説明

多層発泡体の製造方法

【課題】表面に凹凸のある形状の多層発泡体を、発泡体における発泡倍率が高くなるように製造する場合であっても、低コストに、かつ、発泡体の見かけ密度が偏ることなく製造する。
【解決手段】樹脂成形品の成形装置10は、3つのTダイを、各Tダイの押出スリットが下向きに略平行となるように並べて備える。中央の押出スリットからは、発泡層によるシート状パリソンが単層で押し出され、その両サイドの各押出スリットからは非発泡層のシート状パリソンが単層で押し出され、これら3枚のシート状パリソンが一対の分割金型の間の位置に垂下される。こうして一対の分割金型の間に配置された3枚のシート状パリソンを、分割金型により型締めし、成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸のある形状の多層発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発泡層の周囲を非発泡層で覆った構造の多層発泡体を製造する方法として、予め成形された発泡体の芯材を溶融状態の樹脂シートで挟み込んで成形する方法が知られている。
【0003】
また、多層発泡シートの製造方法として、Tダイの1つの押出スリットから、層構成が非発泡層/発泡層/非発泡層となるように溶融状態の多層樹脂シートを押し出す方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、本出願人により先に出願されている成形技術として、溶融状態の樹脂シート2枚を押出スリットから下方に押し出し、補強芯材を挟み込んで分割金型により成形するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3804528号公報
【特許文献2】WO2009/157197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した発泡体の芯材を溶融状態の樹脂シートで挟み込む従来の製造方法では、表面に凹凸のある形状の多層発泡体を製造する場合、発泡体の芯材を成形時に金型で潰して凹凸を形成するか、または、発泡体の芯材を目的とする凹凸に合わせた形状に予め加工しておく必要があった。
【0007】
ここで、発泡体の芯材を成形時に金型で潰して凹凸を形成する方法では、発泡体の芯材が部分的にのみ圧縮されることとなるため、発泡体の見かけ密度が凹凸部分近傍で場所によって異なる仕上がりとなってしまう。こうして見かけ密度が場所によってバラつくと、成形後に反りなどの問題が生じやすくなってしまう。
【0008】
また、発泡体の芯材を目的とする凹凸に合わせた形状に予め加工しておく方法では、発泡体の芯材を目的とする凹凸に合わせて加工するのに手間がかかり、コスト増加につながってしまう。さらに、こうして凹凸形状に加工した芯材を溶融状態の樹脂シートで挟み込む際、芯材を金型の凹凸に合わせて精度よく位置決めする必要があり、精度向上のためのコスト増加につながってしまう。
【0009】
また、上述した特許文献1のように、1つの押出スリットから溶融状態の多層樹脂シートを押し出す方法では、押出スリットからの押出時に発泡層が非発泡層により両側から挟まれた状態となるため、発泡層の発泡倍率が制限される虞があった。すなわち、発泡層はTダイの押出スリットから押し出される時に大きく発泡するが、その押出時に非発泡層により両側から押さえられる状態となるため、発泡倍率が低くなりやすい問題があった。
【0010】
また、上述した特許文献2のものは、表面に凹凸のある形状の多層発泡体を製造することについてまで考慮されたものではなかった。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、表面に凹凸のある形状の多層発泡体を、発泡体における発泡倍率が高くなるように製造する場合であっても、低コストに、かつ、発泡体の見かけ密度が偏ることなく製造できる多層発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために、本発明に係る多層発泡体の製造方法は、
少なくとも3つの押出スリットのそれぞれから溶融状態の樹脂シートを押し出す押出工程と、
前記樹脂シートを分割金型で挟み込んで多層発泡体を成形する成形工程と、を有し、
前記樹脂シートの少なくとも1枚は前記押出スリットから発泡層として押し出され、
前記樹脂シートの少なくとも2枚は前記押出スリットから非発泡層として押し出され、
前記分割金型は、少なくとも一方のキャビティ面に凹凸を有する形状であり、
前記成形工程では、前記非発泡層として押し出された少なくとも2枚の樹脂シートの間に前記発泡層として押し出された樹脂シートが配置された状態で前記分割金型により挟み込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、表面に凹凸のある形状の多層発泡体を、発泡体における発泡倍率が高くなるように製造する場合であっても、低コストに、かつ、発泡体の見かけ密度が偏ることなく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態による多層発泡体100の構成例を示す縦断面図である。
【図2】第1の実施形態による製造方法例を説明するための第1の図である。
【図3】第1の実施形態における押出装置12の構成例を模式的に示す図である。
【図4】第1の実施形態による製造方法例を説明するための第2の図である。
【図5】第2の実施形態による製造方法例を説明するための第1の図である。
【図6】第2の実施形態による製造方法例を説明するための第2の図である。
【図7】第2の実施形態による製造方法例を説明するための第3の図である。
【図8】第2の実施形態による製造方法例を説明するための第4の図である。
【図9】第3の実施形態による製造方法例を説明するための第1の図である。
【図10】第3の実施形態による製造方法例を説明するための第2の図である。
【図11】第3の実施形態による製造方法例を説明するための第3の図である。
【図12】第4の実施形態による多層発泡体200の構成例を示す縦断面図である。
【図13】第4の実施形態による製造方法例を説明するための第1の図である。
【図14】第4の実施形態による製造方法例を説明するための第2の図である。
【図15】第4の実施形態による製造方法例を説明するための第3の図である。
【図16】第4の実施形態による製造方法例を説明するための第4の図である。
【図17】第4の実施形態による製造方法例を説明するための第5の図である。
【図18】第4の実施形態による他の製造方法例を説明するための図である。
【図19】第1〜第3の実施形態による多層発泡体100の他の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る多層発泡体の製造方法を適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明に係る多層発泡体は、例えば自動車のデッキボード、建材などの各種用途に用いることができる。
【0016】
まず、本発明の各実施形態に共通する概略について説明する。
図1は、多層発泡体100の構成例を示し、図2、図3は、多層発泡体100の製造方法例を示す。
【0017】
