説明

多層熱収縮性ポリエステル系フィルム及びラベル

【課題】 ボトルのフルラベル用の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、収縮によるシワ、収縮斑、歪みの発生が極めて少なく、経時による低温収縮性の低下が少なく、印刷後の経時においてもラベルの収縮時に折れ込み等の不具合が発生しにくい熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供すること。
【解決手段】 少なくとも2層からなる多層熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、前記ポリエステル系フィルムの熱収縮率が、処理温度70℃・処理時間5秒で5〜70%であり、85℃・5秒で75%以上であり、主収縮方向と直交する方向において、85℃・5秒で10%以下であり、25℃保管1ヶ月後の温湯収縮率が、主収縮方向において、処理温度70℃・処理時間5秒で25%以上であり、収縮時に片面側へカールすることを特徴とする多層熱収縮性ポリエステル系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、特にラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。さらに詳しくは、ボトルのフルラベル用、特にペットボトルのフルラベル用であって、熱収縮によるシワ、収縮斑、歪みの発生が極めて少なく、収縮不足が発生しにくい熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルム、特にボトルの胴部のラベル用の熱収縮性フィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等からなるフィルムが主として用いられている。しかし、ポリ塩化ビニルについては、近年、廃棄時に焼却する際の塩素系ガス発生が問題となり、ポリエチレンについては、印刷が困難である等の問題がある。さらに、ペットボトルの回収リサイクルにあたっては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等のポリエチレンテレフタレート以外の樹脂のラベルは分別する必要がある。このため、これらの問題の無いポリエステル系の熱収縮性フィルムが注目を集めている。
【0003】
また、近年、ペットボトルのリサイクルに関して着色ボトルは再生に不向きであることからその代案が検討されてきた。その中に無着色ボトルを使用し、印刷ラベルをボトル全体に収縮させる方法がある。また、ガラス瓶のリターナブル耐性を高める為に瓶の頭部から底部までラベルを収縮させる方法もある。
【0004】
しかし、ボトルのフルラベルとして使用する場合、ボトル形状が複雑でかつ多くの種類があるため、従来の熱収縮性フィルムでは収縮仕上がり性において問題が発生する場合がある。特に飲料ボトル等で、飲み口部分が細く胴部との径の差が大きいボトルのフルラベルの場合、従来の熱収縮性フィルムはボトルの上部(頭部や首部)に収縮不足が発生する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−135737号公報
【0005】
また、収縮前の保管期間中に低温収縮性が低下することにより収縮仕上げ時の条件変更が必要であったり、場合によっては収縮不良となるケースも発生する。
【0006】
このようなボトルのフルラベルに使用する熱収縮性フィルムは、高収縮率などの熱収縮特性が必要である。
また、印刷加工から経時したラベルにおいては収縮時にラベルの一部が折れ込む等の不具合が発生しやすいといった問題点もある。これについて原因は明確ではないが印刷インキに残留した有機溶剤が何らかの影響を及ぼしていることが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、その目的とするところは、ボトルのフルラベル用、特にペットボトルやガラス瓶のフルラベル用熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、収縮不足が発生しにくく、特に収縮によるシワ、収縮斑、歪みの発生が極めて少ない上に、印刷後の経時においてもラベルの折れ込み等の不具合が発生しにくく、かつ、とす経時による低温収縮性の低下が少ない熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも2層からなる多層熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、前記ポリエステル系フィルムの熱収縮率が、処理温度70℃・処理時間5秒で5〜70%であり、85℃・5秒で75%以上であり、主収縮方向と直交する方向において、85℃・5秒で10%以下であり、25℃保管1ヶ月後の温湯収縮率が、主収縮方向において、処理温度70℃・処理時間5秒で25%以上であり、収縮時に片面側へカールすることを特徴とする多層熱収縮性ポリエステル系フィルムであり、このことにより課題が解決できる。
【0009】
本願発明は、A層およびB層からなる多層フィルムとし、A層およびB層にそれぞれ異なる特性を付与することで多機能化を達成するものである。
例えば、A層におけるポリエステルエラストマー含有量が15質量%以上20質量%以下であり、例えば、B層におけるポリエステルエラストマー含有量が10質量%以上15質量%未満とすることで、印刷加工後の経時においてラベルの折れ込み不良等の不具合を発生しにくくするものである。
【0010】
この場合において、ポリエステルエラストマーは例えば、高融点結晶性ポリエステルセグメント(Tm200℃以上)と分子量400以上好ましくは400〜800の低融点軟質重合体セグメント(Tm80℃以下)からなるポリエステル系ブロック共重合体であり、ポリ−ε−カプロラクトン等のポリラクトンを低融点軟質重合体セグメントに用いたポリエステル系エラストマーが特に好ましい。
