多層織りクレーピング布地
複数の縦糸及び横糸又はシュートを備える多層織りクレーピング布地。多層織りクレーピング布地は、機械又はロールの側と、シートに接触する側を有する。複数の横糸又はシュートを布地の機械又はロールの側に有し、それらは切り込み又は溝のある糸であり、かつ/又は、縦糸の直径より直径の小さな横糸又はシュートを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端布地に、より詳しくは、紙製品の生産において多層織りクレーピング布地として用いられる布地に関する。より詳しくは、本発明は、紙及び衛生ティシューのような紙の製品、及びタオル製品の生産において用いられるクレーピング布地に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧紙、トイレットペーパー、及び紙タオルのような柔らかい、吸収性のある使い捨ての紙製品は、近代工業化社会における現代的生活の、広く行き渡った特徴である。この種の製品を製造する多数の方法がある一方、一般に、それらの製造は製紙機械の成形部におけるセルロース繊維織布の形成から開始される。セルロース繊維織布は、製紙機械の成形部において、移動成形布地の上に、繊維様スラリー、すなわち、セルロース繊維の水分散液を堆積させることにより形成される。大量の水が成形布地を通ってスラリーから排出されて、成形布地の上にセルロース繊維織布が残される。
【0003】
セルロース繊維織布の更なる処理および乾燥は、2つの周知の方法のうちの1つを用いて、一般に進められる。これらの方法は、通常、湿式加圧及びスルー乾燥(through drying)と称される。湿式加圧では、新たに形成されたセルロース繊維織布が、プレス布地に転送され、成形部から、少なくとも一つの加圧ニップを含む加圧部に進む。セルロース繊維織布は、単一のプレス布地に、或いは、往々にして2つのプレス布地の間に支持されて、加圧ニップを通過する。加圧ニップの中で、セルロース繊維織布には、それらから水を絞り出す圧縮力が課される。水は、単一又は複数のプレス布地により受け入れられて、理想的には、繊維織布や紙には戻らない。
【0004】
加圧の後、紙は、プレス布地を経由して、例えば、加熱された回転しているヤンキー乾燥機のシリンダに移送され、それによって、その紙は、シリンダ表面で実質的に乾燥させられる。織布の内部の水分は、ヤンキー乾燥機のシリンダ表面に塗られることによりその織布をその表面に固着させ、また、ティシューやタオルタイプの製品の製造においては、その織布が、典型的には、クレーピングブレードによって乾燥機の表面からクレープ加工(creped)される。クレープ加工された織物は、例えば、光沢機を通過することによって更なる処理に付すこと、また、更なる変換工程に先立って巻き上げることができる。紙上のクレーピングブレードの動作は、ブレードの中に駆動されていく際の織布に対するブレードの機械的破壊動作によって、紙の中の繊維内結合の一部分を分解させることが知られている。しかしながら、織布から水分が乾燥する間には、セルロース系繊維の間に、かなり強い繊維内結合が形成される。これらの結合の強さは、従来はクレーピング後でさえ、織布が、硬い感触、かなり高い密度、及び低い嵩と吸水度を保持させるようなものである。
【0005】
湿式加圧方法により形成される繊維内結合の強さを減らすためには、スルー乾燥を用いることができる。スルー乾燥のプロセスでは、新たに形成されたセルロース繊維織布は、真空または吸入によってもたらされる空気の流れによってTAD布地に移送され、これにより、その織布は歪められ、少なくとも一部においてスルーエア乾燥(TAD)布地の地形と強制的に整合させられる。その移送点の下流で、その織布は、TAD布地の上で搬送され、スルーエア乾燥機を通過し、また回り込み、ここでは、織布に向けられ、又TAD布地を通過した加熱空気の流れが、所望の程度にまで織布を乾燥させる。最後に、更なる完全な乾燥のために、スルーエア乾燥機の下流で、ヤンキー乾燥機の表面に織布を移送してもよい。完全に乾燥させられた織布は、その後ドクターブレードによりヤンキー乾燥機の表面から取り除かれ、これが織布を短縮させ、又はクレープさせて、さらにその嵩を増大させる。短縮された織布は、次に、出荷や、消費者による購入に適した形への包装作業を含む後処理のためにロール上に巻回される。
【0006】
湿式加圧プロセスにおいて、布地の上にある間にニップの中で、また、ヤンキー乾燥機まで移送されてきた際にそのシリンダに対して、織布が加圧されることにより生ずることのある織布圧縮が無くなることは、TADプロセスにおいて、強い繊維内結合が形成される機会を減らして、従来の湿式加圧によって達成され得る嵩よりも大きな嵩を有するティシューやタオルの最終製品を生じさせる。しかしながら、通常、スルーエア乾燥のプロセスで形成される織布の引張り強さは、最終消費製品には適切でなく、そして、オリジナルの製品の嵩の大半をまだ維持しながら所望の強度を達成するために、形成処理の前及び又は間に、様々なタイプの化学添加物が織布に典型的に導入される。
【0007】
上記の如く、嵩ティシュー製品の製造には多くの方法があり、そして、前述の説明は、その方法のいくつかにより共有される一般的なステップの概略として理解されなければならない。例えば、所与の状況においては、短縮処理が要求されないことがあり、ヤンキー乾燥機の使用は常に必要とされるものではなく、又は、織布を短縮するために、湿式クレーピングのような他の手段が、すでにとられていることもある。
【0008】
ここでは、湿式加圧及びスルーエア乾燥の双方について、他のプロセスや機械構成の変形例も考慮されることになっている。例えば、場合によっては、シートが乾燥機面から除去されるときに、クレーピングドクターは使用されない。更に、TADユニットや、TADプロセスに関連した高エネルギーのコストを伴うことなく「TADのような」ティシュー又はタオルの製品特性を達成することを試みる、スルーエア乾燥プロセスの代替である方法が存在する。
【0009】
嵩、吸収性、強さ、柔軟さ、及び美的外観の特性は、それらの意図された目的として用いられる場合に、特に、繊維セルロース製品が、化粧用又はトイレ用ティシュー、或いはペーパータオルである場合に、多くの製品にとって重要である。これらの特性を有する紙製品を生産するために、布地はしばしば、シートに接触する表面が構造的特徴の変化を呈するように構成される。これらの構造的特徴の変化は、布地の表面における、編まれた糸綱の間の平面差としてしばしば計測される。例えば、平面差は、典型的には、起毛した横又は縦糸綱における高さの差として、或いは、布地の面における縦方向(MD)のナックルと幅方向(CD)のナックルとの間の高さにおける差として計測される。布地構造は、しばしばポケットを呈し、この場合、平面差はポケットの深さとして計測される。
【0010】
これらのクレーピング布地が、製紙機械上でエンドレスループの形をとり、また、コンベヤの方法で機能できることは、理解されるべきである。更に、製紙が、かなりの速度で進行する連続プロセスであることも認識されるべきである。すなわち、新たに製造された紙シートが、その乾燥後に、ロール上に連続的に巻回される一方で、繊維スラリーは成形部の成形布地上に連続的に体積される。
【0011】
本発明は、布地の上に形成される製品が、そのような動作の間に再び湿ってしまうのを抑制し、或いは、防いでさえしまうことのできる布地を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、布地の上に形成される紙製品が再び湿ってしまうのを最小限にし、また、取り除いてさえしまう多層織りクレーピング布地を提供することが、本発明の主要な目的である。
【0013】
機械又はロールの側に切れ込み又は溝のある横糸又はシュート(shutes)を有する多層織りクレーピング布地を提供することが、本発明の他の目的である。
【0014】
従来の単層布地より深いポケットを有するクレーピング布地を提供することが、本発明の更なる目的である。
【0015】
本発明の更なるもう一つの目的は、その上に、より高い厚さとより低い密度を有して形成される織布をもたらすクレーピング布地を提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、改良された紙製品をその上に製造するだけではなく、布地クレープ及び基本重量の多用なパーセンテージでプロセスが行われるのを許容することができ、これにより、動作プロセスパラメータの幅を増加させ、及び/又はリサイクルされる繊維物の量を増加させることのできる、多層織りクレーピング布地を提供することである。
【0017】
