多方向入力装置
【課題】操作体に対する取り付け強度を向上して操作つまみを外れ難くし、操作体のスライド位置を検出するための永久磁石が脱落する事態を防止すること。
【解決手段】開口部を有するハウジングと、このハウジングの外部に設けられた操作つまみ10と、開口部より大きい寸法を有しハウジング内に配置される鍔状部51を有し、操作つまみ10と一体的にスライド移動可能な操作体5と、永久磁石8と磁気センサとを有し操作体5のスライド位置を検出する検出手段とを具備した多方向入力装置1において、操作つまみ10は、操作体5に形成された貫通孔54に装置内部側から挿通されたネジ7によりネジ止めされ、永久磁石8は、鍔状部51における装置内部側の位置に保持されることを特徴とする。
【解決手段】開口部を有するハウジングと、このハウジングの外部に設けられた操作つまみ10と、開口部より大きい寸法を有しハウジング内に配置される鍔状部51を有し、操作つまみ10と一体的にスライド移動可能な操作体5と、永久磁石8と磁気センサとを有し操作体5のスライド位置を検出する検出手段とを具備した多方向入力装置1において、操作つまみ10は、操作体5に形成された貫通孔54に装置内部側から挿通されたネジ7によりネジ止めされ、永久磁石8は、鍔状部51における装置内部側の位置に保持されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に関し、特に、携帯電話装置やゲーム機用コントローラなどにおける方位入力操作に好適な多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング内にスライド移動可能に収納され、大径部を有する操作体と、この操作体の大径部からハウジングの外部に突出させた筒状部の先端部に取り付けられる操作つまみと、この筒状部内における操作つまみの内側に配置される永久磁石と、この永久磁石に対向配置される磁気センサとを備え、永久磁石の位置を磁気センサで検出することにより、操作体のスライド位置を検出する多方向入力装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−47389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来の多方向入力装置においては、ハウジングの外部において操作体に操作つまみが固定されることから、操作つまみに対して強い力が加わると、操作つまみが操作体から外れる事態が発生し得る。この場合、上述した多方向入力装置においては、操作体から永久磁石も脱落する事態も発生し得る。
【0004】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、操作体に対する取り付け強度を向上して操作つまみを外れ難くし、操作体のスライド動作を検出するための永久磁石が脱落する事態を防止することができる多方向入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の多方向入力装置は、開口部を有するハウジングと、前記ハウジングの外部に設けられた操作つまみと、前記開口部より大きい寸法を有し前記ハウジング内に配置される鍔状部を有し、前記操作つまみと一体的にスライド移動可能な操作体と、永久磁石と磁気センサとを有し前記操作体のスライド動作を検出する検出手段とを具備した多方向入力装置であって、前記操作つまみは、前記操作体に形成された貫通孔に装置内部側から挿通されたネジによりネジ止めされ、前記永久磁石は、前記鍔状部における装置内部側の位置に保持されることを特徴とする。
【0006】
上記多方向入力装置によれば、操作つまみを操作体に形成された貫通孔に装置内部側から挿通されたネジによりネジ止めしているので、ハウジングの外部において操作体に操作つまみを固定する場合と比べてその取り付け強度を向上することができ、操作つまみを外れ難くすることが可能となる。また、永久磁石を鍔状部における装置内部側の位置に保持しているので、操作体のスライド動作を検出するための永久磁石が脱落する事態を防止することが可能となる。
【0007】
上記多方向入力装置において、前記ネジは、磁性材料で構成されると共に前記永久磁石と対向配置され、前記永久磁石は、前記ネジとの間で作用する磁力によって前記操作体に保持されることが好ましい。この場合には、永久磁石をネジとの間で作用する磁力によって操作体に保持することができるので、永久磁石を固定するために接着剤等を使用する必要がなく、組立作業性を向上することが可能となる。また、ネジを磁性材料で構成していることから、ネジにヨークとしての役割を果たさせることができ、検出手段における検出精度を向上することが可能となる。
【0008】
また、上記多方向入力装置において、前記永久磁石は、前記操作体に設けられた保持面により前記ネジから一定の隙間を挟んで保持されることが好ましい。この場合には、操作体に設けられた保持面によりネジから一定の隙間を挟んで保持することから、ネジに接触させて永久磁石における水平度を確保する場合に比べてより精度良くその水平度を確保することが可能となる。
【0009】
上記多方向入力装置においては、前記操作体の回転を規制する規制部材を更に具備し、前記操作体には、前記操作つまみに設けられた非円形状の係合部を回転不能に保持する被係合部が設けられることが好ましい。この場合には、操作体の被係合部により操作つまみが回転不能に保持されると共に、規制部材により操作体の回転が規制されることから、操作体を介して操作つまみが回転するのを規制でき、操作性に優れた多方向入力装置を提供することが可能となる。
【0010】
上記多方向入力装置において、前記規制部材には、前記ハウジング及び操作体に形成された治具挿入孔に対応する貫通部が少なくとも2つ形成されることが好ましい。この場合には、ハウジング及び操作体に形成された治具挿入孔に挿入された治具により規制部材を位置決めすることができるので、規制部材を備える場合においても、その組立作業性を損なうことはない。
【0011】
上記多方向入力装置において、前記操作体は、前記鍔状部よりも小径に設けられ、内部に前記永久磁石を保持する小径部を有し、前記小径部の外周側に前記操作体を初期位置に復帰させる環状のコイルばねを配置することが好ましい。この場合には、内部に永久磁石を保持する小径部を有し、その外周側に環状のコイルばねを配置していることから、コイルばねが配置される部分を永久磁石が保持される操作体の小径部とオーバーラップさせることができるので、多方向入力装置における厚み方向の寸法を小型化することが可能となる。
【0012】
上記多方向入力装置においては、前記コイルばねを非磁性材料で形成することが好ましい。この場合には、コイルばねが非磁性材料で形成されることから、コイルばねが永久磁石による磁界に影響を及ぼすのを防止できるので、高い精度で操作体のスライド動作を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操作つまみを操作体に形成された貫通孔に装置内部側から挿通されたネジによりネジ止めしているので、ハウジングの外部において操作体に操作つまみを固定する場合と比べてその取り付け強度を向上することができ、操作つまみを外れ難くすることが可能となる。また、永久磁石を鍔状部における装置内部側の位置に保持しているので、操作体のスライド動作を検出するための永久磁石が脱落する事態を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る多方向入力装置は、例えば、携帯電話装置やゲーム機用コントローラなどにおける方位入力操作に用いられるものである。なお、本実施の形態に係る多方向入力装置の用途については、これらに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0015】
図1及び図2は、それぞれ本発明の一実施の形態に係る多方向入力装置1の分解斜視図である。図3は、本実施の形態に係る多方向入力装置1の平面図である。図4は、図3に示す一点鎖線Aにおける断面図である。図5は、図3に示す一点鎖線Bにおける断面図である。なお、図1においては、多方向入力装置1を図4に示す下方側から見た分解斜視図を示し、図2においては、多方向入力装置1を図4に示す上方側から見た分解斜視図を示している。以下においては、説明の便宜上、図1及び図2の右方側を多方向入力装置1の上方側と呼び、同図の左方側を多方向入力装置1の下方側と呼ぶものとする。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る多方向入力装置1は、ハウジングを構成する上部ケース2及び下部ケース3を備え、これらを組み合わせて内部に形成される空洞部に各種の構成部材を収納して構成される。上部ケース2及び下部ケース3は、重ね合わせた状態において、多方向入力装置1の下方側に配置される取付部材4と上部ケース2とがスナップ結合することにより一体化されている。
【0017】
上部ケース2及び下部ケース3は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成される。上部ケース2は、下方側に開口した箱形状を有し、その上面部21の中央に円形状を有する開口部22が形成されている。また、上部ケース2は、平坦な板状の壁部からなる上面部21の4辺から下方側に延伸する側壁部23を有している。これらの側壁部23のうち、対向する一対の側壁部23aの内壁は平面部を構成し、互いに平行に配置されている。開口部22の外周側には、後述する治具13が挿入される複数の治具挿入孔24が形成されている。
【0018】
