説明

多層構造体における対象の層の厚さを求めるのに使用されるシステムおよび方法

【課題】多層構造体の層の厚さを求めるシステムを提供する。
【解決手段】多層構造体の第1の面に接触して配置されるように構成された第1の電極122と、多層構造体の第2の面に接触して配置されるように構成された第2の電極124であって、第2の面が第1の面の反対側にある第2の電極124と、第1の電極を、多層構造体に対して所定のサンプリング圧力で実質的に押しつけるように構成された圧力制御デバイス144であって、サンプリング圧力が、試料の電気インピーダンスが試料に関連した基準インピーダンスを追跡する圧力である圧力制御デバイス144と、第1の電極122および第2の電極124に電気的に結合された測定デバイス160であって、第1の電極と第2の電極の間の電気インピーダンスを測定するように構成された測定デバイスとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される内容は、一般に構造測定に関し、より具体的には、多層構造体における対象の層の厚さを求めるのに使用されるシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくともいくつかの既知の測定システムは、電極を使用して、構造体の2つの表面間のインピーダンスを求める。電極は、銀ペーストなどの導電性接触媒体を用いて、構造体に電気的に結合される。特に、銀ペーストのような媒体を用いると、安定したインピーダンス測定が達成され得るまでにかなりの遅れが生じる可能性がある。さらに、測定して電極が除去された後に、残留の銀ペーストを構造体から洗浄しなければならない。したがって、このような測定システムは、かなりの時間と人件費を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7584669号公報
【発明の概要】
【0004】
一態様では、多層構造体における対象の層の厚さを求めるためのシステムが提供される。このシステムは、試料接触部材を含む。試料接触部材は、多層構造体の第1の面に接触して配置されるように構成された第1の試料接触面を有する第1の電極を含む。このシステムは、多層構造体の第2の面に接触して配置されるように構成された第2の試料接触面を有する第2の電極も含む。第2の面は、第1の面の反対側にある。このシステムは、第1の電極を、多層構造体に対して所定のサンプリング圧力で実質的に押しつけるように構成された圧力制御デバイスをさらに含む。サンプリング圧力は、試料の電気インピーダンスが試料に関連した基準インピーダンスを追跡する圧力である。このシステムは、第1の電極および第2の電極に電気的に結合された測定デバイスも含む。測定デバイスは、第1の電極と第2の電極の間の電気インピーダンスを測定するように構成される。
【0005】
別の態様では、多層構造体における対象の層の厚さを求めるためのデバイスが提供される。このデバイスは、試料接触部材および試料接触部材に結合された力印加デバイスを含む。試料接触部材は、試料接触面および試料接触面の反対側の力印加面を有する電極を含む。試料接触面は、多層構造体の表面に接触して配置されるように構成される。試料接触部材は、多層構造体の温度を調節するように構成された温度調節要素も含む。力印加デバイスは、電極の力印加面に力を印加するように構成される。
【0006】
さらに別の態様では、多層構造体における対象の層の厚さを求める方法が提供される。この方法は、多層構造体の第1の面に接触する第1の電極を位置決めするステップを含む。第2の電極は、多層構造体の第2の面に接触して配置される。第2の面は、第1の面の実質的に反対側にある。第1の電極は、多層構造体に対して所定のサンプリング圧力で押しつけられ、多層構造体の温度は、所定のサンプリング温度に調節される。電気インピーダンスは、第1の電極と第2の電極の間で測定される。
【0007】
本明細書で説明される実施形態は、以下の説明を添付図面とともに参照することによって、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】多層構造体における対象の層の厚さを求めるための例示的システムの図である。
【図2】図1に示された試料および試料接触部材の拡大図である。
【図3】対象の層の厚さを求めるのに用いられる例示的方法の流れ図である。
