説明

多層溶融合成樹脂供給装置

【課題】装置の機械的強度を過剰に低減せしめる等の別個の問題を生成せしめることなく、外側溶融合成樹脂に包み込まれる内側溶融合成樹脂が存在すべきでない部位においても糸状に存在する糸引き現象を可及的に回避乃至抑制することができる多層合成樹脂供給装置を提供する。
【解決手段】主排出路(18)の上流端に連通する副排出路(22)を円筒形状の大径上流部(24)と小径下流部(26)を含む形態にすると共に、遮断部材(58)を副排出路の大径上流部に対応する円柱形状の大径上流部(62)と副排出路の小径下流部に対応する小径下流部(60)とを含む形態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側合成樹脂層とこの外側合成樹脂層に包み込まれた少なくとも1層の内側合成樹脂層とを含む多層合成樹脂素材を形成するための多層合成樹脂供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中空成形を加えて飲料用容器に成形される前成形体(一般にプリフォームと称されている)、容器蓋或いはカップ形態の容器を形成するための合成樹脂素材として、外側合成樹脂層とこの外側合成樹脂層に包み込まれた少なくとも1層の内側合成樹脂層とを含む多層合成樹脂素材が広く使用されている。通常、外側合成樹脂層は機械的特性及び衛生性に優れた合成樹脂から構成され、内側合成樹脂層はガスバリアー性に優れた合成樹脂から構成される。
【0003】
下記特許文献1及び2には上記多層合成樹脂素材を形成するための多層合成樹脂供給装置が開示されている。かかる多層合成樹脂供給装置は、下流端に排出口を有する主排出路と、この主排出路の上流端に連通されている副排出路とを備えている。主排出路の上流端には第一の溶融合成樹脂を供給するための第一の供給路が連通せしめられ、副排出路には第二の溶融合成樹脂を供給するための第二の供給路が連通せしめられている。更に、副排出路と主排出路との連通を選択的に遮断する遮断手段が配設されている。副排出路は円筒形状であり、遮断手段は排出路に対応した円柱形状である遮断部材から構成されている。遮断部材は副排出路を通して主排出路の上流端まで或いはこれを越えて主排出路内に進出して副排出路と主排出路との連通を遮断する作用位置と、主排出路の上流端よりも後退して副排出路と主排出路との連通を許容する非作用位置とに選択的に位置付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2004/065101公報
【特許文献2】国際公開WO2007/125701公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等の経験によれば、上記特許文献1及び2に開示されている多層合成樹脂供給装置には、遮断部材を作用位置に位置せしめても副排出路と主排出路との連通を充分に遮断することができず、副排出路から主排出路に第二の溶融合成樹脂が流入し、外側合成樹脂層を構成する第一の溶融合成樹脂中に流動方向に離隔して存在すべき内側合成樹脂を構成する第二の溶融合成樹脂が本来的には存在すべきでない部位においても糸状に存在する糸引き現象が不可避的に発生することが判明している。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、装置の機械的強度を過剰に低減せしめる等の別個の問題を生成せしめることなく、上述した糸引き現象を可及的に回避乃至抑制することができる、新規且つ改良された多層合成樹脂供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究及び実験の結果、副排出路の内径及び遮断部材の外径を小さくすれば、糸引き現象を可及的に回避乃至抑制することができることを知得した。他方、遮断部材の外径を小さくすると遮断部材の強度が過小になり、短期間のうちに遮断部材が損傷してしまうことも認識した。