説明

多層熱収縮性ポリエステル系フィルム及びラベル

【課題】ラベル用途に好適で、特に収縮仕上り性に優れると共に白色を呈し光線カット性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供すること。
【解決手段】少なくとも2層からなる多層熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、前記ポリエステル系フィルムの全光線透過率が40%以下であり、熱収縮率が主収縮方向において処理温度80℃・処理時間10秒の値[SHW10]と処理時間5秒の値[SHW5]の差[SHW10]−[SHW5]が2%以上であり、主収縮方向において、90℃熱風中における熱収縮応力の最大値が10MPa以下であることを特徴とする多層熱収縮性ポリエステル系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、特にラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。さらに詳しくは、牛乳瓶のキャップシール用、特に宅配牛乳のラベル用であって、熱収縮によるシワ、収縮斑、歪み、飛び上がりの発生が極めて少なく、収縮不足が発生しにくく、印刷加工を施さなくても白色を呈しており光線カット性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルム、特にボトル胴部のラベル用の熱収縮性フィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等からなるフィルムが主として用いられている。しかし、ポリ塩化ビニルについては、近年、廃棄時に焼却する際の塩素系ガス発生が問題となり、ポリエチレンについては、印刷が困難である等の問題がある。さらに、ペットボトルの回収リサイクルにあたっては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等のポリエチレンテレフタレート以外の樹脂のラベルは分別する必要がある。このため、これらの問題の無いポリエステル系の熱収縮性フィルムが注目を集めている。
【0003】
また、近年、飲料や食料品の容器について、その栓または蓋にキャップシールと称するものが施されている。容器によっては、ラベルと一体化しているものもあり、ミシン目に沿って破く事で蓋部分が剥がされるタイプもある。このキャップシールを施す目的は、装飾性を付与するためだけでなく、毒物等の混入防止のためである。
【0004】
しかし、キャップシールとして使用する場合、ビン形状が複雑でかつ多くの種類があるため、従来の熱収縮性フィルムでは収縮仕上がり性において問題が発生する場合がある。特に牛乳ビンの全体の4分の1程度をキャップシールとして被覆する場合、ラベル下部が止まらずに飛び上がりを起こす場合が多々ある。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−301609号公報
【0005】
また、最近、容器の内容物の紫外線からの保護を目的として収縮ラベルを使用するケースが増えている。従来はポリ塩化ビニルの紫外線カットタイプ収縮フィルムが用いられてきたが、他素材の紫外線カットタイプの要求が強まっている。具体的なカット性は内容物によって異なるが、食品・飲料の場合、長波長領域の紫外線である360nm〜400nmの波長で内容物の変質や着色等が起こるため長波長領域、特に380nm及び400nmのカット性が重要である。
【0006】
また、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいては、隠蔽性を付与したものはあるが(例えば特許文献2)上記のキャップシールとして使用出来る収縮率と長波長領域の紫外線カットを兼ね備えたものはなかった。
【特許文献2】特開2004−114498号公報
【0007】
また、従来の透明フィルムはラベルの内面に当たる側に印刷を施していた。ラベルの内側は牛乳ビンに直接接触するため、残留溶剤等の安全性が問題となる。特にキャップシールは、口をつける部分に印刷面が触れるため、牛乳ブロッキングと呼ばれるビンにインキが転移する危険がある。
【0008】
このような牛乳ビンのキャップシールに使用する熱収縮性フィルムは、収縮率などの熱収縮特性と隠蔽性が必要である。これまでのポリエステル系熱収縮性フィルムでは性能が不十分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、その目的とするところは、容器のキャップシール用、特に牛乳ガラス瓶のキャップシール用熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、収縮不足が発生しにくく、特に収縮によるシワ、収縮斑、歪み、飛び上がりの発生が極めて少ない上に、ラベルの内面に印刷を施さなくとも十分な光線カット性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
少なくとも2層からなる多層熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、前記ポリエステル系フィルムの全光線透過率が40%以下であり、熱収縮率が主収縮方向において処理温度80℃・処理時間10秒の値[SHW10]と処理時間5秒の値[SHW5]の差[SHW10]−[SHW5]が2%以上であり、主収縮方向において、90℃熱風中における熱収縮応力の最大値が10MPa以下であることを特徴とする多層熱収縮性ポリエステル系フィルムであり、このことにより課題が解決できる。
【0011】
本願発明は、A層およびB層からなる多層フィルムとし、A層およびB層にそれぞれ異なる特性を付与することで多機能化を達成するものである。
【0012】
この場合において、ポリエステルエラストマーを使用する事が好ましい。ポリエステル系エラストマーは例えば、高融点結晶性ポリエステルセグメント(Tm200℃以上)と分子量400以上好ましくは400〜800の低融点軟質重合体セグメント(Tm80℃以下)からなるポリエステル系ブロック共重合体であり、ポリ−ε−カプロラクトン等のポリラクトンを低融点軟質重合体セグメントに用いたポリエステル系エラストマーが特に好ましい。
【0013】
