説明

多形型および他の結晶型のシス−FTC

【解決手段】X線粉末回折パターン、熱特性、および製造の方法によってI型(−)−シス−FTCと区別することができ、ここでは非晶質(−)−FTCおよびIIおよびIII型(−)−シス−FTC)と呼ばれる(−)−シス−FTCの固相。同様にX線粉末回折パターン、熱特性、および製造の方法によって、FTCの他の型と区別することができる、(±)−シス−FTCの水和した結晶型(すなわちラセミ体のシス−FTC)、およびこの水和物の脱水された型。
【効果】これらのFTC型は、他の型のFTCの製造、または薬剤組成物に使用できる。これらの型の特に好ましい使用は、HIVまたはB型肝炎の治療である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多形型および他の結晶型の(−)−および(±)−シス−FTC(4−アミノ−5−フルオロ−1−(2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサチオラン−5−イル)−2(1H)−ピリミジノン)、その薬剤組成物、およびこうした組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
AZT、D4T、DDI、およびDDCなどの種々の合成ヌクレオシドによるHIVの複製のin vivoまたはin vitroでの抑制が成功したことにより、1980年代後半、研究者は、ヌクレオシドの3’位のヘテロ原子を炭素原子で置換したヌクレオシドを設計し、試験するようになった。Norbeck他は、(±)−1−[シス−(2,4)−2−(ヒドロキシメチル)−4−ジオキソラニル]チミン((±)−ジオキソラン−Tと呼ばれる)は、HIVに対して適度な活性を示し(ATH8細胞におけるEC50は20μM)、濃度200μMで、感染していない対照細胞に対して毒性がないことを開示している。Tetrahedron Letters 30(46),6246,(1989)。欧州特許出願公告第337713号およびBioChem Pharma,Inc.に譲渡された米国特許第5,041,449号は、抗ウイルス活性を示すラセミ体の2−置換−4−置換−1,3−ジオキソランを開示している。公開されたPCT出願番号 PCT US91/09124およびPCT US93/08044は、HIV感染症の治療のための単離されたβ−D−1,3−ジオキソラニルヌクレオシドを開示している。WO 94/09793は、HBV感染症の治療のための単離されたβ−D−1,3−ジオキソラニルヌクレオシドの使用を開示している。
【0003】
米国特許第5,047,407号および欧州特許出願公告第0382526号(これらもBioChem Pharma,Inc.に譲渡された)は、いくつかのラセミ体の2−置換−5−置換−1,3−オキサチオランヌクレオシドが抗ウイルス活性を持つことを開示しており、特に、2−ヒドロキシメチル−5−(シトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン(下でBCH−189と呼ぶ)のラセミ混合物が、HIVに対してAZTとほぼ同じ活性を持ち、毒性はより少ないことを報告している。3TCとして知られるBCH−189(Liotta他の米国特許第5,539,116号)の(−)−鏡像異性体は、現在米国で、ヒトにおけるHIVの治療のために市販されている。EP 513200 B1も参照のこと。
【0004】
(−)−(シス)−FTC(4−アミノ−5−フルオロ−1−(2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサチオラン−5−イル)−2−(1H)−ピリミジノン(2R−シス)、またはβ−L−2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン)が、強力なHIV活性を持つことも開示されている。Schinazi他、「Selective Inhibition of Human Immunodeficiency viruses by Racemates and Enantiomers of cis−5−fluoro−1−[2−(Hydroxymethyl)−1,3−Oxathiolane−5−yl]Cytosine」Antimicrobial Agents and Chemotherapy,November 1992、2423〜2431頁を参照のこと。米国特許第5,814,639号;第5,914,331号;第5,210,085号;米国特許第5,204,466号;WO91/11186、およびWO92/14743も参照のこと。(−)−シスFTCの化学構造を、下に示す。
【0005】
【化1】

【0006】
FTCなどの1,3−オキサチオランヌクレオシドは、商業的に重要であるので、その生成のためのいくつかのプロセスが、特許および科学文献に記載されている。1,3−オキサチオランヌクレオシドの不斉炭素上の置換基((C5置換基と呼ばれる)特定のプリンまたはピリミジン塩基と、(C2置換基と呼ばれる)CHOH)とは、オキサチオラン環系に関してシス(同じ側)でもトランス(反対側)でもよい。シスラセミ体もトランスラセミ体も、一対の光学異性体からなる。したがって、各化合物は、それぞれ4種の光学異性体を持つ。4種の光学異性体は、(−S−CH−部分が背面になるようにオキサチオラン部分を水平面に定める場合、)次の立体配置で表される:
(1)どちらの基も「上」である、天然に存在するL−シス配置であるシス(βとも呼ばれる)(2)どちらの基も「下」である、天然に存在しないβ−シス配置であるシス;(3)C2置換基が「上」でありC5置換基が「下」であるトランス(α−配置とも呼ばれる);ならびに(4)C2置換基が「下」でありC5置換基が「上」であるトランス。これらの2つのシス鏡像異性体は合わせて、β−鏡像異性体のラセミ混合物と呼ばれ、2つのトランス鏡像異性体は、α−鏡像異性体のラセミ混合物と呼ばれる。一般に、ラセミ光学異性体のトランスの組からラセミ光学異性体のシスの組を分離することは、かなり一般的に可能である。シス−配置のそれぞれの鏡像異性体を分離する、あるいは得るという挑戦は、それよりもかなり困難である。3TCおよびFTCについては、所望の立体化学配置は、β−L−異性体である。
【0007】
FTCにおける1,3−オキサチオラン環のナンバリング方式を、以下に示す。
【0008】
【化2】

【0009】
保護された塩基と1,3−オキサチオラン環を縮合する経路
米国特許第5,204,466号は、ルイス酸として塩化スズを使用し、保護されたピリミジン塩基と1,3−オキサチオランを縮合し、実質的に完全なβ−立体選択性を提供する方法を開示している。Choi他、「In Situ complexation Directs the Stereochemistry of N−Glycosylation in the synthesis of Oxathiolanyl and Dioxolanyl Nucleoside Analogues」J.Am Chem.Soc.1991,213,9377〜9379頁も参照のこと。塩化スズの使用により、除去が困難な望ましくない残留物および副生成物が反応中に生じる。
【0010】
いくつかの米国特許が、ケイ素ベースのルイス酸の存在下で、保護された塩基と、環の2位にキラルなエステルを有する1,3−オキサチオラン中間体との縮合を介して、1,3オキサチオランヌクレオシドを調製する方法を開示している。最終産物をもたらすために、その後、2位のエステルを、対応するヒドロキシメチル基に還元する必要がある。米国特許第5,663,320号;第5,864,164号;第5,693,787号;第5,696,254号;第5,744,596号;および第5,756,706号を参照のこと。
【0011】
米国特許第5,763,606号は、ルイス酸の存在下で、二環式の中間体と、あらかじめシリル化した所望のプリンまたはピリミジン塩基を結合させることを含む、シス−2−カルボン酸またはチオカルボン酸1,3−オキサチオランヌクレオシドを主として生成する方法を開示している。米国特許第5,272,151号は、チタン触媒の存在下で、2−O−保護−5−O−アシル化−1,3−ジオキソランを、酸素または窒素を保護されたプリンまたはピリミジンと反応させることを含む、1,3−ジオキソランヌクレオシドの調製方法を記載している。
【0012】
Choi他、「In Situ Complexation Directs the Stereochemistry of N−Glycosylation in the synthesis of Oxathiolanyl and Dioxolanyl Nucleoside Analogues」、J.Am Chem.Soc.1991,213,9377〜9379頁は、HgCl、EtAlCl、またはTiCl(O−イソプロピル)を用いると、保護されたピリミジン塩基と1,3−オキサチオランの結合が起こらないことを報告している(脚注2参照)。Choiはまた、アノマーの1,3−オキサチオラン酢酸塩と、シリル化したシトシンおよび塩化スズ以外の実質的に全ての一般的なルイス酸との反応は、N−グリコシル化アノマーの分離不可能な混合物の形成をもたらすことも報告している。
