説明

多成分冷却剤を使用した極低温冷却のための圧縮システム

【課題】極低温での冷却を行うための改善したシステムを提供する。
【解決手段】多成分冷却剤はポリアルファオレフィンベースのオイルで潤滑されたコンプレッサーで圧縮され、そのオイルは圧縮された冷却剤から除去され、そして、圧縮された冷却剤は冷却受容体への(冷却の)供給準備のために極低温で冷却を生成するために膨張される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に、冷却のための設備、詳しく述べると、極低温での冷却のための設備に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な冷却システムにおいて、R−12、R−134a、または他のフロンタイプの冷却剤等の冷却用の流体は圧縮され、冷却(または、低温状態)を生成するために膨張され、さらに温められる。それにより、冷却(または、低温状態)が冷却剤から冷却受容体(または、冷却容器)に伝えられる。温められた冷却剤はその後、コンプレッサーに戻され、冷却サイクルが繰り返される。
【0003】
冷却サイクルで使用されるコンプレッサーは通常、オイルで潤滑される。この潤滑油のうちのいくらかは圧縮された冷却剤と共にコンプレッサーから出ていってしまう。一般に、ポリオールエステル(polyolester)を基本(または、基剤)とするオイル等の、冷却剤に対して可溶性の高い潤滑油を使用するのが良いとされている。この手法により、圧縮された冷却剤と共にコンプレッサーから出ていく潤滑油のほとんど全てが再循環する、温められた冷却剤と共にコンプレッサーに戻される。コンプレッサーを出た潤滑油のうち、ある程度の量の潤滑油が冷却用の循環路に留まり、コンプレッサーに戻されないままでいると、コンプレッサーの潤滑油が不十分となり、コンプレッサーの効率を下げたり、故障の原因となったりする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エネルギーの生成、エネルギーの伝達、及び電子工学の分野等において、非常に低温の、または極低温の冷却はますます重要になってきている。極低温での冷却(または、低温状態)を生成及び提供する能力を高める、冷却システムの改善が非常に望まれている。
【0005】
したがって、本発明の目的は極低温において冷却(または、低温状態)を生成及び提供する、改善したシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示を読むことにより、当業者に明らかになる上述及び他の目的は本発明の以下の1つの特徴によって達成される。
【0007】
冷却受容体に冷却(または、低温状態)を与えるために、冷却用の流体が圧縮され、冷却するために膨張され、さらに温められる、冷却するための方法において、改善された方法は以下の項目から成る:
(A)冷却用の流体として多成分の冷却剤を使用すること;
(B)ポリアルファオレフィン(polyalphaolefin)ベースの(または、ポリアルファオレフィンを基剤とする)オイルを使用して潤滑されたコンプレッサーを使用して多成分冷却剤を圧縮すること;及び、
(C)220K以下の温度で冷却を提供すること。
【0008】
本発明のもう1つの特徴は以下のものである。冷却するための装置は以下の項目から成る:
(A)オイルで潤滑されたコンプレッサー、オイル分離システム、多成分冷却剤をコンプレッサーからオイル分離システムへ送るための手段、及び、潤滑油をオイル分離システムからコンプレッサーへ送るための手段;
(B)膨張装置、熱交換器、多成分冷却剤をオイル分離システムから膨張装置へ、膨張装置から熱交換器へ、さらに、熱交換器からコンプレッサーへ送るための手段;及び、
(C)熱交換器に冷却受容体を備え、それにより、他成分冷却剤から冷却受容体に冷却を与えるための手段。
【0009】
本明細書で使用される用語「間接的熱交換」は2つの流体を物理的接触(または、直接的な接触)や混合させずに、熱交換関係にすることを意味する。本明細書で使用される用語「膨張」は圧力を減少させることを意味する。
【0010】
本明細書で使用される用語「変動負荷冷却剤(variable load refrigerant)」は多成分冷却剤、すなわち、2種類またはそれ以上の種類の成分の液相が、混合物の泡立ち点と露点との間で連続的で、かつ増大する温度変化を起こすような割合で、混合された混合物を意味する。混合物の泡立ち点は任意の圧力において、混合物が全て液相であるが、熱を加えることによって液相との平衡状態で気相の形成が始まる温度である。混合物の露点は任意の圧力において、混合物が全て気相であるが、熱を除去することによって気相との平衡状態で液相の形成が始まる温度である。
【0011】
