多層配線基板の製造方法、多層配線基板及びプローブカード
【課題】優れた信頼性を有する多層配線基板を製造し得る方法及び優れた信頼性を有する多層配線基板を提供する。
【解決手段】配線14を構成するためのビア導体15が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数積層し、積層体を作製する。積層体を作製する際に、積層方向xにおいて隣り合うセラミックグリーンシートの間に、隣り合うビア導体15間に位置するように絶縁材20を配する。積層体を積層方向xにプレスする。プレスされた積層体を焼成することにより多層配線基板1を得る。
【解決手段】配線14を構成するためのビア導体15が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数積層し、積層体を作製する。積層体を作製する際に、積層方向xにおいて隣り合うセラミックグリーンシートの間に、隣り合うビア導体15間に位置するように絶縁材20を配する。積層体を積層方向xにプレスする。プレスされた積層体を焼成することにより多層配線基板1を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板の製造方法、多層配線基板及びそれを備えるプローブカードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主面上にICなどが搭載される多層配線基板が広く用いられている。例えば特許文献1には、複数のビア導体が配されたセラミック層が複数積層されてなる多層配線基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−164577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような、複数のビア導体が配された複数のセラミック層の積層体を有する多層配線基板は、製造時にクラックが生じやすい。従って、優れた信頼性を実現するのが困難である。
【0005】
本発明は、優れた信頼性を有する多層配線基板を製造し得る方法及び優れた信頼性を有する多層配線基板を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の多層配線基板の製造方法は、第1及び第2の主面を有する基板本体と、基板本体内において、第1の主面から第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板の製造方法に関する。本発明に係る第1の多層配線基板の製造方法では、配線を構成するためのビア導体が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数積層し、積層体を作製する。積層体を作製する際に、積層方向において隣り合うセラミックグリーンシートの間に、隣り合うビア導体間に位置するように絶縁材を配する。積層体を積層方向にプレスする。プレスされた積層体を焼成することにより多層配線基板を得る。
【0007】
本発明に係る第1の多層配線基板の製造方法のある特定の局面では、隣り合う配線間の距離が、第1の主面側から第2の主面側に向かって広がるように複数のビア導体を設ける。積層体の第1の主面側の最表層を構成するセラミックグリーンシートと、当該セラミックグリーンシートに隣り合うセラミックグリーンシートとの間には、絶縁材を配さない。
【0008】
本発明に係る第2の多層配線基板の製造方法は、第1及び第2の主面を有する基板本体と、基板本体内において、第1の主面から第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板の製造方法に関する。本発明に係る第2の多層配線基板の製造方法では、配線を構成するためのビア導体が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数積層し、積層体を作製する。積層体を作製するに際し、複数のセラミックグリーンシートの少なくともひとつとして、隣り合うビア導体間の部分に絶縁材が埋設されたセラミックグリーンシートを用いる。積層体を焼成することにより多層配線基板を得る。
【0009】
本発明に係る第2の多層配線基板の製造方法のある特定の局面では、隣り合う配線間の距離が、第1の主面側から第2の主面側に向かって広がるように複数のビア導体を設ける。積層体の第1の主面側の最表層を構成するセラミックグリーンシートには、絶縁材を埋設しない。
【0010】
本発明に係る第1及び第2の多層配線基板の製造方法のそれぞれのある特定の局面では、複数の配線は、基板本体内において、第1の主面から第2の主面にまで至るように設けられている。
【0011】
本発明に係る第1及び第2の多層配線基板の製造方法のそれぞれの他の特定の局面では、絶縁材として、セラミックグリーンシートとセラミック主成分が同じであるセラミック材を用いる。
【0012】
本発明に係る第1及び第2の多層配線基板の製造方法のそれぞれの別の特定の局面では、絶縁材として、セラミックグリーンシートよりも高い緻密度を有する部材を用いる。
【0013】
本発明に係る第1及び第2の多層配線基板の製造方法のそれぞれのさらに他の特定の局面では、平面視において、絶縁材を、ビア導体を包囲するように設ける。
【0014】
本発明に係る第1及び第2の多層配線基板の製造方法のそれぞれのさらに他の特定の局面では、一のセラミックグリーンシートに複数の絶縁材を配する。平面視において、外側に位置する絶縁材を中央側に位置する絶縁材よりも大きくする。
【0015】
本発明に係る多層配線基板は、基板本体と、複数の配線とを備えている。基板本体は、第1及び第2の主面を有する。複数の配線は、基板本体内において、第1の主面から第2の主面側に向かって設けられている。基板本体は、積層された複数の絶縁体層を有する。絶縁体層は、セラミック材料からなる。配線は、ビア導体を含む。ビア導体は、複数の絶縁体層に設けられている。本発明に係る多層配線基板は、絶縁材をさらに備えている。絶縁材は、複数の絶縁体層の少なくともひとつに配されている。絶縁材は、隣り合うビア導体間に位置している。
【0016】
本発明に係る多層配線基板のある特定の局面では、第1の主面を構成している絶縁体層内には、絶縁材が配されていない。
【0017】
本発明に係る多層配線基板の他の特定の局面では、絶縁材のセラミック主成分と、絶縁体層のセラミック主成分とが同じである。
【0018】
本発明に係る多層配線基板の別の特定の局面では、絶縁材は、絶縁体層よりも高い緻密度を有する。
【0019】
本発明に係る多層配線基板のさらに他の特定の局面では、絶縁材は、ビア導体を包囲している。
【0020】
本発明に係る多層配線基板のさらに別の特定の局面では、一の絶縁体層に絶縁材が複数配されている。平面視において、外側に位置する絶縁材が中央側に位置する絶縁材よりも大きい。
【0021】
本発明に係る多層配線基板のまたさらに他の特定の局面では、ビア導体は、側面の外側部分のテーパ角が中央側部分のテーパ角よりも大きくなるように設けられている。
【0022】
本発明に係る多層配線基板のまたさらに別の特定の局面では、隣り合う配線間の距離は、第1の主面側から第2の主面側に向かって広がっている。
【0023】
本発明に係る多層配線基板のさらにまた他の特定の局面では、各配線は、複数のビア導体が直接電気的に接続されることにより構成されている。
【0024】
本発明に係る多層配線基板のさらにまた別の特定の局面では、複数の配線は、基板本体内において、第1の主面から第2の主面にまで至るように設けられている。
【0025】
本発明に係るプローブカードは、本発明に係る多層配線基板を備えている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、優れた信頼性を有する多層配線基板を製造し得る方法及び優れた信頼性を有する多層配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。
【図2】第1の実施形態におけるプローブカードの略図的断面図である。
【図3】図1の線III−III部分の略図的断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【図5】第3の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【図6】第4の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。
【図7】図6の切断線VII−VIIにおける略図的断面図である。
【図8】図7のセラミックグリーンシートを積層方向にプレスして焼成前の多層配線基板の図6の切断線VII−VIIにおける略図的断面図である。
【図9】第5の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。
【図10】第6の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。
【図11】第7の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【図12】第8の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【図13】第9の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【図14】第10の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。
【図15】第11の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。