【0013】
米国特許第5,922,867号は、2−保護−オキシメチル−4−ハロ−1,3−ジオキソランを用いて、プリンまたはピリミジン塩基をグリコシル化することを含む、ジオキソランヌクレオシドを調製するための方法を開示している。
【0014】
特に、Liotta他の米国特許第5,914,331号、第5,700,937号、第5,827,727号、および第5,892,025号は、SnClの存在下で、そこで開示される1,3−オキサチオランを、シリル化した5−フルオロシトシンと結合させて、FTCのβ(−)異性体を形成すること、および場合によっては保護基を除去することを記載している。
【0015】
所望の立体配置の1,3−オキサチオランヌクレオシドを提供するための経路
実質上純粋な型の所望の立体配置のFTCを調製するための具体的な方法は、特に、Liotta他の米国特許第5,914,331号、第5,700,937号、第5,827,727号、および第5,892,025号に記載されている。一実施形態では、ヌクレオシドラセミ体の混合物のC5’−ヒドロキシル基をアシル化合物と反応させて、ヌクレオシドがエステルの「カルビノール」端にあるC5’−エステルを形成する。所望の鏡像異性体を加水分解する酵素を用いたラセミ混合物の処理(それに続く、極性溶媒を用いた極性水解物の抽出)によって、あるいは、所望でない鏡像異性体を加水分解する酵素を用いた処理(それに続く、極性溶媒を用いた所望でない鏡像異性体の除去)によって、所望の異性体を単離することができる。1,3−オキサチオランピリミジンヌクレオシドの加水分解を触媒する酵素には、ブタ肝臓エステラーゼ、ブタ膵臓リパーゼ、Amano PS−800リパーゼ、サブスチリシン、およびα−キモトリプシンが含まれる。
【0016】
シチジン−デオキシシチジンデアミナーゼを使用して、2−ヒドロキシメチル−5−(シトシン−1−イル)−1,3−オキサチオランおよび2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロ−シトシン−1−イル)−1,3−オキサチオランを含めたその誘導体のラセミ混合物を分割することができる。この酵素は、シトシン部分のウリジンへの脱アミノ化を触媒する。1,3−オキサチオランヌクレオシドの鏡像異性体の1つが、シチジン−デオキシシチジンデアミナーゼの好ましい基質である。ウリジンに転換されなかった(したがって、塩基性のままである)鏡像異性体は、酸性溶液を用いて溶液から抽出する。シチジン−デオキシシチジンデアミナーゼは、ラットの肝臓またはヒトの肝臓から分離できる、あるいはE.coliなどの原核系において組換え配列から発現させることができる。
【0017】
シス−FTC鏡像異性体を分割するために、キラルクロマトグラフィーも使用することができる。例えば、Liotta他の米国特許第5,892,025号は、アセチル化されたβ−シクロデキストリンキラルカラムにシス−FTCを通過させることによって、シス−FTCの鏡像異性体の組み合わせを分割する方法を開示している。
【0018】
結晶多形の特徴付け
化合物が異なる結晶構造で存在できる能力は、多形として知られている。こうした異なる結晶型は、「多形変形(polymorphic modification)」または「多形体(polymorph)」として知られている。多形体は、化学組成が同じであるが、積層(packing)および幾何学配列が異なり、融点、形状、色、密度、硬度、変形能、安定性、溶解性などの異なる物理的性質を示す。温度安定性との関係に応じて、多形体は、単変または互変の2種であり得る。単変系では、2つの固相間の相対的安定性は、温度が変化しても変化しない。対照的に、互変系では、2つの相の安定性が逆転する転移温度が存在する。(「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」内、Theory and Origin of Polymorphism(1999)ISBN:)−8247−0237)。
【0019】
いくつかの化合物が、多形を示すことが報告されている。初期の例として、Gordon他は、米国特許第4,476,248号中で、薬物イブプロフェンの新規の結晶型およびそれを生成するプロセスを開示および主張している。この新規の結晶型は、イブプロフェンの生産性を向上することが報告された。FTCと構造がより密接に関連している3TC((−)−シス−4−アミノ−1−(2−ヒドロキシメチル−1,3−オキサチオラン−5−イル)−(1H)−ピリミジン−2−オン;ラミブジン)が、1つ以上の結晶型で存在することも報告されている。Jozwiakowski,M.J.、Nguyen,N.T.、Sisco,J.M.、Spancake,C.W.「Solubility Behavior of Lamivudine Crystal Forms in Recrystallization Solvents」、J.Pharm.Sci.,85,2、193〜199頁(1996)。3TCの2つの多形型を記載している、1999年5月18日に発行された「Crystalline Oxathiolane Derivatives」という題名のRoberts他の米国特許第5,905,082号、およびそれに対応するPCTであるPCT/EP92/01213も参照のこと。Roberts他は、ある多形体が、3TCが結晶化される場合に、水溶液から得られることを開示している。第2の多形体は、3TCが結晶化される場合に、あるいは第1の形が融解および冷却される場合に、あるいは第1の形がすり潰されるまたは粉砕される場合に、非水性媒質から得られる。どちらの多形型も、固有の吸収バンド、融解温度、および結晶エネルギーを示す。
【0020】
上で述べた方法によって生成された(−)−シス−FTCは、特徴的な結晶型を有し、ここではI型(−)−シス−FTCと呼ぶ。図7に示される、粉末X線回折パターンにおける(−)シスI型FTCの特性ピークの角度位置(2θ)は、14.1°±0.1°、19.9°±0.1°、20.2°±0.1°、20.6°±0.1°、21.0°±0.1°、22.4°±0.1°、28.5°±0.1°、29.5°±0.1°、および32.6°±0.1°である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許出願公告第337713号
【特許文献2】米国特許第5,041,449号明細書
【特許文献3】国際特許出願番号第PCT/US91/09124号
【特許文献4】国際特許出願番号第PCT/US93/08044号
【特許文献5】国際公開第94/09793号
【特許文献6】米国特許第5,047,407号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公告第0382526号
【特許文献8】米国特許第5,539,116号明細書
【特許文献9】欧州特許第513200 B1号明細書
【特許文献10】米国特許第5,814,639号明細書
【特許文献11】米国特許第5,914,331号明細書
【特許文献12】米国特許第5,210,085号明細書
【特許文献13】米国特許第5,204,466号明細書
【特許文献14】国際公開第91/11186号
【特許文献15】国際公開第92/14743号
【特許文献16】米国特許第5,663,320号明細書
【特許文献17】米国特許第5,864,164号明細書
【特許文献18】米国特許第5,693,787号明細書
【特許文献19】米国特許第5,696,254号明細書
【特許文献20】米国特許第5,744,596号明細書
【特許文献21】米国特許第5,756,706号明細書
【特許文献22】米国特許第5,763,606号明細書
【特許文献23】米国特許第5,272,151号明細書
【特許文献24】米国特許第5,922,867号明細書
【特許文献25】米国特許第5,700,937号明細書
【特許文献26】米国特許第5,827,727号明細書
【特許文献27】米国特許第5,892,025号明細書
【特許文献28】米国特許第4,476,248号明細書
【特許文献29】米国特許第5,905,082号明細書
【特許文献30】国際特許出願番号第PCT/EP92/01213号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Norbeck他、Tetrahedron Letters 30(46),6246,(1989)
【非特許文献2】Schinazi他、「Selective Inhibition of Human Immunodeficiency viruses by Racemates and Enantiomers of cis−5−fluoro−1−[2−(Hydroxymethyl)−1,3−Oxathiolane−5−yl]Cytosine」Antimicrobial Agents and Chemotherapy,November 1992、2423〜2431頁
【非特許文献3】Choi他、「In Situ complexation Directs the Stereochemistry of N−Glycosylation in the synthesis of Oxathiolanyl and Dioxolanyl Nucleoside Analogues」J.Am Chem.Soc.1991,213,9377〜9379頁
