説明

多層配線基板の製造方法

【課題】高精細かつ密着性に優れた金属配線を製造できると共に、ビアの接続信頼性に優れた多層配線基板を、高歩留まりで製造する製造方法を提供する。
【解決手段】(A)第1の導電層14を備える配線基板表面に、絶縁層、及び、所定の官能基を有するポリマーを含む層にエネルギー付与して得られる密着樹脂層20をこの順で備える積層体を形成する工程と、(B)前記密着樹脂層に対してめっき触媒を付与した後、めっきを行い、第2の導電層24を形成する工程と、(C)レーザ加工又はドリル加工により、第2の導電層、絶縁層を貫通し、前記第1の導電層に達するようにビアホール26を形成する工程と、(D)デスミア処理を行う工程と、(E)前記ビアホール壁面に対して、カーボンブラックまたはグラファイトを付与した後、無電解めっきを行うことなく、電気めっきを行い、前記第1の導電層と前記第2の導電層とを電気的に接続する工程とを備える製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
このような金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジスト像を剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属膜との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、配線エッジ部が凹凸になり、配線の太さが一定にできず設計値どおりの配線形状が得難い、又は、微細な配線を形成しようとすると、隣接する配線と接続する部分ができたり、配線が断線したりする、という問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理するが必要であるため、金属膜と基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
上記実情に鑑みて、セミアディティブ法による微細配線の形成に適した、接続信頼性の高い多層配線板の形成方法が開示されている(特許文献1)。より具体的には、該文献中においては、まず、金属配線を有する第1の配線基板表面上に、絶縁層および高分子密着層を介して、パターン状の金属膜を形成させ、該パターン状の金属膜をマスクとして使用してビアホールを形成している。次に、ビアホール壁面に無電解めっき触媒を付与して、無電解めっきなどのめっき処理を行うことにより、配線基板上の金属配線とその上部に形成されるパターン状の金属膜とを接続し、多層配線基板を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−157589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、更には高密度実装化が進んでいる。このような状況下、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等も小型化かつ高密度化が求められており、このような要望を満たすため多層配線基板では微細配線ピッチで形成された複数層の配線パターン間を高い接続信頼性で電気的に接続できることがより重要となっている。
本発明者らが、特許文献1に記載の方法を利用して多層配線基板の製造を行ったところ、ビアの接続信頼性は昨今要求されるレベルには到達しておらず、さらなる改良が必要であった。
【0007】
また、昨今、製造コストの低減の観点から、高スループットでより生産性よく多層配線基板を製造することが求められている。一方、特許文献1に記載の方法では、工程数が多く、密着性などに優れた実用上耐えうる金属膜をより短時間で生産するという生産性の観点からは、必ずしも充分ではなかった。
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みて、高精細かつ密着性に優れた金属配線を製造できると共に、ビアの接続信頼性に優れた多層配線基板を、高歩留まりで製造することができる、生産性に優れた製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により上記目的を達
成しうることを見出した。
(1) (A)第1の導電層を備える配線基板表面に、絶縁層、及び、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む層にエネルギー付与して得られる密着樹脂層をこの順で備える積層体を形成する工程と、
(B)前記(A)工程後に前記密着樹脂層に対してめっき触媒又はその前駆体を付与した後、めっきを行い、前記密着樹脂層上に第2の導電層を形成する工程と、
(C)前記工程(B)後に、レーザ加工又はドリル加工により、前記第2の導電層、前記密着樹脂層、および前記絶縁層を貫通し、前記第1の導電層に達するようにビアホールを形成する工程と、
(D)前記工程(C)後に、デスミア処理を行う工程と、
(E)前記工程(D)後に、前記ビアホール壁面に対して、カーボンブラックまたはグラファイトを付与した後、無電解めっきを行うことなく、電気めっきを行い、前記第1の導電層と前記第2の導電層とを電気的に接続する工程と、を備える多層配線基板の製造方法。
【0010】
(2) 前記第2の導電層の厚みが、0.2〜20μmである、(1)に記載の多層配線基板の製造方法。
(3) 前記めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基が、シアノ基またはカルボン酸基である、(1)または(2)に記載の多層配線基板の製造方法。
(4) 前記積層体が、前記絶縁層と前記密着樹脂層との間に密着補助層をさらに備える、(1)〜(3)のいずれかに記載の多層配線基板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、高精細かつ密着性に優れた金属配線を製造できると共に、ビアの接続信頼性に優れた多層配線基板を、高歩留まりで製造することができる、生産性に優れた製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)〜(D)は、それぞれ本発明の多層配線基板の製造方法における各製造工程を順に示す基板から多層配線基板までの模式的断面図である。
【図2】(A)〜(E)は、工程(F)から(I)までを各製造工程を順に示す模式的断面図である。
【図3】実施例1〜5、並びに、比較例1及び2で得られたビア・チェーンを表す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の多層配線基板の製造方法について詳述する。
該製造方法は、以下の5つの工程を備える。
(A)第1の導電層を備える配線基板表面に、絶縁層、及び、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む層にエネルギー付与して得られる密着樹脂層をこの順で備える積層体を形成する工程
(B)上記(A)工程後に密着樹脂層に対してめっき触媒又はその前駆体を付与した後、めっきを行い、密着樹脂層上に第2の導電層を形成する工程
(C)上記工程(B)後に、レーザ加工又はドリル加工により、第2の導電層、密着樹脂層、および絶縁層を貫通し、第1の導電層に達するようにビアホールを形成する工程
(D)上記工程(C)後に、デスミア処理を行う工程
(E)上記工程(D)後に、ビアホール壁面に対して、カーボンブラックまたはグラファイトを付与した後、無電解めっきを行うことなく、電気めっきを行い、第1の導電層と第2の導電層とを電気的に接続する工程
【0014】
本発明の製造方法は、上述した特許文献1に記載の方法とは異なり、密着樹脂層のパターニングを行うことなく、ビアホールの形成を行っており、工程数がより少ない。
また、本発明の製造方法の特徴の一つとしては、ビアホール形成後、第1の導電層と第2の導電層とを電気的に接続するために、導通用金属膜を形成する工程(E)において、カーボンブラックおよびグラファイトを使用して電気めっきを行っている点が挙げられる。該工程を経ることにより、層間接続の歩留まりおよび耐久性の点で有利となる。
以下に、図面を参照して、各工程を順次に説明する。
【0015】
<工程(A):積層体形成工程>
工程(A)では、第1の導電層を備える配線基板表面に、絶縁層、及び、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む層にエネルギー付与して得られる密着樹脂層をこの順で備える積層体を形成する。通常、絶縁層および密着樹脂層は、配線基板表面上で、これらの層を形成すべき領域全面に設けられる。
より具体的には、図1(A)に示されるように、本工程においては、基板12に第1の導電層14が形成された配線基板10と、配線基板10上に設けられた絶縁層16と、該絶縁層16上に設けられた密着補助層18と、該密着補助層18上に設けられた密着樹脂層20とを備える積層体22が形成される。
以下に、配線基板10、絶縁層16、密着補助層18、および密着樹脂層20に関して詳述する。
【0016】
<配線基板10>
本発明に用いられる配線基板10は、代表的には、エッチング処理を利用したサブストラクティブ法で形成されたものや、電解めっきを利用したセミアディティブ法で形成したものが挙げられ、いずれの工法で形成されたものを用いてもよい。
配線基板10としては、より具体的には、両面又は片面の銅張積層板(CCL)や、この銅張積層板の銅膜をパターン状にしたもの等が用いられ、これらはフレキシブル基板であってもよいし、リジット基板であってもよい。
【0017】
配線基板10中の基板12を構成する材料としては、例えば、ガラスエポキシ材、BTレジン、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、液晶フィルム、アラミドなどが挙げられる。なかでも、寸法安定性や耐熱性など、熱的または機械的特性の観点から、ガラスエポキシ材、BTレジンが好ましい。
第1の導電層14を構成する材料としては、例えば、銅、銀、錫、ニッケル、金などが挙げられる。なお、第1の導電層14は、第1の金属配線として機能し、基板12の全面に設けられていても、図1(A)に示すようにパターン状に形成されていてもよい。
【0018】
<絶縁層16>
絶縁層16は、多層配線基板中(例えば、第1の導電層14間)の絶縁信頼性を確保するために設けられる層であり、その形成方法は特に制限されない。より具体的には、絶縁性樹脂を含有する絶縁性樹脂組成物を塗布して、絶縁層16を形成する方法(塗布法)や、絶縁性樹脂を含有する絶縁層16を配線基板10上にラミネートする方法などが挙げられる。
絶縁層16の厚みは、多層配線基板の使用目的に応じて適宜選択されるが、5〜150μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0019】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0020】
絶縁層の形成に使用される絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。
【0021】
更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤(例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルクなど)、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂に対して、1〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%の範囲で添加される。