【図16】第12の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0029】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0030】
(第1の実施形態)
(多層配線基板1の構成)
図1は、第1の実施形態に係る多層配線基板1の略図的断面図である。図2は、第1の実施形態におけるプローブカードの略図的断面図である。図3は、図1の線III−III部分の略図的断面図である。
【0031】
多層配線基板1は、実装面1aと、裏面1bとを有する。多層配線基板1は、例えば、実装面1aにICチップなどの電子部品10が実装されて使用される。また、図2に示されるように、多層配線基板1は、例えば、実装面1aに端子部11が取り付けられ、プローブカード2として使用されることもある。
【0032】
多層配線基板1は、基板本体12を有する。基板本体12は、第1及び第2の主面12a、12bを有する。基板本体12の第1の主面12aは、実装面1aを構成している。基板本体12の第2の主面12bは、裏面1bを構成している。
【0033】
基板本体12は、絶縁性を有する。基板本体12は、積層された複数の絶縁体層13を有する。絶縁体層13の構成材料は、絶縁性を有するセラミック材料である限りにおいて特に限定されない。
【0034】
絶縁体層13の構成材料として好ましく用いられるセラミック材料の具体例としては、例えば、低温焼結セラミック(LTCC:Low Temperature Co−fired Ceramic)材料や高温焼結セラミック(HTCC:High Temperature Co−fired Ceramic)材料等が挙げられる。ここで、低温焼結セラミック材料とは、1050℃以下の温度で焼結可能であって、比抵抗の小さなAu、AgやCu等と同時焼成が可能なセラミック材料である。
【0035】
低温焼結セラミック材料の具体例としては、例えば、アルミナやジルコニア、マグネシア、フォルステライトなどのセラミック粉末にホウ珪酸系ガラスを混合してなるガラス複合系LTCC材料、ZnO−MgO−Al2O3−SiO2系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラス系LTCC材料、BaO−Al2O3−SiO2系セラミック粉末やAl2O3−CaO−SiO2−MgO−B2O3系セラミック粉末などを用いた非ガラス系LTCC材料などが挙げられる。
【0036】
高温焼結セラミック材料の具体例としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト、その他のセラミックスにガラスなどの焼結助材を加えた材料であって、1100℃以上の高温で焼結可能なセラミック材料などが挙げられる。
【0037】
なお、絶縁体層13の積層数や厚みは、多層配線基板1の回路構成等に応じて適宜設定することができる。絶縁体層13の積層数は、例えば、5層〜30層程度とすることができる。絶縁体層13一層の厚みは、例えば、5μm〜50μm程度とすることができる。
【0038】
なお、プローブカード2として基板本体12を用いる時には、絶縁体層13の積層数は、例えば、20〜100層程度、絶縁体層13の一層の厚みは例えば5μm〜200μm程度とすることができる。
【0039】
なお、複数の絶縁体層13の厚みは、すべて同じであってもよいし、異なっていてもよい。即ち、複数の絶縁体層13には、厚みの異なる複数種類の絶縁体層が含まれていてもよい。
【0040】
基板本体12の内部には、複数の配線14が設けられている。複数の配線14は、第1の主面12aから第2の主面12bに至るように設けられている。隣り合う配線14間の距離は、第1の主面12a側(x1側)から第2の主面12b側(x2側)に向かって広がっている。従って、第2の主面12bにおける隣り合う配線14間の距離は、第1の主面12aにおける隣り合う配線14間の距離よりも大きい。
【0041】
配線14は、複数の絶縁体層13のそれぞれに設けられたビア導体15を含む。具体的には、複数の配線14の一部は、複数の絶縁体層13のそれぞれに設けられたビア導体15により構成されており、残りの一部は、複数の絶縁体層13のそれぞれに設けられたビア導体15と、厚み方向xにおいて隣り合う絶縁体層13の界面に設けられた電極16とにより構成されている。
【0042】
なお、ビア導体15及び電極16の構成材料は、導電材料である限りにおいて特に限定されない。ビア導体15及び電極16のそれぞれは、例えば、Ag、Cu、Ni、Pt、Pd、W、Mo及びAuの少なくとも1種を主成分とする金属により構成することができる。Ag、Cu、Ni、Pt、Pd、W、Mo及びAuの複数を主成分とする金属としては、例えば、Ag−Pt合金、Ag−Pd合金等が挙げられる。なかでも、Ag、Ag−Pt合金、Ag−Pd合金及びCuは、比抵抗が小さいため、配線14の材料として好ましく用いられ、特に、高周波用途旨の多層配線基板1の配線14の材料としてより好ましく用いられる。
【0043】
なお、絶縁体層を、高温焼結セラミック材料により構成した場合は、Mo、Pt、Pd、W、及びNiからなる群から選ばれた少なくとも一種を含む金属が配線14の構成材料として好ましく用いられる。
【0044】
ビア導体15の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、第2の主面12b側(x2側)から第1の主面12a側(x1側)に向かって先細るテーパ状である。また、ビア導体15の側面の外側部分のテーパ角が中央側部分のテーパ角よりも大きくなるように設けられている。テーパ角は、ビア導体の稜線と基準線である垂直線とのなす角の大きさである。このため、実装面1aにおける配線14のピッチを小さくしつつ、裏面1bにおける配線14のピッチを大きくすることが容易である。ビア導体15の側面の外側部分のテーパ角は、中央側部分のテーパ角よりも5°以上大きいことが好ましく、10°以上大きいことがより好ましい。
【0045】
複数の絶縁体層13の少なくともひとつには、少なくともひとつの絶縁材20が配されている。絶縁材20は、隣り合うビア導体15間に位置している。本実施形態では、絶縁材20は、絶縁体層13の厚み方向であるx方向における一部に設けられている。具体的には、絶縁材20は、絶縁体層13のx2側の表面に露出する一方、x1側の表面には露出しないように配されている。従って、積層方向であるx方向において隣り合う絶縁材20同士は、直接接触しておらず、絶縁体層13によって隔離されている。
【0046】
絶縁材20は、複数の絶縁体層13の全部に設けられていてもよいが、本実施形態では、一部の絶縁体層13に設けられている。具体的には、絶縁材20は、複数の絶縁体層13のうち、実装面1a(第1の主面12a)を構成している絶縁体層13a及び実装面1b(第2の主面12b)には、設けられておらず、他の絶縁体層13bのそれぞれに設けられている。
【0047】
各絶縁体層13bには、複数の絶縁材20が配されている。具体的には、各絶縁体層13bにおいて、絶縁材20は、隣接するビア導体15の間のそれぞれに配されている。各絶縁材20は、隣接するビア導体15の中央に位置している。
【0048】
各絶縁体層13bにおいて、複数の絶縁材20の大きさは同じであってもよいし、異なっていてもよい。具体的には、本実施形態では、各絶縁体層13bにおいて、複数の絶縁材20の大きさが同じである例について説明する。
【0049】
なお、本実施形態では、絶縁材20が角錐台状である例について説明するが、本発明において、絶縁材の形状は特に限定されない。絶縁材は、例えば、円錐台状、角錐状、円錐状、直方体状、立方体状等であってもよい。
【0050】
絶縁材20の構成材料は、絶縁体である限りにおいて特に限定されない。絶縁材20は、例えば、セラミック材料により構成することができる。その場合、絶縁材20のセラミック主成分と、絶縁体層13のセラミック主成分とが同じであることが好ましい。また、絶縁材20におけるセラミック成分の含有率が絶縁体層13におけるセラミック成分の含有率よりも低く、絶縁材20におけるガラス成分の含有率が絶縁体層13におけるガラス成分の含有率よりも高いことが好ましい。
【0051】
絶縁材20は、絶縁体層13よりも高い緻密度を有することが好ましい。すなわち、絶縁層20は、絶縁体層13よりも空隙が少ない状態であることが好ましい。絶縁材20は、絶縁体層13よりも高い体積密度を有することが好ましい。絶縁材20の体積密度は、絶縁体層13の体積密度の1.1倍以上であることが好ましい。
【0052】
(多層配線基板1の製造方法の第1の例)
次に、多層配線基板1の製造方法の第1の例について説明する。
【0053】
まず、絶縁体層13を構成するためのセラミックグリーンシートであって、ビア導体15が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数用意する。これら複数のセラミックグリーンシートを積層することにより、積層体を作製する。
【0054】
なお、セラミックグリーンシートは、例えば、キャリアフィルム上にセラミックスラリーを塗布し、乾燥させることにより作製することができる。セラミックスラリーの塗布は、例えば、ドクターブレード法などの印刷法により行うことができる。
【0055】