したがって、混合物の泡立ち点と露点との間の領域は液相と気相の両方が平衡状態で共存する領域である。本発明の実施において、他成分冷却剤流体の泡立ち点と露点との間の温度差は少なくとも10℃以上であり、好まれるものとして20℃以上、さらに好まれるものとして50℃以上である。
【0012】
本明細書で使用される用語「大気ガス」は以下のもののうちどれかを意味する:窒素(N2)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ネオン(Ne)、二酸化炭素(CO2)、亜酸化窒素(N2O)、酸素(O2)、及びヘリウム(He)。
【0013】
本明細書で使用される用語「コンプレッサー」は気体の圧力を増大させる装置を意味する。本明細書で使用される用語「潤滑(または、潤滑された)」は摩擦、熱、磨耗を減少させる能力のある物質が、装置の堅い表面の間の皮膜(または、皮膜状のもの)として導入された装置の特徴を意味する。
【0014】
本明細書で使用される用語「ポリアルファオレフィン(polyalphaolefin)」は6個または、それ以上の炭素原子を持った直鎖のアルファオレフィン(または、α‐オレフィン)を意味する。本明細書で使用される用語「ポリアルファオレフィンベースのオイル」はその基本原料として、1つまたは複数のポリアルファオレフィン化学種を使用したオイルの調合物を意味する。
【0015】
本明細書で使用される用語「混和」は気相と液相の相互作用に対して使用する場合、可溶を意味し、2つの液体の相互作用に対して使用する場合、(一般的に使用される)混和を意味する。本明細書で使用される用語「混和性」は気相と液相の相互作用に対して使用する場合、可溶性を意味し、2つの液体の相互作用に対して使用する場合、(一般的に使用される)混和性を意味する。
【0016】
概略的に述べると、本発明は極低温、すなわち220K以下の温度で冷却(または、低温状態)を生成するための他成分冷却剤の使用、及び、ポリアルファオレフィンベースのオイルで潤滑された、この冷却剤を圧縮するためのコンプレッサーの使用から構成される。このオイルは冷却剤との混和性が非常に低いので、冷却剤が冷却サイクルの極低温区間に入る前に、圧縮された冷却剤と共にコンプレッサーを出た潤滑油のほとんど全てを比較的簡単に冷却剤から分離することができる。この手法において、潤滑油が冷却剤と混合された場合に起こる、冷却サイクル内の潤滑油の凍結を防ぐことができる。極低温区間の上流で多成分冷却剤から分離された潤滑油は冷却剤とは別々に、コンプレッサーに戻される。
【0017】
また、制限された冷却剤のオイルへの可溶性は冷却剤が排出側から吸入側に迂回することを防ぐので、制限された冷却剤の潤滑油との混和性(通常、気体と液体との間の、低い混和性に相当する、低い液相の混和性)はスクリューコンプレッサーの高い能力を促進する。さらに、オイルとの循環を介しての冷却剤の迂回が減少または、除去されるだろう。また、熱交換器内にオイルを入れないことは、熱交換器の長時間の使用による劣化を防ぐので、非常に望ましいことである。オイルを持ち越すことができる、2つの基本的な構造がある。(1)小さなエアゾール状の液滴として、及び、(2)蒸気圧による蒸気として、である。好まれる潤滑油はほとんど蒸気圧を持たないので、冷却剤蒸気中にはほとんど潤滑油が存在しない。好まれる潤滑油は非常に高純度、すなわち、不純物をほとんど含まない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は図面との参照と共に以下に詳細に説明される。ここで、図1を参照すると、多成分冷却剤流体1はコンプレッサー10に送られ、そこにおいて、340から6890KPa(50から1000psia)の範囲の圧力まで圧縮される。多成分冷却剤1は好まれるものとして、フルオロカーボン(fluorocarbon)、ヒドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon)、ヒドロクロロフルオロカーボン(hydrochlorofluorocarbon)、フルオロエーテル(fluoroether)、ヒドロフルオロエーテル(hydrofluoroether)、大気ガス、及び炭化水素(hydrocarbon)から成るグループからの、少なくとも2つの成分から成る。好まれるものとして、本発明の実施に便利な多成分冷却剤は変動負荷冷却剤である。
【0019】
本発明に便利な多成分冷却剤は好まれるものとして、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、及びヒドロフルオロエーテルから成るグループからの少なくとも1つの成分と、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロフルオロエーテル、大気ガス、及び炭化水素から成るグループからの少なくとも1つの成分とから成る。
