説明

多形性形態

【課題】様々な状態の治療、特に慢性閉塞性肺疾患などの炎症状態の治療に有用である多形体を提供すること。
【解決手段】本発明は、本明細書で定義されているN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態Bに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形体ならびにそのような多形体を含む医薬組成物およびそのような多形体を製造するための方法に関する。さらに、本発明は、様々な状態の治療、特に慢性閉塞性肺疾患などの炎症状態の治療における多形体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素は、構造式(I)
【0003】
【化1】

を有し、WO−A−06/018718に開示されている(147ページ、19〜20行目を参照)。この化合物は、p38MAPキナーゼの阻害薬であると開示されている化合物類のうちの1つであり、したがって、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などのアレルギー性および非アレルギー性の気道疾患の治療に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO−A−06/018718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある化合物を薬物として開発しようとする場合、確実に調製し大規模に精製することができ、安定であり、保存時に分解しない化合物の形態(原薬として一般に知られている)を提供することが重要である。そのような特徴は、普通、結晶性で高融点である原薬において見いだされ、高融点の結晶性固体は、再結晶による精製が容易であり、保存時に安定であるという傾向がある。さらに、原薬は、意図する投与経路に従って選択される剤形での製剤化に適していなければならない。吸入に適している乾燥粉末として製剤化する場合、非吸湿性は、良好な流動特性を得るために特に重要である。ラクトースおよびデンプンなどの吸入分野における従来型の賦形剤との適合性は、さらなる必須要件である。さらに、原薬は、通常、吸入に適している粒径を得るために処理を必要となり、いかなる結晶性形態も、最終製品の特性が予測でき、かつ確実なものであるように、そのような処理中に安定でなければならない。手短に言えば、ある化合物が薬物としての商品化に適しているか否かは、意図する投与経路に従って決定される特性の独特な組合せを有する化合物の形態を見いだすことに左右される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
今回、乾燥粉末製剤で投与するのを理想とする独特な特徴を有する形態Bとして知られているN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の結晶性形態を調製することが可能になった。この多形体は、高度に結晶性であり、約226℃の融点を有し、本質的に非吸湿性であり、結晶性形態のいかなる変化も引き起こすことなくジェットミリングにより微粉化することができる。この多形体は、低エネルギー多形体であり、この化合物のいかなる他の多形性形態および水和/溶媒和形態にも容易に変わることはない。さらに、この多形体は、ラクトース一水和物とブレンドされて熱および湿度の侵攻的な条件下に保存された場合に良好な安定性を示し、ラクトースブレンドは、標準的な乾燥粉末インヘイラーと併せて使用される場合に十分エアロゾル化する。
【0007】
したがって、本発明は、第一の態様において、N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態Bを提供する。
【0008】
さらに、本発明は、医薬品として使用するためのN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態B、TNF媒介性またはp38媒介性疾患を治療するのに使用するためのN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態B、TNF媒介性またはp38媒介性疾患を治療するための医薬品を製造するためのN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態Bの使用、N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態Bおよび薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物、N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態Bを含むTNF媒介性またはp38媒介性疾患を治療するための医薬組成物、ならびに哺乳動物においてTNF媒介性またはp38媒介性疾患を治療する方法であって、それを必要としている哺乳動物に、治療有効量のN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態Bを投与することを含む方法を提供する。好ましい疾患は、喘息およびCOPDなどの炎症性呼吸器疾患、特にCOPDである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】形態AについてのPXRDパターンを示したものである。
【図2】形態BについてのPXRDパターンを示したものである。
【図3】形態AについてのDSCサーモグラムを示したものである。
【図4】形態BについてのDSCサーモグラムを示したものである。
【図5】形態Aの熱重量分析から得られる減量曲線を示したものである。
【図6】形態Bの熱重量分析から得られる減量曲線を示したものである。
【図7】形態AについてのFT−IRスペクトルを示したものである。
【図8】形態BについてのFT−IRスペクトルを示したものである。
【図9】形態AについてのFT−ラマンスペクトルを示したものである。
【図10】形態BについてのFT−ラマンスペクトルを示したものである。
【図11】形態A、形態Bおよび非晶性材料についての13C SSNMRスペクトルを示したものである(上は非晶性、中央は形態B、下は形態A)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素が、例えばWO−A−06/018718に記載されている経路を用いて調製される場合、非晶性形態または形態Aとして知られている結晶性形態のどちらかで得られる。標準的な有機溶媒から非晶性形態を結晶化しても形態Aが得られる。しかしながら、驚いたことに、我々は、形態Aが、この化合物の唯一の結晶性形態ではないことを見いだした。特別に開発した条件を用い、形態Aを、形態Bとして知られている第二の結晶性形態に変換することができる。さらに、形態Bは、乾燥粉末製剤で投与するのに理想的な原薬とする特に望ましい特性を有するこの化合物のより安定な低エネルギー形態である。
【0011】
形態Aを形態Bに変換するためには、少なくとも95%の純度を有する形態Aの結晶を取得し、それらを長時間にわたって有機溶媒中で還流する必要がある。変換の進行は、粉末X線回折などの以下に記載される標準的な技法に従ってサンプルを分析することによりモニターすることができる。完全な変換には少なくとも12時間の反応時間、典型的には、12〜48時間の反応時間が必要とされるが、この反応は、形態B生成物の種結晶を加えることにより加速することができる。しかしながら、種の使用は、反応の成功にとって不可欠ではない。一方、出発材料の純度は、重要な要素である。より低い純度(例えば、70〜80%)を有する形態Aが同一条件にさらされる場合、変換は起こらないであろうし、生成物は、変化していない形態Aになるであろう。反応が、種の存在下で長い反応時間にさらされる場合であっても同様である。必要な純度を有する形態Aのサンプルは、様々な有機溶媒からの単純な再結晶により調製することができる。高温の使用も、低温における形態Aの再結晶が形態Bへの変換をもたらさないことから重要である。この反応は、典型的には、約60℃を超える沸点(大気圧において)を有する有機溶媒の還流温度にて行われる。メタノールが好ましい溶媒である。
【0012】
したがって、本発明は、N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素形態Bを調製するための方法であって、約60℃を超える沸点を有する有機溶媒中、還流状態で、少なくとも95%純度のN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素形態Aのスラリーを加熱することを含む方法も提供する。
【0013】
N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素は、WO−A−06/018718の29および30ページに開示されているように、クロロギ酸フェニルなどのカルボニル源および関連アミノ成分で尿素基を構築することにより調製することができる。好ましい方法を下のスキーム1に記載するが、式中、Phは、フェニルであり、PとPは共に、適当な酸素保護基である。そのような適当な酸素保護基の例は、Theodora GreeneおよびPeter Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」(第3版、1999年、John Wiley & Sons)中に見いだすことができる。好ましい保護基は、トリ(C〜C)アルキルシリル基である。PとPは共に、トリ−イソプロピルシリルであることが最も好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
スキーム1に示すように、式(I)の化合物は、式(V)の化合物を脱保護することにより調製することができる。PおよびPについて行われる選択に従って選択しなければならない適当な条件は、上記で言及した「Protective Groups in Organic Synthesis」に記載されている。例えば、PとPが共に、トリ−イソプロピルシリルである場合、メタノールなどの適当な有機溶媒中の式(V)の化合物の溶液を、好ましくは約50℃などの高温にて、塩酸などの酸で処理することができる。
【0016】
式(V)の化合物は、式(III)のカルバメートを式(IV)のアミンと反応させることにより調製することができる。典型的には、トルエンなどの適当な有機溶媒中の2つの反応剤の溶液を、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基で処理し、室温にて反応させる。
【0017】
式(III)の化合物は、式(II)のアミンをクロロギ酸フェニルと反応させることにより調製することができる。典型的には、酢酸エチルなどの適当な溶媒中の式(II)の化合物の溶液を、クロロギ酸フェニルおよび重炭酸ナトリウムなどの塩基で処理する。
【0018】
式(II)の化合物は、下のスキーム2に記載されている経路により調製することができ、式中、Pは、適当な酸素保護基である。適当な酸素保護基の例は、Theodora GreeneおよびPeter Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」(第3版、1999年、John Wiley & Sons)中に見いだすことができる。好ましい保護基は、トリ(C〜C)アルキルシリル基である。Pは、トリ−イソプロピルシリルであることが最も好ましい。
【0019】
【化3】