【非特許文献4】「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」内、Theory and Origin of Polymorphism(1999)ISBN:)−8247−0237
【非特許文献5】Jozwiakowski,M.J.、Nguyen,N.T.、Sisco,J.M.、Spancake,C.W.「Solubility Behavior of Lamivudine Crystal Forms in Recrystallization Solvents」、J.Pharm.Sci.,85,2、193〜199頁(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
さらなる多形体および他の結晶型のFTCは、製造または他の適用分野において商業的価値がある。したがって、本発明の一目的は、新規の多形型および他の結晶型のFTCを提供することである。
【0024】
他の目的は、多形型および他の結晶型のFTCを調製および単離するための新規の方法を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、FTC多形体および他の相のFTC、治療目的の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
X線粉末回折パターン、熱特性、および製造の方法によってI型(−)−シス−FTCと区別することができ、ここでは非晶質(−)−FTCならびにIIおよびIII型(−)−シス−FTC)と呼ばれる(−)−シス−FTCの固相を提供する。同様に、X線粉末回折パターン、熱特性、および製造の方法によって、シス−FTCの他の型と区別することができる、(±)−シス−FTCの水和した結晶型(すなわちラセミ体のシス−FTC)、およびこの水和物の脱水された型も提供する。これらのFTC型は、他の型のFTCの製造に、あるいは薬剤組成物中で使用することができる。これらの型は、HIVまたはB型肝炎の治療において使用されることが特に好ましい。
【0027】
II型(−)−シス−FTCは、I型(−)−シス−FTCを融解し、I型の融点に近い温度でこの融解物を再結晶させることによって得ることができる。III型(−)−シス−FTCは、II型(−)−シス−FTCをIIおよびIII型についての熱力学的転移温度より低温に冷却することによって得ることができる。非晶質(−)−シス−FTCは、液体の(−)−シス−FTCを急冷することによって得ることができる。(±)−シス−FTCの水和した結晶型は、1.5水和物であり、(±)−シス−FTCを水に溶解し、このFTCを再結晶させることによって得ることができる。脱水された型の1.5水和物は、1.5水和物から水和物の水を除去することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】10℃/分の速度で加熱することによって得られた、151℃での吸熱を示す(−)−シス−FTCI型の典型的なDSC(「示差走査熱量測定」)サーモグラムを示す図である。
【図2】1℃/分で加熱することによって得られた、(−)−シス−FTCI型のDSCサーモグラムを示す図である。
【図3】2℃/分で加熱することによって得られた、(−)−シス−FTCI型のDSCサーモグラムを示す図である。
【図4】5℃/分で加熱することによって得られた、(−)−シス−FTCI型のDSCサーモグラムを示す図である。
【図5】II型およびIII型(−)−シス−FTCのDSCサーモグラムを示す図である。
【図6】II型からIII型への転移が可逆的であることを示す、DSCサーモグラムを示す図である。
【図7】I型(−)−シス−FTCのPXRD(「粉末X線回折」)パターンを示す図である。
【図8】II型(−)−シス−FTCのPXRDパターンを示す図である。
【図9】III型(−)−シス−FTCのPXRDパターンを示す図である。
【図10】(±)−シス−FTCの1.5水和物のPXRDパターンを示す図である。
【図11】ラセミ体のシス−FTC 1.5水和物の脱水された型のPXRDパターンを示す図である。
【図12】(±)−シス−FTC 1.5水和物および(−)−シス−FTCのDSCサーモグラムを示す図である。
【図13】(±)−シス−FTCの1.5水和物のTGA(「熱重量分析」)走査を示す図である。
【図14】(−)−(シス)−FTCの3つの多形体(I、II、およびIII型)についての自由エネルギーと温度の関連を示す図である。安定な相は、実線で示され、準安定な相は、点線で示される。
【図15】(−)−シス−FTCの結晶試料の融解および凝固によって得られた、非晶質(−)−シス−FTCのDSCサーモグラムを示す図である。最終の加熱速度は、10℃/分であった。
【発明を実施するための形態】
【0029】
X線回折パターン、熱特性、およびそれが作られる方法によって(−)シス−FTCおよび(±)−シス−FTCの他の相と区別することができる、(−)−シス−FTCの2つの新規の多形型、(−)−シスFTCの非晶質相、(±)−シス−FTCの1つの新規の水和した結晶型、および(±)−シス−FTC水和物の脱水された型を提供する。これらの型のFTCと、非晶質相は、FTCの製造における中間体として使用することができる、あるいは薬剤組成物中に配合し、HIVまたはB型肝炎の治療のために使用することができる。
【0030】
本発明の(−)−シス−FTCの2つの多形型は、IIおよびIII型(−)−シス−FTCと呼ばれ、図8および9のX線粉末回折パターンで特徴付けられる。これらの型は、この書類の背景セクションで述べた方法によって調製される、多形型の(−)−シス−FTCであるI型(−)−シス−FTCと対照をなすべきである。I型(−)−シス−FTCは、図7に示すX線粉末回折パターンで、あるいはこの書類の背景セクションで示した回折角でのピークで特徴付けることができる。
【0031】
(±)−シス−FTCの水和した結晶型は、図10のX線粉末回折パターンで特徴付けられる。この型は、従来の技術で製造された(±)シス−FTCと対照をなすべきである。様々な型の熱特性を、下の表にまとめて示す。
【0032】
【表1】

【0033】
したがって、本発明は、
a)X線粉末回折分析、物理的性質、および製造の方法で特徴付けられる(−)−シス−FTCの2つの多形体および非晶質相、
b)X線粉末回折分析、物理的性質、および製造の方法で特徴付けられる(±)−シス−FTCの水和した結晶型、および(±)−シス−FTC水和物の脱水された型、
c)(−)−シス−FTC相および(±)−シス−FTC結晶型を作るためのプロセス、
d)(−)−シス−FTC相および(±)−シス−FTC結晶型の、場合によって薬剤として許容される担体の存在下での、治療用および/または薬剤用組成物、ならびに
e)特にHIVおよびB型肝炎などのウイルス性疾患の治療における、(−)−シス−FTC相および(±)−シス−FTC結晶型についての新規の治療目的の使用
を提供する。
【0034】
II型(−)−シス−FTC
II型(−)−シス−FTCは、I型(−)−シス−FTCを融解し、再結晶させると、認められる。すべての多形体と同様に、II型は、粉末X線結晶学にかけた場合にそれが示す粉末回折パターンで特徴付けることができる。図8に示す、II型(−)−シス−FTCの粉末X線回折パターンにおける特性ピークの角度位置(2θ)は、14.7°±0.1°、16.7°±0.1°、19.6°±0.1°、21.1°±0.1°、21.8°±0.1°、24.6°±0.1°、および25.6°±0.1°である。
【0035】
II型(−)−シス−FTCは、その融解温度および/または融解熱で特徴付けることもできる。II型(−)−シス−FTCの融解温度は、大気圧で約166℃であり、通常、約15〜19kJ/モルの範囲の融解熱を示す。融解熱は、実験の条件に応じて変わり得ることが知られている。
【0036】
あるいは、II型(−)−シス−FTCは、その互変挙動およびそれを製造した方法で特徴付けることができる。II型(−)−シス−FTCは、転移温度が、安定性秩序が逆転する温度よりも下および上に存在するという意味で、(−)−シス−FTCのI型およびIII型多形体と互変である。この互変挙動のために、II型(−)−シス−FTCは、I型(−)−シス−FTCからもIII型(−)−シス−FTCからも調製することができる。この書類に示す実施例では、II型(−)−シス−FTCを、
(1)(−)−シス−FTC(I型)を、その融解温度(I型について約151℃)より高温に加熱し、それをその高い温度に保持することによって(徐冷後、この融解した(−)−シス−FTCはII型に再結晶し、II型とIII型の間の熱力学的転移温度より高い温度で、II型の結晶型を呈した)
(2)(II型は、III型(−)−シス−FTCと互変であるので)III型(−)−シス−FTCを、約96℃〜約112℃の範囲のII型とIII型の熱力学的転移温度より高温に加熱することによって
得る。
【0037】
