説明

多層配線基板、多層配線基板の製造方法、及びビアペースト

【課題】電気的接続の高い信頼性を有するビアホール導体により層間接続された、Pbフリーのニーズに対応することができる多層配線基板を提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁樹脂層を介して配設された複数の配線同士を電気的に接続するビアホール導体を有する多層配線基板であって、ビアホール導体は銅と錫とビスマスとを含み、複数の銅粒子が互いに面接触して前記複数の配線同士を電気的に接続する前記銅粒子の結合体を含む第1金属領域と、錫,錫−銅合金または錫と銅の金属間化合物のいずれか一つ以上を主成分とする第2金属領域と、ビスマスを主成分とする第3金属領域とを含み、第2金属領域の少なくとも一部が銅粒子の結合体の面接触部を除く表面に接触しており、金属部分中のCu,Sn及びBiが特定の重量組成比(Cu:Sn:Bi)を有する多層配線基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁樹脂層を介して配された複数の配線同士がビアホール導体で層間接続されてなる多層配線基板に関する。詳しくは、低抵抗なビアホール導体の接続信頼性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁樹脂層を介して配された配線同士を層間接続して得られる多層配線基板が知られている。このような層間接続の方法として、絶縁樹脂層に形成された孔に導電性ペーストを充填して形成されるようなビアホール導体が知られている。また、導電性ペーストの代わりに、銅(Cu)を含有する金属粒子を充填し、これらの金属粒子同士を金属間化合物で固定したビアホール導体も知られている。
【0003】
具体的には、例えば、下記特許文献1は、CuSn化合物のマトリクス中に複数のCu粒子からなるドメインを点在させてなるマトリクスドメイン構造を有するビアホール導体を開示している。
【0004】
また、例えば、下記特許文献2は、Cuを含む高融点粒子相材料と錫(Sn)または錫合金等の金属から選ばれる低融点材料とを含む、ビアホール導体の形成に用いられる焼結性組成物を開示している。このような焼結性組成物は、液相または過渡的(transient)液相の存在下で焼結される組成物である。
【0005】
また、例えば、下記特許文献3は、錫−ビスマス(Bi)系金属粒子と銅粒子を含む導電性ペーストを錫−ビスマス系金属粒子の融点以上の温度で加熱することにより銅粒子の外周に固相温度250℃以上の合金層を形成させたビアホール導体用材料が開示されている。このようなビアホール導体用材料は、固相温度250℃以上の合金層同士の接合により層間接続が行われるために、ヒートサイクル試験や耐リフロー試験でも合金層が溶融しないために高接続信頼性を得ることが可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−49460号公報
【特許文献2】特開平10−7933号公報
【特許文献3】特開2002−94242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたビアホール導体について図10を参照して詳しく説明する。図10は、特許文献1に開示された多層配線基板のビアホール部分の模式断面図である。
【0008】
図10の多層配線基板の模式断面図においては、多層配線基板表面に形成された配線1にビアホール導体2が接している。ビアホール導体2は、金属間化合物であるCu3Sn、Cu6Sn5を含むマトリクス4と、マトリクス4中にドメインとして点在する銅含有粒子3を含む。このビアホール導体2においては、Sn/(Cu+Sn)で表される重量比を0.25〜0.75の範囲にすることにより、マトリクスドメイン構造を形成している。しかしながら、このようなビアホール導体2においては、熱衝撃試験において図10中の5に示すようなボイドやクラックが発生しやすいという問題があった。
【0009】
このようなボイドやクラックは、例えば熱衝撃試験やリフロー処理においてビアホール導体2が熱を受けた場合に、Sn−Bi系金属粒子にCuが拡散してCu3Sn、Cu6Sn5等のCuSn化合物を生成することに起因する亀裂に相当する。またこのようなボイドは、CuとSnとの界面に形成されたCu−Snの拡散接合部に含有されたCuとSnとの金属間化合物であるCu3Snが、各種信頼性試験の際の加熱により、Cu6Sn5に変化することにより、ビアホール導体2に内部応力が発生することにも起因する。
【0010】
また、特許文献2に開示された焼結性組成物は、例えば、プリプレグをラミネートするための加熱プレス時において発生する、過渡的(transient)液相の存在下または不存在下で焼結される組成物である。このような焼結性組成物は、Cu、Sn、およびPbを含むものであり、加熱プレス時の温度も180℃から325℃と高い温度になるために、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させてなる一般的な絶縁樹脂層(ガラスエポキシ樹脂層と呼ばれることもある)に対応させることは困難であった。また市場から求められている、Pbフリー化に対応することも困難であった。
【0011】
また、特許文献3に開示されたビアホール導体用材料においては、Cu粒子の表層に形成される合金層は抵抗値が高い。そのために、Cu粒子や銀(Ag)粉等を含有する一般的な導電性ペーストのようにCu粒子間やAg粒子間の接触のみで得られる接続抵抗値と比較して高抵抗値になるという問題があった。
【0012】
本発明は、高い接続信頼性を有する低抵抗のビアホール導体により層間接続された、Pbフリーのニーズに対応することができる多層配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一局面である多層配線基板は、少なくとも1つの絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層を介して配設された複数の配線と、絶縁樹脂層を貫通するように設けられた複数の配線同士を電気的に接続するビアホール導体と、を有する多層配線基板であって、ビアホール導体は、金属部分と樹脂部分とを有し、金属部分は、銅(Cu)と錫(Sn)とビスマス(Bi)とを含み、複数の銅粒子が互いに面接触して前記複数の配線同士を電気的に接続する銅粒子の結合体を含む第1金属領域と、錫,錫−銅合金または錫と銅の金属間化合物のいずれか一つ以上を主成分とする第2金属領域と、ビスマスを主成分とする第3金属領域とを含み、第2金属領域の少なくとも一部が銅粒子の結合体の面接触部を除く表面に接触しており、金属部分中のCu,Sn及びBiの重量比(Cu:Sn:Bi)が、三元図において、A(0.57:0.39:0.04),B(0.38:0.26:0.36),C(0.79:0.09:0.12),D(0.89:0.10:0.01)を頂点とする四角形で囲まれる領域にあることを特徴とする。
【0014】
