説明

多方向操作部材およびそれを備える電子機器

【課題】触れた位置に応じた多方向操作機能と、入力部材の動きに応じた多方向操作機能とを両方使い分け可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】操作面に略水平に移動可能であると共に、ユーザが指で触れた位置を少なくとも検出可能な入力部材10と、入力部材10と共に移動可能な基板30と、入力部材10あるいは基板30の外周縁の側面に対向して設けられると共に、入力部材10あるいは基板30の移動により弾性変形するセンサ部44と、を有する多方向操作部材3としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の方向に操作可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載用機器、携帯電話機および音響機器等の電子機器において、多方向に操作可能な入力装置が用いられている。また、多方向に操作可能な入力装置としては、たとえば、いわゆるタッチパッド式の入力装置(たとえば、特許文献1を参照)、あるいは、ジョイスティック状の入力装置(たとえば、特許文献2を参照)が知られている。特許文献1に記載の入力装置では、ユーザが操作板を軽く触れるだけで、その触れた位置に応じて多方向に操作ができる。また、特許文献2に記載の入力装置では、ユーザがジョイスティック状の入力部材を前後左右に倒すことより、その入力部材の動きに応じて多方向に操作できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−083819号公報
【特許文献2】米国特許第5521596号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの視点にたてば、状況に応じて、軽く触れるだけで多方向に操作したい場合と、入力部材を物理的に動かすことで多方向に操作したい場合とがある。かかるユーザの要望に応えるべく、電子機器に、これら2つの入力装置を両方備えることも可能である。しかし、電子機器の小型化および操作領域の小面積化が進む最近の状況下では、特許文献1に記載の入力装置および特許文献2に記載の入力装置を1つの入力装置とすることが望まれている。
【0005】
本発明は、かかる要望を達成する入力装置であって、触れた位置に応じた多方向操作機能と、入力部材の動きに応じた多方向操作機能とを両方使い分け可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の多方向操作部材の一実施の形態は、操作面に略水平に移動可能であると共に、ユーザが指で触れた位置を少なくとも検出可能な入力部材と、入力部材と共に移動可能な基板と、入力部材あるいは基板の外周縁の側面に対向して設けられると共に、入力部材あるいは基板の移動により弾性変形するセンサ部と、を有するものとしている。
【0007】
さらに、センサ部は、基板の側面に対向して配置されていると共に、基板の少なくとも1つの側面に対向して少なくとも1つのセンサ部が設けられ得る。
【0008】
入力部材と基板との間に、操作面の押圧を検出するスイッチ部材を、さらに備え得る。
【0009】
また、本発明の電子機器の一実施の形態は、上述の多方向操作部材を備える電子機器としている。
【0010】
さらに、多方向操作部材は、キーボードに隣接して設けられ得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、触れた位置に応じた多方向操作機能と、入力部材の動きに応じた多方向操作機能とを両方使い分け可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器を提供する電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る多方向操作部材を備える電子機器において、ユーザが手をホームポジションにおいた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る多方向操作部材の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る多方向操作部材を操作面側から見た場合の平面図である。
【図4】図3に示す多方向操作部材を、A−A線で切断した場合の断面図である。
【図5】図3に示す多方向操作部材のタッチパッドを、西方向へ移動した場合に、操作面側から見た平面図である。
【図6】図5に示す多方向操作部材をB−B線で切断した場合の断面図である。
【図7】図3に示す多方向操作部材のタッチパッドを、北西方向へ移動した場合に、操作面側から見た平面図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る多方向操作部材およびそれを備える電子機器の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る電子機器の一例であるラップトップ型コンピュータ1の斜視図である。
【0015】
