説明

多彩模様塗料組成物

【課題】耐水性、耐候性等に優れ、外装用塗料として好適な多彩模様塗料組成物を提供する。
【解決手段】合成樹脂エマルション(a)、ゲル形成物質(b)、及び着色顔料(c)を含む着色水性塗料(I)を、ゲル化剤(d)を含有する水性媒体(II)に分散して得られる着色ゲル粒子を含む多彩模様塗料組成物において、前記合成樹脂エマルション(a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%以下であるものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な多彩模様塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一回の塗装により多彩模様が表出可能な塗料組成物が種々提案されている。このような塗料の構成についての着想は、P.BUSCHの特許に始まり、J.C.ZOLAによって、米国特許第2591904号、日本特許第231698号として実用化された水中油型の多彩模様塗料に代表される。その後、国内外の塗料技術者によって、各種の多彩模様塗料が開発されてきたが、これらは(1)水中油型(O/W型)、(2)油中水型(W/O型)、(3)油中油型(O/O型)、(4)水中水型(W/W型)に分類することができる。このうち、水中水型の多彩模様塗料は、環境対応形の塗料として好ましいものである。
【0003】
水中水型の多彩模様塗料としては、例えば、特開平1−16879号公報(特許文献1)、特開平9−208862号公報(特許文献2)等が提案されている。
特許文献1の多彩模様塗料は、ゲル化膜でカプセル化された着色粒子を含有するものであり、当該ゲル化膜はコロイド形成物質をゲル化剤で不溶化することによって形成できることが記載されている。
特許文献2の多彩模様塗料は、ジュランガム、エマルション、着色顔料等の混合物を、塩化カルシウム等の金属塩水溶液等に加えてゲル化させた着色ゲル粒子を含むものである。
【0004】
【特許文献1】特開平1−16879号公報
【特許文献2】特開平9−208862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献の多彩模様塗料では、安定した着色粒子を得るために相当量のゲル化剤が必要となる。このようなゲル化剤は、耐水性低下の原因となり、塗膜の白化を引き起こす等、塗膜の意匠性に悪影響を及ぼすおそれがある。すなわち、降雨等に晒される環境下で用いられる外装用塗料として、上記特許文献の多彩模様塗料を使用することは実用上困難であった。
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、耐水性、耐候性等に優れ、外装用塗料として好適な多彩模様塗料組成物を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行い、着色粒子の形成プロセスにおいては、ゲル形成物質とゲル化剤との反応以外に、合成樹脂エマルションの特定官能基が大きく関与することをつき止めた。この知見に基づき、本発明者は、着色粒子を構成する合成樹脂エマルションとして樹脂組成中の特定官能基量が制御されたものを使用することにより、ゲル化剤の添加量が少量であっても安定した着色ゲル粒子が形成でき、さらに耐水性、耐候性等の塗膜物性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.合成樹脂エマルション(a)、ゲル形成物質(b)、及び着色顔料(c)を含む着色水性塗料(I)を、ゲル化剤(d)を含有する水性媒体(II)に分散して得られる着色ゲル粒子を含む多彩模様塗料組成物であって、
前記合成樹脂エマルション(a)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%以下であることを特徴とする多彩模様塗料組成物。
2.前記合成樹脂エマルション(a)を構成するモノマー群において、水酸基含有モノマーの比率が0.1〜20重量%であることを特徴とする1.記載の多彩模様塗料組成物。
3.前記水性媒体(II)が、合成樹脂エマルション(a’)及びゲル化剤(d)を含有するものであり、前記合成樹脂エマルション(a’)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%以下であることを特徴とする1.または2.に記載の多彩模様塗料組成物。
4.前記合成樹脂エマルション(a’)を構成するモノマー群において、水酸基含有モノマーの比率が0.1〜20重量%であることを特徴とする3.記載の多彩模様塗料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐水性、耐候性等の塗膜物性において優れた性能を有し、外装用として好適な多彩模様塗料を得ることができる。本発明の多彩模様塗料組成物は、着色ゲル粒子の経時的安定性等の点においても、優れた物性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
[着色水性塗料(I)]
本発明の多彩模様塗料組成物における着色水性塗料(I)は、合成樹脂エマルション(a)、ゲル形成物質(b)、及び着色顔料(c)を含むものである。
【0012】
本発明組成物では、着色水性塗料(I)のバインダーとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%以下である合成樹脂エマルションを使用する。本発明では、このように着色水性塗料(I)の合成樹脂エマルション(a)におけるカルボキシル基含有モノマーが制御されていることにより、少量のゲル化剤で着色ゲル粒子を生成させることができる。よって、耐水性、耐候性等の塗膜物性に対するゲル化剤の影響を抑制することができ、これら塗膜物性の向上を図ることができる。さらに、着色ゲル粒子の経時的安定性、すなわち貯蔵安定性等においても有利な効果を得ることができる。