【0020】
本発明に便利なもう1つの好まれる多成分冷却剤はフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、及びヒドロフルオロエーテルから成るグループからの少なくとも2つの成分と、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロフルオロエーテル、大気ガス、及び炭化水素から成るグループからの少なくとも1つの成分とから成る。
【0021】
本発明に便利なもう1つの好まれる多成分冷却剤は少なくとも1つのフルオロカーボンと、ヒドロフルオロカーボン及び大気ガスから成るグループからの少なくとも1つの成分とから成る。本発明に便利なもう1つの好まれる多成分冷却剤は少なくとも1つのヒドロフルオロカーボンと、少なくとも1つの大気ガスとから成る。
【0022】
本発明に便利なもう1つの好まれる多成分冷却剤はフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、及びヒドロフルオロエーテルから成るグループからの少なくとも3つの成分と、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロフルオロエーテル、炭化水素、及び大気ガスから成るグループからの少なくとも1つの成分とから成る。
【0023】
本発明に便利なもう1つの好まれる多成分冷却剤はフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、及びヒドロフルオロエーテルから成るグループからの少なくとも2つの成分と、少なくとも1つの大気ガスとから成る。
【0024】
本発明に便利なもう1つの好まれる多成分冷却剤はフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、及びヒドロフルオロエーテルから成るグループからの少なくとも2つの成分と、少なくとも1つの大気ガスと、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロフルオロエーテル、炭化水素、及び大気ガスから成るグループからの少なくとも1つの成分とから成る。
【0025】
本発明に便利なもう1つの好まれる多成分冷却剤はフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、及びヒドロフルオロエーテルから成るグループからの少なくとも2つの成分と、少なくとも2つの大気ガスとから成る。
【0026】
本発明に便利なもう1つの好まれる多成分冷却剤は少なくとも1つのフルオロエーテルを含む。すなわち、少なくとも1つのフルオロエーテルと、フルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロフルオロエーテル、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロカーボン、及び大気ガスから成るグループからの少なくとも1つの成分とから成る。
【0027】
本発明の1つの好まれる実施例において、多成分冷却剤はフルオロカーボンだけから成る。本発明のもう1つの好まれる実施例において、多成分冷却剤はフルオロカーボン及びヒドロフルオロカーボンだけから成る。本発明のもう1つの好まれる実施例において、多成分冷却剤はフルオロエーテルだけから成る。本発明のもう1つの好まれる実施例において、多成分冷却剤はフルオロエーテル及びヒドロフルオロエーテルだけから成る。本発明のもう1つの好まれる実施例において、多成分冷却剤はフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、及び、ヒドロフルオロエーテルだけから成る。本発明のもう1つの好まれる実施例において、多成分冷却剤はフルオロカーボン、フルオロエーテル、及び大気ガスだけから成る。最も好まれものとして、多成分冷却剤の全ての成分はフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロフルオロエーテル、または大気ガスのどれかである。
【0028】
本発明の実施で使用するために特に好まれる多成分冷却剤は約12モルパーセントのジクロロトリフルオロエタン(dichlorotrifluoroethane)、約36モルパーセントのペンタフルオロエタン(pentafluoroethane)、約39モルパーセントのテトラフルオロメタン(tetrafluoromethane)、及び、約13モルパーセントの窒素である。
【0029】