図1に示すように、ラップトップ型コンピュータ1は、複数のキーから構成されるキーボード2および多方向操作部材3を備える。多方向操作部材3は、多方向に操作可能な部材であると共に、タッチパッドとしても機能する部材である。また、多方向操作部材3は、キーボード2に隣接して設けられている。図1では、キーボード2として、いわゆるQWERTY配列あるいはJIS配列等の文字入力用キーボードを図示しているが、このような形態に限らず、どのような用途のキーボード2であってもよい。また、本明細書において、「キーボード2に隣接」とは、キーボード2に一部または全部が囲まれる場合、および、キーボード2と間隙を隔てて隣なり合う場合も含む。ラップトップ型コンピュータ1は、キーボード2および多方向操作部材3等から入力された情報を処理し、各部を制御する制御部(不図示)を内部に有する。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態に係る多方向操作部材3の分解斜視図である。図3は、多方向操作部材3を操作面側から見た場合の平面図である。図4は、多方向操作部材3を図3のA−A線に沿って操作面に対して垂直な面で切断した場合の断面図である。なお、図3では、見易さを考慮して、各部材の厚さの比率を変更して図示している。なお、断面図以外の図では、見易さのため、伸縮部材(後述する)の図示を省略している。また、図3、図5および図7では、紙面において、上側を「北」、右側を「東」、下側を「南」、そして、左側を「西」という。
【0017】
多方向操作部材3は、長辺3〜10cm、短辺2〜7cmの長方形の操作面を備えた薄型の直方体の形状を有する。多方向操作部材3は、主に、タッチパッド10、緩衝層20、基板30および収容部40を有する。
【0018】
入力部材としてのタッチパッド10は、多方向操作部材3の操作面側に露出している。タッチパッド10としては、ユーザの指あるいは物体がタッチパッド10に触れた際に、その触れた位置を検出できるものであればどのようなものでも採用できる。たとえば、静電容量式、抵抗膜式、赤外線式等のタッチパッドを用いることができる。その中でも、指で操作するのに適した静電容量式のタッチパッド10を用いるのが好ましい。静電容量式のタッチパッド10は、ユーザの指あるいは導体がタッチパッド10に触れた際に生じる静電容量の変化によって、指あるいは導体の位置を検出できる。タッチパッド10は、操作面側から順に、保護層11、導電膜層12および補強層13を積層して成る。
【0019】
保護層11は、タッチパッド10の保護、外観向上およびタッチパッド10の表面の摩擦係数の制御のために設けられる層である。また、保護層11は、導電膜層12と指(電極とみなされる)との間の誘電層としても機能する。保護層11としては、たとえば、熱可塑性のシリコーン樹脂層を用いることができる。
【0020】
導電膜層12は、電極として機能する。導電膜層12の4隅には、検出部(不図示)が設けられ、各検出部(不図示)から同時にごく微弱な電流を流し続けている。導電膜層12を流れる電流は、人の指等の導電体がタッチパッド10に触れると、静電容量が変化することにより、変化する。その電流の変化量は、各検出部(不図示)から触れた点までの距離に反比例する。したがって、制御部(不図示)は、各検出部(不図示)にて検出された電流値から、指等の導電体が触れた位置の座標を求めることができる。
【0021】
補強層13は、タッチパッド10を補強するための層である。たとえば、たとえば、補強層13は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、あるいは、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の樹脂から構成される。また、補強層13は、操作面から視認されるタッチパッド10の色味を調節するために設けられることもある。
【0022】
緩衝層20は、タッチパッド10を操作した際の衝撃を緩衝する層である。緩衝層20は、弾性に富み、伸縮自在な部材から構成されるのが好ましく、たとえば、主にシリコーンからなるスポンジから構成される。また、緩衝層20は、操作面から見て略中央に、穴部21を有する。ユーザがタッチパッド10を押圧することにより、タッチパッド10が押し下げられ、後述するスイッチ部材32を押し込み、スイッチをオンあるいはオフできる。また、緩衝層20は、タッチパッド10を東西南北に移動した場合に、タッチパッド10と基板30とが連動できるようにタッチパッド10と基板30とを連結し、タッチパッド10を支持する部材を兼ねている。
【0023】
基板30は、スイッチ部材32を電気的に接続する。また、基板30の操作面から見て側面には、フレキシブルプリント基板(不図示)が配置されている。フレキシブルプリント基板は、後述のセンサ部44と対向する位置に、接点31を有する。なお、フレキシブルプリント基板は、基板30の表面側から、基板30の側面に沿って折り曲げられているような形態であってもよい。かかる場合には、フレキシブルプリント基板は、後述の接点31およびスイッチ部材32を有していてもよい。さらに、フレキシブルプリント基板は、基板30の裏面側にも設けられているような形態であってもよい。基板30は、緩衝層20によりタッチパッド10に連結されているため、タッチパッド10が操作面に対して水平移動すると、基板30は、タッチパッド10と一体的に移動できる。なお、基板30が収容部40の内部を水平移動しやすいように、基板30の裏面側に別の樹脂板を取り付けてもよい。かかる場合には、当該別の樹脂板を収容部40の内部に設けられたガイドレールに嵌め、ガイドレールに沿って動くようにしてもよい。