【0013】
このような合成樹脂エマルション(a)(以下「(a)成分」という)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合して得られるものである。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。モノマー群における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。上限は特に限定されないが、通常99.9重量%以下(好ましくは99.5重量%以下)程度である。
【0015】
カルボキシル基含有モノマーは、分子内にカルボキシル基と重合性不飽和結合を併有する化合物である。その具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等が挙げられる。
モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率は、通常3重量%以下、好ましくは0.9重量%以下、より好ましくは0.4重量%以下である。モノマー群においてカルボキシル基含有モノマーを含まない態様も好適である。カルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%を超える場合は、安定した着色ゲル粒子を生成させるために多量のゲル化剤が必要となり、耐水性、耐候性等の塗膜物性において十分な性能を得ることが困難となる。また、合成樹脂エマルションに残存するカルボキシル基の作用により、塗料貯蔵中、経時的に着色ゲル粒子のゲル形成能が低下してしまい、着色ゲル粒子から顔料がしみ出る等の不具合が生じやすくなる。
【0016】
(a)成分は、必要に応じ上記以外の重合性モノマーを構成成分とするものであってもよい。このような重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル等のアミノ基含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等のカルボニル基含有モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;その他、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、クロロプレン等が挙げられる。
【0017】
このような重合性モノマーのうち、(a)成分を構成するモノマーとしては水酸基含有モノマーが好適である。水酸基含有モノマーの使用により、着色ゲル粒子生成に必要なゲル化剤の量を抑制しつつ、着色水性塗料(I)の諸物性(製造安定性、顔料混和性等)において有利な効果を得ることができる。モノマー群における水酸基含有モノマーの比率は、通常0.1〜20重量%(0.1重量%以上20重量%以下)、好ましくは0.5重量〜10重量%である。
【0018】
本発明における(a)成分は、上記重合性モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合等を採用することもできる。重合時には、乳化剤、開始剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤、架橋剤、カップリング剤、触媒等を使用することもできる。このうち、乳化剤については、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両性乳化剤等が挙げられ、非反応性のもの、あるいは反応性を有するものから適宜選択して使用することができる。このうちノニオン性乳化剤、とりわけノニオン性反応性乳化剤は、経時的安定性、耐水性、耐候性等の点で好適である。
【0019】
(a)成分のガラス転移温度は、上記重合性モノマーの種類、混合比率等を選定することで調整できる。このガラス転移温度は、最終的な用途等を考慮して適宜設定すればよいが、通常は−20〜80℃程度、好ましくは−10〜60℃程度である。なお、(a)成分のガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
【0020】
着色水性塗料(I)におけるゲル形成物質(b)(以下「(b)成分」という)は、後述のゲル化剤(d)との作用により、着色ゲル粒子の生成に寄与する成分である。
(b)成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレンオキサイド、水溶性ウレタン、バイオガム、ガラクトマンナン誘導体、アルギン酸もしくはその誘導体、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、アルブミン等、あるいはこれらを酸化、メチル化、カルボキシメチル化、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシプロピル化、硫酸化、リン酸化、カチオン化等によって化学変性したもの等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
(b)成分の混合比率は、通常、(a)成分の固形分100重量部に対し、固形分で0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部である。
【0021】
着色水性塗料(I)における着色顔料(c)(以下「(c)成分」という)としては、一般的に塗料に配合可能なものであれば特に限定されず使用することができる。(c)成分としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。(c)成分の粒子径は、通常0.1〜5μm程度である。