また本発明の他の一局面である多層配線基板の製造方法は、保護フィルムで被覆された樹脂シートに、保護フィルムの外側から穿孔することにより貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔にビアペーストを充填する充填工程と、充填工程の後、保護フィルムを剥離することにより、貫通孔からビアペーストの一部が突出した突出部を表出させる突出部形成工程と、突出部を覆うように、樹脂シートの表面に金属箔を配置する配置工程と、金属箔を樹脂シートの表面に圧着する圧着工程と、圧着工程の後(更に望ましくは圧着状態を保持したまま)、所定の温度で加熱する加熱工程と、を備え、ビアペーストが銅粒子とSn−Bi系半田粒子と熱硬化性樹脂とを含み、Cu,Sn及びBiの重量組成比(Cu:Sn:Bi)が三元図において、A(0.57:0.39:0.04),B(0.38:0.26:0.36),C(0.79:0.09:0.12),D(0.89:0.10:0.01)を頂点とする四角形で囲まれる領域であり、圧着工程において、金属箔を介して突出部を通じてビアペーストを加圧し圧縮することにより、銅粒子同士を面接触させることにより銅粒子の結合体を含む第1金属領域を形成し、加熱工程において、圧縮された前記ビアペーストを加熱してSn−Bi系半田粒子の共晶温度以上で共晶温度+10℃以下の温度の範囲でSn−Bi系半田粒子の一部分を溶融させた後、さらに共晶温度+20℃の温度以上300℃以下の温度の範囲に加熱することにより、銅粒子の結合体の面接触部を除く表面に錫,錫−銅合金または錫と銅の金属間化合物のいずれか一つ以上を主成分とする第2金属領域を形成するとともに、ビスマスを主成分とする第3金属領域を形成させることを特徴とする。
【0015】
また本発明の他の一局面であるビアペーストは、多層配線基板にビアホール導体を形成するために用いられるビアペーストであって、多層配線基板は、少なくとも1つの絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層を介して配設された複数の配線と、絶縁樹脂層を貫通するように設けられた複数の配線同士を電気的に接続するビアホール導体とを有し、ビアホール導体は、金属部分と樹脂部分とを有し、金属部分は、銅(Cu)と錫(Sn)とビスマス(Bi)とを含み、複数の銅粒子が互いに面接触して前記複数の配線同士を電気的に接続する銅粒子の結合体を含む第1金属領域と、錫,錫−銅合金または錫と銅の金属間化合物のいずれか一つ以上を主成分とする第2金属領域と、ビスマスを主成分とする第3金属領域とを含み、第2金属領域の少なくとも一部が銅粒子の結合体の面接触部を除く表面に接触しており、ビアペーストが銅粒子とSn−Bi系半田粒子と熱硬化性樹脂とを含み、Cu,Sn及びBiの重量比(Cu:Sn:Bi)が三元図において、A(0.57:0.39:0.04),B(0.38:0.26:0.36),C(0.79:0.09:0.12),D(0.89:0.10:0.01)を頂点とする四角形で囲まれる領域であることを特徴とする。
【0016】
本発明の目的、特徴、局面、及び利点は、以下の詳細な説明及び添付する図面により、より明白となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多層配線基板のビアホール導体に含有される銅粒子同士が互いに面接触して低抵抗の導通路を形成することにより、抵抗値の低い層間接続を実現することができる。また、銅粒子同士が互いに面接触している部分である面接触部を有する銅粒子の結合体を形成し、更にその結合体の表面に銅粒子よりも硬い、錫、錫-銅合金及び/または錫-銅金属間化合物を主成分とする第1金属領域を有することにより、銅粒子結合体が補強されている。これにより、電気的接続の信頼性が高められている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(A)は、本発明に係る実施形態の多層配線基板11の模式断面図であり、図1(B)は、図1(A)におけるビアホール導体14付近の拡大模式断面図を示す。
【図2】図2は、多数のCu粒子7からなる第1金属領域17において、Cu粒子7同士が面接触することにより形成された一つの結合体17aが形成する導通路23を説明する説明図である。
【図3】図3は、多層配線基板の製造方法の一例を説明するための工程断面図を示す。
【図4】図4は、多層配線基板の製造方法の一例を説明するための図3の続きの工程を示す。
【図5】図5は、多層配線基板の製造方法の一例を説明するための図4の続きの工程を示す。
【図6】図6は実施形態における、樹脂シート25の貫通孔に充填されたビアペースト28を圧縮するときの様子を説明するための断面模式図であり、図6(A)は圧縮前、図6(B)は圧縮後である。
【図7】図7は実施形態及び実施例における、Cu,Sn及びBiの組成を示す三元図である。
【図8】図8(A)は、実施例で得られた多層配線基板のビア導体の断面の1000倍の電子顕微鏡(SEM)写真、図8(B)はそのトレース図を示す。
【図9】図9(A)は、実施例で得られた多層配線基板のビア導体の断面の3000倍の電子顕微鏡(SEM)写真、図9(B)はそのトレース図を示す。
【図10】図10は、従来のビア導体の断面を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(A)は、本実施形態の多層配線基板11の模式断面図である。また、図1(B)は、図1(A)の多層配線基板11におけるビアホール導体14付近の拡大模式断面図である。
【0020】
図1(A)に示すように、多層配線基板11は、絶縁樹脂層13に三次元的に形成された、銅箔等の金属箔から形成された複数の配線12が、絶縁樹脂層13を貫通するビアホール導体14により電気的に層間接続されている。
【0021】
図1(B)は、ビアホール導体14付近の拡大模式断面図である。図1(B)中、12(12a,12b)は配線、13は絶縁樹脂層、14はビアホール導体である。ビアホール導体14は、金属部分15と樹脂部分16とを含む。金属部分15は、多数のCu粒子7から形成された第1金属領域17と、錫,錫‐銅合金,及び錫‐銅金属間化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を主成分とする第2金属領域18と、Biを主成分とする第3金属領域19とを含む。Cu粒子7の少なくとも一部は、それらが互いに直接面接触した面接触部20を介して接触結合されることにより銅粒子7の結合体を形成している。そして、結合体が上層の配線12aと下層の配線12bとを電気的に接続する低抵抗の導通路として機能する。
【0022】
Cu粒子7の平均粒径は0.1〜20μm、さらには、1〜10μmの範囲であることが好ましい。Cu粒子7の平均粒径が小さすぎる場合には、ビアホール導体14中において、接触点が多くなるため導通抵抗が大きくなる傾向がある。また、このような粒径の粒子は高価である傾向がある。一方、Cu粒子7の平均粒径が大きすぎる場合には、100〜150μmφのように径の小さいビアホール導体14を形成しようとした場合に、充填率を高めにくくなる傾向がある。
【0023】
Cu粒子7の純度は、90質量%以上、さらには99質量%以上であることが好ましい。Cu粒子7はその銅純度が高いほどより柔らかくなる。そのために後述する加圧工程において押し潰されやすくなるために、複数のCu粒子7同士が接触する際にCu粒子7が容易に変形することにより、Cu粒子7同士の接触面積が大きくなる。また、純度が高い場合には、Cu粒子7の抵抗値がより低くなる点からも好ましい。
【0024】
ここで、銅粒子同士の面接触とは銅粒子同士が触れる程度に接触しているのではなく、加圧圧縮されて塑性変形するまで互いに変形し、その結果として互いの銅粒子同士の間の接点が広がって、隣接する銅粒子同士が面で接触している状態をいう。このように、互いの銅粒子同士が互いに塑性変形するまで変形し、密着させることで、圧縮応力を開放した後も、銅粒子間の面接触部が保持され、第2金属領域で保護される。なお、Cu粒子7の平均粒径や、Cu粒子7同士が面接触している面接触部20は、形成された多層配線基板を樹脂埋めした後、ビアホール導体14の断面を研磨(必要に応じてFOCUSED ION BEAM等の微細加工手段も使って)して作成した試料を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより確認及び測定される。