下部ケース3は、上方側に開口した箱形状を有し、その底面部31の中央に円形状の突出部32が設けられている。この突出部32は、下部ケース3の平坦な板状の壁部からなる底面部31を盛り上げて形成されており、この底面部31の背面側には概して長円形状の凹部33が設けられている。この突出部32の上面には、後述する操作体5の小径部53が載置される平面部32aが形成されている。これらの上部ケース2及び下部ケース3が組み合わされて、概して偏平な方形状のハウジングが形成されるものとなっている。
【0019】
ハウジング内に形成される空洞部には、操作体5、規制部材6、ネジ7、永久磁石(以下、単に「磁石」という)8及びコイルばね9が収納される。操作体5は、ネジ7によりその上方側に固定される操作つまみ10を上部ケース2の開口部22から上方側に突出させるような状態で収納されている。規制部材6は、後述する操作体5の凹部55に配置される。磁石8は、後述する操作体5の小径部53の内部に保持される。コイルばね9は、操作体5の小径部53及び下部ケース3の突出部32の外周側に配置される。以下、各構成部材の構成について説明する。
【0020】
操作体5は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成され、概して円盤形状を有している。操作体5は、円盤形状を有する鍔状部51と、この鍔状部51の上面中央に立設され、後述する操作つまみ10の係合部である係合片102の非円形状をした外形と係合する穴52aが形成された被係合部としての筒状部52と、鍔状部51の下面中央部にその外周部よりも小径に設けられ、下方側に開口した小径部53とを有している。この小径部53の内側には、円盤形状の空間が設けられ、後述するように磁石8が配置される。なお、鍔状部51の中央には、多方向入力装置1の上下方向に貫通孔54が形成され、この貫通孔54は、筒状部52及び小径部53に対応する位置で鍔状部51を貫通している。また、鍔状部51の上面には、多方向入力装置1の図2における左右方向に沿って帯状に、規制部材6が配置される凹部55が形成されている。さらに、鍔状部51の外周近傍には、多方向入力装置1の上下方向に、後述する治具13が挿入される複数の治具挿入孔56が形成されている。
【0021】
なお、上部ケース2の開口部22から上方側に突出する筒状部52の一部には、開口部22からの埃等の浸入を防止するための遮蔽部材11が取り付けられる。遮蔽部材11は、例えば、ポリカーボネート樹脂で形成され、中央に円形の開口部が形成された円形状を有するシート材として構成されている。遮蔽部材11は、中央開口部の径が筒状部52の外径と略同一に設けられる一方、その外径が上部ケース2の開口部22よりも大きい径に設けられている。遮蔽部材11の一部にはスリット111が形成されており、このスリット111を介して遮蔽部材11が筒状部52に取り付けられるものとなっている。
【0022】
規制部材6は、例えば、ステンレス等の非磁性金属材料で形成され、概して多方向入力装置1の左右方向に延伸する長尺形状を有している。規制部材6は、操作体5の鍔状部51に形成された凹部55と略同一の幅(正確には、僅かに狭い幅)を有する板状部61と、この板状部61の長手方向である左右方向の両端部から下方側に折り曲げ形成される一対の規制片62とを有している。これらの規制片62は、上部ケース2の側壁部23aの内壁面に対向するように平行に配置される。これらの規制片62の外面間の長さは、上部ケース2の側壁部23aの内壁面間の長さと略同一(正確には、僅かに短い寸法)に設けられている。板状部61の中央には、左右方向に長い長孔63が形成されている。この長孔63は、操作体5の筒状部52が貫通可能な寸法に設けられ、その側方側端部には、後述する治具13が挿入される貫通部としての切り欠き部64が形成されている。なお、規制部材6は、非磁性体で構成されていれば、必ずしも金属材料で構成される必要はなく、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成しても良い。
【0023】
操作つまみ10は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成され、概して円盤形状を有している。操作つまみ10の下面には、矩形状を有する突出部101が形成されると共に、その突出部101の中央に八角柱形状などの非円形状を有する係合部としての係合片102が設けられている。この係合片102は、筒状部52の穴52a内に挿入され、操作つまみ10に加えられたスライド操作などを操作体5に伝達するものとなっている。この係合片102の中央には、後述するネジ7の軸部72が挿入される穴部102aが形成されている。この穴部102aには、この軸部72の外周に設けられたネジ山に対応するネジ溝が形成されている。
【0024】
ネジ7は、例えば、フェライト等の磁性金属材料で形成され、ヘッド部71と、軸部72とを有して構成されている。本多方向入力装置1においては、ヘッド部71を下方側に配置する一方、装置内部側から軸部72を操作体5の貫通孔54に挿通させ、筒状部52内に挿入された操作つまみ10の係合片102に固定する。これにより、操作体5と操作つまみ10とが一体化されるものとなっている。
【0025】
磁石8は、円盤形状を有しており、操作体5の小径部53内に収容可能な寸法に設けられている。磁石8は、操作体5に固定されたネジ7との間で作用する磁力により操作体5に保持されている。この場合において、磁石8は、鍔状部51の下面に設けられた保持面51aにより保持され、ネジ7との間に僅かな寸法の隙間を挟んで対向配置されるものとなっている。なお、操作体5における磁石8の保持状態については後述する。
【0026】
コイルばね9は、例えば、ステンレス等の非磁性金属材料で形成されている。コイルばね9は、図示せぬフック状の両端を連結することで環状を有しており、無負荷状態におけるその内径は、下部ケース3の突出部32及び操作体5の小径部53の外径より僅かに小さい寸法に設けられている。このコイルばね9は、詳細について後述するように、操作体5がスライド移動した場合に操作体5を初期位置に復帰させる弾性力を、操作体5の小径部53に付与するものである。
【0027】
取付部材4の上面には、操作体5のスライド移動を検出する検出手段の一部を構成する後述の磁気センサ122が実装される回路基板12が固定される。この回路基板12は、磁気センサ122が下部ケース3の凹部33に対応する位置に配置されるように取付部材4に固定されている。なお、回路基板12において、磁気センサ122は、その構成部材の腐食や検出精度の劣化を防止するために、例えば、絶縁性の樹脂材料等による封止部121により封止されている。下部ケース3の凹部33は、この封止部121を収容するものとなっている。なお、回路基板12上には、図示はしていないが、磁気センサ122を構成する磁気検出素子からの信号を外部出力する出力端子に接続される複数のリード線が設けられている。なお、この回路基板12に実装される磁気センサ122については後述する。
【0028】
このような構成を有する多方向入力装置1を組み立てると、図3に示すように、操作体5に固定された操作つまみ10が上部ケース2の上方側に突出すると共に、操作体5の筒状部52の一部に取り付けられた遮蔽部材11が上部ケース2に載置された状態とされる。このように、上部ケース2の開口部22よりも大きい外径を有する遮蔽部材11が上部ケース2に載置されることから、開口部22を介して多方向入力装置1の内部に埃等が浸入するのを防止できるものとなっている。
【0029】
多方向入力装置1の内部においては、図4及び図5に示すように、下部ケース3の突出部32の平面部32aの上方に、磁石8を収容した状態の操作体5の小径部53が載置されている。コイルばね9は、上下に対向状態にあるこれらの突出部32及び小径部53の外周を囲むように、僅かに伸びた状態で下部ケース3の底面部31上に配置されている。このように磁石8を保持する小径部53の外周側にコイルばね9を配置していることから、コイルばね9が配置される部分を小径部53とオーバーラップさせることができるので、多方向入力装置1における厚み方向の寸法を小型化することが可能となっている。
【0030】
操作体5は、鍔状部51をハウジング内に収納させて、この鍔状部51が下部ケース3の底面部31と離間して対向する状態で配置され、鍔状部51の下面でコイルばね9の頂部を規制するものとなっている。また、操作体5は、筒状部52を上部ケース2の開口部22を介して装置外部に突出させている。そして、筒状部52の穴52aに操作つまみ10の係合片102が挿入された状態において、装置内部側からネジ7によりネジ止めされることで、操作つまみ10と操作体5とが一体化されている。この場合、係合片102が筒状部52に挿入されていることから、操作つまみ10に与えられる操作力は、そのまま操作体5に対して伝達されることとなる。規制部材6は、鍔状部51の凹部55に収容された状態で配置され、その規制片62が上部ケース2の側壁部23aの内壁面に僅かなクリアランスをもって対向配置されている。
【0031】
操作体5に固定されたネジ7のヘッド部71は、小径部53内に収容されている磁石8と対向する。磁石8は、このネジ7との間に発生する磁力により装置上方側に吸引された状態となっており、操作体5に保持されている。このように、磁石8をネジ7との間で作用する磁力によって操作体5に保持することにより、磁石8を固定するために接着剤等を使用する必要がなく、組立作業性を向上することが可能となっている。また、ネジ7を磁性金属材料で構成していることから、ネジ7にヨークとしての役割(所謂、バックヨークとしての役割)を果たさせることができ、磁気センサ122における検出精度を向上することが可能となる。
【0032】
