多方向入力装置
【課題】 プッシュスイッチをスムーズに押圧操作可能なプッシュスイッチ付きの多方向入力装置を提供する。
【解決手段】 筺体2の開口部2bから一端側が突出されると共に、他端側が収容された操作軸1と、操作軸1の傾倒動作を検出する検出手段12、13、14b、9と、操作軸1の傾倒動作及び押圧動作に伴って操作されるプッシュスイッチ14(14a、14b)、15と、プッシュスイッチ14、15と操作軸1の他端側との間に配設されプッシュスイッチ14、15を押圧操作する押圧部材5とを備え、収納部内のプッシュスイッチ14、15の外側に可動接片15の外周を囲むように筒状のガイド壁4aを設けると共に、押圧部材5にガイド壁4aの外周面に案内される内周面を有する筒状の突出壁5aを設け、突出壁5aとガイド壁4aとを係合させて押圧部材5を操作軸1の軸線方向に摺動可能に配設した。
【解決手段】 筺体2の開口部2bから一端側が突出されると共に、他端側が収容された操作軸1と、操作軸1の傾倒動作を検出する検出手段12、13、14b、9と、操作軸1の傾倒動作及び押圧動作に伴って操作されるプッシュスイッチ14(14a、14b)、15と、プッシュスイッチ14、15と操作軸1の他端側との間に配設されプッシュスイッチ14、15を押圧操作する押圧部材5とを備え、収納部内のプッシュスイッチ14、15の外側に可動接片15の外周を囲むように筒状のガイド壁4aを設けると共に、押圧部材5にガイド壁4aの外周面に案内される内周面を有する筒状の突出壁5aを設け、突出壁5aとガイド壁4aとを係合させて押圧部材5を操作軸1の軸線方向に摺動可能に配設した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に係り、特に中央に押圧操作用のプッシュスイッチを備えたセンタープッシュスイッチ付きの傾倒型多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセンタープッシュスイッチ付きの傾倒型多方向入力装置としては、操作軸の軸線方向の移動動作でスイッチをオン、オフさせるプッシュスイッチを備え、操作軸の傾倒動作により8方向のスイッチ、及びプッシュスイッチを操作するようにした構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の多方向入力装置の構造を図14、図15に示す。図14は従来の多方向入力装置の断面図、図15は同分解斜視図であり、同図において、21は、上方開口の凹部を備えた絶縁樹脂製の下ケースで、凹部底面には中央固定接点22および外側固定接点23からなる第一固定接点24が設けられ、それぞれの固定接点22および23と電気的に導通した端子22Aおよび23Aが外方に導出されている。この外側固定接点23には、導電金属薄板からなる円形ドーム状の可動接点25の外周下端部25Aが当接状態に載せられている。
【0004】
また、下ケース21の上方開口部を覆うように、中央に円形の孔部26Aを有し、裏面に第二固定接点27が設けられた絶縁樹脂製の上ケース26が下ケース21に結合されている。この上ケース26は、孔部26Aを構成する端部の裏面側が球状に形成された球状壁部26Bで構成されると共に、正八角形の下方開口の凹部26Cを備えたものとなっており、凹部26Cの天面の露出している部分に合計で十六個の第二固定接点27が設けられたものとなっている。
【0005】
この上ケース26の孔部26Aと凹部26Cは、中心位置を合わせて設けられている。そして、この十六個の第二固定接点27の配置状態は、孔部26Aの中心位置から等距離で、かつ上ケース26の正八角形に形成された凹部26Cの一つの辺に対して各々二つずつ配設されている。また、上ケース26からは、合計で八本の各々電気的に独立状態に配された端子28が導出されており、端子28のそれぞれは、上記第二固定接点27の内、凹部26Cの角部を形成する隣接する一方の辺側に配された一つと他方の辺側に配された一つとに電気的に接続されている。
【0006】
29は絶縁樹脂製の筒状部材で、上方が円形孔30Aで下方が小判形孔30Bとなった貫通孔30を有すると共に、その外周中間部に外形が凹部26Cよりも少し小さい正八角形に形成された導電性の鍔部31がインサート成形によって固定され、この筒状部材29と鍔部31で可動接点体32を構成している。筒状部材29は、上方外周部分が球状壁部26Bと同一径の球形状に加工された上部球体部29Aを備えたものとなっている。
【0007】
33は導電材料からなる弾性部材であるコイルバネで、下端を外側固定接点23に電気的に接続させて下ケース21内に収容装着され、その上端は、上面が平坦なリング状の導電材料製の押え部材34の裏面に当接して押え部材34に上方への付勢力を加えている。そして、上記可動接点体32は、この押え部材34の内周部分の上面に導電性の鍔部31が載せられると共に、筒状部材29の上部球体部29Aが上ケース26の球状壁部26Bに係合するように配されている。
すなわち、この可動接点体32は、押え部材34を介して鍔部31にコイルバネ33の上方への付勢力を受け、かつ上ケース26との係合箇所が共に球形状であるために、水平状態を保つことができるものとなっている。
【0008】
このとき、図14に示すように、押え部材34の平坦な上面外周部を上ケース26の凹部26Cを構成する側壁部の下端面26Dに当接させて停止させ、この際に筒状部材29の上部球体部29Aが上ケース26の球状壁部26Bに係合する寸法で構成すると、押え部材34の水平状態を容易に安定化させることができ、これにより可動接点体32も安定した水平状態を保てるようにできる。
また、この場合には、上ケース26の凹部26Cの中に鍔部31が収容されることとなり、それぞれは正八角形の形状に形成されているために、上ケース26の凹部26Cに対して可動接点体32の回転を容易に防止できる。
【0009】
そして、この可動接点体32の貫通孔30には、棒状の操作軸35が挿通され、その上方部は上ケース26の孔部26Aから外方に突出して操作部35Cとなると共に、球形状に形成された下端部35Aは、可動接点25の頂点部25B上に載置された絶縁性の押圧部材36の上面に当接状態に配されている。
また、この操作軸35は、中央外周部に小判形部35Bを備え、この小判形部35Bが、筒状部材29の貫通孔30の小判形孔30Bに係合されることによって、操作軸35は可動接点体32に対して回転はせず、かつ所定距離の上下動可能に保持されている。
【0010】
そして、上述のごとく、操作軸35を挿通保持している可動接点体32は、通常状態において水平状態に保持されているために、操作力が加わっていない状態では、可動接点体32の筒状部材29に保持されている操作軸35も垂直な中立位置を保っている。そして、上ケース26の上方から装着された金属カバー37の脚部37Aが下ケース21の底面にカシメ固定されることによって、上ケース26と下ケース21は結合されている。
【0011】
【特許文献1】特開2001−110278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来の多方向入力装置においては、可動接点25を押圧操作する押圧部材36が、円筒状の壁部内に上下方向に移動可能に収納されているものの、押圧部材36が板状であることから、傾いて、壁部とかみ合ってしまい、スムーズなプッシュスイッチの押圧操作が得られないという問題があった。
【0013】
従って、本発明は上記した問題点を解決し、プッシュスイッチをスムーズに押圧操作可能なプッシュスイッチ付きの多方向入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明の多方向入力装置では第1の解決手段として、収納部及びこの収納部に連通する開口部を有する筺体と、この筺体の前記開口部から一端側が突出されると共に、多方向に傾倒動作可能でかつ軸線方向に押圧動作可能に前記収納部内に他端側が収容された操作軸と、前記収納部に配設され前記操作軸の傾倒動作を検出する検出手段と、前記収納部に配設され前記操作軸の傾倒動作及び押圧動作に伴って操作される反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片及び該可動接片と接離する中央固定接点とを有するプッシュスイッチと、このプッシュスイッチと前記操作軸の他端側との間に配設され前記プッシュスイッチを押圧操作する押圧部材とを備え、前記収納部内の前記プッシュスイッチの外側に前記可動接片の外周を囲むように筒状のガイド壁を設けると共に、前記押圧部材に前記ガイド壁の外周面に案内される内周面を有する筒状の突出壁を設け、この突出壁と前記ガイド壁とを係合させて前記押圧部材を前記操作軸の軸線方向に摺動可能に配設した構成とした。
【0015】
また、第2の解決手段として、前記ガイド壁と前記押圧部材との間に弾性部材を設け、この弾性部材により前記押圧部材を介して前記操作軸をその操作部側に付勢するようにした構成とした。
また、第3の解決手段として、前記ガイド壁に該ガイド壁の内側から外側に貫通する切り欠き部を設けた構成とした。
また、第4の解決手段として、前記ガイド壁部と前記押圧部材に、前記操作軸の軸線方向に対向する面を形成し、この対向する面に前記押圧部材の軸線方向の移動を規制するストッパ部を設けた構成とした。
【0016】