【0024】
接点31は、ユーザによるタッチパッド10の平行移動量の変化を、センサ部44を介して検出する機能を有する。接点31としては、たとえば、櫛歯状の一対の電極を用いることができる。そのような接点31にセンサ部44を接触させると、まず、櫛歯状の一対の電極の両方に触れた時点から、それらの電極が通電状態になる。さらに、センサ部44と接点31との接触面積が大きくなるにつれて両電極間の電気抵抗値が低下する。すなわち、ユーザにより基板30に水平方向の力が加えられると、その力に応じて接点31を構成する一対の電極間の電気抵抗値が小さくなる。
【0025】
スイッチ部材32は、タッチパッド10の押し込みにより、スイッチをオンあるいはオフするための部材である。スイッチ部材32は、基板30の表面であって、緩衝層20の穴部内方に配置される。スイッチ部材32は、たとえば、クリック感を伴うスイッチ動作を実現するために、表面側に向かって逆椀状に突出する導電性のドーム部材(不図示)を有する。基板30には、固定接点(不図示)と導電部(不図示)とが配線パターンとして形成され、ドーム部材は、固定接点を覆うように基板30に配置される。また、ドーム部材は、導電部と電気的に接続されている。かかる場合には、ユーザがタッチパッド10を押圧すると、緩衝層20が縮み、タッチパッド10がドーム部材を押し込むことにより、ドーム部材が撓み、ドーム部材の頂点が固定接点に接触するので、固定接点と導電部とが電気的に導通する。一方、ユーザがタッチパッド10の押圧を解除すると、緩衝層20が弾性的に元の形状に戻り、ドーム部が固定接点から離間し、固定接点と導電部とが非導通状態となる。かかる導通/非導通により、スイッチのON/OFFが切替えられる。
【0026】
収容部40は、底面41および側壁42を有する。側壁42は、底面41の端部から操作面方向へ延出する枠状の部材である。底面41および側壁42により形成される凹部の内方には、緩衝層20により連結されたタッチパッド10および基板30が操作面に対して水平移動可能に配置されている。収容部40の側壁42により形成される内周は、タッチパッド10、緩衝層20および基板30の外周よりも東西南北の各方向にそれぞれ0.2〜1mm程度大きい。したがって、タッチパッド10、緩衝層20および基板30は、収容部40の凹部の内方において、操作面に対して水平な方向であれば、360度、どの方向に対しても移動できる。
【0027】
伸縮部材43は、その一端側がタッチパッド10の側面に固着され、他端側は、側壁42の内周側に固着されている。伸縮部材43は、柔軟性に富む弾性体、たとえば、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム等の熱硬化性エラストマーあるいは天然ゴム等から成るシートから構成されるのが好ましい。それらの材料の中でも、熱可塑性エラストマーの一種である耐久性に優れたウレタン系エラストマーから成る蛇腹状部材を用いるのが好ましい。なお、タッチパッド10の平行移動に十分追随することができる程度に伸縮可能な部材から伸縮部材43を構成する場合には、伸縮部材43は、蛇腹形状でなくてもよい。また、伸縮部材43を弾性に富む材料で構成する場合には、タッチパッド10が移動した後、定位置に戻ってくるように付勢できる。
【0028】
センサ部44は、側壁42の内周側の各辺に1個づつ設けられている。センサ部44は、側壁42から基板30に向かって突出する部材である。センサ部44は、比較的高抵抗の導電性弾性体からなる直径が2〜10mmの略半球状の部材を用いることができる。具体的には、接点31とセンサ部44との接触面積に応じて接点31にて検出される電気抵抗値が変化するように、センサ部44の電気抵抗値を調節するのが好ましい。センサ部44は、基板30が移動した際に、その移動量に応じて弾性変形できるように、柔軟性に富む材料で構成されている。たとえば、センサ部44のショアー硬度Aは、50度から90度であるのが好ましい。また、センサ部44には、導電性を付与するために、導電性材料が分散されている。センサ部44に分散される導電性材料としては、たとえば、カーボンブラックあるいは金属粒子等を用いることができるが、特に、粒子径が小さいもの(たとえば、ナノサイズの粒子)、特に、取り扱いが容易なカーボンブラックを用いるのが好ましい。また、センサ部44を構成する母材としては、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマーあるいは天然ゴム等を用いることができ、それらの中でも、シリコーンゴムが好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシリコーンゴムの弾性を維持する観点から、シリコーンゴムの材料と当該導電性材料の総重量に対して5〜50重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。
【0029】
