説明

多方向入力装置

【課題】操作方向での操作力のバラツキを低減して良好な操作感触を得ることが可能となる多方向入力装置を提供すること。
【解決手段】本発明の多方向入力装置1は、環状に配設されている複数個の周縁用固定接点3と、環状に形成されているとともに、その周の内側もしくは外側へ向かって延びる凸状の被保持部4aを有して形成されており、当該周上に生じた押圧力に対して反力を生じる平板状の周縁用可動電極4と、環状に配設された周縁用固定接点3と対向させながら、周縁用固定接点3と周縁用可動電極4とを所定の空隙をもって保持する筐体2と、周縁用可動電極の上方に配設されており、周縁用可動電極4を押圧する周縁用押圧部12aを有する操作部材9とを備えている。 そして、前述した周縁用可動電極4は、被保持部4aの近傍4eに生じる反力を被保持部4aの近傍以外の部分4fに生じる反力と同程度にする反力調整部4c、4dを有するよう形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に係り、携帯電話機、携帯用音楽再生機器、ゲーム機用コントローラなどに用いられている方向キーとして、各種電子機器の方位入力操作用に使用される多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多方向入力装置は、方向キーやスティック状入力キーを押圧操作や傾倒操作することによって、上下左右などの多方向へのキー入力を行なうことが可能となっている。
【0003】
従来の多方向入力装置の一例は図18から図20に示すように形成されている。この従来の多方向入力装置100は、矩形箱状に形成された筐体101の内部に構成各部を配設し、筐体101の最頂部の開口部を蓋体112によって塞いでいる。
【0004】
構成各部を下方から上に順に、即ち筐体101、中央用固定接点102、周縁用固定接点103、可動電極板105、反転部材106、操作部材107の順に説明する。
【0005】
筐体101のほぼ矩形の凹部には周方向に部分的に4分割されて形成された円環状のガイド壁101bが立設されている。
【0006】
筐体101のガイド壁101bの内側の円形の底面の中心位置には、円形の中央用固定接点102が表面を露出するようにして筐体101に一体成形されている。また、筐体101のガイド壁101bより外側の凹部の底面には、4個の矩形の周縁用固定接点103が表面を露出するようにして筐体101に一体成形されている。これらの周縁用固定接点103は、図19に示すように、筐体101の内部底面の4辺にそれぞれ沿って周方向ほぼ等間隔に配設されている。
【0007】
可動電極板105は、図18に示すように、中央用固定接点102および周縁用固定接点103と対向して配設されている平板状の電極であって、ばねリン青銅などの金属平板を用いて形成されている。可動電極板105の形状は、中央用固定接点102と対向する中心部の円形な中央用可動電極部105aと、周縁用固定接点103と対向する最外側の環状の周縁用可動電極部105bと、内外の中央用可動電極部105aおよび周縁用可動電極部105bと連結部105dを介して連続している円環部105cと、ガイド壁101bを挿通させる円弧状の2つの開口部105eを有するように形成されている。そして、この可動電極板105は、その開口部105eをガイド壁101bに挿通させながら、周縁用固定接点103および中央用固定接点102と所定の空隙を介在させて装着される。周縁用可動電極部105bと円環部105cとを部分的に連結する各連結部105dは、円環状のガイド壁102bに形成されたスリット部101aに挿通するように形成されている。
【0008】
反転部材106は、図18に示すように、円環部105cの上方にメタルドームなどのドーム状に形成されて配設されているが、省略することもできる。
【0009】
操作部材107は可動電極板105を押圧するものであり、図18に示すように、可動電極部105の上方に配設されている。この操作部材107は入力操作を行なうための操作部108、鍔部109、中央用押圧部110および周縁用押圧部111を有している。鍔部109は、周縁用可動電極部105bと対向する位置に車輪形状に形成されている。中央用押圧部110は、鍔部109の内側の中央付近において、中央用可動電極部105aに対向する方向に突出形成されている。周縁用押圧部111は、鍔部109の外周の下方において、周縁用可動電極部105bに対向する方向に突出形成されている。この鍔部109にはガイド壁101bに挿通可能な円弧状の開口部109cが形成されている。
【0010】
筐体101をふさぐ蓋体112は、その中央に操作部材107の矩形のスティック状の操作部108が挿通する矩形の中央孔112aを有して矩形平板状に形成されている。また、この蓋体112は、操作部材107を傾倒操作する際に、操作部材107の一部分109aが当接して当該傾倒操作の回転支点となるように形成されている。
【0011】
このように構成された従来の多方向入力装置100は、図20に示すように、操作部材107を径方向外側へ傾倒させることによって、径方向外側への入力を可能としている。具体的には、傾倒操作された操作部材107の鍔部109が可動電極板105の周縁用可動電極部105bを押圧することにより、その周縁用可動電極部105bが周縁用固定接点103に接触して導通する。また、可動電極板105は弾性力を有する金属平板を用いて形成されていることから、操作部材107の傾倒操作時においてその操作部材107に適度な反力を生じさせることとなる。そのため、周縁用可動電極部105bと周縁用固定接点103とを接触させるときに適度な操作感を得ることが可能となっている(特許文献1を参照)。
【0012】
【特許文献1】特許第3183776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、可動電極板105に形成された周縁用可動電極部105bは、連結部105dの近傍以外に形成された周縁用可動電極部105bと比較して、連結部105d近傍に形成された周縁用可動電極部105bの反力が大きくなり、径方向外側への入力操作感に周方向においてバラツキが生じるという問題があった。
【0014】
また、筐体101が可動電極板105および操作部材107を挿通してその配設位置を拘束するガイド壁101bを有しているため、そのガイド壁101bの立設方向への薄型化が困難であるという問題があった。
【0015】
さらに、可動電極板105は、中央用可動電極部105a、円環部105c、連結部105dおよび周縁用可動電極部105bを有していることから、その構造が複雑になりやすく、多方向入力装置100の製造コストを下げることが困難であるという問題があった。
【0016】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、周方向における径方向外側向きの操作力のバラツキを低減させて良好な操作感触を得ることが可能となる多方向入力装置を提供することを本発明の目的としている。
【0017】