この場合において、全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計が12モル%以上とすることにより、溶剤接着性等の二次加工特性を満足させやすくなり、特に14モル%以上であることが好ましい。
【0014】
この場合において、前記フィルムが全ポリステル樹脂成分中における非晶質成分となりうるモノマーがネオペンチルグリコールまたはシクロヘキサンジメタノールであることが好適である。
【0015】
さらにまた、この場合において、酸化チタンを含有する層を少なくとも1層以上有することが好適である。
【0016】
さらにまた、この場合において、ポリエステルと非相溶の熱可塑性樹脂を含有する層を少なくとも1層以上有することが好適である。
【0017】
さらにまた、この場合において、前記フィルムを用いて作成されたラベルがボトルに好適な用途である。
【0018】
さらにまた、この場合において、前記フィルムを用いて、ラベル内面(容器側)には印刷を施さずに、ラベル外面に印刷を施すように作成されたラベルがボトルに好適な用途である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、容器のキャップシールとして使用する場合、熱収縮によるシワ、収縮斑、歪み、飛び上がり及び収縮不足の発生が極めて少ない良好な仕上がりが可能であり、かつ光線カット性に優れるので牛乳ビンのキャップシール用途として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を具体的に説明する。
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、以下のようにして得ることができる。ジカルボン酸成分と多価グリコール成分とで構成されるポリエステルを、押出機から溶融押出しシ、導電性冷却ロール(キャスティングロールなど)で冷却してフィルム化する(未延伸フィルム)。
【0021】
なお前記押出しに際しては、共重合ポリエステルを単独で押出すか、又は複数のポリエステル(共重合ポリエステル、ホモポリエステルなど)を混合して押出す。つまり、前記フィルムは、ベースユニット(ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ユニットなど)と、前記ベースユニットを構成する多価グリコール成分(エチレングリコール成分など)とは異なる第2のアルコール成分を含有している。
なお、本発明の酸成分、ジオール成分の含有率は、2種以上のポリエステルを混合して使用する場合、ポリエステル全体の酸成分、ジオール成分に対する含有率である。混合後にエステル交換がなされているかどうかにはかかわらない。
本発明においては、主たる酸成分としてテレフタル酸が好ましく、主たるジオール成分としてエチレングリコールが好ましい。
【0022】
上記ポリエステルは、いずれも従来の方法により重合して製造され得る。例えば、ジカルボン酸とジオールとを直接反応させる直接エステル化法、ジカルボン酸ジメチルエステルとジオールとを反応させるエステル交換法などを用いて、ポリエステルが得られる。重合は、回分式および連続式のいずれの方法で行われてもよい。
【0023】
第2のアルコール成分を含有するポリエステル系フィルムを延伸すると、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることができる。
【0024】
前記第2のアルコール成分は、ジオール成分および三価以上のアルコール成分が使用できる。ジオール成分には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの環状アルコール;ジエチレングリコール、採りエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノール化合物又はその誘導体のアルキレンオキサイド付加物などのエーテルグリコール類;ダイマージオールなどが含まれる。三価以上のアルコールには、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどが含まれる。
【0025】
また、全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計が14モル%以上であることが好ましく、16モル%以上であることがより好ましく、特に18モル%以上であることが好ましい。
ここで非晶質成分となりうるモノマーとは、例えばネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0026】
また、収縮仕上がり性が特に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムとすると共に、高い熱収縮率でありながら収縮仕上がり性を向上させるためには、全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中、ネオペンチルグリコールまたはシクロヘキサンジメタノール成分量が14モル%以上であることが好ましく、16モル%以上であることがより好ましく、特に18モル%以上であることが好ましい。該成分の上限は特に限定されるものではないが、該成分の量が多すぎると過度に熱収縮率が高くなり過ぎたり、フィルムの耐破断性を悪化させる場合があるので、40モル%以下であることが好ましく、35モル%以下がより好ましく、30モル%以下であることが特に好ましい。
【0027】
収縮仕上り性を良化させるためには、ポリエステルエラストマー含有量が3質量%以上とすることが好ましい。ここでポリエステルエラストマーとは、例えば高融点結晶性ポリエステルセグメント(Tm200℃以上)と分子量400以上好ましくは400〜800の低融点軟質重合体セグメント(Tm80℃以下)からなるポリエステル系ブロック共重合体であり、ポリ−ε−カプロラクトン等のポリラクトンを低融点軟質重合体セグメントに用いたポリエステル系エラストマーが挙げられる。
また、ポリエステルエラストマーを上記範囲とし、後述の好ましい製造方法、条件と組み合わせることで主収縮方向と直交する方向の収縮率を適正にすることが可能である。
【0028】
共通することとして、炭素数8個以上の脂肪族直鎖ジオール(例えばオクタンジオール等)、又は3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)は、含有させないことが好ましい。これらのジオール、又は多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な収縮率を達成しにくくなる。