【0020】
式(II)の化合物は、式(VIII)のヨウ化物を式(IX)のピラゾールとカップリングさせることにより調製することができる。典型的には、トルエンなどの適当な有機溶媒中の反応剤の溶液を、ヨウ化銅(I)/トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンなどの有機金属触媒および炭酸カリウムなどの塩基で処理し、例えば、約111℃まで加熱する。
【0021】
式(VIII)の化合物は、式(VII)の化合物中のヒドロキシル基を保護することにより調製することができる。Pについて行われる選択に従って選択しなければならない適当な条件は、上記で言及した「Protective Groups in Organic Synthesis」に記載されている。例えば、Pが、トリ−イソプロピルシリルである場合、トルエンなどの適当な有機溶媒中の式(VII)の化合物の溶液を、トリ−イソプロピルシリルクロリドおよびトリエチルアミンなどの塩基で処理することができる。
【0022】
式(VII)の化合物は、2−クロロフェノールのヨウ素化により調製することができる。典型的には、適当な有機溶媒中の2−クロロフェノールの溶液を、ヨウ化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムの混合物で処理する。
【0023】
式(IV)の化合物は、下のスキーム3に記載されている経路により調製することができ、式中、Pは、適当な酸素保護基である。適当な酸素保護基の例は、Theodora GreeneおよびPeter Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」(第3版、1999年、John Wiley & Sons)中に見いだすことができる。好ましい保護基は、トリ(C〜C)アルキルシリル基である。Pは、トリ−イソプロピルシリルであることが最も好ましい。
【0024】
【化4】