本発明の各実施形態で用いる樹脂成形品の成形装置10は、図2に示すように、3つのTダイを、各Tダイの押出スリットが下向きに略平行となるように並べて備える。
中央の押出スリットからは、発泡層による溶融樹脂シートが単層で押し出され、その両サイドの各押出スリットからは非発泡層の溶融樹脂シートが単層で押し出され、これら3枚の溶融樹脂シートが一対の分割金型の間の位置に垂下される。
【0018】
このため、非発泡層の溶融樹脂シート2枚の間に発泡層の溶融樹脂シートを配置し、樹脂成形品として、発泡層の外側を非発泡層で覆う構成の成形品の製造方法でありながらも、発泡層の溶融樹脂シートを押し出す押出スリットからは、その発泡層の溶融樹脂シートだけが押し出される。このため、押出スリットからの押出時に発泡層の発泡倍率を制限してしまうことがない。このため、高い発泡倍率の発泡体による、凹凸形状の多層発泡体であっても、容易に低コストで製造することができる。
【0019】
〔第1の実施形態〕
<多層発泡体100の構成例>
次に、本発明の第1の実施形態について説明する。
まず、図1を参照しながら、本実施形態により成形する多層発泡体100の構成例について説明する。
【0020】
本実施形態の多層発泡体100は、非発泡層1、3と、発泡層2と、を有して構成される。非発泡層1、3は、多層発泡体100の外側を構成し、発泡層2は、多層発泡体100の内側を構成する。
【0021】
このように、本実施形態の多層発泡体100は、発泡層2の周りが非発泡層1、3で覆われた構成となっているため、多層発泡体100の剛性を高めることができる。
【0022】
また、発泡層2の厚さ方向における両面に、非発泡層1、3がそれぞれ配置され、非発泡層3は、凹凸のある形状となっている。発泡層2も、非発泡層3の凹凸に合わせた形状となっているが、発泡倍率が凹凸形状に合わせて偏ることなく、発泡層2の全体で略均等となっている。
このため、長期間の使用でも成形後の反りなどの問題を生じにくく、高品質を維持することができる多層発泡体となっている。
【0023】
非発泡層1、3としては、後述のように、公知の各種非発泡樹脂を用いることができる。
【0024】
発泡層2としては、発泡倍率が2.0倍以上であり、複数の気泡セルを有する独立気泡構造(独立気泡率が70%以上)の発泡樹脂などを用いることができる。
【0025】
こうした発泡層2としては、例えばポリプロピレン系樹脂などを用いることができ、好ましくは、ポリプロピレン系樹脂に対し、1〜20wt%のポリエチレン及び/または5〜40wt%の水素添加スチレン系エラストマーを混合させたブレンド樹脂などを用いることができる。
【0026】
なお、本実施形態において発泡倍率は、後述する本実施形態の成形方法で用いた熱可塑性樹脂の密度を、本実施形態の成形方法により得られた多層発泡体100の非発泡層1、3,発泡層2の壁面の見かけ密度で割った値を発泡倍率とした。
また、引張破壊伸びは、後述する本実施形態の成形方法により得られた多層発泡体100の非発泡層1、3,発泡層2の壁面を切り出し、−10℃で保管後に、JIS K−7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った値を引張破壊伸びとした。
また、引張弾性率は、後述する本実施形態の成形方法により得られた多層発泡体100の非発泡層1、3,発泡層2の壁面を切り出し、常温(23℃)で、JIS K−7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った値を引張弾性率とした。
【0027】
<多層発泡体100の製造方法例>
次に、図2〜図4を参照しながら、本実施形態の多層発泡体100の製造方法例について説明する。図2〜図4は、本実施形態による多層発泡体100の製造方法例を示す図である。
【0028】
図2、図3に示すように、本実施形態で用いる樹脂成形品の成形装置10は、押出装置12(12a〜12c)と、押出装置12の下方に配置された型締装置14とを有して構成される。
【0029】
押出装置12(12a〜12c)は、多層発泡体100の非発泡層1、3を形成する非発泡樹脂シートP1、P3の間に、発泡層を形成する発泡樹脂シートP2が配置されるよう、これら3枚の溶融樹脂シートを各Tダイ28(28a〜28c)の押出スリット34(34a〜34c)から押し出すように構成される。また、非発泡樹脂シートP1、P3を押し出すTダイ28a、28cの下方には調整ローラ30a、30cが配置され、この調整ローラ30a、30cにより厚さ等の調整を行う。こうして押し出された溶融樹脂シートP1〜P3を、後述する分割金型50A,50Bで挟み込んで型締めし、成形する。
【0030】
3台の押出装置12(12a〜12c)は、調整ローラ30以外の構成についてはそれぞれ同じであるため、調整ローラ30が設けられた1つの押出装置12について、図3を参照して説明する。図2中では押出装置12の構成の内、Tダイ28と調整ローラ30のみを示し、他の構成は省略する。
【0031】
押出装置12は、ホッパー16が付設されたシリンダー18と、シリンダー18内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダー18と内部が連通したアキュムレータ24と、アキュムレータ24内に設けられたプランジャー26と、Tダイ28と、一対の調整ローラ30とを有して構成される。
【0032】
ホッパー16から投入された樹脂ペレットが、シリンダー18内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ24に移送されて一定量貯留され、プランジャー26の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送る。こうして、Tダイ28下端の押出スリット34から、溶融状態の樹脂による連続的な溶融樹脂シートが押し出され、間隔を隔てて配置された一対の調整ローラ30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出され、分割金型50A、50Bの間に垂下される。
【0033】
また、Tダイ28には、押出スリット34のスリット間隔を調整するためのダイボルト46が設けられる。スリット間隔の調整機構は、このダイボルト46を用いた機械式の機構に加え、公知の各種調整機構を他に備えてもよい。
【0034】
こうした構成により、後に詳細に説明するように、3つのTダイ28それぞれの押出スリット34から溶融樹脂シートPが押し出され、特に押出スリット34a、34cから押し出された非発泡樹脂シートP1、P3について、上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態に調整され、分割金型50A、50Bの間に配置される。
【0035】
