説明

多方向操作部材およびそれを備える電子機器

【課題】多方向への操作と、クリック感のある操作との使い分けが可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】操作面の裏面側に1または複数の導電体12を備える操作板10と、その裏面側に対向するように設けられると共に、導電体12に対向する位置に導電体用電極21が設けられた第1の基板20と、第1の基板20の導電体用電極21が設けられた面と反対方向に設けられる1もしくは複数のクリック部材22と、を備える多方向操作部材2としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の方向に操作可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載用機器、携帯電話機および音響機器等の電子機器において、多方向に操作可能な入力装置が用いられている。また、多方向に操作可能な入力装置としては、ユーザが操作板を軽く触れるだけで、操作が可能な入力装置がある(たとえば、特許文献1を参照)。かかる入力装置では、ユーザが指で操作板を押し込む必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−083819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の入力装置では、以下のような問題がある。すなわち、ユーザが操作を行った際に、クリック感が生じないため、ユーザにとっては、確実に操作したという感覚が小さい。
【0005】
また、操作板を軽く触れるだけで操作する場合、あるいはクリック感により確実に操作感を得て操作する場合等を使い分けたいという要望がある。
【0006】
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、多方向への操作と、クリック感のある操作との使い分けが可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の多方向操作部材の一実施の形態は、その操作面の裏面側に1または複数の導電体を備える操作板と、裏面側に対向するように設けられると共に、導電体に対向する位置に導電体用電極が設けられた第1の基板と、第1の基板の導電体用電極が設けられた面と反対方向に設けられる1または複数のクリック部材と、を備えるものとしている。
【0008】
さらに、クリック部材は、第1の基板の導電体用電極が設けられた面の裏面側に、操作板と反対方向に突出するように設けられるのが好ましい場合もある。
【0009】
さらに、操作面から見て、クリック部材の中心は、導電体と少なくとも一部で重なるのが好ましい場合もある。
【0010】
さらに、クリック部材は、操作面からの所定の押圧を受けて弾性変形により座屈するドーム状部材を、第1の基板の導電体用電極が設けられた面と反対方向に有し、ドーム状部材は、操作面の中心を垂直に貫く中心軸を中心とする円周上において、90度の間隔の中心角で配置されているのが好ましい場合もある。
【0011】
また、本発明の電子機器の一実施の形態は、上述の多方向操作部材を備える電子機器としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、多方向への操作と、クリック感のある操作との使い分けが可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る多方向操作部材を備える電子機器の正面図である。
【図2】図1の多方向操作部材および押釦スイッチ用部材を、図1のA−A線で切断した場合の断面図である。
【図3】図1の多方向操作部材および押釦スイッチ用部材を弾性シートの操作面と逆側の面から見た場合の平面図である。
【図4】多方向操作部材が有する第1の基板を操作面側から見た場合の平面図である。
【図5】多方向操作部材の第1の基板を操作面と逆側の面から見た場合の平面図である。
【図6】多方向操作部材の第2の基板を、操作面側から見た場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る多方向操作部材およびそれを備える電子機器の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態では、電子機器として携帯電話1を例に説明するが、電子機器は、携帯電話以外の機器、例えば、モバイルコンピュータ、音楽再生用端末、携帯テレビ、車載用オーディオ機器あるいは上記各機器の操作用リモートコントローラ等であっても良い。
【0015】
(多方向操作部材の構造)
図1は、本発明の実施の形態に係る多方向操作部材2を備える携帯電話1の正面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係る電子機器の一例である携帯電話1は、多方向に操作可能な多方向操作部材2を備える。携帯電話1は、多方向操作部材2および他の押釦スイッチ用部材3等からの入力された情報を処理し、各部を制御する制御部(不図示)を内部に有する。
