説明

多層膜付き基板とその製造方法

導電性スパッタリング材を用いて、スパッタリング法により、金属酸化物膜と酸化ケイ素膜との多層膜を基板の上に高速成膜して、膜の応力が緩和された多層膜付き基板とそのような低応力の多層膜付き基板を製造する方法の提供。基板上に、少なくとも金属酸化物膜と酸化ケイ素膜とを1回以上繰返し積層してなる多層膜付き基板であって、該金属酸化物膜の少なくとも1層が化学量論的組成より酸素が不足している金属酸化物MOをターゲット材に用いてスパッタリングを行うことにより成膜されてなる酸素不足が解消された金属酸化物膜であり、かつ該多層膜の応力が−100MPa〜+100MPaであることを特徴とする多層膜付き基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、スパッタリングにより膜の応力が緩和された金属酸化物膜の単層膜
金属酸化物膜と酸化ケイ素膜との多層膜付き基板、およびそれらの膜付き基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
金属酸化物薄膜の光学的応用は、単層の熱線反射ガラスや反射防止膜から始まり、さらに特定の波長の光が選択的に反射または透過するように設計した多層膜系の反射防止コート、反射増加コート、干渉フィルタ、偏光膜など多分野にわたっている。多層膜の分光特性は、各層の屈折率nと膜厚をパラメータとして光学的設計され、一般的に高屈折率膜と低屈折率膜とを組合わせて調整される。優れた光学特性を実現するには、高屈折率膜と低屈折率膜との屈折率nの差が大きい方がよく、例えば、n=2.4の二酸化チタン、n=2.3の五酸化ニオブ、n=2.1の五酸化タンタル、またはn=2.0の三酸化タングステンと、n=1.38のフッ化マグネシウムまたはn=1.46の酸化ケイ素との組合わせが好適である。これら単層膜や多層膜は、真空蒸着法、塗布法等で成膜できる。
一方、建築用ガラスや自動車用ガラス、CRTやフラットディスプレイ等の大面積基板に、単層膜または多層膜を成膜する場合には、スパッタリング法、特に直流(DC)スパッタリング法が用いられることが多い。
ところで、高屈折率膜をDCスパッタリング法で成膜する場合は、導電性を有する金属質ターゲットを用い、酸素を含む雰囲気でスパッタリングする、いわゆる反応性スパッタリングによるのが現状である。しかし、この方法で得られる薄膜の成膜速度は極めて遅く、生産性が悪く、コストが高くなるという問題があった。
これを回避するために、高いスパッタリング電力を投入することが考えられるが、ターゲット材の冷却が追いつかない場合には、割れ、剥離等のトラブルが起きる可能性が高くなるため、投入できる電力には限界があった。加えて、得られた金属酸化物膜の応力が高いため、膜付き基板の反りの原因となることがあった。特に金属酸化物膜と酸化ケイ素膜とが交互に何層も積層してなる多層膜を板厚の薄い基板に設けた場合には、合計膜厚の増加に伴って反りが大きくなる傾向があったので、最終的に必要な板厚以上の厚い基板に成膜して反りを防ぎ、膜面側から所望の大きさに切れ込みを入れて応力を開放した後、基板を研磨して必要な厚みとし、その後所望の大きさの基板に切断するなどの対策をとっていた。
また、化学量論的組成より酸素が不足している金属酸化物MO(ただし、MはTi、Nb、Ta、Mo、W、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を示す)をターゲット材に用いて、DCスパッタリングを行い高屈折率を有する透明金属酸化物膜を透明基板上に成膜する方法も提案されている(例えば、国際公開番号(再公表特許)97/08359号公報参照。)。しかし、この公報には、膜の反りや応力について一切記載されていない。
本発明は、導電性スパッタリング材を用いて、スパッタリング法により、金属酸化物膜と酸化ケイ素膜との多層膜を基板の上に高速成膜して、膜の応力が緩和された、すなわち低応力の多層膜付き基板とそのような低応力の多層膜付き基板を製造する方法を提供することが目的である。基板の反りが少ない膜付き基板を得るためには、金属酸化物膜と酸化ケイ素膜とが積層された多層膜の応力は、−100MPa〜+100MPaであることが必要であり、好ましくは−70MPa〜+70MPa、特に−60MPa〜+60MPaであり、さらには−30MPa〜+30MPaである。なお、応力がプラス(+)側にあるときは引張応力であり、マイナス(−)側にあるときは圧縮応力である。
【発明の開示】
本発明は、基板上に、少なくとも金属酸化物膜と酸化ケイ素膜とを1回以上繰返し積層して成膜されてなる多層膜付き基板であって、該金属酸化物膜の少なくとも1層が化学量論的組成より酸素が不足している金属酸化物MO(ただし、MはTi、Nb、Ta、Mo、W、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を示す)をターゲット材に用いてスパッタリングを行うことにより成膜されてなる酸素不足が解消された金属酸化物膜であり、かつ該多層膜の応力が−100MPa〜+100MPaであることを特徴とする多層膜付き基板である。
本発明の多層膜付き基板は、金属酸化物MOの金属Mが、Nbおよび/またはTaの場合には、Xが2<X<2.5であることが好ましい。
