多成分髄膜炎菌ワクチン
【課題】髄膜炎菌感染に対する防御免疫を一貫しておよび確実に誘導するワクチン組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の組成物は、(i)N.meningitidis外膜小胞;および(ii)少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質を含み、該外膜小胞が、第1のN.meningitidis株に由来し、そして該抗原性タンパク質が、該第1の株とは異なる第2のN.meningitidis株に由来する。
【解決手段】本発明の組成物は、(i)N.meningitidis外膜小胞;および(ii)少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質を含み、該外膜小胞が、第1のN.meningitidis株に由来し、そして該抗原性タンパク質が、該第1の株とは異なる第2のN.meningitidis株に由来する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分ワクチン、およびグラム陰性病原体による広いスペクトルの感染に対して防御免疫を与える多成分ワクチンを調製するための方法に関する。特に、本発明は、髄膜炎菌疾患に対する受動および能動の両方の防御免疫を提供する多成分ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
髄膜炎菌性髄膜炎は、世界的に主要な問題であり、そして多くの国で感染の発生が増加している。Neisseria meningitidisは、この疾患の原因因子であり、そしてまた、髄膜炎菌性敗血症の原因であり、これは急速な発症および高い死亡率に関連し、症例の約22%が致命的である。
【0003】
現在、髄膜炎菌疾患に対する防御免疫を提供するワクチンは、限られた防御を提供するにすぎないが、これはN.meningitidisに多くの異なる株があるためである。血清群抗原である莢膜多糖類に基づくワクチンは、感染に対して短命の防御を与えるのみであり、そして北アメリカおよびヨーロッパで通常見られる多くの株に対して防御しない。これらのワクチンのさらなる欠点は、通常最も感染しやすい脆弱な群の1つである2歳以下の子供に低レベルの防御しか与えないことである。
【0004】
髄膜炎菌トランスフェリンレセプターは、2つのタイプの構成タンパク質鎖である、トランスフェリン結合タンパク質A(TbpA)およびTbpBからなる。レセプター複合体は、単一のTbpBと会合するTbpAのダイマーから形成されると考えられる(Boultonら(1998))。TbpAに存在するエピトープは、タンパク質の内部にマスクされていることが知られている(Ala'Aldeen (1996))。単独の株に由来するTbpBに基づく髄膜炎菌性髄膜炎に対するワクチンは、いくつかの交差反応性を示し、そしてTbpB単独で免疫したウサギにおいて交差反応性免疫応答の証拠がある(Feirrerosら(1998))。
【0005】
Gomezら(Vaccine Vol.16 (1998) No.17 pp.1633-1639)は、TbpA+TbpB複合体を含むワクチンにおいて多くの異なるアジュバント組成物の効果についての研究を記載している。髄膜炎菌チャレンジに対する免疫率は、TbpA+TbpBおよびRASアジュバントを含む組成物で最高であった。
【0006】
Ala'Aldeen(J. Med. Microbiol. Vol. 44 (1996) pp.237-243)は、N.meningitidisのTbpおよびその候補ワクチン抗原としてのその使用の可能性の総説を提供している。Ala'Aldeenは、交差反応性および広いスペクトルの防御が、主としてTbpBサブユニットに関連することを示唆している(240ページ、第3段落)。
【0007】
Gorringeら(Vaccine Vol.13 (1995) No.13 pp.1207-1212)は、Tbpに対するヒト抗体応答を記載し、そして抗Tbp抗体についてヒト血清をテストすることによってワクチン抗原としての価値を評価している。Gorringeらは、このようなワクチンのどの成分も記載していないが、精製したTbpAおよびTbpBサブユニットとTbpA+B複合体との間の抗体交差反応性のレベルを研究している。
【0008】
Boultonら(Biochem. J. (1998) 334 pp.269-273)は、N.meningitidis由来のTbpBの単離および特徴づけを記載し、そしてTbpAダイマー+TbpBモノマーとしてのインビボでのTbp複合体の形成も仮定する。
【0009】
それにもかかわらず、より広いスペクトルのN.meningitidis株からの感染に対してより広い範囲の防御免疫を与えるワクチンを提供することは、有益である。幼児および成人に対して防御免疫を与え、そしてその防御が長期であるワクチンを提供することは、さらに有益である。無症状感染に対して防御するワクチンを提供することも有益である。すなわち、無症状感染は、髄膜炎菌感染の徴候がすぐに出現せず、感染した個体が病原体のキャリアの働きをし得るからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、Tbpを含む組成物、およびそれに基づくワクチンを提供することであり、それによって当該技術分野の不利点に対処するまたは少なくとも改善する。特に、本発明の目的は、髄膜炎菌感染に対する防御免疫を一貫しておよび確実に誘導するワクチン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(i)N.meningitidis外膜小胞;および(ii)少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質を含む組成物を提供し、上記外膜小胞は、第1のN.meningitidis株に由来し、そして上記抗原性タンパク質が、上記第1の株とは異なる第2のN.meningitidis株に由来する。
【0012】
1つの実施態様では、上記組成物は、N.meningitidisの異なる株由来の複数の抗原性タンパク質を含む。
【0013】
1つの実施態様では、上記外膜小胞は、N.meningitidisの異なる株由来の外膜小胞の混合物を含む。
【0014】
1つの実施態様では、上記組成物において、上記N.meningitidis抗原性タンパク質は、表面抗原、ペリプラズムタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、または糖タンパク質より選択される。
【0015】
さらなる実施態様では、上記少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質は、N.meningitidis表面抗原である。
【0016】
さらなる実施態様では、上記抗原性タンパク質は、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)またはナイセリア表面タンパク質A(NspA)より選択される。
【0017】
よりさらなる実施態様では、上記Cu,Zn−SODはダイマータイプである。
【0018】
1つの実施態様では、上記組成物は、
(a)上記少なくとも1つの単離されたN.meningitidis抗原性タンパク質を得る工程;
(b)上記N.meningitidis外膜小胞を得る工程;および
(c)上記単離されたN.meningitidis抗原性タンパク質と上記単離されたN.meningitidis外膜小胞とを組み合わせる工程
を含む方法により得られる。
【0019】
本発明はまた、上記組成物を含むワクチンを提供する。
【0020】
本発明はさらに、上記組成物の製造方法を提供し、上記方法は、
(a)第1のN.meningitidis株の外膜から少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質を抽出して該抗原性タンパク質の水溶液を調製する工程;
(b)上記第1の株とは異なる第2のN.meningitidis株の培養物から外膜小胞を抽出する工程;
(c)薬学的に受容可能なキャリアを得る工程;ならびに
(d)工程(a)で調製した溶液、工程(b)で調製した外膜小胞、および工程(c)で得たキャリアを混合する工程
を含む。
【0021】
1つの実施態様では、上記方法は、上記工程(a)の代わりに、
(a)第1のN.meningitidis株の少なくとも1つの抗原性タンパク質をコードするDNAを細菌において組換え発現し、上記細菌の外膜から上記抗原性タンパク質を抽出し、上記抗原性タンパク質の水溶液を調製する工程
を含む。
【0022】
1つの実施態様では、上記方法において、上記N.meningitidis抗原性タンパク質は、表面抗原、ペリプラズムタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、または糖タンパク質より選択される。
【0023】