【0022】
<密着補助層18>
密着補助層18は、絶縁層16と後述する密着樹脂層20との接着性を補助する役割を果たし、絶縁層16と密着樹脂層20との接着性が良好である場合には、該密着補助層18は省略してもよい。
密着補助層18は、密着樹脂層20との結合反応の開始点となる活性種を与え、それを起点として密着補助層18と密着樹脂層20との間に多くの結合を生成させることができる。
より具体的には、密着補助層18としては、重合開始剤を含有する層(重合開始層)、または、重合開始可能な官能基を有する層(重合開始層)などを用いることができる。
【0023】
密着補助層18の厚みは特に制限されないが、十分な重合開始能の発現、及び、膜性を維持して膜剥がれを防止するといった観点からは、0.1〜10μmが好ましく、0.2〜5μmがより好ましい。乾燥後の質量で、0.1〜20g/m2が好ましく、0.1〜15g/m2がより好ましく、0.1〜2g/m2が更に好ましい。
【0024】
密着補助層18としては、例えば、高分子化合物と重合開始剤とを含む層、重合性化合物と重合開始剤とを含む層、重合開始可能な官能基を有する層、エネルギー付与により重合開始可能な活性部位を発生する層、及び、エネルギー付与により密着樹脂層20と化学結合を形成する層などが挙げられる。
例えば、密着補助層18は、必要な成分を、溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基板表面上に設け、加熱又は光照射により硬膜し、形成することができる。
【0025】
例えば、配線基板10上に形成される絶縁層16が、多層積層板、ビルドアップ基板、またはフレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、該絶縁層16との密着性の観点から、密着補助層18を形成する際に用いられる樹脂組成物として、絶縁層16の形成に用いられるのと同様の絶縁性樹脂組成物が用いられることが好ましい。
以下、絶縁性樹脂組成物から形成される密着補助層18の態様について説明する。
【0026】
密着補助層18を形成する際に用いられる絶縁性樹脂組成物は、配線基板10上に形成される絶縁層16を構成する電気的絶縁性の樹脂と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよいが、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性が近いものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、配線基板10上に形成される絶縁層16を構成する絶縁性樹脂と同じ種類の絶縁性樹脂を使用することが密着の点で好ましい。
また、密着補助層18の強度を高める、また、電気特性を改良するために、無機又は有機の粒子を添加してもよい。
【0027】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0029】
更に、密着補助層18には、層内での架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に、多官能のものを用いることが好ましい。
【0030】
密着補助層18は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて、種々の化合物を添加することができる。具体的には、例えば、加熱時に応力を緩和させることができる、ゴム、SBRラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0031】
更に、密着補助層18には、必要に応じて、充填剤(例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラー)、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を、一種又は二種以上添加してもよい。
【0032】
これらの材料を添加する場合は、いずれも主成分となる樹脂に対して、0〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0〜80質量%の範囲で添加される。密着補助層18と隣接する層を構成する材料とが、熱や電気に対して同じ又は近い物性値を示す場合には、これら添加物は必ずしも添加する必要はない。
【0033】
密着補助層18には、密着樹脂層20を構成する高分子化合物と相互作用を形成し得る活性点を発生させる活性種(化合物)が含まれることが好ましい。この活性点を発生させるためには、何らかのエネルギーを付与すればよく、好ましくは、光(紫外線、可視光線、X線など)、プラズマ(酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、熱、電気、等が用いられる。更に、酸化性の液体(過マンガン酸カリウム溶液)などによって表面を化学的に分解することで活性点を発生させてもよい。
活性種の例としては、重合開始剤(例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤)が挙げられる。具体的には、特開2007−154306公報段落番号〔0043〕、〔0044〕に記載されている。
密着補助層18に含有させる重合開始剤の量は、固形分で0.1〜50質量%であることが好ましく、1.0〜30質量%であることがより好ましい。
【0034】
(形成方法)
本発明においては、絶縁層16上に密着補助層形成用の組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより成膜させて密着補助層18を形成することができる。この時、加熱及び/又は光照射を行って硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、重合性化合物のある程度の硬化が予め行なわれるので、密着補助層18上に密着樹脂層20が生成した後に密着補助層18ごと脱落するといった事態を効果的に抑制し得るため好ましい。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が充分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適性の点からは、温度が200℃以下、乾燥時間は60分以内が好ましく、乾燥温度40〜100℃、乾燥時間20分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
【0035】
上記密着補助層18を構成する成分を塗布する際に用いる溶媒は、それらの成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどを使用することができる。なお、塗布溶液中の固形分の濃度は、取扱い性の点から、2〜50質量%が好ましい。
【0036】
密着補助層18は上記塗布法以外にも、転写法、印刷法などの公知の層形成方法により形成することもできる。
なお、転写法を適用する場合には、密着樹脂層20と密着補助層18との2層構成を有する転写積層体を作製し、ラミネート法によって一度に絶縁層16の表面に転写してもよい。
【0037】
<密着樹脂層20>
密着樹脂層20は、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基と重合性基とを有するポリマーを用いて得られる層であり、密着補助層18上(密着補助層18がない場合は、絶縁層16上)に設けられる。密着樹脂層20は、ポリマー中のめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基の機能に応じて、後述するめっき触媒またはその前駆体を吸着する。つまり、密着樹脂層20は、めっき触媒(またはその前駆体)の良好な受容層として機能する。また、重合性基は、ポリマー同士の結合や、密着補助層18(または、絶縁層16)との結合に利用される。その結果、密着樹脂層20の表面に形成される第2の導電層24(めっき膜)との優れた密着性を示す。
密着樹脂層20の厚みは特に制限されないが、ハンドリング性や製造コストの点から、0.1〜5μmが好ましく、0.2〜2μmがより好ましい。
また、密着樹脂層20の表面粗さ(Ra)は、配線形状および密着強度の点から、0.01〜0.3μmが好ましく、0.02〜0.15μmがより好ましい。なお、表面粗さ(Ra)は、非接触式干渉法により、JIS B 0601(20010120改訂)に記載のRaに基づき、サーフコム3000A(東京精密(株)製)を用いて測定した。
【0038】
密着樹脂層20は、密着補助層18(密着補助層18がない場合は、絶縁層16)上に形成された、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む層に、エネルギー付与して硬化させた層である。該ポリマーを含む層にエネルギー付与を行うことにより、重合性基を介して該ポリマー同士の反応が進行すると共に、該ポリマーが隣接する密着補助層18(密着補助層18がない場合は、絶縁層16)の表面と直接化学結合を生成し、密着補助層18(密着補助層18がない場合は、絶縁層16)と強固に結合した密着樹脂層20を形成することができる。
【0039】
エネルギーの付与が施されるポリマーを含む層の形成方法は特に制限されず、ポリマーを含有する組成物(以後、適宜密着樹脂層形成用組成物と称する)を使用することが好ましい。
具体的には、密着樹脂層形成用組成物中に基板を浸漬する方法や、密着樹脂層形成用組成物を絶縁層16(または、密着補助層18)上に塗布する方法が挙げられる。
取り扱い性や製造効率の観点からは、密着樹脂層形成用組成物を絶縁層16(または、密着補助層18)上に塗布・乾燥させて、ポリマーを含む層を形成する態様が好ましい。
なお、密着樹脂層形成用組成物の態様に関しては、後段で詳述する。
【0040】
密着樹脂層形成用組成物を絶縁層16(または、密着補助層18)と接触させる場合、その塗布量は、後述するめっき触媒またはその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
【0041】
(エネルギー付与方法)
密着樹脂層20を生成のためのエネルギー付与方法としては、例えば、露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射が可能である。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザビーム)も使用される。
また、熱記録ヘッド等により加熱する方法、赤外線レーザによる走査露光などの方法が挙げられ、さらには、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光なども好適な方法として挙げられる。
エネルギー付与に要する時間としては、使用されるポリマーの構造及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0042】
なお、エネルギーの付与を露光にて行う場合、その露光パワーは、グラフト重合を容易に進行させるため、また、生成されたグラフトポリマーの分解を抑制するため、10〜5000mJ/cm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜3000mJ/cm2の範囲である。
また、重合性基及び相互作用性基を有するポリマーとして、平均分子量2万以上、重合度200量体以上のポリマーを使用すると、低エネルギーの露光でグラフト重合が容易に進行するため、生成したグラフトポリマーの分解を更に抑制することができる。