【0017】
多方向操作部材2の操作面側には、環状の操作板10が露出している。また、本実施の形態では、本発明の多方向操作部材2とは別の押釦スイッチ用部材3が、環状の操作板10の内周に囲まれる領域に配置されている。なお、以後、操作面側を表面側、操作面と逆の面側を裏面側という。また、図1、図3〜6では、各図の紙面において、上側を「北」、右側を「東」、下側を「南」、そして、左側を「西」という。
【0018】
図2は、図1のA−A線に沿って操作面に対して垂直な面で多方向操作部材2を切断した場合の断面図である。なお、図2では、見易さを考慮して、各部材の厚さの比率を変更して図示している。
【0019】
多方向操作部材2は、表面側から、操作板10、弾性シート11、第1の基板20および第2の基板30を主に有する。また、多方向操作部材2は、操作面が環状であり、その内周内側には、別の押釦スイッチ用部材3が配置されている。
【0020】
操作板10は、ユーザが触れるあるいは押圧する部分である。操作板10は、樹脂、金属あるいはそれらのコンポジット等から主に形成できる。操作板10としては、たとえば、外周円の直径が10〜30mm、内周円の直径が4〜15mmの操作面を有し、厚さが約1mmの環状の部材を用いることができる。操作板10は、薄型の弾性シート11上に固着される。なお、本明細書では、表面側から見た場合に、操作板10の外周円の中心を「中心P」といい、「方向」というときには、特段の説明がない限り、操作面を見た場合の中心Pを基準にした方向を指す。
【0021】
弾性シート11は、操作板10および押釦スイッチ用部材3のキートップ50を支持する部材である。また、弾性シート11は、操作板10が表面側から押圧された場合に、その下方に設けられた導電体12等を押し込むことができるように、柔軟な弾性体の層から構成されるのが好ましい。そのような弾性シート11の材料としては、たとえば、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムあるいは天然ゴム等から成るシートが挙げられる。それらの材料の中でも、耐久性が高いウレタン系エラストマーあるいはシリコーンゴムから主に成るシートを用いることが好ましい。また、弾性シート11には、弾性シート11から裏側に向かって突出する導電体12が設けられている。
【0022】
図3は、図1の多方向操作部材2および押釦スイッチ用部材3を弾性シート11の操作面と逆側の面から見た場合の平面図である。
【0023】
導電体12は、弾性シート11から第1の基板20に向かって突出する直径が2〜10mmの略半球状の導電性の弾性体である。具体的には、導電体12は、操作板10と操作方向で重なる位置であって、中心Pを中心とする同心円上に、その球面部分が突出するように設けられている。たとえば、導電体12は、中心Pを基準とした周方向に沿うように45度間隔に1個ずつ、合計8個の導電体12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h(以後、総称する場合には、「導電体12」と称する)が固定されている。
【0024】
導電体12は、第1の基板20上に接触した後、押圧力に応じて弾性変形できるように、柔軟性に富む材料で構成されている。たとえば、導電体12のショアー硬度Aは、50度から90度であるのが好ましい。また、導電体12には、導電性を付与するために、導電性材料が分散されている。導電体12に分散される導電性材料としては、たとえば、カーボンあるいは金属等を用いることができるが、特に、粒子径が小さいもの(たとえば、ナノサイズの粒子)、特に、取り扱いが容易なカーボンブラックを用いるのが好ましい。また、導電体12を構成する母材としては、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマーあるいは天然ゴム等を用いることができ、それらの中でも、シリコーンゴムが好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシリコーンゴムの弾性を維持する観点から、シリコーンゴムの材料と当該導電性材料の総重量に対して5〜50重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。
【0025】
図4は、多方向操作部材2が有する第1の基板20を操作面側から見た場合の平面図である。
【0026】
第1の基板20は、弾性シート11に対向して配置されている。第1の基板20としては、たとえば、印刷回路基板(PCB)を用いることができる。また、第1の基板20の表面側には、導電体12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12hにそれぞれ対向して、導電体用電極21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h(総称する場合には、「導電体用電極21」と称する)が配置されている。
