説明

多心ケーブルアセンブリ及び多心ケーブルアセンブリの製造方法

多心ケーブルアセンブリ及び多心ケーブルアセンブリの製造方法が開示される。多心ケーブルアセンブリは、心線と熱可塑性樹脂組成物からなる被覆とを含んでなる。熱可塑性樹脂組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン及びポリマー相溶化剤を含んでいる。熱可塑性樹脂組成物はさらに難燃剤を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多心ケーブルアセンブリ及び多心ケーブルアセンブリの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気装置においては、かかる装置内の様々な部品間及びかかる装置間での電力及び信号伝送のために多心ケーブルアセンブリが一般化している。多心ケーブルアセンブリ用の配線技術では、しばしば平形導線ケーブルともいわれるリボンケーブルが一般に好まれる。その理由は特に高さが小さくて重量が軽いことにあるが、これらは本質的に心線の高さ及び重量のみで決定される。その性質上、リボンケーブルはほとんどスペースを取らず、しかも柔軟である。良好な電気的及び機械的性質並びに小さい所要スペースのため、これらのフラットリボンケーブルは、公共設備の配線用、自動車の固定部品と可動部品との間での電力及び信号伝送用、オフィスオートメ化用の機器類などで有用である。
【0003】
多心ケーブルアセンブリ用として常用されている電気絶縁材料はPVCである。それは比較的安価であり、広く入手可能であり、柔軟であり、しかも天然の難燃性を有する。環境への悪影響のため、絶縁層でのハロゲン化樹脂の使用を低減又は排除すべきであるという要求が強くなりつつある。実際、多くの国では、PVCのようなハロゲン化材料の使用の減少を命令し始めている。したがって、アセンブリ中の電気絶縁材料(即ち、被覆)がPVC又は他のハロゲン系材料でない新しい多心ケーブルアセンブリを開発しようという要望が引き続き存在している。
【特許文献1】欧州特許第0329423号公報
【特許文献2】欧州特許第0362660号公報
【特許文献3】欧州特許第0369814号公報
【特許文献4】欧州特許第0379286号公報
【特許文献5】欧州特許第0413972号公報
【特許文献6】欧州特許第0467113号公報
【特許文献7】欧州特許第639620号公報
【特許文献8】欧州特許第0719833号公報
【特許文献9】欧州特許第0732372号公報
【特許文献10】国際公開第2000/015680号公報
【特許文献11】国際公開第2001/092410号公報
【特許文献12】国際公開第2003/025064号公報
【特許文献13】国際公開第97/01600号公報
【特許文献14】米国特許第2933480号公報
【特許文献15】米国特許第3093621号公報
【特許文献16】米国特許第3082292号公報
【特許文献17】米国特許第3211709号公報
【特許文献18】米国特許第3537297号公報
【特許文献19】米国特許第3728424号公報
【特許文献20】米国特許第3790519号公報
【特許文献21】米国特許第3884993号公報
【特許文献22】米国特許第3894999号公報
【特許文献23】米国特許第4000348号公報
【特許文献24】米国特許第4059654号公報
【特許文献25】米国特許第4166055号公報
【特許文献26】米国特許第4239673号公報
【特許文献27】米国特許第4356345号公報
【特許文献28】米国特許第4383082号公報
【特許文献29】米国特許第4443657号公報
【特許文献30】米国特許第4584334号公報
【特許文献31】米国特許第4659872号公報
【特許文献32】米国特許第4692566号公報
【特許文献33】米国特許第4760118号公報
【特許文献34】米国特許第4783579号公報
【特許文献35】米国特許第4990558号公報
【特許文献36】米国特許第5166264号公報
【特許文献37】米国特許第5258455号公報
【特許文献38】米国特許第5262480号公報
【特許文献39】米国特許第5294655号公報
【特許文献40】米国特許第5359150号公報
【特許文献41】米国特許第5364898号公報
【特許文献42】米国特許第5397822号公報
【特許文献43】米国特許第5455292号公報
【特許文献44】米国特許第5500489号公報
【特許文献45】米国特許第5592739号公報
【特許文献46】米国特許第5885710号公報
【特許文献47】米国特許第6045883号公報
【特許文献48】米国特許第6225565号公報
【特許文献49】米国特許第6306978号公報
【特許文献50】米国特許第6429237号公報
【特許文献51】米国特許第6610442号公報
【特許文献52】米国特許第6646168号公報
【特許文献53】米国特許第6651317号公報
【特許文献54】米国特許第6737586号公報
【特許文献55】米国特許第4952630号公報
【特許文献56】米国特許第5034459号公報
【特許文献57】米国特許第5132629号公報
【特許文献58】米国特許第5416419号公報
【特許文献59】米国特許第6258881号公報
【特許文献60】米国特許第6322882号公報
【特許文献61】米国特許出願公開第2002/035206号公報
【特許文献62】米国特許出願公開第2003/0026563号公報
【特許文献63】米国特許出願公開第2005/0016753号公報
【特許文献64】米国特許出願公開第2002/0112875号公報
【特許文献65】米国特許出願公開第2003/0096123号公報
【特許文献66】米国特許出願公開第2003/0049402号公報
【特許文献67】米国特許出願公開第2004/0102551号公報
【特許文献68】米国特許出願公開第2004/0106750号公報
【特許文献69】米国特許出願公開第2004/0122153号公報
【特許文献70】米国特許出願公開第2004/0214952号公報
【特許文献71】米国特許出願公開第2004/0260036号公報
【特許文献72】米国特許出願公開第2004/0171733号公報
【特許文献73】米国特許出願公開第2004/0082719号公報
【特許文献74】米国特許出願公開第2001/0053820号公報
【特許文献75】特開平09−241446号公報
【特許文献76】特開平09−048883号公報
【特許文献77】特開平07−166026号公報
【特許文献78】特開平06−057130号公報
【特許文献79】特開2003−261760号公報
【特許文献80】特開平11−209534号公報
【特許文献81】特開平11−185532号公報
【特許文献82】特開平07−224193号公報
【特許文献83】特開平06−009828号公報
【特許文献84】特開平02−133462号公報
【特許文献85】特開平03−220231号公報
【特許文献86】特開平03−267146号公報
【特許文献87】特開平03−418209号公報
【特許文献88】特開平03−457042号公報
【特許文献89】特開2003−253066号公報
【特許文献90】特開平09−048883号公報
【特許文献91】特開2003−226792号公報
【非特許文献1】米国特許出願第11/256,765号公報
【非特許文献2】米国特許出願第11/256,766号公報
【非特許文献3】米国特許出願第11/256,827号公報
【非特許文献4】米国特許出願第11/256,833号公報
【非特許文献5】米国特許出願第11/257,430号公報
【非特許文献6】米国特許出願第11/256,834号公報
【非特許文献7】米国特許出願第11/256,825号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述のニーズは、並列隣接状態で配列された2以上の被覆線を含むと共に、隣接する被覆線間に1以上の実質的な界面接触領域を設けてなる多心ケーブルアセンブリであって、
被覆線の1以上が心線及び熱可塑性樹脂組成物からなる被覆を含み、
熱可塑性樹脂組成物が、
(i)ポリ(アリーレンエーテル)、
(ii)ポリオレフィン、及び
(iii)ポリマー相溶化剤
を含み、
被覆が心線をおおって配設されており、
各被覆線が隣接する被覆線に少なくとも部分的に接合されている多心ケーブルアセンブリによって満たされる。
【0005】
別の態様では、
2以上の被覆線を並列隣接状態で配列して、隣接する被覆線間に1以上の実質的な界面接触領域を設ける段階と、
熱圧縮、超音波溶接、溶剤接着、レーザー溶接、接着剤接合及び振動溶接の1以上を用いて2以上の被覆線を少なくとも部分的に接合する段階と
を含んでなる多心ケーブルアセンブリの製造方法であって、
被覆線の1以上が心線及び熱可塑性樹脂組成物からなる被覆を含み、
熱可塑性樹脂組成物が、
(i)ポリ(アリーレンエーテル)、
(ii)ポリオレフィン、及び
(iii)ポリマー相溶化剤
を含み、
被覆が心線をおおって配設されている方法が提供される。
【0006】
別の態様では、
第一の絶縁材シートと第二の絶縁材シートとの間に複数の心線を配置する段階と、
第一の絶縁材シートを第二の絶縁材シートに少なくとも部分的に接合する段階と、
を含んでなる方法であって、
第一及び第二の絶縁材シートはそれぞれ長さ及び幅を有すると共に、長さは幅より大きく、
複数の心線は第一及び第二の絶縁材シートの長さに沿って互いに平行に配列され、
第一及び第二の絶縁材シートの1以上が、
(i)ポリ(アリーレンエーテル)、
(ii)ポリオレフィン、及び
(iii)ポリマー相溶化剤
を含む熱可塑性樹脂組成物からなる方法で多心ケーブルアセンブリが製造される。
【0007】
この方法は、2つの絶縁材シートを接合する方法として、熱圧縮、超音波溶接、溶剤接着、レーザー溶接、接着剤接合及び振動溶接の1以上を含み得る。
【0008】
図面の簡単な説明
図1は、心線11が実質的に単一平面内にある多心ケーブルアセンブリの横断面の略図である。
【0009】
図2は、心線21が複数の平面内にある多心ケーブルアセンブリの横断面の略図である。
【0010】
図3は、隣接した被覆線30の接合部分31の略図である。
【0011】
図4は、心線41が実質的に単一平面内にある多心ケーブルアセンブリの長さ方向セクションの略図である。
【0012】
図5は、心線52を包囲する被覆の複数の層50及び51を強調して示す多心ケーブルアセンブリの横断面の略図である。
【0013】
図6は、心線61が実質的に単一平面内にある多心ケーブルアセンブリ60の長さ方向セクションの略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、これらは以下の意味をもつものと定義される。
【0015】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0016】
「任意」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0017】
