多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法
【課題】多成分系めっき廃液スラッジから有価物を安価に分別回収して再資源化することが可能な多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法を提供する。
【解決手段】多成分系めっき廃液スラッジを無機酸に溶解させニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第1処理液を回収する第1工程と、第1処理液から銅を銅付着鉄粉として分離しニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液を回収する第2工程と、第2処理液から鉄及びクロムを分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液を回収する第3工程と、第3処理液に鉄粉を加えてニッケル付着鉄粉を分離し、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液を回収する第4工程と、第4処理液中の鉄を分離して亜鉛を含有する第5処理液を回収する第5工程と、第5処理液から亜鉛を分離して第6処理液とする第6工程とを有する。
【解決手段】多成分系めっき廃液スラッジを無機酸に溶解させニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第1処理液を回収する第1工程と、第1処理液から銅を銅付着鉄粉として分離しニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液を回収する第2工程と、第2処理液から鉄及びクロムを分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液を回収する第3工程と、第3処理液に鉄粉を加えてニッケル付着鉄粉を分離し、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液を回収する第4工程と、第4処理液中の鉄を分離して亜鉛を含有する第5処理液を回収する第5工程と、第5処理液から亜鉛を分離して第6処理液とする第6工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分系めっき廃液スラッジから有価物を分別回収して再資源化する処理方法に関する。ここで、多成分系めっき廃液スラッジとは、鉄等を被めっき材としてニッケルめっき、銅めっき、亜鉛めっき、及びクロムめっきをそれぞれ行なった際にめっき工程で発生する各めっき廃液スラッジを混合したもので、金属成分としてニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含有するものを指す。
【背景技術】
【0002】
例えば、ニッケルめっき廃液スラッジ中のニッケル分を回収する方法として、ニッケルめっき廃液スラッジに硫酸を加えて固形分を溶解させて溶解液を調製し、この溶解液から冷却晶析法により硫酸ニッケル結晶を晶析させて回収する方法、及びニッケル分の回収率を更に大きくするために、溶解液から硫酸ニッケル結晶を晶析させて回収すると共に、硫酸ニッケル結晶を濾過した濾液に鉄粉を加えて濾液中に残留するニッケルイオンを鉄粉表面に析出させて回収する冷却晶析処理とセメンテーション処理を組み合わせた方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
あるいは、ニッケルめっき廃液スラッジに硫酸を添加して固形分を溶解した溶解液に炭酸カルシウムを加えると共に溶解液中の2価鉄イオンを3価鉄イオンに変えてからpH調整して鉄分を除去したニッケル原液を形成し、このニッケル原液に水酸化カルシウムを添加しpH調整して生成及び回収したニッケル含有石膏に酸を加えて水酸化ニッケルとして溶解させてニッケル分を抽出し、これに硫酸を加えて生成させた硫酸ニッケル溶液に冷却晶析処理を行なって硫酸ニッケル結晶を晶析させて回収する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−284848号公報
【特許文献2】特開2005−15272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、めっき処理工場では、単一種の金属めっき処理を行なった際に発生するめっき廃液スラッジの量は少なく、しかも、2種類以上の金属めっき処理工程を有している場合が多いため、各金属めっき処理工程で発生するめっき廃液スラッジは混合処理され、めっき処理工場からは多成分の金属成分を含有した状態のめっき廃液スラッジが搬出され最終処分場で埋立処分されているのが現状である。一方、めっき廃液スラッジから有価金属を効率的に回収(再資源化)しようとする場合、発生しためっき廃液スラッジを、例えば、貯留タンク内に貯留しておき、めっき廃液スラッジが一定量に達した時点で一括処理して有価金属を回収することが経済性の観点から望ましい。
【0006】
従って、処理対象となるめっき廃液スラッジは、ニッケルめっきで発生するめっき廃液スラッジに限定されず、例えば、銅めっき、クロムめっき、及び亜鉛めっきを行なった際に発生した各めっき廃液スラッジが混入し多成分系めっき廃液スラッジの状態になっている。ここで、多成分系めっき廃液スラッジから、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを、乾式精錬技術に基づく乾式法により分別回収することは非常に困難で、しかも、金属が溶融するような高温下で処理を行なうため、消費されるエネルギーも膨大となって経済的にも問題となる。このため、凝集沈澱法、セメンテーション法、キレート樹脂を用いたイオン交換樹脂法、及び溶媒抽出法等の湿式法を用いることが必要となる。しかし、イオン交換樹脂法で使用するイオン交換樹脂、溶媒抽出法で使用する抽出溶媒は、それぞれ専用に設計された極めて高価なもので、これを使用して多成分系めっき廃液スラッジから、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの分別回収を経済的に行なうのは困難である。また、セメンテーション法を利用する特許文献1の発明、及び凝集沈澱法を利用する特許文献2の発明を、多成分系めっき廃液スラッジに適用する場合、回収される鉄及びニッケルにそれぞれ銅、クロム、及び亜鉛が混入することになる。このため、各有価金属の分別回収を精度よく行なうことができないという問題がある。そして、回収されるニッケル及び鉄の純度が低下し資源としての利用価値も低下するという問題も生じる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、多成分系めっき廃液スラッジから有価物を安価に分別回収して再資源化することが可能な多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に前記水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、該中間処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、
前記第5処理液のpHを調整し、該第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジから有機物を分解しニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収する。
ここで、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムには、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの金属に加えてこれらの化合物も含まれる。また有機物には、有機高分子系の凝集剤等が含まれる。
【0009】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0010】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理では、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して、該第4処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることができる。
【0011】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理では、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して前記第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤を加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、該鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることもできる。ここで、前記鉄中和処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に、酸化剤と共に第一鉄を加えることができ、前記第4処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。また、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。更に、前記第1の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0013】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に該分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことができる。ここで、前記第1Bの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことが好ましい。
【0014】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なうこともできる。ここで、前記第1Cの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことが好ましい。
【0015】
前記目的に沿う第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、該中間処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、
前記第5処理液のpHを調整し、該第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収する。
ここで、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムには、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの金属に加えてこれらの化合物も含まれる。
【0016】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0017】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理では、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して、該第4処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることができる。ここで、前記第4処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。
【0018】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理は、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して前記第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤を加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、該鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることができる。ここで、前記第4処理液及び前記鉄中和処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。
【0019】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。また、前記第1の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0020】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことができる。ここで、前記第1Bの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0021】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なうこともできる。ここで、前記第1Cの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0022】
前記目的に沿う第3の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に前記水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液のpHを調整し、該第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジから有機物を分解しニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収する。
ここで、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムには、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの金属に加えてこれらの化合物も含まれる。また有機物には、有機高分子系の凝集剤等が含まれる。
【0023】
第3の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。更に、前記水酸化クロム分散処理液に、酸化剤と共に第一鉄を加えることができる。また、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。
【0024】
第3の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に該分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことができる。ここで、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0025】
第3の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なうこともできる。ここで、前記第3の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0026】
前記目的に沿う第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液のpHを調整し、該第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収する。
ここで、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムには、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの金属に加えてこれらの化合物も含まれる。
【0027】
第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。また、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。
【0028】
第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことができる。ここで、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0029】
第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なうこともできる。ここで、前記第3の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0030】
第1〜第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記pH調整剤は弱アルカリ剤であることが好ましい。
【0031】
第1〜第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1工程で、前記無機酸に塩酸を使用し、前記スラッジ溶解処理は、pHを0.5以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満の条件で行なうことができる。また、前記スラッジ溶解処理と前記不溶分除去処理の間に、前記溶解処理物に硫酸を加え、更にカルシウム源を加えてpHを1以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満にして、石膏を生成させることが好ましい。
【0032】
第1〜第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1工程で、前記無機酸に硫酸を使用し、前記前記スラッジ溶解処理は、pHを0.5以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満の条件で行ない、該スラッジ溶解処理と前記不溶分除去処理の間に、前記溶解処理物にカルシウム源を加えてpHを1以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満にして該溶解処理物中の硫酸根を石膏として除去する硫酸根除去処理を設けることもできる。
【発明の効果】
【0033】
請求項1〜44記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、多成分系めっき廃液スラッジから各金属を順次分別回収することができ、回収された各金属分を資源として有効利用することが可能になる。ここで、ニッケルを分別回収してから亜鉛の分別回収を行なうので、回収したニッケル及び亜鉛の品位を上げることができる。
【0034】
特に、請求項2、9、11、13、15、21、23、25、27、31、33、35、38、及び40記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、水酸化第二鉄澱物の生成速度が速くなって水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化を図ることができ、濾過性を改善することが可能になる。
【0035】
請求項3記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、第4処理液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第4工程で鉄の回収を効率的に行なうことができる。ここで、第4処理液中に有機物が存在する場合は、第4処理液中の第一鉄イオンの酸化と同時に有機物の分解が行なわれるので、有機物が第5処理液中に混入するのを防止できる。
【0036】
請求項4記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、第4処理液中の第一鉄イオンの一部から水酸化第二鉄の核を生成させ、次いで残りの第一鉄イオンを全て酸化させて水酸化第二鉄の核と第二鉄イオンが共存する状態にしてから更に鉄中和を行なうので、生成する水酸化第二鉄が予め存在する水酸化第二鉄の核を中心にして析出し、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化を達成することができる。その結果、水酸化第二鉄澱物の濾過性が改善されて、水酸化第二鉄澱物の分離を効率的に行なうことが可能になる。ここで、第4処理液中に有機物が存在する場合は、第一鉄イオンの酸化と有機物の分解が同時に行なわれ、有機物が第5処理液中に混入するのを防止することが可能になる。
請求項5、6記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、過酸化水素を使用するので、第一鉄イオンを効率的に酸化することができると共に、第4処理液中の第一鉄イオンにより過酸化水素からヒドロキシラジカルを効率的に発生させることができ、第4処理液中に有機物が残存している場合は有機物の分解も効率的に行なうことができ、第5処理液中に有機物が混入するのを防止できる。
【0037】
請求項7記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、酸化剤と共に第一鉄を加えるので、第3処理液中の有機物の分解を促進することができる。
請求項8載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤が過酸化水素なので、過酸化水素からヒドロキシラジカルを効率的に発生させて、有機物を効率的に分解することができる。
【0038】
請求項10記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、酸化剤により有機物が分解されるので、第4工程におけるニッケルの回収率を向上させることができる。更に、第1Aの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄の核を生成させてから、第1B鉄中和処理を行なうので、第1Bの鉄中和処理で生成する水酸化第二鉄を第1Aの鉄中和処理で生成した水酸化第二鉄の核を中心にして析出させることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化が達成されて濾過性を改善することが可能になる。
【0039】
請求項12記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、酸化剤により有機物が分解されるので、第4工程におけるニッケルの回収率を向上させることができる。更に、クロム除去液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第3処理液の回収を効率的に行なうことができる。
【0040】
請求項16記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、第4処理液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第4工程で混入した鉄の回収を効率的に行なうことができる。
請求項17記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、過酸化水素で第一鉄イオンを効率的に酸化することができる。
【0041】
請求項18記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、第4処理液中の第一鉄イオンの一部から水酸化第二鉄の核を生成させ、次いで残りの第一鉄イオンを全て酸化させて水酸化第二鉄の核と第二鉄イオンが共存する状態にしてから更に鉄中和を行なうので、生成する水酸化第二鉄が予め存在する水酸化第二鉄の核を中心にして析出し、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化を達成することができる。その結果、水酸化第二鉄澱物の濾過性が改善されて、水酸化第二鉄澱物の分離を効率的に行なうことが可能になる。
請求項19記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、過酸化水素で第一鉄イオンを効率的に酸化することができる。
請求項20記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤が過酸化水素なので、水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを効率的に酸化して第二鉄イオンにすることができる。
【0042】
請求項22記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、第1Aの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄の核を生成させてから、第1B鉄中和処理を行なうので、第1Bの鉄中和処理で生成する水酸化第二鉄を第1Aの鉄中和処理で生成した水酸化第二鉄の核を中心にして析出させることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化が達成されて濾過性を改善することが可能になる。
【0043】
請求項24記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、クロム除去液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第3処理液の回収を効率的に行なうことができる。
【0044】
請求項28記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、酸化剤と共に第一鉄を加えるので、有機物の分解を促進することができる。
請求項29記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤が過酸化水素なので、過酸化水素からヒドロキシラジカルを効率的に発生させて、有機物を効率的に分解することができる。
【0045】
請求項30記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄の核を生成させてから、第2の鉄中和処理を行なうので、第2の鉄中和処理で生成する水酸化第二鉄を第1の鉄中和処理で生成した水酸化第二鉄の核を中心にして析出させることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化が達成されて濾過性を改善することが可能になる。更に、酸化剤により有機物が分解されるので、第4処理液中に有機物が混入するのを防止することができる。
【0046】
請求項32記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、クロム除去液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第4処理液の回収を効率的に行なうことができる。更に、酸化剤により有機物が分解されるので、第4処理液中に有機物が混入するのを防止することができる。
【0047】
請求項36記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤が過酸化水素なので、水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを効率的に酸化して第二鉄イオンにすることができる。
【0048】
請求項37記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄の核を生成させてから、第2の鉄中和処理を行なうので、第2の鉄中和処理で生成する水酸化第二鉄を第1の鉄中和処理で生成した水酸化第二鉄の核を中心にして析出させることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化が達成されて濾過性を改善することが可能になる。