そして、かような知得及び認識に基づき、副排出流路を円筒形状の大径上流部と小径下流部とを含む形態にすると共に、遮断部材を副排出路の大径上流部に対応する円柱形状の大径上流部と副排出路の小径下流部に対応する小径下流部とを含む形態にすることによって、遮断部材の強度を過剰に低減せしめることなく糸引き現象を可及的に回避乃至抑制することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する多層溶融合成樹脂供給装置として、下流端に排出口を有する主排出路と、該主排出路の上流端に連通されている副排出路と、該主排出路の上流端に連通されている、第一の溶融合成樹脂を供給するための第一の供給路と、該副排出路に連通されている、第二の溶融合成樹脂を供給するための第二の供給路と、該副排出路と該主排出路との連通を選択的に遮断する遮断手段とを具備し、該副排出路は直線状に延在し、その下流端が該主排出路の上流端中央部に連通されており、該遮断手段は該副排出路と該主排出路との連通を遮断する作用位置と該副排出路と該主排出路とを連通せしめる非作用位置との間を滑動自在に該副排出路内に配設された遮断部材を含む、多層溶融合成樹脂供給装置において、
該副排出路は内径d1を有する円筒形状の大径上流部及び小径下流部を含み、該遮断部材は該副排出路の該大径上流部の該内径d1に対応した外径D1を有する円柱形状の大径上流部及び該遮断部材の該小径下流部に対応した小径下流部を含み、該遮断部材が該作用位置に位置せしめられると、該遮断部材の先端は該主排出路の上流端に位置し或いは該主排出路の上流端を超えて該主排出路内に突出し、該遮断部材が該非作用位置に位置せしめられると、該遮断部材の該先端は該副排出路の該大径上流部と該小径下流部の境界に位置し或いは該副排出路の該大径上流部と該小径下流部の境界よりも上流側に位置する、ことを特徴とする多層溶融合成樹脂供給装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該副排出路の該小径下流部は該内径d1よりも小さい内径d2を有する(d1>d2)円筒形状であり、該副排出路の該大径上流部と該小径下流部との境界には環状肩面が存在し、該遮断部材の該小径下流部は該内径d2に対応した内径D2を有する円柱形状であり、該遮断部材の該大径上流部と該小径下流部の境界には環状肩面が存在し、該遮断部材が該作用位置に位置せしめられると、該遮断部材の該環状肩面が該副排出路の該環状肩面に密接せしめられる。他の好適形態においては、該副排出路の該小径下流部は下流に向かって内径が漸次減少する円錐台筒形状であり、該遮断部材の該小径下流部は下流に向かって外径が漸次減少する円錐台柱形状である。該遮断手段は該遮断手段を滑動せしめるための機械式滑動機構を含み、該滑動機構は該遮断部材を該作用位置に弾性的に偏倚する弾性偏倚手段を有するのが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の溶融合成樹脂供給装置においては、装置の機械的強度を過剰に低減せしめる等の別個の問題を生成せしめることなく、上述した糸引き現象を可及的に回避乃至抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って構成された多層溶融合成樹脂供給装置の好適実施形態を示す簡略断面図。
【図2】図1に示す多層溶融合成樹脂供給装置の主要部(二点鎖線で囲んだ部位)を示す拡大断面図。
【図3】本発明に従って構成された多層溶融合成樹脂供給装置の変形例の主要部を示す、図2と同様の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された多層溶融合成樹脂供給装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0013】
図1及び図2を参照して説明すると、本発明に従って構成された図示の多層溶融合成樹脂供給装置は、全体を番号2で示すノズル手段を具備している。このノズル手段2はノズル本体4と先端ノズル部材6とから構成されている。ノズル本体4は同心状に配列された筒状部材8、10、12、14及び16から構成されており、先端ノズル部材4はノズル本体4の下端に付設されている。図2に明確に図示する如く、先端ノズル部材6には主排出路18を規定する貫通穴が形成されている。図示の実施形態における主排出路18は円筒形状の上流端部、下流に向かって(図1において下方に向かって)内径が漸次増大する円錐台筒形状である上流部、上流部に続く円筒形状の主部を有する。主排出路18の下流端、従って先端ノズル部材6の下面、には円形状である排出口20が形成されている。
