説明

多層構造容器

【課題】容器の特性を損なわずに、樹脂量の低減を図ることが可能なポリエチレン製の多層構造容器を提供する。
【解決手段】低密度ポリエチレンからなる内外層と、中間層としてガスバリア性樹脂層及び接着剤層とを含み、該接着剤層が、酸変性ポリエチレンとプロピレン系樹脂とを含み、該プロピレン系樹脂は、該接着剤層中に0.5乃至10重量%の量で存在していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造容器に関するものであり、より詳細には、内外層が低密度ポリエチレンにより形成された容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、成形が容易であり、安価に製造できることなどから、各種の用途に広く使用されているが、特に低密度ポリエチレンは、結晶性が低く、軟質であり、柔軟性であることから、これを用いて形成された容器は、内容物の絞り出しを容易に行うことができるため、ケッチャプ、マヨネーズ、糊、蜂蜜或いはシャンプーなどのペースト状の内容物を収容するための容器として広く利用されている。
【0003】
また、上記のようなポリエチレン製容器は、ガスバリア性が低いため、通常、エチレンビニルアルコール共重合体に代表されるガスバリア樹脂を中間層として設けた多層構造を有している。このような多層構造においては、中間層であるガスバリア性樹脂層と内外のポリエチレン層とを接着するための接着剤として、酸変性オレフィン系樹脂が使用されている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−25964号公報
【特許文献2】特開2010−189052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近になって資源の枯渇化を回避するために、容器の分野でも樹脂量の低減化が望まれている。しかしながら、例えば容器についていうと、容器に求められる特性を低下させずに、樹脂量を低減することは極めて難しい。例えば、上記のポリエチレン容器では、内外層を形成しているポリエチレン(低密度ポリエチレン)の量を低減させてしまうと、座屈強度や耐衝撃性(落下強度)などの容器特性が大きく損なわれてしまうという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、容器の特性を損なわずに、樹脂量の低減を図ることが可能なポリエチレン製の多層構造容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、ポリエチレン製の多層構造容器の樹脂量の低減化について多くの実験を研究した結果、意外にも接着層に少量のプロピレン系樹脂を配合することにより、容器特性が向上し、例えば内外層のポリエチレン量を低減させた場合にも、容器特性が維持されるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明によれば、低密度ポリエチレンからなる内外層と、中間層としてガスバリア性樹脂層及び接着剤層とを含み、該接着剤層が、酸変性ポリエチレンとプロピレン系樹脂とを含み、該プロピレン系樹脂は、該接着剤層中に0.5乃至10重量%の量で存在していることを特徴とする多層構造容器が提供される。
【0009】
本発明においては、
(1)前記接着剤層は、更に直鎖低密度ポリエチレンを含んでいること、
(2)前記酸変性ポリエチレンが、直鎖低密度ポリエチレンを酸変性したものであること、
(3)前記酸変性ポリエチレンの密度が0.925乃至0.950g/cmの範囲にあること、
が好ましい。
かかる多層構造容器は、一般に、ダイレクトブロー成形により得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多層構造容器では、酸変性ポリエチレンを含む接着剤層に少量のプロピレン系樹脂が配合されているため、その座屈強度や耐衝撃性が向上し、この結果、樹脂量の低減化(即ち軽量化)を実現できる。
例えば、後述する実施例の実験結果から理解されるように、接着剤層に少量のプロピレン系樹脂が配合された多層構造容器では、内外層の低密度ポリエチレンの量を減少させ(内外層を薄肉とする)、容器を形成する樹脂のトータルの目付け量を10重量%程度減少させたとしても、その座屈強度や耐衝撃性(落下強度)の低下は殆んど認められず、これらの特性は、樹脂目付け量を低減させていない対照例の容器と同等以上である。また、プロピレン系樹脂の添加により、接着性の低下も認められない。
【0011】
さらに、プロピレン系樹脂の添加により、容器の外観が損なわれるおそれがあるが、このような外観低下は、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)の添加により有効に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の多層構造容器は、内外層が低密度ポリエチレンで形成され、内外層の間には、中間層としてガスバリア層が形成され、該ガスバリア層と内外層との間には接着剤層が設けられるという基本層構造を有している。
【0013】
<内外層>
本発明において、内外層は、容器の内面或いは外面に位置する層であり、これらの層は低密度ポリエチレン(LDPE)により形成される。