【0025】
式(IV)の化合物は、求核置換に対する式(XV)の化合物のヒドロキシル基の活性化およびアンモニアによる置換により調製することができる。典型的手順では、トルエンなどの適当な有機溶媒中の式(XV)の化合物の溶液を、ヒドロキシル基を活性化するために、メタンスルホン酸無水物などの活性化剤およびトリエチルアミンなどの塩基で処理する。次いで、反応混合物を、アンモニア、好ましくはメタノール中のアンモニアの溶液で処理する。
【0026】
式(XV)の化合物は、式(XIII)の化合物中の臭化物原子を(2−スルファニルフェニル)メタノールで置換することにより調製することができる。反応は、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)などの遷移金属錯体により触媒される。典型的手順では、トルエンなどの適当な有機溶媒中の式(XIII)の化合物の溶液またはスラリーを、(2−スルファニルフェニル)メタノール、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)およびナトリウムtert−ブチルオキシドなどの塩基で処理し、例えば、約111℃まで加熱する。
【0027】
式(XIII)の化合物は、式(XIV)の化合物中のヒドロキシル基を保護することにより調製することができる。Pについて行われる選択に従って選択しなければならない適当な条件は、上記で言及した「Protective Groups in Organic Synthesis」に記載されている。例えば、Pが、トリ−イソプロピルシリルである場合、2−メチルテトラヒドロフランなどの適当な有機溶媒中の式(XIV)の化合物の溶液またはスラリーを、トリ−イソプロピルシリルクロリドおよびイミダゾールなどの塩基で処理することができる。反応物は、約50℃にて加熱されることが好ましい。
【0028】
式(XIV)の化合物は、式(XII)の化合物の環化により調製することができる。環化は、ジクロロメタンなどの適当な溶媒中の式(XII)の化合物の溶液を、ジアセトキシヨードベンゼンおよびメタノールで処理することにより行われることが好ましい。
【0029】
式(XII)の化合物は、式(XI)のアルデヒドを5−ブロモピリジン−2−イルヒドラジンと縮合させることにより調製することができる。ヒドラジンは、WO−A−06/018718に記載されている手順を用いて調製することができる(調製25を参照)。典型的には、プロピオニトリルなどの適当な有機溶媒中の反応剤の溶液を、例えば、約85℃にて加熱する。
【0030】
式(XI)の化合物は、2−フルオロベンズアルデヒドのフッ素原子を2−メルカプトエタノールで置換することにより調製することができる。典型的には、プロピオニトリルなどの適当な有機溶媒中の反応剤の溶液を、炭酸カリウムなどの塩基で処理し、反応混合物を、約85℃にて加熱する。
【0031】
本発明は、本発明により提供されるN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態Bのすべての同位体標識形態を包含する。同位体標識形態において、1個または複数の原子は、同じ原子番号であるが、天然において優位を占める原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する1つまたは複数の原子により置き換えられている。
【0032】
適当な同位体は、HおよびHなどの水素、11C、13Cおよび14Cなどの炭素、13Nおよび15Nなどの窒素、15O、17Oおよび18Oなどの酸素、ならびに35Sなどのイオウの同位体を包含する。放射性同位体を組み入れている化合物などの特定の同位体標識化合物は、薬物および/または基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体であるトリチウム、すなわちH、および炭素−14、すなわち14Cは、それらを組み入れる容易さおよびそれらを検出する手段が用意されていることに鑑みてこの目的に特に有用である。重水素、すなわちHなどのより重い同位体による置換は、より大きな代謝安定性に由来する特定の治療上の利点、例えば、in vivo半減期の増加または用量要件の軽減を提供することがあるため、一部の環境において好ましいことがある。11C、18F、15Oおよび13Nなどのポジトロン放出同位体による置換は、基質受容体占有を調べるためのポジトロン放出断層撮影(PET)研究において有用なことがある。同位体標識化合物は、一般的に、当業者に知られている従来技法により、またはこれまでに用いた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用い、添付の実験の項に記載されているプロセスに類似したプロセスにより調製することができる。
【0033】
本発明により提供されるN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態Bは、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(p38MAPキナーゼ)、特にp38αMAPキナーゼの阻害薬であり、その結果として、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−8(IL−8)および腫瘍壊死因子(TNF)の産生を阻害する。この多形性形態Bは、以下の状態、すなわち、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の治療可能な閉塞性、拘束性または炎症性気道疾患、特に、
〇喘息、特に、アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性気管支IgE媒介性喘息、非アトピー性喘息、気管支喘息、非アレルギー性喘息、本態性喘息、真性(true)喘息、病態生理学的障害により引き起こされる内因性喘息、原因不明もしくは原因不顕性の本態性喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、感情誘発性喘息、環境因子により引き起こされる外因性喘息、冷気誘発性喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原虫、もしくはウイルス感染により引き起こされるか、またはそれらに関連した感染型喘息、初発性喘息、喘鳴幼児症候群、細気管支炎、咳喘息または薬物誘発性喘息、
○環境要因に対する気管支過敏反応性、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の鼻炎または副鼻腔炎、特に、季節性アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎、通年性鼻炎、血管運動神経性鼻炎、後鼻漏、化膿性もしくは非化膿性副鼻腔炎、急性もしくは慢性副鼻腔炎および篩骨、前頭、上顎、もしくは蝶形骨副鼻腔炎、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性閉塞性肺疾患(COLD)、慢性閉塞性気道疾患(COAD)または小気道閉塞、特に、慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症、嚢胞性線維症、閉塞性細気管支炎、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、慢性器質化肺炎(COP)、閉塞性線維性細気管支炎、濾胞性細気管支炎またはそれらに伴う呼吸困難、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の気管支炎、特に、急性気管支炎、急性喉頭気管性気管支炎、アラキン酸気管支炎、カタル性気管支炎、クループ性気管支炎、慢性気管支炎、乾性気管支炎、感染性喘息性気管支炎、湿咳性気管支炎、ブドウ球菌性またはレンサ球菌性気管支炎および肺胞性気管支炎、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の気管支拡張症、特に、円柱状気管支拡張症、嚢状気管支拡張症、紡錘状(fusiform)気管支拡張症、毛細管性気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、嚢胞性線維症、カルタゲナー症候群、乾性気管支拡張症または濾胞性気管支拡張症、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の肺好酸球性症候群、特に、急性好酸球性肺炎(特発性または薬物もしくは寄生虫に起因する)、単純性肺好酸球増加症、レフラー症候群、熱帯性肺好酸球増加症、慢性好酸球性肺炎、アレルギー性気管支肺真菌症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、チャーグ−シュトラウス症候群または特発性好酸球増加症候群、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の間質性肺疾患(ILD)または肺線維症、特に、特発性肺線維症、特発性線維化性肺胞炎、線維化性肺胞炎、結合組織疾患(全身性エリテマトーデス、混合性結合組織疾患、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、強皮症、関節リウマチ)に伴うILDもしくは肺線維症、通常型間質性肺炎(UIP)、剥離性間質性肺炎(DIP)、肉芽腫性肺疾患、サルコイドーシス、ウェジナー肉芽腫症、ヒスチオサイトーシスX、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、過敏性肺臓炎、外因性アレルギー性肺胞炎、珪肺症、慢性好酸球性肺炎、リンパ脈管筋腫症、薬物誘発性ILDもしくは肺線維症、放射線誘発性ILDもしくは肺線維症、肺胞タンパク症、移植片対宿主疾患(GVHD)、肺移植拒絶、環境/職業暴露に起因するILDもしくは肺線維症、BOOP、COP、閉塞性線維性細気管支炎、濾胞性細気管支炎、特発性急性間質性肺臓炎(ハマンリッチ症候群)または肺胞出血症候群、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の塵肺症、特に、アルミニウム肺症もしくはボーキサイト労働者病、炭粉症もしくは坑夫喘息、進行性塊状線維症(PMF)、石綿沈着症もしくは蒸気管修繕人喘息、石粉症もしくは石灰肺、ダチョウの羽からの粉塵を吸入することにより引き起こされるダチョウ塵肺症、鉄粒子の吸入により引き起こされる鉄沈着症、珪肺症もしくは塵埃病、綿肺症もしくは綿屑性喘息または滑石塵肺症、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、成人呼吸窮迫症候群または急性肺損傷、
○誤嚥性肺臓炎または誤嚥性肺炎につながるあらゆるタイプ、原因、または病因の誤嚥性障害、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の肺胞出血、特に、特発性肺ヘモジデリン沈着症、薬物もしくは他の外因性要因に起因する肺胞出血、HIVもしくは骨髄移植に伴う肺胞出血または自己免疫性肺胞出血(例えば、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ウェジナー肉芽腫症、顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ−シュトラウス症候群、少免疫(pauci−immune)型糸球体腎炎に伴う)からなる群のメンバー、
○急性または慢性の喉頭炎または咽頭炎、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の咳嗽、特に、特発性咳嗽または胃食道逆流疾患(GERD)、薬物、気管支過敏反応性、喘息、COPD、COLD、COAD、気管支炎、気管支拡張症、肺好酸球増加症候群、塵肺症、間質性肺疾患、肺線維症、誤嚥性障害、鼻炎、喉頭炎もしくは咽頭炎に伴う咳嗽
などの閉塞性、拘束性または炎症性気道疾患、
・あらゆる原因のアナフィラキシーおよび1型過敏性反応、
・あらゆるタイプ、原因、または病因のアトピー性、アレルギー性、自己免疫性または炎症性皮膚障害、特に、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性もしくはアトピー性湿疹、扁平苔癬、肥満細胞症、結節性紅斑、多形性紅斑、良性家族性天疱瘡、紅斑性天疱瘡、落葉状天疱瘡、および尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、疱疹状皮膚炎、乾癬、免疫媒介性蕁麻疹、補体媒介性蕁麻疹、蕁麻疹誘発材料誘発性蕁麻疹、物理的因子誘発性蕁麻疹、ストレス誘発性蕁麻疹、特発性蕁麻疹、急性蕁麻疹、慢性蕁麻疹、血管性浮腫、コリン性蕁麻疹、常染色体優性型または後天性型の寒冷蕁麻疹、接触性蕁麻疹、巨大蕁麻疹または丘疹性蕁麻疹、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の結膜炎、特に、照射性結膜炎、急性カタル性結膜炎、急性流行性結膜炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性結膜炎、慢性カタル性結膜炎、化膿性結膜炎または春季カタル、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の多発性硬化症、特に、原発性進行性多発性硬化症または寛解しつつある多発性硬化症の再発、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の自己免疫性/炎症性疾患、特に、自己免疫性血液障害、溶血性貧血、再生不良性貧血、真正赤血球性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、全身性硬化症、リウマチ性多発性筋痛、皮膚筋炎、多発性筋炎、多発性軟骨炎、ウェジナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、スティーヴンス−ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、内分泌性眼病、グレイヴス病、サルコイドーシス、肺胞炎、慢性過敏性肺臓炎、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病もしくはI型糖尿病、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、ネフローゼ症候群を伴う、および伴わない糸球体腎炎、急性糸球体腎炎、特発性ネフローゼ症候群、微小変化型腎症、間質性肺疾患および/または肺線維症に伴う自己免疫障害または自己免疫性もしくは炎症性皮膚障害、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の炎症性腸疾患(IBD)、特に、膠原性大腸炎、ポリープ性大腸炎、全層性大腸炎、潰瘍性大腸炎またはクローン病(CD)、
・肺動脈高血圧症、肺静脈高血圧症、呼吸器系の障害および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症、慢性血栓性および/または塞栓性疾患に起因する肺高血圧症ならびに肺血管系に直接影響を及ぼす障害に起因する肺高血圧症を包含するあらゆるタイプ、原因、または病因の肺高血圧症、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の関節炎、特に、関節リウマチ、骨関節炎、痛風性関節炎、ピロリン酸関節症、急性石灰化関節周囲炎、慢性炎症性関節炎、結合組織障害(例えば、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性硬化症、強皮症)に伴う関節炎、サルコイドーシス、リウマチ性多発性筋痛、変性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、頸部脊椎症、脊椎関節炎、若年性関節炎(スティル病)、アミロイド症、強直性脊椎骨増殖症(フォレステイル病)、ベーチェット病、薬物誘発性関節炎、家族性地中海熱、運動過剰症候群、離断性骨軟骨症、骨軟骨腫症、回帰性リウマチ、色素性絨毛結節性滑膜炎、再発性多発性軟骨炎、顎関節疼痛機能障害症候群または高脂血症に伴う関節炎、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の好酸球関連障害、特に、肺好酸球増加症候群、アスペルギルス腫、好酸球を含有する肉芽腫、アレルギー性肉芽腫性血管炎すなわちチャーグ−シュトラウス症候群、結節性多発性動脈炎(PAN)または全身性壊死性血管炎、
・あらゆるタイプ、原因、または病因のブドウ膜炎、特に、ブドウ膜のすべてまたは一部の炎症、前部ブドウ膜炎、虹彩炎、毛様体炎、虹彩毛様体炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、脈絡膜炎または脈絡網膜炎、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の敗血症性ショック、
・骨粗鬆症および骨減少症を包含する骨の沈着/吸収の障害、
・リンパ増殖性障害(例えば、リンパ腫、骨髄腫)
・HIVまたはAIDS関連障害
・感染症、特にHIV−1、HIV−2、およびHIV−3、サイトメガロウイルス(CMV)、インフルエンザ、アデノウイルスならびにヘルペスゾスター(Herpes zoster)およびヘルペスシンプレックス(Herpes simplex)を包含するヘルペスウイルスからなる群から選択されるメンバーであるウイルスを包含するウイルス(そのようなウイルスは、それらの宿主におけるTNF−αの産生を高めるか、またはそのようなウイルスは、それらの複製または他の生命活動が悪影響を受けるほどに、それらの宿主におけるTNF−αのアップレギュレーションに対して感受性である)に起因する感染症、
・酵母および真菌感染症(酵母または真菌は、TNF−αによるアップレギュレーションに感受性であるか、または宿主におけるTNF−α産生を誘発する)、例えば、特に、ポリミキシン(例えば、ポリミキシンB)、イミダゾール(例えば、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、およびケトコナゾール)、トリアゾール(例えば、フルコナゾールおよびイトラコナゾール)ならびにアンホテリシン(例えば、アンホテリシンBおよびリポソームのアンホテリシンB)を包含するがこれらに限定されない、全身性の酵母および真菌感染症を治療するための他の第一選択薬と併せて投与される場合の真菌性髄膜炎、
・例えば、結核菌(mycobacterium tuberculosis)に起因するマイコバクテリア感染症の治療に有用であることがある。
【0034】
本発明により提供されるN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態B(これからは、本発明の化合物と呼ばれる)は、単独で投与することができるが、一般的に、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤と併せた製剤として投与されるであろう。「賦形剤」という用語は、本明細書において、本発明の化合物以外の任意の成分を記載するために使用される。賦形剤の選択は、特定の投与様式、溶解性および安定性に対する賦形剤の影響、ならびに剤形の性質などの要素により大きく左右されるであろう。
【0035】
本発明の化合物を送達するのに適している医薬組成物およびそれらを調製するための方法は、当業者には容易に明らかであろう。そのような組成物およびそれらを調製するための方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company、1995年)中に見いだすことができる。
【0036】
