多様な厚さを有するすべてのb軸が基質に対して垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜及びその製造方法
【課題】多様な厚さを有するすべてのb軸が基質に対して垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、多様な厚さを有する基質上に均一にb軸に配向されたMFI型ゼオライト薄膜及びその製造方法に関する。さらに詳細には、基質上に多様な厚さを有するゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を生成させる段階と、基質を構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてMFI型ゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させる段階と、を含むゼオライト製造方法及びその方法で製造されたゼオライト薄膜を提供することである。本発明の均一にb軸方向に配向され、多様な厚さを有するMFI型ゼオライトは、従前のゼオライトが有する限界を乗り越えて、その応用性を極大化することができる。
【解決手段】本発明は、多様な厚さを有する基質上に均一にb軸に配向されたMFI型ゼオライト薄膜及びその製造方法に関する。さらに詳細には、基質上に多様な厚さを有するゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を生成させる段階と、基質を構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてMFI型ゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させる段階と、を含むゼオライト製造方法及びその方法で製造されたゼオライト薄膜を提供することである。本発明の均一にb軸方向に配向され、多様な厚さを有するMFI型ゼオライトは、従前のゼオライトが有する限界を乗り越えて、その応用性を極大化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MFI型ゼオライト薄膜の製造方法、すべてのb軸が基質に対して垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜の厚さを調節する方法及び多様な厚さのすべてのb軸が基質に対して垂直配向されたMFI型薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、結晶性アルミノケイ酸塩(crystalline aluminosilicate)を総称する。アルミノケイ酸塩の骨格において、アルミニウムの位置は負電荷を帯びているために、電荷相殺のための陽イオンが細孔(pore)内に存在し、細孔内の残りの空間は、通常水分子で満たされている。ゼオライトが有する3次元的な細孔の構造、形状及びサイズは、ゼオライトの種類によって異なるが、細孔の直径は通常分子サイズに該当する。したがって、ゼオライトは、種類によって細孔内に収容される分子のサイズ選択性(size selectivity)または形状選択性(shape selectivity)を有するために、分子篩(molecular sieve)とも呼ばれる。
【0003】
一方、ゼオライトの骨格構造をなす元素であるシリコン(Si)とアルミニウム(Al)との代わりに複数の異なる元素でシリコンやアルミニウムの一部または全体を置き換えたゼオライト類似分子篩(zeotype molecular sieves)が知られている。例えば、アルミニウムを完全に除去させた多孔性シリカ(silicalite)とシリコンとを燐(P)に置き換えたAlPO4系分子篩、そして、このようなゼオライト及び類似分子篩の骨格にTi、Mn、Co、Fe及びZnなど多様な金属元素を一部置換させて得た類似分子篩が知られている。これらは、ゼオライトから派生されて出た物質として元の鉱物学的分類によれば、ゼオライトに属していないが、当業界ではこれらをいずれもゼオライトと呼ぶ。したがって、本明細書でのゼオライトは、前述した類似分子篩を含む広い意味のゼオライトを意味する。
【0004】
MFI構造を有するゼオライトは、ゼオライトのうち最も活発に使われるゼオライト中の一つであり、その種類は、次の通りである:
1)ZSM−5:シリコンとアルミニウムとが一定比率で形成されたMFI構造のゼオライト;
2)シリカライト−1:シリカのみでなされた構造のゼオライト;
3)TS−1:アルミニウム位置の一部にチタン(Ti)が位置するMFI構造のゼオライト。
【0005】
MFI構造は、図1のようである。
【0006】
このゼオライトの場合、楕円形(0.51x0.55nm)細孔がジグザグ形態で連結されたチャンネルが、a軸方向に流れて円形に近い(0.54x0.56nm)細孔が直線を成し、b軸方向に伸びていて直線形チャンネルを形成する。c軸方向には、チャンネルが開かれていない。
【0007】
粉末状態のMFIゼオライトは、原油のクラッキング触媒、吸着剤、脱水剤、イオン交換剤及びガス浄化剤などで実生活と産業界とで非常に幅広く使われているが、多孔性アルミナなど多孔性基質上に形成された薄膜構造のMFIゼオライト薄膜は、分子をサイズによって分離することができる分子分離膜として広く利用されている(1)。それだけではなく、MFIゼオライト薄膜は、2次及び3次非線形光学薄膜、3次元的メモリ素材(2)、太陽エネルギー集結装置(3〜5)、電極補助物質(6)、半導体量子点及び量子線担体(7〜11)、分子回路(12)、感光装置(13)、発光体(14)、低誘電体薄膜(low dielectric thin filmまたはlow k thin film)(15)、及びサビ防止コーティング剤(16)など幅広く応用されている。