【図4】円筒状の構造体における対象の層の厚さを求めるのに使用される例示的デバイスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で説明される実施形態により、銀ペーストなどの付着性の導電性媒体を用いることなく、多層構造体における対象の層の厚さを求めることが容易になる。例示的実施形態では、第1の電極は、多層構造体の面に直接接触して配置され、面に対して所定のサンプリング圧力で押しつけられる。さらに、構造体の温度は、所定のサンプリング温度に調節されてよい。第2の電極は、構造体の別の面に接触して配置され、2つの電極間のインピーダンスなどの電気的特性が測定される。
【0010】
対象の層は、多層構造体の内部層でもよい。例えば、高温動作向けに設計された構成要素は、熱に誘発される損傷から金属構造体を保護する遮熱コーティング(TBC)によって覆われた面を有する金属構造体を含んでよい。TBCは、ボンディングコートによって金属基板に結合されてよい。構造体が高温にさらされるとき、ボンディングコートが酸化する可能性があり、TBCを金属基板に結合するボンディングコートの能力が低下する。ボンディングコートの酸化した部分は、熱成長酸化物(TGO)と称されることがある。TGO厚さを正確に求めると、構造体の適時の修復および/または交換が可能になり得る。
【0011】
本明細書で説明される方法、システム、および装置の例示の技術的効果には、(a)第1の電極を多層構造体に対して所定のサンプリング圧力で押しつけること、(b)多層構造体の温度を所定のサンプリング温度に調節すること、(c)第1の電極と第2の電極の間の電気的特性を測定すること、および(d)測定された電気的特性に少なくとも部分的に基づいて、対象の層の厚さを求めることのうち少なくとも1つが含まれる。
【0012】
図1は、多層構造体における対象の層の厚さを求めるための例示的システム100のブロック図である。対象の層の厚さは、多層構造体の少なくとも一部分を含む1つまたは複数の試料102に基づいて求めることができる。例えば、多層構造体は、ビームであり得て、試料102は、ビームの長さの一部分を表してよい。試料102は、第1の面104および第1の面104と実質的に反対側の第2の面106を含む。システム100は、第1の試料接触部材108および第2の試料接触部材110を含む。
【0013】
図2は、試料102、第1の試料接触部材108、および第2の試料接触部材110の拡大図である。例示的実施形態では、試料102の第1の面104は、ボンディングコート層116によって構造層または基板114に結合された表面層112によって画定される。例えば、表面層112は、熱に誘発される損傷から構造層114を保護するためのセラミック材料などの遮熱コーティング(TBC)を含んでよい。
【0014】
作動中、構造体が熱にさらされるとき、ボンディングコート層116が熱成長酸化物(TGO)層118に変換されることがある。したがって、TGOコート層118の厚さは、時間が経つにつれて変化する可能性がある。ボンディングコート層116とTGO層118は別々のレベルのインピーダンスまたは他の何らかの電気的特性を示し得て、以下で図3を参照しながら説明されるように、TGO層118および/またはボンディングコート層116の厚さを求めることが可能になる。TGO層118の厚さが、所定の閾値を上回るとき、あるいはボンディングコート層116の厚さが所定の閾値を下回るとき、試料102によって表される構造体は、交換され、かつ/または修復されてよい。試料102は特定の構成を有するものと上記で説明されているが、システム100により、電気的特性の変化を示す層の任意の量を有する構造体における対象の層の厚さを求めることができる。
【0015】
例示的実施形態では、第1の試料接触部材108が第1の電極122を含み、第2の試料接触部材110が第2の電極124を含む。第1の電極122は、試料102の第1の面104に接触して配置されるように構成された第1の試料接触面126を含む。第2の電極124は、試料102の第2の面106に接触して配置されるように構成された第2の試料接触面128を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の試料接触面126は、試料102の第1の面104の形状に対応する形状を有する。さらに、第2の試料接触面128は、試料102の第2の面106の形状に対応する形状を有してよい。図2に示されるように、第1の面104および第2の面106は平坦である。したがって、第1の試料接触面126および第2の試料接触面128も平坦である。第1の試料接触面126および/または第2の試料接触面128の形状は、平坦、アーチ形(例えば図4を参照しながら以下で説明される)、曲線で囲まれたもの、角のあるもの、凹面、凸面、ならびに/あるいは第1の面104および/または第2の面106に対応する(例えば相補的な)他の形でよい。試料接触面126および128を、試料面104および106に対応するように成形すると、接触面積および/または電極122、124と試料102の間の導電率を増加させるのが容易になる。
