説明

多数の気泡介在物を含むガラス微小球

光学的に見える気泡を個々に2個以上含むガラス微小球を添加した複合材料が高レベルの白色化を発揮する。気泡の平均体積は微小球の体積の8〜35%であり、微小球はポリマーの押出しプロセスで受けるような高圧下で破壊に対して高い抵抗を持つ。微小球は粒径の中央値が5〜100μmであり、微小球の個数の10%以上が2個以上の気泡を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス微小球に関し、特に、2個以上の気泡を含むガラス微小球およびポリマーその他の組成物の白色化への該微小球の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
小さいガラスビーズあるいは微小球は従来から種々の用途に用いられてきた。代表的な用途の一つとして、微小球を種々のポリマー組成物に添加して、このビーズの介在により多種多様な形で利点を得ている。例えば、熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性樹脂に強化フィラーとして添加して、物理的性質や熱的性質を改良し、コストを低減し、製造上の問題を解消している。形が球状であり、ポーラスでないことは、上記の用途に用いた場合に利点となる。球状のガラス粒子を含んでいると、この微小球が小さなボールベアリングのように作用するため、成形中のポリマーの流動速度が高まる。微小球がポーラスでなく等方性であることによって、フィラーとして多量に用いることができるのでコストが低減し、また粒子同士の粘性抵抗が最小限に低下し、金型成形品の冷却時の収縮が均一かつ制御可能になる。それによる典型的な利点として、仕上がり表面の平滑な金型成形品が得られる。
【0003】
他の球状フィラー、例えば炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどをポリマー複合材料、被覆、その他の成分として、最終製品を白色化する必要がある場合に用いることがある。しかし、これらのフィラーの多くは形状が不規則で表面積が大きいため、金型成形その他の成形中の流動を妨げ、成形が困難になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
含まれる組成物を白色化しつつ球状粒子であることによる利点が得られるフィラーを用いることができることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ガラス球を含む組成物であって、該ガラス球はその平均球体積に対する平均総気泡体積が8%以上、35%以下である組成物を提供する。上記のガラス球は粒子径の中央値が5〜100μmであり、球の個数の10%以上が2個以上の気泡を含んでいる組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
〔多数の捕捉気泡を含む微小球〕
本発明は、ガラス微小球と、その製造方法と、それを含む組成物とを提供する。微小球は個々に平均で2個以上の孤立気泡を含み、中実のガラス微小球ではなく、単一の気泡を含む中空のガラス微小球でもない。
【0007】
本発明者は、本発明の微小球を含む製品が良好な白色化性を備えると同時にガラス微小球を用いた際の利点を保持していることを見出した。本明細書中において、用語「微小球」と用語「球」は互換性を持って用いており、球状で気泡を含む本発明のガラス球を示す際には同じ意味である。
【0008】
本発明の微小球は、ある範囲のvol%の気泡介在物を含んで、すなわちある範囲の密度を備えて、作られている。球の密度を、球によって白色化されるマトリクスの密度に一致できるかどうかは、多くの用途で重要である。それは、球の密度が低すぎると、多くの場合、組成物の表面に球が浮上し、美容上不適当な仕上がりになるからである。また、そのような球は、単一の気泡として高vol%のガスを含んでいるので、押出し、射出、その他の成形時に受ける剪断条件下および/または圧力条件下で破壊し易い。そのため、成形時に、流動性の低下、設備の摩耗増加、仕上がり製品の肌荒れなどの問題が生ずる。
【0009】