【0014】
主として図2を参照して説明を続けると、ノズル本体4の下端部には副排出路22が形成されている。この副排出路22は大径上流部24と小径下流部26とを含んでいることが重要である。図示の実施形態における大径上流部24は内径d1を有する円筒形状であり、かかる大径上流部24に続く小径下流部26は内径d2を有する円筒形状であり、内径d2は内径d1よりも小さい(d1>d2)。図2を参照することによって明確に理解される如く、上記主排出路18の最小内径(上流端部の内径)d3は副排出路22の大径上流部24の内径d1よりも大きい(d3>d1)。大径上流部24と小径下流部26との境界には上流側を向いた環状肩面28が形成されている。この環状肩面28は半径方向外方に向かって上方に円弧状に延在せしめられている。所望ならば、環状肩面28を実質上水平に延在せしめることもできる。副排出路22の下流端、従って小径下流部26の下流端は主排出路18の上流端に直接的に連通せしめられている。図1に図示する如く、ノズル本体4には副排出路22の上流端からノズル本体4の上端まで連続して延在する全体として円筒形状の縦孔30も配設されている。
【0015】
ノズル本体4には、更に、第一の供給路32、第二の供給路34及び第三の供給路36も配設されている。第一の供給路32は筒状部材8と筒状部材10との間に規定されており、その下流部は下方に向かって半径方向内方に傾斜する逆円錐台筒形状であり、下流端は主排出路18の上流端周縁領域に連通せしめられている。第一の供給路32の上流端は第一の溶融合成樹脂供給手段38に接続されている。第一の溶融合成樹脂供給手段38は押出機40及びギアポンプ42から構成されている。押出機40から押し出される第一の溶融合成樹脂がギアポンプ42によって第一の供給路32に送り出され、第一の供給路32を通して主排出路18の上流端に供給される。押出機40から押し出される第一の合成樹脂はポリエステル系樹脂(PET、PEN、PLAなど);オレフィン系樹脂(PE、PPなど)の如き機械的特性及び衛生性に優れた樹脂であるのが好適であり、主排出路18の排出口20から排出される多層溶融合成樹脂の外側層を構成する。第二の供給路34は筒状部材10と筒状部材12との間に規定されており、その下流部は下方に向かって半径方向内方に傾斜する逆円錐台筒形状であり、下流端は副排出路22における大径上流部24の下流端周縁領域に接続されている。第二の溶融合成樹脂供給手段34の上流端は第二の溶融合成樹脂供給手段44に接続されている。第二の溶融合成樹脂供給手段44は押出機46及びギアポンプ48から構成されている。押出機46から押し出される第二の溶融合成樹脂がギアポンプ46によって第二の供給路34に送り出され、第二の供給路34を通して副排出路22における大径上流部24の下流端に供給される。押出機46から押し出される第二の合成樹脂はカルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体の如き合成樹脂、またはこれらの合成樹脂に後述の第三の合成樹脂をブレンドしたものでよく、主排出路18の排出口20から排出される多層溶融合成樹脂において外側合成樹脂層と内側合成樹脂層との間に介在せしめられる接着層を構成する。多層溶融合成樹脂を構成する外側溶融合成樹脂層と内側溶融合成樹脂層とが相互に充分な接着性を有する場合には第二の溶融合成樹脂の供給に関する構成を省略することもできる。第三の供給路36は筒状部材12と筒状部材14との間に規定されており、その下流部は下方に向かって半径方向内方に傾斜する逆円錐台筒形状であり、下流端は副排出路22の上流部24の上流端周縁領域に接続されている。第三の溶融合成樹脂供給手段36の上流端は第三の溶融合成樹脂供給手段50に接続されている。