【0043】
以下に、密着樹脂層20の形成に使用されるポリマー、および密着樹脂層形成用組成物について詳述する。
【0044】
<ポリマー>
本発明で使用されるポリマーは、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(適宜、相互作用性基とも称する)と重合性基を有する。
【0045】
(相互作用性基)
相互作用性基としては、極性基や、多座配位を形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などの非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)が挙げられる。
【0046】
極性基としては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有する官能基、若しくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基が挙げられる。これらは解離基の対イオンの形で金属イオンと吸着する。
また、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性の極性基も用いることもできる。
その他、イミノ基、1〜2級のアミノ基、アミド基、ウレタン基、水酸基(フェノールも含む)、チオール基などを用いることもできる。
【0047】
また、非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などが好ましい。具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、フォスフィン基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基が挙げられる。また、隣接する原子又は原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。
中でも、相互作用性基としては、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、シアノ基またはカルボン酸基が特に好ましい。また、得られる多層配線基板の接続信頼性や歩留りがより優れる点で、ポリマー中にシアノ基およびカルボン酸基の両者が相互作用性基として含まれていることが好ましい。
【0048】
(重合性基)
重合性基は、エネルギー付与により、ポリマー同士、又は、ポリマーと密着補助層18(または絶縁層16)との間に結合を形成しうる官能基であり、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられる。なかでも、反応性の観点から、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、ビニル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などが挙げられる。なかでも、メタクリル酸エステル基(メタアクリロイル基)、アクリル酸エステル基(アクリロイル基)、ビニル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好ましく、アクリロイル基、メタアクリロイル基、スチリル基が特に好ましい。
【0049】
重合性基及び相互作用性基を有するポリマーとしては、相互作用性基を有するモノマーを用いて得られるホモポリマーやコポリマーに、重合性基として、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーであることが好ましく、この重合性基及び相互作用性基を有するポリマーは、少なくとも主鎖末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、側鎖に重合性基を有するものが好ましい。
【0050】
このような重合性基及び相互作用性基を有するポリマーの合成方法は特に制限されず、公知の合成方法(特許公開2009−280905号の段落[0097]〜[0125]参照)が使用される。
例えば、重合性基として二重結合基を有する場合は、以下のように合成できる。合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましいのは、合成適性の観点から、ii)方法、iii)方法である。
【0051】
ポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0052】
(好適態様)
ポリマーの好適態様として、以下の式(1)で表されるユニット(重合性基を有するユニット)を有するポリマーが挙げられる。該ユニットがポリマー中に含まれることにより、密着補助層18または樹脂層16との優れた密着性が発現されると共に、膜中で架橋反応が進行し強度に優れた膜を得ることができる。
【0053】
【化1】

【0054】
式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
1〜R4が、置換または無置換のアルキル基である場合、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。より具体的には、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0055】
なお、R1としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
2としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
3としては、水素原子が好ましい。
4としては、水素原子が好ましい。
【0056】
YおよびZは、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜3)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。該有機基は、発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0057】
置換または無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、または、これらの基がメトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたものが好ましい。
置換または無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニレン基、または、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたフェニレン基が好ましい。
中でも、−(CH2)n−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH2−である。
【0058】
YおよびZとしては、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられる。
【0059】
1は、置換または無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記YおよびZで表される有機基と同義であり、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0060】
1としては、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、無置換のアルキレン基およびウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
1の構造として、より具体的には、式(1−1)、または式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0061】
【化2】

【0062】
式(1−1)および式(1−2)中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は上記と同様であり、好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、若しくはブチレン基などのアルキレン基、または、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基などのポリオキシアルキレン基などが挙げられる。
【0063】
式(1)で表されるユニットの好適態様として、式(1−A)で表されるユニットが挙げられる。
【0064】
【化3】

【0065】
式(1−A)中、R1、R2、XおよびL1は、式(1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Tは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0066】
式(1−A)で表されるユニットの好適態様として、式(1−B)で表されるユニットが挙げられる。
【0067】
【化4】

【0068】
式(1−B)中、R1、R2、およびL1は、式(1−A)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。VおよびTは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0069】
上記式(1−B)において、Tは、酸素原子であることが好ましい。
また、上記式(1−A)および式(1−B)において、L1は、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0070】
ポリマー中における式(1)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、反応性(重合性、硬化性)および基板との密着性の点で、全ユニット(100モル%)に対して、5〜50モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましい。5モル%未満の場合、反応性(硬化性、重合性)が低下する場合があり、50モル%を超える場合、ポリマーの合成の際にゲル化が起きやすく、反応の制御が難しくなる。
【0071】
ポリマーの好適態様として、以下の式(2)で表されるユニット(相互作用性基を有するユニット)を有するポリマーが挙げられる。該ユニットがポリマー中に含まれることにより、後述するめっき触媒またはその前駆体への吸着性が向上し、密着樹脂層20と後述する第2の導電膜24との優れた密着性が担保される。
【0072】
【化5】

【0073】
式(2)中、R5は、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R5で表される置換または無置換のアルキル基は、上述したR1〜R4で表される置換または無置換のアルキル基と同義である。
5としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0074】
XおよびL2は、それぞれ独立して、単結合、または置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記ZおよびYで表される二価の有機基と同義であり、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0075】