また、本発明の他の目的は、多方向入力装置の小型化およびその製造コストの低廉化が可能となる多方向入力装置を提供することとしている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述した目的を達成するため、本発明の多方向入力装置は、筐体内に複数個の周縁用固定接点を環状に配設し、環状に配設された前記周縁用固定接点と対向する環状の平板状に形成されてなる周縁用可動電極を前記周縁用固定接点の上方に所定の空隙を介して前記筐体内に保持し、前記周縁用可動電極の周方向の一部分を反力に抗して上から押圧して前記周縁用固定接点に接続させる周縁用押圧部を有する操作部材を前記筐体内に配置し、前記周縁用押圧部が前記周縁用可動電極の周方向の一部分を押圧することにより、前記周縁用可動電極と前記周縁用固定接点とを導通させて、当該押圧による入力操作を検出するように形成されている。
【0019】
そして、本発明の多方向入力装置は、その第1の態様として、前記周縁用可動電極が、前記筐体に保持されている当該周縁用可動電極の被保持部の近傍に生じる反力を周縁用可動電極の被保持部の近傍以外の部分に生じる反力と同程度にする反力調整部を有していることを特徴としている。
【0020】
これによって、周縁用可動電極の周方向における反力がどの部分においても一定となり、周方向における径方向外側方向への操作力のバラツキを低減することが可能となる。
【0021】
また、本発明の第2の態様の多方向入力装置は、第1の態様の多方向入力装置において、反力調整部が、周縁用可動電極の被保持部の近傍の径方向の幅寸法を被保持部の近傍以外の部分の幅寸法よりも小さくすることによって形成されていることを特徴としている。
【0022】
これによって、プレス加工等の簡単な加工のみによって周方向における径方向外側向きの操作力を変化させることが可能となる。
【0023】
本発明の第3の態様の多方向入力装置は、第1の態様の多方向入力装置において、反力調整部が、周縁用可動電極の被保持部の近傍の厚みを被保持部の近傍以外の部分の厚みよりも薄くすることによって形成されていることを特徴としている。
【0024】
これによって、幅方向の長さを変化させることなく周方向における径方向外側向きの操作力を変化させることが可能となる。
【0025】
本発明の第4の態様の多方向入力装置は、第1の態様の多方向入力装置において、反力調整部が、周縁用可動電極における被保持部の近傍以外の部分に対して、その周方向に沿って凹状もしくは凸状に形成されていることを特徴としている。
【0026】
これによって、プレス加工等の簡単な加工のみによって周方向における径方向外側向きの操作力を変化させることが可能となる。
【0027】
本発明の第5の態様の多方向入力装置は、第1から第4のいずれか1の態様の多方向入力装置において、周縁用可動電極が、筐体の支持部によって支持される被支持部を有しており、反力調整部は、被支持部と一体に形成されていることを特徴としている。
【0028】
これによって、周方向において径方向外側向きの操作力をあまり変化させることなく周縁用可動電極を安定して支持することが可能となる。また、当該被支持部を反力調整部と一体に形成することによって、反力調整部の形成工程を減らすことが可能となる。
【0029】
本発明の第6の態様の多方向入力装置は、第1から第5のいずれか1の態様の多方向入力装置において、周縁用可動電極が、金属板材を用いて形成されていることを特徴としている。
【0030】
これによって、周縁用可動電極に高い反発力を発揮させつつ、当該周縁用可動電極を薄型化することが可能となる。
【0031】
本発明の第7の態様の多方向入力装置は、第1から第6のいずれか1の態様の多方向入力装置において、筐体が、その外周が多角形状となる箱形に形成されているとともに、その外周の角部の内側に周縁用固定接点が配設されている位置から周縁用可動電極を所定の空隙をもって配設させるために被保持部を保持する必要な高さの保持部を有していることを特徴としている。
【0032】
これによって、デッドスペースとなりやすい筐体の角部を好適に利用することが可能となる。
【0033】
本発明の第8の態様の多方向入力装置は、第1から第7のいずれか1の態様の多方向入力装置において、筐体内の環状に配設された複数個の周縁用固定接点および周縁用可動電極の内周側部分に、中央用固定接点と、所定の空隙をもって中央用固定接点と対向して配設されている中央用可動電極と、中央用可動電極の上方に中央用可動電極を押圧する中央用押圧部を有する操作部材とを備えていることを特徴としている。
【0034】
これによって、径方向外側方向への入力操作のみならず中央押下方向への入力操作が可能となる。
【0035】
本発明の第9の態様の多方向入力装置が、第8の態様の多方向入力装置において、中央用可動電極は、支持部を介して周縁用可動電極と連続して一体形成されていることを特徴としている。
【0036】
これによって、多方向入力装置の部品点数を削減することが可能となる。
【0037】
本発明の第10の態様の多方向入力装置は、第8または第9のいずれか1の態様の多方向入力装置において、中央用可動電極が、中央用押圧部の軸方向に突出するドーム状に形成されていることを特徴としている。
【0038】
これによって、誤入力を防止することが可能となる。また、中央押下方向へ操作した際に良好なクリック感を得ることが可能となる。
【0039】
本発明の第11の態様の多方向入力装置は、第1から第10のいずれか1の態様の多方向入力装置において、保持部が、被保持部と常に接触する部分に共通電極を有していることを特徴としている。
【0040】
これによって、共通電極を周縁用可動電極に接触させるためだけに設けられたスペースと保持部とを一体に形成することが可能となる。
【0041】
本発明の第12の態様の多方向入力装置は、第1から第11のいずれか1の態様の多方向入力装置において、周縁用固定接点、共通電極もしくは中央用可動電極の少なくとも一つが、筐体にインサート成型されていることを特徴としている。
【0042】
これによって、部品点数を少なくすることが可能となる。また、組立工程を少なくすることが可能となる。
【0043】
本発明の第13の態様の多方向入力装置は、第1から第12のいずれか1の態様の多方向入力装置において、周縁用固定接点、共通電極もしくは中央用可動電極の少なくとも一つが、筐体外に引出される引出端子を有しており、筐体外に引き出された引出端子は、当該各部材の種類によって異なる形状に形成されていることを特徴としている。
【0044】
これによって、多方向入力装置を他の装置に組み込む際に誤って組み立てることを防止することが可能となる。
【0045】
本発明の第14の態様の多方向入力装置は、第1から第13のいずれか1の態様の多方向入力装置において、周縁用可動電極と周縁用固定接点との間に、周縁用可動電極および周縁用固定接点に絶縁されながら配設されている第2の周縁用可動電極を備えていることを特徴としている。
【0046】
これによって、径方向外側方向への入力操作において押圧方向に2段階の入力が可能となる。