【0029】
また、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールはできるだけ含有させないことが好ましい。特にジエチレングリコールは、ポリエステル重合時の副生成成分のため、存在しやすいが、本発明で使用するポリエステルでは、ジエチレングリコールの含有率が4モル%未満であることが好ましい。
【0030】
本発明フィルム特定の全光線透過率を達成して、フィルムに光線カット性を付与するた めには、例えば、フィルム中に、無機粒子、有機粒子等の粒子をフィルム質量に対して 0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%含有させることが、好適である。該粒 子の含有量が0.1質量%未満の場合は、例えば十分な光線カット性を得ることが困難 となりやすく好ましくない。一方20質量%を超えると、例えばフィルム強度が低下し て製膜が困難になりやすく好ましくない。
【0031】
該粒子は、ポリエステル重合前に添加しても良いが、通常は、ポリエステル重合後に添 加される。添加される無機粒子としては、例えば、カオリン、クレー、炭酸カルシウム 、酸化ケイ素、テフタル酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシ ウム、カーボンブラック等の公知の不活性粒子、ポリエステル樹脂の溶融製膜に際して 不溶な高融点有機化合物、架橋ポリマー及びポリエステル合成時に使用する金属化合物 触媒、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などによってポリエステル 製造時に、ポリマー内部に形成される内部粒子であることができる。これらのうち、酸 化チタン粒子が必要な光線カット性を付与する観点から好ましい。
【0032】
フィルム中に含まれる該粒子の平均粒径は、0.001〜3.5μmの範囲である。こ こで、粒子の平均粒径は、コールターカウンター法により、測定したものである。該粒 子の平均粒径は、好ましくは0.001μm以上3.5μm以下であり、より好ましく は0.005μm以上3.0μm以下である。該粒子の平均粒径が0.001μm未満 であると、例えば、必要な光線カット性を得ることが困難となりやすい。該粒子の平均 粒径が3.5μmを超えると、例えば、フィルム表面の平滑性に劣り印刷抜けなどの不 具合が起こり易い。アナターゼ形の平均粒径は一般的に2.0μm以下であり、ルチル 形の平均粒径は2.0μm以上である。可視光線を隠蔽するためには2.0〜3.0μ mの粒径が一番効率良く、アナターゼ形よりもルチル形の酸化チタンの方が一般的には 隠蔽性が高い。
【0033】
酸化チタン粒子には、アナターゼ形とルチル形の結晶形に分類される。両者ともプラスチックの練り込み用途に使用されている。アナターゼ形は直射日光等による黄変や樹脂の劣化を引き起こし易く、屋外に使用する場合は酸化チタンの表面に特殊な処理(アルミナ、シリカ、有機等)を施したり、ルチル形を選択する場合が多い。
【0034】
本発明において、適度な光線透過率を得るためには、例えば、内部に微細な空洞を含有させることが好ましい。例えば発泡材などを混合して押出してもよいが、好ましい方法としてはポリエステル中に非相溶の熱可塑性樹脂を混合し少なくとも1軸方向に延伸することにより、空洞を得ることである。本発明に用いられるポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂は任意であり、ポリエステルに非相溶性のものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などがあげられる。特に空洞の形成性からポリスチレン系樹脂あるいはポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0035】
非相溶の樹脂の含有量は、フィルム換算で1.0〜20.0質量%の範囲であることが好適である。非相溶の樹脂が1.0質量%未満では、例えばフィルム内部の空洞の形成量が少なくなり光線カット性が不十分となりやすく好ましくない。 非相溶の樹脂が20質量%を越えると、例えば押出工程での混練が不均一となりやすく安定したフィルムを得ることが困難となり好ましくない。
【0036】
ポリスチレン系樹脂とは、ポリスチレン構造を基本構成要素として含む熱可塑性樹脂を指し、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン等のホモポリマーのほか、その他の成分をグラフトあるいはブロック共重合した改質樹脂、例えば耐衝撃性ポリスチレン樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂等、更にはこれらのポリスチレン系樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂、例えばポリフェニレンエーテルとの混合物を含む。
【0037】
前記ポリエステルと非相溶の樹脂を混合してなる重合体混合物の調整にあたっては、例えば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練して押出してもよいし、予め混練機によって両樹脂を混練したものを更に押出機より溶融押出ししてもよい。また、ポリエステルの重合工程においてポリスチレン系樹脂を添加し、撹拌分散して得たチップを溶融押出しても構わない。
【0038】
本発明におけるフィルムは内部に多数の空洞を含有する層Bの他に、実質的に空洞を含まない層Aを設けることが好ましい。この構成にするためには異なる原料をA,Bそれぞれ異なる押出機に投入、溶融し、T−ダイの前またはダイ内部にて溶融状態で貼り合わせ、導電性冷却ロール(キャスティングロールなど)で冷却してフィルム化する(未延伸フィルム)。
【0039】