押出装置12の押出の能力は、成形する多層発泡体の大きさ、各溶融樹脂シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択してよい。実用的な観点から具体例を挙げると、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット34からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、各溶融樹脂シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、溶融樹脂シートPの押出工程はなるべく短い時間で行われることが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、例えば押出工程は40秒以内、好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット34からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、例えば50kg/時cm2以上、好ましくは150kg/時cm2以上である。
【0036】
一対の調整ローラ30の回転により一対の調整ローラ30間に挟み込まれた溶融樹脂シートPを下方に送り出すことで、溶融状態のシート状樹脂を延伸薄肉化することが可能である。このため、押し出されるシート状樹脂の押出速度と、一対の調整ローラ30による溶融樹脂シートPの送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能である。このため、樹脂の種類、特にMFR値およびメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることが可能である。
【0037】
図3に示すように、Tダイ28に設けられる押出スリット34は、鉛直下向きに配置され、押出スリット34から押し出された溶融樹脂シートは、そのまま押出スリット34から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット34は、その間隔が調整できるようになっているため、このスリット間隔の調整により、非発泡樹脂シートP1、P3や、発泡樹脂シートP2のように、発泡層や非発泡層など様々な厚みの溶融樹脂シートに対応することができる。
【0038】
非発泡樹脂シートP1、P3、発泡樹脂シートP2を構成するための熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂などが適用可能である。但し、発泡樹脂シートP2を構成する熱可塑性樹脂としては、プロピレン単体を有するものが好ましく、具体的には、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体であることが好ましい。これにより、溶融張力が高くなるため、発泡樹脂シートP2を発泡し易くしたり、気泡セルも均一化し易くしたりすることができる。
【0039】
また、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体は、0.9以下の重量平均分岐指数を有するプロピレン単独重合体であることが好ましい。また、重量平均分岐指数は、v1/v2で表され、v1が分岐ポリオレフィンの極限粘度数、v2が分岐ポリオレフィンと同じ重量平均分子量を有する線状ポリオレフィンの極限粘度数である。
【0040】
また、非発泡樹脂シートP1、P3、発泡樹脂シートP2を構成するための熱可塑性樹脂は、230℃におけるメルトテンション(MT)が30〜350mNの範囲内のポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。ここで、MTとは、溶融張力を意味する。
発泡樹脂シートP2を構成するための熱可塑性樹脂のMTが30〜350mNの範囲内であると、ポリプロピレン系樹脂は歪み硬化性を示し、高い発泡倍率を得ることができる。なお、MTは、メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示すものである。
【0041】
また、非発泡樹脂シートP1、P3、発泡樹脂シートP2を構成するための熱可塑性樹脂は、230℃におけるメルトフローレイト(MFR)が1〜10であることが好ましい。ここで、MFRとは、JIS K−7210に順じて測定した値である。MFRが1未満であると、MFRが1〜10の範囲内にある場合と比較し、押出速度を上げることが困難になる傾向があり、MFRが10を超えると、MFRが1〜10の範囲内にある場合と比較し、ドローダウン等の発生によりブロー成形が困難になる傾向がある。
【0042】
発泡樹脂シートP2に混合させるスチレン系エラストマーとしては、分子内に水素が添加されたスチレン単位を有するエラストマーなどが適用可能である。例えば、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体等の水素添加エラストマーなどが適用可能である。スチレン系エラストマーの配合割合は、熱可塑性樹脂に対して、成形性の観点から40wt%未満の範囲であることが好ましい。また、スチレン系エラストマー中のスチレンの含有量は、低温時の衝撃強度の観点から、30wt%未満であることが好ましく、20wt%未満であることがより好ましい。
【0043】
また、発泡樹脂シートP2に混合させるポリエチレンとしては、低温時の衝撃強度の観点から、密度0.91g/cm3以下のものが適用可能である。特に、メタロセン系触媒により重合された直鎖状超低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。低密度ポリエチレンの配合割合は、上述した熱可塑性樹脂に対して、剛性及び耐熱性の観点から40wt%未満の範囲であることが好ましい。
【0044】
また、発泡樹脂シートP2を構成する基材樹脂には、上述したスチレン系エラストマー、低密度のポリエチレン及び発泡剤以外に、核剤、着色剤等を添加することも可能である。
【0045】
発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系発泡剤、または、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系発泡剤が挙げられる。これらの中でも、発泡剤は、空気、炭酸ガスまたは窒素ガスを用いることが好ましい。この場合、有機物の混入がなく、耐久性等の低下がない。
【0046】
発泡方法としては、例えば超臨界流体を用いる方法などがある。この場合、炭酸ガス、または、窒素ガスを超臨界状態とし、発泡樹脂シートP2を構成する基材樹脂を発泡させることが好ましい。この超臨界流体を用いる方法を用いれば、均一かつ確実に発泡させることができる。なお、窒素の超臨界流体は、窒素を臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上とすることにより得られ、二酸化炭素の超臨界流体は、二酸化炭素を臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。
【0047】
図2、図3に示す一対の調整ローラ30は、非発泡樹脂シートP1、P3を押し出すTダイ28a、28cの下方に配置され、各ローラの回転軸が互いに平行かつほぼ水平に配置される。
また、図2、図3に示すように、一対の調整ローラ30は、押出スリット34から下方に垂下する形態で押し出される溶融樹脂シートPに関して、線対称となるように配置される。
【0048】
それぞれのローラの直径およびローラの軸方向長さは、押し出されるシート状樹脂の押出速度、シートの押出方向長さおよび幅、ならびに樹脂の種類等に応じて適宜設定してよい。例を挙げると、ローラの径は50〜300mmの範囲であることが好ましく、溶融樹脂シートとの接触においてローラの曲率が大きすぎてもまた、小さすぎても溶融樹脂シートがローラへ巻き付く不具合の原因となる。