Xとしては、単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられ、より好ましくは単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)である。
【0076】
2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。
中でも、L2は総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、L2の総炭素数とは、L2で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、およびこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0077】
Wは、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(相互作用性基)を表し、その定義は上述の通りである。なかでも、めっき触媒またはその前駆体への吸着性に優れる点で、シアノ基またはカルボン酸基が好ましい。
【0078】
なお、該ポリマー中においては、Wの種類が異なる2種以上の式(2)で表されるユニットを含んでいてもよく、得られる多層配線基板の接続信頼性や歩留りがより優れる点で、Wがシアノ基である式(2)で表されるユニットと、Wがカルボン酸基である式(2)で表されるユニットとが含まれることが好ましい。
【0079】
式(2)で表されるユニットの好適態様として、式(2−A)で表されるユニットが挙げられる。
【0080】
【化6】

【0081】
上記式(2−A)中、R5、L2およびWは、式(2)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Uは、酸素原子、またはNR’(R’は、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0082】
式(2−A)におけるL2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基(なかでも、二価の芳香族炭化水素基が好ましい)、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(2−A)においては、L2中のWとの連結部位が、直鎖、分岐、または環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(2−A)におけるL2中のWとの連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0083】
ポリマー中における式(2)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、めっき触媒などに対する吸着性の点で、全ユニット(100モル%)に対して、5〜95モル%が好ましく、10〜95モル%がより好ましい。
【0084】
ポリマー中における上記ユニット(式(1)で表されるユニット、式(2)で表されるユニット)の結合様式は特に限定されず、各ユニットがランダムに結合したランダム重合体であっても、各ユニットが同じ種類同士連結してブロック部を形成するブロックポリマーであってもよい。
【0085】
ポリマーは、上述した式(1)で表されるユニット、式(2)で表されるユニット以外に、他のユニットを含んでいてもよい。
【0086】
(密着樹脂層形成用組成物)
密着樹脂層形成用組成物には上記ポリマーが含有される。
密着樹脂層形成用組成物中のポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、2〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、密着樹脂層20の層厚の制御がしやすい。
【0087】
密着樹脂層形成用組成物は、上記ポリマー以外に、必要に応じて溶剤が含まれていてもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、酢酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
この中でも、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
【0088】
密着樹脂層形成用組成物中の溶剤の含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、50〜98質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、密着樹脂層20の層厚の制御などがしやすい。
【0089】
なお、密着樹脂層形成用組成物には、更に、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、硬化剤、ラジカル発生剤、増感剤、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レべリング剤、カップリング剤などを添加してもよい。
【0090】
上記工程によって、配線基板10表面に、絶縁層16、所望により形成される密着補助層18、及び密着樹脂層20が形成されてなる積層体22が得られる〔図1(A)参照〕。
密着樹脂層20は、めっき金属の受容層として有用である。従って、本発明における積層体22は、配線基板10上に密着性良好な第2の導電膜24(第2の配線)を形成するのに有用である。図1(A)では、絶縁層16、密着補助層18、及び密着樹脂層20は、配線基板10の両面に設けられているが、片面のみに設けられていてもよい。
【0091】
<工程(B):めっき工程>
工程(B)では、上記(A)工程後に上記密着樹脂層に対してめっき触媒又はその前駆体を付与した後、めっきを行い、密着樹脂層上に第2の導電層を形成する。
より具体的には、図1(B)に示されるように、密着樹脂層20上に第2の導電層24が形成される。
第2の導電層24を構成する金属は、後述するめっきの種類に応じて適宜選択できるが、銅、銀、錫、パラジウム、金、ニッケル、クロム、タングステン、インジウム、亜鉛、または、ガリウムなどが好ましく挙げられる。
【0092】
本工程においては、密着樹脂層20中に含まれる相互作用性基が、その機能に応じて、付与されためっき触媒またはその前駆体を付着(吸着)する。より具体的には、密着樹脂層20中またはその表面に、めっき触媒またはその前駆体が付着される。
めっき触媒またはその前駆体としては、後述するめっき処理における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒またはその前駆体の種類は、めっきの種類により適宜決定される。
なお、本工程において用いられるめっき触媒またはその前駆体は、無電解めっき触媒またはその前駆体であることが好ましい。
以下、無電解めっき、またはその前駆体について詳述する。
【0093】
(無電解めっき触媒)
無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Ag、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒として、金属コロイドを用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
【0094】
(無電解めっき触媒前駆体)
無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、密着樹脂層20へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0095】
無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて密着樹脂層20に付与することが好ましい。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)Pd(OAc)n(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが好ましい。
【0096】
本発明で用いられる無電解めっき触媒又はその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)又はその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されないが、例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0097】
パラジウム塩としては、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウム、炭酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩化物などが挙げられる。なかでも、取り扱いやすさと溶解性の点で、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)が好ましい。
パラジウム錯体としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム錯体、ジパラジウムトリスベンジリデンアセトン錯体などが挙げられる。
パラジウムコロイドは、パラジウム(0)から構成される粒子で、その大きさは特に制限されないが、液中での安定性の観点から、5nm〜300nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。パラジウムコロイドは、必要に応じて、他の金属を含んでいてもよく、他の金属としては、例えば、スズなどが挙げられる。パラジウムコロイドとしては、例えば、スズ−パラジウムコロイドなどが挙げられる。なお、パラジウムコロイドは、公知の方法で合成してもよいし、市販品を使用してもよい。例えば、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、パラジウムイオンを還元することによりパラジウムコロイドを作製することができる。
【0098】
(その他の触媒)
本工程において、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、相互作用性基に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0099】
無電解めっき触媒である金属、又は、無電解めっき前駆体である金属塩を密着樹脂層20に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、又は、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液又は溶液を密着樹脂層20上に塗布するか、或いは、その分散液又は溶液中に密着樹脂層20が形成された積層体を浸漬すればよい。
また、工程(A)において、密着補助層18上に、重合性基及び相互作用性基を有するポリマーを含有する密着樹脂層形成用組成物を接触させることがあるが、この組成物中に無電解めっき触媒又はその前駆体を添加する方法を用いてもよい。
重合性基及び相互作用性基を有するポリマーと、無電解めっき触媒又はその前駆体とを含有する組成物を、密着補助層18上に接触させて、表面グラフト重合法を適用することにより、相互作用性基を有し、且つ、密着補助層18と直接化学結合したポリマーと、めっき触媒又はその前駆体と、を含有する密着樹脂層20を形成することができる。
【0100】
(有機溶剤、及び水)