また、本発明の多層膜付き基板は、金属酸化物MOの金属MがTi、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の場合には、Xが1<X<2であることが好ましい。
また、本発明の多層膜付き基板は、金属酸化物MOの金属MがMoおよび/またはWの場合には、Xが2<X<3であることが好ましい。
また、本発明の多層膜付き基板は、該多層膜の応力が−60MPa〜+60MPaであることが好ましい。
また、本発明の多層膜付き基板は、前記金属酸化物膜と酸化ケイ素膜を10回以上繰返し積層してなることが好ましい。
本発明の多層膜付き基板は、前記基板の厚さが0.05〜0.4mmであり、かつ多層膜を成膜した後の基板の反りが−20〜+20μmであることが好ましい。
また、本発明の多層膜付き基板は、前記基板の厚さが0.5〜2mmであり、かつ多層膜を成膜した後の基板の反りが−100〜+100μmであることが好ましい。
本発明の多層膜付き基板は、前記多層膜を形成する面積が、1〜900cmであることが好ましい。
本発明の多層膜付き基板は、前記金属酸化物膜の1層の膜厚が10nm〜10μmであり、酸化ケイ素膜の1層の膜厚が10nm〜10μmであることが好ましい。
本発明の多層膜付き基板は、多層膜全体の厚さが、20nm〜2000μmであることが好ましい。
本発明の多層膜付き基板は、多層膜全体の厚さが20〜5000nmであり、かつ基板の成膜前後の反りの差の絶対値が25μm以下であることが好ましい。
本発明の多層膜付き基板は、基板の成膜前後の反りの差の絶対値を膜厚で割った値が10以下であることが好ましい。
本発明の多層膜付き基板が、ダイクロイックミラー、紫外線カットフィルタ、赤外線カットフィルタ、バンドパスフィルタ又はゲインフラットニングフィルタであることが好ましい。
本発明は、少なくとも金属酸化物膜と酸化ケイ素膜とが交互に積層されてなる多層膜付き基板の製造方法であって、該金属酸化物膜の少なくとも一層が化学量論的組成より酸素が不足している金属酸化物MO(ただし、MはTi、Nb、Ta、Mo、W、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を示す)をターゲット材に用いてスパッタリングを行うことにより成膜され、かつ該多層膜の応力が−100MPa〜+100MPaであることを特徴とする多層膜付き基板の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
図1は、DCスパッタリング法によるNb単層膜の膜厚と膜の応力との関係を示すグラフ。
図2は、基板の反りδを説明する多層膜付き基板の模式断面図。
図3は、本発明における多層膜付き基板の断面模式図。
図4は、本発明における多層膜付き基板の断面模式図。
【符号の説明】
S:理想的な基板
S’:実際の基板
R:曲率半径
r:基板の半径
δ:基板の反り
10:基板
20:金属酸化物膜
30:酸化ケイ素膜
40:多層膜
50:中間膜
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の多層膜付き基板は、化学量論的組成より酸素が不足している金属酸化物MOをターゲット材に用いて、スパッタリングを行い、基板上に酸素不足が解消された金属酸化物膜を成膜する方法により製造される。
本発明で金属酸化物膜を得るために使用されるターゲット材は金属酸化物であって、化学量論的組成より酸素が不足している金属酸化物MO(ただし、MはTi、Nb、Ta、Mo、W、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を示す)であり、2種以上の金属Mを含んでいてもよい。
MがNbおよび/またはTaの場合には、Xが2<X<2.5であるのが好ましい。これは、Xが2.5の場合は、Nbおよび/またはTaが完全に酸化している状態なので、ターゲット材は電気絶縁性であり、DCスパッタリングができないためである。また、Xが2以下では、NbOおよび/またはTaOが化学的に不安定であり、ターゲット材としては好ましくない。NbOを用いた場合には、高い成膜速度を実現でき、TaOを用いた場合には、高い耐食性と高い耐擦傷性を有する膜を成膜できる。
前記と同様な理由から、本発明のターゲット材のMOのMがMoおよび/またはWである場合には、Xが2<X<3であるのが好ましい。
また本発明のターゲット材のMOのMがTi、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である場合には、Xが1<X<2であるのが好ましい。
本発明で金属酸化物膜を得るために使用されるターゲット材には、金属酸化物MOによる膜の応力を緩和することを含む特性を損なわない限り、金属酸化物MOを構成する金属M以外の金属の酸化物を添加して、屈折率や機械的、化学的特性などの膜の性能を向上させることができる。このような金属酸化物としては、Cr、Ce、Y、Si、AlおよびBからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物が挙げられる。これらは酸素欠損型である必要はない。例えば、Crの酸化物の場合は、膜の耐食性が改善され、Ceの酸化物の場合は、金属酸化物膜に紫外線カット性を付与することができる。