また、第5の解決手段として、前記押圧部材には、前記操作軸の他端側と対向する前記突出壁の中央に、前記操作軸の他端側端部を収容する凹部が設けられている構成とした。
また、第6の解決手段として、前記操作軸は、前記開口部内の所定方向に傾倒可能であり、前記操作軸が所定方向以外の方向に傾倒するのを規制する規制部を前記開口内に設け、該規制部を前記操作軸に沿って設けられた複数の突堤で形成した構成とした。
また、第7の解決手段として、前記検出手段は、前記収納部に設けられた共通固定接点及び個別固定接点と、前記操作軸の傾倒動作に伴って傾動する駆動体に設けられ、前記個別固定接点と接離する可動接点板と、この可動接点板と前記共通固定接点との間に弾接され、前記共通固定接点と前記可動接点板とを導通させると共に、前記可動接点板を前記個別固定接点側に付勢するコイルばねとからなる構成とした。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明の多方向入力装置は、収納部及び収納部に連通する開口部を有する筺体と、筺体の開口部から一端側が突出されると共に、多方向に傾倒動作可能でかつ軸線方向に押圧動作可能に収納部内に他端側が収容された操作軸と、収納部に配設され操作軸の傾倒動作を検出する検出手段と、収納部に配設され操作軸の傾倒動作及び押圧動作に伴って操作される反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片及び可動接片と接離する中央固定接点とを有するプッシュスイッチと、プッシュスイッチと操作軸の他端側との間に配設されプッシュスイッチを押圧操作する押圧部材とを備え、収納部内のプッシュスイッチの外側に可動接片の外周を囲むように筒状のガイド壁を設けると共に、押圧部材にガイド壁の外周面に案内される内周面を有する筒状の突出壁を設け、突出壁とガイド壁とを係合させて押圧部材を操作軸の軸線方向に摺動可能に配設したことから、筒状のガイド壁に筒状の突出壁が案内されて押圧部材が操作軸の軸線方向に摺動するので、押圧部材の案内が確実となり、プッシュスイッチの可動接片を押圧する際に適切な位置をスムーズに押圧操作することができ、反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片の反転動作が確実に行え、明確なクリック感触を得ることができる。
【0018】
また、ガイド壁と押圧部材との間に弾性部材を設け、弾性部材により押圧部材を介して操作軸をその操作部側に付勢するようにしたことから、操作軸の軸線方向のガタを抑制することができ、ガイド壁の外壁と突出壁の内壁とによる安定した案内が可能となる。
また、ガイド壁にガイド壁の内側から外側に貫通する切り欠き部を設けたことから、切り欠き部がガイド壁内外の空気の流通を可能にするので、突出壁の内部が真空状態になることがなく、プッシュスイッチの動作をより円滑にすると共に、押圧部材の復帰が確実なものとなる。
また、ガイド壁部と押圧部材に、操作軸の軸線方向に対向する面を形成し、この対向する面に押圧部材の軸線方向の移動を規制するストッパ部を設けたことから、操作軸に軸線方向への過大な荷重が加えられても、押圧部材が変形するのを防止できると共に、プッシュスイッチの可動接片に過大な力が作用するのを防止することができる。
【0019】
また、押圧部材には、操作軸の他端側と対向する突出壁の中央に、操作軸の他端側端部を収容する凹部が設けられていることから、押圧部材に筒状の突出壁を設けた場合においても全体の厚さを薄く形成できるので、装置の薄型化を図ることが可能となる。
また、操作軸は、開口部内の所定方向に傾倒可能であり、操作軸が所定方向以外の方向に傾倒するのを規制する規制部を開口部内に設け、該規制部を操作軸に沿って設けられた複数の突堤で形成したことから、操作軸に沿って長尺状に設けられた突堤によって操作軸が規制されるので、操作軸の所定方向以外への傾倒操作を確実に規制することができる。
また、検出手段は、収納部に設けられた共通固定接点及び個別固定接点と、操作軸の傾倒動作に伴って傾動する駆動体に設けられ、個別固定接点と接離する可動接点板と、可動接点板と共通固定接点との間に弾接され、共通固定接点と可動接点板とを導通させると共に、可動接点板を個別固定接点側に付勢するコイルばねとからなることから、簡単な構造で、確実に操作軸の傾倒方向を検出できると共に、容易に操作軸のセンター位置への復帰を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図13に示す。図1は本発明の多方向入力装置を示す分解斜視図、図2は本発明の多方向入力装置を示す断面図、図3は本発明の上ケースを示す平面図、図4は本発明の上ケースを示す底面図、図5は本発明の下ケースを示す平面図、図6は図5の6−6線における断面図、図7は本発明の押圧部材を示す断面図、図8本発明の押圧部材を示す底面図、図9は本発明の弾性部材を示す平面図、図10は本発明の弾性部材を示す正面面、図11は本発明の多方向入力装置の傾倒動作を説明する断面図、図12は本発明の多方向入力装置の傾倒動作を説明する断面図、図13は本発明の多方向入力装置の押圧動作を説明する断面図である。
【0021】
図1に示すように本発明の多方向入力装置は、傾倒及び押圧操作可能な操作軸1と、この操作軸1が挿通される開口部を有し、操作軸1の傾倒動作を検出する検出手段を構成する個別固定接点12が配設された上ケース2と、操作軸1の傾倒動作に伴って傾動して個別固定接点12と接離する可動接点板13を有する駆動体3と、プッシュスイッチの一部を構成する中央固定接点14a及び共通固定接点14bが配設された下ケース4と、操作軸1の押圧に伴って中央固定接点14aと接離する可動接片15を押圧する押圧部材5と、共通固定接点14bと可動接点板13との間に弾接され、可動接点板13及び駆動体3を個別固定接点12が配設された上ケース2の方向へ付勢するコイルばね9と、コードパターン16が設けられ、このコードパターン16と摺接する摺動子17を有する回転体7を回転可能に収容する中ケース6と、上ケース2と中ケース6及び下ケース4を一体的に重合させる取付板8とから主に構成されている。尚、上ケース2、中ケース6、下ケース4及び取付板8から、本発明の多方向入力装置の筺体が構成されている。
【0022】
図5、図6は下ケース4を示し、この下ケース4は合成樹脂等の絶縁材からなり、外形が略八角形状に形成されている。この下ケース4の中央には略円環状をした筒状のガイド壁4aが設けられている。また、筒状のガイド壁4aの一部には筒部の内側から外側に貫通する切り欠き部4bが設けられており、この切り欠き部4bを設けることでガイド壁4a内の空気の出入りを許容している。また、ガイド壁4aの外周部の下方には平坦面からなる略円環状の段部4cが設けられており、この段部4cと後述する押圧部材5の突出壁5aの先端部とが対向して配設されるものとなっている。また、下ケース4のそれぞれ直交する方向の対向する4辺部には、上下に貫通するガイド孔4dが設けられており、このガイド孔4dに後述する取付板8の取付脚8cが挿通されるものとなっている。
【0023】
また、ガイド壁4aの内側の平面(内底面)及び外側の外周平面は、下ケース4の平面(内底面)よりも一段低く凹状に形成されている。このガイド壁4aの内底面中央には、導電性の金属板からなる中央固定接点14aがその一部を表出してインサート成形などの方法で埋設されており、この中央固定接点14aの外側に対向して一対の共通固定接点14bが、同じく、その一部を表出してインサート成形などの方法で埋設されている。また、この共通固定接点14bは、ガイド壁4aの外周平面にも導出され、円弧状の共通固定接点14bを形成している。また、中央固定接点14a及び共通固定接点14bから導出した外部端子14cが下ケース4の外方に突出して設けられている。
【0024】
また、ガイド壁4aの内底面に配設された中央固定接点14a及び共通固定接点14b上には、導電性の反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片15が配設されており、この時、可動接片15の外周縁部が共通固定接点14bに接触し、ドーム状の頂部中央が中央固定接点14aと対向した状態となっている。
また、ガイド壁4aの外周平面に配設された円弧状の共通固定接点14b上には、円環状の金属板からなるばね受11が載置されており、ガイド壁4aの外側には、ばね受11を介して導電性の金属製のコイルばね9の一端側が載置されている。そして、このコイルばね9の他端側は、同じく金属製のばね受11を介して、後述する駆動体3に設けられた導電性の金属板からなる可動接点板13と導通されるものとなっている。
【0025】
図7,図8は押圧部材5を示し、この押圧部材5は合成樹脂等の絶縁材からなり、外形が円形で略円盤状に形成されている。この押圧部材5の外周部には図7の下方に向かって円環状をした筒状の突出壁5aが設けられており、また、図7の上方側の中央には押圧部材5の厚みの略半分程窪んだ円形状の凹部5bが設けられている。また、凹部5bの反対側である図7の下方側の中央には下方側に突出した押圧突起5cが設けられている。この押圧部材5は、下ケース4のガイド壁4a上に載置され、筒状の突出壁5aが筒状のガイド壁4aに案内されて押圧部材5が上下方向に摺動するものとなっている。
【0026】