【0049】
請求項39記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、クロム除去液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第4処理液の回収を効率的に行なうことができる。
【0050】
請求項41記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、pH調整剤に弱アルカリ剤を使用するので、中和を行なう際に、局所的な高pH領域の生成を抑えることが可能になる。これによって、所望の金属の水酸化物のみを生成させることが可能になり、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの精度の高い分別回収を行なうことができる。
【0051】
請求項42記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、塩酸を使用することで溶解処理物中で各金属分を塩化物の状態で存在させて各金属分を水酸化物の状態で容易に回収することができ、各金属成分の回収精度及び回収率を共に大きくすることが可能になる。また、温度を80℃以上100℃未満にすることで、多成分系めっき廃液スラッジ中に有機物が存在していても、有機物を分解することができる。
【0052】
請求項43記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、不溶分中に石膏が存在することになり、不溶分層の濾過抵抗を低下させて不溶分層中で液の移動を容易に行なわせることができ、不溶分を容易に除去することが可能になる。その結果、不溶分の分離を効率的に行なうことが可能になる。また、塩酸で分解されなかった有機物が生成する石膏に付着するので、有機物を効率的に分離することもできる。
【0053】
請求項44記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、硫酸を使用することにより、安価に溶解処理物を得ることができる。また、温度を80℃以上100℃未満にすることで、多成分系めっき廃液スラッジ中に有機物が存在していても、有機物の分解を行なうことができる。また、硫酸で分解されなかった有機物が生成する石膏に付着するので、有機物を効率的に分離することもできる。そして、硫酸根除去処理を行なうことで、不溶分層中に石膏を存在させ濾過抵抗を低下させて不溶分層中で液の移動を容易に行なわせることができ、不溶分を容易に除去することが可能になる。更に、第1処理液中の硫酸根の含有量を低下することができ、消石灰等のカルシウムを含む安価なアルカリ剤の使用が可能になって、処理コストの低減を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1、図2は本発明の第1の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図3は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図、図4、図5は本発明の第2の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図6は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図、図7、図8は本発明の第3の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図9は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図、図10、図11は本発明の第4の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図12は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図、図13、図14は本発明の第5の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図15、図16は本発明の第6の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図17は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図、図18、図19は本発明の第7の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図20、図21は本発明の第8の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図22は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【0055】
図1、図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法(以下、単にスラッジの再資源化処理方法という)は、例えば、有機物と、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムがいずれも水酸化物の状態で存在する多成分系めっき廃液スラッジ(以下、単にスラッジという)に無機酸として塩酸を加えて有機物を分解すると共に溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、溶解処理物から不溶分を除去して、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、第1処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を形成(銅回収セメンテーション)させ、銅付着鉄粉を分離してニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程とを有している。ここで、有機物とは、例えば、めっき事業所で排出されためっき廃液を中和して水酸化物として凝集沈澱させる際に凝集剤として使用した有機系ポリマーを指す。
【0056】
また、廃液スラッジの再資源化処理方法は、第2処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、水酸化クロム分散処理液に酸化剤として過酸化水素を加えて水酸化クロム分散処理液中に残存する有機物を分解すると共に水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロムと共に分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程とを有している。
【0057】
更に、廃液スラッジの再資源化処理方法は、第3処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を形成(ニッケル回収セメンテーション)させ、ニッケル付着鉄粉を分離して亜鉛、鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、中間処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、第5処理液にアルカリ剤、例えば、消石灰を加えてpHを調整し、第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有している。以下、これらについて詳細に説明する。
【0058】
図1、図2に示すように、第1工程では、先ず、多成分系めっき廃液スラッジを受け入れ加水し撹拌混合して、例えば、固形分濃度が10重量%程度のスラリーを調製する。次いで、このスラリーに塩酸を加えてpHを0.5以上で2以下、例えば1程度に調整して、60分以上撹拌する。このとき、スラリーの温度を80℃以上100℃未満に調整する。以上の操作により、スラリー中の固形分(各金属の水酸化物)は、下記の反応によりイオンとなって溶解する(以上、スラッジ溶解処理)。
Cr(OH)3+3H++3Cl- → Cr3++3Cl-+3H2O
Cu(OH)2+2H++2Cl- → Cu2++2Cl-+2H2O
Fe(OH)2+2H++2Cl- → Fe2++2Cl-+2H2O
Fe(OH)3+3H++3Cl- → Fe3++3Cl-+3H2O
Ni(OH)2+2H++2Cl- → Ni2++2Cl-+2H2O
Zn(OH)2+2H++2Cl- → Zn2++2Cl-+2H2O
ここで、pHを0.5〜2としたのは、pHが2を超えると未溶解のスラッジ量が多くなり、回収される金属量が減少するので好ましくなく、pHを0.5未満にすると酸の使用量が極めて増大し非経済的となるためである。また、スラリーの温度を80℃以上100℃未満にして、60分以上撹拌することで、有機物を分解することができる。
【0059】
続いて、溶解処理物を、例えば、固液分離の一例であるフィルタープレスで処理して不溶分を固層(以下、ケーキという)として分離して、第1処理液を回収する(不溶分除去処理)。なお、ケーキとして分離した不溶分(不溶解残渣)は廃棄物として処分する。ここでスラッジに含まれている有機物は分解されているので、フィルタープレスを行なう際に、濾布の目詰りを抑制することができる。そして、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる(以上、第1工程)。
【0060】
回収した第1処理液に鉄粉を加えると共に、pHが3以下になるように塩酸を加え、更に第1処理液の温度を30〜80℃、例えば40℃に保って溶解液の酸化還元電位(ORP)を−400mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(銅回収セメンテーション)。これによって、第1処理液の銅イオンと鉄の間で下記に示す化学反応が進行し、鉄粉表面に銅が析出した銅付着鉄粉が形成され、溶解液中の銅イオンが除去される。鉄粉としては、例えば、アトマイズ鉄粉、転炉ダスト精製鉄粉を使用することができる。
2Fe3++Fe → 3Fe2+
Cu2++Fe → Cu↓+Fe2+ (銅回収セメンテーション)
Fe+2H++2Cl- → Fe2++2Cl-+H2↑
ここで、pHを3以下にすることで、銅回収セメンテーションを行なっているときに第1処理液中のクロムイオンが水酸化クロム澱物として沈澱するのを防止できる。また、ORPを−400mV以上にすることで、ニッケルイオンと鉄が置換して鉄粉表面にニッケルが析出するのを防止できる。そして、所定時間経過後、銅付着鉄粉が懸濁している第1処理液を、例えばフィルタープレスで固液分離して銅付着鉄粉をケーキとして分離し、第2処理液を回収する(以上、第2工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。なお、分離した銅付着鉄粉は、例えば、銅精錬原料として利用できる。
【0061】
回収した第2処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、第2処理液中のクロムイオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液が形成される。
Cr3++3Cl-+3CaCO3+3H2O
→ Cr(OH)3↓+3Cl-+3Ca2+ + 3HCO3-*
ここで、HCO3-*は、HCO3-等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。また、pHを3〜5としたのは、pHが3未満であるとクロムの中和量が少なくなり、pHが5を超えると水酸化クロムと共に水酸化ニッケルが生成するためである。そして、弱アルカリである炭酸カルシウムを使用することで、クロム中和を行なう際に、局所的な高pH領域の生成を抑えて、水酸化ニッケルの生成を防止できる。
【0062】
次いで、水酸化クロム分散処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて水酸化クロム分散処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、水酸化クロム分散処理液中に残存している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。また、水酸化クロム分散処理液中に多量の有機物が存在する場合は、第一鉄を加える。これにより、ヒドロキシラジカルが多量に発生して、有機物の分解が促進される。
【0063】
そして、水酸化クロム分散処理液の温度を60℃以上100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(第1の鉄中和)。これによって、水酸化クロム分散処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0064】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄は一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、生成した水酸化第二鉄は、予め水酸化クロム分散処理液中に存在する水酸化クロムを核として凝集することにより、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化第二鉄澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離する際の濾過性が向上して、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロム澱物と共にケーキとして分離し第3処理液を容易に回収することができる(以上第3工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0065】
回収した第3処理液に鉄粉を加えると共に、pHが5以下になるように塩酸を加え、更に第3処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保って第3処理液のORPを−400mV以下、例えば、−500mVに調整して所定時間(180〜300分間、例えば240分間)撹拌する(ニッケル回収セメンテーション)。これによって、第3処理液のニッケルイオンと鉄の間で下記に示す化学反応が進行し、鉄粉表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉が形成され、第3処理液中のニッケルイオンが除去される。鉄粉としては、例えば、アトマイズ鉄粉、転炉ダスト精製鉄粉を使用することができる。
2Fe3++Fe → 3Fe2+
Ni2++Fe → Ni↓+Fe2+ (ニッケル回収セメンテーション)
Fe+2H++2Cl- → Fe2++2Cl-+H2↑
なお、第1及び第3工程で有機物の分解を行なって有機物の含有量を低下させているので、ニッケル回収セメンテーションを効率的に行なうことができる。
【0066】
pHを5以下にすることで、ニッケル回収セメンテーションを行なっているときに第3処理液中の亜鉛イオンが水酸化亜鉛澱物として沈澱するのが防止できる。また、ORPが−400mVを超えると、ニッケルイオンと鉄の置換が行なわれず好ましくない。温度を30〜80℃としたのは、30℃未満ではニッケル回収セメンテーションの進行速度が遅く、80℃を超えると鉄の溶解が顕著になって鉄の消費量が増大するため好ましくない。そして、所定時間経過後、ニッケル付着鉄粉が懸濁している第3処理液を、例えばフィルタープレスで固液分離してニッケル付着鉄粉をケーキとして分離し、第4処理液を回収する(以上、第4工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。なお、分離したニッケル付着鉄粉は、例えば、ステンレス精錬原料として利用できる。
【0067】
次いで、回収した第4処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて第4処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、第4処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化する。なお、第4処理液中に有機物が残存していても、第一鉄イオンが第二鉄イオンに酸化される際に有機物も同時に酸化されて分解される。次いで、第4処理液の温度を60℃以上100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(30〜90分間、例えば60分間)撹拌する(第2の鉄中和)。これによって、第4処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化した中間処理液が調製される。
【0068】
ここで、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、生成する水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化第二鉄澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離した際の濾過性を向上することができ、水酸化第二鉄澱物をケーキとして容易に分離して、第5処理液を容易に回収することができる(以上第5工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。なお、分離した水酸化第二鉄は、塩酸に溶解させて塩化第二鉄にして利用する。
【0069】
回収した第5処理液の温度を20〜80℃、好ましくは60℃以上80℃以下に保ち、アルカリ剤として消石灰を加えてpHを9以上で11以下、例えば9.5程度に調整して所定時間(15〜60分間、例えば、30分間)撹拌する(亜鉛中和)。これによって、第5処理液中の亜鉛イオンと消石灰の間で下記に示す化学反応が進行し、亜鉛イオンが水酸化亜鉛に変化する。
Zn2++2Cl-+Ca(OH)2 → Zn(OH)2↓+Ca2++2Cl-
ここで、pHを9〜11としたのは、pHが9未満では亜鉛は一部しか水酸化亜鉛にならず、pHが11を超えると水酸化亜鉛が再溶解するためである。また、温度を60℃以上80℃以下とすることで、水酸化亜鉛の生成速度を大きくすることができ、生成する水酸化亜鉛澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化亜鉛澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離した際の濾過性を向上することができ、水酸化亜鉛澱物をケーキとして容易に回収して、第6処理液を容易に分離することができる(以上第6工程)。なお、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に付着している残液を少なくする。これによって、水酸化亜鉛に含まれる不純物量を低減することができる。
そして、分離した第6処理液(プロセス排水)は、水処理設備に供給して、化学的酸素要求量(COD)、pH等が排出基準値以下になるように処理して、例えば、海域に排水する。
【0070】
図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法(以下、単に廃液スラッジの再資源化処理方法という)の変形例では、第5工程の中間処理で、第4処理液に酸化剤として過酸化水素を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤として弱アルカリを加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにする中間処理Aを行なって中間処理液を調製している。以下、中間処理Aについて詳しく説明する。
【0071】
第4処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて第4処理液のORPを400〜500mV、例えば450mV程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、第4処理液中の第一鉄イオンの一部が酸化されて第二鉄イオンになる。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0072】
そして、第4処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤として炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する。これによって、第4処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化して、この水酸化第二鉄の核が分散した(水酸化第二鉄のシーズが生成した)鉄中和処理液となる(鉄中和(シーズ生成))。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0073】
次いで、鉄中和処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて鉄中和処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、鉄中和処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化した中間処理液が形成される。なお、第4処理液中に有機物が残存していても、有機物は第一鉄イオンが第二鉄イオンに酸化される際に同時に酸化されて分解し、中間処理液中に有機物が残るのが防止できる。
【0074】
図4、図5に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第1の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の第1工程において、スラッジ溶解処理と不溶分除去処理の間に、石膏を生成させる石膏生成処理を設けたことが特徴となっている。また、本発明の第2の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第1の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の第3工程の代りに、第2処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを400mV以上で500mV以下に保持してクロム除去液中に存在する有機物の一部を分解すると共にクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、分散処理液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持して分散処理液中に残存する有機物の残部を分解すると共に分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、分散処理液に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことを特徴としており、その他の工程は第1の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法と実質的に同一である。このため、石膏生成処理及び第3A工程についてのみ説明する。
【0075】
石膏生成処理においては、スラッジ溶解処理で得られた溶解処理物に硫酸を加え、次いでカルシウム源の一例である炭酸カルシウムを加えてpHを1以上で2以下、例えば1.5程度に調整して、所定時間(15〜60分間、例えば30分間)撹拌する。このとき、スラリーの温度を80℃以上100℃未満に調整する。溶解処理物中では、炭酸カルシウムと硫酸が反応して石膏が生成し、このとき溶解処理物中に存在する有機物が石膏にからめ取られて凝集する。このため、固液分離の一例であるフィルタープレスにより不溶分除去処理を行なう際に、有機物による濾布の目詰りが防止される。更に、不溶分除去処理で生成した石膏はケーキ側に移行するので、ケーキの透水性が大きくなって、第1処理液の回収率が大きくなる。ここで、石膏生成処理で生成させる石膏量は、ケーキの透水性を改善するのに必要な量に制限することが好ましく、加える硫酸の重量は、例えば、乾燥したスラッジ100gに対して0.5〜5gである。これによって、石膏生成量を抑えてケーキの発生量(不溶分と石膏の総和)を少なくして廃棄物処理の負担を軽減することができる。
【0076】
第3A工程では、先ず、第2処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤として炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、第2処理液中のクロムイオンと炭酸カルシウムの間で化学反応が進行し、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロム澱物を含んだ液が形成される。そして、所定時間経過後、水酸化クロム澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離して、水酸化クロム澱物をケーキとして分離しクロム除去液を回収する。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0077】
次いで、水酸化クロム澱物が分離されたクロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えてクロム除去液のORPを400〜500mV、例えば450mV程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、クロム除去液中に存在する有機物の一部が分解され、更にクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部が酸化されて第二鉄イオンになる。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0078】
そして、クロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤として炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する(第1Aの鉄中和処理)。これによって、クロム除去液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化して、この水酸化第二鉄の核が分散した(水酸化第二鉄のシーズが生成した)分散処理液となる。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0079】
次いで、分散処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて分散処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、分散処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、分散処理液中に残存している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0080】
そして、分散処理液の温度を60℃以下100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(第1Bの鉄中和処理)。これによって、分散処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、HCO3-*は、HCO3-等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0081】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、生成した水酸化第二鉄は分散処理液中に予め存在していた水酸化第二鉄を核として凝集することにより、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化第二鉄澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離する際の濾過性が向上して、水酸化第二鉄澱物をケーキとして分離し第3処理液を容易に回収することができる。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0082】
