説明

多方向マイクロ流体装置および方法

多方向マイクロ流体装置、およびこれを使用する方法が、提供される。本発明の態様は、2つ以上の方向的に異なる流動場に試料を曝すように構成されており、分離媒体および結合媒体を含む、マイクロ流体装置を含み、結合媒体は分離媒体と流体連絡している。装置、ならびに装置を含むシステムおよびキットを使用する方法も、提供される。装置、システム、および方法は、診断および検証アッセイを含む、様々な異なる用途における利用を見出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
米国特許法§119(e)によって、本願は、参照によりその全体が本願に組み込まれる、2009年5月19日出願の米国特許仮出願第61/179,649号、および2009年11月2日出願の米国特許仮出願第61/257,361号の出願日の優先権を主張する。
【0002】
政府支援の参照
本発明は、認可番号NIDCR 5U01DE014961で、国立衛生研究所の認可の下、部分的に政府の援助を受けてなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
与えられた試料内の特定の被検体を検出するために、様々な分析手法が使用されてもよい。たとえば、試料中のタンパク質を分離するためにゲル電気泳動を使用し、その後標的タンパク質に特異的な抗体を探ることによって、試料中のタンパク質を検出するために、ウェスタンブロット法が使用されることが可能である。サザンブロット法は、電気泳動分離されたDNA断片の濾過膜への移送、およびその後のプローブハイブリダイゼーションによる断片検出を組み合わせている。ノーザンブロット法は、RNA試料をサイズによって分離するための電気泳動の使用と、標的配列の一部または全体を補完するハイブリダイゼーションプローブを用いた検出とを、包含する。イースタンブロット法は、脂質、炭水化物、リン酸化、またはその他のいずれかのタンパク質修飾に特異的なプローブを使用して、翻訳後修飾のための電気泳動分離されたタンパク質を分析することによって、タンパク質翻訳後修飾(PTM)を検出するために使用されることが可能である。ファーウェスタンブロット法は、ウェスタンブロット法と似ているが、しかし対象とするタンパク質を結合するために非抗体タンパク質を使用し、このためタンパク質間相互作用を検出するために使用されることが可能である。サウスウェスタンブロット法は、試料中のタンパク質を分離するためにゲル電気泳動を使用し、その後ゲノムDNA断片でプローブすることによって、DNA結合タンパク質を検出するために使用されることが可能な手法である。
【0004】
従来のブロット法は、上記で論じられたように、高スループット試料分析または資源不足の設定における操作のいずれかを要する用途の性能要求には、及ばない可能性がある。ブロット法は、熟練技術者によって実行される、労働集約的な、時間のかかる、多段階手順を必要とする可能性があり、このため臨床設定での使用には非実用的な可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
多方向マイクロ流体装置、およびこれを使用する方法が、提供される。本発明の態様は、2つ以上の方向的に異なる流動場に試料を曝すように構成されており、分離媒体および結合媒体を含む、マイクロ流体装置を含み、結合媒体は分離媒体と流体連絡している。装置、ならびに装置を含むシステムおよびキットを使用する方法も、提供される。装置、システム、および方法は、診断および検証アッセイを含む、様々な異なる用途における利用を見出す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】従来の免疫ブロット法手順の図である。
【図1B】本開示の実施形態による、試料中の被検体の存在を検出するための方法の図である。
【図1C】本開示の実施形態による、マイクロ流体装置およびマイクロ流体装置内の結合媒体の明視野および蛍光画像の図である。
【図2】本開示の実施形態による、分離試料を結合媒体に移送する前(図2A)および後(図2B)のタンパク質の電気泳動図である。
【図3】本開示の実施形態による、陽性および陰性タンパク質対照を使用してアッセイの特異性を検査する実験の、蛍光画像である。画像は、チャネル内抗体官能化膜に結合されたタンパク質の蛍光発光を示す。
【図4A】本開示の実施形態による、マイクロ流体装置内の抗体官能化結合媒体に結合されたタンパク質の用量反応の蛍光画像である。
【図4B】本開示の実施形態による、結合媒体に結合された被検体における、蛍光シグナル対タンパク質濃度のグラフである。
【図5A】本開示の実施形態による、分離媒体を含むマイクロ流体装置の図である。
【図5B】本開示の実施形態によるマイクロ流体装置を使用する、広い分子範囲のタンパク質ラダーの高分解能電気泳動分析を示す図である。
【図6】本開示の実施形態による、8%合計アクリルアミドゲル(上のグラフ)および4%合計アクリルアミドゲル(下のグラフ)における、5つの低分子量タンパク質の電気泳動図である。
【図7A】本開示の実施形態によるマイクロ流体装置の図である。
【図7B】本開示の実施形態による、試料中の被検体の分離、移送、および検出の図である。
【図8】本開示の実施形態による、試料中の複数の被検体の多重分析向けに構成されたマイクロ流体装置の図である。
【図9A】本開示の実施形態による、分離媒体の上流に濃縮媒体を含むマイクロ流体装置の図および画像(挿入画)である。
【図9B】本開示の実施形態による、分離媒体の上流に濃縮媒体を含むマイクロ流体装置を通る試料の電気泳動運動の画像である。
【図10】本開示の実施形態による、第一マイクロ流体チャネルから第二マイクロ流体チャネルへの、対象とする被検体の選択的な移送の図である。
【図11】本開示の実施形態による、結合媒体の図、および陰性および陽性対照に曝露された結合媒体の画像である。
【図12A】本開示の実施形態による、装荷媒体、分離媒体、および結合媒体を収容するチャンバ(挿入画)を含むマイクロ流体装置の明視野画像である。
【図12B】本開示の実施形態によるチャンバの画像である。
【図12C】本開示の実施形態によるチャンバを含むマイクロ流体装置の図である。
【図12D】本開示の実施形態による、試料中の被検体の分離、移送、および検出の図が重ねられた画像である。
【図13】本開示の実施形態によるマイクロ流体装置内のタンパク質ラダーの分離の画像およびグラフである。
【図14A】本開示の実施形態によるマイクロ流体装置を使用する、蛍光標識されたタンパク質の分離の画像である。
【図14B】本開示の実施形態によるマイクロ流体装置における、分離媒体から結合媒体への蛍光標識されたタンパク質の移送の画像である。
【図15A】本開示の実施形態によるマイクロ流体装置についてシミュレートされた電場分布の画像である。
【図15B】本開示の実施形態によるマイクロ流体装置についてシミュレートされた電場分布の画像である。
【図15C】本開示の実施形態によるマイクロ流体装置についてシミュレートされた電場分布の画像である。
【図15D】本開示の実施形態によるマイクロ流体装置についてシミュレートされた電場分布の画像である。
【図15E】本開示の実施形態による、印加された電場の均一性を検査するマイクロ流体装置の画像である。
【図15F】本開示の実施形態による、印加された電場の均一性を検査するマイクロ流体装置の画像である。
【図16】本開示の実施形態による、電圧整形を備えるおよび備えないマイクロ流体装置を通る試料の電気運動のCCD画像である。
【図17】本開示の実施形態による、試料中の複数の被検体の分離、移送、および検出の図が重ねられた画像である。
【図18】本開示の実施形態による、試料中の複数の被検体の分離、移送、および検出の画像である。
【図19】本開示の実施形態による、陰性対照に対する試料中の被検体の分離、移送、および検出の画像である。
【図20】本開示の実施形態による、試料中の複数の被検体の多重検出の画像である。
【図21】本開示の実施形態による、抗原捕捉効率対結合媒体幅(μm)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
多方向マイクロ流体装置、およびこれを使用する方法が、提供される。本発明の態様は、2つ以上の方向的に異なる電場に試料を曝すように構成されており、分離媒体および結合媒体を含む、マイクロ流体装置を含み、結合媒体は分離媒体と流体連絡している。装置、ならびに装置を含むシステムおよびキットを使用する方法も、提供される。装置、システム、および方法は、診断および検証アッセイを含む、様々な異なる用途における利用を見出す。
【0008】
本開示の態様は、流体試料中の被検体を検出し、2つ以上の方向的に異なる流動場に試料を曝すように構成されている、マイクロ流体装置を含み、マイクロ流体装置は:第一方向軸を備える分離流路を有する分離媒体;および第二方向軸を備える標識流路を有する結合媒体を含み、結合媒体は分離媒体と流体連絡している。
【0009】
特定の実施形態において、分離媒体はポリマーゲルを含む。場合により、結合媒体は、担体と安定的に会合した結合メンバーを含む。場合により、担体は膜を含む。場合により、担体はポリマーゲルを含む。マイクロ流体装置の特定の実施形態は、タンパク質またはその結合断片を含む、結合メンバーを含む。たとえば、タンパク質は抗体であってもよい。場合により、被検体は蛍光標識を含む。
【0010】
特定の実施形態において、第二方向軸は、第一方向軸に対して直交している。場合により、マイクロ流体装置は、分離媒体および結合媒体を収容するチャンバを含む。
【0011】
本開示の態様は、流体試料中の被検体を検出する方法も含む。方法は:2つ以上の方向的に異なる流動場に試料を曝すように構成されているマイクロ流体装置内に流体試料を導入するステップと;分離試料を生成するために分離媒体を通るように試料を配向するステップと;分離試料中の被検体を検出するステップと、を含む。上述のように、マイクロ流体装置は:第一方向軸を備える分離流路を有する分離媒体;および第二方向軸を備える標識流路を有する結合媒体を含み、結合媒体は分離媒体と流体連絡している。
【0012】
特定の実施形態において、方法は、分離試料を結合媒体に移送するステップを含む。別の実施形態において、方法は、結合メンバーを分離試料に移動するステップを含む。場合により、方法は、分離試料を生成するために分離媒体を通るように試料を配向するステップに先立って、試料を濃縮するステップをさらに含む。
【0013】
対象とする方法の実施形態は、方法が診断方法である場合を含む。これに加えて、場合により、方法は検証方法である。
【0014】
本開示の態様は、付加的に、流体試料中の被検体を検出するシステムを含む。システムは、本明細書に記載されるマイクロ流体装置、および検出器を含む。上述のように、マイクロ流体装置は、2つ以上の方向的に異なる流動場に試料を曝すように構成されており、マイクロ流体装置は:第一方向軸を備える分離流路を有する分離媒体;および第二方向軸を備える標識流路を有する結合媒体を含み、結合媒体は分離媒体と流体連絡している。
【0015】
特定の実施形態において、検出器は、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子(CCD)、強化電荷結合素子(ICCD)、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサー、視感色彩読み取り、またはフォトダイオードである。場合により、システムは、マイクロ流体装置を通るように流体を配向するように構成されている、マイクロ流体素子をさらに含む。
【0016】
本開示の態様は、付加的に、本明細書に記載されるマイクロ流体装置および緩衝液を含む、キットを含む。上述のように、マイクロ流体装置は:第一方向軸を備える分離流路を有する分離媒体;および第二方向軸を備える標識流路を有する結合媒体を含み、結合媒体は分離媒体と流体連絡している。
【0017】
以下に、まず対象とするマイクロ流体装置が、より詳細に記載される。対象とするマイクロ流体装置の利用を見出す、流体試料中の被検体を検出する方法もまた、開示される。これに加えて、対象とするマイクロ流体装置を含むシステムおよびキットもまた、記載される。
【0018】
マイクロ流体装置
本開示の実施形態は、多方向マイクロ流体装置を含む。「多方向」とは、2つ以上の方向、3つ以上の方向、4つ以上の方向など、1つより多い方向を意味する。特定の実施形態において、2つ以上の方向が共平面となるように、2つ以上の方向は1つの平面に含まれる。場合により、2つの方向が、異なる、交差する平面に含まれるように、2つ以上の方向は共平面ではない。これらの場合、2つ以上の方向は、多次元であってもよい。「多次元」とは、二次元、三次元など、1つより多い次元を意味する。多次元である方向は、三次元空間の領域を占有してもよい。たとえば、共平面ではない2つの方向は、2つの方向を含む交差する平面が三次元空間の領域を占有するように、異なった、交差する平面にそれぞれ含まれてもよい。
【0019】
特定の実施形態において、マイクロ流体装置は、2つ以上の方向、3つ以上の方向、4つ以上の方向など、1つより多い方向(たとえば、マイクロ流体装置は多方向性である)に、流体を配向するように構成されている。たとえば、マイクロ流体装置は、2つの方向、3つの方向、4つの方向などに、流体を配向するように構成されていてもよい。場合により、マイクロ流体装置は多次元的である。たとえば、マイクロ流体装置は2つ以上の方向に流体を配向するように構成されていてもよく、ここで2つ以上の方向が2つ以上の異なる交差する平面に含まれるように、2つ以上の方向は共平面ではない。これらの場合、2つ以上の方向を含む交差する平面は、三次元空間の領域を占有してもよい。たとえば、マイクロ流体装置は、マイクロ流体装置が平面的になるように、基板に含まれていてもよい。マイクロ流体装置は、この平面内の複数の方向に、流体を配向するように構成されていてもよい。特定の実施形態において、マイクロ流体装置は、三次元など、多次元において流体を配向するように構成されている。たとえば、マイクロ流体装置は、同じ平面内の複数の方向に流体を配向するほか、マイクロ流体装置が三次元マイクロ流体装置として構成されるように、非共平面方向にも流体を配向するように構成されていてもよい。
【0020】
特定の実施形態において、マイクロ流体装置は分離媒体を含む。分離媒体は、試料中の被検体を互いに分離するように構成されていてもよい。場合により、分離媒体は、被検体の物理的特性に基づいて、試料中の被検体を分離するように構成されている。たとえば、分離媒体は、被検体の分子量、サイズ、電荷(たとえば電荷質量比)、等電点などに基づいて、試料中の被検体を分離するように構成されていてもよい。特定の例において、分離媒体は、被検体の分子量に基づいて、試料中の被検体を分離するように構成されている。場合により、分離媒体は、被検体の等電点に基づいて(たとえば等電点収束)、試料中の被検体を分離するように構成されている。分離媒体は、試料中の被検体を分離して、被検体の明確で検出可能なバンドにするように、構成されていてもよい。「バンド」とは、被検体の濃度が周囲の領域よりも著しく高い、明確で検出可能な領域を意味する。被検体の各バンドは、単一の被検体、またはいくつかの被検体を含んでもよく、被検体の単一バンドの各被検体は、上述のように、実質的に類似の物理的特性を有する。
【0021】
特定の実施形態において、分離媒体は、試料が分離媒体を横断する際に、試料中の被検体を分離するように構成されている。場合により、分離媒体は、試料が分離媒体を通って流れる際に、試料中の被検体を分離するように構成されている。分離媒体の態様は、分離媒体が方向軸を備える流路を有することを含む。「流路」とは、流体試料が動くときに移動する方向を意味する。場合により、流路は、試料が分離媒体、結合媒体などの媒体を横断する際に、試料が移動する方向である。先に示されたように、分離媒体は、方向軸を備える流路を有してもよい。いくつかの実施形態において、分離流路の方向軸は、分離媒体の長さに揃えられている。これらの実施形態において、試料は、分離媒体の分離流路の方向に、分離媒体を横断する(たとえば、試料は分離媒体の長さに沿って分離媒体を横断してもよい)。場合により、分離媒体の長さは、分離媒体の幅の2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍など、分離媒体の幅よりも大きい。場合により、分離媒体の分離流路は、マイクロ流体チャネルなどのチャネルによって定義される。分離媒体は、試料がマイクロ流体チャネルを通って流れる際に試料が分離媒体を横断するように、マイクロ流体チャネルに含まれてもよい。