さらなる実施態様では、上記N.meningitidis抗原性タンパク質は、N.meningitidis表面抗原である。
【0024】
さらなる実施態様では、上記抗原性タンパク質は、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)またはナイセリア表面タンパク質A(NspA)より選択される。
【0025】
よりさらなる実施態様では、上記Cu,Zn−SODはダイマータイプである。
【0026】
本発明はさらに、髄膜炎菌疾患に対するワクチン接種のための医薬品の製造のための、上記組成物の使用を提供する。
【0027】
1つの実施態様では、上記髄膜炎菌疾患はNeisseria meningitidis感染である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】TbpA+Bおよび外膜小胞でのマウスの免疫処置を示すグラフである。
【図2】TbpA+Bでのマウスの免疫処置を示すグラフである。
【図3】TbpA+B、単離したTbpA、または単離したTbpBで免疫処置した後の、IP感染に対するマウスの防御を示すグラフである。
【図4】ナイセリアTbpA+B、TbpBまたはTbpA(nTbp)のいずれかで免疫処置した後の、髄膜炎菌感染に対するマウスの防御を示すグラフである。
【図5】ナイセリアTbpA+B、TbpBまたはTbpA(nTbp)、あるいは組換えTbp(rTbp)のいずれかで免疫処置した後の、髄膜炎菌感染に対するマウスの防御を示すグラフである。
【図6】組換えTbpA+B、TbpBまたはTbpAで免疫処置した後の、N.meningitidis K454株のそれぞれ106生物/マウスのチャレンジに対するマウスの防御を示すグラフである。
【図7】組換えTbpA+B、TbpBまたはTbpAで免疫処置した後の、N.meningitidis K454株のそれぞれ107生物/マウスのチャレンジに対するマウスの防御を示すグラフである。
【図8】異種血清群でのチャレンジに対する防御を示すグラフである。
【図9】B16B6でのチャレンジに対する防御を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
したがって、本発明の第1の局面は、両方のトランスフェリン結合タンパク質A(TbpA)およびB(TbpB)を、適切には約2:1(TbpA:TbpB)のモル比で含む組成物を提供する。本発明の好ましい実施態様では、TbpA対TbpBのモル比は2:1である。
【0030】
この組成物は、髄膜炎菌疾患の治療のための薬学的組成物を製造するために、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わされ得る。このようなキャリアとしては、例えば、アジュバントミョウバンが挙げられるが、経口、静脈内、皮下、腹腔内、または任意の他の投与経路に適した任意のキャリアが適切である。
【0031】
本発明は、したがって、両方のTbpA+Bタンパク質を、好ましくは1.8分子と2.2分子との間のTbpA対1分子のTbpBのモル比で、より好ましくは2分子のTbpA対1分子のTbpBのモル比で含むワクチンを提供する。成分のこの特定の組み合わせは、驚くべきことに、TbpB単独でのワクチン接種と比較して、髄膜炎菌感染に対するより高い防御免疫を提供し得る。以下により詳細に記載する本発明の特定の実施態様では、A:Bの1:1の組み合わせは、B単独よりもチャレンジに対してより防御性である。これは、TbpAがこれまで非防御性であると考えられていたので、驚くべきことである。本発明の結果はこの確立された見解とは異なるが、これはワクチンとして投与した場合、TbpAもまた髄膜炎菌感染に対する防御免疫を提供し得ることを示すいくつかの実験(以下でより詳細に記載)によって示される。しかし、本発明の結果が最も顕著に証明するのは、TbpAまたはBを単独で含むワクチンと比較した場合、TbpAおよびBの両方を含むワクチンの一貫した性能である。これは、組成物と、TbpA+Bでのワクチン接種に対する応答で誘発される感染に対する一貫した高レベルの防御との間には、変動性がないことであり、これによって、本発明の組成物が、従来のワクチンよりも著しく有利であることが証明される。
【0032】
トランスフェリン結合タンパク質は、N.meningitidisのような多くのグラム陰性細菌の外膜上に位置することが知られている。本発明の組成物と従来のキャリアまたはアジュバントとの処方物は、これらの細菌による感染の治療のための組成物を提供する。
【0033】
本発明の組成物の投与後に、抗体が、TbpAおよびTbpB由来の並列の配列からなるエピトープに対して惹起され得ることは有利である。したがって、このような組成物を使用して得られ得る免疫応答は、Tbp複合体の1つの成分のみを含み、そして潜在的なTbpエピトープの全範囲が利用可能ではない従来技術のワクチン組成物からの免疫応答と比較して、改善され得る。TbpA+B複合体の1つのTbpサブユニット成分が、第1のN.meningitidis株に由来し、そしてもう1つの成分が、第1とは異なる第2の株に由来することは、本発明においてさらなる選択肢である。例えば、TbpAダイマーは、第1の株に由来し、そしてTbpBは第2の株に由来する。TbpAおよびTbpBタンパク質は、独立して、K454株、H44/76株、およびB16B6株から選択され得る。本発明のすべての局面において、Tbpは、細菌ソースから直接単離され得るか、または当業者に通常知られている組換え方法によって産生され得る。他の株からのタンパク質の組み合わせも予測され、そして種々の株の細菌由来の成分を組み合わせることは、髄膜炎菌感染に対するより広いスペクトルの防御を個体に提供するための可能性を提供する。本発明の組成物またはワクチンが、種々の株由来のAタンパク質の混合物または種々の株由来のBタンパク質の混合物を含むことは、さらなる選択肢であり、本発明によって与えられる防御の潜在的なスペクトルを広げる。よりさらなる選択肢は、Tbpが、N.gonorrhoeae、N.lactamica、およびMoraxella catarrhalisを含む他の細菌から得られるまたはこれらに由来することである。
【0034】
本発明において、用語「トランスフェリン結合タンパク質」または「Tbp」とは、単独でトランスフェリンに結合するか、またはトランスフェリンと結合するタンパク質の複合体の一部であり得るいずれかのタンパク質をいう。この用語はまた、このようなタンパク質のフラグメント、改変体、または誘導体に対して惹起された抗体が、このタンパク質と結合する場合、このようなタンパク質のフラグメント、改変体、および誘導体を含む。したがって、TbpAおよびTbpBは、解離した状態または会合した複合体の状態のいずれかのTbpであると考えられる。さらに、TbpAまたはBのいずれかの変異体、融合タンパク質、またはフラグメント、あるいは共通の抗原的同一性を有するTbpA+B複合体の他の誘導体も、本発明において用語Tbpによって表されると考えられる。
【0035】
本発明の第2の局面は、2つのTbpAおよび1つのTbpBの複合体を含む組成物を提供する。したがって、タンパク質は、天然のレセプターで見られる比率で一緒に保持される。個々のタンパク質は、例えば、水素結合または共有結合によって結合され得る。後者の場合、各TbpAは、直接的または間接的のいずれかでTbpAに共有結合される。好ましい実施態様では、TbpAおよびTbpBの複合体は、天然の構造を有すると考えられる。
【0036】
天然のTbpA+B複合体は、N.meningitidisから単離され精製され得る。あるいは、本発明はまた、組換えTbpタンパク質の合成、次いでインビトロでのTbpA+B複合体のアセンブリを提供する。TbpA+B複合体は、混合によって形成され得、または当該技術分野で公知の物理的(例えば、UV照射)または化学的方法によって架橋され得、一緒に残りそして互いに解離し得ないTbpの組み合わせを生じる。さらなる例では、2つのTbpA配列を好ましくはTbpAダイマーの形態で含む一本鎖組換えタンパク質は、次いで、TbpBタンパク質と共有結合され、インビトロで完全なTbpA+B複合体を形成する。使用における本発明のもう1つの例は、TbpAおよびBが、TbpAとTbpBサブユニットとの間のジスルフィド結合の形成を容易にするシステイン残基を導入するように変異され、共有結合複合体を得る。
【0037】
組換えタンパク質の調製において、TbpAおよびTbpB遺伝子を短縮して、タンパク質の抗原性に寄与することが知られているドメインのみが、Tbp複合体に組み込まれるようにもし得る。
【0038】
本発明のいくつかの組成物において、TbpA+B複合体は、トランスフェリンレセプターとして作用し得、そしてヒトトランスフェリンに結合する。本発明の他の組成物では、TbpA+B複合体は、トランスフェリンを結合しない意味で非機能的であるが、それにもかかわらず、適切な免疫応答を誘起する抗原性成分を提供する。
【0039】