【0049】
一対の調整ローラ30それぞれの外表面には、凹凸状のシボが設けられる。凹凸状のシボは、外表面において、シート状樹脂と接触する面全体に亘って均一に分布するように設けるのが好ましく、その深さおよび密度は、一対の調整ローラ30によりシート状樹脂を円滑に下方に送り出すことが可能なように、一対の調整ローラ30それぞれの外表面と、対応するシート状樹脂の表面との間に滑りが生じない観点から適宜に定めればよい。このような凹凸状のシボは、たとえば、従来既知のサンドブラスト処理によって形成されるが、ブラスト機において、たとえば粗さ60番程度を採用する。
【0050】
一対の調整ローラ30は、一方が回転駆動ローラ30Aであり、他方が被回転駆動ローラ30Bであり、不図示の駆動源による回転が回転駆動ローラ30Aに伝達され、さらに被回転駆動ローラ30Bにも伝達されるように構成される。
【0051】
こうして回転駆動ローラ30Aの回転駆動力を被回転駆動ローラ30Bに伝達させることで、両ローラの回転速度を一致させた状態で、両ローラにより溶融樹脂シートを挟み込んで、下方に送り出すことが可能となる。
一対の調整ローラ30の駆動機構の詳細については、公知の構成と同様であり、説明を省略する。
【0052】
回転駆動ローラ30Aの回転速度は、シート状樹脂が押出スリット34から押し出される押出速度と、一対の調整ローラ30の回転により溶融樹脂シートPが下方に送り出される送り出し速度との相対速度差を、シート状樹脂の押出速度に応じて調整するといった方法により定められる。
【0053】
溶融樹脂シートPのローラによる送り出し速度は、例えば直径100mmの一対の調整ローラ30を用いて、送り出し方向に長さ2000mmの溶融樹脂シートPを15秒間で送り出す場合、1ショット15秒間で約6.4回転することとなり、ローラの回転速度は約25.5rpmと算出することができる。回転駆動ローラ30Aの回転速度を上げ下げすることで、溶融樹脂シートPの送り出し速度を容易に調整することができる。
【0054】
一対の調整ローラ30は、金属製、たとえばアルミニウム製であり、一対の調整ローラ30にはそれぞれ、溶融状態のシート状樹脂の温度に応じて、ローラの表面温度を調整する表面温度調整手段(不図示)が付設される。こうして温度調整を行うことにより、各ローラの表面が、挟み込まれた溶融状態のシート状樹脂により過度に加熱されないように熱交換するようにしている。
【0055】
一対の調整ローラ30間の間隔は、シート状樹脂の最下部がこの調整ローラ30の位置まで供給される前、供給されるシート状樹脂の厚みより広げておき、シート状樹脂が円滑に一対の調整ローラ30の間に供給されるようにしておく。その後、所定のタイミングで一対の調整ローラ30同士の間隔を狭めて、一対の調整ローラ30によりシート状樹脂を挟み込み、ローラの回転により溶融樹脂シートPを下方に送り出すようにしている。
なお、シート状樹脂の最下部がこの調整ローラ30の位置まで供給される前から、一対の調整ローラ30の間隔を適切な間隔に調整しておいてもよい。また、一対の調整ローラ30の間隔を固定せず、一対の調整ローラ30で挟み込む力が一定になるように構成してもよい。この場合、一対の調整ローラ30間にシートが巻き込まれることで、ローラ間隔が自動的に所定の間隔に広がることになる。
【0056】
以上のように、押出スリット34からのシート状樹脂の押出速度と、一対の調整ローラ30の間隔、回転速度、温度などを調整することで、押し出される各溶融樹脂シートについて予め定められた厚みに正確に調整することができる。また、ドローダウンやネックインを発生させることなく、円滑に動作させることができる。
【0057】
また、発泡樹脂シートP2をTダイ28bの押出スリット34bから押し出す際には、押出スリット34b下方に調整ローラ30を配置せず、発泡させて押し出された発泡樹脂シートP2をそのまま垂下させるため、発泡樹脂シートP2の気泡を調整ローラ30で損なうことがなく、大きな発泡倍率も容易に実現することができる。
【0058】
型締装置14は、2つの分割形式となっている分割金型50A、50Bと、分割金型50A、50Bを溶融状態の樹脂シートPの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させる不図示の金型駆動装置とを有する。
【0059】
図2に示すように、2つの分割形式となっている分割金型50A、50Bは、キャビティ面51A、51Bを対向させた状態で配置され、それぞれのキャビティ面51A、51Bの底面が略鉛直方向を向くように配置される。それぞれのキャビティ面51A、51Bの表面には、溶融樹脂シートPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられる。本実施形態では、キャビティ面51Aの底面が凹凸のない平坦面となっており、キャビティ面51Bの底面が凹凸を有する形状となっている場合を例として説明する。
【0060】
また、2つの分割形式となっている分割金型50A、50Bそれぞれについて、キャビティ面51A、51Bのまわりには、ピンチオフ部52A、52Bが形成される。このピンチオフ部52A、52Bは、キャビティ面51A、51Bのまわりに環状に形成され、対向する分割金型に向かって突出する。これにより、2つの分割形式となっている分割金型50A、50Bを型締めする際、それぞれのピンチオフ部52A、52Bの先端部が当接し、溶融状態の樹脂シートPの周縁にパーティングラインが形成されるようにしている。
【0061】
2つの分割形式となっている分割金型50A、50Bはそれぞれ、不図示の金型駆動装置により駆動され、開位置において、2つの分割金型50A、50Bの間に、3枚の溶融樹脂シートP1〜P3を配置可能なようにされる。また、閉位置において、2つの分割金型50A、50Bのピンチオフ部52A、52Bで溶融状態の樹脂シートPの周縁にパーティングラインを形成する所定位置まで2つの分割金型50A、50Bを近接させ、環状のピンチオフ部52A、52Bにより、2つの分割金型50A、50B内に密閉空間が形成されるようにしている。
金型駆動装置の詳細については、従来と同様のものであり、説明を省略する。
【0062】
以上のような成形装置10により、図2に示すように、分割金型50A、50Bが開位置にある状態で、Tダイ28aの押出スリット34aから非発泡層1を形成する非発泡樹脂シートP1が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Aa、30Baにより厚さ等を調整される。
また、Tダイ28bの押出スリット34bからは、発泡層2を形成する発泡樹脂シートP2が単層で押し出され、そのまま下方に垂下される。
また、Tダイ28cの押出スリット34cから非発泡層3を形成する非発泡樹脂シートP3が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Ac、30Bcにより厚さ等を調整される。
【0063】
こうして各溶融樹脂シートP1〜P3がそれぞれ押し出され、下方の所定位置まで垂下されると、図4に示すように、型締装置14は分割金型50A、50Bを移動させ、閉位置まで閉じさせる。