本発明の化合物は、経口的に投与することができる。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように嚥下することを含むことがあり、または、化合物が口から直接血流に入る口腔もしくは舌下投与が用いられることがある。
【0037】
経口投与に適している製剤は、錠剤、微粒子剤、液剤、または散剤を含有するカプセル剤、ロゼンジ剤(液体入りを含む)、咀嚼剤(chews)、多粒子およびナノ粒子剤、ゲル剤、固溶体、リポソーム、フィルム剤、膣坐剤、噴霧剤などの固形製剤ならびに液状製剤を包含する。
【0038】
液状製剤は、懸濁剤、液剤、シロップ剤およびエリキシル剤を包含する。そのような製剤は、軟質または硬質カプセル剤における充填剤として用いることができ、典型的には、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適当な油、ならびに1種または複数の乳化剤および/または懸濁化剤を含む。液状製剤は、例えばサシェから、固体の再構成により調製することもできる。
【0039】
本発明の化合物は、LiangおよびChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents、11(6)、981〜986(2001年)に記載されている剤形などの速溶解性、速崩壊性剤形において使用することもできる。
【0040】
錠剤剤形の場合、投与量に応じて、本発明の化合物は、剤形の1重量%〜80重量%、より典型的には、剤形の5重量%〜60重量%を占めることがある。
【0041】
さらに、錠剤は、一般的に、崩壊剤を含有する。崩壊剤の例は、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムを包含する。一般的に、崩壊剤は、剤形の1重量%〜25重量%、好ましくは、5重量%〜20重量%を占めるであろう。
【0042】
一般的に、錠剤製剤に凝集性を付与するために結合剤も使用される。適当な結合剤は、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロースならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースを包含する。錠剤は、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水など)、マンニトール、キシリトール、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプンおよび第二リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤を含有することもある。
【0043】
また、錠剤は、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80などの界面活性剤、ならびに二酸化ケイ素およびタルクなどの流動促進剤を含んでいてもよい。存在する場合に、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%〜5重量%を占めることがあり、流動促進剤は、錠剤の0.2重量%〜1重量%を占めることがある。
【0044】
また、錠剤は、一般的に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物などの滑沢剤を含有する。滑沢剤は、一般的に、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは、0.5重量%〜3重量%を占める。
【0045】
他の可能な錠剤成分は、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、保存剤および味覚マスキング剤を包含する。
【0046】
例示的錠剤は、薬物約80%まで、結合剤約10重量%〜約90重量%、希釈剤約0重量%〜約85重量%、崩壊剤約2重量%〜約10重量%、および滑沢剤約0.25重量%〜約10重量%を含有する。
【0047】
錠剤ブレンドを、直接、またはローラー圧縮により圧縮し、錠剤を作製することができる。代替方法として、錠剤ブレンドまたはブレンドの一部を、打錠前に湿式、乾式、もしくは融解式造粒するか、融解式凝結させるか、または押し出すことができる。最終製剤は、1つまたは複数の層からなっていてよく、コーティングされていてもされていなくてもよく、カプセル化されてもよい。
【0048】
錠剤の製剤化は、H.LiebermanおよびL.LachmanによるPharmaceutical Dosage Forms:Tablets、第1巻(Marcel Dekker、New York、1980年)中で論じられている。
【0049】
本発明の化合物は、ヒト使用または動物使用のために消費できる経口フィルムの形態で経口的に投与することもできる。そのようなフィルムは、典型的には、速溶解性であるか、または粘膜付着性であってよい柔軟な水溶性または水膨潤性の薄膜剤形であり、典型的には、本発明の化合物、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定剤または乳化剤および粘度調整剤を含む。製剤の一部の成分は、2つ以上の機能を果たすことがある。
【0050】
フィルム形成ポリマーは、天然多糖、タンパク質、または合成親水コロイドから選択することができ、典型的には、0.01〜99重量%の範囲、より典型的には、30〜80重量%の範囲で存在する。
【0051】
他の可能なフィルム成分は、抗酸化剤、着色剤、香味料および調味料、保存剤、唾液刺激剤、冷却剤、共溶媒(油を包含する)、緩和薬、充填剤、消泡剤、界面活性剤および味覚マスキング剤を包含する。
【0052】
本発明によるフィルム剤は、典型的には、剥離可能な裏打用の支持体または紙の上にコーティングされた薄い水性フィルムを蒸発乾燥させることにより調製される。これは、乾燥炉またはトンネル乾燥機、典型的には、複合コーター乾燥機中で、または凍結乾燥もしくは真空乾燥により行うことができる。
【0053】
経口投与のための固形製剤は、即時放出および/または放出調節であるように製剤化することができる。放出調節は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。
【0054】
本発明の目的に適している放出調節製剤については、米国特許第6,106,864号に記載されている。高エネルギー分散剤ならびに浸透および被覆粒子剤などの他の適当な放出技術の詳細は、VermaらによるPharmaceutical Technology On−line、25(2)、1〜14(2001年)中に見いだすことができる。制御放出を実現するためのチューインガムの使用については、WO−A−00/35298に記載されている。
【0055】
本発明の化合物は、血流中、筋肉中、または内臓中に直接投与することもできる。そのような非経口投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内または皮下経路を介してであってよい。非経口投与に適している装置は、針(極微針を包含する)注射器、無針注射器および注入技法を包含する。
【0056】
非経口製剤は、典型的には、塩、炭水化物および緩衝剤(3〜9のpHが好ましい)などの賦形剤を含有してもよい水溶液であるが、一部の応用例については、滅菌非水溶液として製剤化するか、または滅菌した発熱物質を含まない水などの適当なビヒクルと併せて使用される乾燥形態として製剤化することがより適当である。
【0057】
無菌条件下、例えば、凍結乾燥による非経口製剤の調製は、当業者によく知られている標準的製薬技法を用いて容易に行うことができる。
【0058】
非経口投与のための製剤は、即時放出および/または放出調節であるように製剤化することができる。放出調節は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。すなわち、本発明の化合物は、本発明の化合物の放出調節を提供する埋込型デポー剤として投与するための固体、半固体、またはチキソトロピックな液体として製剤化することができる。そのような製剤の例は、薬物をコーティングしたステントおよびdl−乳酸/グリコール酸共重合体(poly(dl−lactic−coglycolic)acid)(PGLA)ミクロスフェアを包含する。
【0059】
本発明の化合物は、皮膚または粘膜へ局所的に、すなわち、経皮的に(dermally)または経皮的に(transdermally)投与することもできる。この目的に典型的な製剤は、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、散布剤、包帯剤、フォーム剤、フィルム剤、皮膚用パッチ剤、ウエハー剤、インプラント剤、スポンジ剤、ファイバー剤、絆創膏剤およびマイクロエマルジョン剤を包含する。リポソームも使用することができる。典型的な担体は、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールを包含する。透過促進剤を組み入れることができる。例えば、FinninおよびMorganによるJ.Pharm.Sci.、88(10)、955〜958(1999年10月)を参照されたい。
【0060】
局所投与の他の手段は、エレクトロポレーション、イオントフォレーシス、フォノフォレーシス、ソノフォレーシスおよび極微針または無針(例えば、Powderject(商標)、Bioject(商標))注射による送達を包含する。
【0061】
局所投与のための製剤は、即時放出および/または放出調節であるように製剤化することができる。放出調節は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。
【0062】
本発明の化合物は、鼻腔内に、または吸入により、典型的には、乾燥粉末インヘイラーから乾燥粉末(単独で、例えば、ラクトースとの乾燥ブレンドにおける混合物として、または、例えば、ホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合された混合成分粒子として)の形態で、または1,1,1,2−テトラフルオロエタンもしくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適当な噴射剤の使用の有無にかかわらず加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、細かい霧を発生するための電気流体力学を用いるアトマイザー)、もしくはネブライザーからのエアゾールスプレーとして投与することもできる。鼻腔内使用の場合、粉末は、生体接着剤、例えば、キトサンまたはシクロデキストリンを含むことがある。乾燥粉末インヘイラーからの乾燥粉末の形態での投与は、送達の特に好ましい形態である。
【0063】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザーまたはネブライザーは、例えば、エタノール、水性エタノールまたは活性物質の分散、可溶化もしくは延長放出のための適当な代替試剤、溶媒としての1種または複数の噴射剤およびソルビタントリオレエート、オレイン酸、またはオリゴ乳酸などの任意選択の界面活性剤を含む本発明の化合物の溶液または懸濁液を含有する。
【0064】
乾燥粉末または懸濁液製剤における使用に先立って、薬物製品は、吸入による送達に適しているサイズ(典型的には5ミクロン未満)まで微粉化される。これは、スパイラルジェットミリング、流動床ジェットミリング、ナノ粒子を形成するための超臨界流体プロセシング、高圧均質化または噴霧乾燥などの任意の適切な粉砕方法により行うことができる。
【0065】
インヘイラーまたはインサフレーターにおいて使用するためのカプセル剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製)、ブリスター剤およびカートリッジ剤は、本発明の化合物、ラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤およびl−ロイシン、マンニトールまたはステアリン酸マグネシウムなどの動作調整剤の粉末ミックスを含有するように製剤化することができる。ラクトースは、無水であるか、または一水和物の形態であってよく、後者であることが好ましい。他の適当な賦形剤は、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロースおよびトレハロースを包含する。
【0066】
細かい霧を発生するための電気流体力学を用いるアトマイザーにおいて使用するのに適している溶液製剤は、1動作につき本発明の化合物1μg〜20mgを含有することがあり、動作容積は、1μlから100μlまでと様々であってよい。典型的な製剤は、本発明の化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノールおよび塩化ナトリウムを含むことがある。プロピレングリコールの代わりに使用することができる代替溶媒は、グリセロールおよびポリエチレングリコールを包含する。
【0067】
吸入/鼻腔内投与を目的とする本発明のそれらの製剤には、メントールおよびレボメントールなどの適当な矯味剤、またはサッカリンもしくはサッカリンナトリウムなどの甘味料を添加することができる。
【0068】
吸入/鼻腔内投与のための製剤は、即時放出および/または、例えば、PGLAを用いる放出調節であるように製剤化することができる。放出調節は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。
【0069】
乾燥粉末インヘイラーおよびエアゾール剤の場合、用量単位は、一定量を送達するバルブによって決定することができる。全1日量は、1回量か、またはより一般的には、1日を通して分割量として投与することができる。
【0070】
本発明の化合物は、例えば、坐剤、膣坐薬または浣腸の形態で経直腸的または経膣的に投与することができる。カカオ脂は、伝統的な坐剤基剤であるが、必要に応じて様々な代替物を使用することができる。
【0071】
本発明の化合物は、眼または耳の経路により投与することもできる。
【0072】
本発明の化合物は、シクロデキストリンもしくは適当なその誘導体またはポリエチレングリコール含有ポリマーなどの可溶性高分子と混ぜ合わせ、前述の投与様式のいずれかにおいて使用するために、その溶解性、溶出速度、味覚マスキング、生物学的利用能および/または安定性を改善することができる。
【0073】
例えば、薬物−シクロデキストリン錯体は、大部分の剤形および投与経路にとって一般的に有用であることが判明している。包接錯体と非包接錯体の双方を使用することができる。薬物との直接錯体化の代替法として、シクロデキストリンを、補助添加剤として、すなわち担体、希釈剤、または可溶化剤として使用することができる。これらの目的のためにα−、β−およびγ−シクロデキストリンが最も一般的に使用され、その例は、WO−A−91/11172、WO−A−94/02518およびWO−A−98/55148中に見いだすことができる。
【0074】
ヒト患者への投与の場合に、本発明の化合物の全1日量は、典型的には、言うまでもなく投与様式に応じて、0.002mg〜100mg/kgの範囲になるであろう。全1日量は、1回量または分割量で投与することができ、医師の判断で、本明細書に示される典型的な範囲から外れることがある。
【0075】
誤解を避けるために、本明細書における「治療」への言及は、治癒的、姑息的および予防的治療への言及を包含する。
【0076】
本発明の化合物などのp38MAPキナーゼの阻害薬は、特に慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患の治療において、1種または複数の他の治療薬と組み合わせて有利に投与することができる。そのような他の治療薬の例は、(i)5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害薬または5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)拮抗薬、(ii)LTB、LTC、LTD、およびLTEの拮抗薬を包含するロイコトリエン拮抗薬(LTRA)、(iii)H、HおよびH拮抗薬を包含するヒスタミン受容体拮抗薬、(iv)鼻充血除去薬使用のためのα−およびα−アドレナリン受容体作動薬血管収縮交感神経様作用薬、(v)ムスカリンM受容体拮抗薬または抗コリン作用薬、(vi)PDE阻害薬、例えば、PDE、PDEおよびPDE阻害薬、(vii)テオフィリン、(viii)クロモグリク酸ナトリウム、(ix)非選択的と選択的なCOX−1またはCOX−2阻害薬両方のCOX阻害薬(NSAID)、(x)DAGR(コルチコイド受容体の解離性作動薬)などの経口および吸引用グルココルチコステロイド、(xi)内因性炎症性物質に対して活性なモノクローナル抗体、(xii)抗腫瘍壊死因子(抗TNF−α)薬、(xiii)VLA−4拮抗薬を包含する接着分子阻害薬、(xiv)キニン−B−およびB−受容体拮抗薬、(xv)免疫抑制薬、(xvi)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害薬、(xvii)タキキニンNK、NKおよびNK受容体拮抗薬、(xviii)エラスターゼ阻害薬、(xix)アデノシンA2a受容体作動薬、(xx)ウロキナーゼの阻害薬、(xxi)ドーパミン受容体に作用する化合物、例えば、D作動薬、(xxii)NFκβ経路のモジュレーター、例えば、IKK阻害薬、(xxiii)p38MAPキナーゼまたはJAKキナーゼ阻害薬などのサイトカインシグナル伝達経路のモジュレーター、(xxiv)粘液溶解薬または鎮咳薬として分類することができる薬剤、(xxv)抗生物質、(xxvi)HDAC阻害薬、(xxvii)PI3キナーゼ阻害薬、(xxviii)β作動薬、ならびに(xxix)β作動薬およびムスカリンM受容体拮抗薬として活性な二重化合物を包含する。そのような治療薬の好ましい例は、(a)グルココルチコステロイド、特に、全身性副作用の減少した吸入用グルココルチコステロイド、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、シクレソニド、およびフランカルボン酸モメタゾン、(b)臭化物などのイプラトロピウム塩、臭化物などのチオトロピウム塩、臭化物などのオキシトロピウム塩、ピレンゼピンおよびテレンゼピンを包含するムスカリンM受容体拮抗薬または抗コリン作用薬、ならびに(c)サルブタモール、テルブタリン、バンブテロール、フェノテロール、サルメテロール、フォルモテロール、ツロブテロールを包含するβ作動薬を包含する。具体的に述べられている薬剤のいずれも、場合により、薬学的に許容できる塩の形態で使用することができる。
【0077】
活性化合物の組合せを投与することが望ましい場合、少なくとも1つは本発明の化合物を含有する2つ以上の医薬組成物を、同時投与に適しているキットの形態で都合よく組み合わせることができる。
【0078】
そのようなキットは、少なくとも1つは本発明の化合物を含有する2つ以上の別々の医薬組成物および容器、分割されたボトル、または分割されたホイルパケットなどの前記組成物を別々に保持するための手段を含む。そのようなキットの一例は、錠剤、カプセル剤などの包装に使用されるよく知られているブリスターパックである。
【0079】
そのようなキットは、様々な剤形、例えば、経口および非経口剤形を投与するのに、様々な投与間隔で別々の組成物を投与するのに、またはお互いに対して別々の組成物を用量設定するのに特に適している。コンプライアンスを補助するため、キットは、典型的には、投与説明書を含み、いわゆる記憶補助を提供することができる。
【実施例】
【0080】
調製実施例
(実施例1)(2−クロロ−4−ヨードフェノキシ)(トリイソプロピル)シランの調製
【0081】
【化5】