このように保持される磁石8の位置決めは、鍔状部51の小径部53の内側に配置される保持面51aにより行われ、磁石8は、ネジ7のヘッド部71と僅かな隙間を挟んで対向配置されている。このように保持面51aによりネジ7から一定の隙間を挟んで磁石8を保持するようにしたことから、ネジ7に接触させて磁石8における水平度を確保する場合に比べてより精度良くその水平度を確保することが可能となっている。
【0033】
また、回路基板12において、磁気センサ122を封止する封止部121は、下部ケース3の凹部33に収容されている。この凹部33は、突出部32の裏面側に形成されていることから、初期位置に操作体5が配置されている状態において、小径部53内に収容された磁石8と、磁気センサ122とが対向して配置されるものとなっている。磁気センサ122は、このように配置される磁石8から発生する磁界を検出し、磁石8(操作体5)のスライド位置を検出するように構成されている。
【0034】
ここで、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する回路基板12に実装される磁気センサ122の概略構成について説明する。図6は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する回路基板12に実装される磁気センサ122の平面図である。図7は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する回路基板12に実装される磁気センサ122と磁石8との位置関係を示す図である。なお、図7においては、図6に示す左方側から回路基板12及び磁石8を示している。
【0035】
本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、操作体5の小径部53に収容される磁石8と、回路基板12に実装された磁気センサ122とで操作体5のスライド位置を検出する。この場合において、磁気センサ122は、基本的な構成として、反強磁性層、ピン層、中間層及びフリー層を回路基板12上に積層して形成され、巨大磁気抵抗効果を利用した複数(本実施の形態では4つ)のGMR(Giant Magneto Resistance)素子122aと、これらのGMR素子122aからの出力信号を増幅すると共に、増幅後の出力信号に基づいて磁石8(操作体5)のスライド位置を算出する制御回路122bとを有している。
【0036】
磁気センサ122においては、小径部53に収容される磁石8からの磁束をGMR素子122aに作用させて、その電気抵抗値の変化を磁束の向きにより生じさせる。例えば、磁石8が磁気センサ122側にN極、操作体5側にS極が着磁されている場合、磁石8からの磁束は、概して図7に示す矢印のように発生する(なお、図7に示す紙面手前側及び奥側にも同様に発生する)。磁気センサ122においては、4つのGMR素子122aでブリッジ回路を構成し、一対のGMR素子122aにおける電気抵抗値の変化に応じた出力信号と、他の一対のGMR素子122aにおける電気抵抗値の変化に応じた出力信号との差異に基づいて、磁石8(操作体5)のスライド位置を算出するものとなっている。
【0037】
なお、この磁気センサ122が備えるGMR素子122aが巨大磁気抵抗効果を発揮するためには、例えば、反強磁性層がα−Fe2O3層、ピン層がNiFe層、中間層がCu層、フリー層がNiFe層から形成されることが好ましいが、これらのものに限定されるものではなく、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、いずれのものであってもよい。また、磁気センサ122が備えるGMR素子122aは、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、上記の積層構造のものに限定されるものではない。
【0038】
ここで、本実施の形態に係る多方向入力装置1において、操作体5に操作つまみ10を組み付ける際の作業について説明する。図8及び図9は、本実施の形態に係る多方向入力装置1において、操作体5に操作つまみ10を組み付ける際の作業について説明するための斜視図である。図8及び図9に示すように、本実施の形態に係る多方向入力装置1において、操作体5に操作つまみ10を組み付ける際には、例えば、ステンレス等の非磁性金属材料の棒状体で構成される複数の治具13を用いる。これらの治具13は、操作体5の治具挿入孔56及び上部ケース2の治具挿入孔24に挿入されることで、操作体5を上部ケース2に回転不能に固定するものとなっている。
【0039】
本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、このように上部ケース2に操作体5を固定した状態で、その筒状部52に操作つまみ10の係合片102を挿入する。そして、操作体5の下面側から貫通孔54にネジ7の軸部72を挿通させ、操作つまみ10を操作体5にネジ止めする(図9参照)。このように操作体5の回転を規制した状態で操作つまみ10をネジ止めするようにしたことから、ネジ止め作業に応じて操作体5が連れ回りするような事態を防止でき、組立作業性を向上することが可能となっている。
【0040】
また、このように操作体5に操作つまみ10を組み付ける際、本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、規制部材6の位置決めも行う。すなわち、本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、上部ケース2と操作体5との間に規制部材6を配置すると共に、その切り欠き部64に治具13を挿入した状態で操作体5に対する操作つまみ10の組付けを行う(図9参照)。このように操作体5に操作つまみ10を組み付ける際に用いる治具13を用いて規制部材6の位置決めも行うようにしたことから、より組立作業性を向上することが可能となっている。
【0041】
なお、治具13を用いて位置決めする際、規制部材6においては、図10に示すように、板状部61が操作体5の凹部55に収容される。上述したように、規制部材6の板状部61の幅は、凹部55の幅と略同一に設けられていることから、板状部61は、凹部55に入り込んだ状態とされる。一方、規制部材6の規制片62は、図9に示すように、上部ケース2の側壁部23aの内壁面に対向配置されている。このため、操作体5に回転力が与えられた場合、凹部55の側壁部55aと板状部61の端面61aとが係合すると共に(図10参照)、規制片62が側壁部23aの内壁面に接触することで、操作体5の回転を規制するものとなっている。また、操作つまみ10の非円形状をなした係合片102が、操作体5の筒状部52に形成された穴52aに係合していることから、操作つまみ10に与えられた回転力は、そのまま操作体5に伝達され、この規制部材6により規制されることとなる。すなわち、操作体5を介して操作つまみ10が回転するのを規制でき、操作性に優れた多方向入力装置1を提供するものとなっている。
【0042】
また、規制部材6は、板状部61が凹部55に収容される一方、その規制片62が上部ケース2の側壁部23aの内壁面に対向配置されることから、側壁部23aによって、図10に示すX方向へのスライド移動が規制される一方、同図に示すY方向への移動が許容されるものとなっている。操作体5(操作つまみ10)の図10に示すX方向へのスライド移動の際、鍔状部51の中央部を挟んで対向する位置に形成される、凹部55の側壁部55aは、板状部61の端面61aにより案内される。なお、操作体5の図10に示すY方向へのスライド移動の際には、凹部55の側壁部55aが、板状部61の端面61aと係合し、操作体5と規制部材6とが一体的にスライド移動することとなる。
【0043】
次に、本実施の形態に係る多方向入力装置1における操作体5がスライド移動した場合の動作について説明する。図11は、本実施の形態に係る多方向入力装置1の初期状態における平面図である。図12は、図11に示す状態から操作体5を同図に示すX方向にスライド移動した場合の平面図である。図13は、図12に示す一点鎖線Aにおける断面図である。図14は、図11に示す状態から操作体5を同図に示すY方向にスライド移動した場合の平面図である。図15は、図14に示す一点鎖線Bにおける断面図である。なお、図11〜図15においては、説明の便宜上、上部ケース2及び遮蔽部材11を取り除いている。また、図12及び図14においては、操作体5が末端の位置までスライド移動した場合について示している。
【0044】
初期状態においては、図11に示すように、規制部材6がハウジング(下部ケース3)の略中央に配置されている。多方向入力装置1の内部においては、各構成部材が図4及び図5に示す状態とされている。すなわち、磁石8を保持した操作体5の小径部53は、下部ケース3の突出部32の上方に対向した状態で配置されており、これらの小径部53及び突出部32の外周側にコイルばね9が配置されている。この場合、小径部53は、コイルばね9による弾性力により突出部32の中央位置(初期位置)に配置された状態となっている。
【0045】
図11に示す状態から同図に示すX方向に操作つまみ10を介して操作体5をスライド移動する際、図12に示すように、操作体5は、規制部材6の板状部61の端面61aに沿って、鍔状部51の凹部55の側壁部55aが案内される。この場合、規制部材6は、移動しないでハウジングの略中央の位置に維持されている。多方向入力装置1の内部においては、図13に示すコイルばね9の右方側端部が突出部32の右方側端部に係止されると共に、その上部(頂部)が鍔状部51により規制された状態において、コイルばね9の左方側端部が小径部53の左方側端部でX方向に押し広げられている。そして、図13に示す状態から、操作つまみ10に対するスライド操作が解除されると、コイルばね9の弾性力により、小径部53が押し戻される。これにより、小径部53は、図4に示す初期位置に復帰するものとなっている。