また、この場合、筒状の突出壁5aの内径L1(図7参照)は、これと係合する筒状のガイド壁4aの外径L2(図6参照)よりも大きく形成されており、このため、押圧部材5の突出壁5aをガイド壁4aの外側に係合して配置することができ、ガイド壁4aの外壁と突出壁5aの内壁とにより安定した案内ができるものとなっている。
また、ガイド壁4aの先端部と押圧部材5の突出壁5aの内側の天面との間には、図9、図10に示すような金属製で環状のウエーブワッシャ等からなる弾性部材10が挿入されており、この弾性部材10により押圧部材5がガイド壁4aの壁面に沿って上方へ付勢されている。この弾性部材10の付勢力によって押圧部材5を介して後述する操作軸1が操作部側に付勢されており、操作軸1の軸線方向のガタを抑制するものとなっている。
【0027】
また、ガイド壁4aの外周部の下方には平坦面からなる略円環状の段部4cが設けられており、この段部4cと押圧部材5の突出壁5aの先端部とが対向して配設されており、操作軸1の押圧操作時に押圧部材5の突出壁5aの先端部が、ガイド壁4aの外周部の段部4cと当接することでそれ以上の移動を規制するストッパ部を構成している。
このために、操作軸1に軸線方向への過大な荷重が加えられても、押圧部材5が変形するのを防止できると共に、プッシュスイッチの可動接片15に過大な力が作用するのを防止することができるものとなっている。
【0028】
中ケース6は、合成樹脂等の絶縁材からなり、同じく外形が略八角形状に形成されている。この中ケース6は上面開口の箱状に形成され、その内底部中央には円形の窓口6aが設けられている。また、この窓口6aの周面の内底面には、適宜、所定のピッチでその一部が表出して埋設された導電性の金属板からなるコードパターン16が配設されている。また、中ケース6の開口内には、このコードパターン16に摺接する弾性を有する金属薄板からなる摺動子17が固着された回転体7が回転可能に収容されている。
【0029】
回転体7は、合成樹脂等の絶縁材で中央に窓口7aを有する円環状に形成されており、その上面側には複数の凹凸からなるクリック用のカム7bと、後述する駆動体3の係合凹部3dと嵌合して共回り可能となる一対の係合突起7cが形成されている。また、その反対側である下面側には摺動子17が固着されており、この摺動子17がコードパターン16と接触した状態で回転体7が中ケース6の開口内に回転可能に収容されている。また、コードパターン16から導出した外部端子16aが中ケース6の外方に突出して設けられている。
この中ケース6は、中央の窓口6aに、下ケース4の筒状のガイド壁4a、押圧部材5、及びコイルばね9が挿通された状態で、下ケース4の上面側に一体的に嵌合されている。
【0030】
図3、図4は上ケース2を示し、この上ケース2は合成樹脂等の絶縁材からなり、外形が略八角形状に形成されている。この上ケース2の中央には上方へ突出する円筒状の軸受け部2aが設けられており、この軸受け部2aの中央には上下に貫通する開口部2bが設けられている。この開口部2bは、上方側のやや小径の小径部2cとこの小径部2cの下方側に連接するやや大径の大径部2dとから形成されている。また、小径部2cは、上下方向(開口部2bに挿通される操作軸1の軸線方向)に所定の厚みを有して設けられており、対向する4方向へそれぞれ窪み部2eを有する略十字状に形成され、それぞれの窪み部2eの間には、操作軸1に沿って長尺状に設けられた複数の突堤2fが形成されている。
【0031】
このように、操作軸1に沿って長尺状に複数の突堤2fを設けることにより、これらの突堤2fによって操作軸1が窪み部2e以外の方向へ傾倒するのが規制されるので、操作軸1の所定方向以外への傾倒操作を確実に規制することができるものとなっている。この場合、突堤2fは、操作軸1の軸線方向に沿って長尺状に形成されているので、幅広の突堤2fにより操作軸1が軸線方向に沿って規制されることからより確実に規制することができるものとなる。
【0032】
また、上ケース2の軸受け部2aの外側の上面側には、上方へ突出する一対のガイド突起2gが設けられており、このガイド突起2gに後述する取付板8のガイド孔8dが挿通されて位置決めされるものとなっている。
また、これと反対側の上ケース2の下面側には、導電性の金属板からなる複数の個別固定接点12、12がその一部を表出させてインサート成形等の方向で一体に埋設されている。この個別固定接点12は、操作軸1の傾倒方向であるそれぞれの窪み部2eが設けられた十字状の位置に対応して4箇所にそれぞれ設けられている。また、個別固定接点12から導出した外部端子12aが上ケース2の外方に突出して設けられている。また、個別固定接点12の内側で開口部2bの外周縁には、下方に突出した環状の突条部2hが設けられている。
【0033】
また、上ケース2の下面側には、個別固定接点12の外側の位置に弾性を有する薄板金属板からなる環状のクリック用板ばね18が固着されている。このクリック用板ばね18が、中ケース6の開口内に回転可能に収容された回転体7の上面側に形成されたクリック用のカム7bと摺接することにより、操作軸1の回転操作時のクリック感触が得られるものとなっている。
【0034】
操作軸1は、合成樹脂等の絶縁材からなり、略円柱状の操作部1aと、この操作部1aより大径の小判状の鍔部1bとを有している。また、鍔部1bの先端側には円弧状の押圧部1cが設けられており、この押圧部1cが押圧部材5の上面側に設けられた凹部5b内に収容されて、凹部5bの内底面と当接した状態で配置されている。このように、操作軸1の押圧部1cが凹部5b内に収容されていることから、押圧部材5に筒状の突出壁5aを設けた場合においても全体の厚さを薄く形成できるので、装置の薄型化を図ることが可能となっている。
【0035】
駆動体3は、合成樹脂等の絶縁材からなる略円筒状の基部3aの外周部に、円形状の導電性の金属板からなる可動接点板13の上面側および下面側の周縁部の一部を表出した状態でインサート成形等の方法で一体に埋設して形成されている。また、この駆動体3の基部3aには、円形の挿通孔3b及び小判形の嵌合孔3cが設けられており、円形の挿通孔3bに操作軸1の操作部1aが挿通され、小判形の嵌合孔3cに鍔部1bが嵌入された状態で、操作軸1と駆動体3とが一体的に係合されている。そして、駆動体3は操作軸1に、操作軸1の軸線方向には単独で移動可能で、操作軸1の回転方向には共回り可能なように係合されている。
【0036】
この操作軸1及び駆動体3は、上ケース2の軸受け部2aに設けられた開口部2bに挿通され、図2に示すように、駆動体3の可動接点板13の下面側が、ばね受11を介してコイルばね9によって上方に付勢されており、可動接点板13の上面側と上ケース2の下面側に表出された複数の個別固定接点12とが対向された状態で配設されている。この時、可動接点板13の上面側は、上ケース2の下面側に設けられた環状の突条部2hと当接され、個別固定接点12とは離間された状態となっている。
【0037】
また、駆動体3の外周縁部の対向する位置には、一対の係合凹部3dが設けられており、この係合凹部3dと、回転体7の上面側に設けられた係合突起7cが係合することにより、操作軸1の回転操作に伴って、共回りする駆動体3を介して回転体7が回転されるものとなっている。この時、回転体7に固着された摺動子17が中ケース6に設けられたコードパターン16と摺接することにより、コード信号出力が得られ回転検出を行うようになっている。(図1及び図2参照)
【0038】
また、操作軸1の操作部1aは軸線方向と直交する所定方向(本実施例では十字状の4方向)に傾倒動作可能で、かつ、軸線方向に押圧動作可能に設けられている。この時、操作軸1は、操作部1aが軸受け部2aの開口部2b(小径部2c)の対向する4方向に設けられたそれぞれの窪み部2eに沿って十字方向に傾倒動作可能となっている(図3参照)。また、操作軸1は、操作部1aが駆動体3の挿通孔3bに沿って押圧動作可能となっている。
【0039】
取付板8は、金属板からなり、中央に挿通孔8bを有する環状の基板部8aと、この基板部8aのそれぞれ対向する4箇所の周縁部から折り曲げ形成された取付脚8cとを有している。また、基板部8aには円と楕円形状からなる一対のガイド孔8dが設けられている。
この取付板8は、下ケース4と中ケース6と上ケース2がそれぞれ重ねられて一体的に係合される際に、中央の挿通孔8bに上ケース2の軸受け部2aが挿通されて上面側から冠着され、一対のガイド孔8dが一対の上ケース2のガイド突起2gに嵌合されると共に、4個の取付脚8cが下ケース4の対向する4辺部に設けられたガイド孔4dに挿入され、その先端がかしめられることにより、上ケース2と中ケース6と下ケース4を一体的に係合して筺体を構成するものとなっている。そして、一体的に係合された筺体の内部に形成される収納部に、可動接片15、弾性部材10、押圧部材5、ばね受11、コイルばね9、及び操作軸1が挿通された駆動体3がそれぞれ収容されている。
【0040】
次に、図11乃至図13を用いて本発明の多方向入力装置の傾倒及び押圧動作について説明する。
図11は、操作軸1の操作部1aを、図示左側に若干傾倒させた状態を示している。この時、操作軸1と一体的に係合された駆動体3は、コイルばね9の付勢力に抗して、図示右側の上ケース2の下面側に設けられた突条部2hを支点として反時計方向に回転するものとなり、図示左側の可動接点板13の先端と図示左側の個別固定接点12との間隔が大きくなると共に、これとは反対側に位置する図示右側の可動接点板13の先端と図示右側の個別固定接点12とが接触することにより、可動接点板13とコイルばね9とばね受11を介して個別固定接点12と共通固定接点14bがオン状態となることから、操作軸1の傾倒方向の検出が行われるものとなる。