ビア導体15は、セラミックグリーンシートに形成した貫通孔(ビアホール)に導電材料を充填することにより形成することができる。貫通孔は、例えば、レーザー光を照射することにより形成したり、パンチを用いて形成したりすることができる。中でも、レーザー光を用いて貫通孔を形成することが好ましい。高い位置精度及び形状精度で貫通孔を形成できるためである。なお、レーザー光による貫通孔形成は、貫通孔がセラミックグリーンシートの厚み方向に対して傾斜している場合にも可能であるが、貫通孔がセラミックグリーンシートの厚み方向に沿っている場合に特に好適である。レーザー光により形成した貫通孔は、レーザー光の進行方向に向かって先細るテーパ状となる。導電性ペーストの貫通孔内への充填は、例えば、吸引や真空印刷により行うことができる。
【0056】
積層体の作製に際して、積層方向において隣り合うセラミックグリーンシートの間に、平面視において(x方向から視た際に)、隣り合うビア導体15の間に位置するように複数の絶縁材20を配置する。なお、本実施形態では、積層体の第1の主面12a側の最表層を構成するセラミックグリーンシートと、このセラミックグリーンシートに隣り合うセラミックグリーンシートとの間には、絶縁材20を配さない。
【0057】
絶縁材20としては、セラミックグリーンシートとセラミック主成分が同じであるセラミック材を用いることが好ましい。絶縁材20として、セラミックグリーンシートよりも高い緻密性を有する部材を用いることが好ましい。すなわち、絶縁材20として、焼成後に空隙が少ない状態となる部材を用いることが好ましい。例えば、絶縁材20として、セラミックグリーンシートよりも樹脂、バインダの量が少なく、粉体含有量が高いものを用いるとよい。絶縁材20として、セラミックグリーンシートよりも高い体積密度を有する部材を用いることが好ましい。
【0058】
次に、複数の絶縁材20を含む積層体をプレスする。その後、プレスされた積層体を焼成することにより多層配線基板1を完成させる。
【0059】
ところで、セラミックグリーンシートには、焼成時に収縮に起因する引張応力が加わる。このため、絶縁体層13にクラックが生じやすくなる。
【0060】
それに対して本実施形態では、積層体の作製に際し、積層方向において隣り合うセラミックグリーンシートの間に、隣り合うビア導体15間に位置するように絶縁材20を配し、かつ、積層体をプレスする。これにより、絶縁材20がセラミックグリーンシート内に埋設される。このようにセラミックグリーンシート内に絶縁材20が押し込まれることにより、セラミックグリーンシートの絶縁材20の周辺部の空隙が少なくなり、緻密性及び体積密度が高められる。これにより、焼成時においてセラミックグリーンシートに生じる引張応力を小さくすることができる。また、セラミックグリーンシートに引張応力が加わった際にも、セラミックグリーンシートにクラックが発生し難くなる。従って、クラックの発生を抑制することができるので、優れた信頼性を有する多層配線基板1を得ることができる。
【0061】
また、絶縁材20によりセラミックグリーンシートが押しのけられる際に、セラミックグリーンシートの絶縁材20の上に位置する部分が、その上に位置するセラミックグリーンシートに押しつけられる。その結果、絶縁材20が設けられた領域においてセラミックグリーンシート間の密着強度が高められる。よって、焼成時等におけるデラミネーション(層間剥離)の発生を効果的に抑制することができる。従って、さらに優れた信頼性を有する多層配線基板1を得ることができる。
【0062】
クラックやデラミネーションの発生をより効果的に抑制する観点からは、複数の絶縁体層13のそれぞれに絶縁材20を配することが好ましい。但し、実装面1aを構成している最表層の絶縁体層13aに絶縁材20を配すると、実装面1aにおける配線14のピッチを狭くすることが困難となる。従って、実装面1aにおける配線14のピッチを狭くする観点からは、絶縁体層13aを構成するためのセラミックグリーンシートと、それに隣接するセラミックグリーンシートとの間には絶縁材20を配さないことが好ましい。
【0063】
また、さらに優れた信頼性を有する多層配線基板1を得る観点からは、絶縁材20として、セラミックグリーンシートとセラミック主成分が同じであるセラミック材を用いることが好ましい。すなわち、絶縁材20のセラミック主成分と、絶縁体層13のセラミック主成分とを同じにすることが好ましい。そうすることにより、絶縁体層13と絶縁材20との間の密着強度を高めることができる。従って、絶縁体層13と絶縁材20との間にクラックや隙間が生じることを抑制することができる。その結果、さらに優れた信頼性を実現することができる。
【0064】
また、絶縁材20として、絶縁体層13よりも高い緻密性を有する部材または絶縁体層13よりも高い緻密性を有する部材を用いると、セラミックグリーンシートに生じる引張応力をより効果的に小さくできるため、さらに優れた信頼性を実現することができる。
【0065】
また、絶縁材20におけるセラミック成分の含有率が絶縁体層13におけるセラミック成分の含有率よりも低く、絶縁材20におけるガラス成分の含有率が絶縁体層13におけるガラス成分の含有率よりも高いことが好ましい。そうすることにより、隣り合う絶縁体層13間の密着強度、並びに絶縁体層13と絶縁材20との間の密着強度をより高くできるためである。
【0066】
また、本実施形態では、隣り合う配線14間の距離が第1の主面12a側から第2の主面12b側に向かって広がっている。従って、実装面1aにおける配線14のピッチを拡げることなく、裏面1bにおける配線14のピッチを拡げることができる。本実施形態では、絶縁材20によりセラミックグリーンシートの一部が押しのけられるに際して、複数のビア導体15のうち外側に配置されたビア導体15が、ビア導体15の側面の外側部分のテーパ角が中央側部分のテーパ角よりも大きくなるように変形する。このため、実装面1aにおける配線14のピッチを拡げることなく、裏面1bにおける配線14のピッチをより効果的に拡げることができる。
【0067】
(多層配線基板1の製造方法の第2の例)
次に、多層配線基板1の製造方法の第2の例について説明する。
【0068】
多層配線基板1の製造方法の第1の例では、絶縁材20をセラミックグリーンシート間に配し、プレスすることにより絶縁材20をセラミックグリーンシート内に埋設する例について説明した。
【0069】
それに対して第2の例では、絶縁材20を予めセラミックグリーンシートに埋設しておく。この場合であっても、セラミックグリーンシートに生じる引張応力を小さくできる。従って、優れた信頼性を有する多層配線基板1を得ることができる。
【0070】
第2の例においても、第1の例と同様に、絶縁体層13aを構成するためのセラミックグリーンシートには、絶縁材20を埋設しないことが好ましい。
【0071】
なお、第2の例では、積層体のプレス工程において、絶縁材20によりセラミックグリーンシートの一部が押しのけられないため、ビア導体15の形状は、中心軸が積層方向に沿って延びる円錐台形状のまま維持される。
【0072】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。また、第1の実施形態と異なる部分のみを説明し、その他は、第1の実施形態の説明を援用する。
【0073】
(第2及び第3の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。図5は、第3の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【0074】
図4及び図5に示すように、第2及び第3の実施形態では、平面視において(x方向から視た際に)、絶縁材20をビア導体15を包囲するように配する。このため、多層配線基板1において、ビア導体15は、絶縁材20によって包囲されている。具体的には、図4に示す第2の実施形態では、絶縁材20は、ビア導体15を包囲するように格子状に設けられている。このため、セラミックグリーンシート、絶縁体層13は、絶縁材20によって複数に分断されている。図5に示す第3の実施形態では、リング状の絶縁材20が複数設けられている。絶縁材20は、ビア導体15を包囲するように配されている。
【0075】
第2及び第3の実施形態のように、絶縁材20をビア導体15を包囲するように配することにより、セラミックグリーンシートに生じる引張応力に起因するクラックやデラミネーションの発生をより効果的に抑制することができる。その結果、さらに優れた信頼性を有する多層配線基板1を得ることができる。
【0076】
(第4〜第6の実施形態)
図6は、第4の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。図7は図6の切断線VII−VIIにおける略図的断面図である。なお、図6は図7の3層目の面方向に沿った図面である。図8は図7のセラミックグリーンシートを積層方向にプレスして焼成前の多層配線基板の図6の切断線VII−VIIにおける略図的断面図である。図9は、第5の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。図10は、第6の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。
【0077】
第1〜第3の実施形態では、各絶縁体層13において、複数の絶縁材20が同じ大きさを有する例について説明した。それに対して、第4〜第6の実施形態では、平面視において(x方向から視た際に)、外側に位置する絶縁材20を中央側に位置する絶縁材20よりも大きくする。このようにすることにより、外側に配置されるビア導体15間の間隔をより広げることができる。また、図7に示したように、第1の主面12a側から第2の主面12b側に配置される絶縁材20を次第に大きくすることにより、容易に第2に主面12b側のビア導体15間の間隔を広げることができる。
【0078】
(第7〜第9の実施形態)