【0022】
特定の実施形態において、分離媒体は、ポリマーゲルなどのポリマーを含む。ポリマーゲルは、ゲル電気泳動に適したゲルであってもよい。ポリマーゲルは、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲルなどを含んでもよいが、これらに限定されない。分離媒体の分解能は、たとえば、ただしこれらに限定されないが、孔径、総ポリマー含有量(たとえば総アクリルアミド含有量)、架橋剤の濃度、印加された電場、アッセイ時間など、様々な要因に依存してもよい。たとえば、分離媒体の分解能は、分離媒体の孔径に依存してもよい。場合により、孔径は、分離媒体の総ポリマー含有量および/または分離媒体中の架橋剤の濃度に依存する。特定の例において、分離媒体は、5,000Da以下、または2,000Da以下、または1,000Da以下、たとえば500Da以下、または100Da以下を含む、7,000Da以下などの、10,000Da以下の分子量差で被検体を分解するように構成されている。場合により、分離媒体は、5%から10%を含む、たとえば3%から15%など、1%から20%の範囲の総アクリルアミド含有量を有する、ポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。
【0023】
場合により、マイクロ流体装置は、分離媒体の上流に位置する濃縮媒体を含む。「上流」とは、流体の流れの源の近位に位置していることを意味する。濃縮媒体は、試料が分離媒体に接触する前に、試料を濃縮するように構成されていてもよい。濃縮媒体は、小さい孔径を有するポリマーゲルなどの、ポリマーゲルを含んでもよい。たとえば、濃縮媒体は、5%から8%、または5%から7%を含む、たとえば5%から9%など、5%から10%の範囲の総アクリルアミド含有量を有する、ポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。場合により、濃縮媒体は、6%の総ポリアクリルアミド含有量を有する。特定の実施形態において、濃縮媒体は、サイズ排除膜などの膜を含む。濃縮媒体の小さい孔径は、濃縮媒体を通る試料の電気泳動を遅らせ、そうして分離媒体に接触する前に試料を濃縮する。場合により、濃縮膜は、試料の濃度を2倍以上、4倍以上、10倍以上、25倍以上、50倍以上、100倍以上、500倍以上、1000倍以上、2500倍以上などに、増加させるように構成されている。
【0024】
特定の実施形態において、対象とするマイクロ流体装置は、分離媒体の下流に位置する結合媒体を含む。「下流」とは、流体の流れの源の遠位に位置していることを意味する。結合媒体は、方向軸を備える標識流路を有してもよい。場合により、標識流路は、試料または被検体が結合媒体を横断する際に試料が移動する方向である。試料または被検体は、結合媒体の標識流路の方向に、結合媒体を横断してもよい(たとえば、試料は結合媒体の方向軸に沿って分離媒体を横断してもよい)。結合媒体は、分離媒体の方向軸と同じかまたは異なる方向軸を有してもよい。たとえば、分離媒体は第一方向軸を有してもよく、結合媒体は第二方向軸を有してもよい。第一方向軸は、第二方向軸と同じ方向に揃えられていてもよい。場合により、第一方向軸は、第二方向軸と異なる方向に揃えられている。第一方向軸が第二方向軸とは異なる方向に揃えられている場合、上述のように、マイクロ流体装置は多次元(たとえば多方向)マイクロ流体装置である。たとえば、第二方向軸は、第一方向軸に対して120度以下、90度以下、60度以下、45度以下、または30度以下を含む、150度以下、135度以下など、第一方向軸に対して180度以下の角度であってもよい。特定の実施形態において、第二方向軸は第一方向軸に対して直交している。
【0025】
特定の場合、結合媒体は、ポリマーゲルまたはポリマーモノリスなど、ポリマーを含む。モノリスとは、単一の、連続構造体を意味する。モノリスは、同じ物理および化学成分を備える単一の領域を含んでもよく、またはこれらの物理および化学成分に関して異なる、2つ以上の領域を含んでもよい。ポリマーゲルは、ゲル電気泳動に適したゲルであってもよい。ポリマーゲルは、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲルなどを含んでもよいが、これらに限定されない。場合により、結合媒体は、5%から10%を含む、3%から15%など、1%から20%の範囲の総アクリルアミド含有量を有する、ポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。ポリマーモノリスは、クロマトグラフィに適したモノリスであってもよい。ポリマーモノリスは、アクリレートポリマー、アルキルアクリレートポリマー、アルキルアルキルアクリレートポリマー、それらの共重合体などを含んでもよいが、これらに限定されない。場合により、結合媒体は膜を含む。膜は、ニトロセルロース膜、ポリマー膜などを含んでもよい。場合により、結合媒体はビーズを含む。ビーズは、ニトロセルロースビーズ、ポリマービーズ、それらの組合せなどを含んでもよい。
【0026】
特定の実施形態において、結合媒体は、対象とする被検体に結合し、これを保持するように構成されていてもよい。場合により、結合媒体に結合された被検体は、被検体の検出を容易にする。たとえば、結合媒体は、担体と安定的に会合した結合メンバーを含んでもよい。「安定的に会合した」とは、ある部分が、標準状態において、別の部分または構造体と結合もしくは会合していることを意味する。特定の例において、上述のように、担体は、ポリマーゲルまたは膜である。結合は、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力(たとえば、ロンドン分散力)、双極子間相互作用などの、ただしこれらに限定されない、共有結合および非共有相互作用を含んでもよい。特定の実施形態において、結合メンバーは、担体に架橋または共重合されるなど、担体に共有的に結合されてもよい。結合メンバーと担体との間の共有結合は、以下のものなど、ただしこれらに限定されない反応基を包含する共有結合を含む:結合メンバーおよび担体の両方のアミノ/アミド基との共有結合を形成するために、二官能性架橋剤のグルタルアルデヒドを利用する、グルタルアルデヒド;結合メンバーに共有結合するためにグリシジル官能基(すなわちエポキシ官能基)を、および担体に結合するためにメタクリレート基を利用する、グリシジルメタクリレート;担体に共有的に結合するために、結合メンバーのアミン基をアシル化するために使用され得る、4−ニトロフェニルメタクリレート;担体への取り込みのため、結合メンバー上のアミノ基と相互作用するためにN−ヒドロキシスクシンイミジル基を利用する、N−ヒドロキシスクシンイミジルアクリレート(NHS−アクリレート)。
【0027】
結合メンバーは、標的とされるタンパク質、または核酸配列、または生体高分子(たとえば対象とする被検体)に具体的に結合するいずれの分子であってもよい。被検体の性質に応じて、結合メンバーは、(a)核酸の検出のための標的DNAまたはRNA配列の特異領域を補完するDNAの一本鎖;(b)タンパク質およびペプチドの検出のためのペプチド被検体のエピトープに対する抗体;(c)特異的結合対のメンバーなど、いずれかの認識分子、であってもよいが、これらに限定されない。たとえば、適切な特異的結合対は:受容体/リガンド対のメンバー;受容体のリガンド結合部;抗体/抗原対のメンバー;抗体の抗原−結合断片;ハプテン;レクチン/炭水化物対のメンバー;酵素/基板対のメンバー;ビオチン/アビジン;ビオチン/ストレプトアビジン;ジゴキシン/抗ジゴキシン;DNAまたはRNAアプタマー結合対のメンバー;ペプチドアプタマー結合対のメンバー;などを含むが、これらに限定されない。
【0028】
特定の実施形態において、結合メンバーは抗体を含む。結合メンバー抗体は、対象とする被検体と特異的に結合してもよい。場合により、結合メンバーは、上述のように、担体に安定的に会合している。担体結合された結合メンバーは、対象とする被検体と特異的に結合するように構成されていてもよい。したがって、担体結合された結合メンバーとの対象とする被検体の特異的結合は、対象とする被検体を担体と間接的に結合されてもよい。対象とする被検体の担体との結合は、被検体を担体と安定的に会合させ、こうして対象とする被検体の検出を容易にしてもよい。
【0029】
特定の実施形態において、2つ以上の異なる結合メンバーは、結合媒体と安定的に会合している。2つ以上の異なる結合メンバーは、同じまたは異なる被検体と特異的に結合してもよい。場合により、2つ以上の異なる結合メンバーは、同じ被検体と特異的に結合してもよい。たとえば、2つ以上の異なる結合メンバーは、同じ被検体上の異なるエピトープに特異的な異なる抗体を含んでもよい。別の場合には、2つ以上の異なる結合メンバーは、異なる被検体と特異的に結合してもよい。たとえば、2つ以上の異なる結合メンバーは、異なる被検体上のエピトープに特異的な異なる抗体を含んでもよい。
【0030】
マイクロ流体装置の態様は、分離媒体が結合媒体と流体連絡している実施形態を含む。特定の実施形態において、結合媒体は分離媒体の下流に配置されている。マイクロ流体装置は、まず分離試料を生成するために、分離媒体を通じて試料を配向するように構成されていてもよい。場合により、分離媒体および結合媒体は、互いに流体連絡しているが、しかし互いに直接物理的には接触していない。たとえば、分離媒体は、チャネルまたは別の媒体と流体連絡していてもよく、これはひいては結合媒体と流体連絡している。特定の実施形態において、マイクロ流体装置は、分離媒体および結合媒体が互いに直接的に流体連絡するように、構成されている。たとえば、分離媒体は、結合媒体と直接接触していてもよい。場合により、分離媒体および結合媒体は、共重合など、互いに結合されている。分離媒体が結合媒体と直接流体連絡している実施形態は、部分の損失を最小限に抑えながら、分離媒体から結合媒体への部分の移送、または結合媒体から分離媒体への部分の移送を容易にし得る。場合により、マイクロ流体装置は、部分がある媒体から別の媒体へ(たとえば、分離媒体から結合媒体へ、または結合媒体から分離媒体へ)定量的に移送されるように、構成されている。
【0031】
特定の実施形態において、マイクロ流体装置は、結合媒体を通じて分離試料を配向するように構成されている。場合により、マイクロ流体装置は、試料または被検体が、分離媒体から介在するチャネルまたは媒体まで横断し、その後結合媒体まで横断するように、構成されている。別の場合には、マイクロ流体装置は、試料または被検体が分離媒体から結合媒体まで直接横断できるように、分離媒体および結合媒体が互いに直接流体連絡するように、構成されている。上述のように、結合媒体は、分離試料中の対象とする被検体の検出のために被検体に結合するように構成された、結合メンバーを含んでもよい。
【0032】
特定の場合、結合媒体は、結合媒体に結合されない結合メンバーを含む。たとえば、結合媒体は、緩衝液など、流体中に懸濁または溶解している結合メンバーを含んでもよい。これらの場合、装置は、結合媒体から分離媒体に向かって結合メンバーを配向するように構成されている。たとえば、装置は、結合媒体から分離媒体の分離流路に向かって結合メンバーを配向するように構成されていてもよい。上述のように、結合メンバーは、分離試料中の対象とする被検体の検出のために被検体に結合するように構成されていてもよい。場合により、マイクロ流体装置は、結合メンバーが結合媒体から介在するチャネルまたは媒体まで横断し、その後分離媒体まで横断するように、構成されている。別の場合には、マイクロ流体装置は、結合メンバーが結合媒体から分離媒体まで直接横断できるように、結合媒体および分離媒体が互いに直接流体連絡するように、構成されている。
【0033】
場合により、マイクロ流体装置は、2つ以上の方向的に異なる流動場に試料を曝すように構成されている。「流動場」とは、各部分が実質的に同じ方向に領域を横断する領域を意味する。たとえば、流動場は、移動部分が実質的に同じ方向に媒体を通って移動する領域を、含んでもよい。流動場は、緩衝液、被検体、試薬などの部分が実質的に同じ方向に媒体を通って移動する、分離媒体、結合媒体、装荷媒体などの媒体を、含んでもよい。流動場は、印加された電場、圧力差、電気浸透などに誘導されてもよい。いくつかの実施形態において、2つ以上の流動場は、方向的に異なっていてもよい。たとえば、第一流動場は、分離媒体の分離流路の方向軸に揃えられていてもよい。第一流動場は、分離流路に沿って分離媒体を通じて試料または被検体を配向するように構成されていてもよい。第二流動場は、結合媒体の標識流路の方向軸に揃えられていてもよい。場合により、第二流動場は、標識流路に沿って結合媒体を通じて試料または被検体を配向するように構成されている。第二流動場は、対象とする被検体がその特定の結合メンバーと接触するように、結合媒体を通じて試料または被検体を配向するように構成されていてもよい。場合により、第二流動場は、標識流路に沿って結合媒体を通じて結合メンバーを配向するように構成されている。第二流動場は、結合メンバーがその対象とする特定の被検体と接触するように、結合媒体を通じて結合メンバーを配向するように構成されていてもよい。上述のように、特定の例において、標識流路の方向軸は、分離流路の方向軸に対して直交している。これらの例において、第二流動場は第一流動場に対して直交していてもよい。
【0034】
特定の実施形態において、マイクロ流体装置は、2つ以上の方向的に異なる電場に試料を曝すように構成されている。電場は、マイクロ流体装置を通る試料の運動(たとえば、マイクロ流体装置の1つの領域からマイクロ流体装置の別の領域への試料の電気運動移送)を容易にし得る。電場はまた、上述のように、電気泳動(たとえば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE))による試料中の被検体の分離も容易にし得る。たとえば、電場は、マイクロ流体装置の分離媒体を通じて試料中の被検体を配向するように構成されていてもよい。電場は、被検体の物理的特性に基づく試料中の被検体の分離を容易にするように、構成されていてもよい。たとえば、電場は、被検体の分子量、サイズ、電荷(たとえば電荷質量比)、等電点などに基づく試料中の被検体の分離を容易にするように、構成されていてもよい。特定の例において、電場は、被検体の分子量に基づく試料中の被検体の分離を容易にするように、構成されていてもよい。場合により、電場は、被検体の等電点に基づく試料中の被検体の分離を容易にするように、構成されている。
【0035】
いくつかの実施形態において、2つ以上の電場は方向的に異なっていてもよい。たとえば、第一電場は、分離媒体の分離流路の方向軸に揃えられていてもよい。第一電場は、分離流路に沿って分離媒体を通じて試料または被検体を配向するように構成されていてもよい。第二電場は、結合媒体の標識流路の方向軸に揃えられていてもよい。場合により、第二電場は、標識流路に沿って結合媒体を通じて試料または被検体を配向するように構成されている。第二電場は、対象とする被検体がその特定の結合メンバーと接触するように、結合媒体を通じて試料または被検体を配向するように構成されていてもよい。場合により、第二電場は、標識流路に沿って結合媒体を通じて結合メンバーを配向するように構成されている。第二電場は、結合メンバーが対象とするその特定の被検体と接触するように、結合媒体を通じて結合メンバーを配向するように構成されていてもよい。上述のように、特定の例において、標識流路の方向軸は、分離流路の方向軸に対して直交している。これらの例において、第二電場は、第一電場に対して直交していてもよい。
【0036】