同じ特性を記載しているすべての範囲の端点は、独立に結合可能であると共に、記載された端点を含んでいる。「約…より大きい」又は「約…より小さい」として示された値は、記載された端点を含んでいる。例えば、「約3.5より大きい」は3.5の値を包含する。
【0018】
本明細書中で使用する電線とは、検出可能な電気信号を伝送し得る心線を含む線材である。
【0019】
ポリ(アリーレンエーテル)/ポリオレフィンブレンドは、いくつかの理由で、多心ケーブルアセンブリにおけるポリマー被覆としてあまり選択されない。これらの種類の組成物は、剛性を要求する用途では多く使用されてきたが、一般にはたわみ性を要求する用途(例えば、多心ケーブルアセンブリ)に適さないと考えられている。さらに、本明細書中に記載されるようなポリ(アリーレンエーテル)/ポリオレフィンブレンドは、ポリオレフィン母材中に分散したポリ(アリーレンエーテル)を含んでいる。ポリオレフィンでは金属で触媒される劣化の問題が知られていることを考えると、金属で触媒される劣化が起こり得る環境中でポリオレフィン母材を有する組成物を成功裡に使用できることはあり得ないように思われる。さらに、ポリ(アリーレンエーテル)はそのガラス転移温度(Tg)より高い温度に暴露されると微粒子及びゲルを形成する傾向を有しており、これらは火花リークを生み出す欠陥がポリマー被覆中に生じる可能性を高める。
【0020】
本明細書中に記載されるように被覆用として使用される熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも2つの相、即ちポリオレフィン相及びポリ(アリーレンエーテル)相を含んでいる。ポリオレフィン相は連続相である。若干の実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)相はポリオレフィン相中に分散している。両相間の良好な相溶化は、低温及び室温での高い衝撃強さ、良好な熱老化性、良好な難燃性、並びに大きい引張伸びをはじめとする向上した物理的性質をもたらし得る。一般に、組成物の形態は相溶化の程度又は品質を表すことが認められている。小さくて比較的一様な粒度のポリ(アリーレンエーテル)粒子が組成物の領域全体にわたって均等に分布していることは、良好な相溶化を表している。
【0021】
本明細書中に記載される熱可塑性樹脂組成物は、ポリスチレン又はゴム改質ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン又はHIPSとしても知られる)のようなアルケニル芳香族樹脂を実質的に含まない。実質的に含まないとは、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン及びブロックコポリマーの合計重量を基準にして10重量%(wt%)未満、さらに詳しくは7wt%未満、さらに詳しくは5wt%未満、さらに一段と詳しくは3wt%未満のアルケニル芳香族樹脂を含むこととして定義される。一実施形態では、本組成物はアルケニル芳香族樹脂を完全に含まない。意外にも、アルケニル芳香族樹脂の存在はポリ(アリーレンエーテル)相とポリオレフィン相との相溶化にマイナスの影響を及ぼすことがある。
【0022】
一実施形態では、本組成物は2000キログラム/平方センチメートル(kg/cm)から18000kg/cmまで(200メガパスカル(MPa)から1800MPa未満まで)の曲げ弾性率を有する。この範囲内では、曲げ弾性率は8000kg/cm(1000MPa)以上、さらに詳しくは10000kg/cm(1200MPa)以上であり得る。やはりこの範囲内では、曲げ弾性率は17000kg/cm(1700MPa)以下、さらに詳しくは16000kg/cm(1600MPa)以下であり得る。本明細書中に記載される曲げ弾性率は、1.27ミリメートル/分の速度を用いてASTM D790−03で測定される。値は3つの試料の平均である。曲げ弾性率用の試料は、Toyo Machinery & Metal Co.LTDから入手したPlastar Ti−80G上で、600〜700キログラム重/平方センチメートルの射出圧力及び15〜20秒の保圧時間を用いて形成した。残りの成形条件は表1に示す。
【0023】
【表1】


本明細書中で使用する「ポリ(アリーレンエーテル)」は、下記の式(I)を有する構造単位を複数含んでいる。
【0024】
【化1】

式中、各構造単位について、Q及びQは各々独立に水素、ハロゲン、第一若しくは第二低級アルキル(例えば、1〜7の炭素原子を含むアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、炭化水素オキシ、アリール、又はハロゲン原子と酸素原子とを2以上の炭素原子が隔てているハロ炭化水素オキシである。若干の実施形態では、各Qは独立にアルキル又はフェニル(例えば、C1−4アルキル)であり、各Qは独立に水素又はメチルである。ポリ(アリーレンエーテル)は、通例はヒドロキシ基に対してオルト位に位置するアミノアルキル含有末端基を有する分子を含み得る。また、通例はテトラメチルジフェニルキノン副生物が存在する反応混合物から得られるテトラメチルジフェニルキノン(TMDQ)末端基が存在することも多い。
【0025】
ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、イオノマー又はブロックコポリマー、並びに上述のものの1種以上を含む組合せの形態を有し得る。ポリ(アリーレンエーテル)には、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を任意には2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と共に含むポリフェニレンエーテルがある。
【0026】
ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及び2,6−キシレノールと2,3,6−トリメチルフェノールの組合せのようなモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングで製造できる。かかるカップリングには一般に触媒系を使用する。触媒系は、銅、マンガン又はコバルトの化合物のような重金属化合物を、通常は他の各種物質(例えば、第二アミン、第三アミン、ハロゲン化物、又は上述のものの2種以上の組合せ)と共に含み得る。
【0027】
一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は封鎖ポリ(アリーレンエーテル)からなる。末端ヒドロキシ基は、例えばアシル化反応により封鎖剤で封鎖できる。選択される封鎖剤は、好ましくは、反応性の低いポリ(アリーレンエーテル)を生じることで、高温での加工中におけるポリマー鎖の架橋及びゲル又は黒斑点の形成を低減又は防止するものである。好適な封鎖剤には、例えば、サリチル酸、アントラニル酸又はこれらの置換誘導体のエステルなどがあり、サリチル酸のエステル、特にサリチルカーボネート及び線状ポリサリチレートが好ましい。本明細書中で使用する「サリチル酸のエステル」という用語は、カルボキシ基、ヒドロキシ基又はその両方がエステル化された化合物を包含する。好適なサリチレートには、例えば、フェニルサリチレートのようなアリールサリチレート、アセチルサリチル酸、サリチルカーボネート及びポリサリチレート(線状ポリサリチレート及びジサリチリドやトリサリチリドのような環状化合物の両方を含む)がある。一実施形態では、封鎖剤はサリチルカーボネート及びポリサリチレート(特に線状ポリサリチレート)、並びに上述のものの1種以上を含む組合せから選択される。例示的な封鎖ポリ(アリーレンエーテル)及びその製法は、米国特許第4760118号(Whiteら)及び同第6306978号(Braatら)に記載されている。
【0028】
ポリサリチレートによるポリ(アリーレンエーテル)の封鎖は、ポリ(アリーレンエーテル)鎖中に存在するアミノアルキル末端基の量を低減させるとも考えられる。アミノアルキル基は、ポリ(アリーレンエーテル)の製造プロセス中にアミンを使用する酸化カップリング反応の結果である。ポリ(アリーレンエーテル)の末端ヒドロキシ基に対してオルト位にあるアミノアルキル基は、高温で分解しやすい。かかる分解は、第一又は第二アミンの再生及びキノンメチド末端基の生成をもたらすと考えられ、これは2,6−ジアルキル−1−ヒドロキシフェニル末端基を生成することがある。アミノアルキル基を含むポリ(アリーレンエーテル)をポリサリチレートで封鎖すれば、かかるアミノ基を除去してポリマー鎖の封鎖末端ヒドロキシ基を生じ、2−ヒドロキシ−N,N−アルキルベンズアミン(サリチルミド)の生成をもたらすと考えられる。アミノ基の除去及び封鎖は、高温に対して一層安定なポリ(アリーレンエーテル)を与え、それによってポリ(アリーレンエーテル)の加工中に生じる分解生成物を減少させる。
【0029】
ポリ(アリーレンエーテル)は、単分散ポリスチレン標準(40℃のスチレン−ジビニルベンゼンゲル)及びクロロホルム1ミリリットル当たり1ミリグラムの濃度を有する試料を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して3000〜40000グラム/モル(g/mol)の数平均分子量及び5000〜80000g/molの重量平均分子量を有し得る。ポリ(アリーレンエーテル)又はポリ(アリーレンエーテル)の組合せは、25℃のクロロホルム中で測定して約0.25dl/g以上の初期固有粘度を有し得る。初期固有粘度は、組成物の他の成分と溶融混合する前のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と定義され、最終固有粘度は、組成物の他の成分と溶融混合した後のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と定義される。当業者には理解される通り、ポリ(アリーレンエーテル)の粘度は溶融混合後には最大30%まで高くなることがある。増加パーセントは、((溶融混合後の最終固有粘度)−(溶融混合前の初期固有粘度))/(溶融混合前の初期固有粘度)で計算できる。2通りの固有粘度を使用する場合、正確な比率の決定は使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終的な物理的性質に多少依存する。
【0030】
熱可塑性樹脂組成物を製造するために使用するポリ(アリーレンエーテル)は、目に見える微粒子不純物を実質的に含まないものであり得る。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は直径が15マイクロメートルを超える微粒子不純物を実質的に含まない。本明細書中で使用する「目に見える微粒子不純物を実質的に含まない」という用語は、ポリ(アリーレンエーテル)に適用される場合、50ミリリットルのクロロホルム(CHCl)中に溶解した10グラムのポリマー材料試料がライトボックス内で肉眼で観察して5未満の可視斑点を示すことを意味する。肉眼で見える粒子は、通例は直径が40マイクロメートルを超えるものである。本明細書中で使用する「約15マイクロメートルを超える微粒子不純物を実質的に含まない」という用語は、400ミリリットルのCHCl中に溶解した40グラムのポリマー材料試料についてPacific Instruments社のABS2アナライザーで測定した場合、約15マイクロメートルの粒度を有する微粒子の1グラム当たりの数が、溶解ポリマー材料20ミリリットルずつからなる5つの試料を1ミリリットル/分(±5%)の流量でアナライザーに流した場合の平均に基づいて50未満であることを意味する。