なお更なる本発明の目的は、機械又はロールの側には切れ込み又は溝のある横糸を、また、シートに接触する側には切れ込みがなく円形の横糸を有する8シェド(shed)の多層織りクレーピング布地を提供することである。
【0018】
さらにもう一つの本発明の目的は、縦糸の直径より小さな直径を有する横糸又はシュートを有する多層織りクレーピング布地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これら及び他の目的及び効果が本発明によって提供される。この点に関しては、本発明の一態様は、機械又はロールの側に切れ込み又は溝のある横糸又はシュートを有する多層織りクレーピング布地に関する。加えて、本発明の他の態様は、縦糸よりも小さな直径を有する横糸又はシュートを有する多層織りクレーピング布地に関する。更に、この種の糸配置の組合せも想定される。本発明のファブリック構造は、布地のロール側に切れ込み又は溝のある横糸を含み、及び/又は縦糸よりも小さな直径を有する横糸又はシュートを有することで、布地の上に生産される紙を再び湿らせる残余の布地の水の可能性を減らし、また、除去さえし得る点において、先行技術の設計に対して望ましい。
【0020】
加えて、本発明の多層織りクレーピング布地は、従来の単層布地より深いポケットを有するであろう。その深いポケットは、多層構造であって、縦糸に対する横糸又はシュートの平面差を有する布地の結果である。その深いポケットは、先行技術の布地の上に生産される紙織布よりも、真空が加えられた際に著しく高い厚さと著しく低い密度を有する紙織布をもたらす。
【0021】
本発明の布地は、当業者にとって明らかであろうインプレッション布地、クレーピング布地印象ファブリック、又は他の応用として、製紙機械において応用を発見することができる。
【0022】
本発明、その動作効果、及びその使用によって達成される特殊な目的のより良好な理解のために、対応する要素が同じ参照符号によって特定される添付図面中に好適な実施形態が描かれている添付の記述事項が参照される。
【0023】
以下の詳細な説明は、実施例の方法で与えられ、本発明を単にこれに限定することを意図したものではなく、同じ参照符号が同じ要素及び部分を示している添付の図面との関係において最も良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、以下、本発明の好適な実施形態が示された添付図面を参照して、より完全に説明される。この発明は、しかしながら、多くの異なる形式において具現化することができ、ここに表された記述実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの記述実施形態は、この開示が、完全であり完結したものであり、かつ、当業者に発明の範囲を完全に伝達するものとなるように提供されている。
【0025】
本発明は、化粧紙、トイレットペーパー、及び紙タオルのような、柔らかく、吸収性があり、使い捨てが可能な紙製品の生産において用いられる多層織りクレーピング布地に関する。本布地は、その上に生産される紙製品やシート/織布製品の再湿りを最小化し、又は防止さえすることができる。
【0026】
本発明は、紙製品の生産と関連した製造時間および経費を減らすことができる図2に示される装置において用いられる多重の織られたクレーピング布地を提供する。生産時間および経費は、本発明の布地が、紙織布から取り出された水がその織布を再湿潤させるのを減少させ、また、防止さえすることができるため、減少させることができる。従って、その紙織布は、迅速に、より効率的に乾燥させられる。
【0027】
加えて、本発明に従って製造される布地は、シートホールが最小化され、又は防止さえされることにより、高い引っ張りレベルでの、或いはシートホール無しでの低い基礎重量での作動が可能となることから、製紙機械上のパフォーマンスを高める。また、より高いリサイクル繊維内容が、用いられることもでき、かつ、引き続き所望の織布特性を得ることもできる。
【0028】
加えて、本発明に従って製造される布地は、より高い嵩吸収性を有する紙ウエブをもたらすより深いポケットをもたらすであろう。
【0029】
ここで使用しているように、切れ込み又は溝のある横糸とは、本発明の特定の実施形態において含まれる糸に対して用いられる用語である。切れ込み又は溝のある横糸の非限定的な例である図1に示すように、切れ込み又は溝のある横糸2は、複数の切れ込み又は溝4を有している。加えて、本発明の切れ込みが設けられた横糸は、溝が設けられ、輪郭が描かれ、又は非円形のものとして描かれることがある。さらにまた、本発明は、平面織り製品の用語で記述されることがある。従って、ここで使われるように、横糸は幅方向(CD)糸であり、縦糸は縦方向(MD)糸である。最後に、「横糸」および「シュート(shute)」の用語は交換可能に用いられており、CD糸に言及する意味を有する。また、平面織り布地は、縫い目又は織り接続を用いることによりエンドレスとされる。多層織り布地の効果は、それらが、単層布地のそれと比較して相対的に均一な縫い目域を伴う機械縫いを可能とすることである。
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態を、製紙装置の搬送/乾燥領域におけるクレーピング布地として用いるための最大幅、最大長構造との関連で記述する。
【0031】
先に述べた製品のような吸収性紙製品を作るため用いられる製紙プロセスのためのクレーピング布地の開発において、独自性がある予期せぬ結果が得られた。関連するプロセスがPCT公開番号WO2004/033793及び米国特許出願番号2005/0241786において開示されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれたものとする。図2に示すように、そのプロセスにおいて用いられる製紙装置10と、その製造プロセスの実施形態が以下のように記述される。
【0032】
製紙装置10は、従来のツインワイヤ成形領域12、布地走行14、シュー加圧領域16、クレーピング布地18、及びヤンキー乾燥機20を備えている。形成領域12は、複数のロール26、28、30、32、34、36および形成ロール38によって支えられた一対の形成布地22、24を含む。ヘッドボックス40は、形成ロール38及びロール26と上記布地との間でニップ42に製紙ファニッシュ(furnish)を提供する。ファニッシュは、例えば真空ボックス46を経由して、真空の助けを借りて、布地上で脱水された織布44を形成する。
【0033】
織布44は、複数のロール50、52、54、55で支えられた製紙プレス布地48へ進み、その布地がシュー加圧ロール56と接触する。織布44は、布地48に転送された際、低密度である。転送は真空により援助されることとしてもよく、ロール50は、望まれる場合には真空ロールとしても、或いは公知のピックアップ又は真空シューでもよい。織布は、シュー加圧ロール56に到達すると、シュー加圧ロール56及び転送ロール60の間のニップ58に入ることにより、10〜25パーセント、好ましくは20〜25パーセントほどの密度を有する。転送ロール60は、望まれる場合は、加熱ロールでもよい。シュー加圧ロールに代えて、ロール56は、従来の吸入加圧ロールであってもよい。シュー加圧が用いられる場合は、ファニッシュからの水がシュー加圧ニップの中で布地に圧入され得るため、布地がシュー加圧ニップに進入する前に、その布地からより効果的に水を除去しておくために、ロール54は真空ロールであることが望まれ、また好ましい。いずれにせよ、当業者が線図から理解するように方向変更の間に織布が布地との接触を維持するのを確実にするために、真空ロール54を使用することは通常望ましい。
【0034】
織布44は、圧力シュー62の助けを借りて、ニップ58の中で布地58の上にウェット加圧される。織布は、このようにして、通常は、プロセスのこの段階で、15パーセント以上固体の密度を上昇させることにより、ニップ58においてコンパクトに脱水される。ニップ58で示される構成は、通常、シュー加圧と称される。本発明に関して、シリンダ60は、クレーピング布地18に、通常1000fpmから6000fpmの高速で織布44を移送するために作動する移送シリンダとして動作する。
【0035】
シリンダ60は、必要に応じて接着剤及び/又は剥離剤を備えることとしてもよいなめらかな表面64を有する。織布44は、矢印66により示される縦方向に織布44が継続的に進行するのに伴って高い角速度で回転するシリンダ60の移送表面64に付着する。シリンダ60上で、織布44は、一般的なランダムな見かけの繊維分布を有する。方向66は、織布並びに製紙装置10の縦方向(MD)と称され、他方、幅方向(CD)は、MDに垂直な織布の平面内の方向である。