単一の気泡の形で含まれるガスのvol%を少なくして密度を適度に高めたガラス球を用いることは、上記の問題を解消するために極力追求する必要があるが、そのような球を作る実用的な方法は得られていない。本発明者は、個々の球が複数の気泡を含むことによって適度な密度を備えた微小球を作れば、適度な白色化能が得られることを見出した。このような微小球により、粒子の浮上を低減または解消しつつ、流動性および仕上がり肌についての上記の利点を得ることができる。更に、単一の気泡を含む低密度の中空球とは異なり、本発明の微小球によれば、高圧条件下での破壊抵抗が高まる。
【0010】
特定の理論や解釈に拘束されることなく、本発明の微小球により得られる白色度には、気泡とガラスとの界面の存在が少なくとも部分的に寄与している。この界面によって光の散乱が増加し、微小球を含む組成物の白色度(ハンター(Hunter)のL,a,b法、特にL値で測定)が増加する。本明細書中において、ハンターL値は後出の実施例に示した方法による微小球を含有した硬化ポリエステル組成物についての測定値である。典型的な本発明の微小球はハンターL値が60以上、更に典型的には70以上である。
【0011】
本発明のガラス微小球のサイズは特に規定しない。典型的には、粒径中央値(d50)が5〜100μm、より典型的には10〜50μm、最も典型的には20〜40μmである。一般に、平均微小球当りの気泡vol%および気泡個数が等しい場合、含有する微小球が小さいほど、組成物中に添加される微小球の単位重量当りの白色度は高くなる。
【0012】
本発明の微小球は、気泡の含有量が、8〜35vol%、典型的には8〜20vol%、より典型的には10〜12vol%であってよく、後述するように、かなりの割合の球が2個以上の気泡を含む。微小球の密度は1.1g/cc以上であってよく、正確な値はガラスの組成や微小球中の気泡のvol%などの多数の因子に依存している。典型的には、密度は1.90〜2.51g/cc、より典型的には2.15〜2.30g/ccである。微小球サンプル内の気泡のvol%は下記の式により計算できる。
【0013】
気泡vol%=〔1−(D/D)〕×100
ここで、Dはガラス微小球の密度、Dは中実ガラスの密度である。
【0014】
本発明においては、用語「気泡」は光学顕微鏡で見える空隙を意味する。特定の理論または解釈に拘束されることなく、微小球中に十分な個数の気泡が存在すれば、気泡とガラスとの界面の面積が大きくなって、界面での急速な屈折率の変化によって光の散乱が増加すると考えられる。本発明の微小球はサイズが小さいほど光の散乱レベルが増大するが、極めて微小な粒径にまでは一般化できない。
【0015】
図1は、本発明の典型的な微小球の顕微鏡写真である。個々に2個以上の気泡を含んでいる幾つかの球をAで示し、単一の気泡を含んでいる球をBで示し、中実の球(光学的に見える気泡を含まない球)をCで示す。
【0016】
本発明のガラス微小球は、球の個数の10%以上が2個以上の気泡を含んでいる。典型的なケースでは、この量は20%以上である。一般には20%〜30%の範囲内のレベルであるが、可能な限り多数の微小球が複数の気泡を含むことが望ましいので、100%までの量は本発明の範囲内である。20〜30%の微小球が2個以上の気泡を含むケースでは、他の微小球は、典型的には、20〜30%が単一の気泡を含み、40〜60%が気泡を含まない。
【0017】
任意のサンプル中で中実(気泡なし)の微小球の多くは、粒径の小さい範囲(10μm未満)に見出される。この数値より小さい粒径の微小球は全て計数から外すと、粒子の12%以上が2個以上の気泡を含む。典型的なケースでは、この量は30%以上である。典型的には、30〜40%が2個以上の気泡を含み、30〜40%が単一の気泡を含み、20〜40%が気泡を含まない。上記の計数は従来方法によりガラス微小球を光学顕微鏡のスライド上に散布してミネラルオイルを1滴加えて行なうことができる。この微小球を透過光で観察して気泡を人間が数える。
【0018】
本発明のガラス微小球は、高圧力に対する抵抗が重要な性能である用途において特に有用である。例えば、個々の微小球が単一の気泡のみを含む従来の微小球では球の破壊が生ずる条件下での押出しを施す対象となる複合材料を製造するためにポリマーに添加する微小球として用いる。上記の破壊は、ポリマーの流動性を低下させ、複合材料の白色度を低下させるなどの望ましくない作用の原因になり得る。本発明の微小球は高圧力下での破壊に対して抵抗が大きいため、押出し用のポリマー材に良好な作用を及ぼす。
【0019】