本発明の第3の局面は、TbpおよびN.meningitidis外膜小胞を含む組成物を提供する。この組成物の有利点は、ワクチン接種を受けた人または患者に投与した場合、N.meningitidis抗原、および特に生きた感染生物の膜上に実質的に存在するような形態である抗原、の異なる組み合わせを示すことである。この組み合わせは、感染に対するより有効な防御または現存するワクチンよりも広いスペクトルの防御の可能性を提供する。デスオキシコール酸処理によるような外膜小胞単離の公知の方法は、本発明の組成物の調製に適切である。種々の好ましい実施態様では、Tbpは、TbpA、TbpB、または天然のままの複合体もしくは解離した形態のいずれかのTbpA+Bである。
【0040】
外膜小胞はさらに、小胞膜にTbpを富化するようにインビトロにてTbpで前処理され得る。「富化」および類似の用語は、小胞中のTbpの濃度または密度を上昇させるようにTbpが添加されている外膜小胞をいう。好ましくは、富化により、膜に位置するトランスフェリンレセプターの数が増加した外膜小胞を生じる。これは、TbpAおよびTbpBを小胞へ添加することにより、これらの濃度が上昇し会合してレセプターまたはレセプター様構造をとるためである。本発明のこのような実施態様の特定の有利点は、ワクチンの重要な抗原性成分とみなされるTbpが、高度に抗原性の環境に提示されることであるが、この環境は、トランスフェリンレセプターが生きた感染細菌上に提示される環境に非常によく似ている。
【0041】
既述のように、組成物のTbp成分は、野生型Tbpである必要はない。これらは、組換え法で作成され得、そしてそのようにして配列改変が導入され得る。本発明の1つの代表的な例では、組換えTbpBは、膜結合ドメインを含むように改変される。好ましい膜スパニングドメインは、TbpBタンパク質のNまたはC末端のいずれかに付加された疎水性αヘリカル領域である。しかし、膜アンカリング領域は、αへリックスだけが必要であるのではなく、脂肪酸または脂質鎖の付加も膜アンカリングを容易にする。実際に、野生型TbpBは、このような脂質鎖アンカーを介して細菌の外膜にアンカリングされると考えられている。使用における本発明のさらなる例では、外膜小胞(OMV)を、インビトロにて膜結合組換えTbpBで前処理し、小胞膜にTbpBを富化する。Tbpが富化されたOMVは、N.meningitidisでの高レベルのTbp発現を誘発し、次いで既述の方法の1つによってOMVを単離することによって、さらに生成される。この後者の方法は、代表的には、選択したTbpをコードする遺伝子が挿入されている適切な発現ベクターで、N.meningitidisを形質転換することによって達成される。ナイセリア種で使用される適切な発現ベクターとしては、プラスミドpMGC10(Nassifら(1991))が挙げられる。
【0042】
本発明の組成物は、外膜小胞およびN.meningitidisのある範囲の異なる株から単離されたTbpA+B複合体を含むことが好ましい。本発明の他の好ましい組成物は、N.meningitidisの他のタンパク質、例えば、表面抗原、ペリプラズムタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、および糖タンパク質を含む。
【0043】
本発明の第3の局面の組成物は、外膜小胞の代わりにまたはそれに加えて、1つ以上のリポソームを含み得、各リポソームは、TbpAおよび/またはTbpBを含み、好ましくは、レセプターまたはレセプター様複合体に会合したTbpAおよびTbpBを含む。したがって、トランスフェリンレセプター抗原を提示するさらなる手段が提供される。
【0044】
本発明の第3の局面のさらなる実施態様では、組成物は、外膜小胞と同様にまたはその代わりに22kD抗原(ナイセリア表面タンパク質A(NspA))を含む。NspAおよびその調製物は、Martinら, 1997に記載されている。
【0045】
本発明の第4の局面は、上記のような本発明の組成物を含むワクチンを提供する。本発明のワクチンはまた、Tbpに対する抗体を含み得、したがって細菌感染に対するあるレベルの受動免疫を提供する。
【0046】
本発明の第5の局面は、TbpA、TbpB、およびN.meningitidis外膜小胞と、薬学的に受容可能なキャリアとを組み合わせる工程を包含する、組成物の製造方法を提供する。TbpA対TbpBのモル比が約2:1であることが好ましい。外膜小胞は、天然のTbpA+Bでインビトロにて前処理され得、それによって小胞膜にTbp複合体が富化され得る。しかし、外膜小胞はまた、他のタンパク質成分で前処理され得、それによってこれらの抗原性成分も富化され得る。外膜小胞はまた、いくつかの異なる株のN.meningitidisに由来する抗原性タンパク質およびプロテオグリカンで前処理され得る。
【0047】
本発明のさらなる局面は、TbpおよびCu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)を含む組成物を提供する。
【0048】
Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)は、多くの原核生物および真核生物にみられる金属酵素である。この酵素は、スーパーオキシドラジカルアニオンO2−の過酸化水素および分子状酸素への還元を触媒し、そのため細胞傷害性フリーラジカルの生物からの除去に重要な役割を果たす。細菌において、Cu,Zn−SODは、N.meningitidisを含む多くのグラム陰性種のペリプラズムにおいて同定されている。酵素は、ダイマーまたはモノマーとして存在し得、したがって本発明の好ましい実施態様では、TbpおよびダイマータイプのCu,Zn−SODを含む組成物が提供される。
【0049】
用語「Tbp」の使用に関して既述のように、本発明のCu,Zn−SODはまた、そのフラグメント、改変体、または誘導体に対して惹起された抗体が野生型Cu,Zn−SODと結合する場合、このようなタンパク質のフラグメント、改変体、および誘導体を含む。
【0050】
本発明の使用例では、Cu,Zn−SODと、TbpA、TbpB、またはTbpA+B複合体のいずれかとを含む組成物が提供される。後者の例では、TbpA対TbpBのモル比が1.8と2.2との間であることが好ましく、最も適切な組成物は、2:1(TbpA:TbpB)の比を有する。本発明のさらなる組成物では、Tbpは、Cu,Zn−SODが由来する株とは異なる株のN.meningitidisに由来し、そのため髄膜炎菌感染に対するより広いスペクトルの免疫応答の形成を容易にする。
【0051】
本発明はまた、TbpおよびCu,Zn−SODが、異なる細菌種、代表的には異なるグラム陰性種に由来する組成物を提供する。このような組成物は、それによって、ワクチンとして投与された場合に誘起される免疫応答のスペクトルをさらに広くする。代表的な組成物は、ナイセリアTbpA+B複合体、ならびにモノマーCu,Zn−SOD(例えば、E.coliに由来)および任意にさらなるダイマーCu,Zn−SOD(例えば、Haemophilus parainfluenzaeに由来)を含む。
【0052】
本発明の他の局面は、TbpAおよびTbpBが共有結合した複合体を、N.meningitidis外膜小胞およびCu,Zn−SODのいずれかまたは両方と、薬学的に受容可能なキャリアとを合わせる工程を包含する、グラム陰性細菌感染に対する防御免疫を提供する組成物の製造方法を提供する。
【0053】
本発明のさらなる局面は、Tbpおよび外膜小胞を含む組成物を提供し、ここで外膜小胞は、異なる株のN.meningitidisに由来する。同様に、本発明はまた、TbpおよびCu,Zn−SODを含む組成物を提供し、ここでTbpは、異なる株のN.meningitidisに由来する。
【0054】
さらなる局面は、ヒトワクチン接種のための医薬品の製造におけるTbpAおよびBの使用を提供する。このような医薬品は、髄膜炎菌感染に対するワクチン接種に適切であるが、本発明のいくつかの組成物は、より広範囲の細菌性病原体からの感染に対して広いスペクトルの防御を提供することが好ましい。
【0055】
本発明の実施態様は、以下に記載の実施例によってより詳細に説明される。実施例に示される結果は、添付の図面によって例示される。
【実施例】
【0056】
マウス防御データ
マウス(CAMR−NIH)を、Tbpおよび/または外膜小胞で免疫し、そして同種または異種のいずれかの髄膜炎菌株でチャレンジした。K454株由来のTbpおよび外膜小胞で免疫したマウスの、K454株によるチャレンジ後の群当たりの生存動物を、図1に示す。Tbpと比較して、外膜小胞ワクチンは、防御が低下していたが、これは、異なる群B株(H44/76)から産生されるためであり得る。K454株から単離されたTbpA+Bで免疫した動物も、他の血清群B生物でのチャレンジに対して防御され(図1)、そして同種株および類似の分子量を有するTbpBを発現する株で、より大きな防御が見られた。非常に異なる分子量を有するTbpBを有する髄膜炎菌(B16B6株)でのチャレンジに対しては、ほとんどまたは全く防御が観察されなかった。異種チャレンジ株では、Tbp+外膜小胞の組み合わせでワクチン接種した群において、わずかに多数の生存動物がいる。しかし、含まれる数は小さく、そして明確な結果には達し得ない。K454株由来のTbpA+Bで免疫したマウスもまた、血清群Cでの感染に対して防御されるが、血清群A株では防御されないことが観察されたことは、興味深い(図2)。
