説明

多方向操作部材およびそれを備える電子機器

【課題】触れた位置に応じた多方向操作機能と、入力部材の動きに応じた多方向操作機能とを両方使い分け可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】多方向操作部材3は、操作面に略水平に移動可能であると共に、ユーザが指で触れた位置を少なくとも検出可能な入力部材20と、入力部材20の裏面側に設けられる可動部材60と、可動部材60の裏面側に対向して設けられる基板90とを有し、可動部材60は、入力部材20の水平移動に応じて揺動可能であり、かつ、その裏面側には、基板90方向へ突出する1または複数の抵抗性導電体を有し、基板90は、抵抗性導電体に対向する位置に、電極を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の方向に操作可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載用機器、携帯電話機および音響機器等の電子機器において、多方向に操作可能な入力装置が用いられている。また、多方向に操作可能な入力装置としては、たとえば、いわゆるタッチパッド式の入力装置(たとえば、特許文献1を参照)、あるいは、ジョイスティック状の入力装置(たとえば、特許文献2を参照)が知られている。特許文献1に記載の入力装置では、ユーザが操作板に軽く触れるだけで、その触れた位置に応じて多方向に操作ができる。また、特許文献2に記載の入力装置では、ユーザがジョイスティック状の入力部材を前後左右に倒すことより、その入力部材の動きに応じて多方向に操作できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−083819号公報
【特許文献2】米国特許第5521596号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの視点にたてば、状況に応じて、軽く触れるだけで多方向に操作したい場合と、入力部材を物理的に動かすことで多方向に操作したい場合とがある。かかるユーザの要望に応えるべく、電子機器に、これら2つの入力装置を両方備えることも可能である。しかし、電子機器の小型化および操作領域の小面積化が進む最近の状況下では、特許文献1に記載の入力装置および特許文献2に記載の入力装置を1つの入力装置とすることが望まれている。
【0005】
本発明は、かかる要望を達成する入力装置であって、触れた位置に応じた多方向操作機能と、入力部材の動きに応じた多方向操作機能とを両方使い分け可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の多方向操作部材の一実施の形態は、操作面に略水平に移動可能であると共に、ユーザが指で触れた位置を少なくとも検出可能な入力部材と、入力部材の裏面側に設けられる可動部材と、可動部材の裏面側に対向して設けられる基板と、を有し可動部材は、入力部材の水平移動に応じて揺動可能であり、かつ、その裏面側には、基板方向へ突出する1または複数の抵抗性導電体を有し、基板は、抵抗性導電体に対向する位置に、電極を備えるものとしている。
【0007】
さらに、可動部材は、抵抗性導電体が設けられる揺動部と、揺動部の表面から、入力部材方向に突出する軸部と、を有し、操作面から見て揺動部の外周側には、揺動部の水平移動を妨げる枠部が設けられ、軸部が入力部材の水平移動と共に移動することで、揺動部が揺動し、移動方向側の揺動部端部が基板側へ近づくものであってもよい。
【0008】
さらに、入力部材と基板との間に、入力部材の押圧を検出するスイッチ部材を、さらに備え得る。
【0009】
また、本発明の電子機器の一実施の形態は、上述の多方向操作部材を備える電子機器としている。
【0010】
さらに、多方向操作部材は、キーボードに隣接して設けられ得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、触れた位置に応じた多方向操作機能と、入力部材の動きに応じた多方向操作機能とを両方使い分け可能な多方向操作部材およびそれを備える電子機器を提供する電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る多方向操作部材を備える電子機器において、ユーザが手をホームポジションにおいた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る多方向操作部材を操作面側から見た場合の斜視図である。
【図3】図2に示す多方向操作部材の分解斜視図である。
【図4】図3のBで示す部分を拡大して示す分解斜視図である。