【0047】
本発明の第15の態様の多方向入力装置は、第1から第14のいずれか1の態様の多方向入力装置において、第2の周縁用可動電極が、周縁用固定接点を覆いつつ周縁用可動電極の軸方向に突出するドーム状に形成されていることを特徴としている。
【0048】
これによって、径方向外側方向への2段階入力に対して誤動作を防止することが可能となる。また、径方向外側方向への2段階目の入力操作を行なう際に良好なクリック感を得ることが可能となる。
【0049】
本発明の第16の態様の多方向入力装置は、第8から第15のいずれか1の態様の多方向入力装置において、操作部材が、周縁用押圧部を有する周縁用押圧部材と、中央用押圧部を有する中央用押圧部材と、操作主体から直接的に入力される操作体とを有しており、周縁用押圧部材が、その中央付近に形成された中央孔に中央用押圧部材を挿通して配設されており、中央用押圧部材が、押圧方向の前方が周縁用押圧部材の中央孔の外形よりも大きくなり、押圧方向の後方が周縁用押圧部材の中央孔の外形と同等もしくはその中央孔の外形よりも小さくなるような押圧方向に対して外形の異なる形状に形成されていることを特徴としている。
【0050】
これによって、中央用押圧部材が中央用可動電極を押圧する際に周縁用押圧部材が筐体と当接して当該中央用押圧部材の移動を制限することを防止することが可能となる。
【0051】
本発明の第17の態様の多方向入力装置は、第1から第16のいずれか1の態様の多方向入力装置において、操作部材が周縁用可動電極もしくは中央用可動電極を押圧した際に操作部材の初期位置へ当該操作部材を復元させる方向に復元力を生じさせる弾性アームを有していることを特徴としている。
【0052】
これによって、入力操作を行なう際に常に初期位置から入力操作を行なうことが可能となる。
【0053】
本発明の第18の態様の多方向入力装置が、第17の態様の多方向入力装置において、弾性アームは、筐体に形成された開口部を覆うように蓋状に形成されていることを特徴としている。
【0054】
これによって、筐体内に塵や水分などの誤動作要因が侵入することを防止することが可能となる。
【0055】
本発明の第19の態様の多方向入力装置は、第1から第18のいずれか1の態様の多方向入力装置において、筐体が周縁用押圧部材を径方向外側方向への摺動移動量を拘束する蓋体と、蓋体の反対方向から周縁用押圧部を摺動自在に支持するガイド壁とを有しており、周縁用押圧部材が中央用押圧部と中央用可動電極とが接している部分を摺動させながら周縁用可動電極を押圧するように形成されていることを特徴としている。
【0056】
これによって、操作部材をスライド移動させながら径方向外側方向へ入力操作することが可能となる。
【0057】
本発明の第20の態様の多方向入力装置は、第1から第18のいずれか1の態様の多方向入力装置において、筐体が周縁用押圧部材を径方向外側方向への摺動移動量を拘束する蓋体を有しており、周縁用押圧部材が中央用押圧部と中央用可動電極との接点を回転支点として周縁用可動電極を押圧するように形成されていることを特徴としている。
【0058】
これによって、操作部材を傾倒させながら径方向外側方向へ入力操作することが可能となる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の多方向入力装置によって、周縁用可動電極の周方向における径方向外側向きの操作力のバラツキを低減することが可能となるため、多方向入力装置の操作感触が良好となる効果を奏する。また、反力調整部の形成が容易となったり、多方向入力装置に実装する部品点数が減少したりするため、多方向入力装置の製造コストが低廉なものとなる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、図1から図17を用いて、本発明の多方向入力装置における第1から第4の実施形態を説明する。
【0061】
ここで、図1は、第1の実施形態の多方向入力装置の分解斜視図を示している。図2は、第1の実施形態の多方向入力装置における筐体の平面図を示している。図3は、第1の実施形態の多方向入力装置における周縁用可動電極が配設された筐体の平面図を示している。図4は、周縁用可動電極の他の一例を示している。図5は、図4のA−A断面図を示している。図6は、図4に示したものとは異なる周縁用可動電極の他の一例を示している。図7は、図6のB−B断面図を示している。図8は、第1の実施形態の多方向入力装置の斜視図を示している。図9は、図8のC−C断面図を示している。図10は、図8のD−D断面図を示している。図11は、第1の実施形態の多方向入力装置の周方向への入力操作時における図8のC−C断面図を示している。図12は、第1の実施形態の多方向入力装置の周方向への入力操作時における図8のD−D断面図を示している。
【0062】
また、図13は、第2の実施形態の多方向入力装置における周縁用可動電極が配設された筐体の平面図を示している。
【0063】
さらに、図14は、第3の実施形態の多方向入力装置における図8のD−D断面図を示している。図15は、第3の実施形態の多方向入力装置における筐体の平面図を示している。図16は、第3の実施形態の多方向入力装置における周縁用可動電極および第2の周縁用可動電極が配設された筐体の平面図を示している。
【0064】
そして、図17は、第4の実施形態の多方向入力装置における図8のC−C断面図を示している。
【0065】
(1)第1の実施形態
本発明の第1の実施形態の多方向入力装置1は、図1に示すように分解されている構成各部を、図8および図9に示すように組立て形成される。本実施形態の多方向入力装置1の構成各部を下方から上に順に、筐体2、周縁用固定接点3および周縁用可動電極4ならびに周縁用共通電極5などの周方向への入力に用いられる各部材、中央用固定接点6および中央用可動電極7ならびに中央用共通電極8などの中央における押下方向への入力に用いられる各部材、操作部材9、蓋体13、弾性アーム14、ならびに拘束部材15を順に説明する。
【0066】
多方向入力装置1の筐体2は、図2に示すように、絶縁性の合成樹脂を用いて略矩形状の薄い箱状に形成されている。また、この筐体2の中央部には、略円柱状の空洞部2aが形成されている。空洞部2aの内周径の略2/3位置には、底部から円環状のガイド壁2bが立設されている。また、空洞部2aの筐体2の対角線位置には放射状にそれぞれ凹溝状の周縁用可動電極4を周方向に移動しないように保持する保持部2eが一体的に形成されている。そして、筐体2の空洞部2aの内部でありかつガイド壁2bの外側であるの底面(以下、「ガイド壁外側の底面」という。)2cよりも上方位置において周縁用可動電極4を保持する前記保持部2eと、ガイド壁2bの外周であって各保時部2eの中間となる位置において突出して当該周縁用可動電極4を支持する支持部2gとが形成されている。そして、保持部2eの保持面2fおよび支持部2gの支持面2hは、周縁用可動電極4を水平に保持するために、それぞれの面2f、2hが同一平面となるように形成されている。