この場合、操作軸1の先端の押圧部1cにより、押圧部材5の上面側に設けられた凹部5bの内底面が押され、押圧部材5が若干押し下げられるが、下方に配設されたプッシュスイッチ用のドーム状の可動接片15は反転されず、プッシュスイッチはオフ状態を維持している。
【0041】
次に、図11の状態から、図12に示すように更に操作軸1の操作部1aを図示左側に傾倒させると、今度は、図示右側の可動接点板13の先端と図示右側の個別固定接点12とが接触した状態のまま、この接触部を支点として駆動体3が更に反時計方向に回転するものとなり、操作軸1の先端の押圧部1cにより、押圧部材5の上面側に設けられた凹部5bの内底面が更に下方に押され、押圧部材5が押し下げられることにより、下方に配設されたプッシュスイッチ用のドーム状の可動接片15が反転して、ドーム状の頂部下面と中央固定接点14aとが接触し、可動接片15を介して中央固定接点14aが共通固定接点14bと導通してオン状態となることにより、傾倒方向における第2の検出が行われるものとなる。
尚、操作軸1の操作部1aを図示右側に傾倒させた場合においても、同様な動作となるためその説明を省略する。また、上記実施例では、4方向の傾倒動作について説明したが、本発明はこれに限定されずに、8方向などの多方向の傾倒動作にも適用できるのはもちろんである。
【0042】
図13は、操作軸1の操作部1aを、図示下側へ押圧した状態を示している。この時、駆動体3は移動されず、操作軸1のみが図示下側に移動するものとなり、操作軸1の先端の押圧部1cにより、押圧部材5の上面側に設けられた凹部5bの内底面が下方に押され、押圧部材5が押し下げられることにより、下方に配設されたプッシュスイッチ用のドーム状の可動接片15が反転して、ドーム状の頂部下面と中央固定接点14aとが接触し、可動接片15を介して中央固定接点14aが共通固定接点14bと導通してオン状態となることにより、操作軸1の押圧方向の検出が行われるものとなる。この時、傾倒動作を検出する検出手段である可動接点板13と個別固定接点12とは離間しておりオフ状態を維持している。
【0043】
この場合、押圧部材5は、下ケース4のガイド壁4a上に載置され、筒状の突出壁5aが筒状のガイド壁4aに案内されて押圧部材5が上下方向に摺動するものとなっており、押圧部材5の突出壁5aがガイド壁4aの外側に係合して配置されていることから、ガイド壁4aの外壁と突出壁5aの内壁とにより安定した案内ができるものとなっている。また、ガイド壁4aの先端部と押圧部材5の突出壁5aの内側の天面との間には、金属製で環状のウエーブワッシャ等からなる弾性部材10が挿入されており、この弾性部材10により押圧部材5がガイド壁4aの壁面に沿って上方へ付勢され、この弾性部材10の付勢力によって押圧部材5を介して操作軸1が操作部側に付勢されていることから、操作軸1の軸線方向のガタを抑制するものとなっている。
【0044】
また、ガイド壁4aの外周部の下方には平坦面からなる略円環状の段部4cが設けられており、この段部4cと押圧部材5の突出壁5aの先端部とが対向して配設されており、操作軸1の押圧操作時に押圧部材5の突出壁5aの先端部が、ガイド壁4aの外周部の段部4cと当接することでストッパーとなりそれ以上の移動を規制している。このために、操作軸1に軸線方向への過大な荷重が加えられても、押圧部材5が変形するのを防止できると共に、プッシュスイッチの可動接片15に過大な力が作用するのを防止することができるものとなっている。
【0045】
上記した本発明の実施例によれば、下ケース4に収納されたプッシュスイッチの外側に可動接片15の外周を囲むように筒状のガイド壁4aを設けると共に、押圧部材5にこのガイド壁4aの外周面に案内される内周面を有する筒状の突出壁5aを設け、この突出壁5aとガイド壁4aとを係合させて押圧部材5を操作軸1の軸線方向に摺動可能に配設したことから、筒状のガイド壁4aに筒状の突出壁5aが案内されて押圧部材5が操作軸1の軸線方向に摺動するので、押圧部材5の案内が確実となり、プッシュスイッチの可動接片15を押圧する際に適切な位置をスムーズに押圧操作することができ、反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片15の反転動作が確実に行え、明確なクリック感触を得ることができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の多方向入力装置を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の多方向入力装置を示す断面図である。
【図3】本発明の上ケースを示す平面図である。
【図4】本発明の上ケースを示す底面図である。
【図5】本発明の下ケースを示す平面図である。
【図6】本発明の図5の6−6線における断面図である。
【図7】本発明の押圧部材を示す断面図である。
【図8】本発明の押圧部材を示す底面図である。
【図9】本発明の弾性部材を示す平面図である。
【図10】本発明の弾性部材を示す正面面である。
【図11】本発明の多方向入力装置の傾倒動作を説明する断面図である。
【図12】本発明の多方向入力装置の傾倒動作を説明する断面図である。
【図13】本発明の多方向入力装置の押圧動作を説明する断面図である。
【図14】従来の多方向入力装置を示す断面図である。
【図15】従来の多方向入力装置を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1:操作軸
1a:操作部
1b:鍔部
1c:押圧部
2:上ケース
2a:軸受け部
2b:開口部
2c:小径部
2d:大径部
2e:窪み部
2f:突堤
2g:ガイド突起
2h:突条部
3:駆動体
3a:基部
3b:挿通孔
3c:嵌合孔
3d:係合凹部
4:下ケース
4a:ガイド壁
4b:切り欠き部
4c:段部
4d:ガイド孔
5:押圧部材
5a:突出壁
5b:凹部
5c:押圧突起
6:中ケース
6a:窓口
7:回転体
7a:窓口
7b:カム
7c:係合突起
8:取付板
8a:基板部
8b:挿通孔
8c:取付脚
8d:ガイド孔
9:コイルばね
10:弾性部材
11:ばね受
12:個別固定接点
12a:外部端子
13:可動接点板
14a:中央固定接点
14b:共通固定接点
14c:外部端子
15:可動接片
16:コードパターン
16a:外部端子
17:摺動子
18:クリック用板ばね
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に係り、特に中央に押圧操作用のプッシュスイッチを備えたセンタープッシュスイッチ付きの傾倒型多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセンタープッシュスイッチ付きの傾倒型多方向入力装置としては、操作軸の軸線方向の移動動作でスイッチをオン、オフさせるプッシュスイッチを備え、操作軸の傾倒動作により8方向のスイッチ、及びプッシュスイッチを操作するようにした構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の多方向入力装置の構造を図14、図15に示す。図14は従来の多方向入力装置の断面図、図15は同分解斜視図であり、同図において、21は、上方開口の凹部を備えた絶縁樹脂製の下ケースで、凹部底面には中央固定接点22および外側固定接点23からなる第一固定接点24が設けられ、それぞれの固定接点22および23と電気的に導通した端子22Aおよび23Aが外方に導出されている。この外側固定接点23には、導電金属薄板からなる円形ドーム状の可動接点25の外周下端部25Aが当接状態に載せられている。
【0004】
また、下ケース21の上方開口部を覆うように、中央に円形の孔部26Aを有し、裏面に第二固定接点27が設けられた絶縁樹脂製の上ケース26が下ケース21に結合されている。この上ケース26は、孔部26Aを構成する端部の裏面側が球状に形成された球状壁部26Bで構成されると共に、正八角形の下方開口の凹部26Cを備えたものとなっており、凹部26Cの天面の露出している部分に合計で十六個の第二固定接点27が設けられたものとなっている。
【0005】
この上ケース26の孔部26Aと凹部26Cは、中心位置を合わせて設けられている。そして、この十六個の第二固定接点27の配置状態は、孔部26Aの中心位置から等距離で、かつ上ケース26の正八角形に形成された凹部26Cの一つの辺に対して各々二つずつ配設されている。また、上ケース26からは、合計で八本の各々電気的に独立状態に配された端子28が導出されており、端子28のそれぞれは、上記第二固定接点27の内、凹部26Cの角部を形成する隣接する一方の辺側に配された一つと他方の辺側に配された一つとに電気的に接続されている。
【0006】
29は絶縁樹脂製の筒状部材で、上方が円形孔30Aで下方が小判形孔30Bとなった貫通孔30を有すると共に、その外周中間部に外形が凹部26Cよりも少し小さい正八角形に形成された導電性の鍔部31がインサート成形によって固定され、この筒状部材29と鍔部31で可動接点体32を構成している。筒状部材29は、上方外周部分が球状壁部26Bと同一径の球形状に加工された上部球体部29Aを備えたものとなっている。