【図5】図2に示す多方向操作部材を、A−A線で切断した場合の断面図である。
【図6】図2に示す多方向操作部材のタッチパッドをSで示す矢印方向へ移動した場合において、A−A線で切断した場合の断面図である。
【図7】図6に示す多方向操作部材において、基板を操作面側から見た場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る多方向操作部材およびそれを備える電子機器の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る電子機器の一例であるラップトップ型コンピュータ1の斜視図である。
【0015】
図1に示すように、ラップトップ型コンピュータ1は、複数のキーから構成されるキーボード2および多方向操作部材3を備える。多方向操作部材3は、多方向に操作可能な部材であると共に、タッチパッドとしても機能する部材である。また、多方向操作部材3は、キーボード2に隣接して設けられている。図1では、キーボード2として、いわゆるQWERTY配列あるいはJIS配列等の文字入力用キーボードを図示しているが、このような形態に限らず、どのような用途のキーボード2であってもよい。また、本明細書において、「キーボード2に隣接」とは、キーボード2に一部または全部が囲まれる場合、および、キーボード2と間隙を隔てて隣なり合う場合も含む。ラップトップ型コンピュータ1は、キーボード2および多方向操作部材3等から入力された情報を処理し、各部を制御する制御部(不図示)を内部に有する。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態に係る多方向操作部材3の斜視図である。図3は、多方向操作部材3の分解斜視図である。図4は、図3のBで示す部分を拡大して示す分解斜視図である。図5は、図2の多方向操作部材3をA−A線で切断した場合の断面図である。なお、各断面図では、見易さを考慮して、各部材の厚さの比率を変更して図示している。なお、以後、操作面側を「表面側」、操作面と逆の面側を「裏面側」、そして操作面から裏面に向かう方向の距離を「厚さ」という。さらに、「水平移動」という場合には、操作面に対して水平移動である他、操作面に対して略水平な移動も含むものとする。また、図5および図6では、ハウジング10およびスイッチ部材81以外のドームシート80の図示を省略している。
【0017】
多方向操作部材3は、長辺3〜10cm、短辺2〜7cm(ただし、長辺より短い)の長方形の操作面を備えた薄型直方体の形状を有する。多方向操作部材3は、主に、ハウジング10、タッチパッド20、弾性部材30、リターンスプリング40、枠部50、可動部材60、ベースシート70、ドームシート80および基板90を有する。
【0018】
ハウジング10は、穴部11を有する枠状の部材である。また、四隅に設けられたねじ穴12および枠部50のねじ穴52を係合することで、ハウジング10は、枠部50と固定される。ハウジング10と枠部50との間の間隙に、後述のタッチパッド20、弾性部材30およびリターンスプリング40が水平移動可能に配置されている。
【0019】
入力部材としてのタッチパッド20は、ハウジング10の穴部11の内方から、多方向操作部材3の表面側に露出している。タッチパッド20としては、ユーザの指あるいは物体がタッチパッド20に触れた際に、その触れた位置を検出できるものであればどのようなものでも採用できる。たとえば、静電容量式、抵抗膜式あるいは赤外線式等のタッチパッドを用いることができる。その中でも、指で操作するのに適した静電容量式のタッチパッド20を用いるのが好ましい。静電容量式のタッチパッド20は、ユーザの指あるいは導体がタッチパッド20に触れた際に生じる静電容量の変化によって、指あるいは導体の位置を検出できる。静電容量式のタッチパッド20は、表面側から順に、保護層21、導電膜層22および補強層23を主に積層して構成されている。
【0020】
保護層21は、タッチパッド20の外観向上、表面保護および表面の摩擦係数の制御のために設けられる層である。また、保護層21は、導電膜層22と指(電極とみなされる)との間の誘電層としても機能する。保護層21としては、たとえば、熱可塑性のシリコーン樹脂層を用いることができる。導電膜層22は、電極として機能する。導電膜層22の四隅には、検出部(不図示)が設けられ、各検出部(不図示)から同時にごく微弱な電流が流れている。導電膜層12を流れる電流は、人の指等の導電体がタッチパッド20に触れると、静電容量が変化することにより、変化する。その電流の変化量は、各検出部(不図示)から触れた点までの距離に反比例する。したがって、制御部(不図示)は、各検出部(不図示)にて検出された電流値から、指等の導電体が触れた位置の座標を求めることができる。補強層23は、タッチパッド20を補強するための層である。たとえば、補強層23は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、あるいは、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の樹脂から構成される。また、補強層23は、操作面から視認されるタッチパッド20の色味を調節するために設けられても良い。