【0064】
こうして型締めにより成形する際、キャビティ面51Bの凹凸形状などに応じて、ピンチオフ部52A、52Bによる密閉空間内に残った空気を、分割金型50Bに設けられた空気抜き用の孔(不図示)から空気抜き用のパイプを挿入するなどの公知の方法により空気抜きを行うことが好ましい。
【0065】
こうして分割金型50A、50Bのキャビティ面51A、51Bの形状に沿った形状の多層発泡体を成形した後、分割金型50A、50Bを型開きして、成形された樹脂成形品を取り出し、パーティングラインまわりに形成されたバリを除去する。
各押出スリット34(34a〜34c)から溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、多層発泡体を次々に成形することができる。
【0066】
<本実施形態の製造方法の効果>
以上のように、本実施形態では、2枚の非発泡樹脂シートP1、P3の間に発泡樹脂シートP2を配置し、この状態で分割金型50A、50Bにより型締めして成形する。また、この発泡樹脂シートP2を、押出スリット34bから単層で発泡させて押し出すようにしている。
このため、発泡樹脂シートP2が押出スリット34bから押し出される瞬間の発泡を妨げてしまうことがなく、大きな発泡倍率も容易に実現することができる。このため、成形品の多層発泡体100における発泡層2を高い発泡倍率とすることも容易に可能となる。
【0067】
さらに、本実施形態の成形装置10は、発泡樹脂シートP2を押し出すTダイ28bの下方に調整ローラ30が配置されない構成となっているため、単層で押出スリット34bから押し出されて高い発泡倍率となっている発泡樹脂シートP2の気泡を潰してしまうことなく、発泡層2の発泡倍率を高めることが容易に可能である。
【0068】
また、2枚の非発泡樹脂シートP1、P3の間に発泡樹脂シートP2を配置した状態で型締めし、凹凸を有する形状に成形しているため、成形品の多層発泡体100における凹凸部分周りであっても発泡層2の発泡倍率が場所によって偏ってしまうことのない、均等な発泡倍率の仕上がりとすることが容易に可能となる。
【0069】
さらに、2枚の非発泡樹脂シートP1、P3の間に、発泡樹脂シートP2が、溶融状態の樹脂シートのままで接着されることとなるため、予め成形された発泡体の芯材を非発泡層の溶融樹脂シートで覆う製造方法と比較して、成形品の多層発泡体100における発泡層2と非発泡層1、3との接着強度を向上させることができる。
【0070】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0071】
上述した第1の実施形態では、3枚の溶融樹脂シートを押し出して垂下させ、その状態で分割金型50A、50Bで型締めし、成形している。
第2の実施形態では、こうした動作に替えて、まず、非発泡樹脂シートP1、P3を分割金型50A、50Bに吸着させ、その後、3枚の溶融樹脂シートP1〜P3を分割金型50A、50Bで型締めするようにしたものである。
上述した第1の実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0072】
<多層発泡体100の製造方法例>
次に、図5〜図8を参照しながら、本実施形態の多層発泡体100の製造方法例について説明する。図5〜図8は、本実施形態による多層発泡体100の製造方法例を示す図である。
【0073】
本実施形態の分割金型50A、50Bの内部には、真空吸引室53A、53Bが設けられ、真空吸引室53A、53Bは吸引孔54A、54Bを介してキャビティ面51A、51Bに連通した構成となっている。このため、不図示の減圧手段により真空吸引室53A、53B内部を減圧し、その真空吸引室53A、53Bから吸引孔54A、54Bを介して吸引することにより、キャビティ面51A、51Bに向かって溶融樹脂シートを吸着させ、キャビティ面51A、51Bの外表面に沿った形状とさせるようになっている。
【0074】
こうした本実施形態の型締装置14に対して、図5に示すように、分割金型50A、50Bが開位置にある状態で、Tダイ28aの押出スリット34aから非発泡層1を形成する非発泡樹脂シートP1が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Aa、30Baにより厚さ等を調整される。
また、Tダイ28cの押出スリット34cから非発泡層3を形成する非発泡樹脂シートP3が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Ac、30Bcにより厚さ等を調整される。
【0075】
次に、図6に示すように、分割金型50Aを、ピンチオフ部52Aが非発泡樹脂シートP1に接触する位置まで移動させ、分割金型50Bを、ピンチオフ部52Bが非発泡樹脂シートP3に接触する位置まで移動させる。
そして、分割金型50A、50Bそれぞれについて、不図示の減圧手段により真空吸引室53A、53B内部を減圧し、その真空吸引室53A、53Bから吸引孔54A、54Bを介して吸引することにより、キャビティ面51A、51Bに向かって非発泡樹脂シートP1、P3を吸着させる。
【0076】
こうして分割金型50Aに非発泡樹脂シートP1が、分割金型50Bに非発泡樹脂シートP3が、それぞれのキャビティ面51A、51Bに吸着されると、図7に示すように、Tダイ28bの押出スリット34bから、発泡層2を形成する発泡樹脂シートP2を単層で押し出し、非発泡樹脂シートP1、P3が吸着されている分割金型50A、50B間に垂下させる。
なお、Tダイ28bの押出スリット34bから発泡樹脂シートP2を押し出すタイミングは、非発泡樹脂シートP1、P3の吸着後に限定されず、各種条件に応じて、適宜予め定められたタイミングで押し出すこととしてよい。
【0077】
次に、図8に示すように、分割金型50Aに非発泡樹脂シートP1が、分割金型50Bに非発泡樹脂シートP3が、それぞれ吸着された状態で、型締装置14は分割金型50A、50Bを移動させ、閉位置まで閉じさせる。
【0078】
こうして型締めにより成形する際、キャビティ面51Bの凹凸形状などに応じて、ピンチオフ部52A、52Bによる密閉空間内に残った空気を、分割金型50Bに設けられた空気抜き用の孔(不図示)から空気抜き用のパイプを挿入するなどの公知の方法により空気抜きを行うことが好ましい。
【0079】
こうして分割金型50A、50Bのキャビティ面51A、51Bの形状に沿った形状の多層発泡体を成形した後、分割金型50A、50Bを型開きして、成形された樹脂成形品を取り出し、パーティングラインまわりに形成されたバリを除去する。
各押出スリット34(34a〜34c)から溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、多層発泡体を次々に成形することができる。
【0080】
<本実施形態の製造方法の効果>
以上のように、本実施形態では、2枚の非発泡樹脂シートP1、P3を分割金型50A、50Bのキャビティ面51A、51Bに吸着させた後、その間に発泡樹脂シートP2が配置された状態で型締めして成形する。
このため、例えばキャビティ面51Bの凹凸形状が複雑なものである場合などであっても、ピンチオフ部52A、52Bによる密閉空間内に空気を残してしまうことなく、より確実に多層発泡体100を成形することができる。また、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0082】