したがって、I型(−)−シス−FTCを融解し、この融解物の温度を、II型とIII型の熱力学的転移温度よりは高くないが、II型の融解温度より低温に維持する場合、II型(−)−シス−FTCを得ることができる。注目すべきは、II型を、その融点(約166℃)より高温に加熱し、徐冷した場合、II型からの同様の転移は観察されない。II型が、II型に再結晶するだけである。しかし、II型は、急冷した場合、同様の融解物から結晶化することはなく、非晶質相がもたらされる。
【0038】
したがって、一実施形態では、本発明は、前述の方法のいずれかで特徴付けられるような、好ましくは実質上純粋な型のII型(−)−シス−FTCを提供する。他の実施形態では、本発明は、I型(−)−シス−FTCが実質上存在しないII型(−)−シス−FTCを提供する。他の実施形態では、本発明は、III型(−)−シス−FTCが実質上存在しないII型(−)−シス−FTCを提供する。他の実施形態では、本発明は、II型(−)−シス−FTCを含み、さらに薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物を提供する。
【0039】
III型(−)−シス−FTC
II型(−)−シス−FTCは、III型(−)−シス−FTCへの固体転移を受けるので、III型(−)−シス−FTCは、II型(−)−シス−FTCの温度を、約96℃〜約112℃の範囲の転移温度より低温に下げた場合に、II型(−)−シス−FTCから得られる。III型(−)−シス−FTCは、(−)−シスFTCのもう1つの多形体であり、粉末X線結晶学にかけた場合に、それが示す粉末回折パターンで特徴付けることができる。図9に示す、III型(−)−シス−FTCの粉末X線回折パターンにおける特性ピークの角度位置(2θ)は、14.5°±0.1°、16.7°±0.1°、19.6°±0.1°、20.4°±0.1°、21.4°±0.1°、21.7°±0.1°、25.2°±0.1°、および26.2°±0.1°である。
【0040】
III型(−)−シス−FTCは、その製造の方法で特徴付けることもできる。III型の、II型との互変挙動のために、III型(−)−シス−FTCは、II型(−)−シス−FTCから、II型(−)−シス−FTCを、II型とIII型の固体転移温度より低温に冷却し、II型(−)−シス−FTCからの固体転移を引き起こすことによって調製することができる。当然、III型(−)−シス−FTCは、I型を融解し、この融解物をII型とIII型の固体転移温度より低温に徐冷することによって、I型(−)−シス−FTCから、中間体としてのII型を用いて直接調製することもできる。III型(−)−シス−FTCは、その固体転移温度より低温での安定性のために、固体転移を示す温度の範囲で特徴付けることもできるが、この範囲の下端(すなわち大気圧で約96℃)で特徴付けることが好ましい。
【0041】
したがって、一実施形態では、本発明は、好ましくは実質上純粋な型のIII型(−)−シス−FTCを提供する。他の実施形態では、本発明は、I型(−)−シス−FTCが実質上存在しないIII型(−)−シス−FTCを提供する。他の実施形態では、本発明は、II型(−)−シス−FTCが実質上存在しないIII型(−)−シス−FTCを提供する。他の実施形態では、本発明は、III型(−)−シス−FTCを含み、さらに薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物を提供する。
【0042】
(±)−シス−FTC 1.5水和物
(±)−シス−FTC 1.5水和物は、(±)−シス−FTCを水に溶解し、再結晶させた場合に得られるラセミ体のシス−FTCの結晶型である。注目すべきは、この水和物は、シス−FTCのラセミ体のみから生じ、純粋な(−)−シス−FTCからは生じない。(±)−シス−FTC 1.5水和物は、粉末X線結晶学にかけた場合に、それが示す粉末回折パターンで特徴付けることができる。図10に示す(±)−シス−FTC 1.5水和物の粉末X線回折パターンにおける特性ピークの角度位置(2θ)は、11.5°±0.1°、13.4°±0.1°、19.1°±0.1°、20.3°±0.1°、20.8°±0.1°、21.5°±0.1°、21.9°±0.1°、および30.9°±0.1°である。
【0043】
TGA分析により、(±)−シス−FTCの1.5水和物が確認される。この1.5水和物は、大気圧で、約30℃で、水和物の水が失われ始め、蒸発する。
【0044】
(±)−シス−FTC 1.5水和物は、それを調製するための方法のうちの1つで特徴付けることができる。(±)−シス−FTC 1.5水和物は、単に、(±)−シス FTCを水に溶解し、溶解したFTCを水和した結晶型に再結晶させることによって調製することが好ましい。溶解するFTCの量を増やすために、溶解中、熱を用いることができる。(±)−FTCは、シス−FTCの純粋なラセミ混合物中に、あるいは、主として(+)−シス−FTCまたは(−)−シスFTCを含む組成物に対する不純物として存在可能である。不純物として存在する場合、(±)−FTCは、少なくとも約4重量%の(+)−シス−FTCまたは(−)−シス−FTC組成物を含むことが好ましい(すなわち、(−)−シス−FTCの不純物として存在するのであれば、FTCは、少なくとも2重量%の(+)鏡像異性体を含むことが好ましく、(+)−シス−FTCの不純物として存在するのであれば、FTCは、少なくとも2重量%の(−)鏡像異性体を含むことが好ましい)。
【0045】
(±)−シス−FTCのDSCサーモグラムを、図12に示す。再結晶させたFTCは、DSC、TGA、およびPXRD分析によって示される通り、1.5水和物である。
【0046】
したがって、一実施形態では、本発明は、好ましくは実質上純粋な型の(±)−シス−FTC 1.5水和物を提供する。他の実施形態では、本発明は、I型(−)−シス−FTCが実質上存在しない、あるいはラセミ体のシス−FTC、(−)−シス−FTC、または(+)−シス−FTCの他の水和および脱水された結晶型が実質上存在しない(±)−シス−FTC 1.5水和物を提供する。他の実施形態では、本発明は、(±)−シス−FTC 1.5水和物を含み、さらに薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物を提供する。
【0047】
(±)−シス−FTC 1.5水和物から水和物の水を蒸発させると、ラセミ体のシス−FTCの脱水された結晶型が形成される。したがって、ラセミ体のシス−FTCは、粉末X線結晶学にかけた場合に、それが示す粉末回折パターンで特徴付けることができる。図11に示す脱水されたラセミ体のシスFTCの粉末X線回折パターンにおける特性ピークの角度位置(2θ)は、12.3°±0.1°、14.0°±0.1°、20.7°±0.1°、22.6°±0.1°、23.3°±0.1°、および25.5°±0.1°である。脱水されたラセミ体のシス−FTCの融解温度は、大気圧で約190℃であり、融解熱は約23kJ/モルである。
【0048】
図12のDSCサーモグラムは、(±)−シス−FTC 1.5水和物のものである。TGA分析によって裏付けられた通り、80℃での大きな吸熱は、(±)−シス−FTC 1.5水和物からの水和物の水の損失であった。190℃での第2の吸熱は、脱水されたラセミ体のシス−FTCの融解である。
【0049】
したがって、他の実施形態では、本発明は、本発明の脱水された(±)−シス−FTCを提供する。他の実施形態では、本発明は、I型(−)−シス−FTCが実質上存在しない、あるいはラセミ体のシス−FTC、(−)−シス−FTC、または(+)−シス−FTCの他の水和および脱水された結晶型が実質上存在しない脱水された(±)−シス−FTCを提供する。他の実施形態では、本発明は、本発明の脱水された(±)−シス−FTCを含み、さらに薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物を提供する。
【0050】
非晶質(−)−シス−FTC
(−)−シス−FTCの非晶質型は、融解した(−)−シス−FTCを約40または50℃より低温に急冷し、それによってIIまたはIII型(−)−シス−FTCへのいずれの転移も回避された場合に得られる。非晶質(−)−シス−FTCのDSCサーモグラムを、図15として示すが、これは、この相についてのガラス転移温度が67℃であることを示している。
【0051】
したがって、他の実施形態では、本発明は、好ましくは実質上純粋な型の非晶質(−)−シス−FTCを提供する。他の実施形態では、本発明は、I、II、および/またはIII型(−)−シス−FTCが実質上存在しない非晶質(−)−シス−FTCを提供する。他の実施形態では、本発明は、非晶質(−)−シス−FTCを含み、さらに薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物を提供する。
【0052】
定義
本明細書では、FTCの相または結晶型に関して使用される用語「実質上純粋な」は、純度が約95%超であるFTCの相または結晶型を意味する。これは、FTCの多形型または水和した型が、他のいずれの化合物も約5%より多くは含有せず、一実施形態では、FTCの他のいずれの相または結晶型(ラセミ体、(−)、(+)、シス、またはトランス)も約5%より多くは含有しないことを意味する。他の実施形態では、用語「実質上純粋な」は、純度が約96%超であるFTCの相または結晶型を意味する。他の実施形態では、用語「実質上純粋な」は、純度が約97%または99%超であるFTCの相または結晶型を意味する。
