説明

多層樹脂チューブ

【課題】 機能性樹脂層と接着層との相性に依存せずに樹脂層と樹脂層との接着性を高められるようにした多層樹脂チューブを提供する。
【解決手段】 樹脂チューブの構成層のうち主要樹脂層と、該主要樹脂層同士の接着を目的とする接着樹脂層との間に、双方に対して接着親和性を有する樹脂からなる中間層を介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の燃料配管に用いられる樹脂チューブに係り、特に、多層の構造をもち、樹脂層同士の接着性の向上を図った多層樹脂チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料配管に用いられているチューブとしては、金属製のチューブの外周面をメッキ被膜や樹脂被膜で被覆したものが一般に用いられ、被膜材料や被膜層構造の改良により、耐食性や耐薬品性などの性能を強化している。
【0003】
近年、この種の燃料配管用のチューブとしては、上記の金属製チューブに代わって、樹脂チューブが用いられるようになってきている。樹脂チューブは、金属チューブと違って錆びることがなく、また、加工が容易な上に、設計上の自由度が大きく、軽量であるなどの数々の利点がある。
【0004】
燃料配管用樹脂チューブの材料として用いられる熱可塑性樹脂には、代表的なものにはポリアミド樹脂がある。このポリアミド樹脂樹脂は、耐薬品性、耐熱性などに優れ、燃料配管用のチューブの材料に適した樹脂である。
【0005】
最近では、一層の性能向上を図るため、3層構成や5層、6層構成の樹脂チューブが開発されている。この多層樹脂チューブでは、燃料が透過し難い性質をもつ樹脂層や、衝撃に強い性質をもつ樹脂層、あるいは電気が流れる導電性をもつ樹脂層というように、特定の性能を高めた樹脂層(以下、機能樹脂層)を設けている。このような多層樹脂チューブでは、複数の異なる種類の樹脂を用いるので、樹脂層と樹脂層との接着状態を確保するために接着性の高い接着樹脂層を設ける必要がある。
【0006】
例えば、外側からポリアミド樹脂層、機能層である低透過性の樹脂層、導電樹脂層を有する樹脂チューブの場合、機能層の低透過性樹脂層の外層には接着樹脂層を増やし、ポリアミド樹脂層が低透過性樹脂層から剥離しないように接着性を高めていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、機能樹脂層には、様々なものがあり、したがって樹脂の種類も多種類におよぶので、ある樹脂と樹脂の間では接着性が良好であった接着樹脂であっても、樹脂の種類が変わると、相性が悪く接着性が低下することがあり、機能層の組み合わせに適した接着樹脂の開発が強いられるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、機能性樹脂層と接着層との相性に依存せずに樹脂層と樹脂層との接着性を高められるようにした多層樹脂チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、熱可塑性樹脂を材料とする複数の樹脂層からなる多層構造を有する樹脂チューブにおいて、樹脂チューブの構成層のうち主要樹脂層と、該主要樹脂層同士の接着を目的とする接着樹脂層との間に、双方に対して接着親和性を有する樹脂からなる中間層を介在させたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、熱可塑性樹脂を材料とする複数の樹脂層からなる多層構造を有する樹脂チューブにおいて、最外側樹脂層と、特定の性質を強化した一層以上の機能樹脂層と、内外両側にある機能性樹脂層の一方に対して接着性の相性が良くない樹脂からなる接着樹脂層と、を有し、前記接着樹脂層と、接着性の相性が良くない機能性樹脂層の間に、その双方に対して接着親和性を有する樹脂からなる中間層を介在させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、機能性樹脂層と接着層との相性に依存せずに樹脂層と樹脂層との接着性を高められ、組み合わせの機能樹脂のバリエーションが広がり、多様な性能の多層チューブの開発に益する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による多層樹脂チューブの一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0013】
第1実施形態
図1は、本発明を4層の樹脂層をもった樹脂チューブに適用した実施形態の横断面を示す図である。
この第1実施形態の樹脂チューブは、外層の第1層がポリアミド11からなる熱可塑性樹脂層と、第2層が接着樹脂層と、第3層のポリアミド11からなる中間層と、最内層の第4層が機能樹脂としてETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)を用いた機能樹脂層と、からなる4層構造の樹脂チューブである。
【0014】
第2層の接着樹脂層には、アミノ基を有する熱可塑性樹脂が用いられており、例えば、 PA11、PA12、PA6がある。この樹脂を接着樹脂層に用いた場合、外側の第1層のポリアミド11に対しては接着性が良好であるものの、機能樹脂のETFEに対しては、接着性の相性が悪く、良好な接着性が得られないという性質がある。
【0015】
ところが、本実施形態では、ポリアミド11からなる中間層を接着樹脂層と機能樹脂層の間に介在させることによって、中間層は、接着樹脂層に対しても、機能樹脂層に対しても接着親和性があるので、接着樹脂と機能樹脂の接着性の相性は問題とならない。
【0016】
中間層に用いる樹脂には、ポリアミドを基材とする樹脂材料として、PA11、PA12、PA6がある。PA6の場合、耐衝撃性を高めるためオレフィン系のエラストマを添加したものでもよい。ポリアミド系以外では、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を用いることもできる。
【0017】
第2実施形態
図2は、本発明を6層の樹脂層をもった樹脂チューブに適用した実施形態の横断面を示す図である。
この第2実施形態の樹脂チューブは、外層の第1層がポリアミド12からなる熱可塑性樹脂層と、第2層が接着樹脂層と、第3層の機能樹脂層と、第4層の接着樹脂層と、第5層の中間層、第6層の機能樹脂層と、からなる6層構造の樹脂チューブである。
【0018】
表1に、この第2実施形態による多層樹脂チューブにおける材料樹脂の組み合わせ例を示す。
【表1】