上記のようなめっき触媒又は前駆体は、分散液または溶液(触媒液)として密着樹脂層20に付与されることができる。なお、触媒液には、有機溶剤や水が用いられる。
有機溶剤を含有することで、密着樹脂層20に対するめっき触媒又は前駆体の浸透性が向上し、相互作用性基に効率よくめっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
【0101】
触媒液には、水を用いてもよく、この水としては、不純物を含まないことが好ましく、そのような観点からは、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いるのが好ましく、脱イオン水や蒸留水を用いるのが特に好ましい。
【0102】
触媒液の調製に用いられる有機溶剤としては、密着樹脂層20に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
【0103】
特に、めっき触媒又はその前駆体との相溶性、及び密着樹脂層20への浸透性の観点では水溶性の有機溶剤が好ましく、アセトン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブ、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0104】
溶媒(水、有機溶剤)の含有量は、触媒液全量に対して0.5〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。
めっき触媒液には、めっき触媒又はその前駆体及び主たる溶剤である水に加え、本発明の効果を損なわない範囲において、目的に応じて他の添加剤を含有することができる。添加剤としては、以下に示すものが挙げられる。
例えば、膨潤剤(ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル類等の有機化合物など)や、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、双性、ノニオン性および低分子性または高分子性など)などが挙げられる。
【0105】
上記のようにめっき触媒又はその前駆体を接触させることで、密着樹脂層20中の相互作用性基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、めっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行わせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、又は溶液中の金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
この工程(B)の前段では、密着樹脂層20中の相互作用性基とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
【0106】
(めっき処理)
その後、無電解めっき触媒又はその前駆体が付与された密着樹脂層20に対し、めっきを行うことで、密着樹脂層20の表面に第2の導電層(めっき膜)24が形成される〔図1(B)〕。形成された第2の導電層24は、第2の金属配線として機能し、優れた導電性、密着性を有する。
第2の導電層の厚みは特に制限されないが、レーザ穴空け加工のしやすさ、及び、ビアの接続信頼性の点で、0.2〜20μmが好ましく、0.4〜10μmがより好ましく、5〜10μmが特に好ましい。
【0107】
本工程で行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっきが挙げられ、めっき触媒またはその前駆体の機能によって、適宜選択することができる。なかでも、密着樹脂層20中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0108】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された積層体を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0109】
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された積層体を、無電解めっき触媒前駆体が密着樹脂層20に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、積層体を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬されることが好ましい。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、その濃度は0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
【0110】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0111】
無電解めっき浴に用いられる溶剤としては、水又は有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、水に可能な溶剤である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0112】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物が適宜選択される。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO4、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH3)4)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0113】
めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0114】
(電気めっき)
本工程おいては、工程(B)において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与された密着樹脂層20に対して、電気めっきを行うことができる。また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ第2の導電層24(金属層)を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、第2の導電層24(金属層)を目的に応じた厚みに形成しうる。
【0115】
電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電気めっきに用いられる金属としては、例えば、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0116】
また、電気めっきにより得られる金属層の厚みについては、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。
【0117】
本発明において、めっき処理(無電解めっき、又は電気めっき)により、密着樹脂層20中に析出した金属が、該層中でフラクタル状の微細構造体として形成されていることによって、第2の導電層24と密着樹脂層20との密着性を更に向上させることができる。
密着樹脂層20中に存在する金属量は、基板断面を金属顕微鏡にて写真撮影したとき、密着樹脂層20の最表面から深さ0.5μmまでの領域に占める金属の割合が5〜50面積%であり、密着樹脂層20と金属界面の算術平均粗さRa(JIS B0633−2001)が0.05μm〜0.5μmである場合に、更に強い密着力が発現される。
【0118】
<工程(C):ビアホール形成工程>
工程(C)では、工程(B)後に、レーザ加工又はドリル加工により、第2の導電層、密着樹脂層、および絶縁層を除去・貫通し、第1の導電層に達するようにビアホールを形成する。なお、密着補助層がある場合は、該密着補助層も上記処理により除去・貫通される。
より具体的には、図1(C)に示されるように、該工程では、第2の導電層24、密着樹脂層20、密着補助層18および絶縁層16を貫通し、第1の導電層14と第2の導電層24とを導通させるためのビアホール26を形成する。
【0119】
ビアの形成方法としては、レーザ加工またはドリル加工が挙げられる。
レーザ加工に使用されるレーザは、第2の導電層24、密着樹脂層20、密着補助層18および絶縁層16を除去し、かつ、所望の径のビアホールを形成しうるものであれば、特に制限はない。なかでも、加工性に優れる点、即ち、効率よく各層をアブレーションすることが可能であり、生産性に優れるという点から、炭酸ガスレーザー(CO2レーザ)、UV-YAGレーザ、エキシマレーザー等が用いられる。なかでも、60μm未満のマイクロビアを形成する点で、UV-YAGレーザが好ましい。
【0120】
ドリル加工は、第2の導電層24、密着樹脂層20、密着補助層18および絶縁層16を除去し、かつ、所望の径のビアホールを形成しうるものであれば特に制限はないが、生産性や小径ビア加工性の観点で、スピンドリル法が一般的に用いられる。
【0121】
本工程で形成されるビアホール26の径は使用目的に応じて適宜最適な径の大きさが選択されるが、高密度多層基板を形成する点から、トップ径(φ)が20〜150μmであり、ボトム径(φ)が20〜120μmであることが好ましく、トップ径(φ)が20〜60μmであり、ボトム径(φ)が20〜50μmであることが配線の微細化や集積化の観点ではより好ましい。
【0122】
<工程(D):デスミア処理>
工程(D)では、上記工程(C)によって形成されたビアホール26に残存するスミア(残渣)を除去するデスミア処理を行う。
レーザ加工やドリル加工によって第2の導電層24、密着樹脂層20、密着補助層18および絶縁層16を部分的に除去する際、樹脂が溶融する又は分解する時の溶融物や、分解物がビアホール26の側面や底部に付着すること、また、ビアホール26底部に存在する第1の導電層14に直接影響を与えないために、レーザ加工を調整することによって、ビアホールの底部に絶縁層16が一部残ることがある。本工程では、このような残渣を取り除く。
【0123】
デスミア処理の方法は特に制限されず公知の方法が採用されるが、ビアホール26穴部の表面を乾式及び/又は湿式法により粗化する方法により行われる。
乾式粗化法としては、バフ、サンドブラスト等の機械的研磨や、プラズマエッチングが挙げられる。
一方、湿式粗化法としては、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸、等の酸化剤を用いる方法や、強塩基や樹脂膨潤溶剤を用いる方法等の化学薬品処理が挙げられる。工程の簡便性からは、過マンガン酸塩などを用いる化学薬品処理が好ましい。
【0124】
デスミア処理の具体的な方法としては、例えば、市販品であるMLB211(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を20容量%、キューポジットZ10容量%を含む膨潤浴に、60〜85℃で1〜15分間浸漬した後、MLB213A(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を10容量%とMLB213B(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を15容量%含むエッチング浴に55℃〜85℃で2〜15分間浸漬処理し、MLB216−2(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を20容量%含む中和浴に35℃〜55℃で2〜10分間浸漬する等の公知の方法が挙げられる。
