説明

多層配線構造およびその作製方法

【課題】 信頼性にすぐれた配線を提供すること。
【解決手段】 本発明は、半導体集積回路の配線形成において、配線加工(ミリング)のストッパー層として用いる導電膜をマスクに層間絶縁膜に穴を形成することで、層間絶縁膜の上にのみストッパー層を形成し、穴の内部は配線主体である1種類の導電膜のみで形成することで、エレクトロマイグレーション耐性に優れた配線を実現する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、GaAs系およびSi系通信用IC・混成マイクロ波回路等の半導体集積回路の配線の製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】GaAs系およびSi系通信用IC・混成マイクロ波回路等の半導体集積回路の配線では、図4に示すように、多数の配線層を厚い絶縁膜を通してVIA接続して形成した多層配線構造、またこのVIAのような縦型の構造を配線自体として利用する3次元的な配線構造が、回路小形化や多機能化に有効である。(参考文献:M. Hirano et. al. "Three-Dimensional Passive Circuit Technology For Ultra-Compact MMIC's" IEEE Trans. on MTT, Vol. 43, pp2845-2850,Dec. 1995.)
VIAないし縦型の配線部分を取り出して構造を模式的に示したのが図5である。従来のこの種の配線形成法としては、図6及び図7に示すように、(a)〜(c)下層配線6上に、絶縁層3を形成し、その絶縁層3の中に穴パタン7を形成し、(d)穴の内部も含め穴のあいた絶縁膜の表面全域にまず高融点金属であるW系のWSiやWSiNなどのバリヤメタル兼ミリングストッパ層としての第1の導電膜11、低抵抗金属であるAuなどのメッキ用電極としての第2の導電膜12をスパッタ法により連続形成し、図7の(a)電解メッキ法により導電膜12の全表面に第2の導電膜と同じ種類の第3の導電膜13を成長させ、(b)次に穴の領域および所望の配線パタン領域をフォトレジスト14で覆い、(c)ミリングなどのエッチング手法により、不要な領域のメッキメタル13および導電膜12を除去し、この後フォトレジストを酸素プラズマ処理(灰化)などにより除去した後、第3および第2の導電膜13,12をマスクとして、第2および第3の導電膜配線パタン部分の下以外の第1の導電膜11をSF6RIEなどでエッチングして、不要な領域の導電膜11を除去することによって配線ないし配線用VIAメタルを形成していた(特願平3−53355)。しかしこのようにして作製された構造では、穴の底部で第1の導電膜11を介して電流が流れるため、第2の導電膜5のエレクトロマイグレーションが第1の導電膜11で邪魔され、第1の導電膜11の片側では第2の導電膜5が増え、第1の導電膜11のもう一方の片側では第2の導電膜5が減り、配線寿命が短くなるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、穴の内部の配線を配線の主体である1種類の導電膜のみで構成することで、配線のエレクトロマイグレーションを邪魔しない構造でマイグレーション耐量を向上させ、信頼性に優れた配線を実現することにある。またこの配線構造を簡便な手法で形成し、高性能かつ小形の回路を低コストで提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため本発明は、(1)高融点金属膜の上部に低抵抗金属膜を積層した少なくとも2つの2層構造配線膜が、絶縁膜を挟んで配置され、かつ、対置する2つの2層構造配線膜間が、絶縁膜を貫通した開口部を介して接続された多層配線構造において、前記対置する2つの2層構造配線膜間が、前記開口部内の表面に形成された低抵抗金属膜によって連結されたことを特徴とする多層配線構造。
(2)配線を形成する基板上に、第1の高融点金属膜、第1の低抵抗金属膜、絶縁膜、第2の高融点金属膜、第2の低抵抗金属膜の順に堆積し、該堆積膜の表面にレジスト材料を用いて穴パタンを有するマスクを形成した後、該マスクを用いて、前記第2の低抵抗金属膜および第2の高融点金属膜に前記穴パタンを転写し、さらに異方性エッチングにより絶縁膜に第1の低抵抗金属膜の表面にまで達する開口部を形成し、前記レジスト材料を除去した後、第3の低抵抗金属膜を前記開口部内の表面、および前記第2の高融点金属膜の上部に形成することを特徴とする多層配線構造の作製方法。