【0011】
高融点結晶性ポリエステルセグメント構成成分は、その構成成分だけで繊維形成性高分子量重合体としたときに融点が200℃以上のものであるが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5一ナフタレンジカルボン酸、2,6一ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の残基と、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール,ペンダメチレングリコール、2,2一ジメチルトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、p一キシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、芳香族又は脂環族ジオールの残基とからなるポリエステルセグメント;p一(β一ヒドロキシエトキシ)安息香酸、p一オキシ安息香酸ヒバロラクトン等のオキシ酸の残基からなるポリエステルセグメント;1,2一ビス(4,4'一ジカルボキシメチルフェノキシ)エタン、ジ(4一カルボキシフェノキシ)エタン等の芳香族工一テルジカルボン酸の残基と上記と同様のジオールの残基とからなるポリエーテルエステルセグメント;ビス(N一ハラカルポエトキジフェニル)テレフタルイミド等の芳香族アミドジカルボン酸の残基と上記と同様のジオールの残基とからなるポリアミドエステルセグメントなどを挙げることができる。
【0012】
さらに、上記の酸のいずれかを2種以上又は/及び上記のグリコールのいずれかを2種以上を使用した共重合ポリエステルセグメントなども挙げることができる。
【0013】
また、分子量400以上の低融点軟質重合体セグメント構成成分は、ポリエステル系ブロック共重合体中で実質的に非晶の状態を示すものであり、該セグメント構成成分だけで測定した場合の融点ないし軟化点が80℃以下のものをいう。その分子量は、通常400〜8000、好ましくは700〜5000である。
【0014】
また・ポリエステル系ブロック共重合体中の低融点軟質重合体セグメント構成成分の割合は1〜90重量%であるのが好ましい。特に好ましい割合は5〜80重量%である。
【0015】
代表的な低融点軟質重合体セグメント構成成分としては、ポリエチレンオキサイドグリコール、ポリプロピレンオキサイドグリコール、ポリテトラメチレンオキサイドグリコーノレ、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合グリコール、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとの共重合グリコール等のポリエーテル、ポリネオペンチルアゼレート、ポリネオペンチルアジペート、ポリネオペンチルセバケート等の脂肪族ポリエステル、ポリーε一カプロラクトン等の環状エステノレのポリマーなどを挙げることができる。
【0016】
上記ポリエステノレ系エラストマーは、ポリエステル系フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に、通常3〜50重量%程度含有せしめるのが好ましく、5〜30重量%含有せしめるのがより好ましく、7〜20重量%含有せしめるの
が特に好ましい。
【0017】
また、本発明において使用するポリエステル系エラストマーとしては、低融点軟質重合体セグメントとしてポリ−ε一カプロラクトンを用いたポリエステル系ブロック共重合体であるのが好ましい。特にポリリブチレンテレフタレート成分を含むのが好ましい。かかるポリエステル系エラストマーを含有するポリエステル樹脂組成物を用いることにより、得られる熱収縮性ポリエステル系フィノレムの低温収縮性が発現しやすくなり、経時後の収縮率低下抑制効果が大きくなるという利点が得られる。
【0018】
この場合において、全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計が16モル%以上とすることにより、溶剤接着性等の二次加工特性を満足させやすくなり、特に18モル%以上であることが好ましい。
【0019】
この場合において、前記フィルムが全ポリステル樹脂成分中における非晶質成分となりうるモノマーがネオペンチルグリコール、及び又は1,4−シクロヘキサンジメタノールであることが好適である。
【0020】
さらにまた、この場合において、厚み分布が6%以下であることが好適である。
【0021】
さらにまた、この場合において、前記フィルムを用いて作成されたラベルがボトルに好適な用途である。
【0022】
さらにまた、この場合において、前記フィルムを用いて、A層側を内面、B層側を外面となるように作成されたラベルがボトルに好適な用途である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ボトルのフルラベルとして使用する場合、熱収縮によるシワ、収縮斑、歪み及び収縮不足の発生が極めて少ない良好な仕上がりが可能である。このようにフルボトルのラベル用途として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を具体的に説明する。
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、以下のようにして得ることができる。ジカルボン酸成分と多価グリコール成分とで構成されるポリエステルを、押出機から溶融押出しシ、導電性冷却ロール(キャスティングロールなど)で冷却してフィルム化する(未延伸フィルム)。
【0025】