延伸は1軸延伸であることが好ましいが、この1軸延伸の方向(主方向)とは異なる方向に、より低倍率で延伸する2軸延伸であってもよい。延伸方向(主方向)は特に限定されず、フィルムの流れ方向であってもよく、前記流れ方向と直交する方向(以下、幅方向と称する)であってもよい。好ましくは、生産効率上の観点から、フィルムの幅方向に延伸する。このとき、原料としてA層には非相溶の樹脂を含有させないことが好ましい。こうすることによりA層における空洞がなく、印刷後の強度を保持できるフィルムとなる。また、空洞が存在しないため、フィルムの腰が弱くならず装着性に優れるフィルムとなる。
また、空洞の形成により収縮率を低減する作用があるので、空洞のない層を設けることにより高い熱収縮率を付与することができる。
【0040】
さらに、本発明におけるフィルムは内部に多数の空洞を含有する層Bを中間層とし、両表層に空洞のないA層を設ける事が特に好ましい。ポリスチレン系樹脂を添加することで溶融押出時に煙が発生し、工程を汚して操業性悪化を引き起こしている。B層を中間層にする事により発煙の問題が解消され、長時間の安定生産が実施可能となる。
【0041】
さらに、必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させてもよい。また、フィルムの白色度を向上させるために蛍光増白剤を添加しても良い。
【0042】
[極限粘度]
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、極限粘度が0.60dl/g以上であることが望ましい。熱収縮性フィルムの極限粘度が小さ過ぎると、フィルムを構成するポリエステルの分子量が低くなるために、熱収縮する際の収縮応力の持続性が低下し、収縮白化や収縮斑などの欠点が発生し易くなり、収縮仕上がり性や、外観性に劣るものになる。また、ポリエステルの分子量が低下すると、フィルムの機械的強度や耐破れ性を低下させる。
【0043】
前記極限粘度は、好ましくは0.60dl/g以上、さらに好ましくは0.63dl/g以上である。
【0044】
フィルムの極限粘度を高める方法としては、例えば、(1)フィルムの原料であるポリエステルに高分子量のポリエステルを使用する方法(例えば、極限粘度が0.63dl/g以上、好ましくは0.68dl/g以上、さらに好ましくは0.70dl/g以上のポリエステルを使用する方法)、(2)ポリエステルを押出し加工してフィルムを形成する際の熱分解や加水分解を抑制する方法(例えば、ポリエステル原料を予備乾燥して水分率を100ppm以下、好ましくは50ppm以下程度にしてから押出し加工する方法)、(3)前記ポリエステルとして耐加水分解性のポリエステルを使用する方法(例えば、酸価が25eq/ton以下のポリエステルを使用する方法)、(4)ポリエステルに酸化防止剤(例えば0.01〜1質量%程度含有)させる方法などが挙げられる。
【0045】
重合触媒としては、慣用の種々の触媒が使用でき、例えば、チタン系触媒、アンチモン系触媒、ゲルマニウム系触媒、スズ系触媒、コバルト系触媒、マンガン系触媒など、好ましくはチタン系触媒(チタニウムテトラブトキシドなど)、アンチモン系触媒(三酸化アンチモンなど)、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウムなど)、コバルト系触媒(酢酸コバルトなど)などが挙げられる。
【0046】
[熱収縮応力]
主収縮方向における90℃熱風中における熱収縮応力の最大値は10MPa以下が好ましく、4MPa以上10MPa以下がより好ましい。
熱収縮応力の最大値が4MPaを下回ると、例えば、容器の形状によってはラベルを収縮させた後にボトルとの密着が充分とならず開栓時にラベルも回るという問題が生じやすく好ましくない。また、熱収縮応力の最大値が10MPaを超えると急激な収縮となりに飛び上がり、シワ等の不具合が発生しやすく好ましくない。
[熱収縮率]
温水中で無荷重状態で処理して収縮前後の長さから、熱収縮率=((収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ)×100(%)の式で算出したフィルムの熱収縮率が、主収縮方向において、処理温度80℃・10秒の値[SHW10]と処理時間5秒の値[SHW5]の差[SHW10]−[SHW5]が2%以上であることが好ましい。該収縮率の差が2%未満であると、急激な収縮によって収縮時のシワ、収縮斑が発生しやすくなる。好ましくは該収縮率の差は3%以上である。なお、該収縮率の差の上限は特に規定されないが、9%以下が好ましく、7%以下がより好ましく、5%以下が特に好ましい。該収縮率差が大きくなり過ぎると高速(短時間)での加工において収縮不足となる場合がある。該収縮率の差を2%以上とするには、前述の好ましい原料組成と後述の好ましい製膜条件を採用することにより達成できる。
【0047】
80℃・10秒の熱収縮率は好ましくは45〜60%であり、45%未満の場合は、例えば牛乳ビンの頭部の収縮が不十分になり好ましくない。一方、60%を越える場合は加熱収縮後もさらに収縮する力が強く残るため、例えばラベルが飛び上がりやすくなる等の不具合が発生し易く好ましくない。
【0048】
次に本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造法について、具体例を説明するが、この製造法に限定されるものではない。
【0049】
本発明に用いるポリエステル原料をホッパドライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥し、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。押し出しに際してはTダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用して構わない。押し出し後、急冷して未延伸フィルムを得る。
【0050】
また、押出し温度に関しては250℃〜290℃の範囲で行うことが好ましい。押出し温度が250℃を下回ると、例えば負荷が掛かり過ぎて正常な押出しが困難となる。押出し温度が290℃を超えると、例えば押出機内でポリエステル樹脂が熱劣化しやすく、得られるフィルムの機械的強度の低下や縦収縮が過剰にマイナス値を示し収縮仕上がり性を低下させる等の不具合を生じる。
【0051】
未延伸フィルムを延伸するに際してまず、予備加熱を行う。予備加熱の温度は未延伸フィルムのTg+10℃〜Tg+20℃の範囲内とする。次いで延伸を行う。延伸倍率は、未延伸フィルムに対して3.4倍以上5.0倍以下、好ましくは3.6倍以上4.5倍以下とする。延伸温度は、Tg−5℃〜Tg+15℃の範囲内の所定温度とする。