【0036】
織布44は、概して10〜25パーセント程度の密度でニップ58に進入し、図に示されるようにクレーピング布地18に移送される時点までに、約25〜約70パーセントの密度に脱水及び乾燥される。
【0037】
クレーピング布地18は、複数のロール68、70、72および加圧ニップロール74上に支持され、図示されるように、移送シリンダ60と共に布地クレープニップ76を形成する。クレーピング布地18は、クレーピング布地18が、接触ロール60に適応する、つまり、移送シリンダ60に対して織布44に大きな圧力を加える距離に渡ってクレーピングニップを形成する。このため、背面(クレーピング)ロール70は、柔らかい変形可能な表面を備えていてもよく、この場合、クレーピングニップの長さが増大し、また、布地及びシートと接触点との間の布地クレーピング角が増大する。或いは、織布44がクレーピング布地18に移送され縦方向に進行する高衝撃布地クレーピングニップ76における織布との効率的接触を増大させるために、シュー加圧ロールをロール70として使用することが可能である。クレーピングニップ76において異なる器具を用いることにより、布地クレーピング角、又はクレーピングニップからの取り去り角を調整することが可能である。このように、これらのニップ変数を調整することにより、繊維の再分布、布地クレーピングニップ76において発生することのある層割れ/剥離の性質及び量に影響を与えることが可能である。
【0038】
布地クレーピングの後、織布44は、転写ニップ82においてヤンキーシリンダ80上に押圧される縦方向66に沿って進み続ける。ニップ82における移送は、織布に、概して約25から約70パーセントの密度を生じさせる。これらの密度では、布地から織布44を完全に取り除くのに十分確実な程度にヤンキーシリンダ80の表面84に織布44を付着させるのは困難である。プロセスのこの態様は、高速乾燥フードの使用、並びに高衝撃クレーピング条件の維持が望まれる場合に特に重要である。この点に関して、従来のスルーエア乾燥(TAD)プロセスでは、ヤンキーシリンダ80に対する充分な接着が達成されないことから、高速フードが使用されないことに注意されたい。そのプロセスによれば、特定の接着剤の使用が、適度に湿った織布(25〜70パーセントの密度)と協働して、システムの高速動作及び高噴射速度吹き付けエア乾燥を許容するのに十分な程度に、それをヤンキーシリンダ80に接着させる。
【0039】
織布44は、加熱シリンダであるヤンキーシリンダ80上で、また、ヤンキーフード88内の高噴射速度吹き付けエアによって乾燥させられる。シリンダ80が回転するに連れて、織布44はクレーピングドクター89によりシリンダからクレープされ、巻き取りロール90に巻き取られる。
【0040】
上記プロセスにおいてクレーピング布地18として用いるための布地設計の一実施形態は、図3−5に示すように、非シート接触の又は機械側の表面に、切り込み又は溝のある横糸を伴う8シェド多層織りクレーピング布地である。
【0041】
通常、クレーピング布地は、2つの側を有している。シートに接触する側と機械又はロールの側である。前者は、新たに形成される紙織布に面する布地の側であるためそのように呼ばれる。後者は、製紙装置上で、ロールと接触紙、又は通過する布地の側であるためそのように呼ばれる。そのプロセスにおいて、クレーピング布地は、図3Aに示す方法で製紙装置にインストールされる。シートに接触する側は切れ込みの無い又は円形の横糸100を含み、そして、図3Bに示すように、機械側は切れ込み又は溝のある横糸110を含む。
【0042】
上述した通り、製造プロセスにおいて、織布44が背面ロール60に移送された後、織布44は、十分に低速で走行しているクレーピング布地18にピックアップされる。ピックアップの後、織布をクレーピング布地18により深く引き込むため、また、クレーピング布地18の内部に(を通して)残余水を引き込むことにより、その紙織布から更なる残余留水を除去するために、真空ボックス46(図示せず)が存在する。従来の論理は、シャワーリング後にクレーピング布地18の中に残る如何なる残留水も、ピックアップの後に織布44を再度湿潤させ得ることを示す。しかしながら、本実施形態において、切り込み又は溝のある横糸をロール側に配置したような製紙装置にインストールされたクレーピング布地18を伴う場合には表れない。水分試料は、完全な除去がされていない場合においても再湿潤が最小限であることを示唆する。布地そのものが湿った状態で内部を走行していることが観測されており、これは、再湿潤が無いことと再び矛盾している。加えて、布地の内部に落ちる水滴はシートホールを形成せず、これは、通常、単層布地設計を伴う場合である。従って、織布44が再湿潤しないことは予想を超える結果である。このように、この予想外の結果は、ロール側に面した切り込み又は溝のある横糸を伴う製紙装置にインストールされている織式多層クレーピング布地18の機能であり得る。
【0043】
織布に、その剥離の後に再侵入する残留布地の水が最小限であり、又は全体的に防止又は除去されているのは、装置側に切り込み又は溝を有する多層設計が理由であってもよいと思われている。その理由は、以下の通りでもよい。1つの理由は、丸い糸を覆う、表面積が増大された領域を有する切り込み又は溝のある糸に起因できる。表面積が増大したこの領域のため、布地と残留水との間の表面張力がより大きなものになることがあり、このため、残留水が布地を出て紙織布に再侵入する能力を減少させている。他の理由は、切り込み又は溝のある横糸の使用が、交差位置における横糸間の関係を変化させることがあるということである。例えば、糸の両方が円形であると、交差位置における糸間の距離は、小さくなり続け(マイクロメートルに近づき)、そして、この小距離は布地の中に水を保つ毛管力を形成することがある。このように、装置側に切れ込み又は溝のある横糸を使用することは糸の交差位置における幾何配列を変化させ、これにより毛管力が減少することがある。他の可能性は、切れ込みのある糸に起因して交差位置に形成される幾何配列が水を捕獲することができるということ、又は、その幾何配列が、それらが保持又は維持されるのを防ぐポケットを形成すること、或いはそれらの両方でもあり得る。
【0044】
従って、本発明は、上述した特定の8シェド多層織りクレーピング布地の設計に限定されるものではないと考えられる。その代わりに、装置側に切り込み又は溝を有する如何なる多層織りクレーピング布地も、その上に生み出される紙製品の再湿潤を最小化、或いは防止さえすることができる。
【0045】
本発明の一態様に従う布地は、図4乃至図7に示す8シェド多層織りパターンを用いて構成することができる。図4は、図3A及び図3Bに示す布地の織りパターン200の紙側或いはシートに接触する面の平面概略図である。図4に示すように、縦方向は矢印150により示され、幅方向は矢印160により示される。各列は縦糸210に対応し、各行は横糸220、230に対応する。各ボックスは、ナックル(縦及び横糸が互いに交差する所)を示す。ボックス内の番号は、織りのその位置で、その番号の縦糸210が布地のシートに接触する表面上にあることを示す。従って、空のボックスは、縦糸210が横糸220の下を通過し、その結果、その上に形成されていくシートとは接触してないであろう箇所を示している。
【0046】
図4に示される織りパターンは、2セットの横糸、すなわち、接触側の横糸220及びローラー側の横糸230と、1セットの縦糸210を備えている。本発明に係る布地の形成に用いられる切り込み又は溝のある横糸は、布地の残留水がその上に形成される紙織布に再侵入して再湿潤させるのを減少させ、又は防止さえさせ得る布地のロール側に位置する。
【0047】
図4において、各縦糸210の下の番号は、その縦糸の番号が従う輪郭パターンを示す。各縦糸は、図4の列に対応する。例えば、縦糸1は、図4における第1列に示されるパターンに対応する。縦糸1の輪郭パターンによって示されるように、その縦糸は、横糸1,2の上、横糸3の下、横糸4の上、横糸5の下、横糸6の上、横糸7の下、横糸8の上、横糸9−11の下、横糸12の上、横糸13の下、そして、横糸14−16の上を通過する。従って、第1行において、縦糸1、2及び14乃至16に対応するボックスは、縦糸1が、輪郭パターンにおいて、それが横糸の上を通過する箇所でナックルを形成することを示す。或いは、図4におけるボックスは、縦糸が横糸の下を通過する所で空白である。
【0048】