(c)成分の混合比率は、着色ゲル粒子の色相等によっても様々であるが、通常、(a)成分の固形分100重量部に対し5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部である。
(c)成分の分散剤としては、ノニオン性分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、両性分散剤等を使用することができる。とりわけカチオン性分散剤は、着色ゲル粒子の経時安定性等の点で好適である。
【0022】
着色水性塗料(I)においては、上述の成分以外に、通常塗料に使用可能な添加剤、例えば、体質顔料、骨材、染料、繊維、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、造膜助剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、消泡剤、香料、光安定剤、紫外線吸収剤、光触媒、架橋剤、難燃剤、溶剤、水等を本発明の効果を阻害しない範囲で混合することもできる。着色水性塗料(I)は以上に述べたような成分を常法により均一に混合することで製造することができる。
【0023】
[水性媒体(II)]
本発明組成物における水性媒体(II)は、水を主成分とする媒体に、ゲル化剤(d)(以下「(d)成分」という)を含むものである。この(d)成分は、着色ゲル粒子の生成に必須の成分である。
(d)成分としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム等の金属の硫酸塩、酢酸塩、有機酸塩、珪酸塩、硼酸塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
水性媒体(II)中における(d)成分の比率は、通常0.01〜1.5重量%、好ましくは0.03〜1.0重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%となるようにする。
【0024】
本発明組成物における水性媒体(II)には、上述の(d)成分に加え、合成樹脂エマルション(a’)(以下「(a’)成分」という)を含むことが望ましい。このような(a’)成分を含むことにより、塗膜形成時に着色ゲル粒子を被塗面に確実に固定化することができる。さらに、(a’)成分の被膜によって着色ゲル粒子が保護され、耐水性、耐候性等の塗膜物性向上を図ることができ、トップコート塗装も不要となる。
(a’)成分としては、例えば、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、酢酸ビニル樹脂エマルション、シリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、アクリル・酢酸ビニル樹脂エマルション、アクリル・ウレタン樹脂エマルション、アクリル・シリコン樹脂エマルション等の合成樹脂エマルションが使用できる。
水性媒体(II)中における(a’)成分の比率は、固形分で通常5〜50重量%、好ましくは10〜48重量%となるようにすればよい。
【0025】
水性媒体(II)における(a’)成分としては、前述の(a)成分と同様のもの、すなわち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%以下である合成樹脂エマルション、さらには水酸基含有モノマーの比率が0.1〜20重量%である合成樹脂エマルションが好適である。このような(a’)成分を使用すれば、少量のゲル化剤で、安定した着色ゲル粒子を得ることができ、形成塗膜の耐水性、耐候性等をいっそう高めることができる。
【0026】
(a’)成分を構成するモノマー群における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。上限は特に限定されないが、通常99.9重量%以下(好ましくは99.5重量%以下)程度である。
カルボキシル基含有モノマーの比率は、通常3重量%以下、好ましくは0.9重量%以下、より好ましくは0.4重量%以下であり、カルボキシル基含有モノマーを含まない態様も好適である。
水酸基含有モノマーの比率は、通常0.1〜20重量%(0.1重量%以上20重量%以下)、好ましくは0.5重量〜10重量%である。水酸基含有モノマーの比率がこのような範囲内であれば、多彩模様塗料の製造安定性、攪拌安定性、貯蔵安定性等の点で有利である。
乳化剤としては、ノニオン性乳化剤、とりわけノニオン性反応性乳化剤が、経時的安定性、耐水性、耐候性等の点で好適である。
(a’)成分のガラス転移温度は、通常−20〜80℃程度、好ましくは−10〜60℃程度である。
【0027】
水性媒体(II)においては、上述の成分以外に、通常塗料に使用可能な添加剤、例えば、体質顔料、骨材、染料、繊維、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、造膜助剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、消泡剤、香料、光安定剤、紫外線吸収剤、光触媒、架橋剤、難燃剤、溶剤等を本発明の効果を阻害しない範囲で混合することもできる。水性媒体(II)は以上に述べたような成分を常法により均一に混合することで製造することができる。
【0028】
[多彩模様塗料の製造方法]
本発明の多彩模様塗料組成物は、上述の着色水性塗料(I)を水性媒体(II)に加え粒状に分散させて得ることができる。水性媒体(II)に(a’)を含む場合は、
(ア):(d)成分を含有する水性媒体(II)に、着色水性塗料(I)を分散させた後、(a’)成分を混合する方法;あるいは、
(イ):(a’)成分及び(d)成分を含有する水性媒体(II)に対し、着色水性塗料(II)を分散させる方法;