【0025】
多数のCu粒子7は互いに面接触することにより、配線12aと配線12bとの間に低抵抗の導通路を形成する。このように多数のCu粒子7を面接触させることにより配線12aと配線12bとの接続抵抗を低くすることができる。
【0026】
また、ビアホール導体14においては多数のCu粒子7が整然と整列することなく、図1(B)に示すようにランダムに接触することにより、複雑なネットワークを有するように低抵抗の結合体が形成されていることが好ましい。結合体がこのようなネットワークを形成することにより電気的接続の信頼性を高めることができる。また、多数のCu粒子7同士が面接触する位置もランダムであることが好ましい。ランダムな位置でCu粒子7同士を面接触させることにより、熱を受けたときにビアホール導体14の内部で発生する応力や、外部から付与される外力をその変形により分散させることができる。
【0027】
ビアホール導体14中に含有されるCu粒子7の重量割合としては、20〜90重量%、さらには、40〜70重量%であることが好ましい。Cu粒子7の重量割合が低すぎる場合には、多数のCu粒子7が互いに面接触することにより形成された結合体の、導通路としての電気的接続の信頼性が低下する傾向があり、高すぎる場合には、抵抗値が信頼性試験で変動しやすくなる傾向がある。
【0028】
図1(B)に示すように、錫,錫‐銅合金,及び錫‐銅金属間化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を主成分とする第2金属領域18の少なくとも一部は第1金属領域17の面接触部20を除く表面に接触するように形成されている。このように第2金属領域18が第1金属領域17の面接触部20を除く表面に形成されることにより、第1金属領域17が補強される。また、第2金属領域18の少なくとも一部は、銅粒子7同士が互いに面接触している部分である面接触部20を跨ぐように覆っていることが好ましい。このように面接触部20を跨ぐように第2金属領域18が形成されることにより、面接触部20の接触状態がより補強される。
【0029】
第2金属領域18は、錫,錫‐銅合金,及び錫‐銅金属間化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を主成分として含有する。具体的には、例えば、Sn単体,Cu6Sn5,Cu3Sn等を含む金属を主成分として含む。また、残余の成分としては、BiやCu等の他の金属元素を本発明の効果を損なわない範囲、具体的には、例えば、10質量%以下の範囲で含んでもよい。
【0030】
また、金属部分15においては、図1(B)に示すように、Biを主成分とする第3金属領域19が、Cu粒子7とは接触せず、第2金属領域18と接触するように存在していることが好ましい。ビアホール導体14において、第3金属領域19をCu粒子7と接しないように存在させた場合には、第3金属領域19は第1金属領域17の導電性を低下させない。また、ビアホール導体14においては、第3金属領域19の割合はできるだけ少ない方が好ましい。Biを主成分として含有する第3金属領域19は抵抗が比較的高いためである。
【0031】
第3金属領域19は、Biを主成分として含有する。また、第3金属領域19は、残余の成分として、BiとSnとの合金または金属間化合物等を本発明の効果を損なわない範囲、具体的には、例えば、20質量%以下の範囲で含んでもよい。
【0032】
なお、第2金属領域18と第3金属領域19とは互いに接しているために、通常、何れもBi及びSnの両方を含む。この場合において、第2金属領域18は第3金属領域19よりもSnの濃度が高く、第3金属領域19は第2金属領域18よりもBiの濃度が高い。また、第2金属領域18と第3金属領域19との界面は、明確であるよりも、不明確であるほうが好ましい。界面が不明確である場合には、熱衝撃試験等の加熱条件においても界面に応力が集中することを抑制することができる。
【0033】
このようにビアホール導体14を構成する金属部分15は、銅粒子7からなる第1金属領域17、錫,錫‐銅合金,及び錫‐銅金属間化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を主成分とする第2金属領域18、及びビスマスを主成分とする第3金属領域19とを含む。
【0034】
そして、金属部分15の組成は、図7に示すようなCu,Sn及びBiの重量組成比(Cu:Sn:Bi)を示す三元図において、A(0.57:0.39:0.04),B(0.38:0.26:0.36),C(0.79:0.09:0.12),D(0.89:0.10:0.01)を頂点とする四角形で囲まれる領域に含まれる組成である。金属部分15の組成がこのような範囲である場合には、抵抗値が低く、熱履歴による信頼性の高いビアホール導体になる。
【0035】
なお、上記範囲に対して、Snに対するBiの割合が高すぎる場合にはビアホール導体の形成時にBiを主成分とする第3金属領域の割合が増えて抵抗値が高くなり、また、第3金属領域の点在状態によって熱履歴による接続信頼性が低下する。また、Snに対するBiの割合が低すぎる場合にはビアホール導体の形成時に高い温度で半田成分を溶融しなければならなくなる。また、Cu粒子に対するSnの割合が高すぎる場合には、銅粒子同士が充分に面接触しなかったり、銅粒子同士の接触面に抵抗値が高いSn−Cuの化合物層等が形成されやすくなる。Cu粒子に対するSnの割合が低すぎる場合には銅粒子の結合体の表面に接触する第2金属領域が少なくなるために、熱履歴に対する信頼性が低下する。
【0036】
一方、ビアホール導体14を構成する樹脂部分16は、硬化性樹脂の硬化物からなる。硬化性樹脂は特に限定されないが、具体的には、例えば、耐熱性に優れ、また、線膨張率が低い点からエポキシ樹脂の硬化物がとくに好ましい。
【0037】
ビアホール導体14中の樹脂部分16の重量割合としては、0.1〜50重量%、さらには、0.5〜40重量%であることが好ましい。樹脂部分16の重量割合が高すぎる場合には、抵抗値が高くなる傾向があり、低すぎる場合には、製造時に導電性ペーストの調製が困難になる傾向がある。
【0038】
次に、多層配線基板11におけるビアホール導体14の作用について、図2を参照して模式的に説明する。
【0039】
図2は、多数のCu粒子7同士が面接触することにより形成された一つの結合体17aが形成する導通路23に着目して説明する説明図である。また、便宜上、樹脂部分16等は表示していない。さらに、21はビアホール導体14の作用の説明するために便宜上示した仮想のばねである。
【0040】
図2に示すように、多数のCu粒子7同士が互いにランダムに面接触することにより形成された結合体17aは、配線12aと配線12bとを電気的に層間接続するための導通路23を形成する。なお、Cu粒子7同士が接触している面接触部20においては、面接触部20の周囲を被覆し、且つ面接触部20を跨ぐように第2金属領域18が形成されていることが好ましい。
【0041】
多層配線基板11の内部に内部応力が発生した場合、多層配線基板11の内部には矢印22aに示すように外向きに力が掛かる。このような内部応力は、例えば、半田リフロー時や熱衝撃試験の際に、各要素を構成する材料の熱膨張係数の違いによって発生する。
【0042】