図11は、第7の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。図12は、第8の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。図13は、第9の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【0079】
図11〜図13に示すように、隣り合うビア導体15の間のすべてに絶縁材20を配する必要は必ずしもない。図11〜図13に示す実施形態においても、優れた信頼性を有する多層配線基板1を得ることができる。隣り合うビア導体15のうち、特に間隔を広げたいものの間に絶縁材20を配置することにより、容易に間隔を広げることでき、また、絶縁材20の大きさを調整することにより、ビア導体15の間隔を調整することができる。
【0080】
(第10及び第11の実施形態)
図14は、第10の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。図15は、第11の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。
【0081】
第10及び第11の実施形態では、電極16が設けられておらず、複数のビア導体15が直接電気的に接続されることにより各配線14が構成されている。このため、優れた高周波特性を実現することができる。また、多層配線基板1の構成がシンプルになると共に、多層配線基板の製造が容易となる。
【0082】
また、第10及び第11の実施形態に係る多層配線基板では、複数の配線14の少なくともひとつは、厚み方向において隣り合うビア導体15の壁面の少なくとも一部が連続している部分を含んでいる。このため、より優れた高周波特性が実現されている。
【0083】
さらに、第11の実施形態では、複数の配線14の少なくともひとつは、厚み方向において隣り合うビア導体15が全体として第2の主面12b側から第1の主面12a側に向けて先細るテーパ状となっている部分を含んでいる。このため、さらに優れた高周波特性が実現されている。
【0084】
なお、さらに優れた高周波特性を実現する観点からは、配線14の全体が、第2の主面12b側から第1の主面12a側に向けて先細るテーパ状となっていることが好ましい。但し、この場合は、配線14の第2の主面12bにおける径が大きくなりすぎる場合がある。このため、配線14は、厚み方向において隣り合うビア導体15が全体として第2の主面12b側から第1の主面12a側に向けて先細るテーパ状となっている部分を複数含むことが好ましい。
【0085】
(第12の実施形態)
図16は、第12の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。図16に示されるように、複数の配線14を、第1の主面12aから第2の主面12b側に向かって基板本体12の内部に形成するものの、第2の主面12bには至らないようにしてもよい。この場合、複数の配線14が形成されていない少なくともひとつの絶縁層13cに、他の回路17a、17bを設けることができる。このような場合であっても、上記実施形態等と同様の効果が奏される。
【0086】
なお、第1〜第12の実施形態では、ビア導体15がテーパ状である例について説明した。但し、本発明において、ビア導体の形状は特に限定されない。ビア導体は、例えば円柱状や角柱状であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…多層配線基板
1a…実装面
1b…裏面
2…プローブカード
10…電子部品
11…端子部
12…基板本体
12a…第1の主面
12b…第2の主面
13、13a、13b…絶縁体層
14…配線
15…ビア導体
16…電極
20…絶縁材
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板の製造方法、多層配線基板及びそれを備えるプローブカードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主面上にICなどが搭載される多層配線基板が広く用いられている。例えば特許文献1には、複数のビア導体が配されたセラミック層が複数積層されてなる多層配線基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−164577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような、複数のビア導体が配された複数のセラミック層の積層体を有する多層配線基板は、製造時にクラックが生じやすい。従って、優れた信頼性を実現するのが困難である。
【0005】
本発明は、優れた信頼性を有する多層配線基板を製造し得る方法及び優れた信頼性を有する多層配線基板を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の多層配線基板の製造方法は、第1及び第2の主面を有する基板本体と、基板本体内において、第1の主面から第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板の製造方法に関する。本発明に係る第1の多層配線基板の製造方法では、配線を構成するためのビア導体が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数積層し、積層体を作製する。積層体を作製する際に、積層方向において隣り合うセラミックグリーンシートの間に、隣り合うビア導体間に位置するように絶縁材を配する。積層体を積層方向にプレスする。プレスされた積層体を焼成することにより多層配線基板を得る。
【0007】
本発明に係る第1の多層配線基板の製造方法のある特定の局面では、隣り合う配線間の距離が、第1の主面側から第2の主面側に向かって広がるように複数のビア導体を設ける。積層体の第1の主面側の最表層を構成するセラミックグリーンシートと、当該セラミックグリーンシートに隣り合うセラミックグリーンシートとの間には、絶縁材を配さない。
【0008】
本発明に係る第2の多層配線基板の製造方法は、第1及び第2の主面を有する基板本体と、基板本体内において、第1の主面から第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板の製造方法に関する。本発明に係る第2の多層配線基板の製造方法では、配線を構成するためのビア導体が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数積層し、積層体を作製する。積層体を作製するに際し、複数のセラミックグリーンシートの少なくともひとつとして、隣り合うビア導体間の部分に絶縁材が埋設されたセラミックグリーンシートを用いる。積層体を焼成することにより多層配線基板を得る。
【0009】
本発明に係る第2の多層配線基板の製造方法のある特定の局面では、隣り合う配線間の距離が、第1の主面側から第2の主面側に向かって広がるように複数のビア導体を設ける。積層体の第1の主面側の最表層を構成するセラミックグリーンシートには、絶縁材を埋設しない。
【0010】
本発明に係る第1及び第2の多層配線基板の製造方法のそれぞれのある特定の局面では、複数の配線は、基板本体内において、第1の主面から第2の主面にまで至るように設けられている。
【0011】
本発明に係る第1及び第2の多層配線基板の製造方法のそれぞれの他の特定の局面では、絶縁材として、セラミックグリーンシートとセラミック主成分が同じであるセラミック材を用いる。
【0012】
本発明に係る第1及び第2の多層配線基板の製造方法のそれぞれの別の特定の局面では、絶縁材として、セラミックグリーンシートよりも高い緻密度を有する部材を用いる。
【0013】
本発明に係る第1及び第2の多層配線基板の製造方法のそれぞれのさらに他の特定の局面では、平面視において、絶縁材を、ビア導体を包囲するように設ける。
【0014】
本発明に係る第1及び第2の多層配線基板の製造方法のそれぞれのさらに他の特定の局面では、一のセラミックグリーンシートに複数の絶縁材を配する。平面視において、外側に位置する絶縁材を中央側に位置する絶縁材よりも大きくする。
【0015】
本発明に係る多層配線基板は、基板本体と、複数の配線とを備えている。基板本体は、第1及び第2の主面を有する。複数の配線は、基板本体内において、第1の主面から第2の主面側に向かって設けられている。基板本体は、積層された複数の絶縁体層を有する。絶縁体層は、セラミック材料からなる。配線は、ビア導体を含む。ビア導体は、複数の絶縁体層に設けられている。本発明に係る多層配線基板は、絶縁材をさらに備えている。絶縁材は、複数の絶縁体層の少なくともひとつに配されている。絶縁材は、隣り合うビア導体間に位置している。
【0016】
本発明に係る多層配線基板のある特定の局面では、第1の主面を構成している絶縁体層内には、絶縁材が配されていない。
【0017】
本発明に係る多層配線基板の他の特定の局面では、絶縁材のセラミック主成分と、絶縁体層のセラミック主成分とが同じである。
【0018】
本発明に係る多層配線基板の別の特定の局面では、絶縁材は、絶縁体層よりも高い緻密度を有する。
【0019】
本発明に係る多層配線基板のさらに他の特定の局面では、絶縁材は、ビア導体を包囲している。
【0020】
本発明に係る多層配線基板のさらに別の特定の局面では、一の絶縁体層に絶縁材が複数配されている。平面視において、外側に位置する絶縁材が中央側に位置する絶縁材よりも大きい。
【0021】