窒素下で、トルエン(1750ml)中の2−クロロ−4−ヨードフェノール(351.2g、1.38モル)の溶液に、トリエチルアミン(168g、1.66モル)、ジメチルアミノピリジン(8.5g、0.069モル)およびクロロトリイソプロピルシラン(320g、1.66モル)を加え、次いで、16時間にわたって撹拌した。その後、反応物を、塩酸(2M、1000ml)の添加によりクエンチし、有機相を水(1000ml)で洗浄した。溶液を、トルエンの共沸蒸留により乾燥すると、澄明な油として表題化合物(497g、87%)が得られた。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ=0.98〜1.12(m,21H)、6.65〜6.68(d,1H)、7.38〜7.41(d,1H)、7.66(s,1H)。
【0082】
(実施例2)3−tert−ブチル−1−[3−クロロ−4−(トリイソプロピルシリルオキシ)フェニル]−1H−ピラゾール−5−アミンの調製
【0083】
【化6】

窒素下で、トルエン(1000ml)中の実施例1のヨウ化アリール(493.6g、1.202モル)の溶液に、3−tert−ブチル−1H−ピラゾール−5−アミン(184.2g、1.322モル)と、続いて、トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(16.2g、0.240モル)、炭酸カリウム(348g、2.52モル)およびヨウ化銅(I)(11.6g、0.061モル)を加えた。混合物を16時間にわたって111℃にて加熱した。その後、反応物を20℃まで冷却し、水(1500ml)と酢酸エチル(1500ml)の間で分配した。有機相を、10%w/vクエン酸水溶液(1500ml)および水(1500ml)で順次洗浄した。溶媒を減圧下で蒸留し、n−ヘプタン(1500ml)により置き換えた。溶液を5℃まで冷却し、16時間にわたって顆粒化させた。固体を濾過により集めると、褐色の固体として表題化合物(334g、65%)が得られた。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ=1.14〜1.17(d,18H)、1.28〜1.39(m,3H)、1.32(s,9H)、5.51(s,1H)、6.95〜6.98(d,1H)、7.32〜7.35(d,1H)、7.59(s,1H)。
【0084】
(実施例3)フェニル{3−tert−ブチル−1−[3−クロロ−4−(トリイソプロピルシリルオキシ)フェニル]−1H−ピラゾール−5−イル}カルバメートの調製
【0085】
【化7】

