説明

多層高分子電解質膜

多層高分子電解質膜を開示する。この膜は、該層の少なくとも1個が少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂又はビニル樹脂と、少なくとも1種の追加の重合体とを含有する。該重合体は、1個以上の層に存在するアクリル樹脂又はビニル樹脂について小さな又は大きなドメインサイズを有する。該重合体は、好ましくは、フィルムに形成されたときに改善された伝導性を有する。該膜は、バッテリーや燃料電池などに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体樹脂を含有する多層高分子電解質膜に関し、例えば、特に、燃料電池などのような様々な製品に有用な、イオン性及び/又はイオン化性基を含有するフルオロポリマー及び非過弗素化重合体樹脂(「高分子電解質」とも呼ばれる)に関する。さらに、本発明は、これらの多層高分子電解質膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルフルオロカーボンイオン交換膜は、高度な陽イオン輸送を与えるため、イオン交換膜として幅広く使用されている。高分子イオン交換膜は、固体高分子電解質又は高分子交換膜(PEM)と呼ぶことができる。燃料電池用途についての厳しい要求基準のため、最も一般的に使用されている膜で市販されているものは、ペルフルオルスルホン化されたナフィオン(Nafion)(登録商標)、フレミオン(Flemion)(登録商標)及びアシプレックス(Aciplex)(登録商標)重合体から作られている。しかしながら、ある種の報告書及び文献には、これらの膜は良好に機能するものの、当該技術をさらに商業化へと発展させるのを妨げるいくつかの制限を示すことが記載されている。さらに、これらのものは、主として電池性能を低下させる液体燃料のクロスオーバーのため、液体燃料よりも気体燃料で良好に機能する。膜の耐化学性及び機械的強度が燃料電池用途には重要な特性である。実際に、膜は、多くの場合、高度な圧力差、水和−脱水和サイクル並びに他の重圧のかかる条件にさらされる。また、機械的強度は、膜が50ミクロン未満のように非常に薄いときに重要になる。さらに、燃料電池又はバッテリー用途で使用されるときに、該膜は、金属イオンの存在及び時として溶媒の存在による酸化性及び/又は還元性の環境において、200℃に達し得る温度の非常に酸性の媒体中に置かれる。この環境には、該膜が化学的及び電気化学的に耐性であること並びに熱的に安定であることが必要である。
【0003】
現在のところ、多くの弗素含有膜は、次の欠点の一つ以上を有し得る:
(i)該膜を介した高度の液体及び気体クロスオーバー、
(ii)劣った特性に至る弗素化重合体と他の重合体との不均質ブレンド、
(iii)いくらかの液体燃料の存在下における不十分な耐化学性、
(iv)乏しい耐電気化学性、
(v)スルホン化基の不均質分布の欠落、
(vi)乏しい機械的性質、及び/又は
(vii)乏しい熱安定性。
【0004】
米国特許第4,295,952号(Nora外)は、スチレンと、ジビニルベンゼンと、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及び/又はアクリル酸のうち少なくとも1種との部分的にスルホン化された三元共重合体を有する陽イオン性膜に関する。
【0005】
米国特許第5,679,482号(Ehrenberg外)は、イオン性基を有するイオン伝導膜を取り入れた燃料電池に関する。膜を形成する重合体は、スルホン化剤を使用してスルホン化されたスチレンを含有する。このスルホン化は、単量体又は重合体で行うことができる。
【0006】
米国特許第5,795,668号には、ナフィオン(商標)型重合体を使用して強化された高分子イオン交換膜(PEM)と共にMEAを収容した燃料電池が記載されている。このPEMは、弗素化多孔性支持層と、約500〜2000の当量及び0.5〜2ミリ当量/g乾燥樹脂の好ましいイオン交換容量を有する強化イオン交換膜とを基材とする。該多孔性支持層は、ある種のPTFE及びPTFE共重合体から作られる。この膜は、−CF2CF2SO3Hを含有する側鎖を有する過弗素化重合体である。該文献から、ナフィオン(商標)型重合体は、メタノール燃料電池内で機械的に破損する可能性があり並びに液体クロスオーバーの問題を有し得ることが分かる。
【0007】
WO97/41168(Rusch)は、弗素化又は非弗素化ポリスチレン系スルホネート及びスルホン化ポリテトラフルオルエチレンのような、イオン交換樹脂を有する多層イオン交換複合膜に関する。
【0008】
WO98/20573 A1には、高度に弗素化されたリチウムイオン交換高分子電解質膜(PEM)を収容した燃料電池が記載されている。このPEMは、非プロトン溶媒を吸収するイオン交換膜を基材とする。
【0009】
WO98/22989には、ポリスチレンスルホン酸及びポリ(弗化ビニリデン)を含有する高分子膜であって、直接型メタノール燃料電池(DMFC)の使用時にメタノールクロスオーバーの減少を与えるものが記載されている。しかしながら、記載された重合体ブレンド方法は、容認できるブレンドを与えず、しかもそのスルホン化工程は複雑である。
【0010】
Holmberg外,(J.Material Chem. 1996,6(8),1309)には、スチレンをPVDFフィルムに照射グラフトさせ、次いでクロルスルホン酸でスルホン化させることによるプロトン伝導膜の製造法が記載されている。この本発明では、該スルホン化基がスルホン化単量体を使用して取り入れられ得るので、スルホン化工程は必要ない。
【0011】
米国特許第6,252,000号は、弗素化イオン交換/非官能性重合体のブレンドに関する。具体例として、過弗素化された弗化スルホニル重合体/ポリ(CTFE−共−ペルフルオルジオキソラン)ブレンドが挙げられている。
【0012】
WO99/67304は、スルホン化芳香族過弗素化単量体とアクリル単量体との共重合によって製造された芳香族過弗素化イオノマーに関する。存在するスルホン化基は、該重合体の弗素化芳香族鎖中に存在する。
【0013】
米国特許第6,025,092号は、過弗素化イオノマーであって、VDF単量体をスルホン化単量体と共に重合させたものに関する。
【0014】
Moore外,(J.Membrane Sci.,1992,75,7)には、内部可塑剤としての嵩高テトラブチルアンモニウム対イオンを使用してペルフルオルスルホネートイオノマーの溶融加工可能な形態を製造して所望のメルトフロー特性を生じさせるための手順が記載されている。
【0015】
Boucher−Sharma外,(J.Appl.Polym.Sci.,1999,74,47)には、スルホン化ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)重合体で被覆されたPVDFからなる薄膜複合材を使用してブテノール水溶液の透析蒸発を適用することが記載されている。次いで、該重合体は、様々な鎖長の脂肪族置換基を有する第四アンモニウム陽イオンでイオン交換される。
【0016】
米国特許第6,011,074号は、第四アンモニウム陽イオンを使用してペルフルオルスルホン化イオノマーのイオン交換特性を向上させることに関する。
【0017】
Berezina外(Russian J.Electrochemistry,2002,38(8),903)には、ナフィオン(商標)−117及びMF−4SKを含む過弗素化膜の輸送及び構造パラメーターに及ぼすテトラアルキルアンモニウム塩の影響が記載されている。彼らは、有機イオンの特異的な吸着が該重合体の水クラスターを分解させ、且つ、側部セグメントの弾性を減少させ、それによって該重合体フィルムのプロトン伝導度を有意に減少させることを観察している。
【0018】
Pasternac外,(J.Polym Sci.,A:Polym.Chem.,1991,29(6),915)は、C2〜C4アルカン用の透析蒸発膜の適用に関するものであり、ナフィオン(商標)−117を臭化テトラアルキルアンモニウムで処理すると、その分離係数が対イオンの有機鎖長の増加と共に増大することを立証している。
【0019】
Smith外は、欧州特許第143,605A2において、膜をテトラアルキルアンモニウムイオンで陽イオン交換し、そして乾式延伸により拡張させて電気分解に有用な膜を生じさせる方法を記載している。
【0020】
Feldheim外(J.Polym.Sci.,B:Polym.Physics,1993,31(8),953)は、ナフィオン(商標)熱安定性に対イオンの性質が強く依存することを示している。金属塩及びアルキルアンモニウム塩が検討された。該膜の熱安定性は、該対イオンの寸法が減少すると改善することが示されている。この熱安定性と対イオン寸法との逆相関は、スルホネート−対イオン相互作用の強さによって強く影響を受ける初期分解反応に寄与する。
【0021】
水酸化テトラブチルアンモニウムによるナフィオン(商標)の中和が、Moore外による様々な刊行物においてさらに検討された。例えば、Polymer Chemistry,1992,31(1),1212;Polymer Chemistry,1995,36(2),374,J.Polym.Sci.B:Polym.Physics,1995,33(7),1065及びMacromolecules,2000,33,6031を参照されたい。
【0022】
さらに、スルホン化アクリル又はスルホン化ビニル重合体が、例えば、高吸収材、おむつ及びコンタクトレンズへの応用について記載されている(J.Mater.Chem.,1996,6(a),1309及びIonics,1997,3,214を参照)。しかしながら、このようなタイプの製品は、高分子電解質膜などのための膜としての適用については記載されていない。上に言及した及び本願全体にわたって言及する全ての特許、刊行物及び特許出願は、それらの全体の参照によって援用するものとし、且つ、本願の一部をなすものとする。
【0023】
従って、これらの制限の一つ以上を克服し、且つ、液体燃料電池のような燃料電池への応用のために使用できる膜を開発する必要がある。特に、水性若しくは非水性分散液又は水溶液若しくは非水性溶液から直接膜を作るための高分子電解質を開発する必要がある。また、スルホン化又は他の官能基を有する高分子電解質の組成物及び合成方法並びに使用方法を提供する必要がある。さらに、さらに容易で且つ環境に優しい方法を提供する必要がある。また、当業者は、さらに高い耐化学性及び機械的強度を有する高分子電解質膜を望むであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
発明の概略
従って、本発明の目的は、高い伝導性を有する高分子電解質を提供することである。
【0025】
さらなる目的は、多層高分子電解質膜であって、少なくとも1個の層が第2重合体中に均一に分布したアクリル及び/又はビニル樹脂であるものを提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、イオン性官能基を有する高分子電解質を提供することである。
【0027】
本発明のさらなる目的は、高い耐化学性及び/又は機械的強度を有する高分子電解質膜を提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、上記欠点の一つ以上を回避する、例えば、膜を介した高度な液体クロスオーバーを回避する高分子電解質膜の構成要素として形成できる重合体を提供することである。
【0029】
本発明のさらなる目的は、重合体の分散体又は溶液から直接製造できる膜を提供することである。
【0030】
本発明の別の目的は、別個のスルホン化工程を有しない高分子電解質を提供することである。
【0031】
本発明のさらなる目的は、多層高分子電解質膜並びに好ましくは容認できる燃料クロスオーバー及び/又は低い面積抵抗を有するこの膜を使用した燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