特定の実施形態において、マイクロ流体装置は、電場を発生するように構成された1つ以上の電場発生器を含む。電場発生器は、分離媒体、結合媒体、装荷媒体などのうちの1つ以上など、マイクロ流体装置の様々な領域に、電場を印加するように構成されていてもよい。電場発生器は、マイクロ流体装置内の様々な媒体を通じて試料中の被検体および部分を電気運動的に移送するように、構成されていてもよい。特定の例において、電場発生器は、マイクロ流体装置上に配置されるなど、マイクロ流体装置の近位にあってもよい。場合により、電場発生器は、マイクロ流体装置から離れた位置にある。たとえば、電場発生器は、以下により詳細に記載されるように、被検体を検出するためのシステムに組み込まれてもよい。
【0037】
マイクロ流体装置の態様は、移送流路を含む。移送流路は、結合媒体の標識流路と流体連絡していてもよい。たとえば、移送流路は、結合流路の下流に位置していてもよい。上述のように、結合媒体は、対象とする被検体に特異的に結合する結合メンバーを含んでもよい。対象としない部分は、結合メンバーによって結合されず、結合メンバーに結合することなく、結合媒体を横断してもよい。特定の実施形態において、移送流路は、結合媒体から離れる方へ対象としない部分を配向するように構成されている。たとえば、移送流路は、結合メンバーに結合することなく結合媒体を横断する、対象としない部分を、結合媒体から離れる方へ配向するように構成されていてもよい。特定の実施形態において、移送流路は、結合媒体内の化学的または物理的処置を通じてまたはそこへ向けて部分を配向するように、構成されている。たとえば、溶解した被検体は、化学的変性剤、リフォールディング化学薬品、洗剤などを通じて、推進されてもよい。
【0038】
場合により、移送流路の下流末端は、移送流路が対象としない部分を排液リザーバに配向するように構成されるように、排液リザーバと流体連絡している。場合により、移送流路の下流末端は、移送流路が、結合メンバーに結合することなく結合媒体を通過する部分を、その部分のさらなる特徴付けのための二次分析装置に配向するように構成されるように、二次分析装置と流体連絡している。二次分析装置は、紫外分光計、赤外分光計、質量分析計、HPLC、親和性アッセイ装置などを含んでもよいが、これらに限定されない。場合により、二次分析装置は、マイクロ流体装置と同じ基板上に含まれる。これらの実施形態において、マイクロ流体装置および二次分析装置は、1つ以上の異なる分析法による試料の分析のため、単一の基板上に設けられてもよい。特定の実施形態において、二次分析装置はシステムの一部として含まれ、システムはマイクロ流体装置および1つ以上の個別の二次分析装置を含む。上述のように、マイクロ流体装置および二次分析装置は、マイクロ流体装置を通過する部分がその部分のさらなる特徴付けのために二次分析装置に配向されるように、互いに流体連絡していてもよい。
【0039】
いくつかの態様において、分離および結合媒体は、図1Cおよび図7Aに示されるように、個別のチャネルの異なる長さにおいて設けられている。これらの実施形態において、マイクロ流体装置は、互いに流体連絡しているマイクロ流体チャネルを含むように構成されている。マイクロ流体チャネルは、チャネルの長さがチャネルの幅よりも大きい、長尺チャネルであってもよい。たとえば、マイクロ流体チャネルの長さは、マイクロ流体チャネルの幅の2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍など、マイクロ流体チャネルの幅よりも大きくてもよい。
【0040】
マイクロ流体装置は、上述のように、分離媒体を含む分離チャネルを含んでもよい。マイクロ流体装置は、上述のように、結合媒体を含む結合チャネルを含んでもよい。場合により、分離チャネル内の分離媒体が結合チャネル内の結合媒体と流体連絡するように、分離チャネルは結合チャネルと流体連絡している。マイクロ流体装置のいくつかの実施形態は、分離チャネルおよび結合チャネルを含み、ここで分離チャネルは第一方向軸を有し、結合チャネルは第二方向軸を有する。第一方向軸および第二方向軸は、互いに同じ方向に揃えられていてもよく、あるいは互いに異なる方向に揃えられていてもよい。たとえば、分離チャネルの方向軸は、結合チャネルに対して120度以下、90度以下、60度以下、45度以下、または30度以下を含む、150度以下、135度以下など、結合チャネルに対して180度以下の角度であってもよい。特定の実施形態において、結合チャネルの方向軸は、分離チャネルの方向軸に対して直交している。
【0041】
マイクロ流体チャネルの実施形態は、マイクロ流体装置と適合し、マイクロ流体装置内で使用される試料、緩衝液、試薬などと適合する、いずれかの適切な材料で作られてもよい。場合により、マイクロ流体チャネルは、対象とするマイクロ流体装置および方法において使用される試料、緩衝液、試薬などに対して不活性な(たとえば、分解または反応しない)材料で作られる。たとえば、マイクロ流体チャネルは、ガラス、石英、ポリマー、エラストマー、紙、それらの組合せなどの、ただしこれらに限定されない材料で作られてもよい。
【0042】
特定の実施形態において、マイクロ流体チャネルは、たとえば50μmから150μmなど、10μmから200μmを含む、5μmから300μmなど、1μmから500μmの範囲の幅を有する。場合により、マイクロ流体チャネルは100μmの幅を有する。特定の実施形態において、マイクロ流体チャネルは、10μmから50μmを含む、5μmから100μmなど、1μmから200μmの範囲の深さを有する。場合により、マイクロ流体チャネルは25μmの深さを有する。
【0043】
場合により、マイクロ流体装置は、1つ以上の試料注入ポートを含む。試料注入ポートは、試料がマイクロ流体装置内に導入されることを可能にするように構成されていてもよい。試料注入ポートは、分離媒体と流体連絡していてもよい。場合により、試料注入ポートは、分離媒体の上流末端と流体連絡している。試料注入ポートは、流体が試料注入ポートから排出されるのを防止するように構成された構造を、さらに含んでもよい。たとえば、試料注入ポートは、たとえば、マイクロ流体装置内への試料の導入を可能にするために穿孔または開口され、その後試料および/または緩衝液を含む流体が試料注入ポートから排出されるのを実質的に防止するために再封止または閉鎖されてもよい、キャップ、弁、シールなどを含んでもよい。
【0044】
図1Cは、マイクロ流体装置10の図を示す。マイクロ流体装置10は、結合媒体12と流体連絡している分離媒体11を含む。マイクロ流体装置10はまた、流体注入口13、排液排出口14、試料注入口15、流体排出口16、流体注入口17、および流体排出口18など、様々な注入口および排出口も含む。流体排出口16は、分離された被検体を、必要に応じて排液リザーバまたは下流の二次分析装置へ配向するように構成されていてもよい。同様に、流体排出口18は、非結合の被検体を、必要に応じて排液リザーバまたは下流の二次分析装置へ配向するように構成されていてもよい。図1Cはまた、マイクロ流体装置内の結合媒体の明視野および蛍光画像も示す。
【0045】
図7Aもまた、上述のように、互いに流体連絡しているマイクロ流体チャネルを含む、マイクロ流体装置700の図を示す。マイクロ流体装置700は、分離媒体702を含む分離チャネル701を含む。分離チャネルは、結合媒体704を含む結合チャネル703と流体連絡している。マイクロ流体装置700もまた、以下のものなど、ただしこれらに限定されない、様々な注入口および排出口を含んでもよい:マイクロ流体装置700内に向かって流体を配向するように構成されていてもよい、流体注入口705;排液をマイクロ流体装置700から離れる方へ配向するように構成されていてもよい、排液排出口706;分離媒体より上流のマイクロ流体装置700内に試料を配向するように構成されていてもよい、試料注入口707;結合チャネル703に移送されなかった分離された被検体を、必要に応じて排液リザーバまたは下流の二次分析装置へ配向するように構成されていてもよい、流体排出口708;移送チャネル711へ流体を配向するように構成されていてもよい、流体注入口709;および非結合の被検体を、必要に応じて排液リザーバまたは下流の二次分析装置へ配向するように構成されていてもよい、流体排出口710。
【0046】
いくつかの態様において、分離および結合媒体は、図12〜図16に示されるように、単一の共通チャンバ内に設けられている。これらの実施形態において、マイクロ流体装置はチャンバを含む。チャンバは、分離媒体および結合媒体を含んでもよい。上述のように、分離媒体は、結合媒体と、直接物理接触などにより、流体連絡していてもよい。場合により、分離媒体は、結合媒体に共重合または架橋されるなど、結合媒体に結合される。したがって、チャンバは、互いに流体連絡している分離媒体および結合媒体の両方を含むように構成されてもよい。チャンバは、分離媒体の分離流路が結合媒体の標識流路より上流になるように、分離媒体および結合媒体を含むように構成されてもよい。
【0047】
分離媒体および結合媒体に加えて、チャンバは、装荷媒体も含んでもよい。装荷媒体は、分離媒体と流体連絡していてもよい。場合により、装荷媒体は、分離媒体と直接物理接触している。たとえば、装荷媒体は、分離媒体に共重合または架橋されるなど、分離媒体に結合されてもよい。装荷媒体は、試料が分離媒体に接触する前に装荷媒体に接触するように、分離媒体より上流に位置してもよい。特定の実施形態において、装荷媒体は、分離媒体との試料の接触を容易にする。たとえば、装荷媒体は、試料が分離媒体と接触する前に、試料を濃縮するように構成されていてもよい。特定の実施形態において、装荷媒体は、異なる物理的および/または化学的特性を有する、2つ以上の領域を含んでもよい。装荷媒体は、装荷領域および積層領域を含んでもよい。装荷媒体は、積層領域より上流に装荷領域を含むように構成されていてもよい。
【0048】
特定の実施形態において、装荷媒体は、ポリマーゲルなどのポリマーを含む。ポリマーゲルは、ゲル電気泳動に適したゲルであってもよい。ポリマーゲルは、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲルなどを含んでもよいが、これらに限定されない。場合により、装荷領域は、大きい孔径を有するポリマーゲルを含む。たとえば、装荷領域は、3%以下または2%以下を含む、4%以下など、5%以下の総アクリルアミド含有量を有する、ポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。場合により、装荷領域は3%の総ポリアクリルアミド含有量を有する。場合により、装荷媒体の積層領域は、試料が分離媒体に接触する前に、試料を濃縮するように構成されていてもよい。積層領域は、小さい孔径を有するポリマーゲルを含んでもよい。たとえば、積層領域は、5%から8%、または5%から7%を含む、5%から9%など、5%から10%の範囲の総アクリルアミド含有量を有する、ポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。場合により、積層領域は6%の総ポリアクリルアミド含有量を有する。積層領域の小さい孔径は、積層領域を通る試料の電気泳動運動を遅らせ、そうして分離媒体に接触する前に試料を濃縮してもよい。
【0049】
特定の例において、チャンバは、装荷媒体、分離媒体、および結合媒体を含む。チャンバは、上述のように、装荷媒体、分離媒体、および結合媒体が互いに流体連絡するように、装荷媒体、分離媒体、および結合媒体を含むように構成されていてもよい。たとえば、チャンバは、様々な領域を備える連続ポリマーゲルを含んでもよい。連続ポリマーゲルの各領域は、異なる物理的および/または化学的特性を有してもよい。連続ポリマーゲルは、装荷媒体を有する第一領域、分離媒体を有する第二領域、および結合媒体を有する第三領域を含んでもよい。ポリマーゲルの各領域の流路は、試料がまず装荷媒体に接触し、次に分離媒体に接触し、最後に結合媒体に接触するように、構成されていてもよい。
【0050】
特定の実施形態において、ポリマーゲルは、0.5mmから1.5mmを含む、0.2mmから2.5mmなど、0.1mmから5mmの範囲の幅を有する。場合により、ポリマーゲルは1.0mmの幅を有する。場合により、ポリマーゲルは、1mmから2mmを含む、0.5mmから3mmなど、0.5mmから5mmの範囲の長さを有する。特定の例において、ポリマーゲルは1.5mmの長さを有する。特定の実施形態において、装荷媒体を含むポリマーゲルの第一領域は、0.5mmから1.5mmを含む、0.2mmから2.5mmなど、0.1mmから5mmの範囲の幅を有する。場合により、装荷媒体を含むポリマーゲルの第一領域は0.9mmの幅を有する。場合により、装荷媒体を含むポリマーゲルの第一領域は、0.1mmから0.5mmを含む、0.1mmから1mmなど、0.1mmから2mmの範囲の長さを有する。特定の実施形態において、装荷媒体を含むポリマーゲルの第一領域は0.2mmの長さを有する。特定の例において、分離媒体を含むポリマーゲルの第二領域は、0.5mmから1.5mmを含む、0.2mmから2.5mmなど、0.1mmから5mmの範囲の幅を有する。場合により、分離媒体を含むポリマーゲルの第二領域は0.9mmの幅を有する。場合により、分離媒体を含むポリマーゲルの第二領域は、1mmから2mmを含む、0.5mmから3mmなど、0.5mmから5mmの範囲の長さを有する。特定の実施形態において、分離媒体を含むポリマーゲルの第二領域は1.3mmの長さを有する。特定の例において、結合媒体を含むポリマーゲルの第三領域は、0.05mmから0.5mmを含む、0.01mmから1mmなど、0.01mmから2mmの範囲の幅を有する。場合により、結合媒体を含むポリマーゲルの第三領域は0.1mmの幅を有する。場合により、結合媒体を含むポリマーゲルの第三領域は、1mmから2mmを含む、0.5mmから3mmなど、0.5mmから5mmの範囲の長さを有する。特定の実施形態において、結合媒体を含むポリマーゲルの第三領域は1.5mmの長さを有する。
【0051】
特定の実施形態において、マイクロ流体装置は、1cmから5mmを含む、5cmから5mmなど、10cmから1mmの範囲の幅を有する。場合により、マイクロ流体は、10cmから5mm、または1cmから5mmを含む、50cmから1mmなど、100cmから1mmの範囲の長さを有する。特定の態様において、マイクロ流体装置は、たとえば10cm以下、または5cm以下、または3cm以下、または1cm以下、または0.5cm以下、または0.25cm以下、または0.1cm以下など、50cm以下を含む、100cm以下など、1000cm以下の面積を有する。
【0052】
特定の実施形態において、マイクロ流体装置は実質的に透明である。「透明」とは、物質が、可視光線をその物質に透過させることを意味する。いくつかの実施形態において、透明なマイクロ流体装置は、たとえば蛍光標識などの検出可能標識を含む被検体など、結合媒体に結合された被検体の検出を容易にする。場合により、マイクロ流体装置は実質的に不透明である。「不透明」とは、物質が、可視光線をその物質に透過させないことを意味する。特定の例において、不透明なマイクロ流体装置は、光の存在下で反応または分解する被検体など、光に対して感受性の被検体の分析を、容易にする可能性がある。
【0053】
方法
方法の実施形態は、たとえば試料中の1つ以上の被検体の存在または不存在を判定するなど、被検体が試料中に存在するか否かを判定することを、対象にしている。方法の特定の実施形態において、試料中の1つ以上の被検体の存在は、定質的にまたは定量的に判定されてもよい。定質的判定は、試料中の被検体の存在に関して単純なイエス/ノーの結果がユーザに提供される判定を含む。定量的判定は、試料中の被検体の量に関してたとえば低、中、高などのおおまかな結果がユーザに提供される準定量的判定、および被検体の濃度の正確な測定値がユーザに提供される詳細な結果の両方を含む。
【0054】