本発明で金属酸化物膜を得るために使用されるターゲット材は、製造方法を特に限定されず、例えばNbO(ただし、2<X<2.5)の場合には、次のようにして製造される。他の金属酸化物の場合も本質的に変わるところはない。
Nb粉末を非酸化雰囲気でホットプレス(高温高圧プレス)して焼結することにより、化学量論的組成より酸素が不足している(酸素が欠損した)NbO(ただし、2<X<2.5)を製造する。Nb粉末の粒径は0.05〜40μmが適当である。ホットプレスの雰囲気は非酸化性雰囲気とすることが重要であり、ターゲット材の酸素含有量の調整が容易なことから、アルゴンや窒素が好ましい。また、水素を添加することもできる。ホットプレスの条件は、特に制限されないが、温度は800〜1400℃が好ましく、圧力は4.90×10〜9.80×10Paが好ましい。
NbO焼結体の密度は4.0〜4.6g/cm程度、比抵抗は1〜10Ωcm程度である。
また、TiO焼結体の密度は3.8〜4.2g/cm程度、比抵抗は0.1〜0.6Ωcm程度である。
また、基板上に、金属または合金からなるアンダーコートを施し、アンダーコート上に、金属酸化物を還元雰囲気下の高温プラズマガス中で、半溶融状態にしつつ、このガスにより半溶融物をアンダーコート上に輸送して付着させるプラズマ溶射により、金属酸化物を形成することによっても、化学量論的組成より酸素が不足している金属酸化物からなる本発明に使用されるターゲット材を得ることができる。
本発明において、金属酸化物膜が成膜される基板は、ガラス、樹脂フィルム、シリコンなどであり、特に限定されないが、ガラスを用いることが透明性の点で好ましい。通常、多層膜を板厚の薄い基板に設けた場合には、合計膜厚の増加に伴って反りが大きくなる傾向があった。そのため、最終的に必要な板厚以上の厚い基板に成膜して反りを防ぎ、膜面側から所望の大きさに切れ込みを入れて応力を開放した後、基板を研磨して必要な厚みとし、その後所望の大きさの基板に切断する対策をとっていた。しかし、本発明の多層膜は、応力が小さいため、成膜時に発生していた大きな反りが発生せず、基板を研磨する必要がなく、厚さが薄い基板にそのまま多層膜を形成することができる。
液晶プロジェクターに使用されるダイクロイックミラーやデジタルカメラに使用される赤外線カットフィルタといったいわゆる非通信用の多層膜付き基板の場合、最終的な基板の厚さは、0.05〜0.4mmであることが、多層膜付き基板が使用される製品の軽量化や薄型化の点で好ましい。また、多層膜を形成した後の基板の反りの大きさは、使用する目的によっても異なるが、−20〜+20μmであることが好ましく、−5〜+5μm以下であることがより好ましい。なお、基板の反りは、後述するような方法を用いて計算される。図2にその例を示す。
図2は、基板の反りを計算するための多層膜付き基板の模式断面図である。図2において、基板Sは反りがない理想的な基板を意味し、基板S’は反りが生じている実際の基板を意味する。ここで、基板の反りは、膜を形成する半径rの基板Sの面に対して、基板S’の最も大きい凹凸までの距離δを意味する。なお、反りの符号は、成膜面が凸のときがプラス(+)、凹のときがマイナス(−)である。
一方、バンドパスフィルタやゲインフラットニングフィルタといったいわゆる光通信用の多層膜付き基板の場合は、最終的な基板の厚さは、0.5〜2mmの状態で使用されることが多い。また、多層膜を形成した後の基板の反りの大きさは、使用する目的によっても異なるが、切断前の状態で−100〜+100μmであることが好ましく、−50〜+50μmであることがより好ましい。
また、基板の面積(多層膜を形成する面の面積)は、その大きさが大きくなるに従い基板の反りは大きくなるため、基板の反りを許容範囲内にする必要性から、非通信用途、光通信用途ともに0.01〜900cm、特に1〜900cm、さらには4〜900cmであることが好ましい。
なお、非通信用、光通信用いずれの用途であっても、これらの用途に用いる最終製品としても基板面積は、0.01より大きく、900cmよりも小さいもの、例えば、100cm以下、50cm以下、10cm以下、1cm以下のものも多い。しかし、本発明においては、上記のような大面積の基板に成膜した後、所望の大きさの基板に切断することで最終製品を形成できるため、コストを低減しつつ多層膜付き基板を形成できる。
また、基板の成膜前後の反りの差の絶対値は、基板の反りを許容範囲内にする必要性から、多層膜全体の膜厚が20〜5000nmであるときは25μm以下であることが好ましく、20〜2500nmであるときは15μm以下であることが好ましく、20〜500nmであるときは5μm以下であることが好ましい。さらに、基板の成膜前後の反りの差の絶対値は、膜厚が厚くなるほど大きくなる傾向にあるため、基板の成膜前後の反りの差の絶対値を膜厚で割った値(基板の成膜前後の反りの差の絶対値/膜厚)によって膜質を評価することが多い。基板の成膜前後の反りの差の絶対値を膜厚で割った値は、基板の反りを好ましい範囲にする必要性から好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