窒素下で、酢酸エチル(1625ml)中の実施例2のアミノピラゾール(325g、0.770モル)の溶液に、重炭酸ナトリウム水溶液(8%w/v、1625ml、1.54モル)を加えた。クロロギ酸フェニル(145ml、1.155モル)を15分かけて加え、16時間にわたって20℃にて撹拌した。有機相を分離し、水(1625ml)で洗浄した。溶媒を減圧下で蒸留し、n−ヘプタン(1625ml)により置き換えた。溶液を5℃まで冷却し、3時間にわたって顆粒化させた。固体を濾過により集めると、白色の固体として表題化合物(368g、88%)が得られた。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ=1.16〜1.19(d,18H)、1.30〜1.42(m,3H)、6.45(s,1H)、7.01〜7.04(d,1H)、7.14〜7.17(m,2H)、7.24〜7.30(m,2H)、7.38〜7.43(m,2H)、7.55(s,1H)。
【0086】
(実施例4)2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]ベンズアルデヒドの調製
【0087】
【化8】

窒素下で、プロピオニトリル(1000ml)中の炭酸カリウム(362g、2.62モル)のスラリーに、プロピオニトリル(750ml)中の溶液として2−メルカプトエタノール(184ml、2.618モル)を加えた。2−フルオロベンズアルデヒド(250g、2.014モル)を、プロピオニトリル(750ml)中の溶液として加え、18時間にわたって85℃にて加熱した。反応物を20℃まで冷却し、水(1500ml)、1M水酸化ナトリウム溶液(500ml)および水(1000ml)で順次洗浄した。最終溶液を共沸蒸留により乾燥し、プロピオニトリル(4250ml)中の澄明な黄色の溶液として表題化合物を残した。少量のサンプルを収率計算のために濃縮した(348.7g、95%)。
H−NMR(300MHz,d6−DMSO):δ=3.08〜3.12(t,2H)、3.6〜3.67(m,2H)、4.96〜5.00(t,1H)、7.35〜7.40(t,1H)、7.55〜7.65(m,2H)、7.85〜7.88(d,1H)、10.24(s,1H)。
【0088】
(実施例5)2−[(2−{[(5−ブロモピリジン−2−イル)ヒドラゾノ]メチル}フェニル)スルファニル]エタノールの調製
【0089】
【化9】

プロピオニトリル(3770ml)中の実施例4のアルデヒド(314.0g、1.723モル)の溶液に、窒素下で、5−ブロモピリジン−2−イルヒドラジンを加えた。混合物を2時間にわたって85℃にて加熱し、次いで、5℃まで冷却し、18時間にわたって顆粒化させた。固体を濾過により集めると、白色の固体として表題化合物(500.3g、82%)が得られた。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ=3.07〜3.11(t,2H)、7.30〜7.34(m,2H)、7.49〜7.52(m,1H)、7.70〜7.73(d,1H)、7.97〜8.00(m,1H)、8.24(s,1H)、8.43(s 1H)、8.77(s,1H)。
【0090】
(実施例6)2−{[2−(6−ブロモ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−3−イル)フェニル]スルファニル}エタノールの調製
【0091】
【化10】

ジクロロメタン(2500ml)中の実施例5のヒドラゾン(200g、0.5678モル)の溶液に、ジアセトキシヨードベンゼン(192g、0.5962モル)を加えた。混合物を5℃まで冷却し、メタノール(280ml)を20分かけて加え、次いで、20℃まで温め、2時間にわたって撹拌した。混合物を5℃まで冷却し、2M水酸化ナトリウム溶液(600ml)を15分かけて加えた。有機層を水(800ml)で洗浄し、溶媒を蒸留し、新たなアセトニトリルで置き換え、800mlの最終容積とした。得られたスラリーを5℃まで冷却し、1時間にわたって顆粒化させ、次いで、濾過により集めると、白色の固体として表題化合物(135.2g、65%)が得られた。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ=2.98〜3.01(t,2H)、3.68〜3.72(t,2H)、7.37〜7.40(d,1H)、7.48〜7.63(m,3H)、7.76(s,1H)、7.78(s,1H)、7.95(s,1H)。
【0092】
(実施例7)6−ブロモ−3−(2−{[2−(トリイソプロピルシロキシ)エチル]スルファニル}フェニル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジンの調製
【0093】
【化11】

2−メチルテトラヒドロフラン(257ml)中の実施例6のアルコール(51.3g、0.146モル)のスラリーに、イミダゾール(11.9g、0.175モル)およびジメチルアミノピリジン(1.79g、0.015モル)を加えた。クロロトリイソプロピルシラン(33.9g、0.175モル)を10分かけて加え、得られた混合物を18時間にわたって50℃にて加熱した。反応物を20℃まで冷却し、1M塩酸(257ml)で洗浄し、水相を2−メチルテトラヒドロフラン(103ml)で抽出した。合わせた有機物を10%w/w塩化ナトリウム溶液で洗浄し、次いで、減圧下で蒸留し、n−ヘプタンで置き換え、513mlの最終容積とした。得られたスラリーを5℃まで冷却し、18時間にわたって顆粒化させた。固体を濾過により集めると、白色の固体として表題化合物(63.0g、87%)が得られた。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ=0.99〜1.08(m,21H)、2.97〜3.01(t,2H)、3.76〜3.81(t,2H)、7.35〜7.44(m,2H)、7.30〜7.36(m,2H)、7.65〜7.68(d,1H)、7.75〜7.79(d,1H)、7.90(s,1H)。
【0094】
(実施例8)[2−({3−[2−({2−[(トリイソプロピルシリル)オキシ]エチル}スルファニル)フェニル][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル}スルファニル)フェニル]メタノールの調製
【0095】
【化12】