これら及び他の利益を達成するため、また、ここに具現化され且つ広く記載されるような本発明の目的に従えば、本発明は、多層高分子電解質膜であって、少なくとも1個の層が、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂或いはそれら両方と、少なくとも1種の追加の重合体とを含むものに関する。該イオン性又はイオン化性基は、好ましくは、約200〜約2500EWの量で存在する。さらに、該高分子電解質膜は、好ましくは、5×10-16 mol/cm2/s若しくはそれ未満のメタノールクロスオーバー速度及び/又は0.3Ωcm2又はそれ未満の面積抵抗を有する。さらに、該多層高分子電解質膜の全体的な厚さは、約10ミル以下、例えば、約0.5〜約5ミルであることができる。該重合体は、好ましくは、約200〜約8000、好ましくは約900〜約1400のEWを有する。重合体又は重合体ブレンド中におけるアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂のドメインサイズは、任意のサイズであることができる。また、選択肢として、該組成物は、フィルムに形成されるときに、20mS/cm又はそれを超える伝導度を有する。
【0033】
さらに、本発明は、本発明の膜を収容した燃料電池、バッテリーその他の装置に関するものでもある。
【0034】
さらに、本発明は、上記膜を備えた膜電極アセンブリに関し、またこの膜電極アセンブリを使用した燃料電池に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図面の簡単な説明
図1は、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有するアクリル樹脂又はビニル樹脂と、少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマーとの重合体ブレンドのSEM写真図である。この重合体ブレンドは、先の技術を使用して作られたものであり、且つ、1000nmを超えるドメインサイズを示す。
【0036】
図2は、500nm未満のドメインサイズを示し且つかろうじて検出できるドメインサイズを示す本発明の重合体ブレンドのSEM写真図である。
【0037】
図3は、2層膜の微分干渉コントラスト画像図(凍結ミクロトーム断面光学顕微鏡)である。白線は、該層間の分離箇所を示す。
【0038】
図4及び5は、本発明の多層膜のSEM写真図である。
【0039】
図6は、同様に本発明の多層膜のSEM写真図である。
【0040】
発明の詳細な説明
過弗素化高分子電解質膜は、高度な陽イオン輸送を与えるために使用され、且つ、イオン交換膜として広く使用されてきた。高分子イオン交換膜は、固体高分子電解質又は高分子交換膜(PEM)と呼ばれている。
【0041】
最も一般的に使用されている膜で市販されているものは、ナフィオン(登録商標)及びアシプレックス(登録商標)である。しかしながら、文献に記載されている非過弗素化高分子電解質膜は非常にわずかしかない。これは、その膜の耐化学性、耐電気化学性及び機械的強度が燃料電池用途にとって重要な特性であるという事実によるものである。実際に、膜はたびたび高度な圧力差にさらされる。さらに、機械的強度は、膜が非常に薄いとき(50ミクロン未満)に重要になる。燃料電池又はバッテリー用途に使用されるときに、該膜は、200℃に達し得る温度の非常に酸性の媒体中及び金属イオン、溶媒などの存在下に置かれるため、高い耐化学性並びに耐電気化学性が必要となる。これらの要求基準は、多くの場合、弗素化塩基を使用すると満たされる。というのは、弗素化材料は、固有の耐化学性及び耐電気化学性を有するからである。しかしながら、これらの膜は、高温(70〜200℃の範囲)での乏しい機械的性質、クロスオーバー及び繰り返される水和−脱水和サイクル後の機械的破損(これらに限定されない)を含めた制限を示す。さらに、これらの過弗素化高分子電解質の製造にはいくつかの工程が必要であり、しかもコストが高くなる化学物質が必要となる。容易で且つ安価な化学の開発は、燃料電池についての商業化の障害をさらに軽減させるであろう。
【0042】
本発明は、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂又はビニル樹脂と、少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマーとを含有する重合体ブレンドを記載する米国特許出願公開第US2003/0064267A1号に記載の発明を超える改善である。さらに、本発明は、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂又はビニル樹脂と、部分的な弗素化を含んでいても弗素化を全く含んでいなくてもよい少なくとも1種の非ペルフルオロポリマーとを含有する重合体ブレンドを記載する、2003年3月6日出願の米国特許出願第10/383,026号を超える改善である。これらの出願の両方は、それらの全体を参照によって援用するものとし、且つ、本願の一部をなすものとする。これら2つの出願に記載されたこれらの発明は非常に有益であり、しかも従来技術を発達させたが、産業界には、常に、PEMを改善させ、そして燃料電池にPEMを使用したいという要望がある。本発明は、様々な重合体(例えば、アクリル樹脂又はビニル樹脂)のドメインサイズが任意のサイズであることができるような多層高分子電解質膜を提供する。図1(少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂又はビニル樹脂と熱可塑性フルオロポリマーとを有する重合体ブレンドのSEM写真図である)に示すように、ドメインサイズは、倍率下では極めてビジュアル的である。時として、ドメインサイズは1000nmを超え得る。或いは、重合体ブレンド中に存在するアクリル樹脂又はビニル樹脂のドメインサイズは、1000nm未満、例えば500nm未満、好ましくは100nm未満、さらに好ましくは50nm未満の寸法であることができる。図2に示すように、本発明の一具体例を使用する際には、ドメインサイズはほとんど検出できない。さらに、多層構造を使用して形成されたフィルムの伝導性は、本発明の重合体ブレンド中に存在するアクリル樹脂又はビニル樹脂のドメインサイズに関わらず、以下に詳細に説明するように有意に改善される。
【0043】
本発明は、多層高分子電解質膜であって、該層の少なくとも1個がスルホン化及び/又はホスホン化基のような少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂或いは重合体を含有する高分子電解質を含むものに関する。本発明の一部として、少なくとも1種の追加の重合体は、重合体ブレンドを形成させるためにアクリル及び/又はビニル樹脂と共に存在できる。この追加の重合体は、フルオロポリマー(ペルフルオル若しくは非ペルフルオル)又は非フルオロポリマーであることができる。好ましくは、該追加の重合体は少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマーである。別の具体例では、該重合体又はそのブレンドは、いかなるペルフルオロポリマーも含有せず、又は選択肢としていかなるフルオロポリマーも含有しない。一具体例では、該高分子電解質は、過弗素化されたものではなく、且つ、他の重合体と共には存在し得ない(即ち、ブレンドとして存在せず、或いは言い換えれば非過弗素化高分子電解質が単独で使用される)。別の具体例では、該高分子電解質は、過弗素化されたものではなく、且つ、熱可塑性非ペルフルオロポリマーのような1種以上の他の重合体と共に、例えばブレンドとして存在する。ペルフルオルとは、炭素原子に結合した全ての水素が完全に弗素で置換されているものと理解されたい。選択肢として、本発明では、水素のいくらかが弗素で置換でき、又はそれらの全てが弗素で置換できる。従って、部分弗素化が可能であり、又は全く弗素化されていなくてもよい。
【0044】
少なくとも1個の層中に含まれる高分子電解質は、(a)アクリル若しくはビニル単位又はその両方及び少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する高分子電荷質と、(b)少なくとも1種の追加の重合体(ここで、(a)と(b)とは互いに異なる)とをブレンドすることによって得られた生成物であることができる。
【0045】
また、少なくとも1個の層中に存在する高分子電解質は、少なくとも1種の重合性ビニル及び/又はアクリル含有単量体と、イオン性若しくはイオン化性基又はその両方を含む少なくとも1種の単量体との重合体生成物であって、その重合が、好ましくは水性分散体の存在下で行われたものを含む組成物であることもできる。
【0046】
本明細書における上記特定の具体例並びに任意の具体例では、重合体又は重合体ブレンド中のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂或いは重合体のドメインサイズは任意の寸法であることができる。例えば、該ドメインサイズは、約1nm〜約1200nmであることができ又はそれを超えることができる。具体例としては、限定されないが、700nm〜1200nm、約500nm〜700nm、約500nm以下、約100nm以下又は約75nm以下及び約50nm以下が挙げられる。ここで議論したドメインサイズは、最大ドメインサイズ及び/又は平均ドメインサイズに関するものである。好ましい具体例では、記載したドメインサイズは、最大ドメインサイズであるが、ただし平均ドメインサイズであることができる。他の好適なドメインサイズ範囲としては、限定されないが、約1nm〜約500nm、約1nm〜約100nm、約1nm〜約75nm、約1nm〜約50nm、約10nm〜約100nm、約10nm〜約75nm、約10nm〜約50nm若しくは約1nm〜約25nm又はこれら様々な寸法の間にある任意の値若しくは範囲が挙げられる。また、これらのドメインサイズは最大ドメインサイズ及び/又は平均ドメインサイズに関するものである。これらのドメインサイズは、好ましくは、ブレンドがフィルム、層又は膜に形成された場合のものである。また、選択肢として、本発明の重合体又は重合体ブレンドは、フィルム又は膜に形成されたときに、好ましくは、20mS/cm以上、より好ましくは50mS/cm以上、さらに好ましくは75mS/cm以上、又は100mS/cm以上、又は約20mS/cm〜約300mS/cmの伝導度を有する。他の伝導度の範囲としては、限定されないが、約50mS/cm〜約200mS/cm、約75mS/cm〜約200mS/cm、約80mS/cm〜約180mS/cm、約90mS/cm〜約175mS/cm、約100mS/cm〜約180mS/cm及びこれら様々な量の間にある任意の値又は範囲が挙げられる。上で述べたように、本発明の重合体又は重合体ブレンドは、これらの望ましい伝導性を単独で又はここで説明したドメインサイズと共に有することができる。好ましくは、本発明の重合体又は重合体ブレンドは、この好ましいドメインサイズ及びここで説明した伝導度の両方を有する。
【0047】
本発明で使用される重合体ブレンドは、上記及び本願全体を通して記載した2種の重合体の任意のタイプの混合物であることができる。好ましくは、該重合体ブレンドは、2種のの重合体の均質ブレンドである。例えば、該重合体ブレンドは、重合体の一方を他方の重合体上に少なくとも部分的に被覆した重合体ブレンドであることができる。好ましくは、エマルジョン又は懸濁重合の際に、該フルオロポリマーをアクリル若しくはビニル樹脂又は少なくとも1種の重合ビニル又はアクリル含有単量体から形成された重合体で被覆し、そして少なくとも1個のイオン性若しくはイオン化性基又はその両方を含む少なくとも1種の単量体がシェルとなる。先に述べたように、アクリル又はビニル樹脂は、好ましい具体例ではフルオロポリマーを部分的に被覆し又は完全に被覆することができる。好ましくは、アクリル樹脂とフルオロポリマーとの結合は、物理的結合であるが、化学的結合を含めて物理的結合以外の結合も本発明の結合の範囲内にある。好ましい具体例では、粒子は、典型的には、約90〜約500nm、より好ましくは約50〜約300nmの粒度を有する。フルオロポリマーの量は、約5〜約95重量%であることができ、アクリル又はビニル樹脂の量は、約95〜約5重量%であることができる。好ましくは、フルオロポリマーは約40%〜約80重量%の量で存在し、アクリル又はビニル樹脂の量は約20〜約60重量%である。