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例では、第3A工程の代りに、第2処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持してクロム除去液中に残存する有機物を分解すると共にクロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なっている。以下、第3B工程について説明する。
【0083】
第3B工程では、先ず、第2処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロム澱物を含んだ液が形成される。そして、所定時間経過後、水酸化クロム澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離して、水酸化クロム澱物をケーキとして分離しクロム除去液を回収する。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。
【0084】
次いで、水酸化クロム澱物が分離されたクロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えてクロム除去液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、クロム除去液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、クロム除去液中に存在している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0085】
そして、クロム除去液の温度を60℃以下100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(第1Cの鉄中和処理)。これによって、クロム除去液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、HCO3-*は、HCO3-等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0086】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。
【0087】
図7、図8に示す本発明の第3の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸として塩酸を加えて多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロムと共に分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程と、第3処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、中間処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、第5処理液のpHを調整し、第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有し、多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの分別回収を行なうことが特徴となっている。ここで、第1の実施の形態で説明したスラッジに含まれる有機物の分解処理は、スラッジを無機酸に溶解する際、及び第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする際に同時に行なうことができるので、第3の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法は、第1の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法例と有機物の分解処理を除いて実質的に同一とすることができる。
【0088】
また、図9に示す第3の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例は、第5工程の中間処理で、第4処理液に酸化剤として過酸化水素を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤として弱アルカリを加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにする中間処理Aを行なって中間処理液を調製することが特徴で、第1の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例と実質的に同一とすることができる。このため、第3の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法及びその変形例についての説明は省略する。
【0089】
更に、図10、図11に示す本発明の第4の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第3の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の第3工程の代りに、第2処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを400mV以上で500mV以下に保持してクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、分散処理液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持して分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、分散処理液に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことを特徴としており、第4の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法は、第2の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法例と第1工程の石膏生成処理を除いて実質的に同一とすることができる。
【0090】
また、図12に示す第4の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例は、第3A工程の代りに、第2処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持してクロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なうことが特徴で、第2の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例と実質的に同一とすることができる。このため、第4の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法及びその変形例についての説明は省略する。
【0091】
図13、図14に示すように、本発明の第5の実施の形態に係るスラッジの再資源化処理方法は、例えば、有機物と、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムがいずれも水酸化物の状態で存在する多成分系めっき廃液スラッジ(以下、単にスラッジという)に無機酸として塩酸を加えて有機物を分解すると共に溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、溶解処理物から不溶分を除去して、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、第1処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を形成(銅回収セメンテーション)させ、銅付着鉄粉を分離してニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程とを有している。ここで、有機物とは、例えば、めっき事業所で排出されためっき廃液を中和して水酸化物として凝集沈澱させる際に凝集剤として使用した有機系ポリマーを指す。
【0092】
また、第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第2処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を形成(ニッケル回収セメンテーション)させ、ニッケル付着鉄粉を分離して亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第3処理液とする第3工程と、第3処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、水酸化クロム分散処理液に酸化剤として過酸化水素を加えて水酸化クロム分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程とを有している。
【0093】
更に、第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第4処理液にアルカリ剤として、例えば消石灰を加えてpHを調整し、第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有している。ここで、第1及び第2工程は、それぞれ第1の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法における第1及び第2工程と実質的に同一とすることができる。このため、第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法における第3〜第5工程に関して説明する。
【0094】
回収した第2処理液に鉄粉を加えると共に、pHが3以下になるように塩酸を加え、更に第2処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保って第2処理液のORPを−400mV以下、例えば、−500mVに調整して所定時間(180〜300分間、例えば240分間)撹拌する(ニッケル回収セメンテーション)。これによって、第2処理液のニッケルイオンと鉄の間で下記に示す化学反応が進行し、鉄粉表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉が形成され、第2処理液中のニッケルイオンが除去される。鉄粉としては、例えば、アトマイズ鉄粉、転炉ダスト精製鉄粉を使用することができる。
2Fe3++Fe → 3Fe2+
Ni2++Fe → Ni↓+Fe2+ (ニッケル回収セメンテーション)
Fe+2H++2Cl- → Fe2++2Cl-+H2↑
なお、第1工程で有機物の分解を行なって有機物の含有量を低下させているので、ニッケル回収セメンテーションを効率的に行なうことができる。
【0095】
pHを3以下にすることで、ニッケル回収セメンテーションを行なっているときに第2処理液中のクロムイオンが水酸化クロム澱物として沈澱するのが防止できる。また、ORPが−400mVを超えると、ニッケルイオンと鉄の置換が行なわれず好ましくない。温度を30〜80℃としたのは、30℃未満ではニッケル回収セメンテーションの進行速度が遅く、80℃を超えると鉄の溶解が顕著になって鉄の消費量が増大するため好ましくない。そして、所定時間経過後、ニッケル付着鉄粉が懸濁している第2処理液を、例えばフィルタープレスで固液分離してニッケル付着鉄粉をケーキとして分離し、第3処理液を回収する(以上、第3工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。なお、分離したニッケル付着鉄粉は、例えば、ステンレス精錬原料として利用できる。
【0096】
回収した第3処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、第3処理液中のクロムイオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液が形成される。
Cr3++3Cl-+3CaCO3+3H2O
→ Cr(OH)3↓+3Cl-+3Ca2+ + 3HCO3-*
ここで、HCO3-*は、HCO3-等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。また、pHを3〜5としたのは、pHが3未満であるとクロムの中和量が少なくなり、pHが5を超えると水酸化クロムと共に水酸化亜鉛が生成するためである。そして、弱アルカリである炭酸カルシウムを使用することで、クロム中和を行なう際に、局所的な高pH領域の生成を抑えて、水酸化亜鉛の生成を防止できる。
【0097】
次いで、水酸化クロム分散処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて水酸化クロム分散処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、水酸化クロム分散処理液中に残存している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。また、水酸化クロム分散処理液中に多量の有機物が存在する場合は、第一鉄を加える。これにより、ヒドロキシラジカルが多量に発生して、有機物の分解が促進される。
【0098】
そして、水酸化クロム分散処理液の温度を60℃以上100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(鉄中和)。これによって、水酸化クロム分散処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0099】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、生成した水酸化第二鉄は、予め水酸化クロム分散処理液中に存在する水酸化クロムを核として凝集することにより、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化第二鉄澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離する際の濾過性が向上して、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロム澱物と共にケーキとして分離し第4処理液を容易に回収することができる(以上第4工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0100】
回収した第4処理液の温度を20〜80℃、好ましくは60℃以上に保ち、アルカリ剤として消石灰を加えてpHを9以上で11以下、例えば9.5程度に調整して所定時間(15〜60分間、例えば、30分間)撹拌する(亜鉛中和)。これによって、第4処理液中の亜鉛イオンと消石灰の間で下記に示す化学反応が進行し、亜鉛イオンが水酸化亜鉛に変化する。
Zn2++2Cl-+Ca(OH)2 → Zn(OH)2↓+Ca2++2Cl-
ここで、pHを9〜11としたのは、pHが9未満では亜鉛は一部しか水酸化亜鉛にならず、pHが11を超えると水酸化亜鉛が再溶解するためである。また、温度を60℃以上とすることで、水酸化亜鉛の生成速度を大きくすることができ、生成する水酸化亜鉛澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化亜鉛澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離した際の濾過性を向上することができ、水酸化亜鉛澱物をケーキとして容易に回収して、第5処理液を容易に分離することができる(以上第5工程)。なお、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に付着している残液を少なくする。これによって、水酸化亜鉛に含まれる不純物量を低減することができる。
そして、分離した第5処理液(プロセス排水)は、水処理設備に供給して、化学的酸素要求量(COD)、pH等が排出基準値以下になるように処理して、例えば、海域に排水する。
【0101】
図15、図16に示すように、本発明の第6の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の第4工程の代りに、第3処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを400mV以上で500mV以下に保持してクロム除去液中に存在する有機物の一部を分解すると共にクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、分散処理液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持して分散処理液中に残存する有機物の残部を分解すると共に分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、分散処理液に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことを特徴としており、その他の工程は第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法と実質的に同一である。このため、第4A工程についてのみ説明する。
【0102】
第4A工程では、先ず、第3処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤として炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、第3処理液中のクロムイオンと炭酸カルシウムの間で化学反応が進行し、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロム澱物を含んだ液が形成される。そして、所定時間経過後、水酸化クロム澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離して、水酸化クロム澱物をケーキとして分離しクロム除去液を回収する。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0103】
次いで、水酸化クロム澱物が分離されたクロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えてクロム除去液のORPを400〜500mV、例えば450mV程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、クロム除去液中に存在する有機物の一部が分解され、更にクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部が酸化されて第二鉄イオンになる。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0104】
そして、クロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤として炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する(第1の鉄中和処理)。これによって、クロム除去液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化して、この水酸化第二鉄の核が分散した(水酸化第二鉄のシーズが生成した)分散処理液となる。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0105】
次いで、分散処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて分散処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、分散処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、分散処理液中に残存している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0106】
そして、分散処理液の温度を60℃以下100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(第2の鉄中和処理)。これによって、分散処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0107】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、生成した水酸化第二鉄は分散処理液中に予め存在していた水酸化第二鉄を核として凝集することにより、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化第二鉄澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離する際の濾過性が向上して、水酸化第二鉄澱物をケーキとして分離し第4処理液を容易に回収することができる。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0108】
図17に示すように、本発明の第6の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例では、第4A工程の代りに、第3処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持してクロム除去液中に存在する有機物を分解すると共にクロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なっている。以下、第4B工程について説明する。
【0109】
第4B程では、先ず、第3処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロム澱物を含んだ液が形成される。そして、所定時間経過後、水酸化クロム澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離して、水酸化クロム澱物をケーキとして分離しクロム除去液を回収する。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。
【0110】
次いで、水酸化クロム澱物が分離されたクロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えてクロム除去液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、クロム除去液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、クロム除去液中に存在している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0111】
そして、クロム除去液の温度を60℃以下100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(第3の鉄中和処理)。これによって、クロム除去液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0112】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。
【0113】
図18、図19に示す本発明の第7の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムがいずれも水酸化物の状態で存在する多成分系めっき廃液スラッジ(以下、単にスラッジという)に無機酸として塩酸を加えて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、溶解処理物から不溶分を除去して、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、第1処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を形成(銅回収セメンテーション)させ、銅付着鉄粉を分離してニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、第2処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を形成(ニッケル回収セメンテーション)させ、ニッケル付着鉄粉を分離して亜鉛、鉄、クロムを含有する第3処理液とする第3工程と、第3処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、水酸化クロム分散処理液に酸化剤として過酸化水素を加えて水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程と、第4処理液にアルカリ剤として、例えば消石灰を加えてpHを調整し、第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有し、多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの分別回収を行なうことが特徴となっている。ここで、第5の実施の形態で説明したスラッジに含まれる有機物の分解処理は、スラッジを無機酸に溶解する際及び第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする際に同時に行なうことができるので、第7の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法は、第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法例と有機物の分解処理を除いて実質的に同一とすることができる。
【0114】
また、図20、図21に示す本発明の第8の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第7の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の第3工程の代りに、第4処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを400mV以上で500mV以下に保持してクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、分散処理液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持して分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、分散処理液に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことを特徴としており、第8の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法は、第6の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法例と有機物の分解処理を除いて実質的に同一とすることができる。
【0115】