【0052】
次に、フィルムの熱固定を行うことが好ましい。熱固定温度はTg+10℃〜Tg+20℃の範囲内とする。また、フィルムの延伸方向に緊張させた状態で熱固定を行ってもよい。その際の緊張率は6%以下であることが望ましい。
【0053】
フィルムの熱収縮応力制御などの観点からは、延伸の段階数は多い方が好ましいが、あまり段階数が多過ぎる場合、工業生産における延伸設備の設計が困難となるため、6段階以下、好ましくは4段階以下とすることが望ましい。
【0054】
全光線透過率を40%以下とするには、上記B層の厚み比率を高くすることで可能となる。A層/B層/A層の厚み比率は15〜35/70〜30/15〜35とすることが望ましい。
【0055】
[溶融比抵抗値]
本発明で用いる熱収縮性ポリエステル系フィルムは、温度275℃における溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下である。このようなフィルムを用いると、以下に詳細に説明するように、フィルム厚みの均一性を高めることができ、フィルムへの印刷性や、フィルムを容器に装着可能な形態に加工する際の加工性(安定加工性)を高めることができる。
【0056】
溶融比抵抗値を上記範囲に制御するためには、フィルム中にアルカリ土類金属化合物と、リン含有化合物とを含有させるのが好ましい。アルカリ土類化合物だけでも溶融比抵抗値を下げることができるが、リン含有化合物を共存させると溶融比抵抗値を著しく下げることができる。アルカリ土類金属化合物とリン含有化合物とを組み合わせることによって溶融比抵抗値を著しく下げることができる理由は明らかではないが、リン含有化合物を含有させることによって、異物の量を低減でき、電荷担体の量を増大できるためと推定される。
【0057】
上述の溶融比抵抗値を下げるための化合物(アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン含有化合物など)の添加時期は特に限定されず、エステル化反応前、エステル化中、エステル化終了から重合開始までの間、重合中、及び重合後のいずれの段階であってもよい。好ましくはエステル化工程の後の任意の段階、さらに好ましくはエステル化終了から重合工程開始までの間である。エステル化工程の後にアルカリ土類金属化合物、リン含有化合物(及び必要に応じてアルカリ金属化合物)を添加すると、それ以前に添加する場合に比べて異物の生成量を低減できる。
【0058】
[最大収縮方向の厚み分布値]
なお前記のようにして溶融比抵抗値を下げて、フィルム厚みの均一性を高めても、それだけでは不十分である。すなわちフィルムロールを形成する場合、前記フィルムは長尺(例えば300m〜6000m程度)であるため、測定箇所によっては厚みの均一性が低下する虜がある。
【0059】
厚みの均一性については、下記式で表される厚み分布値に基づいて定めることができる。
【0060】
厚み分布値=(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100
前記最大厚み、最小厚み、及び平均厚みは、前記主収縮方向の長さが20cm、幅が5cmとなるようにロールから試験片を切り取り、接触式厚み計を用いて主収縮方向に対する厚みの変位を測定することによって求めることができる。
【0061】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、前記式で算出されたフィルムの厚み分布値が6%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、5%以下である。
【0062】
厚み分布が6%以下のフィルムは、例えば収縮仕上がり性評価時に実施する3色印刷で、色の重ね合せが容易であるのに対し、6%を越えたフィルムは色の重ね合せの点で好ましくない。
【0063】
各箇所の試料が前記前記所定の厚み分布値を有するためには、製膜工程や延伸工程が定常状態に達しているだけでは不十分であり、溶融ポリエステルを押出して冷却ロールで冷却する際のフィルムの静電密着性をも、フィルム製造の初期から終期に亘って安定化させる必要がある。前記冷却に使用する電極として、電極汚染面の退避手段と、電極汚染面の供給手段とを備えている電極の使用好ましい。すなわち溶融ポリエステルの製膜中に電極から電気を与えて、フィルムを静電密着させる場合、前記ポリエステルは複数種のポリマー(ホモポリマー、共重合ポリマーなど)やモノマーを含有しており、種々の低分子成分を含有していることが多いため、溶融押出し時に前記低分子成分が揮発し、電極を徐々に汚染する。そのためフィルムの生産を続けると、徐々に電極の汚染が激しくなり、フィルムに充分な電気を付与することができなくなり、フィルムの静電気密着性が低下する虜がある。そこで前記特定の電極を用いることによって、電極汚染を退避させ、代わりに非汚染面を供給することができ、電極面を汚染の少ない状態に維持できる。そのためフィルムの生産を続けても、静電密着性が低下してくる虜がなく、各箇所の試料が前記所定の厚み分布を有するようになる。
【0064】
各箇所の試料が前記所定の厚み分布を有するためには、フィルム製造の初期から終期に亘って静電気密着性を安定化させる前記方法と共に、(A)フィルム製造中のポリエステル原料を均質化する方法、(B)製造工程を安定化させる方法、及び又は(C)フィルムの延伸工程を安定化させる方法を採用するのが望ましい。
【0065】
(A)フィルムの製造中のポリエステル原料を均質化する方法
使用する原料チップの削れなどにより発生す微粉体(微粉状ポリエステルチップ)は、原料偏析の発生を助長するので、前記微粉体の比率を低減することによっても原料偏析を低減できる。
【0066】
ポリエステルチップ中の微粉体の比率は、原料チップが押出機に入るまでの全工程を通じて、1質量%以内に制御することが好ましく、0.5質量%以内に制御することがさらに好ましい。
【0067】
微粉体を低減させる方法としては、例えば、工程内で発生する微粉体を除去(分級除去など)する方法が採用できる。例えば、ストランドカッターによるチップ形成時に篩を通す方法、原料チップを空送する場合にサイクロン式エアフィルタを通す方法などが採用できる。
【0068】