【0048】
フルオロポリマーに関して、このフルオロポリマーは、単独重合体又は他のタイプの重合体であることができ、しかもフルオロポリマーの混合物又はフルオロポリマーと非フルオロポリマーとの混合物であることができる。好ましくは、熱可塑性フルオロポリマーが使用される。好ましくは、このフルオロポリマー又はフルオロポリマーの混合物は、存在する他の重合体を含め、他の成分との重合体ブレンドを形成することができる任意のフルオロポリマーであることができる。好ましくは、フルオロポリマーは、ポリ(弗化ビニリデン)単独重合体のようなポリ(弗化ビニリデン)重合体である。フルオロポリマーの他の例としては、ポリヘキサフルオルプロピレン、ポリテトラフルオルエチレン、ポリ(弗化ビニル)又はそれらの組合せのような、少なくとも1個の弗素原子を含有するポリアルキレンが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましくは、該フルオロポリマーは、約30%〜約100重量%の弗化ビニリデン、並びに0%〜約70重量%の、少なくとも1個の弗素原子を含有する少なくとも1種のポリアルキレン、例えば、ヘキサフルオルプロピレン、テトラフルオルエチレン、トリフルオルエチレン(VF3)、クロルトリフルオルエチレン、及び/又は弗化ビニルを含有する重合体組成物である。好ましくは、単独重合体、共重合体、三元共重合体、オリゴマー及び他のタイプの重合体を含むことができるフルオロポリマーの分子量は、約80,000MW〜約1,000,000MW、より好ましくは約100,000MW〜約500,000MWである。該フルオロポリマーは、米国特許第3,051,677号;同3,178,399号;同3,475,396号;同3,857,827号;及び同5,093,427号(それらの全体は全て参照によって援用するものとする)に記載された技術を使用して製造できる。
【0049】
アクリル樹脂又は重合体について、この重合体又は樹脂は、好ましくは、1個以上のイオン性又はイオン化性基を含有し又は保有する。アクリル樹脂の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、これらの酸のエステル又はアクリロニトリルの重合体(共重合体、三元共重合体、オリゴマーなどを含む)が挙げられる。また、アクリル樹脂は、他の反復単位並びに異なるアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸及びアクリロニトリルの組合せを含有することもできる。本発明の目的上、アクリル樹脂は、他の重合単量体を含むことができ、又は2種以上の異なるアクリル樹脂の混合物であることができ、又はさらにビニル単量体及びスチレン単量体のような非アクリル樹脂を含むことができる。
【0050】
高分子電解質に使用できるビニル単量体の例としては、スチレン、酢酸ビニル、ビニルエーテル、シェル社製のVeoVa9及びVeoVa10のようなビニルエステル、プロピオン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、ステアリン酸ビニルなど及びそれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、少なくとも1種のビニル単量体又は樹脂は、芳香族基を含まない。換言すれば、好ましくは、ビニル単量体、樹脂又は重合体は、非芳香族ビニル樹脂である。従って、ビニル樹脂は、好ましくはスチレンを含まない。
【0051】
さらに、高分子電解質は、少なくとも1個のイオン性(例えば、スルホネート若しくはホスホネート)又はイオン化性基、例えばスルホン化若しくはホスホン化基又はスルホニル基を含有する。イオン化性基とは、イオン性基を形成することができる基、例えば、環状アミノ酸、スルトン、マレイン酸無水物、メルカプタン、スルフィド、ホスファランなどである。これらの基は、イオン性又はイオン化性基を含有する1種以上の単量体の存在下でアクリル及び/又はビニル樹脂をブレンドするような任意の手段によって高分子電解質の一部分をなすことができる。別法では、該高分子電解質を形成させるために使用される単量体の1種以上がイオン性又はイオン化性基を含有することができる。本発明の目的上、イオン性又はイオン化性基はアクリル酸の酸部分ではなく、又は使用される場合にはビニル樹脂の酸部分ではない。該イオン性又はイオン化性基は、特に上記のアクリル樹脂又は重合体から存在し得る任意のアクリル酸の他の所定の基である。
【0052】
アクリル及び/又はビニルについて上に列挙した成分の他に、該アクリル及び/又はビニル樹脂は、任意のタイプの官能基を随意に有する1種以上の追加の単量体を、これらの単量体がアクリル及び/ビニル樹脂の全体的な形成と適合できる限りにおいてさらに含有することとができ、又は当該追加の単量体のさらなる存在下に形成できる。
【0053】
先に述べたように、好ましくは、該アクリル及び/又はビニル樹脂は、数種の単量体であって、その一方がイオン性又はイオン化性基を含有し、且つ、他方がアクリル及び/又はビニル樹脂のアクリル及び/又はビニル単位を含有するものの重合によって得られるものである。より好ましくは、アクリル及び/又はビニル樹脂は、(1)アクリル酸アルキルエステル、(2)メタクリル酸アルキルエステル、(3)(1)及び(2)とは異なる1種以上の共重合性単量体、(4)少なくとも1個の官能基を有する1種以上の単量体、(5)イオン性又はイオン化性基を含有する単量体、例えばスルホン化又はホスホン化単量体を重合させることによって形成される。
【0054】
アクリル酸アルキルエステル(1)の例としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸フルオルアルキル及びそれらの組合せが挙げられる。
【0055】
共重合性単量体(3)の例としては、例えば、共役ジエン(例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン)、芳香族アルケニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン)、ジビニル炭化水素化合物(例えば、ジビニルベンゼン)及びそれらの組合せが挙げられる。
【0056】
メタクリル酸アルキルエステル(2)の例としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸フルオルアルキル及びそれらの組合せが挙げられる。
【0057】
官能性単量体(4)の例としては、α,β−不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸);ビニルエステル化合物、アミド化合物(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルアクリルメタアミド、N−ジアルキルメタクリルアミド、N−ジアルキルアクリルアミド);ヒドロキシ基を含有する単量体(例えば、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート);エポキシ基を含有する単量体(例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル)、シラノールを含有する単量体(例えば、γ−トリメトキシシランメタクリレート、γ−トリエトキシシランメタクリレート);アルデヒドを含有する単量体(例えば、アクロレイン)、シアン化アルケニル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)が挙げられるが、これらに限定されない。(4)に含まれる単量体は、架橋することができる。架橋することができる共重合性単量体の例としては、イソブチルメタクリルアミド、メタクリル酸グリシジル、ジエチレングリコールジメタクリレート及びトリメチルオキシシランメタクリレートが挙げられる。架橋は、機械的性質の改善及び耐溶剤性にとって望ましいかもしれない。
【0058】
いくつかの特定の用途のために、低分子量の共重合性重合体又はオリゴマーを使用することができる。さらに、アクリル酸アルキルエステル(1)とメタクリル酸アルキルエステル(2)との混合物を使用するときに、それらの比を好適に調整して所望の特性を達成することができる。
【0059】
少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を含有する単量体(5)の例としては、アクリルアミドプロピルスルホネート、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート、スルホエチルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。これらの単量体は、好ましくは、それらの酸の形態で又は塩誘導体として使用できる。例えば、播種エマルジョン重合においては、スルホン化単量体を第1工程若しくは第2工程又はその両方で導入できる。イオン性基の量は、好ましくは、約200〜約2500EW、より好ましくは約200〜約1100EWであるが、ここで、EWは当量であり且つスルホン化単位当たりの重合体のグラム数である。他の量も使用できる。
【0060】
少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル若しくはビニル樹脂又はその両方を含有する本発明の重合体は、アクリル又はビニル樹脂に対して約200〜約8000、例えば約900〜約1400の当量を有することができる。この当量範囲は、選択肢として、膜形成及びフルオロポリマーの必要性を回避できることに関する好ましい特性を与えることができる。本発明の重合体は、随意にブレンドとして形成できる。好ましくは、本発明の重合体は、慣用の架橋技術を使用して架橋される。
【0061】
架橋は、自己縮合、二次架橋剤の添加又は放射線架橋(これらに限定されない)を含め、慣用方法によって行うことができる。これらは文献に十分に記載されており、また当業者に周知である。自己縮合架橋を受けることができる単量体の例としては、N−メチロールアクリルアミド、イソブトキシメタクリルアミド、N−メチレンビスアクリルアミド及びメタクリル酸グリシジルが挙げられる。二次架橋剤の例としては、遊離及びブロックドイソシアネート、メラミン、エポキシ、カルボキシレート、カルボン酸、アルコキシシラン、シリコーン、アジリジン及びカルボジイミドが挙げられる。特定の架橋化学反応について選択できる触媒としては、有機錫、スルホン酸又はアミンが挙げられるであろう。放射線架橋の例としては、電子線、紫外線及びγ線が挙げられる。
【0062】
重合性ビニル及び/又はアクリル含有単量体の混合物の重合は別々に実施でき、このときに1種以上の重合体とブレンドしたり、1種以上の重合体の存在下で重合したりすることができる。ビニル及び/又はアクリル含有単量体の重合は、溶液、塊状、エマルジョン重合又は任意の他の既知の重合方法によって行うことができる。
【0063】