【0046】
一方、図11に示す状態から同図に示すY方向に操作つまみ10(操作体5)をスライド移動する際、図14に示すように、操作体5は、操作体5の鍔状部51の凹部55の側壁部55aが規制部材6の板状部61の端面61aと係合し、規制部材6と一緒に移動する。この場合、規制部材6は、規制片62で上部ケース2の側壁部23aの内壁面に沿ってスライド移動する。多方向入力装置1の内部においては、図15に示すコイルばね9の左方側端部が突出部32の左方側端部に係止されると共に、その上部(頂部)が鍔状部51により規制された状態において、コイルばね9の右方側端部が小径部53の右方側端部でY方向に押し広げられている。そして、図15に示す状態から、操作つまみ10に対するスライド操作が解除されると、コイルばね9の弾性力により、小径部53が押し戻される。これにより、小径部53は、図5に示す初期位置に復帰するものとなっている。
【0047】
なお、図11に示す状態から同図に示すX方向とY方向との中間方向(例えば、図11に示す左下方側45°の方向)に操作体5をスライド移動させる場合には、操作体5は、図13及び図15で説明した動作が組み合わされて動作する。すなわち、図11に示すX方向へのスライド移動は、規制部材6の板状部61の端面61aと、操作体5の凹部55の側壁部55aとにより案内され、同図に示すY方向へのスライド移動は、規制部材6の規制片62と、上部ケース2の側壁部23aの内壁面とにより案内される。多方向入力装置1の内部においては、操作体5のスライド方向と反対側に配置されるコイルばね9の端部が下部ケース3の突出部32により係止されると共に、その上方側から鍔状部51により規制された状態において、コイルばね9のスライド方向側端部が小径部53のスライド方向側端部でX方向とY方向との中間方向に押し広げられている。そして、初期位置に復帰する際も同様に、操作つまみ10に対するスライド操作が解除されると、コイルばね9の弾性力により、小径部53が押し戻される。これにより、小径部53は、図4に示す初期位置に復帰するものとなっている。
【0048】
このように本多方向入力装置1においては、操作体5のスライド移動に伴って小径部53により押し広げられたコイルばね9の上部(操作体5側の頂部)を、操作体5の鍔状部51で規制するようにしているので、コイルばね9の操作体5側への移動を制限してコイルばね9が所望の位置から脱落する事態を防止でき、コイルばね9により確実に操作体5を初期位置に復帰させることが可能となっている。
【0049】
本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、このように操作体5に対してスライド操作が行われた方向にスライド移動する際、並びに、スライド移動先の位置から初期位置に復帰する際、回路基板12に実装された磁気センサ122によって、小径部53内に保持された磁石8からの磁束の向きを検出し、操作体5(磁石8)のスライド位置を検出する。これにより、操作つまみ10に対して行われたスライド操作に応じて、適切に操作体5のスライド位置を検出することが可能となる。
【0050】
このように本多方向入力装置1においては、非接触の態様で操作体5のスライド位置を検出する検出手段を構成しているので、検出手段としての接点の摩耗等による不具合を回避して検出手段の長寿命化を実現することが可能となっている。また、本多方向入力装置1においては、規制部材6及びコイルばね9を非磁性材料で形成することにより、これらの部材が磁石8からの磁界に影響を及ぼすのを防止しているので、高い精度で操作体5のスライド位置を検出することが可能となっている。
【0051】
このように本実施の形態に係る多方向入力装置1によれば、操作つまみ10を操作体5に形成された貫通孔54に装置内部側から挿通されたネジ7によりネジ止めするようにしたので、ハウジングの外部において操作体5に操作つまみ10を固定する場合と比べてその取り付け強度を向上することができ、操作つまみ10を外れ難くすることが可能となる。また、磁石8を鍔状部51における装置内部側の位置に保持するようにしたので、磁石8が脱落する事態を防止することが可能となる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、部材の配置や数などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0053】
例えば、上記実施の形態においては、操作体5のスライド動作を検出する磁気センサは、GMR素子を用いるものであるが、GMR素子に代えて、ホール素子により磁気センサを構成しても良い。また、上記実施の形態においては、操作体5の鍔状部51の上面に凹部55を設け、規制部材6の板状部61を収容すると共に、板状部61の端面61aで凹部55の側壁部55aを案内する場合について示しているが、操作体5及び規制部材6の構成についてこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。すなわち、上述したのと同様の要領で操作体5を案内できれば、どのような構成を採っても良い。例えば、鍔状部51に凹部55を設けるのではなく、複数の突出片を設け、その一部を規制部材6により案内するようにしても良い。反対に板状部61に複数の突出片を設け、その一部で鍔状部51を案内するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多方向入力装置の分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る多方向入力装置の分解斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係る多方向入力装置の平面図である。
【図4】図3に示す一点鎖線Aにおける断面図である。
【図5】図3に示す一点鎖線Bにおける断面図である。
【図6】上記実施の形態に係る多方向入力装置が有する回路基板に実装される磁気センサの平面図である。
【図7】上記実施の形態に係る多方向入力装置が有する回路基板に実装される磁気センサと磁石との位置関係を示す図である。
【図8】上記実施の形態に係る多方向入力装置において、操作体に操作つまみを組み付ける際の作業について説明するための斜視図である。
【図9】上記実施の形態に係る多方向入力装置において、操作体に操作つまみを組み付ける際の作業について説明するための斜視図である。
【図10】上記実施の形態に係る多方向入力装置における操作体と規制部材との位置関係について説明するための斜視図である。
【図11】上記実施の形態に係る多方向入力装置の初期状態における平面図である。
【図12】図11に示す状態から操作体をX方向にスライド移動した場合の平面図である。
【図13】図12に示す一点鎖線Aにおける断面図である。
【図14】図11に示す状態から操作体をY方向にスライド移動した場合の平面図である。
【図15】図14に示す一点鎖線Bにおける断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 多方向入力装置
2 上部ケース
21 上面部
22 開口部
23、23a 側壁部
24 治具挿入孔
3 下部ケース
31 底面部
32 突出部
32a 平面部
33 凹部
4 取付部材
5 操作体
51 鍔状部
51a 保持面
52 筒状部(被係合部)
52a 穴
53 小径部
54 貫通孔
55 凹部
55a 側壁部
56 治具挿入孔
6 規制部材
61 板状部
61a 端面
62 規制片
63 長孔
64 切り欠き部(貫通部)
7 ネジ
71 ヘッド部
72軸部
8 磁石(永久磁石)
9 コイルばね
10 操作つまみ
101 突出部
102 係合片(係合部)
102a 穴部
11 遮蔽部材
111 スリット
12 回路基板
121 封止部
122 磁気センサ
122a GMR素子
122b 制御回路
13 治具
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に関し、特に、携帯電話装置やゲーム機用コントローラなどにおける方位入力操作に好適な多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング内にスライド移動可能に収納され、大径部を有する操作体と、この操作体の大径部からハウジングの外部に突出させた筒状部の先端部に取り付けられる操作つまみと、この筒状部内における操作つまみの内側に配置される永久磁石と、この永久磁石に対向配置される磁気センサとを備え、永久磁石の位置を磁気センサで検出することにより、操作体のスライド位置を検出する多方向入力装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−47389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来の多方向入力装置においては、ハウジングの外部において操作体に操作つまみが固定されることから、操作つまみに対して強い力が加わると、操作つまみが操作体から外れる事態が発生し得る。この場合、上述した多方向入力装置においては、操作体から永久磁石も脱落する事態も発生し得る。
【0004】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、操作体に対する取り付け強度を向上して操作つまみを外れ難くし、操作体のスライド動作を検出するための永久磁石が脱落する事態を防止することができる多方向入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の多方向入力装置は、開口部を有するハウジングと、前記ハウジングの外部に設けられた操作つまみと、前記開口部より大きい寸法を有し前記ハウジング内に配置される鍔状部を有し、前記操作つまみと一体的にスライド移動可能な操作体と、永久磁石と磁気センサとを有し前記操作体のスライド動作を検出する検出手段とを具備した多方向入力装置であって、前記操作つまみは、前記操作体に形成された貫通孔に装置内部側から挿通されたネジによりネジ止めされ、前記永久磁石は、前記鍔状部における装置内部側の位置に保持されることを特徴とする。