また、図22に示す第8の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例は、第4A工程の代りに、第3処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持してクロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なうことが特徴で、第6の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例と有機物の分解処理を除いて実質的に同一とすることができる。このため、第8の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法及びその変形例についての説明は省略する。
【実施例】
【0116】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含む多成分系めっき廃液スラッジから、銅、クロム及び鉄、ニッケル、鉄、並びに亜鉛を順に分別回収した。先ず、多成分系めっき廃液スラッジ(167.86g、固形分は50g)に水を112.14g加えてスラリーを調製した。多成分系めっき廃液スラッジの組成を表1に示す。なお、T.Cは全炭素量である。
【0117】
【表1】
【0118】
続いて、スラリーの温度が80℃となるように加熱しながら、pHが1.0程度になるように15%塩酸220gを添加して60分間撹拌しスラッジを溶解させるスラッジ溶解処理を行なった。スラッジ溶解処理を開始した時点の温度は81.1℃、ORPは515mV、pHは1.03であった。開始してから20分経過後に補給水を50g加えた。これにより、温度は78.1℃に低下し、ORPは481mV、pHは1.11となった。スラッジ溶解処理を開始してから40分経過後に温度は84.0℃、ORPは487mV、pHは1.10となり、スラッジ溶解処理終了(スラッジ溶解処理を開始してから60分後)温度は79.5℃、ORPは478mV、pHは1.06であった。スラッジ溶解処理終了後の溶解処理物の全炭素量の定量から、スラッジ溶解処理によりスラッジに含まれていた全有機物量の32%が分解されたことが確認された。溶解処理物を真空濾過して濾過液を回収し、不溶分には洗浄水100gを供給して再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第1処理液とした。不溶分及び第1処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第1工程)。
【0119】
【表2】
【0120】
回収した第1処理液(518.83g)に鉄粉15.0gを添加すると共に、塩酸を加えてpHを2以下になるようにして、更に、第1処理液の温度を40℃に保って、ORPが−400mV以上となるようにして15分間撹拌し、鉄粉表面に銅を析出させて銅付着鉄粉を形成した。なお、鉄粉投入時の液のORPは355mV、pHは1.09、温度は37.7℃であり、15分経過後の液のORPは−88mV、pHは1.10、温度は40.7℃であった。次いで、真空濾過して濾過液を回収し、分離した銅付着鉄粉には洗浄水25gを供給して再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第2処理液とした。銅付着鉄粉及び第2処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第2工程)。
【0121】
回収した第2処理液(511.23g)の温度が60℃となるように加熱しながら、炭酸カルシウム15.26gを添加してpHを4.2程度に調整し30分間撹拌してクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和を行なった。なお、クロム中和開始時のORPは−93mV、pHは4.03、温度は64.3℃であり、クロム中和が終了したときのORPは52mV、pHは4.19、温度は60.4℃であった。次いで、温度が60℃となるように加熱しながら、35%過酸化水素水8.64gを添加して20分間撹拌し、第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにした。第一鉄イオンの酸化開始時のORPは627mV、pHは2.27、温度は63.8℃であり、酸化終了後のORPは603mV、pHは2.16、温度は61.5℃であった。続いて、温度を60℃に保持してpHが3.5程度となるように炭酸カルシウム4.78gを加え、その後温度を80℃に保持して30分間撹拌し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変化させた(第1の鉄中和処理)。なお、第1の鉄中和処理開始時のORPは459mV、pHは3.41、温度は61.1℃であり、第1の鉄中和処理の終了時のORPは276mV、pHは3.49、温度は82.0℃であった。
そして、第1の鉄中和処理の終了後の液を真空濾過して濾過液を回収し、分離した水酸化クロム及び水酸化第二鉄の混合澱物に洗浄水150gを供給し再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第3処理液とした。水酸化クロム及び水酸化第二鉄の混合澱物及び第3処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第3工程)。
【0122】
回収した第3処理液(456.66g)に鉄粉457.0gを添加すると共に、15%塩酸91.4gを加えてpHを5以下になるようにして、更に、第3処理液の温度を60℃に保って、ORPが−450mVとなるようにして180分間撹拌し、鉄粉表面にニッケルを析出させてニッケル付着鉄粉を形成した(ニッケル回収セメンテーション)。なお、鉄粉投入時の液のORPは−497mV、pHは5.32、温度は62.8℃であり、60分経過後の液のORPは−566mV、pHは4.82、温度は60.5℃、120分経過後の液のORPは−563mV、pHは4.87、温度は61.2℃、180分経過後(ニッケル回収セメンテーション終了時)の液のORPは−568mV、pHは4.86、温度は61.3℃であった。次いで、真空濾過して濾過液を回収し、分離したニッケル付着鉄粉には洗浄水100gを供給して再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第4処理液とした。ニッケル付着鉄粉及び第4処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第4工程)。
【0123】
第4処理液(445.22g)の温度を65℃に保って35%過酸化水素12.82gを加えてORPを450mVに6分間保持して第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにした。次いで、炭酸カルシウム5.65gを加えてpHを3.5に調整し温度を60℃で6分間保持して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変えて水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液を形成した。続いて、鉄中和処理液を60℃にして35%過酸化水素水34.43gを加えてORPを600mV以上にして20分間保持した。ここで、ORPを450mVに6分間保持したときのORPは450mV、pHは2.03、温度は65.0℃であり、炭酸カルシウムを加えて6分間保持して形成した鉄中和処理液のORPは158mV、pHは3.50、温度は61.4℃であり、鉄中和処理液に過酸化水素水を加えた際のORPは654mV、pHは1.85、温度は71.4℃、鉄中和処理液に過酸化水素水を加えて20分経過後の中間処理液のORPは641mV、pHは1.70、温度は61.8℃であった。
【0124】
そして、中間処理液のpHが3.5程度となるように炭酸カルシウム17.48gを加え、その後温度を80℃に保持して60分間撹拌し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変化させた(第2の鉄中和処理)。なお、第2の鉄中和処理開始時のORPは332mV、pHは3.47、温度は80.1℃であり、第2の鉄中和処理の終了時のORPは243mV、pHは3.50、温度は80.5℃であった。
そして、第2の鉄中和処理の終了後の液を真空濾過して濾過液を回収し、分離した水酸化第二鉄澱物に洗浄水100gを供給し再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第5処理液とした。水酸化第二鉄澱物及び第5処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第5工程)。
【0125】
回収した第5処理液(325.15g)の温度を60℃に保って、pHは10程度になるように48%水酸化ナトリウム9.78gを加えて30分間撹拌し、水酸化亜鉛澱物を生成させた(亜鉛中和処理)。水酸化ナトリウムを加えた直後の液のORPは−520mV、pHは10.43、温度は68.5℃であり、30分経過後(亜鉛中和処理終了時)の液のORPは−508mV、pHは10.36、温度は66.3℃であった。次いで、真空濾過して濾過液を回収し、分離した水酸化亜鉛澱物には洗浄水100gを供給して再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第6処理液とした。水酸化亜鉛澱物及び第6処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第6工程)。
第6処理液の組成から、多成分系めっき廃液スラッジに当初含まれていたニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物は、いずれも除去されることが確認できた。また、回収した銅付着鉄粉、水酸化クロム及び水酸化第二鉄の混合澱物、ニッケル付着鉄粉、水酸化第二鉄澱物、及び水酸化亜鉛澱物から求めた、各金属の回収率は、ニッケルが91.0%、クロムが99.4%、銅が96.4%、亜鉛が64.1%となった。なお、第2工程で銅を回収する際に第1処理液に、第4工程でニッケルを回収する際に第3処理液に、それぞれ鉄が溶解するので、鉄の回収率は求めていない。
【0126】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、第1〜第8の実施の形態では、第1工程で塩酸に多成分系めっき廃液スラッジを溶解させたが、硫酸を使用することもできる。この場合、スラッジ溶解処理は、pHを0.5以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満の条件で行ない、スラッジ溶解処理と不溶分除去処理の間に、溶解処理物にカルシウム源として、例えば塩化カルシウムを加えてpHを1以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満にして溶解処理物中の硫酸根を石膏として除去する硫酸根除去処理を設ける必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図2】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図3】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図5】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図6】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図8】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図9】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図11】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図12】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図14】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図15】本発明の第6の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図16】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図17】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【図18】本発明の第7の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図19】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図20】本発明の第8の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図21】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図22】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分系めっき廃液スラッジから有価物を分別回収して再資源化する処理方法に関する。ここで、多成分系めっき廃液スラッジとは、鉄等を被めっき材としてニッケルめっき、銅めっき、亜鉛めっき、及びクロムめっきをそれぞれ行なった際にめっき工程で発生する各めっき廃液スラッジを混合したもので、金属成分としてニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含有するものを指す。
【背景技術】
【0002】
例えば、ニッケルめっき廃液スラッジ中のニッケル分を回収する方法として、ニッケルめっき廃液スラッジに硫酸を加えて固形分を溶解させて溶解液を調製し、この溶解液から冷却晶析法により硫酸ニッケル結晶を晶析させて回収する方法、及びニッケル分の回収率を更に大きくするために、溶解液から硫酸ニッケル結晶を晶析させて回収すると共に、硫酸ニッケル結晶を濾過した濾液に鉄粉を加えて濾液中に残留するニッケルイオンを鉄粉表面に析出させて回収する冷却晶析処理とセメンテーション処理を組み合わせた方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
あるいは、ニッケルめっき廃液スラッジに硫酸を添加して固形分を溶解した溶解液に炭酸カルシウムを加えると共に溶解液中の2価鉄イオンを3価鉄イオンに変えてからpH調整して鉄分を除去したニッケル原液を形成し、このニッケル原液に水酸化カルシウムを添加しpH調整して生成及び回収したニッケル含有石膏に酸を加えて水酸化ニッケルとして溶解させてニッケル分を抽出し、これに硫酸を加えて生成させた硫酸ニッケル溶液に冷却晶析処理を行なって硫酸ニッケル結晶を晶析させて回収する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−284848号公報
【特許文献2】特開2005−15272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、めっき処理工場では、単一種の金属めっき処理を行なった際に発生するめっき廃液スラッジの量は少なく、しかも、2種類以上の金属めっき処理工程を有している場合が多いため、各金属めっき処理工程で発生するめっき廃液スラッジは混合処理され、めっき処理工場からは多成分の金属成分を含有した状態のめっき廃液スラッジが搬出され最終処分場で埋立処分されているのが現状である。一方、めっき廃液スラッジから有価金属を効率的に回収(再資源化)しようとする場合、発生しためっき廃液スラッジを、例えば、貯留タンク内に貯留しておき、めっき廃液スラッジが一定量に達した時点で一括処理して有価金属を回収することが経済性の観点から望ましい。
【0006】
従って、処理対象となるめっき廃液スラッジは、ニッケルめっきで発生するめっき廃液スラッジに限定されず、例えば、銅めっき、クロムめっき、及び亜鉛めっきを行なった際に発生した各めっき廃液スラッジが混入し多成分系めっき廃液スラッジの状態になっている。ここで、多成分系めっき廃液スラッジから、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを、乾式精錬技術に基づく乾式法により分別回収することは非常に困難で、しかも、金属が溶融するような高温下で処理を行なうため、消費されるエネルギーも膨大となって経済的にも問題となる。このため、凝集沈澱法、セメンテーション法、キレート樹脂を用いたイオン交換樹脂法、及び溶媒抽出法等の湿式法を用いることが必要となる。しかし、イオン交換樹脂法で使用するイオン交換樹脂、溶媒抽出法で使用する抽出溶媒は、それぞれ専用に設計された極めて高価なもので、これを使用して多成分系めっき廃液スラッジから、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの分別回収を経済的に行なうのは困難である。また、セメンテーション法を利用する特許文献1の発明、及び凝集沈澱法を利用する特許文献2の発明を、多成分系めっき廃液スラッジに適用する場合、回収される鉄及びニッケルにそれぞれ銅、クロム、及び亜鉛が混入することになる。このため、各有価金属の分別回収を精度よく行なうことができないという問題がある。そして、回収されるニッケル及び鉄の純度が低下し資源としての利用価値も低下するという問題も生じる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、多成分系めっき廃液スラッジから有価物を安価に分別回収して再資源化することが可能な多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に前記水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、該中間処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、
前記第5処理液のpHを調整し、該第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジから有機物を分解しニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収する。
ここで、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムには、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの金属に加えてこれらの化合物も含まれる。また有機物には、有機高分子系の凝集剤等が含まれる。
【0009】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0010】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理では、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して、該第4処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることができる。
【0011】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理では、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して前記第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤を加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、該鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることもできる。ここで、前記鉄中和処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に、酸化剤と共に第一鉄を加えることができ、前記第4処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。また、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。更に、前記第1の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0013】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に該分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことができる。ここで、前記第1Bの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことが好ましい。
【0014】
第1の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なうこともできる。ここで、前記第1Cの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことが好ましい。
【0015】
前記目的に沿う第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、該中間処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、
前記第5処理液のpHを調整し、該第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収する。
ここで、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムには、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの金属に加えてこれらの化合物も含まれる。
【0016】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0017】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理では、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して、該第4処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることができる。ここで、前記第4処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。
【0018】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理は、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して前記第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤を加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、該鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることができる。ここで、前記第4処理液及び前記鉄中和処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。
【0019】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。また、前記第1の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0020】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことができる。ここで、前記第1Bの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0021】
第2の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なうこともできる。ここで、前記第1Cの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0022】
前記目的に沿う第3の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に前記水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液のpHを調整し、該第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジから有機物を分解しニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収する。
ここで、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムには、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの金属に加えてこれらの化合物も含まれる。また有機物には、有機高分子系の凝集剤等が含まれる。
【0023】
第3の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。更に、前記水酸化クロム分散処理液に、酸化剤と共に第一鉄を加えることができる。また、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。
【0024】
第3の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に該分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことができる。ここで、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0025】
第3の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なうこともできる。ここで、前記第3の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0026】
前記目的に沿う第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液のpHを調整し、該第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収する。
ここで、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムには、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの金属に加えてこれらの化合物も含まれる。
【0027】
第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。また、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることが好ましい。
【0028】
第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことができる。ここで、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0029】
第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なうこともできる。ここで、前記第3の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうのがよい。
【0030】
