、100以上5000以下であることが好ましく、200以上3000以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明におけるポリアクリル酸とは、ポリアクリル酸部分中和物を含む。またポリメタアクリル酸とは、ポリメタアクリル酸部分中和物を含む。ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸の重量平均分子量は、それぞれ2000〜10000000の範囲が好ましく、より好ましくは100000〜5000000である。
【0031】
ポリアクリル酸部分中和物は、通常、ポリアクリル酸の水溶液にアルカリを添加することにより得ることができる。ポリアクリル酸とアルカリの量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。ここでポリアクリル酸の中和度は、下式にて定義される。ポリアクリル酸部分中和物は、多層構造体のガスバリア性や透明性の点から、中和度が0.1%〜20%であることが好ましい。
中和度=(A/B)×100
A:ポリアクリル酸1g中に含まれる中和されたカルボキシル基のモル数
B:ポリアクリル酸1g中に含まれる中和前のカルボキシル基のモル数
また、ポリメタアクリル酸中和物についても同様である。
【0032】
第2の層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂が、水酸基および第2の官能基を有する樹脂成分であり、該第2の官能基がカルボキシル基である場合、該樹脂成分に含まれる水酸基とカルボキシル基のモル比は、水酸基:カルボキシル基=30:70〜95:5であることが好ましく、より好ましくは70:30〜95:5である。また得られる多層構造体の高湿度条件下でのガスバリア性の観点から、該樹脂成分の重量を100%とするとき、該樹脂成分に含まれる水酸基およびカルボキシル基の合計重量は30〜60%であることが好ましく、より好ましくは35〜55%である。
【0033】
前記樹脂成分中の水酸基とカルボキシル基のモル比は、NMR法、IR法等により求めることができる。例えばIR法であれば、水酸基とカルボキシル基のモル比が既知のサンプルを用いて検量線を求め、これを用いて測定サンプルの水酸基とカルボキシル基との個数比を算出することができる。またビニルアルコール単一重合体と、アクリル酸単一重合体および/またはメタアクリル酸単一重合体を用いる場合は、予めその重量から水酸基およびカルボキシル基のモル数を求め、水酸基とカルボキシル基の個数比を算出することができる。また、前記樹脂成分に含まれる水酸基およびカルボキシル基の合計重量測定については、モル比と同様、NMR法、IR法等にて求めることができる。例えばIR法であれば、ポリオールユニット数が既知であるポリオール重合体および、ポリカルボン酸ユニット数が既知であるポリカルボン酸重合体について検量線を求め、これらの検量線を用いて測定サンプルにおける水酸基およびカルボキシル基の合計重量を算出することができる。またビニルアルコール単一重合体と、アクリル酸単一重合体および/またはメタアクリル酸単一重合体を用いる場合は、予めその重量から水酸基およびカルボキシル基の重量を求め、この合計量を求めることができる。
【0034】
第2の層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂が水酸基および第2の官能基を有する樹脂成分であり、該第2の官能基がカルボキシル基である場合、多層構造体の耐水性の点から、第2の層がアルカリ金属イオンを含むことが好ましい。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。第2の層に含まれるアルカリ金属イオンの重量は、該第2の層に含まれる樹脂の重量を100部とするとき、該樹脂100重量部に対し0.2〜5部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜2%部である。
【0035】
前記アルカリ金属イオンは、通常、アルカリ金属イオン供与化合物に由来する。すなわち第2の層に含まれる樹脂が水酸基および第2の官能基を有する樹脂成分であり、該第2の官能基がカルボキシル基である場合、第2の層はアルカリ金属イオン供与化合物を含むことが好ましい。アルカリ金属イオン供与化合物としては、水酸化ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等が挙げられる。また、第2の層に含まれる無機層状化合物がモンモリロナイトである場合には、該モンモリロナイトの層間にナトリウムイオンが含まれるため、モンモリロナイトがアルカリ金属イオン供与化合物として作用する。したがって、第2の層に含まれる無機層状化合物はモンモリロナイトであることがとりわけ好ましい。また2種類以上のアルカリ金属イオン供与化合物を併用してもよい。
【0036】
第2の層を形成する樹脂組成物における無機層状化合物と樹脂の割合は、該無機層状化合物と樹脂の体積の合計を100%とするとき、無機層状化合物の割合が5〜95%であることが好ましく、5〜50%であることがさらに好ましく、10〜50%であることがより好ましく、20〜50%であることが最も好ましい。樹脂の割合は、5〜95%であることが好ましく、50〜95%であることがさらに好ましく、50〜90%であることがより好ましく、50〜80%であることが最も好ましい。
【0037】