【0006】
上記多方向入力装置によれば、操作つまみを操作体に形成された貫通孔に装置内部側から挿通されたネジによりネジ止めしているので、ハウジングの外部において操作体に操作つまみを固定する場合と比べてその取り付け強度を向上することができ、操作つまみを外れ難くすることが可能となる。また、永久磁石を鍔状部における装置内部側の位置に保持しているので、操作体のスライド動作を検出するための永久磁石が脱落する事態を防止することが可能となる。
【0007】
上記多方向入力装置において、前記ネジは、磁性材料で構成されると共に前記永久磁石と対向配置され、前記永久磁石は、前記ネジとの間で作用する磁力によって前記操作体に保持されることが好ましい。この場合には、永久磁石をネジとの間で作用する磁力によって操作体に保持することができるので、永久磁石を固定するために接着剤等を使用する必要がなく、組立作業性を向上することが可能となる。また、ネジを磁性材料で構成していることから、ネジにヨークとしての役割を果たさせることができ、検出手段における検出精度を向上することが可能となる。
【0008】
また、上記多方向入力装置において、前記永久磁石は、前記操作体に設けられた保持面により前記ネジから一定の隙間を挟んで保持されることが好ましい。この場合には、操作体に設けられた保持面によりネジから一定の隙間を挟んで保持することから、ネジに接触させて永久磁石における水平度を確保する場合に比べてより精度良くその水平度を確保することが可能となる。
【0009】
上記多方向入力装置においては、前記操作体の回転を規制する規制部材を更に具備し、前記操作体には、前記操作つまみに設けられた非円形状の係合部を回転不能に保持する被係合部が設けられることが好ましい。この場合には、操作体の被係合部により操作つまみが回転不能に保持されると共に、規制部材により操作体の回転が規制されることから、操作体を介して操作つまみが回転するのを規制でき、操作性に優れた多方向入力装置を提供することが可能となる。
【0010】
上記多方向入力装置において、前記規制部材には、前記ハウジング及び操作体に形成された治具挿入孔に対応する貫通部が少なくとも2つ形成されることが好ましい。この場合には、ハウジング及び操作体に形成された治具挿入孔に挿入された治具により規制部材を位置決めすることができるので、規制部材を備える場合においても、その組立作業性を損なうことはない。
【0011】
上記多方向入力装置において、前記操作体は、前記鍔状部よりも小径に設けられ、内部に前記永久磁石を保持する小径部を有し、前記小径部の外周側に前記操作体を初期位置に復帰させる環状のコイルばねを配置することが好ましい。この場合には、内部に永久磁石を保持する小径部を有し、その外周側に環状のコイルばねを配置していることから、コイルばねが配置される部分を永久磁石が保持される操作体の小径部とオーバーラップさせることができるので、多方向入力装置における厚み方向の寸法を小型化することが可能となる。
【0012】
上記多方向入力装置においては、前記コイルばねを非磁性材料で形成することが好ましい。この場合には、コイルばねが非磁性材料で形成されることから、コイルばねが永久磁石による磁界に影響を及ぼすのを防止できるので、高い精度で操作体のスライド動作を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操作つまみを操作体に形成された貫通孔に装置内部側から挿通されたネジによりネジ止めしているので、ハウジングの外部において操作体に操作つまみを固定する場合と比べてその取り付け強度を向上することができ、操作つまみを外れ難くすることが可能となる。また、永久磁石を鍔状部における装置内部側の位置に保持しているので、操作体のスライド動作を検出するための永久磁石が脱落する事態を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る多方向入力装置は、例えば、携帯電話装置やゲーム機用コントローラなどにおける方位入力操作に用いられるものである。なお、本実施の形態に係る多方向入力装置の用途については、これらに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0015】
図1及び図2は、それぞれ本発明の一実施の形態に係る多方向入力装置1の分解斜視図である。図3は、本実施の形態に係る多方向入力装置1の平面図である。図4は、図3に示す一点鎖線Aにおける断面図である。図5は、図3に示す一点鎖線Bにおける断面図である。なお、図1においては、多方向入力装置1を図4に示す下方側から見た分解斜視図を示し、図2においては、多方向入力装置1を図4に示す上方側から見た分解斜視図を示している。以下においては、説明の便宜上、図1及び図2の右方側を多方向入力装置1の上方側と呼び、同図の左方側を多方向入力装置1の下方側と呼ぶものとする。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る多方向入力装置1は、ハウジングを構成する上部ケース2及び下部ケース3を備え、これらを組み合わせて内部に形成される空洞部に各種の構成部材を収納して構成される。上部ケース2及び下部ケース3は、重ね合わせた状態において、多方向入力装置1の下方側に配置される取付部材4と上部ケース2とがスナップ結合することにより一体化されている。
【0017】
上部ケース2及び下部ケース3は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成される。上部ケース2は、下方側に開口した箱形状を有し、その上面部21の中央に円形状を有する開口部22が形成されている。また、上部ケース2は、平坦な板状の壁部からなる上面部21の4辺から下方側に延伸する側壁部23を有している。これらの側壁部23のうち、対向する一対の側壁部23aの内壁は平面部を構成し、互いに平行に配置されている。開口部22の外周側には、後述する治具13が挿入される複数の治具挿入孔24が形成されている。
【0018】
下部ケース3は、上方側に開口した箱形状を有し、その底面部31の中央に円形状の突出部32が設けられている。この突出部32は、下部ケース3の平坦な板状の壁部からなる底面部31を盛り上げて形成されており、この底面部31の背面側には概して長円形状の凹部33が設けられている。この突出部32の上面には、後述する操作体5の小径部53が載置される平面部32aが形成されている。これらの上部ケース2及び下部ケース3が組み合わされて、概して偏平な方形状のハウジングが形成されるものとなっている。
【0019】
ハウジング内に形成される空洞部には、操作体5、規制部材6、ネジ7、永久磁石(以下、単に「磁石」という)8及びコイルばね9が収納される。操作体5は、ネジ7によりその上方側に固定される操作つまみ10を上部ケース2の開口部22から上方側に突出させるような状態で収納されている。規制部材6は、後述する操作体5の凹部55に配置される。磁石8は、後述する操作体5の小径部53の内部に保持される。コイルばね9は、操作体5の小径部53及び下部ケース3の突出部32の外周側に配置される。以下、各構成部材の構成について説明する。
【0020】
操作体5は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成され、概して円盤形状を有している。操作体5は、円盤形状を有する鍔状部51と、この鍔状部51の上面中央に立設され、後述する操作つまみ10の係合部である係合片102の非円形状をした外形と係合する穴52aが形成された被係合部としての筒状部52と、鍔状部51の下面中央部にその外周部よりも小径に設けられ、下方側に開口した小径部53とを有している。この小径部53の内側には、円盤形状の空間が設けられ、後述するように磁石8が配置される。なお、鍔状部51の中央には、多方向入力装置1の上下方向に貫通孔54が形成され、この貫通孔54は、筒状部52及び小径部53に対応する位置で鍔状部51を貫通している。また、鍔状部51の上面には、多方向入力装置1の図2における左右方向に沿って帯状に、規制部材6が配置される凹部55が形成されている。さらに、鍔状部51の外周近傍には、多方向入力装置1の上下方向に、後述する治具13が挿入される複数の治具挿入孔56が形成されている。
【0021】
なお、上部ケース2の開口部22から上方側に突出する筒状部52の一部には、開口部22からの埃等の浸入を防止するための遮蔽部材11が取り付けられる。遮蔽部材11は、例えば、ポリカーボネート樹脂で形成され、中央に円形の開口部が形成された円形状を有するシート材として構成されている。遮蔽部材11は、中央開口部の径が筒状部52の外径と略同一に設けられる一方、その外径が上部ケース2の開口部22よりも大きい径に設けられている。遮蔽部材11の一部にはスリット111が形成されており、このスリット111を介して遮蔽部材11が筒状部52に取り付けられるものとなっている。
【0022】