【0021】
弾性部材30は、タッチパッド20を水平移動させた場合に、タッチパッド20を元の位置に復帰させるように付勢する部材である。具体的には、タッチパッド20が操作面に対し水平移動すると、弾性部材30のその移動方向側が弾性変形するため、弾性部材30は、タッチパッド20を元の位置側へ付勢する。本実施の形態では、弾性部材30は、略中心に孔31を有し、この孔31は、後述の可動部材60に備える軸部61に係合している。また、弾性部材30は、二対で計4本の腕部32を有する。孔31を挟み対向する二対の腕部32は、操作面に対して水平方向へそれぞれ婉曲しながら、孔31から放射状に延出している。すべての腕部32は、同じ方向へ同じ量だけ、婉曲しながら放射状に延出しているので、弾性部材30は、いわゆる「まんじ形状」を構成している。また、腕部32の外周側端部は、穴部33を有し、タッチパッド20の補強層23から基板90方向に突出する凸部24に嵌められるように構成されている。弾性部材30は、所望の弾性を得られる部材であればどのようなものにより形成されてもよいが、たとえば、ステンレス若しくはベリリウム等の金属材料、または、ポリアセタール樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の樹脂材料から形成できる。
【0022】
リターンスプリング40は、タッチパッド20を水平移動させた場合に、タッチパッド20を元の位置に復帰させるように付勢する部材である。たとえば、リターンスプリング40は、4個のスプリングがそれぞれ東西南北に伸長方向が向くように設けられている。リターンスプリング40は、その中央に1つの穴部41を有する。弾性部材30は、穴部41の内方に配置される。
【0023】
枠部50は、その中央に可動部材60の軸部61を表面側に露出させる穴部51を有する。また、枠部50は、ハウジング10に固定されるためのねじ穴52を四隅に有している。穴部51は、その側面に、可動部材60の揺動部(後述する)と嵌合し、かつそれを貫通不能とするテーパを有する。
【0024】
可動部材60は、タッチパッド20の水平移動に伴い、いわゆるジョイスティックのように揺動する部材である。可動部材60は、表面側の中央に軸部61を有し、軸部61の裏面側に、軸部61よりも操作面から見た投影面積の大きい揺動部62を有する。軸部61は、枠部50の穴部51から枠部50の表側に露出し、弾性部材30の孔31により把持されている。また、揺動部62は、枠部50の穴部51のテーパ内にて可動に配置されている。また、可動部材60の揺動部62は、その裏面側に、ベースシート70を挟み、後述の抵抗性導電体71を備える。
【0025】
ベースシート70は、裏面側に抵抗性導電体71および押圧子72を備える。ベースシート70は、厚さ方向への加重に伴い、弾性変形して基板90側へ撓む部材である。ベースシート70は、柔軟性に富む弾性体、たとえば、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム等の熱硬化性エラストマーあるいは天然ゴム等から成るシートから構成されるのが好ましい。また、可動部材60の裏面は、ベースシート70の表面に固着されているのが望ましい。さらに、可動部材60が揺動し易いように、ベースシート70は、可動部材60が固着される領域の外周側に、蛇腹部等を備えていても良い。
【0026】
抵抗性導電体71は、ベースシート70から基板90に向かって突出する部材である。抵抗性導電体71は、比較的高抵抗の導電性弾性体からなり、直径2〜10mmの略半球状の部材を用いることができる。具体的には、電極91と抵抗性導電体71との接触面積に応じて電極91にて検出される電気抵抗値が変化するように、抵抗性導電体71の電気抵抗値を調節するのが好ましい。抵抗性導電体71は、ベースシート70の裏面側であって、可動部材60と重なる領域に、円周状に複数個設けられている。具体的には、軸部61と重なる点を中心とした円周上に、等間隔で8個設けられている。
【0027】