第三の溶融合成樹脂供給手段50は押出機52及びギアポンプ54から構成されている。押出機52から押し出される第三の溶融合成樹脂がギアポンプ54によって第三の供給路36に送り出され、第三の供給路36を通して副排出路22における大径上流部24の上流端に供給される。押出機52から押し出される第三の合成樹脂はエチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物);芳香族ポリアミド或いは脂肪族ポリアミドの如きガスバリアー性に優れた合成樹脂、またはこれらの合成樹脂に酸素吸収材もしくは層状無機化合物をブレンドしたものであるのが好適であり、主排出路18の排出口20から排出される多層溶融合成樹脂における内側合成樹脂層を構成する。
【0016】
図1及び図2を参照して説明を続けると、多層溶融合成樹脂供給装置は全体を番号56で示す遮断手段を備えている。この遮断手段56はノズル本体4に形成されている上記縦孔30に上下方向に滑動自在に挿入された遮断部材58を含んでいる。図示の実施形態における遮断部材58は、その最下端に位置する小径下流部60、この小径下流部60に続く大径上流部62、大径上流部62から更に上方に延出する延出部を有する。小径下流部60の主部は上記副排出路22の小径下流部26の内径d2に対応する外径D2を有する円柱形状であり、その下端部は逆円錐形状である。大径上流部62は上記副排出路22の大径上流部24の内径d1に対応する外径D1を有する円柱形状である。小径下流部60と大径上流部62との境界には下方を向いた環状肩面63が形成されている。この環状肩面63は、上記副排出路22の大径上流部24と小径下流部26との境界に形成されている環状肩面28に対応下形状であり、半径方向外方に向かって上方に円弧状に延在せしめられている。延出部は大径上流部60から上方に延びる逆円錐台柱形状部62、この逆円錐台柱形状部62から更に上方に延びる円柱形状主部64及び円柱形状主部64よりも幾分大径の円柱形状上端部66を有する。図示していないが、ノズル本体3には遮断部材58の延出部における円柱形状主部64を滑動自在に軸支する軸受手段が配設されている。
【0017】
図示の実施形態においては、図1に図示する如く、遮断手段56は遮断部材58を滑動せしめるための機械的滑動機構68も含んでいる。図示の実施形態における滑動機構68は電動モータ70を含んでおり、このモータ70の出力軸には軸支手段72によって回転自在に軸支されている回転軸74が連結されている。回転軸74の先端部(図1において右端部)にはクランク機構76の入力端が接続されており、クランク機構76の出力端には滑動ロッド78が接続されている。滑動ロッド78は軸支手段80によって上下方向に滑動自在に支持されている。それ自体は周知の形態でよいクランク機構76は回転軸74の回転運動を直線運動に変換する。更に詳述すれば、後に更に言及する如く、モータ70によって回転軸74が正転或いは逆転されると滑動ロッド78が図1において上下方向に滑動即ち昇降動せしめられる。滑動ロッド78の下端は継手手段82を介して上記遮断部材58の上端に接続されている。継手手段82は滑動ロッド78の下端に固定された連結円板84、遮断部材58の上端に固定された連結円板86を含んでいる。連結円板84と連結円板86の間には周方向に等角度間隔をおいて3本のボルト88(図1にはそのうちの2本を図示している)が配置されている。ボルト88の各々は連結円板84の形成された貫通孔を通して連結円板86に螺合されており、連結円板84の下面と連結円板86の上面との間においてボルト88には圧縮コイルばね90が被嵌されている。後の説明から明確に理解される如く、圧縮コイルばね90は遮断部材58を作用位置に弾性的に偏倚する弾性偏倚手段を構成する。
【0018】
上述したとおりの多層溶融合成樹脂供給手段の作用効果を説明すると、次のとおりである。滑動機構68の作用によって遮断部材58は図2に実線で示す作用位置、二点鎖線イで示す中間位置及び二点鎖線ロで示す非作用位置に選択的に位置せしめられる。遮断部材58が二点鎖線で示す非作用位置に位置付けられた状態においては、滑動機構68における圧縮コイルばね90は圧縮された状態にあり、遮断部材58の環状肩面63が副排出路22の環状肩面28に弾性的に押圧され、環状肩面63と環状肩面28が密接せしめられる。