重合性ビニル及び/又はアクリルイオン含有単量体の混合物の重合を別々に実施し、次いで1種以上の重合体とブレンドする場合には、該ブレンドは、溶液ブレンド、押出ブレンド、ラテックスブレンドなど(これらに限定されない)を含め、様々な慣用法によって実施できる。溶液ブレンドについては、重合体を溶媒に溶解又は分散させることができる。該重合体のために使用される溶媒は、アクリル/ビニルイオン含有重合体のために使用される溶媒と同様であっても異なっていてもよい。例えば、該ブレンド操作は、2種の溶媒溶液/分散体、又は溶媒溶液/分散体に添加された粉末、又は同一の溶媒中の2種の重合体、又は任意の他の組合せを包含することができる。使用される典型的な溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノンが挙げられる。溶融押出ブレンドについて、典型的な押出温度は、約100℃〜約300℃、好ましくは約150℃〜約250℃を範囲とする。該材料を、例えばペレット又はフィルムの形状に押し出すことができる。ラテックスブレンドの場合については、混合を次の慣用方法の下で行うことができる:アクリル/ビニルラテックスを重合体ラテックスと混合することができ、又はアクリル/ビニル重合体を重合体ラテックスに分散若しくは溶解させることができ、又は任意の他の既知の混合方法であることができる。該混合操作は、2種以上のラテックスを包含することができる。それぞれのラテックスの量と性質は、期待される物理的及び化学的特性が得られ、しかも期待されるEWが得られるような方法で調整できる。水系膜の場合(例えば、直接ラテックスの場合によって製造されたもの)には、1種以上のラテックスの粒度及び固形分を所望の特性に合わせることができる。
【0064】
溶媒重合については、重合を慣用技術を使用して行うことができる。別の重合体とブレンドする場合には、該重合体ブレンドのために使用される溶媒はアクリル/ビニル重合体のために使用される溶媒と同様であっても異なっていてもよい。例えば、該ブレンド操作は、2種の溶媒溶液/分散体、又は溶媒溶液/分散体に添加された粉末、又は同一の溶媒中の2種の重合体、又は任意の他の組合せを包含することができる。使用される典型的な溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、イソプロパノール、メタノールなどが挙げられる。
【0065】
エマルジョン重合は、従来のエマルジョン重合と同一の条件下で実施できる。好ましくは、界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤、pH調整剤及び最終的には溶媒とキレート剤が播種ラテックスに添加され、そして反応が十分な圧力、温度及び時間の好適な反応条件下で、例えば、大気圧下で、典型的には約20〜約150℃、より好ましくは約40〜約80℃の温度で約0.5〜6時間実施される。
【0066】
粒子の場合には、該粒子は、約90以下から約500nm以上、より好ましくは約50〜約300nmの粒度を有することができるが、この際、重合体の量は約5〜約95重量%であり、アクリル又はビニル樹脂の量は約95〜約5重量%である。エマルジョン重合は標準的な方法に従って実施できる:最初から単量体分散体を使用したバッチ重合;単量体混合物の一部分を連続的に又はバッチ式で導入する半連続重合;及び単量体混合物を反応中に水性重合体分散体中に連続的に又はバッチ式で導入する連続重合。
【0067】
界面活性剤は、イオン性、陽イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤であることができる。該界面活性剤は別々に使用しても2種以上の組合せで使用してもよい。陰イオン性界面活性剤の例としては、高級アルコールスルホネートのエステル(例えば、アルキルスルホン酸のナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、コハク酸のナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸のナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテル二スルホン酸のナトリウム塩)が挙げられる。陽イオン性界面活性剤の例としては、塩化アルキルピリジニウム又は塩化アルキルアンモニウムが挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエステル、グリセリンエステル、ソルビタンアルキルエステル及びそれらの誘導体が挙げられる。両性界面活性剤の例としては、ラウリルベタインが挙げられる。また、上記単量体と共重合することができる反応性乳化剤を使用することもできる(例えば、ナトリウムスチレンスルホネート、ナトリウムアルキルスルホネート、ナトリウムアリールアルキルスルホネートなど)。通常使用される界面活性剤の量は、全重合体粒子100重量部当たり約0.05〜約5重量部であるが、他の量も使用できる。
【0068】
フリーラジカル重合に好適な、好ましくは約20〜約100℃の温度に好適なラジカルを生じさせる任意の種類の開始剤を重合開始剤として使用できる。これらのものは、単独で使用しても還元剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、ナトリウムチオスルフェート、亜硫酸水素ナトリウム)と併用してもよい。例えば、ペルスルフェート及び過酸化水素を水溶性開始剤として使用することができ、またクメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスメチルブタンニトリル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、イソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドを油溶性開始剤として使用できる。好ましい開始剤としては、2,2’−アゾビスメチルブタンニトリル及び1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリルが挙げられる。油溶性開始剤は、好ましくは、単量体混合物に又は少量の溶媒に溶解される。開始剤の使用量は、好ましくは、添加される単量体混合物100重量部当たり約0.1〜約2重量部である。
【0069】
任意の好適なタイプの連鎖移動剤、好ましくは、反応速度を著しく低下させないものを使用することができる。使用できる該連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン(例えば、ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、四塩化炭素、クロロホルム)、キサントゲン(例えば、ジメチルキサントゲンジスルフィド)などが挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、通常、添加される単量体混合物の100重量部当たり約0〜約5重量部である。
【0070】
任意の好適なタイプのpH調整剤を使用することができる。使用できるpH調整剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。pH調整剤の使用量は、通常、添加される単量体混合物100重量部当たり約0〜約2重量部である。
【0071】
例えば、単量体による播種粒子の膨張(このものを使用する場合)を助成(それによって分子レベルでの混合を増大させる)し、且つ、フィルム形成を改善さるために、少量の溶媒を反応中に添加することができる。溶媒の添加量は、作業性、環境の保護、生成の安全性及び/又は火災危険の予防が損なわれないような範囲にあるべきである。使用される溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、トルエン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0072】
本発明の一つの利益は、スルホン化部分のような少なくとも1個のイオン性又はイオン化性部分を、該イオン性又はイオン化性基を含有する単量体と随意に他の単量体との共重合によって、重合体水性分散体の存在下で導入することである。従って、本発明では、イオン性又はイオン化性官能基が重合によって重合体鎖に結合するため、グラフト技術が回避される。
【0073】
さらに、本発明は、随意に、好ましく播種重合方法の使用により、分散体(例えば、水性分散体)中での2種以上の重合体の均質なブレンドを可能にする。従って、得られた樹脂は、少なくとも1種の重合体とイオン性又はイオン化性基を保持する少なくとも1種の重合体との均質ブレンドであることができる。そのため、グラフト技術の必要性が回避できると共に、環境に優しくない溶媒溶液を使用する必要性が回避できる。さらに、スルホン酸又はその誘導体のような酸を使用して該樹脂をその後にスルホン化する必要もない。というのは、該イオン性又はイオン化性基、例えば、スルホン化基がすでに単量体に存在するからである。さらに、好ましくはイオン性又はイオン化性基が重合されるため、重合体鎖に沿ったその分布が一回添加、連続供給、後添加などのような斯界に知られている慣用手段によって容易に制御される。従って、重合体ブレンドから形成された膜における得られたイオン性又はイオン化性基の分布は、従来技術よりも容易に制御できる。従って、均質、ランダム、不均質などのような様々な特性の調整が達成できる。
【0074】
本発明以前には、1000nmを超えるドメインサイズを持った少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂又はビニル樹脂を含有する重合体ブレンドは、高分子電解質膜層に形成されたときに、良好な伝導性をもたらさないと思われていた。従って、より小さいドメインサイズが一般的に好都合であったため、本出願人によって開発された。しかしながら、本発明では、多層高分子電解質膜の使用について、アクリル樹脂又はビニル樹脂のドメインサイズが大きくても小さくてもよく、且つ、1個以上の層中に存在することができることを発見した。本発明の多層高分子電解質膜のさらなる開発によって、これまでに考えられていたこの問題が克服される。本発明では、アクリル樹脂又はビニル樹脂について任意のドメインサイズを、多層高分子電解質膜を形成する1個以上の層に使用することができる。一般に、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂又はビニル樹脂を含有する重合体ブレンドを熱可塑性フルオロポリマーのような少なくとも1種の重合体とブレンドすると、約1000nm以上のドメインサイズが得られる。本発明では、該追加の重合体中のアクリル樹脂又はビニル樹脂のドメインサイズは、図2に示すように、ドメインサイズが1000nm未満、例えば700nm〜1000nm、500nm以下、そして多くの場合には100nmよりも有意に低く該ドメインがかろうじて検出できる点まで(全く検出できなくても)であることができる。
【0075】