第1〜第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記pH調整剤は弱アルカリ剤であることが好ましい。
【0031】
第1〜第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1工程で、前記無機酸に塩酸を使用し、前記スラッジ溶解処理は、pHを0.5以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満の条件で行なうことができる。また、前記スラッジ溶解処理と前記不溶分除去処理の間に、前記溶解処理物に硫酸を加え、更にカルシウム源を加えてpHを1以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満にして、石膏を生成させることが好ましい。
【0032】
第1〜第4の発明に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1工程で、前記無機酸に硫酸を使用し、前記前記スラッジ溶解処理は、pHを0.5以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満の条件で行ない、該スラッジ溶解処理と前記不溶分除去処理の間に、前記溶解処理物にカルシウム源を加えてpHを1以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満にして該溶解処理物中の硫酸根を石膏として除去する硫酸根除去処理を設けることもできる。
【発明の効果】
【0033】
請求項1〜44記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、多成分系めっき廃液スラッジから各金属を順次分別回収することができ、回収された各金属分を資源として有効利用することが可能になる。ここで、ニッケルを分別回収してから亜鉛の分別回収を行なうので、回収したニッケル及び亜鉛の品位を上げることができる。
【0034】
特に、請求項2、9、11、13、15、21、23、25、27、31、33、35、38、及び40記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、水酸化第二鉄澱物の生成速度が速くなって水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化を図ることができ、濾過性を改善することが可能になる。
【0035】
請求項3記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、第4処理液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第4工程で鉄の回収を効率的に行なうことができる。ここで、第4処理液中に有機物が存在する場合は、第4処理液中の第一鉄イオンの酸化と同時に有機物の分解が行なわれるので、有機物が第5処理液中に混入するのを防止できる。
【0036】
請求項4記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、第4処理液中の第一鉄イオンの一部から水酸化第二鉄の核を生成させ、次いで残りの第一鉄イオンを全て酸化させて水酸化第二鉄の核と第二鉄イオンが共存する状態にしてから更に鉄中和を行なうので、生成する水酸化第二鉄が予め存在する水酸化第二鉄の核を中心にして析出し、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化を達成することができる。その結果、水酸化第二鉄澱物の濾過性が改善されて、水酸化第二鉄澱物の分離を効率的に行なうことが可能になる。ここで、第4処理液中に有機物が存在する場合は、第一鉄イオンの酸化と有機物の分解が同時に行なわれ、有機物が第5処理液中に混入するのを防止することが可能になる。
請求項5、6記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、過酸化水素を使用するので、第一鉄イオンを効率的に酸化することができると共に、第4処理液中の第一鉄イオンにより過酸化水素からヒドロキシラジカルを効率的に発生させることができ、第4処理液中に有機物が残存している場合は有機物の分解も効率的に行なうことができ、第5処理液中に有機物が混入するのを防止できる。
【0037】
請求項7記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、酸化剤と共に第一鉄を加えるので、第3処理液中の有機物の分解を促進することができる。
請求項8載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤が過酸化水素なので、過酸化水素からヒドロキシラジカルを効率的に発生させて、有機物を効率的に分解することができる。
【0038】
請求項10記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、酸化剤により有機物が分解されるので、第4工程におけるニッケルの回収率を向上させることができる。更に、第1Aの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄の核を生成させてから、第1B鉄中和処理を行なうので、第1Bの鉄中和処理で生成する水酸化第二鉄を第1Aの鉄中和処理で生成した水酸化第二鉄の核を中心にして析出させることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化が達成されて濾過性を改善することが可能になる。
【0039】
請求項12記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、酸化剤により有機物が分解されるので、第4工程におけるニッケルの回収率を向上させることができる。更に、クロム除去液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第3処理液の回収を効率的に行なうことができる。
【0040】
請求項16記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、第4処理液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第4工程で混入した鉄の回収を効率的に行なうことができる。
請求項17記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、過酸化水素で第一鉄イオンを効率的に酸化することができる。
【0041】
請求項18記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、第4処理液中の第一鉄イオンの一部から水酸化第二鉄の核を生成させ、次いで残りの第一鉄イオンを全て酸化させて水酸化第二鉄の核と第二鉄イオンが共存する状態にしてから更に鉄中和を行なうので、生成する水酸化第二鉄が予め存在する水酸化第二鉄の核を中心にして析出し、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化を達成することができる。その結果、水酸化第二鉄澱物の濾過性が改善されて、水酸化第二鉄澱物の分離を効率的に行なうことが可能になる。
請求項19記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、過酸化水素で第一鉄イオンを効率的に酸化することができる。
請求項20記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤が過酸化水素なので、水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを効率的に酸化して第二鉄イオンにすることができる。
【0042】
請求項22記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、第1Aの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄の核を生成させてから、第1B鉄中和処理を行なうので、第1Bの鉄中和処理で生成する水酸化第二鉄を第1Aの鉄中和処理で生成した水酸化第二鉄の核を中心にして析出させることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化が達成されて濾過性を改善することが可能になる。
【0043】
請求項24記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、クロム除去液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第3処理液の回収を効率的に行なうことができる。
【0044】
請求項28記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、酸化剤と共に第一鉄を加えるので、有機物の分解を促進することができる。
請求項29記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤が過酸化水素なので、過酸化水素からヒドロキシラジカルを効率的に発生させて、有機物を効率的に分解することができる。
【0045】
請求項30記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄の核を生成させてから、第2の鉄中和処理を行なうので、第2の鉄中和処理で生成する水酸化第二鉄を第1の鉄中和処理で生成した水酸化第二鉄の核を中心にして析出させることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化が達成されて濾過性を改善することが可能になる。更に、酸化剤により有機物が分解されるので、第4処理液中に有機物が混入するのを防止することができる。
【0046】
請求項32記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、クロム除去液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第4処理液の回収を効率的に行なうことができる。更に、酸化剤により有機物が分解されるので、第4処理液中に有機物が混入するのを防止することができる。
【0047】
請求項36記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤が過酸化水素なので、水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを効率的に酸化して第二鉄イオンにすることができる。
【0048】
請求項37記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄の核を生成させてから、第2の鉄中和処理を行なうので、第2の鉄中和処理で生成する水酸化第二鉄を第1の鉄中和処理で生成した水酸化第二鉄の核を中心にして析出させることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子の粗大化が達成されて濾過性を改善することが可能になる。
【0049】
請求項39記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、クロムと鉄を分別回収できるので、クロム原料、鉄原料として有効利用することができる。また、クロム除去液中の全ての第一鉄イオンの酸化を行なうので、第4処理液の回収を効率的に行なうことができる。
【0050】
請求項41記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、pH調整剤に弱アルカリ剤を使用するので、中和を行なう際に、局所的な高pH領域の生成を抑えることが可能になる。これによって、所望の金属の水酸化物のみを生成させることが可能になり、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの精度の高い分別回収を行なうことができる。
【0051】
請求項42記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、塩酸を使用することで溶解処理物中で各金属分を塩化物の状態で存在させて各金属分を水酸化物の状態で容易に回収することができ、各金属成分の回収精度及び回収率を共に大きくすることが可能になる。また、温度を80℃以上100℃未満にすることで、多成分系めっき廃液スラッジ中に有機物が存在していても、有機物を分解することができる。
【0052】
請求項43記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、不溶分中に石膏が存在することになり、不溶分層の濾過抵抗を低下させて不溶分層中で液の移動を容易に行なわせることができ、不溶分を容易に除去することが可能になる。その結果、不溶分の分離を効率的に行なうことが可能になる。また、塩酸で分解されなかった有機物が生成する石膏に付着するので、有機物を効率的に分離することもできる。
【0053】
請求項44記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法においては、硫酸を使用することにより、安価に溶解処理物を得ることができる。また、温度を80℃以上100℃未満にすることで、多成分系めっき廃液スラッジ中に有機物が存在していても、有機物の分解を行なうことができる。また、硫酸で分解されなかった有機物が生成する石膏に付着するので、有機物を効率的に分離することもできる。そして、硫酸根除去処理を行なうことで、不溶分層中に石膏を存在させ濾過抵抗を低下させて不溶分層中で液の移動を容易に行なわせることができ、不溶分を容易に除去することが可能になる。更に、第1処理液中の硫酸根の含有量を低下することができ、消石灰等のカルシウムを含む安価なアルカリ剤の使用が可能になって、処理コストの低減を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1、図2は本発明の第1の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図3は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図、図4、図5は本発明の第2の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図6は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図、図7、図8は本発明の第3の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図9は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図、図10、図11は本発明の第4の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図12は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図、図13、図14は本発明の第5の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図15、図16は本発明の第6の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図17は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図、図18、図19は本発明の第7の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図20、図21は本発明の第8の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図、図22は同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【0055】
図1、図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法(以下、単にスラッジの再資源化処理方法という)は、例えば、有機物と、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムがいずれも水酸化物の状態で存在する多成分系めっき廃液スラッジ(以下、単にスラッジという)に無機酸として塩酸を加えて有機物を分解すると共に溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、溶解処理物から不溶分を除去して、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、第1処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を形成(銅回収セメンテーション)させ、銅付着鉄粉を分離してニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程とを有している。ここで、有機物とは、例えば、めっき事業所で排出されためっき廃液を中和して水酸化物として凝集沈澱させる際に凝集剤として使用した有機系ポリマーを指す。
【0056】
また、廃液スラッジの再資源化処理方法は、第2処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、水酸化クロム分散処理液に酸化剤として過酸化水素を加えて水酸化クロム分散処理液中に残存する有機物を分解すると共に水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロムと共に分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程とを有している。
【0057】
更に、廃液スラッジの再資源化処理方法は、第3処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を形成(ニッケル回収セメンテーション)させ、ニッケル付着鉄粉を分離して亜鉛、鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、中間処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、第5処理液にアルカリ剤、例えば、消石灰を加えてpHを調整し、第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有している。以下、これらについて詳細に説明する。
【0058】
図1、図2に示すように、第1工程では、先ず、多成分系めっき廃液スラッジを受け入れ加水し撹拌混合して、例えば、固形分濃度が10重量%程度のスラリーを調製する。次いで、このスラリーに塩酸を加えてpHを0.5以上で2以下、例えば1程度に調整して、60分以上撹拌する。このとき、スラリーの温度を80℃以上100℃未満に調整する。以上の操作により、スラリー中の固形分(各金属の水酸化物)は、下記の反応によりイオンとなって溶解する(以上、スラッジ溶解処理)。
Cr(OH)3+3H++3Cl- → Cr3++3Cl-+3H2O
Cu(OH)2+2H++2Cl- → Cu2++2Cl-+2H2O
Fe(OH)2+2H++2Cl- → Fe2++2Cl-+2H2O
Fe(OH)3+3H++3Cl- → Fe3++3Cl-+3H2O
Ni(OH)2+2H++2Cl- → Ni2++2Cl-+2H2O
Zn(OH)2+2H++2Cl- → Zn2++2Cl-+2H2O
ここで、pHを0.5〜2としたのは、pHが2を超えると未溶解のスラッジ量が多くなり、回収される金属量が減少するので好ましくなく、pHを0.5未満にすると酸の使用量が極めて増大し非経済的となるためである。また、スラリーの温度を80℃以上100℃未満にして、60分以上撹拌することで、有機物を分解することができる。
【0059】
続いて、溶解処理物を、例えば、固液分離の一例であるフィルタープレスで処理して不溶分を固層(以下、ケーキという)として分離して、第1処理液を回収する(不溶分除去処理)。なお、ケーキとして分離した不溶分(不溶解残渣)は廃棄物として処分する。ここでスラッジに含まれている有機物は分解されているので、フィルタープレスを行なう際に、濾布の目詰りを抑制することができる。そして、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる(以上、第1工程)。
【0060】
回収した第1処理液に鉄粉を加えると共に、pHが3以下になるように塩酸を加え、更に第1処理液の温度を30〜80℃、例えば40℃に保って溶解液の酸化還元電位(ORP)を−400mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(銅回収セメンテーション)。これによって、第1処理液の銅イオンと鉄の間で下記に示す化学反応が進行し、鉄粉表面に銅が析出した銅付着鉄粉が形成され、溶解液中の銅イオンが除去される。鉄粉としては、例えば、アトマイズ鉄粉、転炉ダスト精製鉄粉を使用することができる。
2Fe3++Fe → 3Fe2+
Cu2++Fe → Cu↓+Fe2+ (銅回収セメンテーション)
Fe+2H++2Cl- → Fe2++2Cl-+H2↑
ここで、pHを3以下にすることで、銅回収セメンテーションを行なっているときに第1処理液中のクロムイオンが水酸化クロム澱物として沈澱するのを防止できる。また、ORPを−400mV以上にすることで、ニッケルイオンと鉄が置換して鉄粉表面にニッケルが析出するのを防止できる。そして、所定時間経過後、銅付着鉄粉が懸濁している第1処理液を、例えばフィルタープレスで固液分離して銅付着鉄粉をケーキとして分離し、第2処理液を回収する(以上、第2工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。なお、分離した銅付着鉄粉は、例えば、銅精錬原料として利用できる。
【0061】
回収した第2処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、第2処理液中のクロムイオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液が形成される。
Cr3++3Cl-+3CaCO3+3H2O
→ Cr(OH)3↓+3Cl-+3Ca2+ + 3HCO3-*
ここで、HCO3-*は、HCO3-等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。また、pHを3〜5としたのは、pHが3未満であるとクロムの中和量が少なくなり、pHが5を超えると水酸化クロムと共に水酸化ニッケルが生成するためである。そして、弱アルカリである炭酸カルシウムを使用することで、クロム中和を行なう際に、局所的な高pH領域の生成を抑えて、水酸化ニッケルの生成を防止できる。
【0062】
次いで、水酸化クロム分散処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて水酸化クロム分散処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、水酸化クロム分散処理液中に残存している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。また、水酸化クロム分散処理液中に多量の有機物が存在する場合は、第一鉄を加える。これにより、ヒドロキシラジカルが多量に発生して、有機物の分解が促進される。
【0063】
そして、水酸化クロム分散処理液の温度を60℃以上100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(第1の鉄中和)。これによって、水酸化クロム分散処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0064】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄は一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、生成した水酸化第二鉄は、予め水酸化クロム分散処理液中に存在する水酸化クロムを核として凝集することにより、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化第二鉄澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離する際の濾過性が向上して、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロム澱物と共にケーキとして分離し第3処理液を容易に回収することができる(以上第3工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0065】
回収した第3処理液に鉄粉を加えると共に、pHが5以下になるように塩酸を加え、更に第3処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保って第3処理液のORPを−400mV以下、例えば、−500mVに調整して所定時間(180〜300分間、例えば240分間)撹拌する(ニッケル回収セメンテーション)。これによって、第3処理液のニッケルイオンと鉄の間で下記に示す化学反応が進行し、鉄粉表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉が形成され、第3処理液中のニッケルイオンが除去される。鉄粉としては、例えば、アトマイズ鉄粉、転炉ダスト精製鉄粉を使用することができる。
2Fe3++Fe → 3Fe2+
Ni2++Fe → Ni↓+Fe2+ (ニッケル回収セメンテーション)
Fe+2H++2Cl- → Fe2++2Cl-+H2↑
なお、第1及び第3工程で有機物の分解を行なって有機物の含有量を低下させているので、ニッケル回収セメンテーションを効率的に行なうことができる。
【0066】
pHを5以下にすることで、ニッケル回収セメンテーションを行なっているときに第3処理液中の亜鉛イオンが水酸化亜鉛澱物として沈澱するのが防止できる。また、ORPが−400mVを超えると、ニッケルイオンと鉄の置換が行なわれず好ましくない。温度を30〜80℃としたのは、30℃未満ではニッケル回収セメンテーションの進行速度が遅く、80℃を超えると鉄の溶解が顕著になって鉄の消費量が増大するため好ましくない。そして、所定時間経過後、ニッケル付着鉄粉が懸濁している第3処理液を、例えばフィルタープレスで固液分離してニッケル付着鉄粉をケーキとして分離し、第4処理液を回収する(以上、第4工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。なお、分離したニッケル付着鉄粉は、例えば、ステンレス精錬原料として利用できる。
【0067】
次いで、回収した第4処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて第4処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、第4処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化する。なお、第4処理液中に有機物が残存していても、第一鉄イオンが第二鉄イオンに酸化される際に有機物も同時に酸化されて分解される。次いで、第4処理液の温度を60℃以上100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(30〜90分間、例えば60分間)撹拌する(第2の鉄中和)。これによって、第4処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化した中間処理液が調製される。
【0068】