【0067】
周縁用固定接点3は、インサート成型によって、筐体2に一体成形されている。また、この周縁用固定接点3は、図2に示すように、筐体2のガイド壁外側の底面2cにおいて露出しており、平面から見て上下左右の4方向に一定の間隔をもって環状に配設されている。そして、各周縁用固定接点3は、筐体2の外部に引き出すための引出端子3aを有している。この引出端子3aの筐体2外に引き出された部分(以下、「引出端子の先端部」という。)3bは、周縁用共通電極5、中央用固定接点6および中央用共通電極8の各引出端子5a、6a、8aの先端部5b、6b、8bとそれぞれ区別するために、当該各引出端子3a、5a、6a、8aを異なる形状に形成されている。たとえば、各引出端子3a、5a、6a、8aの長さや幅などがそれぞれ異なるように形成されたり、各引出端子3a、5a、6a、8aの先端部3b、5b、6b、8bがそれぞれ異なる形状もしくは模様を有するように、各引出端子3a、5a、6a、8aがそれぞれ独特の形状を有するように形成されている。
【0068】
周縁用可動電極4は、図1および図3に示すように、大きな反力を発生させるばねリン青銅などの金属平板材を用いて平板状に形成されており、筐体2のガイド壁外側の底面2cと重複する環状形状であって、4つの周縁用固定接点3によって形成された環と同等の大きさとなるように所定の径方向の幅を有して形成されている。この周縁用可動電極4には、その外周から外側へ向かって放射状に延びる被保持部4aが保持部2eと対応してその外周の4方向に形成されているとともに、その内周かつ各被保持部4aの周方向中間位置に内周から内側へ向かって延びる凸状の被支持部4bが形成されている。この被保持部4aの突出長さは、保持面2fによって一方を保持されつつもその保持部2eを外側に超えないような長さとなっている。また、被支持部4bの突出長さは、支持面2hに支持されつつもその内側にあるガイド壁2bと接触しないような長さとなっている。
【0069】
また、この周縁用可動電極4は、被保持部4aの近傍4eに生じる反力と被保持部4aの近傍以外の部分4fに生じる反力とを同程度にする反力調整部4c、4dを有している。具体的には、図3に示すように、この反力調整部4c、4dは、被保持部4aの近傍4eの径方向の幅寸法が被保持部4aの近傍以外の部分4fの径方向の幅寸法よりも小さくなるように、プレス加工によって形成されている。さらに、この反力調整部4c、4dは、周縁用可動電極4の形成が容易となることから、被支持部4bと一体に形成されていることが好ましい。
【0070】
もちろん、反力調整部4c、4dは、前述したような幅寸法の変化によって形成される形状に限られることはない。たとえば、その反力調整部4c、4dは、図4および図5に示すように、被保持部4aの近傍4eの厚みを被保持部4a近傍以外の部分4fの厚みよりも薄くすることによって形成されていてもよいし、図6および図7に示すように、周縁用可動電極4における被保持部近傍以外の部分4fに、その環に沿って厚さ方向に凹状もしくは凸状に形成されていてもよい。また、反力調整部4c、4dの形成位置および個数は前述したものに限られず、周縁用可動電極4の環上の様々な位置に様々な形状の反力調整部4c、4dを複数個形成することにより、周縁用可動電極4の反力が、各被保持部4a間において、無段階変化するようにすることがさらに好ましい。
【0071】
周縁用共通電極5は、図2に示すように、インサート成型によって、筐体2の四隅の周縁用可動電極4を保持する保持部2eのうちのいくつかに一体成形されているとともに、周縁用共通電極5に形成された凸部5cのみがいくつかの保持部2eの保持面2fから露出させられている。また、各周縁用共通電極5は、筐体2の外部に引き出すための引出端子5aを有している。この引出端子5aの先端部5bは、前述したように、周縁用固定電極3、中央用固定接点6および中央用共通電極8の各引出端子3a、6a、8aの先端部3b、6b、8bとそれぞれ区別するため、当該各引出端子3a、5a、6a、8aが異なる形状に形成されている。
【0072】
中央用固定接点6は、図2に示すように、インサート成型によって、筐体2の空洞部2aの内部かつガイド壁2bの内側の底面(以下、「ガイド壁内側の底面」という。)2dに一体成形されている。また、この中央用固定接点6は、その中央用固定接点6に形成された凸部6cのみが前記底面2dから突出して露出するように配設されている。そして、この中央用固定接点6は、筐体2の外部に引き出すための引出端子6aを有しているとともに、前述したように、その先端部6bが当該各引出端子3a、5a、8aの先端部3b、5b、8bと異なる形状に形成されている。
【0073】
中央用共通電極8は、図2に示すように、インサート成型によって、ガイド壁内側の底面2dにおいて、中央用固定接点6の外周を接触せずに囲むような平面U字形状に形成されている。また、この中央用共通電極8は、U字状の中央用共通電極8に形成された凸部8cのみが前記底面2dから突出して露出するように配設されている。そして、この中央用共通電極8は、筐体2の外部に引き出すための引出端子8aを有しているとともに、この引出端子8aは、前述したように、その先端部8bが当該各引出端子3a、5a、6aの先端部3b、5b、6bと異なる形状に形成されている。
【0074】
中央用可動電極7は、図1、図9および図10に示すように、上方に向かって突出するドーム状に形成された湾曲部7aと、中央用共通電極8の凸部8cと接触する台座部7bとを有している。この中央用可動電極7は、所定の空隙をもって中央用固定接点6と対向して配設されている。また、この台座部7bの直径は、中央用共通電極8の対向する各凸部8c間の距離と同等となっている。そして、この中央用可動電極7は、図9および図10に示すように、その上方から中央用可動電極8を覆う固着用樹脂シート7cによって固着されている。
【0075】
操作部材9は、図1、図8、図9および図10に示すように、操作体10、中央用押圧部材11および周縁用押圧部材12を有している。
【0076】
操作体10は、図1、図9および図10に示すように、円盤状に形成された操作部10aの下方に、中央用押圧部材11と係合する円柱状の凸部10bを有して形成されている。
【0077】
周縁用押圧部材12は、周縁用可動電極4の内径と同程度の直径を有して円形鍔状に形成されている。この周縁用押圧部材12は、その外周下方に周縁用可動電極4を押圧する周縁用押圧部12aを有しているとともに、その中心部分に中央孔12bを有している。また、その中央孔12bより外側上面部分には、円形凸状の凸壁12cが形成されている。
【0078】
中央用押圧部材11は、上方から下方の順(操作部材9の押下方向PDに向かう順)に、周縁用押圧部材12の中央孔12bに遊嵌する直径を有して円柱状に形成された挿着部11aと、挿着部11aおよび周縁用押圧部材12の中央孔12bの直径よりも大きな直径を有して円形状に形成された抑止部11bとを有している。また、挿着部11aは、操作体10の円柱状の凸部10bと嵌合する凹部11cを有しており、抑止部11bは、その下面に、中央用可動電極7を押圧する凸状の中央用押圧部11dを有している。そして、中央用押圧部材11は、周縁用押圧部材12の中央孔12bに挿着部11aを挿通しつつ、操作体10の凸部10bと中央用押圧部材の凹部11cとを嵌合して筐体2内に配設されている。