また、抵抗性導電体71は、可動部材60の揺動により加圧された際に弾性変形できるように、柔軟性に富む材料で構成されている。たとえば、抵抗性導電体71のショアー硬度Aは、50度から90度であるのが好ましい。また、抵抗性導電体71には、導電性を付与するために、導電性材料が分散されている。抵抗性導電体71に分散される導電性材料としては、たとえば、カーボンブラックあるいは金属粒子等を用いることができるが、特に、粒子径が小さいもの(たとえば、ナノサイズの粒子)、特に、取り扱いが容易なカーボンブラックを用いるのが好ましい。また、抵抗性導電体71を構成する母材としては、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマーあるいは天然ゴム等を用いることができ、それらの中でも、シリコーンゴムが好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシリコーンゴムの弾性を維持する観点から、シリコーンゴムの材料と当該導電性材料の総重量に対して5〜50重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。
【0028】
ドームシート80は、スイッチ部材81を有するシート状部材である。スイッチ部材81は、基板90の導電部93および固定接点94に押圧方向で重なる位置に設けられる。ドームシート80としては、PET等の樹脂製シートに、スイッチ部材81を形成したものを用いることができる。また、ドームシート80は、ベースシート70から突出する各抵抗性導電体71と厚さ方向で重なる部分に各穴部82を有する。
【0029】
スイッチ部材81は、タッチパッド20の押し込みにより、スイッチをオンあるいはオフするための部材である。スイッチ部材81は、たとえば、クリック感を伴うスイッチ動作を実現するために、表面側に向かって逆椀状に突出する導電性のドーム部材を有する。
【0030】
基板90は、スイッチ部材81と電気的に接続する導電部93、導電部93に囲まれる固定接点94、および導電部93の外周にあって抵抗性導電体71に対向して設けられる複数の電極91とを有し、たとえば、プリント配線用基板等から構成される。電極91としては、たとえば、櫛歯状の一対の電極を用いることができる。そのような電極91に抵抗性導電体71を接触させると、まず、櫛歯状の一対の電極の両方に触れた時点から、それらの電極が通電状態になる。さらに、抵抗性導電体71と電極91との接触面積が大きくなるにつれて両電極間の電気抵抗値が低下する。ここで、ユーザにより基板90に水平方向の力が加えられると、その力に応じて可動部材60が揺動する。この結果、移動方向側の抵抗性導電体71は、電極91に押し付けられ、押付けられた電極91を構成する一対の電極間の電気抵抗値が小さくなる。したがって、制御部は、タッチパッド20が最も電気抵抗値の低い電極91の方向側へ移動したことを判断できる。
【0031】
図6は、ユーザがタッチパッド20を図2の矢印Sにて示される方向に移動させた場合のA−A線断面図である。図7は、図6の多方向操作部材3において、抵抗性導電体71と基板90とがCで示す範囲内で接触することを示す図であり、基板90を表面側から見た場合の平面図である。
【0032】
図6に示すように、タッチパッド20を矢印Sの方向に移動させると、当該移動方向側の揺動部62は、基板90の方向へ揺動により押し下げられる。揺動部62の一端が押し下げられると、押し下げられた側の抵抗性導電体71と電極91とが接触する。これにより、電極91を構成する一対の電極91は、抵抗性導電体71を介して電気的に導通する。
【0033】
タッチパッド20をさらに大きく水平移動させると、より大きな力で抵抗性導電体71が電極91に向かって押し下げられる。このため、抵抗性導電体71は、弾性変形しながら電極91に接触し、電極91との接触面積を増加させる。この結果、抵抗性導電体71と電極91との間の電気抵抗値は、それらの接触面積が増加するに従い減少する。したがって、上述の多方向操作部材3では、制御部(不図示)は、最も小さい電気抵抗値を示す電極91の方向を検出することで、タッチパッド20の移動方向を検出できる。たとえば、図6の場合には、図7に示すように、接触面積Cが最も大きい電極91は、矢印Sの方向側の電極91であり、当該電極91において最も小さい電気抵抗値を示す。したがって、制御部(不図示)は、タッチパッド20が矢印S方向に移動したことを検出する。さらに、上述の多方向操作部材3では、タッチパッド20の移動量を検出することもできる。
【0034】