【0008】
前述したように、MFI型ゼオライトの場合、結晶方向によって細孔の形状、サイズ及びチャンネル構造が異なる。したがって、MFI型ゼオライト薄膜の場合、基質に垂直に置かれた結晶の方向によって基質側への細孔の形状、サイズ及びチャンネル構造が変わる。したがって、MFI型ゼオライト薄膜の場合、基質に垂直に置かれた面の結晶方向によって薄膜の特性が非常に鋭敏に変わる。このような理由で当業界では、その間にMFI構造のゼオライト薄膜を特定の方向、すなわち、a軸またはb軸に一定に成長させる方法を開発した。しかし、現在までMFI構造のゼオライト薄膜をすべてのb軸が基質に垂直配向させた多様な厚さの薄膜を生成させた例は存在していない。
【0009】
ガラス板のような基質上にMFI構造のゼオライト薄膜を生成させる方法は、大きく1次成長法(primary growth method)と2次成長法(secondary growth method)とに分ける。1次成長法の場合、前処理なしに基質をMFIゼオライト合成用ジェル内に入れた後、MFIゼオライト膜が自発的に基質上に成長するように誘導する。この際、使われる合成用ジェルは、通常水酸化テトラプロピルアンモニウム(tetraproplyammonium hydroxide、TPAOHと称する)を添加したジェルが使われる。この場合、反応初期には、入れたガラス板上にMFI結晶がb軸のガラス板に垂直配向成長する。しかし、ガラス板上に生成された大部分の結晶の中心部にa軸に配向した結晶が寄生的に成長し始める。それだけではなく、経時的に多様な方向に結晶が育って結局生成された薄膜は多様な配向に置かれる。したがって、ランダムな配向を有する生成されたMFIゼオライト薄膜は、それなりに用途があるが応用性が良くない。特に、分子分離膜として応用する時、最も重要な因子中の一つである分子の透過度(permeability)が格段に減少する。1次成長法の場合、TPAOH以外の他の有機塩基を使う場合、MFIゼオライト薄膜が基質に成長しない。このような問題点を乗り越えるために、2次成長法を使う。
【0010】
2次成長法の場合、MFIゼオライト結晶をあらかじめ付着させた基質をMFI合成ジェルに浸した後、反応を進行させてMFI薄膜を形成する。ここで、すでに付着されたMFI結晶は、種子結晶の役割を果たす。この際、既付着されたMFIゼオライト結晶の配向が追って生成されるMFIゼオライト薄膜の配向に非常に重要な役割を果たす。例えば、基質にMFIゼオライト種子結晶のa軸が基質に垂直配向されれば、生成されるMFIゼオライト薄膜の配向がa軸の基質に垂直方向に配向される傾向があり、種子結晶のb軸が基質に垂直配向されれば、追って生成されるMFIゼオライト薄膜の配向がb軸の基質に垂直方向に配向される傾向がある。一方、本発明者は、MFI結晶をガラス板など各種基質に付着させる方法に対する先導的な研究を遂行して国内外に特許出願または登録した(大韓民国特許第2000−0019667;大韓民国特許第2000−0064534;大韓民国特許第2003−0054157、大韓民国特許第10−2005−0054643;PCT/KR2001/01854;PCT/KR2004/001467;及びPCT/KR2005/001960)。
【0011】
しかし、最終的に生成されるゼオライト薄膜の配向は、種子結晶の配向よりは薄膜を形成するために入れたMFI合成ジェルに添加される有機塩基によって敏感に変わる。例えば、2次成長法に使われたMFI合成ジェル内には、通常TPAOHが添加された。この場合、たとえ付着されたMFIゼオライト種子結晶の配向がいずれもa軸またはb軸の基質に垂直になるように付着されていても、最終的に生成されるMFIゼオライト薄膜の配向はランダムに変わる。しかし、種子結晶の配向がいずれもa軸に配向された場合、トライマー−TPAOH(1−ビス−N,N−(トリプロピルアンモニウムヘキサメチレン)デ−N,N−水酸化トリプロピルアンモニウム)を使えば、主にa軸方向に成長するが、あまり完璧なa軸成長ではない。このように種子結晶の配向とともに薄膜形成のために使われるMFIゼオライト合成用ジェルに添加される有機塩基の組成によって最終的に生成される薄膜の配向が敏感に変わる。
【0012】
また、既存のTPAOHまたはトライマー−TPAOHを添加した合成ジェルを使う場合、最終的に生成された薄膜の厚さを自由に調節するのが容易ではない。例えば、100nmの厚さの種子結晶を付着させた後、トライマーTPAOHを使って24時間2次成長反応をさせる場合、最終的に生成された厚さは、元の厚さに比べて10倍に増加し、TPAOHを使う場合、20倍に増加する。したがって、100nm、150nmなど所望の厚さの薄膜を形成しにくい。一方、ゼオライト薄膜を分子分離膜として使う場合、ゼオライト膜の厚さが厚くなれば、分子透過度(permeability)が格段に減少して経済性が落ちる。したがって、完璧な配向をしながらも厚さが200nm以下の薄いゼオライト薄膜を生成させることができる技術が要求される。
【0013】