図5は、図4に示す織りパターン200に対応する布地の概略を示す。図4におけるように、各横糸輪郭パターンの右に対する番号は、横糸の輪郭パターン番号が従う横糸の番号を示す。各横糸は、図4の行に対応する。例えば、横糸1は、図4における第1行に示されるパターンに対応する。横糸1の輪郭パターンに示されるように、その横糸は、縦糸1の下、縦糸2及び3の上、縦糸4の下、及び縦糸5−8の上を通過する。従って、図4の第2行において、縦糸1,4及び6−8に対応するボックスは、それらの縦糸が、輪郭パターンにおいて横糸1の上を通過する箇所でナックルを形成することを示す。上記の通り、図4のボックスは、縦糸が横糸の下を通過する箇所で空白である。
【0049】
例えば上記のプロセスにおいてクレーピング布地18として用いるための多層織りクレーピング布地の設計の他の実施形態を図8に示しており、この形態は、縦糸250の直径より直径が小さい横糸又はシュート240を有する8シェド多層織りクレーピング布地である。図8において、横方向は矢印260により示され、縦方向は矢印260により示される。本実施形態によれば、クレーピング布地18は0.5mmの横糸250と0.4mmの縦糸又はシュート250を有して構成することができる。加えて、インプレッション又はクレーピング布地18は、0.64mmの縦糸250と0.5mmのシュート240、或いは0.35mmの縦糸250と0.25mmのシュート240を伴って構成することができる。縦糸250より直径の小さな横糸又はシュート240を有する場合、その布地はシートホールを低減させ、或いは排除さえすることができるため、製紙装置上でより良い布地性能が発揮されると思われる。
【0050】
より小さい直径の横糸又はシュートは、先に述べた切れ込み又は溝のある糸を含むことが、又はその糸と共に用いることができることに注意されたい。
【0051】
図9は、上述した手法で構成された本実施形態の布地の3次元平面深さイメージの上面図であり、ドイツ、ゴッティンゲン(Gottingen)、マール社(Mahr GmbH)製のMarSurf TS50、高精度光学3次元測定器具によってとられたものである。図9において見ることができるように、暗い領域300は、従来の織式インプレッション布地より大幅に深いポケットを表す。また、その図において見ることができるように、横糸又はシュート310は、布地の最上平面の直下に位置しており、かつ、縦糸320は、布地の最上平面に位置している。従って、横糸310及び縦糸320の両方が布地の最上平面の中に位置していないことから、多層構造であることとも相まって、結果は、従来の単層布地と比べて大幅に深いポケットとなっている。
【0052】
図10は、従来公知のインプレッション布地の3次元平面深さイメージの上面図であり、ドイツ、ゴッティンゲン(Gottingen)、マール社(Mahr GmbH)製のMarSurf TS50、高精度光学3次元測定器具によってとられたものである。図において見ることができるように、図10の布地は、図9の布地が有する暗い領域を有しておらず、従って、図9に示す布地が有するより深いポケットを有していない。更に、図10において見ることができるように、横糸330及び縦糸340の両方が布地の最上平面内に位置しており、その結果、本実施形態のポケットに比べて浅いポケットを有する布地となっている。
【0053】
ここに記載した布地の使用は、大幅に高くなった厚さと大幅に低くなった密度を有する織布を伴う予想を超える結果をもたらす。厚さが高いほど、また、密度が低いほど、紙製品は柔らかくなり、かつ、吸収性を増し、それらは共に非常に望まれる特性である。
【0054】
最後に、本布地は、布地クレープのパーセント、基礎重量、及び/又は増大したリサイクル繊維量の幅を広げてプロセスを実行することを可能とし、操作プロセス変数の範囲を増加させることにより、大きな価値を生み出すことができる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態及びその変更を、ここに詳細に説明してきたが、この発明は、この厳密な実施形態及び変更に限定されるものではなく、また、その他の変更及び変形が、添付の請求項によって定義される発明の精神と範囲から逸脱することなく当業者にとって遂行可能であることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る切れ込み又は溝の設けられた横糸の断面図である。
【図2】製紙製造プロセスにおいて用いられる製紙機械の概略図である。
【図3A】本発明の一実施形態に従って構成される布地のシートに接触する側の表層写真である。
【図3B】本発明の一実施形態に従って構成される布地のロール側の表層写真である。
【図4】本発明の一実施形態に従って構成される8シェド多層織りクレーピング布地の織りパターンである。
【図5】図4に示された織りパターンの概略である。
【図6】図4に示された織りパターンの縦糸の輪郭を表す。
【図7】図4に示された織りパターンの横糸の輪郭を表す。
【図8】本発明の一実施形態に係る織りパターンの概略である。
【図9】図4の布地の3次元表面画像である。
【図10】従来のインプレッション布地の3次元表面画像である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端布地に、より詳しくは、紙製品の生産において多層織りクレーピング布地として用いられる布地に関する。より詳しくは、本発明は、紙及び衛生ティシューのような紙の製品、及びタオル製品の生産において用いられるクレーピング布地に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧紙、トイレットペーパー、及び紙タオルのような柔らかい、吸収性のある使い捨ての紙製品は、近代工業化社会における現代的生活の、広く行き渡った特徴である。この種の製品を製造する多数の方法がある一方、一般に、それらの製造は製紙機械の成形部におけるセルロース繊維織布の形成から開始される。セルロース繊維織布は、製紙機械の成形部において、移動成形布地の上に、繊維様スラリー、すなわち、セルロース繊維の水分散液を堆積させることにより形成される。大量の水が成形布地を通ってスラリーから排出されて、成形布地の上にセルロース繊維織布が残される。
【0003】
セルロース繊維織布の更なる処理および乾燥は、2つの周知の方法のうちの1つを用いて、一般に進められる。これらの方法は、通常、湿式加圧及びスルー乾燥(through drying)と称される。湿式加圧では、新たに形成されたセルロース繊維織布が、プレス布地に転送され、成形部から、少なくとも一つの加圧ニップを含む加圧部に進む。セルロース繊維織布は、単一のプレス布地に、或いは、往々にして2つのプレス布地の間に支持されて、加圧ニップを通過する。加圧ニップの中で、セルロース繊維織布には、それらから水を絞り出す圧縮力が課される。水は、単一又は複数のプレス布地により受け入れられて、理想的には、繊維織布や紙には戻らない。
【0004】
加圧の後、紙は、プレス布地を経由して、例えば、加熱された回転しているヤンキー乾燥機のシリンダに移送され、それによって、その紙は、シリンダ表面で実質的に乾燥させられる。織布の内部の水分は、ヤンキー乾燥機のシリンダ表面に塗られることによりその織布をその表面に固着させ、また、ティシューやタオルタイプの製品の製造においては、その織布が、典型的には、クレーピングブレードによって乾燥機の表面からクレープ加工(creped)される。クレープ加工された織物は、例えば、光沢機を通過することによって更なる処理に付すこと、また、更なる変換工程に先立って巻き上げることができる。紙上のクレーピングブレードの動作は、ブレードの中に駆動されていく際の織布に対するブレードの機械的破壊動作によって、紙の中の繊維内結合の一部分を分解させることが知られている。しかしながら、織布から水分が乾燥する間には、セルロース系繊維の間に、かなり強い繊維内結合が形成される。これらの結合の強さは、従来はクレーピング後でさえ、織布が、硬い感触、かなり高い密度、及び低い嵩と吸水度を保持させるようなものである。
【0005】
湿式加圧方法により形成される繊維内結合の強さを減らすためには、スルー乾燥を用いることができる。スルー乾燥のプロセスでは、新たに形成されたセルロース繊維織布は、真空または吸入によってもたらされる空気の流れによってTAD布地に移送され、これにより、その織布は歪められ、少なくとも一部においてスルーエア乾燥(TAD)布地の地形と強制的に整合させられる。その移送点の下流で、その織布は、TAD布地の上で搬送され、スルーエア乾燥機を通過し、また回り込み、ここでは、織布に向けられ、又TAD布地を通過した加熱空気の流れが、所望の程度にまで織布を乾燥させる。最後に、更なる完全な乾燥のために、スルーエア乾燥機の下流で、ヤンキー乾燥機の表面に織布を移送してもよい。完全に乾燥させられた織布は、その後ドクターブレードによりヤンキー乾燥機の表面から取り除かれ、これが織布を短縮させ、又はクレープさせて、さらにその嵩を増大させる。短縮された織布は、次に、出荷や、消費者による購入に適した形への包装作業を含む後処理のためにロール上に巻回される。