この低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm以上であって、0.930g/cm未満の範囲にあるポリエチレンである。線状分子に多くの短枝がついている点で後述する直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)とは異なっており、軟質であり、成形加工に極めて優れている。
このような低密度ポリエチレンの中では、成形性等の観点から、MFR(190℃)が0.2乃至20g/10min程度のものが使用される。
【0014】
即ち、上記の低密度ポリエチレンにより内外層が形成された容器は、特に可撓性或いはスクイズ性が付与され、ペースト状内容物が充填されているような場合には、内容物の絞り出しを効果的に行うことができる。
【0015】
このような低密度ポリエチレンの内外層の厚みは、用途に応じた容器の基本特性が維持され、容器の全体厚みが不必要に厚くならない程度に設定される。本発明においては、従来公知のポリエチレン容器に比して、約10%程度、その厚みを低減させることができ、このような場合にも、容器の基本特性は、従来公知のものと同程度であり、これは本発明の大きな利点である。
【0016】
また、このような内外層には、適宜、滑剤を配合することができる。例えば、容器内容物の種類によっては、内層に滑剤を配合することによって容器内容物に対する滑り性を向上させ、容器内容物の排出性(絞り出し性)を高めることができる。また、外層に滑剤を配合することにより、容器の搬送工程における容器同士のくっつきや容器と搬送ベルトとの粘着などを防止し、容器の搬送性を高めることができる。
【0017】
このような滑剤としては、それ自体公知のものを使用することができ、例えば、以下のものを例示することができる。
(イ)流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの。
(ロ)ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの。
(ハ)ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪族アミド系のもの。
(ニ)ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸エステル系のもの。
(ホ)セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの。
(ヘ)ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン。
(ト)ポリオルガノシロキサン。
これらの滑剤は、1種単独或いは2種以上を混合して使用することもでき、その配合量は、内外層中に0.01〜0.5重量%程度の量でよい。
【0018】
また、このような内外層には、用途に応じて、紫外線吸収剤、顔料、染料、各種の充填材等が、容器の基本特性が損なわれない量で配合されていてよい。
【0019】
<ガスバリア性樹脂層>
本発明の多層構造容器においては、上記内外層の間の中間層として、ガスバリア性樹脂層(以下、単に「ガスバリア層」と呼ぶことがある)が形成される。即ち、このようなガスバリア層を設けることにより、酸素透過による内容物の酸化劣化を有効に抑制することができる。
【0020】
かかる層の形成に使用されるガスバリア性樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)や芳香族ポリアミドが代表的であり、特に高い酸素遮断性を有しているという観点から、エチレンビニルアルコール共重合体が好適に使用される。
【0021】
エチレンビニルアルコール共重合体としては、一般に、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適であり、これらの中から、適度な成形性(MFR)を有するもの、例えば内外層の低密度ポリエチレン(LDPE)と同程度のMFRを有するエチレンビニルアルコール共重合体が、ガスバリア性樹脂として最も好適に使用される。
【0022】
上述したガスバリア層の厚みは、優れた酸素遮断性を発揮する程度に設定され、例えば、5乃至50μm程度の範囲の厚みに設定されることが一般的である。
【0023】
尚、上記のガスバリア性樹脂層に酸素吸収性を付与し、そのガスバリア性(酸素遮断性)を高めることもできる。
酸素吸収性を付与するためには、上記のガスバリア性樹脂層に酸化性重合体を配合しておけばよく、さらに、必要により遷移金属触媒(酸化触媒)を加えることにより、酸素吸収性をより向上させることができる。即ち、酸化性重合体を酸化させることにより、酸素を吸収捕捉し、ガスバリア性樹脂のガスバリア機能を高めるものであり、遷移金属触媒は、酸化性重合体の酸化を促進させるために適宜配合されるものである。
【0024】
上記のような酸素吸収性のガスバリア性樹脂層は、それ自体公知であり、特開2003−266619号等には、酸化性重合体や遷移触媒等について開示されている。