規制部材6は、例えば、ステンレス等の非磁性金属材料で形成され、概して多方向入力装置1の左右方向に延伸する長尺形状を有している。規制部材6は、操作体5の鍔状部51に形成された凹部55と略同一の幅(正確には、僅かに狭い幅)を有する板状部61と、この板状部61の長手方向である左右方向の両端部から下方側に折り曲げ形成される一対の規制片62とを有している。これらの規制片62は、上部ケース2の側壁部23aの内壁面に対向するように平行に配置される。これらの規制片62の外面間の長さは、上部ケース2の側壁部23aの内壁面間の長さと略同一(正確には、僅かに短い寸法)に設けられている。板状部61の中央には、左右方向に長い長孔63が形成されている。この長孔63は、操作体5の筒状部52が貫通可能な寸法に設けられ、その側方側端部には、後述する治具13が挿入される貫通部としての切り欠き部64が形成されている。なお、規制部材6は、非磁性体で構成されていれば、必ずしも金属材料で構成される必要はなく、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成しても良い。
【0023】
操作つまみ10は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成され、概して円盤形状を有している。操作つまみ10の下面には、矩形状を有する突出部101が形成されると共に、その突出部101の中央に八角柱形状などの非円形状を有する係合部としての係合片102が設けられている。この係合片102は、筒状部52の穴52a内に挿入され、操作つまみ10に加えられたスライド操作などを操作体5に伝達するものとなっている。この係合片102の中央には、後述するネジ7の軸部72が挿入される穴部102aが形成されている。この穴部102aには、この軸部72の外周に設けられたネジ山に対応するネジ溝が形成されている。
【0024】
ネジ7は、例えば、フェライト等の磁性金属材料で形成され、ヘッド部71と、軸部72とを有して構成されている。本多方向入力装置1においては、ヘッド部71を下方側に配置する一方、装置内部側から軸部72を操作体5の貫通孔54に挿通させ、筒状部52内に挿入された操作つまみ10の係合片102に固定する。これにより、操作体5と操作つまみ10とが一体化されるものとなっている。
【0025】
磁石8は、円盤形状を有しており、操作体5の小径部53内に収容可能な寸法に設けられている。磁石8は、操作体5に固定されたネジ7との間で作用する磁力により操作体5に保持されている。この場合において、磁石8は、鍔状部51の下面に設けられた保持面51aにより保持され、ネジ7との間に僅かな寸法の隙間を挟んで対向配置されるものとなっている。なお、操作体5における磁石8の保持状態については後述する。
【0026】
コイルばね9は、例えば、ステンレス等の非磁性金属材料で形成されている。コイルばね9は、図示せぬフック状の両端を連結することで環状を有しており、無負荷状態におけるその内径は、下部ケース3の突出部32及び操作体5の小径部53の外径より僅かに小さい寸法に設けられている。このコイルばね9は、詳細について後述するように、操作体5がスライド移動した場合に操作体5を初期位置に復帰させる弾性力を、操作体5の小径部53に付与するものである。
【0027】
取付部材4の上面には、操作体5のスライド移動を検出する検出手段の一部を構成する後述の磁気センサ122が実装される回路基板12が固定される。この回路基板12は、磁気センサ122が下部ケース3の凹部33に対応する位置に配置されるように取付部材4に固定されている。なお、回路基板12において、磁気センサ122は、その構成部材の腐食や検出精度の劣化を防止するために、例えば、絶縁性の樹脂材料等による封止部121により封止されている。下部ケース3の凹部33は、この封止部121を収容するものとなっている。なお、回路基板12上には、図示はしていないが、磁気センサ122を構成する磁気検出素子からの信号を外部出力する出力端子に接続される複数のリード線が設けられている。なお、この回路基板12に実装される磁気センサ122については後述する。
【0028】
このような構成を有する多方向入力装置1を組み立てると、図3に示すように、操作体5に固定された操作つまみ10が上部ケース2の上方側に突出すると共に、操作体5の筒状部52の一部に取り付けられた遮蔽部材11が上部ケース2に載置された状態とされる。このように、上部ケース2の開口部22よりも大きい外径を有する遮蔽部材11が上部ケース2に載置されることから、開口部22を介して多方向入力装置1の内部に埃等が浸入するのを防止できるものとなっている。
【0029】
多方向入力装置1の内部においては、図4及び図5に示すように、下部ケース3の突出部32の平面部32aの上方に、磁石8を収容した状態の操作体5の小径部53が載置されている。コイルばね9は、上下に対向状態にあるこれらの突出部32及び小径部53の外周を囲むように、僅かに伸びた状態で下部ケース3の底面部31上に配置されている。このように磁石8を保持する小径部53の外周側にコイルばね9を配置していることから、コイルばね9が配置される部分を小径部53とオーバーラップさせることができるので、多方向入力装置1における厚み方向の寸法を小型化することが可能となっている。
【0030】
操作体5は、鍔状部51をハウジング内に収納させて、この鍔状部51が下部ケース3の底面部31と離間して対向する状態で配置され、鍔状部51の下面でコイルばね9の頂部を規制するものとなっている。また、操作体5は、筒状部52を上部ケース2の開口部22を介して装置外部に突出させている。そして、筒状部52の穴52aに操作つまみ10の係合片102が挿入された状態において、装置内部側からネジ7によりネジ止めされることで、操作つまみ10と操作体5とが一体化されている。この場合、係合片102が筒状部52に挿入されていることから、操作つまみ10に与えられる操作力は、そのまま操作体5に対して伝達されることとなる。規制部材6は、鍔状部51の凹部55に収容された状態で配置され、その規制片62が上部ケース2の側壁部23aの内壁面に僅かなクリアランスをもって対向配置されている。
【0031】
操作体5に固定されたネジ7のヘッド部71は、小径部53内に収容されている磁石8と対向する。磁石8は、このネジ7との間に発生する磁力により装置上方側に吸引された状態となっており、操作体5に保持されている。このように、磁石8をネジ7との間で作用する磁力によって操作体5に保持することにより、磁石8を固定するために接着剤等を使用する必要がなく、組立作業性を向上することが可能となっている。また、ネジ7を磁性金属材料で構成していることから、ネジ7にヨークとしての役割(所謂、バックヨークとしての役割)を果たさせることができ、磁気センサ122における検出精度を向上することが可能となる。
【0032】
このように保持される磁石8の位置決めは、鍔状部51の小径部53の内側に配置される保持面51aにより行われ、磁石8は、ネジ7のヘッド部71と僅かな隙間を挟んで対向配置されている。このように保持面51aによりネジ7から一定の隙間を挟んで磁石8を保持するようにしたことから、ネジ7に接触させて磁石8における水平度を確保する場合に比べてより精度良くその水平度を確保することが可能となっている。
【0033】
また、回路基板12において、磁気センサ122を封止する封止部121は、下部ケース3の凹部33に収容されている。この凹部33は、突出部32の裏面側に形成されていることから、初期位置に操作体5が配置されている状態において、小径部53内に収容された磁石8と、磁気センサ122とが対向して配置されるものとなっている。磁気センサ122は、このように配置される磁石8から発生する磁界を検出し、磁石8(操作体5)のスライド位置を検出するように構成されている。
【0034】
ここで、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する回路基板12に実装される磁気センサ122の概略構成について説明する。図6は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する回路基板12に実装される磁気センサ122の平面図である。図7は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する回路基板12に実装される磁気センサ122と磁石8との位置関係を示す図である。なお、図7においては、図6に示す左方側から回路基板12及び磁石8を示している。
【0035】
本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、操作体5の小径部53に収容される磁石8と、回路基板12に実装された磁気センサ122とで操作体5のスライド位置を検出する。この場合において、磁気センサ122は、基本的な構成として、反強磁性層、ピン層、中間層及びフリー層を回路基板12上に積層して形成され、巨大磁気抵抗効果を利用した複数(本実施の形態では4つ)のGMR(Giant Magneto Resistance)素子122aと、これらのGMR素子122aからの出力信号を増幅すると共に、増幅後の出力信号に基づいて磁石8(操作体5)のスライド位置を算出する制御回路122bとを有している。
【0036】
磁気センサ122においては、小径部53に収容される磁石8からの磁束をGMR素子122aに作用させて、その電気抵抗値の変化を磁束の向きにより生じさせる。例えば、磁石8が磁気センサ122側にN極、操作体5側にS極が着磁されている場合、磁石8からの磁束は、概して図7に示す矢印のように発生する(なお、図7に示す紙面手前側及び奥側にも同様に発生する)。磁気センサ122においては、4つのGMR素子122aでブリッジ回路を構成し、一対のGMR素子122aにおける電気抵抗値の変化に応じた出力信号と、他の一対のGMR素子122aにおける電気抵抗値の変化に応じた出力信号との差異に基づいて、磁石8(操作体5)のスライド位置を算出するものとなっている。
【0037】