ここで、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、生成する水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化第二鉄澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離した際の濾過性を向上することができ、水酸化第二鉄澱物をケーキとして容易に分離して、第5処理液を容易に回収することができる(以上第5工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。なお、分離した水酸化第二鉄は、塩酸に溶解させて塩化第二鉄にして利用する。
【0069】
回収した第5処理液の温度を20〜80℃、好ましくは60℃以上80℃以下に保ち、アルカリ剤として消石灰を加えてpHを9以上で11以下、例えば9.5程度に調整して所定時間(15〜60分間、例えば、30分間)撹拌する(亜鉛中和)。これによって、第5処理液中の亜鉛イオンと消石灰の間で下記に示す化学反応が進行し、亜鉛イオンが水酸化亜鉛に変化する。
Zn2++2Cl-+Ca(OH)2 → Zn(OH)2↓+Ca2++2Cl-
ここで、pHを9〜11としたのは、pHが9未満では亜鉛は一部しか水酸化亜鉛にならず、pHが11を超えると水酸化亜鉛が再溶解するためである。また、温度を60℃以上80℃以下とすることで、水酸化亜鉛の生成速度を大きくすることができ、生成する水酸化亜鉛澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化亜鉛澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離した際の濾過性を向上することができ、水酸化亜鉛澱物をケーキとして容易に回収して、第6処理液を容易に分離することができる(以上第6工程)。なお、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に付着している残液を少なくする。これによって、水酸化亜鉛に含まれる不純物量を低減することができる。
そして、分離した第6処理液(プロセス排水)は、水処理設備に供給して、化学的酸素要求量(COD)、pH等が排出基準値以下になるように処理して、例えば、海域に排水する。
【0070】
図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法(以下、単に廃液スラッジの再資源化処理方法という)の変形例では、第5工程の中間処理で、第4処理液に酸化剤として過酸化水素を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤として弱アルカリを加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにする中間処理Aを行なって中間処理液を調製している。以下、中間処理Aについて詳しく説明する。
【0071】
第4処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて第4処理液のORPを400〜500mV、例えば450mV程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、第4処理液中の第一鉄イオンの一部が酸化されて第二鉄イオンになる。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0072】
そして、第4処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤として炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する。これによって、第4処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化して、この水酸化第二鉄の核が分散した(水酸化第二鉄のシーズが生成した)鉄中和処理液となる(鉄中和(シーズ生成))。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0073】
次いで、鉄中和処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて鉄中和処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、鉄中和処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化した中間処理液が形成される。なお、第4処理液中に有機物が残存していても、有機物は第一鉄イオンが第二鉄イオンに酸化される際に同時に酸化されて分解し、中間処理液中に有機物が残るのが防止できる。
【0074】
図4、図5に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第1の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の第1工程において、スラッジ溶解処理と不溶分除去処理の間に、石膏を生成させる石膏生成処理を設けたことが特徴となっている。また、本発明の第2の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第1の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の第3工程の代りに、第2処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを400mV以上で500mV以下に保持してクロム除去液中に存在する有機物の一部を分解すると共にクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、分散処理液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持して分散処理液中に残存する有機物の残部を分解すると共に分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、分散処理液に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことを特徴としており、その他の工程は第1の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法と実質的に同一である。このため、石膏生成処理及び第3A工程についてのみ説明する。
【0075】
石膏生成処理においては、スラッジ溶解処理で得られた溶解処理物に硫酸を加え、次いでカルシウム源の一例である炭酸カルシウムを加えてpHを1以上で2以下、例えば1.5程度に調整して、所定時間(15〜60分間、例えば30分間)撹拌する。このとき、スラリーの温度を80℃以上100℃未満に調整する。溶解処理物中では、炭酸カルシウムと硫酸が反応して石膏が生成し、このとき溶解処理物中に存在する有機物が石膏にからめ取られて凝集する。このため、固液分離の一例であるフィルタープレスにより不溶分除去処理を行なう際に、有機物による濾布の目詰りが防止される。更に、不溶分除去処理で生成した石膏はケーキ側に移行するので、ケーキの透水性が大きくなって、第1処理液の回収率が大きくなる。ここで、石膏生成処理で生成させる石膏量は、ケーキの透水性を改善するのに必要な量に制限することが好ましく、加える硫酸の重量は、例えば、乾燥したスラッジ100gに対して0.5〜5gである。これによって、石膏生成量を抑えてケーキの発生量(不溶分と石膏の総和)を少なくして廃棄物処理の負担を軽減することができる。
【0076】
第3A工程では、先ず、第2処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤として炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、第2処理液中のクロムイオンと炭酸カルシウムの間で化学反応が進行し、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロム澱物を含んだ液が形成される。そして、所定時間経過後、水酸化クロム澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離して、水酸化クロム澱物をケーキとして分離しクロム除去液を回収する。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0077】
次いで、水酸化クロム澱物が分離されたクロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えてクロム除去液のORPを400〜500mV、例えば450mV程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、クロム除去液中に存在する有機物の一部が分解され、更にクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部が酸化されて第二鉄イオンになる。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0078】
そして、クロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤として炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する(第1Aの鉄中和処理)。これによって、クロム除去液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化して、この水酸化第二鉄の核が分散した(水酸化第二鉄のシーズが生成した)分散処理液となる。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0079】
次いで、分散処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて分散処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、分散処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、分散処理液中に残存している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0080】
そして、分散処理液の温度を60℃以下100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(第1Bの鉄中和処理)。これによって、分散処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、HCO3-*は、HCO3-等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0081】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、生成した水酸化第二鉄は分散処理液中に予め存在していた水酸化第二鉄を核として凝集することにより、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化第二鉄澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離する際の濾過性が向上して、水酸化第二鉄澱物をケーキとして分離し第3処理液を容易に回収することができる。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0082】
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例では、第3A工程の代りに、第2処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持してクロム除去液中に残存する有機物を分解すると共にクロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なっている。以下、第3B工程について説明する。
【0083】
第3B工程では、先ず、第2処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロム澱物を含んだ液が形成される。そして、所定時間経過後、水酸化クロム澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離して、水酸化クロム澱物をケーキとして分離しクロム除去液を回収する。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。
【0084】
次いで、水酸化クロム澱物が分離されたクロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えてクロム除去液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、クロム除去液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、クロム除去液中に存在している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0085】
そして、クロム除去液の温度を60℃以下100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(第1Cの鉄中和処理)。これによって、クロム除去液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、HCO3-*は、HCO3-等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0086】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。
【0087】
図7、図8に示す本発明の第3の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸として塩酸を加えて多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロムと共に分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程と、第3処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、中間処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、第5処理液のpHを調整し、第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有し、多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの分別回収を行なうことが特徴となっている。ここで、第1の実施の形態で説明したスラッジに含まれる有機物の分解処理は、スラッジを無機酸に溶解する際、及び第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする際に同時に行なうことができるので、第3の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法は、第1の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法例と有機物の分解処理を除いて実質的に同一とすることができる。
【0088】
また、図9に示す第3の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例は、第5工程の中間処理で、第4処理液に酸化剤として過酸化水素を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤として弱アルカリを加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにする中間処理Aを行なって中間処理液を調製することが特徴で、第1の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例と実質的に同一とすることができる。このため、第3の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法及びその変形例についての説明は省略する。
【0089】
更に、図10、図11に示す本発明の第4の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第3の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の第3工程の代りに、第2処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを400mV以上で500mV以下に保持してクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、分散処理液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持して分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、分散処理液に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことを特徴としており、第4の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法は、第2の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法例と第1工程の石膏生成処理を除いて実質的に同一とすることができる。
【0090】
また、図12に示す第4の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例は、第3A工程の代りに、第2処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持してクロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なうことが特徴で、第2の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例と実質的に同一とすることができる。このため、第4の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法及びその変形例についての説明は省略する。
【0091】
図13、図14に示すように、本発明の第5の実施の形態に係るスラッジの再資源化処理方法は、例えば、有機物と、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムがいずれも水酸化物の状態で存在する多成分系めっき廃液スラッジ(以下、単にスラッジという)に無機酸として塩酸を加えて有機物を分解すると共に溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、溶解処理物から不溶分を除去して、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、第1処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を形成(銅回収セメンテーション)させ、銅付着鉄粉を分離してニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程とを有している。ここで、有機物とは、例えば、めっき事業所で排出されためっき廃液を中和して水酸化物として凝集沈澱させる際に凝集剤として使用した有機系ポリマーを指す。
【0092】
また、第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第2処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を形成(ニッケル回収セメンテーション)させ、ニッケル付着鉄粉を分離して亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第3処理液とする第3工程と、第3処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、水酸化クロム分散処理液に酸化剤として過酸化水素を加えて水酸化クロム分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程とを有している。
【0093】
更に、第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第4処理液にアルカリ剤として、例えば消石灰を加えてpHを調整し、第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有している。ここで、第1及び第2工程は、それぞれ第1の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法における第1及び第2工程と実質的に同一とすることができる。このため、第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法における第3〜第5工程に関して説明する。
【0094】
回収した第2処理液に鉄粉を加えると共に、pHが3以下になるように塩酸を加え、更に第2処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保って第2処理液のORPを−400mV以下、例えば、−500mVに調整して所定時間(180〜300分間、例えば240分間)撹拌する(ニッケル回収セメンテーション)。これによって、第2処理液のニッケルイオンと鉄の間で下記に示す化学反応が進行し、鉄粉表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉が形成され、第2処理液中のニッケルイオンが除去される。鉄粉としては、例えば、アトマイズ鉄粉、転炉ダスト精製鉄粉を使用することができる。
2Fe3++Fe → 3Fe2+
Ni2++Fe → Ni↓+Fe2+ (ニッケル回収セメンテーション)
Fe+2H++2Cl- → Fe2++2Cl-+H2↑
なお、第1工程で有機物の分解を行なって有機物の含有量を低下させているので、ニッケル回収セメンテーションを効率的に行なうことができる。
【0095】
pHを3以下にすることで、ニッケル回収セメンテーションを行なっているときに第2処理液中のクロムイオンが水酸化クロム澱物として沈澱するのが防止できる。また、ORPが−400mVを超えると、ニッケルイオンと鉄の置換が行なわれず好ましくない。温度を30〜80℃としたのは、30℃未満ではニッケル回収セメンテーションの進行速度が遅く、80℃を超えると鉄の溶解が顕著になって鉄の消費量が増大するため好ましくない。そして、所定時間経過後、ニッケル付着鉄粉が懸濁している第2処理液を、例えばフィルタープレスで固液分離してニッケル付着鉄粉をケーキとして分離し、第3処理液を回収する(以上、第3工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。なお、分離したニッケル付着鉄粉は、例えば、ステンレス精錬原料として利用できる。
【0096】
回収した第3処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、第3処理液中のクロムイオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液が形成される。
Cr3++3Cl-+3CaCO3+3H2O
→ Cr(OH)3↓+3Cl-+3Ca2+ + 3HCO3-*
ここで、HCO3-*は、HCO3-等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。また、pHを3〜5としたのは、pHが3未満であるとクロムの中和量が少なくなり、pHが5を超えると水酸化クロムと共に水酸化亜鉛が生成するためである。そして、弱アルカリである炭酸カルシウムを使用することで、クロム中和を行なう際に、局所的な高pH領域の生成を抑えて、水酸化亜鉛の生成を防止できる。
【0097】
次いで、水酸化クロム分散処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて水酸化クロム分散処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、水酸化クロム分散処理液中に残存している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。また、水酸化クロム分散処理液中に多量の有機物が存在する場合は、第一鉄を加える。これにより、ヒドロキシラジカルが多量に発生して、有機物の分解が促進される。
【0098】
そして、水酸化クロム分散処理液の温度を60℃以上100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(鉄中和)。これによって、水酸化クロム分散処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0099】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、生成した水酸化第二鉄は、予め水酸化クロム分散処理液中に存在する水酸化クロムを核として凝集することにより、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化第二鉄澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離する際の濾過性が向上して、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロム澱物と共にケーキとして分離し第4処理液を容易に回収することができる(以上第4工程)。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0100】
回収した第4処理液の温度を20〜80℃、好ましくは60℃以上に保ち、アルカリ剤として消石灰を加えてpHを9以上で11以下、例えば9.5程度に調整して所定時間(15〜60分間、例えば、30分間)撹拌する(亜鉛中和)。これによって、第4処理液中の亜鉛イオンと消石灰の間で下記に示す化学反応が進行し、亜鉛イオンが水酸化亜鉛に変化する。
Zn2++2Cl-+Ca(OH)2 → Zn(OH)2↓+Ca2++2Cl-
ここで、pHを9〜11としたのは、pHが9未満では亜鉛は一部しか水酸化亜鉛にならず、pHが11を超えると水酸化亜鉛が再溶解するためである。また、温度を60℃以上とすることで、水酸化亜鉛の生成速度を大きくすることができ、生成する水酸化亜鉛澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化亜鉛澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離した際の濾過性を向上することができ、水酸化亜鉛澱物をケーキとして容易に回収して、第5処理液を容易に分離することができる(以上第5工程)。なお、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に付着している残液を少なくする。これによって、水酸化亜鉛に含まれる不純物量を低減することができる。
そして、分離した第5処理液(プロセス排水)は、水処理設備に供給して、化学的酸素要求量(COD)、pH等が排出基準値以下になるように処理して、例えば、海域に排水する。
【0101】