なお前記押出しに際しては、共重合ポリエステルを単独で押出すか、又は複数のポリエステル(共重合ポリエステル、ホモポリエステルなど)を混合して押出す。つまり、前記フィルムは、ベースユニット(ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ユニットなど)と、前記ベースユニットを構成する多価グリコール成分(エチレングリコール成分など)とは異なる第2のアルコール成分を含有している。
なお、本発明の酸成分、ジオール成分の含有率は、2種以上のポリエステルを混合して使用する場合、ポリエステル全体の酸成分、ジオール成分に対する含有率である。混合後にエステル交換がなされているかどうかにはかかわらない。
【0026】
上記ポリエステルは、いずれも従来の方法により重合して製造され得る。例えば、ジカルボン酸とジオールとを直接反応させる直接エステル化法、ジカルボン酸ジメチルエステルとジオールとを反応させるエステル交換法などを用いて、ポリエステルが得られる。重合は、回分式および連続式のいずれの方法で行われてもよい。
【0027】
第2のアルコール成分を含有するポリエステル系フィルムを延伸すると、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることができる。
【0028】
前記第2のアルコール成分は、ジオール成分および三価以上のアルコール成分が使用できる。ジオール成分には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの環状アルコール;ジエチレングリコール、採りエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノール化合物又はその誘導体のアルキレンオキサイド付加物などのエーテルグリコール類;ダイマージオールなどが含まれる。三価以上のアルコールには、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどが含まれる。
【0029】
また、全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計が16モル%以上であることが好ましく、特に18モル%以上であることが好ましい。
ここで非晶質成分となりうるモノマーとは、例えばネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0030】
また、収縮仕上がり性が特に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムとすると共に、高い熱収縮率でありながら収縮仕上がり性を向上させるためには、全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中、ネオペンチルグリコール成分が5モル%以上、及び又は1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が5モル%以上であることが好ましい。さらに、ネオペンチルグリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれかの量または両モノマーを合わせた量が16モル%以上であることが好ましく、特に18モル%以上であることが好ましい。
【0031】
本発明の熱収縮性フィルムは、熱収縮の際に片面側にカールすることを特徴とするが、該カールを適正な範囲内に制御するためには、各層の面配向度の差を0.005〜0.03の範囲内とすることが好ましく、0.01〜0.28の範囲内とすることがより好ましい。面配向度の差が0.005以下ではカールが発現せず、0.03を超えると層界面の接着強度が低下して収縮時剥離が発生する。各層の面配向度の差を上記範囲内とするには、後述の原料処方と製造方法、条件を採用することが好ましい。
【0032】
A層におけるポリエステルエラストマー含有量が15質量%以上20質量%以下であることが好ましく、B層におけるポリエステルエラストマー含有量が10質量%以上15質量%未満とすることが好ましい。ここでポリエステルエラストマーとは、例えば高融点結晶性ポリエステルセグメント(Tm200℃以上)と分子量400以上好ましくは400〜800の低融点軟質重合体セグメント(Tm80℃以下)からなるポリエステル系ブロック共重合体であり、ポリ−ε−カプロラクトン等のポリラクトンを低融点軟質重合体セグメントに用いたポリエステル系エラストマーが挙げられる。
つまり、A層およびB層からなる多層フィルムとし、A層およびB層にそれぞれ異なる特性を付与することで多機能化を達成するものである。
上記のような構成とすることで、得られるフィルムは熱収縮の際に片面へカールするように制御でき、例えば、非カール面に印刷を施しラベルの内面側とすることによって経時後の折れ込み不良を回避することが可能である。
フィルムのカール量は後述の評価方法で5%〜100%が好ましく、10%〜100%がより好ましい。なお、本発明においてフィルム又はラベルが収縮時に片面側にカールするとは、後述の評価方法においてカール量が1%以上であることをさす。
また、ポリエステルエラストマーを上記範囲とし、後述の好ましい製造方法、条件と組み合わせることで主収縮方向と直交する方向の収縮率を適正にすることが可能である。
【0033】
A層とB層に共通することとして、炭素数8個以上の脂肪族直鎖ジオール(例えばオクタンジオール等)、又は3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)は、含有させないことが好ましい。これらのジオール、又は多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0034】
また、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールはできるだけ含有させないことが好ましい。特にジエチレングリコールは、ポリエステル重合時の副生成成分のため、存在しやすいが、本発明で使用するポリエステルでは、ジエチレングリコールの含有率が4モル%未満であることが好ましい。
