説明

多層配線基板用絶縁樹脂組成物及びこれを含む多層配線基板

【課題】本発明は、多層配線基板用絶縁樹脂及びこれを含む多層配線基板に関する。
【解決手段】本発明の一実施例による多層配線基板用絶縁樹脂組成物は、高分子樹脂と、上記高分子樹脂の硬化物内に分散される酸化グラフェンを含む。本発明の一実施形態による多層配線基板用絶縁樹脂組成物を含む多層配線基板は、優れた機械的特性及び信頼性を示すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板用絶縁樹脂組成物及びこれを含む多層配線基板に関するものであって、より詳細には、機械的特性及び信頼性に優れた多層配線基板用絶縁樹脂組成物及びこれを含む多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プリント回路基板(Printed Circuit Board;PCB)又は多層配線基板とは、集積回路、抵抗器又はスイッチ等の電気的部品等が実装される薄板であって、各種電子機器、電子通信機器、携帯電話、ノート型パソコン等、用途に応じて多様な形態に製造されており、製造方式も多様化している。
【0003】
最近、電子製品の小型化、薄板化、高密度化、パッケージ(package)化の傾向により、プリント回路基板(Printed Circuit Board)も微細パターン(fine pattern)化、小型化及びパッケージ化が進んでいる。プリント回路基板の微細パターンの形成、信頼性及び設計密度の向上のために、原資材の変更とともに回路の層構成を複合化する構造に変化している。
【0004】
一般的に、プリント回路基板の絶縁層として、高分子材料にガラス繊維が含浸された半硬化(B−Stage)状のプリプレグ(Prepreg)が用いられている。プリプレグは、ガラス繊維が含浸されているため、機械的強度に優れ、熱膨張係数(CTE)が低いという長所がある。しかし、プリント回路基板に貫通孔やレーザーを用いてマイクロビアを加工しメッキする過程で、ガラス繊維の残査(Debris)により貫通孔やマイクロビアの内部に粗さ(Roughness)が形成され、これによって非メッキやメッキの浮き等の問題が生じ得る。また、ガラス繊維同士が交差する地点と交差しない地点で段差が発生し微細回路の加工が困難になり、局部的な誘電定数(Dielectric Constant)の値が相違するため高速(High Speed)デバイスを具現することが困難であるという問題がある。
【0005】
最近では、プリント回路基板の絶縁層として、ガラス繊維が含浸されない高分子材料が用いられている。このような高分子材料は、一般的に、高分子樹脂、フィラー、硬化剤(Hardner)、各種の添加剤等を混合し、キャスティング等の方法によってフィルム状に製造される。このような高分子材料は、ガラス繊維がないため微細回路パターンの形成が可能であり、均一な誘電定数を示し、高速デバイスに適するという長所がある。しかし、機械的強度が弱く、熱膨張係数が大きく、かつ偏差が大きいため、信頼性が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、機械的特性及び信頼性に優れた多層配線基板用絶縁樹脂組成物及びこれを含む多層配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、高分子樹脂と、上記高分子樹脂の硬化物内に分散される酸化グラフェンとを含む多層配線基板用絶縁樹脂組成物を提供する。
【0008】
上記酸化グラフェンは、表面及び端部に、ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基のうち少なくとも一つの官能基を有することができる。
【0009】
上記酸化グラフェンの酸素数に対する炭素数の比(炭素/酸素)は、1から20であることができる。
【0010】
上記酸化グラフェンの含量は、上記高分子樹脂100重量部に対して0.05から40重量部であることができる。
【0011】
上記高分子樹脂は、上記酸化グラフェンとの化学結合が可能な官能基を有することができる。
【0012】
上記高分子樹脂と上記酸化グラフェンは、硬化反応によって共有結合することができる。
【0013】
上記高分子樹脂は、エポキシ樹脂であることができる。
【0014】
上記高分子樹脂は、下記式1で表される構造を有する熱硬化性液晶高分子であることができる。
【0015】
[式1]
【化1】

【0016】
上記式において、R及びRはCH又はHであり、R及びRのうち少なくとも一つはCHであり、Arは、エステル(ester)、アミド(amide)、エステルアミド(ester amide)、エステルイミド(ester imide)、及びエーテルイミド(ether imide)からなる群より選ばれた一つ以上の構造単位を含み、分子量5,000以下である2価の芳香族有機基である。
【0017】
上記Arは、下記式2で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含むことができる。
【0018】
[式2]
【化2】