【0017】
第1の電極122は、試料接触面126の反対側の力印加面130も含む。一実施形態では、以下で図1および図2を参照しながら説明されるように、第1の電極122は、第1の試料接触部材108を介して力印加面130に力を印加することにより、試料102に対して押しつけられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、試料102の少なくとも一部分の温度調節が容易になる。このような実施形態では、第1の試料接触部材108は、1つまたは複数の温度調節要素132を含み、また、温度調節要素132と第1の電極122の間に熱伝導層134を含んでよい。熱伝導層134は、非導電性でよく、第1の電極122を、第1の試料接触部材108から電気的に絶縁することができる。
【0019】
温度調節要素132は、第1の面104に熱エネルギーを与えることにより試料102の温度を上昇させ、かつ/または第1の面104から熱エネルギーを抽出することにより試料102の温度を低下させるように構成される。温度調節要素132は、例えば、熱導体、電気的加熱要素、流体を含有し、かつ/または運搬するように構成されたチャンネル、および/または、試料102を加熱し、かつ/または冷却するのに適切な任意の構造体を含んでよい。いくつかの実施形態では、第2の試料接触部材110は、第2の面106に熱エネルギーを与え、かつ/または第2の面106から熱エネルギーを抽出することにより、試料102の温度を調節するように構成された温度調節要素136も含む。第2の試料接触部材110は、温度調節要素136と第2の電極124の間に配置された熱伝導層138も含んでよい。それに加えて、あるいはその代わりに、以下で図4を参照しながら説明されるように、第2の電極124の上に絶縁物が配置される。
【0020】
図1および図2を参照すると、システム100は、第1の試料接触部材108および/または第2の試料接触部材110に結合された力印加デバイス140を含む。力印加デバイス140は、第1の試料接触部材108を介して第1の電極122の力印加面130に力を印加するように構成される。一実施形態では、力印加デバイス140は、電動ねじの機構、油圧ピストン、および/または第1の電極122を試料102に対して押しつけるのに適切な任意の他の装置を含む。
【0021】
1つまたは複数のロードセル142が、力印加デバイス140によって試料102に印加される力を測定するように構成される。例えば、図1に示された実施形態では、力印加デバイス140は、第1の試料接触部材108を第2の試料接触部材110の方へ押しつけるように構成される。したがって、第1の試料接触部材108と第2の試料接触部材110の間にロードセル142が配置されてよい。
【0022】
圧力制御デバイス144は、力印加デバイス140およびロードセル142と通信結合される。例えば、圧力制御デバイス144は、通信ケーブル146で力印加デバイス140に結合され、通信ケーブル148でロードセル142に結合される。あるいは、圧力制御デバイス144は、無線通信チャンネル(図示せず)で力印加デバイス140および/またはロードセル142に結合されてよい。
【0023】
圧力制御デバイス144は、第1の電極122を、試料102に対して所定のサンプリング圧力で押しつけるように構成される。例示的実施形態では、圧力制御デバイス144は、ロードセル142からの測定された力および第1の電極122と試料102の間の接触面積に少なくとも部分的に基づいて、印加圧力を求める。例えば、接触面積は、第1の試料接触面126の面積および第1の面104の面積に基づいて求めることができる。第1の試料接触面126が、第1の面104の形状に対応する形状を有する場合、接触面積は、第1の試料接触面126の面積と第1の面104の面積の小さい方と定義することができる。例示的実施形態では、圧力制御デバイス144は、力印加デバイス140によって印加される力を制御して、印加圧力が所定のサンプリング圧力と実質的に等しくなるまで(例えば、0.5%、1%、または5%以内の偏差になるまで)力を調節する。
【0024】