また、最終ホッパとして、漏斗状ホッパを用い、その斜辺(側壁)を垂直に近づける方法が挙げられる。斜辺(側壁)を垂直に近づければ、大きいチップも小さいチップと同様に落とし易くすることができ、内容物の上端部が水平面を保ちつつ下降していくため、原料偏析の低減に効果的である。
【0069】
前記斜辺(側壁)の傾斜角は、例えば、65°以上、好ましくは70°以上である。なお、斜辺(側壁)の傾斜角とは、漏斗状の斜辺(側壁)と水平な線分との間の角度である。
【0070】
(B)製膜を安定化させる方法
製膜工程を安定化させる方法としては、押出機からの吐出量変動を抑制する方法、冷却ロール(キャスティングロール)の回転速度変動を抑制する方法などが挙げられる。
【0071】
押出機からの吐出量変動を抑制する場合、例えば、吐出量を平均吐出量の±2%以内の範囲に安定化させるのが好ましい。吐出量変動を抑制する場合、例えば、吐出手段としてギアポンプを用いるのが好ましい。
【0072】
冷却ロール(キャスティングロール)の回転速度変動を抑制する場合、例えば回転速度を平均回転速度の±2%以内の範囲に安定化させるのが好ましい。回転速度変動を抑制する場合、例えば、ロール駆動系の回転精度を制御する手段、例えば、回転速度制御用のインバーターを用いるのが好ましい。
【0073】
(C)フィルムの延伸工程を安定化させる方法
フィルムに熱収縮性を付与するためには、未延伸フィルムに対して延伸処理を施す必要がある。フィルムの延伸工程を安定化する場合、一般の延伸方法に対して安定化のための種々の工夫を施す。
【0074】
延伸温度を制御する場合、延伸温度が高くなり過ぎないように制御する。延伸温度が高過ぎると、フィルム厚み分布値が大きくなり過ぎる場合がある。なお延伸温度が高過ぎると、フィルムの熱収縮率が不足する場合があり、さらには得られた熱収縮性フィルムを容器(ボトルなど)に高速装着する際にフィルムの腰の強さが不足する場合もある。
【0075】
延伸温度は、例えばガラス転移温度(Tg)+40℃以下(好ましくは+15℃以下)に制御するのが好ましい。
【0076】
なお厚み分布値との関連性は小さいが、前記延伸温度は、ガラス転移温度(Tg)−20℃以上(好ましくは−5℃以上)とするのが好ましい。延伸温度が低すぎると、フィルムの透明性が低下する場合がある。
【0077】
延伸に伴うフィルムの内部発熱を抑制すると、延伸方向(幅方向など)のフィルムの温度斑を小さくでき、延伸後のフィルム(熱収縮性フィルム)の厚みの均一性を高めることができる。
【0078】
前記内部発熱を制御するためには、加熱条件を適宣制御して(例えば、熱風の供給速度を速くして)フィルムを加熱し易くするのが好ましい。加熱不足の部分があると延伸配向に伴う内部発熱が発生するのに対して、フィルムが充分に加熱されていると延伸時に分子鎖が滑り易くなるため、内部発熱が発生し難くなる。
【0079】
前記加熱条件は熱伝達条件で示すと、例えば、熱伝達係数を0.0038J/cm2・sec・℃(0.0009カロリー/cm2・sec・℃)以上、好ましくは0.0046〜0.0071J/cm2・sec・℃(0.0011〜0.0017カロリー/cm2・sec・℃)程度である。
【0080】
(3)予備予熱条件の制御
予備予熱条件を制御する場合、フィルムを徐々に加熱するように制御するのが好ましい。予備予熱工程でフィルムを徐々に加熱すると、フィルムの温度分布を略均一にできるため、延伸後フィルム(熱収縮性フィルム)の厚みの均一性を高めることができる。
【0081】
前記予熱条件は熱伝達条件で示すと、例えば、熱伝達係数を0.00054J/cm2・sec・℃(0.0013カロリー/cm2・sec・℃)以下程度である。また予備加熱ではフィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内の温度になるまで加熱するのが好ましく、熱風の温度はTg+10℃〜Tg90℃程度であるのが好ましい。
【0082】
前記熱伝達係数を達成する方法としては、例えば、熱風の供給速度を遅くする方法などが挙げられる。
【0083】
(4)延伸の際のフィルムの表面温度の均温化
フィルムを延伸するに際してフィルムの表面温度の変動を小さくする(均温化する)と、フィルム全長に亘って同一温度で延伸や熱処理することができ、厚み分布値や熱収縮挙動を均一化することができる。
【0084】
前記表面温度の変動幅は、任意のポイントにおいてフィルムの表面温度を測定したときの各ポイントの温度が、例えば、フィルムの平均温度±1℃以内であることが好ましく、平均温度±0.5℃以内であることがさらに好ましい。
【0085】
フィルムを延伸する際には、延伸前の予備加熱工程、延伸工程、延伸後の熱処理工程、緩和処理工程、再延伸工程などの種々の工程を経てフィルムを延伸するためこれらの工程の一部または全部で、フィルムの表面温度の変動幅を小さくできる(均温化する)設備を用いるのが好ましい。特に、フィルムの全長に亘って厚み分布値を均一化するためには、予備加熱工程及び延伸工程において(さらに必要に応じて延伸後の熱処理工程において)、フィルムの表面温度変動幅を小さくできる設備を用いることが好ましい。なお熱収縮挙動を均一化する場合には、延伸工程において、フィルムの表面温度の変動幅を小さくできる設備を用いるのが好ましい。
【0086】
前記フィルム温度の変動幅を小さくできる設備としては、例えば、フィルムを加熱するための熱風の供給速度を制御するための風速制御手段(インバーターなど)を備えた設備、空気を安定的に加熱して前記熱風を調整するための加熱手段[500kPa以下(5kgf/cm2以下)の低圧蒸気を熱源とする加熱手段など]を備えた設備などが挙げられる。
【0087】
熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば、ラベル用途に使用する場合、10〜200μm程度、好ましくは20〜100μm程度である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0089】
本発明のフィルムの評価方法は下記の通りである。
【0090】
(1)全光線透過率
日本電飾工業(株)製NDH−2000Tを用い、JIS K 7136に準じ測定した。
【0091】
(2)熱収縮応力
東洋精機(株)製テンシロン(加熱炉付き)強伸度測定機を用い、熱収縮性フィルムから主収縮方向の長さ200mm、幅20mmのサンプルを切り出し、チャック間100mmで、予め90℃に加熱した雰囲気中で送風を止めて、サンプルをチャックに取り付け、その後速やかに加熱炉の扉を閉め送風(吹き出し風速 5m/秒)を開始した時に検出される応力を測定し、チャートから求まる最大値を熱収縮応力(MPa)とした。