本発明の膜の応力が緩和された金属酸化物膜を含む多層膜付き基板は、例えば下記の方法により製造されるが、これに限定されるものではない。形成された多層膜付き基板の断面模式図を図3および図4に示す。
図3は、本発明における多層膜付き基板の断面模式図であり、基板10の上に金属酸化物膜20、酸化ケイ素膜30が積層され、多層膜40を形成している。
本発明で金属酸化物膜を得るために使用されるターゲット材は、金属酸化物で構成されており、かつ、化学量論的組成より少しだけ酸素不足状態になっている。したがって、金属酸化物膜の成膜を行う場合には、スパッタリングの雰囲気から、化学量論的組成より少しだけ不足している酸素を補えば、酸素不足が解消された金属酸化物膜が得られる。
例えば、化学量論的組成より少しだけ酸素不足状態になっている金属酸化物をターゲット材に用いて、アルゴン雰囲気中またはアルゴンと少量の酸素との混合雰囲気中で、圧力を0.15〜1.5Pa程度としてDCスパッタリングすると、基板上に均一な透明膜、すなわち酸素不足が解消された金属酸化物膜を高速で成膜することができる。金属ターゲットを用いる場合には、酸素分圧の変化によって、成膜速度や放電電流・電圧の不連続な変化であるヒステリシス現象が生じるが、該金属酸化物をターゲット材に用いた場合には、このようなヒステリシス現象は生じず、成膜時の成膜速度の制御が比較的容易であり、しかも、供給する酸素ガス量を必要最低限、あるいはそれに近い量まで少なくすることができる。
酸素の割合が小さくなると、金属酸化物膜が金属膜に近くなり吸収膜になる傾向がある。逆に、酸素の割合が大きくなると成膜速度が低下し、金属酸化物膜の応力が大きな圧縮応力になる傾向が現れる。よって、酸素の分圧の調整が重要であり、スパッタリングガス中に酸素が0〜30体積%含まれていることが好ましい。ただし、NbOを用いたターゲット材においては、スパッタリングガス中に酸素が1〜30体積%含まれていることが好ましい。また金属ターゲット材を用いた場合は、投入電力にも左右されるが、スパッタリングガス中に酸素が30体積%以上含まれていることが吸収膜とならないようにする点で好ましい。
成膜される金属酸化物膜の膜厚はスパッタリング時間、投入電力などにより調整されるが、金属酸化物膜の1層の膜厚は10nm〜10μm、特に10〜300nmであるのが好ましい。
酸素が不足している金属酸化物ターゲットから成膜される金属酸化物膜は、通常の金属ターゲットから成膜される金属酸化物膜と比較して屈折率などの光学特性は同等にもかかわらず、応力が緩和された膜となっている。この理由は明らかではないが、成膜中の膜の成長過程が異なるためと推測される。
次に、前記金属酸化物膜が成膜された、膜付き基板の上に、さらにケイ素をターゲット材に用い、前記金属酸化物をターゲット材に用いた場合と同様にスパッタリングを行い、透明な酸化ケイ素膜を成膜する。最外層は、金属酸化物膜であっても、酸化ケイ素膜であってもよい。また、最内層も、金属酸化物膜であっても、酸化ケイ素膜であってもよい。さらに、前記多層膜が様々な特性に対応できるように、図4に記載の多層膜付き基板のとおり、金属酸化物膜と酸化ケイ素膜以外に両者と異なる中間膜50を介在させることができる。例えば、光学的条件を満足させるために、中程度の屈折率の酸化アルミニウム膜を介在させてもよい。
金属酸化物膜と酸化ケイ素膜とを1回以上5回以下、10回以下または50回以下等の複数回繰返し積層して、100層を超え、1000層以下となるような多層膜を成膜することもできる。したがって、多層膜の膜厚は、層の数だけ厚くなるが、金属酸化物膜の応力が酸化ケイ素膜の応力をある程度打ち消すため、多層膜になっても、反りは極めて小さい。これは、多層膜を製造するに際し、反りを抑制するために、基板の板厚を格別厚くする必要がないことを意味し、成膜後の多層膜付き基板の研磨工程の省略または軽減、多層膜の層数の増加、コストダウンに大きく寄与する。多層膜付き基板の金属酸化物膜の1層の膜厚は10nm〜10μm、特に10〜300nmであるのが好ましく、酸化ケイ素膜の1層の膜厚は10nm〜10μm、特に10〜300nmであるのが好ましい。また、多層膜全体の厚さは、20nm〜2000μmであることが好ましく、特に光通信用途に用いられる場合は、20〜2000μm、特に20〜200μmであることが好ましい。
以上は、基板に、初めに金属酸化物膜を成膜し、ついで酸化ケイ素膜を成膜し、酸化ケイ素膜が最外層になるような層構成とする場合について説明したが、基板に、初めに酸化ケイ素膜を成膜し、ついで金属酸化物膜を成膜する場合も、各層の成膜に変わるところがないので、説明を省略する。なお例えば、金属酸化物膜、酸化ケイ素膜および金属酸化物膜からなる3層膜や、該3層膜にさらに酸化ケイ素膜と金属酸化物膜を積層してなる5層膜も、便宜的に1回以上繰返し積層してなる本願発明の多層膜付き基板に含める。
かくして得られた金属酸化物膜の多層膜付き基板は、各種用途に使用される。具体的には、ダイクロイックミラー、紫外線カットフィルタや赤外線カットフィルタ等の非通信用途や、バンドパスフィルタやゲインフラットニングフィルタ等の光通信用途が挙げられる。
以上DCスパッタリングによる多層膜付き基板の成膜について説明したが、交流(AC)スパッタリングによる多層膜付き基板の成膜の場合も同様に実施される。ACスパッタリング法を用いることで、DCスパッタリング法に比べて表面粗さの小さい膜が得られるといった利点がある。