基材を構成する材料は特に限定されるものではなく、金属や、樹脂、木材、セラミック、ガラス等が挙げられる。また基材の形態も特に限定されるものではなく、紙や、布、不織布、フィルム等が挙げられる。樹脂としては熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。包装材料として用いる積層体の製造には、熱可塑性樹脂から構成される基材を使用することが好ましい。用いられる熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、ポリオレフィン系アイオノマー樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン−6(Ny−6)、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体、ポリメチルメタクリルイミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6−Ny)等のアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスチレン単独重合体;ポリアクリロニトリル単独重合体;スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等のスチレン−アクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース等の疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、セルロース誘導体等の樹脂単位重量あたりの水酸基の重量分率が20〜60%の割合を満たす水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂等があげられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。積層フィルムを製造する場合には、基材は無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよいが、特にポリプロピレン、ポリエステル樹脂、アミド系樹脂のいずれかからなる二軸延伸フィルム、あるいは2種類以上の二軸延伸フィルムが積層された積層体であることが好ましい。また基材はNy−6/MXD6−Ny/Ny−6やPP/EVOH/PPのような多層フィルムであってもよく、アルミニウム、アルミナ、シリカなどの無機物が蒸着されたフィルムであってもよい。
【0038】
本発明の多層構造体は、前記した基材、無機微粒子から形成される第1の層、無機層状化合物および樹脂を含む樹脂組成物から形成される第2の層を有し、第1の層と第2の層とが隣接して積層され、前記基材と第2の層との間に第1の層が配されてなる。基材と第1の層とは隣接していてもよく、接着層等の他の層を介して積層されていてもよい。第1の層は、基材の片面あるいは両面に設けられていてもよく、基材表面の一部あるいは全面に設けられていてもよい。
【0039】
基材/第1の層/第2の層 のような構成の本発明の多層構造体と、基材/第2の層/第1の層 のような構成の多層構造体とは、理論的には同じガスバリア性を示すはずである。しかしながら実際には、本発明のような構成とすることにより、ガスバリア性に優れる多層構造体となることを見出したものである。
【0040】
本発明の多層構造体は、第1の層、第2の層、基材以外の層を有していてもよく、第1の層、第2の層と同じ組成の層をそれぞれ複数層有していてもよい。本発明の多層構造体の構成としては、例えば
基材/第1の層/第2の層(構成1)、
基材/第1の層/第2の層/追加層A(構成2)、
基材/第1の層/第2の層/追加層B/追加層C(構成3)、
基材/第1の層/第2の層/追加層D/追加層E/追加層F(構成4)、
基材/第1の層/第2の層/樹脂層(構成5)、
基材/第1の層/第2の層/追加層B/追加層C/樹脂層(構成6)、
基材/第1の層/第2の層/追加層D/追加層E/追加層F/樹脂層(構成7)
基材/追加層G/第1の層/第2の層(構成8)
基材/追加層G/第1の層/第2の層/追加層A(構成9)、
基材/追加層G/第1の層/第2の層/追加層B/追加層C(構成10)、
基材/追加層G/第1の層/第2の層/追加層D/追加層E/追加層F(構成11)、
基材/追加層G/第1の層/第2の層/樹脂層(構成12)、
基材/追加層G/第1の層/第2の層/追加層B/追加層C/樹脂層(構成13)、
基材/追加層G/第1の層/第2の層/追加層D/追加層E/追加層F/樹脂層(構成14)
が挙げられる。
ここで追加層A、B、C、D、E、F、Gは、それぞれ第1の層または第2の層と同じ組成であってもよい。例えば構成2あるいは構成9において追加層Aが第1の層と同じ組成であってもよく、構成3、構成6、構成10あるいは構成13において追加層Bが第1の層と、追加層Cが第2の層と同じ組成であってもよい。また構成4、構成7、構成11あるいは構成14において追加層DおよびFが第1の層と同じ組成であり、追加層Eが第2の層と同じ組成であってもよい。また構成8〜構成14の追加層Gについても同様に、第2の層と同じ組成であってもよい。
【0041】
本発明の多層構造体の製造方法としては、以下の工程(1)、(2)を順に含む方法が挙げられる。
(1)無機微粒子および第1の液体媒体を含む第1の塗工液を基材上に塗工し、次いで第1の液体媒体を除去して、無機微粒子からなる第1の層を形成する工程