【0125】
デスミア処理の他の方法としては、過マンガン酸ナトリウム系のエッチング液を用いた80℃10分間のエッチング工程、硫酸系の中和液を用いて40℃5分間の中和工程などを有する処理が挙げられる。
【0126】
デスミア処理を行っても、第1の導電層14及び第2の導電層24表面は化学薬品の影響を受けることなく表面平滑性を維持するが、ビアホール26の穴側面の露出部分は、スミアの除去と共に表面も粗面化される。このため、後述する工程(E)で形成される、第1の導電層14及び第2の導電層24を導通させる導通用金属膜28とビアホール26の壁面との親和性、密着性が向上するという利点も有することになる。
【0127】
<工程(E):導通工程>
工程(E)では、上記工程(D)後に、ビアホール壁面に対して、グラファイトまたはカーボンブラックを付与した後、無電解めっきを行うことなく、電気めっきを行い、第1の導電層と第2の導電層とを電気的に接続する。
より具体的には、図1(D)に示されるように、該工程では、第1の導電層14と第2の導電層26との間に、グラファイトまたはカーボンブラックの付与後の電気めっき処理により形成された導通用金属膜28が形成される。図1(D)に示されるように、導通用金属膜28は、ビアホール26の側面のみならず、第1の導電層14および第2の導電層26表面にも形成されてもよい。
【0128】
(グラファイトまたはカーボンブラック)
該工程では、ビアフィリングを良好にする点で、グラファイトおよび/またはカーボンブラック(以下、炭素触媒とも称する)が使用され、特にグラファイトが好ましい。
【0129】
グラファイトとしてはその種類は特に制限されず、例えば、鱗状黒鉛、人造黒鉛、土状黒鉛等が用いられる。
グラファイトの平均粒径は特に制限されないが、ビアフィリングを良好にする点で、0.05〜8μmが好ましい。
グラファイトのBET比表面積は特に制限されないが、得られる多層配線基板の接続信頼性がより高いという点で、1〜100m2/gが好ましい。
【0130】
カーボンブラックとしてはその種類は特に制限されず、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF等の従来から公知のカーボンブラックを用いることができる。
カーボンブラックの平均粒子径は特に制限されないが、ビアフィリングを良好にする点で、0.01〜1μmが好ましい。
グラファイトのBET比表面積は特に制限されないが、ビアフィリングを良好にする点で、1〜100m2/gが好ましい。
【0131】
(触媒付与方法)
ビアホール26の壁面に対して炭素触媒を付与する方法は特に制限されないが、操作性に優れ、壁面上における触媒量の制御が容易である点から、炭素触媒を含む溶液または分散液をビアホール26の壁面に接触させる方法が好ましい。該溶液または分散液をビアホール26の壁面に接触させる方法は特に制限されず、例えば、ビアホール26を有する積層体上に該溶液または分散液を塗布する方法や、該溶液または分散液中にビアホール26を有する積層体を浸漬する方法などが挙げられる。
なお、浸漬方法を実施する場合は、生産性等の点から、積層体を該溶液または分散液中に3〜10分浸漬することが好ましい。
【0132】
該溶液または分散液に使用される溶媒は特に制限されず、例えば、上述した上記密着樹脂層形成用組成物中に含有される溶媒などが挙げられる。
なかでも、触媒付与や洗浄効率に優れる点で、水、エタノール、ジオール(グリコール)などが好ましい。
該溶液または分散液中における炭素触媒の含有量は、使用される溶媒や触媒の種類に応じて適宜最適な条件が選択されるが、触媒付与の効率に優れる点で、該溶液または分散液全量に対して、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜3質量%がより好ましい。
【0133】
触媒付与後、必要に応じて、第1の導電層14および第2の導電層24上に付着した余分な炭素触媒を除去するために、洗浄工程を設けてもよい。
具体的には、洗浄液を第1の導電層14および第2の導電層24に接触させることにより、余分な炭素触媒を除去する方法が挙げられる。洗浄液を接触させる方法は特に制限されず、洗浄液を第1の導電層14および第2の導電層24上に塗布する方法や、第1の導電層14および第2の導電層24を備える積層体を洗浄液中に浸漬する方法が挙げられる。
なお、洗浄液としては、例えば、硫酸/過酸化水素水溶液などが挙げられる。
【0134】
(めっき方法)
ビアホール26の壁面(具体的には、図1(C)に示されるように、絶縁層16、密着補助層18、密着樹脂層20)に炭素触媒を付与した後、無電解めっきを行うことなく、電気めっきを行う。無電解めっきを行うと、第1の導電層14と第2の導電層24との接続が不十分となり接続信頼性が損なわれる。さらに、第2の導電層24上に形成されるめっき膜の接着性が充分でないといった問題も生じる。
【0135】
本工程における電気めっきの方法は、上記工程(B)で説明した電気めっきと同様の方法を実施することができる。
なお、電気めっきを行う前に、後述する工程(F)および(G)を行い、密着樹脂層20上にパターン状のレジスト層を形成し、その後電気めっきを行ってもよい。この場合、電気めっき後に、後述する工程(I)を行って、レジスト層を除去してもよい。
【0136】
第1の導電層14と第2の導電層24とを導通する導通用金属膜28の厚みは適宜制御することができるが、インピーダンス・コントロールなど回路設計の点から、4〜50μmが好ましく、8〜30μmがより好ましい。
【0137】
上記工程により得られた2層の配線を有する多層配線基板は、実装に適するように、さらなる配線を形成するコアとなる基板として使用することもできる。本発明の形成方法により得られた多層配線板にさらなる配線を積層する方法としては、公知のセミアディティブ法、サブトラクティブ法などを適用することができる。
以下、本発明の形成方法により得られた多層配線板を用い、さらなる配線を形成する代表的な形成方法について説明する。第2の導電層24表面にさらに配線を形成するために、以下の工程(F)〜工程(I)を行うことができる。
【0138】
<工程(F):レジスト層形成工程>
工程(F)では、密着樹脂層上に形成された金属膜表面に、めっきレジスト層を形成する。
より具体的には、図2(A)で示されるように、導通用金属膜28表面に、めっきレジスト層30を形成する。
めっきレジスト層は、公知の方法で形成することができ、一般的なドライフィルムレジストやソルダーレジストなどが用いられ、ドライフィルムレジストが好ましい。ドライフィルムレジストとしては、如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。
めっきレジスト層30の厚みは、形成される配線の厚みに応じて選択されるが、一般的には、5〜200μmが好ましい。5μm未満ではフィルムが切れやすいため取扱いにくく、一方、耐折性を満たすといったハンドリング性の観点からは200μm以下であることが好ましい。
【0139】
<工程(G):パターニング工程>
工程(G)では、形成されためっきレジスト層30を、パターン露光、現像によりパターニングする。
より具体的には、図2(B)に示されるように、形成しようとする配線パターン(金属パターン)と同じ領域にはめっきレジスト層30を有さず、金属パターンの非形成領域のみにめっきレジスト層30が存在するようにパターンを形成する。
ドライフィルムレジストのパターン形成方法は、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能である。
【0140】
<工程(H):配線パターン形成工程>
工程(H)では、めっきレジスト層を使用して電気めっきを行い、配線パターンを形成する。
より具体的には、図2(C)に示されるように、パターニングされためっきレジスト層30をマスクとして電気めっきを行い、めっきレジスト層30の非形成領域にパターン状の金属層32を形成する。これがさらなる配線パターンを形成することになる。
電気めっきは、上記工程(B)で説明した電気めっきと同様の方法を実施することができる。
形成される金属層32の膜厚は、配線の目的に応じて選択されるが、一般には、0.3〜3μmの範囲であることが好ましい。
【0141】
<工程(I):レジスト層除去工程>
工程(I)では、金属層(配線パターン)の形成後、電気めっきの通電に使用した非配線パターン部のめっきレジスト層を除去する。
より具体的には、図2(D)に示すように、金属層32を形成した後、非配線領域のめっきレジスト層30を除去する。このようにして、図2(D)に示すように、めっきレジスト層30の非形成領域のみにパターン状の金属層32(配線パターン)が形成される。なお、図2(D)に示すように、形成されたパターン状の金属層32は、下層の第2の導電層24、及び、その表面に形成された導通用金属膜28により互いに導通されているため、必要に応じて、ドライフィルムレジストパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、第2の導電層24および導通用金属膜28のうち、不要な領域をパターン状に除去することで、第2の導電層24、導通用金属膜28、および金属膜32からなる配線パターン34の形成が完了し、多層配線板が得られる〔図2(E)〕。
エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、作業性の観点からは、湿式エッチングが好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0142】
<多層配線基板>
本発明の形成方法により得られた多層配線基板は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、マザーボード、パッケージインターポーザー基板等の種々の用途に適用することができる。
なかでも、本発明の方法により作製された多層配線基板は、平滑な基板との密着性に優れた配線が容易に形成でき、高周波特性も良好であるとともに、微細な高密度配線であっても、配線間の接続信頼性に優れる。
【実施例】
【0143】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
以下に、本実施例で使用するポリマーの合成方法について詳述する。
(合成例1:ポリマーA)
1000mlの三口フラスコに、N−メチルピロリドン35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成製)6.60g、2−シアノエチルアクリレート28.4g、及びV−601(和光純薬製)0.65gのN−メチルピロリドン35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.29g、ジブチルチンジラウレート0.29g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)18.56g、及びN−メチルピロリドン19gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応液にメタノールを3.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、本発明のポリマーAを25g得た。
【0145】
(構造の同定)