【0057】
一緒に精製したTbpA+Bならびに単離されたTbpAおよびTbpBで免疫したマウスでの、K454株でのチャレンジに対する防御を、図3に示す。TbpBが、防御の原因である重要な抗原であり、TbpA単独ではほとんど防御は与えられなかった。
【0058】
組換えTbpAおよびTbpB
N.meningitidis K454株由来のTbpAおよびTbpBをクローニングし、そしてE.coliで過剰発現させた。これらのタンパク質を、アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製し、そしてこれを用いて髄膜炎菌疾患のマウスモデルにおいてそれらの防御力価を決定した。組換えTbpは、鉄ストレスを与えたN.meningitidisから単離されたTbpによって提供される防御と等価の防御を示した(図4および5)。これらの組換えTbpもまた、2つのさらに大きいIPチャレンジ実験に利用した(図6および7)。
【0059】
N.meningitidisでのマウスI.P.感染に対する強力なおよび一貫した防御力価は、おそらくそれらのワクチン可能性についての最も強力な証拠である。
【0060】
興味深いことに、図5、6、および7に示す結果は、類似の設計の実験から生じるが、TbpAまたはTbpBのいずれか単独のみに依存するワクチン組成物と関連した驚くべき変動性を示す。図5では、組換えTbpA組成物は、TbpBまたはTbpA+Bと比較して低いレベルの防御を示した。しかし、図6および7では、TbpA+B複合体およびTbpB単独組成物に匹敵する高レベルの防御を示した組換えTbpAワクチン組成物は、感染に対してほとんど防御を示さなかった。この後者の結果は、従来技術の教示とは全く反対である。
【0061】
回復期血清におけるTbpAおよびTbpBに対するヒト免疫応答
発明者らは、髄膜炎菌疾患後のTbpAおよびTbpBに対するヒトの抗体応答を見る多くの研究を行った。一般的な結論は、TbpAおよびTbpBの両方とも、髄膜炎菌疾患中に発現されそして免疫応答はそれらに対して惹起されることである。この応答は、機能的(オプソニン性)であり、そしてTbpでの動物の免疫処置によって誘導される応答よりも、異なる髄膜炎菌株間でより交差反応性である。TbpAの免疫応答は、TbpBに対するよりも強力かつ交差反応性のようであり、TbpAのワクチン可能性の重要性を確認する。
【0062】
トランスフェリンレセプターからのTbpAおよびTbpB
発明者らの構造研究は、髄膜炎菌表面上のトランスフェリンレセプターが、一緒に作用する2つのTbpA分子および1つのTbpB分子からなることを示す。
【0063】
A+B Tbpを含むワクチンの効果
発明者らは、N.meningitidis L91 705株およびB16B6株からのチャレンジに対するワクチン処方物を含む組換えTbpB対組換えTbpA+Bの有効性のさらなるテストを行い、その結果を、それぞれ図8および9に示す。両方の場合とも、B単独と比較してA+Bによっていくらか改善された防御が与えられた。
【0064】
参考文献
Ala'Aldeen J. (1996) Med. Microbiol. vol 44, pp237-243。
Boultonら (1998) Biochem. J. vol. 334, pp269-273。
Feirrerosら (1998) Rev. in Med. Microbiol. vol 9, No. 1, pp29-37。
Gorringeら (1996) 10th Pathogenic Neisseria Conference, poster 46 abstract。
Martinら (1997) J Exp Med, vol. 185 no. 7 pp1173-1181。
Nassifら (1991) J Bacteriol, vol. 173 no. 7 pp2147-54。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分ワクチン、およびグラム陰性病原体による広いスペクトルの感染に対して防御免疫を与える多成分ワクチンを調製するための方法に関する。特に、本発明は、髄膜炎菌疾患に対する受動および能動の両方の防御免疫を提供する多成分ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
髄膜炎菌性髄膜炎は、世界的に主要な問題であり、そして多くの国で感染の発生が増加している。Neisseria meningitidisは、この疾患の原因因子であり、そしてまた、髄膜炎菌性敗血症の原因であり、これは急速な発症および高い死亡率に関連し、症例の約22%が致命的である。
【0003】
現在、髄膜炎菌疾患に対する防御免疫を提供するワクチンは、限られた防御を提供するにすぎないが、これはN.meningitidisに多くの異なる株があるためである。血清群抗原である莢膜多糖類に基づくワクチンは、感染に対して短命の防御を与えるのみであり、そして北アメリカおよびヨーロッパで通常見られる多くの株に対して防御しない。これらのワクチンのさらなる欠点は、通常最も感染しやすい脆弱な群の1つである2歳以下の子供に低レベルの防御しか与えないことである。
【0004】
髄膜炎菌トランスフェリンレセプターは、2つのタイプの構成タンパク質鎖である、トランスフェリン結合タンパク質A(TbpA)およびTbpBからなる。レセプター複合体は、単一のTbpBと会合するTbpAのダイマーから形成されると考えられる(Boultonら(1998))。TbpAに存在するエピトープは、タンパク質の内部にマスクされていることが知られている(Ala'Aldeen (1996))。単独の株に由来するTbpBに基づく髄膜炎菌性髄膜炎に対するワクチンは、いくつかの交差反応性を示し、そしてTbpB単独で免疫したウサギにおいて交差反応性免疫応答の証拠がある(Feirrerosら(1998))。
【0005】
Gomezら(Vaccine Vol.16 (1998) No.17 pp.1633-1639)は、TbpA+TbpB複合体を含むワクチンにおいて多くの異なるアジュバント組成物の効果についての研究を記載している。髄膜炎菌チャレンジに対する免疫率は、TbpA+TbpBおよびRASアジュバントを含む組成物で最高であった。
【0006】
Ala'Aldeen(J. Med. Microbiol. Vol. 44 (1996) pp.237-243)は、N.meningitidisのTbpおよびその候補ワクチン抗原としてのその使用の可能性の総説を提供している。Ala'Aldeenは、交差反応性および広いスペクトルの防御が、主としてTbpBサブユニットに関連することを示唆している(240ページ、第3段落)。
【0007】
Gorringeら(Vaccine Vol.13 (1995) No.13 pp.1207-1212)は、Tbpに対するヒト抗体応答を記載し、そして抗Tbp抗体についてヒト血清をテストすることによってワクチン抗原としての価値を評価している。Gorringeらは、このようなワクチンのどの成分も記載していないが、精製したTbpAおよびTbpBサブユニットとTbpA+B複合体との間の抗体交差反応性のレベルを研究している。
【0008】
Boultonら(Biochem. J. (1998) 334 pp.269-273)は、N.meningitidis由来のTbpBの単離および特徴づけを記載し、そしてTbpAダイマー+TbpBモノマーとしてのインビボでのTbp複合体の形成も仮定する。
【0009】
それにもかかわらず、より広いスペクトルのN.meningitidis株からの感染に対してより広い範囲の防御免疫を与えるワクチンを提供することは、有益である。幼児および成人に対して防御免疫を与え、そしてその防御が長期であるワクチンを提供することは、さらに有益である。無症状感染に対して防御するワクチンを提供することも有益である。すなわち、無症状感染は、髄膜炎菌感染の徴候がすぐに出現せず、感染した個体が病原体のキャリアの働きをし得るからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、Tbpを含む組成物、およびそれに基づくワクチンを提供することであり、それによって当該技術分野の不利点に対処するまたは少なくとも改善する。特に、本発明の目的は、髄膜炎菌感染に対する防御免疫を一貫しておよび確実に誘導するワクチン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(i)N.meningitidis外膜小胞;および(ii)少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質を含む組成物を提供し、上記外膜小胞は、第1のN.meningitidis株に由来し、そして上記抗原性タンパク質が、上記第1の株とは異なる第2のN.meningitidis株に由来する。