【0079】
蓋体13は、金属板を用いて、筐体2の外周と同程度の大きさを有する矩形状に形成されている。また、この蓋体13の中央付近には、凸壁12cの直径よりも大きな直径を有する円形の中央孔13aが形成されているとともに、この蓋体13の四隅に挿通孔13bがそれぞれ穿設されている。この蓋体13は、周縁用押圧部材12の上方に配設されており、操作体10を任意の周方向にスライドさせると、周縁用押圧部材12がその下面を筐体2のガイド壁2aの上面2jに摺動させると同時にその上面を蓋体13の中央孔13aの下部13cに摺動させながらスライド移動自在に狭持されるようになっている。また、周縁用押圧部材12が大きくスライドすると、その凸壁12cの外周部が蓋体13の中央孔13cの内周面と当接してストッパとして機能するようになっている。
【0080】
弾性アーム14は、図9に示すように、蓋体13の上方に配設されている。この弾性アーム14は、蓋体13の外形と同程度の大きさの外形を有して形成されているとともに、操作体10のスライド操作方向に対して当該操作体10の配設初期位置(中心位置)への復元力を生じさせるジグザグ断面を有する環状の弾性ダイヤフラム部14aを有している。この弾性ダイヤフラム部14aの中心部には中央用押圧部材11の凹部11cの外周を覆う大きさの中央孔14bが形成されており、下面には蓋体13の挿通孔13bに挿通しながら周縁用可動電極4の被保持部4aを保持部2eの保持面2fおよび周縁用共通電極5に押圧して保持する4個の突出部14cが形成されている。また、この弾性アーム14は、中央孔14bを除いて、外部から筐体2の内部に水分や塵などが侵入するおそれのある穴が形成されておらず、筐体2に形成された開口部を密閉して覆うような蓋状に形成されている。
【0081】
拘束部材15は、弾性アーム14の弾性ダイヤフラム部14aの外側上面に被せられる環状板状に形成されており、筐体2の各辺の外側面に形成されている爪部2iと係合する4個の腕部15aが下向きに突接されており、弾性ダイヤフラム部14aの動きを妨害しないように内周部を筒状に立ち上げて中央孔15bが形成されている。この拘束部材15は、蓋体13および弾性アーム14を拘束するように、それらの上方から各腕部15aを各爪部2iとを係合させて組立てられる。
【0082】
次に、第1の実施形態の多方向入力装置1の作用を説明する。
【0083】
多方向入力装置1の操作部材9の操作体10を任意の径方向外側へスライド移動させて入力操作すると、図11もしくは図12に示すように、周縁用押圧部材12が、筐体2のガイド壁2bの上面2jと蓋体13の中央孔13aの下部13cと摺動しながら当該スライド操作された方向に移動し、周縁用押圧部材12の周縁用押圧部12aが周縁用可動電極4と当接する。その操作体10をさらにスライド移動させると、周縁用押圧部12aが周縁用可動電極4を変形させて、周縁用可動電極4とその下方にある周縁用固定接点3が接触して導通する。これにより、多方向入力装置1は、操作体10を任意の径方向外側へ入力操作したことを検出することが可能となる。
【0084】
この径方向外側への入力操作は、周縁用可動電極4を厚さ方向に変形させることになり、これによって周縁用可動電極4に高い反発力を生じさせる。ここで、第1の実施形態の多方向入力装置1の周縁用可動電極4は反力調整部4c、4dを有していることから、周縁用可動電極4の周方向における反力がどの部分においても一定となり、径方向外側の操作力のバラツキを低減することが可能となる。この反力調整部4c、4dは、被保持部4aの近傍4eの幅寸法を被保持部4aの近傍以外の部分4fの幅寸法よりも小さく形成されていることから、被保持部4aの近傍4eにおいてはその反力を小さくし、被保持部4aの近傍以外の部分4fにおいてはその反力を大きくすることが可能となっている。それによって、径方向外側への操作力のバラツキを低減することが可能となるため、多方向入力装置1の操作感触が良好となる。
【0085】
なお、前述したように、反力調整部4c、4dは、図4および図5に示すように、被保持部4aの近傍4eの厚みを被保持部4a近傍以外の部分4fの厚みよりも薄くすることによって形成されていたり、図6および図7に示すように、周縁用可動電極4における被保持部4aの近傍以外の部分4fに、その周に沿って凹状もしくは凸状に形成されていることにより、前記の幅寸法を変化させた場合と同様に、被保持部4aの近傍4eにおいてはその反力を小さくし、被保持部4aの近傍以外の部分4fにおいてはその反力を大きくすることも可能となっている。
【0086】
また、この周縁用可動電極4は、筐体2の支持部2gにおいて何も拘束されずに支持される被支持部4bを有していることから、被支持部4bの近傍に生じる反力をあまり上昇させることなく周縁用可動電極4を安定して支持することが可能となる。また、この被支持部4bを反力調整部4dと一体に形成することによって、反力調整部4dの形成工程を減らすことが可能となり、周縁用可動電極4の製造コストを下げることが可能となっている。
【0087】
さらに、この周縁用可動電極4の被保持部4aを保持する筐体2の保持部2eは、図2に示すように、筐体2の四隅に形成されている。これによって、筐体2の外形を大きくすることなく、かつ、筐体2内のデッドスペースとなりやすい筐体2の角隅部を好適に利用することが可能となり、多方向入力装置1の小型化を図ることが可能となる。さらに、この保持部2eの保持面2fには、周縁用可動電極4と導通させる周縁用共通電極5が形成されていることから、周縁用共通電極5を周縁用可動電極4に接触させるためだけに設けられたスペースと保持部2eとを一体に形成することが可能となり、多方向入力装置1の更なる小型化を図ることが可能となる。
【0088】
また、第1の実施形態の多方向入力装置1は、操作部材9の押下方向PDに対して、中央用固定接点6、中央用共通電極8に接触した中央用可動電極7を備えている。これにより、操作部材9の操作体10を押下することにより、中央用押圧部材11の中央用押圧部11dが中央用可動電極7を押圧しながら変形させ、中央用可動電極7と中央用固定接点6との接触により、押下方向PDへの入力操作を検出することが可能となっている。その際、操作部材9に配設された周縁用押圧部材12はガイド壁2bの上面2jによって、押下方向PDの前方へ向かう方向への移動が制限されるが、中央用押圧部材11の挿通部11aは周縁用押圧部材12の中央孔12bに遊嵌していることから、当該中央孔12bを摺動しながら押下方向PDの前方(図面の下方)へ移動することが可能となっている。これにより、ガイド壁2bの上面2jと周縁用押圧部材12とが接触していても、操作部材9は押下方向への移動が可能となる。よって、径方向外側への入力操作のみならず押下方向PDへの入力操作が可能となっている。