【0007】
33は導電材料からなる弾性部材であるコイルバネで、下端を外側固定接点23に電気的に接続させて下ケース21内に収容装着され、その上端は、上面が平坦なリング状の導電材料製の押え部材34の裏面に当接して押え部材34に上方への付勢力を加えている。そして、上記可動接点体32は、この押え部材34の内周部分の上面に導電性の鍔部31が載せられると共に、筒状部材29の上部球体部29Aが上ケース26の球状壁部26Bに係合するように配されている。
すなわち、この可動接点体32は、押え部材34を介して鍔部31にコイルバネ33の上方への付勢力を受け、かつ上ケース26との係合箇所が共に球形状であるために、水平状態を保つことができるものとなっている。
【0008】
このとき、図14に示すように、押え部材34の平坦な上面外周部を上ケース26の凹部26Cを構成する側壁部の下端面26Dに当接させて停止させ、この際に筒状部材29の上部球体部29Aが上ケース26の球状壁部26Bに係合する寸法で構成すると、押え部材34の水平状態を容易に安定化させることができ、これにより可動接点体32も安定した水平状態を保てるようにできる。
また、この場合には、上ケース26の凹部26Cの中に鍔部31が収容されることとなり、それぞれは正八角形の形状に形成されているために、上ケース26の凹部26Cに対して可動接点体32の回転を容易に防止できる。
【0009】
そして、この可動接点体32の貫通孔30には、棒状の操作軸35が挿通され、その上方部は上ケース26の孔部26Aから外方に突出して操作部35Cとなると共に、球形状に形成された下端部35Aは、可動接点25の頂点部25B上に載置された絶縁性の押圧部材36の上面に当接状態に配されている。
また、この操作軸35は、中央外周部に小判形部35Bを備え、この小判形部35Bが、筒状部材29の貫通孔30の小判形孔30Bに係合されることによって、操作軸35は可動接点体32に対して回転はせず、かつ所定距離の上下動可能に保持されている。
【0010】
そして、上述のごとく、操作軸35を挿通保持している可動接点体32は、通常状態において水平状態に保持されているために、操作力が加わっていない状態では、可動接点体32の筒状部材29に保持されている操作軸35も垂直な中立位置を保っている。そして、上ケース26の上方から装着された金属カバー37の脚部37Aが下ケース21の底面にカシメ固定されることによって、上ケース26と下ケース21は結合されている。
【0011】
【特許文献1】特開2001−110278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来の多方向入力装置においては、可動接点25を押圧操作する押圧部材36が、円筒状の壁部内に上下方向に移動可能に収納されているものの、押圧部材36が板状であることから、傾いて、壁部とかみ合ってしまい、スムーズなプッシュスイッチの押圧操作が得られないという問題があった。
【0013】
従って、本発明は上記した問題点を解決し、プッシュスイッチをスムーズに押圧操作可能なプッシュスイッチ付きの多方向入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明の多方向入力装置では第1の解決手段として、収納部及びこの収納部に連通する開口部を有する筺体と、この筺体の前記開口部から一端側が突出されると共に、多方向に傾倒動作可能でかつ軸線方向に押圧動作可能に前記収納部内に他端側が収容された操作軸と、前記収納部に配設され前記操作軸の傾倒動作を検出する検出手段と、前記収納部に配設され前記操作軸の傾倒動作及び押圧動作に伴って操作される反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片及び該可動接片と接離する中央固定接点とを有するプッシュスイッチと、このプッシュスイッチと前記操作軸の他端側との間に配設され前記プッシュスイッチを押圧操作する押圧部材とを備え、前記収納部内の前記プッシュスイッチの外側に前記可動接片の外周を囲むように筒状のガイド壁を設けると共に、前記押圧部材に前記ガイド壁の外周面に案内される内周面を有する筒状の突出壁を設け、この突出壁と前記ガイド壁とを係合させて前記押圧部材を前記操作軸の軸線方向に摺動可能に配設した構成とした。
【0015】
また、第2の解決手段として、前記ガイド壁と前記押圧部材との間に弾性部材を設け、この弾性部材により前記押圧部材を介して前記操作軸をその操作部側に付勢するようにした構成とした。
また、第3の解決手段として、前記ガイド壁に該ガイド壁の内側から外側に貫通する切り欠き部を設けた構成とした。
また、第4の解決手段として、前記ガイド壁部と前記押圧部材に、前記操作軸の軸線方向に対向する面を形成し、この対向する面に前記押圧部材の軸線方向の移動を規制するストッパ部を設けた構成とした。
【0016】
また、第5の解決手段として、前記押圧部材には、前記操作軸の他端側と対向する前記突出壁の中央に、前記操作軸の他端側端部を収容する凹部が設けられている構成とした。
また、第6の解決手段として、前記操作軸は、前記開口部内の所定方向に傾倒可能であり、前記操作軸が所定方向以外の方向に傾倒するのを規制する規制部を前記開口内に設け、該規制部を前記操作軸に沿って設けられた複数の突堤で形成した構成とした。
また、第7の解決手段として、前記検出手段は、前記収納部に設けられた共通固定接点及び個別固定接点と、前記操作軸の傾倒動作に伴って傾動する駆動体に設けられ、前記個別固定接点と接離する可動接点板と、この可動接点板と前記共通固定接点との間に弾接され、前記共通固定接点と前記可動接点板とを導通させると共に、前記可動接点板を前記個別固定接点側に付勢するコイルばねとからなる構成とした。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明の多方向入力装置は、収納部及び収納部に連通する開口部を有する筺体と、筺体の開口部から一端側が突出されると共に、多方向に傾倒動作可能でかつ軸線方向に押圧動作可能に収納部内に他端側が収容された操作軸と、収納部に配設され操作軸の傾倒動作を検出する検出手段と、収納部に配設され操作軸の傾倒動作及び押圧動作に伴って操作される反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片及び可動接片と接離する中央固定接点とを有するプッシュスイッチと、プッシュスイッチと操作軸の他端側との間に配設されプッシュスイッチを押圧操作する押圧部材とを備え、収納部内のプッシュスイッチの外側に可動接片の外周を囲むように筒状のガイド壁を設けると共に、押圧部材にガイド壁の外周面に案内される内周面を有する筒状の突出壁を設け、突出壁とガイド壁とを係合させて押圧部材を操作軸の軸線方向に摺動可能に配設したことから、筒状のガイド壁に筒状の突出壁が案内されて押圧部材が操作軸の軸線方向に摺動するので、押圧部材の案内が確実となり、プッシュスイッチの可動接片を押圧する際に適切な位置をスムーズに押圧操作することができ、反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片の反転動作が確実に行え、明確なクリック感触を得ることができる。
【0018】
また、ガイド壁と押圧部材との間に弾性部材を設け、弾性部材により押圧部材を介して操作軸をその操作部側に付勢するようにしたことから、操作軸の軸線方向のガタを抑制することができ、ガイド壁の外壁と突出壁の内壁とによる安定した案内が可能となる。
また、ガイド壁にガイド壁の内側から外側に貫通する切り欠き部を設けたことから、切り欠き部がガイド壁内外の空気の流通を可能にするので、突出壁の内部が真空状態になることがなく、プッシュスイッチの動作をより円滑にすると共に、押圧部材の復帰が確実なものとなる。
また、ガイド壁部と押圧部材に、操作軸の軸線方向に対向する面を形成し、この対向する面に押圧部材の軸線方向の移動を規制するストッパ部を設けたことから、操作軸に軸線方向への過大な荷重が加えられても、押圧部材が変形するのを防止できると共に、プッシュスイッチの可動接片に過大な力が作用するのを防止することができる。
【0019】
また、押圧部材には、操作軸の他端側と対向する突出壁の中央に、操作軸の他端側端部を収容する凹部が設けられていることから、押圧部材に筒状の突出壁を設けた場合においても全体の厚さを薄く形成できるので、装置の薄型化を図ることが可能となる。
また、操作軸は、開口部内の所定方向に傾倒可能であり、操作軸が所定方向以外の方向に傾倒するのを規制する規制部を開口部内に設け、該規制部を操作軸に沿って設けられた複数の突堤で形成したことから、操作軸に沿って長尺状に設けられた突堤によって操作軸が規制されるので、操作軸の所定方向以外への傾倒操作を確実に規制することができる。