【0019】
上記式において、Ar、Ar、Ar及びArは2価の芳香族有機基であって、下記式3で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含み、Arは4価の芳香族有機基であって、下記式4で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含み、上記n、mは1から100の整数である。
【0020】
[式3]
【化3】

【0021】
[式4]
【化4】

【0022】
上記熱硬化性液晶高分子の分子量は、300から5,000であることができる。
【0023】
本発明の他の実施形態は、複数の絶縁層が積層された基板本体と、上記絶縁層に形成された回路パターンとを含み、上記複数の絶縁層のうち少なくとも一つの絶縁層は、高分子樹脂及び上記高分子樹脂の硬化物内に分散される酸化グラフェンを含む絶縁樹脂組成物で形成される多層配線基板を提供する。
【0024】
上記酸化グラフェンは、表面及び端部に、ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基のうち少なくとも一つの官能基を有することができる。
【0025】
上記酸化グラフェンの酸素数に対する炭素数の比(炭素/酸素)は、1から20であることができる。
【0026】
上記絶縁樹脂組成物内の酸化グラフェンの含量は、上記高分子樹脂100重量部に対して0.05から40重量部であることができる。
【0027】
上記高分子樹脂は、上記酸化グラフェンとの化学結合が可能な官能基を有することができる。
【0028】
上記高分子樹脂と上記酸化グラフェンは、硬化反応によって共有結合することができる。
【0029】
上記高分子樹脂は、エポキシ樹脂であることができる。
【0030】
上記高分子樹脂は、下記式1で表される構造を有する熱硬化性液晶高分子であることができる。
【0031】
[式1]
【化5】

【0032】
上記式において、R及びRはCH又はHであり、R及びRのうち少なくとも一つはCHであり、Arは、エステル(ester)、アミド(amide)、エステルアミド(ester amide)、エステルイミド(ester imide)、及びエーテルイミド(ether imide)からなる群より選ばれた一つ以上の構造単位を含み、分子量5,000以下である2価の芳香族有機基である。
【0033】
上記Arは、下記式2で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含むことができる。
【0034】
[式2]
【化6】

【0035】
上記式において、Ar、Ar、Ar及びArは2価の芳香族有機基であって、下記式3で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含み、Arは4価の芳香族有機基であって、下記式4で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含み、上記n、mは1から100の整数である。
【0036】
[式3]
【化7】