なお、この磁気センサ122が備えるGMR素子122aが巨大磁気抵抗効果を発揮するためには、例えば、反強磁性層がα−Fe2O3層、ピン層がNiFe層、中間層がCu層、フリー層がNiFe層から形成されることが好ましいが、これらのものに限定されるものではなく、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、いずれのものであってもよい。また、磁気センサ122が備えるGMR素子122aは、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、上記の積層構造のものに限定されるものではない。
【0038】
ここで、本実施の形態に係る多方向入力装置1において、操作体5に操作つまみ10を組み付ける際の作業について説明する。図8及び図9は、本実施の形態に係る多方向入力装置1において、操作体5に操作つまみ10を組み付ける際の作業について説明するための斜視図である。図8及び図9に示すように、本実施の形態に係る多方向入力装置1において、操作体5に操作つまみ10を組み付ける際には、例えば、ステンレス等の非磁性金属材料の棒状体で構成される複数の治具13を用いる。これらの治具13は、操作体5の治具挿入孔56及び上部ケース2の治具挿入孔24に挿入されることで、操作体5を上部ケース2に回転不能に固定するものとなっている。
【0039】
本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、このように上部ケース2に操作体5を固定した状態で、その筒状部52に操作つまみ10の係合片102を挿入する。そして、操作体5の下面側から貫通孔54にネジ7の軸部72を挿通させ、操作つまみ10を操作体5にネジ止めする(図9参照)。このように操作体5の回転を規制した状態で操作つまみ10をネジ止めするようにしたことから、ネジ止め作業に応じて操作体5が連れ回りするような事態を防止でき、組立作業性を向上することが可能となっている。
【0040】
また、このように操作体5に操作つまみ10を組み付ける際、本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、規制部材6の位置決めも行う。すなわち、本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、上部ケース2と操作体5との間に規制部材6を配置すると共に、その切り欠き部64に治具13を挿入した状態で操作体5に対する操作つまみ10の組付けを行う(図9参照)。このように操作体5に操作つまみ10を組み付ける際に用いる治具13を用いて規制部材6の位置決めも行うようにしたことから、より組立作業性を向上することが可能となっている。
【0041】
なお、治具13を用いて位置決めする際、規制部材6においては、図10に示すように、板状部61が操作体5の凹部55に収容される。上述したように、規制部材6の板状部61の幅は、凹部55の幅と略同一に設けられていることから、板状部61は、凹部55に入り込んだ状態とされる。一方、規制部材6の規制片62は、図9に示すように、上部ケース2の側壁部23aの内壁面に対向配置されている。このため、操作体5に回転力が与えられた場合、凹部55の側壁部55aと板状部61の端面61aとが係合すると共に(図10参照)、規制片62が側壁部23aの内壁面に接触することで、操作体5の回転を規制するものとなっている。また、操作つまみ10の非円形状をなした係合片102が、操作体5の筒状部52に形成された穴52aに係合していることから、操作つまみ10に与えられた回転力は、そのまま操作体5に伝達され、この規制部材6により規制されることとなる。すなわち、操作体5を介して操作つまみ10が回転するのを規制でき、操作性に優れた多方向入力装置1を提供するものとなっている。
【0042】
また、規制部材6は、板状部61が凹部55に収容される一方、その規制片62が上部ケース2の側壁部23aの内壁面に対向配置されることから、側壁部23aによって、図10に示すX方向へのスライド移動が規制される一方、同図に示すY方向への移動が許容されるものとなっている。操作体5(操作つまみ10)の図10に示すX方向へのスライド移動の際、鍔状部51の中央部を挟んで対向する位置に形成される、凹部55の側壁部55aは、板状部61の端面61aにより案内される。なお、操作体5の図10に示すY方向へのスライド移動の際には、凹部55の側壁部55aが、板状部61の端面61aと係合し、操作体5と規制部材6とが一体的にスライド移動することとなる。
【0043】
次に、本実施の形態に係る多方向入力装置1における操作体5がスライド移動した場合の動作について説明する。図11は、本実施の形態に係る多方向入力装置1の初期状態における平面図である。図12は、図11に示す状態から操作体5を同図に示すX方向にスライド移動した場合の平面図である。図13は、図12に示す一点鎖線Aにおける断面図である。図14は、図11に示す状態から操作体5を同図に示すY方向にスライド移動した場合の平面図である。図15は、図14に示す一点鎖線Bにおける断面図である。なお、図11〜図15においては、説明の便宜上、上部ケース2及び遮蔽部材11を取り除いている。また、図12及び図14においては、操作体5が末端の位置までスライド移動した場合について示している。
【0044】
初期状態においては、図11に示すように、規制部材6がハウジング(下部ケース3)の略中央に配置されている。多方向入力装置1の内部においては、各構成部材が図4及び図5に示す状態とされている。すなわち、磁石8を保持した操作体5の小径部53は、下部ケース3の突出部32の上方に対向した状態で配置されており、これらの小径部53及び突出部32の外周側にコイルばね9が配置されている。この場合、小径部53は、コイルばね9による弾性力により突出部32の中央位置(初期位置)に配置された状態となっている。
【0045】
図11に示す状態から同図に示すX方向に操作つまみ10を介して操作体5をスライド移動する際、図12に示すように、操作体5は、規制部材6の板状部61の端面61aに沿って、鍔状部51の凹部55の側壁部55aが案内される。この場合、規制部材6は、移動しないでハウジングの略中央の位置に維持されている。多方向入力装置1の内部においては、図13に示すコイルばね9の右方側端部が突出部32の右方側端部に係止されると共に、その上部(頂部)が鍔状部51により規制された状態において、コイルばね9の左方側端部が小径部53の左方側端部でX方向に押し広げられている。そして、図13に示す状態から、操作つまみ10に対するスライド操作が解除されると、コイルばね9の弾性力により、小径部53が押し戻される。これにより、小径部53は、図4に示す初期位置に復帰するものとなっている。
【0046】
一方、図11に示す状態から同図に示すY方向に操作つまみ10(操作体5)をスライド移動する際、図14に示すように、操作体5は、操作体5の鍔状部51の凹部55の側壁部55aが規制部材6の板状部61の端面61aと係合し、規制部材6と一緒に移動する。この場合、規制部材6は、規制片62で上部ケース2の側壁部23aの内壁面に沿ってスライド移動する。多方向入力装置1の内部においては、図15に示すコイルばね9の左方側端部が突出部32の左方側端部に係止されると共に、その上部(頂部)が鍔状部51により規制された状態において、コイルばね9の右方側端部が小径部53の右方側端部でY方向に押し広げられている。そして、図15に示す状態から、操作つまみ10に対するスライド操作が解除されると、コイルばね9の弾性力により、小径部53が押し戻される。これにより、小径部53は、図5に示す初期位置に復帰するものとなっている。
【0047】
なお、図11に示す状態から同図に示すX方向とY方向との中間方向(例えば、図11に示す左下方側45°の方向)に操作体5をスライド移動させる場合には、操作体5は、図13及び図15で説明した動作が組み合わされて動作する。すなわち、図11に示すX方向へのスライド移動は、規制部材6の板状部61の端面61aと、操作体5の凹部55の側壁部55aとにより案内され、同図に示すY方向へのスライド移動は、規制部材6の規制片62と、上部ケース2の側壁部23aの内壁面とにより案内される。多方向入力装置1の内部においては、操作体5のスライド方向と反対側に配置されるコイルばね9の端部が下部ケース3の突出部32により係止されると共に、その上方側から鍔状部51により規制された状態において、コイルばね9のスライド方向側端部が小径部53のスライド方向側端部でX方向とY方向との中間方向に押し広げられている。そして、初期位置に復帰する際も同様に、操作つまみ10に対するスライド操作が解除されると、コイルばね9の弾性力により、小径部53が押し戻される。これにより、小径部53は、図4に示す初期位置に復帰するものとなっている。
【0048】
このように本多方向入力装置1においては、操作体5のスライド移動に伴って小径部53により押し広げられたコイルばね9の上部(操作体5側の頂部)を、操作体5の鍔状部51で規制するようにしているので、コイルばね9の操作体5側への移動を制限してコイルばね9が所望の位置から脱落する事態を防止でき、コイルばね9により確実に操作体5を初期位置に復帰させることが可能となっている。
【0049】
本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、このように操作体5に対してスライド操作が行われた方向にスライド移動する際、並びに、スライド移動先の位置から初期位置に復帰する際、回路基板12に実装された磁気センサ122によって、小径部53内に保持された磁石8からの磁束の向きを検出し、操作体5(磁石8)のスライド位置を検出する。これにより、操作つまみ10に対して行われたスライド操作に応じて、適切に操作体5のスライド位置を検出することが可能となる。
【0050】