【0089】
この押下方向PDへの入力操作は、中央用可動電極7がドーム状に形成されていることから、押下方向PDと反対の方向に反力を生じ、誤入力を防止することが可能となっている。また、押下方向PDへ意図して操作した際に良好なクリック感を得ることも可能となっている。
【0090】
そして、前述した周方向および押下方向PDへの入力操作を終了すると、次ぎに入力操作を行ないやすくするために、操作部材9の操作体10を配設されていた初期位置に戻す必要がある。このとき、多方向入力装置1は、操作部材9を当該初期位置に復元するための復元力を発生させる弾性アーム14を有していることから、入力操作を行なう際に、自動的に初期位置から入力操作を行なうことが可能となる。また、この弾性アーム14が筐体2の内部を密閉する蓋状に形成されていることから、筐体2内に塵や水分などの誤動作要因の侵入を防止することが可能となっている。
【0091】
なお、筐体2の内部に配設されており、かつ筐体2の外部の部材と電気的に接続させる必要がある周縁用固定接点3、周縁用共通電極5、中央用固定接点6および中央用共通電極8は、すべてインサート成形によって形成されていることから、多方向入力装置1の部品点数を少なくすることが可能となるとともに、その組立工程を少なくすることが可能となる。また、それら各引出端子3a、5a、6a、8aの先端部3b、5b、6b、8bがそれぞれ異なる形状となるように形成されていることから、組立時に誤った組立を引き起こすことも少なくなり、多方向入力装置1の歩留まりを向上させることが可能となっている。
【0092】
すなわち、第1の実施形態の多方向入力装置1によって、径方向外側方向および押下方向PDへの入力操作の際に快適な操作感を得ることが可能になるとともに、低コスト化、信頼性および歩留まりの向上が可能となる。
【0093】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態の多方向入力装置1aおいては、図13に示すように、筐体2のガイド壁2b、周縁用可動電極4、中央用可動電極7および中央用共通電極8以外の多方向入力装置1aに配設された各部材は、第1の実施形態の多方向入力装置1に用いられたものと同様のものが用いられている。ここで、第2の実施形態に用いられた周縁用可動電極4および中央用可動電極7は、図13に示すように、支持部4gを介して連通されて一体に形成されている。これによって、第2の実施形態においては、中央用共通電極8が配設されずに排除されている。また、環状のガイド壁2bの一部分に、周縁用可動電極4および中央用可動電極7を連結して支持する支持部4gを通過させるスリット2kが設けられている。
【0094】
次に、第2の実施形態の多方向入力装置1aの作用を説明する。
【0095】
第2の実施形態の多方向入力装置1aは、第1の実施形態の多方向入力装置1と同様、径方向外側向きおよび押下方向PDへの入力操作を行なうことが可能となっている。しかし、第2の実施形態の多方向入力装置1aは、周縁用可動電極4および中央用可動電極7が一体に形成されていることから、周縁用可動電極4および中央用可動電極7を介して、中央用固定接点6と周縁用共通電極5を導通させることにより、中央用固定接点6と中央用可動電極7の接触を検出することが可能となる。これにより、中央用共通電極8を配設させる必要が無くなり、第1の実施形態の多方向入力装置1の構成部品よりも部品点数を削減することが可能となることから、多方向入力装置1aの組立が容易になり、かつ当該多方向入力装置1aの誤った組立を防止することが可能となる。また、多方向入力装置1aの低コスト化を図ることが可能となっている。
【0096】
(3)第3の実施形態
第3の実施形態の多方向入力装置1bは、図14に示すように、周方向への入力操作に2段階の入力を付与するため、第1の実施形態の多方向入力装置1に以下のような各部材を付与して形成されている。すなわち、第3の実施形態の多方向入力装置1bは、図14に示すように、第1の実施形態と同様、筐体2に、周縁用固定接点3および周縁用可動電極4ならびに周縁用共通電極5などの径方向外側への入力に用いられる各部材、中央用固定接点6および中央用可動電極7ならびに中央用共通電極8などの中央における押下方向への入力に用いられる各部材、操作部材9、蓋体13、弾性アーム14、ならびに拘束部材15を備えているとともに、径方向外側への2段階入力操作を行なうために、周縁用固定接点3の付近に第2の周縁用可動電極16および第2の周縁用共通電極17を備えている。具体的には、第2の周縁用可動電極16および第2の周縁用共通電極17は以下のように形成されている。なお、第1の実施形態の多方向入力装置1と同様の部材を用いているものは、その具体的説明を省略する。
【0097】
第2の周縁用共通電極17は、図15に示すように、インサート成形により筐体2と一体に形成されているとともに、筐体2のガイド壁外側の底面2cから露出する部分が4方向にある各周縁用固定接点3に絶縁されながらその各周縁用固定接点3を覆う略コの字状に形成されている。この第2の周縁用共通電極17は、筐体2の内部にインサート成形されたその他の接点もしくは電極3、5、6、8と同様、筐体2の外部に引き出される各引出端子17aを有しており、その引出端子の先端部17bは、他の引出端子3a、5a、6a、8aと区別され得るような特別の形状を有して形成されている。
【0098】
第2の周縁用可動電極16は、図14から図16に示すように、周縁用可動電極4の厚さ方向に突出する楕円ドーム状の湾曲部16aと、湾曲部16aの周縁に形成された第2の周縁用共通電極17と接触する台座部16bとを有しており、初期状態(径方向外側への入力操作を行なわない状態)において周縁用固定接点3および周縁用可動電極4に絶縁されながら4方向にある各周縁用固定接点3を覆うように配設されている。また、第2の周縁用可動電極16の台座部16bは、第2の周縁用共通電極17と接触するように配設されている。
【0099】
次に、第3の実施形態の多方向入力装置1bの作用を説明する。
【0100】
第3の実施形態の多方向入力装置1bは、第1の実施形態の多方向入力装置1によって行なわれる入力の他に、径方向外側への2段階入力を可能としている。例えば、図14に示されている操作部材9の操作体10を任意の径方向外側へスライド移動させると、周縁用押圧部材12が周縁用可動電極4を押圧して変形させる。すると、周縁用可動電極4が4方向に配置された第2の周縁用可動電極16のいずれかと接触し、当該第2の周縁用可動電極16に接触した第2の周縁用共通電極17と周縁用共通電極5とが導通する。これにより、多方向入力装置1bは任意の径方向外側への入力操作を適切に検出することが可能となる。これが、第1段階目の周方向への入力操作となる。
【0101】