特定の実施形態において、マイクロ流体装置は、試料中の1つ以上の被検体の存在を検出するように構成されている。対象とするマイクロ流体装置を用いて分析されてもよい試料は多様であり、単純および複合試料の両方を含む。単純試料は、対象とする被検体を含む試料であって、対象としない1つ以上の分子実体を含んでも含まなくてもよく、ここでこれら非対象分子実体の数は、たとえば10以下、5以下など、小さくてよい。単純試料は、たとえば干渉する可能性のある分子実体を試料から除去するために、何らかの方法で処理された、初期の生体またはその他の試料を含んでもよい。「複合試料」とは、対象とする被検体を含んでも含まなくてもよいが、対象としない多くの異なるタンパク質およびその他の分子も含む試料を、意味する。場合により、対象とする方法で分析された複合試料は、分子構造または物理的特性に関して(たとえば、分子量、サイズ、電荷、等電点など)互いに異なる、たとえば10以上、10以上(たとえば15,000;20,000または25,000以上)など、100以上を含む、20以上など、10以上の明確な(すなわち異なる)分子実体を含むものである。
【0055】
特定の実施形態において、対象とする試料は、尿、血液、血清、血漿、唾液、精液、前立腺液、乳頭吸引液、涙液、汗、便、口腔粘膜採取物、脳脊髄液、細胞溶解物試料、羊水、胃腸液、生検組織(たとえば、レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクション(LCM)から得られる試料)などの、ただしこれらに限定されない、生体試料である。試料は、生体試料であってもよく、またはヒト、動物、植物、菌類、酵母、細菌、組織培養、ウイルス培養、またはそれらの組合せに由来する生体試料から、DNA、RNA、タンパク質、およびペプチドを成功裏に抽出するための従来の方法を用いて、抽出されてもよい。特定の実施形態において、試料は、流体中の被検体の溶液など、流体試料である。流体は、水、緩衝液などの、ただしこれらに限定されない、水溶液であってもよい。
【0056】
上述のように、対象とする方法で分析されてもよい試料は、対象とする1つ以上の被検体を含んでもよい。検出可能な被検体の例は:たとえば二本または一本鎖DNA、二本または一本鎖RNA、DNA−RNAハイブリッド、DNAアプタマー、RNAアプタマーなどの、核酸;たとえば抗体、二重特異性抗体、Fab断片、DNAまたはRNA結合タンパク質、リン酸化タンパク質(ホスホプロテオミクス)、ペプチドアプタマー、エピトープなど、修飾があるかまたはない、タンパク質およびペプチド;阻害物質、活性物質、リガンドなどの、小分子;オリゴまたは多糖;それらの混合物;などを含むが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態において、対象とする被検体は、対象とする被検体の存在がその後検出され得るように、同定されることが可能である。被検体は、本明細書に記載される方法のいずれによって同定されてもよい。たとえば、被検体は、検出可能標識を含んでもよい。検出可能標識は、蛍光標識、比色標識、化学発光標識、酵素結合試薬、マルチカラー試薬、アビジン−ストレプトアビジン会合検出試薬、不可視検出可能標識(たとえば、放射標識、金粒子、磁気標識、電気読み取り値、密度シグナルなど)などを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態において、検出可能標識は蛍光標識である。蛍光標識は、蛍光検出器によって検出可能な、標識部分である。たとえば、対象とする被検体への蛍光標識の結合は、対象とする被検体が蛍光検出器によって検出されることを可能にし得る。蛍光標識の例は、試薬と接触すると蛍光を発する蛍光分子、電磁放射線(たとえば、紫外線、可視光線、X線など)で照射されたときに蛍光を発する蛍光分子、などを含むが、これらに限定されない。
【0058】
適切な蛍光分子(蛍光体)は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、カルボキシフルオレセインのスクシンイミジルエステル、フルオレセインのスクシンイミジルエステル、フルオロセインジクロロトリアジンの5−異性体、ケージドカルボキシフルオレセイン−アラニン−カルボキシアミド、オレゴングリーン488、オレゴングリーン514;ルシファーイエロー、アクリジンオレンジ、ローダミン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、ヨウ化プロピジウム、JC−1(5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンゾイミダゾイルカルボシアニンヨウ化物)、テトラブロモローダミン123、ローダミン6G、TMRM(テトラメチルローダミンメチルエステル)、TMRE(テトラメチルローダミンエチルエステル)、テトラメチルロサミン、ローダミンBおよび4−ジメチルアミノテトラメチルロサミン、緑色蛍光タンパク質、青色偏移緑色蛍光タンパク質、シアン偏移緑色蛍光タンパク質、赤色偏移緑色蛍光タンパク質、黄色偏移緑色蛍光タンパク質、4−アセトアミド−4’−イソチオシアネートスチルベン−2,2’ジスルホン酸;アクリジン、アクリジンイソチオシアネートなどのアクリジンおよび誘導体;5−(2’−アミノエチル)アミノナフタリン−1−スルホン酸(EDANS);4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフト−アリミド−3,5ジスルホン酸塩;N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミド;アントラニルアミド;4,4−ジフルオロ−5−(2−チエニル)−4−ボラ−3a,4aジアザ−5−インダセン−3−プロピオニ−c酸BODIPY;カスケードブルー;ブリリアントイエロー;クマリンおよび誘導体:クマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC,クマリン120)、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン(クマリン151);シアニン染料;シアノシン;4’,6−ジアミニジノ−2−フェニルインドール(DAPI);5’,5”−ジブロモピロガロール−スルホナフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナトフェニル)−4−メチルクマリン;ジエチレントリアミンペンタアセテート;4,4’−ジイソチオシアナートジヒドロ−スチルベン−2−,2’−ジスルホン酸;4,4’−ジイソチオシアナートスチルベン−2,2’−ジスルホン酸;5−(ジメチルアミノ]ナフタリン−1−スルホニルクロリド(DNS,ダンシルクロリド);4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−イソチオシアネート(DABITC);エオシンおよび誘導体:エオシン、エオシンイソチオシアネート、エリスロシンおよび誘導体:エリスロシンB、エリスロシン、イソチオシアネート;エチジウム;フルオレセインおよび誘導体:5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノ− −フルオレセイン(DTAF)、2’,7’ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、QFITC、(XRITC);フルオレスカミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4−メチルウンベリ−フェロネオルト(feroneortho)クレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローザニリン;フェノールレッド;B−フィコエリトリン;o−フタルジアルデヒド;ピレンおよび誘導体:ピレン、ピレン酪酸、スクシンイミジル1−ピレン;ブチラート量子ドット;リアクティブレッド4(チバクロン(商標)ブリリアントレッド3B−A)ローダミンおよび誘導体:6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリドローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド);N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルホダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;5−(2’−アミノエチル)アミノナフタリン−1−スルホン酸(EDANS)、4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、ロゾール酸;CAL Fluor Orange 560;テルビウムキレート誘導体;Cy3;Cy5;Cy5.5;Cy7;IRD700;IRD800;ラヨラブルー;フタロシアニン;およびナフタロシアニン、クマリンおよび関連染料、キサンテン染料、たとえばロドール、レソルフィン、ビマン、アクリジン、イソインドール、ダンシル染料、アミノフタルヒドラジド、たとえばルミノール、およびイソルミノール誘導体、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノン、蛍光ユーロピウムおよびテルビウム錯体;これらの組合せなど、を含むが、これらに限定されない。適切な蛍光タンパク質および発色性タンパク質は、オワンクラゲに由来するGFPまたはその誘導体、たとえば増強GFPなどの「ヒト化」誘導体;ウミシイタケ、レニラムレリ、チロサルクスゲルニなど、別の種からのGFP;「ヒト化」組み換えGFP(hrGFP);花虫類種からの様々な蛍光および着色タンパク質のいずれか;それらの組合せ;などを含むがこれらに限定されない、緑色蛍光タンパク質(GFP)を含むが、これらに限定されない。
【0059】
特定の実施形態において、方法は、マイクロ流体装置内に流体試料を導入することを含む。マイクロ流体装置内への流体試料の導入は、分離試料を生成するために分離媒体を通じて試料を配向することを含んでもよい。場合により、分離試料は、上述のように、試料が分離媒体を横断する際に、ゲル電気泳動によって生成される。分離試料は、被検体の明確で検出可能なバンドを含んでもよく、ここで各バンドは、実行されるゲル電気泳動のタイプに応じて、分子量、サイズ、電荷(たとえば電荷質量比)、等電点など、実質的に類似の特性を有する1つ以上の被検体を含む。
【0060】
方法の態様は、分離試料を結合媒体に移送することも含む。分離試料中の被検体の特異的バンドは、選択的に結合媒体に移送されてもよい。場合により、方法は、結合媒体内で対象とする被検体を結合メンバーと接触させることを含む。結合メンバーは、被検体に特異的に結合してもよく、こうして被検体を結合媒体内に保持する。対象としない部分は、結合媒体内の結合メンバーによって特異的に結合されない。
【0061】
特定の実施形態において、方法は、結合媒体に結合された被検体を検出することを含む。対象とする被検体の、結合媒体内の結合メンバーとの検出可能な結合は、試料中の対象とする被検体の存在を示す。結合媒体を横断し、結合媒体内の結合メンバーと結合しない、対象としない部分は、洗い流されるか、または、紫外分光計、赤外分光計、質量分析計、HPLC、親和性アッセイ装置などの、ただしこれらに限定されない、二次分析装置へ移送されてもよい。
【0062】
特定の実施形態において、方法は、分離試料から結合メンバーを移送することを含む。結合メンバーは、結合媒体から、分離試料中の被検体の特異的バンドへ移送されてもよい。場合により、方法は、分離試料中の対象とする被検体に結合メンバーを接触させることを含む。場合により、方法は、分離試料を分離媒体と安定的に会合させることを含む。たとえば、方法は、分離試料を分離媒体に結合させることを含んでもよい。分離試料は、分離試料を化学試薬に接触させること、分離試料を分離媒体に架橋させること、などによって、分離媒体に化学的または物理的に結合されてもよい。結合メンバーは、対象とする被検体に特異的に結合され、こうして、結合された結合メンバーがその後検出され得る分離媒体中に、結合メンバーを保持する。分離試料中の被検体に特異的に結合されない結合メンバーは、分離媒体を通じて移送されてもよい。
【0063】
場合により、対象としない部分への結合メンバーの非特異的結合による偽陽性シグナルは、最小化される。たとえば、対象としない別の部分への結合メンバーの非特異的結合は最小化されてもよく、対象としない部分は検出されない。対象としない部分は、結合メンバーと結合することなく、結合媒体を横断する。このため、結合メンバーは、対象とする被検体にのみ、特異的に結合してもよい。対象とする被検体のみへの結合メンバーの特異的結合は、複合試料中の対象とする被検体の特異的検出を容易にし得る。
【0064】
特定の実施形態において、方法は、分離媒体を通じて試料を配向する前に、試料を濃縮、希釈、または緩衝液交換することを含む。試料の濃縮は、試料を分離媒体に接触させる前に、試料を濃縮媒体に接触させることを含んでもよい。上述のように、濃縮媒体は、小孔径ポリマーゲル、膜(たとえばサイズ排除膜)、それらの組合せ、などを含んでもよい。試料が分離媒体を横断する際に、被検体の各分離されたバンドはあまり拡散しないので、試料を分離媒体に接触させる前の試料の濃縮は、分離試料中の被検体のバンド間の溶解の増加を促進し得る。試料の希釈は、試料を分離媒体に接触させる前に、試料を追加緩衝液に接触させることを含んでもよい。試料の緩衝液交換は、試料を分離媒体に接触させる前に、試料を緩衝液交換媒体に接触させることを含んでもよい。緩衝液交換媒体は、試料緩衝液とは異なる緩衝液を含んでもよい。緩衝液交換媒体は、分子篩、多孔性樹脂などを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0065】
特定の実施形態において、方法は、結合媒体中の結合メンバーによって結合されない部分を、結合媒体から離れる方へ移送することを含む。非結合部分は、結合媒体の標識流路と流体連絡している移送流路に向けて配向されてもよい。場合により、方法は、非結合部分を排液リザーバに移送することを含む。別の場合には、方法は、たとえば紫外分光計、赤外分光計、質量分析計、HPLC、親和性アッセイ装置などの、ただしこれらに限定されない、二次分析装置を用いた二次分析のため、非結合部分を結合媒体の下流に配向することを含む。
【0066】
方法の実施形態はまた、結合媒体に結合された被検体を解放することも含んでもよい。解放は、結合された被検体を解放剤に接触させることを含んでもよい。解放剤は、被検体と結合メンバーとの間の結合相互作用を阻害するように構成されていてもよい。場合により、解放剤は、被検体と結合メンバーとの間の結合相互作用を阻害して、結合メンバーに被検体を解放させる、試薬、緩衝液などである。被検体を結合メンバーから解放した後、方法は、被検体を結合媒体から離れる方へ移相することを含んでもよい。たとえば、方法は、たとえば紫外分光計、赤外分光計、質量分析計、HPLC、親和性アッセイ装置などの、ただしこれらに限定されない、二次分析装置を用いた二次分析のため、解放された被検体を結合媒体の下流に配向することを含んでもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、方法は、試料中の被検体のユニプレックス分析を含む。「ユニプレックス分析」とは、試料中の1つの被検体の存在を検出するために、試料が分析されることを意味する。たとえば、試料は、対象とする被検体、および対象とされないその他の分子実体の混合物を含んでもよい。場合により、方法は、試料混合物中の対象とする被検体の存在を判定するために、試料のユニプレックス分析を含む。
【0068】
特定の実施形態は、試料中の2つ以上の被検体の多重分析を含む。「多重分析」とは、2つ以上の被検体が互いに異なる、2つ以上の明確な被検体の存在が判定されることを、意味する。たとえば、被検体は、分子量、サイズ、電荷(たとえば電荷質量比)、等電点などの、検出可能な違いを含んでもよい。場合により、被検体の数は、100以上を含む、たとえば50以上など、最大20以上まで、4以上、6以上、8以上の明確な被検体など、2より大きい。特定の実施形態において、方法は、4から20の明確な被検体を含む、4から50の明確な被検体など、2から100の明確な被検体の多重分析を含む。
【0069】
