説明

多層配線構造の形成方法

【目的】 微細なヴィア孔にAlを低抵抗で埋め込む方法を提供すること。
【構成】 Al配線6上に層間絶縁膜8を被覆し、ここにヴィア孔8aを形成する。その次に、Al配線6の露出表面に形成されている自然酸化膜6a等を塩素を含むガス雰囲気中でプラズマエッチングすることによって除去する。その次に、Al配線6表面の塩化物6bや層間絶縁膜8表面の堆積物8bを不活性ガスを用いたプラズマ処理により除去する。その次に、CVDによりヴィア孔8a内にAlを選択的に堆積する。上記の方法では、プラズマエッチングの工程で自然酸化膜4aを除去し、プラズマ処理の工程で塩化物6bや堆積物8bを除去することとしているので、CVDにあたってヴィア孔8a底部のみに選択性良くAlを堆積することができる。したがって、ヴィア孔8a内に埋め込まれたAlプラグとその後層間絶縁膜8上に形成するAl配線との接続を極めて良好なものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体装置を構成する多層配線構造の形成方法に関し、特に微細なヴィア孔の埋め込みを伴う形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】半導体装置において多層配線構造を形成する場合に、下層Al配線と上層Al配線との接続部であるヴィア孔の埋め込み技術が重要になっている。例えば1.0μm径程度以下の微細なヴィア孔の埋め込み方法として、低抵抗であり、微細孔の穴埋めに優れたAl−CVD技術によって、Alをヴィア孔に選択的に堆積させる方法がある。
【0003】このようにAl−CVD技術を用いて下層Al配線上のヴィア孔部分にAlを選択的に堆積させる際には、CVD成膜前にAl配線上の自然酸化膜を除去する必要がある。Al上に自然酸化膜が残っていると、CVD成膜時に選択堆積が困難になるといった問題や、ヴィア抵抗増大等の問題が生じるからである。
【0004】このため、従来のAl−CVDによるAl上への選択堆積方法として、例えば特開平3−291920号公報では、CCl4 とCl2 の混合ガス雰囲気中でAl配線上の自然酸化膜をプラズマエッチングした後、大気にさらさずにジメチルアルミニウムハイドライド〔(CH3 2 AlH〕を原料としてこのAl配線上に選択的にAlを堆積させる方法が開示されている。
【0005】しかしながら、前述のようなプラズマエッチングの前処理のために、Al配線の表面上にAlの塩化物が付着し、ヴィア抵抗増大の原因となったり信頼性減少の原因となるといった問題があった。また、このような前処理のために塩素を含む堆積物がヴィア孔側壁部等に付着してしまう。この結果、かかる堆積物から顕著にAlの成長が生じ、小さい径のヴィア孔では側壁部から成長したAlによってヴィア孔の上部がふさがれ、下地のAl配線からの成長が止められてしまうことになるので、ヴィア孔内を一体のプラグで埋め込むことができず、断線を生じるという問題があった。さらに、層間絶縁膜の表面上にも前述の前処理によって堆積物が付着してしまう。この結果、かかる堆積物上にもAlが堆積してしまい、その後にスパッタ法を用いて上層配線用のAl膜を形成した場合、そのAl膜の膜質を劣化させ、得られた上層配線についてエレクトロマイグレーション等の不良原因となるという問題もあった。
【0006】一方、ヴィア孔の底を含め層間絶縁膜の表面全体にスパッタを用いてTiN等の薄膜を堆積し、このTiN薄膜上にAl−CVD膜を形成する技術がある。(特開平4−230025)しかしながら、このような技術では、ヴィア孔底のTiN薄膜の存在によってAlプラグの抵抗が増大してしまうといった問題があった。
【0007】そこで、本発明は、微細なヴィア孔に低抵抗のAlを良好に埋め込み、かつ、上層配線用のAl膜を良質で平坦なものとできる多層配線構造の形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明に係る多層配線構造の形成方法は、(a)半導体基板上方のアルミニウムを含む金属配線上に層間絶縁膜を被覆する第1工程と、(b)ドライエッチングによって、層間絶縁膜中にヴィア孔を形成する第2工程と、(c)塩素を含むガス雰囲気中でプラズマエッチングすることにより、ヴィア孔において金属配線の露出表面に形成されている酸化アルミニウムを除去する第3工程と、(d)不活性ガスを用いたプラズマ処理により、第3工程で層間絶縁膜及び金属配線の表面に生じた塩素化合物を除去する第4工程と、(e)有機金属ガスを原料として用いた化学気相堆積法により、ヴィア孔内にアルミニウムを堆積する第5工程とを備えることとしている。