【0019】
第1例の場合、第2層と第4層の接着樹脂層に用いる樹脂に、アミノ基を有する熱可塑性樹脂として、例えば、PA11、PA12、PA6のうち、いずれかを用いたとする。この樹脂は、第1層のポリアミド12と第3層のPPSに対しては接着性の相性がよいのに対して、第6層のETFEに対しては相性が悪い。そこで、第4層と第3層の双方に接着親和性のあるポリアミド12からなる中間層を第5層として増やすことにより、第4層と第6層の相性の悪いの問題はなくなる。
【0020】
同じように、第2例において、第4層の接着層の樹脂がEvOHに対しては相性が良いかわりにETFEに対しては悪くても、第5層の中間層がその双方に対して接着親和性をもっているので問題がなくなる。
【0021】
このように、接着樹脂として同じ樹脂を用いても、組み合わせの機能樹脂のバリエーションが広がり、従来のように、機能樹脂の組み合わせによっては、接着性の相性の良い樹脂の開発が強いられるという不都合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態による多層樹脂チューブの横断面図。
【図2】本発明の第2実施形態による多層樹脂チューブの横断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を材料とする複数の樹脂層からなる多層構造を有する樹脂チューブにおいて、
樹脂チューブの構成層のうち主要樹脂層と、該主要樹脂層同士の接着を目的とする接着樹脂層との間に、その双方に対して接着親和性を有する樹脂からなる中間層を介在させたことを特徴とする多層樹脂チューブ。
【請求項2】
熱可塑性樹脂を材料とする複数の樹脂層からなる多層構造を有する樹脂チューブにおいて、
最外側樹脂層と、特定の性質を強化した一層以上の機能樹脂層と、内外両側にある機能性樹脂層の一方に対して接着性の相性が良くない樹脂からなる接着樹脂層と、を有し、
前記接着樹脂層と、接着性の相性が良くない機能性樹脂層の間に、その双方に対して接着親和性を有する樹脂からなる中間層を介在させたことを特徴とする多層樹脂チューブ。
【請求項3】
前記中間層は、ポリアミドを基材とする熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の多層樹脂チューブ。
【請求項4】
前記中間層は、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12のいずれかの樹脂からなることを特徴とする請求項3に記載の多層樹脂チューブ。
【請求項5】
前記中間層は、ポリアミド6とオレフィン系のエラストマーとの共重合体からなることを特徴とする請求項3に記載の多層樹脂チューブ。
【請求項6】
前記中間層は、ポリプロピレンまたはポリエチレンを基材とする熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の多層樹脂チューブ。
【請求項7】
前記接着層は、アミド基を有する熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の多層樹脂チューブ。
【請求項8】
前記機能性樹脂層は、アミド基を有する熱可塑性樹脂と接着性の相性の良くない、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、エチレンビニルアルコール(EvOH)、、PBN(ポリブチレンナフタレート)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)のいずれかの樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の多層樹脂チューブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−159837(P2006−159837A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358240(P2004−358240)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(390039929)三桜工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】