図15、図16に示すように、本発明の第6の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の第4工程の代りに、第3処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを400mV以上で500mV以下に保持してクロム除去液中に存在する有機物の一部を分解すると共にクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、分散処理液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持して分散処理液中に残存する有機物の残部を分解すると共に分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、分散処理液に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことを特徴としており、その他の工程は第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法と実質的に同一である。このため、第4A工程についてのみ説明する。
【0102】
第4A工程では、先ず、第3処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤として炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、第3処理液中のクロムイオンと炭酸カルシウムの間で化学反応が進行し、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロム澱物を含んだ液が形成される。そして、所定時間経過後、水酸化クロム澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離して、水酸化クロム澱物をケーキとして分離しクロム除去液を回収する。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0103】
次いで、水酸化クロム澱物が分離されたクロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えてクロム除去液のORPを400〜500mV、例えば450mV程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、クロム除去液中に存在する有機物の一部が分解され、更にクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部が酸化されて第二鉄イオンになる。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0104】
そして、クロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤として炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(3〜10分間、例えば6分間)撹拌する(第1の鉄中和処理)。これによって、クロム除去液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化して、この水酸化第二鉄の核が分散した(水酸化第二鉄のシーズが生成した)分散処理液となる。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0105】
次いで、分散処理液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えて分散処理液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、分散処理液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、分散処理液中に残存している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0106】
そして、分散処理液の温度を60℃以下100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(第2の鉄中和処理)。これによって、分散処理液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0107】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、生成した水酸化第二鉄は分散処理液中に予め存在していた水酸化第二鉄を核として凝集することにより、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。このため、所定時間経過後、水酸化第二鉄澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離する際の濾過性が向上して、水酸化第二鉄澱物をケーキとして分離し第4処理液を容易に回収することができる。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。これによって、各金属イオンの回収率が更に大きくなる。
【0108】
図17に示すように、本発明の第6の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例では、第4A工程の代りに、第3処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持してクロム除去液中に存在する有機物を分解すると共にクロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なっている。以下、第4B工程について説明する。
【0109】
第4B程では、先ず、第3処理液の温度を30〜80℃、例えば60℃に保ち、弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを3以上で5以下、例えば、4.2程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(クロム中和)。これによって、クロムイオンが水酸化クロムに変化して、水酸化クロム澱物を含んだ液が形成される。そして、所定時間経過後、水酸化クロム澱物を含んだ液を、例えば、フィルタープレスで固液分離して、水酸化クロム澱物をケーキとして分離しクロム除去液を回収する。ここで、分離したケーキを洗浄水を用いて洗浄し、ケーキ側に残留している各金属イオンを洗い流すようにする。
【0110】
次いで、水酸化クロム澱物が分離されたクロム除去液の温度を20〜80℃、例えば60℃に保ち、酸化剤として過酸化水素を加えてクロム除去液のORPを600mV以上に調整して所定時間(20〜60分間、例えば25分間)撹拌する。これによって、下記に示す化学反応が進行し、クロム除去液中の第一鉄イオンが全量酸化されて第二鉄イオンに変化すると共に、クロム除去液中に存在している有機物も酸化されて分解する。
2Fe2++4Cl-+H2O2
→ 2Fe3++4Cl-+2OH-+2・OH (第一鉄酸化反応)
R+・OH → xCO2+yH2O (有機物分解反応)
ここで、・OHはヒドロキシラジカル、Rは有機物を示す。
【0111】
そして、クロム除去液の温度を60℃以下100℃未満、例えば80℃に保ち、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば炭酸カルシウムを加えてpHを2.5以上で5以下、例えば、3.5程度に調整して所定時間(20〜60分間、例えば30分間)撹拌する(第3の鉄中和処理)。これによって、クロム除去液中の第二鉄イオンと炭酸カルシウムの間で下記に示す化学反応が進行し、第二鉄イオンが水酸化第二鉄に変化する。
Fe3++2Cl-+OH-+CaCO3+2H2O
→ Fe(OH)3↓+Ca2++2Cl-+H2CO3*
ここで、H2CO3*は、H2CO3等の水中に溶存している各種炭酸成分と炭酸カルシウムの分解により生成した炭酸ガスを総称したものである。
【0112】
また、pHを2.5〜5としたのは、pHが2.5未満では第二鉄イオンは一部しか水酸化第二鉄にならず、pHが5を超えると水酸化第二鉄と共に水酸化亜鉛が生成するためである。温度を60℃以上100℃未満、好ましくは75℃以上85℃以下とすることで、水酸化第二鉄の生成速度を大きくすることができ、水酸化第二鉄澱物の粒子を粗大化することができる。
【0113】
図18、図19に示す本発明の第7の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムがいずれも水酸化物の状態で存在する多成分系めっき廃液スラッジ(以下、単にスラッジという)に無機酸として塩酸を加えて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、溶解処理物から不溶分を除去して、ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、第1処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を形成(銅回収セメンテーション)させ、銅付着鉄粉を分離してニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、第2処理液に鉄粉及び酸の一例である塩酸を加えて酸化還元電位及びpHを調整し、第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を形成(ニッケル回収セメンテーション)させ、ニッケル付着鉄粉を分離して亜鉛、鉄、クロムを含有する第3処理液とする第3工程と、第3処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、水酸化クロム分散処理液に酸化剤として過酸化水素を加えて水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤、例えば、炭酸カルシウムを加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程と、第4処理液にアルカリ剤として、例えば消石灰を加えてpHを調整し、第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有し、多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムの分別回収を行なうことが特徴となっている。ここで、第5の実施の形態で説明したスラッジに含まれる有機物の分解処理は、スラッジを無機酸に溶解する際及び第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする際に同時に行なうことができるので、第7の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法は、第5の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法例と有機物の分解処理を除いて実質的に同一とすることができる。
【0114】
また、図20、図21に示す本発明の第8の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法は、第7の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の第3工程の代りに、第4処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを400mV以上で500mV以下に保持してクロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、分散処理液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持して分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、分散処理液に弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことを特徴としており、第8の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法は、第6の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法例と有機物の分解処理を除いて実質的に同一とすることができる。
【0115】
また、図22に示す第8の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例は、第4A工程の代りに、第3処理液にpH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整し、第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、クロム除去液に酸化剤を加えてORPを600mV以上に保持してクロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤として弱アルカリ剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なうことが特徴で、第6の実施の形態に係る廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例と有機物の分解処理を除いて実質的に同一とすることができる。このため、第8の実施の形態の廃液スラッジの再資源化処理方法及びその変形例についての説明は省略する。
【実施例】
【0116】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含む多成分系めっき廃液スラッジから、銅、クロム及び鉄、ニッケル、鉄、並びに亜鉛を順に分別回収した。先ず、多成分系めっき廃液スラッジ(167.86g、固形分は50g)に水を112.14g加えてスラリーを調製した。多成分系めっき廃液スラッジの組成を表1に示す。なお、T.Cは全炭素量である。
【0117】
【表1】
【0118】
続いて、スラリーの温度が80℃となるように加熱しながら、pHが1.0程度になるように15%塩酸220gを添加して60分間撹拌しスラッジを溶解させるスラッジ溶解処理を行なった。スラッジ溶解処理を開始した時点の温度は81.1℃、ORPは515mV、pHは1.03であった。開始してから20分経過後に補給水を50g加えた。これにより、温度は78.1℃に低下し、ORPは481mV、pHは1.11となった。スラッジ溶解処理を開始してから40分経過後に温度は84.0℃、ORPは487mV、pHは1.10となり、スラッジ溶解処理終了(スラッジ溶解処理を開始してから60分後)温度は79.5℃、ORPは478mV、pHは1.06であった。スラッジ溶解処理終了後の溶解処理物の全炭素量の定量から、スラッジ溶解処理によりスラッジに含まれていた全有機物量の32%が分解されたことが確認された。溶解処理物を真空濾過して濾過液を回収し、不溶分には洗浄水100gを供給して再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第1処理液とした。不溶分及び第1処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第1工程)。
【0119】
【表2】
【0120】
回収した第1処理液(518.83g)に鉄粉15.0gを添加すると共に、塩酸を加えてpHを2以下になるようにして、更に、第1処理液の温度を40℃に保って、ORPが−400mV以上となるようにして15分間撹拌し、鉄粉表面に銅を析出させて銅付着鉄粉を形成した。なお、鉄粉投入時の液のORPは355mV、pHは1.09、温度は37.7℃であり、15分経過後の液のORPは−88mV、pHは1.10、温度は40.7℃であった。次いで、真空濾過して濾過液を回収し、分離した銅付着鉄粉には洗浄水25gを供給して再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第2処理液とした。銅付着鉄粉及び第2処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第2工程)。
【0121】
回収した第2処理液(511.23g)の温度が60℃となるように加熱しながら、炭酸カルシウム15.26gを添加してpHを4.2程度に調整し30分間撹拌してクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和を行なった。なお、クロム中和開始時のORPは−93mV、pHは4.03、温度は64.3℃であり、クロム中和が終了したときのORPは52mV、pHは4.19、温度は60.4℃であった。次いで、温度が60℃となるように加熱しながら、35%過酸化水素水8.64gを添加して20分間撹拌し、第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにした。第一鉄イオンの酸化開始時のORPは627mV、pHは2.27、温度は63.8℃であり、酸化終了後のORPは603mV、pHは2.16、温度は61.5℃であった。続いて、温度を60℃に保持してpHが3.5程度となるように炭酸カルシウム4.78gを加え、その後温度を80℃に保持して30分間撹拌し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変化させた(第1の鉄中和処理)。なお、第1の鉄中和処理開始時のORPは459mV、pHは3.41、温度は61.1℃であり、第1の鉄中和処理の終了時のORPは276mV、pHは3.49、温度は82.0℃であった。
そして、第1の鉄中和処理の終了後の液を真空濾過して濾過液を回収し、分離した水酸化クロム及び水酸化第二鉄の混合澱物に洗浄水150gを供給し再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第3処理液とした。水酸化クロム及び水酸化第二鉄の混合澱物及び第3処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第3工程)。
【0122】
回収した第3処理液(456.66g)に鉄粉457.0gを添加すると共に、15%塩酸91.4gを加えてpHを5以下になるようにして、更に、第3処理液の温度を60℃に保って、ORPが−450mVとなるようにして180分間撹拌し、鉄粉表面にニッケルを析出させてニッケル付着鉄粉を形成した(ニッケル回収セメンテーション)。なお、鉄粉投入時の液のORPは−497mV、pHは5.32、温度は62.8℃であり、60分経過後の液のORPは−566mV、pHは4.82、温度は60.5℃、120分経過後の液のORPは−563mV、pHは4.87、温度は61.2℃、180分経過後(ニッケル回収セメンテーション終了時)の液のORPは−568mV、pHは4.86、温度は61.3℃であった。次いで、真空濾過して濾過液を回収し、分離したニッケル付着鉄粉には洗浄水100gを供給して再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第4処理液とした。ニッケル付着鉄粉及び第4処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第4工程)。
【0123】
第4処理液(445.22g)の温度を65℃に保って35%過酸化水素12.82gを加えてORPを450mVに6分間保持して第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにした。次いで、炭酸カルシウム5.65gを加えてpHを3.5に調整し温度を60℃で6分間保持して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変えて水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液を形成した。続いて、鉄中和処理液を60℃にして35%過酸化水素水34.43gを加えてORPを600mV以上にして20分間保持した。ここで、ORPを450mVに6分間保持したときのORPは450mV、pHは2.03、温度は65.0℃であり、炭酸カルシウムを加えて6分間保持して形成した鉄中和処理液のORPは158mV、pHは3.50、温度は61.4℃であり、鉄中和処理液に過酸化水素水を加えた際のORPは654mV、pHは1.85、温度は71.4℃、鉄中和処理液に過酸化水素水を加えて20分経過後の中間処理液のORPは641mV、pHは1.70、温度は61.8℃であった。
【0124】
そして、中間処理液のpHが3.5程度となるように炭酸カルシウム17.48gを加え、その後温度を80℃に保持して60分間撹拌し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変化させた(第2の鉄中和処理)。なお、第2の鉄中和処理開始時のORPは332mV、pHは3.47、温度は80.1℃であり、第2の鉄中和処理の終了時のORPは243mV、pHは3.50、温度は80.5℃であった。
そして、第2の鉄中和処理の終了後の液を真空濾過して濾過液を回収し、分離した水酸化第二鉄澱物に洗浄水100gを供給し再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第5処理液とした。水酸化第二鉄澱物及び第5処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第5工程)。
【0125】
回収した第5処理液(325.15g)の温度を60℃に保って、pHは10程度になるように48%水酸化ナトリウム9.78gを加えて30分間撹拌し、水酸化亜鉛澱物を生成させた(亜鉛中和処理)。水酸化ナトリウムを加えた直後の液のORPは−520mV、pHは10.43、温度は68.5℃であり、30分経過後(亜鉛中和処理終了時)の液のORPは−508mV、pHは10.36、温度は66.3℃であった。次いで、真空濾過して濾過液を回収し、分離した水酸化亜鉛澱物には洗浄水100gを供給して再度真空濾過を行なって洗浄水を回収して濾過液に混合して第6処理液とした。水酸化亜鉛澱物及び第6処理液の組成を表1及び表2にそれぞれ示す(以上、第6工程)。
第6処理液の組成から、多成分系めっき廃液スラッジに当初含まれていたニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物は、いずれも除去されることが確認できた。また、回収した銅付着鉄粉、水酸化クロム及び水酸化第二鉄の混合澱物、ニッケル付着鉄粉、水酸化第二鉄澱物、及び水酸化亜鉛澱物から求めた、各金属の回収率は、ニッケルが91.0%、クロムが99.4%、銅が96.4%、亜鉛が64.1%となった。なお、第2工程で銅を回収する際に第1処理液に、第4工程でニッケルを回収する際に第3処理液に、それぞれ鉄が溶解するので、鉄の回収率は求めていない。
【0126】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、第1〜第8の実施の形態では、第1工程で塩酸に多成分系めっき廃液スラッジを溶解させたが、硫酸を使用することもできる。この場合、スラッジ溶解処理は、pHを0.5以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満の条件で行ない、スラッジ溶解処理と不溶分除去処理の間に、溶解処理物にカルシウム源として、例えば塩化カルシウムを加えてpHを1以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満にして溶解処理物中の硫酸根を石膏として除去する硫酸根除去処理を設ける必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図2】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図3】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図5】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図6】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図8】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図9】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図11】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図12】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図14】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図15】本発明の第6の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図16】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図17】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【図18】本発明の第7の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図19】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図20】本発明の第8の実施の形態に係る多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図21】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の部分工程説明図である。
【図22】同多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法の変形例に係る部分工程説明図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に前記水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、該中間処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、
前記第5処理液のpHを調整し、該第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジから有機物を分解しニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収することを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理は、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して、該第4処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項4】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理は、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して前記第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤を加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、該鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項5】