本発明に係る多層配線基板のまたさらに他の特定の局面では、ビア導体は、側面の外側部分のテーパ角が中央側部分のテーパ角よりも大きくなるように設けられている。
【0022】
本発明に係る多層配線基板のまたさらに別の特定の局面では、隣り合う配線間の距離は、第1の主面側から第2の主面側に向かって広がっている。
【0023】
本発明に係る多層配線基板のさらにまた他の特定の局面では、各配線は、複数のビア導体が直接電気的に接続されることにより構成されている。
【0024】
本発明に係る多層配線基板のさらにまた別の特定の局面では、複数の配線は、基板本体内において、第1の主面から第2の主面にまで至るように設けられている。
【0025】
本発明に係るプローブカードは、本発明に係る多層配線基板を備えている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、優れた信頼性を有する多層配線基板を製造し得る方法及び優れた信頼性を有する多層配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。
【図2】第1の実施形態におけるプローブカードの略図的断面図である。
【図3】図1の線III−III部分の略図的断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【図5】第3の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【図6】第4の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。
【図7】図6の切断線VII−VIIにおける略図的断面図である。
【図8】図7のセラミックグリーンシートを積層方向にプレスして焼成前の多層配線基板の図6の切断線VII−VIIにおける略図的断面図である。
【図9】第5の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。
【図10】第6の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。
【図11】第7の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【図12】第8の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【図13】第9の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【図14】第10の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。
【図15】第11の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。
【図16】第12の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0029】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0030】
(第1の実施形態)
(多層配線基板1の構成)
図1は、第1の実施形態に係る多層配線基板1の略図的断面図である。図2は、第1の実施形態におけるプローブカードの略図的断面図である。図3は、図1の線III−III部分の略図的断面図である。
【0031】
多層配線基板1は、実装面1aと、裏面1bとを有する。多層配線基板1は、例えば、実装面1aにICチップなどの電子部品10が実装されて使用される。また、図2に示されるように、多層配線基板1は、例えば、実装面1aに端子部11が取り付けられ、プローブカード2として使用されることもある。
【0032】
多層配線基板1は、基板本体12を有する。基板本体12は、第1及び第2の主面12a、12bを有する。基板本体12の第1の主面12aは、実装面1aを構成している。基板本体12の第2の主面12bは、裏面1bを構成している。
【0033】
基板本体12は、絶縁性を有する。基板本体12は、積層された複数の絶縁体層13を有する。絶縁体層13の構成材料は、絶縁性を有するセラミック材料である限りにおいて特に限定されない。
【0034】
絶縁体層13の構成材料として好ましく用いられるセラミック材料の具体例としては、例えば、低温焼結セラミック(LTCC:Low Temperature Co−fired Ceramic)材料や高温焼結セラミック(HTCC:High Temperature Co−fired Ceramic)材料等が挙げられる。ここで、低温焼結セラミック材料とは、1050℃以下の温度で焼結可能であって、比抵抗の小さなAu、AgやCu等と同時焼成が可能なセラミック材料である。
【0035】
低温焼結セラミック材料の具体例としては、例えば、アルミナやジルコニア、マグネシア、フォルステライトなどのセラミック粉末にホウ珪酸系ガラスを混合してなるガラス複合系LTCC材料、ZnO−MgO−Al2O3−SiO2系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラス系LTCC材料、BaO−Al2O3−SiO2系セラミック粉末やAl2O3−CaO−SiO2−MgO−B2O3系セラミック粉末などを用いた非ガラス系LTCC材料などが挙げられる。
【0036】
高温焼結セラミック材料の具体例としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト、その他のセラミックスにガラスなどの焼結助材を加えた材料であって、1100℃以上の高温で焼結可能なセラミック材料などが挙げられる。
【0037】
なお、絶縁体層13の積層数や厚みは、多層配線基板1の回路構成等に応じて適宜設定することができる。絶縁体層13の積層数は、例えば、5層〜30層程度とすることができる。絶縁体層13一層の厚みは、例えば、5μm〜50μm程度とすることができる。
【0038】
なお、プローブカード2として基板本体12を用いる時には、絶縁体層13の積層数は、例えば、20〜100層程度、絶縁体層13の一層の厚みは例えば5μm〜200μm程度とすることができる。
【0039】
なお、複数の絶縁体層13の厚みは、すべて同じであってもよいし、異なっていてもよい。即ち、複数の絶縁体層13には、厚みの異なる複数種類の絶縁体層が含まれていてもよい。
【0040】
基板本体12の内部には、複数の配線14が設けられている。複数の配線14は、第1の主面12aから第2の主面12bに至るように設けられている。隣り合う配線14間の距離は、第1の主面12a側(x1側)から第2の主面12b側(x2側)に向かって広がっている。従って、第2の主面12bにおける隣り合う配線14間の距離は、第1の主面12aにおける隣り合う配線14間の距離よりも大きい。
【0041】
配線14は、複数の絶縁体層13のそれぞれに設けられたビア導体15を含む。具体的には、複数の配線14の一部は、複数の絶縁体層13のそれぞれに設けられたビア導体15により構成されており、残りの一部は、複数の絶縁体層13のそれぞれに設けられたビア導体15と、厚み方向xにおいて隣り合う絶縁体層13の界面に設けられた電極16とにより構成されている。
【0042】
なお、ビア導体15及び電極16の構成材料は、導電材料である限りにおいて特に限定されない。ビア導体15及び電極16のそれぞれは、例えば、Ag、Cu、Ni、Pt、Pd、W、Mo及びAuの少なくとも1種を主成分とする金属により構成することができる。Ag、Cu、Ni、Pt、Pd、W、Mo及びAuの複数を主成分とする金属としては、例えば、Ag−Pt合金、Ag−Pd合金等が挙げられる。なかでも、Ag、Ag−Pt合金、Ag−Pd合金及びCuは、比抵抗が小さいため、配線14の材料として好ましく用いられ、特に、高周波用途旨の多層配線基板1の配線14の材料としてより好ましく用いられる。
【0043】
なお、絶縁体層を、高温焼結セラミック材料により構成した場合は、Mo、Pt、Pd、W、及びNiからなる群から選ばれた少なくとも一種を含む金属が配線14の構成材料として好ましく用いられる。
【0044】
ビア導体15の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、第2の主面12b側(x2側)から第1の主面12a側(x1側)に向かって先細るテーパ状である。また、ビア導体15の側面の外側部分のテーパ角が中央側部分のテーパ角よりも大きくなるように設けられている。テーパ角は、ビア導体の稜線と基準線である垂直線とのなす角の大きさである。このため、実装面1aにおける配線14のピッチを小さくしつつ、裏面1bにおける配線14のピッチを大きくすることが容易である。ビア導体15の側面の外側部分のテーパ角は、中央側部分のテーパ角よりも5°以上大きいことが好ましく、10°以上大きいことがより好ましい。
【0045】
複数の絶縁体層13の少なくともひとつには、少なくともひとつの絶縁材20が配されている。絶縁材20は、隣り合うビア導体15間に位置している。本実施形態では、絶縁材20は、絶縁体層13の厚み方向であるx方向における一部に設けられている。具体的には、絶縁材20は、絶縁体層13のx2側の表面に露出する一方、x1側の表面には露出しないように配されている。従って、積層方向であるx方向において隣り合う絶縁材20同士は、直接接触しておらず、絶縁体層13によって隔離されている。
【0046】
絶縁材20は、複数の絶縁体層13の全部に設けられていてもよいが、本実施形態では、一部の絶縁体層13に設けられている。具体的には、絶縁材20は、複数の絶縁体層13のうち、実装面1a(第1の主面12a)を構成している絶縁体層13a及び実装面1b(第2の主面12b)には、設けられておらず、他の絶縁体層13bのそれぞれに設けられている。