【0092】
(3)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、温水温度80℃±0.5℃の温水中において、無荷重状態で5または10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記(1)式に従いそれぞれ熱収縮率を求めた。該熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
【0093】
熱収縮率=((収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ)×100(%) (1)
【0094】
(4)収縮仕上がり性
熱収縮性フィルムに、あらかじめ東洋インキ製造(株)の草・金色のインキで2色印刷した。印刷面は非コート面とした。該印刷フィルムより折径98mm、高さ65mmのサイズでラベルを作製した。ラベルは印刷面を外側とした。
【0095】
Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式:SH−1500−L)を用い、通過時間10秒、ゾーン温度80℃で、200mlのガラス瓶(高さ123cm、中央部直径5.8cm)(明治乳業(株)のおいしい牛乳に使用されているボトル)を用いてテストした(測定数=20)。
評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
○:シワ、飛び上り、収縮不足の何れも未発生
×:シワ、飛び上り、又は収縮不足が発生
【0096】
(5)Tg(ガラス転移点)
セイコー電子工業(株)製のDSC(型式:DSC220)を用いて、未延伸フィルム10mgを、−40℃から120℃まで、昇温速度20℃/分で昇温し、得られた吸熱曲線より求めた。吸熱曲線の変曲点の前後に接線を引き、その交点をTg(ガラス転移点)とした。
【0097】
(6)厚み分布
アンリツ(株)製の接触厚み計(型式:KG60/A)を用いて、縦方向5cm、横方向50cmのサンプルの厚みを測定し(測定数=20)、各々のサンプルについて、下記(2)式により厚み分布(厚みのバラツキ)を求めた。また、該厚み分布の平均値(n=50)を下記の基準に従って評価した。
厚み分布=((最大厚み−最小厚み)/平均厚み)×100(%) (2)
○:6%以下
△:6%より大きく10%未満
×:10%以上
【0098】
(7)極限粘度
試料(フィルム又はチップ)0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒に溶解した後、オストワルド粘度計で30±0.1℃で測定した。極限粘度[η]は下式(Huggins式)によって求められる。
【0099】
ηsp/c=[η]+k[η]2
kはいわゆるHugginsの定数であり、溶質分子間の流体力学的相互作用の尺度である。
[η]は数個の濃度が異なる溶液の粘度測定から ηsp/cをcに対してプロットし、得られた直線をc→0に補外して求める。
ηspは濃度がcのときの比粘度である。
【0100】
(8)フィルム組成
共重合ポリエステルの組成比
積層フィルム各面から削り出した測定対象層のポリマー片サンプル約5mgを重クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比9/1)0.7mlに溶解し、1H−NMR(varian製、UNITY50)を使用して求めた。
【0101】
実施例に用いたポリエステルは以下の通りである。
ポリエステルa:ポリエチレンテレフタレート(極限粘度(IV):0.75dl/g)
ポリエステルb:ネオペンチルグリコール30モル%とエチレングリコール70モル%と テレフタル酸とからなるポリエステル(IV:0.75dl/g)
ポリエステルc: シクロヘキサンジメタノール30モル%とエチレングリコール70モ ル%とテレフタル酸とからなるポリエステル(IV:0.75dl/g )
ポリエステルd:ポリエステルb 50重量%と酸化チタン 50重量%とからなるポリエ ステル原料(IV:0.51dl/g)
ポリエステルe:ポリエステルa 50重量%と酸化チタン 50重量%とからなるポリエ ステル原料(IV:0.51dl/g)
ポリエステルf:ポリブチレンテレフタレート70質量%とε−カプロラクトン30質量 %とからなるポリエステルエラストマー(還元粘度(ηsp/c)1.30 )
ポリエステルg:ポリブチレンテレフタレート(IV:1.24dl/g)
【0102】
(実施例1)
A層としてポリエステルaを6質量%、ポリエステルbを18質量%、ポリエステルcを61質量%、ポリエステルfを15質量%混合したポリエステルを、B層としてポリエステルcを55質量%、ポリエステルdを20質量%、ポリエステルfを15質量%と結晶性ポリスチレン樹脂(G797N 日本ポリスチレン株式会社製)10質量%を混合したポリエステルをそれぞれ280℃で溶融し、層厚み比率がA層/B層/A層=25/50/25となるようにTダイから共押出し、チルロールで急冷して厚み160μmの未延伸多層フィルムを得た。この未延伸多層フィルムのTgは65℃であった。
【0103】
該未延伸フィルムを、フィルム温度が80℃になるまで予備加熱した後、テンターで横方向に延伸した。延伸は、73℃で4.0倍に延伸した。次いで延伸終了時のフィルム巾を保持しながら82℃で熱固定し、厚み40μmのフィルムを得た。
【0104】
(実施例2)
A層としてポリエステルaを30質量%、ポリエステルbを65質量%、ポリエステルfを5質量%混合したポリエステルを、B層としてポリエステルbを65質量%、ポリエステルeを20質量%、ポリエステルfを5質量%と結晶性ポリスチレン樹脂(G797N 日本ポリスチレン株式会社製)10質量%を混合したポリエステルをそれぞれ280℃で溶融し、層厚み比率がA層/B層/A層=25/50/25となるようにTダイから共押出し、チルロールで急冷して厚み160μmの未延伸多層フィルムを得た。なお、この多層フィルムのTgは68℃であった。
【0105】
該未延伸フィルムを、フィルム温度が85℃になるまで予備加熱した後、テンターで横方向に延伸した。延伸は、70℃で4.0倍に延伸した。次いで延伸終了時のフィルム巾を保持しながら81℃で熱固定し、厚み40μmのフィルムを得た。