このような外向きの力は、柔軟性の高いCu粒子7自身が変形したり、Cu粒子7同士が接触することにより形成された結合体17aが弾性変形したり、Cu粒子7同士の面接触位置が多少ずれたりすることにより緩和される。このとき、第2金属領域18の硬さは、Cu粒子7の硬さよりも硬いために、結合体17aの変形、特に面接触部20の変形に抵抗しようとする。従って、Cu粒子17間の面接触部20が変形に無制限に追従しようとした場合には、第2金属領域18がある程度の範囲で変形を規制するために、Cu粒子7間の面接触部20が離間するまで変形しない。これは、Cu粒子7同士が接触して形成された結合体17aをばねに喩えた場合、結合体17aにある程度の力が掛かった場合には、ある程度まではばねが伸びるがごとく変形に追従するが、さらに変形が大きくなりそうな場合には、硬い第2金属領域18により結合体17aの変形が規制される。このことは、多層配線基板11に、矢印22bに示すような内向きの力が掛かった場合にも同様の作用を奏する。このように、あたかもばね21のように、外力及び内力のいずれの方向の力に対して、結合体17aの変形が規制されることにより、電気的接続の信頼性を確保することができる。
【0043】
次に、上述したような多層配線基板11の製造方法の一例を説明するために、各製造工程について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0044】
本実施形態の製造方法においては、はじめに、図3(A)に示すように、樹脂シート25の両表面に保護フィルム26が貼り合わされる。樹脂シート25としては、耐熱性樹脂シートの両表面に未硬化樹脂層が積層された積層体からなる樹脂シート(以下、未硬化層含有耐熱性樹脂シートと呼ぶ)や、耐熱性熱可塑性樹脂シートや、未硬化状態または半硬化状態(B−ステージ)のプリプレグ等の、従来から配線基板の製造に用いられている絶縁材料が特に限定なく用いられうる。これらの中では、未硬化層含有耐熱性樹脂シートが薄肉の多層配線基板を得ることができる点から特に好ましい。具体的には、未硬化層含有耐熱性樹脂シートを用いた場合には、例えば、厚み15μm以下、さらには6μm以下のような厚みでも充分な絶縁性を有する絶縁樹脂層を形成することができる。本実施形態においては代表的に未硬化層含有耐熱性樹脂シートを用いた場合について詳しく説明する。
【0045】
未硬化層含有耐熱性樹脂シートは、耐熱性樹脂フィルムと耐熱性樹脂フィルムの少なくとも一面、好ましくは両表面に積層された未硬化樹脂層とを含む。未硬化樹脂層は金属箔及び形成された配線を接着する。
【0046】
耐熱性樹脂シートとしては、半田付けの温度に耐える樹脂シートであればとくに限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム等が挙げられる。これらの中では、ポリイミドフィルムがとくに好ましい。耐熱性樹脂シートの厚みとしては1〜100μm、さらには、3〜75μm、とくには7.5〜60μmであることが好ましい。
【0047】
未硬化樹脂層としては、エポキシ樹脂等からなる未硬化の接着層が挙げられる。また、未硬化樹脂層の片面あたりの厚みとしては、1〜30μm、さらには5〜10μmであることが、多層配線基板の薄肉化に寄与する点で好ましい。
【0048】
保護フィルムとしては、各種樹脂フィルムが用いられる。その具体例としては、例えば、PET(ポリエチレンフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムの厚みとしては0.5〜50μm、さらには、1〜30μmであることが好ましい。このような厚みの場合には、後述するように、保護フィルムの剥離により、充分な高さのビアペーストからなる突出部を表出させることができる。
【0049】
樹脂シート25に保護フィルム26を貼り合わせる方法としては、例えば、未硬化樹脂層の未硬化または半硬化状態の表面タック性を用いて、直接貼り合わせる方法が挙げられる。
【0050】
次に、図3(B)に示すように、保護フィルム26が配された樹脂シート25に保護フィルム26の外側から穿孔することにより、貫通孔27を形成する。穿孔には、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等の非接触による加工方法の他、ドリルを用いた穴あけ等各種方法が用いられる。貫通孔の直径としては10〜500μm、さらには50〜300μm程度が挙げられる。
【0051】
次に、図3(C)に示すように、貫通孔27の中にビアペースト28を満充填する。ビアペースト28は、Cu粒子と、SnとBiとを含有するSn−Bi系半田粒子と、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂成分を含有する。
【0052】
Cu粒子の平均粒径は、0.1〜20μm、さらには、1〜10μmの範囲であることが好ましい。Cu粒子の平均粒径が小さすぎる場合には、貫通孔27中に高充填しにくくなり、また、高価である傾向がある。一方、Cu粒子の平均粒径が大きすぎる場合には、径の小さいビアホール導体を形成しようとした場合に充填しにくくなる傾向がある。
【0053】
また、Cu粒子の粒子形状は、特に限定されない。具体的には、例えば、球状、扁平状、多角状、麟片状、フレーク状、あるいは表面に突起を有するような形状等が挙げられる。また、一次粒子でもよいし、二次粒子を形成していてもよい。
【0054】
Sn−Bi系半田粒子は、SnとBiとを含有する半田粒子であり、ペースト中のCu,Sn及びBiの重量比を前述した図7に示すような三元図において、A,B,C,Dを頂点とする四角形で囲まれるような領域に調整することができるような組成を有する半田粒子であれば特に限定なく用いられうる。また、インジウム(In)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)等を添加することにより、濡れ性、流動性等を改善させられた物であってもよい。このようなSn−Bi系半田粒子中のBiの含有割合としては10〜58%、さらには20〜58%であることが好ましい。また、融点(共晶点)としては75℃〜160℃、さらには135〜150℃の範囲のものを用いることが好ましい。なお、Sn−Bi系半田粒子としては、組成の異なる種類の粒子を2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中では、共晶点が138℃と低い、環境問題に考慮した鉛フリー半田である、Sn−58Bi系半田等が特に好ましい。
【0055】
Sn−Bi系半田粒子の平均粒径は0.1〜20μm、さらには、2〜15μmの範囲であることが好ましい。Sn−Bi系半田粒子の平均粒径が小さすぎる場合には、比表面積が大きくなり表面の酸化皮膜割合が大きくなり溶融しにくくなる傾向がある。一方、Sn−Bi系半田粒子の平均粒径が大きすぎる場合には、ビアホールヘの充填性が低下する傾向がある。
【0056】
好ましい硬化性樹脂成分であるエポキシ樹脂の具体例としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、またはその他変性エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0057】
また、エポキシ樹脂と組み合わせて硬化剤を配合してもよい。硬化剤の種類はとくに限定されないが、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を持つアミン化合物を含有する硬化剤を用いることが特に好ましい。このような硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化触媒として作用するとともに、Cu粒子、及びSn−Bi系半田粒子の表面に存在する酸化皮膜を還元することにより、接合時の接触抵抗を低減させる作用も有する点から好ましい。これらの中でも、とくにSn−Bi系半田粒子の融点よりも高い沸点を有するアミン化合物は、接合時の接触抵抗を低減させる作用がとくに高い点から好ましい。