【0047】
各絶縁体層13bには、複数の絶縁材20が配されている。具体的には、各絶縁体層13bにおいて、絶縁材20は、隣接するビア導体15の間のそれぞれに配されている。各絶縁材20は、隣接するビア導体15の中央に位置している。
【0048】
各絶縁体層13bにおいて、複数の絶縁材20の大きさは同じであってもよいし、異なっていてもよい。具体的には、本実施形態では、各絶縁体層13bにおいて、複数の絶縁材20の大きさが同じである例について説明する。
【0049】
なお、本実施形態では、絶縁材20が角錐台状である例について説明するが、本発明において、絶縁材の形状は特に限定されない。絶縁材は、例えば、円錐台状、角錐状、円錐状、直方体状、立方体状等であってもよい。
【0050】
絶縁材20の構成材料は、絶縁体である限りにおいて特に限定されない。絶縁材20は、例えば、セラミック材料により構成することができる。その場合、絶縁材20のセラミック主成分と、絶縁体層13のセラミック主成分とが同じであることが好ましい。また、絶縁材20におけるセラミック成分の含有率が絶縁体層13におけるセラミック成分の含有率よりも低く、絶縁材20におけるガラス成分の含有率が絶縁体層13におけるガラス成分の含有率よりも高いことが好ましい。
【0051】
絶縁材20は、絶縁体層13よりも高い緻密度を有することが好ましい。すなわち、絶縁層20は、絶縁体層13よりも空隙が少ない状態であることが好ましい。絶縁材20は、絶縁体層13よりも高い体積密度を有することが好ましい。絶縁材20の体積密度は、絶縁体層13の体積密度の1.1倍以上であることが好ましい。
【0052】
(多層配線基板1の製造方法の第1の例)
次に、多層配線基板1の製造方法の第1の例について説明する。
【0053】
まず、絶縁体層13を構成するためのセラミックグリーンシートであって、ビア導体15が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数用意する。これら複数のセラミックグリーンシートを積層することにより、積層体を作製する。
【0054】
なお、セラミックグリーンシートは、例えば、キャリアフィルム上にセラミックスラリーを塗布し、乾燥させることにより作製することができる。セラミックスラリーの塗布は、例えば、ドクターブレード法などの印刷法により行うことができる。
【0055】
ビア導体15は、セラミックグリーンシートに形成した貫通孔(ビアホール)に導電材料を充填することにより形成することができる。貫通孔は、例えば、レーザー光を照射することにより形成したり、パンチを用いて形成したりすることができる。中でも、レーザー光を用いて貫通孔を形成することが好ましい。高い位置精度及び形状精度で貫通孔を形成できるためである。なお、レーザー光による貫通孔形成は、貫通孔がセラミックグリーンシートの厚み方向に対して傾斜している場合にも可能であるが、貫通孔がセラミックグリーンシートの厚み方向に沿っている場合に特に好適である。レーザー光により形成した貫通孔は、レーザー光の進行方向に向かって先細るテーパ状となる。導電性ペーストの貫通孔内への充填は、例えば、吸引や真空印刷により行うことができる。
【0056】
積層体の作製に際して、積層方向において隣り合うセラミックグリーンシートの間に、平面視において(x方向から視た際に)、隣り合うビア導体15の間に位置するように複数の絶縁材20を配置する。なお、本実施形態では、積層体の第1の主面12a側の最表層を構成するセラミックグリーンシートと、このセラミックグリーンシートに隣り合うセラミックグリーンシートとの間には、絶縁材20を配さない。
【0057】
絶縁材20としては、セラミックグリーンシートとセラミック主成分が同じであるセラミック材を用いることが好ましい。絶縁材20として、セラミックグリーンシートよりも高い緻密性を有する部材を用いることが好ましい。すなわち、絶縁材20として、焼成後に空隙が少ない状態となる部材を用いることが好ましい。例えば、絶縁材20として、セラミックグリーンシートよりも樹脂、バインダの量が少なく、粉体含有量が高いものを用いるとよい。絶縁材20として、セラミックグリーンシートよりも高い体積密度を有する部材を用いることが好ましい。
【0058】
次に、複数の絶縁材20を含む積層体をプレスする。その後、プレスされた積層体を焼成することにより多層配線基板1を完成させる。
【0059】
ところで、セラミックグリーンシートには、焼成時に収縮に起因する引張応力が加わる。このため、絶縁体層13にクラックが生じやすくなる。
【0060】
それに対して本実施形態では、積層体の作製に際し、積層方向において隣り合うセラミックグリーンシートの間に、隣り合うビア導体15間に位置するように絶縁材20を配し、かつ、積層体をプレスする。これにより、絶縁材20がセラミックグリーンシート内に埋設される。このようにセラミックグリーンシート内に絶縁材20が押し込まれることにより、セラミックグリーンシートの絶縁材20の周辺部の空隙が少なくなり、緻密性及び体積密度が高められる。これにより、焼成時においてセラミックグリーンシートに生じる引張応力を小さくすることができる。また、セラミックグリーンシートに引張応力が加わった際にも、セラミックグリーンシートにクラックが発生し難くなる。従って、クラックの発生を抑制することができるので、優れた信頼性を有する多層配線基板1を得ることができる。
【0061】
また、絶縁材20によりセラミックグリーンシートが押しのけられる際に、セラミックグリーンシートの絶縁材20の上に位置する部分が、その上に位置するセラミックグリーンシートに押しつけられる。その結果、絶縁材20が設けられた領域においてセラミックグリーンシート間の密着強度が高められる。よって、焼成時等におけるデラミネーション(層間剥離)の発生を効果的に抑制することができる。従って、さらに優れた信頼性を有する多層配線基板1を得ることができる。
【0062】
クラックやデラミネーションの発生をより効果的に抑制する観点からは、複数の絶縁体層13のそれぞれに絶縁材20を配することが好ましい。但し、実装面1aを構成している最表層の絶縁体層13aに絶縁材20を配すると、実装面1aにおける配線14のピッチを狭くすることが困難となる。従って、実装面1aにおける配線14のピッチを狭くする観点からは、絶縁体層13aを構成するためのセラミックグリーンシートと、それに隣接するセラミックグリーンシートとの間には絶縁材20を配さないことが好ましい。
【0063】
また、さらに優れた信頼性を有する多層配線基板1を得る観点からは、絶縁材20として、セラミックグリーンシートとセラミック主成分が同じであるセラミック材を用いることが好ましい。すなわち、絶縁材20のセラミック主成分と、絶縁体層13のセラミック主成分とを同じにすることが好ましい。そうすることにより、絶縁体層13と絶縁材20との間の密着強度を高めることができる。従って、絶縁体層13と絶縁材20との間にクラックや隙間が生じることを抑制することができる。その結果、さらに優れた信頼性を実現することができる。
【0064】
また、絶縁材20として、絶縁体層13よりも高い緻密性を有する部材または絶縁体層13よりも高い緻密性を有する部材を用いると、セラミックグリーンシートに生じる引張応力をより効果的に小さくできるため、さらに優れた信頼性を実現することができる。
【0065】
また、絶縁材20におけるセラミック成分の含有率が絶縁体層13におけるセラミック成分の含有率よりも低く、絶縁材20におけるガラス成分の含有率が絶縁体層13におけるガラス成分の含有率よりも高いことが好ましい。そうすることにより、隣り合う絶縁体層13間の密着強度、並びに絶縁体層13と絶縁材20との間の密着強度をより高くできるためである。
【0066】
また、本実施形態では、隣り合う配線14間の距離が第1の主面12a側から第2の主面12b側に向かって広がっている。従って、実装面1aにおける配線14のピッチを拡げることなく、裏面1bにおける配線14のピッチを拡げることができる。本実施形態では、絶縁材20によりセラミックグリーンシートの一部が押しのけられるに際して、複数のビア導体15のうち外側に配置されたビア導体15が、ビア導体15の側面の外側部分のテーパ角が中央側部分のテーパ角よりも大きくなるように変形する。このため、実装面1aにおける配線14のピッチを拡げることなく、裏面1bにおける配線14のピッチをより効果的に拡げることができる。
【0067】
(多層配線基板1の製造方法の第2の例)
次に、多層配線基板1の製造方法の第2の例について説明する。
【0068】
多層配線基板1の製造方法の第1の例では、絶縁材20をセラミックグリーンシート間に配し、プレスすることにより絶縁材20をセラミックグリーンシート内に埋設する例について説明した。
【0069】
それに対して第2の例では、絶縁材20を予めセラミックグリーンシートに埋設しておく。この場合であっても、セラミックグリーンシートに生じる引張応力を小さくできる。従って、優れた信頼性を有する多層配線基板1を得ることができる。
【0070】
第2の例においても、第1の例と同様に、絶縁体層13aを構成するためのセラミックグリーンシートには、絶縁材20を埋設しないことが好ましい。
【0071】
なお、第2の例では、積層体のプレス工程において、絶縁材20によりセラミックグリーンシートの一部が押しのけられないため、ビア導体15の形状は、中心軸が積層方向に沿って延びる円錐台形状のまま維持される。
【0072】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。また、第1の実施形態と異なる部分のみを説明し、その他は、第1の実施形態の説明を援用する。