【0019】
遮断部材58が実線示す作用位置に位置付けられている間には、副排出路22が主排出路18から遮断される(そしてまた第二の供給路34及び第三の供給路36の下流端が遮断部材58の大径上流部62によって副排出路22から遮断される)故に、主排出路18内には第一の供給路32を通して供給される第一の溶融合成樹脂のみが流入する。所定時間経過後に遮断部材58が二点鎖線で示す非作用位置に位置せしめられると、副排出路22の下流端が主排出路18の上流端に連通せしめられ、そしてまた第二の供給路34及び第三の供給路32が副排出路22の大径上流部24に連通せしめられ、従って第二の供給路34を通して供給される第二の溶融合成樹脂が副排出路22を介して主排出路18に流入すると共に、第三の供給路36を通して供給される第三の溶融合成樹脂が副排出路22を介して主排出路18に流入する。かくして、主排出路18内に流入せしめられている第一の溶融合成樹脂中に第二の溶融合成樹脂及び第三の溶融合成樹脂が進入せしめられる。遮断部材58が実線で示す作用位置から二点鎖線で示す非作用位置に移動せしめられる際には、最初に第二の供給路34が副排出路22に連通され、次いで第三の供給路36が副排出路22に連通せしめられる故に、第三の溶融合成樹脂はその周表面のみならず前端面も第二の溶融合成樹脂で囲繞された状態で主排出路18内に進入する。所望ならば、遮断部材58を作用位置から非作用位置に移動せしめる際に、第二の供給路34は副排出路22に連通せしめられたが第三の供給路36は未だ副排出路22に連通せしめられていない位置で遮断部材58を所定時間停止せしめることもできる。
【0020】
次いで、所定時間経過後に遮断部材58を再び実線で示す作用位置に位置せしめる。かくすると、副排出路22が主排出路18から遮断され(そしてまた第二の供給路34及び第3の供給路36の下流端が遮断部材58の大径上流部62によって副排出路22から遮断され)、従って主排出路18内には第一の溶融合成樹脂のみが流入することになる。従って、主排出路18内においては第二の溶融合成樹脂及び第三の溶融合成樹脂が第一の溶融合成樹脂に包み込まれた状態が確立される。遮断部材58が非作用位置から作用位置に移動せしめられる際には、最初に第三の供給路36が副排出路22から遮断され、次いで第二の供給路34が副排出路22から遮断される故に、第三の溶融合成樹脂はその後端面も第二の溶融合成樹脂によって囲繞される。所望ならば、遮断部材58を非作用位置から作用位置に移動せしめる際にも、第三の供給路36は副排出路22から遮断されたが第二の供給路34は未だ副排出路22から遮断されていない位置で遮断部材58を所定時間停止せしめることもできる。而して、本発明に従って構成された溶融合成樹脂供給装置においては、副排出路22は内径を充分に小さくすることができる小径下流部26を有し遮断部材58は外径D2を充分に小さくすることができる小径下流部60を有し、そしてまた遮断部材58が作用位置に位置せしめられると、遮断部材58の環状肩面63が副排出路22と主排出路18の境界に形成されている環状肩面28に弾性的に押圧せしめられて両者が密接せしめられる故に、遮断部材58が作用位置に位置付けられた後においても第二の溶融合成樹脂及び第三の溶融合成樹脂が主排出路18内に流入して糸引き現象を生成することが可及的に回避される。主排出路18の排出口20から排出される多層溶融合成樹脂は、第一の溶融合成樹脂(外側溶融合成樹脂)のみが存在する部位にて次々に排出口20に沿って切断することによって、内側溶融合成樹脂層(第三の溶融合成樹脂)及び接着層(第二の溶融合成樹脂)が外側溶融合成樹脂層(第一の溶融合成樹脂)に包み込まれた形態の多層溶融合成樹脂塊にせしめられ、前成形体、容器蓋或いはカップ状容器等を圧縮成形するための多層合成樹脂素材として使用される。
【0021】