温度制御デバイス150は、温度調節ライン152によって、温度調節要素132および136に結合される。温度制御デバイス150は、試料102の少なくとも一部分の温度を、温度調節ライン152および温度調節要素132、136によって所定のサンプリング温度に調節するように構成される。いくつかの実施形態では、温度調節要素132、136は、電気的な加熱要素および/または冷却器である。このような実施形態では、温度調節ライン152は、温度制御デバイス150が温度調節要素132、136の動作を制御する通信ケーブルでよい。それに加えて、あるいはその代わりに、温度調節ライン152は、電流が伝送される導体でもよい。他の実施形態では、温度調節要素132、136は、流体を含有し、かつ/または伝えるためのチャンネルである。このような実施形態では、温度調節ライン152は、流体容器(例えば管および/またはチューブ)でよく、温度制御デバイス150は、流体加熱器および/または流体冷却器ならびに、適宣、流体容器を通して流体を循環させるためのポンプを含んでよい。
【0025】
測定デバイス160は、第1の電極122および第2の電極124に電気的に結合される。例えば、一実施形態では、測定デバイス160は、第1の導体162によって第1の電極122に結合され、第2の導体164によって第2の電極124に結合される。測定デバイス160は、第1の電極122と第2の電極124の間の電気的特性(例えばインピーダンス、抵抗、インダクタンス、および/または静電容量)を測定するように構成される。例えば、一実施形態では、測定デバイス160は、電気化学的インピーダンス分光学(EIS)を遂行するための電源(例えばポテンシオスタット)および周波数応答アナライザ(FRA)を含む。さらに、測定デバイス160は、以下で図3を参照しながら説明されるように、測定された電気インピーダンスに少なくとも部分的に基づいて対象の層の厚さを求めるように、さらに構成される。
【0026】
図3は、多層構造体における対象の層の厚さを求めるのに用いられる例示的方法300の流れ図である。方法300の一部分は、圧力制御デバイス144、温度制御デバイス150、および測定デバイス160(すべて図1に示す)などのマシンおよび/または演算デバイスを使用して遂行され得る。さらに、圧力制御デバイス144、温度制御デバイス150、および測定デバイス160の機能は、任意数の演算デバイスへと組み合わせられてよい。例えば、測定デバイス160が、圧力制御デバイス144および温度制御デバイス150に関して説明されたすべての動作を遂行してよい。
【0027】
例示的実施形態では、サンプリング圧力および/またはサンプリング温度が、305で決定される。サンプリング圧力は、多層構造体の試料の面に対して電極を押しつけることになる圧力である。サンプリング温度は、多層構造体が調節されるべき温度である。
【0028】
一実施形態では、サンプリング圧力は、構造体に関して実験的に305で決定される。例えば、構造体または類似の構造体の試料が選択され、電極が、銀ペーストなどの粘着性の導電性液体を用いて、試料の2つの表面に電気的に結合される。2つの電極間のインピーダンスが測定されて、基準インピーダンスと見なされる。電極が、粘着性の導電性液体なしで同一の試料の表面に対して配置され、少なくとも1つの電極を、圧力レベルを変化させて試料の面に押しつけてインピーダンスが測定される。305で、基準インピーダンスを「追跡する」、あるいは実質的に基準インピーダンスと等しい(例えば0.5%、1%、または5%以内の偏差の)インピーダンス測定をもたらす最低のサンプリング圧力が、サンプリング圧力と決定される。いくつかの実施形態では、305で、上記のプロセスが、対象の層の厚さが既知の類似の構造体に対して繰り返され、これらの類似の構造体にわたって基準インピーダンスを追跡するインピーダンス測定をもたらす最低のサンプリング圧力が、サンプリング圧力と決定される。上記ではインピーダンスが具体的に説明されたが、305で、サンプリング圧力は、任意の電気的特性が、対応する基準の電気的特性を追跡する圧力として決定される。
【0029】
サンプリング温度は、305で、多層構造体の面の間の、対象の電気的特性(例えばインピーダンス)が、対象の層の厚さに基づいて変化する温度として決定される。一実施形態では、305で、構造体のサンプリング温度が実験的に決定される。例えば、対象の層の厚さが既知の類似の構造体が選択される。305で、これらの類似の構造体の両端のインピーダンスが温度を変化させて測定され、インピーダンスが対象の層の厚さと最も密接に関連している温度が、サンプリング温度であると決定される。