ポリマーAを重DMSOに溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが4.3−4.05ppm(2H分)、2.9−2.8ppm(2H分)、2.5−1.3ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが7.2−7.3ppm(1H分)、6.4−6.3ppm(1H分)、6.2−6.1ppm(1H分)、6.0−5.9ppm(1H分)、4.3−4.05ppm(6H分)、3.3−3.2ppm(2H分)、2.5−1.3ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット=22:78(mol比)であることが分かった。
【0146】
(分子量の測定)
ポリマーAを、THFに溶解させ、東ソー製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて分子量の測定を行った。その結果、23.75分にピークが現れ、ポリスチレン換算でMw=5300(Mw/Mn=1.54)であることが分かった。
なお、以下のポリマーAの化学式中の数値は、各ユニットのモル%を表す。
【0147】
【化7】

【0148】
(合成例2:ポリマーB)
1Lの三口フラスコに酢酸エチル300mL、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30g、ピリジン19.8gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ2−ブロモイソ酪酸ブロミド57gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mL追加して反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウム乾燥し、酢酸エチルを留去した後、カラムクロマトグラフィーにてモノマーを精製した(25g)。
【0149】
(構造の同定)
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド28gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、上記で合成したモノマー:20.9g、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製)4.0g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)8.6g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.49gのN,N−ジメチルアセトアミド11.5g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド173gを追加し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.13g、1,8−ジアザビシクロウンデセン66.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液65g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーB(重量平均分子量6.2万)を20g得た。得られたポリマーBの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、この特定ポリマーBの酸価は3.2mmol/gであった。
【0150】
得られたポリマーBの同定をIR測定機((株)堀場製作所製)を用いて行った。測定はポリマーをアセトンに溶解させKBr結晶を用いて行った。IR測定の結果、2240cm−1付近にピークが観測されニトリルユニットであるアクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが重合性基含有ユニットに相当するピークが6.2−6.0ppm(1H分)、5.8−6.0ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.5−0.7ppm(8H分)にブロードに観察され、にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=31:32:37(mol比)であることが分かった。
【0151】
【化8】

【0152】
<実施例1>
[1.絶縁層の作製]
第1の導電層(銅箔)が予め形成されたガラスエポキシ基板上に、電気的絶縁層として味の素ファインテクノ社製エポキシ系絶縁膜GX−13(膜厚45μm)を、加熱、加圧して、真空ラミネーターにより0.2MPaの圧力で100〜110℃の条件により接着して、絶縁膜を形成した。
【0153】
[2.密着補助層の作製]
次に、JER806(ビスフェノールF型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製)11.8質量部、LA7052(フェノライト、硬化剤:大日本インキ化学工業)4.8質量部、YP50−35EK(フェノキシ樹脂、東都化成製)21.7質量部、シクロヘキサノン61.6質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(硬化促進剤)0.1質量部を混合した混合溶液を、ろ布(メッシュ#200)にて濾過し、塗布液を調製した。
この塗布液を、スピンコータ(300rpmで5秒回転後、1500rpmで20秒回転)にて上記基板に塗布し、その後、180℃で30分乾燥して硬化させた。これにより、基板A1を得た。硬化した密着補助層の厚みは1.0μmであった。この基板A1の表面凹凸(Ra)は0.10μm(200μm2)であった。
【0154】
[3.塗布液(密着樹脂層形成用組成物)の調製、及び、密着樹脂層の作製]
重合性基及び相互作用性基を有するポリマーAの7%アセトニトリル溶液に、ポリマーA100重量部に対して20質量部の合成ゴム〔Nipol1041、商品名:日本ゼオン社製〕を添加し、密着樹脂層形成用組成物1の塗布液を調製した。
【0155】
調製された塗布液を上記基板A1の密着補助層上に、スピンコータ(300rpmで5秒回転後、750rpmで20秒回転)にて塗布し、80℃にて30分乾燥した。乾燥後、三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、石英製のマスクを介して10mW/cm2の照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、100秒間照射させて、密着補助層全面にグラフトポリマーを生成させ、密着補助層と直接結合したポリマーが含まれる密着樹脂層を形成した。積算露光量は500mJであった。
【0156】
その後、攪拌した状態のアセトニトリル中にグラフトポリマーが生成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。これにより、密着樹脂層を有する積層体を得た。密着樹脂層の厚みは、0.3μmであった。
【0157】
[4.めっき触媒の付与]
得られた積層体を、硝酸パラジウムの0.05質量%アセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトン及び蒸留水で、各々1〜2分間洗浄した。
【0158】
[5.無電解めっき]
上記のようにして、めっき触媒が付与された積層体に対し、上村工業(株)製スルカップPGTを用い、下記組成の無電解めっき浴を用い、無電解めっき温度26℃で60分間、無電解めっきを行い、積層体表面に第2の導電層を有する積層体を得た。得られた無電解銅めっき膜の厚みは1.0μmであった。
無電解めっき液の調液順序及び原料は以下の通りである。
蒸留水 約60容量%
PGT−A 9.0容量%
PGT−B 6.0容量%
PGT−C 3.5容量%
ホルマリン液* 2.3容量%
最後に、全量が100容量%となるように蒸留水にて液面調整した。
*ここで用いたホルマリンは、和光純薬のホルムアルデヒド液(特級)である。
【0159】
[6.ビアの形成]
UV−YAGレーザを用いて周波数5000HZでショット数200〜300の間、パルスエネルギー0.05〜0.12mJの間で調整し、ビアのトップ径60μmの第1の導電層表面まで到達するビアホールを形成した。
【0160】
[7.デスミア処理]
デスミア処方としては、MLB211(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を20容量%、キューポジットZを10容量%含有する膨潤浴に積層体を70℃で7分間浸漬した後、MLB213A(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を10容量%とMLB213B(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を15容量%含有するエッチング浴に80℃で10分間浸漬処理し、MLB216−2(ロームアンドハース電子材料株式会社製)を20容量%含有する中和浴に45℃で7分間浸漬することにより、ビアホールのデスミア処理を実施した。
【0161】
[8.炭素触媒付与]
25℃の蒸留水200gに、リノレン酸ナトリウム4.0gを添加した。その後、グラファイト(伊藤黒鉛工業製、CP-2、平均粒径2μm、BET比表面積20m2/g)4.0gを添加し、30分間攪拌して、分散液を得た。
得られた分散液(25℃)に、デスミア処理が施された積層体を15分間浸漬して、ビアホール壁面にグラファイトを付与した。
【0162】
[9.洗浄工程]
第1の導電層と第2の導電層に付着した余分なグラファイト触媒を除去するために、25℃の硫酸/過酸化水素水溶液(蒸留水100g、硫酸3.2N 16g、過酸化水素水90g)中に積層体を40秒間浸漬した。
【0163】
[10.電気めっき用のめっきレジスト層の形成とパターニング]
1%硫酸水溶液にて銅表面を洗浄した後、温度110±10℃、圧力0.35±0.05Mpaにて、ドライフィルムレジスト(ALPHO NIT3025:ニチゴー・モートン(株)社製)をラミネートした。回路パターンの焼付けを、ガイド穴を基準として超高圧水銀ランプで120mJ/cm2にて紫外線を照射してパターン露光を実施した後、1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30℃にてスプレー圧0.15MPaにてドライフィルムレジストを現像してめっきレジストパターンを形成した。
【0164】
[11.電気めっき]
第1の導電層、第2の導電層、および付与された炭素触媒を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dm2の条件で、電気めっきを45分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは20μmであった。
【0165】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0166】
[12.レジストの剥離とエッチング]
4質量%水酸化ナトリウム水溶液をレジスト剥離液として用い、80℃にてスプレー圧0.2MPaにて100秒間表面に適用することでめっきレジストパターンを剥離除去処理した。その後、非回路パターン部分の下地導電層として使用した銅がなくなるように過水硫酸系のソフトエッチング液にて除去して、配線パターン34を作製した(図3参照)。