本発明の実施に便利な多成分冷却剤はジクロロトリフルオロエーテル、ペンタフルオロエーテル、テトラフルオロメタン、窒素、ペレフルオロブトキシ−メタン(perfluorobutoxy-methane)、デカフルオロペンタン(decafluoropentane)、ジクロペンタフルオロプロパン(dichloropentafluoropropane)、ペレフルオロプロポキシ−メタン(perfluoropropoxy-methane)、ジクロロフルオロエタン(dichlorofluoroethane)、ペンタフルオロプロパン(pentafluoropropane)、ヘキサフルオロプロパン(hexafluoropropane)、ヘキサフルオロブタン(hexafluorobutane)、ペンタフルオロブタン(pentafluorobutane)、テラフルオロエタン(tetrafluoroethane)、アンモニア(ammonia)、ペンタフルオロエタン(pentafluoroethane)、ペレフルオロプロパン(perfluoropropane)、ペレフルオロブタン(perfluorobutane)、ペレフルオロペンタン(perfluoropentane)、ペレフルオロヘキサン(perfluorohexane)、ジフルオロメタン(difluoromethane)、ペレフルオロエタン(perfluoroethane)、トリフルオロメタン(trifluoromethane)、テラフルオロメタン(tetrafluoromethane)、クロロテトラフルオロエタン(chlorotetrafluoroethane)、アルゴン(argon)、ネオン(neon)、ヘリウム(helium)、二酸化炭素(carbon dioxide)、及び亜酸化窒素(nitrous oxide)から成るグループの1つまたは複数の成分を含む。
【0030】
コンプレッサー10はポリアルファオレフィンベースのオイルで潤滑される。本発明の実施で使用するために好まれるポリオレフィンはCn2n+2(nは10から120)の化学式を持つ。ポリオレフィンの例はC2042、C3062、C4082、C50102、C60122、及びC70142である。
【0031】
気体(または、ガス)の可溶性は温度、圧力、双極子モーメント、及び溶媒と溶質の間の相互作用の特性の関数である。気体の可溶性はルイス酸−塩基相互作用(Lewis acid-base interaction)、四極子モーメント間の特定の化学的相互作用、または水素結合が存在すると増大する。可溶性はまた、液相の混和性と共に増大する。ポリアルファオレフィンは非極性で、通常中性の酸性度を持つ、直鎖構造の炭化水素である。好まれる冷却剤の混合物の成分もまた、非極性であるか、極性があってもその値は小さい。それらの可溶性は溶質−溶媒相互作用のために増大しないだろう。結果として、オイル相中のこれらの成分の濃度は非常に小さく、通常、1%未満であり、300ppm未満である。オイル中の冷却剤の濃度を低くするか、またはオイル中から冷却剤を無くすことにより、(1)コンプレッサーの排出でのオイルミスト(または、オイルのもや)の形成を最小にし、(2)コンプレッサーの排出でのオイルの大きい液滴の形成を可能にし、(3)大きめのエアゾールのサイズにより、機械的な分離を容易にし、さらに、(4)液滴が分解しないので、液滴の凝集速度が増大する。
【0032】
多成分冷却剤及び、潤滑油に使用される特定のポリアルファオレヒンの成分は冷却剤中のオイルの混和性が1%を、好まれるものとして500ppmを超えないように選択される。
【0033】
多成分冷却剤及び潤滑油は潤滑油で浸水されたコンプレッサー10で一緒に圧縮され、通常、重量比で約10から20パーセントのオイルから成る、圧縮冷却剤−オイル流体としてコンプレッサーから出ていく。冷却剤−オイル流体2は好まれるものとして、重力沈下タンクか、遠心分離方式の分離器であるバルクオイル分離器(bulk oil separator)20の中に送られる。分離器20内で、冷却剤中のオイルの非常に小さい混和性により、冷却剤−オイル流体2中のオイルのほとんどは流体から分離され、分離器20の外へストリーム(または、流れ)3として送られ、潤滑油再循環流4によりコンプレッサー10へ戻される。
【0034】
通常、約0.01から5重量パーセント、典型的には、約1重量パーセントの潤滑油を含む、オイルの取り除かれた冷却剤流体流5は分離器20から粗い凝集フィルター(または、コアレッセントフィルター)25へ送られ、そこにおいて、オイルの含有量は50から100000ppbの範囲、通常、約7500ppbまで減少される。そこからさらに、冷却剤流体はストリーム6を通って細かい凝集フィルター(または、コアレッセントフィルター)26に送られ、そこにおいて、オイルの含有量は5ppb未満まで減少される。機械的な凝集フィルター25及び26はエアゾール状のオイル粒子を取り出し、それらをフィルターエレメント内で大きなオイルの液滴を形成するよう沈降させることによって動作する。オイルはこの段階で気相(または、蒸気)である多成分冷却剤より高い密度(または、重量密度)を持っているので、オイルは下方に沈下し、オイルの液滴の大きさが増大する。オイルの液滴は多成分冷却剤蒸気(または、多成分冷却剤気体)から分離され、コンプレッサーに戻される。