より小さなドメインサイズを達成するための一つの方法は、上記のような少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有するアクリル樹脂又はビニル樹脂を形成させ、次いで、該イオン性又はイオン化性基とアンモニウム対イオン及び/又はホスホニウム対イオンとを会合させるようにこのアクリル樹脂又はビニル樹脂を処理することである。多くの具体例では、アクリル樹脂又はビニル樹脂について存在するイオン性又はイオン化性基は、酸又は塩の形態にある。所定のタイプのイオン交換を達成するためには、この酸の形態を中和させて塩を形成させる。これは、以下に詳細に説明するようなアンモニウム化合物(例えば、アンモニウムイオンを生じさせるもの)又はホスホニウム化合物(例えば、ホスホニウムイオンを生じさせるもの)を添加することによって達成される。アンモニウム化合物又はホスホニウム化合物の量は、所望のレベルのイオン交換又は塩形成を達成するのに十分な任意の量であることができる。例えば、アンモニウム又はホスホニウム化合物を添加してイオン性又はイオン化性基の約40重量%以下から約100重量%まで、より好ましくは70重量%〜約95重量%を中和させることができる。アンモニウム又はホスホニウム化合物は、アンモニウム又はホスホニウム化合物とアクリル樹脂又はビニル樹脂とを単純に混合するような任意の態様で添加できる。アンモニウム又はホスホニウム化合物は、任意の形態、好ましくは、固体状又は液体状、より好ましくは液体状であることができる。イオン交換又はイオン処理は、追加の重合体とのブレンド前、ブレンド中及び/又はブレンド後に行うことができる。アンモニウム又はホスホニウム化合物を添加し、塩を形成させ、そしてフィルム又は膜を形成させた後に、該塩は、上記のように、その元の状態に再度変換され得る。ほとんどの場合、これは酸の形態である。これは、好ましくは硫酸のような強酸である酸を重合体ブレンドに導入することによって達成されるが、これは、次いで該酸の再形成(例えば、プロトン化)を生じさせるであろう。強酸の代わりに、アルカリ金属、アルカリ土類金属水酸化物、水溶液、希釈H2SO4、希釈HClなどを使用してもよい。この再形成を行ってアンモニウム又はホスホニウム塩を完全に除去し又は実質的に除去することができ(例えば、95重量%以上の除去)、或いは任意の所望の程度にまで部分的に除去することができる。次いで、フィルム又は膜を、様々な技術を使用して洗浄してアンモニウム及び/又はホスホニウム化合物並びにいかなる酸残留物も除去することができる。これは、脱イオン水などのような水を使用することによって単純に実施できる。該フィルム又は膜は、アンモニウム又はホスホニウム化合物(例えば、塩)を除去する前又は除去した後に架橋できる。該フィルム又は膜は、好ましくは、上に例示したような任意の慣用の架橋技術を使用して架橋される。この架橋は、アクリル樹脂又はビニル樹脂を重合体ブレンドに対して固定するのを確実にすることに役立ち得る。これは、伝導性の改善を可能にし、しかも、該重合体間における相の相溶性を、特に経時的に保持することを確保する。アンモニウム及び/又はホスホニウム対イオンの除去は、好ましくは、フィルム又は膜の形成後に行う。これらの対イオンの代わりに、同一の作用を可能にする任意の対イオンを使用することができる。本発明は、重合体ブレンドのより均質な分散体を可能にし、且つ、上記のように、大きく改善された伝導性及び大きく改善された小さなドメインサイズを与える。斯界においては、ドメインサイズは、クラスター又はイオン性クラスターと呼ばれることもある。
【0076】
アンモニウム化合物に関して、該アンモニウム化合物は、好ましくは、上記のように、イオン性又はイオン化性基に対する対イオンを形成する。この対イオンは、アンモニウム対イオン、より好ましくはアルキルアンモニウム対イオン、さらに好ましくはアルキル第四アンモニウム対イオンにあたる。好ましくは、該アンモニウム対イオンのアルキル基は、C1〜C6アルキル基であるが、他のアルキルアンモニウムを使用してもよい。さらに、2種以上の異なるタイプのアンモニウム対イオンのような1種以上の異なるタイプの対イオンが形成できる。ホスホニウム対イオンについても同様である。これは、2種以上の異なるアンモニウム及び/又はホスホニウム材料を使用して異なるイオン又は様々なイオンの混合物を形成させることによって達成できる。
【0077】
上記のように、厳密に言えば一例として、酸又は塩の形態にあるスルホン化又はホスホン化樹脂を有機第四アンモニウム化合物のようなアンモニウム化合物(例えば、塩)と混合させ、それによって該樹脂をアンモニウム塩に変換させることができる。この工程を数回繰り返して該樹脂のアンモニウム塩への満足のいく転化を達成することができる。好適なアンモニウム塩の例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ヘキサメトニウム、デカメトニウム、セチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム及びメチルトリブチルアンモニウムが挙げられる。好ましくは、該アンモニウム塩は、少なくとも186の分子量を有する。アンモニウム塩の混合物がこの方法で使用できる。該アンモニウムは、第四アンモニウム塩中に式NR1R2R3R4+(式中、R1〜R4は、独立して、C1〜C30アルキル、アリール、アラルキル又はシクロアルキル基から選択される。)の有機基を含有することができる。また、アンモニウム塩のホスホニウムアナログ、例えばテトラアルキルホスホニウム塩などを使用することもできる。
【0078】
上記のように、アンモニウム又はホスホニウム塩含有樹脂を慣用方法を使用して処理加工してフィルム又は重合体膜を製造することができる。次いで、好ましくは該フィルム又は重合体膜を処理してアンモニウム及び/又はホスホニウム陽イオンの全て又は殆どを除去し、そして該フィルム又は膜を再度その元の形態(例えば、酸又は塩の形態)に変換させることができる。この工程は、該フィルム又は重合体膜をアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属水酸化物の溶液又は硫酸若しくは塩酸のような酸水溶液にさらすことによって達成できる。場合によっては、この工程を繰り返して該アンモニウム又はホスホニウム塩から再度酸若しくは塩の形態又は他の所望の形態への満足のいく転化を達成させることができる。
【0079】
さらに、上で説明したこれらの様々な利益のため、本発明の用途は、フィルム、膜、燃料電池、塗料、イオン交換樹脂、石油回収、生体膜、バッテリーなどを包含することができるが、これらに限定されない。
【0080】
多層高分子イオン膜又は高分子電解質膜を本発明の重合体から作ることができる。該高分子イオン膜は、溶融押出、溶液流延、ラテックス流延などのような従来のフィルム製造方法によって製造できる。膜電極アセンブリを本発明の膜から作ることができ、またこの膜電極アセンブリを使用した燃料電池を製造することができる。本発明の重合体を使用して膜形成させる際に、該重合体は、該重合体中に存在するイオン性アクリル又はビニル樹脂に対して、任意の当量を有することができ、好ましくは、約200〜約8000、好ましくは約200〜約1500、さらに好ましくは約200〜約1400の当量を有することができる。
【0081】
さらに詳しくは、本発明の組成物は、燃料電池、バッテリーなどに特に有用である。該燃料電池及びバッテリーに使用されるデザイン及び部品は、多層高分子イオン交換膜の処方に本発明の組成物を使用することを除き、従来の燃料電池及びバッテリーと同一であろう。従って、米国特許第5,795,668号、欧州特許第1202365A1号、国際公開第WO98/22989号、WO02/075835号及びWO98/20573号、Lin外,Journal of Applied Polymer Science,第70巻,121−127(1998)に記載されるような燃料電池及びバッテリーのデザイン及びこれらを製造する態様を本発明で使用することができる。これらの文献の全体は参照によって援用するものとする。この膜は単独で使用でき又はシリカなどのような慣用の充填剤と併用できる。該燃料電池は、液体燃料又は気体燃料、例えば、メタノールのような液体炭化水素を使用することができる。本発明の燃料電池は、広範囲の動作条件で動作することができる。本発明の燃料電池は、多孔性支持層及びイオン交換樹脂であって、該イオン交換樹脂が該多孔性支持層の少なくとも一方の側に支持されたものを有することができる。本発明は、直接型メタノール燃料電池その他の燃料電池に有用であり得る。好ましくは、本発明の燃料電池は、低い燃料クロスオーバー、高い電気伝導性及び/又は高い機械的強度を有する。該膜を形成する複合層の全体的な厚さは従来通りであってよいが、好ましくは、約0.5〜約10ミル、より好ましくは約1ミル〜約5ミルであることができる。さらに、該膜は、好ましくは、約200〜約2500、より好ましくは約200〜約1400の当量を有する。該多孔性支持層は、任意の慣用材料、例えばフルオロ含有重合体又はポリオレフィンのような他の炭化水素含有重合体から作ることができる。該多孔性支持層は、孔径、多孔度及び厚さに関して従来のパラメーターを有する。本発明の燃料電池は、好ましくは、優れた電気的特性及び比較的低い電気抵抗を有する。
【0082】
所定の過弗素化高分子イオン交換膜が高い陽イオン輸送を与えることは当該分野において周知であるため、イオン交換膜として広く使用されてきた。高分子イオン交換膜は、固体高分子電解質膜又は固体高分子交換膜(PEM)と呼ばれている。
【0083】
最も一般的に使用されている市販の膜は、ナフィオン(登録商標)及びアシプレックス(登録商標)である。これらのものは、一般的にはPFSIと呼ばれている過弗素化スルホン化イオノマーである。PFSI膜を基材とするPEMは、一般に次の欠点を有する。
(i)故障及び亀裂をもたらす乏しい機械的性質、
(ii)水管理、CO被毒などの問題をもたらす、電池を作動させることができる温度領域の制限、
(iii)高いコスト、
(iv)許容されるEW範囲の制限、
(v)架橋する可能性がない。
【0084】
PFSIでは、イオノマーと重合体マトリックス(PTFE)とが共重合されるため、達成できるEW及び機械的性質の範囲が制限される。というのは、イオノマー量の変化が重合体マトリックスに直接影響を及ぼすからである(逆もまた同様である)。該イオノマーと重合体マトリックスとをブレンドすることによって、該重合体マトリックスとは無関係に広範囲のEWを達成できる可能性が高い。そのときには、良好な機械的性質を保持しつつ、低いEWを有する膜を得ることが可能である。
【0085】
燃料電池又はバッテリー用に使用するときに、膜は、150℃に達し得る温度の非常に酸性の媒体中及び電気化学的環境、溶媒などの存在下に置かれるため、高度な耐化学性及び耐電気化学性が必要である。これらの要求基準は、多くの場合、過弗素化膜を使用すれば満たされる。というのは、該過弗素化材料は、固有の耐化学性及び耐電気化学性を有するからである。しかしながら、これらの要求基準を満たした文献に記載の非過弗素化高分子電解質膜は非常にわずかしかない。
【0086】
燃料が液体燃料である場合の応用については、該燃料に対する膜の障壁特性が重要となる。例えば、直接型メタノール燃料電池では、該燃料は希釈(1M〜4M)メタノール水溶液であることができる。非常にわずかな膜しか必要な障壁特性を満たすことができない。
【0087】
膜の機械的強度は、バッテリー、塩素アルカリ電池及び燃料電池用途にとって重要な特性である。実際に、この膜は、多くの場合高度な圧力差にさらされる。さらに、機械的強度は、膜が非常に薄いとき(100ミクロン未満)に重要になる。しかしながら、市販のPFSI膜は、機械的性質の制限を示し、そして多くの場合、電池の作動中に衰え又は破れ、回復不能な損傷に至る。この問題を克服する多くの方法が存在する。良好な機械的強度を有する重合体マトリックス中にイオノマーをブレンドすることによって、プロトン伝導度が高く且つ全体的に機械的性質が良好な膜を製造することが可能である。
【0088】
重合体の機械的性質及び化学的性質を向上させるために容易且つ十分な方法は、架橋させることである。しかしながら、PFSIでは、これを達成することは非常に困難である。というのは、弗素化単量体及び過弗素化イオノマーは、非過弗素化官能性単量体とは容易には共重合しないからである。また、過弗素化官能性単量体は全く又はほとんど市販されていない。本発明では、該重合体ブレンドは、官能性単量体とイオノマーとを共重合させることを可能にし又は架橋性重合体若しくは単量体を該ブレンドに添加することを可能にする。これは、必要とされる場合に容易な架橋方法となる。
【0089】
文献に記載されたDMFC用途についての膜のほとんどが、低い面積抵抗か低いメタノールクロスオーバーのいずれかを犠牲にするという問題に直面している。これらのほとんどは、メタノールクロスオーバーが低いときには高い面積抵抗を示す(その逆もまた同様である)。例えば、充填剤又はPTFEフィブリルのような添加剤をナフィオン型の膜に添加すると、実際にメタノールクロスオーバーの低下に役立つが、該添加剤がプロトン伝導性ではないため、面積抵抗の増大をもたらす。理想的には、低い面積抵抗(最高のプロトン輸送)と低いメタノールクロスオーバーを得たい。これについては、公開されている文献のデータに基づく次の表に例示している。表に示すように、メタノールクロスオーバーの有意な低下が達成されているが、より低い伝導性という犠牲を伴っている。本発明との比較を可能にするために、この面積抵抗は、参考文献からのデータに基づいて計算されている。
【0090】
【表1−1】