【0006】
湿式加圧プロセスにおいて、布地の上にある間にニップの中で、また、ヤンキー乾燥機まで移送されてきた際にそのシリンダに対して、織布が加圧されることにより生ずることのある織布圧縮が無くなることは、TADプロセスにおいて、強い繊維内結合が形成される機会を減らして、従来の湿式加圧によって達成され得る嵩よりも大きな嵩を有するティシューやタオルの最終製品を生じさせる。しかしながら、通常、スルーエア乾燥のプロセスで形成される織布の引張り強さは、最終消費製品には適切でなく、そして、オリジナルの製品の嵩の大半をまだ維持しながら所望の強度を達成するために、形成処理の前及び又は間に、様々なタイプの化学添加物が織布に典型的に導入される。
【0007】
上記の如く、嵩ティシュー製品の製造には多くの方法があり、そして、前述の説明は、その方法のいくつかにより共有される一般的なステップの概略として理解されなければならない。例えば、所与の状況においては、短縮処理が要求されないことがあり、ヤンキー乾燥機の使用は常に必要とされるものではなく、又は、織布を短縮するために、湿式クレーピングのような他の手段が、すでにとられていることもある。
【0008】
ここでは、湿式加圧及びスルーエア乾燥の双方について、他のプロセスや機械構成の変形例も考慮されることになっている。例えば、場合によっては、シートが乾燥機面から除去されるときに、クレーピングドクターは使用されない。更に、TADユニットや、TADプロセスに関連した高エネルギーのコストを伴うことなく「TADのような」ティシュー又はタオルの製品特性を達成することを試みる、スルーエア乾燥プロセスの代替である方法が存在する。
【0009】
嵩、吸収性、強さ、柔軟さ、及び美的外観の特性は、それらの意図された目的として用いられる場合に、特に、繊維セルロース製品が、化粧用又はトイレ用ティシュー、或いはペーパータオルである場合に、多くの製品にとって重要である。これらの特性を有する紙製品を生産するために、布地はしばしば、シートに接触する表面が構造的特徴の変化を呈するように構成される。これらの構造的特徴の変化は、布地の表面における、編まれた糸綱の間の平面差としてしばしば計測される。例えば、平面差は、典型的には、起毛した横又は縦糸綱における高さの差として、或いは、布地の面における縦方向(MD)のナックルと幅方向(CD)のナックルとの間の高さにおける差として計測される。布地構造は、しばしばポケットを呈し、この場合、平面差はポケットの深さとして計測される。
【0010】
これらのクレーピング布地が、製紙機械上でエンドレスループの形をとり、また、コンベヤの方法で機能できることは、理解されるべきである。更に、製紙が、かなりの速度で進行する連続プロセスであることも認識されるべきである。すなわち、新たに製造された紙シートが、その乾燥後に、ロール上に連続的に巻回される一方で、繊維スラリーは成形部の成形布地上に連続的に体積される。
【0011】
本発明は、布地の上に形成される製品が、そのような動作の間に再び湿ってしまうのを抑制し、或いは、防いでさえしまうことのできる布地を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、布地の上に形成される紙製品が再び湿ってしまうのを最小限にし、また、取り除いてさえしまう多層織りクレーピング布地を提供することが、本発明の主要な目的である。
【0013】
機械又はロールの側に切れ込み又は溝のある横糸又はシュート(shutes)を有する多層織りクレーピング布地を提供することが、本発明の他の目的である。
【0014】
従来の単層布地より深いポケットを有するクレーピング布地を提供することが、本発明の更なる目的である。
【0015】
本発明の更なるもう一つの目的は、その上に、より高い厚さとより低い密度を有して形成される織布をもたらすクレーピング布地を提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、改良された紙製品をその上に製造するだけではなく、布地クレープ及び基本重量の多用なパーセンテージでプロセスが行われるのを許容することができ、これにより、動作プロセスパラメータの幅を増加させ、及び/又はリサイクルされる繊維物の量を増加させることのできる、多層織りクレーピング布地を提供することである。
【0017】
なお更なる本発明の目的は、機械又はロールの側には切れ込み又は溝のある横糸を、また、シートに接触する側には切れ込みがなく円形の横糸を有する8シェド(shed)の多層織りクレーピング布地を提供することである。
【0018】
さらにもう一つの本発明の目的は、縦糸の直径より小さな直径を有する横糸又はシュートを有する多層織りクレーピング布地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これら及び他の目的及び効果が本発明によって提供される。この点に関しては、本発明の一態様は、機械又はロールの側に切れ込み又は溝のある横糸又はシュートを有する多層織りクレーピング布地に関する。加えて、本発明の他の態様は、縦糸よりも小さな直径を有する横糸又はシュートを有する多層織りクレーピング布地に関する。更に、この種の糸配置の組合せも想定される。本発明のファブリック構造は、布地のロール側に切れ込み又は溝のある横糸を含み、及び/又は縦糸よりも小さな直径を有する横糸又はシュートを有することで、布地の上に生産される紙を再び湿らせる残余の布地の水の可能性を減らし、また、除去さえし得る点において、先行技術の設計に対して望ましい。
【0020】
加えて、本発明の多層織りクレーピング布地は、従来の単層布地より深いポケットを有するであろう。その深いポケットは、多層構造であって、縦糸に対する横糸又はシュートの平面差を有する布地の結果である。その深いポケットは、先行技術の布地の上に生産される紙織布よりも、真空が加えられた際に著しく高い厚さと著しく低い密度を有する紙織布をもたらす。
【0021】
本発明の布地は、当業者にとって明らかであろうインプレッション布地、クレーピング布地印象ファブリック、又は他の応用として、製紙機械において応用を発見することができる。
【0022】
本発明、その動作効果、及びその使用によって達成される特殊な目的のより良好な理解のために、対応する要素が同じ参照符号によって特定される添付図面中に好適な実施形態が描かれている添付の記述事項が参照される。
【0023】
以下の詳細な説明は、実施例の方法で与えられ、本発明を単にこれに限定することを意図したものではなく、同じ参照符号が同じ要素及び部分を示している添付の図面との関係において最も良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、以下、本発明の好適な実施形態が示された添付図面を参照して、より完全に説明される。この発明は、しかしながら、多くの異なる形式において具現化することができ、ここに表された記述実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの記述実施形態は、この開示が、完全であり完結したものであり、かつ、当業者に発明の範囲を完全に伝達するものとなるように提供されている。
【0025】
本発明は、化粧紙、トイレットペーパー、及び紙タオルのような、柔らかく、吸収性があり、使い捨てが可能な紙製品の生産において用いられる多層織りクレーピング布地に関する。本布地は、その上に生産される紙製品やシート/織布製品の再湿りを最小化し、又は防止さえすることができる。
【0026】
本発明は、紙製品の生産と関連した製造時間および経費を減らすことができる図2に示される装置において用いられる多重の織られたクレーピング布地を提供する。生産時間および経費は、本発明の布地が、紙織布から取り出された水がその織布を再湿潤させるのを減少させ、また、防止さえすることができるため、減少させることができる。従って、その紙織布は、迅速に、より効率的に乾燥させられる。
【0027】
加えて、本発明に従って製造される布地は、シートホールが最小化され、又は防止さえされることにより、高い引っ張りレベルでの、或いはシートホール無しでの低い基礎重量での作動が可能となることから、製紙機械上のパフォーマンスを高める。また、より高いリサイクル繊維内容が、用いられることもでき、かつ、引き続き所望の織布特性を得ることもできる。