【0035】
さらに、熱収縮性フィルムの易滑性を向上させるために、例えば、二酸化チタン、微粒子状シリカ、カオリン、炭酸カルシウムなどの無機滑剤、また例えば、長鎖脂肪酸エステルなどの有機滑剤を含有させるのも好ましい。また、必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0036】
[極限粘度]
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、極限粘度が0.60dl/g以上であることが望ましい。熱収縮性フィルムの極限粘度が小さ過ぎると、フィルムを構成するポリエステルの分子量が低くなるために、熱収縮する際の収縮応力の持続性が低下し、収縮白化や収縮斑などの欠点が発生し易くなり、収縮仕上がり性や、外観性に劣るものになる。また、ポリエステルの分子量が低下すると、フィルムの機械的強度や耐破れ性を低下させる。
【0037】
前記極限粘度は、好ましくは0.60dl/g以上、さらに好ましくは0.63dl/g以上である。
【0038】
フィルムの極限粘度を高める方法としては、例えば、(1)フィルムの原料であるポリエステルに高分子量のポリエステルを使用する方法(例えば、極限粘度が0.63dl/g以上、好ましくは0.68dl/g以上、さらに好ましくは0.70dl/g以上のポリエステルを使用する方法)、(2)ポリエステルを押出し加工してフィルムを形成する際の熱分解や加水分解を抑制する方法(例えば、ポリエステル原料を予備乾燥して水分率を100ppm以下、好ましくは50ppm以下程度にしてから押出し加工する方法)、(3)前記ポリエステルとして耐加水分解性のポリエステルを使用する方法(例えば、酸価が25eq/ton以下のポリエステルを使用する方法)、(4)ポリエステルに酸化防止剤(例えば0.01〜1質量%程度含有)させる方法などが挙げられる。
【0039】
重合触媒としては、慣用の種々の触媒が使用でき、例えば、チタン系触媒、アンチモン系触媒、ゲルマニウム系触媒、スズ系触媒、コバルト系触媒、マンガン系触媒など、好ましくはチタン系触媒(チタニウムテトラブトキシドなど)、アンチモン系触媒(三酸化アンチモンなど)、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウムなど)、コバルト系触媒(酢酸コバルトなど)などが挙げられる。
【0040】
[熱収縮率]
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、温水中で無荷重状態で処理して収縮前後の長さから、熱収縮率=((収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ)×100(%)の式で算出したフィルムの熱収縮率が、主収縮方向において、処理温度70℃・処理時間5秒で5〜60%であり、好ましくは10〜30%であり、85℃・5秒で75%以上であり、好ましくは75〜95%である。また、主収縮方向と直交する方向において、85℃・5秒で10%以下であり、好ましくは6%以下である。
【0041】
主収縮方向の熱収縮率が70℃・5秒で5%未満の場合は、低温収縮性が不足し、例えば収縮温度を高くする必要があり好ましくない。一方、60%を越える場合は、例えば熱収縮によるラベルの飛び上がりが発生し易く好ましくない。
【0042】
85℃・5秒の熱収縮率は好ましくは75〜95%であり、75%未満の場合は、例えばボトルの頭部の収縮が不十分になり好ましくない。一方、95%を越える場合は加熱収縮後もさらに収縮する力が強く残るため、例えばラベルが飛び上がりやすくなる等の不具合が発生し易く好ましくない。
【0043】
次に本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造法について、具体例を説明するが、この製造法に限定されるものではない。
【0044】
本発明に用いるポリエステル原料をホッパドライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥し、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。押し出しに際してはTダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用して構わない。押し出し後、急冷して未延伸フィルムを得る。
【0045】
また、押出し温度に関しては250℃〜290℃の範囲で行うことが好ましい。押出し温度が250℃を下回ると、例えば負荷が掛かり過ぎて正常な押出しが困難となる。押出し温度が290℃を超えると、例えば押出機内でポリエステル樹脂が熱劣化しやすく、得られるフィルムの機械的強度の低下や縦収縮が過剰にマイナス値を示し収縮仕上がり性を低下させる等の不具合を生じる。
【0046】
前記フィルムの延伸倍率(主方向の延伸倍率)は、第2のアルコール成分の種類や割合に応じて適宣選択できるが、例えば、4.0倍以上、好ましくは4.5倍以上、特に5倍以上延伸するのが好適である。また、延伸倍率の上限に関しては特に制限はないが、製膜性からは7倍以下が好ましく、6倍以下がより好ましい。
【0047】
[溶融比抵抗値]
本発明で用いる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、温度275℃における溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下である。このようなフィルムを用いると、以下に詳細に説明するように、フィルム厚みの均一性を高めることができ、フィルムへの印刷性や、フィルムを容器に装着可能な形態に加工する際の加工性(安定加工性)を高めることができる。
【0048】