トルエン(250ml)中の実施例7の臭化アリール(50.7g、0.10モル)の溶液に、(2−スルファニルフェニル)メタノール(16.8g、0.12モル)、ナトリウム(tert)−ブトキシド(14.4g、0.15モル)および[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(0.41g、0.0005モル)を加えた。得られた混合物を10分にわたって窒素でスパージし、次いで、16時間にわたって111℃にて加熱した。反応物を20℃まで冷却し、酢酸イソプロピル(200ml)で希釈し、2M塩酸(250ml)で洗浄した。水相を酢酸イソプロピル(50ml)で抽出し、合わせた有機物を、1M水酸化ナトリウム溶液(250ml)および10%w/w塩化ナトリウム溶液(250ml)で順次洗浄した。溶媒を減圧下で蒸留し、(tert)−ブチルメチルエーテルで置き換え、250mlの最終容積とした。溶液を5℃まで冷却し、5時間にわたって顆粒化し、次いで、固体を濾過により集めると、白色の固体として表題化合物(38.5g、68%)が得られた。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ=0.99〜1.05(m,21H)、2.93〜2.98(t,2H)、3.74〜3.79(t,2H)、4.86(s,2H)、7.13〜7.26(d,1H)、7.25〜7.28(m,2H)、7.31〜7.38(m,1H)、7.40〜7.43(d,1H)、7.51〜7.60(m,3H)、7.63〜7.65(d,1H)、7.74〜7.77(m,2H)。
【0096】
(実施例9)1−[2−({3−[2−({2−[(トリイソプロピルシリル)オキシ]エチル}スルファニル)フェニル][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル}スルファニル)フェニル]メタンアミンの調製
【0097】
【化13】

トルエン(250ml)中の実施例8のベンジルアルコール(25.0g、0.044モル)のスラリーに、メタンスルホン酸無水物(10.77g、0.062モル)を加え、次いで、5℃まで冷却した。トリエチルアミン(6.93g、0.068モル)を30分かけて加え、3時間にわたってこの温度にて撹拌した。得られた溶液をメタノール溶液中の7Mアンモニア(316ml、2.21モル)に加え、16時間にわたって撹拌した。水(250ml)を加え、有機相を水(250ml)で洗浄した。水相をトルエン(125ml)で抽出し、合わせた有機物を減圧下で共沸蒸留により乾燥し、トルエン(125ml)中の澄明な褐色の溶液として表題化合物を残した(定量的収率と仮定)。
H−NMR(300MHz,d6−DMSO):δ=0.88〜0.99(m,21H)、3.05〜3.07(t,2H)、3.73〜3.77(t,2H)、3.85(s,2H)、7.14〜7.29(m,H)。
【0098】
(実施例10)N−{3−tert−ブチル−1−[3−クロロ−4−(トリイソプロピルシロキシ)フェニル]−1H−ピラゾール−5−イル}−N’−(2−{[3−(2−{[2−(トリイソプロピルシロキシ)エチル]スルファニル}フェニル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル]スルファニル}ベンジル)尿素の調製
【0099】
【化14】

トルエン(300ml)中の実施例9のベンジルアミン(30.0g、0.053モル)の溶液に、実施例3のフェニルカルバメート(27.3g、0.050モル)およびジイソプロピルエチルアミン(7.31g、0.058モル)を加え、3時間にわたって撹拌した。酢酸エチル(150ml)を加え、1M水酸化ナトリウム溶液(300ml)および水(300ml)で順次洗浄した。溶液を減圧下で共沸蒸留により乾燥し、溶媒をメタノールで置き換え、メタノール(275ml)中の澄明な褐色の溶液として表題化合物を残した(定量的収率と仮定)。この材料を、単離または精製することなく続くステップで直接使用した。
【0100】
(実施例11)N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素(多形体A)の調製
【0101】
【化15】

メタノール(360ml)中の実施例10の尿素(71.6g、0.0707モル)の溶液を50℃まで加熱し、2M塩酸(360ml)を75分かけて加えた。得られた溶液を4時間にわたって65℃にて加熱し、次いで、20℃まで冷却した。ジクロロメタン(430ml)および水(215ml)を加え、水相をジクロロメタン(2×215ml)で抽出した。合わせた有機物にメタノール(35ml)を加え、水(215ml)で洗浄した。有機物を減圧下で蒸留し、新たなメタノールで置き換え、215mlの最終容積とした。得られた溶液を16時間にわたって−5℃まで冷却し、固体を濾過により集めると、白色の固体として表題化合物(多形体A)(27.3g、55%)が得られた。
多形体AはPXRDにより同定した。
H−NMR(300MHz,d6−DMSO):δ=1.24(s,9H)、2.96〜3.01(t,2H)、3.47〜3.51(t,2H)、4.36〜4.38(d,2H)、4.89(br s,1H)、6.21(s,1H)、6.93〜6.97(t,1H)、7.03〜7.06(d,1H)、7.21〜7.42(m,6H)、7.55〜7.67(m,3H)、7.86〜7.93(m,2H)、8.20(s,1H)。
【0102】
(実施例12)N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素(多形体B)の調製
【0103】
【化16】

メタノール(450ml)中の実施例11の多形体A(15.0g、0.0214モル)のスラリーを5時間にわたって65℃にて加熱した。メタノールを蒸留により除去し、225mlの容積とし、その時点で、多形体Bの種を加えた。65℃における加熱をさらに16時間にわたってこの容積で続けた。容積を、メタノールの蒸留により75mlまでさらに減らし、−5℃まで冷却し、3時間にわたってこの温度にて顆粒化させた。固体を濾過により集めると、白色の固体として表題化合物(多形体B)(13.5g、90%)が得られた。
多形体BはPXRDにより同定した。
H−NMR(300MHz,d6−DMSO):δ=1.24(s,9H)、2.96〜3.01(t,2H)、3.47〜3.51(t,2H)、4.36〜4.38(d,2H)、4.89(br s,1H)、6.21(s,1H)、6.93〜6.97(t,1H)、7.03〜7.06(d,1H)、7.21〜7.42(m,6H)、7.55〜7.67(m,3H)、7.86〜7.93(m,2H)、8.20(s,1H)。
【0104】
特徴付け
(a)粉末X線回折(PXRD)
粉末X線回折パターンは、自動サンプルチェンジャー、θ−θゴニオメーター、自動ビーム発散スリット、およびPSD Vantec−1検出器を取り付けたBruker−AXS Ltd.のD4粉末X線回折計を用いて決定した。サンプルは、低バックグラウンドシリコンウエハー試料台上に設置することにより分析用に調製した。試料を、40kV/30mAで動作するX線管により銅のK−αX線(波長=1.5406オングストローム)を照射しながら回転させた。分析は、2°〜55°の2θ範囲にわたり、0.018°のステップ毎に0.2秒カウントに設定した連続モードで実行するゴニオメーターで行った。ピークは、Bruker−AXS Ltd.の評価ソフトウェアを用い、手動で選択した。
【0105】
当業者により理解されているように、下に示す様々なピークの相対強度は、例えば、X線ビームにおける結晶の配向効果または分析されている材料の純度またはサンプルの結晶化度などの多くの要因により変化することがある。ピーク位置も、サンプル高の変動のためにシフトすることがあるが、ピーク位置は、定義されている通りに実質的に留まるであろう。
【0106】
また、当業者は、異なる波長を用いて測定すると、ブラッグの式−nλ=2dsinθに従って異なるシフトが得られることを理解しているであろう。代わりの波長の使用によりもたらされるそのような他のPXRDパターンは、本発明の結晶性材料のPXRDパターンの代替表示であると見なされ、したがって、本発明の範囲内にある。
【0107】
計算されたPXRDパターンの場合、2θ角および相対強度は、Accelrys MS Modelling(商標)[バージョン3.0]の「Reflex Powder Diffraction」モジュールを用い、単結晶構造から計算した。適切なシミュレーションパラメーターは、
波長=1.5406Å(Cu Kα)
偏光因子=0.5
偽(Pseudo)−Voigtプロファイル(U=0.01、V=−0.001、W=0.002)とした。
【0108】
形態AについてのPXRDパターンを図1に示す。主なピーク(10%を超える相対強度)を下表1に列挙する。形態Aは、6.7、7.4、9.5、12.2および14.9度2θ(±0.1度)に特徴的な回折ピークを示す。
【0109】
【表1】

【0110】
形態BについてのPXRDパターンを図2に示す。主なピーク(10%を超える相対強度)を下表2に列挙する。形態Bは、8.5、10.3、11.5、14.0および21.5度2θ(±0.1度)に特徴的な回折ピークを示す。
【0111】
【表2】