【0030】
図2を参照して、一実施形態では、構造層114およびボンディングコート層116は金属であり、広範な温度範囲にわたって相対的に無視してよいインピーダンスを示す。表面層112は、摂氏約400度(400℃)以上の温度で相対的に無視してよいインピーダンスを示すイオン導電体(例えばセラミック材料)である。それと対照的に、TGO層118は、広範な温度範囲にわたって比較的高いインピーダンスを示す。したがって、400℃より高い温度では、第1の面104と第2の面106の間のインピーダンスは主としてTGO層118の厚さによって決定され、305で、サンプリング温度は400℃と決定される。
【0031】
図1および図3を再び参照すると、いくつかの実施形態では、305で、(例えば研究所の)制御された設定における多層構造体に関するサンプリング圧力および/またはサンプリング温度が決定され、次いで複数の多層構造体を再生産するのに適用される。一例として、特定の構成要素向けのサンプリング圧力およびサンプリング温度が、構成要素に対応する部品番号に関連づけられ、後に、同一部品番号に関連した任意の構成要素における対象の層の厚さを求めるのに用いられる。
【0032】
いくつかの実施形態では、対象の層の厚さと電気的特性(例えばインピーダンス、インダクタンス、および/または静電容量)の間の関係は、305でサンプリング圧力および/またはサンプリング温度を決定するのに用いられたのと同一のデータを用いて310で決定される。例えば、一実施形態では、サンプリング温度に対応する測定されたインピーダンスおよび層の厚さの値がグラフにプロットされ、層の厚さとインピーダンスの間の関係を示すために、最良適合ラインを定義する関数が計算される。したがって、例示的実施形態では、層の厚さと方法300によって評価される構造体に対応する電気的特性との間の関係は、評価される構造体に類似の構造体または同構造体の典型に基づいて310で決定される。
【0033】
図1および図3を参照すると、315で、第1の電極122が、多層構造体の試料102の第1の面104に接触して配置される。320で、第2の電極124が、試料102の第2の面106に接触する配置される。例示的実施形態では、第1の電極122を含む第1の試料接触部材108と第2の電極124を含む第2の試料接触部材110との間に、試料102が配置される。
【0034】
325で、圧力制御デバイス144は、力印加デバイス140によって、第1の電極122を試料102に対して(例えば第1の面104に対して)サンプリング圧力で押しつける。例示的実施形態では、圧力制御デバイス144は、力印加デバイス140によって印加される力の大きさを、ロードセル142を使用して監視する。印加されている力を第1の電極122と第1の面104の間の接触面積で割って、与えられている圧力を計算する。圧力制御デバイス144は、力印加デバイス140によって印加される力を、印加圧力が所定のサンプリング圧力と実質的に等しくなるように(例えば、0.5%、1%、または5%以内の偏差になるように)調節する。
【0035】
330で、温度制御デバイス150は、試料102の少なくとも一部分の温度を、実質的にサンプリング温度に(例えば0.5%、1%、または3%以内の偏差に)調節する(例えば加熱するかまたは冷却する)。例示的実施形態では、温度制御デバイス150は、第1の面104における試料102の温度を調節するように温度調節要素132を動作させる。330で、試料102の温度を直接接触によって調節すると、対流などの他の温度調節の方法に対して、向上した精度およびより短い時間でサンプリング温度を達成することが容易になる。いくつかの実施形態では、温度制御デバイス150は、第2の面106における試料102の温度も調節するように温度調節要素136を動作させる。それに加えて、あるいはその代わりに、322で、第2の面106は絶縁される。
【0036】
335で、測定デバイス160は、第1の電極122と第2の電極124の間の電気的特性を測定する。いくつかの実施形態では、335で、測定デバイス160は、電気化学的インピーダンス分光学(EIS)を適用することなどにより、電気インピーダンスを測定する。例示的実施形態では、測定デバイス160は、第1の電極122と第2の電極124の間に、それぞれ第1の導体162および第2の導体164を介して、所定の周波数範囲にわたって(例えば100ヘルツから1メガヘルツまで)交流の電流または電圧の入力信号を与える。この信号は電源によって生成され、電源は、限定されることなく、ポテンシオスタットを含み得る。測定される他の電気的特性には、インダクタンス、静電容量、および/または本明細書で説明された方法とともに用いるのに適切な他の特性が含まれ得る。