【0031】
被覆用の絶縁組成物は、組成物の総重量に対して30〜65重量%(wt%)の量でポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内では、ポリ(アリーレンエーテル)の量は40wt%以上、さらに詳しくは45wt%以上であり得る。やはりこの範囲内では、ポリ(アリーレンエーテル)の量は55wt%以下であり得る。
【0032】
ポリオレフィンは一般構造C2nを有し、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリイソブチレンを包含する。例示的なホモポリマーには、ポリエチレン、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)及びイソタクチックポリプロピレンがある。このような一般構造のポリオレフィン樹脂及びその製造方法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第2933480号、同第3093621号、同第3211709号、同第3646168号、同第3790519号、同第3884993号、同第3894999号、同第4059654号、同第4166055号及び同第4584334号に記載されている。
【0033】
エチレンとα−オレフィン(例えば、プロピレン、オクテン及び4−メチルペンテン−1)とのコポリマー並びにエチレンと1種以上のゴムとのコポリマー及びプロピレンと1種以上のゴムとのコポリマーのようなポリオレフィンのコポリマーも使用できる。エチレンとC〜C10モノオレフィンと非共役ジエンとのコポリマー(本明細書中ではEPDMコポリマーという)も好適である。EPDMコポリマー用の好適なC〜C10モノオレフィンの例には、プロピレン、
1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン及び3−ヘキセンがある。好適なジエンには、1,4−ヘキサジエン並びに単環式及び多環式ジエンがある。エチレンと他のC〜C10モノオレフィンモノマーとのモル比は95:5〜5:95の範囲内にあり得ると共に、ジエン単位は0.1〜10モル%の量で存在し得る。EPDMコポリマーは、米国特許第5258455号に開示されているようにして、ポリフェニレンエーテル上にグラフト化するためのアシル基又は求電子基で官能化できる。
【0034】
熱可塑性樹脂組成物は、単一のホモポリマー、ホモポリマーの組合せ、単一のコポリマー、コポリマーの組合せ、又はホモポリマー及びコポリマーからなる組合せを含み得る。
【0035】
一実施形態では、ポリオレフィンは、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、及びポリプロピレンと高密度ポリエチレンの組合せからなる群から選択される。ポリプロピレンはホモポリプロピレン又はポリプロピレンコポリマーであり得る。ポリプロピレンとゴム又はブロックコポリマーとのコポリマーは、時には耐衝撃性改良ポリプロピレンといわれる。かかるコポリマーは通例は異相性であり、非晶質相及び結晶相の両方を有するのに十分な長さの各成分セクションを有している。さらに、ポリプロピレンはホモポリマーとコポリマーの組合せ、異なる融解温度を有するホモポリマーの組合せ、又は異なるメルトフローレートを有するホモポリマーの組合せからなり得る。
【0036】
一実施形態では、ポリプロピレンはイソタクチックポリプロピレンのような結晶性ポリプロピレンからなっている。結晶性ポリプロピレンは、20%以上、さらに詳しくは25%以上、さらに一段と詳しくは30%以上の結晶化度を有するポリプロピレンと定義される。結晶化度は示差走査熱量測定法(DSC)で測定できる。
【0037】
若干の実施形態では、ポリプロピレンは134℃以上、さらに詳しくは140℃以上、さらに一段と詳しくは145℃以上の融解温度を有する。
【0038】
ポリプロピレンは、0.4グラム/10分を超えて15グラム/10分(g/10分)以下のメルトフローレート(MFR)を有する。この範囲内では、メルトフローレートは0.6g/10分以上であり得る。やはりこの範囲内では、メルトフローレートは10g/10分以下、さらに詳しくは6g/10分以下、さらに一段と詳しくは5g/10分以下であり得る。メルトフローレートは、粉末化又はペレット化ポリプロピレン、2.16キログラムの荷重、及び230℃の温度を使用しながらASTM D1238に従って測定できる。
【0039】
高密度ポリエチレンは、ホモポリエチレン又はポリエチレンコポリマーであり得る。さらに、高密度ポリエチレンはホモポリマーとコポリマーの組合せ、異なる融解温度を有するホモポリマーの組合せ、又は異なるメルトフローレートを有するホモポリマーの組合せからなり得ると共に、一般に0.941〜0.965g/cmの密度を有し得る。
【0040】
若干の実施形態では、高密度ポリエチレンは124℃以上、さらに詳しくは126℃以上、さらに一段と詳しくは128℃以上の融解温度を有する。
【0041】
高密度ポリエチレンは、0.10グラム/10分以上で15グラム/10分(g/10分)以下のメルトフローレート(MFR)を有する。この範囲内では、メルトフローレートは1.0g/10分以上であり得る。やはりこの範囲内では、メルトフローレートは10g/10分以下、さらに詳しくは6g/10分以下、さらに一段と詳しくは5g/10分以下であり得る。メルトフローレートは、粉末化又はペレット化ポリエチレン、2.16キログラムの荷重、及び190℃の温度を使用しながらASTM D1238に従って測定できる。
【0042】
一実施形態では、ポリオレフィンは、(i)約10%以上のα−オレフィン含有量を有するエチレン/C〜C20α−オレフィンコポリマー、(ii)熱可塑性加硫ゴム、(iii)線状低密度ポリエチレンと熱可塑性加硫ゴムとの組合せ、(iv)約10%以上のα−オレフィン含有量を有するエチレン/C〜C20α−オレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンと熱可塑性加硫ゴムとの組合せ、(v)約10%以上のα−オレフィン含有量を有するエチレン/C〜C20α−オレフィンコポリマーと熱可塑性加硫ゴムとの組合せ、又は(vi)約10%以上のα−オレフィン含有量を有するエチレン/C〜C20α−オレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンとの組合せからなる。
【0043】
本組成物は、組成物の総重量に対して15〜35重量%(wt%)の量でポリオレフィンを含み得る。この範囲内では、ポリオレフィンの量は17wt%以上、さらに詳しくは20wt%以上であり得る。やはりこの範囲内では、ポリオレフィンの量は33wt%以下、さらに詳しくは30wt%以下であり得る。
【0044】
一実施形態では、ポリオレフィンは高密度ポリエチレン(HDPE)及びポリプロピレンからなり、HDPEの重量基準の量はポリプロピレンの重量基準の量より少ない。
【0045】
一実施形態では、ポリオレフィンはポリ(アリーレンエーテル)の重量基準の量より少ない重量基準の量で存在している。
【0046】
ポリマー相溶化剤は、ポリオレフィン相とポリ(アリーレンエーテル)相との相溶性を向上させる樹脂及び添加剤である。ポリマー相溶化剤には、ブロックコポリマー、ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマー、及びブロックコポリマーと後述のようなポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーの組合せがある。
【0047】
本明細書中で使用する「ブロックコポリマー」とは、ただ1種のブロックコポリマー又はブロックコポリマーの組合せをいう。ブロックコポリマーは、繰返しアリールアルキレン単位からなる1以上のブロック(A)と、繰返しアルキレン単位からなる1以上のブロック(B)とを含んでいる。ブロック(A)及び(B)の配列は、線状構造又は枝分れ鎖を有するいわゆるラジアルテレブロック構造であり得る。A−B−Aトリブロックコポリマーは、繰返しアリールアルキレン単位からなるブロックAを2つ含んでいる。アリールアルキレン単位のペンダントアリール部分は、単環式又は多環式であり得ると共に、環状部分上の任意の利用可能な位置に置換基を有し得る。好適な置換基には、炭素原子数1〜4のアルキル基がある。例示的なアリールアルキレン単位は、下記の式IIに示すフェニルエチレンである。
【0048】
【化2】

ブロックAはさらに、アリールアルキレン単位の量がアルキレン単位の量を超える限り、炭素原子数2〜15のアルキレン単位を含み得る。
【0049】
ブロックBは、エチレン、プロピレン、ブチレン又は上述のものの2以上の組合せのような炭素原子数2〜15の繰返しアルキレン単位を含んでいる。ブロックBはさらに、アルキレン単位の量がアリールアルキレン単位の量を超える限り、アリールアルキレン単位を含み得る。
【0050】
各々のブロックAは、他のブロックAと同一の又は異なる分子量を有し得る。同様に、各々のブロックBは他のブロックBと同一の又は異なる分子量を有し得る。ブロックコポリマーは、α,β−不飽和カルボン酸との反応で官能化できる。
【0051】
一実施形態では、Bブロックはアリールアルキレン単位と炭素原子数2〜15のアルキレン単位(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン又は上述のものの2以上の組合せ)とのコポリマーである。Bブロックはさらに、若干の不飽和非芳香族炭素−炭素結合を含み得る。
【0052】
Bブロックは制御分布コポリマーであり得る。本明細書中で使用する「制御分布」とは、いずれかのモノマーの明確なブロックが欠如している分子構造をいうものと定義される。即ち、各々のホモポリマーのTgの中間にただ1つのガラス転移温度(Tg)が存在することで示されるように、或いは陽子核磁気共鳴法で示されるように、所定の単一モノマーの「つながり」が20単位の平均最大数を有している。Bブロックが制御分布コポリマーからなる場合、各Aブロックは光散乱技術で測定して3000〜60000g/molの平均分子量を有し得る一方、各Bブロックは30000〜300000g/molの平均分子量を有し得る。Bブロックが制御分布コポリマーである場合、各Bブロックは、Aブロックに隣接した、アルキレン単位に富む1以上の末端領域と、Aブロックに隣接しない、アリールアルキレン単位に富む領域とを含んでいる。アリールアルキレン単位の総量は、ブロックコポリマーの総重量を基準にして15〜75重量%である。Bブロック中でのアルキレン単位とアリールアルキレン単位との重量比は5:1〜1:2であり得る。例示的なブロックコポリマーは、さらに米国特許出願公開第2003/181584号に開示されており、Kraton Polymers社からKRATONの商標で商業的に入手できる。例示的なグレードはA−RP6936及びA−RP6935である。