【0012】
1つの実施態様では、上記組成物は、N.meningitidisの異なる株由来の複数の抗原性タンパク質を含む。
【0013】
1つの実施態様では、上記外膜小胞は、N.meningitidisの異なる株由来の外膜小胞の混合物を含む。
【0014】
1つの実施態様では、上記組成物において、上記N.meningitidis抗原性タンパク質は、表面抗原、ペリプラズムタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、または糖タンパク質より選択される。
【0015】
さらなる実施態様では、上記少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質は、N.meningitidis表面抗原である。
【0016】
さらなる実施態様では、上記抗原性タンパク質は、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)またはナイセリア表面タンパク質A(NspA)より選択される。
【0017】
よりさらなる実施態様では、上記Cu,Zn−SODはダイマータイプである。
【0018】
1つの実施態様では、上記組成物は、
(a)上記少なくとも1つの単離されたN.meningitidis抗原性タンパク質を得る工程;
(b)上記N.meningitidis外膜小胞を得る工程;および
(c)上記単離されたN.meningitidis抗原性タンパク質と上記単離されたN.meningitidis外膜小胞とを組み合わせる工程
を含む方法により得られる。
【0019】
本発明はまた、上記組成物を含むワクチンを提供する。
【0020】
本発明はさらに、上記組成物の製造方法を提供し、上記方法は、
(a)第1のN.meningitidis株の外膜から少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質を抽出して該抗原性タンパク質の水溶液を調製する工程;
(b)上記第1の株とは異なる第2のN.meningitidis株の培養物から外膜小胞を抽出する工程;
(c)薬学的に受容可能なキャリアを得る工程;ならびに
(d)工程(a)で調製した溶液、工程(b)で調製した外膜小胞、および工程(c)で得たキャリアを混合する工程
を含む。
【0021】
1つの実施態様では、上記方法は、上記工程(a)の代わりに、
(a)第1のN.meningitidis株の少なくとも1つの抗原性タンパク質をコードするDNAを細菌において組換え発現し、上記細菌の外膜から上記抗原性タンパク質を抽出し、上記抗原性タンパク質の水溶液を調製する工程
を含む。
【0022】
1つの実施態様では、上記方法において、上記N.meningitidis抗原性タンパク質は、表面抗原、ペリプラズムタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、または糖タンパク質より選択される。
【0023】
さらなる実施態様では、上記N.meningitidis抗原性タンパク質は、N.meningitidis表面抗原である。
【0024】
さらなる実施態様では、上記抗原性タンパク質は、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)またはナイセリア表面タンパク質A(NspA)より選択される。
【0025】
よりさらなる実施態様では、上記Cu,Zn−SODはダイマータイプである。
【0026】
本発明はさらに、髄膜炎菌疾患に対するワクチン接種のための医薬品の製造のための、上記組成物の使用を提供する。
【0027】
1つの実施態様では、上記髄膜炎菌疾患はNeisseria meningitidis感染である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】TbpA+Bおよび外膜小胞でのマウスの免疫処置を示すグラフである。
【図2】TbpA+Bでのマウスの免疫処置を示すグラフである。
【図3】TbpA+B、単離したTbpA、または単離したTbpBで免疫処置した後の、IP感染に対するマウスの防御を示すグラフである。
【図4】ナイセリアTbpA+B、TbpBまたはTbpA(nTbp)のいずれかで免疫処置した後の、髄膜炎菌感染に対するマウスの防御を示すグラフである。
【図5】ナイセリアTbpA+B、TbpBまたはTbpA(nTbp)、あるいは組換えTbp(rTbp)のいずれかで免疫処置した後の、髄膜炎菌感染に対するマウスの防御を示すグラフである。
【図6】組換えTbpA+B、TbpBまたはTbpAで免疫処置した後の、N.meningitidis K454株のそれぞれ106生物/マウスのチャレンジに対するマウスの防御を示すグラフである。
【図7】組換えTbpA+B、TbpBまたはTbpAで免疫処置した後の、N.meningitidis K454株のそれぞれ107生物/マウスのチャレンジに対するマウスの防御を示すグラフである。
【図8】異種血清群でのチャレンジに対する防御を示すグラフである。
【図9】B16B6でのチャレンジに対する防御を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
したがって、本発明の第1の局面は、両方のトランスフェリン結合タンパク質A(TbpA)およびB(TbpB)を、適切には約2:1(TbpA:TbpB)のモル比で含む組成物を提供する。本発明の好ましい実施態様では、TbpA対TbpBのモル比は2:1である。
【0030】
この組成物は、髄膜炎菌疾患の治療のための薬学的組成物を製造するために、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わされ得る。このようなキャリアとしては、例えば、アジュバントミョウバンが挙げられるが、経口、静脈内、皮下、腹腔内、または任意の他の投与経路に適した任意のキャリアが適切である。
【0031】
本発明は、したがって、両方のTbpA+Bタンパク質を、好ましくは1.8分子と2.2分子との間のTbpA対1分子のTbpBのモル比で、より好ましくは2分子のTbpA対1分子のTbpBのモル比で含むワクチンを提供する。成分のこの特定の組み合わせは、驚くべきことに、TbpB単独でのワクチン接種と比較して、髄膜炎菌感染に対するより高い防御免疫を提供し得る。以下により詳細に記載する本発明の特定の実施態様では、A:Bの1:1の組み合わせは、B単独よりもチャレンジに対してより防御性である。これは、TbpAがこれまで非防御性であると考えられていたので、驚くべきことである。本発明の結果はこの確立された見解とは異なるが、これはワクチンとして投与した場合、TbpAもまた髄膜炎菌感染に対する防御免疫を提供し得ることを示すいくつかの実験(以下でより詳細に記載)によって示される。しかし、本発明の結果が最も顕著に証明するのは、TbpAまたはBを単独で含むワクチンと比較した場合、TbpAおよびBの両方を含むワクチンの一貫した性能である。これは、組成物と、TbpA+Bでのワクチン接種に対する応答で誘発される感染に対する一貫した高レベルの防御との間には、変動性がないことであり、これによって、本発明の組成物が、従来のワクチンよりも著しく有利であることが証明される。
【0032】
トランスフェリン結合タンパク質は、N.meningitidisのような多くのグラム陰性細菌の外膜上に位置することが知られている。本発明の組成物と従来のキャリアまたはアジュバントとの処方物は、これらの細菌による感染の治療のための組成物を提供する。
【0033】
本発明の組成物の投与後に、抗体が、TbpAおよびTbpB由来の並列の配列からなるエピトープに対して惹起され得ることは有利である。したがって、このような組成物を使用して得られ得る免疫応答は、Tbp複合体の1つの成分のみを含み、そして潜在的なTbpエピトープの全範囲が利用可能ではない従来技術のワクチン組成物からの免疫応答と比較して、改善され得る。TbpA+B複合体の1つのTbpサブユニット成分が、第1のN.meningitidis株に由来し、そしてもう1つの成分が、第1とは異なる第2の株に由来することは、本発明においてさらなる選択肢である。例えば、TbpAダイマーは、第1の株に由来し、そしてTbpBは第2の株に由来する。TbpAおよびTbpBタンパク質は、独立して、K454株、H44/76株、およびB16B6株から選択され得る。本発明のすべての局面において、Tbpは、細菌ソースから直接単離され得るか、または当業者に通常知られている組換え方法によって産生され得る。他の株からのタンパク質の組み合わせも予測され、そして種々の株の細菌由来の成分を組み合わせることは、髄膜炎菌感染に対するより広いスペクトルの防御を個体に提供するための可能性を提供する。本発明の組成物またはワクチンが、種々の株由来のAタンパク質の混合物または種々の株由来のBタンパク質の混合物を含むことは、さらなる選択肢であり、本発明によって与えられる防御の潜在的なスペクトルを広げる。よりさらなる選択肢は、Tbpが、N.gonorrhoeae、N.lactamica、およびMoraxella catarrhalisを含む他の細菌から得られるまたはこれらに由来することである。