【0028】
加えて、本発明に従って製造される布地は、より高い嵩吸収性を有する紙ウエブをもたらすより深いポケットをもたらすであろう。
【0029】
ここで使用しているように、切れ込み又は溝のある横糸とは、本発明の特定の実施形態において含まれる糸に対して用いられる用語である。切れ込み又は溝のある横糸の非限定的な例である図1に示すように、切れ込み又は溝のある横糸2は、複数の切れ込み又は溝4を有している。加えて、本発明の切れ込みが設けられた横糸は、溝が設けられ、輪郭が描かれ、又は非円形のものとして描かれることがある。さらにまた、本発明は、平面織り製品の用語で記述されることがある。従って、ここで使われるように、横糸は幅方向(CD)糸であり、縦糸は縦方向(MD)糸である。最後に、「横糸」および「シュート(shute)」の用語は交換可能に用いられており、CD糸に言及する意味を有する。また、平面織り布地は、縫い目又は織り接続を用いることによりエンドレスとされる。多層織り布地の効果は、それらが、単層布地のそれと比較して相対的に均一な縫い目域を伴う機械縫いを可能とすることである。
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態を、製紙装置の搬送/乾燥領域におけるクレーピング布地として用いるための最大幅、最大長構造との関連で記述する。
【0031】
先に述べた製品のような吸収性紙製品を作るため用いられる製紙プロセスのためのクレーピング布地の開発において、独自性がある予期せぬ結果が得られた。関連するプロセスがPCT公開番号WO2004/033793及び米国特許出願番号2005/0241786において開示されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれたものとする。図2に示すように、そのプロセスにおいて用いられる製紙装置10と、その製造プロセスの実施形態が以下のように記述される。
【0032】
製紙装置10は、従来のツインワイヤ成形領域12、布地走行14、シュー加圧領域16、クレーピング布地18、及びヤンキー乾燥機20を備えている。形成領域12は、複数のロール26、28、30、32、34、36および形成ロール38によって支えられた一対の形成布地22、24を含む。ヘッドボックス40は、形成ロール38及びロール26と上記布地との間でニップ42に製紙ファニッシュ(furnish)を提供する。ファニッシュは、例えば真空ボックス46を経由して、真空の助けを借りて、布地上で脱水された織布44を形成する。
【0033】
織布44は、複数のロール50、52、54、55で支えられた製紙プレス布地48へ進み、その布地がシュー加圧ロール56と接触する。織布44は、布地48に転送された際、低密度である。転送は真空により援助されることとしてもよく、ロール50は、望まれる場合には真空ロールとしても、或いは公知のピックアップ又は真空シューでもよい。織布は、シュー加圧ロール56に到達すると、シュー加圧ロール56及び転送ロール60の間のニップ58に入ることにより、10〜25パーセント、好ましくは20〜25パーセントほどの密度を有する。転送ロール60は、望まれる場合は、加熱ロールでもよい。シュー加圧ロールに代えて、ロール56は、従来の吸入加圧ロールであってもよい。シュー加圧が用いられる場合は、ファニッシュからの水がシュー加圧ニップの中で布地に圧入され得るため、布地がシュー加圧ニップに進入する前に、その布地からより効果的に水を除去しておくために、ロール54は真空ロールであることが望まれ、また好ましい。いずれにせよ、当業者が線図から理解するように方向変更の間に織布が布地との接触を維持するのを確実にするために、真空ロール54を使用することは通常望ましい。
【0034】
織布44は、圧力シュー62の助けを借りて、ニップ58の中で布地58の上にウェット加圧される。織布は、このようにして、通常は、プロセスのこの段階で、15パーセント以上固体の密度を上昇させることにより、ニップ58においてコンパクトに脱水される。ニップ58で示される構成は、通常、シュー加圧と称される。本発明に関して、シリンダ60は、クレーピング布地18に、通常1000fpmから6000fpmの高速で織布44を移送するために作動する移送シリンダとして動作する。
【0035】
シリンダ60は、必要に応じて接着剤及び/又は剥離剤を備えることとしてもよいなめらかな表面64を有する。織布44は、矢印66により示される縦方向に織布44が継続的に進行するのに伴って高い角速度で回転するシリンダ60の移送表面64に付着する。シリンダ60上で、織布44は、一般的なランダムな見かけの繊維分布を有する。方向66は、織布並びに製紙装置10の縦方向(MD)と称され、他方、幅方向(CD)は、MDに垂直な織布の平面内の方向である。
【0036】
織布44は、概して10〜25パーセント程度の密度でニップ58に進入し、図に示されるようにクレーピング布地18に移送される時点までに、約25〜約70パーセントの密度に脱水及び乾燥される。
【0037】
クレーピング布地18は、複数のロール68、70、72および加圧ニップロール74上に支持され、図示されるように、移送シリンダ60と共に布地クレープニップ76を形成する。クレーピング布地18は、クレーピング布地18が、接触ロール60に適応する、つまり、移送シリンダ60に対して織布44に大きな圧力を加える距離に渡ってクレーピングニップを形成する。このため、背面(クレーピング)ロール70は、柔らかい変形可能な表面を備えていてもよく、この場合、クレーピングニップの長さが増大し、また、布地及びシートと接触点との間の布地クレーピング角が増大する。或いは、織布44がクレーピング布地18に移送され縦方向に進行する高衝撃布地クレーピングニップ76における織布との効率的接触を増大させるために、シュー加圧ロールをロール70として使用することが可能である。クレーピングニップ76において異なる器具を用いることにより、布地クレーピング角、又はクレーピングニップからの取り去り角を調整することが可能である。このように、これらのニップ変数を調整することにより、繊維の再分布、布地クレーピングニップ76において発生することのある層割れ/剥離の性質及び量に影響を与えることが可能である。
【0038】
布地クレーピングの後、織布44は、転写ニップ82においてヤンキーシリンダ80上に押圧される縦方向66に沿って進み続ける。ニップ82における移送は、織布に、概して約25から約70パーセントの密度を生じさせる。これらの密度では、布地から織布44を完全に取り除くのに十分確実な程度にヤンキーシリンダ80の表面84に織布44を付着させるのは困難である。プロセスのこの態様は、高速乾燥フードの使用、並びに高衝撃クレーピング条件の維持が望まれる場合に特に重要である。この点に関して、従来のスルーエア乾燥(TAD)プロセスでは、ヤンキーシリンダ80に対する充分な接着が達成されないことから、高速フードが使用されないことに注意されたい。そのプロセスによれば、特定の接着剤の使用が、適度に湿った織布(25〜70パーセントの密度)と協働して、システムの高速動作及び高噴射速度吹き付けエア乾燥を許容するのに十分な程度に、それをヤンキーシリンダ80に接着させる。
【0039】
織布44は、加熱シリンダであるヤンキーシリンダ80上で、また、ヤンキーフード88内の高噴射速度吹き付けエアによって乾燥させられる。シリンダ80が回転するに連れて、織布44はクレーピングドクター89によりシリンダからクレープされ、巻き取りロール90に巻き取られる。
【0040】
上記プロセスにおいてクレーピング布地18として用いるための布地設計の一実施形態は、図3−5に示すように、非シート接触の又は機械側の表面に、切り込み又は溝のある横糸を伴う8シェド多層織りクレーピング布地である。
【0041】
通常、クレーピング布地は、2つの側を有している。シートに接触する側と機械又はロールの側である。前者は、新たに形成される紙織布に面する布地の側であるためそのように呼ばれる。後者は、製紙装置上で、ロールと接触紙、又は通過する布地の側であるためそのように呼ばれる。そのプロセスにおいて、クレーピング布地は、図3Aに示す方法で製紙装置にインストールされる。シートに接触する側は切れ込みの無い又は円形の横糸100を含み、そして、図3Bに示すように、機械側は切れ込み又は溝のある横糸110を含む。
【0042】