センサ部44は、接点31に対向して設けられている。そのため、基板30がセンサ部44へ向かって移動すると、その移動方向側のセンサ部44と接点31は接触するので、接点31を構成する電極間は電気的に導通する。また、基板30の移動により、センサ部44が接点31に押しつけられると、センサ部44は、弾性変形しながら接点31とセンサ部44との接触面積を増加させる。したがって、センサ部44と接点31との間の電気抵抗値は、それらの接触面積が増加するに従い、減少する。このような多方向操作部材3を用いると、タッチパッド10を操作面に対して水平移動させた場合に、その移動方向を容易に検出できる。
【0030】
図5は、ユーザがタッチパッド10を西方向に移動させた場合の平面図である。図6は、図5に示す多方向操作部材3をB−B線により切断した場合の断面図である。
【0031】
図5および図6に示すように、ユーザがタッチパッド10を西方向に移動させると、センサ部44の弾性変形量に応じた電気抵抗値にて接点31とセンサ部44とが導通する。制御部(不図示)は、接点31とセンサ部44との間の電気抵抗値が所定量低下したことを検出することにより、タッチパッド10を西側に移動したことを特定できる。
【0032】
図7は、北西方向にタッチパッド10を移動した場合の正面図である。図7に示すように、北西方向へタッチパッド10を移動すると、西側のセンサ部44と北側のセンサ部44とが、同程度変形しながらそれぞれ向かい合う接点31および接点31に接触する。制御部(不図示)は、西側のセンサ部44と、北側のセンサ部44とが同程度の電気抵抗値を示していることを検出し、北西方向へタッチパッド10を移動したことを特定できる。
【0033】
上述のような多方向操作部材3を用いると、ユーザは、タッチパッド10上の触れた位置に応じた多方向操作と、タッチパッド10自体の水平移動量に応じた多方向操作とを使い分けできる。たとえば、ユーザは、ホームポジションから手の位置を移動させてタッチパッド10上に指を触れることにより、多方向操作部材3をタッチパッドとして使用できる。ここで、多方向操作部材3をタッチパッドとして使用する際には、ユーザは、キーボードを操作する手の置き位置(いわゆるホームポジション)から、タッチパッド10を触れるために手の位置を変える必要がある。一方、ユーザは、タッチパッド10を操作面に水平移動させることにより、多方向操作部材3を用いてホームポジションから手の位置を移動させずに多方向の操作を行うことができる。
【0034】
以上、本発明に係る多方向操作部材の実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0035】
たとえば、上述の実施の形態では、電子機器としてラップトップ型コンピュータ1を例示したが、電子機器は、ラップトップ型コンピュータ1以外の機器、例えば、モバイルコンピュータ、音楽再生用端末、携帯テレビ、車載用オーディオ機器あるいは上記各機器の操作用リモートコントローラ等であっても良い。また、多方向操作部材3は、キーボード2を有していない電子機器に設けられても良い。しかし、多方向操作部材3は、キーボード2を有する電子機器に設けられるのがより好ましい。なぜなら、多方向操作部材3は、キーボード2に隣接する位置に設けられるため、ホームポジションから手を移動させずに多方向操作を可能とするからである。特に、キーボード2のホームポジションに手を置いた際に、親指の先から5cm以内の位置に多方向操作部材3を配置した場合には、ホームポジションから手を移動することなく親指を使ってタッチパッド10を操作できる。たとえば、タッチパッド10を容易に移動させるために、タッチパッド10の操作面に凹凸を形成してもよい。また、タッチパッドの10の外周部分に滑り止めの縁を設けてもよい。
【0036】
上述の実施の形態において、多方向操作部材3は、長方形状としたが、そのような形態に限らない。操作面から見て正方形、円形状あるいは環形状としてもよいし、3角形、あるいは4角形以上の多角形であってもよい。また、タッチパッド10の操作面は、平面ではなく、凹凸形状を有する等、立体的であってもよい。
【0037】
また、上述の実施の形態において、センサ部44は、各辺に1個づつ設けるものとしたが、2個以上設けてもよいし、センサ部44が設けられていない辺があってもよい。なお、操作面に対し360度どの方向へ移動した場合に、移動方向を検出するためには、最低3個のセンサ部44が必要である。しかし、センサ部44は、タッチパッド10の操作面の中心を垂直に貫く中心軸を基準として等間隔の中心角にて配置されているのがより好ましい。操作面に対し360度どの方向へ移動した場合にも、移動方向を検出するのが容易だからである。なお、多方向操作部材3は、360度すべての移動方向を検出するのではなく、1方向のみあるいは2方向以上であって所定の方向への移動のみを検出するようにしてもよい。
【0038】
