説明

多層配線構造体

【目的】 バイアホール連結加工作業が簡単で、連結信頼性の高い多層配線構造体を提供するものである。
【構成】 絶縁層の両面に配線層を有する多層配線構造体に形成されたバイアホールに、半田ペーストを印刷することにより、両配線層を連結して成る多層配線構造体である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は多層配線FPC、多層配線基板などに形成されたバイアホールの連結構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】最近ICの高速化に対応して、伝送スピードの向上、ノイズの低減などの観点からTABテープやFPCなどの配線基板において多層配線構造体が用いられるようになった。このような多層配線構造体においては、例えばポリイミドフィルムなどの絶縁層の上面に信号層、下面に電源層を有しているが、下面の電源層から配線をとるためなどの目的でバイアホールが設けられる。
【0003】バイアホールを介してこのような層間を電気的に連結する手段として、従来めっき法や蒸着法が知られている。
【0004】めっき法は電気めっき法や無電解めっき法により、図2に示すようにバイアホール1内壁の垂直方向に厚さ約5〜10μmのめっき2を施して層間を連結するもので、バイアホール部以外にめっきレジストを印刷してバイアホール部のみにめっきを施す方法、あるいは全面めっき後にホトエッチング法により余分な部分のめっき膜を除去する方法がある。この場合銅の電気めっきでは5〜10分、無電解めっきでは1〜2時間とめっきに時間がかかること、湿式で行なわれるためイオン性物質がバイアホールや層間に残留して、マイグレーションや配線腐食原因となること、めっき層が薄いため熱ストレスに弱いこと、更には連結部の電気抵抗が高く、伝送特性が低下するなどの問題点がある。
【0005】また蒸着法はイオンプレーティング法、スパッタリング法などがあり、図3に示すように蒸着マスク11を用いてバイアホール部への蒸着3を行なうか、またはめっき法と同様に全面蒸着後に余分な部分をホトエッチング法により除去する方法である。この方法では5〜10μmの厚さに蒸着させるのに4〜5時間と時間がかかること、蒸着マスクが高価である上に高価な蒸着設備が必要であること、さらにめっき法による連結と同様に連結部が熱ストレスに弱く、また電気抵抗が高いという問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】バイアホールの連結に関する上記従来技術の課題に鑑み、信頼性が高く、容易に連結できる方法が求められていた。本発明は、このような要望に応えるものである。
【0007】本発明の目的はバイアホールの連結を半田ペーストを印刷することにより実現するものであり、加工作業が極めて簡単で、バイアホールの連結信頼性の高い多層配線構造体を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明によれば、絶縁層の両面に配線層を有する多層配線構造体に形成されたバイアホールに、半田ペーストを印刷することにより、両配線層を連結して成る多層配線構造体が提供される。以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】図1は、本発明の多層配線構造体の連結構造の一例を示す断面図である。以下多層配線構造体としてFPCを代表例として説明するがこれに限るものではない。
【0010】本発明において絶縁層5は、ポリイミドフィルムを挙げることができるがこれに限るものではない。この絶縁層の厚さは限定しないが、例えば25μm 程度である。
【0011】前記絶縁層5の両面に第1配線層4および第2(裏面)配線層7を有する。第1配線層4としては、例えば厚さ20μm 程度の銅などを挙げることができる。
【0012】通常、前記絶縁層5に第1配線層4を設けた状態で、例えば金型プレス開口法によりバイアホール1を開口する。その後、下面に例えば42アロイ(42%Ni−Fe合金)の第2配線層7を貼りつけて構造体としている。前記第2配線層7は、例えばエポキシ系接着剤層6を介して貼りつけられる。前記バイアホール1の大きさは、配線作業などを考慮して適宜の大きさとすればよく、通常0.5mmФ程度である。
【0013】本発明では、前記バイアホール1に、半田ペースト印刷層8を形成することにより、前記両配線層4,7が連結されている。半田ペーストの印刷方法としては、例えばメタルマスクを用い、バイアホールに合せてスクリーン印刷する方法を挙げることができる。この印刷層8の厚さは限定しないが、硬化後で20μm 前後であれば電気抵抗値および機械的強度上問題ない。前記半田ペーストは、通常エポキシレジンと硬化剤の混合レジンに配合して用い、印刷後加熱硬化処理を施す。半田粉末は、例えば、60%Sn−Pbで2〜3μm Ф程度のものでよい。
【0014】
【実施例】以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
【0015】(実施例1)図1に示す構造の多層配線FPCを作成した。用いた多層配線FPCは厚さ25μmのポリイミドフィルム絶縁層5の上面に、厚さ20μmの銅の第1配線層4を設け、金型プレス開口法により0.5mmΦのバイアホール開口後、下面に厚さ20μmのエポキシ系接着剤層6を介して厚さ25μmの42アロイ7(第2配線層)を貼りつけた。次いで半田ペーストをメタルマスクを用い、バイアホールに合わせて、25μmの厚さに印刷した。半田ペーストはエポキシレジンと硬化剤の混合レジンに対して、2〜3μmΦの60%Sn−Pb半田粉末を配合したもので、印刷後250℃、5時間加熱硬化処理を施した。硬化後の印刷層8の厚さは20μmであった。バイアホール連結部の特性試験結果を表1に示す。
【0016】(実施例2)実施例1において、バイアホールの開口径を0.2mmΦとした他は実施例1と同様に行なった。バイアホール連結部の特性試験結果を表1に示す。
【0017】(比較例1)実施例1と同じバイアホールを有する多層配線構造体を、無電解法銅めっきにより連結した(図2参照)。
【0018】(試験法)■温度サイクル(熱ストレス)試験バイアホールを連結した多層配線FPCをEIAJ規格に準拠し、温度サイクル試験機を用い、−50℃に5時間保った後、昇温速度10分間で150℃に昇温し、5時間保つ。次いで降温速度10分間で−50℃とする。これを500サイクル行い、試験数20に対し連結が破断したサンプル個数を調べる。
【0019】■バイアホール連結部の直流抵抗値の変化連結後の抵抗値と、65℃、95%相対湿度の雰囲気に100時間保持後の抵抗値(Ω)を示したもので、試験数20の平均値である。
【0020】


【0021】
【発明の効果】本発明は以上説明したように構成されているので、本発明によって提供される多層配線構造体は、バイアホールの連結に作業容易な半田ペーストによる印刷法をとり入れたため、きわめて能率良く製造することができる。まためっき法のようにイオン性不純物の侵入の恐れが全くなく、バイアホールの連結部の熱ストレスによる信頼性も良好で、連結部の電気抵抗も小さい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線構造体の連結構造の一例を示す断面図である。
【図2】従来法(めっき法)による連結構造を示す断面図である。
【図3】従来法(蒸着法)による連結構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 バイアホール
2 バイアホールの連結層(めっき)
3 バイアホールの連結層(蒸着)
4 第1配線層
5 絶縁層
6 接着剤層
7 第2(裏面)配線層
8 半田ペースト印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁層の両面に配線層を有する多層配線構造体に形成されたバイアホールに、半田ペーストを印刷することにより、両配線層を連結して成る多層配線構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−29768
【公開日】平成5年(1993)2月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−179271
【出願日】平成3年(1991)7月19日
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)