溶融比抵抗値を上記範囲に制御するためには、フィルム中にアルカリ土類金属化合物と、リン含有化合物とを含有させるのが好ましい。アルカリ土類化合物だけでも溶融比抵抗値を下げることができるが、リン含有化合物を共存させると溶融比抵抗値を著しく下げることができる。アルカリ土類金属化合物とリン含有化合物とを組み合わせることによって溶融比抵抗値を著しく下げることができる理由は明らかではないが、リン含有化合物を含有させることによって、異物の量を低減でき、電荷担体の量を増大できるためと推定される。
【0049】
上述の溶融比抵抗値を下げるための化合物(アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン含有化合物など)の添加時期は特に限定されず、エステル化反応前、エステル化中、エステル化終了から重合開始までの間、重合中、及び重合後のいずれの段階であってもよい。好ましくはエステル化工程の後の任意の段階、さらに好ましくはエステル化終了から重合工程開始までの間である。エステル化工程の後にアルカリ土類金属化合物、リン含有化合物(及び必要に応じてアルカリ金属化合物)を添加すると、それ以前に添加する場合に比べて異物の生成量を低減できる。
【0050】
[最大収縮方向の厚み分布値]
なお前記のようにして溶融比抵抗値を下げて、フィルム厚みの均一性を高めても、それだけでは不十分である。すなわちフィルムロールを形成する場合、前記フィルムは長尺(例えば300m〜6000m程度)であるため、測定箇所によっては厚みの均一性が低下する虜がある。
【0051】
厚みの均一性については、下記式で表される厚み分布値に基づいて定めることができる。
【0052】
厚み分布値=(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100
前記最大厚み、最小厚み、及び平均厚みは、前記主収縮方向の長さが20cm、幅が5cmとなるようにロールから試験片を切り取り、接触式厚み計を用いて主収縮方向に対する厚みの変位を測定することによって求めることができる。
【0053】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、前記式で算出されたフィルムの厚み分布値が6%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、5%以下である。
【0054】
厚み分布が6%以下のフィルムは、例えば収縮仕上がり性評価時に実施する3色印刷で、色の重ね合せが容易であるのに対し、6%を越えたフィルムは色の重ね合せの点で好ましくない。
【0055】
各箇所の試料が前記前記所定の厚み分布値を有するためには、製膜工程や延伸工程が定常状態に達しているだけでは不十分であり、溶融ポリエステルを押出して冷却ロールで冷却する際のフィルムの静電密着性をも、フィルム製造の初期から終期に亘って安定化させる必要がある。前記冷却に使用する電極として、電極汚染面の退避手段と、電極汚染面の供給手段とを備えている電極の使用好ましい。すなわち溶融ポリエステルの製膜中に電極から電気を与えて、フィルムを静電密着させる場合、前記ポリエステルは複数種のポリマー(ホモポリマー、共重合ポリマーなど)やモノマーを含有しており、種々の低分子成分を含有していることが多いため、溶融押出し時に前記低分子成分が揮発し、電極を徐々に汚染する。そのためフィルムの生産を続けると、徐々に電極の汚染が激しくなり、フィルムに充分な電気を付与することができなくなり、フィルムの静電気密着性が低下する虜がある。そこで前記特定の電極を用いることによって、電極汚染を退避させ、代わりに非汚染面を供給することができ、電極面を汚染の少ない状態に維持できる。そのためフィルムの生産を続けても、静電密着性が低下してくる虜がなく、各箇所の試料が前記所定の厚み分布を有するようになる。
【0056】
各箇所の試料が前記所定の厚み分布を有するためには、フィルム製造の初期から終期に亘って静電気密着性を安定化させる前記方法と共に、(A)フィルム製造中のポリエステル原料を均質化する方法、(B)製造工程を安定化させる方法、及び又は(C)フィルムの延伸工程を安定化させる方法を採用するのが望ましい。
【0057】
(A)フィルムの製造中のポリエステル原料を均質化する方法
使用する原料チップの削れなどにより発生す微粉体(微粉状ポリエステルチップ)は、原料偏析の発生を助長するので、前記微粉体の比率を低減することによっても原料偏析を低減できる。
【0058】
ポリエステルチップ中の微粉体の比率は、原料チップが押出機に入るまでの全工程を通じて、1質量%以内に制御することが好ましく、0.5質量%以内に制御することがさらに好ましい。
【0059】
微粉体を低減させる方法としては、例えば、工程内で発生する微粉体を除去(分級除去など)する方法が採用できる。例えば、ストランドカッターによるチップ形成時に篩を通す方法、原料チップを空送する場合にサイクロン式エアフィルタを通す方法などが採用できる。
【0060】
また、最終ホッパとして、漏斗状ホッパを用い、その斜辺(側壁)を垂直に近づける方法が挙げられる。斜辺(側壁)を垂直に近づければ、大きいチップも小さいチップと同様に落とし易くすることができ、内容物の上端部が水平面を保ちつつ下降していくため、原料偏析の低減に効果的である。
【0061】
前記斜辺(側壁)の傾斜角は、例えば、65°以上、好ましくは70°以上である。なお、斜辺(側壁)の傾斜角とは、漏斗状の斜辺(側壁)と水平な線分との間の角度である。
【0062】
(B)製膜を安定化させる方法
製膜工程を安定化させる方法としては、押出機からの吐出量変動を抑制する方法、冷却ロール(キャスティングロール)の回転速度変動を抑制する方法などが挙げられる。
【0063】
押出機からの吐出量変動を抑制する場合、例えば、吐出量を平均吐出量の±2%以内の範囲に安定化させるのが好ましい。吐出量変動を抑制する場合、例えば、吐出手段としてギアポンプを用いるのが好ましい。
【0064】