また、制御部(不図示)は、タッチパッド10の移動方向をベクトル演算により特定してもよい。たとえば、まず、各接点31にてほぼ同時に電気抵抗値を測定し、当該電気抵抗値に基づいて各ベクトルを生成する。具体的には、制御部は、各接点31にて検出された電気抵抗値が小さい程、その絶対値が増加するベクトルを生成する。次に、得られた各ベクトルを加算し、合成ベクトルを得る。得られた合成ベクトルの方向および大きさは、それぞれタッチパッド10の移動方向および移動量として判断される。このように各ベクトルを合成処理することにより、接点31が配置された方向(上述の実施の形態では、4方向)と一致しない任意の方向にタッチパッド10を移動した場合にも、その移動方向を特定できる。また、ベクトル演算を行う際に、電気抵抗値をポイント等に換算してもよい。また、制御部は、タッチパッド10の移動方向のみを特定してもよいし、タッチパッド10の移動量あるいは力の大きさの両方を特定してもよい。
【0039】
上述の実施の形態においては、1個のセンサ部44に対し1個の接点31が対応するような形態としたが、このような形態に限らない。たとえば、センサ部44は、各方向別に独立しておらず、2以上の接点31に共通の1または複数のセンサ部44であっても良い。また、センサ部44は、基板30の側面に対向するのではなく、タッチパッド10、緩衝層20および基板30のいずれかの側面に対向していればよい。しかし、センサ部44を基板30に対向させる方が、接点31を設けやすくなる。また、基板30は、他の部材(タッチパッド10、緩衝層20)と比較して厚くかつ硬度があるため、センサ部44を弾性変形させる媒体として好ましい。
【0040】
上述の実施の形態においては、センサ部44は、ゴム状弾性体から形成されるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、導電性を有する樹脂あるいは金属(比較的柔らかい方が好ましい)からなる成形体であっても良い。
【0041】
上述の実施の形態において、接点31を一対の櫛歯形状の電極としとしたが、このような形態に限らない。接点31を櫛歯形状の電極からではなく、円を略半分に分割した半円形状の電極あるいは円を略4分の1に分割した扇形状の電極等から構成することもできる。しかし、櫛歯形状の電極から成る接点31を用いると、タッチパッド10の移動量が小さい場合にも、検出感度が優れている。
【0042】
また、上述の実施の形態では、センサ部44と接点31との接触面積に応じて接点31にて検出される電気抵抗値により、タッチパッド10の移動量を判断できるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、センサ部44それ自体の圧縮変形により、センサ部44の電気抵抗値等が変化するような部材を用いる場合には、接点31は必要ない。かかる場合には、センサ部44自体の電気抵抗値の変化を検出することで、タッチパッド10の移動量を検出できる。なお、制御部は、電気抵抗値それ自体を検出せずに、電圧値や、電流値を検出するようにしてもよい。
【0043】
上述の多方向操作部材3は、スイッチ部材32を有するものとしたが、スイッチ部材32および緩衝層20は、必須ではない。しかし、多方向操作部材3に、緩衝層20と、緩衝層20の穴部21に設けられるスイッチ部材32とを備えることにより、タッチパッド10の押し込みで、クリック動作が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、たとえば、各種電子機器の入力装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ラップトップ型コンピュータ(電子機器)
2 キーボード
3 多方向操作部材
10 タッチパッド(入力部材)
32 スイッチ部材
30 基板
44 センサ部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面に略水平に移動可能であると共に、ユーザが指で触れた位置を少なくとも検出可能な入力部材と、
上記入力部材と共に移動可能な基板と、
上記入力部材あるいは上記基板の外周縁の側面に対向して設けられると共に、上記入力部材あるいは上記基板の移動により弾性変形するセンサ部と、
を有することを特徴とする多方向操作部材。
【請求項2】
請求項1に記載の多方向操作部材であって、
前記センサ部は、上記基板の側面に対向して配置されていると共に、
上記基板の少なくとも1つの側面に対向して少なくとも1つの前記センサ部が設けられていることを特徴とする多方向操作部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の多方向操作部材であって、
前記入力部材と前記基板との間に、前記操作面の押圧を検出するスイッチ部材を、さらに備えることを特徴とする多方向操作部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向操作部材を有する電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
前記多方向操作部材は、キーボードに隣接して設けられていることを特徴とする電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−58797(P2012−58797A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198535(P2010−198535)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】