上述した第1の実施形態では、3枚の溶融樹脂シートを押し出し、そのまま垂下させ、その状態で分割金型50A、50Bで型締めして成形している。
第3の実施形態では、こうした動作に替えて、押し出された3枚の溶融樹脂シートを圧着ローラ40A、40Bにより互いに接着させ、その後、接着された3層の溶融樹脂シート積層体を分割金型50A、50Bで型締めするようにしたものである。
上述した第1、第2の実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0083】
<多層発泡体100の製造方法例>
次に、図9〜図11を参照しながら、本実施形態の多層発泡体100の製造方法例について説明する。図9〜図11は、本実施形態による多層発泡体100の製造方法例を示す図である。
【0084】
本実施形態では、押出装置12が、一対の圧着ローラ40A、40Bを備え、この圧着ローラ40A、40Bにより、各押出スリット34a〜34cから押し出された3枚の溶融樹脂シートP1〜P3を互いに接着させ、3層の溶融樹脂シート積層体を形成するようになっている。
【0085】
本実施形態では、一対の圧着ローラ40A、40B間で3枚の溶融樹脂シートP1〜P3を挟み込んでいるため、各溶融樹脂シート間を広い面積で連続的に接着させることができ、かつ、形成される3層の溶融樹脂シート積層体の厚みも一定にすることができる。
【0086】
ここで、3枚の溶融樹脂シートP1〜P3を圧着ローラ40A、40Bで挟み込む時の圧着ローラ40A、40Bの圧力は、最終成形品となる多層発泡体100の発泡倍率を低下させないようにするため、特に発泡樹脂シートP2の気泡を極力潰さない程度の圧力であることが好ましく、具体的には、1kg/cm2以下であることが好ましい。これにより、3枚の溶融樹脂シートP1〜P3を圧着ローラ40A、40Bで挟み込んでも、発泡樹脂シートP2の気泡が潰れにくいので、形成される3層の溶融樹脂シート積層体についても、発泡樹脂シートP2の部分について高い発泡倍率を確保することができる。
【0087】
また、圧着ローラ40A、40Bで3枚の溶融樹脂シートP1〜P3を挟み込む際、形成される3層の溶融樹脂シート積層体の表面にしわが発生しないようにするために、挟み込む前に溶融樹脂シートP1〜P3に対してプリブローを行うことが好ましい。この場合、Tダイ28a〜28cの側からプリブロー用のエアーを溶融樹脂シートP1〜P3に対して吹き込むなどの方法を用いることができる。
【0088】
また、圧着ローラ40A、40Bで3枚の溶融樹脂シートP1〜P3を挟み込む際、Tダイ28a〜28cの側から各溶融樹脂シートP1〜P3間の空気を吸引することが好ましい。これにより、3枚の溶融樹脂シートP1〜P3が互いに接着される際に、その接着面に空気だまりが発生するのを好適に防止することができる。
なお、Tダイ28a〜28cの側から上述したプリブロー用のエアーを吹き込み、かつ、3枚の溶融樹脂シートP1〜P3間の空気を吸引する場合には、吹き込み処理と、吸引処理と、を動的に変更する必要がある。
【0089】
また、圧着ローラ40A、40Bは、3枚の溶融樹脂シートP1〜P3が供給される前には、一対の圧着ローラ40A、40B間の距離を離しておき、3枚の溶融樹脂シートP1〜P3が所定長さまで押し出された時点で、これら溶融樹脂シート間を互いに接着させる距離として予め設定された距離まで近づけるようにする。
このようにすることで、押出開始から3層の溶融樹脂シート積層体の形成に至る動作を円滑に進めることができる。
【0090】
こうして図9に示すように、分割金型50A、50Bが開位置にある状態で、一対の圧着ローラ40A、40Bにより形成された3層の溶融樹脂シート積層体が、分割金型50A、50B間に所定長さまで垂下される。
【0091】
次に、図10に示すように、型締装置14が分割金型50A、50Bを移動させ、閉位置まで閉じさせる。
この時、分割金型50A、50Bのキャビティ面51A、51Bの底が深い場合や、キャビティ面51Bの凹凸が大きい場合などには、挟み込まれた3層の溶融樹脂シート積層体の表面と、キャビティ面51A、51Bとの間に隙間が空いてしまうことがある。
【0092】
このため、図11に示すように、分割金型50A、50Bそれぞれについて、不図示の減圧手段により真空吸引室53A、53B内部を減圧し、その真空吸引室53A、53Bから吸引孔54A、54Bを介して吸引することにより、挟み込まれた3層の溶融樹脂シート積層体を膨張させ、表面をキャビティ面51A、51Bに吸着させる。
【0093】
こうして分割金型50A、50Bのキャビティ面51A、51Bの形状に沿った形状の多層発泡体を成形した後、分割金型50A、50Bを型開きして、成形された樹脂成形品を取り出し、パーティングラインまわりに形成されたバリを除去する。
各押出スリット34(34a〜34c)から溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、多層発泡体を次々に成形することができる。
【0094】
<本実施形態の製造方法の効果>
以上のように、本実施形態では、押し出された3枚の溶融樹脂シートP1〜P3を圧着ローラ40A、40Bにより互いに接着させた後、接着された3層の溶融樹脂シート積層体を分割金型50A、50Bで型締めして成形する。
このため、3枚の溶融樹脂シートP1〜P3間に空気だまりができる可能性をさらに低くすることができ、より安定した状態で型締めを行うことができる。また、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
また、一体に接着された溶融樹脂シート積層体を分割金型50A、50Bで型締めしているため、型締めした後、分割金型50A、50Bから吸引することで、挟み込まれた3層の溶融樹脂シート積層体を膨張させてキャビティ面51A、51Bの形状に沿わせることができる。
このため、挟み込まれた溶融樹脂シート積層体とキャビティ面51A、51Bとの間に空気だまりが残ってしまうことなく、安定した品質で仕上げることができる。
【0096】
また、発泡層2の発泡倍率をより大きくすることができる。この場合にも、発泡樹脂シートP2の発泡倍率を高くできているため、より自然な仕上がりとすることができる。
【0097】
また、例えばキャビティ面51Bの凹凸が大きい場合や、凹凸形状が複雑なものである場合などであっても、ピンチオフ部52A、52Bによる密閉空間内に空気を残してしまうことなく、より確実に多層発泡体100を成形することができる。
【0098】
なお、例えばキャビティ面51Bの凹凸が非常に小さい場合など、分割金型50A、50Bから真空吸引室53A、53Bを用いた吸引を行う必要なく、挟み込まれた3層の溶融樹脂シート積層体がキャビティ面51A、51Bの形状に沿うように成形される条件である場合には、上述した動作例の吸引を行わず、吸引孔54A、54Bを空気抜き孔として用いる製造方法としてもよい。
この場合にも、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0099】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態は、上述した第2の実施形態の製造工程に加えて、芯材4を非発泡樹脂シートP1、P3の間に挟むようにしたものである。