【0037】
[式4]
【化8】

【0038】
上記熱硬化性液晶高分子の分子量は、300から5,000であることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の一実施形態による多層配線基板用絶縁樹脂組成物は、高分子樹脂と、上記高分子樹脂の硬化物内に分散される酸化グラフェンとを含むものであって、熱膨張係数が小さく、機械的強度に優れた特徴を有する。
【0040】
本発明の一実施形態による絶縁樹脂組成物で形成される絶縁層を含む多層配線基板は、高分子樹脂と酸化グラフェンとの混合により熱膨張係数が低いという特性を有する。また、酸化グラフェンの添加により機械的強度が向上するという特徴を有する。
【0041】
また、本発明による絶縁層は、高分子樹脂の硬化物内に酸化グラフェンが分散されたり、高分子樹脂と酸化グラフェンが化学結合し、複合体を形成することができる。これによって、メッキによる回路パターンの形成、及びレーザー等によるビア孔の加工性が向上し、高密度パターンを形成することができる。また、酸化グラフェンがうまく分散され、多層配線基板内の誘電定数の値が均一になり、高速デバイスを具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態による多層配線基板を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による酸化グラフェン構造の一部を概略的に図示したものである。
【発明を実施するための具体的な内容】
【0043】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。但し、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及び大きさ等はより明確な説明のために誇張されることがあり、図面上において同一の符号で表される要素は同一の要素である。
【0044】
図1は、本発明の一実施形態による多層配線基板を概略的に示す断面図である。
【0045】
図1を参照すると、本実施形態による多層配線基板は、複数の絶縁層11、12、13が積層された基板本体と、上記各絶縁層に形成された回路パターン21とを含む。
【0046】
より具体的に、第1絶縁層11と第1絶縁層11の上面及び下面に、それぞれ第2絶縁層12及び第3絶縁層13が積層され基板本体を形成する。また、第1乃至第3絶縁層11、12、13には、各層に形成された回路パターンを連結するビア電極22、23が形成されている。
【0047】
本実施形態では、4層構造の多層配線基板を図示しているが、これに制限されず、積層される絶縁層及び形成される回路パターンによって単層又は2層以上の多層配線基板であることができる。
【0048】
上記基板本体を形成する絶縁層のうち少なくとも一つの絶縁層は、本発明の一実施形態による絶縁樹脂組成物で形成されることができる。
【0049】
多層配線基板は、多層の回路パターンと上記回路パターンを絶縁する絶縁層で形成される。多層配線基板は、回路を構成する伝導性材料と回路パターンを絶縁する絶縁材料との間に熱膨張係数(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)の差が小さいほど優れた信頼性を有することができる。
【0050】
本発明の一実施形態による絶縁樹脂組成物は、高分子樹脂及び上記高分子樹脂の硬化物内に分散される酸化グラフェンを含むものであって、熱膨張係数が小さく、機械的強度に優れた特徴を有する。
【0051】
以下、本発明の一実施形態による多層配線基板用絶縁樹脂組成物の構成成分とこれによる特性をより具体的に説明する。
【0052】
本発明の一実施形態による多層配線基板用絶縁樹脂組成物は、高分子樹脂及び上記高分子樹脂の硬化物内に分散される酸化グラフェン(Graphene Oxide,GO)を含む。
【0053】
酸化グラフェンは、黒鉛(Graphite)の酸化により形成されることができる。黒鉛は炭素原子が六角環で連結された板状構造であるグラフェン(graphene)が重なっている層状構造を有する。一般的に、層間の距離は、3.35Å(0.335nm)である。グラフェンは、カーボンナノチューブを平板状に広げた構造であるため、カーボンナノチューブに相当する高い伝導度を有し、機械的物性に優れた特徴を有する。
【0054】
黒鉛粉末を酸化させると、黒鉛の各層が酸化し、層状構造が維持された状態で、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基等が付着された酸化グラフェン粉末が得られる。
【0055】
酸化グラフェン粉末は、黒鉛粉末を酸化剤により酸化させたり、電気化学的方法により酸化させて製造することができる。
【0056】
上記酸化剤は、これに制限されないが、例えば、硝酸、NaClO、KMnO等があり、これらを単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0057】
本実施形態における酸化グラフェンは、高分子樹脂の絶縁特性を悪化させないように十分酸化されたものが好ましい。酸化グラフェンは、十分酸化され、電気伝導度の特性を殆ど示さないか、完全に失ったものが好ましい。酸化グラフェンの酸素数に対する炭素数の比(炭素/酸素)は、酸化程度によって異なることができ、例えば、1から20であることができる。
【0058】
図2は、本発明の一実施形態による酸化グラフェン構造の一部を概略的に図示したものである。
【0059】
図2を参照すると、酸化グラフェンは、表面と端部に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基等の多数の官能基を含んでいる。官能基の種類及び数は、酸化グラフェンの酸化方法又は酸化程度によって異なることができる。
【0060】
酸化グラフェンは、高分子樹脂の硬化物内に、物理的に分散されることができ、上記官能基により高分子樹脂との化学結合を形成することができる。官能基を有する酸化グラフェンは、高分子樹脂との硬化反応により共有結合を形成することができ、これによって、高分子樹脂と有機的に連結された複合体になることができる。
【0061】
より具体的に、高分子樹脂を含む絶縁樹脂組成物に、酸化グラフェンを入れ硬化反応を行うと、高分子樹脂と酸化グラフェンとの間の硬化反応と、酸化グラフェン間の硬化反応が行われることができる。これによって、高分子樹脂と酸化グラフェンが網状構造を成す硬化物が形成されることができる。
【0062】
酸化グラフェンは、熱膨張係数が低く、機械的特性に優れた特徴を有する。高分子樹脂の機械的強度を向上させるため、一般的に添加されるシリカ等の無機フィラーより少量添加しても、高分子樹脂の特性を向上させることができる。
【0063】
上記酸化グラフェンの含量は、高分子重合体100重量部に対して0.05から40重量部であることができる。上記含量が0.05重量部未満であれば、絶縁樹脂組成物の熱膨張係数が増加する恐れがあり、上記含量が40重量部を超えると、絶縁樹脂組成物の加工性が低下する恐れがある。
【0064】
上記高分子樹脂は、多層配線基板の絶縁材料として使用されるものであれば、特に制限されない。好ましくは、酸化グラフェンの官能基との化学反応を行うことができる熱硬化高分子樹脂を使用することができる。これに制限されないが、例えば、エポキシ樹脂を使用することができる。
【0065】
上記エポキシ樹脂は、特に制限されないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン変性エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等があり、これらを単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0066】
上記ナフタレン変形エポキシ樹脂は、平均エポキシ当量が100から600であることができる。
【0067】
上記クレゾールノボラックエポキシ樹脂は、平均エポキシ当量が300から600であることができる。上記クレゾールノボラックエポキシ樹脂は、ノボラック状のエポキシ樹脂であって、これを用いる場合、耐熱性の高いエポキシ硬化物を得ることができる。
【0068】
上記ゴム変性エポキシ樹脂は、平均エポキシ当量が100から500であることができる。
【0069】
また、本発明の一実施形態によると、上記高分子樹脂として下記式で表される構造を有する熱硬化性液晶高分子(Liquid Crystal Thermoset,LCT)を使用することができる。上記熱硬化性液晶高分子は、多様な種類の官能基を有するArの両末端が、少なくとも1つ以上のメチル基を有するマレイミドで封鎖されている。
【0070】
[式1]
【化9】