(2)樹脂、無機層状化合物および第2の液体媒体を含む第2の塗工液を、前記第1の層上に塗工し、次いで第2の液体媒体を除去して、無機層状化合物および樹脂を含む樹脂組成物からなる第2の層を前記第1の層上に形成する工程
【0042】
第1の塗工液は、無機微粒子および第1の液体媒体を含む。第1の塗工液は、以下のような方法で調整することができる。無機微粒子を第1の液体媒体中に添加し、分散させる方法、第1の液体媒体中で粒成長させて無機微粒子を含有する第1の塗工液を調製する方法などが挙げられる。
【0043】
より均一な分散を達成するために、第1の塗工液中で無機微粒子はコロイド状態であることが好ましい。第1の塗工液中の無機微粒子がコロイダルアルミナである場合には、陽性に帯電するアルミナ粒子を安定化させるため、コロイダルアルミナ中に塩素イオン、硫酸イオン、酢酸イオンなどの陰イオンを対アニオンとして添加することが好ましい。コロイダルアルミナのpHは特に限定されるものではないが、第1の塗工液の安定性の観点からpH2〜6であることが好ましい。
【0044】
第1の塗工液中の無機微粒子がコロイダルシリカである場合には、陰性に帯電するシリカ粒子を安定化させるため、コロイダルシリカ中にアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンなどの陽イオンを対カチオンとして添加することが好ましい。コロイダルシリカのpHは特に限定されるものではないが、第1の塗工液の安定性の観点からpH8〜11であることが好ましい。
【0045】
第1の塗工液のpHを調製する方法としては、公知の方法を用いることができるが、塩酸や水酸化ナトリウム等の強酸性あるいは強塩基性添加剤を添加する方法、イオン交換樹脂を用いる方法が好ましい。
【0046】
第2の塗工液は、樹脂、無機層状化合物および第2の液体媒体を含む。第2の塗工液は、以下のような方法で調整することができる。例えば樹脂を液体媒体に溶解させてなる樹脂溶液と、無機層状化合物を予め液体媒体に膨潤し劈開させた無機層状化合物の分散液とを混合する方法、無機層状化合物を予め液体媒体に膨潤し劈開させた無機層状化合物の分散液に樹脂を直接混合する方法、樹脂溶液と無機層状化合物とを混合する方法があげられる。第2の塗工液を調製する際には、樹脂と無機層状化合物とを含む液に後述するような高圧分散処理してもよいし、予め高圧分散処理した無機層状化合物の分散液と、樹脂とを前記した方法で混合してもよい。
【0047】
第2の塗工液は、pHが2〜14であることが好ましく、2〜5または7〜14であることがより好ましく、3〜5または7〜12であることがさらに好ましく、3〜5または8〜11であることが最も好ましい。該第2の塗工液として、このようなpHの塗工液を用いることにより、よりガスバリア性に優れる多層構造体を得ることができる。
第2の塗工液のpHを調製する方法としては、公知の方法を用いることができるが、塩酸や水酸化ナトリウム等の強酸性あるいは強塩基性添加剤を添加する方法、イオン交換樹脂を用いる方法が好ましい。
【0048】
第2の塗工液に含まれる樹脂が、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基等の架橋性反応基を有する樹脂である場合には、該第2の塗工液に架橋剤を添加してもよい。用いられる架橋剤としては、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、メラミン系カップリング剤、エポキシ系カップリング剤、イソシアネート系カップリング剤、カルボジイミド系カップリング剤、銅化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これら架橋剤は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
架橋剤を第2の塗工液に添加する場合には、通常架橋剤を予めアルコール類等の溶媒に10〜90重量%溶解させた架橋剤溶液を、無機層状化合物及び樹脂を含む塗工液に添加する方法によって調整される。
架橋剤にキレート化合物を用いる場合には、架橋剤を混合した後の塗工液の安定性の観点から、該塗工液が酸性であることが好ましい。
【0050】
第1の塗工液および/または第2の塗工液には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤を含有する第1の塗工液および/または第2の塗工液を塗工して層を形成することにより、該層と、それに隣接する層との密着性を向上させることができる。界面活性剤の含有量は、通常、塗工液の重量を100%とするとき0.001〜5重量%である。
【0051】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤など、公知の界面活性剤を用いることができる。とりわけ炭素原子数6以上、24以下のアルキル鎖を有するカルボン酸のアルカリ金属塩、ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体等のエーテル型の非イオン性界面活性剤(シリコーン系非イオン性界面活性剤)や、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド化合物等のフッ素型非イオン性界面活性剤(フッ素系非イオン性界面活性剤)を使用することが、層同士の密着性向上の観点から好ましい。
【0052】