図8は、試料中の複数の被検体の多重分析向けに構成された、マイクロ流体装置800の図を示す。マイクロ流体装置800は、分離チャネル830内の分離媒体810、および対応する個別の結合チャネル840内の複数の結合媒体820を含む。分離媒体810は、複数の結合媒体820と流体連絡している。各結合媒体は異なる結合メンバーを含んでもよい。たとえば、各結合媒体は、対象とする異なる被検体に特異的に結合される、異なる結合メンバーを含んでもよい。分離媒体によって分離された被検体は、結合媒体820に選択的に移送されてもよい。結合媒体820のうちの1つとの被検体の検出可能な結合は、試料中のその特定の被検体の存在を示す。各々が異なる結合メンバーに結合される、複数の結合媒体820を含むことで、単一のアッセイにおける対象とする複数の異なる被検体の検出を、容易にし得る。
【0070】
図17は、試料中の複数の被検体の多重分析向けに構成された、マイクロ流体装置1700の図が重ねられた画像を示す。「i」は、分離ステップ(1)および移送ステップ(2)のための電流の流れる方向を示す。マイクロ流体装置1700は、分離媒体1701、第一結合媒体1702、および第二結合媒体1703を収容するチャンバを含む。分離媒体1701は第一結合媒体1702と流体連絡しており、これは第二結合媒体1703と流体連絡している。各結合媒体は異なる結合メンバーを含んでもよい。たとえば、第一結合媒体1702は、対象とする第一被検体1705を特異的に結合する第一結合メンバー1704を含んでもよく、第二結合媒体1703は、対象とする第二被検体1707を特異的に結合する第二結合メンバー1706を含んでもよい。試料中の被検体は、まず、分離媒体を通じて試料を配向することによって分離される(図17、ステップ(1))。分離媒体によって分離された被検体は、それぞれ第一および第二結合媒体1702および1703に、移送されてもよい(図17、ステップ(2))。第一結合媒体1702中の第一結合メンバー1704との対象とする第一被検体1705の検出可能な結合は、試料中の対象とする第一被検体1705の存在を示す(図17、ステップ(3))。第二結合媒体1703中の第二結合メンバー1706との対象とする第二被検体1707の検出可能な結合は、試料中の対象とする第二被検体1707の存在を示す(図17、ステップ(3))。各々が異なる結合メンバーに結合される、複数の結合媒体を含むことで、単一のアッセイにおける対象とする複数の異なる被検体の検出を、容易にし得る。
【0071】
特定の実施形態において、方法は自動化された方法である。したがって、方法は、試料をマイクロ流体装置内に導入した後、マイクロ流体装置およびシステムとの最小限のユーザインタラクションを含んでもよい。たとえば、分離試料を生成するために分離媒体を通るように試料を配向するステップ、および分離試料を結合媒体に移送するステップは、ユーザがこれらのステップを手動で実行する必要がないように、マイクロ流体装置およびシステムによって実行されてもよい。場合により、自動化された方法は、総アッセイ時間の短縮を容易にする可能性がある。たとえば、試料中の被検体の分離および検出を含む、方法の実施形態は、15分以下、または10分以下、または5分以下、または2分以下、または1分以下を含む、20分以下など、30分以下の時間で実行されてもよい。
【0072】
図1Aは、従来の免疫ブロット法手順の図を示す。まず、試料中の様々な被検体が、電気泳動によって分離される。次に、分離された被検体は膜に向けて移送される。ブロッキングおよび洗浄に続いて、被検体は、特定の標的被検体に特異的に結合する抗体を用いてプローブされる。
【0073】
図1Bは、試料中の被検体の存在を検出する方法の実施形態の図を示す。方法は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、続いて分離後試料移送、最後に膜ベースの親和性ブロット法を、含む。被検体は、PAGE分離媒体から連続結合媒体(たとえばブロット用ゲル)に電気運動的に移送され、特異的親和性相互作用によってin−situ同定される。ステップ1において、試料中の様々な被検体が、分離媒体5を通る電気泳動によって分離される。分離媒体は、第一方向軸を備える分離流路を有する。電場は、分離媒体5を通じて試料を配向するために、第一方向軸に沿って印加される。分離された被検体が、結合媒体4と流体連絡している分離媒体5内の領域に到達すると、分離された被検体を結合媒体の方へ配向するために第二方向軸に沿って電場を印加することによって、特異的な被検体は、結合媒体に向けて選択的に移送されることが可能である(図1B、ステップ2参照)。結合媒体4は、担体に結合された結合メンバー7を含む。たとえば、結合媒体4を形成するために、ストレプトアビジンアクリルアミド、およびビオチン標識された抗体が、投影リソグラフィ(330〜375nm、4分間)によって、ポリアクリルアミドゲル内で共重合された。特定の例において、結合メンバーは、特定の標的被検体6に特異的な抗体である。標的被検体6が存在する場合、標的被検体6は、結合メンバー7に結合することによって結合媒体4内に保持され、検出可能シグナルを生成する(図1B、ステップ3参照)。標的被検体が存在しない場合、結合メンバーに結合が生じることはなく、このため検出可能シグナルは生成されない。標的被検体以外の被検体が存在する場合には、これらは結合メンバーと結合することはなく、結合メンバーと結合せずに結合媒体を通過する。このため、検出可能シグナルは生成されない。
【0074】
互いに流体連絡しているマイクロ流体チャネルを含むマイクロ流体装置700の実施形態について、図7Bは、試料中の被検体の分離、移送、および検出の図を示す。図7Bのパネル(1)は、結合チャネル721と流体連絡している分離チャネル720の下流末端を示す。分離チャネル720は分離媒体722を含み、結合チャネル721は結合媒体723を含む。結合媒体723は、結合媒体723に結合された結合メンバー724を含む。電気泳動分離(図7B、パネル(1))の後、被検体725、726、および727は、選択的に電気泳動的に、結合媒体723に移送され、結合媒体723を通じて搬送されてよい(図7B、パネル(2))。結合メンバー724は、対象とする被検体727と特異的に結合し、こうして結合媒体723内の対象とする被検体727を保持する(図7B、パネル(3))。対象とする被検体727は、蛍光標識などの検出可能標識を含んでもよく、こうして結合媒体723に結合された対象とする被検体727は検出されてもよい。非結合の被検体726は、結合メンバー724によって特異的に結合されず、結合媒体723を通過して移送チャネル728内に入り、そこで非結合の被検体726は、必要に応じて排液リザーバまたは下流の二次分析装置へ配向されてもよい。結合媒体723に移送されない、分離された被検体725は、分離チャネル720内に残り、必要に応じて排液リザーバまたは下流の二次分析装置へ配向されてもよい。
【0075】
システム
特定の実施形態の態様は、試料中の被検体を検出するシステムを含む。場合により、システムは、本明細書に記載されるようなマイクロ流体装置を含む。システムはまた、検出器も含んでもよい。場合により、検出器は、検出可能標識を検出するように構成された検出器である。上述のように、検出可能標識は蛍光標識であってもよい。たとえば、蛍光標識は、蛍光標識を励起して蛍光標識に検出可能な電磁放射線(たとえば、可視光線など)を放出させる、電磁放射線(たとえば、可視、紫外、X線など)に接触することが可能である。放出された電磁放射線は、結合メンバーに結合された被検体の存在を判定するために、適切な検出器を用いて検出されてもよい。
【0076】
場合により、検出器は、上述のように、蛍光標識からの放射を検出するように構成されていてもよい。特定の場合、検出器は、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子(CCD)、強化電荷結合素子(ICCD)、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサー、視感色彩読み取り、フォトダイオード、等を含む。
【0077】
本開示のシステムは、必要に応じて、様々なその他の要素を含んでもよい。たとえば、システムは、マイクロ流体処理素子などの、流体処理素子を含んでもよい。流体処理素子は、マイクロ流体装置を通じて1つ以上の流体を配向するように構成されていてもよい。場合により、流体処理素子は、試料溶液、緩衝液(たとえば解放緩衝液、洗浄緩衝液、電気泳動緩衝液など)などの、ただしこれらに限定されない流体を、配向するように構成されている。特定の実施形態において、マイクロ流体処理素子は、流体が分離媒体に接触するように、マイクロ流体装置の分離媒体に流体を送達するように構成されている。流体処理素子は、マイクロ流体ポンプを含んでもよい。場合により、マイクロ流体ポンプは、本明細書に開示されるマイクロ流体装置およびシステムを通る流体の、圧力駆動によるマイクロ流体処理および経路決定のために構成されている。特定の例において、マイクロ流体処理素子は、たとえば50μL以下、または25μL以下、または10μL以下、または5μL以下、または1μL以下など、100μL以下を含む、500μL以下など、1mL以下など、少量の流体を送達するように構成されている。
【0078】
特定の実施形態において、システムは1つ以上の電場発生器を含む。電場発生器は、マイクロ流体装置の様々な領域に、電場を印加するように構成されていてもよい。システムは、試料がマイクロ流体装置を通じて電気運動的に搬送されるように、電場を印加するように構成されていてもよい。たとえば、電場発生器は、分離媒体に電場を印加するように構成されていてもよい。場合により、印加された電場は、分離媒体の分離流路の方向軸に揃えられてもよい。したがって、印加された電場は、分離媒体を通じて、試料中の被検体および部分を電気運動的に搬送するように、構成されていてもよい。特定の実施形態において、システムは、試料中の被検体および/または部分が分離媒体から結合媒体へ電気運動的に搬送されるように、電場を印加するように構成された電場発生器を含む。たとえば、印加された電場は、結合媒体の標識流路の方向軸に揃えられてもよい。場合により、印加された電場は、分離媒体によって分離された、選択された被検体を、電気運動的に搬送するように、構成されている。分離媒体によって分離された、選択された被検体は、結合媒体の標識流路の方向軸に沿って適切な電場を印加することによって、結合媒体まで搬送されてもよい。場合により、電場発生器は、200V/cmから600V/cmを含む、100V/cmから800V/cmなど、10V/cmから1000V/cmの範囲の強度を有する電場を印加するように、構成されている。
【0079】
特定の実施形態において、電場発生器は電圧整形素子を含む。場合により、電圧整形素子は、印加された電場強度が分離媒体および/または結合媒体にわたって実質的に均一となるように、印加された電場の強度を制御するように構成されている。電圧整形素子は、試料中の被検体の分解能の向上を容易にし得る。たとえば、電圧整形素子は、分離媒体を通る試料の不均一な運動の減少を容易にする可能性がある。これに加えて、電圧整形素子は、被検体が分離媒体を横断する際に、被検体のバンドの分散の最小化を容易にする可能性がある。
【0080】
特定の実施形態において、対象のシステムは、バイオチップ(たとえばバイオセンサーチップ)である。「バイオチップ」または「バイオセンサーチップ」とは、基板表面上に2つ以上の明確なマイクロ流体装置を表示する基板表面を含む、マイクロ流体システムを意味する。特定の実施形態において、マイクロ流体システムは、マイクロ流体装置のアレイを備える基板表面を含む。
【0081】
「アレイ」は、たとえば空間的にアドレス可能な領域など、アドレス可能領域のいかなる二次元的または実質的に二次元的(ならびに三次元的)配置も含む。アレイは、アレイ上の特定の所定箇所(たとえば「アドレス」)に位置する複数の装置を含むときに、「アドレス可能」である。アレイの特徴(たとえば、装置)は、空間に介入することによって分離されてもよい。任意の基板は、基板の前面上に設けられた1つ、2つ、4つ、またはそれ以上のアレイを担持してもよい。使用法に応じて、いずれかまたはすべてのアレイが互いに同じまたは異なってもよく、各々が複数の明確なマイクロ流体装置を収容してもよい。アレイは、2つ以上、4つ以上、8つ以上、10以上、50以上、または100以上を含む、1つ以上のマイクロ流体装置を収容してもよい。特定の実施形態において、マイクロ流体装置は、10mm未満、またはそれよりさらに小さいなど、50mm未満、20mm未満を含む、たとえば1cm未満など、10cm未満または5cm未満の面積を有するアレイの中に、配置されることが可能である。たとえば、マイクロ流体装置は、たとえば1mm×1mm以下、たとえば25mm×25mm以下、または10mm×10mm以下、または5mm×5mm以下、50mm×50mm以下など、100mm×100mm以下の寸法を含む、10mm×10mmから200mm×200mmの範囲の寸法を有してもよい。
【0082】
マイクロ流体装置のアレイは、試料の多重分析向けに配置されてもよい。たとえば、複数のマイクロ流体装置は、一連のマイクロ流体装置内でいくつかの異なる被検体の存在について試料が分析されるように、直列に配置されてもよい。特定の実施形態において、複数のマイクロ流体装置は、2つ以上の試料が実質的に同時に分析されるように、並列に配置されてもよい。
【0083】
システムの態様は、マイクロ流体装置が、まだ検出可能な結果を生成しながら最小量の試料を消費するように構成されてもよいことを、含む。たとえば、システムは、まだ検出可能な結果を生成しながら、たとえば5μL以下、2μL以下、または1μL以下など、50μL以下、または25μL以下、または10μL以下を含む、75μL以下など、100μL以下の試料体積を使用するように、構成されていてもよい。特定の実施形態において、システムは、50fM以下、または25fM以下、または10fM以下を含む、100fM以下など、たとえば1pM以下、または500fM以下、または250fM以下など、100pM以下を含む、500pM以下など、1nM以下の検出感度を有するように構成されている。場合により、システムは、1pg/mL以下を含む、1ng/mL以下、または0.1ng/mL以下、または0.01ng/mL以下など、たとえば10mg/mL以下、または5ng/mL以下など、100ng/mL以下を含む、500ng/mL以下など、1μg/mL以下の濃度の被検体を検出することができるように、構成されている。特定の実施形態において、システムは、10−12Mから10−6Mを含む、10−15Mから10−3Mなど、10−18Mから10Mのダイナミックレンジを有する。
【0084】
特定の実施形態において、マイクロ流体装置は、10℃から50℃、または20℃から40℃を含む、5℃から75℃など、1℃から100℃の温度範囲で動作する。場合により、マイクロ流体装置は、35℃から40℃の温度範囲で動作する。
【0085】
実用性
対象の装置、システム、および方法は、試料中の1つ以上の被検体の存在または不存在、および/または定量化の判定が望まれる、様々な異なる用途における利用を見出す。特定の実施形態において、方法は、試料中の核酸、タンパク質、またはその他の生体分子の検出を対象としている。方法は、試料中の、たとえば2つ以上の明確なタンパク質バイオマーカーなど、一組のバイオマーカーの検出を、含んでもよい。たとえば、方法は、たとえば被験者の病状の診断において、被験者の病状の現在進行している管理または治療などにおいて、採用されるような、生体試料中の2つ以上の疾患バイオマーカーの迅速な臨床検出において、使用されてもよい。これに加えて、対象の装置、システム、および方法は、ウェスタンブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法、イースタン、ファーウェスタンブロット法、サウスウェスタンブロット法など、ただしこれらに限定されない、試料中の被検体の検出のためのプロトコルにおける利用を見出してもよい。
【0086】