微小球の耐圧抵抗は、対象の材料に等方性圧縮応力を負荷することにより試験できる。パールボム(Parr Bomb)を用いる方法として、3000psiの窒素ガスを用いて微小球をガス静水圧下に配置し、この圧力下に30秒間保持した後、大気圧に戻す。この高圧下で一部の微小球が破壊すると、これら微小球の圧壊部位は未破壊の球に比べて高圧ガスを排除する体積が小さくなるため、体積減少が記録される。このようにして微小球の耐圧抵抗は、加圧処理で生じる微小球サンプルの体積変化パーセントと逆の関係になる。この体積変化は、ガスピクノメータ(例えばQuantachrome Instruments of Boyton Beach, FLから市販されているPentapycnometer)を用いて加圧処理の前後の微小球の理論密度を測定することにより計算できる。本発明の微小球は、典型的には、体積損が4%以下、より典型的には3%以下である。一般に体積損は1〜3%である。特定の理論または解釈に拘束されることなく、微小球中の気泡の総体積が同じなら、単一の気泡を含む微小球よりも複数の気泡を含む微小球の方が耐圧抵抗は高いと考えられる。
【0020】
〔微小球の作製〕
本発明による複数の気泡を含むガラス微小球を製造するには、前駆体としてのガラスビーズをガラスの粘性が所定両限界値間の範囲内になる温度に加熱する必要がある。この限界値はガラス工業分野で「粘性基準点(viscosity reference points)」と呼ばれる事項により定義することができ、ガラスの粘度が107.65ポアズになる温度を軟化点(softening point)と考え、ガラスの粘性が104.0ポアズになる温度を作動点(working point)と考える。作動点と軟化点との間の領域をガラスの作動範囲という。軟化点と作動点との間の温度のガラス粒子は気泡を生ずる潜在性があり、特に、最小量以上の硫酸塩が固溶している場合にはSO等のガスが生成し得る。しかし、温度が低すぎる場合は、微小球中に適度の体積率の気泡を生ずるには生成ガス量が不足する。逆に、温度が高すぎると(それによりガラスの粘性が低すぎると)、典型的には、多数の小さい気泡が多量に凝集して微小球中に少数の大きい気泡が生ずる。そして、このような気泡が球の表面に移動すると、気泡が完全に消失してしまう。小さい気泡が凝集して大きい気泡になっても、あるいは、球の表面から気泡が出現して消失しても、光の散乱が低下してしまうので、本発明の目的にとっては望ましくない。しかし、最小限の通常実験を行なえば、任意のガラス組成について、気泡は生ずるが過剰な凝集や表面への移動の時間は無いような粘性になる温度を求めることができる。このような場合、比較的多数の粒子が複数の気泡を含む。本発明により適度な個数および体積の気泡が生ずるために必要な条件下では、粒子は球状化するのに十分な低い粘性にもなっている。したがって、典型的には、光学顕微鏡を用いた粒子計数で、アスペクト比が1.2以下の粒子は全て「球状」として計数に入れると、ビーズの90wt%以上が球状である。
【0021】
本発明の微小球を形成する適切な処理条件を見つける一般的な方法は、縦火炎システムに任意のタイプのガラス粉末を種々の速度で供給することである。このシステムは、ガス供給量を一定(実施例では850scfm)にした実施例において説明する。このガス供給量はもちろん設備規模に応じて変更可能であり、個々の状況に応じて当業者は容易に対応できる。一般に、ガラス粉末供給速度が増加すると、多量のガラス全体に熱エネルギーが分布するため、火炎内のガラス粒子の温度は低下する。したがって、供給速度を変えることにより、種々の温度条件下で微小球を製造する方法が得られる。その際、粒子の実際の温度を知る必要はない。この方法によれば、火炎内の粒子の温度を知ることなく、個々の微小球当たりの気泡の所望の体積と個数が得られる条件を求めることができるからである。例えば、実施例で説明する設備および850scfmのガス流量を用い、粒子供給速度を比較的遅い12〜36lb/hrとすると、シリカのような超高温溶融ガラスが作動範囲に入り、本発明による微小球が得られる。逆に、AやEのような低温溶融ガラスあるいはボロシリケートは、供給速度を100〜300lb/hr程度にすると所要気泡含有量を持つ製品が得られる。
【0022】
気泡を生ずるためのガス源が必要であるが、これは典型的には、ガラス中の固溶硫黄(硫酸塩)の存在によって得られる。ガラス中の硫酸塩の量は臨界的ではないが、典型的には焼く0.01〜0.3wt%程度である。ガラス中の硫酸塩は850〜860℃の温度範囲で分解し、それにより生成するSOなどのガスにより気泡が形成される。したがって、ガラスの作動範囲は850〜860℃の温度範囲内かそれ以上であり、所望のガス体積と気泡個数を生成するのに十分なガスが発生する温度とする。