第1の塗工液や第2の塗工液を調整する際には、無機層状化合物や無機微粒子の分散性の観点から、高圧分散装置を用いて高圧分散処理することが好ましい。高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation 社製超高圧ホモジナイザー(商品名:マイクロフルイダイザー)、ナノマイザー社製ナノマイザー、マントンゴーリン型高圧分散装置、イズミフードマシナリ製ホモゲナイザーが挙げられる。高圧分散処理とは、塗工液を複数本の細管中に高速通過させた後に合流させて、塗工液同士あるいは該塗工液と細管内壁とを衝突させることにより、塗工液に高剪断および/または高圧を付加する処理方法である。高圧分散処理では、塗工液を管径1μm〜1000μm程度の細管中に通過させ、このとき100kgf/cm2以上の最大圧力が印加されるように処理することが好ましい。最大圧力は500kgf/cm2以上であることがより好ましく、1000kgf/cm2以上であることが特に好ましい。また塗工液が細管内を通過する際、該塗工液の最高到達速度は100m/s以上であることが好ましく、圧力損失による伝熱速度は100kcal/hr以上であることが好ましい。
【0053】
第2の塗工液中の無機層状化合物と樹脂の割合は、無機層状化合物と樹脂の体積の合計を100%とするとき、無機層状化合物の割合が5〜95%であることが好ましく、5〜50%であることがさらに好ましく、10〜50%であることがより好ましく、20〜50%であることが最も好ましい。樹脂の割合は、5〜95%であることが好ましく、50〜95%であることがさらに好ましく、50〜90%であることがより好ましく、50〜80%であることが最も好ましい。通常第2の層は、第2の液体媒体が完全に除去されて形成される。よって、第2の塗工液中の、無機層状化合物および樹脂の体積の合計を100%としたときの無機層状化合物および樹脂の割合を、それぞれ第2の層における無機層状化合物および樹脂の割合と見なすことができる。塗工液に界面活性剤や架橋材が含まれる場合、通常これらは少量であるので、第2の層の体積は、無機層状化合物および樹脂の合計体積とみなす。使用する第2の塗工液中の無機層状化合物の割合を調整することにより、第2の層における無機層状化合物と樹脂の割合を制御することができる。
【0054】
基材には、これを他の層と積層するにあたり、コロナ処理、オゾン処理、イオン処理、シラン等のガスを用いたフレーム処理、常圧または減圧プラズマ処理等の表面処理を予め施していてもよい。また、基材表面にアンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層は、公知のエチレンイミン系、2液硬化型ウレタン系のアンカーコート剤等を用いて形成することができる。
【0055】
アンカーコート層、第1の層、第2の層を塗工により設ける場合には、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法等のグラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、ドクターナイフ法、ダイコート法、バーコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法などを適用することができる。また前記した追加層や樹脂層も、同様の方法により設けることができる。多層構造体がフィルムである場合には、均一な厚みの層を設けるためにはグラビア法を採用することが好ましい。
【0056】
本発明の多層構造体を構成する各層の厚みは特に限定されるものではない。第1の層および第2の層の厚みは、ガスバリア性およびコストの観点から通常1nm〜10μmであり、1nm〜5μmであることが好ましい。本発明の多層構造体は、第1の層および第2の層の厚みが前記したように薄い場合でも、充分なガスバリア性を備えるものである。耐屈曲性の観点から、第1の層の厚みは第2の層の厚みと同等、あるいは第2の層よりも薄いことが好ましい。前記した追加層や樹脂層の厚みも通常1nm〜10μmである。基材上にアンカーコート層を有する場合には、アンカーコート層の厚みは通常0.01〜5μmである。
【0057】
本発明の多層構造体を構成する各層は、本発明の効果を損なわない程度に、必要に応じて紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0058】
本発明の多層構造体は、使用前に予め100℃以上300℃以下、水蒸気濃度が50g/m3未満の雰囲気下で乾熱処理することがガスバリア性向上の観点から好ましい。乾熱処理する時間は通常1秒間〜1時間である。乾熱処理時の水蒸気濃度は、好ましくは0〜40g/m3である。乾熱処理に用いる熱源は特に限定されるものではなく、熱ロール接触、熱媒接触(空気等)、赤外線加熱、マイクロ波加熱等、種々の方法を適用することができる。
【0059】
また本発明の多層構造体において、第2の層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂が、水酸基およびカルボキシル基を含む樹脂成分である場合は、前記乾熱処理後に湿熱処理を行い、さらに乾燥処理することが好ましい。該湿熱処理とは、100℃以上の温度で水蒸気濃度が290g/m3超の雰囲気下または80℃以上の水中で保持する処理である。湿熱処理する時間は、通常1秒間〜1時間である。100℃以上の温度で水蒸気濃度が290g/m3超の雰囲気下での処理の場合、温度は120〜200℃の範囲内が好ましく、水蒸気濃度は500〜20000g/m3の範囲内が好ましい。湿熱処理する時間は、通常1秒間〜1時間である。湿熱処理後の乾燥処理とは、湿熱処理により多層構造体に与えられた湿気を除去する処理である。通常、湿度50%RH以下、温度20〜100℃で1秒間〜24時間エージングすればよい。乾熱処理した多層構造体を湿熱処理する前に、例えば23℃50%RH条件下でエージングしてもよい。