特定の実施形態において、対象の装置、システム、および方法は、バイオマーカーの検出における利用を見出す。場合により、対象の装置、システム、および方法は、特定のバイオマーカーの存在または不存在、ならびに、尿、血液、血清、血漿、唾液、精液、前立腺液、乳頭吸引液、涙液、汗、便、口腔粘膜採取物、脳脊髄液、細胞溶解物試料、羊水、胃腸液、生検組織(たとえば、レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクション(LCM)から得られる試料)などの、ただしこれらに限定されない、血液、血漿、血清、またはその他の体液または排泄物中の特定のバイオマーカーの濃度の増加または減少を、検出するために使用されてもよい。
【0087】
バイオマーカーの存在または不存在、あるいはバイオマーカーの濃度の著しい変化は、疾患リスク、個人における疾患の存在を診断するために、または個人における疾患の治療を調整するために、使用されることが可能である。たとえば、特定のバイオマーカーまたはバイオマーカーのパネルの存在は、個人に対して与えられる薬物治療または投与計画の選択に影響を及ぼす可能性がある。可能性のある薬物療法の評価において、バイオマーカーは、生存または不可逆的罹患などの自然なエンドポイントの代用として、使用されてもよい。治療がバイオマーカーを変化させる場合、これは改善された健康に直接的な関連を有するが、バイオマーカーは、特定の治療または投与計画の臨床的利点を評価するための、代用エンドポイントの役割を果たすことができる。このため、個人において検出された特定のバイオマーカーまたはバイオマーカーのパネルに基づいてカスタマイズされた診断および治療は、対象の装置、システム、および方法によって容易になる。さらに、疾患に関連づけられたバイオマーカーの早期検出は、上述のように、対象の装置およびシステムの高い感度によって、容易になる。感度、拡張性、および使いやすさと相まって、単一チップ上の複数のバイオマーカーを検出する能力により、現在開示されているマイクロ流体装置、システム、および方法は、携帯型の、およびポイントオブケアまたはベッドサイド分子診断学における利用を見出す。
【0088】
特定の実施形態において、対象の装置、システム、および方法は、疾患または病態のためのバイオマーカーの検出における利用を見出す。場合により、疾患は、癌、腫瘍、乳頭腫、肉腫、または癌腫などの、ただしこれらに限定されない、細胞増殖疾患である。特定の例において、対象の装置、システム、および方法は、創薬およびワクチン開発のための、細胞シグナリング経路および細胞内情報伝達の特徴付けのための、バイオマーカーの検出における利用を見出す。たとえば、対象の装置、システム、および方法は、癌、腫瘍、乳頭腫、肉腫、または癌腫などの、細胞増殖疾患などの疾患の存在の検出における利用を見出す。特定の例において、癌または細胞増殖疾患の指示薬を検出するための、対象とする特定のバイオマーカーは、以下を含むが、これらに限定されない:前立腺癌バイオマーカーである、前立腺特異抗原(PSA);炎症の指示薬である、C反応性タンパク質;細胞周期およびアポトーシス制御を促進する、P53などの転写因子;光線性角化症および鱗状細胞癌腫の指示薬である、ポリアミン濃度;増殖成長相にある細胞の核内に発現する細胞周期関連タンパク質である、増殖性細胞核抗原(PCNA);IGF−Iなどの増殖因子;IGFBP−3などの増殖因子結合タンパク質;遺伝子発現を調節する、長さ約21〜23ヌクレオチドの一本鎖RNA分子である、マイクロRNA;膵臓および結腸癌バイオマーカーである、炭水化物抗原CA19.9;サイクリン依存性キナーゼ;上皮増殖因子(EGF);血管内皮増殖因子(VEGF);タンパク質チロシンキナーゼ;エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)の過剰発現;など。たとえば、対象の装置、システム、および方法は、罹患、健康、および良性試料中の、内因性前立腺特異抗原(PSA)の量を検出および/または定量化するために、使用されてもよい。
【0089】
特定の実施形態において、対象の装置、システム、および方法は、感染症または病態のバイオマーカーの検出における利用を見出す。場合により、バイオマーカーは、タンパク質、核酸、炭水化物、小分子などの、ただしこれらに限定されない、分子バイオマーカーであってもよい。たとえば、対象の装置、システム、および方法は、HIVカプシドタンパク質p24、糖タンパク質120および41、CD4+細胞などの抗体でセンサー表面を官能化することによって、HIV/AIDS診断および/または治療監視のためのHIVウイルス量および患者のCD4値を監視するために、使用されてもよい。対象の装置、システム、および方法によって検出されてもよい特定の疾患および病態は、細菌感染、ウイルス感染、遺伝子発現の増加または減少、染色体異常(たとえば欠失または挿入)などを含むが、これらに限定されない。たとえば、対象の装置、システム、および方法は、無菌性髄膜炎、ボツリヌス中毒症、コレラ、大腸菌感染症、手足口病、ヘリコバクター感染症、出血性結膜炎、ヘルパンギーナ、心筋炎、パラチフス、ポリオ、細菌性赤痢、腸チフス、ブリオ敗血症、ウイルス性下痢などの、ただしこれらに限定されない、胃腸感染症を検出するために使用されることが可能である。これに加えて、対象の装置、システム、および方法は、アデノウイルス感染症、非定型肺炎、トリインフルエンザ、ブタインフルエンザ、腺ペスト、ジフテリア、インフルエンザ、はしか、髄膜炎菌性髄膜炎、流行性耳下腺炎、パラインフルエンザ、百日咳(すなわち、百日咳(whooping chough))、肺炎、肺ペスト、呼吸合包体ウイルス感染症、風疹、紅熱、敗血症性ペスト、重症急性呼吸器症候群(SARS)、結核などの、ただしこれらに限定されない、呼吸器感染症を検出するために使用されることが可能である。これに加えて、対象の装置、システム、および方法は、クロイツフェルト・ヤコブ病、ウシ海綿状脳症(すなわち、狂牛病)、パーキンソン病、アルツハイマー病、狂犬病などの、ただしこれらに限定されない、神経疾患を検出するために使用されることが可能である。これに加えて、対象の装置、システム、および方法は、AIDS、軟性下疳、クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、陰部ヘルペス、淋病、鼠径リンパ肉芽腫、非淋菌性尿道炎、梅毒などの、ただしこれらに限定されない、泌尿生殖器疾患を検出するために使用されることが可能である。これに加えて、対象の装置、システム、および方法は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎などの、ただしこれらに限定されない、ウイルス性肝炎疾患を検出するために使用されることが可能である。これに加えて、対象の装置、システム、および方法は、エボラ出血熱、腎症候性出血熱(HFRS)、ラッサ出血熱、マールブルグ出血熱などの、ただしこれらに限定されない、出血熱疾患を検出するために使用されることが可能である。これに加えて、対象の装置、システム、および方法は、炭疽病、トリインフルエンザ、ブルセラ症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ウシ海綿状脳症(すなわち、狂牛病)、エンテロウイルス病原性大腸菌感染症、日本脳炎、レプトスピラ症,Q熱、狂犬病、重症急性呼吸器症候群(SARS)など、ただしこれらに限定されない、動物原生感染症を検出するために使用されることが可能である。これに加えて、対象の装置、システム、および方法は、デング出血熱、日本脳炎、ダニ媒介脳炎、西ナイル熱、黄熱病などの、ただしこれらに限定されない、アルボウイルス感染症を検出するために使用されることが可能である。これに加えて、対象の装置、システム、および方法は、アシネトバクター・バウマンニ、カンジダアルビカンス、腸球菌属、肺炎桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌など、ただしこれらに限定されない、抗生物質耐性菌感染症を検出するために使用されることが可能である。これに加えて、対象の装置、システム、および方法は、ネコ引っ掻き病、発疹熱、発疹チフス、ヒトエールリッヒ症、日本紅斑熱、シラミ媒介性回帰熱、ライム病、マラリア、塹壕熱、ツツガムシ病など、ただしこれらに限定されない、節足動物媒介感染症を検出するために使用されることが可能である。同様に、対象の装置、システム、および方法は、心血管疾患、中枢神経疾患、腎不全、糖尿病、自己免疫疾患、およびその他の多くの疾患を検出するために使用されることが可能である。
【0090】
対象の装置、システム、および方法は、以下のものを含む、ただしこれらに限定されない、診断アッセイにおける利用を見出す:上述のように、バイオマーカーを検出および・または定量化すること;無症候被験者について試料が一定間隔で検査される、スクリーニングアッセイ;起こり得る疾病経過を予測するために、バイオマーカーの存在および/または量が使用される、予後アッセイ;異なる薬物治療への被験者の反応が予測され得る、層別化アッセイ;薬物治療の有効性が監視される、有効性アッセイ;など。
【0091】
対象の装置、システム、および方法はまた、検証アッセイにおける利用も見出す。たとえば、検証アッセイは、潜在疾患バイオマーカーが、多様な個々人の間にある疾患の存在または不存在の確実な指示薬であることを、検証または確認するために、使用されてもよい。対象の装置、システム、および方法の短いアッセイ時間は、最短時間内で複数の試料をスクリーニングするためのスループットの向上を、容易にする可能性がある。
【0092】
場合により、対象の装置、システム、および方法は、実施に実験室設定を必要とすることなく、使用されることが可能である。同等の分析研究実験用機器と比較して、対象の装置およびシステムは、携帯型の、手持ち式システムにおいて匹敵する分析感度を提供する。場合により、重量および運転コストは、一般的な固定型実験用機器よりも少ない。対象のシステムおよび装置は、対象とする被検体の分離、移送、標識、および検出を含む、アッセイのすべてのステップが、単一の装置によって実行されるように、単一の装置に組み込まれてもよい。たとえば、場合により、対象とする被検体の分離、移送、標識、および検出のための個別の装置は存在しない。これに加えて、対象のシステムおよび装置は、試料中の1つ以上の被検体を検出するために、医療研修を受けていない人によって、市販の家庭用検査向けの家庭内設定において、利用されることが可能である。対象のシステムおよび装置はまた、迅速な診断のための、たとえばベッドサイドなどの臨床設定において、あるいは費用またはその他の理由により固定型分析実験用機器が提供されない設定において、利用されることも可能である。
【0093】
キット
本開示の態様は付加的に、本明細書に詳細に記載されるマイクロ流体装置を有するキットを、含む。キットは、緩衝液をさらに含んでもよい。たとえば、キットは、電気泳動緩衝液、試料緩衝液などの緩衝液を含んでもよい。キットは、解放剤、変性剤、リフォールディング剤、洗剤、検出可能標識(たとえば、蛍光標識、比色標識、化学発光標識、多色試薬、酵素結合試薬、アビジン−ストレプトアビジン会合検出試薬、放射標識、金粒子、磁気標識など)などの、ただしこれらに限定されない、付加的な試薬をさらに含んでもよい。
【0094】
上記の要素に加えて、対象のキットは、対象とする方法を実現するための指示をさらに含んでもよい。これらの指示は、そのうちの1つ以上がキット内に存在し得る、様々な形態で対象のキット内に存在してもよい。これらの指示が存在してもよい1つの形態は、キットの包装内、または添付文書内の、たとえば情報が印刷されている1枚以上の紙など、適切な媒体または基板上の印刷情報としてである。別の手段は、情報が記録または格納されている、たとえばディスケット、CD、DVD、Blu−Ray、コンピュータ読み取り可能メモリなど、コンピュータ読み取り可能媒体である。存在し得るさらに別の手段は、離れた場所の情報にアクセスするためにインターネットを経由して使用され得る、ウェブサイトアドレスである。いずれの便利な手段がキット内に存在してもよい。
【0095】
上記に提供された開示から理解されるように、本発明の実施形態は、多様な用途を有する。したがって、本明細書に提示される実施例は、説明目的のために提供され、いかようにも本発明に対する限定として解釈されると意図されるものではない。当業者は、本質的に類似の結果を産み出すために変更または修正され得る、様々な重要ではないパラメータを、容易に認識し得る。このため、以下の実施例は、本発明をどのように成し遂げて使用するかの完全な開示および記載を当業者に提供するように提示されており、本発明者らが自身の発明と見なすものの範囲を限定する意図はなく、以下の実験がすべてであって実行された実験のみであることを示すように意図するものでもない。使用される数値(たとえば量、温度など)に対する精度を保証するための努力がなされてきたが、しかしいくらかの実験的誤差およびずれは考慮されるべきである。別途記載のない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはその付近である。
【0096】
実施例
材料および方法
別途記載のない限り、以下のプロトコルを使用して、マイクロ流体装置が用意されて実験が行われた。
【0097】
試薬
水溶性光開始剤2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA−086)が、Wako Chemicals(バージニア州リッチモンド)から購入された。3−(トリメトキシシリル)−プロピルメタクリレート(98%)、氷酢酸(ACSグレード)、メタノール(ACSグレード、および30%(29:1)アクリルアミド/ビス−アクリルアミドが、Sigma(ミズーリ州セントルイス)から購入された。ストレプトアビジン−アクリルアミド(SA)が、Invitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)から購入された。予備混合された10×トリスグリシンネイティブ電気泳動緩衝液(25mMトリス、pH8.3、192mMグリシン)が、Bio−Rad(カリフォルニア州ハーキュリーズ)から購入された。Alexa Fluor 488で共役されたウシ血清アルブミン(BSA)およびFITC−ビオチンが、それぞれ陰性および陽性対照として使用された(ミズーリ州セントルイス、Sigma Aldrich)。α−アクチニンおよびビオチンで共役された抗アクチニンが、Cytoskeleton,Inc.(コロラド州デンバー)から購入された。フリーPSA(前立腺特異抗原)およびビオチン標識されたモノクローナル抗PSAが、EXBIO(チェコ共和国、プラハ)から購入された。タンパク質は、供給元(カリフォルニア州カールスバッド、Invitrogen)の指示に従って、Alexa Fluor 488タンパク質標識キットを使用して、研究室内で蛍光標識された。標識されたタンパク質は、使用されるまで暗所において4℃で保管された。
【0098】
マイクロ流体チップ製造
ガラスマイクロ流体チップは、研究室内で設計され、Caliper Life Sciences(マサチューセッツ州ホプキントン)による標準ウェット・エッチ・プロセスを用いて製造された。3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、氷酢酸、脱イオン水、およびメタノール2:3:2:3の比率の混合物を用いて、ポリアクリルアミド(PA)ゲルとの共有結合のために、表面がまず官能化された。20分間静置培養の後、メタノールは30分間マイクロ流体装置内を流され、その後乾燥窒素パージされた。
【0099】
官能化結合媒体光パターン形成