例えば、酸化性重合体としては、エチレン系不飽和基含有重合体が使用される。即ち、この重合体は、炭素−炭素二重結合を有しており、この二重結合部分が酸素により容易に酸化され、これにより酸素の吸収捕捉が行なわれる。このようなエチレン系不飽和基含有重合体は、例えば、ブタジエン等の共役ジエン;1,4−ヘキサジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン等の環状非共役ジエンに由来する酸化性構成単位を有する単独重合体、或いは共重合体を例示することができる。これらの重合体には、分散性を高めるために、カルボン酸基、カルボン酸無水物基等の官能基が導入されていてもよい。このような酸化性重合体は、上記のガスバリア性樹脂100重量部当り1乃至15重量部程度の量で配合することができる。
また、適宜使用される遷移金属触媒において、遷移金属としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属、銅、銀等の第I族金属、錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウム等の第V族金属、クロム等の第VI族金属、マンガン等の第VII族金属等があり、これらの中でも特にコバルトは、酸素吸収性(酸化性重合体の酸化)を著しく促進させる上で好適である。このような遷移金属の触媒は、一般に、無機塩(例えばハライド)、有機塩(例えばカルボン酸塩)或いは錯塩(例えばβ−ジケトンやβ−ケト酸エステルとの錯体)が挙げられる。このような遷移金属触媒は、例えば前述したガスバリア性樹脂100重量部当たり当り金属量換算で10乃至1000ppm程度の量で配合することができる。
【0025】
<接着剤層>
接着剤層は、本発明の多層構造容器の骨子となる層であり、酸変性ポリエチレンとプロピレン系樹脂とからなり、さらに必要により直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)が配合される。
【0026】
この接着剤層に使用されている酸変性ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)の内外層とガスバリア性樹脂のガスバリア層とを強固に接着させるための接着剤として機能するものであり、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどを用いてポリエチレンをグラフト変性したものであり、好適には、マレイン酸もしくは無水マレイン酸でグラフト変性されたポリエチレンが好適である。
【0027】
また、変性するポリエチレンは、特に制限されないが、内外層との接着性の観点から低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)であることが好ましく、特に、後述するプロピレン系樹脂を良好に分散させ、容器の外観特性の低下を回避し、さらには容器の物性(座屈強度や耐衝撃性)を向上させるという観点から、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)であることが好ましい。
【0028】
尚、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は、1−ブテン、1−ヘキサン、4−メチルペンテン−1などのα−オレフィンを数%程度共重合して短鎖の枝を長鎖に導入して低密度としたものであり、短鎖の枝が少ないという点で内外層を形成している低密度ポリエチレン(LDPE)とは異なっている。直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は、例えば強度、靭性などの点で、低密度ポリエチレン(LDPE)よりも優れている。
【0029】
また、接着性(密着性)の観点から、変性率は高い方が好ましく、例えば密度が0.925乃至0.950g/cmの範囲の酸変性ポリエチレンが好適である。この密度が大きいほど、酸による変性率が高い。
さらに、成形加工性の観点から、酸変性ポリエチレンのMFR(190℃)は0.2乃至30g/10min程度のものが好適である。
【0030】
尚、上記の酸変性ポリエチレンは、良好な接着性を確保し、且つ以下に述べるプロピレン系樹脂による容器物性の向上を十分に発揮させるために、接着剤層中に、少なくとも3重量%以上、特に5乃至49重量%、さらに好ましくは7乃至20重量%程度の量で存在していることが好ましい。
【0031】
本発明において、上記の酸変性ポリエチレンを含む接着剤層中にプロピレン系樹脂を配合することが最も重要な特徴であり、プロピレン系樹脂を0.5乃至10重量%、好ましくは1.0乃至5.0重量%の量で接着剤層中に存在させることにより、容器の座屈強度や耐衝撃性を向上させることができる。
【0032】
例えば、プロピレン系樹脂が、上記範囲よりも多く接着剤層中に配合されている場合には、耐衝撃性の低下を生じてしまい、例えば、内外層の厚みを薄くし、樹脂のトータル目付け量を10%程度減少させると、その落下強度はかなり低くなってしまう。また、プロピレン系樹脂の配合量が、上記範囲よりも少ないと、内外層の厚みを薄くし、樹脂のトータル目付け量を低減させると、耐衝撃性ばかりか座屈強度までもが大きく低下してしまい、例えば容器としての自立性を保持することが困難となってしまう。
即ち、上記の範囲でプロピレン系樹脂を接着剤層中に配合しておくことにより、座屈強度や耐衝撃性が大きく向上し、内外層の厚みを薄くし、樹脂のトータル目付け量を大幅に低減させることが可能となるのである。
【0033】