【0060】
本発明にかかる多層構造体は、第1の層に起因する酸素透過度が、23℃、90%RHの条件下で10cc/m2・day・atm以下であることが好ましく、7cc/m2・day・atm以下であることがより好ましく、5cc/m2・day・atm以下であることがさらに好ましく、2cc/m2・day・atm以下であることがさらに好ましい。本発明の多層構造体は基材、第1の層、第2の層を有する。該第1の層に起因する酸素透過度は、該多層構造体の酸素透過度と、基材層および第2の層からなる積層体の酸素透過度から、以下の式により求めることができる。
1/P=(1/P1)+(1/P2)
P :多層構造体の酸素透過度(cc/m2・day・atm)
P1:第1の層の酸素透過度(cc/m2・day・atm)
P2:基材および第2の層からなる積層体の酸素透過度(cc/m2・day・atm)
具体的には、基材、第1の層および第2の層からなる本発明における多層構造体を調製し、酸素透過度を測定する。次に基材および第2の層からなる積層体を調製し、同じく酸素透過度を測定する。最後に上記式を用い、第1の層に起因する酸素透過度を算出する。
【0061】
本発明で得られる多層構造体としては、タイヤやねじ、液晶ディスプレイ用、有機EL用などフレキシブルディスプレイ用基板あるいは封止材といった光学部品部材、太陽電池あるいは色素増感太陽電池などの基板、封止材のような電子部品部材等が挙げられる。例えば金属製ねじに第1の層および第2の層を積層して得られる被覆ねじは、酸素により劣化されにくい。このように、第1の層および第2の層を有さない従来の各種製品に第1の層および第2の層を積層して本発明の多層構造体とすることにより、従来酸素による劣化が問題となっていた製品の酸素劣化を抑制することができる。また真空断熱材パネルとして使用することもできる。
また本発明の多層構造体を包装材料として用いることにより、該包装材料で包装された内容物の酸素劣化を防ぐことができる。本発明の多層構造体を包装材料として用いる場合、その形状としては、フィルム、袋、パウチ、ボトル、ボトルキャップ、カートン容器、カップ、皿、トレー、タンク、チューブ等が挙げられる。本発明の多層構造体は、レトルト後バリア性に優れることから、特にレトルト用包装材料として好ましく用いられる。本発明の多層構造体により包装される内容物としては、ケーキ、カステラ等の洋菓子、大福、もち等の和菓子、ポテトチップス等のスナック菓子等の菓子類、竹輪や蒲鉾等の水産加工品、味噌、漬物、蒟蒻、ミートボール、ハンバーグ、ハム・ソーセージ等の食品、コーヒー、茶、ジュース等の飲料品、牛乳、ヨーグルト等の乳製品、米飯、カレー等が例示される。また食料品以外に、洗剤、入浴剤、化粧品といったトイレタリー製品、ガソリン、水素ガス等の燃料、粉末剤、錠剤、点眼薬、輸液バック等の医薬品および医療機器、ハードディスク、シリコンウエハ等の電子部品および電子機器等の包装材料としても用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各種物性の測定方法を以下に記す。
【0063】
〔厚み測定〕
0.5μm以上の厚みは、市販のデジタル厚み計(接触式厚み計、商品名:超高精度デシマイクロヘッド MH−15M、日本光学社製)を用いて測定した。0.5μm未満の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)の表面観察より求めた。
【0064】
〔粒径測定〕
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA910、堀場製作所(株)製)を用いて測定した。後述する塗工液(1)、(2)、(4)、(5)中の無機層状化合物の平均粒径をペーストセルにて光路長50μmで測定し、さらに該無機層状化合物のみの希釈液中の平均粒径をフローセル法にて光路長4mmで測定した。いずれの場合も平均粒径の値は変わらず、塗工液中で無機層状化合物が充分に膨潤し劈開していることを確認した。この値を、各塗工液を用いて形成される層における無機層状化合物の平均粒径Lとみなした。
また無機微粒子の粒径は、後述する塗工液(6)を乾燥させ、SEM観察によりその長径を測定した。
【0065】
〔アスペクト比計算〕
X線回折装置(XD−5A、(株)島津製作所製)を用い、無機層状化合物の回折測定を粉末法により行い、無機層状化合物の単位厚さaを求めた。上述の方法で求めた平均粒径Lを用いて、該無機層状化合物のアスペクト比Zを、Z=L/aの式により算出した。なお塗工液を乾燥したものについてもX線回折測定を行い、無機層状化合物の面間隔が広がっていることを確認した。
また無機微粒子のアスペクト比は後述する塗工液(6)を乾燥させ、SEM観察によりその長径および短径の比を算出した。
【0066】
〔乾熱処理〕
210mm×300mmの積層体を、150℃、水蒸気濃度5g/m3のオーブン中で60分間熱処理した。
【0067】
〔湿熱処理〕
小型レトルト高圧蒸気滅菌器(アルプ(株)社製 RK-3030)を用いて、210mm×300mmの積層体を120℃で所定時間、水蒸気雰囲気下で湿熱処理した。水蒸気濃度は1113g/m3であった。
【0068】
〔乾燥処理〕