フィルムマスクおよび顕微鏡システム(IX−70、ニューヨーク州メルビル、オリンパス)と組み合わせた紫外線対物レンズ(UPLANS−APO、4倍、オリンパス)を用いたマスクベースのリソグラフィは、励起をもたらし、その結果、架橋結合および結合媒体(ストレプトアビジン−アクリルアミドを含む8%T)の形成をもたらした。ゲルマトリクスにおいて共有結合されたストレプトアビジンは、免疫ブロット法のためにビオチン標識された抗体を固定するために使用された。水銀球は、励起源(330〜375nm)として使用され、チップに対するマスクアライメントは、顕微鏡(ニューヨーク州メルビル、オリンパス)の手動調整x−y並進ステージを用いて実行された。アクリルアミドおよびビスを含む、最終的な前駆体体積は、0.2%(w/v)VA−086光開始剤を含むトリスグリシン・ネイティブ・ランニング緩衝液を用いて調整された。ゲル前駆体溶液は、実質的に気泡のない最終ゲルを確保するために、マイクロ流体装置への装荷の直前に、脱気された(撹拌とともに超音波分解されながら、真空下に5分間)。製造を開始するため、PAゲル前駆体溶液は、マイクロ流体装置内に逃がされるか、またはゆっくりと圧力装荷された(シリンジを通じて)。マイクロ流体装置が装荷された後、高粘度の5%2−ヒドロキシエチルセルロース溶液(Sigma、平均分子量〜720,000)が、ピペットによって各リザーバ上にゆっくりと導入された。冷却ファンを備えて15cm離れて位置する、フィルタを通した水銀ランプ(300〜380nm)(100W、カリフォルニア州アップランド、UVP B100−AP)へのチップの投光照明照射を用いて、より大きい孔径の試料装荷ゲルが形成された。
【0100】
装置および撮像
アッセイ操作はプログラム可能であり、白金電極を備える高圧電源(カリフォルニア州リバモア、Labsmith HVS448)を用いて制御された。試料排液リザーバで+800Vの電位を印加し、〜2分間試料リザーバを接地することによって、試料が装荷された。画像は、10倍対物レンズ(開口数0.3)、GFP検出に最適化されたフィルタキューブ、およびx−y並進ステージを備える、反転落射蛍光顕微鏡(IX−70、ニューヨーク州メルビル、オリンパス)を用いて収集された。タンパク質移動および10MHz周波数での結合を監視するために、1392×1040ペルチェ冷却インターラインCCDカメラ(CoolSNAP(商標)HQ2、ニュージャージー州トレントン、Roper Scientific)が使用された。別途記載のない限り、CCD露光時間は300ミリ秒であった。画像解析は、ImageJ(メリーランド州ベセスダ、国立衛生研究所)を使用して完成された。
【0101】
結果
図2は、分離試料を結合媒体に移送する前(図2A)および後(図2B)の、タンパク質の電気泳動図を示す。標的タンパク質(α−アクチニンおよび前立腺特異抗原、PSA)および陰性対照(BSA)のネイティブPAGE、ならびにその後の結合媒体への電気泳動移送が、実行された。分離されたタンパク質バンドは、30秒以内に85%の捕捉効率で、結合媒体に移送された。特異的標的タンパク質(最も遅いピーク、α−アクチニン)が、結合媒体に結合し、検出可能な蛍光シグナルを産み出した(図2B、挿入画、反転グレースケール)。
【0102】
図3は、陽性および陰性タンパク質対照を用いてアッセイの特異性を検査する実験の蛍光画像を示す。マイクロ流体装置の結合媒体30の蛍光画像は、図3に示されている。被検体BSA(たとえば、陰性対照)、ビオチン、α−アクチニン、およびPSAは、結合媒体担体に結合された、ストレプトアビジン、抗アクチニン、および抗PSAを備える3つの異なる結合媒体に、個別に接触した。図3は、検出可能な非対角シグナルを示しておらず、検出可能な交差反応および検出可能な非特異的吸着が存在しないことを示している。
【0103】
図4Aは、マイクロ流体装置内の抗体官能化結合媒体に結合されたタンパク質の用量反応の蛍光画像を示す。マイクロ流体装置の結合媒体40の蛍光画像は、図4に示されている。増加する濃度のBSA(たとえば、陰性対照)は、ストレプトアビジンで官能化された結合媒体と接触させられた。BSAは、まったくまたはほとんど検出可能シグナルを示さなかった。増加する濃度のα−アクチニンは、抗アクチニンで官能化された結合媒体と接触させられた。α−アクチニンは、α−アクチニンの濃度が上昇するにつれて、蛍光シグナルの増加を示した。増加する濃度のPSAは、抗PSAで機能化された結合媒体と接触させられた。PSAは、PSAの濃度が上昇するにつれて、蛍光シグナルの増加を示した。用量反応曲線の確立は、タンパク質定量化を容易にし得る。これに加えて、結合媒体上の内在性タンパク質濃縮が観察された(図4B参照)。タンパク質濃縮は、結合媒体が存在しない場合のシグナルと比較して、結合媒体上の検出感度の向上を容易にし得る。
【0104】
図5Aは、分離媒体50を含むマイクロ流体装置の図を示す。試料は、試料注入口51を通じてマイクロ流体装置内に導入されることが可能である。試料は、試料注入口51から分離媒体50に試料を配向するために電場を印加することによって、分離媒体50上に装荷されることが可能である(図5A、挿入画1参照)。試料が分離媒体50に接触させられた後、分離媒体50を通じて試料を配向するために、分離媒体50の方向軸に沿って電場が印加され得る(図5A、挿入画2参照)。試料中の被検体は、これらが分離媒体50を通じて流れる際に分離させられ、分離媒体50の遠位末端に位置する検出器52によって検出されることが、可能である。図5Bは、架橋結合されたポリアクリルアミドゲルを光パターン形成することによって用意された分離媒体を備えるマイクロ流体装置を使用した、広い分子範囲のタンパク質ラダーの高分解能電気泳動分析を示す。分離媒体は、10×10−6Lの試料体積を用いて、15秒後に試料中の異なるタンパク質の間で検出可能な分解能を、実現することができた。
【0105】
図6は、5つの低分子量タンパク質の電気泳動分離における、ポリアクリルアミドゲルの分解能の違いの例を示す。図6において、8%の総アクリルアミドを含むポリアクリルアミドゲル(たとえば小孔径ゲル)は、試料中の5つのすべてのタンパク質を20秒で検出可能に溶解することができたが(図6、上のグラフ参照)、これに対して4%の総アクリルアミドを含むポリアクリルアミドゲル(たとえば大孔径ゲル)は、試料中のタンパク質を溶解することができず、5秒で単一のピークを示しただけであった(図6、下のグラフ参照)。
【0106】
図9Aは、分離媒体920の上流に濃縮媒体910を含んでいたマイクロ流体装置900の図、および画像(挿入画)を示す。分離媒体920の上流域は、3.5%の総アクリルアミド(T)および2.2%の架橋剤(C)を含む、大孔径ゲルを含んでいた。分離媒体の大孔径領域より下流には、8%Tおよび2.2%Cを含む小孔径領域があった。図9Bは、分離媒体950の上流に濃縮媒体940を含んでいたマイクロ流体装置を通る試料930の、経時的な電気泳動運動の画像を示す。分離媒体は、分離チャネル960内に6%ポリアクリルアミドゲルを含んでいた。反転蛍光顕微鏡写真は5秒間隔で、t、t、およびt10において撮影された。蛍光顕微鏡写真は、濃縮媒体940の付近のタンパク質試料の、試料濃縮および溶出を示している。図9Bにおいて、初期濃度100nMの濃縮レポータータンパク質(たとえば、蛍光標識された抗C−RP)は、3分後に濃縮媒体(たとえば、膜)において170倍に濃縮された。濃縮された抗C−RPは、10秒後に分離チャネル内に溶出した。印加された電場は、400V/cmであった。
【0107】
図10は、第一マイクロ流体チャネル1010から第二マイクロ流体チャネル1020への電気泳動分析の後の、対象とする被検体1000の選択的な移送の画像を示す。対象とする特異的な被検体の選択的な移送は、結合媒体との接触のため、またはその後の分析のためのタンパク質採取を可能にする。図10において、対象とする被検体1000は、さらなる分析のため、第一マイクロ流体チャネル1010内の電気泳動分離から第二マイクロ流体チャネル1020へ、配向された。対象としない被検体1030は、第一マイクロ流体チャネル1010内に影響を受けないまま残った。1つのマイクロ流体チャネルから別のマイクロ流体チャネルへの対象とする被検体の選択的移送は、少量(たとえば1pL未満)の定量的操作を容易にし得る。これに加えて、特異的な溶解された被検体の物理的操作は、選択された対象とする被検体の電気泳動後の特徴付けを容易にする可能性がある。図10において、タンパク質は、第一マイクロ流体チャネル1010内で電気泳動的に分離された(たとえば、等電点電気泳動法)。第一マイクロ流体チャネル1010と第二マイクロ流体チャネル1020との交差点に位置する対象とする被検体1000を移送するために、対象とする被検体1000を第二マイクロ流体チャネル1020内に推進するため、被検体の分離に使用された初期電場に対して直交する電場が、交差点に印加された(E=395V/cm)。
【0108】
図11Aは、マイクロ流体チャネル1100内に位置する結合媒体1110の図を示す。これに加えて、結合媒体を通る電気泳動の方向を表す電場(E)が示されている。図11Bおよび図11Cは、陰性および陽性対照に曝露された結合媒体の蛍光画像を示す。200nMのIgGが、ポリアクリルアミド結合媒体(10%総アクリルアミド/2.5%架橋剤)内で共重合された。結合媒体は、ガラスマイクロチャネル内の100W、365nmのYAGレーザーからの薄い(幅75μm)レーザーシートへの20秒間の曝露によって、形成された。1:100のIgG−FITCおよび1:100のタンパク質G−FITC溶液が、結合媒体を通じて600Vで5分間電気泳動され、その後非結合タンパク質G*を洗い流すために、15分間の緩衝液が続いた。蛍光撮像は、CCD/落射蛍光顕微法によって実行された。図11Bおよび11Cに示される蛍光画像は、タンパク質G(IgG)に対する共重合抗体の蛍光標識されたタンパク質G(タンパク質G*)との特異的相互作用を、表している。図11Bは、陰性対照(たとえば、結合媒体内の共重合されていないIgG)であって、電気泳動されてきた、蛍光標識されたタンパク質Gからのごくわずかな検出可能シグナルを示していた。図11Cにおいて、結合媒体は、IgG結合タンパク質G*と共重合した。結果は、結合媒体に結合された抗体の特異性が、電気泳動による被検体移送の間も維持されることを示した。
【0109】
図12Aは、分離媒体1203および結合媒体1204を収容するチャンバ(挿入画)1202を含んでいた、マイクロ流体装置1201の明視野画像を示す。結合媒体1204は、分離媒体1203と流体連絡して標識流路(図12C、ステップ3参照)に沿って揃えられるように、設けられた。この場合、分離流路(図12C、ステップ2参照)および標識流路(図12C、ステップ3参照)は、互いに直交していた。標識媒体は、孔径が分離媒体と類似しているゲルを含んでいた。これに加えて、標識媒体は、ビオチン標識された結合メンバー(たとえば、抗体)による官能化を可能にするために、ストレプトアビジンを含んでいた。チャンバ1202は、分離媒体1203と流体連絡している装荷媒体1205も含んでいた。装荷媒体1205は、分離流路(図12C、ステップ2参照)に沿って、分離媒体1203の上流に設けられた。装荷媒体1205は、小孔径分離媒体1203(6%総アクリルアミド)より上流に、大孔径ゲル(3%総アクリルアミド)を含んでいた。図12Aのチャンバ1202はまた、チャンバ1202の各辺に沿って設けられた複数のチャネル1206とも流体連絡している。チャネル1206は、チャンバ1202内の装荷媒体1205、分離媒体1203、および結合媒体1204に、電場を配向するように構成されていてもよい。
【0110】
図12Bは、チャンバ1202、およびチャンバ1202に電場を配向するように構成されたチャネル1206の、明視野画像を示す。図12Cは、上述のようなチャンバ1202を含むマイクロ流体装置の図を示す。試料は、マイクロ流体装置内に導入されてもよい(図12C、ステップ1参照)。電場は、装荷媒体および分離媒体を通じて試料を配向するために、分離流路の方向軸に沿って印加されてもよい(図12C、ステップ2参照)。電場は、電場発生器V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、およびV8を使用して印加されてもよい。試料の電気泳動分離の後、試料中の分離された被検体は、標識流路の方向軸に沿って電場を印加することによって、選択的に結合媒体に移送されてもよい(図12C、ステップ3参照)。
【0111】
図12Dは、試料中の被検体の分離、移送、および検出の図が重ねられた画像を示す。タンパク質試料は最初に、マイクロ流体装置の大孔径装荷媒体内に電気運動的に装荷された(図12D、ステップ1参照)。タンパク質試料は、大孔径装荷媒体と小孔径分離媒体との間の界面に到達すると、濃縮された。「i」は、電流の流れる方向を示す。タンパク質は、これらが分離流路の方向軸に沿って分離媒体の底に向かって移動するにつれて、分離された(図12D、ステップ2参照)。印加された電場はその後、分離されたタンパク質を結合媒体の内部に向けて配向するために切り替えられ、これは固定化された(たとえば、架橋結合または共重合された)結合メンバーを含んでいた(図12D、ステップ3参照)。結合メンバーは、対象とする被検体1207に特異的に結合して保持するように構成されており、対象とする被検体1207が官能化された結合媒体に結合されたときに、陽性「ブロット」(たとえば、検出可能シグナル)を産み出した。対象とする被検体1207を同定するために、分子量および結合情報が判定された。
【0112】
図13は、マイクロ流体装置内のタンパク質ラダーの分離の画像およびグラフを示す。図13A〜図13Dは、マイクロ流体装置内で12%のSDS−PAGEを用いたタンパク質ラダーの電気泳動分離の反転CCD画像を示す。図13A〜図13Dの画像は、様々な時点で撮影された(たとえば、電気泳動分離の開始から11.6秒、13.2秒、22.0秒、および26.8秒後)。図13Eにおいて、タンパク質ラダーの移動性は、SDS−PAGE(3%〜8%のT)を使用するマイクロ流体装置によるタンパク質のサイズと、線形に関連していた。結果は、勾配スラブゲル(4%〜12%のT)SDS−PAGEと比較された(図13E参照)。図13Eのグラフの挿入図は、マイクロ流体装置およびスラブゲルによって分離されたタンパク質バンドを示す。図13Fは、マイクロ流体装置を使用するSDS−PAGE分離の電気泳動図を示す。移動距離は、図13DのCCD画像の縮尺とした。
【0113】
図14Aは、マイクロ流体装置を使用する、蛍光標識されたタンパク質の分離の画像を示す。蛍光標識され、ビオチン標識されたアクチン1401は、マイクロ流体装置内でSDS−PAGEを使用して、試料中の別のタンパク質から分離された。より大きいタンパク質種(たとえば、蛍光標識され、ビオチン標識されたアクチン1401)は、より小さいタンパク質種1402よりも短い距離だけ、分離媒体内を移動した。図14Bは、マイクロ流体装置における、分離媒体から結合媒体への、蛍光標識されたタンパク質の移動の画像を示す。結合媒体は、結合媒体に結合されたストレプトアビジンを含んでいた。結合媒体は、蛍光標識され、ビオチン標識されたアクチン1401が結合媒体を横断する際に、蛍光標識され、ビオチン標識されたアクチン1401と特異的に結合して、これを保持した(図14B参照)。より小さいタンパク質種1402は、結合媒体に結合することなく結合媒体を横断し、マイクロ流体装置を出た。
【0114】
図15A〜図15Dは、マイクロ流体装置についてシミュレートされた電場分布の画像を示す。図15Aおよび図15Bは、それぞれ主要チャネルおよび1つの交差チャネルを備えるマイクロ流体チャンバおよびマイクロ流体装置における、COMSOLでシミュレートされた1次元電気分布の画像を示す。図15Cおよび図15Dはそれぞれ、マイクロ流体チャンバ内の垂直および水平のCOMSOLでシミュレートされた2次元電場分布の画像を示す。COMSOLシミュレーションは、マイクロ流体チャンバ内の垂直および水平電場分布がマイクロ流体チャンバ全体で均一であることを、示していた。図15E〜図15Fは、2次元マイクロ流体チャンバ内の印加された電場の均一性を検査するマイクロ流体装置のCCD画像を示す。「i」は、印加された電場の方向を示す。マイクロ流体チャンバ内に装荷される0.1μMのフリー色素溶液の、実験CCD画像が撮影された。図15Eは、マイクロ流体チャンバ内を通る色素の電気運動が、垂直方向において実質的に均一であったことを、示している。図15Fは、マイクロ流体チャンバ内を通る色素の電気運動が、水平方向において実質的に均一であったことを、示している。COMSOLシミュレーションおよび実験データはいずれも、マイクロ流体チャンバ内の垂直および水平次元において、良好に制御された、均一な電場分布を示した。均一な電場分布は、マイクロ流体装置を通じて複数の方向に、試料および/または選択された対象とする被検体を正確に配向することを、容易にし得る。