また、検出手段は、収納部に設けられた共通固定接点及び個別固定接点と、操作軸の傾倒動作に伴って傾動する駆動体に設けられ、個別固定接点と接離する可動接点板と、可動接点板と共通固定接点との間に弾接され、共通固定接点と可動接点板とを導通させると共に、可動接点板を個別固定接点側に付勢するコイルばねとからなることから、簡単な構造で、確実に操作軸の傾倒方向を検出できると共に、容易に操作軸のセンター位置への復帰を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図13に示す。図1は本発明の多方向入力装置を示す分解斜視図、図2は本発明の多方向入力装置を示す断面図、図3は本発明の上ケースを示す平面図、図4は本発明の上ケースを示す底面図、図5は本発明の下ケースを示す平面図、図6は図5の6−6線における断面図、図7は本発明の押圧部材を示す断面図、図8本発明の押圧部材を示す底面図、図9は本発明の弾性部材を示す平面図、図10は本発明の弾性部材を示す正面面、図11は本発明の多方向入力装置の傾倒動作を説明する断面図、図12は本発明の多方向入力装置の傾倒動作を説明する断面図、図13は本発明の多方向入力装置の押圧動作を説明する断面図である。
【0021】
図1に示すように本発明の多方向入力装置は、傾倒及び押圧操作可能な操作軸1と、この操作軸1が挿通される開口部を有し、操作軸1の傾倒動作を検出する検出手段を構成する個別固定接点12が配設された上ケース2と、操作軸1の傾倒動作に伴って傾動して個別固定接点12と接離する可動接点板13を有する駆動体3と、プッシュスイッチの一部を構成する中央固定接点14a及び共通固定接点14bが配設された下ケース4と、操作軸1の押圧に伴って中央固定接点14aと接離する可動接片15を押圧する押圧部材5と、共通固定接点14bと可動接点板13との間に弾接され、可動接点板13及び駆動体3を個別固定接点12が配設された上ケース2の方向へ付勢するコイルばね9と、コードパターン16が設けられ、このコードパターン16と摺接する摺動子17を有する回転体7を回転可能に収容する中ケース6と、上ケース2と中ケース6及び下ケース4を一体的に重合させる取付板8とから主に構成されている。尚、上ケース2、中ケース6、下ケース4及び取付板8から、本発明の多方向入力装置の筺体が構成されている。
【0022】
図5、図6は下ケース4を示し、この下ケース4は合成樹脂等の絶縁材からなり、外形が略八角形状に形成されている。この下ケース4の中央には略円環状をした筒状のガイド壁4aが設けられている。また、筒状のガイド壁4aの一部には筒部の内側から外側に貫通する切り欠き部4bが設けられており、この切り欠き部4bを設けることでガイド壁4a内の空気の出入りを許容している。また、ガイド壁4aの外周部の下方には平坦面からなる略円環状の段部4cが設けられており、この段部4cと後述する押圧部材5の突出壁5aの先端部とが対向して配設されるものとなっている。また、下ケース4のそれぞれ直交する方向の対向する4辺部には、上下に貫通するガイド孔4dが設けられており、このガイド孔4dに後述する取付板8の取付脚8cが挿通されるものとなっている。
【0023】
また、ガイド壁4aの内側の平面(内底面)及び外側の外周平面は、下ケース4の平面(内底面)よりも一段低く凹状に形成されている。このガイド壁4aの内底面中央には、導電性の金属板からなる中央固定接点14aがその一部を表出してインサート成形などの方法で埋設されており、この中央固定接点14aの外側に対向して一対の共通固定接点14bが、同じく、その一部を表出してインサート成形などの方法で埋設されている。また、この共通固定接点14bは、ガイド壁4aの外周平面にも導出され、円弧状の共通固定接点14bを形成している。また、中央固定接点14a及び共通固定接点14bから導出した外部端子14cが下ケース4の外方に突出して設けられている。
【0024】
また、ガイド壁4aの内底面に配設された中央固定接点14a及び共通固定接点14b上には、導電性の反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片15が配設されており、この時、可動接片15の外周縁部が共通固定接点14bに接触し、ドーム状の頂部中央が中央固定接点14aと対向した状態となっている。
また、ガイド壁4aの外周平面に配設された円弧状の共通固定接点14b上には、円環状の金属板からなるばね受11が載置されており、ガイド壁4aの外側には、ばね受11を介して導電性の金属製のコイルばね9の一端側が載置されている。そして、このコイルばね9の他端側は、同じく金属製のばね受11を介して、後述する駆動体3に設けられた導電性の金属板からなる可動接点板13と導通されるものとなっている。
【0025】
図7,図8は押圧部材5を示し、この押圧部材5は合成樹脂等の絶縁材からなり、外形が円形で略円盤状に形成されている。この押圧部材5の外周部には図7の下方に向かって円環状をした筒状の突出壁5aが設けられており、また、図7の上方側の中央には押圧部材5の厚みの略半分程窪んだ円形状の凹部5bが設けられている。また、凹部5bの反対側である図7の下方側の中央には下方側に突出した押圧突起5cが設けられている。この押圧部材5は、下ケース4のガイド壁4a上に載置され、筒状の突出壁5aが筒状のガイド壁4aに案内されて押圧部材5が上下方向に摺動するものとなっている。
【0026】
また、この場合、筒状の突出壁5aの内径L1(図7参照)は、これと係合する筒状のガイド壁4aの外径L2(図6参照)よりも大きく形成されており、このため、押圧部材5の突出壁5aをガイド壁4aの外側に係合して配置することができ、ガイド壁4aの外壁と突出壁5aの内壁とにより安定した案内ができるものとなっている。
また、ガイド壁4aの先端部と押圧部材5の突出壁5aの内側の天面との間には、図9、図10に示すような金属製で環状のウエーブワッシャ等からなる弾性部材10が挿入されており、この弾性部材10により押圧部材5がガイド壁4aの壁面に沿って上方へ付勢されている。この弾性部材10の付勢力によって押圧部材5を介して後述する操作軸1が操作部側に付勢されており、操作軸1の軸線方向のガタを抑制するものとなっている。
【0027】
また、ガイド壁4aの外周部の下方には平坦面からなる略円環状の段部4cが設けられており、この段部4cと押圧部材5の突出壁5aの先端部とが対向して配設されており、操作軸1の押圧操作時に押圧部材5の突出壁5aの先端部が、ガイド壁4aの外周部の段部4cと当接することでそれ以上の移動を規制するストッパ部を構成している。
このために、操作軸1に軸線方向への過大な荷重が加えられても、押圧部材5が変形するのを防止できると共に、プッシュスイッチの可動接片15に過大な力が作用するのを防止することができるものとなっている。
【0028】
中ケース6は、合成樹脂等の絶縁材からなり、同じく外形が略八角形状に形成されている。この中ケース6は上面開口の箱状に形成され、その内底部中央には円形の窓口6aが設けられている。また、この窓口6aの周面の内底面には、適宜、所定のピッチでその一部が表出して埋設された導電性の金属板からなるコードパターン16が配設されている。また、中ケース6の開口内には、このコードパターン16に摺接する弾性を有する金属薄板からなる摺動子17が固着された回転体7が回転可能に収容されている。
【0029】
回転体7は、合成樹脂等の絶縁材で中央に窓口7aを有する円環状に形成されており、その上面側には複数の凹凸からなるクリック用のカム7bと、後述する駆動体3の係合凹部3dと嵌合して共回り可能となる一対の係合突起7cが形成されている。また、その反対側である下面側には摺動子17が固着されており、この摺動子17がコードパターン16と接触した状態で回転体7が中ケース6の開口内に回転可能に収容されている。また、コードパターン16から導出した外部端子16aが中ケース6の外方に突出して設けられている。
この中ケース6は、中央の窓口6aに、下ケース4の筒状のガイド壁4a、押圧部材5、及びコイルばね9が挿通された状態で、下ケース4の上面側に一体的に嵌合されている。
【0030】
図3、図4は上ケース2を示し、この上ケース2は合成樹脂等の絶縁材からなり、外形が略八角形状に形成されている。この上ケース2の中央には上方へ突出する円筒状の軸受け部2aが設けられており、この軸受け部2aの中央には上下に貫通する開口部2bが設けられている。この開口部2bは、上方側のやや小径の小径部2cとこの小径部2cの下方側に連接するやや大径の大径部2dとから形成されている。また、小径部2cは、上下方向(開口部2bに挿通される操作軸1の軸線方向)に所定の厚みを有して設けられており、対向する4方向へそれぞれ窪み部2eを有する略十字状に形成され、それぞれの窪み部2eの間には、操作軸1に沿って長尺状に設けられた複数の突堤2fが形成されている。
【0031】
このように、操作軸1に沿って長尺状に複数の突堤2fを設けることにより、これらの突堤2fによって操作軸1が窪み部2e以外の方向へ傾倒するのが規制されるので、操作軸1の所定方向以外への傾倒操作を確実に規制することができるものとなっている。この場合、突堤2fは、操作軸1の軸線方向に沿って長尺状に形成されているので、幅広の突堤2fにより操作軸1が軸線方向に沿って規制されることからより確実に規制することができるものとなる。
【0032】
また、上ケース2の軸受け部2aの外側の上面側には、上方へ突出する一対のガイド突起2gが設けられており、このガイド突起2gに後述する取付板8のガイド孔8dが挿通されて位置決めされるものとなっている。
また、これと反対側の上ケース2の下面側には、導電性の金属板からなる複数の個別固定接点12、12がその一部を表出させてインサート成形等の方向で一体に埋設されている。この個別固定接点12は、操作軸1の傾倒方向であるそれぞれの窪み部2eが設けられた十字状の位置に対応して4箇所にそれぞれ設けられている。また、個別固定接点12から導出した外部端子12aが上ケース2の外方に突出して設けられている。また、個別固定接点12の内側で開口部2bの外周縁には、下方に突出した環状の突条部2hが設けられている。