210mm×300mmの積層体を、23℃50%RH雰囲気下で24時間静置した。
【0069】
〔酸素透過度測定〕
JIS K7126に基づき、超高感度酸素透過度測定装置(OX−TRANML、MOCON社製)にて、23℃90%RHの条件下で測定を行った。
【0070】
〔塗工液の作製〕
塗工液(1)の作製
分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1300gと、ポリビニルアルコール(PVA117H;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%、重合度1,700)130gとを混合し、低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で95℃に昇温した。該混合系を同温度で30分間攪拌してポリビニルアルコールを溶解させたのち、60℃に冷却し、ポリビニルアルコール水溶液を得た。該ポリビニルアルコール水溶液(60℃)を前記同様の条件で攪拌しながら、1−ブタノール122g、イソプロピルアルコール122gおよびイオン交換水520gを混合してなるアルコール水溶液を5分間かけて滴下した。滴下終了後、高速攪拌(3,000rpm、周速度=8.2m/分)に切り替え、該攪拌系に高純度モンモリロナイト(商品名:クニピアG;クニミネ工業(株)製)65gを徐々に加え、添加終了後、60℃で60分間攪拌を続けた。その後、さらにイソプロパノール243gを15分間かけて加え、次いで該混合系を室温まで冷却し、さらに非イオン性界面活性剤(ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体、商品名:SH3746、東レ・ダウコーニング(株)製)0.1重量%(前記含有液の重量を基準とする)を添加し、無機層状化合物分散液(A)を得た。さらにこの無機層状化合物分散液(A)を高圧分散装置(商品名:超高圧ホモジナイザーM110−E/H、Microfluidics Corporation 製)を用いて、1100kgf/cm2の条件で処理し、無機層状化合物分散液(B)を得た。無機層状化合物分散液(B)中の劈開したモンモリロナイト平均粒径は560nm、粉末X線回折から得られるa値は1.2156nmであり、アスペクト比は460であった。また、無機層状化合物分散液(B)のpHは8であった。
上記の無機層状化合物分散液(B)を、低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)において、系のpHが8となるように水酸化ナトリウムで調整しながら徐々に添加することにより、塗工液(1)を調製した。塗工液(1)中のポリビニルアルコールと無機層状化合物の合計体積を100%としたとき、無機層状化合物の割合は20vol%であった。
【0071】
塗工液(2)の作製
水酸化ナトリウムのかわりに塩酸を用いて第1の分散液のpHを3としたこと以外は、塗工液(1)と同様にして、塗工液(2)を作製した。
【0072】
塗工液(3)の作製
高純度モンモリロナイト65gのかわりにポリビニルアルコール130gとしたこと以外は塗工液(2)と同様にして、塗工液(3)を作製した。
【0073】
塗工液(4)の作製
水酸化ナトリウムを用いなかったこと以外は塗工液(1)と同様にして、塗工液(4)を作製した。該塗工液(4)のpHは6であった。
【0074】
塗工液(5)の作製
高純度モンモリロナイト82gとしたこと以外は無機層状化合物分散液(A)と同様にして、無機層状化合物分散液(C)を作製した。
またさらに別の分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率0.7μs/cm以下)1067gと、ポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製、平均分子量100,0000)33gとを混合し、常温にて低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)で樹脂成分溶液を作製した。
無機層状化合物分散液(C)2519gと樹脂成分溶液1100gを、低速撹拌下(1500rpm、周速度4.1m/分)において徐々に混合して混合液とし、さらに該混合液を高圧分散装置を用いて、1100kgf/cm2の条件で処理することにより、無機層状化合物分散液(D)を得た。該無機層状化合物分散液(D)のpHは6であった。
その後該無機層状化合物分散液(D)をpHが8となるようにイオン交換樹脂で調整し、塗工液(5)を得た。塗工液(5)中のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸と無機層状化合物の合計体積を100%としたとき、無機層状化合物の割合は20vol%であった。
【0075】
塗工液(6)の作製
攪拌機にて、室温下、アルミナゾル(商品名:アルミナゾル−520、日産化学工業(株)製)8000gを高速攪拌(3,000rpm、周速度=8.2m/分)のもと、該攪拌系にイソプロパノール1000gを徐々に加え、添加終了後、室温下にて60分間攪拌を続け、塗工液(6)を調製した。粒径測定を行ったところ、平均粒径は0.02μm、アスペクト比は1、すなわち球状であった。
【0076】
〔実施例1〕