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、もちろん本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(製造例1)
(NbO焼結体)
市販の高純度Nb粉末を、カーボン製のホットプレス用金型に充填し、アルゴン雰囲気中で、1300℃に3時間保持した後、圧力9.8MPaでホットプレスを行い、焼結体を得た。焼結体の密度および比抵抗を測定した。
次に、焼結体をメノウ乳鉢で粉砕し、空気中で1100℃に加熱し、加熱前後の焼結体の質量を測定した。この加熱により、先の焼結により酸素が不足した状態のNbOから完全に酸化された焼結体Nbに変化したものと推定して、その質量増加分から、焼結体の酸素含有量を計算し,酸素不足を確認した。
焼結体の密度は4.5g/cm、比抵抗は8.9Ωcmおよび酸素含有量はNbOのXとして2.498であった。
(製造例2)
(TiO焼結体)
製造例1の高純度Nb粉末の代わりに、市販の高純度TiO粉末を用いる以外は、製造例1と同様の方法・条件で焼結体を得て、焼結体の密度、比抵抗を測定した。
次に、製造例1と同様の方法・条件で加熱し、加熱前後の焼結体の質量を測定し、その質量増加分から、焼結体の酸素含有量を計算し,酸素不足を確認した。
焼結体の密度は3.90g/cm、比抵抗は0.35Ωcmおよび酸素含有量はTiOのXとして1.980であった。
(1)単層膜の形成
(参考例1〜6)
製造例1により製造されたNbO焼結体を、200mm×70mm、厚さ5mmの直方体に研削加工し、ターゲット材を製造した。このターゲット材を、銅製のパッキングプレートにメタルボンドで接着し、マグネトロンDCスパッタリング装置に取り付けた。1.1mm厚で縦5cm×横5cmのガラス基板および0.525mm厚で直径10cmのシリコン基板のそれぞれに、投入電力をDC0.75kW、背圧を1×10−3Pa、スパッタリング圧力を0.6Paとし、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表1に示すように調整してスパッタリングを行い、表1に示す膜厚のNb膜の成膜を行った。スパッタリング中の放電は極めて安定しており、DCスパッタリングでも安定して成膜することができた。
成膜後、膜厚を触針式の膜厚測定装置を用いて測定した。
成膜前の反り、成膜後の反りおよび膜の応力は、Tencor Instruments社のFLXTHIN FILMS STRESS MEASUREMENT SYSTEMであるFleXus F2320を使用して、セットするシリコン基板の向きを統一させてセットし、成膜前および成膜後の直径10cmのシリコン基板の反り(曲率半径)を測定することにより求めた。なお、基板の反りδは、図2に記載された方法で求めた。
図2において、基板Sが完全に平坦な面を有する理想的な基板を意味し、基板S’が通常の基板を意味する。基板の反りδは、理想的な基板Sの面に対して、通常の基板S’が有する最も大きい凹凸までの距離δを意味し、反りの符号は、成膜面が凸のときがプラス(+)、凹のときがマイナス(−)である。また、実施例に用いた基板Sの直径は10cmであるが、膜厚の均一性を考慮し、実際の測定は両端1cmずつを除いた8cm分について行い、他の反りについても同様に測定した。また、膜の応力は次式によって計算される。
σ=(1/R−1/R)Eh/{6t(1−ν)}
ここで、σ:膜の応力、R:成膜前の基板の曲率半径、R:成膜後の基板の曲率半径、E:基板Sのヤング率、h:基板Sの厚さ、t:膜厚、ν:基板Sのポアソン比である。なお、曲率半径RおよびRは、図2に記載のRを意味するが、次式によって計算される。
≒r/2δ、R≒r/2δ
ここで、r:基板Sの半径、δおよびδは成膜前および成膜後の基板の反りである。
ガラス基板上の膜の屈折率を、J.A.Woollam Co.,Inc.の分光エリプソメータWVASE32で測定した。なお、膜は透明で膜の光吸収はなかった。
表1に、膜厚、成膜速度、膜の応力、波長550nmにおける膜の屈折率を示し、表1−2に、成膜前の反り、成膜後の反り、成膜前後の反りの差および成膜前後の反りの差の絶対値を膜厚で割った値を示した。
(参考例7〜11)
参考例1のNbOターゲット材の代わりに、市販のNb金属をターゲット材に用い、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表1に示すように調整する以外は参考例1と同様に、スパッタリングを行い、Nb膜の成膜を行った。スパッタリング中の放電は極めて安定しており、DCスパッタリングでも安定して成膜することができた。Nb膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表1および表1−2に示した。
(参考例12〜14)