【0058】
このようなアミン化合物の具体例としては、例えば、2-メチルアミノエタノール(沸点160℃)、N,N-ジエチルエタノールアミン(沸点162℃)、N,N-ジブチルエタノールアミン(沸点229℃)、N-メチルエタノールアミン(沸点160℃)、N-メチルジエタノールアミン(沸点247℃)、N-エチルエタノールアミン(沸点169℃)、N-ブチルエタノールアミン(沸点195℃)、ジイソプロパノールアミン(沸点249℃)、N,N-ジエチルイソプロパノールアミン(沸点125.8℃)、2,2'-ジメチルアミノエタノール(沸点135℃)、トリエタノールアミン等(沸点208℃)が挙げられる。
【0059】
ビアペーストは、Cu粒子と、SnとBiとを含有するSn−Bi系半田粒子と、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂成分とを混合することにより調製される。具体的には、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤と所定量の有機溶媒を含有する樹脂ワニスに、Cu粒子及びSn−Bi系半田粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混合することにより調製される。
【0060】
硬化性樹脂成分の、Cu粒子及びSn−Bi系半田粒子を含む金属成分との合計量に対する配合割合としては、0.3〜30質量%、さらには3〜20質量%の範囲であることが低い抵抗値を得るとともに、充分な加工性を確保する点から好ましい。
【0061】
また、ビアペースト中のCu粒子とSn−Bi系半田粒子との配合割合としては、ペースト中のCu,Sn及びBiの重量比を、図7に示すような三元図において、A,B,C,Dを頂点とする四角形で囲まれるような領域の範囲になるように含有させることが好ましい。例えば、Sn−Bi系半田粒子としてSn−58Bi系半田粒子を用いた場合には、Cu粒子及びSn−58Bi系半田粒子の合計量に対するCu粒子の含有割合は、22〜80質量%、さらには、40〜80質量%であることが好ましい。
【0062】
ビアペーストの充填方法はとくに限定されない。具体的には、例えば、スクリーン印刷などの方法が用いられる。なお、本実施形態の製造方法においては、貫通孔にビアペーストを充填する場合においては、充填工程の後に、保護フィルム26を剥離したときに、ビアペースト28の一部が樹脂シート25に形成された貫通孔27から突出して突出部が表出するように、樹脂シート25に形成された貫通孔27からはみ出す量を充填する必要がある。
【0063】
次に、図3(D)に示すように、樹脂シート25の表面から保護フィルム26を剥離することにより、ビアペースト28の一部を貫通孔27から突出部29として突出させる。突出部29の高さhは、保護フィルムの厚みにもよるが、例えば、0.5〜50μm、さらには、1〜30μmであることが好ましい。突出部29の高さが高すぎる場合には、後述する圧着工程において樹脂シート25の表面の貫通孔27の周囲にペーストが溢れて表面平滑性を失わせる可能性があるために好ましくなく、低すぎる場合には、後述する圧着工程において充填されたビアペーストに圧力が充分に伝わらなくなる傾向がある。
【0064】
次に、図4(A)に示すように、樹脂シート25の上に銅箔30を配置し、矢印で示す方向にプレスする。それにより、図4(B)に示すように樹脂シート25と銅箔30とを一体化させることにより、絶縁樹脂層13が形成される。この場合においては、プレスの当初に、銅箔30を介して突出部29に力が掛かるために貫通孔27に充填されたビアペースト28が高い圧力で圧縮される。それにより、ビアペースト28中に含まれる複数のCu粒子7同士の間隔が狭められ、Cu粒子7同士が圧縮されて互いに変形し、面接触する。
【0065】
プレス条件はとくに限定されないが、常温(20℃)からSn−Bi系半田粒子の融点未満の温度に金型温度が設定された条件が好ましい。また、本プレス工程において、未硬化樹脂層の硬化を進行させるために、硬化を進行させるのに必要な温度に加熱した加熱プレスを用いてもよい。
【0066】
ここで、突出部29を有するビアペースト28を圧縮するときの様子について、図6を用いて詳しく説明する。
【0067】
図6は、ビアペースト28が充填された樹脂シート25の貫通孔27周辺の模式断面図である。また、図6(A)は圧縮前、図6(B)は圧縮後を示している。
【0068】
図6(A)に示すように、樹脂シート25に形成された貫通孔27から突出した突出部29を銅箔30を介して押圧することにより、図6(B)のように貫通孔27に充填されたビアペースト28が圧縮される。なお、このとき、硬化性樹脂成分32の一部は貫通孔27から外に押し出されることもある。そして、その結果、貫通孔27に充填されたCu粒子7及びSn−Bi系半田粒子31の密度が高くなり、Cu粒子7同士が面接触した結合体17aが形成される。
【0069】
なお金属箔を樹脂シートに圧着し、金属箔を介してビアペーストの突出部に所定圧力を掛けることにより、ビアペーストを加圧し圧縮することが望ましい。こうすることで銅粒子同士を面接触させ、銅粒子の結合体を含む第1金属領域を形成する。なお銅粒子を面接触させるには、銅粒子同士が互いに塑性変形するまで、加圧圧縮することが望ましい。またこの圧着工程において、必要に応じて加熱する(あるいは加熱を開始する)ことは有効である。これは圧着工程に続き加熱工程を行うことが有用なためである。
【0070】
更にこの圧着状態を維持した状態で、所定の温度で加熱し、Sn−Bi系半田粒子の一部を溶融させることが有用である。この圧着状態を維持した状態で、加熱し、半田粒子を溶解させることで、銅粒子同士の面接触部分への、溶解した半田等や樹脂等の侵入を防止できる。そのため、圧着工程の一部に、加熱工程を設けることは有用である。また圧着工程の中で、加熱を開始することで、圧着工程や加熱工程のトータル時間を短縮することができ、生産性を高められる。
【0071】
また圧縮を維持した状態のままで、この圧縮されたビアペーストを加熱してSn−Bi系半田粒子の共晶温度以上共晶温度+10℃以下の温度の範囲でSn−Bi系半田粒子の一部分を溶融させ、引き続き、さらに共晶温度+20℃の温度以上300℃以下の温度の範囲に加熱することにより、前記銅粒子の結合体の面接触部を除く表面に錫,錫−銅合金または錫と銅の金属間化合物のいずれか一つ以上を主成分とする第2金属領域を形成することが望ましい。更にこれらを連続した圧着や加熱を伴う1の工程とすることは有用である。連続した1の工程で、これら各金属領域の形成反応を安定化でき、ビア自体の構造を安定化できる。
【0072】
圧縮によって結合体17aを形成し、さらにビアペースト28をSn−Bi系半田粒子31の共晶温度以上の温度にまで徐々に加熱していく。この加熱によりSn−Bi系半田粒子31の一部がその温度において溶融する組成割合で溶融する。そして、Cu粒子7や結合体17aの表面や周囲に錫、錫-銅合金及び/または錫-銅金属間化合物を主成分とする第2金属領域18が形成される。この場合において、Cu粒子7同士が面接触している面接触部20は、第2金属領域18に跨がれるようにして覆われることが好ましい。Cu粒子7と溶融したSn−Bi系半田粒子31とが接触することにより、Sn−Bi系半田粒子31中のSnとCu粒子7中のCuとが反応して、Cu6Sn5やCu3Snを含むSn−Cuの化合物層(金属間化合物)や錫-銅合金を主成分とする第2金属領域18が形成される。一方、Sn−Bi系半田粒子31は内部のSn相からSnを補われながら溶融状態を維持し続け、さらに残されたBiが析出することにより、Biを主成分とする第3金属領域19が形成される。結果として図1(B)に示すような構造を有するビアホール導体14が得られる。