【0009】
【作用】上記多層配線構造の形成方法によれば、第3工程で、ヴィア孔において金属配線の露出表面に形成されている酸化アルミニウムを除去するのみならず、第4工程で、不活性ガスを用いたプラズマ処理により、第3工程の結果層間絶縁膜及び金属配線の表面に生じた塩素化合物を除去して清浄化することとしているので、第5工程にあたって、アルミニウムをヴィア孔底の金属配線の直上から堆積することができ、ヴィア抵抗の増大といった弊害や、汚染されたヴィア孔側壁からアルミニウムが著しく成長することによってヴィア孔の上部が塞がれるといった弊害を十分に抑制できる。また、後に上層配線用のアルミニウム膜を堆積した場合にも、層間絶縁膜表面の上記堆積物が有効に除去されているので、堆積されたアルミニウム膜を良質かつ平坦なものとすることができ、このアルミニウム膜から形成された上層配線のエレクトロマイグレーション耐性を良好なものとすることができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例について図面を参照しつつ説明する。
【0011】図1に、本発明の一実施例を説明するための主要工程を示す。予め、半導体基板2上に、FET等の各種デバイスを覆うよう下地絶縁膜4が形成されている。この下地絶縁膜4上に、厚さ8000オングストロームの第1層Al合金配線6を形成する。その後、この第1層Al合金配線6上に、層間絶縁膜として厚さ1μmのプラズマ酸化膜8を形成する。次に、このプラズマ酸化膜8にヴィア孔8aを形成する。具体的には、フォトリソグラフィーを用いてプラズマ酸化膜8上にレジストパターンを形成し、フッ素系の混合ガスを用いたドライエッチングによりここにヴィア孔8aを開孔し、最後にレジストパターンを除去する(図1(a))。この際、ヴィア孔8aの底に露出している第1層Al合金配線6の表面層には、ヴィア孔形成の工程等に伴って自然酸化膜6aが形成されている。また、図示していないが、プラズマ酸化膜8の表層には、ヴィア孔形成の工程によって変質層が形成されているものと考えられる。
【0012】次に自然酸化膜6aの除去等を目的として、塩素系の混合ガスを用いたプラズマエッチング行う(図1(b))。この結果、ヴィア孔6a底の自然酸化膜6a等は十分に除去されるものの、第1層Al合金配線6の露出表面上にAlの塩化物6bが付着し、さらに、プラズマ酸化膜8上面、ヴィア孔6a側壁等にClを含む堆積物8bが付着してしまう。
【0013】次に、塩化物6bや堆積物8bの除去を目的として、上記工程と同一真空内で、不活性ガスを用いたプラズマ処理を10分間行う(図1(c))。この際、不活性ガスとしてArを用い、圧力を50mTorrとし、プラズマ電力を0.05mW/cm3 程度とした。このプラズマ処理により、第1層Al合金配線6上の塩化物6bと、プラズマ酸化膜8上及びヴィア孔8a側壁の堆積物8bとが除去され、プラズマ酸化膜8表面及びヴィア孔8a内が清浄化される。しかも、かかるプラズマ処理によって、プラズマ酸化膜8の表層部が改質或いは活性化され、後のAl成膜を容易なものとすることができる。
【0014】次に、基板を大気に晒すことなくCVD室内に導入し、DMAH(ジメチルアルミニウムハイドライド)とH2 とを用いたCVD法により、ヴィア孔6a内へのAl成膜を行ってAlプラグを形成するとともに、プラズマ酸化膜8表面にもAl成膜を行う(図1(d))。この場合、DMAHはH2 によってバブリングさせて供給している。成膜条件は、基板温度が260℃で、全圧が2.0Torrで、DMAH分圧が3×10-2Torrで、H2 流量が100SCCMであった。成膜時間は、プラズマ酸化膜8上のAl膜10の厚みが0.5μmになるまでとした。このような全面のAl成膜において、予め塩化物6bと堆積物8bとが完全に除去されプラズマ酸化膜8の表層部が活性化されているので、0.5μm径のヴィア孔8aがボイドなしに完全に埋め込まれ、かつ、非常に平坦性の良いAl膜10がプラズマ酸化膜8上に形成された。