【0034】
本発明において、用語「トランスフェリン結合タンパク質」または「Tbp」とは、単独でトランスフェリンに結合するか、またはトランスフェリンと結合するタンパク質の複合体の一部であり得るいずれかのタンパク質をいう。この用語はまた、このようなタンパク質のフラグメント、改変体、または誘導体に対して惹起された抗体が、このタンパク質と結合する場合、このようなタンパク質のフラグメント、改変体、および誘導体を含む。したがって、TbpAおよびTbpBは、解離した状態または会合した複合体の状態のいずれかのTbpであると考えられる。さらに、TbpAまたはBのいずれかの変異体、融合タンパク質、またはフラグメント、あるいは共通の抗原的同一性を有するTbpA+B複合体の他の誘導体も、本発明において用語Tbpによって表されると考えられる。
【0035】
本発明の第2の局面は、2つのTbpAおよび1つのTbpBの複合体を含む組成物を提供する。したがって、タンパク質は、天然のレセプターで見られる比率で一緒に保持される。個々のタンパク質は、例えば、水素結合または共有結合によって結合され得る。後者の場合、各TbpAは、直接的または間接的のいずれかでTbpAに共有結合される。好ましい実施態様では、TbpAおよびTbpBの複合体は、天然の構造を有すると考えられる。
【0036】
天然のTbpA+B複合体は、N.meningitidisから単離され精製され得る。あるいは、本発明はまた、組換えTbpタンパク質の合成、次いでインビトロでのTbpA+B複合体のアセンブリを提供する。TbpA+B複合体は、混合によって形成され得、または当該技術分野で公知の物理的(例えば、UV照射)または化学的方法によって架橋され得、一緒に残りそして互いに解離し得ないTbpの組み合わせを生じる。さらなる例では、2つのTbpA配列を好ましくはTbpAダイマーの形態で含む一本鎖組換えタンパク質は、次いで、TbpBタンパク質と共有結合され、インビトロで完全なTbpA+B複合体を形成する。使用における本発明のもう1つの例は、TbpAおよびBが、TbpAとTbpBサブユニットとの間のジスルフィド結合の形成を容易にするシステイン残基を導入するように変異され、共有結合複合体を得る。
【0037】
組換えタンパク質の調製において、TbpAおよびTbpB遺伝子を短縮して、タンパク質の抗原性に寄与することが知られているドメインのみが、Tbp複合体に組み込まれるようにもし得る。
【0038】
本発明のいくつかの組成物において、TbpA+B複合体は、トランスフェリンレセプターとして作用し得、そしてヒトトランスフェリンに結合する。本発明の他の組成物では、TbpA+B複合体は、トランスフェリンを結合しない意味で非機能的であるが、それにもかかわらず、適切な免疫応答を誘起する抗原性成分を提供する。
【0039】
本発明の第3の局面は、TbpおよびN.meningitidis外膜小胞を含む組成物を提供する。この組成物の有利点は、ワクチン接種を受けた人または患者に投与した場合、N.meningitidis抗原、および特に生きた感染生物の膜上に実質的に存在するような形態である抗原、の異なる組み合わせを示すことである。この組み合わせは、感染に対するより有効な防御または現存するワクチンよりも広いスペクトルの防御の可能性を提供する。デスオキシコール酸処理によるような外膜小胞単離の公知の方法は、本発明の組成物の調製に適切である。種々の好ましい実施態様では、Tbpは、TbpA、TbpB、または天然のままの複合体もしくは解離した形態のいずれかのTbpA+Bである。
【0040】
外膜小胞はさらに、小胞膜にTbpを富化するようにインビトロにてTbpで前処理され得る。「富化」および類似の用語は、小胞中のTbpの濃度または密度を上昇させるようにTbpが添加されている外膜小胞をいう。好ましくは、富化により、膜に位置するトランスフェリンレセプターの数が増加した外膜小胞を生じる。これは、TbpAおよびTbpBを小胞へ添加することにより、これらの濃度が上昇し会合してレセプターまたはレセプター様構造をとるためである。本発明のこのような実施態様の特定の有利点は、ワクチンの重要な抗原性成分とみなされるTbpが、高度に抗原性の環境に提示されることであるが、この環境は、トランスフェリンレセプターが生きた感染細菌上に提示される環境に非常によく似ている。
【0041】
既述のように、組成物のTbp成分は、野生型Tbpである必要はない。これらは、組換え法で作成され得、そしてそのようにして配列改変が導入され得る。本発明の1つの代表的な例では、組換えTbpBは、膜結合ドメインを含むように改変される。好ましい膜スパニングドメインは、TbpBタンパク質のNまたはC末端のいずれかに付加された疎水性αヘリカル領域である。しかし、膜アンカリング領域は、αへリックスだけが必要であるのではなく、脂肪酸または脂質鎖の付加も膜アンカリングを容易にする。実際に、野生型TbpBは、このような脂質鎖アンカーを介して細菌の外膜にアンカリングされると考えられている。使用における本発明のさらなる例では、外膜小胞(OMV)を、インビトロにて膜結合組換えTbpBで前処理し、小胞膜にTbpBを富化する。Tbpが富化されたOMVは、N.meningitidisでの高レベルのTbp発現を誘発し、次いで既述の方法の1つによってOMVを単離することによって、さらに生成される。この後者の方法は、代表的には、選択したTbpをコードする遺伝子が挿入されている適切な発現ベクターで、N.meningitidisを形質転換することによって達成される。ナイセリア種で使用される適切な発現ベクターとしては、プラスミドpMGC10(Nassifら(1991))が挙げられる。
【0042】
本発明の組成物は、外膜小胞およびN.meningitidisのある範囲の異なる株から単離されたTbpA+B複合体を含むことが好ましい。本発明の他の好ましい組成物は、N.meningitidisの他のタンパク質、例えば、表面抗原、ペリプラズムタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、および糖タンパク質を含む。
【0043】
本発明の第3の局面の組成物は、外膜小胞の代わりにまたはそれに加えて、1つ以上のリポソームを含み得、各リポソームは、TbpAおよび/またはTbpBを含み、好ましくは、レセプターまたはレセプター様複合体に会合したTbpAおよびTbpBを含む。したがって、トランスフェリンレセプター抗原を提示するさらなる手段が提供される。
【0044】
本発明の第3の局面のさらなる実施態様では、組成物は、外膜小胞と同様にまたはその代わりに22kD抗原(ナイセリア表面タンパク質A(NspA))を含む。NspAおよびその調製物は、Martinら, 1997に記載されている。
【0045】
本発明の第4の局面は、上記のような本発明の組成物を含むワクチンを提供する。本発明のワクチンはまた、Tbpに対する抗体を含み得、したがって細菌感染に対するあるレベルの受動免疫を提供する。
【0046】
本発明の第5の局面は、TbpA、TbpB、およびN.meningitidis外膜小胞と、薬学的に受容可能なキャリアとを組み合わせる工程を包含する、組成物の製造方法を提供する。TbpA対TbpBのモル比が約2:1であることが好ましい。外膜小胞は、天然のTbpA+Bでインビトロにて前処理され得、それによって小胞膜にTbp複合体が富化され得る。しかし、外膜小胞はまた、他のタンパク質成分で前処理され得、それによってこれらの抗原性成分も富化され得る。外膜小胞はまた、いくつかの異なる株のN.meningitidisに由来する抗原性タンパク質およびプロテオグリカンで前処理され得る。
【0047】
本発明のさらなる局面は、TbpおよびCu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)を含む組成物を提供する。
【0048】
Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)は、多くの原核生物および真核生物にみられる金属酵素である。この酵素は、スーパーオキシドラジカルアニオンO2−の過酸化水素および分子状酸素への還元を触媒し、そのため細胞傷害性フリーラジカルの生物からの除去に重要な役割を果たす。細菌において、Cu,Zn−SODは、N.meningitidisを含む多くのグラム陰性種のペリプラズムにおいて同定されている。酵素は、ダイマーまたはモノマーとして存在し得、したがって本発明の好ましい実施態様では、TbpおよびダイマータイプのCu,Zn−SODを含む組成物が提供される。
【0049】
用語「Tbp」の使用に関して既述のように、本発明のCu,Zn−SODはまた、そのフラグメント、改変体、または誘導体に対して惹起された抗体が野生型Cu,Zn−SODと結合する場合、このようなタンパク質のフラグメント、改変体、および誘導体を含む。
【0050】