【0106】
(実施例3)
A層としてポリエステルaを36質量%、ポリエステルbを49質量%、ポリエステルfを15質量%混合したポリエステルを、B層としてポリエステルaを6質量%、ポリエステルbを49質量%、ポリエステルeを20質量%、ポリエステルfを15質量%と結晶性ポリスチレン樹脂(G797N 日本ポリスチレン株式会社製)10質量%を混合したポリエステルをそれぞれ280℃で溶融し、層厚み比率がA層/B層/A層=25/50/25となるようにした以外は実施例1と同様にして厚み40μmのフィルムを得た。なお、この多層フィルムのTgは65℃であった。
【0107】
該未延伸フィルムを、フィルム温度が82℃になるまで予備加熱した後、テンターで横方向に延伸した。延伸は、67℃で4.0倍に延伸した。次いで延伸終了時のフィルム巾を保持しながら76℃で熱固定し、厚み40μmのフィルムを得た。
【0108】
(比較例1)
延伸終了時のフィルム巾を保持しながら74℃で熱固定した以外は実施例2と同様にして厚み40μmのフィルムを得た。なお、この多層フィルムのTgは68℃であった。
【0109】
(比較例2)
A層としてポリエステルaを15質量%、ポリエステルbを80質量%、ポリエステルgを5質量%を混合したポリエステルを、B層としてポリエステルbを65質量%、ポリエステルdを20質量%、ポリエステルcを5質量%と結晶性ポリスチレン樹脂(G797N 日本ポリスチレン株式会社製)10質量%を混合したポリエステルを混合したポリエステルを280℃で溶融し、層厚み比率がA層/B層/C層=25/50/25となるようにTダイから押出し、チルロールで急冷して厚み160μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムのTgは69℃であった。
【0110】
該未延伸フィルムを、フィルム温度が86℃になるまで予備加熱した後、テンターで横方向に延伸した。延伸は、71℃で4.0倍に延伸した。次いで延伸終了時のフィルム巾を保持しながら82℃で熱固定し、厚み40μmのフィルムを得た。
【0111】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られたフィルムの評価結果を表1に示す。表1から明らかなように、実施例1〜3で得られたフィルムはいずれも収縮仕上がり性が良好であった。また、厚み分布も良好であった。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは高品質で実用性が高く、特に収縮ラベル用として好適である。
【0112】
一方、比較例1〜2で得られた熱収縮性フィルムはいずれも収縮仕上がり性が劣る。このように比較例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムはいずれも品質が劣り、実用性が低いものであった。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、熱収縮によるシワ、収縮斑、歪み、飛び上がりの発生が極めて少なく、収縮不足が発生しにくく、印刷加工を施さなくても白色を呈しており光線カット性を有する牛乳瓶のキャップシール用、特に宅配牛乳のラベル用途として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層からなる多層熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、前記ポリエステル系フィルムの全光線透過率が40%以下であり、熱収縮率が主収縮方向において処理温度80℃・処理時間10秒の値[SHW10]と処理時間5秒の値[SHW5]の差[SHW10]−[SHW5]が2%以上であり、主収縮方向において、90℃熱風中における熱収縮応力の最大値が10MPa以下であることを特徴とする多層熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
フィルムを構成する樹脂成分として、ポリエステルエラストマーを3質量%以上含有し、該ポリエステルエラストマーが、融点200℃以上である高融点結晶性ポリエステルセグメントと、分子量400以上であり融点80℃以下である低融点軟質重合体セグメントからなるポリエステル系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の多層熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
フィルムを構成する全ポリステル樹脂成分中における非晶質成分となりうるモノマーがネオペンチルグリコールまたはシクロヘキサンジメタノールであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の多層熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
酸化チタンを含有する層を少なくとも1層以上有することを特徴とする請求項1、2、又は3のいずれかに記載の多層熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
ポリエステルと非相溶の熱可塑性樹脂を含有する層を少なくとも1層以上有することを特徴とする請求項1、2、3、又は4のいずれかに記載の多層熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4、又は5のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いて作成されたラベル。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5、又は6のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いて、外面にのみ印刷を施されたラベル。

【公開番号】特開2007−290321(P2007−290321A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123623(P2006−123623)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】