本発明において、プロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレンのみならず、プロピレンに他のα−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が少量共重合された共重合体も使用することができるが、ホモプロピレンが最適である。
【0034】
また、用いるプロピレン系樹脂のMFR(190℃)は、成形性の観点から、0.2乃至30g/10min程度のものが好適である。
【0035】
ところで、上記のプロピレン系樹脂を接着剤層中に配合した場合、これが前述した酸変性ポリエチレン中に良好に分散されず、容器の外観低下、具体的には透明性が低下してしまうおそれがある。このようなプロピレン系樹脂の分散不良による容器の外観低下を回避するために、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を酸変性ポリエチレンと共に使用することが好ましい。
【0036】
既に述べたように、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は、短鎖の枝が少ないという点で内外層を形成している低密度ポリエチレン(LDPE)と異なっている。このような直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は、接着剤層のマトリックスである酸変性ポリエチレンばかりか、プロピレン系樹脂とのなじみもよく、このため、プロピレン系樹脂が接着剤層中に良好に分散し、外観特性の低下を有効に回避することができる。
【0037】
このようなプロピレン系樹脂の分散性改善のために使用される直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は、通常、接着剤層中に31.0乃至96.5重量%、特に50乃至90重量%の量で存在させることができる。
また、かかる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は、特にコモノマーとしてブテンが使用されているものが、特にプロピレン系樹脂の分散性改善効果が大きく、好適である。
さらに、この直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)のMFR(190℃)は0.2乃至30g/10min程度のものが好適である。
【0038】
本発明において、上述した成分を含む接着剤層は、良好な密着性と共に、容器の物性向上効果が確保される程度の厚みで使用されるべきであり、通常、1乃至50μm、特に2乃至20μm程度の厚みを有していればよい。
【0039】
<その他の層>
本発明の多層構造容器は、上述した低密度ポリエチレン(LDPE)の内外層、ガスバリア層及び接着剤層を含むが、かかる容器の特性が損なわれない範囲で、例えばこの容器成形時に発生するリグラインド(スクラップ樹脂)をバージンの低密度ポリエチレンと混合して用いることもできる。この場合、成形性を維持しつつ、資源の再利用化を図るという観点から、リグラインドの量は、バージンの低密度ポリエチレン100重量部当り10乃至60重量部程度の量とするのがよい。
【0040】
また、このようなリグラインド層の位置は、容器特性に悪影響を与えないように、内層或いは外層に隣接する位置とすればよく、その厚みは、容器の厚みが不必要に厚くならない程度であればよい。
【0041】
上記のような最内外層隣接層の厚みは、容器壁の全体厚みが必要以上の厚みとならず且つこの層中に配合されている滑剤が最外層に速やかにブリーディングし得るような厚みとすればよく、一般に、20乃至100μm程度の厚みに設定される。
【0042】
上記のような層構造を有する本発明の多層構造容器は、代表的には、各層を形成するための樹脂組成物を用いての共押出により、前述したチューブ状のパリソンを溶融押出し、例えば2分割金型を用いてのダイレクトブロー成形を行ってボトル形状に成形することにより製造されることが好適である。勿論、所定の層構造を有する平板形状のプリフォームを押出成形、射出成形等により成形し、これをプラグアシスト成形し、カップ形状の容器とすることも可能である。
【0043】
上述した本発明の容器は、特に粘稠なペースト状の内容物、例えば、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、シャンプーなどを収容する容器として好適であり、特に内容物を絞りだすスクイズボトルとして特に好適であり、本発明では、このような容器において、容器特性を損なわずに、樹脂目付け量を大幅に低減させることができる。
【実施例】
【0044】
本発明を次の実施例にて説明する。
尚、容器の特性及び用いた樹脂の物性は、以下の方法で測定した。
【0045】
(1)座屈強度
得られた多層容器の口部を上にした状態で圧縮試験機にセットし、毎分10mmの速度で縦方向の荷重を加え、容器が座屈したときの荷重(kgf)を座屈強度とした。各5本について測定した平均値を測定値とし、次の基準で評点とした。◎、○、△が許容範囲内である。
◎:5kgf以上
○:4Kgf以上〜5kgf未満
△:3Kgf以上〜4kgf未満
×:3kgf未満
【0046】
(2)引張り弾性率
得られた多層容器の胴平坦部からJIS7113による試験片を切り出し、容器高さ方向に引っ張り試験を行い、引張り弾性率を測定した。各5本について測定した平均値を測定値とし、次の基準で評点とした。○と△が許容範囲内である。