製造例2により製造されたTiO焼結体を、200mm×70mm、厚さ5mmの直方体に研削加工し、ターゲット材を製造した。このターゲット材を、銅製のパッキングプレートにメタルボンドで接着し、マグネトロンDCスパッタリング装置に取り付けた。1.1mm厚で縦5cm×横5cmのガラス基板および0.525mm厚で直径10cmのシリコン基板のそれぞれに、投入電力をDC0.75kW、背圧を1×10−3Pa、スパッタリング圧力を0.6Paとし、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表1に示すように調整してスパッタリングを行い、表1に示す膜厚のTiO膜の成膜を行った。スパッタリング中の放電は極めて安定しており、DCスパッタリングでも安定して成膜することができた。TiO膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表1および表1−2に示した。
(参考例15〜16)
参考例12のTiOターゲット材の代わりに、市販のTi金属をターゲット材に用い、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表1に示すように調整する以外は参考例12と同様に、スパッタリングを行い、TiO膜の成膜を行った。スパッタリング中の放電は極めて安定しており、DCスパッタリングでも安定して成膜することができた。TiO膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表1および表1−2に示した。
(参考例17〜18)
参考例1のNbOターゲット材の代わりに、市販のSi(Bドーブ)をターゲット材に用い、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表1に示すように調整する以外は参考例1と同様に、スパッタリングを行い、SiO膜の成膜を行った。SiO膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表1および表1−2に示した。


表1および表1−2から、DCスパッタリングにおいて、酸素が不足しているNbOをターゲット材に用いる場合は、Nb金属をターゲット材に用いる場合に比べ、応力が緩和された(応力が低い)、反りが少ないNb膜が成膜できる。このことは、膜厚の変化に対する、NbOをターゲット材に用いた場合のNb単層膜と、Nb金属をターゲット材に用いた場合のNb単層膜の応力を比較した図1からも明らかである。なお、図1において、応力がプラス(+)側にあるときは引張応力であり、マイナス(−)側にあるときは圧縮応力である。また表1から、酸素ガスが不足しているNbOをターゲット材に用いる場合は、Nb金属ターゲット材に用いる場合に比べ、成膜速度が高速度であることが明らかである。
またTiOターゲット材を用いた場合には、Ti金属をターゲット材に用いた場合に比べ、応力が緩和されたTiO膜が高速度で成膜できることが明らかである。
(2)多層膜の形成(DCスパッタリング法)
【実施例1】
参考例1に用いたNbOターゲット材を、参考例1と同様に、マグネトロンDCスパッタリング装置に取り付けた。1.1mm厚で縦5cm×横5cmのガラス基板および0.525mm厚で直径10cmのシリコン基板のそれぞれに、投入電力をDC0.75kW、背圧を1×10−3Pa、スパッタリング圧力を0.6Paとし、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表2に示すように調整してスパッタリングを行い、膜厚200nmのNb膜の成膜を行った。
次に、同じマグネトロンDCスパッタリング装置を用い、市販のSi(Bドーブ)をターゲット材に用い、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表2に示すように調整する以外はNbOターゲット材のスパッタリング条件と同じ条件でスパッタリングを行い、基板上のNb膜の上に膜厚240nmのSiO膜を成膜して多層膜(2層)付きの基板を得た。多層膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表2および表2−2に示した。
【実施例2〜3】
実施例1において、Nb膜およびSiO膜の成膜のためのスパッタリングを5回または10回繰返してNb膜とSiO膜を積層する以外は、実施例1と同様にスパッタリングを行い、多層膜(10層または20層)付き基板を得た。多層膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表2および表2−2に示した。
【実施例4】
参考例12に用いたTiOターゲット材を、実施例1と同様に、マグネトロンDCスパッタリング装置に取り付けた。1.1mm厚で縦5cm×横5cmのガラス基板および0.525mm厚で直径10cmのシリコン基板のそれぞれに、投入電力をDC0.75kW、背圧を1×10−3Pa、スパッタリング圧力を0.6Paとし、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表2に示すように調整してスパッタリングを行い、膜厚200nmのTiO膜の成膜を行った。
次に、同じマグネトロンDCスパッタリング装置を用い、市販のSi(Bドーブ)をターゲット材に用い、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表2に示すように調整する以外はTiOターゲット材のスパッタリング条件と同じ条件でスパッタリングを行い、基板上のTiO膜の上に膜厚240nmのSiO膜を成膜して多層膜(2層)付きの基板を得た。多層膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表2および表2−2に示した。