上述した通り、製造プロセスにおいて、織布44が背面ロール60に移送された後、織布44は、十分に低速で走行しているクレーピング布地18にピックアップされる。ピックアップの後、織布をクレーピング布地18により深く引き込むため、また、クレーピング布地18の内部に(を通して)残余水を引き込むことにより、その紙織布から更なる残余留水を除去するために、真空ボックス46(図示せず)が存在する。従来の論理は、シャワーリング後にクレーピング布地18の中に残る如何なる残留水も、ピックアップの後に織布44を再度湿潤させ得ることを示す。しかしながら、本実施形態において、切り込み又は溝のある横糸をロール側に配置したような製紙装置にインストールされたクレーピング布地18を伴う場合には表れない。水分試料は、完全な除去がされていない場合においても再湿潤が最小限であることを示唆する。布地そのものが湿った状態で内部を走行していることが観測されており、これは、再湿潤が無いことと再び矛盾している。加えて、布地の内部に落ちる水滴はシートホールを形成せず、これは、通常、単層布地設計を伴う場合である。従って、織布44が再湿潤しないことは予想を超える結果である。このように、この予想外の結果は、ロール側に面した切り込み又は溝のある横糸を伴う製紙装置にインストールされている織式多層クレーピング布地18の機能であり得る。
【0043】
織布に、その剥離の後に再侵入する残留布地の水が最小限であり、又は全体的に防止又は除去されているのは、装置側に切り込み又は溝を有する多層設計が理由であってもよいと思われている。その理由は、以下の通りでもよい。1つの理由は、丸い糸を覆う、表面積が増大された領域を有する切り込み又は溝のある糸に起因できる。表面積が増大したこの領域のため、布地と残留水との間の表面張力がより大きなものになることがあり、このため、残留水が布地を出て紙織布に再侵入する能力を減少させている。他の理由は、切り込み又は溝のある横糸の使用が、交差位置における横糸間の関係を変化させることがあるということである。例えば、糸の両方が円形であると、交差位置における糸間の距離は、小さくなり続け(マイクロメートルに近づき)、そして、この小距離は布地の中に水を保つ毛管力を形成することがある。このように、装置側に切れ込み又は溝のある横糸を使用することは糸の交差位置における幾何配列を変化させ、これにより毛管力が減少することがある。他の可能性は、切れ込みのある糸に起因して交差位置に形成される幾何配列が水を捕獲することができるということ、又は、その幾何配列が、それらが保持又は維持されるのを防ぐポケットを形成すること、或いはそれらの両方でもあり得る。
【0044】
従って、本発明は、上述した特定の8シェド多層織りクレーピング布地の設計に限定されるものではないと考えられる。その代わりに、装置側に切り込み又は溝を有する如何なる多層織りクレーピング布地も、その上に生み出される紙製品の再湿潤を最小化、或いは防止さえすることができる。
【0045】
本発明の一態様に従う布地は、図4乃至図7に示す8シェド多層織りパターンを用いて構成することができる。図4は、図3A及び図3Bに示す布地の織りパターン200の紙側或いはシートに接触する面の平面概略図である。図4に示すように、縦方向は矢印150により示され、幅方向は矢印160により示される。各列は縦糸210に対応し、各行は横糸220、230に対応する。各ボックスは、ナックル(縦及び横糸が互いに交差する所)を示す。ボックス内の番号は、織りのその位置で、その番号の縦糸210が布地のシートに接触する表面上にあることを示す。従って、空のボックスは、縦糸210が横糸220の下を通過し、その結果、その上に形成されていくシートとは接触してないであろう箇所を示している。
【0046】
図4に示される織りパターンは、2セットの横糸、すなわち、接触側の横糸220及びローラー側の横糸230と、1セットの縦糸210を備えている。本発明に係る布地の形成に用いられる切り込み又は溝のある横糸は、布地の残留水がその上に形成される紙織布に再侵入して再湿潤させるのを減少させ、又は防止さえさせ得る布地のロール側に位置する。
【0047】
図4において、各縦糸210の下の番号は、その縦糸の番号が従う輪郭パターンを示す。各縦糸は、図4の列に対応する。例えば、縦糸1は、図4における第1列に示されるパターンに対応する。縦糸1の輪郭パターンによって示されるように、その縦糸は、横糸1,2の上、横糸3の下、横糸4の上、横糸5の下、横糸6の上、横糸7の下、横糸8の上、横糸9−11の下、横糸12の上、横糸13の下、そして、横糸14−16の上を通過する。従って、第1行において、縦糸1、2及び14乃至16に対応するボックスは、縦糸1が、輪郭パターンにおいて、それが横糸の上を通過する箇所でナックルを形成することを示す。或いは、図4におけるボックスは、縦糸が横糸の下を通過する所で空白である。
【0048】
図5は、図4に示す織りパターン200に対応する布地の概略を示す。図4におけるように、各横糸輪郭パターンの右に対する番号は、横糸の輪郭パターン番号が従う横糸の番号を示す。各横糸は、図4の行に対応する。例えば、横糸1は、図4における第1行に示されるパターンに対応する。横糸1の輪郭パターンに示されるように、その横糸は、縦糸1の下、縦糸2及び3の上、縦糸4の下、及び縦糸5−8の上を通過する。従って、図4の第2行において、縦糸1,4及び6−8に対応するボックスは、それらの縦糸が、輪郭パターンにおいて横糸1の上を通過する箇所でナックルを形成することを示す。上記の通り、図4のボックスは、縦糸が横糸の下を通過する箇所で空白である。
【0049】
例えば上記のプロセスにおいてクレーピング布地18として用いるための多層織りクレーピング布地の設計の他の実施形態を図8に示しており、この形態は、縦糸250の直径より直径が小さい横糸又はシュート240を有する8シェド多層織りクレーピング布地である。図8において、横方向は矢印260により示され、縦方向は矢印260により示される。本実施形態によれば、クレーピング布地18は0.5mmの横糸250と0.4mmの縦糸又はシュート250を有して構成することができる。加えて、インプレッション又はクレーピング布地18は、0.64mmの縦糸250と0.5mmのシュート240、或いは0.35mmの縦糸250と0.25mmのシュート240を伴って構成することができる。縦糸250より直径の小さな横糸又はシュート240を有する場合、その布地はシートホールを低減させ、或いは排除さえすることができるため、製紙装置上でより良い布地性能が発揮されると思われる。
【0050】
より小さい直径の横糸又はシュートは、先に述べた切れ込み又は溝のある糸を含むことが、又はその糸と共に用いることができることに注意されたい。
【0051】
図9は、上述した手法で構成された本実施形態の布地の3次元平面深さイメージの上面図であり、ドイツ、ゴッティンゲン(Gottingen)、マール社(Mahr GmbH)製のMarSurf TS50、高精度光学3次元測定器具によってとられたものである。図9において見ることができるように、暗い領域300は、従来の織式インプレッション布地より大幅に深いポケットを表す。また、その図において見ることができるように、横糸又はシュート310は、布地の最上平面の直下に位置しており、かつ、縦糸320は、布地の最上平面に位置している。従って、横糸310及び縦糸320の両方が布地の最上平面の中に位置していないことから、多層構造であることとも相まって、結果は、従来の単層布地と比べて大幅に深いポケットとなっている。
【0052】
図10は、従来公知のインプレッション布地の3次元平面深さイメージの上面図であり、ドイツ、ゴッティンゲン(Gottingen)、マール社(Mahr GmbH)製のMarSurf TS50、高精度光学3次元測定器具によってとられたものである。図において見ることができるように、図10の布地は、図9の布地が有する暗い領域を有しておらず、従って、図9に示す布地が有するより深いポケットを有していない。更に、図10において見ることができるように、横糸330及び縦糸340の両方が布地の最上平面内に位置しており、その結果、本実施形態のポケットに比べて浅いポケットを有する布地となっている。
【0053】
ここに記載した布地の使用は、大幅に高くなった厚さと大幅に低くなった密度を有する織布を伴う予想を超える結果をもたらす。厚さが高いほど、また、密度が低いほど、紙製品は柔らかくなり、かつ、吸収性を増し、それらは共に非常に望まれる特性である。
【0054】
最後に、本布地は、布地クレープのパーセント、基礎重量、及び/又は増大したリサイクル繊維量の幅を広げてプロセスを実行することを可能とし、操作プロセス変数の範囲を増加させることにより、大きな価値を生み出すことができる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態及びその変更を、ここに詳細に説明してきたが、この発明は、この厳密な実施形態及び変更に限定されるものではなく、また、その他の変更及び変形が、添付の請求項によって定義される発明の精神と範囲から逸脱することなく当業者にとって遂行可能であることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る切れ込み又は溝の設けられた横糸の断面図である。