【0053】
同様に、FTCの相または結晶型に関して使用される用語「第2の成分が実質上存在しない」は、第2の成分を約5%より多くは含有しないFTCの相または結晶型を意味する。用語「第2の成分が実質上存在しない」は、より好ましくは第2の成分を約4%より多くは含有しない、さらに好ましくは第2の成分をわずか約3%または1%しか含有しないFTCの相または結晶型を意味する。
【0054】
固有の粉末X線回折パターンのピーク位置が、結晶型について、角度位置(2θ)に関して、+または−0.1°の許容変動内で報告されている。この許容変動は、US Pharmacopeia、1843〜1844頁(1995)で指定されている。+または−0.1°の変動は、2つの粉末X線回折パターンを比較する場合に使用されるものとする。実際、あるパターンからの回折パターンピークに、測定されたピーク位置プラスまたはマイナス0.1°である角度位置(2θ)の範囲を割り当て、他のパターンからの回折パターンピークに、測定されたピーク位置プラスまたはマイナス0.1°である角度位置(2θ)の範囲を割り当て、これらのピーク位置の範囲が重なり合うならば、2つのピークは、同じ角度位置(2θ)をもつとみなされる。例えば、あるパターンからの回折パターンピークが、5.20°のピーク位置をもつと測定されるならば、比較のために、許容変動のピークには、5.10°〜5.30°の範囲の位置が割り当てられる。他の回折パターンからの比較ピークが、5.35°のピーク位置をもつと測定されるならば、比較のために、許容変動のピークには、5.25°〜5.45°の範囲の位置が割り当てられる。2つのピーク位置の範囲の間に重なりが存在するので、比較されたこの2つのピークは、同じ角度位置(2θ)をもつと考えられる。
【0055】
この明細書全体を通して、「含む」という単語、あるいはその活用形は、記述した要素、整数、またはステップ、あるいは複数の要素、整数、またはステップの群の包含を意味するが、他のいずれの要素、整数、またはステップ、あるいは複数の要素、整数、またはステップの群も除外されないことを理解されたい。
(実施例)
【0056】
材料および方法
別段の指定がない限り、すべての試験に対する出発材料である(−)−シス−FTCは、以下のように、(−)−シス−FTCの2つのバッチを混合および処理することによって得た。フラスコに、1109グラムの(−)−シス−FTCおよび2750mLの酢酸エチルを装入した。このスラリーを、周囲温度で2時間攪拌し、濾過し、550mLの酢酸エチルで洗浄した。この濾過ケークを、真空乾燥機内で、約2mmHg、50℃で終夜乾燥させた。溶媒はすべてHPLCグレードであり、そのまま使用した。出発物質の(−)−シス−FTCのHPLCアッセイは、純度98.8%を示した。
【0057】
示差走査熱量測定(DSC):以下の機器を使用して、DSC実験を実施した:TA Instruments DSC 2920(冷却装置(refrigerated cooling)装備)を使用して、DSC研究を実施した。試料約5mgを、密封したアルミニウム製のパンに入れた。このDSCセルを、30mL/分の窒素でパージした。別段の記述がない限り、加熱速度は10℃/分であった。同じ実験条件で、インジウム標準を用いて温度および熱流の較正を実施した。データ分析器(STAR、Mettler Instrument)を備え付けたMettler DSC30(Mettler Instrument,Hightstown,NJ)で、DSC測定を行った。ふたにパンチされた1つの穴を用いて、試料(およそ2〜5mg)を、標準のアルミニウム製40μLパン内に密封した。この試料タイプの空のパンを、基準として使用した。これらの試料を、50mL/分の乾いた窒素パージを用いて、1〜10℃/分で走査した。DSCを、熱流および温度について較正した。
【0058】
熱重量分析(TGA):TA Instruments TGA 2950を用いて、TGA研究を実施した。試料約5mgを、開いた白金製のパンに入れ、この試料を、10℃/分の加熱速度にさらした。
【0059】
Variable−Temperature PXRD:回折計(XDS 2000,Scintag,Sunnyvale,CA)は、Cu陽極管を備え付けた4kW発電機(電圧45kVおよび電流40mA)、液体窒素冷却型Ge検出器(GLP−10195/07−S,EG&G ORTEC,Oak Ridge,TN)、データ分析器(MicroVax 3100,Digital Equipment Corporation,Ontario,Canada)、加熱ステージ(Scintag)、および温度制御装置(Microstar,Research Inc.,Minneapolis,MN)で構成される。薄い層の試料を、試料ホルダーに置き、回転することなく1°/分の速度で走査した。
【0060】
ホットステージ顕微鏡分析(HSM):Mettler−Toledo FP82HTホットステージを備え付けたOlympus BX60顕微鏡を使用して、偏光顕微鏡分析を実施した。試料の薄い層を、スライドに置き、10℃/分で加熱した。ImagePro(登録商標)ソフトウェアで熱事象のデータを取り込んだ。
【0061】
再結晶法:(−)−シス−FTC約5グラムを、丸底フラスコに入れ、155〜160℃の範囲の温度で攪拌しながら30分間加熱した。この試料を、周囲条件で、このフラスコ内で室温に冷却した。
【0062】
平衡溶解度:過剰量の固体を使用し、これを共栓付きフラスコに入れ、温度制御された水浴中で25℃で52時間振盪して、平衡溶解度値を得た。残った固形材料は、ホットステージ顕微鏡分析およびPXRDによって、平衡後に同定された。上清を、0.45μmメンブランフィルターで濾過し、その後HPLC分析のために希釈した。
【0063】
粉砕:(−)−シス−FTCを、Fitzpatrick社製ミルで、ハンマー、その後000バンド(band)スクリーンで、高速(4000RPM)で粉砕した。この薬物を、フィルターに1回通し、プラスチック製バッグに集めた。
【0064】
水和物形成:I型の過飽和溶液(0.5g/mL)を50℃で調製した。次いで、この溶液を、およそ2時間攪拌しながら室温に冷却した。沈殿した固体を、真空濾過し、風乾した。この固体を、HPLC、DSC、PXRD、およびTGAで分析した。この分析では、この固体は(±)−シス−FTCの1.5水和物であることが明らかになった。
【0065】
結晶化:(−)−シス−FTCを、以下の溶媒のうちの1つに溶解した:メタノール、酢酸エチル、水、テトラヒドロフラン、およびアセトン。各懸濁液を、約15分間煮沸し、直ちに、すぐに0.45μmナイロンフィルターで濾過した。上清を、結晶化するまで室温で攪拌した。結晶化した時点で、この懸濁液を濾過し、濾過ケークを収集した。この濾過ケークをガラス皿に入れ、綿ほこりの出ないペーパータオルで覆い、2日間周囲条件で、フード内に置いた。
【実施例1】
【0066】
(−)−シス−FTCIおよびII型のDSCによる特徴付け
(−)−シス−FTC多形体I型の熱事象を、加熱速度10、1、2、および5℃/分で観察した。これらのDSCサーモグラムを、それぞれ図1、2、3、および4に示す。試料サイズは、それぞれ6.8400mg、5.290mg、5.0430mg、または5.1500mgであった。
【0067】
151℃での吸熱は、(−)−シス−FTCI型の融解温度に相当する。この吸熱は、研究されたすべての加熱速度に存在していた。この相の融解に関連する融解熱は、25kJ/モルである。この融解に続いて、より高温で融解する固体であるII型への再結晶が起こる。高温吸熱(162℃)の存在は、加熱速度によって異なっていた。特に、加熱速度が低下するにつれて、高温吸熱が出現する確率が増した。また、加熱速度が低下するにつれて、高温吸熱のために、融解熱の値が増した。これらの観察結果は、より低い加熱速度では、液体が、より大きい程度で再結晶するという事実と一致する。この、加熱速度に依存する吸熱により、I型が、151℃で融解した後に再結晶を受ける可能性があること、また、得られた結晶型が、約162℃で融解することが示された。162℃で融解する相を、「(−)−シス−FTCII型」と名付けた。
【実施例2】
【0068】
(−)−シス−FTCII型およびIII型のDSCによる特徴付け
融解し、その後室温に冷却した後のI型(−)−シス−FTCについての熱事象を、DSCによって観察した。I型(−)−シスFTCの試料5.5500mgを、I型の融解温度より少し上である160℃に加熱し、25℃に冷却した。10℃/分の加熱速度を使用するDSCで再び加熱すると、I型(−)−シス−FTCに対する151℃での吸熱は存在しなかった。しかし、図5で示す通り、102℃と162℃で吸熱が現れた。102℃での吸熱は、図6で示す通り、III型(−)−シス−FTCのII型(−)−シス−FTCへの固体転移であった。102℃の転移の上および下で集められたPXRDデータ(図7および9)は、DSC判定を裏付けた。162℃での吸熱は、II型(−)−シス−FTCの融解であった。HPLCにより、これらの熱事象に関連する潜在能力の変化がないことが裏付けられた。