【0115】
図16は、電圧整形を備えるおよび備えないマイクロ流体装置を通る試料1601の電気運動の画像を示す。蛍光標識された0.1μMのBSAが、マイクロ流体装置内に注入され、CCD撮像を用いて観察された。CCD画像は、垂直から水平方向への移送ステップの間の、蛍光標識された試料1601のバンド形状を、示した。試料バンド形状は、整形電圧を用いて移送した後に、著しい歪みを伴わずに、保存された。「i」は、印加された電場の方向を示す。図16(左)において、試料1601は、分離チャンバ内に侵入した後に実質的に歪みを伴わずに(図16A参照)、および第二水平次元に移送された後に実質的に歪みを伴わずに(図16B参照)、その当初の形状を維持した。図16Cおよび図16Dは、電圧整形を用いないと、試料バンド形状が、分離チャンバへの侵入後(図16C参照)、および第二水平次元への移送後に(図16D参照)、著しく変形することを示した。複数のサイドチャネル1602は、異なる試料、試薬、緩衝液、などがマイクロ流体チャンバ内に導入されることを可能にする。たとえば、付加的な試料、試薬、緩衝液などが、試料中の被検体の分離後に、その後に続くサンドイッチ抗体検出、酵素反応などのため、マイクロ流体チャンバ内に導入されてもよい。
【0116】
図18は、試料中の複数の被検体の分離、移送、および検出の画像を示す。マイクロ流体装置1800は、分離媒体(6%総アクリルアミド)1801、および2つの異なる結合媒体、すなわちPGに特異的な結合メンバーを含む第一結合媒体(6%総アクリルアミド)1802、およびCRPに特異的な結合メンバーを含む第二結合媒体(6%総アクリルアミド)1803を収容する、マイクロ流体チャンバ(1mm×1mm)を含んでいた。分離媒体および結合媒体は、ポリアクリルアミドゲルのマスクベースの紫外線リソグラフィを用いて、選択的な光パターン形成によって、形成された。選択的な光パターン形成は、マイクロ流体チャンバ内の統合媒体の形成を可能にし、ここで媒体は、被検体分離(たとえば、分離媒体)および抗体ベースの検出(たとえば、結合媒体)のための異なる物理的および機能的特性の明確な領域を含んでいた。
【0117】
図18において、標的タンパク質であるタンパク質G(PG)およびC反応性タンパク質(CRP)を含む試料は、150V/cmの電場強度を用いて分離媒体1801を通じて試料を配向することによって、電気泳動的に分離された(図18、ステップ(1))。PGおよびCRPのベースライン分離は、約20秒で完了した。分離された標的タンパク質PGおよびCRPは、横方向電場(50V/cm)を用いて結合媒体に移送された(図18、ステップ(2))。PGを含む分離試料バンドは、PGに特異的な結合メンバーを含む結合媒体に選択的に結合し(〜80%の捕捉効率)、CRPを含む分離試料バンドは、CRPに特異的な結合メンバーを含む結合媒体に選択的に結合した(〜80%の捕捉効率)(図18、ステップ(3))。分離、移送、および検出ステップは、90秒以内で実行された。低交差反応では、各被検体は、それぞれのブロット領域において固定された抗体に結合された。
【0118】
図19は、陰性対照に対する試料中の被検体の分離、移送、および検出の画像を示す。マイクロ流体装置1900は、分離媒体(6%総ポリアクリルアミド)1901、および2つの異なる結合媒体、すなわちPGに特異的な結合メンバーを含む第一結合媒体(6%総ポリアクリルアミド)1902、およびCRPに特異的な結合メンバーを含む第二結合媒体(6%総ポリアクリルアミド)1903を収容する、マイクロ流体チャンバ(1mm×1mm)を含んでいた。C反応性タンパク質(CRP)および陰性対照(ウシ血清アルブミン(BSA))を含む試料は、150V/cmの電場強度を用いて分離媒体1901を通じて試料を配向することによって、電気泳動的に分離された(図19、ステップ(1))。CRPおよびBSAのベースライン分離は、30秒で完了した。CRPおよびBSA陰性対照の分離されたバンドは、横方向電場(50V/cm)を用いて結合媒体に移送された(図19、ステップ(2))。CRPを含む分離試料バンドは、CRPに特異的な結合メンバーを含む結合媒体に選択的に結合した(図19、ステップ(2))。BSA陰性対照を含む分離試料バンドは、結合媒体に選択的に結合することも、検出可能な交差反応または非特異的吸着を示すことも、なかった(図18、ステップ(3))。分離、移送、および検出ステップは、110秒以内で実行された。
【0119】
図20は、試料中の複数の被検体の多重検出の画像を示す。以下の電気泳動分離、標的タンパク質であるタンパク質G(PG)およびC反応性タンパク質(CRP)は、抗体官能化結合媒体において、選択的に捕捉および検出された(図18参照)。標的タンパク質は、横方向電場に対する曝露(50V/cmで>110秒)の後、それぞれの結合媒体中に保持された。結果は、残った被検体が、110秒以上の印加された電場への曝露の後、結合媒体に特異的に結合されることを示した。
【0120】
図21は、抗原捕捉効率対結合媒体幅(μm)のグラフを示す。抗原捕捉効率は、ラングミュア結合キネティクスを前提として、設計および操作パラメータの関数として、モデリングされた。モデリングは、試料中の複数の被検体の多重分析向けに構成されたマイクロ流体装置のための、結合媒体の最適化(たとえば、結合媒体幅、結合メンバー密度など)を容易にし得る。
【0121】
先の実施形態は、理解しやすくする目的のため、解説および例示によってある程度詳細に記載されてきたが、本開示の教示に鑑みて、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正がなされてもよいことは、当業者にとって容易に明確である。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書において使用される専門用語が、具体的な実施形態を記載することのみを目的とし、限定するように意図するものではないこともまた、理解されるべきである。
【0122】
数値の範囲が提供される場合には、文脈が別途明確に提示しない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の十分の一までの各介在値、およびその提示された範囲の記載されたまたは介在するその他の値は、本発明に含まれると理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれてもよく、記載された範囲内のいずれか具体的な排他的限界を条件として、本発明にも含まれる。記載された範囲が1つまたは両方の限界を含む場合、それら含まれる限界のいずれかまたは両方を除く範囲もまた、本発明に含まれる。
【0123】
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許は、あたかも各刊行物または特許が、具体的かつ個別に参照によって組み込まれるように、参照によって本願に組み込まれ、刊行物の引用に関連する方法および/または材料を開示および記載するために、参照によって本願に組み込まれる。いずれの刊行物の引用も、出願日に先立つその開示に関し、先行する発明のため、本発明がこのような刊行物に先んじないという許可として解釈されるべきではない。さらに、提供された発行日は、実際の発行日とは異なる可能性があり、各々確認される必要があるだろう。
【0124】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される際に、別途明確に指示されない限り、「a」、「an」「the」などの単数形が複数形も含むことに留意されたい。特許請求の範囲が、いかなる任意の要素も排除するように記載されてよいことには、さらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲における要素の記載に関わる、「単独で(solely)」、「唯一の(only)」などのような排他的用語の使用、または「否定的な」限定の使用のための前提の役割を果たすように、意図される。
【0125】
本開示を読むと当業者にとって明確となるように、本明細書に記載および解説される個別の実施形態の各々は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、その他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されるかまたはこれと組み合わせられてもよい、個別の要素および特徴を有している。記載される方法のいずれも、記載された順番で、または論理的に可能ないずれか別の順番で、実行されることが可能である。
【0126】
したがって、上記は単に、本発明の原理を解説している。本明細書に明確に記載または図示されていないものの、当業者が、本発明の原理を実現し、その精神および範囲に含まれる、様々な構成を考案することができることは、理解される。さらに、本明細書に記載されるすべての実施例および条件的言語は主に、当該技術を拡大するために、本発明者らによって貢献された発明の原理および概念を、読者が理解するのを支援するように意図されており、このような具体的に明記された実施例および条件を限定することなく、ありのままに解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにその具体例を示す、本明細書内のすべての記述はその構造的および機能的同等物の両方を包含するように意図される。これに加えて、このような同等物は、現在周知の同等物、および将来開発される同等物、すなわちその構造にかかわらず同じ機能を実行する、今後開発されるいずれの要素も、両方とも含むものと意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に提示または記載される、例示的実施形態に限定されるようには意図されない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって実現される。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料中の被検体を検出するマイクロ流体装置であって、
第一方向軸を備える分離流路を有する分離媒体と、
第二方向軸を備える標識流路を有する結合媒体であって、前記結合媒体は前記分離媒体と流体連絡している、結合媒体と、を含み、
前記マイクロ流体装置は、2つ以上の方向的に異なる流動場に試料を曝すように構成されている、マイクロ流体装置。
【請求項2】
前記2つ以上の方向的に異なる流動場は、2つ以上の方向的に異なる電場を含む、請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項3】
前記分離媒体はポリマーゲルを含む、請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項4】
前記結合媒体は、担体と安定的に会合した結合メンバーを含む、請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項5】
前記担体は膜を含む、請求項4に記載のマイクロ流体装置。
【請求項6】
前記担体はポリマーゲルを含む、請求項4に記載のマイクロ流体装置。
【請求項7】
前記結合メンバーは、タンパク質またはその結合断片を含む、請求項4に記載のマイクロ流体装置。
【請求項8】
前記タンパク質は抗体である、請求項7に記載のマイクロ流体装置。
【請求項9】
前記被検体は蛍光標識を含む、請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項10】
前記第二方向軸は前記第一方向軸に対して直交している、請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項11】
前記マイクロ流体装置は、前記分離媒体および前記結合媒体を収容するチャンバを含む、請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項12】
流体試料中の被検体を検出する方法において、
(a)2つ以上の方向的に異なる流動場に試料を曝すように構成されているマイクロ流体装置内に前記流体試料を導入するステップであって、前記マイクロ流体装置は、
(i)第一方向軸を備える分離流路を有する分離媒体と、
(ii)第二方向軸を備える標識流路を有する結合媒体であって、前記結合媒体は前記分離媒体と流体連絡している、前記結合媒体とを含む、ステップと、
(b)分離試料を生成するために前記分離媒体を通るように前記試料を配向するステップと、
(c)前記分離試料中の前記被検体を検出するステップと、を含む方法。
【請求項13】
前記2つ以上の方向的に異なる流動場は、2つ以上の方向的に異なる電場を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は前記分離試料を前記結合媒体に移送するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、結合メンバーを前記分離試料に移送するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記試料を配向するステップに先立って、前記試料を濃縮するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は診断方法である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は検証方法である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
流体試料中の被検体を検出するシステムにおいて、
(a)2つ以上の方向的に異なる流動場に試料を曝すように構成されているマイクロ流体装置であって、
(i)第一方向軸を備える分離流路を有する分離媒体と、
(ii)第二方向軸を備える標識流路を有する結合媒体であって、前記結合媒体は前記分離媒体と流体連絡している、結合媒体と、を含むマイクロ流体装置と、
(b)検出器と、を含むシステム。
【請求項20】
前記2つ以上の方向的に異なる流動場は、2つ以上の方向的に異なる電場を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記検出器は、光電子増倍管、電荷結合素子、強化電荷結合素子、相補型金属酸化物半導体センサー、視感色彩読み取り、またはフォトダイオードである、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記マイクロ流体装置を通じて流体を配向するように構成されているマイクロ流体素子をさらに含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
(a)2つ以上の方向的に異なる流動場に試料を曝すように構成されているマイクロ流体装置であって、
(i)第一方向軸を備える分離流路を有する分離媒体と、
(ii)第二方向軸を備える標識流路を有する結合媒体であって、前記結合媒体は前記分離媒体と流体連絡している、結合媒体と、を含むマイクロ流体装置と、
(b)緩衝液と、を含むキット。
【請求項24】
前記2つ以上の方向的に異なる流動場は、2つ以上の方向的に異なる電場を含む、請求項23に記載のキット。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2012−527622(P2012−527622A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511973(P2012−511973)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035314
【国際公開番号】WO2010/135364
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California