【実施例5】
実施例4において、TiO膜とSiO膜との成膜のためのスパッタリングを5回繰返す以外は、実施例4と同様にスパッタリングを行い、多層膜(10層)付き基板を得た。多層膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表2および表2−2に示した。
(比較例1)
実施例1のNbOターゲット材の代わりに、市販のNb金属をターゲット材に用い、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表2に示すように調整する以外は実施例1と同様に、スパッタリングを行い、膜厚200nmのNb膜の成膜を行った。
次に、同じマグネトロンDCスパッタリング装置を用い、市販のSi(Bドーブ)をターゲット材に用い、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表2に示すように調整する以外はNb金属ターゲット材のスパッタリング条件と同じ条件でスパッタリングを行い、基板上のNb膜の上に膜厚240nmのSiO膜を成膜して多層膜(2層)付きの基板を得た。多層膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表2および表2−2に示した。
(比較例2)
比較例1において、Nb膜とSiO膜との成膜のためのスパッタリングを5回繰返して積層する以外は、比較例1と同様にスパッタリングを行い、多層膜(10層)付き基板を得た。多層膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表2および表2−2に示した。
(比較例3)
実施例4のTiOターゲット材の代わりに、市販のTi金属をターゲット材に用い、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表2に示すように調整する以外は実施例4と同様に、スパッタリングを行い、膜厚200nmのTiO膜の成膜を行った。
次に、同じマグネトロンDCスパッタリング装置を用い、市販のSi(Bドーブ)をターゲット材に用い、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表2に示すように調整する以外はTi金属ターゲット材のスパッタリング条件と同じ条件でスパッタリングを行い、基板上のTiO膜の上に膜厚240nmのSiO膜を成膜して多層膜(2層)付きの基板を得た。多層膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表2および表2−2に示した。
(比較例4)
比較例3において、TiO膜とSiO膜との成膜のためのスパッタリングを5回繰返して積層する以外は、比較例3と同様にスパッタリングを行い、多層膜(10層)付き基板を得た。多層膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表2および表2−2に示した。


表2および表2−2から、DCスパッタリングにおいて、酸素が不足しているNbOをターゲット材に用いる場合は、Nb金属をターゲット材に用いる場合に比べ、応力が緩和された(応力が低い)、反りが小さいNb膜とSiO膜との多層膜が成膜できることが明らかである。
またTiOターゲット材を用いた場合にも、Ti金属をターゲット材に用いた場合に比べ、応力が緩和されたTiO膜とSiO膜との多層膜が成膜できることが明らかである。
(3)多層膜の形成(シリコン基板の厚さが薄い例)
【実施例6】
シリコン基板の厚さを0.525mm厚から0.2mm厚へ変更する以外は、実施例5と同様にスパッタリングを行い、多層膜(10層)付き基板を得る。このときの成膜前後の反りの差の絶対値は、8.34μmである。
(比較例5)
シリコン基板の厚さを0.525mm厚から0.2mm厚へ変更する以外は、比較例4と同様にスパッタリングを行い、多層膜(10層)付き基板を得る。このときの成膜前後の反りの差の絶対値は、163.03μmである。
(4)多層膜の形成(ACスパッタリング法の例)
【実施例7】
参考例1に用いたNbOターゲット材を、参考例1と同様に、マグネトロンACスパッタリング装置に取り付ける。1.1mm厚の縦5cm×横5cmのガラス基板および0.525mm厚で直径10cmのシリコン基板のそれぞれに、投入電力をAC0.7kW、背圧を1×10−3Pa、スパッタリング圧力を0.6Paとし、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表3に示すように調整してスパッタリングを行い、膜厚200nmのNb膜の成膜を行う。
次に、同じマグネトロンACスパッタリング装置を用い、市販のSi(Bドーブ)をターゲット材に用い、雰囲気中の酸素ガスとアルゴンガスとの総量に対する酸素ガスの割合を表3に示すように調整する以外はNbOターゲット材のスパッタリング条件と同じ条件でスパッタリングを行い、基板上のNb膜の上に膜厚240nmのSiO膜の成膜を行う。