本発明の使用例では、Cu,Zn−SODと、TbpA、TbpB、またはTbpA+B複合体のいずれかとを含む組成物が提供される。後者の例では、TbpA対TbpBのモル比が1.8と2.2との間であることが好ましく、最も適切な組成物は、2:1(TbpA:TbpB)の比を有する。本発明のさらなる組成物では、Tbpは、Cu,Zn−SODが由来する株とは異なる株のN.meningitidisに由来し、そのため髄膜炎菌感染に対するより広いスペクトルの免疫応答の形成を容易にする。
【0051】
本発明はまた、TbpおよびCu,Zn−SODが、異なる細菌種、代表的には異なるグラム陰性種に由来する組成物を提供する。このような組成物は、それによって、ワクチンとして投与された場合に誘起される免疫応答のスペクトルをさらに広くする。代表的な組成物は、ナイセリアTbpA+B複合体、ならびにモノマーCu,Zn−SOD(例えば、E.coliに由来)および任意にさらなるダイマーCu,Zn−SOD(例えば、Haemophilus parainfluenzaeに由来)を含む。
【0052】
本発明の他の局面は、TbpAおよびTbpBが共有結合した複合体を、N.meningitidis外膜小胞およびCu,Zn−SODのいずれかまたは両方と、薬学的に受容可能なキャリアとを合わせる工程を包含する、グラム陰性細菌感染に対する防御免疫を提供する組成物の製造方法を提供する。
【0053】
本発明のさらなる局面は、Tbpおよび外膜小胞を含む組成物を提供し、ここで外膜小胞は、異なる株のN.meningitidisに由来する。同様に、本発明はまた、TbpおよびCu,Zn−SODを含む組成物を提供し、ここでTbpは、異なる株のN.meningitidisに由来する。
【0054】
さらなる局面は、ヒトワクチン接種のための医薬品の製造におけるTbpAおよびBの使用を提供する。このような医薬品は、髄膜炎菌感染に対するワクチン接種に適切であるが、本発明のいくつかの組成物は、より広範囲の細菌性病原体からの感染に対して広いスペクトルの防御を提供することが好ましい。
【0055】
本発明の実施態様は、以下に記載の実施例によってより詳細に説明される。実施例に示される結果は、添付の図面によって例示される。
【実施例】
【0056】
マウス防御データ
マウス(CAMR−NIH)を、Tbpおよび/または外膜小胞で免疫し、そして同種または異種のいずれかの髄膜炎菌株でチャレンジした。K454株由来のTbpおよび外膜小胞で免疫したマウスの、K454株によるチャレンジ後の群当たりの生存動物を、図1に示す。Tbpと比較して、外膜小胞ワクチンは、防御が低下していたが、これは、異なる群B株(H44/76)から産生されるためであり得る。K454株から単離されたTbpA+Bで免疫した動物も、他の血清群B生物でのチャレンジに対して防御され(図1)、そして同種株および類似の分子量を有するTbpBを発現する株で、より大きな防御が見られた。非常に異なる分子量を有するTbpBを有する髄膜炎菌(B16B6株)でのチャレンジに対しては、ほとんどまたは全く防御が観察されなかった。異種チャレンジ株では、Tbp+外膜小胞の組み合わせでワクチン接種した群において、わずかに多数の生存動物がいる。しかし、含まれる数は小さく、そして明確な結果には達し得ない。K454株由来のTbpA+Bで免疫したマウスもまた、血清群Cでの感染に対して防御されるが、血清群A株では防御されないことが観察されたことは、興味深い(図2)。
【0057】
一緒に精製したTbpA+Bならびに単離されたTbpAおよびTbpBで免疫したマウスでの、K454株でのチャレンジに対する防御を、図3に示す。TbpBが、防御の原因である重要な抗原であり、TbpA単独ではほとんど防御は与えられなかった。
【0058】
組換えTbpAおよびTbpB
N.meningitidis K454株由来のTbpAおよびTbpBをクローニングし、そしてE.coliで過剰発現させた。これらのタンパク質を、アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製し、そしてこれを用いて髄膜炎菌疾患のマウスモデルにおいてそれらの防御力価を決定した。組換えTbpは、鉄ストレスを与えたN.meningitidisから単離されたTbpによって提供される防御と等価の防御を示した(図4および5)。これらの組換えTbpもまた、2つのさらに大きいIPチャレンジ実験に利用した(図6および7)。
【0059】
N.meningitidisでのマウスI.P.感染に対する強力なおよび一貫した防御力価は、おそらくそれらのワクチン可能性についての最も強力な証拠である。
【0060】
興味深いことに、図5、6、および7に示す結果は、類似の設計の実験から生じるが、TbpAまたはTbpBのいずれか単独のみに依存するワクチン組成物と関連した驚くべき変動性を示す。図5では、組換えTbpA組成物は、TbpBまたはTbpA+Bと比較して低いレベルの防御を示した。しかし、図6および7では、TbpA+B複合体およびTbpB単独組成物に匹敵する高レベルの防御を示した組換えTbpAワクチン組成物は、感染に対してほとんど防御を示さなかった。この後者の結果は、従来技術の教示とは全く反対である。
【0061】
回復期血清におけるTbpAおよびTbpBに対するヒト免疫応答
発明者らは、髄膜炎菌疾患後のTbpAおよびTbpBに対するヒトの抗体応答を見る多くの研究を行った。一般的な結論は、TbpAおよびTbpBの両方とも、髄膜炎菌疾患中に発現されそして免疫応答はそれらに対して惹起されることである。この応答は、機能的(オプソニン性)であり、そしてTbpでの動物の免疫処置によって誘導される応答よりも、異なる髄膜炎菌株間でより交差反応性である。TbpAの免疫応答は、TbpBに対するよりも強力かつ交差反応性のようであり、TbpAのワクチン可能性の重要性を確認する。
【0062】
トランスフェリンレセプターからのTbpAおよびTbpB
発明者らの構造研究は、髄膜炎菌表面上のトランスフェリンレセプターが、一緒に作用する2つのTbpA分子および1つのTbpB分子からなることを示す。
【0063】
A+B Tbpを含むワクチンの効果
発明者らは、N.meningitidis L91 705株およびB16B6株からのチャレンジに対するワクチン処方物を含む組換えTbpB対組換えTbpA+Bの有効性のさらなるテストを行い、その結果を、それぞれ図8および9に示す。両方の場合とも、B単独と比較してA+Bによっていくらか改善された防御が与えられた。
【0064】
参考文献
Ala'Aldeen J. (1996) Med. Microbiol. vol 44, pp237-243。
Boultonら (1998) Biochem. J. vol. 334, pp269-273。
Feirrerosら (1998) Rev. in Med. Microbiol. vol 9, No. 1, pp29-37。
Gorringeら (1996) 10th Pathogenic Neisseria Conference, poster 46 abstract。
Martinら (1997) J Exp Med, vol. 185 no. 7 pp1173-1181。
Nassifら (1991) J Bacteriol, vol. 173 no. 7 pp2147-54。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)N.meningitidis外膜小胞;および(ii)少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質を含む組成物であって、該外膜小胞が、第1のN.meningitidis株に由来し、そして該抗原性タンパク質が、該第1の株とは異なる第2のN.meningitidis株に由来する、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、N.meningitidisの異なる株由来の複数の抗原性タンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記外膜小胞が、N.meningitidisの異なる株由来の外膜小胞の混合物を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記N.meningitidis抗原性タンパク質が、表面抗原、ペリプラズムタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、または糖タンパク質より選択される、請求項1から3のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質が、N.meningitidis表面抗原である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗原性タンパク質が、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)またはナイセリア表面タンパク質A(NspA)より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記Cu,Zn−SODがダイマータイプである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの項に記載の組成物であって、該組成物が、