【0053】
繰返しアリールアルキレン単位は、スチレンのようなアリールアルキレンモノマーの重合で得られる。繰返しアルキレン単位は、ブタジエンのようなジエンから導かれた繰返し不飽和単位の水素化で得られる。ブタジエンは1,4−ブタジエン及び/又は1,2−ブタジエンからなり得る。Bブロックはさらに、若干の不飽和非芳香族炭素−炭素結合を含み得る。
【0054】
例示的なブロックコポリマーには、ポリフェニルエチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリフェニルエチレン(時にはポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンともいう)及びポリフェニルエチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリフェニルエチレン(時にはポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンともいう)がある。
【0055】
一実施形態では、ポリマー相溶化剤は2種のブロックコポリマーからなる。第一のブロックコポリマーは、第一のブロックコポリマーの総重量を基準にして50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有している。第二のブロックコポリマーは、第二のブロックコポリマーの総重量を基準にして50重量%以下のアリールアルキレン含有量を有している。例示的な組合せのブロックコポリマーとしては、ブロックコポリマーの総重量を基準にして15〜40重量%のフェニルエチレン含有量を有する第一のポリフェニルエチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリフェニルエチレン、及びブロックコポリマーの総重量を基準にして55〜70重量%のフェニルエチレン含有量を有する第二のポリフェニルエチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリフェニルエチレンが使用できる。50重量%を超えるアリールアルキレン含有量を有する例示的なブロックコポリマーには、Asahi社からTUFTECの商品名で商業的に入手できる、H1043のようなグレード名を有するもの、並びにKuraray社からSEPTONの商品名で入手できる若干のグレードがある。50重量%未満のアリールアルキレン含有量を有する例示的なブロックコポリマーには、Kraton Polymers社からKRATONの商標で商業的に入手できる、G−1701、G−1702、G−1730、G−1641、G−1650、G−1651、G−1652、G−1657、A−RP6936及びA−RP6935のようなグレード名のものがある。
【0056】
一実施形態では、ポリマー相溶化剤はジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマーからなる。
【0057】
一実施形態では、ポリマー相溶化剤は2種のブロックコポリマーからなり、その一方のみが制御分布コポリマーであるBブロックを含むブロックコポリマーである。
【0058】
若干の実施形態では、ブロックコポリマーはポリスチレン標準を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定して5000〜1000000グラム/モル(g/mol)の数平均分子量を有する。この範囲内では、数平均分子量は10000g/mol以上、さらに詳しくは30000g/mol以上、さらに一段と詳しくは45000g/mol以上であり得る。やはりこの範囲内では、数平均分子量は好ましくは800000g/mol以下、さらに詳しくは700000g/mol以下、さらに一段と詳しくは650000g/mol以下であり得る。
【0059】
本明細書中では、ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーは、プロピレンポリマー主鎖及び1以上のスチレンポリマーグラフトを有するグラフトコポリマーと定義される。
【0060】
ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーの主鎖又は基幹を形成するプロピレンポリマー材料は、(a)プロピレンのホモポリマー、(b)プロピレンと、エチレン及びC〜C10オレフィンからなる群から選択されるオレフィンとのランダムコポリマー(ただし、オレフィンがエチレンである場合には、重合エチレン含有量は約10重量%まで、好ましくは約4重量%までとし、オレフィンがC〜C10オレフィンである場合には、重合C〜C10オレフィン含有量は約20重量%まで、好ましくは約16重量%までとする。)、(c)プロピレンと、エチレン及びC〜C10α−オレフィンからなる群から選択される2種以上のオレフィンとのランダムターポリマー(ただし、重合C〜C10α−オレフィン含有量は約20重量%まで、好ましくは約16重量%までとし、エチレンがオレフィンの1種である場合には、重合エチレン含有量は約5重量%まで、好ましくは約4重量%までとする。)、或いは(d)反応器内で又は物理的ブレンディングでエチレン−プロピレンモノマーゴムにより耐衝撃性改良されたプロピレンのホモポリマー又はランダムコポリマーであって、改良ポリマーのエチレン−プロピレンモノマーゴム含有量が約5〜約30重量%であり、ゴムのエチレン含有量が約7〜約70重量%、好ましくは約10〜約40重量%であるものである。C〜C10オレフィンには、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、3−メチル−ヘキセンなどの線状及び枝分れC〜C10α−オレフィンがある。プロピレンホモポリマー及び耐衝撃性改良プロピレンホモポリマーが好ましいプロピレンポリマー材料である。好ましくはないが、約2〜約8重量%のジエン含有量を有するエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムで耐衝撃性改良されたプロピレンホモポリマー及びランダムコポリマーも、プロピレンポリマー材料として使用できる。好適なジエンには、ジシクロペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンなどがある。
【0061】
ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマー中でプロピレンポリマー材料の主鎖上に存在するグラフト化ポリマーに関して使用される「スチレンポリマー」という用語は、(a)スチレンのホモポリマー又は1以上のC〜C線状若しくは枝分れアルキル環内置換基を有するアルキルスチレン(特にp−アルキルスチレン)のホモポリマー、(b)(a)モノマー同士のあらゆる比率でのコポリマー、及び(c)1種以上の(a)モノマーとそのα−メチル誘導体(例えば、α−メチルスチレン)とのコポリマーであって、α−メチル誘導体がコポリマーの重量の約1〜約40%を占めるものを意味する。
【0062】
ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーは、約10〜約90重量%のプロピレンポリマー主鎖及び約90〜約10重量%のスチレンポリマーグラフトを含み得る。この範囲内では、プロピレンポリマー主鎖は総グラフトコポリマーの約20重量%以上を占め得ると共に、プロピレンポリマー主鎖は総グラフトコポリマーの約40重量%以下を占め得る。やはりこの範囲内では、スチレンポリマーグラフトは総グラフトコポリマーの約50重量%以上、さらに詳しくは約60重量%以上を占め得る。
【0063】
ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーの製法は、例えば、米国特許第4990558号(DeNicola,Jr.ら)に記載されている。好適なポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーはまた、例えば、Basell社からP1045H1及びP1085H1として商業的に入手できる。
【0064】
ポリマー相溶化剤は、組成物の総重量に対して2〜30重量%の量で存在する。この範囲内では、ポリマー相溶化剤は組成物の総重量に対して4重量%以上、さらに詳しくは6重量%以上の量で存在し得る。やはりこの範囲内では、ポリマー相溶化剤は組成物の総重量に対して18重量%以下、さらに詳しくは16重量%以下、さらに一段と詳しくは14重量%以下の量で存在し得る。
【0065】
上述の通り、熱可塑性樹脂組成物は任意の難燃剤又は難燃剤の組合せを含み得る。例示的な難燃剤には、メラミン(CAS No.108−78−1)、メラミンシアヌレート(CAS No.37640−57−6)、メラミンホスフェート(CAS No.20208−95−1)、メラミンピロホスフェート(CAS No.15541−60−3)、メラミンポリホスフェート(CAS No.218768−84−4)、メラム、メレム、メロン、ホウ酸亜鉛(CAS No.1332−07−6)、リン酸ホウ素、赤リン(CAS No.7723−14−0)、有機リン酸エステル、リン酸一アンモニウム(CAS No.7722−76−1)、リン酸二アンモニウム(CAS No.7783−28−0)、アルキルホスホネート(CAS No.78−38−6及び78−40−0)、金属ジアルキルホスフィネート、ポリリン酸アンモニウム(CAS No.68333−79−9)、低融点ガラス、並びに上述の難燃剤の2種以上の組合せがある。
【0066】
例示的な有機リン酸エステル難燃剤には、特に限定されないが、フェニル基、置換フェニル基、又はフェニル基と置換フェニル基の組合せを含むリン酸エステル、レゾルシノールに基づくビス−アリールリン酸エステル(例えば、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート)並びにビスフェノールに基づくもの(例えば、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート)がある。一実施形態では、有機リン酸エステルは、トリス(アルキルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS No.89492−23−9又はCAS No.78−33−1)、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート(例えば、CAS No.57583−54−7)、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート(例えば、CAS No.181028−79−5)、トリフェニルホスフェート(例えば、CAS No.115−86−6)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS No.68937−41−7)及び上述の有機リン酸エステルの2種以上の混合物から選択される。