【0037】
340で、対象の層(例えば図2に示されたボンディングコート層116またはTGO層118)の厚さが、測定された電気的特性に少なくとも部分的に基づいて決定される。例示的実施形態では、厚さは、340で、測定された電気インピーダンスおよび以前に310で決定された厚さとインピーダンスの間の関係に基づいて決定される。
【0038】
いくつかの実施形態では、構造体の複数の試料102が、方法300を用いて評価される。一実施形態では、構造体の規則的間隔の部分は、試料102として処理される。各試料102に対して、315で電極122が配置され、320で電極124が配置され、325で第1の電極122が試料102に対して押しつけられ、330で試料102の温度が調整され、335で電気インピーダンスが測定されて、340で対象の層の厚さが決定される。いくつかの実施形態では、任意の試料102に対応する対象の層の厚さが、許容範囲(例えば、ナノメートル、マイクロメートル、またはミリメートルの単位で規定されたもの)外の値であると、構造体が修復され、かつ/または交換される。
【0039】
図4は、円筒状の構造体405における対象の層の厚さを求めるのに使用される例示的デバイス400の図である。デバイス400は、第1の電極415を有する試料接触部材410を含む。試料接触部材410および第1の電極415が、円筒状の構造体405の内面420に接して配置される。第2の電極425が、円筒状の構造体405の外面430に接して配置される。第1の電極415および第2の電極425は、それぞれが内面420および外面430の形状に対応するように、アーチ形の形状に形成される。作動中、第1の電極415および第2の電極425は、測定デバイス160(図1に示す)に結合される。
【0040】
デバイス400は、動作が力印加デバイス140(図1に示す)と同様の力印加デバイス435を含む。より具体的には、力印加デバイス435は、第1の電極415を内面420に対して押しつける。力印加デバイス435によって印加される力は、動作がロードセル142(図1に示す)に似ているロードセル440によって測定される。
【0041】
例示的実施形態では、力印加デバイス435は、軸445で試料接触部材410に結合される。軸445は、試料接触部材410の反対側の構造体接触部材450にも結合される。第1の電極415と同様に、試料接触部材410および構造体接触部材450は、内面420の形状に対応する形状を有する。力印加デバイス435が、軸445に沿って膨張性の力を加えるとき、試料接触部材410および構造体接触部材450は、内面420に対して押しつけられる。例示的実施形態では、力印加デバイス435およびロードセル440は、圧力制御デバイス144(図1に示す)と通信結合される。
【0042】
試料接触部材410は、動作が温度調節要素132、136(図1および図2に示す)と同様の複数の温度調節要素455を含む。温度調節要素455は、第1の電極415に近接した内面420の温度を調節する。例示的実施形態では、温度調節要素455は、温度制御デバイス150(図1に示す)に結合される。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2の電極425に近接した外面430上に絶縁物460が配置される。絶縁物460により、温度調節要素455が動作するとき、第1の電極415と第2の電極425の間の温度を均一にするのが容易になる。
【0044】
第1の電極415と第2の電極425の間の円筒状の構造体405の一部分は、試料465と称され得る。一実施形態では、円筒状の構造体405における対象の層の厚さは、複数の試料465に関して、デバイス400を円筒状の構造体405に対して回転することによって求められる。一例として、それぞれが約36度の回転角だけ分離された10個の試料465が、方法300(図3に示す)によって評価される。
【0045】
本明細書で提供される実施形態により、多層構造体内の熱成長酸化物(TGO)層などの、対象の層の厚さを求めることができる。さらに、例示的実施形態では、短時間で、付着性の接触または導電性媒体の除去を必要とすることなく、厚さが正確に求められる。
【0046】