【0027】
導電体用電極21は、ユーザの指が操作板10に触れた際に生じる、裏側方向に向かう押圧力変化を、導電体12を介して検知するためのものである。各導電体用電極21は、多数の歯を有する櫛歯状の一対の電極を互いに接触しないように配置したものとしている。櫛歯状の各導電体用電極21の上から導電体12を接触させると、まず、櫛歯状の一対の電極の両方に触れた時点から、それらの電極が通電状態になる。さらに、その各導電体用電極21と導電体12との接触面積が大きくなるにつれて電気抵抗値が低下する。そのため、導電体12がユーザの指により押圧されると、その押圧力に応じて導電体用電極21の一対の電極間の電気抵抗値が小さくなる。
【0028】
図5は、第1の基板20を裏面側から見た場合の平面図である。
【0029】
第1の基板20の裏面側には、中心Pを基準として、北、東、南、西の4つの方向にクリック部材22が設けられている。具体的には、4つのクリック部材22a,22b,22c,22d(総称する場合には、「クリック部材22」と称する)は、導電体12a,12c,12e,12gと押圧方向で中心が重なる位置にそれぞれ設けられている。つまり、多方向操作部材2では、クリック部材22が東西南北の4方向にて押圧可能に設けられ、導電体12が8方向(東西南北の4方向および当該4方向において隣り合う2方向の間にある1つの中間方向を含む)において押圧操作可能に設けられている。
【0030】
クリック部材22は、押圧される部材であって、一定押圧力以上で押圧されるとスイッチをONあるいはOFFに切り替える部材である。本実施の形態では、クリック部材22は、固定接点23、固定接点24およびドーム状部材25を主に有する。固定接点23および固定接点24は、第1の基板20の裏面に形成された導電部分である。固定接点23は、ドーム状部材25の外周縁部と電気的に接続されている。また、ドーム状部材25は、導電性の逆椀状部材であり、固定接点24を覆うように第1の基板20に配置される。ドーム状部材25は、所定の荷重以上が操作面側から加わることで座屈するような部材である。ドーム状部材25としては、たとえば、金属からなるメタルドームを用いることができる。
【0031】
図6は、第2の基板30を操作面側から見た場合の平面図である。
【0032】
第2の基板30の操作面側には、クリック部材22a,22b,22c,22dと押圧方向で重なる位置に、押圧子31a,31b,31c,31d(総称する場合には、「押圧子31」と称する)がそれぞれ設けられている。押圧子31は、第2の基板30からクリック部材22方向へ突出する凸部である。押圧子31は、第2の基板30が押圧子31形状を一体として有していてもよいし、別体として成形された押圧子31を第2の基板30へ接着あるいは融着等するような形態であってもよい。
【0033】
このような多方向操作部材2では、多方向への操作と、クリック感のある操作との使い分けが可能である。たとえば、ユーザが操作板10の一部を指で軽く触れると、その触れた位置に近い位置の1または複数の導電体12が押し下げられる。押し下げられた導電体12は、一対の導電体用電極21に接し、一対の導電体用電極21が短絡する。さらに、押し下げられた導電体12は、押圧力に応じて弾性変形しながら導電体用電極21に接する。複数の導電体12が押し下げられた場合、指の接触部分に最も近い導電体用電極21が、他の導電体12より大きな面積で導電体用電極21に接触するので抵抗値が最も小さくなる。一方、指の接触部分から離れた導電体用電極21では、導電体12と導電体用電極21との接触面積とが小さいため、比較的高い抵抗値を示す。このような抵抗値の違いを検出することで、指で触れた位置への方向を特定できる。
【0034】
また、多方向操作部材2は、多方向において、操作板10を押し込む押圧力を検出できるものとなる。前述したように、押し下げられた導電体12は、押圧力に応じて導電体12と導電体用電極21との接触面積が異なることから、押圧力に応じて検出される抵抗値が異なる。したがって、抵抗値の違いを検出することで、操作板10を押し込む押圧力を特定できる。
【0035】
一方、上述のような多方向操作部材2では、ユーザが操作板10の東西南北の各方向を強く押圧した場合には、ユーザは、クリック感を得られる。東西南北の各位置にてユーザが所定の荷重以上で操作板10を押圧した場合には、導電体12を介してドーム状部材25が座屈するためである。所定の荷重以上で押圧されると、ドーム状部材25は、押圧子31により座屈し、ドーム状部材25の頂点部分が固定接点24に接触する。その結果、固定接点23と固定接点24とが電気的に接続されて、スイッチがオンとなる。また、操作板10の押圧を解除すると、ドーム状部材25は、固定接点24から離れ、逆椀形状に復元するので、スイッチがオフとなる。