【実施例3】
【0069】
非晶質(−)−シス−FTCのDSCによる特徴付け
I型FTC 7.315mgを、DSCで、5℃/分で、180℃に加熱した。次いで、この試料を、−20℃/分で、−20℃に急冷した。この試料を、10℃/分で再び加熱すると、約67℃で、ガラス転移に関連するベースラインのシフトを示した。このベースラインのシフトは、加熱サイクルと冷却サイクルの間に起こり、これは、ガラス転移が原因であると裏付けられた。非晶質(−)−シス−FTCのDSCサーモグラムは、図15に収録する。
【実施例4】
【0070】
I、II、およびIII型(−)−シス−FTCのHSM観察
DSC分析中に認められた熱事象に基づくI、II、およびIII型の割り当ては、HSM観察と一致した。顕微鏡下では、I型材料は、室温で、平板として現れた。10℃/分で160℃に加熱すると、I型は融解し、透明な液体になった。この液体を冷却すると、この融解物から、見たところI型に比べて色が濃い針晶が結晶化した。再び加熱すると、これらの針晶は、約102℃で始まり、約115℃で終わる、複屈折の変化を受けた。この針晶は、最終的には166℃で融解した。
【実施例5】
【0071】
結晶型に対する粉砕の影響
一方は、乳鉢と乳棒で、5分間手ですり潰すことによって、もう一方は、Fitzpatrickミルで粉砕することによって、2つのバッチの粉砕されたI型(−)−シス−FTCを調製した。定量的な測定はしなかったが、光学顕微鏡分析では、すり潰した(−)−シス−FTCの粒径が、最も小さく、それに続いてFitzpatrickミルを使用して得られたもの、続いて粉砕していない(−)−シス−FTCが大きいと思われることが明らかになった。Fitzpatrickミルで粉砕された試料、および粉砕していない(−)−シス−FTCのDSCサーモグラムは、151℃での1つの吸熱のみを示した。すり潰した(−)−シス−FTCは、151℃と162℃の2つの吸熱を示した。すり潰した(−)−シス−FTCの室温でのPXRDパターンは、I型についてのパターンと同じであり、DSC実験中にI型からII型への転換が起こることが示された。まとめると、これらのデータは、I型から出発する場合、記述した条件による粉砕は、(−)−シス−FTCの結晶型に影響を与えないことを示唆する。
【実施例6】
【0072】
結晶型に対する加熱の影響
25℃および95℃でのIII型についてのPXRDパターンを、図9に示す。しかし、この試料の120℃で得られたPXRDパターンは、95℃で得られたパターンと異なっていた。この温度範囲でのPXRDパターンの変化は、DSCサーモグラム分析によって約102℃で得られた吸熱と一貫性があり(図6)、固体転移または結晶構造の変化によって、102℃の吸熱が起こることを裏付けた。
【0073】
120℃で測定されたPXRDパターンは、160℃で測定されたものと同じであった。しかし、この試料を25℃に再び冷却した後は、PXRDパターンは、III型(−)−シス−FTCと同じであった。102℃より高温で存在し、162℃で融解するこの結晶型は、II型と同定された。I型材料についてのPXRDパターンは、151℃の融解温度まで変化しなかった。
【実施例7】
【0074】
熱力学的安定性分析
I、II、およびIII型(−)−シス−FTCについての融解データを、表Iにまとめて示す。このデータに基づいて、I型とII型との間の熱力学的関連が確立された。これらは、互変関係があり、算出された転移温度は、130℃である。
【0075】
【表2】

【0076】
これらの型の間の熱力学的安定性の関連を、図14にグラフとして描く。
【実施例8】
【0077】
溶解度
図14から、130℃より低温では、I型が最も安定な相であることが明らかである。したがって130℃より低温では、I型は、最も溶けにくい相である。25℃の水におけるI型の平衡溶解度は、0.482M(119mg/mL)であった。溶解度値が100mg/mLより大きい化合物は、非常に溶けやすいと考えられ、(−)−シス−FTCI型は、この範疇に属する。ここに述べた他の型の(−)−シス FTCは、I型よりも溶解度が大きいはずである。
【実施例9】
【0078】
結晶化研究
すべての結晶化研究に対する(−)−シス−FTCの出発材料は、PXRDによって決定される通り、I型(−)−シス−FTCであった。I型(−)−シス−FTCを、水、メタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、およびアセトンの溶液から再結晶させた。結晶化実験からのすべての試料を、PXRDおよびDSCで分析した。酢酸エチルおよびアセトンから結晶化した(−)−シス−FTCは、151℃および162℃で吸熱を示し、PXRDパターンは、I型(−)−シス−FTCのパターンと同じであった。
【0079】
I型の過飽和溶液(0.5g/mL)を、50℃で調製した。次いで、この溶液を、およそ2時間攪拌しながら室温に冷却した。沈殿した固体を、真空濾過し、風乾した。この固体を、HPLC、DSC、PXRD、およびTGAで分析した。この分析では、この固体が、(±)−シス−FTCの1.5水和物であることが明らかになった。25℃でのこの1.5水和物の平衡溶解度は、0.34M(93mg/mL)である。この水和物のDSCサーモグラムを、図12に示す。低温での大きな吸熱は、(±)−シス−FTC 1.5水和物からの水和物の水の損失によるものであり、これは、TGAによって裏付けられた(図13)。190℃での吸熱は、この脱水された水和物の融解によるものであった。この脱水された水和物は、続いて、約190℃の特有の融解温度が特定された(図12)。この脱水された水和物について、特有のPXRDパターンも得られた。(図11参照)
薬剤組成物
患者に、有効量の本発明の種々の化合物(すなわちIIおよびIII型(−)−シス FTC、ラセミ体のシス−FTC 1.5水和物、およびラセミ体のシス−FTC 1.5水和物の脱水された型)、あるいはそれの薬剤として許容されるプロドラッグまたは塩を、薬剤として許容される担体または希釈剤の存在下で投与することによって、HIVおよびHBVを患うヒトを治療することができる。これらの活性な材料は、例えば液体または固体の形で、経口的に、非経口的に、または静脈内になど、どんな適切な経路によっても投与することができる。
【0080】
HIVまたはHBVのための本化合物の好ましい用量は、1日あたり約1〜75mg/kg(体重)、好ましくは1〜50または20mg/kg(体重)、より一般には1日あたりレシピエントの体重(キログラム)あたり0.1〜約100mgの範囲となる。薬剤として許容される塩およびプロドラッグの有効な投薬量範囲は、送達される親ヌクレオシドの重量に基づいて計算することができる。塩またはプロドラッグがそれ自体で活性を示す場合、有効な投薬量は、塩またはプロドラッグの重量を用いて上のように、あるいは当分野の技術者に知られた他の手段によって推定することができる。
【0081】
本化合物は、好都合には、それだけには限らないが、単位剤形あたり7〜3000mg、好ましくは70〜1400mgの活性成分を含有するものを含めて、どんな適当な投薬単位の形でも投与される。通常、50〜1000mgの経口投薬が、好都合である。
【0082】
理想的には、活性成分は、約0.2〜70μM、好ましくは約1.0〜10μMの、活性な化合物のピーク血漿濃度が得られるように投与されるべきである。これは、例えば活性成分の0.1〜5%溶液(場合によっては生理食塩水溶液)の静脈内注射によって実現することができる、あるいは活性成分のボーラスとして投与することができる。
【0083】
薬物組成物中の活性な化合物の濃度は、薬物の吸収、不活性化、および排出速度、ならびに当分野の技術者に知られている他の要因に応じて変わることとなる。投薬量の値は、軽減されるべき状態の重症度に伴って変わることにも留意するべきである。さらに、どんな特定の対象に対しても、具体的な投薬レジメンは、個人の必要性および組成物を投与する、あるいは組成物の投与を監督する人物の専門的判断に従って経時的に調整されるべきであること、また、ここで述べた濃度範囲は、例示的なものに過ぎず、主張する組成物の範囲または実施を制限するものではないことを理解されたい。活性成分は、一度に投与してもよいし、いくつかのより少ない用量に分けて、様々な間隔をおいて投与してもよい。
【0084】
活性な化合物の好ましい投与の方式は、経口である。経口用組成物は、一般に、不活性な希釈剤または可食担体を含むこととなる。これらは、ゼラチンカプセルに包まれていても、錠剤に圧縮されていてもよい。治療目的の経口投与のために、活性な化合物を、賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセル剤の形で使用することができる。組成物の一部として、薬剤として適合性のある結合剤および/または補助物質を含めることもできる。
【0085】
錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチなどは、以下の成分、または同様の性質の化合物のどんなものも含有することが可能である:微結晶セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤(glidant);スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料などの着香料。投薬単位の形がカプセル剤である場合、これは、上の種類の材料の他に、脂肪油などの液体の担体を含有することが可能である。さらに、投薬単位の形は、例えば、砂糖、セラック、または他の腸溶性の薬剤のコーティングなど、投薬単位の物理的形状を修飾する様々な他の材料を含有することが可能である。
【0086】
本化合物は、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤(wafer)、チューインガムなどの成分として投与することができる。シロップ剤は、活性な化合物に加えて、甘味剤としてのスクロース、およびある種の保存剤、色素および着色料および着香料を含有することができる。
【0087】
本化合物あるいはその薬剤として許容されるプロドラッグまたは塩は、所望の作用を損なわない他の活性な材料と、あるいは、他のヌクレオシド化合物を含めて、抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬、または他の抗ウイルス薬など、所望の作用を補う材料と混合することも可能である。非経口、皮内、皮下、または局所適用のために使用される液剤または懸濁剤は、以下の成分を含むことが可能である:注射用の水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの無菌の希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩などの緩衝液;ならびに塩化ナトリウムまたはブドウ糖など、張性を調節するための薬剤。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、または複数回用量のバイアルに封入することができる。
【0088】
静脈内に投与する場合、好ましい担体は、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0089】
好ましい実施形態では、活性な化合物は、植込錠やマイクロカプセル送達システムを含めた制御放出製剤のように、体からの急速な排出から化合物を守ることとなる担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性であり、生体適合性であるポリマーが、使用可能である。こうした製剤を調製するための方法は、当分野の技術者には明らかであろう。これらの材料は、Alza Corporationから市販品として入手することができる。
【0090】
(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的にするリポソームを含めて)リポソーム懸濁剤も、薬剤として許容される担体として好ましい。これは、当分野の技術者に知られている方法、例えば、米国特許第4,522,811号(その全体を参照によって本明細書に組み込む)に記載されている通りの方法に従って調製することができる。例えば、リポソーム調合物は、無機溶媒(その後蒸発させる)に1種または複数の適切な脂質(ステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラカドイルホスファチジルコリン、およびコレステロールなど)を溶解し、容器の表面に乾燥した脂質の薄膜を残すことによって調製することができる。次いで、活性な化合物またはその一リン酸、二リン酸、および/または三リン酸誘導体の水溶液を、この容器に導入する。次いで、この容器を手で回して脂質材料を容器の側面から外し、脂質集合体を分散させ、それによって、リポソーム懸濁剤を形成させる。
【0091】
本出願全体を通して、様々な刊行物を、参考文献として載せてきた。これらの刊行物の開示全体を、ここで、本発明に関する技術の様式をより十分に述べるために、参照により本出願に組み込む。
【0092】
当分野の技術者には、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、本発明を様々に変更および変形できることは明白であろう。本発明の他の実施形態も、ここで開示した本発明の詳細および実施を考慮すれば、当分野の技術者には明白であろう。本発明の真の範囲および趣旨は、頭記の特許請求の範囲によって示され、明細書および実施例は例示的なものに過ぎないと考えられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折パターンにおいて示される特性ピークの角度位置(2θ)が、
a)14.7°±0.1°、16.7°±0.1°、19.6°±0.1°、21.1°±0.1°、21.8°±0.1°、24.6°±0.1°、および25.6°±0.1°(II型(−)−シス−FTC)、または
b)14.5°±0.1°、16.7°±0.1°、19.6°±0.1°、20.4°±0.1°、21.4°±0.1°、21.7°±0.1°、25.2°±0.1°、および26.2°±0.1°(III型(−)−シス−FTC)
である(−)−シス−FTCの結晶多形化合物。
【請求項2】
II型(−)−シス−FTCである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
III型(−)−シス−FTCである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
実質上純粋なII型(−)−シス−FTCである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
純度が少なくとも97%である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
実質上純粋なIII型(−)−シス−FTCである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
純度が少なくとも97%である請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
粉末X線回折パターンにおいて示される特性ピークの角度位置(2θ)が、
a)14.7°±0.1°、16.7°±0.1°、19.6°±0.1°、21.1°±0.1°、21.8°±0.1°、24.6°±0.1°、および25.6°±0.1°(II型(−)−シス−FTC)、または
b)14.5°±0.1°、16.7°±0.1°、19.6°±0.1°、20.4°±0.1°、21.4°±0.1°、21.7°±0.1°、25.2°±0.1°、および26.2°±0.1°(III型(−)−シス−FTC)
である(−)−シス−FTCの結晶多形化合物、と薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項9】
a)粉末X線回折パターンにおいて示される特性ピークの角度位置(2θ)が、14.1°±0.1°、19.9°±0.1°、20.2°±0.1°、20.6°±0.1°、21.0°±0.1°、22.4°±0.1°、28.5°±0.1°、29.5°±0.1°、および32.6°±0.1°であるI型(−)−シス−FTCを融解すること、および
b)融解した(−)−シス−FTCを再結晶させること
を含む方法によって調製された多形型の(−)−シス−FTC。
【請求項10】
方法が、再結晶させたFTCを約96℃より低温に冷却することをさらに含む、請求項9に記載の多形型の(−)−シス−FTC。
【請求項11】
粉末X線回折パターンにおいて示される特性ピークの角度位置(2θ)が、14.7°±0.1°、16.7°±0.1°、19.6°±0.1°、21.1°±0.1°、21.8°±0.1°、24.6°±0.1°および25.6°±0.1°である(−)−シス−FTCのII型多形体を、約96℃より低温に冷却することを含む方法によって調製された多形型の(−)−シス−FTC。
【請求項12】
粉末X線回折パターンにおいて示される特性ピークの角度位置(2θ)が、14.5°±0.1°、16.7°±0.1°、19.6°±0.1°、20.4°±0.1°、21.4°±0.1°、21.7°±0.1°、25.2°±0.1°、および26.2°±0.1°である(−)−シス−FTCのIII型多形体を、約112℃より高温に加熱することを含む方法によって調製された多形型の(−)−シス−FTC。
【請求項13】
a)粉末X線回折パターンにおいて示される特性ピークの角度位置(2θ)が、14.1°±0.1°、19.9°±0.1°、20.2°±0.1°、20.6°±0.1°、21.0°±0.1°、22.4°±0.1°、28.5°±0.1°、29.5°±0.1°、および32.6°±0.1°であるI型(−)−シス−FTCを融解すること、および
b)融解した(−)−シス−FTCを再結晶させること
を含む、多形型の(−)−シス−FTCを調製する方法。
【請求項14】
再結晶させたFTCを約96℃より低温に冷却することをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