このように本多方向入力装置1においては、非接触の態様で操作体5のスライド位置を検出する検出手段を構成しているので、検出手段としての接点の摩耗等による不具合を回避して検出手段の長寿命化を実現することが可能となっている。また、本多方向入力装置1においては、規制部材6及びコイルばね9を非磁性材料で形成することにより、これらの部材が磁石8からの磁界に影響を及ぼすのを防止しているので、高い精度で操作体5のスライド位置を検出することが可能となっている。
【0051】
このように本実施の形態に係る多方向入力装置1によれば、操作つまみ10を操作体5に形成された貫通孔54に装置内部側から挿通されたネジ7によりネジ止めするようにしたので、ハウジングの外部において操作体5に操作つまみ10を固定する場合と比べてその取り付け強度を向上することができ、操作つまみ10を外れ難くすることが可能となる。また、磁石8を鍔状部51における装置内部側の位置に保持するようにしたので、磁石8が脱落する事態を防止することが可能となる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、部材の配置や数などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0053】
例えば、上記実施の形態においては、操作体5のスライド動作を検出する磁気センサは、GMR素子を用いるものであるが、GMR素子に代えて、ホール素子により磁気センサを構成しても良い。また、上記実施の形態においては、操作体5の鍔状部51の上面に凹部55を設け、規制部材6の板状部61を収容すると共に、板状部61の端面61aで凹部55の側壁部55aを案内する場合について示しているが、操作体5及び規制部材6の構成についてこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。すなわち、上述したのと同様の要領で操作体5を案内できれば、どのような構成を採っても良い。例えば、鍔状部51に凹部55を設けるのではなく、複数の突出片を設け、その一部を規制部材6により案内するようにしても良い。反対に板状部61に複数の突出片を設け、その一部で鍔状部51を案内するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多方向入力装置の分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る多方向入力装置の分解斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係る多方向入力装置の平面図である。
【図4】図3に示す一点鎖線Aにおける断面図である。
【図5】図3に示す一点鎖線Bにおける断面図である。
【図6】上記実施の形態に係る多方向入力装置が有する回路基板に実装される磁気センサの平面図である。
【図7】上記実施の形態に係る多方向入力装置が有する回路基板に実装される磁気センサと磁石との位置関係を示す図である。
【図8】上記実施の形態に係る多方向入力装置において、操作体に操作つまみを組み付ける際の作業について説明するための斜視図である。
【図9】上記実施の形態に係る多方向入力装置において、操作体に操作つまみを組み付ける際の作業について説明するための斜視図である。
【図10】上記実施の形態に係る多方向入力装置における操作体と規制部材との位置関係について説明するための斜視図である。
【図11】上記実施の形態に係る多方向入力装置の初期状態における平面図である。
【図12】図11に示す状態から操作体をX方向にスライド移動した場合の平面図である。
【図13】図12に示す一点鎖線Aにおける断面図である。
【図14】図11に示す状態から操作体をY方向にスライド移動した場合の平面図である。
【図15】図14に示す一点鎖線Bにおける断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 多方向入力装置
2 上部ケース
21 上面部
22 開口部
23、23a 側壁部
24 治具挿入孔
3 下部ケース
31 底面部
32 突出部
32a 平面部
33 凹部
4 取付部材
5 操作体
51 鍔状部
51a 保持面
52 筒状部(被係合部)
52a 穴
53 小径部
54 貫通孔
55 凹部
55a 側壁部
56 治具挿入孔
6 規制部材
61 板状部
61a 端面
62 規制片
63 長孔
64 切り欠き部(貫通部)
7 ネジ
71 ヘッド部
72軸部
8 磁石(永久磁石)
9 コイルばね
10 操作つまみ
101 突出部
102 係合片(係合部)
102a 穴部
11 遮蔽部材
111 スリット
12 回路基板
121 封止部
122 磁気センサ
122a GMR素子
122b 制御回路
13 治具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するハウジングと、前記ハウジングの外部に設けられた操作つまみと、前記開口部より大きい寸法を有し前記ハウジング内に配置される鍔状部を有し、前記操作つまみと一体的にスライド移動可能な操作体と、永久磁石と磁気センサとを有し前記操作体のスライド動作を検出する検出手段とを具備した多方向入力装置であって、
前記操作つまみは、前記操作体に形成された貫通孔に装置内部側から挿通されたネジによりネジ止めされ、前記永久磁石は、前記鍔状部における装置内部側の位置に保持されることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記ネジは、磁性材料で構成されると共に前記永久磁石と対向配置され、前記永久磁石は、前記ネジとの間で作用する磁力によって前記操作体に保持されることを特徴とする請求項1記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記永久磁石は、前記操作体に設けられた保持面により前記ネジから一定の隙間を挟んで保持されることを特徴とする請求項2記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記操作体の回転を規制する規制部材を更に具備し、前記操作体には、前記操作つまみに設けられた非円形状の係合部を回転不能に保持する被係合部が設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記規制部材には、前記ハウジング及び操作体に形成された治具挿入孔に対応する貫通部が少なくとも2つ形成されることを特徴とする請求項4記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記操作体は、前記鍔状部よりも小径に設けられ、内部に前記永久磁石を保持する小径部を有し、前記小径部の外周側に前記操作体を初期位置に復帰させる環状のコイルばねを配置したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の多方向入力装置。
【請求項7】
前記コイルばねを非磁性材料で形成したことを特徴とする請求項6記載の多方向入力装置。
【請求項1】
開口部を有するハウジングと、前記ハウジングの外部に設けられた操作つまみと、前記開口部より大きい寸法を有し前記ハウジング内に配置される鍔状部を有し、前記操作つまみと一体的にスライド移動可能な操作体と、永久磁石と磁気センサとを有し前記操作体のスライド動作を検出する検出手段とを具備した多方向入力装置であって、
前記操作つまみは、前記操作体に形成された貫通孔に装置内部側から挿通されたネジによりネジ止めされ、前記永久磁石は、前記鍔状部における装置内部側の位置に保持されることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記ネジは、磁性材料で構成されると共に前記永久磁石と対向配置され、前記永久磁石は、前記ネジとの間で作用する磁力によって前記操作体に保持されることを特徴とする請求項1記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記永久磁石は、前記操作体に設けられた保持面により前記ネジから一定の隙間を挟んで保持されることを特徴とする請求項2記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記操作体の回転を規制する規制部材を更に具備し、前記操作体には、前記操作つまみに設けられた非円形状の係合部を回転不能に保持する被係合部が設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記規制部材には、前記ハウジング及び操作体に形成された治具挿入孔に対応する貫通部が少なくとも2つ形成されることを特徴とする請求項4記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記操作体は、前記鍔状部よりも小径に設けられ、内部に前記永久磁石を保持する小径部を有し、前記小径部の外周側に前記操作体を初期位置に復帰させる環状のコイルばねを配置したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の多方向入力装置。
【請求項7】
前記コイルばねを非磁性材料で形成したことを特徴とする請求項6記載の多方向入力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−153199(P2010−153199A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329850(P2008−329850)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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