【0035】
図1に図示された本発明の実施例において、潤滑油はストリーム7を通って凝集フィルターシステム25から、及び、ストリーム8を通って凝集フィルターシステム26から取り出され、ストリーム9を形成するために合流し、コンプレッサー10に戻るために再循環流4に送られる。潤滑油は内部のフロート弁組立品を経由してコンプレッサーに戻すことができる。オイルを戻すための他の方法はオイルの排出口とコンプレッサーのクランク室との間の固定式オリフィスかキャプチャーの使用を含む。オイルの回収はソレノイド弁及びタイマー、またはソレノイド弁及び水位検知器を使用して電子的に制御することもできる。所望であれば、多成分冷却剤流体のオイルの含有量をさらに減少するために、1つまたは複数の付加的な凝集フィルターが使用されてもよい。ただし、付加的なフィルターの使用はシステムの圧力降下を増大させてしまう。
【0036】
実質的にオイルを含まない、多成分冷却剤蒸気(または、気体)はストリーム11を通って後置冷却器30に送られ、そこにおいて、圧縮された多成分冷却剤ストリーム12を形成するために、冷却流体との間接的熱交換によって、圧縮による熱を冷却する(または、圧縮による熱を除去する)。ストリーム12に凝集(または、液化)が存在する場合、それは蒸気液体分離器40へ送られる。2相ストリーム12は液体部分と蒸気(または、気体)部分とに分離され、異なった管や経路全体への均一な分布を促進するために、通常、別々のヘッダー(または、母管)を使用して熱交換器に導入される。いくつかの熱交換器の構成及び動作環境においては、分離器40は必ずしも必要ではなく、ストリーム12が熱交換器50に直接送られてもよい。
【0037】
多成分冷却剤はストリーム31に冷却された多成分冷却剤を生成するために、熱交換器50に送られ、後で説明する、温められる多成分冷却剤との間接的熱交換によって冷却され、通常、250Kから80Kの範囲の温度を持つ。次に、多成分冷却剤31はジュール−トムソン膨張弁45等の、膨張装置に送られ、そこにおいて、それは冷却(または、低温状態)を生成するために膨張される。その結果、通常70から1380KPa(10から200psia)の範囲内の圧力状態にあり、220K未満の(通常、80から220Kの範囲内の)温度を持った多成分冷却剤ストリームを担う冷却(または、低温状態)となる。ストリーム31の膨張がストリーム内のいくらかの凝集(または、液化)を生ずる場合、ストリーム32は、図1に示されるように、蒸気液体分離器41で処理されてもよい。
【0038】
極低温で多成分冷却剤を担っている冷却(または、低温状態)は熱交換器50に送られ、上述したように、多成分冷却剤を冷やすために、そして冷却を冷却受容体に与えるために温められる。図1に図示されている本発明の実施例において、冷却受容体はストリーム51内の流体であり、それは温められる多成分冷却剤との間接的熱交換によって冷やされ、液化され、さらに(または)、過冷される。多成分冷却剤から冷却受容体へ冷却を与えることは、図面に示されるように、多成分冷却剤を膨張の前に冷やすために使用されたのと同じ熱交換器を使用して行われてもよいし、別の熱交換手段の使用によって行われてもよい。温められる多成分冷却剤から冷却を受け取ることができる他の冷却受容体は冷蔵庫や冷凍システム内の気体(または、空気)、及び壁や棚等の堅い構造を含む。結果として生ずる、熱交換器50に存在する、温められた多成分冷却剤はストリーム52を通って、液体がコンプレッサーに入らないことを確実にするためのサージタンク46に送られる。さらに、多成分冷却剤はサージタンク46からストリーム1としてコンプレッサー10の中に送られ、次の冷却サイクルが開始される。
【0039】
本発明は冷却剤が冷却または膨張される前に冷却剤から実質的に全ての潤滑油を除去することを可能にするので、潤滑油が冷却剤と混合された場合に起こる、冷却サイクル内の潤滑油の凍結を防ぐことができる。また、使用される冷却剤のオイルへの可溶性が低いので、冷却剤が排出側から吸入側に迂回することを防ぐと共に、コンプレッサーの高い能力を促進する。さらに、熱交換器内にオイルを入れないことは、熱交換器の長時間の使用による劣化を防ぐ。
【0040】
本発明は特定の好まれる実施例を参照して詳細に説明されてきたが、請求の範囲の意図及び範囲内に、本発明の他の実施例が存在するとは当業者に明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明が実施される、好まれる1つの実施例の概略図である。