【0036】
また、クリック部材22を、導電体用電極21の下方に設けることで、どの方向でも導電体12と導電体用電極21との接触を安定化させ、多方向への操作がより正確に検出できる。導電体12と導電体用電極21との間にクリック部材22が、存在しないので、押圧力に応じた導電体12と導電体用電極21との接触面積が得られるからである。
【0037】
以上、本発明の多方向操作部材2およびそれを用いた電子機器としての携帯電話1の実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0038】
たとえば、上述の実施の形態において、導電体12は、8つ設けるものとしたが、7個以下設けてもよいし、9個以上設けてもよい。同様に、クリック部材22は、東、西、南および北方向に設けられるものとしたが、このような形態に限定されない。たとえば、クリック部材22は、1〜3方向に設けられてもよいし、5方向以上に設けられてもよい。また、またクリック部材22は、操作中心Pから見て90度ではなく、90度以外の所定角度で設けられても良い。
【0039】
また、制御部(不図示)は、指で触れた位置への方向をベクトル演算により特定してもよい。たとえば、まず、抵抗値の大きさを各導電体用電極21から電圧をほぼ同時に測定し、当該電圧に基づいて各ベクトルを生成する。具体的には、制御部は、各導電体用電極21にて検出された電圧が小さい程、その絶対値が増加するベクトルを生成する。次に、得られた各ベクトルを加算し、合成ベクトルを得る。得られた合成ベクトルの方向および大きさは、それぞれ指で触れた位置への方向および押圧力として制御部が判断する。このように各ベクトルを合成処理することで、導電体用電極21が配置された方向(上述の実施の形態では、8方向)と一致しない任意の方向に指が触れた場合にも、その方向およびその強さを特定できる。また、ベクトル演算を行う際に、電圧値をポイント等に換算してもよい。また、制御部は、指が触れた方向のみを特定してもよいし、指が触れた方向および押圧力の大きさの両方を特定してもよい。
【0040】
上述の実施の形態においては、操作面側から見た場合に、クリック部材22a,22b,22c,22dが、それぞれ導電体12a,12c,12e,12gの中心と重なるものとしているが、このような形態に限らない。たとえば、クリック部材22と導電体12とは、押圧方向において重ならないように配置してもよい。あるいは、導電体12により形成される中心Pを基準とする円上に、クリック部材22の一部が周方向のみまたは径方向のみで押圧方向に重なるものとしてもよい。その場合には、クリック部材22は、8個の導電体12により形成される中心Pを基準とする円と同一の円上あるいはそれよりもわずかに大きい円上に設けられるのが好ましい。なぜなら、人間は、外側部分を比較的強く押圧する傾向があるからである。しかし、導電体12とクリック部材22とが押圧方向にてそれらの中心が重なるように配置される場合には、操作板10に加えられた荷重が、クリック部材22に伝わりやすいという効果がある。なぜなら、上述の実施の形態に係る発明では、導電体12と導電体用電極21とが接触した後のさらなる連続荷重の印加によりクリック部材22が押圧されるため、導電体12の中心とクリック部材22の中心の位置が近ければ近い程、導電体12を介してクリック部材22へ荷重を加えやすいからである。
【0041】
上述の実施の形態では、多方向操作部材2は、略円環状の操作面を有し、8方向に押圧入力できるものであるが、このような形態に限らない。たとえば、操作板10を円環状の他、多角形状、円状等あるいはその一部を用いたような形状としてもよい。しかし、操作面が円環状であることにより、多方向操作部材2をその周方向に沿って連続的に操作できる。また、操作板10の内周内側には、押釦スイッチ用部材3が配置されているが、このような形態に限らない。たとえば、多方向操作部材2の内周内側部分には、何も配置されなくてもよい。
【0042】
操作板10に指を沿わせてなぞることを容易にする目的で、操作板10の操作面に同心円状の溝を形成してもよい。また、操作板10の外周部分を、ユーザが指触で感じることができるように、操作板10の外周部分の厚さを外周以外の部分よりも厚くする、いわゆる円輪状の縁を形成してもよい。
【0043】
上述の実施の形態において、クリック部材22は、ドーム状部材25を含むものとしたが、それに代えて、樹脂製のエンボススイッチ(例えば、PET製ドーム)、タクトスイッチ等の他種のメカニカルスイッチを用いても良い。また、クリック部材22は、必ずしもスイッチ機能を有する必要がなく、たとえば、クリック部材22としてドーム状部材25のみを第1の基板20あるいは第2の基板30に備えてもよい。その場合には、固定接点23および固定接点24を設けなくてもよい。クリック部材22がスイッチ機能を有していない場合には、所定の抵抗値が導電体用電極21にて検出されると、クリック部材22がクリック感を生じさせるに十分な大きさの圧力が加えられた、すなわち、あたかもスイッチが操作された、と制御部が認識できてもよい。さらに、押圧子31は、必須の構成ではなく、第1の基板20の押し下げによりドーム状部材25の座屈あるいはクリック部材22のスイッチの入力が可能であれば、押圧子31は、不要である。また、第2の基板30としては、たとえば、携帯電話1の筐体等を用いてもよい。