【表1−2】

【0091】
【表2−1】

【表2−2】

【0092】
最後に、別の障害は、電池温度の制限である。これは、本質的には、TFEと過弗素化スルホン化単量体との共重合に基づく、該重合体の固有の化学構造によるものである。また、PTFEは、高温度で良好な機械的抵抗を有しないことは周知である。市販のPFSIは高温でそれらの機械的性質をゆるめるため、現在の電池の作動温度は65〜80℃である。これは、水管理が非常に困難になるという問題を引き起こす。水流を管理するための高価で扱いにくい装置を必要としない燃料電池を得るためには、高温に耐え得る膜が必要である。
【0093】
上記の制限を克服するために、及び燃料電池用途に使用できる膜を開発するために、新規な重合体高分子電解質膜の合成がその焦点となった。一具体例では、次の新規な高分子電解質膜が開発された:
(a)イオノマー(高分子電解質)が過弗素化されていない。
(b)PEMが重合体とイオノマーとのブレンドである。
(c)この対となる重合体/イオノマーを適切に選択することによって、優れた機械的性質が達成できる。得られる高分子電解質膜が高い機械的強度を有する。
(d)イオノマーを重合体マトリックスに適切に分散させることによって、優れた特性を達成することが可能である。
(e)膜の製造に使用される対イオンの性質と量を適切に選択することによって、優れた特性が得られる。
(f)多層膜とすることによって、アルコールに対する選択性、特にメタノール選択性を向上させることができると共に、他の重要な特性の全てを保持することができる。
(g)文献に記載されている大部分の膜とは異なり、本発明の膜は、低いメタノールクロスオーバー及び/又は低い面積抵抗を示すことができる。これは、多層膜の1個以上の層に本発明の高分子電解質を使用することによって達成される。
【0094】
該膜の製造に使用される非過弗素化イオノマー樹脂、フルオロポリマーマトリックス又は対イオンの性質を適切に選択することによって、好ましくはPFSIの欠点の一つ以上を克服する多層膜を得ることができる。
【0095】
本発明によって、(例えば、スルホン化)基の位置を直接制御することができ(グラフト技術によるスルホン化とは異なる)、しかも本発明は市販の単量体を使用できるため、「スルホン化過弗素化イオノマー」を製造するための非常に複雑な工程を避けることができる。また、得られる方法はナフィオン(登録商標)又はアシプレックス(登録商標)のような過弗素化スルホン化イオノマーを製造するために使用される方法とは対照的に、非常に単純である。
【0096】
一具体例では、該高分子電解質膜は、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂或いはそれら両方を含有する組成物から形成される。好ましくは、少なくとも1種のアンモニウム対イオン及び/又はホスホニウム対イオンも少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基と共に存在する。さらに、少なくとも1種の追加の重合体も存在する。少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有するアクリル及び/又はビニル樹脂或いはその両方のドメインサイズは、任意の寸法であることができる(例えば、700nmよりも上、500nmよりも上又は約500nm以下)。上記ドメインサイズのうち任意のものを使用することができる。好ましくは、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基は約200〜約2500EWの量で存在する。上で述べたように、対イオンは除去される(例えば、再度酸の形態に転化される)。一具体例では、該高分子電解質膜は、直接型メタノール燃料電池又は高分子電解質燃料電池のような直接型燃料で動く燃料電池を含めた燃料電池に極めて有用である。本発明は、気体燃料又はメタノールのような液体燃料電池に特に有用である。本発明は、メタノールクロスオーバーの減少のような燃料クロスオーバーの減少という改善を与えることができる。さらに、又は代わりに、本発明は、面積抵抗の減少した膜をさらに提供する。さらに、膜の厚さを本発明の方法によって有意に減少させることができ、そしてこれは、燃料クロスオーバーの減少及び/又は面積抵抗の減少をさらに達成させることができる。
【0097】
上述のように、本発明において、膜は複数の層を有する。それぞれの層は、同一であることができ又は他の層とは異なることができる。多層膜を使用することによって、様々な程度の燃料(例えば、メタノール)選択性及びプロトン伝導度を達成することができる。それぞれの層は、同一の又は異なる化学組成、厚さを有することができ、或いは異なる量及びタイプのアンモニウム及び/又はホスホニウム対イオンで形成できる。多層膜の構成を使用することによって、減少した燃料クロスオーバーをさらに一層改善させることができる。
【0098】
本発明の多層膜は、あらゆる方法を用いて製造することができる。それぞれ個々の層を、まず上記のように慣用の流延又は他の層形成技術を使用して製造することができる。続いて、これらの層を組み合わせて多層膜構造を形成させることができる。これらの層を、積層構造を形成させるために一般的に使用されている他の手段によって互いに付着させるか又は結合させることができる。さらに、1個の層を形成させ、次いで第2層を先の層上に流延させて第2層を形成させるなどして所望の数の層を形成させることができる。本発明の多層構造は、2層、3層、4層以上を有することができる。該多層高分子電解質膜のそれぞれの層は、同一の態様で又は異なる態様によって形成できる。例えば、該多層高分子電解質膜のそれそれの層は、押出、溶液流延、ラテックス流延又は他のフィルム製造技術によって形成できる。例えば、ある層を押し出すことができ、そして別の層を流延させるなどすることができる。また、重合体層を組み合わせる任意の積層技術を使用してそれぞれの層を形成させることもできる。従って、本発明においては層形成法の任意の組合せを使用して多層構造を形成させることができる。
【0099】
本発明の多層高分子電解質膜は、本発明の高分子電解質を含有する1個以上の層を有することができる。また、選択肢として、この多層膜の1個以上の層は、ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)及びアシプレックス(登録商標)重合体のような市販されている他の高分子電解質又は他のペルフルオロ化スルホン化材料を含有することができる。本発明の目的上、該層の少なくとも1つは、本発明の高分子電解質を含有する。
【0100】
本発明の多層高分子電解質膜上の各種層に関して、該層の1つ、2以上又は全ては、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂或いはそれら両方と、少なくとも1種の追加の重合体とを含有することができるが、ここで、それぞれの層に使用される高分子電解質は同一でも異なっていてもよい。さらに、1個以上の層を形成する電解質中に存在する少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂のドメインサイズは、層から層で同一であっても異なっていてもよい。換言すれば、少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂を有する高分子電解質を含有する一方の層が小さいドメインサイズ(例えば、500nm以下)を有し、しかも同一の多層膜の一部分を形成する他方の層が大きなドメインサイズ、例えば約700nm以上を有する少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂を有することができる。また、少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂を含有する他の層が全ておよそ1000nm以上のような大きいドメインサイズを有することができる。しかして、該層のいくつか又は全てが少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂を含有し、しかもアクリル及び/又はビニル樹脂のドメインサイズが層から層で同一であっても異なってもよい任意の層の組合せを使用することができる。1個以上の層は、小さいドメインサイズ及び大きいドメインサイズの両方を有することができる。さらに、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有するアクリル及び/又はビニル樹脂ではない高分子電解質を含有する層、例えば、ナフィオン(登録商標)のような過弗素化スルホン化重合体を含有する層を使用することができる。例えば、該層の1個が、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する任意のドメインサイズの少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂と少なくとも1種の追加の重合体とを含有する高分子電解質を含む限りにおいて、任意の組合せが可能である。また、述べたように、それぞれの層の厚さは同一でも異なっていてもよいが、一般には、全体的な厚さは約10ミル以下である。もっとも、10ミルを超える厚さであれば確実に本願の範囲内にある。
【0101】
さらに、多層高分子電解質膜の使用により、該多層膜の全厚さと同一の全厚さを有する単一層膜とを比較すると、多層膜の使用によって伝導性に関しての改善及び面積抵抗の低下が得られることが分かった。これは、少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有するアクリル及び/又はビニル樹脂のドメインサイズが500nmを超えたときに、まさに当てはまった。従って、多層高分子電解質膜を使用すると、予期されない利益が得られ、且つ、該アクリル及び/又はビニル樹脂について任意のドメインサイズを使用することが可能になる。
【0102】
好ましくは、本発明の高分子電解質膜は、燃料電池に使用した場合に、5×10-16 mol/cm2/s又はそれ未満、より好ましくは3×10-16 mol/cm2/s又はそれ未満、さらに好ましくは1×10-16 mol/cm2/s又はそれ未満のメタノールクロスオーバーを達成する。好適な範囲としては、約0.01×10-16 mol/cm2/s〜約3×10-16 mol/cm2/sを挙げることができる。他の範囲も可能である。さらに又は代わりに、本発明の高分子電解質膜は、燃料電池に使用される場合に、約0.3Ω/cm2以下、好ましくは約0.1Ω/cm2又はそれ未満の面積抵抗を有することができる。好適な範囲としては、約0.1〜約0.3Ω/cm2を挙げることができる。該多層膜は、好ましくは、メタノールクロスオーバー及び/又は面積抵抗に関するこれらの様々な範囲に対して0.5ミル〜1.75ミルの湿潤厚さを有する。これらの厚さは、典型的には湿潤厚さについてのものである。面積抵抗は、湿潤厚さに基づいて測定されるからである。しかしながら、該膜の厚さは、これが湿潤厚さか乾燥厚さかを問わず、上記範囲及び次の範囲であることができる。他の範囲としては、0.5ミル〜1.75ミル又はそれよりも上;0.75ミル〜1.75ミル;1ミル〜1.75ミル;1ミル〜1.5ミル;0.5ミル〜1.5ミル又はこれらの範囲よりも上若しくは下の他の厚さが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の別の具体例では、本発明は、1.75ミル以下の全膜厚さを有し且つ0.3Ω/cm2以下の面積抵抗を有する高分子電解質膜、好ましくは多層高分子電解質膜に関する。該面積抵抗は、約0.1Ω/cm2〜約0.3 Ω/cm2であることができる。好ましくは、該厚さは、0.5ミル〜1.75ミル;0.75ミル〜1.75ミル;1ミル〜1.75ミル;1ミル〜1.5ミル;又は0.5ミル〜1.5ミルであることができる。これらの厚さは湿潤厚さに基づくものであるが、また乾燥厚さに基づくものであってもよい。また、この同段落において示したメタノールクロスオーバーの範囲は、これらの膜の特徴であることができる。
【0103】
上で述べたように、燃料電池、バッテリーなどを使用することができ、そしてこれらは、本発明の高分子電解質組成物を膜の形又は他の形状で取り入れることができる。
【0104】
全ての表において、特定しない限り、単量体及び播種粒子の量は重量パーセントで与える。
プロトン伝導度測定:
プロトン伝導度を、電気化学的インピーダンススペクトロスコピーを稼働させるためのPC4 750ポテンシオスタット及びEIS300システムを備えるGamry装置を使用して4箇所のプローブ配置で測定した。測定を、様々な温度の液体水下で実行する(膜を水中で1時間にわたり煮沸した後)。EIS測定によって決定される抵抗Rを使用することによって、伝導度σを以下の式:σ=d/w×t×R(ここで、w:フィルムの幅、d:内部電極間の間隔、R:フィルムの抵抗である)を使用して算出する。
【0105】
面積抵抗: 該面積抵抗は、厚さ単位当たりの伝導度の指標となる。そのため、膜の抵抗が勘案される。該面積抵抗をΩcm2で与える。面積抵抗Raをプロトン伝導度σの関数として表し、厚さtをRa=t/σと表す。この面積抵抗は、超小型電子技術又はガラスコーティング産業において典型的に使用される表面抵抗Rとは異なること及びRs=1/t×σとしてΩ/平方cmで表されることに留意されたい。
【0106】
メタノール/エタノール透過測定:
メタノール濃度を、異なる屈折計Waters410を使用して連続的に監視する。使用した流量は2mL/分であった。使用したメタノールの水性濃度は、一般に1mol/Lであった。
透過係数D:
隔膜電解槽(E.L.Cussler,Diffusion,第2版,Cambridge University Press,Cambridge,1997)を使用してメタノールの拡散係数を測定した。この膜のメタノール拡散係数Dを次式
【数1】

として表す。ここで、β(cm-2):隔膜−容器定数
【数2】

であり、t:時間(s)であり、
【数3】

:両方の区画における初期メタノール濃度(mol/L)であり、
【数4】

:tでの両方の区画におけるメタノール濃度(mol/L)であり、VA及びVB:2個の電池区画の体積(cm3)である。
メタノールフラックス:
膜を横切るメタノールのフラックスJは、
【数5】

(式中、D:膜のメタノール拡散係数であり、
【数6】

:膜の厚さであり、(C0−C):膜を通した濃度勾配である。)
によって定義される。
選択性:
DMFCの分野では、膜選択性αは、膜としての資格を与えるために使用される重要な基準である。この選択性は、α=σ/D
(ここで、σ:膜伝導度であり、D:メタノール拡散係数である。)
と定義される。
【0107】
本発明を次の実施例によってさらに明らかにするが、当該実施例は本発明の単なる例示であるものとする。
【実施例】
【0108】

本発明の組成物を、次の材料及び反応条件を使用して作製した:
イオノマーの合成は、国際公開第WO01/60872号に記載されている。その開示全体を参照によって援用するものとする。
フィルムを、ブレード型塗布器を使用してガラス基材上に流延させ、そして150℃〜200℃の範囲の温度のオーブン内で1〜15分間にわたり硬化させた。
原料
単量体(アトフィナ・ケミカルズ社、オールドリッチ社)、開始剤(オールドリッチ社、デュポン社)、界面活性剤(オールドリッチ社)及び緩衝液(オールドリッチ社)を、さらに精製することなく使用した。
Desmodur BL−3175Aは、メチルエチルケトキシムでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートオリゴマーであり、且つ、バイエル社の製品である。
【0109】
例1:
SEM/HEMA/MMA/スチレン(10.8g)(EW=278)のNMPイオノマー溶液(25重量%)、2.75gのTBAOH55%水溶液(セイチェム社から入手できる)及び40.31gのNMPを混合しながら好適な注入口及び装置を備えた反応器に添加した。この溶液の20.16gに、2.36gのKynar(商標)2801(アトフィナ・ケミカルズ)粉末を60℃で撹拌しながら溶解するまで添加した。均一な溶液が得られたら、0.52gのDesmodur(商標)BL3175Aイソシアネート架橋剤(バイエル)及び0.02gのDBTDL触媒を混合しなら添加する。この溶液をガラス板上に注ぎ、ドクターナイフで広げ、そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。この薄膜を、1モルの塩酸(HCl)及び硫酸(H2SO4)で2時間にわたりそれぞれ65℃で処理することによってプロトン化させ、次いで脱イオン水ですすいだ。この膜のプロトン伝導度(ACインピーダンスによって測定される)は、30ms/cmであり、また25℃での面積抵抗は、0.15Ω/cm2である。
【0110】
例2 〜7
上記例1と同一の製造手順である。反応体の量及び試験結果を表3、4及び5に与える。
【0111】
例8
TBAの形態の高分子電解質のNMP溶液を次のように製造した:25重量%の高分子電解質NMP溶液の6428gに、2204gのTBAOH(水中55%)を添加し、そして水を除去した。続いて、4445gのNMPを添加した。この溶液の6051gに、1878gのKynar 2801及び7149gのNMPを添加し、溶解するまで撹拌した。41.05gの上記高分子電解質/KynarNMP溶液に、0.39gのDesmodur N3300イソシアネート架橋剤(バイエル)を混合しながら添加した。この溶液をガラス板上に注ぎ、ドクターナイフで広げ、そして177℃で7分間焼き付けた。この膜を、1モルの塩酸(HCl)及び硫酸(H2SO4)で2時間にわたりそれぞれ65℃で処理することによってプロトン化させ、次いで脱イオン水ですすいだ。この膜のプロトン伝導度(ACインピーダンスによって測定される)は、60ms/cmであり、また25℃での面積抵抗は、0.06Ω/cm2である。
【0112】
例9
上記例8と同様であるが、ただしイソシアネート架橋剤を添加しなかった。この膜のプロトン伝導度(ACインピーダンスによって測定される)は、60ms/cmであり、また25℃での面積抵抗は、0.06Ω/cm2である。
【0113】
例10
上記例8と同一の製造手順である。反応体の量及び試験結果を表3、4及び5に与える。
【0114】
比較例11
SEM/HEMA/MMA/スチレン(5.62g)(EW=278)のNMPイオノマー溶液(25重量%)、0.39gのNaOH48%水溶液及び25.80gのNMPを反応器に混合しながら添加した。この溶液に、3.65gのKynar 2801(アトフィナ・ケミカルズ)粉末を60℃で撹拌しながら溶解するまで添加した。均一な溶液が得られたら、0.80gのDesmodur BL3175Aイソシアネート架橋剤(バイエル)及び0.04gのDBTDL触媒を混合しながら添加する。この溶液をガラス板上に注ぎ、ドクターナイフで広げ、そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。この膜を、1モルの塩酸(HCl)及び硫酸(H2SO4)で2時間にわたりそれぞれ65℃で処理することによってプロトン化させ、次いで脱イオン水ですすいだ。この膜のプロトン伝導度(ACインピーダンスによって測定される)は6mS/cmであり、25℃での面積抵抗は、0.53Ω/cm2であった。
【0115】
例12
上記例1と同一の製造手順である。架橋剤の添加により、溶液が黒色に変わり、そして製造を中止した。反応体の量を表3及び4に与えている。
【0116】
比較例13
上記例1と同様の手順であるが、ただし、有機第四アンモニウム塩を添加しなかった。反応体の量及び試験結果を表3、4及び5に与える。
【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
【表5】