【0073】
(第2及び第3の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。図5は、第3の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【0074】
図4及び図5に示すように、第2及び第3の実施形態では、平面視において(x方向から視た際に)、絶縁材20をビア導体15を包囲するように配する。このため、多層配線基板1において、ビア導体15は、絶縁材20によって包囲されている。具体的には、図4に示す第2の実施形態では、絶縁材20は、ビア導体15を包囲するように格子状に設けられている。このため、セラミックグリーンシート、絶縁体層13は、絶縁材20によって複数に分断されている。図5に示す第3の実施形態では、リング状の絶縁材20が複数設けられている。絶縁材20は、ビア導体15を包囲するように配されている。
【0075】
第2及び第3の実施形態のように、絶縁材20をビア導体15を包囲するように配することにより、セラミックグリーンシートに生じる引張応力に起因するクラックやデラミネーションの発生をより効果的に抑制することができる。その結果、さらに優れた信頼性を有する多層配線基板1を得ることができる。
【0076】
(第4〜第6の実施形態)
図6は、第4の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。図7は図6の切断線VII−VIIにおける略図的断面図である。なお、図6は図7の3層目の面方向に沿った図面である。図8は図7のセラミックグリーンシートを積層方向にプレスして焼成前の多層配線基板の図6の切断線VII−VIIにおける略図的断面図である。図9は、第5の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。図10は、第6の実施形態に係る製造工程における焼成前の多層配線基板の特定のセラミックグリーンシートの面方向に沿った略図的断面図である。
【0077】
第1〜第3の実施形態では、各絶縁体層13において、複数の絶縁材20が同じ大きさを有する例について説明した。それに対して、第4〜第6の実施形態では、平面視において(x方向から視た際に)、外側に位置する絶縁材20を中央側に位置する絶縁材20よりも大きくする。このようにすることにより、外側に配置されるビア導体15間の間隔をより広げることができる。また、図7に示したように、第1の主面12a側から第2の主面12b側に配置される絶縁材20を次第に大きくすることにより、容易に第2に主面12b側のビア導体15間の間隔を広げることができる。
【0078】
(第7〜第9の実施形態)
図11は、第7の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。図12は、第8の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。図13は、第9の実施形態に係る多層配線基板の面方向に沿った略図的断面図である。
【0079】
図11〜図13に示すように、隣り合うビア導体15の間のすべてに絶縁材20を配する必要は必ずしもない。図11〜図13に示す実施形態においても、優れた信頼性を有する多層配線基板1を得ることができる。隣り合うビア導体15のうち、特に間隔を広げたいものの間に絶縁材20を配置することにより、容易に間隔を広げることでき、また、絶縁材20の大きさを調整することにより、ビア導体15の間隔を調整することができる。
【0080】
(第10及び第11の実施形態)
図14は、第10の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。図15は、第11の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。
【0081】
第10及び第11の実施形態では、電極16が設けられておらず、複数のビア導体15が直接電気的に接続されることにより各配線14が構成されている。このため、優れた高周波特性を実現することができる。また、多層配線基板1の構成がシンプルになると共に、多層配線基板の製造が容易となる。
【0082】
また、第10及び第11の実施形態に係る多層配線基板では、複数の配線14の少なくともひとつは、厚み方向において隣り合うビア導体15の壁面の少なくとも一部が連続している部分を含んでいる。このため、より優れた高周波特性が実現されている。
【0083】
さらに、第11の実施形態では、複数の配線14の少なくともひとつは、厚み方向において隣り合うビア導体15が全体として第2の主面12b側から第1の主面12a側に向けて先細るテーパ状となっている部分を含んでいる。このため、さらに優れた高周波特性が実現されている。
【0084】
なお、さらに優れた高周波特性を実現する観点からは、配線14の全体が、第2の主面12b側から第1の主面12a側に向けて先細るテーパ状となっていることが好ましい。但し、この場合は、配線14の第2の主面12bにおける径が大きくなりすぎる場合がある。このため、配線14は、厚み方向において隣り合うビア導体15が全体として第2の主面12b側から第1の主面12a側に向けて先細るテーパ状となっている部分を複数含むことが好ましい。
【0085】
(第12の実施形態)
図16は、第12の実施形態に係る多層配線基板の略図的断面図である。図16に示されるように、複数の配線14を、第1の主面12aから第2の主面12b側に向かって基板本体12の内部に形成するものの、第2の主面12bには至らないようにしてもよい。この場合、複数の配線14が形成されていない少なくともひとつの絶縁層13cに、他の回路17a、17bを設けることができる。このような場合であっても、上記実施形態等と同様の効果が奏される。
【0086】
なお、第1〜第12の実施形態では、ビア導体15がテーパ状である例について説明した。但し、本発明において、ビア導体の形状は特に限定されない。ビア導体は、例えば円柱状や角柱状であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…多層配線基板
1a…実装面
1b…裏面
2…プローブカード
10…電子部品
11…端子部
12…基板本体
12a…第1の主面
12b…第2の主面
13、13a、13b…絶縁体層
14…配線
15…ビア導体
16…電極
20…絶縁材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の主面を有する基板本体と、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板の製造方法であって、
前記配線を構成するためのビア導体が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数積層し、積層体を作製する工程であって、前記積層体を作製する際に、積層方向において隣り合う前記セラミックグリーンシートの間に、隣り合う前記ビア導体間に位置するように絶縁材を配する工程と、
前記積層体を前記積層方向にプレスする工程と、
前記プレスされた積層体を焼成することにより前記多層配線基板を得る工程と、
を備える、多層配線基板の製造方法。
【請求項2】
隣り合う前記配線間の距離が、前記第1の主面側から前記第2の主面側に向かって広がるように前記複数のビア導体を設け、
前記積層体の第1の主面側の最表層を構成するセラミックグリーンシートと、当該セラミックグリーンシートに隣り合うセラミックグリーンシートとの間には、前記絶縁材を配さない、請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項3】
第1及び第2の主面を有する基板本体と、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板の製造方法であって、
前記配線を構成するためのビア導体が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数積層し、積層体を作製する工程であって、前記積層体を作製するに際し、前記複数のセラミックグリーンシートの少なくともひとつとして、隣り合う前記ビア導体間の部分に絶縁材が埋設されたセラミックグリーンシートを用いる工程と、
前記積層体を焼成することにより前記多層配線基板を得る工程と、
を備える、多層配線基板の製造方法。
【請求項4】
隣り合う前記配線間の距離が、前記第1の主面側から前記第2の主面側に向かって広がるように前記複数のビア導体を設け、
前記積層体の第1の主面側の最表層を構成するセラミックグリーンシートには、前記絶縁材を埋設しない、請求項3に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記複数の配線は、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面にまで至るように設けられている、請求項1〜4に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁材として、前記セラミックグリーンシートとセラミック主成分が同じであるセラミック材を用いる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁材として、前記セラミックグリーンシートよりも高い緻密度を有する部材を用いる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項8】