【0015】その後、このAl膜10を加工して第2層配線とする。また場合により、このAl膜10上に直接もしくはTiN膜その他の高融点金属化合物膜、膜高融点金属膜等を挟んでスパッタAl合金膜を堆積し、この多層金属膜を所望のパターンに加工して第2層配線としてもよい。
【0016】以上のようにして得られたヴィア構造では、予めヴィア孔8a底から自然酸化膜8aが除去され、さらに塩化物6bも除去されているので、ヴィア抵抗を極めて低くすることができる。実施例の場合、0.5μm径のヴィア構造においてヴィア抵抗0.2Ω以下という非常に低い値が得られた。
【0017】以下、図2を参照しつつ従来技術に対応する比較例について説明する。図2(a)の工程では、下地絶縁膜4上に第1層Al合金配線6を形成する。この第1層Al合金配線6上にプラズマ酸化膜8を形成した後、ドライエッチングを用いてこのプラズマ酸化膜8にヴィア孔8aを形成する。図2(b)の工程では、塩素系のプラズマエッチングを行い、ヴィア孔8a底の自然酸化膜6aを除去する。この場合、第1層Al合金配線6の露出表面上に塩化物6bが付着し、プラズマ酸化膜8上面等に堆積物8bが付着している。図2(c)の工程では、DMAHとH2 とを用いたCVD法により、ヴィア孔8a内にAl成膜を行ってAlプラグ9を形成する。この工程では、ヴィア孔8a側壁の堆積物8bが成長核となってヴィア孔8a上部が塞がれてしまい、Alプラグ9内に空洞9aが生じてここに断線が発生する。また、プラズマ酸化膜8上にも質の良くないAl膜8cの堆積が生じる。図2(d)の工程では、スパッタ法を用いて酸化シリコン膜8の表面全体に第2層Al膜11を堆積する。この工程では、膜質の悪いAl膜8c上に第2層Al膜11が堆積されるので、この第2層Al膜11もその膜質が劣化し、エレクトロマイグレーションによる配線不良の原因となる。
【0018】本発明は、上記実施例に限定されるものではない。例えば、堆積条件を適当に設定しヴィア孔8a内のみにCVD−Al成膜を行い、その後スパッタ法によって第2層Al膜を形成するこもできる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る多層配線構造の形成方法によれば、第4工程で、不活性ガスを用いたプラズマ処理により、第3工程で層間絶縁膜及び金属配線の表面に生じた塩素化合物を除去して清浄化することとしているので、第5工程にあたって、アルミニウムをヴィア孔底の金属配線の直上から堆積することができ、微細なヴィア孔であっても低抵抗で埋め込むことができる。また、さらに配線用のアルミニウム膜を層間絶縁膜後上に堆積した場合にも、層間絶縁膜表面の上記堆積物が有効に除去されているので、堆積されたアルミニウム膜を良質かつ平坦なものとすることができ、このアルミニウム膜から形成された上層配線のエレクトロマイグレーション耐性を良好なものとすることができる。すなわち、本発明の方法により、微細な多層配線構造の形成が容易になり、その配線間の接続部分においても良好な電気特性が得られるようになる。したがって、非常に高い信頼性を持つ多層配線構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るヴィア孔の埋め込み方法の工程図。
【図2】比較例の方法の工程図。
【符号の説明】
6…金属配線、6a…酸化アルミニウム、8…層間絶縁膜、8a…ヴィア孔、6b,8b…塩素化合物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体基板上方のアルミニウムを含む金属配線上に層間絶縁膜を被覆する第1工程と、ドライエッチングによって、前記層間絶縁膜中にヴィア孔を形成する第2工程と、塩素を含むガス雰囲気中でプラズマエッチングすることにより、前記ヴィア孔において前記金属配線の露出表面に形成されている酸化アルミニウムを除去する第3工程と、不活性ガスを用いたプラズマ処理により、前記第3工程で前記層間絶縁膜及び前記金属配線の表面に生じた塩素化合物を除去する第4工程と、有機金属ガスを原料として用いた化学気相堆積法により、前記ヴィア孔内にアルミニウムを堆積する第5工程と、を備える多層配線構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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