【0120】
実験:
伝導度の測定を、電気化学的インピーダンススペクトロスコピーによって4箇所のプローブ配置で実行した。これらの測定を、5×105から1Hzの間でGamry装置(定電位電解装置Galvanostat ZRAPC4/750及びEIS 300ソフトウェア)により実施した。ここで与える値は、室温での浸漬条件下で得られた。
凡例:
SEM メタクリル酸スルホエチル
Kynar2801 PVDF共重合体
MMA メタクリル酸メチル
HEMA メタクリル酸ヒドロキシエチル
TBAOH 水酸化テトラブチルアンモニウム
TPAOH 水酸化テトラプロピルアンモニウム
NaOH 水酸化ナトリウム
NMP N−メチルピロリジノン
DBTDL ジブチル錫ジラウレート
【0121】
例14
上記例8について説明したとおりの実験手順に従ったが、ただし、以下の表6に示した化学物質及び量を使用した。表6は、上記と同一の態様で得られた伝導度測定値をさらに与えている。
【0122】
【表6】

【0123】
上記の例から分かるように、例1〜10及び14に示したような本発明の高分子電解質膜の伝導度は、例えば、比較例である例11及び13で示された伝導度よりもかなり高い。さらに、表3及び4に示すように、抵抗も本発明の技術及び重合体を使用すると大きく減少した。
【0124】
例15
次の例において、架橋剤は、バイエル社製のDesmodur BL3175Aイソシアネート架橋剤であった。
触媒は、アトフィナ社製のジブチル錫ジラウレート(DBTDL)触媒であった。
処方物F1においては、Kynar 2801フルオロポリマーを粉末の形態で添加した。
処方物F4及びF5は、2種の対イオン:TPAOH及びTMAOHのブレンドを装入した溶液S4及びS5から調製した。
処方物F6は、2種の対イオン:TBAOH及びTPAOHのブレンドを装入した溶液S6から調製した。
処方物F9は、2種の対イオン:TPAOH及びTEAOHのブレンドを装入した溶液S9から製造した。
処方物F7は、溶液S7から調製し、通常使用されるのと同一のレベルのTPAOHで中和したが、ただしさらに高いフルオロポリマー/高分子電解質比で調製した。
処方物F15〜F18は、それぞれ溶液S15〜S18から製造し、そして通常使用されるのと同一のレベルのTPAOHで中和したが、ただし様々なフルオロポリマー/高分子電解質比で調製した。
【0125】
表7は、様々な成分及び量を示している。特に述べない限り、先の例において説明したのと同一の手順に従った。
【表7】

【0126】
表8は、表7の溶液を使用した高分子電解質の製造を示している。
【表8】

【0127】
表9は、膜の1個以上の層を形成させるための条件を示している。
【表9】

【0128】
表10は、製造された膜の特性を示している。
【表10】

【0129】
表10に示すように、本発明は、優れた低面積抵抗及び/又は低クロスオーバーを有する膜を製造した。本発明によって与えられる特性を考慮することによって、厚さ、面積抵抗及びメタノールクロスオーバーに関する特性のバランスを得ることができる。本発明の具体例の多くを市販のナフィオン(登録商標)から形成された様々な膜と比較すると、メタノールクロスオーバーが、本発明の多くの具体例については、ナフィオン(登録商標)から形成された膜と比較して非常に低く、且つ、匹敵できる面積抵抗を与えたことが分かる。これは、本発明の具体例が一般に非ペルフルオロ化重合体であることを考えると、なおさら印象的である。
【0130】
例16〜20
処方物D1(70%Kynar、TAAOHなし)
27.0gの高分子電解質NMP溶液(15重量%)及び63.0gのKynar(商標)2801 PVDF(アトフィナ・ケミカルズ)15%NMP溶液を丸底フラスコ中で混合した。均一な溶液が得られたら、1.7591gのDesmodur(商標)BL3175Aイソシアネート架橋剤(バイエル)及び0.0899gのFASCAT(商標)4202触媒(アトフィナ・ケミカルズ)を混合しながら添加した。
【0131】
処方物D2(70% Kynar、80%TBPOH)
54.0gの15重量%高分子電解質N−メチルピロリジノン(NMP)溶液及び16.0gの40%水酸化テトラブチルホスホニウム(TBPOH)水溶液(Sachem社から入手できる)を丸底フラスコ中で混合した。水を70℃でのロータリーエバポレーションによって除去し、そして4.60gのNMPを添加した。この溶液の35.1gに、73.0gの15%Kynar(商標)2801 PVDF(アトフィナ・ケミカルズ)NMP溶液、2.0gのDesmodur(商標)BL3175Aイソシアネート架橋剤(バイエル)及び0.11gのFASCAT(商標)4202触媒(アトフィナ・ケミカルズ)を添加した。
【0132】
処方物D3(80%Kynar、TBAOHで80%中和)
188.6gの15重量%高分子電解質N−メチルピロリジノン(NMP)溶液及び38.10gの55%水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAOH)水溶液を丸底フラスコ中で混合した。水をロータリーエバポレーションで除去し、そしてその後に6.16gのN−メチルピロリジノンを添加した。この溶液の10.0gに、36.0gの15%Kynar(商標)2801 PVDF(アトフィナ・ケミカルズ)NMP溶液及び0.32gのDesmodur(商標)N3300イソシアネート架橋剤(バイエル)を添加した。
【0133】
処方物D4(TBAOHなし)
12.0gの15重量%高分子電解質N−メチルピロリジノン(NMP)溶液及び48.0gの15.0%Kynar(商標)2801 PVDF(アトフィナ・ケミカルズ)NMP溶液を丸底フラスコ中で混合した。均一な溶液が得られたら、0.43gのDesmodur N3300イソシアネート架橋剤(バイエル)を混合しながら添加した。
【0134】
処方物D5(TBAOHなし)
244.2gの15重量%高分子電解質N−メチルピロリジノン(NMP)溶液及び569.8gの14.9%Kynar(商標)2801 PVDF(アトフィナ・ケミカルズ)NMP溶液を丸底フラスコ中で混合した。均一な溶液が得られたら、0.38gのDesmodur(商標)N3300イソシアネート架橋剤(バイエル)を先の溶液の35.61gに混合しながら添加した。
【0135】
処方物D6(70% Kynar、TBAOHで80%中和)
177.65gの高分子電解質N−メチルピロリジノン(NMP)溶液及び35.83gの55%水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAOH)水溶液(Sachemから入手できる)を丸底フラスコ中で混合した。水をロータリーエバポレーションで除去した後に、42.0gの15%Kynar(商標)2801 PVDF(アトフィナ・ケミカルズ)NMP溶液をこの溶液の20.0gに添加した。均一な溶液が得られたら、0.63gのDesmodur(商標)N3300 イソシアネート架橋剤(バイエル)を添加した。
【0136】
例16
例16から20については、膜を表11及び12に示すように流延させた。溶液D1を基材上に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さ=60μm)そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。冷却後に、溶液D2を先の膜の頂部に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さ=300μm)そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。冷却後に、溶液D1を先の膜の頂部に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さ=100μm)そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。この膜のプロトン伝導度(ACインピーダンスによって測定されるときの)は70℃で96mS/cmであり、70℃での面積抵抗は0.06Ω/cm2であった。
【0137】
例17
溶液D4を基材上に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さ=150μm)、そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。アルミホイルを冷却した後に、溶液D5を先の膜の頂部に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さは、先の膜の厚さを含めて230μmである)そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。この膜のプロトン伝導度(ACインピーダンスによって測定される)は70℃で28mS/cmであり、70℃での面積抵抗は0.11Ω/cm2であった。
【0138】
例18
溶液D4をアルミニウム基材上に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さ=150μm)そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。冷却後に、溶液D3を先の膜の頂部に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さは、先の膜の厚さを含めて、230μmである)そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。この膜を、1モルの塩酸(HCl)及び硫酸(H2SO4)で2時間にわたりそれぞれ65℃で処理することによってプロトン化させ、次いで脱イオン水ですすいだ。この膜のプロトン伝導度(70℃でACインピーダンスによって測定されるときの)は、該膜の底部側及び頂部側でそれぞれ70mS/cm及び33mS/cmであった。70℃での対応する面積抵抗は、0.043Ω/cm2及び0.091Ω/cm2であった。
【0139】
例19
溶液D3をアルミニウム基材上に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さ=150μm)そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。冷却後に、溶液D4を先の膜の頂部に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さは、先の膜の厚さを含めて、230μmである)そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。この膜を、1モルの塩酸(HCl)及び硫酸(H2SO4)で2時間にわたりそれぞれ65℃で処理することによってプロトン化させ、次いで脱イオン水ですすいだ。この膜のプロトン伝導度(ACインピーダンスによる)を70℃で測定したところ、該膜の底部側及び頂部側でそれぞれ33mS/cm及び35mS/cmであった。70℃での対応する面積抵抗は、0.132Ω/cm2及び0.124Ω/cm2であった。
【0140】
例20
溶液D6をアルミニウム基材上に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さ=150μm)そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。冷却後に、溶液D6を先の膜の頂部に流延させ、ドクターナイフで広げ(湿潤厚さは、先の膜の厚さを含めて、230μmである)そして177℃で7分間にわたり焼き付けた。この膜を、1モルの塩酸(HCl)及び硫酸(H2SO4)で2時間にわたりそれぞれ65℃で処理することによってプロトン化させ、次いで脱イオン水ですすいだ。この膜のプロトン伝導度(70℃でACインピーダンスによって測定される)は、膜の底部側及び頂部側でそれぞれ55mS/cm及び48mS/cmであった。70℃での対応する面積抵抗は、0.12Ω/cm2及び0.14Ω/cm2であった。
【0141】
【表11】

【0142】
【表12】

【0143】
走査電子顕微鏡(SEM)及び微分干渉コントラスト光学顕微鏡(DICOM)画像から、多層膜の製造が成功したことが明らかに示された(図3〜6参照)。
【0144】
プロトン伝導度の測定
以下の表13は、伝導度の値を列挙するものである。これらの伝導度の全ては、燃料電池用途にとって十分である。
【表13】