(3)配線を形成する基板上に、第1の高融点金属膜、第1の低抵抗金属膜、絶縁膜、第2の高融点金属膜の順に堆積し、該堆積膜の表面にレジスト材料を用いて穴パタンを有するマスクを形成した後、該マスクを用いて、前記第2の高融点金属膜に前記穴パタンを転写し、さらに異方性エッチングにより絶縁膜に第1の低抵抗金属膜の表面にまで達する開口部を形成し、前記レジスト材料を除去した後、第3の低抵抗金属膜を前記開口部内の表面、および前記第2の高融点金属膜の上部に形成することを特徴とする多層配線構造の作製方法。
を発明の特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、半導体集積回路の配線形成において、配線加工(ミリング)のストッパー層として用いる導電膜をマスクに層間絶縁膜に穴を形成することで、層間絶縁膜の上にのみストッパー層を形成し、穴の内部は配線主体である1種類の導電膜のみで形成することで、エレクトロマイグレーション耐性に優れた配線を実現することを特徴とする。
【0006】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。図1は本発明によるVIAないし縦型の配線部分構造を模式的に示す。図において、1は下地基板、3は絶縁層、4は第1の導電膜(W系メタル等)、5は第2の導電膜(Auなど)、11は第1の導電膜(W系メタル等)、12,13は第2の導電膜(Auなど)を示す。この構成によれば、穴の内部には第1の導電膜はなく、Auなどの第2の導電膜5のみで構成されている場合で、この場合、図5に示した従来形に比べ、第1の導電膜4がない分だけ、穴の幅寸法を小さくできるという利点が生じる。
【0007】次に、図2を用いてこの構造の作製方法について説明する。
(a)絶縁層3の表面にW系のWSiやWSiNなどの第1の導電膜15を形成した後、(b)フォトレジスト16などで穴ないし溝穴パタンを形成し、これをマスクにSF6RIEなどでエッチングを行って、絶縁層3をパタン化したのち、(c)これをマスクにO2RIEなどでエッチングを行い第1の導電膜15に穴ないし溝穴パタン17を形成する。(d)第1の導電膜15と穴ないし溝穴17の内部を含む全表面領域に、Auなどの第2の導電膜である電極メタル18とこれを電極として電解メッキにより第3の導電膜19(第2の導電膜と同種)を形成し、(e)フォトレジスト20をマスクとして、イオンミリング法などで、不要な領域の第2の導電膜18と第3の導電膜19を除去してパタン化し、(f)この後フォトレジスト20を酸素プラズマ処理(灰化)などにより除去した後、第3および第2の導電膜19,18をマスクとして、第2および第3の導電膜配線パタン部分の下以外の第1の導電膜15をSF6RIEなどでエッチングして、不要な領域の導電膜15を除去し、配線ないし配線用VIAメタルを形成する。
【0008】図1(b)の構造は、絶縁層3の上部でのAuなどの第2の導電膜の肉厚が、穴の内部に比べ大きく構成されている場合で、この場合、絶縁層3の上部の配線抵抗を低減し、電流量を増やせるという利点が、別の言い方では、配線厚さに比較して穴の幅寸法を小さくできるという利点が生じる。
【0009】次に図3によって作製方法について説明する。
(a)絶縁層3の表面にW系のWSiやWSiNなどの第1の導電膜21およびAuなどの第2の導電膜22を積層形成した後、(b)フォトレジスト23などで穴ないし溝穴パタンを形成し、これをマスクにイオンミリング法およびSF6RIE法などでエッチングを行って第1の導電膜21および第2の導電膜22をパタン化し、(c)次にO2RIEなどでエッチングを行い、絶縁層3に穴ないし溝穴パタン24を形成する。(d)第1の導電膜21および第2の導電膜22と穴ないし溝穴24の内部を含む全表面領域に、第2の導電膜22と同種の電極メタルである第3の導電膜25とこれを電極として電解メッキにより形成した同種の第4の導電膜26を形成し、(e)フォトレジスト27をマスクとして、イオンミリング法などで、不要な領域の第2の導電膜22と第3の導電膜25と第4の導電膜26を除去してパタン化し、(f)この後フォトレジスト27を酸素プラズマ処理(灰化)などにより除去した後、第4および第3および第2の導電膜26,25,22をマスクとして、第2および第3および第4の導電膜配線パタン部分の下以外の第1の導電膜21をSF6RIEなどでエッチングして、不要な領域の導電膜21を除去し、配線ないし配線用VIAメタルを形成する。この手法では簡便に図1の(b)の構造のVIAないし縦型配線を形成できる。
【0010】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は、簡便な手法で、信頼性に富む高寿命な多層配線のVIAや縦型配線構造を実現する。これにより、GaAs系およびSi系通信用IC・混成マイクロ波回路等の半導体集積回路の回路小形化や多機能化に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による配線構造断面図(VIAないし縦型配線)、(a),(b)は夫々の実施例を示す。