【0067】
一実施形態では、有機リン酸エステルは下記の式IIIを有するビス−アリールホスフェートからなる。
【0068】
【化3】

式中、R、R及びRは独立に炭素原子数1〜5のアルキル基であり、R〜Rは独立に炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はアルキルアリール基であり、nは1〜25に等しい整数であり、s1及びs2は独立に0〜2に等しい整数である。若干の実施形態では、OR、OR、OR及びORは独立にフェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール又はトリアルキルフェノールから導かれる。
【0069】
当業者には容易に理解される通り、ビス−アリールホスフェートはビスフェノールから導かれる。例示的なビスフェノールには、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(いわゆるビスA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンから導かれる。一実施形態では、ビスフェノールはビスフェノールAからなる。
【0070】
有機リン酸エステルは相異なる分子量を有し得るので、絶縁組成物中で使用する様々な有機リン酸エステルの量を決定するのは困難である。一実施形態では、有機リン酸エステルの結果としてのリンの量は、組成物の総重量に対して0.8〜1.2重量%である。
【0071】
絶縁組成物中に存在する場合、難燃剤の量は、被覆線が特定の被覆線に関して規定される難燃性基準を満たし又は超えるのに十分なものである。
【0072】
一実施形態では、難燃剤は、組成物の総重量に対して5〜20重量%(wt%)の量で存在する有機リン酸エステルからなる。この範囲内では、有機リン酸エステルの量は7重量%以上、さらに詳しくは9重量%以上であり得る。やはりこの範囲内では、有機リン酸エステルの量は16重量%以下、さらに詳しくは14重量%以下であり得る。
【0073】
さらに、熱可塑性樹脂組成物は、酸化防止剤、10マイクロメートル以下の平均粒度を有する充填材及び補強材(例えば、ケイ酸塩、TiO、繊維、ガラス繊維、ガラス球、炭酸カルシウム、タルク及び雲母)、離型剤、UV吸収剤、安定剤(例えば、光安定剤など)、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤、泡立て剤、金属不活性化剤、並びに上述の添加剤の1種以上を含む組合せのような各種添加剤を任意に含み得る。
【0074】
火花リークがほとんど又は全くない多心ケーブルアセンブリで使用するための被覆材料の製造方法は、通例は配合押出機又はバンバリーミキサーのような溶融混合装置内で、ポリマー被覆を形成するために使用する熱可塑性樹脂組成物の成分を溶融混合(配合)することを含んでいる。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤及びポリオレフィンが同時に溶融混合される。別の実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤及び任意にはポリオレフィンの一部を溶融混合することで第一の溶融混合物が形成される。次いで、ポリオレフィン又はポリオレフィンの残部を第一の溶融混合物とさらに溶融混合することで第二の溶融混合物が形成される。別法として、ポリ(アリーレンエーテル)及びポリマー相溶化剤の一部を溶融混合して第一の溶融混合物を形成し、次いでポリオレフィン及びポリマー相溶化剤の残部を第一の溶融混合物とさらに溶融混合して第二の溶融混合物を形成することもできる。
【0075】
上述の溶融混合方法は、第一の溶融混合物を単離することなく実施でき、或いは第一の溶融混合物を単離することでも実施できる。これらの方法では、1種以上の溶融混合装置を含む1以上の溶融混合装置を使用できる。一実施形態では、被覆を形成する熱可塑性樹脂組成物の若干の成分を、心線を被覆するために使用する押出機に導入して溶融混合できる。
【0076】
ポリマー相溶化剤が2種のブロックコポリマー(即ち、50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有するもの及び50重量%未満のアリールアルキレン含有量を有する第二のもの)を含む場合には、ポリ(アリーレンエーテル)及び50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有するブロックコポリマーを溶融混合して第一の溶融混合物を形成し、次いでポリオレフィン及び50重量%以下のアリールアルキレン含有量を有するブロックコポリマーを第一の溶融混合物と溶融混合して第二の溶融混合物を形成することができる。
【0077】
任意難燃剤の添加方法及び添加位置は、通例、ポリマーアロイ及びその製造に関する一般技術分野でよく知られている通り、難燃剤の種類及び物理的性質(例えば、固体か液体か)によって決定される。一実施形態では、難燃剤を熱可塑性樹脂組成物の一成分(例えば、ポリオレフィンの一部)と合わせて濃縮物が形成され、次いでそれが残りの成分と溶融混合される。
【0078】
ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤、ポリオレフィン及び任意難燃剤は、ポリ(アリーレンエーテル)のガラス転移温度以上であるがポリオレフィンの劣化温度より低い温度で溶融混合される。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤、ポリオレフィン及び任意難燃剤は240〜320℃の押出機温度で溶融混合できるが、溶融混合中にこの範囲を超える短い期間が存在していてもよい。この範囲内では、温度は250℃以上、さらに詳しくは260℃以上であり得る。やはりこの範囲内では、温度は310℃以下、さらに詳しくは300℃以下であり得る。
【0079】
一部又は全部の成分を溶融混合した後、1以上のフィルターを通して溶融混合物を溶融濾過できる。一実施形態では、1以上のフィルターは20〜150マイクロメートルの孔径を有する。この範囲内では、孔径は130マイクロメートル以下、さらに詳しくは110マイクロメートル以下であり得る。やはりこの範囲内では、孔径は30マイクロメートル以上、さらに詳しくは40マイクロメートル以上であり得る。
【0080】
一実施形態では、フィルターは心線に適用される被覆の厚さの1/2以下の最大孔径を有する。例えば、被覆線が厚さ200マイクロメートルの被覆を有するならば、フィルターは100マイクロメートル以下の最大孔径を有する。
【0081】
溶融混合物から微粒子不純物を除去し得る任意適宜の溶融液濾過系又は装置が使用できる。一実施形態では、溶融液は単一の溶融液濾過系で濾過される。複数の溶融液濾過系も想定されている。
【0082】
好適な溶融液濾過系には、各種の材料(特に限定されないが、焼結金属、メタルメッシュ又はスクリーン、繊維金属フェルト、セラミック、上述の材料の組合せ、など)で作製したフィルターがある。特に有用なフィルターは、Pall Corporation及びMartin Kurz & Company,Inc.で製造される焼結ワイヤーメッシュフィルターをはじめとして、高いくねり度を示す焼結金属フィルターである。
【0083】
特に限定されないが、コーン形、プリーツ形、キャンドル形、スタック形、フラット形、ラップアラウンド形、スクリーン、カートリッジ、パックディスク、及び上述のものの組合せなどを含め、任意の幾何学的形状の溶融液フィルターが使用できる。幾何学的形状の選択は、各種のパラメーター(例えば、押出機のサイズ及び所望の処理量並びに所望される粒子濾過の程度)に応じて変化し得る。例示的な構造材料には、ステンレス鋼、チタン、ニッケル並びに他の金属及び合金がある。平織り、オランダ織り、スケア織り、綾織り及びこれらの織り方の組合せを含む様々な織り方の金網が使用できる。特に有用なのは、内部容積及び低流量区域を最小限に抑えると共に反復クリーニングサイクルに耐えるように設計されたフィルターである。
【0084】
溶融液濾過系は、周期的又は連続的スクリーン交換フィルター或いはバッチフィルターを含み得る。例えば、連続的スクリーン交換フィルターはスクリーンフィルターのリボンを含んでいて、これが押出機内の溶融液流路中にゆっくりと移動する。溶融混合物がフィルターを通過し、フィルターが溶融液中の微粒子不純物を捕集する。フィルターリボンは周期的又は連続的にリボンの新しい部分と交換されるので、これらの不純物はフィルターリボンと共に押出機外に運び出される。
【0085】
フィルターの最小孔径はいくつかの変数に依存する。フィルター孔径が小さくなるほど、フィルターの上流側に高い圧力を生じることがある。したがって、フィルター孔径及び運転方法は、上流側の危険な圧力を防止するように選択しなければならない。加えて、20マイクロメートル未満の孔径を有するフィルターの使用は、フィルターの上流及び下流の両方に不良流れを生じることがある。不良流れは、溶融混合物の若干部分について滞留時間を延ばすことがある。長い滞留時間は組成物中における微粒子の発生又は拡大をもたらすことがあり、かかる組成物が心線に適用されると火花リークを引き起こすことがある。
【0086】
一実施形態では、溶融濾過混合物をダイヘッドに通し、ストランドペレット化又は水中ペレット化でペレット化する。ペレット化材料は包装し、貯蔵し、輸送することができる。一実施形態では、ペレットは金属箔ラインドプラスチック袋(例えば、ポリプロピレン袋)又は金属箔ラインド紙袋中に包装される。ペレットを満たした袋からは、実質的にすべての空気を排気できる。
【0087】
一実施形態では、熱可塑性樹脂組成物は可視微粒子不純物を実質的に含まない。可視微粒子又は「黒斑点」は、一般に拡大なしに人間の目に見える暗色又は有色の微粒子であって、40マイクロメートル以上の平均直径を有している。30マイクロメートルより小さい平均直径を有する粒子を拡大なしに視覚的に認知できる人もいれば、40マイクロメートルより大きい平均直径を有する粒子しか認知できない人もいるが、本明細書中で規定平均直径に関して使用する「可視粒子」、「可視微粒子」及び「黒斑点」という用語は、40マイクロメートル以上の平均直径を有する微粒子を意味する。本明細書中で使用する「可視微粒子不純物を実質的に含まない」という用語は、熱可塑性樹脂組成物に適用される場合、組成物を射出成形して75mm×50mmの寸法及び3mmの厚さを有する5つのプラークを形成し、黒斑点の有無についてプラークのすべての面を肉眼で目視検査した時に、5つのプラークのすべてに関する黒斑点の総数が100以下、さらに詳しくは70以下、さらに一段と詳しくは50以下であることを意味する。