【0073】
さらに詳しくは、上述のように高密度化されたCu粒子7同士は圧縮により互いに接触する。圧縮においては、はじめはCu粒子7同士は互いに点接触し、その後、圧力が増加するにつれて押し潰されて、互いに変形し面接触して面接触部を形成する。このように、多数のCu粒子7同士が面接触することにより、上層の配線と下層の配線とを低抵抗な状態で電気的に接続するための結合体17aが形成される。また、面接触部がSn−Bi系半田粒子31で覆われないために、Cu粒子17同士を直接、接触させた結合体17aを形成することができる。その結果、形成される導通路の電気抵抗を小さくすることができる。そしてこの状態で加熱して、Sn−Bi系半田粒子31の共晶温度以上に達するとSn−Bi系半田粒子31が部分的に溶融しはじめる。溶融する半田の組成は温度で決まり、加熱時の温度で溶融しにくいSnはSn固相体として残留する。また、溶融した半田にCu粒子7が接触してその表面が溶融したSn−Bi系半田で濡れたとき、その濡れた部分の界面でCuとSnの相互拡散が進んでSn−Cuの化合物層等が形成される。このようにしてCu粒子7の面接触部を除く表面に接触するように第2金属領域18が生成する。第2金属領域18の一部は面接触部を跨ぐように形成される。このような第2金属領域18の一部が面接触部を跨ぐように被覆した場合には、面接触部は補強され弾性に優れた導通路となる。そして、Sn−Cuの化合物層等の形成や、相互拡散がさらに進行することにより、溶融した半田中のSnは減少する。溶融した半田中の減少したSnはSn固体層から補填されるために溶融状態は維持し続けられる。さらにSnが減少し、SnとBiの比率がSn−57BiよりもBiが多くなるとBiが偏析しはじめ、ビスマスを主成分とする固相体として第2金属領域が析出して形成される。
【0074】
なお、よく知られている比較的低温域で溶融する半田材料としては、Sn−Pb系半田、Sn−In系半田、Sn−Bi系半田などがある。これらの材料のうち、Inは高価であり、Pbは環境負荷が高いとされている。一方、Sn−Bi系半田の融点は、電子部品を表面実装する際の一般的な半田リフロー温度よりも低い140℃以下である。従って、Sn−Bi系半田のみを回路基板のビアホール導体として単体で用いた場合には、半田リフロー時にビアホール導体の半田が再溶融することによりビア抵抗が変動してしまうおそれがある。一方、本実施形態のビアペースト中の金属組成は、Cu,Sn及びBiの重量組成比(Cu:Sn:Bi)が三元図において、A(0.57:0.39:0.04),B(0.38:0.26:0.36),C(0.79:0.09:0.12),D(0.89:0.10:0.01)を頂点とする四角形で囲まれる領域である。このような金属組成のビアペーストを用いた場合には、Sn−Bi系半田粒子の組成が共晶のSn−Bi系半田組成(Bi57%以下、Sn43%以上)よりもSn組成が多くなる、このようなビアペーストを用いることにより、Sn−Bi系半田粒子の共晶温度+10℃以下の温度の範囲で半田組成中の一部が溶融する一方、溶融しないSnが残留するが、Cu粒子表面へ拡散・反応することによりSn−Bi系半田粒子からSn濃度が減少することで、残留したSnが溶融する。一方で、加熱し続けて温度が上昇することによってもSnは溶融し、半田組成中の溶融しきれなかったSnはなくなり、さらに加熱を続けることによりCu粒子表面との反応が進むことにより、ビスマスを主成分とする固相体として第2金属領域が析出して形成される。そして、このように第2金属領域を析出させて存在させることにより、半田リフローに供してもビアホール導体の半田が再溶融しにくくなる。さらにSn組成の多いSn−Bi組成の半田粉を用いることによって、ビア中に残るBi相を少なくすることができるため、抵抗値の安定化を図ることができるとともに、半田リフロー後でも、抵抗値の変動が起こりにくくすることができる。
【0075】
圧縮後のビアペースト28を加熱する温度は、Sn−Bi系半田粒子31の共晶温度以上の温度であり、樹脂シート25の構成成分を分解しないような温度範囲であればとくに限定されない。具体的には、例えば、Sn−Bi系半田粒子として共晶温度139℃のSn−58Bi半田粒子を用いる場合には、はじめに139〜149℃の範囲に加熱することによりSn−58Bi半田粒子の一部分を溶融させたあと、さらに159〜230℃程度の温度範囲に徐々に加熱することが好ましい。なお、このときに温度を適切に選択することにより、ビアペースト28中に含まれる硬化性樹脂成分を硬化させることができる。
【0076】
このようにして、上層の配線12aと下層の配線12bとを層間接続するためのビアホール導体14が形成される。
【0077】
次に、図4(C)に示すように、配線12を形成する。配線12は、表層に貼り合わされた銅箔30の表面にフォトレジスト膜を形成し、フォトマスクを介して選択的露光することによりパターニングした後、現像を行い、エッチングにより配線部以外の銅箔を選択的に除去した後、フォトレジスト膜を除去すること等により形成されうる。フォトレジスト膜の形成には、液状のレジストを用いてもドライフィルムを用いてもよい。
【0078】
このような工程により、上層の配線12aと下層の配線12bとをビアホール導体14を介して層間接続した両面に回路形成された配線基板41が得られる。このような配線基板41をさらに、多層化することにより図1(A)に示すような複数層の回路が層間接続された多層配線基板11が得られる。配線基板41の多層化の方法について図5を参照して説明する。
【0079】
はじめに、図5(A)に示すように、上述のようにして得られた配線基板41の両表面に、図4(D)で得られたのと同様のビアペースト28からなる突出部29を有する樹脂シート25を配置する。さらに、各樹脂シート25の外表面それぞれに銅箔30を配置して重ね合わせ体を形成させる。そして、この重ね合わせ体をプレス金型に挟み込み、上述したような条件でプレス及び加熱することにより、図5(B)に示すような積層体が得られる。そして、上述したようなフォトプロセスを用いることにより新たな配線42が形成される。このような多層化プロセスをさらに繰り返すことにより多層配線基板11が得られる。
【実施例】
【0080】
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は本実施例の内容により何ら限定して解釈されるものではない。
[実施例1〜12及び比較例]
【0081】
はじめに、本実施例で用いた原材料を以下にまとめて説明する。
・Cu粒子:平均粒子径5μmの三井金属(株)製1100Y
・Sn−Bi系半田粒子:組成別に表1に示す半田組成になるように配合して溶融させたものをアトマイズ法にて粉状化し、平均粒子径5μmに分球したものを使用した。
・エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン(株)製jeR871
・硬化剤:2-メチルアミノエタノール、沸点160℃、日本乳化剤(株)製
・樹脂シート:縦500mm×横500mm、厚75μmのポリイミドフィルムの両表面に厚み12.5μmの未硬化エポキシ樹脂層を積層したもの
・保護フィルム:厚み25μmのPET製シート
・銅箔(厚み25μm)
【0082】
(ビアペーストの調整)
表1に記載した配合割合のCu粒子及びSn−Bi系半田粒子の金属成分とエポキシ樹脂及び硬化剤の樹脂成分とを配合し、プラネタリーミキサーで混合することにより、ビアペーストを調製した。なお、樹脂成分の配合割合は、銅粉及びSn−Bi系半田粒子の合計100重量部に対して、エポキシ樹脂10重量部、硬化剤2重量部とした。