本明細書で説明された方法およびシステムは、本明細書で説明された特定の実施形態に限定されない。例えば、各システムの構成要素および/または各方法のステップは、本明細書に説明された他の構成要素および/またはステップから独立して別個に用いられ、かつ/または実施されてよい。また、それぞれの構成要素および/またはステップは、他の装置および方法とともに用いられ、かつ/または実施されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態には、1つまたは複数電子デバイスまたは演算デバイスを使用することが含まれる。このようなデバイスには、一般に、汎用中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、マイクロコントローラ、縮小命令型コンピュータ(RISC)プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジック回路(PLC)、および/または本明細書で説明された機能を実行することができる他の回路またはプロセッサなどのプロセッサまたはコントローラが含まれる。本明細書で説明された方法は、限定することなく記憶装置デバイスおよび/またはメモリデバイスを含むコンピュータ読取り可能媒体で実施される実行可能な命令として符号化され得る。このような命令がプロセッサによって実行されると、プロセッサは、本明細書で説明された方法の少なくとも一部分を遂行する。上記の例は単なる例示であり、したがって、用語プロセッサの定義および/または意味を限定するようには少しも意図されていない。
【0048】
この書かれた説明は、最善の様式を含めて本発明を開示するために、また、あらゆる当業者が、あらゆるデバイスまたはシステムを製作し使用することならびにあらゆる具体化された方法を実行すること含めて本発明を実施することも可能にするために、実施例を用いる。本発明が特許権を受けられる範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に想起される他の実施例を含み得る。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文字どおりの言葉と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文字どおりの言葉との実質のない相違点を有する同等な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲に入るように意図されている。
【符号の説明】
【0049】
100 例示的システム
102 試料
104 第1の面
106 第2の面
108 第1の試料接触部材
110 第2の試料接触部材
112 表面層
114 基板
116 ボンディングコート層
118 熱成長酸化物(TGO)層
122 第1の電極
124 第2の電極
126 第1の試料接触面
128 第2の試料接触面
130 力印加面
132 温度調節要素
134 熱伝導層
136 温度調節要素
138 熱伝導層
140 力印加デバイス
142 ロードセル
144 圧力制御デバイス
146 通信ケーブル
148 通信ケーブル
150 温度制御デバイス
152 温度調節ライン
160 測定デバイス
162 第1の導体
164 第2の導体
300 方法
305 サンプリング圧力および/またはサンプリング温度を決定する
310 層の厚さと電気的特性(例えばインピーダンス)の間の関係を決定する
315 第1の電極を、第1の面と接触させて配置する
320 第2の電極を、第2の面と接触させて配置する
322 (1つまたは複数の)面を絶縁する
325 第1の電極を、サンプリング圧力で試料に押しつける
330 構造体の温度をサンプリング温度へと加熱/冷却する
335 電気的特性を測定する
340 層の厚さを決定する
400 デバイス
405 円筒状の
410 試料接触部材
415 第1の電極
420 内面
425 第2の電極
430 外面
435 力印加デバイス
440 ロードセル
445 軸
450 構造体接触部材
455 温度調節要素
460 絶縁
465 複数の試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造体における対象の層の厚さを求めるのに使用されるシステム(100)であって、
前記多層構造体の第1の面に接触して配置されるように構成された第1の試料接触面(126)を有する第1の電極(122)を備える試料接触部材(108)と、
前記多層構造体の第2の面に接触して配置されるように構成された第2の試料接触面(128)を有する第2の電極(124)であって、前記第2の面が前記第1の面の反対側にある第2の電極(124)と、