【0033】
また、上ケース2の下面側には、個別固定接点12の外側の位置に弾性を有する薄板金属板からなる環状のクリック用板ばね18が固着されている。このクリック用板ばね18が、中ケース6の開口内に回転可能に収容された回転体7の上面側に形成されたクリック用のカム7bと摺接することにより、操作軸1の回転操作時のクリック感触が得られるものとなっている。
【0034】
操作軸1は、合成樹脂等の絶縁材からなり、略円柱状の操作部1aと、この操作部1aより大径の小判状の鍔部1bとを有している。また、鍔部1bの先端側には円弧状の押圧部1cが設けられており、この押圧部1cが押圧部材5の上面側に設けられた凹部5b内に収容されて、凹部5bの内底面と当接した状態で配置されている。このように、操作軸1の押圧部1cが凹部5b内に収容されていることから、押圧部材5に筒状の突出壁5aを設けた場合においても全体の厚さを薄く形成できるので、装置の薄型化を図ることが可能となっている。
【0035】
駆動体3は、合成樹脂等の絶縁材からなる略円筒状の基部3aの外周部に、円形状の導電性の金属板からなる可動接点板13の上面側および下面側の周縁部の一部を表出した状態でインサート成形等の方法で一体に埋設して形成されている。また、この駆動体3の基部3aには、円形の挿通孔3b及び小判形の嵌合孔3cが設けられており、円形の挿通孔3bに操作軸1の操作部1aが挿通され、小判形の嵌合孔3cに鍔部1bが嵌入された状態で、操作軸1と駆動体3とが一体的に係合されている。そして、駆動体3は操作軸1に、操作軸1の軸線方向には単独で移動可能で、操作軸1の回転方向には共回り可能なように係合されている。
【0036】
この操作軸1及び駆動体3は、上ケース2の軸受け部2aに設けられた開口部2bに挿通され、図2に示すように、駆動体3の可動接点板13の下面側が、ばね受11を介してコイルばね9によって上方に付勢されており、可動接点板13の上面側と上ケース2の下面側に表出された複数の個別固定接点12とが対向された状態で配設されている。この時、可動接点板13の上面側は、上ケース2の下面側に設けられた環状の突条部2hと当接され、個別固定接点12とは離間された状態となっている。
【0037】
また、駆動体3の外周縁部の対向する位置には、一対の係合凹部3dが設けられており、この係合凹部3dと、回転体7の上面側に設けられた係合突起7cが係合することにより、操作軸1の回転操作に伴って、共回りする駆動体3を介して回転体7が回転されるものとなっている。この時、回転体7に固着された摺動子17が中ケース6に設けられたコードパターン16と摺接することにより、コード信号出力が得られ回転検出を行うようになっている。(図1及び図2参照)
【0038】
また、操作軸1の操作部1aは軸線方向と直交する所定方向(本実施例では十字状の4方向)に傾倒動作可能で、かつ、軸線方向に押圧動作可能に設けられている。この時、操作軸1は、操作部1aが軸受け部2aの開口部2b(小径部2c)の対向する4方向に設けられたそれぞれの窪み部2eに沿って十字方向に傾倒動作可能となっている(図3参照)。また、操作軸1は、操作部1aが駆動体3の挿通孔3bに沿って押圧動作可能となっている。
【0039】
取付板8は、金属板からなり、中央に挿通孔8bを有する環状の基板部8aと、この基板部8aのそれぞれ対向する4箇所の周縁部から折り曲げ形成された取付脚8cとを有している。また、基板部8aには円と楕円形状からなる一対のガイド孔8dが設けられている。
この取付板8は、下ケース4と中ケース6と上ケース2がそれぞれ重ねられて一体的に係合される際に、中央の挿通孔8bに上ケース2の軸受け部2aが挿通されて上面側から冠着され、一対のガイド孔8dが一対の上ケース2のガイド突起2gに嵌合されると共に、4個の取付脚8cが下ケース4の対向する4辺部に設けられたガイド孔4dに挿入され、その先端がかしめられることにより、上ケース2と中ケース6と下ケース4を一体的に係合して筺体を構成するものとなっている。そして、一体的に係合された筺体の内部に形成される収納部に、可動接片15、弾性部材10、押圧部材5、ばね受11、コイルばね9、及び操作軸1が挿通された駆動体3がそれぞれ収容されている。
【0040】
次に、図11乃至図13を用いて本発明の多方向入力装置の傾倒及び押圧動作について説明する。
図11は、操作軸1の操作部1aを、図示左側に若干傾倒させた状態を示している。この時、操作軸1と一体的に係合された駆動体3は、コイルばね9の付勢力に抗して、図示右側の上ケース2の下面側に設けられた突条部2hを支点として反時計方向に回転するものとなり、図示左側の可動接点板13の先端と図示左側の個別固定接点12との間隔が大きくなると共に、これとは反対側に位置する図示右側の可動接点板13の先端と図示右側の個別固定接点12とが接触することにより、可動接点板13とコイルばね9とばね受11を介して個別固定接点12と共通固定接点14bがオン状態となることから、操作軸1の傾倒方向の検出が行われるものとなる。
この場合、操作軸1の先端の押圧部1cにより、押圧部材5の上面側に設けられた凹部5bの内底面が押され、押圧部材5が若干押し下げられるが、下方に配設されたプッシュスイッチ用のドーム状の可動接片15は反転されず、プッシュスイッチはオフ状態を維持している。
【0041】
次に、図11の状態から、図12に示すように更に操作軸1の操作部1aを図示左側に傾倒させると、今度は、図示右側の可動接点板13の先端と図示右側の個別固定接点12とが接触した状態のまま、この接触部を支点として駆動体3が更に反時計方向に回転するものとなり、操作軸1の先端の押圧部1cにより、押圧部材5の上面側に設けられた凹部5bの内底面が更に下方に押され、押圧部材5が押し下げられることにより、下方に配設されたプッシュスイッチ用のドーム状の可動接片15が反転して、ドーム状の頂部下面と中央固定接点14aとが接触し、可動接片15を介して中央固定接点14aが共通固定接点14bと導通してオン状態となることにより、傾倒方向における第2の検出が行われるものとなる。
尚、操作軸1の操作部1aを図示右側に傾倒させた場合においても、同様な動作となるためその説明を省略する。また、上記実施例では、4方向の傾倒動作について説明したが、本発明はこれに限定されずに、8方向などの多方向の傾倒動作にも適用できるのはもちろんである。
【0042】
図13は、操作軸1の操作部1aを、図示下側へ押圧した状態を示している。この時、駆動体3は移動されず、操作軸1のみが図示下側に移動するものとなり、操作軸1の先端の押圧部1cにより、押圧部材5の上面側に設けられた凹部5bの内底面が下方に押され、押圧部材5が押し下げられることにより、下方に配設されたプッシュスイッチ用のドーム状の可動接片15が反転して、ドーム状の頂部下面と中央固定接点14aとが接触し、可動接片15を介して中央固定接点14aが共通固定接点14bと導通してオン状態となることにより、操作軸1の押圧方向の検出が行われるものとなる。この時、傾倒動作を検出する検出手段である可動接点板13と個別固定接点12とは離間しておりオフ状態を維持している。
【0043】
この場合、押圧部材5は、下ケース4のガイド壁4a上に載置され、筒状の突出壁5aが筒状のガイド壁4aに案内されて押圧部材5が上下方向に摺動するものとなっており、押圧部材5の突出壁5aがガイド壁4aの外側に係合して配置されていることから、ガイド壁4aの外壁と突出壁5aの内壁とにより安定した案内ができるものとなっている。また、ガイド壁4aの先端部と押圧部材5の突出壁5aの内側の天面との間には、金属製で環状のウエーブワッシャ等からなる弾性部材10が挿入されており、この弾性部材10により押圧部材5がガイド壁4aの壁面に沿って上方へ付勢され、この弾性部材10の付勢力によって押圧部材5を介して操作軸1が操作部側に付勢されていることから、操作軸1の軸線方向のガタを抑制するものとなっている。
【0044】
また、ガイド壁4aの外周部の下方には平坦面からなる略円環状の段部4cが設けられており、この段部4cと押圧部材5の突出壁5aの先端部とが対向して配設されており、操作軸1の押圧操作時に押圧部材5の突出壁5aの先端部が、ガイド壁4aの外周部の段部4cと当接することでストッパーとなりそれ以上の移動を規制している。このために、操作軸1に軸線方向への過大な荷重が加えられても、押圧部材5が変形するのを防止できると共に、プッシュスイッチの可動接片15に過大な力が作用するのを防止することができるものとなっている。
【0045】
上記した本発明の実施例によれば、下ケース4に収納されたプッシュスイッチの外側に可動接片15の外周を囲むように筒状のガイド壁4aを設けると共に、押圧部材5にこのガイド壁4aの外周面に案内される内周面を有する筒状の突出壁5aを設け、この突出壁5aとガイド壁4aとを係合させて押圧部材5を操作軸1の軸線方向に摺動可能に配設したことから、筒状のガイド壁4aに筒状の突出壁5aが案内されて押圧部材5が操作軸1の軸線方向に摺動するので、押圧部材5の案内が確実となり、プッシュスイッチの可動接片15を押圧する際に適切な位置をスムーズに押圧操作することができ、反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片15の反転動作が確実に行え、明確なクリック感触を得ることができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の多方向入力装置を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の多方向入力装置を示す断面図である。