【0112】
(b)示差走査熱量測定(DSC)
サンプルは、通気式のアルミニウムの鍋および蓋の付いたTA Instruments Q1000 DSCを用い、毎分10℃にて20から300℃まで加熱した。窒素をパージガスとして使用した。
【0113】
PF−03715455形態AについてのDSCサーモグラムを図3に示す。開始温度が164℃でピーク極大が174℃の鋭い吸熱が観察される。
【0114】
PF−03715455形態BについてのDSCサーモグラムを図4に示す。開始温度が224℃でピーク極大が226℃の鋭い吸熱が観察される。
【0115】
(c)熱重量分析(TGA)
乾燥減量は、窒素をパージガスとし、TA Instruments Thermogravimetric分析器TGA2950 Hi−Resを用いて測定した。サンプルは、10℃/分の加熱速度で周囲から300℃まで加熱した。
【0116】
形態Aの熱重量分析から得られる減量曲線を図5に示す。周囲から150℃まで加熱すると、0.41%の減量が観察された。
【0117】
形態Bの熱重量分析から得られる減量曲線を図6に示す。周囲から150℃まで加熱すると、0.30%の減量が観察された。
【0118】
(d)フーリエ変換赤外分析(FT−IR)
FT−IRスペクトルは、「DurasamplIR」単反射ATRアクセサリー(セレン化亜鉛基材上のダイアモンド表面)およびd−TGS KBr検出器を備えたThermoNicolet Nexus FTIR分光計を用いて取得した。スペクトルは、すべての化合物について2cm−1の分解能および256スキャンの同時加算(co−addition)で集めた。Happ−Genzelアポディゼーションを使用した。FT−IRスペクトルは、単反射ATRを用いて記録したため、サンプル調製は必要なかった。ATR FT−IRを用いると、赤外バンドの相対強度が、KBrディスクまたはヌジョールムルサンプル調製物を用いる透過FT−IRスペクトルに見られる相対強度と異なる原因になるであろう。ATR FT−IRの性質のため、低めの波数におけるバンドは、高めの波数におけるバンドよりも強い。他に指示のない限り、実験誤差は、±2cm−1とした。
【0119】
ピークは、ThermoNicolet Omnic 6.0aソフトウェアを用いて選別した。強度帰属は、スペクトル中の主なバンドに対してであり、したがって、ベースラインから測定される絶対値に基づいていない。
【0120】
形態AについてのFT−IRスペクトルを図7に例示する。主なピークを下表3に列挙する(w=弱い、m=中位の、s=強い;実験誤差は、ピーク位置の誤差がかなり大きいと思われる印が付いているピークを除いて±2cm−1である)。形態Aは、769、806、1211、1295および1517cm−1に特徴的な吸収バンドを示す。
【0121】
【表3】

【0122】
形態BについてのFT−IRスペクトルを図8に示す。主なピークを下表4に列挙する(w=弱い、m=中位の、s=強い;実験誤差は、ピーク位置の誤差がかなり大きいと思われる印が付いているピークを除いて±2cm−1である)。形態Bは、790、880、995、1507および1542cm−1に特徴的な吸収バンドを示す。
【0123】
【表4】

【0124】
(e)フーリエ変換ラマン分析(FT−ラマン)
ラマンスペクトルは、1064nmのNdYAGレーザーおよびLN−Germanium検出器を備えたBurkerのRamIIモジュール付きVertex70 FT−Raman分光計を用いて集めた。スペクトルは、2cm−1の分解能およびBlackman−Harris 4−タームアポディゼーションを用いて記録した。レーザー出力を400mWとした非晶性サンプルを除いて、レーザー出力を300mWとし、4096の同時加算(co−added)スキャンを集めた。各サンプルをガラスバイアルに入れ、レーザー放射にさらした。データは、ラマンシフトの関数として強度として示し、基準ランプからの白色光スペクトルを用いて機器応答および周波数依存性散乱について補正する。Bruker Raman Correct関数を用いて補正を行った。(Brukerソフトウェア−OPUS6.0)。実験誤差は、他に指示のない限り、±2cm−1とした。
【0125】
ピークは、ThermoNicolet Omnic 6.0aソフトウェアを用いて選別した。強度帰属は、スペクトル中の主なバンドに対してであり、したがって、ベースラインから測定される絶対値に基づいていない。
【0126】
形態AについてのFT−ラマンスペクトルを図9に示す。主なピークを下表5に列挙する(w=弱い、m=中位の、s=強い、vs=極めて強い;実験誤差は、誤差が±1cm−1である**印が付いているピークを除いて±2cm−1である)。形態Aは、81、122、290、1039および1518cm−1に特徴的な吸収バンドを示す。
【0127】
【表5】

【0128】
形態BについてのFT−ラマンスペクトルを図10に示す。主なピークを下表6に列挙する(w=弱い、m=中位の、s=強い、vs=極めて強い;実験誤差は、誤差がかなり大きいと思われる印が付いているピークおよび誤差が±1cm−1である**印が付いているピークを除いて±2cm−1である)。形態Bは、85、111、272、997および1513cm−1に特徴的な吸収バンドを示す。
【0129】
【表6】

【0130】
(f)固体13C核磁気共鳴(SSNMR)
各サンプル約80mgを、4mmのZrOスピナーに固く詰め込んだ。スペクトルは、ワイドボアBruker−Biospin Avance DSX 500MHz NMR分光計内に配置されたBruker−Biospin 4mm BL HFX CPMASプローブで周囲条件にて集めた。スピナーをマジック角に配置し、15.0kHzにて回転させた。速い回転速度は、スピニングサイドバンドの強度を最小限に抑えた。スキャン数を調整し、十分な信号対雑音比を得た。13C固体スペクトルは、プロトンデカップル交差分極マジック角回転実験(CPMAS)を用いて集めた。約90kHzのプロトンデカップリング磁界を適用した。スペクトルは、その高磁場共鳴を29.5ppmに設定した結晶性アダマンタンの外部標準を用いて基準とした。
【0131】
形態A、形態Bおよび非晶性材料についての13C SSNMRスペクトルを図11に示す(上は非晶性、中央は形態B、下は形態A)。対応するピークを下表7〜9に列挙する。強度は、実際のCPMAS実験パラメーターの設定およびサンプルの熱履歴に応じて変化することがあるピーク高として定義する。CPMAS強度は、必ずしも定量的ではない。
【0132】
【表7】

【0133】
形態Aは、160.7、147.0、143.2、127.1、117.9、40.6および33.0ppmに特徴的な化学シフトを示す。
【0134】
【表8】

【0135】
形態Bは、155.4、146.2、144.3、116.6、42.5および35.2ppmに特徴的な化学シフトを示す。
【0136】
【表9】

【0137】
非晶性形態は、153.8、149.0、130.9、116.7および30.9ppmに特徴的な化学シフトを示す。
【0138】
安定性データ
N−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素形態Bを用い、これが化合物の最低エネルギー形態であるかどうかを検討するために低エネルギースクリーニングを行った。形態Bのサンプルを、4℃、室温(約22℃)および40℃にて様々な溶媒中で2週にわたってスラリー化した。湿ったスラリーおよび乾燥したスラリーの分析を、PXRDを用いて2週および4ヶ月後に行った。すべてが形態Bのままであった。使用した溶媒系は、ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリジンおよびピリジンを包含する。
【0139】
水和物スクリーニングは、水性ピリジン中で4℃、室温(約22℃)および40℃にて2週にわたって形態Bのサンプルをスラリー化することにより行った。選択した3種の溶媒系は、50%、75%および90%の水を含有していた。水和された形態は観察されなかった。結晶性形態の変化は検出されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その高磁場共鳴を29.5ppmに設定した結晶性アダマンタンの外部標準を基準とする13C固体NMRにより特徴付ける場合に、約155.4、146.2、144.3、116.6、42.5および35.2ppmにおけるシフトを有するN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態B。
【請求項2】
請求項1に記載の多形性形態Bおよび薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項3】
哺乳動物においてTNF媒介性またはp38媒介性疾患を治療する方法であって、それを必要としている哺乳動物に、治療有効量の請求項1に記載の多形性形態Bを投与することを含む方法。
【請求項4】
適応とされる疾患が、慢性閉塞性肺疾患である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の多形性形態Bと第二の薬理活性物質の組合せ。
【請求項6】
請求項1に記載の多形性形態Bを調製するための方法であって、約60℃を超える沸点を有する有機溶媒中、還流状態で、少なくとも95%純度のN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素形態Aのスラリーを加熱することを含む方法。
【請求項7】
説明および図面を基準として、実質的に本明細書に開示されているN−[3−tert−ブチル−1−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾール−5−イル]−N’−{2−[(3−{2−[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]フェニル}[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−6−イル)スルファニル]ベンジル}尿素の多形性形態B。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−185028(P2009−185028A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−21286(P2009−21286)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【Fターム(参考)】