上述した第1〜第3の実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0100】
<多層発泡体200の構成例>
まず、図12を参照しながら、本実施形態により成形する多層発泡体200の構成例について説明する。
【0101】
本実施形態の多層発泡体200は、非発泡層1、3と、発泡層2と、芯材4と、を有して構成される。非発泡層1、3は、多層発泡体200の外側を構成し、発泡層2および芯材4は、多層発泡体200の内側を構成する。
【0102】
このように、本実施形態の多層発泡体200は、発泡層2および芯材4の周りが非発泡層1、3で覆われた構成となっているため、多層発泡体200の剛性を高めることができる。
【0103】
また、芯材4が非発泡層1、3で覆われた構成であると同時に、非発泡層3は、凹凸のある形状となっている。また、発泡層2も、非発泡層3の凹凸に合わせた形状となっており、発泡倍率が凹凸形状に合わせて偏ることない。このため、発泡体などによる芯材4が非発泡層1、3で覆われた構成でありながら、表面に凹凸のある形状で、内側を均質な発泡層とすることができている。
このため、芯材4を含んだ凹凸形状の多層発泡体200として、長期間の使用でも成形後の反りなどの問題を生じにくく、高品質を維持することができるようになっている。
【0104】
芯材4は、発泡体、非発泡体といった各種樹脂材料からなるものであってもよく、金属材料などからなるものであってもよい。このように、芯材4は、予め成形された任意の材料によるものを用いることができる。
【0105】
<多層発泡体200の製造方法例>
次に、図13〜図17を参照しながら、本実施形態の多層発泡体200の製造方法例について説明する。図13〜図17は、本実施形態による多層発泡体200の製造方法例を示す図である。
【0106】
本実施形態の分割金型50A、50Bの内部には、真空吸引室53A、53Bが設けられ、こうした本実施形態の型締装置14に対して、図13に示すように、分割金型50A、50Bが開位置にある状態で、Tダイ28aの押出スリット34aから非発泡層1を形成する非発泡樹脂シートP1が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Aa、30Baにより厚さ等を調整される。非発泡樹脂シートP1が所定長さまで押し出されると、分割金型50Aを、ピンチオフ部52Aが非発泡樹脂シートP1に接触する位置まで移動させ、不図示の減圧手段により真空吸引室53A内部を減圧し、その真空吸引室53Aから吸引孔54Aを介して吸引することにより、キャビティ面51Aに向かって非発泡樹脂シートP1を吸着させる。
【0107】
次に、図14に示すように、キャビティ面51Aに吸着された非発泡樹脂シートP1に対して、芯材4を水平方向に押し付けて接着させる。芯材4を押し付ける方法は、例えば吸着盤を有するマニピュレータにより押し付けた後、その吸着盤を芯材4から取り外す方法など、各種の方法であってよい。
【0108】
次に、図15に示すように、開位置にある分割金型50A、50Bの間に、Tダイ28bの押出スリット34bから発泡層2を形成する発泡樹脂シートP2が単層で押し出され、そのまま下方に垂下される。
また、Tダイ28cの押出スリット34cから非発泡層3を形成する非発泡樹脂シートP3が単層で押し出され、一対の調整ローラ30Ac、30Bcにより厚さ等を調整される。
【0109】
次に、図16に示すように、型締装置14が分割金型50A、50Bを移動させ、閉位置まで閉じさせる。
この時、分割金型50Bのキャビティ面51Bの凹凸形状によっては、キャビティ面51Bの凸部により非発泡樹脂シートP3が押圧され、芯材4と発泡樹脂シートP2の間、および発泡樹脂シートP2と非発泡樹脂シートP3の間が接着されることとなる。しかし、キャビティ面51Bの凹凸が大きい場合などには、挟み込まれた非発泡樹脂シートP3の表面と、キャビティ面51Bとの間に隙間が空いてしまうことがある。
【0110】
このため、図17に示すように、分割金型50Bについて、不図示の減圧手段により真空吸引室53B内部を減圧し、その真空吸引室53Bから吸引孔54Bを介して吸引することにより、挟み込まれた発泡樹脂シートP2、非発泡樹脂シートP3を膨張させ、非発泡樹脂シートP3の表面をキャビティ面51Bに吸着させる。
【0111】
こうして芯材4が埋め込まれた多層発泡体を、分割金型50A、50Bのキャビティ面51A、51Bの形状に沿った形状に成形した後、分割金型50A、50Bを型開きして、成形された樹脂成形品を取り出し、パーティングラインまわりに形成されたバリを除去する。
各押出スリット34(34a〜34c)から溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、多層発泡体を次々に成形することができる。
【0112】
<本実施形態の製造方法の効果>
以上のように、本実施形態では、非発泡樹脂シートP1を圧着ローラ40Aに吸着させた後、その非発泡樹脂シートP1に芯材4を接着させ、発泡樹脂シートP2、非発泡樹脂シートP3と共に分割金型50A、50Bで型締めして成形する。
このため、凹凸を有する形状の表面が非発泡層1、3に覆われ、内側が芯材4および発泡層2で満たされた多層発泡体200を、発泡倍率が場所によって偏ることのない均等な発泡倍率の仕上がりで、容易に成形することができる。
【0113】
また、凹凸部分の非発泡層3、発泡層2の成形について、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0114】
また、型締めした後、分割金型50Bから吸引することで、挟み込まれた発泡樹脂シートP2、非発泡樹脂シートP3を膨張させてキャビティ面51Bの形状に沿わせているため、挟み込まれた発泡樹脂シートP3とキャビティ面51Bとの間に空気だまりが残ってしまうことなく、安定した品質で仕上げることができる。
【0115】
<本実施形態の他の製造方法例>
上述した第4の実施形態における製造方法では、図15〜図17に示すように、発泡樹脂シートP2、非発泡樹脂シートP3を調整ローラ30からそのまま垂下させ、分割金型50A、50Bで型締めすることとして説明した。しかし、この方法に限定されず、例えば図18に示すように、発泡樹脂シートP2および非発泡樹脂シートP3を、第3の実施形態で上述した圧着ローラ40A、40Bにより互いに接着させ、2層の溶融樹脂シート積層体を形成してから、図16に示すように型締めしてもよい。この製造方法によっても、上述した各効果と同様の効果を得ることができる。また、発泡樹脂シートP2および非発泡樹脂シートP3の間に空気だまりができる可能性をさらに低くすることができる。
【0116】
また、例えばキャビティ面51Bの凹凸が非常に小さい場合など、分割金型50Bから真空吸引室53Bを用いた吸引を行う必要なく、挟み込まれた非発泡樹脂シートP3がキャビティ面51Bの形状に沿うように成形される条件である場合には、上述した動作例における型締後の吸引を行わず、吸引孔54Bを空気抜き孔として用いる製造方法としてもよい。
この場合にも、上述した各効果と同様の効果を得ることができる。