そして、周縁用可動電極4が第2の周縁用可動電極16と接触した状態において、操作部材9の操作体10を当該任意の径方向外側へさらにスライド移動すると、周縁用押圧部材12が、周縁用可動電極4および周縁用可動電極4と接触した第2の周縁用可動電極16をさらに押圧する。すると、押圧された第2の周縁用可動電極16は、下方に配設された周縁用固定接点3と接触する。これにより、周縁用可動電極4に接続された周縁用共通電極5が第2の周縁用共通電極17および周縁用固定接点3と導通するため、多方向入力装置1bが、第1段階目の周方向への入力操作からさらに押圧されて径方向外側へ入力操作されたことを検出することが可能となる。これが、第2段階目の径方向外側への入力操作となる。この第2段階目の径方向外側への入力操作は、第1段階目の径方向外側への入力操作とは異なり、ドーム状に形成された第2の周縁用可動電極16を押圧することによりクリック感を備えて行なうため、径方向外側への2段階入力に対して誤動作を防止することが可能となっている。また、径方向外側への2段階目の入力操作を行なう際に良好かつ軽快なクリック感を伴って操作することが可能となっている。
【0102】
すなわち、第3の実施形態の多方向入力装置1bは、径方向外側への入力操作において押圧方向に2段階の入力が可能となり、多方向入力装置1bの利便性が向上するという効果を奏する。
【0103】
(4)第4の実施形態
第4の実施形態の多方向入力装置1cは、図17に示すように、第1の実施形態と同様、筐体2に、周縁用固定接点3および周縁用可動電極4ならびに周縁用共通電極5などの周方向への入力に用いられる各部材、中央用固定接点6および中央用可動電極7ならびに中央用共通電極8などの中央における押下方向への入力に用いられる各部材、操作部材9、蓋体13、弾性アーム14、ならびに拘束部材15を備えている。ここで、第1の実施形態の多方向入力装置1と異なるのは、筐体2のガイド壁2bが周縁用押圧部材12に接触しない程度の高さを有して形成されているとともに、中央用可動電極7が中央用押圧部11dと接触する部分にくぼみ7cを有して形成されていることである。
【0104】
前述したガイド壁2bおよび中央用可動電極7を有する第4の実施形態の多方向入力装置1cは、第1の実施形態の多方向入力装置1とは異なり、周方向への入力操作時においてスライド移動ではなく傾倒移動によりその入力操作を行なうことが可能となる。具体的には、操作部材9を径方向外側へ傾倒操作すると、操作部材9が中央用押圧部11dと中央用可動電極7のくぼみ7cとの接点を回転支点とするとともに、蓋体13が第1の実施形態と同様に周縁用押圧部材12を周方向へ摺動移動自在に拘束するするため、周縁用押圧部材12が周縁用可動電極4を押圧しながら傾倒することが可能となる。これより、第4の実施形態の多方向入力装置1cは、第1の実施形態の多方向入力装置1のような操作体10のスライド移動による周方向への入力操作だけでなく、第4の実施形態の多方向入力装置1cのような操作体10の傾倒による径方向外側への入力操作を可能となる。
【0105】
すなわち、前述した第1から第4の実施形態の多方向入力装置1、1a、1b、1cによって、径方向外側向きの操作力のバラツキを低減することが可能となることから、多方向入力装置1、1a、1b、1cの操作感触が良好となる。また、反力調整部4c、4dの形成が容易に形成可能となったり、筐体2の内部のガイド壁2bを従来よりも低く形成することができるので、多方向入力装置1、1a、1b、1cの形状がコンパクトになる効果を奏する。さらに、周縁用可動電極4や、周縁用押圧部材12の形状が比較的簡単なものであるということから、多方向入力装置1、1a、1b、1cの製造コストが低廉になるという効果を奏する。そして、ガイド壁2bなどの形状を変化させることにより、径方向外側への2段階入力を可能としたり、スライド移動および傾倒による入力操作の選択が可能となるという効果を奏する。
【0106】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1の実施形態の多方向入力装置を示す分解斜視図
【図2】第1の実施形態の多方向入力装置に配設された筐体を示す平面図
【図3】第1の実施形態の多方向入力装置における周縁用可動電極が配設された筐体を示す平面図
【図4】周縁用可動電極の他の一例を示す平面図
【図5】図4のA−A断面図
【図6】図4に示したものとは異なる周縁用可動電極の他の一例を示す平面図
【図7】図6のB−B断面図
【図8】第1の実施形態の多方向入力装置の斜視図
【図9】図8のC−C断面図
【図10】図8のD−D断面図
【図11】第1の実施形態の多方向入力装置の周方向への入力操作時における図8のC−C断面図
【図12】第1の実施形態の多方向入力装置の周方向への入力操作時における図8のD−D断面図
【図13】第2の実施形態の多方向入力装置における周縁用可動電極が配設された筐体の平面図
【図14】第3の実施形態の多方向入力装置における図8のD−D断面図
【図15】第3の実施形態の多方向入力装置に配設された筐体の平面図
【図16】第3の実施形態の多方向入力装置における周縁用可動電極および第2の周縁用可動電極が配設された筐体の平面図
【図17】第4の実施形態の多方向入力装置における図8のC−C断面図
【図18】従来の多方向入力装置の一例を示す分解斜視図
【図19】従来の多方向入力装置に配設された筐体を示す平面図
【図20】従来の多方向入力装置における周方向への入力操作を示す概略図
【符号の説明】
【0108】
1 多方向入力装置
2 筐体
2a 空洞部
2b ガイド壁
2c ガイド壁外側の底面
2d ガイド壁内側の底面
2e 保持部
2f 保持面
2g 支持部
2h 支持面
2i 爪部
3 周縁用固定接点
3a 引出端子
3b 引出端子の先端部
4 周縁用可動電極
4a 被保持部
4b 被支持部
4c、4d 反力調整部
4e 被保持部近傍の部分
4f 被保持部近傍以外の部分
5 周縁用共通電極
5a 引出端子
5b 引出端子の先端部
6 中央用固定接点
6a 引出端子
6b 引出端子の先端部
7 中央用可動電極
7a 湾曲部
7b 台座部
8 中央用共通電極
8a 引出端子
8b 引出端子の先端部
9 操作部材
10 操作体
10a 操作部
10b 凸部
11 中央用押圧部材
11a 挿着部
11b 抑止部
11c 凹部
11d 中央用押圧部
12 周縁用押圧部材
12a 周縁用押圧部
12b 中央孔
12c 凸壁
13 蓋体
13a 中央孔
13b 挿通孔
13c 中央孔の下部
14 弾性アーム
14a 弾性ダイヤフラム部
14b 中央孔
14c 突出部
15 拘束部材
15a 腕部
15b 中央孔
16 第2の周縁用可動電極
16a 湾曲部
16b 台座部
17 第2の周縁用共通電極
17a 引出端子
17b 引出端子の先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に複数個の周縁用固定接点を環状に配設し、
環状に配設された前記周縁用固定接点と対向する環状の平板状に形成されてなる周縁用可動電極を前記周縁用固定接点の上方に所定の空隙を介して前記筐体内に保持し、
前記周縁用可動電極の周方向の一部分を反力に抗して上から押圧して前記周縁用固定接点に接続させる周縁用押圧部を有する操作部材を前記筐体内に配置し、