厚さ15μmの二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム(商品名:ON-U;ユニチカ(株)製)の片面にコロナ処理したものを基材とし、該基材のコロナ処理面に、前述の塗工液(2)をテストコーター(康井精機製)を用いてマイクログラビア塗工法(グラビアロールの線数 300)により、塗工速度3m/分でグラビア塗工して乾燥温度100℃で乾燥し、無機層状化合物および樹脂を含む下地層を形成した(以下、該下地層をA1層と称する。)次にA1層上に、塗工液(6)を塗工液(2)と同様の方法で塗工して乾燥し、金属分散液を用いて形成される第1の層を形成した。(以下、該第1の層をB1層と称する。)さらに前記B1層上に塗工液(1)を先と同様の方法で塗工して乾燥し、第2の層を形成した。(以下、該第2の層をC1層と称する。)このようにして、基材を含めて4層(基材/A1層/B1層/C1層)の多層構造体を得た。該多層構造体における乾燥後のA1層/B1層/C1層(以下、塗工層と称する。)の合計厚みは0.12μmであった。層の厚みはそれぞれA1層0.04μm、B1層0.04μm、C1層0.04μmであった。
A1層、C1層の各層における無機層状化合物の割合は、それぞれ用いた塗工液(1)、塗工液(2)中の樹脂と無機層状化合物の合計体積に占める無機層状化合物の割合と等しいとみなすことができ、20vol%である。またB1層における無機微粒子の割合は100vol%である。
得られた多層構造体を乾熱処理した後、さらに乾燥処理を行った。その後該多層構造体の酸素透過度を測定した。結果を表2に示した。
【0077】
〔実施例2〕
C1層を形成する塗工液(1)のかわりに塗工液(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして多層構造体を得た。該多層構造体における乾燥後のA1層/B1層/A2層(以下、塗工層と称する。)の合計厚みは0.12μmであった。層の厚みはそれぞれA1層0.04μm、B1層0.04μm、A2層0.04μmであった。
得られた多層構造体を乾熱処理した後、さらに乾燥処理を行った。その後該多層構造体の酸素透過度を測定した。結果を表2に示した。
【0078】
〔実施例3〕
A1層を形成する塗工液(2)のかわりに塗工液(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして多層構造体を得た。該多層構造体における乾燥後のD1層/B1層/C1層(以下、塗工層と称する。)の合計厚みは0.12μmであった。層の厚みはそれぞれD1層0.04μm、B1層0.04μm、C1層0.04μmであった。
得られた多層構造体を乾熱処理した後、さらに乾燥処理を行った。その後該多層構造体の酸素透過度を測定した。結果を表2に示した。
【0079】
〔実施例4〕
C1層を形成する塗工液(1)のかわりに塗工液(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして多層構造体を得た。該多層構造体における乾燥後のA1層/B1層/E1層(以下、塗工層と称する。)の合計厚みは0.12μmであった。層の厚みはそれぞれA1層0.04μm、B1層0.04μm、E1層0.04μmであった。
得られた多層構造体を乾熱処理した後、さらに乾燥処理を行った。その後該多層構造体の酸素透過度を測定した。結果を表2に示した。
【0080】
〔実施例5〕
A1層を形成する塗工液(2)およびC1層を形成する塗工液(1)のかわりに塗工液(5)を用いた以外は、実施例1と同様にして多層構造体を得た。該多層構造体における乾燥後のF1層/B1層/F2層(以下、塗工層と称する。)の合計厚みは0.12μmであった。層の厚みはそれぞれF1層0.04μm、B1層0.04μm、F2層0.04μmであった。
得られた多層構造体を乾熱処理した後、23℃50%RH雰囲気下で24時間エージングした。次いで前記多層構造体に60分間湿熱処理を行い、さらに乾燥処理を行った。その後該多層構造体の酸素透過度を測定した。結果を表2に示した。
【0081】
〔比較例1〕
B1層を形成する塗工液(6)のかわりに塗工液(1)を、C1層を形成する塗工液(1)のかわりに塗工液(6)を用いた以外は、実施例1と同様にして多層構造体を得た。該多層構造体における乾燥後のA1層/C1層/B1層(以下、塗工層と称する。)の合計厚みは0.12μmであった。層の厚みはそれぞれA1層0.04μm、C1層0.04μm、B1層0.04μmであった。
得られた多層構造体を熱処理した後、さらに乾燥処理を行った。その後該多層構造体の酸素透過度を測定した。結果を表2に示した。
【0082】
〔比較例2〕
A1層を形成する塗工液(2)およびC1層を形成する塗工液(1)のかわりに塗工液(6)を用いた以外は、実施例1と同様にして多層構造体を得た。該多層構造体における乾燥後のB1層/B2層/B3層(以下、塗工層と称する。)の合計厚みは0.12μmであった。
得られた多層構造体を熱処理した後、さらに乾燥処理を行った。その後該多層構造体の酸素透過度を測定した。結果を表2に示した。
【0083】
基材/第1の層/第2の層 のような構成の本発明の多層構造体と、基材/第2の層/第1の層 のような構成の多層構造体とは、理論的には同じガスバリア性を示すはずである。しかしながら実際には、基材/第1の層/第2の層 の順に積層された本発明の多層構造体は、基材/第2の層/第1の層 の順に積層された多層構造体よりもガスバリア性に優れるものである。このことを、実施例1、比較例1および下記の参考例を用いて以下に説明する。なお、基材自体の酸素透過度は68.2cc/m2・day・atmと高いため、以下の説明では、多層構造体の酸素透過度における基材の寄与を考慮せず、多層構造体の酸素透過度を塗工層の酸素透過度と見なした。