【0023】
ガラス微小球の粒径は球状化処理に供給するガラス粉末の粒径で概ね決まるので、例えば篩い分けやサイクロ(登録商標)ン分離によって供給材を分級して所望の粒径を得る。ガラスの分野では種々の分級手段が周知である。
【0024】
本発明の微小球を作製するのに適してガラスとしては、非限定的な例として、Aガラスすなわち容器ガラスや板ガラスなど(軟化点650〜750℃、作動点950〜1050℃)、Eガラスすなわちアルミノシリケートガラスなど(軟化点750〜850℃、作動点950〜1050℃)がある。更に、ライムガラス、フロートガラス、ボロシリケートガラス、チタンシリケートガラスも適している。一つの具体例として窓用ガラスがあり、組成は72.2wt%SiO、1.2wt%Al、8.8wt%CaO、3.3wt%MgO、14.2wt%NaO、0.2wt%KO、0.1wt%Feである。もう一つ適したものとして高屈折率ガラスがあり、例えば屈折率が約1.6以上のものであり、具体例としてはアメリカ合衆国特許第3,193,401号、同第3,419,403号、同第3,946,130号があり、屈折率1.6以上のガラス組成が開示されており、その開示内容はここで引用したことにより本明細書中に取り込む。本発明に用いるのに適したガラスはいずれも、所望のガス体積および気泡個数を生成するのに十分なSO含有量を備えている。典型的には、0.05〜0.5wt%SOは、これに対応した量の硫酸ナトリウムをガラスに含有させることにより得られる。
【0025】
本発明による複数の気泡を生ずるのに適した温度にガラス粒子を加熱する方法は従来から種々知られており、いずれの方法を用いても良い。例えば、本発明の実施形態によっては、アメリカ合衆国特許第3,129,086号および同第3,230,064号に記載されているような縦火炎法を用いている。この方法では、炉内の空気およびガスの上昇流中に粒子を供給し、ガスと空気の混合気の燃焼により縦火炎を形成し、ガラス粒子が火炎内で溶融して球体を形成する。その他、本発明に用いるのに適した実験的な方法がアメリカ合衆国特許第2,619,776号および同第2,945,326号に開示されている。
【0026】
〔微小球を含む組成物〕
種々のポリマー組成物が、本発明の微小球を含むことにより白色化できる。そのような組成物の例として、射出成型用または押出し用のポリマーがある。典型的で非限定的な組成例としては、硬化したまたは未硬化のポリエステル、ナイロン6やナイロン6,6のようなポリアミド、ポリアクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルアセタールやポリビニルブチラールのようなアセタール樹脂、またはポリカーボネートがある。その他にも、微小球の含有により利点が得られるポリマーまたはオリゴマー材料としては、硬化したまたは未硬化のポリウレタン、硬化したまたは未硬化のポリウレア、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、硬化したエポキシ樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂がある。これらの組成物に対する微小球の白色化硬化の他に、微小球の存在によって処理特性や最終的な複合材料の性質に対して種々の利点が得られる。例えば、剛性の向上、熱膨張の低減(それによる形状安定性の向上)、溶融流動挙動の向上(それによる金型充填性の向上)、樹脂代替による製造コスト全体の低減という利点が得られる。典型的には、組成物の1〜60wt%を球が構成し、1種または2種以上のポリマーが40wt%以上を構成する。微小球を添加する別の組成物として、塗料、被覆材、接着剤、漆喰補修材(spackling compounds)がある。塗料や被覆材として用いる組成物の場合は、微小球を液体媒体および少なくとも1種のフィルム形成ポリマーに添加混合し、更に任意に、染料、顔料、その他の塗料・被覆材分野で知られている添加材を加える。
【実施例】
【0027】