平面視において、前記絶縁材を、前記ビア導体を包囲するように設ける、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項9】
一の前記セラミックグリーンシートに複数の前記絶縁材を配し、平面視において、外側に位置する絶縁材を中央側に位置する絶縁材よりも大きくする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項10】
第1及び第2の主面を有する基板本体と、
前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面側に向かって設けられている複数の配線と、
を備える多層配線基板であって、
前記基板本体は、積層されたセラミック材料からなる複数の絶縁体層を有し、
前記配線は、前記複数の絶縁体層に設けられたビア導体を含み、
前記複数の絶縁体層の少なくともひとつに配されており、隣り合う前記ビア導体間に位置する絶縁材をさらに備える、多層配線基板。
【請求項11】
前記第1の主面を構成している絶縁体層内には、前記絶縁材が配されていない、請求項10に記載の多層配線基板。
【請求項12】
前記絶縁材のセラミック主成分と、前記絶縁体層のセラミック主成分とが同じである、請求項10または11に記載の多層配線基板。
【請求項13】
前記絶縁材は、前記絶縁体層よりも高い緻密度を有する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項14】
前記絶縁材は、前記ビア導体を包囲している、請求項10〜13のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項15】
一の前記絶縁体層に前記絶縁材が複数配されており、
平面視において、外側に位置する絶縁材が中央側に位置する絶縁材よりも大きい、請求項10〜14のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項16】
前記ビア導体は、側面の外側部分のテーパ角が中央側部分のテーパ角よりも大きくなるように設けられている、請求項10〜15のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項17】
隣り合う前記配線間の距離は、前記第1の主面側から前記第2の主面側に向かって広がっている、請求項10〜16のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項18】
前記各配線は、前記複数のビア導体が直接電気的に接続されることにより構成されている、請求項10〜17のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項19】
前記複数の配線は、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面にまで至るように設けられている、請求項10〜18に記載の多層配線基板。
【請求項20】
請求項10〜19のいずれか一項に記載の多層配線基板を備える、プローブカード。
【請求項1】
第1及び第2の主面を有する基板本体と、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板の製造方法であって、
前記配線を構成するためのビア導体が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数積層し、積層体を作製する工程であって、前記積層体を作製する際に、積層方向において隣り合う前記セラミックグリーンシートの間に、隣り合う前記ビア導体間に位置するように絶縁材を配する工程と、
前記積層体を前記積層方向にプレスする工程と、
前記プレスされた積層体を焼成することにより前記多層配線基板を得る工程と、
を備える、多層配線基板の製造方法。
【請求項2】
隣り合う前記配線間の距離が、前記第1の主面側から前記第2の主面側に向かって広がるように前記複数のビア導体を設け、
前記積層体の第1の主面側の最表層を構成するセラミックグリーンシートと、当該セラミックグリーンシートに隣り合うセラミックグリーンシートとの間には、前記絶縁材を配さない、請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項3】
第1及び第2の主面を有する基板本体と、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面側に向かって設けられている複数の配線とを備える多層配線基板の製造方法であって、
前記配線を構成するためのビア導体が内部に複数配されたセラミックグリーンシートを複数積層し、積層体を作製する工程であって、前記積層体を作製するに際し、前記複数のセラミックグリーンシートの少なくともひとつとして、隣り合う前記ビア導体間の部分に絶縁材が埋設されたセラミックグリーンシートを用いる工程と、
前記積層体を焼成することにより前記多層配線基板を得る工程と、
を備える、多層配線基板の製造方法。
【請求項4】
隣り合う前記配線間の距離が、前記第1の主面側から前記第2の主面側に向かって広がるように前記複数のビア導体を設け、
前記積層体の第1の主面側の最表層を構成するセラミックグリーンシートには、前記絶縁材を埋設しない、請求項3に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記複数の配線は、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面にまで至るように設けられている、請求項1〜4に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁材として、前記セラミックグリーンシートとセラミック主成分が同じであるセラミック材を用いる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁材として、前記セラミックグリーンシートよりも高い緻密度を有する部材を用いる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項8】
平面視において、前記絶縁材を、前記ビア導体を包囲するように設ける、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項9】
一の前記セラミックグリーンシートに複数の前記絶縁材を配し、平面視において、外側に位置する絶縁材を中央側に位置する絶縁材よりも大きくする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項10】
第1及び第2の主面を有する基板本体と、
前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面側に向かって設けられている複数の配線と、
を備える多層配線基板であって、
前記基板本体は、積層されたセラミック材料からなる複数の絶縁体層を有し、
前記配線は、前記複数の絶縁体層に設けられたビア導体を含み、
前記複数の絶縁体層の少なくともひとつに配されており、隣り合う前記ビア導体間に位置する絶縁材をさらに備える、多層配線基板。
【請求項11】
前記第1の主面を構成している絶縁体層内には、前記絶縁材が配されていない、請求項10に記載の多層配線基板。
【請求項12】
前記絶縁材のセラミック主成分と、前記絶縁体層のセラミック主成分とが同じである、請求項10または11に記載の多層配線基板。
【請求項13】
前記絶縁材は、前記絶縁体層よりも高い緻密度を有する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項14】
前記絶縁材は、前記ビア導体を包囲している、請求項10〜13のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項15】
一の前記絶縁体層に前記絶縁材が複数配されており、
平面視において、外側に位置する絶縁材が中央側に位置する絶縁材よりも大きい、請求項10〜14のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項16】
前記ビア導体は、側面の外側部分のテーパ角が中央側部分のテーパ角よりも大きくなるように設けられている、請求項10〜15のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項17】
隣り合う前記配線間の距離は、前記第1の主面側から前記第2の主面側に向かって広がっている、請求項10〜16のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項18】
前記各配線は、前記複数のビア導体が直接電気的に接続されることにより構成されている、請求項10〜17のいずれか一項に記載の多層配線基板。
【請求項19】
前記複数の配線は、前記基板本体内において、前記第1の主面から前記第2の主面にまで至るように設けられている、請求項10〜18に記載の多層配線基板。
【請求項20】
請求項10〜19のいずれか一項に記載の多層配線基板を備える、プローブカード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−93520(P2013−93520A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236103(P2011−236103)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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