冷却ロール(キャスティングロール)の回転速度変動を抑制する場合、例えば回転速度を平均回転速度の±2%以内の範囲に安定化させるのが好ましい。回転速度変動を抑制する場合、例えば、ロール駆動系の回転精度を制御する手段、例えば、回転速度制御用のインバーターを用いるのが好ましい。
【0065】
(C)フィルムの延伸工程を安定化させる方法
フィルムに熱収縮性を付与するためには、未延伸フィルムに対して延伸処理を施す必要がある。フィルムの延伸工程を安定化する場合、一般の延伸方法に対して安定化のための種々の工夫を施す。
【0066】
延伸温度を制御する場合、延伸温度が高くなり過ぎないように制御する。延伸温度が高過ぎると、フィルム厚み分布値が大きくなり過ぎる場合がある。なお延伸温度が高過ぎると、フィルムの熱収縮率が不足する場合があり、さらには得られた熱収縮性フィルムを容器(ボトルなど)に高速装着する際にフィルムの腰の強さが不足する場合もある。
【0067】
延伸温度は、例えばガラス転移温度(Tg)+40℃以下(好ましくは+15℃以下)に制御するのが好ましい。
【0068】
なお厚み分布値との関連性は小さいが、前記延伸温度は、ガラス転移温度(Tg)−20℃以上(好ましくは−5℃以上)とするのが好ましい。延伸温度が低すぎると、フィルムの透明性が低下する場合がある。
【0069】
延伸に伴うフィルムの内部発熱を抑制すると、延伸方向(幅方向など)のフィルムの温度斑を小さくでき、延伸後のフィルム(熱収縮性フィルム)の厚みの均一性を高めることができる。
【0070】
前記内部発熱を制御するためには、加熱条件を適宣制御して(例えば、熱風の供給速度を速くして)フィルムを加熱し易くするのが好ましい。加熱不足の部分があると延伸配向に伴う内部発熱が発生するのに対して、フィルムが充分に加熱されていると延伸時に分子鎖が滑り易くなるため、内部発熱が発生し難くなる。
【0071】
前記加熱条件は熱伝達条件で示すと、例えば、熱伝達係数を0.0038J/cm2・sec・℃(0.0009カロリー/cm2・sec・℃)以上、好ましくは0.0046〜0.0071J/cm2・sec・℃(0.0011〜0.0017カロリー/cm2・sec・℃)程度である。
【0072】
(3)予備予熱条件の制御
予備予熱条件を制御する場合、フィルムを徐々に加熱するように制御するのが好ましい。予備予熱工程でフィルムを徐々に加熱すると、フィルムの温度分布を略均一にできるため、延伸後フィルム(熱収縮性フィルム)の厚みの均一性を高めることができる。
【0073】
前記予熱条件は熱伝達条件で示すと、例えば、熱伝達係数を0.00054J/cm2・sec・℃(0.0013カロリー/cm2・sec・℃)以下程度である。また予備加熱ではフィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内の温度になるまで加熱するのが好ましく、熱風の温度はTg+10℃〜Tg90℃程度であるのが好ましい。
【0074】
前記熱伝達係数を達成する方法としては、例えば、熱風の供給速度を遅くする方法などが挙げられる。
【0075】
(4)延伸の際のフィルムの表面温度の均温化
フィルムを延伸するに際してフィルムの表面温度の変動を小さくする(均温化する)と、フィルム全長に亘って同一温度で延伸や熱処理することができ、厚み分布値や熱収縮挙動を均一化することができる。
【0076】
前記表面温度の変動幅は、任意のポイントにおいてフィルムの表面温度を測定したときの各ポイントの温度が、例えば、フィルムの平均温度±1℃以内であることが好ましく、平均温度±0.5℃以内であることがさらに好ましい。
【0077】
フィルムを延伸する際には、延伸前の予備加熱工程、延伸工程、延伸後の熱処理工程、緩和処理工程、再延伸工程などの種々の工程を経てフィルムを延伸するためこれらの工程の一部または全部で、フィルムの表面温度の変動幅を小さくできる(均温化する)設備を用いるのが好ましい。特に、フィルムの全長に亘って厚み分布値を均一化するためには、予備加熱工程及び延伸工程において(さらに必要に応じて延伸後の熱処理工程において)、フィルムの表面温度変動幅を小さくできる設備を用いることが好ましい。なお熱収縮挙動を均一化する場合には、延伸工程において、フィルムの表面温度の変動幅を小さくできる設備を用いるのが好ましい。
【0078】
前記フィルム温度の変動幅を小さくできる設備としては、例えば、フィルムを加熱するための熱風の供給速度を制御するための風速制御手段(インバーターなど)を備えた設備、空気を安定的に加熱して前記熱風を調整するための加熱手段[500kPa以下(5kgf/cm2以下)の低圧蒸気を熱源とする加熱手段など]を備えた設備などが挙げられる。
【0079】
熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば、ラベル用途に使用する場合、10〜200μm程度、好ましくは20〜100μm程度である。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
本発明のフィルムの評価方法は下記の通りである。
【0082】
(1)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中において、無荷重状態で5秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記(1)式に従いそれぞれ熱収縮率を求めた。該熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
【0083】
(2)収縮仕上がり性
熱収縮性フィルムに、あらかじめ東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷した。印刷面はフィルムのA層側とした。該印刷フィルムより折径108.5mm、高さ195mmのサイズでラベルを作製した。ラベルは印刷面を内側とした。
【0084】
Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式:SH−1500−L)を用い、通過時間10秒、ゾーン温度90℃で、334mlのガラス瓶(高さ190cm、中央部直径6.9cm)(アサヒビール(株)のスタイニースーパードライに使用されているボトル)を用いてテストした(測定数=20)。
評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
○:シワ、飛び上り、収縮不足の何れも未発生
×:シワ、飛び上り、又は収縮不足が発生
【0085】
(3)印刷経時後のラベル折れ込み
上記印刷済みラベルを20℃で2ヶ月間エージングさせた後、Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式:SH−1500−L)を用い、通過時間5秒、ゾーン温度90℃で、334mlのガラス瓶(高さ190cm、中央部直径6.9cm)(アサヒビール(株)のスタイニースーパードライに使用されているボトル)を用いてテストした(測定数=20)。
評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
○:ラベル上部の折れ込みなし
×:ラベル上部の折れ込みあり
【0086】
(4)Tg(ガラス転移点)
セイコー電子工業(株)製のDSC(型式:DSC220)を用いて、未延伸フィルム10mgを、−40℃から120℃まで、昇温速度20℃/分で昇温し、得られた吸熱曲線より求めた。吸熱曲線の変曲点の前後に接線を引き、その交点をTg(ガラス転移点)とした。
【0087】
(5)厚み分布
アンリツ(株)製の接触厚み計(型式:KG60/A)を用いて、縦方向5cm、横方向50cmのサンプルの厚みを測定し(測定数=20)、各々のサンプルについて、下記(2)式により厚み分布(厚みのバラツキ)を求めた。また、該厚み分布の平均値(n=50)を下記の基準に従って評価した。
厚み分布=((最大厚み−最小厚み)/平均厚み)×100(%) (2)
○:6%以下
△:6%より大きく10%未満
×:10%以上
【0088】
(6)極限粘度
試料(フィルム又はチップ)0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒に溶解した後、オストワルド粘度計で30±0.1℃で測定した。極限粘度[η]は下式(Huggins式)によって求められる。
【0089】
ηsp/c=[η]+k[η]2
kはいわゆるHugginsの定数であり、溶質分子間の流体力学的相互作用の尺度である。
[η]は数個の濃度が異なる溶液の粘度測定から ηsp/cをcに対してプロットし、得られた直線をc→0に補外して求める。
ηspは濃度がcのときの比粘度である。
【0090】
(7)フィルム組成
共重合ポリエステルの組成比
積層フィルム各面から削り出した測定対象層のポリマー片サンプル約5mgを重クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比9/1)0.7mlに溶解し、1H−NMR(varian製、UNITY50)を使用して求めた。
【0091】
(8)フィルム表裏面の面配向度差
ATAGO社製アツベ屈折計1Tを使用し、それぞれの面から屈折率を測定し下記式より面配向度を求め、その差を求めた。

式:AO=(Nx+Ny)/2−Nz

AO:面配向度
Nx:主収縮方向の屈折率
Ny:主収縮方向と直交する方向の屈折率
Nz:フィルム厚み方向の屈折率
【0092】
実施例に用いたポリエステルは以下の通りである。
ポリエステルA:ポリエチレンテレフタレート(極限粘度(IV):0.75dl/g)
ポリエステルB:ネオペンチルグリコール30モル%エチレングリコール70モル%とテレフタル酸とからなるポリエステル(IV:0.75dl/g)
ポリエステルC:1.4−シクロヘキサンジメタノール30モル%とエチレングリコール30モル%とテレフタル酸とからなるポリエステル(IV:0.75dl/g)
ポリエステルD:ポリブチレンテレフタレート(IV:1.24dl/g)
ポリエステルエラストマー:ポリブチレンテレフタレート70質量%とε−カプロラクトン30質量%からなるポリエステル(還元粘度(ηsp/c)1.30)
【0093】
(実施例1)
A層としてポリエステルA6質量%、ポリエステルB38.5質量%、ポリエステルC38質量%、ポリエステルエラストマー17.5質量%を混合したポリエステルを、B層としてポリエステルA6質量%、ポリエステルB41質量%、ポリエステルC40.5質量%、ポリエステルエラストマー12.5質量%を混合したポリエステルをそれぞれ260℃で溶融し、層厚み比率がA層/B層=50/50となるようにTダイから共押出し、チルロールで急冷して厚み260μmの未延伸多層フィルムを得た。この未延伸多層フィルムのTgは62℃であった。
【0094】
該未延伸フィルムを、フィルム温度が85℃になるまで予備加熱した後、テンターで横方向に70℃で5倍に延伸し、厚み50μmのフィルムを得た。
【0095】
(実施例2)
A層としてポリエステルA10質量%、ポリエステルB40.5質量%、ポリエステルC40.5質量%、ポリエステルエラストマー9質量%を混合したポリエステルを、B層としてポリエステルA10質量%、ポリエステルB42.5質量%、ポリエステルC42.5質量%、ポリエステルエラストマー5質量%を混合したポリエステルをそれぞれ270℃で溶融し、層厚み比率がA層/B層=50/50となるようにTダイから共押出し、チルロールで急冷して厚み260μmの未延伸多層フィルムを得た。この未延伸多層フィルムのTgは67℃であった。
該未延伸フィルムを、フィルム温度が90℃になるまで予備加熱した後、テンターで横方向に75℃で5倍に延伸し、厚み50μmのフィルムを得た。
【0096】
(実施例3)