【符号の説明】
【0042】
1 多成分冷却剤流体のストリーム
2 冷却剤−オイル流体のストリーム
3、4 オイルのストリーム
5、6 冷却剤のストリーム
7−9 オイルのストリーム
10 コンプレッサー
11、12 冷却剤のストリーム
20 バルクオイル分離器
25、26 凝集フィルター
30 後置冷却器
31、32 冷却剤のストリーム
40、41 蒸気液体分離器
45 ジュール−トムソン膨張弁
46 サージタンク
50 熱交換器
51 冷却受容体のストリーム
52 冷却剤のストリーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却剤流体を圧縮すること、前記冷却剤流体を冷却するために前記冷却材流体を膨張すること、及び、前記冷却剤流体を温めることによって冷却受容体を冷却することを含む冷却受容体を冷却するための方法であって:
(A)前記冷却剤流体として多成分冷却剤を使用すること;
(B)前記冷却剤流体の圧縮のためにポリアルファオレフィンベースのオイルによって潤滑されたコンプレッサーを使用すること;及び、
(C)前記冷却剤流体を220Kより低い温度に冷却することをさらに含み、
前記ポリアルファオレフィンベースのオイル中の前記多成分冷却剤の濃度が1%未満となるように前記ポリアルファオレフィンベースのオイルと前記多成分冷却剤が低い可溶性を有し、
圧縮された前記多成分冷却剤が膨張させられる前に前記多成分冷却剤から前記ポリアルファオレフィンベースのオイルが分離され、前記多成分冷却剤とは別個に前記コンプレッサーに戻される前記冷却受容体を冷却するための方法。
【請求項2】
前記冷却剤流体を温めることによって前記冷却受容体を冷却する前記工程が、膨張させる前の、圧縮された前記多成分冷却剤を冷却するためにも利用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多成分冷却剤がフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、フルオロエーテル、ヒドロフルオロエーテル、大気ガス、及び炭化水素から成るグループからの、少なくとも2つの成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多成分冷却剤がフルオロカーボンだけから成る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記多成分冷却剤がヒドロフルオロエーテルだけから成る、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記多成分冷却剤が少なくとも1つの大気ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
冷却するための装置であって:
(A)オイルで潤滑されたコンプレッサー、オイル分離システム、多成分冷却剤を前記コンプレッサーから前記オイル分離システムへ送るための手段、及び、前記オイルを前記オイル分離システムから前記コンプレッサーへ送るための手段;
(B)膨張装置、熱交換器、前記多成分冷却剤を前記オイル分離システムから前記膨張装置へ、前記膨張装置から前記熱交換器へ、さらに、前記熱交換器から前記コンプレッサーへ送るための手段;及び、
(C)冷却受容体を前記熱交換器に供給し、前記多成分冷却剤との熱交換によって前記冷却受容体を冷却するための手段を備え、
前記オイルがポリアルファオレフィンベースのオイルであり、
前記ポリアルファオレフィンベースのオイル中の前記多成分冷却剤の濃度が1%未満となるように前記ポリアルファオレフィンベースのオイルと前記多成分冷却剤が低い可溶性を有し、
前記オイル分離システムで前記ポリアルファオレフィンベースのオイルが前記多成分冷却剤から分離され、前記多成分冷却剤とは別個に前記コンプレッサーに戻される装置。
【請求項8】
前記オイル分離システムがバルクオイル分離器及び、少なくとも1つの凝集フィルターを備える、請求項7に記載の装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−78343(P2007−78343A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301575(P2006−301575)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【分割の表示】特願2001−196107(P2001−196107)の分割
【原出願日】平成13年6月28日(2001.6.28)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】