【0044】
上述の実施の形態においては、操作面側から、導電体12を弾性シート11の裏面側に、導電体用電極21を第1の基板20の表面側に、クリック部材22を第1の基板20の裏面側に、押圧子31を第2の基板30に設けるものとしているがこのような形状に限らない。たとえば、クリック部材22を第2の基板30に設け、押圧子31を第1の基板20の裏面側に設けてもよい。あるいは、押圧子31を操作板10の裏面側に設け、クリック部材22を第1の基板20の表面側に設け、導電体12を第1の基板20の裏面側に設け、導電体用電極21を第2の基板30に設けるようにしてもよい。しかし、第1の基板20の裏面側にクリック部材22を設けることで、導電体12への押圧力の僅かな違いを正確に取得できるものとなる。
【0045】
上述の実施の形態においては、8個の個別の導電体12を弾性シート11の裏面側に設けるような形態としたが、このような形態に限らない。たとえば、導電体12は、各方向別に独立しておらず、2以上の方向に共通の1または複数の導電体12であっても良い。
【0046】
上述の実施の形態においては、導電体12は、ゴム状弾性体から形成されるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、導電性を有する樹脂あるいは金属(比較的柔らかい方が好ましい)からなる成形体であっても良い。
【0047】
上述の実施の形態において、導電体用電極21を一対の櫛歯形状の電極としとしたが、このような形態に限らない。導電体用電極21を櫛歯形状の電極ではなく、円を略半分に分割した半円形状の電極あるいは円を略4分の1に分割した扇形状の電極を用いることもできる。しかし、櫛歯形状の電極を用いる場合には、操作板10を押圧する量が小さい場合にも、検知感度が優れている。なぜなら、櫛歯形状の電極である場合には、導電体12が容易に一対の電極両方に接触できるが、扇状等の電極の場合、一方の極にしか導電体12が触れない場合があるからである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、たとえば、各種電子機器の入力装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 携帯電話(電子機器)
2 多方向操作部材
10 操作板
12 導電体
21 導電体用電極
20 第1の基板
22 クリック部材
25 ドーム状部材
P 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その操作面の裏面側に1または複数の導電体を備える操作板と、
上記裏面側に対向するように設けられると共に、上記導電体に対向する位置に導電体用電極が設けられた第1の基板と、
上記第1の基板の上記導電体用電極が設けられた面と反対方向に設けられる1または複数のクリック部材と、
を備えることを特徴とする多方向操作部材。
【請求項2】
請求項1に記載の多方向操作部材であって、
前記クリック部材は、前記第1の基板の前記導電体用電極が設けられた面の裏面側に、前記操作板と反対方向に突出するように設けられることを特徴とする多方向操作部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の多方向操作部材であって、
前記操作面から見て、前記クリック部材の中心は、前記導電体と少なくとも一部で重なることを特徴とする多方向操作部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向操作部材であって、
前記クリック部材は、前記操作面からの所定の押圧を受けて弾性変形により座屈するドーム状部材を、第1の基板の導電体用電極が設けられた面と反対方向に有し、当該ドーム状部材は、前記操作面の中心を垂直に貫く中心軸を中心とする円周上において、90度の間隔の中心角で配置されていることを特徴とする多方向操作部材。
【請求項5】
請求項1〜4の多方向操作部材を備えることを特徴とする電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−141958(P2011−141958A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−456(P2010−456)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】