○:800MPa以上
△:700MPa以上〜800MPa未満
×:700MPa未満
【0047】
(3)落下強度
得られた多層容器に水道水を300ml充填し、5℃の冷蔵庫で24時間保存した後、取り出して1.5mの高さからコンクリート面に正立状態(容器底を下)で10本、また、横向き状態(容器底が真横)で10本落下させ、破損本数を確認し、落下強度とした。次の基準で評点とした。○と△が許容範囲内である。
○:破損無し
△:破損は無いが局所的なデラミが発生
× :破損有り
【0048】
(4)外観ムラ
得られた多層容器の胴部を視覚で観察して外観ムラの評価を行った。白濁して透明性が小さい部分を外観ムラとした。容器10本の最大ムラを測定値とし、次の基準で評点とした。○と△が許容範囲内である。
○:ムラ無し
△:容器表面積の30%未満のムラ発生
× :容器表面積の30%以上のムラ発生
【0049】
(5)密着性
得られた多層容器の胴部の平坦部を4cm×6cmに切り出し、容器高さ方向に折れ線がつくように繰り返し折り曲げを行い密着性評価とした。折り曲げ部が0°になる程度に折り曲げと戻しを50回繰り返した。容器10本で行い、次の基準で評点とした。○と△が許容範囲内である。
○:デラミの発生無し
△:40回までデラミの発生無し、50回までにデラミ発生あり
×:39回までにデラミ発生あり
【0050】
(6)総合評価
座屈強度、引張り弾性率、落下強度、外観ムラ、密着性の各評価結果から、次の様に総合評価した。
○:全ての評価が「◎あるいは○」
△:いずれかの評価に「△」があり、いずれの評価にも「×」はない
×:少なくとも1つの評価に「×」がある
【0051】
(用いた樹脂の物性)
各層の形成に用いた樹脂のMFRは、ASTM D123(190℃)、密度はASTM D792によりそれぞれ測定した。
【0052】
(用いた樹脂及び滑剤)
各層の形成のために、下記の樹脂及び滑剤を用いた。
【0053】
[内外面層形成用樹脂]
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;1.1g/10min、密度;0.92g/cm
(滑剤として、オレイン酸アミド300ppmを含有させた)
【0054】
[バリア層形成用樹脂]
エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)
密度;1.19g/cm、MFR(190℃);1.3g/10分、
【0055】
[接着剤層形成用樹脂]
イ)無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン−A
(表1中「酸変性LLDPE−A」)(15重量%用)
MFR;2.7g/10min
密度;0.946g/cm
ロ)無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン−B
(表1中「酸変性LLDPE−B」)(98重量%用)
MFR;0.8g/10min
密度;0.930g/cm
ハ)無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン−A
(表1中「酸変性LDPE−A」)(98重量%用)
MFR;1.0g/10min
密度;0.930g/cm
二)ホモポリプロピレン(表中「ホモPP」)
MFR;0.5g/10min
密度;0.900g/cm
ホ)ブロック共重合ポリプロピレン(表中「共重合PP」)
MFR;0.6g/10min
密度;0.900g/cm
ヘ)直鎖状低密度ポリエチレン(表中「LLDPE」)
MFR;1.0g/10min
密度;0.916g/cm
【0056】
[滑剤マスターバッチ]
基材として低密度ポリエチレン、滑剤としてオレイン酸アミドを別々の供給フィーダーに投入し、二軸押出機を用いて配合量3重量%のマスターバッチペレットを作製した。
【0057】
[接着層ペレットの作成方法]
接着層に投入したペレットは、所定の重量%に計量したプロピレン系樹脂、酸変性ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンの各々のペレットをタンブラーにてドライブレンドしたものを使用した。
【0058】
<実施例1>
最外面層として50mm押出機に低密度ポリエチレンに1.0重量%の滑剤マスターバッチをドライブレンドした樹脂ペレット、接着層として40mm副押出機Aに表1に示す樹脂、バリア層として40mm副押出機Bにエチレンビニルアルコール共重合体、最内面層として40mm副押出機Cに低密度ポリエチレンを基材に1.0重量%の滑剤マスターバッチをドライブレンドした樹脂ペレットを供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、公知の溶融ブロー成形法によりノズル径φ25mm、内容量300ml、重量11.8gのケチャップ用チューブ形状の3種5層多層容器を作製した。
【0059】
この容器胴部平均の層構成は、以下の通りである。
最外面層15.0%(67.5μm)/接着層1.0%(4.5μm)/バリア層6.30%(28.4μm)/接着層1.0%(4.5μm)/最内面層76.7%(345.2μm)
【0060】
この容器の接着層の樹脂構成は次の通りである。
PP系樹脂としてホモPP2重量%、酸変性PE樹脂として酸変性LLDPE−A15重量%、LLDPE83重量%
【0061】