等によって製造することができる。このうち、上記(イ)の製造方法によれば、塗料の高固形分化を図ることができる。このような高固形分化により、塗料の粘性調整が容易となり、また塗膜の乾燥時間を短縮することができる。
【0029】
着色ゲル粒子の形状は特に限定されず、球状、偏平状、糸状等種々の形状のものを得ることができる。着色ゲル粒子の粒子径は、通常0.01〜10mm、好ましくは0.1〜5mm程度である。
着色ゲル粒子の形状や粒子径を所望のものとするには、攪拌羽根の形状、攪拌槽に対する攪拌羽根の大きさや位置、攪拌羽根の回転速度、着色水性塗料(I)の粘性や添加方法、水性媒体(II)の粘性、(d)成分の濃度等を適宜選択・調整すればよい。
【0030】
本発明組成物は、少なくとも1種の着色ゲル粒子を含むものであるが、多彩な模様面を表出するためには、色相の異なる2種以上の着色ゲル粒子が含まれることが望ましい。着色ゲル粒子の色相は、所望の模様に応じ適宜設定することができる。着色ゲル粒子として、透明性を有する粒子を含むこともできる。
色相が異なる2種以上の着色粒子を含む多彩模様塗料組成物を得るためには、例えば、
単色の着色ゲル粒子が分散した分散液をそれぞれ製造した後、これらを混合する方法;あるいは、
色相が異なる2種以上の着色水性塗料を、同時または順に水性媒体に添加し分散させる方法;
等の方法を採用すればよい。
【0031】
[多彩模様塗料組成物の塗装方法]
本発明組成物は、例えば、建築用、建材用、土木用、木工用、プラスチック製品用、金属製品用、非鉄金属製品用等の種々の用途に適用することができる。具体的には、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、合板、プラスチック板、金属板、ガラス、磁器タイル等の各種基材の表面化粧材として用いることが可能である。これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えば、シーラー、サーフェーサー、フィラー等)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたもの等であってもよい。
【0032】
塗装時には、スプレー、ローラー、刷毛等の各種塗装器具を使用することができる。
塗装の際には、水を用いて希釈することも可能である。水の混合量は、塗装器具の種類、塗装下地の状態、塗装時の温度等を勘案して適宜設定すればよい。
本発明組成物の塗付量は、通常0.2〜1.6kg/m、好ましくは0.3〜1.2kg/mである。また、本発明組成物を塗装した後の乾燥は通常、常温で行えばよいが、加熱することも可能である。乾燥時間は、通常、常温で1〜5時間である。
本発明組成物では、太陽光や降雨等に直接晒される場合においても十分な物性を有する塗膜が形成できる。すなわち、本発明組成物は、最表面の仕上塗膜を形成するものとして好適に使用できるものである。但し、必要に応じ本発明組成物の塗装後に透明塗料等を塗装することも可能である。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0034】
(試験例1)
白色粒子分散液1
まず、容器内に合成樹脂エマルション1を85.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤8.3重量部、水5.7重量部、ゲル化剤として硫酸アルミニウム0.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより、水性媒体1を製造した。
次に、別の容器内に合成樹脂エマルション1を40.0重量部を仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤4.0重量部、白色顔料液として酸化チタン60重量%分散液12.0重量部、ゲル形成物質としてカルボキシメチルセルロース2重量%水溶液43.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより白色水性塗料1を製造した。
上述の水性媒体1(100重量部)に対し、白色水性塗料1を100重量部加えて分散(攪拌羽根の回転速度;900rpm)することにより、粒径約1mmの白色粒子が分散した白色粒子分散液1を得た。
【0035】
黒色粒子分散液1
容器内に合成樹脂エマルション1を40.0重量部仕込み、攪拌羽根の回転速度を1800rpmとして攪拌を行いながら、造膜助剤4.0重量部、黒色顔料液として黒色酸化鉄50重量%分散液12.0重量部、ゲル形成物質としてカルボキシメチルセルロース2重量%水溶液43.5重量部、消泡剤0.5重量部を均一に混合することにより黒色水性塗料1を製造した。
上述の水性媒体1(100重量部)に対し、黒色水性塗料1を100重量部加えて分散(攪拌羽根の回転速度;900rpm)することにより、粒径約1mmの黒色粒子が分散した黒色粒子分散液1を得た。
【0036】
多彩模様塗料1
白色粒子分散液1と黒色粒子分散液1とを50:50の重量比率にて混合することにより、多彩模様塗料1を得た。
【0037】
なお、試験例1における合成樹脂エマルション1としては、アクリル樹脂エマルション(メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:28.2:0.8)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%)を使用した。
【0038】
(試験例2〜7)
表1に示す配合に従い、試験例1と同様の方法で、それぞれ白色粒子分散液、黒色粒子分散液、多彩模様塗料を製造した。なお、試験例2〜7では、上記合成樹脂エマルション1の他に、以下の合成樹脂エマルション2〜7を使用した。
【0039】
・合成樹脂エマルション2