【図3】本発明の上ケースを示す平面図である。
【図4】本発明の上ケースを示す底面図である。
【図5】本発明の下ケースを示す平面図である。
【図6】本発明の図5の6−6線における断面図である。
【図7】本発明の押圧部材を示す断面図である。
【図8】本発明の押圧部材を示す底面図である。
【図9】本発明の弾性部材を示す平面図である。
【図10】本発明の弾性部材を示す正面面である。
【図11】本発明の多方向入力装置の傾倒動作を説明する断面図である。
【図12】本発明の多方向入力装置の傾倒動作を説明する断面図である。
【図13】本発明の多方向入力装置の押圧動作を説明する断面図である。
【図14】従来の多方向入力装置を示す断面図である。
【図15】従来の多方向入力装置を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1:操作軸
1a:操作部
1b:鍔部
1c:押圧部
2:上ケース
2a:軸受け部
2b:開口部
2c:小径部
2d:大径部
2e:窪み部
2f:突堤
2g:ガイド突起
2h:突条部
3:駆動体
3a:基部
3b:挿通孔
3c:嵌合孔
3d:係合凹部
4:下ケース
4a:ガイド壁
4b:切り欠き部
4c:段部
4d:ガイド孔
5:押圧部材
5a:突出壁
5b:凹部
5c:押圧突起
6:中ケース
6a:窓口
7:回転体
7a:窓口
7b:カム
7c:係合突起
8:取付板
8a:基板部
8b:挿通孔
8c:取付脚
8d:ガイド孔
9:コイルばね
10:弾性部材
11:ばね受
12:個別固定接点
12a:外部端子
13:可動接点板
14a:中央固定接点
14b:共通固定接点
14c:外部端子
15:可動接片
16:コードパターン
16a:外部端子
17:摺動子
18:クリック用板ばね
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部及びこの収納部に連通する開口部を有する筺体と、この筺体の前記開口部から一端側が突出されると共に、多方向に傾倒動作可能でかつ軸線方向に押圧動作可能に前記収納部内に他端側が収容された操作軸と、前記収納部に配設され前記操作軸の傾倒動作を検出する検出手段と、前記収納部に配設され前記操作軸の傾倒動作及び押圧動作に伴って操作される反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片及び該可動接片と接離する中央固定接点とを有するプッシュスイッチと、このプッシュスイッチと前記操作軸の他端側との間に配設され前記プッシュスイッチを押圧操作する押圧部材とを備え、前記収納部内の前記プッシュスイッチの外側に前記可動接片の外周を囲むように筒状のガイド壁を設けると共に、前記押圧部材に前記ガイド壁の外周面に案内される内周面を有する筒状の突出壁を設け、この突出壁と前記ガイド壁とを係合させて前記押圧部材を前記操作軸の軸線方向に摺動可能に配設したことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記ガイド壁と前記押圧部材との間に弾性部材を設け、この弾性部材により前記押圧部材を介して前記操作軸をその操作部側に付勢するようにしたことを特徴とする請求項1記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記ガイド壁に該ガイド壁の内側から外側に貫通する切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項1、又は2記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記ガイド壁部と前記押圧部材に、前記操作軸の軸線方向に対向する面を形成し、この対向する面に前記押圧部材の軸線方向の移動を規制するストッパ部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記押圧部材には、前記操作軸の他端側と対向する前記突出壁の中央に、前記操作軸の他端側端部を収容する凹部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記操作軸は、前記開口部内の所定方向に傾倒可能であり、前記操作軸が所定方向以外の方向に傾倒するのを規制する規制部を前記開口部内に設け、該規制部を前記操作軸に沿って設けられた複数の突堤で形成したことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の多方向入力装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記収納部に設けられた共通固定接点及び個別固定接点と、前記操作軸の傾倒動作に伴って傾動する駆動体に設けられ、前記個別固定接点と接離する可動接点板と、この可動接点板と前記共通固定接点との間に弾接され、前記共通固定接点と前記可動接点板とを導通させると共に、前記可動接点板を前記個別固定接点側に付勢するコイルばねとからなることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の多方向入力装置。
【請求項1】
収納部及びこの収納部に連通する開口部を有する筺体と、この筺体の前記開口部から一端側が突出されると共に、多方向に傾倒動作可能でかつ軸線方向に押圧動作可能に前記収納部内に他端側が収容された操作軸と、前記収納部に配設され前記操作軸の傾倒動作を検出する検出手段と、前記収納部に配設され前記操作軸の傾倒動作及び押圧動作に伴って操作される反転可能なドーム状の板ばねからなる可動接片及び該可動接片と接離する中央固定接点とを有するプッシュスイッチと、このプッシュスイッチと前記操作軸の他端側との間に配設され前記プッシュスイッチを押圧操作する押圧部材とを備え、前記収納部内の前記プッシュスイッチの外側に前記可動接片の外周を囲むように筒状のガイド壁を設けると共に、前記押圧部材に前記ガイド壁の外周面に案内される内周面を有する筒状の突出壁を設け、この突出壁と前記ガイド壁とを係合させて前記押圧部材を前記操作軸の軸線方向に摺動可能に配設したことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記ガイド壁と前記押圧部材との間に弾性部材を設け、この弾性部材により前記押圧部材を介して前記操作軸をその操作部側に付勢するようにしたことを特徴とする請求項1記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記ガイド壁に該ガイド壁の内側から外側に貫通する切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項1、又は2記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記ガイド壁部と前記押圧部材に、前記操作軸の軸線方向に対向する面を形成し、この対向する面に前記押圧部材の軸線方向の移動を規制するストッパ部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記押圧部材には、前記操作軸の他端側と対向する前記突出壁の中央に、前記操作軸の他端側端部を収容する凹部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記操作軸は、前記開口部内の所定方向に傾倒可能であり、前記操作軸が所定方向以外の方向に傾倒するのを規制する規制部を前記開口部内に設け、該規制部を前記操作軸に沿って設けられた複数の突堤で形成したことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の多方向入力装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記収納部に設けられた共通固定接点及び個別固定接点と、前記操作軸の傾倒動作に伴って傾動する駆動体に設けられ、前記個別固定接点と接離する可動接点板と、この可動接点板と前記共通固定接点との間に弾接され、前記共通固定接点と前記可動接点板とを導通させると共に、前記可動接点板を前記個別固定接点側に付勢するコイルばねとからなることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の多方向入力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−329070(P2007−329070A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160759(P2006−160759)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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