作製した上記容器について、座屈強度、引張り弾性率、落下強度、外観ムラ、密着性を評価した。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
【0062】
<実施例2>
接着層のホモPP含有量を0.5重量%、LLDPE含有量を84.5重量%にした以外は実施例1と同様にして多層容器を作製した。作製した容器について、実施例1と同様の評価を行った。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
【0063】
<実施例3>
接着層のホモPP含有量を10重量%、LLDPE含有量を75重量%にした以外は実施例1と同様にして多層容器を作製した。作製した容器について、実施例1と同様の評価を行った。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
【0064】
<実施例4>
接着層のPP系樹脂としてブロック共重合PPを用いた以外は実施例1と同様にして多層容器を作製した。作製した容器について、実施例1と同様の評価を行った。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
【0065】
<実施例5>
接着層の酸変性PEとして酸変性LLDPE―Bを98重量%にし、LLDPEをなくした以外は実施例1と同様にして多層容器を作製した。作製した容器について、実施例1と同様の評価を行った。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
【0066】
<実施例6>
接着層の酸変性PEとして酸変性LDPE―Aを98重量%にし、LLDPEをなくした以外は実施例1と同様にして多層容器を作製した。作製した容器について、実施例1と同様の評価を行った。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
【0067】
<実施例7>
多層容器の層構成を次のようにした以外は実施例1と同様にして多層容器を作製した。作製した容器について、実施例1と同様の評価を行った。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
最外面層15.0%(67.5μm)/接着層3.0%(13.5μm)/バリア層6.30%(28.4μm)/接着層3.0%(13.5μm)/最内面層72.7%(327.2μm)
【0068】
<比較例1>
接着層を酸変性PEとして酸変性LLDPE―Bを100重量%にし、PP系樹脂及びLLDPEをなくした以外は実施例1と同様にして多層容器を作製した。作製した容器について、実施例1と同様の評価を行った。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
【0069】
<比較例2>
接着層のホモPP含有量を0.3重量%、LLDPE含有量を84.7重量%にした以外は実施例1と同様にして多層容器を作製した。作製した容器について、実施例1と同様の評価を行った。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
【0070】
<比較例3>
接着層のホモPP含有量を15重量%にし、LLDPE含有量を70重量%にした以外は実施例1と同様にして多層容器を作製した。作製した容器について、実施例1と同様の評価を行った。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
【0071】
<対照例>
多層容器の目付量を12.8gにし、層構成を次のようにし、接着層を酸変性LDPE−A100重量%にし、PP系樹脂及びLLDPEをなくした以外は実施例1と同様にして多層容器を作製した。作製した容器について、実施例1と同様の評価を行った。容器仕様及び評価結果を表1に示す。
最外面層15.0%(73.5μm)/接着層0.65%(3.2μm)/バリア層6.30%(30.9μm)/接着層0.65%(3.2μm)/最内面層77.4%(379.3μm)
【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低密度ポリエチレンからなる内外層と、中間層としてガスバリア性樹脂層及び接着剤層とを含み、該接着剤層が、酸変性ポリエチレンとプロピレン系樹脂とを含み、該プロピレン系樹脂は、該接着剤層中に0.5乃至10重量%の量で存在していることを特徴とする多層構造容器。
【請求項2】
前記接着剤層は、更に直鎖低密度ポリエチレンを含んでいる請求項1に記載の多層構造容器。
【請求項3】
前記酸変性ポリエチレンが、直鎖低密度ポリエチレンを酸変性したものである請求項1又は2に記載の多層構造容器。
【請求項4】
前記酸変性ポリエチレンの密度が0.925乃至0.950g/cmの範囲にある請求項1乃至3の何れかに記載の多層構造容器。
【請求項5】
ダイレクトブロー成形により得られたものである請求項1乃至4の何れかに記載の多層構造容器。

【公開番号】特開2013−82485(P2013−82485A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224194(P2011−224194)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】