【0145】
例16〜20では、様々な多層膜を形成させた。D2、D3及びD6の処方物はアクリル樹脂について小さなドメインサイズを有していた。というのは、D2、D3及びD6を含有する該膜層は、表11に示されるように、アンモニウム又はホスホニウム化合物を使用して製造されたからである(ここで、このアンモニウム又はホスホニウム塩は、その後、該膜層の形成時に除去された)。表11は、アンモニウム又はホスホニウム化合物で中和されたスルホネート基のパーセントの概算を与えている。これらの処方物についてのドメインサイズは500nm以下であったことが推定される。D1、D4及びD5の処方物は、いかなるアンモニウム又はホスホニウム化合物も使用しなかったため、これらの処方物中の高分子電解質アクリル樹脂についてのドメインサイズは、およそ1000nm以上であった。また、これらの例では、本質的に、多層膜の形成時の乾燥厚さは約2ミル以下であった。いくつかの例では、多層膜の厚さは、乾燥時に約1ミル以下であった。これらの厚さの小ささは、その面積抵抗が、2ミル以下の全湿潤厚さの層について非常に低い、例えば0.3Ω/cm2又はそれ未満であるという事実を考慮すると、さらに印象的である。これは、薄膜について非常に低い抵抗であり、なお容認できる伝導度を保持している。
【0146】
表12から分かるように、様々な多層膜を流延させた。ここで、いくつかの例では、第1層が大きなドメインサイズを有し、他の例では、第1層がアクリル樹脂について小さなドメインサイズを有していた。
【0147】
ここで示した膜は、先の例に示したのと同一の態様で製造されたことに留意されたい。
【0148】
従って、例17のような所定の多層膜では、その多層構造は、アクリル樹脂についていかなる小さなドメインサイズも有していなかった。例18のような例では、1個の層が500nm未満のドメインサイズを有する高分子電解質アクリル樹脂を含有していた。別の例、例えば例20では、その多層膜は、2層であってそれぞれの層が高分子電解質アクリル樹脂について小さなドメインサイズを有するものを含有していた。これらの様々な多層膜についての水への伝導度を示している表13から分かるように(ここでは、試験は先の例と同様に行った)、その面積抵抗が非常に低く、0.3Ωcm2未満であったことが分かる。この低い抵抗は、1個以上の層に存在するアクリル樹脂のドメインサイズとは無関係であった。従って、多層膜であって、その少なくとも1個の層が少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル及び/又はビニル樹脂或いはそれら両方を1種の追加の重合体とともに有する高分子電解質を含有するものを使用すると、燃料電池のような様々な製品に有用な容認できる多層膜が得られる。
【0149】
本発明の他の具体例は、当業者であれば、本願明細書及びここに開示された本発明の実施例を考慮することによって明らかであろう。本願明細書及び実施例は単なる例示であるとみなすものとし、本発明の真の範囲及び精神は添付した特許請求の範囲及びそれらの均等によって示されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】少なくとも1個のイオン性又はイオン化性基を有するアクリル樹脂又はビニル樹脂と、少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマーとの重合体ブレンドのSEM写真図である。
【図2】500nm未満のドメインサイズを示し且つかろうじて検出できるドメインサイズを示す本発明の重合体ブレンドのSEM写真図である。
【図3】2層膜の微分干渉コントラスト画像図(凍結ミクロトーム断面光学顕微鏡)である。
【図4】本発明の多層膜のSEM写真図である。
【図5】本発明の多層膜のSEM写真図である。
【図6】本発明の多層膜のSEM写真図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上の層を有する多層高分子電解質膜であって、該層の少なくとも1個が、
(a)少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂或いはその両方と、
(b)少なくとも1種の追加の重合体と
を含み、ここで、(a)と(b)は異なるものであり、該少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基は、約200〜約2500EWの量で存在し、しかも該膜は、5×10-16mol/cm2/s以下のメタノールクロスオーバー速度を有する、多層高分子電解質膜。
【請求項2】
少なくとも1個の他の層が
(a)少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂と、
(b)少なくとも1種の追加の重合体と
を含み、ここで、(a)と(b)は異なるものであり、該少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基は、約200〜約2500EWの量で存在し、しかも該他の層は前記第1層と同一の組成又は異なる組成を有する、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項3】
それぞれの層の厚さが同一である、請求項2に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項4】
それぞれの層の厚さが異なる、請求項2に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項5】
請求項1に記載の多層高分子電解質膜を備える膜電極アセンブリ。
【請求項6】
請求項5に記載の膜電極アセンブリを備える燃料電池。
【請求項7】
請求項1に記載の多層高分子電解質膜によって隔てられたアノード区画及びカソード区画を備える燃料電池。
【請求項8】
前記燃料電池が液体炭化水素燃料で動作する、請求項7に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記燃料電池がメタノール燃料で動作する、請求項7に記載の燃料電池。
【請求項10】
請求項1に記載の多層高分子電解質膜によって隔てられたアノード区画及びカソード区画を備えるバッテリー。
【請求項11】
前記(a)が約1200nm以下のドメインサイズを有する、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項12】
前記少なくとも1種の追加の重合体がフルオロポリマーである、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項13】
前記膜が20mS/cm以上の伝導度を有する、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項14】
前記伝導度が約50mS/cm〜約200mS/cmである、請求項13に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項15】
前記膜が約0.5〜約10ミルの全厚さを有する、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項16】
前記多層高分子電解質膜が過弗素化されていないものである、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項17】
前記少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基がスルホネート、ホスホネート、スルホン化基、ホスホン化基、スルホニル基又はそれらの組合せである、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項18】
アクリル樹脂又はビニル樹脂が約200〜約8000EWの当量を有する、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項19】
前記膜が3×10-16mol/cm2/s以下のメタノールクロスオーバー速度を有する、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項20】
2個以上の層を有する多層高分子電解質膜であって、該層の1個が、
(a)少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂と、
(b)少なくとも1種の追加の重合体と
を含み、ここで、(a)と(b)は異なるものであり、該少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基は、約200〜約2500EWの量で存在し、しかも該膜は0.3Ω/cm2以下の面積抵抗を有する、多層高分子電解質膜。
【請求項21】
少なくとも1個の他の層が
(a)少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂と、
(b)少なくとも1種の追加の重合体と
を含み、ここで、(a)と(b)は異なるものであり、該少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基は、約200〜約2500EWの量で存在し、しかも該他の層は前記第1層と同一の組成又は異なる組成を有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項22】
それぞれの層の厚さが同一である、請求項21に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項23】
それぞれの層の厚さが異なる、請求項21に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項24】
請求項20に記載の多層高分子電解質膜を備える膜電極アセンブリ。
【請求項25】
請求項24に記載の膜電極アセンブリを備える燃料電池。
【請求項26】
請求項20に記載の多層高分子電解質膜によって隔てられたアノード区画及びカソード区画を備える燃料電池。
【請求項27】
前記燃料電池が液体炭化水素で動作する、請求項26に記載の燃料電池。
【請求項28】
前記燃料電池がメタノール燃料で動作する、請求項26に記載の燃料電池。
【請求項29】
請求項20に記載の多層高分子電解質膜によって隔てられたアノード区画及びカソード区画を備えるバッテリー。
【請求項30】
前記多層高分子電解質膜が3個の層を有する、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項31】
前記第1層が前記他の層とは異なる組成を有する、請求項2に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項32】
前記第1層及び前記他の層が同一の組成を有する、請求項2に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項33】
請求項1に記載の多層高分子電解質膜が過弗素化スルホン化材料を含む、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項34】
前記第1層中の前記(a)が500nm以下のドメインサイズを有し、しかも前記他の層中の前記(a)が500nm以下のドメインサイズを有する、請求項2に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項35】
前記第1層中の前記(a)が約700nm以上のドメインサイズを有し、しかも前記他の層中の前記(a)が500nm以下のドメインサイズを有する、請求項2に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項36】
前記第1層中の前記(a)が700nm以上のドメインサイズを有し、しかも前記他の層中の前記(a)が700nm以上のドメインサイズを有する、請求項2に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項37】
前記多層高分子電解質膜が少なくとも3個の層を有し、該第3層が
(a)少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂と、
(b)少なくとも1種の追加の重合体と
を含み、ここで、(a)と(b)は異なるものであり、該少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基は、約200〜約2500EWの量で存在し、しかも該第3層は、前記第1層又は前記他の層と同一の組成又は異なる組成を有する、請求項2に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項38】
前記層の1個における前記(a)が500nm以下のドメインサイズを有し、しかも前記(a)について少なくとも1個の他の層が700nm以上のドメインサイズを有する、請求項37に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項39】
それぞれの層についての前記(a)が700nm以上のドメインサイズを有する、請求項37に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項40】
前記膜が0.3Ω/cm2以下の面積抵抗を有する、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項41】
前記膜が0.1Ω/cm2以下の面積抵抗を有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項42】
前記膜が0.05〜約0.3Ω/cm2の面積抵抗を有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項43】
前記多層高分子電解質膜が3個の層を有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項44】
前記第1層が前記他の層とは異なる組成を有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項45】
前記第1層及び前記他の層が同一の組成を有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項46】
1個の他の層が過弗素化スルホン化材料を含む、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項47】
前記第1層中の前記(a)が500nm以下のドメインサイズを有し、しかも前記他の層中の前記(a)が500nm以下のドメインサイズを有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項48】
前記第1層中の前記(a)が約700nm以上のドメインサイズを有し、前記他の層中の前記(a)が500nm以下のドメインサイズを有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項49】
前記第1層中の前記(a)が700nm以上のドメインサイズを有し、しかも前記他の層中の前記(a)が700nm以上のドメインサイズを有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項50】
前記多層高分子電解質膜が少なくとも3個の層を有し、該第3層が
(a)少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基を有する少なくとも1種のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂或いはその両方と、
(b)少なくとも1種の追加の重合体と
を含み、ここで、(a)と(b)は異なるものであり、該少なくとも1個のイオン性基又はイオン化性基は、約200〜2500EWの量で存在し、しかも該第3層は、前記第1層又は前記他の層と同一の組成又は異なる組成を有する、請求項21に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項51】
前記層の1個の中の前記(a)が500nm以下のドメインサイズを有し、しかも前記(a)について少なくとも1個の他の層が700nm以上のドメインサイズを有する、請求項50に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項52】
それぞれの層についての前記(a)が700nm以上のドメインサイズを有する、請求項50に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項53】
前記多層高分子電解質膜が1.75ミル(0.04445mm)以下の全厚さを有する、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項54】
前記多層高分子電解質膜が0.5ミル(0.0127mm)〜1.5ミル(0.0381mm)の全厚さを有する、請求項1に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項55】
前記多層高分子電解質膜が1.75ミル(0.04445mm)以下の全厚さを有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項56】
前記多層高分子電解質膜が0.5ミル(0.0127mm)〜1.5ミル(0.0381mm)の全厚さを有する、請求項20に記載の多層高分子電解質膜。
【請求項57】
1.75ミル(0.04445mm)以下の全厚さを有する高分子電解質膜であって、該膜が0.3Ω/cm2以下の面積抵抗を有する高分子電解質膜。
【請求項58】
前記膜が0.1Ω/cm2以下の面積抵抗を有する、請求項57に記載の高分子電解質膜。
【請求項59】
前記膜が約0.05〜約0.3Ω/cm2の面積抵抗を有する、請求項57に記載の高分子電解質膜。
【請求項60】
前記厚さが0.5ミル(0.0127mm)〜1.75ミル(0.04445mm)である、請求項57に記載の高分子電解質膜。
【請求項61】
前記厚さが0.75ミル(0.01905mm)〜1.5ミル(0.0381mm)である、請求項57に記載の高分子電解質膜。
【請求項62】
前記高分子電解質膜が多層高分子電解質膜である、請求項57に記載の高分子電解質膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−507087(P2008−507087A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521481(P2007−521481)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/022245
【国際公開番号】WO2006/019508
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】