上述のような多方向操作部材3を用いると、ユーザは、タッチパッド20上の触れた位置に応じた多方向操作と、タッチパッド20自体の水平移動量に応じた多方向操作とを使い分けできる。たとえば、ユーザは、ホームポジションから手の位置を移動させてタッチパッド20上に指を触れることにより、多方向操作部材3をタッチパッドとして使用できる。ここで、多方向操作部材3をタッチパッドとして使用する際には、従来、ユーザは、キーボードを操作する手の置き位置(いわゆるホームポジション)から、タッチパッド20を触れるために手の位置を変える必要がある。しかし、本発明の実施の形態によれば、ユーザは、タッチパッド20を操作面に水平移動させることにより、多方向操作部材3を用いてホームポジションから手の位置を移動させずに多方向の操作を行うことができる。
【0035】
以上、本発明に係る多方向操作部材の実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0036】
たとえば、上述の実施の形態では、電子機器としてラップトップ型コンピュータ1を例示したが、電子機器は、ラップトップ型コンピュータ1以外の機器、例えば、モバイルコンピュータ、音楽再生用端末、携帯テレビ、車載用オーディオ機器あるいは上記各機器の操作用リモートコントローラ等であっても良い。また、多方向操作部材3は、キーボード2を有していない電子機器に設けられても良い。しかし、多方向操作部材3は、キーボード2を有する電子機器に設けられるのがより好ましい。なぜなら、多方向操作部材3は、キーボード2に隣接する位置に設けられるため、ホームポジションから手を移動させずに多方向操作を可能とするからである。特に、キーボード2のホームポジションに手を置いた際に、親指の先から5cm以内の位置に多方向操作部材3を配置した場合には、ホームポジションから手を移動することなく親指を使ってタッチパッド20を操作できる。たとえば、タッチパッド20を容易に移動させるために、タッチパッド20の操作面に凹凸を形成してもよい。また、タッチパッド20の外周部分に滑り止めの縁を設けてもよい。
【0037】
上述の実施の形態において、多方向操作部材3は、長方形状としたが、そのような形態に限らない。操作面から見て正方形、円形状あるいは環形状としてもよいし、三角形、あるいは四角形以上の多角形であってもよい。また、タッチパッド20の操作面は、平面ではなく、凹凸形状とする等、立体的であってもよい。
【0038】
また、上述の実施の形態において、抵抗性導電体71は、各辺に1個づつ設けるものとしたが、2個以上設けてもよいし、抵抗性導電体71が設けられていない辺があってもよい。しかし、抵抗性導電体71は、タッチパッド20の操作面の中心を垂直に貫く中心軸を基準として等間隔の中心角にて配置されているのがより好ましい。操作面に対していずれの方向へ移動した場合にも、移動方向を検出しやすいからである。
【0039】
また、制御部(不図示)は、タッチパッド20の移動方向をベクトル演算により特定してもよい。例えば、まず、各電極91にてほぼ同時に電気抵抗値を測定し、当該電気抵抗値に基づいて各ベクトルを生成する。具体的には、制御部は、各電極91にて検出された電気抵抗値が小さい程、その絶対値が増加するベクトルを生成する。次に、得られた各ベクトルを加算し、合成ベクトルを得る。得られた合成ベクトルの方向および大きさは、それぞれタッチパッド20の移動方向および移動量として判断される。このように各ベクトルを合成処理することにより、電極91の配置方向(上述の実施の形態では、4方向)と一致しない任意の方向にタッチパッド20を移動させた場合にも、その移動方向を特定できる。また、ベクトル演算を行う際に、電気抵抗値をポイント等に換算してもよい。また、制御部は、タッチパッド20の移動方向のみを特定してもよいし、タッチパッド20の移動量あるいは力の大きさの両方を特定してもよい。
【0040】
上述の実施の形態においては、1個の抵抗性導電体71に対し1個の電極91が対応するような形態としたが、このような形態に限らない。たとえば、抵抗性導電体71は、各方向別に独立しておらず、2以上の電極91に共通の1または複数の部材であっても良い。
【0041】
上述の実施の形態においては、抵抗性導電体71は、ゴム状弾性体から形成されるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、導電性を有する樹脂あるいは金属(比較的柔らかい方が好ましい)からなる成形体であっても良い。
【0042】
上述の実施の形態において、電極91を一対の櫛歯形状の電極としとしたが、このような形態に限らない。電極91を櫛歯形状の電極からではなく、円を略半分に分割した半円形状の電極あるいは円を略4分の1に分割した扇形状の電極等から構成することもできる。しかし、櫛歯形状の電極から成る電極91を用いると、タッチパッド20の移動量が小さい場合にも、検出感度が優れる。
【0043】