さらに、Nb膜とSiO膜との成膜のためのスパッタリングを4回繰返して積層し、多層膜(10層)付きの基板を得る。多層膜の特性を参考例1と同様に測定し、その結果を表3−1および表3−2に示す。


【産業上の利用可能性】
本発明に使用されるターゲット材は、導電性を有しているため、スパッタリング法、特にDCまたはACスパッタリング法を採用することができるので、生産性がよく、加えて、従来スパッタリング法では得られなかった応力が緩和された大面積の透明金属酸化物膜と酸化ケイ素膜との多層膜を成膜することができる。したがって、本発明の応力が緩和された透明金属酸化物膜の多層膜は、厚いにもかかわらず反りが少ないので、成膜後の研磨が不要であり、反射防止膜、反射増加膜、干渉フィルタ、偏光膜などに好適に使用される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも金属酸化物膜と酸化ケイ素膜とを1回以上繰返し積層してなる多層膜付き基板であって、該金属酸化物膜の少なくとも1層が化学量論的組成より酸素が不足している金属酸化物MO(ただし、MはTi、Nb、Ta、Mo、W、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を示す)をーゲット材に用いてスパッタリングを行うことにより成膜されてなる酸素不足が解消された金属酸化物膜であり、かつ該多層膜の応力が−100MPa〜+100MPaであることを特徴とする多層膜付き基板。
【請求項2】
前記金属酸化物MOの金属Mが、Nbおよび/またはTaの場合には、Xが2<X<2.5である請求項1に記載の多層膜付き基板。
【請求項3】
前記金属酸化物MOの金属MがTi、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の場合には、Xが1<X<2である請求項1に記載の多層膜付き基板。
【請求項4】
前記金属酸化物MOの金属MがMoおよび/またはWの場合には、Xが2<X<3である請求項1に記載の多層膜付き基板。
【請求項5】
前記多層膜の応力が−60MPa〜+60MPaである請求項1〜4のいずれかに記載の多層膜付き基板。
【請求項6】
前記金属酸化物膜と酸化ケイ素膜とを10回以上繰返し積層してなる請求項1〜5のいずれかに記載の多層膜付き基板。
【請求項7】
前記基板の厚さが0.05〜0.4mmであり、かつ多層膜を成膜した後の基板の反りが−20〜+20μmである請求項1〜6のいずれかに記載の多層膜付き基板。
【請求項8】
前記基板の厚さが0.5〜2mmであり、かつ多層膜を成膜した後の基板の反りが−100〜+100μmである請求項1〜6のいずれかに記載の多層膜付き基板。
【請求項9】
前記多層膜を形成する面積が、0.01〜900cmである請求項1〜8のいずれかに記載の多層膜付き基板。
【請求項10】
前記多層膜を形成する面積が、1〜900cmである請求項9に記載の多層膜付き基板。
【請求項11】
前記金属酸化物膜の1層の膜厚が10nm〜10μmであり、酸化ケイ素膜の1層の膜厚が10nm〜10μmである請求項1〜10のいずれかに記載の多層膜付き基板。
【請求項12】
前記多層膜全体の厚さが、20nm〜2000μmである請求項1〜11のいずれかに記載の多層膜付き基板。
【請求項13】
前記多層膜全体の厚さが20〜5000nmであり、かつ基板の成膜前後の反りの差の絶対値が25μm以下である請求項1〜12のいずれかに記載の多層膜付き基板。
【請求項14】
前記基板の成膜前後の反りの差の絶対値を膜厚で割った値が10以下である請求項1〜13のいずれかに記載の多層膜付き基板。
【請求項15】
前記多層膜付き基板が、ダイクロイックミラー、紫外線カットフィルタ、赤外線カットフィルタ、バンドパスフィルタ又はゲインフラットニングフィルタである請求項1〜14のいずれかに記載の多層膜付き基板。
【請求項16】
基板上に、少なくとも金属酸化物膜と酸化ケイ素膜とが交互に積層してなる多層膜付き基板の製造方法であって、該金属酸化物膜の少なくとも一層が化学量論的組成より酸素が不足している金属酸化物MO(ただし、MはTi、Nb、Ta、Mo、W、ZrおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を示す)をターゲット材に用いてスパッタリングを行うことにより成膜され、かつ該多層膜の応力が−100MPa〜+100MPaであることを特徴とする多層膜付き基板の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/038061
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546442(P2004−546442)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013481
【国際出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(391040711)旭硝子セラミックス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】