【0071】
上記式において、R及びRはCH又はHであり、R及びRのうち少なくとも一つはCHであり、Arは、エステル(ester)、アミド(amide)、エステルアミド(ester amide)、エステルイミド(ester imide)、及びエーテルイミド(ether imide)からなる群より選ばれた一つ以上の構造単位を含み、分子量5,000以下である2価の芳香族有機基である。
【0072】
上記式1におけるArは、下記式2で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含むことができる。
【0073】
[式2]
【化10】

【0074】
上記式において、Ar、Ar、Ar及びArは2価の芳香族有機基であって、下記式3で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含み、Arは4価の芳香族有機基であって、下記式4で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含み、上記n、mは1から100の整数である。
【0075】
[式3]
【化11】

【0076】
[式4]
【化12】

【0077】
上記熱硬化性液晶高分子の分子量は、300から5,000であることができる。上記熱硬化性液晶高分子の分子量が300未満である場合には、架橋密度が高くなり脆性が弱くなる恐れがあり、上記分子量が5,000を超える場合には、高分子の粘度が高くなりグラフェンとの混合が困難になる恐れがある。
【0078】
上記熱硬化性液晶高分子のメソゲン(mesogen)は、アミドエステル構造が好ましい。このため、使用可能なモノマーとして、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアミン、ジヒドロキシベンゼン、ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸等を挙げることができる。上記熱硬化性液晶高分子におけるアミド官能基は、溶媒に対する溶解度を高めると、芳香族構造、特にビフェニル又はナフタレン構造は、液晶を形成するのに好ましい。
【0079】
上記熱硬化性液晶高分子は、Arの構造単位に含まれた官能基により酸化グラフェンとの化学結合を行うことができる。より具体的に、上記熱硬化性液晶高分子の重合過程におけるArの構造単位に含まれた官能基は、酸化グラフェンのカルボキシル基とエステル化反応又はアミド化反応を行うことができる。
【0080】
上記熱硬化性液晶高分子は、液晶の異方性による機械的物性の弱化を防止するための溶媒キャスティング(solvent casting)のために、非プロトン性溶媒を用いることができる。上記非プロトン性溶媒の種類は特に制限されないが、例えば、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルピロリドン(NMP)、N‐メチルカプロラクタム、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジエチルアセトアミド、N‐メチルプロピオンアミド、ジメチルスルホキシド、γ‐ブチルラクトン、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルリンアミド又は酢酸エチルセロソルブ等があり、これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0081】
また、本発明の一実施形態による多層配線基板用絶縁樹脂組成物は、硬化剤を含むことができる。使用される高分子樹脂に適する硬化剤を含むことができ、高分子樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ硬化用硬化剤を含むことができる。これによって、高分子樹脂の硬化性能を向上させ、酸化グラフェンとの混合を容易にすることができる。
【0082】
上記エポキシ硬化用硬化剤は、通常使用されるものであれば、特に制限されず、軟化点(softening point)が100から140℃であり、水酸基当量(hydroxyl equivalent)が100から150のものを使用することができる。
【0083】
上記エポキシ硬化用硬化剤は、これに制限されないが、例えば、ビスフェノールAノボラック型硬化剤を用いることができる。水酸基当量が100から150であるビスフェノールAノボラック型硬化剤は、分子量が大きいものであって、これによって軟化点が高くなることができる。
【0084】
ビスフェノールAノボラック型硬化剤は、2つの水酸基の間にビスフェノール構造が一定の繰り返し単位分だけあるものであって、水酸基当量が大きくなるとエポキシ鎖と鎖同士を連結する硬化剤の分子量が大きくなり、最終の硬化物構造の緻密さが低下する恐れがある。
【0085】
上記硬化剤の含量は、高分子樹脂100重量部に対して5から20重量部であることができる。上記範囲内で目的とする物性の発現が容易で、かつ反応性に優れた特性を表すことができる。
【0086】
また、本発明の一実施形態による多層配線基板用絶縁樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含むことができる。
【0087】
上記硬化促進剤は、イミダゾール系化合物を使用することができる。これに制限されないが、例えば、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール、1‐(‐2‐シアノエチル)‐2‐アルキルイミダゾール又は2‐フェニルイミダゾールがあり、これらを一つ以上混合して使用することができる。
【0088】
上記硬化促進剤の含量は、上記高分子樹脂100重量部に対して0.1から1重量部であることができる。