【0083】
(多層配線基板の製造)
樹脂シートの両表面に保護フィルムを貼り合わせた。そして、保護フィルムを貼り合わせた樹脂シートの外側からレーザーにより直径150μmの孔を100個以上穿孔した。
次に、調製されたビアペーストを貫通孔に満充填した。そして、両表面の保護フィルムを剥離することにより、貫通孔からビアペーストの一部が突出して形成された突出部を表出させた。
次に、樹脂シートの両表面に、突出部を覆うようにして銅箔を配置した。そして、加熱プレスの一対の金型の下型の上に離形紙を介して、銅箔が配置された樹脂シートとの積層体を載置し、常温25度から最高温度220℃まで60分で昇温して220℃を60分間キープしたのち、60分間かけて常温まで冷却した。なお、プレス圧は3MPaであった。このようにして多層配線基板を得た。
【0084】
(評価)
〈抵抗値試験〉
得られた多層配線基板に形成された100個のビアホール導体の抵抗値を4端子法により測定して求めた。そして、100個の初期抵抗値と最大抵抗値を求めた。なお、初期抵抗値としては2mΩ以下のものをA、2mΩを超えていたものをBと判断した。また、最大抵抗値としては3mΩ未満の場合をA、3mΩより大きい場合をBと判定した。
〈接続信頼性〉
初期抵抗値を測定した多層配線基板の500サイクルのヒートサイクル試験を行い、初期抵抗値に対する変化率が10%以下のものをA、10%を超えたものをBと判断した。
【0085】
結果を表1に示す。また、表1に示した実施例及び比較例の各組成の三元図を図7に示す。なお、図7の三元図において、「丸」が実施例の組成、「塗四角」が本発明に係る金属組成よりもSn量に対するBi量が少ない比較例1の組成、「三角」が本発明に係る金属組成よりもSn量に対するBi量が多い比較例7の組成、「四角」が本発明に係る金属組成よりもCu量に対するSn量が多い比較例2,4,6,9の組成、「塗三角」が本発明に係る金属組成よりもCu量に対するSn量が少ない比較例3,5,8の組成、である。
【0086】
【表1】

【0087】
図7から、初期抵抗、最大抵抗値、及び接続信頼性の全ての判定についてA評価を得られる実施例の組成は三元図中の重量比率(Cu:Sn:Bi)が、A(0.57:0.39:0.04),B(0.38:0.26:0.36),C(0.79:0.09:0.12),D(0.89:0.10:0.01)を頂点とする四角形で囲まれる領域の範囲であることがわかる。
【0088】
また、図7の「三角」でプロットしたSn量に対するBi量が多い組成の領域の比較例7では、ビア中に析出するビスマス量が多くなる。Biの導体抵抗は78μΩ・cmであり、Cu(1.69μΩ・cm)、Sn(12.8μΩ・cm)や、CuとSnの化合物(Cu3Sn:17.5μΩ・cm、Cu6Sn5:8.9μΩ・cm)に比べて著しく大きい。そのためSn量に対するBi量が多い場合には抵抗値を充分に下げることができないとともに、ビスマスの点在状態により抵抗値が変わるために接続信頼性が低下する。
【0089】
また、図7の「四角」でプロットしたCu量に対するSn量が多い組成の領域の比較例2,4,6,9の領域では圧縮による銅粒子の面接触部の形成が不充分であったり、相互拡散後に銅粒子同士の接触部にSn−Cuの化合物層が形成されてしまうために、初期抵抗値及び最大抵抗値が高くなっている。
【0090】
また、図7の「塗四角」でプロットしたSn量に対するBi量が少ない組成の領域の比較例1の組成では、Bi量が少ないことによりSn−Bi系半田粒子の共晶温度である140℃付近で溶融する半田の量が少なくなるために、銅粒子同士の面接触部を補強するSn−Cuの化合物層が充分に形成されなくなり、接続信頼性が低下する。すなわち、Sn−5Bi半田粒子を用いた比較例1の場合には、銅粒子同士の面接触部は形成されてために初期抵抗値及び最大抵抗値は高かったが、Bi量が少なかったために半田粒子が溶融しにくくなって、面接触部を補強するSn−Cuの化合物層を形成するCuとSnとの反応が充分に進行しなかったと考えられる。
【0091】
また、図7の「塗三角」でプロットしたCu量に対するSn量が少ない組成の領域の比較例3,5,8では、銅粒子に対するSn量が少ないために、銅粒子同士の面接触部を補強するために形成されるSn−Cuの化合物層が少なくなるために接続信頼性が低下する。
【0092】
ここで、代表的に、実施例10に係るペースト(Cu粒子:Sn-58Bi半田の重量比率が60:40)を用いて得られた多層配線基板のビアホール導体の断面の電子顕微鏡(SEM)写真及び、そのトレース図を図8〜図9に示す。なお、図8は3000倍、図9は6000倍であり、それぞれSEM写真(A)及びそのトレース図(B)を示している。
【0093】
図8及び図9から、得られたビアホール導体は、多数のCu粒子7が高充填され、互いに面接触して面接触部20を形成していることがわかる。これにより、抵抗値の低い導通路が形成されることがわかる。また、Cu粒子7同士が面接触して形成された結合体17aの表面に、面接触部20を跨ぐように、錫(Sn)や錫-銅金属間化合物や錫-銅合金を主成分とする第2金属領域18が形成されていることがわかる。また、抵抗値の高いBiを主成分とする第3金属領域19は、実質的にCu粒子と接触していないことがわかる。この第3金属領域は、SnがCu粒子7の表面のCuと合金(例えば金属間化合物)を形成することにより、高濃度のBiが析出したと思われる。
[実施例13〜15]
【0094】
実施例13〜15においてはさらに硬化剤の種類による影響について検討した。具体的には、Sn−Bi系半田粒子としてSn−58Bi粒子を用いて、実施例1〜10と同様にして多層配線基板を製造し、評価した。なお、「接続信頼性」の試験においては、ランク分けをさらに細かくした。具体的には、初期抵抗値に対する変化率が1%以上5%未満のものをS、5%以上10%未満のものA、10%を超えたものをBと判定した。結果を表2に示す。また、Cu:Sn:Biの重量組成比は0.56:0.1848:0.2552であった。
【0095】
【表2】

【0096】
表2の結果から、Sn−58Bi半田の共晶温度である139℃以上の沸点を有する硬化剤を用いた実施例11及び実施例12の多層配線基板は接続信頼性試験における初期抵抗値に対する変化率が極めて低く、接続信頼性に優れているものであった。硬化剤の沸点がSn−Bi系半田の共晶温度よりも高い場合は、Sn−Bi系半田の表面にある酸化層の還元が抑制され、溶融する前に硬化剤の揮発が起こらないために第2金属領域が充分に形成されるため、信頼性がより向上すると思われる。なお硬化剤の沸点は、300℃以下が望ましい。300℃よりも高い場合、硬化剤が特殊となり、その反応性に影響する場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、携帯電話等に使われる多層配線基板の更なる低コスト化、小型化、高機能化、高信頼性化が実現できる。またビアペースト側からも、ビアの小径化ビアペーストの反応物の形成に最適なものを提案することで、多層配線基板の小型化、高信頼性化に貢献する。
【符号の説明】
【0098】
1,12,42 配線
2,14 ビアホール導体
5 ボイドまたはクラック
7 Cu粒子
11 多層配線基板
13 絶縁樹脂層
15 金属部分
16 樹脂部分
17 第1金属領域
17a Cu粒子の結合体
18 第2金属領域
19 第3金属領域
20 面接触部
21 仮想のばね
23 導通路
25 樹脂シート
26 保護フィルム
27 貫通孔
28 ビアペースト
29 突出部
30 銅箔
31 Sn−Bi系半田粒子