以下の実施例において、本発明の微小球を含んだポリマー複合材料の白色化の評価は、当業者に周知のHunter L,a,b法により複合材料のL値を求めることにより行なった。実施例1〜3においては、複合材料の作製は、Fibre Glast Development Corporation, Brookville, OHから市販されている商品名#99Clear Polyester Molding Resinの透明キャスティングポリエステル樹脂(clear casting polyester resin)を用い、このポリエステルに対して2wt%のメチルエチルケトンペロキサイド硬化剤を添加して行なった。微小球は複合材料全体に対して25wt%添加し、硬化後に気泡が取り込まれた状態にならないように混合を行なった。各色値(CIE標準のL,a,b各値)の測定は市販のHunter Colorquest 色度計により行なった。この装置を、入射光「D65」(北天空光照度)(Primary "D65"(Northern Skylight) illumination)を入射角0°/45°で用いるように設定し、拡散反射(乱反射:diffuse reflection)を測定するようにした。
【0028】
〔実施例1〕
密度2.51g/ccのAタイプガラス組成物を磨砕して、10%:4.6μm、50%:17.2μm、90%:43.5μmの分布(vol%)となるように分級した。ここでパーセント表示した割合の粒子が、表示した数値より小さい粒径の粒子である。天然ガスと空気の上昇気流中に粒子を306lb/hrの速度で供給し、アメリカ合衆国特許第2,619,776号に記載の装置と類似の装置を用いて燃焼ゾーン内を鉛直に搬送した。天然ガス流量は850標準立方フィート/hr(scfh)、空気/ガス比は2.14、総空気流量は1818scfhであった。生成物は、サイクロ(登録商標)ンで収集され、平均密度が2.39g/ccであり、これは捕捉された気泡の体積にして4.8%に相当し、粒径分布(vol%)が10%:3.3μm、50%:18.8μm、90%:43.4μmであった。捕捉された気泡の体積は下記の式により算出した。
【0029】
%気泡体積=〔1−(D/2.51)〕×100
ここでDはガラス微小球の密度である。
【0030】
得られたガラス微小球を前述のようにポリエステル樹脂中に添加した結果、色値としてL=58.8、a=−0.2、b=2.8が得られた。
【0031】
〔実施例2〕
実施例1と同じ炉に同じガラス粒子を262lb/hrの速度で供給した。天然ガス流量は850scfh、空気/ガス比は2.14、総空気流量は1818scfhであった。生成物は、サイクロ(登録商標)ンで収集され、平均密度が2.36g/ccであり、これは捕捉された気泡の体積にして5.98%に相当し、粒径分布(vol%)が10%:2.2μm、50%:17.1μm、90%:41.8%であった。得られたガラス微小球を前述のようにポリエステル樹脂中に添加した結果、色値としてL=64.1、a=−0.3、b=3.0が得られた。
【0032】
〔実施例3〕
実施例1と同じ炉に同じガラス粒子を175lb/ccの速度で供給した。天然ガス流量=850scfh、空気/ガス比は2.14、総空気流量は1818scfhであった。生成物は、サイクロ(登録商標)ンで収集され、平均密度が2.27g/ccであり、これは捕捉された気泡の体積にして9.6%に相当し、粒径分布(vol%)が10%:2.0μm、50%:17.5μm、90%:42.3μmであった。得られたガラス微小球を前述のようにポリエステル樹脂に添加した結果、色値としてL=69.3、a=−0.5、b=3.2が得られた。
【0033】
〔実施例4〕
実施例1〜3と同様の方法にてガラス微小球を製造した。得られたガラス微小球は、密度が2.05g/cc、これは捕捉された気泡の体積にして18.3%に相当し、粒径分布が10%:2.3μm、50%:19.6μm、90%:45.3μmであった。得られたガラス微小球を50wt%のレベルでナイロン6(EMS-Grivory Grilon BS/2 Nucleated Nylon 6, EMS-CHEMIE of Sumter, SCから市販)に添加し、射出成形して、色値がL=73.35、a=−1.28、b=6.46であるサンプルを得た。
【0034】
〔実施例5〕
ガラス微小球を含むポリエステル樹脂複合材料の色に及ぼす単一気泡と複数気泡の影響を調べる実験を行なった。先行する実施例と同様にして微小球を作製した。得られた微小球の密度は2.17g/cc、粒径分布(vol%)は10%:6.4μm、50%:20.3μm、90%:44.9μm、捕捉された気泡の体積は13.6%であった。この微小球をポリエステル樹脂に添加した結果、色値としてL=71.6、a=−0.74、b=3.80が得られた。