【図2】本発明による配線形成工程(VIAないし縦型配線)、(a)〜(f)は各工程を示す。
【図3】本発明による他の配線形成工程、(a)〜(f)は各工程を示す。
【図4】従来の配線構造を示し、(a)は多層配線、(b)は3次元配線を示す。
【図5】従来の配線構造の他の例を示す。
【図6】従来の配線構造の作製方法を示し、(a)〜(d)は各工程を示す。
【図7】従来の配線構造の作成方法を示し、(a)〜(c)は各工程を示す。
【符号の説明】
1 下地基板
2 配線
3 絶縁膜
4 第1の導電膜(W系メタル、WSi、WSiNなど)
5 第2の導電膜(Auなど)
6 下層配線
7 上層配線
8 VIAないし縦型配線
9 マスクレジスト
10 穴ないし溝穴
11 第1の導電膜(W系メタル、WSi、WSiNなど)
12 第2の導電膜(Auなど)、メッキ用電極
13 第2の導電膜と同種の第3の導電膜(Auなど)、メッキ成長
14 マスクレジスト
15 第1の導電膜(W系メタル、WSi、WSiNなど)
16 マスクレジスト
17 穴ないし溝穴
18,19 メッキ用電極およびメッキ成長した第2および第3の導電膜(Auなど)
20 マスクレジスト
21 第1の導電膜(W系メタル、WSi、WSiNなど)
22 第2の導電膜(Auなど)
23 マスクレジスト
24 穴ないし溝穴
25,26 メッキ用電極およびメッキ成長した第2の導電膜と同種の第3および第4の導電膜(Auなど)
27 マスクレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 高融点金属膜の上部に低抵抗金属膜を積層した少なくとも2つの2層構造配線膜が、絶縁膜を挟んで配置され、かつ、対置する2つの2層構造配線膜間が、絶縁膜を貫通した開口部を介して接続された多層配線構造において、前記対置する2つの2層構造配線膜間が、前記開口部内の表面に形成された低抵抗金属膜によって連結されたことを特徴とする多層配線構造。
【請求項2】 前記2層構造配線膜を構成する低抵抗金属膜の膜厚が、前記開口部内の表面に配置された低抵抗金属膜の膜厚より厚いことを特徴とする請求項1記載の多層配線構造。
【請求項3】 配線を形成する基板上に、第1の高融点金属膜、第1の低抵抗金属膜、絶縁膜、第2の高融点金属膜、第2の低抵抗金属膜の順に堆積し、該堆積膜の表面にレジスト材料を用いて穴パタンを有するマスクを形成した後、該マスクを用いて、前記第2の低抵抗金属膜および第2の高融点金属膜に前記穴パタンを転写し、さらに異方性エッチングにより絶縁膜に第1の低抵抗金属膜の表面にまで達する開口部を形成し、前記レジスト材料を除去した後、第3の低抵抗金属膜を前記開口部内の表面、および前記第2の高融点金属膜の上部に形成することを特徴とする多層配線構造の作製方法。
【請求項4】 配線を形成する基板上に、第1の高融点金属膜、第1の低抵抗金属膜、絶縁膜、第2の高融点金属膜の順に堆積し、該堆積膜の表面にレジスト材料を用いて穴パタンを有するマスクを形成した後、該マスクを用いて、前記第2の高融点金属膜に前記穴パタンを転写し、さらに異方性エッチングにより絶縁膜に第1の低抵抗金属膜の表面にまで達する開口部を形成し、前記レジスト材料を除去した後、第3の低抵抗金属膜を前記開口部内の表面、および前記第2の高融点金属膜の上部に形成することを特徴とする多層配線構造の作製方法。
【請求項5】 前記レジスト材料が、絶縁膜に対する異方性エッチングを行う前に除去されることを特徴とする請求項3または4記載の多層配線構造の作製方法。
【請求項6】 前記レジスト材料が、絶縁膜に対する異方性エッチングを行う際に、同時に除去されることを特徴とする請求項3または4記載の多層配線構造の作製方法。
【請求項7】 前記レジスト材料は、前記絶縁膜に対する異方性エッチング時にも除去されないようにシリコン含有レジストとすることを特徴とする請求項4記載の多層配線構造の作製方法。
【請求項8】 前記第1、第2および第3の低抵抗金属膜が同一材料であり、また前記第1および第2の高融点金属膜が同一材料であることを特徴とする請求項3乃至7記載の多層配線構造の作製方法。
【請求項9】 前記第3の低抵抗金属膜は、スパッタ法等により薄膜を堆積した後、電解メッキ法により形成することを特徴とする請求項3乃至8記載の多層配線構造の作製方法。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図6】
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