【0089】
上記硬化促進剤の含量が0.1重量部未満であれば、硬化速度が遅くなったり未硬化が起こる恐れがあり、1重量部を超えると、硬化速度が速くなり、再現性のある硬化度を得ることが困難となる可能性がある。
【0090】
また、本発明の一実施形態による多層配線基板用絶縁樹脂組成物は、必要に応じて、軟化剤、可塑剤等の添加剤を含むことができる。
【0091】
多層配線基板は、電子機器に用いられる部品であり、環境変化による長期信頼性と、多層配線基板に搭載される半導体及び各種素子の駆動時に発生する瞬間的な熱及び電気ショックに対する短期信頼性が保障されなければならない。
【0092】
上述した通り、多層配線基板は、回路を構成する伝導性材料と回路パターンを絶縁する絶縁層との間の熱膨張係数の差が小さいほど優れた信頼性を有することができる。
【0093】
例えば、回路を構成する銅の熱膨張係数は10から20ppm/℃であり、通常、絶縁層を構成する高分子樹脂の熱膨張係数は50から80ppm/℃である。特に、高分子樹脂は、ガラス転移温度(Tg)以上において熱膨張係数が大きく上昇するが、150から200℃のガラス転移温度における熱膨張係数は150〜180ppm/℃になる。
【0094】
多層配線基板に半導体のような部品を実装する場合、280℃内外で3〜5秒間、多層配線基板に急速に熱が加えられるが、この場合、回路と絶縁層の熱膨張係数の差が大きいと、回路にクラックが生じたり、多層配線基板の形態が変形する恐れがある。
【0095】
一般的に、多層配線基板の熱膨張係数を減少させるために、各種のセラミックフィラー(Filler)を高分子絶縁材料の内部に入れたり、高分子絶縁材料にガラス繊維を含浸する方法が用いられている。しかし、これによって多層配線基板の加工性が悪化し、表面が粗化し、高速(High Speed)デバイスを具現することが困難であるという問題がある。
【0096】
しかし、本発明による絶縁樹脂組成物で形成される多層配線基板は、高分子樹脂と酸化グラフェンとの混合により熱膨張係数が低くなるという特性を有する。また、酸化グラフェンの添加により機械的強度が向上するという特徴を有する。
【0097】
また、本発明による絶縁樹脂組成物は、高分子樹脂内に酸化グラフェンが分散されたり、高分子樹脂の化学結合による複合体を形成することができる。これによって、加工性に優れ、高密度のパターンを形成することができる。また、酸化グラフェンがうまく分散され、多層配線基板内の誘電定数の値が均一になり、高速デバイスを具現することができる。
【0098】
上述した通り、本発明の一実施形態による多層配線基板用絶縁樹脂組成物は、多層配線基板を製造するためのビルドアップ絶縁材料として使用されることができる。
【0099】
本発明の一実施形態による多層配線基板用絶縁樹脂組成物を基材フィルム上に、キャスティング等の方法によって一定の厚さを有する絶縁層に形成し、ビルドアップ工程に適用することができる。
【0100】
上記絶縁層には、ビア孔の形成及びメッキ工程により回路パターンが形成されることができ、これによって図1に図示されたような多層配線基板が製造されることができる。
【0101】
上述した通り、本発明の一実施形態による絶縁樹脂組成物は、表面粗さが小さく、ガラス繊維によって表面が粗化したり、ビアの内壁にガラス繊維の残査が存在する現象が発生しない。よって、メッキによる回路パターン形成及びレーザー等によるビア孔の加工性に優れた特徴を有する。
【0102】
本発明は、上述の実施形態及び添付の図面により限定されず、添付の特許請求の範囲により限定される。従って、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0103】
11、12、13 絶縁層
21 回路パターン
22、23 ビア電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂と、
前記高分子樹脂の硬化物内に分散される酸化グラフェンと、
を含む多層配線基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸化グラフェンは、表面及び端部に、ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基のうち少なくとも一つの官能基を有する請求項1に記載の多層配線基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化グラフェンの酸素数に対する炭素数の比は、1から20である請求項1に記載の多層配線基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸化グラフェンの含量は、前記高分子樹脂100重量部に対して0.05から40重量部である請求項1に記載の多層配線基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項5】
前記高分子樹脂は、前記酸化グラフェンとの化学結合が可能な官能基を有する請求項1に記載の多層配線基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項6】
前記高分子樹脂と前記酸化グラフェンは、硬化反応によって共有結合する請求項1に記載の多層配線基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項7】
前記高分子樹脂は、エポキシ樹脂である請求項1に記載の多層配線基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項8】
前記高分子樹脂は、下記式1で表される構造を有する熱硬化性液晶高分子である請求項1に記載の多層配線基板用絶縁樹脂組成物。
[式1]
【化1】