上記工程後、得られた基板を水洗いして、ブラインドビアにて層間接続されたセミアディティブパターンを得た。具体的には、50μmφのブラインドビア100ヶ所が接続されたビア・チェーン(デイジー・チェーン)(図3参照)を、各々20ユニットずつ作製した。該ユニットを用いて、後述する評価試験を行った。
【0167】
<実施例2>
実施例1で実施した[5.無電解めっき]の処理時間を20分に変更して、厚み0.3μmの無電解銅めっきを作製後、引き続き該銅めっきを給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dm2の条件で、電気めっきを10分間行い、厚み5μmの銅めっきを得た以外は、実施例1と同様の方法にて、多層配線基板を作製した。
【0168】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0169】
<実施例3>
実施例1で使用したポリマーAの代わりにポリマーBを使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、多層配線基板を作製した。
【0170】
<実施例4>
実施例1で実施した[8.炭素触媒付与]および[9.洗浄工程]の代わりに、下記の[ビア壁面への分散液(「MacDermid Blackhole(商標)SP溶液」)の吸着]により、ビア壁面へ炭素触媒の吸着・洗浄を行い、それ以外は実施例1同様にして、多層配線基板を作製した。
【0171】
[ビア壁面への分散液(「MacDermid Blackhole(商標)SP溶液」)の吸着]
6g/Lの2.5−ジノニルイミダゾール水溶液(pH4.4、酢酸により調節)中に、デスミア処理が施された積層体を、35℃で1分間浸漬し、濯いだ。次に、MacDermid社製の分散液「MacDermid Blackhole(商標)SP溶液」に、積層体を54℃で5分間浸漬し、水洗した。さらに、積層体を該分散液に32℃で90秒間浸漬して取り出し、強制的風乾した。その後、85℃、1分間、加熱乾燥した。
さらに、積層体を5%塩酸水溶液中に38℃で1分間浸漬し、水洗した。余分な炭素触媒を除去し、ビア壁面にのみ炭素触媒を吸着させた。
【0172】
<実施例5>
実施例1の[8.炭素触媒付与]を下記手順Aのように変更し、さらに、実施例1の[9.洗浄工程]を下記手順Bのように変更した以外は実施例1と同様の方法にて、多層配線基板を製作した。
【0173】
手順A:「25℃の蒸留水200gに、タンニン酸6.5gを添加した。その後、粒状カーボンブラック(三菱化学(株)製、銘柄名 #3230B、平均粒径23nm、BET比表面積220m2/g)4.0gを添加し、30分間攪拌して、分散液を得た。得られた分散液(25℃)に、デスミア処理が施された積層体15分浸漬して、ビアホール壁面に導電カーボンブラックを付与した。」
手順B:「第1の導電層と第2の導電層に付着した余分なカーボンブラック触媒を除去するために、25℃の硫酸/過酸化水素水溶液(蒸留水100g、硫酸3.2N 16g、過酸化水素水90g)中に積層体を40秒間浸漬した。」
【0174】
<比較例1>
実施例1中の[8.炭素触媒付与]で行った処理の代わりに、以下の[無電解めっき触媒付与、及び、無電解めっき]に記載の処理を行った以外は、実施例1と同様の方法にて多層配線基板を作製した。
【0175】
[無電解めっき触媒付与および無電解めっき]
ビアホールを有する積層体を、硝酸パラジウムの0.05質量%アセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトン及び蒸留水で、各々1〜2分間洗浄した。
ビアホールの壁面にめっき触媒が付与された積層体に対し、上村工業(株)製スルカップPGTを用い、下記組成の無電解めっき浴を用い、無電解めっき温度26℃で20分間、無電解めっきを行い、第1の導電層と第2の導電層を導通するように無電解銅めっき膜(厚み:0.3μm)を作製した。
無電解めっき液の調液順序及び原料は以下の通りである。
蒸留水 約60容量%
PGT−A 9.0容量%
PGT−B 6.0容量%
PGT−C 3.5容量%
ホルマリン液* 2.3容量%
最後に、全量が100容量%となるように蒸留水にて液面調整した。
*ここで用いたホルマリンは、和光純薬のホルムアルデヒド液(特級)である。
【0176】
<比較例2>
第1の導電層(銅箔)が予め形成されたガラスエポキシ基板上に、厚み0.06mmのガラス繊維により補強されたエポキシ系プリプレグ(半硬化絶縁膜;日立化成工業製、MCL−E−67N)を真空プレスにて押圧5MPa、硬化温度180℃の条件にて1時間処理した後、実施例1の[4.めっき触媒の付与]、[5.無電解めっき]、[6.ビアの形成]、[7.デスミア処理]を行なった。
【0177】
その後、実施例4で行った[ビア壁面への分散液(「MacDermid Blackhole(商標)SP溶液」)の吸着]を行ない、その後、実施例1の[10.電気めっき用のめっきレジスト層の形成とパターニング]から[12.レジストの剥離とエッチング]の処理を行ない、多層配線基板を作製した。
【0178】
上記比較例1では、導通用金属膜を作製する際に、特開2008−334602号に対応した無電解めっき法を利用して、多層配線基板を作製した。
また、比較例2では、密着樹脂層を使用せずに、多層配線基板を作製した。
【0179】
<接続信頼性評価>
実施例1〜5、及び、比較例1〜2で得られたビア・チェーンの接続信頼性を評価するために、配線形成直後の導通不良率(初期不良)、及び、サーマルショック試験 MIL-STD-883D(環境;液相、温度範囲;−65℃⇔+150℃、周期;2分)1000サイクル後の導通不良率を調べた。なお、初期不良が生じたものは、サーマルショック試験から除外している。また、ここでは導通しなかったものを、導通不良として判断した。結果を表1にまとめて示す。
なお、実施例、比較例はラボスケール品であるが、その場合の合格基準は、表1「ビア・チェーン接続不良率(Total)」が20%以下である。
【0180】
<密着樹脂層(または絶縁層)の表面粗さ>
実施例1〜5、及び、比較例1〜2で得られたビア・チェーン表面の銅箔をエッチングして、密着樹脂層の表面表さ(Ra)を非接触式三次元平面度測定機(VeriFireTM XP/D、Zygo社製)にて測定した。結果を表1にまとめて示す。
なお、比較例2においては密着樹脂層の代わりに、絶縁層の表面粗さを測定した。
【0181】
<表層銅箔の引き剥がし強度(90°ピール強度)>
実施例1〜5、及び、比較例1〜2で得られたビア基板に対して、JIS C 6481 (1996年)プリント配線板用銅張積層板試験に記載の方法にて表層銅箔の90°引き剥がし試験を行った。試験機は(株)島津製作所製のオートグラフAGS−Jを使用し、引き剥がす銅箔の幅は10mm、引き剥がし速度は毎分50mm、測定数はN=5とし、その平均値を算出した。結果を表1にまとめて示す。
なお、実用上の点から、ピール強度は0.6〜0.7N/mm以上であることが必要である。
【0182】
<歩留まり評価>
実施例1〜5、及び、比較例1〜2のセミアディティブ法にてパターン形成した表層の銅配線(図3中、配線パターン34に該当)は、LS:10μm、配線厚み:20μm、配線長は4mmであった。面状検査は配線200本ずつ行い、配線の歪み、剥れ・倒れ、消失が生じている数を調べ、その割合(歩留り不良率)を算出した。結果を表1にまとめて示す。
なお、実施例、比較例はラボスケール品であるが、その場合の合格基準は、表1「微細配線歩留り不良(LS10μm不良率)」が20%以下である。
【0183】
【表1】

【0184】
本発明の製造方法によって得られた実施例1〜5は、接続不良率、および微細配線の歩留り不良率が低く、かつ、表面に形成された銅箔(金属膜)の密着性にも優れていた。
一方、導電性を示す触媒を使用せず、無電解めっきを行った比較例1では、接続不良率、および微細配線の歩留りともに不良率が高い。比較例1のビア壁面およびビア底部は無電解めっきと電気めっきによって接合されているが、無電解めっき膜と電気めっき膜との間の密着力は一般的に低くなりやすい。このような低い密着力により、ビア接続不良が生じた、と予想される。
また、比較例1はJIS C 6481 (1996年)の条件で測定した90°ピール強度は高い。一方、微細配線では1cm幅サイズの密着力の値よりも、配線スケールにおける密着力の面内バラツキの程度が重要であるが、この測定は困難である。比較例1の歩留り不良が高い原因としては、平面領域が無電解めっき膜と、電気めっき膜との積層という、面内バラツキ、特に微小スケールでのバラツキが大きくなりがちな構成をとっているため、と思われる。
また、密着樹脂層を使用していない比較例2も接続不良率、歩留まり不良ともに高い。比較例2では、絶縁層の表面粗さが大きいため、歩留り不良率が極めて高いと判断できる。一方、比較例2の接続不良率が低い原因としては、実施例1から5の密着樹脂層が応力緩和層として働き、これが予想以上の効果を示したこと、および、サーマルショックの極めて厳しい条件などが挙げられる。その結果、比較例2と、実施例1から5との差が顕著に現れたのではないかと思われる。
【符号の説明】
【0185】
10:配線基板
12:基板
14:第1の導電層
16:絶縁層
18:密着補助層
20:密着樹脂層
22、36:積層体
24:第2の導電層
26:ビアホール
28、42:導通用金属膜
30:めっき用レジスト
32:金属層
34:配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1の導電層を備える配線基板表面に、絶縁層、及び、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む層にエネルギー付与して得られる密着樹脂層をこの順で備える積層体を形成する工程と、
(B)前記(A)工程後に前記密着樹脂層に対してめっき触媒又はその前駆体を付与した後、めっきを行い、前記密着樹脂層上に第2の導電層を形成する工程と、
(C)前記工程(B)後に、レーザ加工又はドリル加工により、前記第2の導電層、前記密着樹脂層、および前記絶縁層を貫通し、前記第1の導電層に達するようにビアホールを形成する工程と、
(D)前記工程(C)後に、デスミア処理を行う工程と、
(E)前記工程(D)後に、前記ビアホール壁面に対して、カーボンブラックまたはグラファイトを付与した後、無電解めっきを行うことなく、電気めっきを行い、前記第1の導電層と前記第2の導電層とを電気的に接続する工程と、を備える多層配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2の導電層の厚みが、0.2〜20μmである、請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基が、シアノ基またはカルボン酸基である、請求項1または2に記載の多層配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記積層体が、前記絶縁層と前記密着樹脂層との間に密着補助層をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の多層配線基板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−54368(P2012−54368A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195158(P2010−195158)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】