【0117】
〔各実施形態について〕
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
【0118】
例えば、分割金型50Bのキャビティ面51Bにおける凹凸形状は、上述した実施形態に限定されず、任意の形状であってよい。
【0119】
また、上述した第1〜第3の実施形態については、分割金型50Aのキャビティ面51Aが凹凸のない平坦面で、分割金型50Bのキャビティ面51Bが凹凸を含む形状として説明したが、この形状に限定されず、分割金型50A、50Bの両方が凹凸を含む形状であっても、本発明は同様に実現することができる。
また、上述した第4の実施形態についても、芯材4を所定位置に配置して非発泡樹脂シートP1に適切に接着させることが可能であれば、分割金型50Aのキャビティ面51Aは凹凸のない平坦面に限定されず、凹凸を含む形状であってもよい。
【0120】
また、上述した第1〜第3の実施形態について、分割金型50A、50Bのキャビティ面における凸部の高さを適宜調整することにより、例えば図19(a)(b)に示すように、挟み込まれる全ての溶融樹脂シートが押し潰される部分を含む多層発泡体100を成形する場合であっても、本発明は同様に適用することができる。すなわち、発泡層2の気泡が完全に潰れる程度まで溶融樹脂シートが圧縮される部分を有するように成形する場合であっても、本発明は同様に適用することができる。
この場合、例えば図19(a)に示すように、分割金型50A、50Bの何れか一方のキャビティ面が凹凸を含む形状であってもよく、図19(b)に例示するように、分割金型50A、50Bの両方のキャビティ面が凹凸を含む形状であってもよい。
【0121】
また、上述した第4の実施形態についても、分割金型のキャビティ面における凸部の高さを適宜調整することにより、芯材4に連接される発泡層2の気泡が完全に潰れる程度まで溶融樹脂シートが圧縮される部分を有するように成形する場合であっても、本発明は同様に適用することができる。
【0122】
また、上述した各実施形態では、一対の分割金型50A、50Bの両方について、キャビティ面が巨視的には凹型となる形状として説明したが、この形状に限定されず、例えば一方のキャビティ面が凹型、他方のキャビティ面が凸型であっても、本発明は同様に実現することができる。
【0123】
また、上述した各実施形態では、一対の分割金型50A、50Bを用いた場合について説明した。しかし、分割金型の分割数は、2つに限定されず、任意の数に分割された分割金型を用いても、本発明は同様に実現することができる。
【0124】
また、上述した各実施形態では、非発泡樹脂シートP1、P3を押し出すTダイ28a、28cの下方に調整ローラ30が配置され、発泡樹脂シートP2を押し出すTダイ28bの下方には調整ローラ30が設けられない構成として説明したが、この構成に限定されず、発泡樹脂シートP2を押し出すTダイ28bの下方にも調整ローラ30を配置し、厚さ等の調整を行う構成であってもよい。この場合、発泡樹脂シートP2に対して設けられたTダイ28b下方の調整ローラ30における一対のローラ間の間隔、またはローラ間の押圧力は、発泡樹脂シートP2の気泡を潰さないように予め設定されることが好ましい。
【0125】
また、溶融樹脂シートを押し出す押出装置12の配置台数は3台に限定されず、目的とする成形品の形状などに応じて任意の数であってよい。すなわち、分割金型により型締めする溶融樹脂シートは、少なくとも一番外の両側に非発泡樹脂シートが配置され、その内側に発泡樹脂シートが配置された構成であれば、配置される枚数は限定されず、任意の枚数であってよい。
【0126】
また、押出装置12の構成は、上述した実施形態の構成に限定されず、溶融状態の樹脂シートを押し出すことができれば任意の構成であってよい。
【符号の説明】
【0127】
100 多層発泡体
1、3 非発泡層
2 発泡層
P1、P3 非発泡樹脂シート
P2 発泡樹脂シート
10 成形装置
12 押出装置
14 型締装置
16 ホッパー
18 シリンダー
20 油圧モーター
24 アキュムレータ
26 プランジャー
28 Tダイ
30A、30B 調整ローラ
34 押出スリット
40A、40B 圧着ローラ
50A、50B 分割金型
51A、51B キャビティ面
52A、52B ピンチオフ部
53A、53B 真空吸引室
54A、54B 吸引孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの押出スリットのそれぞれから溶融状態の樹脂シートを押し出す押出工程と、
前記樹脂シートを分割金型で挟み込んで多層発泡体を成形する成形工程と、を有し、
前記樹脂シートの少なくとも1枚は前記押出スリットから発泡層として押し出され、
前記樹脂シートの少なくとも2枚は前記押出スリットから非発泡層として押し出され、
前記分割金型は、少なくとも一方のキャビティ面に凹凸を有する形状であり、
前記成形工程では、前記非発泡層として押し出された少なくとも2枚の樹脂シートの間に前記発泡層として押し出された樹脂シートが配置された状態で前記分割金型により挟み込むことを特徴とする多層発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記非発泡層として押し出された少なくとも2枚の樹脂シートを、一対の前記分割金型のそれぞれに吸着させる第1の吸着工程を有し、
前記成形工程では、前記非発泡層として押し出された樹脂シートが吸着された状態である一対の前記分割金型により、前記発泡層として押し出された樹脂シートを挟み込むことを特徴とする請求項1記載の多層発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記非発泡層として押し出された少なくとも2枚の樹脂シートの間に前記発泡層として押し出された樹脂シートを挟むように圧着ローラで圧着し、各樹脂シート間を接着する接着工程を、前記成形工程の前に有することを特徴とする請求項1記載の多層発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記分割金型に対する所定位置に芯材を配置する配置工程を有し、
前記成形工程では、前記非発泡層として押し出された少なくとも2枚の樹脂シートの間に前記発泡層として押し出された樹脂シートおよび前記芯材が配置された状態で一対の前記分割金型により挟み込むことを特徴とする請求項1記載の多層発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記非発泡層として押し出された樹脂シートの少なくとも1枚を前記分割金型に吸着させる第2の吸着工程を有し、
前記配置工程では、前記分割金型のキャビティ内、かつ、前記第2の吸着工程で吸着された樹脂シートに接触する前記所定位置に前記芯材を配置することを特徴とする請求項4記載の多層発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−28030(P2013−28030A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164711(P2011−164711)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】