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:28.7:0.3)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:34℃、固形分:50重量%
【0040】
・合成樹脂エマルション3
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:26.7:2:0.3)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0041】
・合成樹脂エマルション4
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(モノマー重量比33:38:27:2)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0042】
・合成樹脂エマルション5
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:38:26.7:2:0.3)、乳化剤:アニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0043】
・合成樹脂エマルション6
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比33:37:28:2)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0044】
・合成樹脂エマルション7
メチルメタクリレート−シクロヘキシルメタクリレート−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体(モノマー重量比32:36:28:4)、乳化剤:反応性ノニオン性乳化剤、ガラス転移温度:35℃、固形分:50重量%
【0045】
(試験例8)
表1に示す配合に従い、試験例1と同様の方法で多彩模様塗料の製造を試みた。しかし、試験例8では、白色粒子分散液、黒色粒子分散液をそれぞれ製造する際に、安定な粒子が生成せず、全体が顔料色で濁ってしまった。
【0046】
【表1】

【0047】
試験例1〜7の多彩模様塗料について以下の試験を行った。
(貯蔵安定性試験)
上記方法にて得られた多彩模様塗料を、予めシーラーが塗装されたスレート板(300×300mm)に塗付量0.6kg/mでスプレー塗装した。次に、その塗料450gを500cc容器に入れて密封し、50℃環境下で7日間貯蔵した後、同様の方法でスレート板にスプレー塗装した。このようにして得られた塗装板の外観を目視にて確認した。評価は、貯蔵前の塗装板と貯蔵後の塗装板を比較し、貯蔵後の塗装板に変化が認められなかったものを「◎」、貯蔵後の塗装板に著しい変化が認められたものを「×」とする4段階(◎>○>△>×)で行った。試験結果を表2に示す。
【0048】
(耐水性試験)
各試験例における黒色粒子分散液を、予めシーラーが塗装されたスレート板(150×70mm)に塗付量0.6kg/mでスプレー塗装し、常温にて16時間乾燥した。次に、この試験板を50℃の温水に6時間浸漬し、浸漬後の外観変化を目視にて観察した。評価は、外観変化が認められなかったものを「◎」、著しい外観変化(白化等)が認められたものを「×」とする4段階(◎>○>△>×)で行った。試験結果を表2に示す。
【0049】
(耐候性試験)
各試験例における黒色粒子分散液を、予めシーラーが塗装されたスレート板(60×40mm)に塗付量0.6kg/mでスプレー塗装し、常温にて7日間乾燥した。このようにして得られた試験板を耐候性試験に供した。耐候性試験は、促進耐候性試験機「メタルウェザー」(ダイプラ・ウィンテス株式会社製)を用い、光照射4時間・結露4時間(計8時間)を1サイクルとして80サイクルまで実施した。評価は、初期色相に対する80サイクル後の色差(△E)を測定することによって行い、△Eが1未満のものを「◎」、△Eが1以上2未満のものを「○」、△Eが2以上5未満のものを「△」、△Eが5以上のものを「×」とした。
試験結果を表2に示す。
【0050】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂エマルション(a)、ゲル形成物質(b)、及び着色顔料(c)を含む着色水性塗料(I)を、ゲル化剤(d)を含有する水性媒体(II)に分散して得られる着色ゲル粒子を含む多彩模様塗料組成物であって、
前記合成樹脂エマルション(a)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%以下であることを特徴とする多彩模様塗料組成物。
【請求項2】
前記合成樹脂エマルション(a)を構成するモノマー群において、水酸基含有モノマーの比率が0.1〜20重量%であることを特徴とする請求項1記載の多彩模様塗料組成物。
【請求項3】
前記水性媒体(II)が、合成樹脂エマルション(a’)及びゲル化剤(d)を含有するものであり、前記合成樹脂エマルション(a’)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマー群の乳化重合物であり、該モノマー群におけるカルボキシル基含有モノマーの比率が3重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の多彩模様塗料組成物。
【請求項4】
前記合成樹脂エマルション(a’)を構成するモノマー群において、水酸基含有モノマーの比率が0.1〜20重量%であることを特徴とする請求項3記載の多彩模様塗料組成物。

【公開番号】特開2007−70601(P2007−70601A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100980(P2006−100980)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】