前記式において、R及びRは、CH又はHであり、R及びRのうち少なくとも一つはCHであり、
Arは、エステル(ester)、アミド(amide)、エステルアミド(ester amide)、エステルイミド(ester imide)、及びエーテルイミド(ether imide)からなる群より選ばれた一つ以上の構造単位を含み、分子量5,000以下である2価の芳香族有機基である。
【請求項9】
前記Arは、下記式2で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含む請求項8に記載の多層配線基板用絶縁樹脂組成物。
[式2]
【化2】

前記式において、Ar、Ar、Ar及びArは2価の芳香族有機基であって、下記式3で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含み、Arは4価の芳香族有機基であって、下記式4で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含み、前記n、mは1から100の整数である。
[式3]
【化3】

[式4]
【化4】

【請求項10】
前記熱硬化性液晶高分子の分子量は、300から5,000である請求項8に記載の多層配線基板用絶縁樹脂組成物。
【請求項11】
複数の絶縁層が積層された基板本体と、
前記絶縁層に形成された回路パターンとを含み、
前記複数の絶縁層のうち少なくとも一つの絶縁層は、高分子樹脂及び前記高分子樹脂の硬化物内に分散される酸化グラフェンを含む絶縁樹脂組成物からなる多層配線基板。
【請求項12】
前記酸化グラフェンは、表面及び端部に、ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエポキシ基のうち少なくとも一つの官能基を有する請求項11に記載の多層配線基板。
【請求項13】
前記酸化グラフェンの酸素数に対する炭素数の比は、1から20である請求項11に記載の多層配線基板。
【請求項14】
前記酸化グラフェンの含量は、前記高分子樹脂100重量部に対して0.05から40重量部である請求項11に記載の多層配線基板。
【請求項15】
前記高分子樹脂は、前記酸化グラフェンとの化学結合が可能な官能基を有する請求項11に記載の多層配線基板。
【請求項16】
前記高分子樹脂と前記酸化グラフェンは、硬化反応によって共有結合する請求項11に記載の多層配線基板。
【請求項17】
前記高分子樹脂は、エポキシ樹脂である請求項11に記載の多層配線基板。
【請求項18】
前記高分子樹脂は、下記式1で表される構造を有する熱硬化性液晶高分子である請求項11に記載の多層配線基板。
[式1]
【化5】

前記式において、R及びRはCH又はHであり、R及びRのうち少なくとも一つはCHであり、
Arは、エステル(ester)、アミド(amide)、エステルアミド(ester amide)、エステルイミド(ester imide)、及びエーテルイミド(ether imide)からなる群より選ばれた一つ以上の構造単位を含み、分子量5,000以下である2価の芳香族有機基である。
【請求項19】
前記Arは、下記式2で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含む請求項18に記載の多層配線基板。
[式2]
【化6】

前記式において、Ar、Ar、Ar及びArは2価の芳香族有機基であって、下記式3で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含み、Arは4価の芳香族有機基であって、下記式4で表される群より選ばれる一つ以上の構造単位を含み、前記n、mは1から100の整数である。
[式3]
【化7】

[式4]
【化8】

【請求項20】
前記熱硬化性液晶高分子の分子量は、300から5,000である請求項18に記載の多層配線基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−117052(P2012−117052A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243171(P2011−243171)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】