【0084】
〔参考例〕
A1層を形成する塗工液(2)とB1層を形成する塗工液(6)のかわりに塗工液(1)を用いた以外は、実施例1と同様にして得た多層構造体(構成:基材/C1/C2/C3)の酸素透過度は20.7cc/m2・day・atmであり、またC1/C2/C3層の合計厚みは0.12μmであった。またB1層を形成する塗工液(6)とC1層を形成する塗工液(1)のかわりに塗工液(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして得た多層構造体の酸素透過度は39.3cc/m2・day・atmであり、またA1/A2/A3層の合計厚みは0.12μmであった。すなわち同条件で塗工したC1層、A1層の厚みはいずれも0.04μmであり、それぞれの酸素透過度PcおよびPaは、ガスバリア層の厚みに反比例することから、それぞれ62.1cc/m2・day・atm、117.9cc/m2・day・atmと算出できる。
一般にn層からなる多層構造体の酸素透過度は(式1)で表すことができる。前記参考例から求められたA1層の酸素透過度Pa=117.9、C1層の酸素透過度Pc=62.1、実施例1における多層構造体の酸素透過度P=0.5を式1に代入することにより、実施例1におけるB1層の酸素透過度は、0.51cc/m2・day・atmと算出できる。
(式3)
1/P=1/(Σ(1/Pn)
P:多層構造体の酸素透過度(cc/m2・day・atm)
Pn:第n番目の層の酸素透過度(cc/m2・day・atm)

また同様に前記Pa、Pcおよび比較例1における多層構造体の酸素透過度P=30.8cc/m2・day・atmを式3に代入することにより、比較例1におけるB1層の酸素透過度は、126.86cc/m2・day・atmと算出できる。
前述したが、本発明の多層構造体は、第1の層と第2の層とが隣接して積層され、かつ、基材と第2の層との間に、第1の層が配されてなる構成である。基材/第1の層/第2の層 のような構成の本発明の多層構造体と、基材/第2の層/第1の層 のような構成の多層構造体とは、理論的には同じガスバリア性を示すはずである。しかしながら実際には、本発明のような構成とすることにより、第1の層の酸素透過度は低い値となり、本願発明のような構成の多層構造体とすることによって、ガスバリア性に優れる多層構造体となることがわかる。
また基材/E1層/E2層/E3層からなる多層構造体、基材/D1層/D2層/D3層からなる多層構造体、および基材/F1層/F2層/F3層からなる多層構造体を作製したところ、E1層/E2層/E3層、D1層/D2層/D3層およびF1層/F2層/F3層の厚みはいずれも0.12μmであり、該多層構造体の酸素透過度はそれぞれ31.4cc/m2・day・atm、50cc/m2・day・atm、および10.5cc/m2・day・atmであった。
実施例2〜5および比較例2について、該参考例と同様に計算して、多層構造体のB1層の酸素透過度を求めた結果を表2に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、第1の層および第2の層の少なくとも3層からなる多層構造体において、前記第1の層が無機微粒子から形成される層であり、前記第2の層が無機層状化合物および樹脂を含む樹脂組成物から形成される層であって、かつ前記第1の層と第2の層とが隣接して積層され、前記基材と第2の層との間に第1の層が配されてなることを特徴とする多層構造体。
【請求項2】
前記第1の層を形成する無機微粒子の平均粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
前記第1の層を形成する無機微粒子が、アルミニウムおよび/または酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記第2の層を形成する樹脂組成物における無機層状化合物と樹脂の体積の合計を100%とするとき、該無機層状化合物の割合が5〜95%であり、樹脂の割合が5〜95%であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の多層構造体。
【請求項5】
前記第2の層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂が、水酸基を有する樹脂であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の多層構造体。
【請求項6】
基材、第1の層および第2の層の少なくとも3層からなる多層構造体の製造方法において、以下の工程(1)、(2)を順に含むことを特徴とする多層構造体の製造方法。
(1)無機微粒子および第1の液体媒体を含む第1の塗工液を基材上に塗工し、次いで第1の液体媒体を除去して、無機微粒子からなる第1の層を形成する工程
(2)樹脂、無機層状化合物および第2の液体媒体を含む第2の塗工液を、前記第1の層上に塗工し、次いで第2の液体媒体を除去して、無機層状化合物および樹脂を含む樹脂組成物からなる第2の層を前記第1の層上に形成する工程

【公開番号】特開2008−200976(P2008−200976A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39067(P2007−39067)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】