A層としてポリエステルA6質量%、ポリエステルB39質量%、ポリエステルC39質量%、ポリエステルエラストマー16質量%を混合したポリエステルを、B層としてポリエステルA6質量%、ポリエステルB40質量%、ポリエステルC40質量%、ポリエステルエラストマー14質量%を混合したポリエステルをそれぞれ260℃で溶融し、層厚み比率がA層/B層=40/60となるようにTダイから共押出し、チルロールで急冷して厚み260μmの未延伸多層フィルムを得た。この未延伸多層フィルムのTgは61℃であった。
該未延伸フィルムを、実施例1と同様にして厚み50μmのフィルムを得た。
【0097】
(比較例1)
ポリエステルA15質量%、ポリエステルB75質量%、ポリエステルD10質量%を混合したポリエステルを、270℃で溶融しTダイから押出し、チルロールで急冷して厚み260μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムのTgは67℃であった。
【0098】
該未延伸フィルムを、フィルム温度が90℃になるまで予備加熱した後、テンターで横方向に74℃で5倍に延伸した以外は実施例1と同様にして、厚み50μmのフィルムを得た。
【0099】
(比較例2)
ポリエステルA20質量%、ポリエステルB77質量%、ポリエステルエラストマー3質量%を混合したポリエステルを、270℃で溶融しTダイから押出し、チルロールで急冷して厚み260μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムのTgは68℃であった。
【0100】
該未延伸フィルムを、フィルム温度が91℃になるまで予備加熱した後、テンターで横方向に76℃で5倍に延伸した以外は実施例1と同様にして、厚み50μmのフィルムを得た。
【0101】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られたフィルムの評価結果を表1に示す。表1から明らかなように、実施例1〜3で得られたフィルムはいずれも収縮仕上がり性が良好であった。また、厚み分布も良好であった。また経時による低温収縮性低下も少なく、印刷経時後の収縮時のラベル折れ込みもなかった。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは高品質で実用性が高く、特に収縮ラベル用として好適である。
【0102】
一方、比較例1〜2で得られた熱収縮性フィルムは印刷経時後のラベルの収縮時に折れ込みが発生し、また、経時による低温収縮性低下も著しいなど、いずれも収縮仕上がり性が劣る。このように比較例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムはいずれも品質が劣り、実用性が低いものであった。
【0103】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ボトルのフルラベルとして使用する場合、熱収縮によるシワ、収縮斑、歪み及び収縮不足の発生が極めて少なく、また経時による低温収縮性の低下が少なく、印刷後の経時においてもラベルの収縮時に折れ込み等の不具合が発生しにくく、良好な仕上がりが可能でありフルボトルのラベル用途として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層からなる多層熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、前記ポリエステル系フィルムの熱収縮率が、処理温度70℃・処理時間5秒で5〜70%であり、85℃・5秒で75%以上であり主収縮方向と直交する方向において、85℃・5秒で10%以下であり、25℃保管1ヶ月後の温湯収縮率が、主収縮方向において、処理温度70℃・処理時間5秒で25%以上であり、収縮時に片面側へカールすることを特徴とする多層熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の多層熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、フィルム片面表面の屈折率を測定して算出した面配向度と反対面側表面の屈折率を測定して算出した面配向度の差が0.005以上であることを特徴とする多層熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、ポリエステルエラストマーが、融点200℃以上である高融点結晶性ポリエステルセグメントと、分子量400以上であり融点80℃以下である低融点軟質重合体セグメントからなるポリエステル系ブロック共重合体であることを特徴とする多層熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
請求項1、2又は3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、全ポリステル樹脂成分中における非晶質成分となりうるモノマーがネオペンチルグリコール、及び又は1,4−シクロヘキサンジメタノールであることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、厚み分布が6%以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いて作成されたラベル。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いて、収縮時にラベルの外面側へカールするように作成されたラベル。

【公開番号】特開2006−181898(P2006−181898A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378727(P2004−378727)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】