また、上述の実施の形態では、抵抗性導電体71と電極91との接触面積に応じて電極91にて検出される電気抵抗値により、タッチパッド20の移動量あるいは移動方向を判断できるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、抵抗性導電体71それ自体の圧縮変形により、抵抗性導電体71の電気抵抗値等が変化するような部材を用いる場合には、電極91は必要ない。かかる場合には、抵抗性導電体71自体の電気抵抗値の変化を検出することで、タッチパッド20の移動量を検出できる。なお、制御部は、電気抵抗値それ自体を検出せずに、電圧値や、電流値を検出するようにしてもよい。
【0044】
上述の多方向操作部材3は、スイッチ部材81を有するものとしたが、スイッチ部材81およびドームシート80は、必須ではない。しかし、多方向操作部材3に、スイッチ部材81を有するドームシート80を備えることにより、タッチパッド20の押し込みで、クリック動作が可能となる。また、ドームシート80にスイッチ部材81が設けられているのではなく、ドームシート80は、基板90上に配置された個々のスイッチ部材81を覆い、個々のスイッチ部材81を所定の位置に固定するために用いられてもよい。
【0045】
上述の多方向操作部材3は、弾性部材30およびリターンスプリング40を有しているが、これらは必須ではない。また、弾性部材30は、合計4本の腕部32を有していない形状であってもよく、同様に、まんじ形状でなくてもよい。例えば、弾性部材30は、3本以下の腕部を有していても良いし、5本以上の腕部を有していても良い。さらに、弾性部材30あるいはリターンスプリング40以外の手段でタッチパッド20を元の位置に付勢してもよい。
【0046】
上述の多方向操作部材3では、揺動部62の裏面側に、抵抗性導電体71を有するが、「揺動部62の裏面側に抵抗性導電体71を有する」とは、ベースシート70等を介して抵抗性導電体71を有していてもよいし、揺動部62の裏面に抵抗性導電体71が直接設けられていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、たとえば、各種電子機器の入力装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ラップトップ型コンピュータ(電子機器)
2 キーボード
3 多方向操作部材
20 タッチパッド(入力部材)
30 弾性部材
50 枠部
60 可動部材
61 軸部(可動部材の一部)
62 揺動部(可動部材の一部)
71 抵抗性導電体
81 スイッチ部材
90 基板
91 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面に略水平に移動可能であると共に、ユーザが指で触れた位置を少なくとも検出可能な入力部材と、
上記入力部材の裏面側に設けられる可動部材と、
上記可動部材の裏面側に対向して設けられる基板と、を有し
上記可動部材は、上記入力部材の水平移動に応じて揺動可能であり、かつ、その裏面側には、上記基板方向へ突出する1または複数の抵抗性導電体を有し、
上記基板は、上記抵抗性導電体に対向する位置に、電極を備えることを特徴とする多方向操作部材。
【請求項2】
請求項1に記載の多方向操作部材であって、
前記可動部材は、前記抵抗性導電体が設けられる揺動部と、
当該揺動部の表面から、前記入力部材方向に突出する軸部と、を有し、
操作面から見て上記揺動部の外周側には、当該揺動部の水平移動を妨げる枠部が設けられ、
上記軸部が入力部材の水平移動と共に移動することで、上記揺動部が揺動し、移動方向側の上記揺動部端部が基板側へ近づくことを特徴とする多方向操作部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の多方向操作部材であって、
前記入力部材と前記基板との間に、前記入力部材の押圧を検出するスイッチ部材を、さらに備えることを特徴とする多方向操作部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向操作部材を有する電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
前記多方向操作部材は、キーボードに隣接して設けられていることを特徴とする電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−64324(P2012−64324A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205169(P2010−205169)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】