図3は本発明に従って構成された多層溶融合成樹脂供給装置の変形例を図示している。図3に図示する実施形態においては、副排出路22の小径下流部26は、円筒形状ではなくて、下流に向かって内径が漸次減少する円錐台筒形状であり、これに対応して遮断部材58の小径下部60も下流に向かって外径が漸次減少する円錐台柱形状である。かような変形例においては、遮断部材58が図3に二点鎖線で示す非作用位置から実線で示す作用位置に移動せしめると、圧縮コイルばね90(図1)の弾性偏倚作用によって遮断部材58の小径下流部60の円錐台形状の外周面が副排出路22の小径下流部26の円錐台形状の内周面に押圧され、両面が密接せしめられる。図3に図示する変形例のその他の構成は図1及び図2に図示する上述した実施形態と実質上同一である。
【符号の説明】
【0022】
18:主排出路
20:排出口
22:副排出路
24:副排出路の大径上流部
26:副排出路の小径下流部
28:環状肩面
32:第一の供給路
34:第二の供給路
36:第三の供給路
56:遮断手段
58:遮断部材
60:遮断部材の小径下流部
62:遮断部材の大径上流部
68:滑動機構
90:圧縮コイルばね(弾性偏倚手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流端に排出口を有する主排出路と、該主排出路の上流端に連通されている副排出路と、該主排出路の上流端に連通されている、第一の溶融合成樹脂を供給するための第一の供給路と、該副排出路に連通されている、第二の溶融合成樹脂を供給するための第二の供給路と、該副排出路と該主排出路との連通を選択的に遮断する遮断手段とを具備し、該副排出路は直線状に延在し、その下流端が該主排出路の上流端中央部に連通されており、該遮断手段は該副排出路と該主排出路との連通を遮断する作用位置と該副排出路と該主排出路とを連通せしめる非作用位置との間を滑動自在に該副排出路内に配設された遮断部材を含む、多層溶融合成樹脂供給装置において、
該副排出路は内径d1を有する円筒形状の大径上流部及び小径下流部を含み、該遮断部材は該副排出路の該大径上流部の該内径d1に対応した外径D1を有する円柱形状の大径上流部及び該遮断部材の該小径下流部に対応した小径下流部を含み、該遮断部材が該作用位置に位置せしめられると、該遮断部材の先端は該主排出路の上流端に位置し或いは該主排出路の上流端を超えて該主排出路内に突出し、該遮断部材が該非作用位置に位置せしめられると、該遮断部材の該先端は該副排出路の該大径上流部と該小径下流部の境界に位置し或いは該副排出路の該大径上流部と該小径下流部の境界よりも上流側に位置する、ことを特徴とする多層溶融合成樹脂供給装置。
【請求項2】
該副排出路の該小径下流部は該内径d1よりも小さい内径d2を有する(d1>d2)円筒形状であり、該副排出路の該大径上流部と該小径下流部との境界には環状肩面が存在し、該遮断部材の該小径下流部は該内径d2に対応した内径D2を有する円柱形状であり、該遮断部材の該大径上流部と該小径下流部の境界には環状肩面が存在し、該遮断部材が該作用位置に位置せしめられると、該遮断部材の該環状肩面が該副排出路の該環状肩面に密接せしめられる、請求項1記載の多層合成樹脂供給装置。
【請求項3】
該副排出路の該小径下流部は下流に向かって内径が漸次減少する円錐台筒形状であり、該遮断部材の該小径下流部は下流に向かって外径が漸次減少する円錐台柱形状である、請求項1記載の多層溶融合成樹脂供給装置。
【請求項4】
該遮断手段は該遮断手段を滑動せしめるための機械式滑動機構を含み、該滑動機構は該遮断部材を該作用位置に弾性的に偏倚する弾性偏倚手段を有する、請求項1から3までのいずれかに記載の多層溶融合成樹脂供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−232527(P2012−232527A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103607(P2011−103607)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】