前記周縁用押圧部が前記周縁用可動電極の周方向の一部分を押圧することにより、前記周縁用可動電極と前記周縁用固定接点とを導通させて、当該押圧による入力操作を検出する多方向入力装置であって、
前記周縁用可動電極は、前記筐体に保持されている当該周縁用可動電極の被保持部の近傍に生じる反力を前記周縁用可動電極の被保持部の近傍以外の部分に生じる反力と同程度にする反力調整部を有している
ことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記反力調整部は、前記周縁用可動電極の前記被保持部の近傍の径方向の幅寸法を前記被保持部の近傍以外の部分の幅寸法よりも小さく形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記反力調整部は、前記周縁用可動電極の前記被保持部の近傍の厚みを前記被保持部の近傍以外の部分の厚みよりも薄く形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記反力調整部は、前記周縁用可動電極における前記被保持部の近傍以外の部分に対して、その周方向に沿って凹状もしくは凸状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記周縁用可動電極は、前記筐体の支持部によって支持される被支持部を有しており、
前記反力調整部は、前記被支持部と一体に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に前記記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記周縁用可動電極は、金属板材を用いて形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項7】
前記筐体は、その外周が多角形状となる箱形に形成されているとともに、その外周の角部の内側に前記周縁用固定接点が配設されている位置から前記周縁用可動電極を所定の空隙をもって配設させるために前記被保持部を保持する必要な高さの保持部を有している
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項8】
前記筐体内の環状に配設された複数個の前記周縁用固定接点および前記周縁用可動電極の内周側部分に、中央用固定接点と、所定の空隙をもって前記中央用固定接点と対向して配設されている中央用可動電極と、前記中央用可動電極の上方に前記中央用可動電極を押圧する中央用押圧部を有する前記操作部材とを備えている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項9】
前記中央用可動電極は、支持部を介して前記周縁用可動電極と連続して一体形成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の多方向入力装置。
【請求項10】
前記中央用可動電極は、前記中央用押圧部の軸方向に突出するドーム状に形成されている
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の多方向入力装置。
【請求項11】
前記保持部は、前記被保持部と常に接触する部分に共通電極を有している
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項12】
前記周縁用固定接点、前記共通電極もしくは前記中央用可動電極の少なくとも一つは、前記筐体にインサート成型されている
ことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項13】
前記周縁用固定接点、前記共通電極もしくは前記中央用可動電極の少なくとも一つは、前記筐体外に引出される引出端子を有しており、
前記筐体外に引き出された当該引出端子は、当該各部材の種類によって異なる形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項14】
前記周縁用可動電極と前記周縁用固定接点との間に、前記周縁用可動電極および前記周縁用固定接点に絶縁されながら配設されている第2の周縁用可動電極を備えている
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項15】
前記第2の周縁用可動電極は、前記周縁用固定接点を覆いつつ前記周縁用可動電極の軸方向に突出するドーム状に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項16】
前記操作部材は、前記周縁用押圧部を有する周縁用押圧部材と、前記中央用押圧部を有する中央用押圧部材と、操作主体から直接的に入力される操作体とを有しており、
前記周縁用押圧部材は、その中央付近に形成された中央孔に前記中央用押圧部材を挿通して配設されており、
前記中央用押圧部材は、押圧方向の前方が前記周縁用押圧部材の中央孔の外形よりも大きくなり、押圧方向の後方が前記周縁用押圧部材の中央孔の外形と同等もしくはその外形よりも小さくなるような押圧方向に対して外形の異なる形状に形成されている
ことを特徴とする請求項8から請求項15のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項17】
前記操作部材が前記周縁用可動電極もしくは前記中央用可動電極を押圧した際に前記操作部材の初期位置へ当該操作部材を復元させる方向に復元力を生じさせる弾性アームを有している
ことを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項18】
前記弾性アームは、前記筐体に形成された開口部を覆うように蓋状に形成されている
ことを特徴とする請求項17に記載の多方向入力装置。
【請求項19】
前記筐体は、前記周縁用押圧部材の径方向外側への摺動移動量を拘束する蓋体と、前記蓋体の反対方向から前記周縁用押圧部を摺動自在に支持するガイド壁とを有しており、
前記周縁用押圧部材は、前記中央用押圧部と前記中央用可動電極とが接している部分を摺動させながら前記周縁用可動電極を押圧するように形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項20】
前記筐体は、前記周縁用押圧部材の径方向外側への摺動移動量を拘束する蓋体を有しており、
前記周縁用押圧部材は、前記中央用押圧部と前記中央用可動電極との接点を回転支点として前記周縁用可動電極を押圧するように形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−318859(P2006−318859A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142749(P2005−142749)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】