前記第1の電極を、前記多層構造体に対して実質的に所定のサンプリング圧力で押しつけるように構成された圧力制御デバイス(144)であって、前記サンプリング圧力が、試料(165)の電気インピーダンスが前記試料に関連した基準インピーダンスを追跡する圧力である圧力制御デバイス(144)と、
前記第1の電極122および前記第2の電極124に電気的に結合された測定デバイス(160)であって、前記第1の電極と前記第2の電極の間の電気インピーダンスを測定するように構成された測定デバイスとを備えるシステム(100)。
【請求項2】
前記測定デバイス(160)が、前記測定された電気インピーダンスに少なくとも部分的に基づいて前記対象の層の厚さを求めるようにさらに構成される請求項1記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記測定デバイス(160)が、電気インピーダンスと前記多層構造体に相当する前記対象の層の厚さの間の所定の関係にさらに基づいて、前記対象の層の前記厚さを求めるようにさらに構成される請求項2記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記試料接触部材(108)に結合され、前記圧力制御デバイス(144)と通信結合された力印加デバイス(140)と、
前記圧力制御デバイスと通信結合され、前記力印加デバイスによって前記多層構造体に印加される力を測定するように構成されたロードセル(142)であって、前記圧力制御デバイスが、前記測定された力および前記第1の試料接触面(126)と前記多層構造体の間の接触面積に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の電極(122)を前記多層構造体に対して所定のサンプリング圧力で押しつけるように構成されるロードセル(142)とをさらに備える請求項1記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記試料接触部材(108)が、前記多層構造体の温度を調節するように構成された1つまたは複数の温度調節要素をさらに備える請求項1記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記温度調節要素(136)に結合され、前記温度調節要素によって前記多層構造体の温度を所定のサンプリング温度に調節するように構成された温度制御デバイス(150)をさらに備える請求項5記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記試料接触部材が、複数の第1の温度調節要素(136)を備える第1の試料接触部材(108)であり、前記システムが、第2の試料接触部材(110)をさらに備え、前記第2の試料接触部材が、
前記第2の電極(124)と、
複数の第2の温度調節要素(455)とを備える請求項5記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記測定デバイス(160)が、所定の周波数範囲にわたって、前記第1の電極(122)と前記第2の電極(124)の間の電気インピーダンスを測定するように構成される請求項1記載のシステム(100)。
【請求項9】
多層構造体における対象の層の厚さを求めるのに使用されるデバイス(400)であって、
前記多層構造体の面に接触して配置されるように構成された試料接触面(126)および前記試料接触面の反対側の力印加面(130)を有する電極(122)と、
前記多層構造体の温度を調節するように構成された温度調節要素(132)とを備える試料接触部材(108)、ならびに
前記試料接触部材に結合され、前記試料接触部材を介して前記電極の前記力印加面に力を印加するように構成された力印加デバイス(140)を備えるデバイス(400)。
【請求項10】
前記試料接触面(108)が、前記多層構造体の面の形状に対応する形状を有する請求項9記載のデバイス(400)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−163557(P2012−163557A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−17416(P2012−17416)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】