【0088】
一実施形態では、ペレットを溶融し、組成物を押出被覆のような適当な方法で心線に適用することで被覆線が形成される。例えば、スクリュー、クロスヘッド、ブレーカープレート、分配器、ニップル及びダイを備えた被覆押出機が使用できる。溶融した熱可塑性樹脂組成物は、心線の周囲をおおって配設された被覆を形成する。押出被覆では、心線を中心に配置すると共にダイリップの蓄積を回避するため、単一テーパーダイ、二重テーパーダイ、他の適当なダイ又はダイの組合せを使用できる。
【0089】
一実施形態では、心線に組成物を適用することで、心線をおおって配設された被覆が形成される。追加の層を被覆に適用することもできる。
【0090】
一実施形態では、心線と被覆との間に1以上の介在層を有する心線に被覆材料を適用することで、心線をおおって配設された被覆が形成される。例えば、心線と被覆との間に任意の密着性向上剤を配設することができる。別の例では、被覆の適用に先立って心線を金属不活性化剤で被覆できる。別の例では、介在層は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂組成物からなり、この組成物は場合によっては発泡している。
【0091】
心線は単一のストランド又は複数のストランドからなり得る。場合によっては、複数のストランドを束ね、撚り合わせ、又は編むことで心線を形成できる。さらに、心線は円形又は楕円形のような各種の形状を有し得る。好適な心線には、特に限定されないが、銅線、アルミニウム線、鉛線、及び上述の金属の1種以上を含む合金の線がある。心線はまた、例えばスズ又は銀で被覆されていてもよい。若干の実施形態では、心線は1種以上の導線、1種以上の金属箔、1種以上の導電性インキ、又はこれらの組合せからなり得る。心線のサイズは特に限定されない。若干の実施形態では、心線サイズは20米国ワイヤーゲージ(AWG)以上、さらに詳しくは30AWG以上であり得る。心線サイズは46AWG以下であり得る。
【0092】
心線の横断面積及び被覆の厚さは変化し得るが、通例は被覆線及び多心ケーブルアセンブリの最終用途で決定される。若干の実施形態では、被覆は0.15〜1.25ミリメートルの厚さを有する。この範囲内では、被覆厚さは0.20ミリメートル以上、さらに詳しくは0.3ミリメートル以上であり得る。やはりこの範囲内では、被覆厚さは1.15ミリメートル以下、さらに詳しくは1.05ミリメートル以下であり得る。被覆線は、例えば自動車用ハーネス電線、家庭電化製品用電線、電力用電線、計器用電線、情報通信用電線、電気自動車や船舶や飛行機用電線などを含め、特に限定せずに被覆線として使用できる。
【0093】
若干の実施形態では、押出し前に熱可塑性樹脂組成物を乾燥することが有用であり得る。例示的な乾燥条件は、60〜90℃で2〜20時間である。さらに、一実施形態では、押出被覆に際して被覆の形成前に、20〜150マイクロメートルの孔径を有する1以上のフィルターを通して熱可塑性樹脂組成物が溶融濾過される。この範囲内では、孔径は30マイクロメートル以上、さらに詳しくは40マイクロメートル以上であり得る。やはりこの範囲内では、孔径は130マイクロメートル以下、さらに詳しくは110マイクロメートル以下であり得る。被覆押出機は、上述のようなフィルターの1以上を含み得る。
【0094】
一実施形態では、フィルターは心線に適用される被覆の厚さの1/2以下の最大孔径を有する。例えば、被覆線が厚さ200マイクロメートルの被覆を有するならば、フィルターは100マイクロメートル以下の最大孔径を有する。
【0095】
別の実施形態では、溶融混合で得られる溶融濾過混合物はペレット化されない。その代わりに、溶融混合装置(通例は配合押出機)と直列の被覆押出機又はフィルム押出機を用いて、溶融濾過混合物は心線用の被覆に直接形成される。被覆押出機又はフィルム押出機は、上述のようなフィルターの1以上を含み得る。
【0096】
押出被覆前又は押出被覆中にカラーコンセントレート又はマスターバッチを組成物に添加することができる。カラーコンセントレートを使用する場合、それは通例は組成物の総重量を基準にして3重量%以下の量で存在する。一実施形態では、カラーコンセントレート中に使用する染料及び/又は顔料は塩素、臭素及びフッ素を含まない。当業者には理解される通り、カラーコンセントレート添加前の組成物の色は得られる最終の色に影響を及ぼすことがあり、場合によっては漂白剤及び/又は色安定剤を使用するのが有利なこともある。漂白剤及び色安定剤は当技術分野で公知であり、商業的に入手できる。
【0097】
押出被覆中の押出機温度は、一般に320℃以下、さらに詳しくは310℃以下、さらに詳しくは290℃以下であり得る。さらに、加工温度は、心線に被覆を施すのに十分な流動性の溶融組成物を与えるように調整される。例えば、加工温度は熱可塑性樹脂組成物の融点より高く、さらに詳しくは熱可塑性樹脂組成物の融点より10℃以上高い。
【0098】
一実施形態では、押出被覆後、被覆線は水浴、水スプレー、エアジェット、又は上述の冷却方法の1以上を含む組合せを用いて冷却される。例示的な水浴温度は20〜85℃である。前述の通り、被覆線が電線である場合、インライン方法を用いて火花リークの検査が行われる。例示的な火花リーク試験方法は、電線の心線を接地電極として使用し、電線が帯電電極に接触するようにして帯電電極の近辺又は帯電電極中を通過させることを含んでいる。電線上のポリマー被覆がピンホール又は亀裂のような欠陥を含む場合には、帯電電極と電線の心線との間にアークが発生して検出される。例示的な帯電電極には、ビードチェーン及びブラシがある。電極は、線の最終用途及び線に関する何らかの関連工業規格によって示されるように交流又は直流を用いて帯電させればよい。電圧は、火花リーク試験分野の当業者であれば決定できる。一実施形態では、電圧は2.5キロボルトである。使用する周波数は負荷キャパシタンスに依存するが、やはり火花リーク試験分野の当業者であれば決定できる。火花試験装置は、例えば、The Clinton Instrument Company、Beta LaserMike社及びZumbach社から商業的に入手できる。
【0099】
火花リークが検出された場合、電線を切断することで火花リークを有する部分が除去される。したがって、各火花リークは新しい長さの線を生じる。一実施形態では、火花リークの検査後、電線をスプール又は類似の装置上に巻き取ることができる。例示的な巻取速度は50〜1500メートル/分(m/分)である。電線は、スプール又は類似の装置と共に、又はスプール又は類似の装置なしに、コンテナ内に収納することができる。コンテナ内或いはスプール又は類似の装置上に収納される線の全長を得るため、複数の長さの線が合わされることもある。コンテナ内或いはスプール又は類似の装置上に収納される線の全長は、通常は心線の横断面積及び被覆の厚さに依存する。
【0100】
火花リーク間の電線の長さは重要である。電線のコンテナが150メートル未満の長さを有する線セクションを含む場合には、電線の使用効率が悪いことがある。これは、各種の物品(例えば、ワイヤーハーネス、多心ケーブルアセンブリなど)を製造するために電線が連続方式で使用されるからである。作業の流れを中断して新しい電線セクションを開始しなければならない。さらに、コンテナ当たり7を超える個別の電線セクションが存在すれば、多心ケーブルアセンブリの製造での電線の使用はやはり効率が悪い。かくして、火花リークの量及び頻度は重要である。
【0101】
このように、火花リークが最小限に抑えられ又は全く存在しないような頑強な状態で熱可塑性樹脂組成物を線材に適用できなければならないことは明らかである。即ち、電線のタイプに適した火花リーク試験方法を用いて電線を試験した場合、火花リークを示さない電線の最小長さは150メートル、さらに詳しくは250メートル、さらに一段と詳しくは500メートルでなければならない。火花リークは、線被覆中のギャップ(例えば、ピンホール)、粒状物質などのような被覆中の欠陥によって引き起こされ得る。
【0102】
かかる欠陥は、被覆プロセスによって導入されることもあれば、熱可塑性樹脂組成物に由来することもある。被覆プロセスによって導入される欠陥は、被覆押出機のクリーニングが不十分である場合や、被覆押出機の運転が長時間にわたって停止されたために熱可塑性樹脂組成物がゲルや黒斑点を形成した場合に生じ得る。以前の被覆からの残留材料が微粒子を形成し、それが欠陥及び火花リークをもたらすことがある。熱可塑性樹脂組成物に導入される欠陥は、被覆押出機(特に、フィルター後のセクション)の徹底的なクリーニング及び熱可塑性樹脂組成物の溶融濾過によって低減又は排除できる。
【0103】
同様に、溶融混合装置(特に、フィルター後のセクション)のクリーニングも、配合押出機の以前の使用からの残留材料に由来する粒状物質及びゲルを低減又は排除できる。
【0104】
例示的な多心ケーブルアセンブリの横断面を図1に示す。図1は、心線11をおおって配設された被覆10を示している。一実施形態では、被覆10は発泡熱可塑性樹脂組成物からなっている。心線11は、単一の心線又は複数のストランドからなり得る。
【0105】
一実施形態では、多心ケーブルアセンブリは同軸ケーブルである1以上の被覆線を含んでいる。
【0106】
一実施形態では、多心ケーブルアセンブリは2以上の電線を含んでいて、各電線は横断面積0.15〜1.10mmの心線と厚さ0.15〜0.25ミリメートル(mm)の被覆とを有している。
【0107】
別の実施形態では、多心ケーブルアセンブリは2以上の電線を含んでいて、各電線は横断面積0.30〜1.30平方ミリメートル(mm)の心線と厚さ0.15〜0.35mmの被覆とを有している。
【0108】
別の実施形態では、多心ケーブルアセンブリは2以上の電線を含んでいて、各電線は横断面積1.20〜2.10mmの心線と厚さ0.29〜0.36mmの被覆とを有している。
【0109】
別の実施形態では、多心ケーブルアセンブリは2以上の電線を含んでいて、各電線は横断面積2.90〜4.50mmの心線と厚さ0.3〜0.8mmの絶縁被覆とを有している。
【0110】
一実施形態では、個々の被覆線は並列隣接状態に配列されているが、これは横断面で見た場合にそれぞれの心線の中心が単一の線又は面に沿って存在していることを意味する。次に図3について説明すれば、各々の被覆線は被覆材(30)を介して隣接する被覆線と結合又は接合されている。心線の周囲をおおう被覆を形成する被覆材の側面は、個々の被覆線間の接触面積を増加させるため、両者が出会う部位で平坦化することができる。個々の被覆線を多心ケーブルアセンブリ中に確保するためには、最小限の量の接合が存在すれば事足りる。若干の多心ケーブルアセンブリでは、多心ケーブルアセンブリの剛性の増加を最小限に抑えるため、個々の被覆線間の接合は間欠的であり得る。
【0111】
個々の被覆線間に接合を形成するための方法は、広範囲にわたって変化し得る。有用な方法には、熱接合、超音波溶接、溶剤接合、レーザー溶接、接着剤結合及び振動溶接、又は上述の方法のいずれか2つの組合せがある。若干の実施形態では、接合を行うことができる固定具内において、個々の被覆線を前述の並列隣接状態に配列する。個々の被覆線は様々な色を有し得る。