【図2】製紙製造プロセスにおいて用いられる製紙機械の概略図である。
【図3A】本発明の一実施形態に従って構成される布地のシートに接触する側の表層写真である。
【図3B】本発明の一実施形態に従って構成される布地のロール側の表層写真である。
【図4】本発明の一実施形態に従って構成される8シェド多層織りクレーピング布地の織りパターンである。
【図5】図4に示された織りパターンの概略である。
【図6】図4に示された織りパターンの縦糸の輪郭を表す。
【図7】図4に示された織りパターンの横糸の輪郭を表す。
【図8】本発明の一実施形態に係る織りパターンの概略である。
【図9】図4の布地の3次元表面画像である。
【図10】従来のインプレッション布地の3次元表面画像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層織りクレーピング布地であって、
複数の縦糸と、
複数の横糸又はシュートと、
機械又はロールの側と、
シートと接触する側とを備え、
前記布地の、前記機械又はロールの側における複数の横糸又はシュートの複数は、切り込み又は溝を有する糸であることを特徴とする多層織りクレーピング布地。
【請求項2】
前記多層織り布地は、8シェド多層織りであることを特徴とする請求項1記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項3】
前記多層織りは、少なくとも2セットの横糸を備えることを特徴とする請求項2記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項4】
横糸の第1セットが前記布地の前記機械又はロールの側に配置され、かつ、横糸の第2セットが前記布地の前記シートに接触する側に配置されることを特徴とする請求項3記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項5】
横糸の前記第1セット及び/又は第2セットは、前記複数の縦糸の直径より小さな直径を有することを特徴とする請求項4記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項6】
前記複数の縦糸は前記布地の最上表面の上に位置し、かつ、横糸又はシュートのセットは前記布地の前記最上表面の下に位置することを特徴とする請求項1記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項7】
前記布地は単層布地に比べて深いポケットを有していることを特徴とする請求項6記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項8】
多層織りクレーピング布地であって、
直径を有する複数の縦糸と、
直径を有する複数の横糸又はシュートとを備え、
前記複数の横糸又はシュートは前記縦糸の直径より小さな直径を有することを特徴とする多層織りクレーピング布地。
【請求項9】
前記多層織り布地は、8シェド多層織りであることを特徴とする請求項8に記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項10】
前記多層織りは2セットの横糸を備えることを特徴とする請求項9記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項11】
横糸の第1セットが前記布地の前記機械又はロールの側に配置され、かつ、横糸の第2セットが前記布地の前記シートに接触する側に配置されることを特徴とする請求項10記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項12】
前記複数の縦糸は前記布地の最上表面の上に位置し、かつ、横糸又はシュートのセットは前記布地の前記最上表面の下に位置することを特徴とする請求項8記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項13】
前記布地は単層布地に比べて深いポケットを有していることを特徴とする請求項12記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項1】
多層織りクレーピング布地であって、
複数の縦糸と、
複数の横糸又はシュートと、
機械又はロールの側と、
シートと接触する側とを備え、
前記布地の、前記機械又はロールの側における複数の横糸又はシュートの複数は、切り込み又は溝を有する糸であることを特徴とする多層織りクレーピング布地。
【請求項2】
前記多層織り布地は、8シェド多層織りであることを特徴とする請求項1記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項3】
前記多層織りは、少なくとも2セットの横糸を備えることを特徴とする請求項2記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項4】
横糸の第1セットが前記布地の前記機械又はロールの側に配置され、かつ、横糸の第2セットが前記布地の前記シートに接触する側に配置されることを特徴とする請求項3記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項5】
横糸の前記第1セット及び/又は第2セットは、前記複数の縦糸の直径より小さな直径を有することを特徴とする請求項4記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項6】
前記複数の縦糸は前記布地の最上表面の上に位置し、かつ、横糸又はシュートのセットは前記布地の前記最上表面の下に位置することを特徴とする請求項1記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項7】
前記布地は単層布地に比べて深いポケットを有していることを特徴とする請求項6記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項8】
多層織りクレーピング布地であって、
直径を有する複数の縦糸と、
直径を有する複数の横糸又はシュートとを備え、
前記複数の横糸又はシュートは前記縦糸の直径より小さな直径を有することを特徴とする多層織りクレーピング布地。
【請求項9】
前記多層織り布地は、8シェド多層織りであることを特徴とする請求項8に記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項10】
前記多層織りは2セットの横糸を備えることを特徴とする請求項9記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項11】
横糸の第1セットが前記布地の前記機械又はロールの側に配置され、かつ、横糸の第2セットが前記布地の前記シートに接触する側に配置されることを特徴とする請求項10記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項12】
前記複数の縦糸は前記布地の最上表面の上に位置し、かつ、横糸又はシュートのセットは前記布地の前記最上表面の下に位置することを特徴とする請求項8記載の多層織りクレーピング布地。
【請求項13】
前記布地は単層布地に比べて深いポケットを有していることを特徴とする請求項12記載の多層織りクレーピング布地。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−536988(P2009−536988A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506594(P2009−506594)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/009622
【国際公開番号】WO2007/124030
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/009622
【国際公開番号】WO2007/124030
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】
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