【0035】
同様にして実質的に中実の微小球を作製した。密度は2.50であり、粒径分布(vol%)は10%:6.2μm、50%:19.8μm、90%:46.7μmであった。捕捉された気泡の体積は0.4%に過ぎなかった。この微小球をポリエステル樹脂に添加した結果、色値としてL=43.9、a=0.15、b=0.84が得られた。
【0036】
第3バッチとして、個々の粒子内に単一の気泡を含む微小球を作製した。平均密度は0.59g/cc、粒径分布(vol%)は10%:11.6μm、50%:21.9μm、90%:36.00μmであった。粒径は上述の中実微小球とほぼ同一であった。この中空微小球3.06gを中実微小球9.44gと混合し、平均の捕捉気泡体積13.5%を得た。中実微小球と中空微小球との相対量は、wt%では中実微小球75.5wt%、中空微小球24.5wt%であり、vol%では中実微小球42.1vol%、中空微小球57.9vol%であった。この混合微小球の平均密度は2.17g/ccであり、本発明の微小球の密度と同等であった。
【0037】
中空微小球と中実微小球の混合物をポリエステル樹脂に添加した結果、色値としてL=75.1、a=0.09、b=5.2が得られた。この複合材料は表面にガラス微小球の凝集が多量に認められ、これはポリエステルの密度約1.1g/ccに比べて著しく低い0.59g/ccの密度を持つ中空微小球が浮上したためであると考えられる。本発明の微小球を用いて作製した複合材料には、このような浮上現象は観察されなかった。
【0038】
〔実施例6〕
実施例5で説明した各微小球サンプルに3000psiの加圧を30秒間行ない、典型的な複合材料処理条件下での破壊に対する抵抗を求めた。中実微小球と中空微小球の混合サンプルは約3.68%の体積減があり、これは密度0.59g/ccの微小球が殆ど全て破壊したためである。これに対して、平均密度2.17g/ccの本発明の微小球のサンプルは体積減が2.0%未満であった。
【0039】
実施例5と実施例6の結果から、本発明の微小球は、平均密度が同等である中実・中空混合微小球と比較して、同等の白色化効果を有するが、微小球の浮上は著しく少ない。3000psi試験で示されたように、加圧成形用途に用いた際の破壊量は、本発明の微小球では著しく少ないと考えられる。
【0040】
以上、本発明を特定の実施形態を参照して図示および説明したが、本発明はここで示した細部に限定されない。本発明を逸脱することなく特許請求の範囲の限定範囲内で、細部は種々に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例のガラス微小球の写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス球を含んで成る組成物であって、該ガラス球は平均として総気泡体積が平均球体積に対して8%以上、35%以下であり、該球はd50が5〜100μmであり、該球の個数の10%以上が2個以上の気泡を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1において、上記球の20%以上が2個以上の気泡を含むことを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1において、上記球の一部は粒径が10μm以上であり、該一部の12%以上が2個以上の気泡を含むことを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1において、上記球の一部は粒径が10μm以上であり、該一部の30%以上が2個以上の気泡を含むことを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1において、上記総気泡体積が上記平均球体積に対して8%以上、20%以下であることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1において、上記総気泡体積が上記平均球体積に対して10%以上、12%以下であることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1において、上記球は平均密度が1.10g/cc以上であることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1において、上記球は平均密度が1.90〜2.51g/ccであることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1において、上記球は平均密度が2.15〜2.30g/ccであることを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項1において、上記球はd50が10〜50μmであることを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1において、上記球はd50が20〜40μmであることを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項1において、上記球はAタイプのガラスを含んで成ることを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項1において、上記球はEタイプのガラスを含んで成ることを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項1において、上記球はボロシリケートガラスを含んで成ることを特徴とする組成物。
【請求項15】
請求項1において、上記球は屈折率が1.6以上のガラスを含んで成ることを特徴とする組成物。
【請求項16】
請求項1において、上記球は3000psiの加圧後の体積減が4%以下であることを特徴とする組成物。
【請求項17】
請求項1において、上記球は3000psiの加圧後の体積減が3%以下であることを特徴とする組成物。
【請求項18】
請求項1において、上記球を、硬化したポリエステル複合材料中に25wt%のレベルで添加したときにハンターのL値が60以上であることを特徴とする組成物。
【請求項19】
請求項1において、上記球を、硬化したポリエステル複合材料中に25wt%のレベルで添加したときにハンターのL値が70以上であることを特徴とする組成物。
【請求項20】
請求項1において、上記球の20%以上が2個以上の気泡を含み、該球の平均密度が1.90〜2.51g/ccであり、該球のd50が10〜50μmであることを特徴とする組成物。
【請求項21】
請求項1において、更に1種以上のポリマーを含み、上記球は組成物の1〜60wt%を構成し、上記1種以上のポリマーは組成物の40wt%以上を構成することを特徴とする組成物。
【請求項22】
請求項21において、上記1種以上のポリマーは熱可塑性ポリマーを含むことを特徴とする組成物。
【請求項23】
請求項22において、上記熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、または、これらいずれかの混合物を含むことを特徴とする組成物。
【請求項24】
請求項21において、上記1種以上のポリマーは熱硬化性ポリマーを含むことを特徴とする組成物。
【請求項25】
請求項24において、上記熱可塑性ポリマーは、硬化したまたは未硬化のポリウレタン、硬化したまたは未硬化のポリウレア、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、または、硬化したエポキシ樹脂を含むことを特徴とする組成物。
【請求項26】
請求項21において、上記1種以上のポリマーは硬化したまたは未硬化の不飽和ポリエステルを含むことを特徴とする組成物。
【請求項27】
請求項1において、更に、液体媒体と1種以上のフィルム形成ポリマーとを含むことを特徴とする組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−517104(P2008−517104A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537011(P2007−537011)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/037316
【国際公開番号】WO2006/044833
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507127037)ポッターズ インダストリーズ インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】