【0112】
様々な実施形態では、多心ケーブルアセンブリは、3以上の被覆線、9以上の被覆線又は20以上の被覆線を含むリボンケーブルである。やはり様々な実施形態では、多心ケーブルアセンブリは、3以上の心線、9以上の心線又は20以上の心線を含むリボンケーブルである。
【0113】
一実施形態では、個々の被覆線を線被覆プロセスの一部として固定具内に配列することで、個々の被覆線をスプール上に巻き取ることなく、隣接する被覆線上の被覆材料を接合して多心ケーブルアセンブリを形成する。このような直接集成プロセスでは、熱接合、超音波溶接、溶剤接合、レーザー溶接、接着剤結合及び振動溶接のような1以上の接合技術を適用して十分な接合を達成できる。線コードや商標名のような情報を被覆材料上に刻印又はインキ印刷するとも、この製造プロセスの一部として行うことができ、或いは引き続いて行うことができる。
【0114】
別の実施形態では、スプールからの個々の被覆線を固定具内に配列することで、隣接する被覆線上の被覆材料を接合して多心ケーブルアセンブリを形成する。直接集成プロセスと同じく、熱接合、超音波溶接、溶剤接合、レーザー溶接、接着剤結合及び振動溶接のような1以上の接合技術を適用して十分な接合を達成できる。線コードや商標名のような情報を被覆材料上に刻印又はインキ印刷するとも、この製造プロセスの一部として行うことができ、或いは引き続いて行うことができる。
【0115】
溶剤接合又は接着剤結合を使用する場合、接合剤は隣接する被覆線間において縦方向ビードとして被覆材料に適用することが好ましい。個々の被覆線間の接触面に溶剤又は接着剤を確実に適用するため、固定具内で隣接する接触面同士を圧縮する前に溶剤又は接着剤を適用することが一般に好ましい。図3について説明すれば、隣接する被覆線間の溝31に接着剤を適用できる。図4は、被覆40として熱可塑性樹脂組成物を含む複数の被覆線を接合して複数の心線41を有する多心ケーブルアセンブリを形成する一実施形態の断面図である。
【0116】
溶剤又は接着剤は、隣接する被覆線の界面接触領域に隣接した区域において、ビードとして択一的に又は付加的に適用できる。若干の多心ケーブルアセンブリでは、個々の被覆線の接合は間欠的である一方、他のものでは、個々の被覆線の接合は連続的である。
【0117】
若干の実施形態では、接着剤は溶媒を含んでいる。有用な溶媒には、熱可塑性樹脂組成物からなる被覆の表面を軟化させ得るものがある。有用な接着剤には、UV硬化性、熱硬化性及び自己反応性の接着剤がある。例示的な接着剤には、エポキシ系、アクリレート系、シロキサン系、ウレタン系、ポリ(アリーレンエーテル)系溶液などがある。柔軟で適度に低い粘度を有する接着剤を選択することがしばしば重要である。例示的な溶媒には、クロロエタン、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼンなどの塩素化溶媒、及びベンゼン、トルエン、キシレン及びキシレン誘導体のような芳香族溶媒がある。特に好ましいのはトルエン及びキシレンである。
【0118】
本明細書中に記載される熱可塑性樹脂組成物を電力伝送アセンブリ用の絶縁材料及び信号伝送アセンブリ用の外被材料として使用することで、多心ケーブルアセンブリを形成できる。
【0119】
一実施形態では、被覆線は互いに平行に並列した状態で固定具内に整列させる。固定具内には、有色の被覆線を所望の順序で使用できる。連続法を使用する場合には、規定の肉厚を有する10〜20本の被覆線が一連のダイセット(即ち、30〜40AWGの線については10〜20のダイ)を通過する。第一のダイセット中でのダイの間隔は一般に比較的大きく、個々の被覆線は隣接する被覆線の被覆の粘着を防止するのに十分な程度に離隔している。次いで被覆線は、被覆線を互いに隣接して整列させるのに十分な小さい間隔を有する第二のダイセットに誘導又は案内される。かかる整列に際してには、固定具に入る前に3連以上のダイセットを使用することもできる。線固定具は、単一の線径に線の本数を掛けた積にほぼ等しい幅を有している。固定具の深さは様々である。一実施形態では、固定具の深さは単一の被覆線の総合直径と同じであるか、又はそれよりわずかに大きい。固定具はまた、接合操作時には未占拠のままに保たれる追加の列を有していてもよい。
【0120】
有用な接合用溶剤は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びこれらの誘導体、並びに溶剤の各種組合せを包含し得る。一実施形態では、接合用溶剤はトルエン、キシレン又はこれらの組合せからなる。接合用溶剤は、固定具に入る前の被覆線上に吹付け、はけ塗り、フェルト塗り、スポンジ塗り又は漬け塗りで適用され、或いは固定具内で線全体に適用される。線ラインは、100〜175℃、さらに詳しくは120〜140℃の範囲内の1以上の温度で運転されるオーブン室に暴露される。一部では溶剤の沸点及びオーブン室を通る線の速度に基づき、他の温度も容易に決定できる。溶剤蒸発速度と外被材料の深さ方向への溶剤浸透速度とのバランスは、経験的に推定すべき事項である。しかし、ポリアリーレンエーテル−ポリオレフィン線被覆材料の特異な組成に基づけば、溶剤の総合溶解力はポリオレフィン成分の連続相を膨潤又は部分的に溶解するのに十分であって、関係するすべての成分間で接合が起こり得るような範囲の温度及び加熱時間を使用すべきである。かくして、比較的温和な熱・溶剤接合プロセスにより、被覆に無視できる程度の接合誘起変形しか生じることなしに多心ケーブルアセンブリ(例えば、リボンケーブル)が形成される。こうして得られる多心ケーブルアセンブリは柔軟であり、目に見える熱誘起変形を示さず、心線の露出も生じない。これらは、線の早期分離なしに激しく曲げることができる。
【0121】
一実施形態では、複数の列の配列被覆線を集成することで、アセンブリの所定の幅に対して多心ケーブルアセンブリ中の心線の数を増加させることができる。図2は、複数の列の心線21を被覆20と共に含む多心ケーブルアセンブリの略図を示している。
【0122】
別の実施形態では、熱可塑性樹脂組成物から絶縁材シート(フィルム及びフォイルともいう)が形成され、絶縁材シートの長さにわたって複数の心線が互いに平行な状態で配列される。絶縁材シートは、被覆線用の被覆材料に関して記載したものと同じ熱可塑性樹脂組成物からなっている。絶縁材シートは、シート間に配置された複数の心線と共に少なくとも部分的に接合される。有用な接合技術には、熱接合、超音波溶接、溶剤接合、レーザー溶接、接着剤結合、振動溶接、及び上述の方法の2以上の組合せがある。心線要素間の領域に圧力を加えることもできる。図5について説明すれば、熱可塑性樹脂組成物の隣接総50及び51は心線52を取り巻いて配設されている。
【0123】
一実施形態では、絶縁材シート及び心線要素の多重積層物を集成することで、多心ケーブルアセンブリ用のサンドイッチ構造体を形成することができる。
【0124】
本明細書中に記載された構造及び方法は、様々な用途のための多種多様の多心ケーブルアセンブリ(例えば、リボンケーブル)に容易に適合させることができる。
【実施例】
【0125】
多心ケーブルアセンブリを以下の非限定的な実施例でさらに例証する。
【0126】
実施例
心線及び被覆からなる被覆線を押出被覆で形成した。被覆は、30〜35重量%のポリ(アリーレンエーテル)、23〜26重量%のポリオレフィン、14〜17重量%のブロックコポリマー及び難燃剤を含む熱可塑性樹脂組成物からなっていた。重量%は組成物の総重量を基準にしている。均等な長さを有する5本又は8本の被覆線を、被覆線の直径の和に等しい幅を有する固定具内で互いに隣接した状態に配列した。次に、これらの線にはけ塗り又はフェルト塗りでキシレン、トルエン又はこれらの組合せを適用し、130〜175℃の温度で1〜12分間加熱することで多心アセンブリを形成した。次に、アセンブリを室温で冷却した。アセンブリは良好な接着強さを示すと共に、70サイクルの激しい屈曲(180度の角度の屈曲)を施した後にもほとんど疲労を示さなかった。
【0127】
以上、若干の実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更及び同等物による構成要素の置換を行い得ることが理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明はこの発明を実施するために想定される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を包含するものである。
【0128】
すべての引用された特許、特許出願及び他の参考文献の開示内容は、援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】心線11が実質的に単一平面内にある多心ケーブルアセンブリの横断面の略図である。
【図2】心線21が複数の平面内にある多心ケーブルアセンブリの横断面の略図である。
【図3】隣接した被覆線30の接合部分31の略図である。
【図4】心線41が実質的に単一平面内にある多心ケーブルアセンブリの長さ方向セクションの略図である。
【図5】心線52を包囲する被覆の複数の層50及び51を強調して示す多心ケーブルアセンブリの横断面の略図である。
【図6】心線61が実質的に単一平面内にある多心ケーブルアセンブリ60の長さ方向セクションの略図である。
【符号の説明】
【0130】
10 被覆
11 心線
20 被覆
21 心線
30 被覆
31 接合部分
32 心線
40 被覆
41 心線
50 被覆の層
51 被覆の層
52 心線
60 多心ケーブルアセンブリ
61 心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列隣接状態で配列された2以上の被覆線を含むと共に、隣接する被覆線間に1以上の実質的な界面接触領域を設けてなる多心ケーブルアセンブリであって、
被覆線の1以上が心線及び熱可塑性樹脂組成物からなる被覆を含み、
熱可塑性樹脂組成物が、
(i)ポリ(アリーレンエーテル)、
(ii)ポリオレフィン、及び
(iii)ポリマー相溶化剤
を含み、
被覆が心線をおおって配設されており、
各被覆線が隣接する被覆線に少なくとも部分的に接合されている、多心ケーブルアセンブリ。
【請求項2】
当該多心ケーブルアセンブリが3以上の被覆線を含むリボンケーブルである、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項3】
当該多心ケーブルアセンブリが9以上の被覆線を含むリボンケーブルである、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項4】
当該多心ケーブルアセンブリが20以上の被覆線を含むリボンケーブルである、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項5】
熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィン連続相又は共連続相及びポリ(アリーレンエーテル)分散相又は共連続相を含む、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項6】
ポリオレフィンが、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、及びポリプロピレンと高密度ポリエチレンの組合せからなる、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項7】
ポリマー相溶化剤が、制御分布コポリマーであるブロックを有するブロックコポリマーからなる、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項8】
ポリマー相溶化剤が、第一のブロックコポリマーの総重量を基準にして50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有する第一のブロックコポリマー、及び第二のコポリマーの総重量を基準にして50重量%以下のアリールアルキレン含有量を有する第二のブロックコポリマーからなる、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項9】
ポリマー相溶化剤がジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマーからなる、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項10】
ポリマー相溶化剤がポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーからなる、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項11】
熱可塑性樹脂組成物がさらに難燃剤を含む、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項12】
熱可塑性樹脂組成物が、ポリオレフィン及びポリ(アリーレンエーテル)の合計重量を基準にしてポリ(アリーレンエーテル)の重量基準の量より少ない重量基準の量でポリオレフィンを含む、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項13】
1以上の被覆線が同軸ケーブルである、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項14】
2以上の被覆線が相異なる色を有する、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項15】
1以上の心線が1種以上の導線、1種以上の導電性箔、1種以上の導電性インキ、又はこれらの組合せからなる、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項16】
心線が20〜46AWGのサイズを有し、被覆が0.15〜1.25ミリメートルの厚さを有する、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項17】
心線が0.30〜1.30平方ミリメートルの横断面積を有し、被覆が0.15〜0.35ミリメートルの厚さを有する、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項18】
心線が1.20〜2.10平方ミリメートルの横断面積を有し、被覆が0.29〜0.36ミリメートルの厚さを有する、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項19】
心線が2.90〜4.50平方ミリメートルの横断面積を有し、被覆が0.3〜0.8ミリメートルの厚さを有する、請求項1記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項20】
2以上の被覆線を並列隣接状態で配列して、隣接する被覆線間に1以上の実質的な界面接触領域を設ける段階と、
熱接合、超音波溶接、溶剤接合、レーザー溶接、接着剤結合及び振動溶接の1以上を用いて2以上の被覆線を少なくとも部分的に接合する段階と
を含んでなる多心ケーブルアセンブリの製造方法であって、
被覆線の1以上が心線及び熱可塑性樹脂組成物からなる被覆を含み、
熱可塑性樹脂組成物が、
(i)ポリ(アリーレンエーテル)、
(ii)ポリオレフィン、及び
(iii)ポリマー相溶化剤
を含み、
被覆が心線をおおって配設されている、方法。
【請求項21】
各被覆線が、トルエン、キシレン及びこれらの組合せからなる群から選択される溶剤による溶剤接合を用いて隣接する被覆線に少なくとも部分的に接合される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
当該方法がさらに、100〜175℃の温度で溶剤を蒸発させる段階を含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
第一の絶縁材シートと第二の絶縁材シートとの間に複数の心線を配置する段階と、
第一の絶縁材シートを第二の絶縁材シートに少なくとも部分的に接合する段階と、
を含んでなる方法であって、
第一及び第二の絶縁材シートはそれぞれ長さ及び幅を有すると共に、長さは幅より大きく、
複数の心線は第一及び第二の絶縁材シートの長さに沿って互いに平行に配列され、
第一及び第二の絶縁材シートの1以上が、
(i)ポリ(アリーレンエーテル)、
(ii)ポリオレフィン、及び
(iii)ポリマー相溶化剤
を含む熱可塑性樹脂組成物からなる方法で製造される多心ケーブルアセンブリ。
【請求項24】
前記第一及び第二の絶縁材シートが、熱接合、超音波溶接、溶剤接合、レーザー溶接、接着剤結合及び振動溶接の1以上で少なくとも部分的に接合される、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項25】
ポリオレフィンが連続相又は共連続相であり、ポリ(アリーレンエーテル)が分散相又は共連続相である、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項26】
当該多心ケーブルアセンブリが3以上の被覆線を含むリボンケーブルである、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項27】
当該多心ケーブルアセンブリが9以上の被覆線を含むリボンケーブルである、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項28】
当該多心ケーブルアセンブリが20以上の被覆線を含むリボンケーブルである、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項29】
ポリオレフィンが、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、及びポリプロピレンと高密度ポリエチレンの組合せからなる、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項30】
ポリマー相溶化剤が、制御分布コポリマーであるブロックを有するブロックコポリマーからなる、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項31】
ポリマー相溶化剤が、第一のブロックコポリマーの総重量を基準にして50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有する第一のブロックコポリマー、及び第二のコポリマーの総重量を基準にして50重量%以下のアリールアルキレン含有量を有する第二のブロックコポリマーからなる、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項32】
ポリマー相溶化剤がジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマーからなる、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項33】
ポリマー相溶化剤がポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーからなる、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項34】
熱可塑性樹脂組成物がさらに難燃剤を含む、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項35】
熱可塑性樹脂組成物が、ポリオレフィン及びポリ(アリーレンエーテル)の合計重量を基準にしてポリ(アリーレンエーテル)の重量基準の量より少ない重量基準の量でポリオレフィンを含む、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。
【請求項36】
1以上の心線が導線、金属箔、導電性インキ又はこれらの組合せからなる、請求項23記載の多心ケーブルアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−524806(P2008−524806A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546719(P2007−546719)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/043405
【国際公開番号】WO2006/065540
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫
【復代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
【復代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
【復代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
【復代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
【復代理人】
【識別番号】100075236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 忠彦
【復代理人】
【識別番号】100094008
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 一暁
【復代理人】
【識別番号】100147577
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏志
【復代理人】
【識別番号】100153187
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 由美子
【Fターム(参考)】