(a)前記少なくとも1つの単離されたN.meningitidis抗原性タンパク質を得る工程;
(b)前記N.meningitidis外膜小胞を得る工程;および
(c)該単離されたN.meningitidis抗原性タンパク質と該単離されたN.meningitidis外膜小胞とを組み合わせる工程
を含む方法により得られる、組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの項に記載の組成物を含む、ワクチン。
【請求項10】
組成物の製造方法であって、
(a)第1のN.meningitidis株の外膜から少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質を抽出して該抗原性タンパク質の水溶液を調製する工程;
(b)該第1の株とは異なる第2のN.meningitidis株の培養物から外膜小胞を抽出する工程;
(c)薬学的に受容可能なキャリアを得る工程;ならびに
(d)工程(a)で調製した溶液、工程(b)で調製した外膜小胞、および工程(c)で得たキャリアを混合する工程
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記方法の工程(a)の代わりに、
(a)第1のN.meningitidis株の少なくとも1つの抗原性タンパク質をコードするDNAを細菌において組換え発現し、該細菌の外膜から該抗原性タンパク質を抽出し、該抗原性タンパク質の水溶液を調製する工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記N.meningitidis抗原性タンパク質が、表面抗原、ペリプラズムタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、または糖タンパク質より選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記N.meningitidis抗原性タンパク質が、N.meningitidis表面抗原である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗原性タンパク質が、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)またはナイセリア表面タンパク質A(NspA)より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記Cu,Zn−SODがダイマータイプである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
髄膜炎菌疾患に対するワクチン接種のための医薬品の製造のための、請求項1から8のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項17】
前記髄膜炎菌疾患がNeisseria meningitidis感染である、請求項16に記載の使用。
【請求項1】
(i)N.meningitidis外膜小胞;および(ii)少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質を含む組成物であって、該外膜小胞が、第1のN.meningitidis株に由来し、そして該抗原性タンパク質が、該第1の株とは異なる第2のN.meningitidis株に由来する、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、N.meningitidisの異なる株由来の複数の抗原性タンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記外膜小胞が、N.meningitidisの異なる株由来の外膜小胞の混合物を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記N.meningitidis抗原性タンパク質が、表面抗原、ペリプラズムタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、または糖タンパク質より選択される、請求項1から3のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質が、N.meningitidis表面抗原である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗原性タンパク質が、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)またはナイセリア表面タンパク質A(NspA)より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記Cu,Zn−SODがダイマータイプである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの項に記載の組成物であって、該組成物が、
(a)前記少なくとも1つの単離されたN.meningitidis抗原性タンパク質を得る工程;
(b)前記N.meningitidis外膜小胞を得る工程;および
(c)該単離されたN.meningitidis抗原性タンパク質と該単離されたN.meningitidis外膜小胞とを組み合わせる工程
を含む方法により得られる、組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの項に記載の組成物を含む、ワクチン。
【請求項10】
組成物の製造方法であって、
(a)第1のN.meningitidis株の外膜から少なくとも1つのN.meningitidis抗原性タンパク質を抽出して該抗原性タンパク質の水溶液を調製する工程;
(b)該第1の株とは異なる第2のN.meningitidis株の培養物から外膜小胞を抽出する工程;
(c)薬学的に受容可能なキャリアを得る工程;ならびに
(d)工程(a)で調製した溶液、工程(b)で調製した外膜小胞、および工程(c)で得たキャリアを混合する工程
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記方法の工程(a)の代わりに、
(a)第1のN.meningitidis株の少なくとも1つの抗原性タンパク質をコードするDNAを細菌において組換え発現し、該細菌の外膜から該抗原性タンパク質を抽出し、該抗原性タンパク質の水溶液を調製する工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記N.meningitidis抗原性タンパク質が、表面抗原、ペリプラズムタンパク質、スーパーオキシドジスムターゼ、または糖タンパク質より選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記N.meningitidis抗原性タンパク質が、N.meningitidis表面抗原である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗原性タンパク質が、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ(Cu,Zn−SOD)またはナイセリア表面タンパク質A(NspA)より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記Cu,Zn−SODがダイマータイプである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
髄膜炎菌疾患に対するワクチン接種のための医薬品の製造のための、請求項1から8のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項17】
前記髄膜炎菌疾患がNeisseria meningitidis感染である、請求項16に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−25774(P2012−25774A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227284(P2011−227284)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2000−579250(P2000−579250)の分割
【原出願日】平成11年11月2日(1999.11.2)
【出願人】(308037845)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2000−579250(P2000−579250)の分割
【原出願日】平成11年11月2日(1999.11.2)
【出願人】(308037845)
【Fターム(参考)】
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