32 硬化性樹脂成分
41 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層を介して配設された複数の配線と、前記絶縁樹脂層を貫通するように設けられた前記複数の配線同士を電気的に接続するビアホール導体と、を有する多層配線基板であって、
前記ビアホール導体は、金属部分と樹脂部分とを有し、
前記金属部分は、銅(Cu)と錫(Sn)とビスマス(Bi)とを含み、複数の銅粒子が互いに面接触して前記複数の配線同士を電気的に接続する前記銅粒子の結合体を含む第1金属領域と、錫,錫−銅合金または錫と銅の金属間化合物のいずれか一つ以上を主成分とする第2金属領域と、ビスマスを主成分とする第3金属領域とを含み、
前記第2金属領域の少なくとも一部が前記銅粒子の結合体の面接触部を除く表面に接触しており、
前記金属部分中のCu,Sn及びBiの重量組成比(Cu:Sn:Bi)が、三元図において、A(0.57:0.39:0.04),B(0.38:0.26:0.36),C(0.79:0.09:0.12),D(0.89:0.10:0.01)を頂点とする四角形で囲まれる領域にあることを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記第3金属領域が、前記銅粒子の表面に接触していない請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記ビアホール導体中の前記銅粒子の重量割合が20〜90%の範囲である請求項1または2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記樹脂部分はエポキシ樹脂硬化物を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の多層配線基板。
【請求項5】
保護フィルムで被覆された樹脂シートに、前記保護フィルムの外側から穿孔することにより貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔にビアペーストを充填する充填工程と、
前記充填工程の後、保護フィルムを剥離することにより、前記貫通孔から前記ビアペー
ストの一部が突出した突出部を表出させる突出部形成工程と、
前記突出部を覆うように、前記樹脂シートの表面に金属箔を配置する配置工程と、
前記金属箔を前記樹脂シートの表面に圧着する圧着工程と、
前記圧着工程における圧着状態を維持したまま、所定の温度で加熱する加熱工程と、を備え、
前記ビアペーストが銅粒子とSn−Bi系半田粒子と熱硬化性樹脂とを含み、Cu,Sn及びBiの重量組成比(Cu:Sn:Bi)が三元図において、A(0.57:0.39:0.04),B(0.38:0.26:0.36),C(0.79:0.09:0.12),D(0.89:0.10:0.01)を頂点とする四角形で囲まれる領域であり、
前記圧着工程において、前記金属箔を介して前記突出部を通じて前記ビアペーストを加圧し圧縮することにより、前記銅粒子同士を面接触させることにより前記銅粒子の結合体を含む第1金属領域を形成し、
前記加熱工程において、圧縮された前記ビアペーストを加熱して前記Sn−Bi系半田粒子の共晶温度以上で共晶温度+10℃以下の温度の範囲で前記Sn−Bi系半田粒子の一部分を溶融させた後、さらに前記共晶温度+20℃の温度以上300℃以下の温度の範囲に加熱することにより、前記銅粒子の結合体の面接触部を除く表面に錫,錫−銅合金または錫と銅の金属間化合物のいずれか一つ以上を主成分とする第2金属領域を形成するとともに、ビスマスを主成分とする第3金属領域を形成させることを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂シートが、耐熱性樹脂フィルムと前記耐熱性樹脂フィルムの少なくとも一面に形成された硬化性接着層を有するシートである請求項5に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記硬化性接着剤層がエポキシ樹脂を含む請求項6に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む請求項5〜7の何れか1項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂は、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を有するアミン系化合物である硬化剤を含有する請求項8に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記アミン系化合物の沸点が、前記Sn−Bi系半田粒子の共晶温度以上であり、且つ、300℃以下の範囲である請求項9に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項11】
多層配線基板にビアホール導体を形成するために用いられるビアペーストであって、
前記多層配線基板は、少なくとも1つの絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層を介して配設された複数の配線と、前記絶縁樹脂層を貫通するように設けられた前記複数の配線同士を電気的に接続するビアホール導体とを有し、
前記ビアホール導体は、金属部分と樹脂部分とを有し、
前記金属部分は、銅(Cu)と錫(Sn)とビスマス(Bi)とを含み、複数の銅粒子が互いに面接触して前記複数の配線同士を電気的に接続する前記銅粒子の結合体を含む第1金属領域と、錫,錫−銅合金または錫と銅の金属間化合物のいずれか一つ以上を主成分とする第2金属領域と、ビスマスを主成分とする第3金属領域とを含み、
前記第2金属領域の少なくとも一部が前記銅粒子の結合体の面接触部を除く表面に接触しており、
前記ビアペーストが銅粒子とSn−Bi系半田粒子と熱硬化性樹脂とを含み、Cu,Sn及びBiの重量比(Cu:Sn:Bi)が三元図において、A(0.57:0.39:0.04),B(0.38:0.26:0.36),C(0.79:0.09:0.12),D(0.89:0.10:0.01)を頂点とする四角形で囲まれる領域であることを特徴とするビアペースト。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項11に記載のビアペースト。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂は、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を有するアミン系化合物である硬化剤を含有する請求項12に記載のビアペースト。
【請求項14】
前記アミン系化合物の沸点が、前記Sn−Bi系半田粒子の共晶温度以上であり、且つ、300℃以下の範囲である請求項13に記載のビアペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−134313(P2012−134313A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284831(P2010−284831)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【特許番号】特許第4859999号(P4859999)
【特許公報発行日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(397059571)京都エレックス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】