粉末X線回折パターンにおいて示される特性ピークの角度位置(2θ)が、14.7°±0.1°、16.7°±0.1°、19.6°±0.1°、21.1°±0.1°、21.8°±0.1°、24.6°±0.1°および25.6°±0.1°である(−)−シス−FTCのII型多形体を約96℃より低温に冷却することを含む、多形型の(−)−シス−FTCを調製する方法。
【請求項16】
粉末X線回折パターンにおいて示される特性ピークの角度位置(2θ)が、14.5°±0.1°、16.7°±0.1°、19.6°±0.1°、20.4°±0.1°、21.4°±0.1°、21.7°±0.1°、25.2°±0.1°、および26.2°±0.1°である(−)−シス−FTCのIII型多形体を約112℃より高温に加熱することを含む、多形型の(−)−シス−FTCを調製する方法。
【請求項17】
a)第1の結晶型の(±)−シス−FTCを水に溶解すること、および
b)溶解した(±)−シス−FTCを再結晶させること
を含む方法によって調製された結晶型の(±)−シス−FTC。
【請求項18】
再結晶させた(±)−シス−FTCを脱水することをさらに含む、請求項17に記載の結晶型の(±)−シス−FTC。
【請求項19】
第1の結晶型の(±)−シス−FTCが、(−)または(+)鏡像異性体を最高で98%含むシス−FTCの組成物中に存在する、請求項17に記載の結晶型の(±)−シス−FTC。
【請求項20】
(±)−シス−FTC 1.5水和物。
【請求項21】
実質上純粋な型の(±)−シス−FTC 1.5水和物。
【請求項22】
純度が少なくとも97%である(±)−シス−FTC 1.5水和物。
【請求項23】
(±)−シス−FTC 1.5水和物と薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項24】
脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物。
【請求項25】
実質上純粋な型の脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物。
【請求項26】
純度が少なくとも97%の脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物。
【請求項27】
脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物と薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項28】
粉末X線回折パターンにおいて示される特性ピークの角度位置(2θ)が、11.5°±0.1°、13.4°±0.1°、19.1°±0.1°、20.3°±0.1°、20.8°±0.1°、21.5°±0.1°、21.9°±0.1°、および30.9°±0.1°である結晶型の(±)−シス−FTC。
【請求項29】
粉末X線回折パターンにおいて示される特性ピークの角度位置(2θ)が、12.3°±0.1°、14.0°±0.1°、20.7°±0.1°、22.6°±0.1°、23.3°±0.1°、および25.5°±0.1°である結晶型の(±)−シス−FTC。
【請求項30】
a)第1の結晶型の(±)−シス−FTCを水に溶解すること、および
b)溶解した(±)−シス−FTCを再結晶させること
を含む、結晶型の(±)−シス−FTCを調製する方法。
【請求項31】
再結晶させた(±)−シス−FTCを脱水することをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1の結晶型の(±)−シス−FTCが、(−)または(+)鏡像異性体を最高で98%含むシス−FTCの組成物中に存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
非晶質(−)−シス−FTC。
【請求項34】
実質上純粋な型の非晶質(−)−シス−FTC。
【請求項35】
純度が少なくとも97%である非晶質(−)−シス−FTC。
【請求項36】
非晶質(−)−シス−FTCと薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項37】
a)(−)−シス−FTCを融解すること、および
b)再結晶を防止するために融解物を急冷すること
を含む、非晶質(−)−シス−FTCを調製する方法。
【請求項38】
非晶質(−)−シス−FTCを約96℃より低温に冷却することをさらに含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
HIVに悩む患者に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、HIVを治療する方法。
【請求項40】
HBVに悩む患者に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、HBVを治療する方法。
【請求項41】
HIVに悩む患者に治療有効量の(±)−シス−FTC 1.5水和物、脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物、または非晶質(−)−シス−FTCを投与することを含む、HIVを治療する方法。
【請求項42】
HIVに悩む患者に治療有効量の(±)−シス−FTC 1.5水和物、脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物、または非晶質(−)−シス−FTCを投与することを含む、HIVを治療する方法。
【請求項43】
HIV治療用の医薬品の製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項44】
HBV治療用の医薬品の製造における請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項45】
HIV治療用の医薬品の製造における、(±)−シス−FTC 1.5水和物、脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物、または非晶質(−)−シス−FTCの使用。
【請求項46】
HBV治療用の医薬品の製造における、(±)−シス−FTC 1.5水和物、脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物、または非晶質(−)−シス−FTCの使用。
【請求項47】
請求項1に記載の化合物を含む、HIVを治療するための薬剤組成物。
【請求項48】
請求項1に記載の化合物を含む、HBVを治療するための薬剤組成物。
【請求項49】
(±)−シス−FTC 1.5水和物、脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物、または非晶質(−)−シス−FTCを含む、HIVを治療するための薬剤組成物。
【請求項50】
(±)−シス−FTC 1.5水和物、脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物、または非晶質(−)−シス−FTCを含む、HBVを治療するための薬剤組成物。
【請求項51】
請求項1に記載の化合物を含む、HIVの治療に使用される薬剤組成物。
【請求項52】
請求項1に記載の化合物を含む、HBVの治療に使用される薬剤組成物。
【請求項53】
(±)−シス−FTC 1.5水和物、脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物、または非晶質(−)−シス−FTCを含む、HIVの治療に使用される薬剤組成物。
【請求項54】
(±)−シス−FTC 1.5水和物、脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物、または非晶質(−)−シス−FTCを含む、HBVの治療に使用される薬剤組成物。
【請求項55】
請求項1に記載の化合物を含む薬剤組成物の、HIVの治療における使用。
【請求項56】
請求項1に記載の化合物を含む薬剤組成物の、HBVの治療における使用。
【請求項57】
(±)−シス−FTC 1.5水和物、脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物、または非晶質(−)−シス−FTCを含む薬剤組成物の、HIVの治療における使用。
【請求項58】
(±)−シス−FTC 1.5水和物、脱水された(±)−シス−FTC 1.5水和物、または非晶質(−)−シス−FTCを含む薬剤組成物の、HBVの治療における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−40192(P2013−40192A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229555(P2012−229555)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2009−97656(P2009−97656)の分割
【原出願日】平成14年3月1日(2002.3.1)
【出願人】(501345390)ギリード・サイエンシズ・インコーポレーテッド (17)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】