請求項4記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記鉄中和処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に、酸化剤と共に第一鉄を加えることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に該分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項11】
請求項10記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1Bの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項13】
請求項12記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1Cの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項14】
ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、該中間処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、
前記第5処理液のpHを調整し、該第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収することを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項15】
請求項14記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項16】
請求項14及び15のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理は、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して、該第4処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項17】
請求項16記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項18】
請求項14及び15のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理は、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して前記第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤を加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、該鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンすることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項19】
請求項18記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4処理液及び前記鉄中和処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項21】
請求項14〜20のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項22】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項23】
請求項22記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1Bの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項24】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項25】
請求項24記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1Cの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項26】
ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に前記水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液のpHを調整し、該第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジから有機物を分解しニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収することを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項27】
請求項26記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項28】
請求項26及び27のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に、酸化剤と共に第一鉄を加えることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項30】
請求項26記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に該分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項31】
請求項30記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項32】
請求項26記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項33】
請求項32記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項34】
ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液のpHを調整し、該第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収することを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項35】
請求項34記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項36】
請求項34及び35のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項37】
請求項34記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項38】
請求項37記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項39】
請求項34記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項40】
請求項39記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項41】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記pH調整剤は弱アルカリ剤であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項42】
請求項1〜41のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1工程で、前記無機酸に塩酸を使用し、前記スラッジ溶解処理は、pHを0.5以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満の条件で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項43】
請求項42記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記スラッジ溶解処理と前記不溶分除去処理の間に、前記溶解処理物に硫酸を加え、更にカルシウム源を加えてpHを1以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満にして、石膏を生成させることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項44】
請求項1〜41のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1工程で、前記無機酸に硫酸を使用し、前記前記スラッジ溶解処理は、pHを0.5以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満の条件で行ない、該スラッジ溶解処理と前記不溶分除去処理の間に、前記溶解処理物にカルシウム源を加えてpHを1以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満にして該溶解処理物中の硫酸根を石膏として除去する硫酸根除去処理を設けることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項1】
ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に前記水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、該中間処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、
前記第5処理液のpHを調整し、該第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジから有機物を分解しニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収することを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理は、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して、該第4処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項4】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理は、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して前記第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤を加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、該鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項5】
請求項4記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記鉄中和処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に、酸化剤と共に第一鉄を加えることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に該分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項11】
請求項10記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1Bの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項13】
請求項12記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1Cの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項14】
ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離してニッケル、及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第3処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛及び鉄を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにする中間処理を行なって中間処理液を調製し、該中間処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第5処理液とする第5工程と、
前記第5処理液のpHを調整し、該第5処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第6処理液とする第6工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収することを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項15】
請求項14記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項16】
請求項14及び15のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理は、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して、該第4処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンにすることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項17】
請求項16記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項18】
請求項14及び15のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記中間処理は、前記第4処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して前記第4処理液中の第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、pH調整剤を加えてpH調整することで第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和を行なって水酸化第二鉄が分散する鉄中和処理液として、該鉄中和処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該鉄中和処理液中の第一鉄イオンを全て酸化して第二鉄イオンすることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項19】
請求項18記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4処理液及び前記鉄中和処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項21】
請求項14〜20のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項22】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Aの鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Bの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3A工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項23】
請求項22記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1Bの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項24】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3工程の代りに、前記第2処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第2処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1Cの鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離してニッケル及び亜鉛を含有する第3処理液とする第3B工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項25】
請求項24記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1Cの鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項26】
ニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物の一部が混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛、鉄、クロム、及び有機物を含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に前記水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液のpHを調整し、該第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジから有機物を分解しニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収することを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項27】
請求項26記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項28】
請求項26及び27のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に、酸化剤と共に第一鉄を加えることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項30】
請求項26記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中に存在する有機物を分解すると共に該分散処理液の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項31】
請求項30記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項32】
請求項26記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中に存在する有機物を分解すると共に該クロム除去液の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項33】
請求項32記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項34】
ニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを含む多成分系めっき廃液スラッジに無機酸を加えて該多成分系めっき廃液スラッジを溶解させて溶解処理物を形成するスラッジ溶解処理を行ない、該溶解処理物から不溶分を除去してニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムが混入した第1処理液を得る不溶分除去処理を設けた第1工程と、
前記第1処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第1処理液中の銅イオンと鉄を置換し表面に銅が析出した銅付着鉄粉を分離して、ニッケル、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第2処理液とする第2工程と、
前記第2処理液に鉄粉を加えると共に酸化還元電位及びpHを調整し、該第2処理液中のニッケルイオンと鉄を置換し表面にニッケルが析出したニッケル付着鉄粉を分離して、亜鉛、鉄、及びクロムを含有する第3処理液とする第3工程と、
前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロムが分散した水酸化クロム分散処理液とし、該水酸化クロム分散処理液に酸化剤を加えて該水酸化クロム分散処理液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して第二鉄イオンを水酸化第二鉄に変える鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を前記水酸化クロムと共に分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4工程と、
前記第4処理液のpHを調整し、該第4処理液中の亜鉛イオンを水酸化亜鉛に変える亜鉛中和処理を行なって水酸化亜鉛澱物を生成させ、該水酸化亜鉛澱物を分離して亜鉛を除去した第5処理液とする第5工程とを有し、
前記多成分系めっき廃液スラッジからニッケル、銅、亜鉛、鉄、及びクロムを分別回収することを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項35】
請求項34記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項36】
請求項34及び35のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記水酸化クロム分散処理液に加える酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項37】
請求項34記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を400mV以上で500mV以下に保持して該クロム除去液中に存在する第一鉄イオンの一部を酸化して第二鉄イオンにし、更にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第1の鉄中和処理を行なって、水酸化第二鉄が分散した分散処理液とし、該分散処理液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該分散処理液中の第一鉄イオンの残部を酸化して第二鉄イオンにし、次いで、該分散処理液にpH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第2の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4A工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項38】
請求項37記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第2の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項39】
請求項34記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第4工程の代りに、前記第3処理液にpH調整剤を加えてpHを調整し、該第3処理液中のクロムイオンを水酸化クロムに変えるクロム中和処理を行なって水酸化クロム澱物を生成させ、該水酸化クロム澱物を分離してクロム除去液とし、該クロム除去液に酸化剤を加えて酸化還元電位を600mV以上に保持して該クロム除去液中の第一鉄イオンを酸化して第二鉄イオンにし、次いで、pH調整剤を加えてpHを調整して水酸化第二鉄に変える第3の鉄中和処理を行なって水酸化第二鉄澱物を生成させ、該水酸化第二鉄澱物を分離して亜鉛を含有する第4処理液とする第4B工程を行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項40】
請求項39記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第3の鉄中和処理は、60℃以上、好ましくは75℃以上で、100℃未満好ましくは85℃以下で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項41】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記pH調整剤は弱アルカリ剤であることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項42】
請求項1〜41のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1工程で、前記無機酸に塩酸を使用し、前記スラッジ溶解処理は、pHを0.5以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満の条件で行なうことを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項43】
請求項42記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記スラッジ溶解処理と前記不溶分除去処理の間に、前記溶解処理物に硫酸を加え、更にカルシウム源を加えてpHを1以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満にして、石膏を生成させることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【請求項44】
請求項1〜41のいずれか1項に記載の多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法において、前記第1工程で、前記無機酸に硫酸を使用し、前記前記スラッジ溶解処理は、pHを0.5以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満の条件で行ない、該スラッジ溶解処理と前記不溶分除去処理の間に、前記溶解処理物にカルシウム源を加えてpHを1以上で2以下、温度を80℃以上で100℃未満にして該溶解処理物中の硫酸根を石膏として除去する硫酸根除去処理を設けることを特徴とする多成分系めっき廃液スラッジの再資源化処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図11】
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【図19】
【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2007−237054(P2007−237054A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61498(P2006−61498)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000233734)株式会社アステック入江 (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000233734)株式会社アステック入江 (25)
【Fターム(参考)】
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