本明細書全体に亘って多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体として本明細書に参照に挿入されて本発明が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記問題点を解決するための本発明者は、b軸に配向させた種子結晶から完璧にb軸に配向された薄膜を形成し、さらに厚さ調節も容易な新たな薄膜形成法を開発しようと努力した。その結果、基質上に多様な厚さを有するゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を生成させた後、このような基質を本発明者が発明した構造指向剤(structure−directing agent)を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させた場合、多様な厚さを有すると同時に完璧にb軸にのみ配向された、すなわち、直線形チャンネルがいずれも基板に垂直に配列されたMFI型ゼオライト薄膜が形成されることが分かり、本発明を完成した。
【0015】
したがって、本発明の目的は、基質上にb軸がいずれも垂直配向された、すなわち、直線形チャンネル(straight channel)がいずれも基質面に垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜の製造方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、基質上にb軸がいずれも垂直配向されたMFIゼオライト薄膜の厚さを調節する方法を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、下記の実施例及び請求範囲によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様によれば、本発明は、次の段階を含む基質上にb軸に配向されたMFI型ゼオライト薄膜の製造方法を提供する:(a)基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させる段階と、(b)前記基質を構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れて2次成長法を用いてゼオライトまたは類似分子篩薄膜を成長させる段階。
【0019】
本発明の他の態様によれば、本発明は、次の段階を含む基質上にb軸に配向されたMFI型ゼオライト薄膜の厚さを調節する方法を提供する:(a)基質上に多様な厚さを有するゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させる段階と、(b)前記基質を構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させる段階。
【0020】
本発明者は、b軸に配向させたMFI型種子結晶から完璧にb軸に配向された薄膜を形成し、さらに厚さ調節も容易な新たな薄膜形成法を開発しようと努力した。その結果、基質上に多様な厚さを有するMFI型ゼオライト種子結晶を生成させた後、このような基質を本発明者が発明した構造指向剤を含むゼオライト合成用ジェルに入れてMFI型ゼオライト薄膜を成長させるb軸にのみ配向されたMFI型ゼオライト薄膜が形成されることを発見し、また薄膜形成速度がなだらかに進行するために薄膜の厚さを調節するのが容易であるという点を発見した。
【0021】
本明細書で、用語“b軸に配向されたゼオライト”または“b軸に整列されたゼオライト”は、結晶のb軸方向が基質面に垂直配向されて製造されたゼオライト結晶を意味する。本明細書で、結晶を言及しながら使われる用語“鋳型”は、ゼオライトまたは類似分子篩の結晶を形成させるための有機分子またはイオンを意味する。鋳型は、ゼオライトまたは類似分子篩の合成後、焼成させて完全に除去され、鋳型が占めた空間はゼオライト内の細孔になる。
【0022】
本明細書で使われる用語“分子篩”は、サイズが異なる分子が混合されている時、これらを分離させることができる多孔性物質を意味する。用語“類似分子篩”は、ゼオライトの骨格構造をなす元素であるシリコン(Si)とアルミニウム(Al)との代わりに複数の異なる元素でシリコンやアルミニウムの一部または全体を置き換えたゼオライトを意味する。
【0023】
本明細書で、用語“ゼオライト”は、(i)アルカリまたはアルカリ土類金属の珪酸アルミニウム水化物である鉱物の総称だけではなく、(ii)ゼオライトの珪素(Si)とアルミニウム(Al)とのその一部または全体を多様な他の元素で置き換えたゼオライト類似分子篩も含み、大きな意味では、表面にヒドロキシル基を有するすべての多孔性酸化物または硫化物を含む。
【0024】
本発明は、MFI型ゼオライト薄膜の製造方法に関するものであって、本発明によって製造されるMFI型ゼオライトの骨格成分は、特別に制限されない。本発明の望ましい具現例によれば、本発明によって製造されるMFI型ゼオライトまたは類似分子篩は、ZSM−5、シリカライト、TS−1、AZ−1、Bor−C、ボラライトC、エンシライト、FZ−1、LZ−105、モノクリニックH−ZSM−5、ミュティナイト、NU−4、NU−5、TSZ、TSZ−III、TZ−01、USC−4、USI−108、ZBH及びZKQ−1Bである。
【0025】
本発明の製造方法によれば、前記分子篩の結晶が基質に化学及び物理的に結合される。本発明の方法が適用可能な“基質”は、多孔性または非多孔性の支持体である。本明細書で、用語“基質”は、フィルムまたは薄膜を支持する支持体を意味する。
【0026】
本発明に適した基質の望ましい例は、次の通りである:
1)珪素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、フッ素(F)、錫(Sn)及びインジウム(In)など各種の金属及び非金属元素が単独または2種以上含まれている酸化物。例えば、石英、雲母、ガラス、ITOガラス(インジウム錫酸化物が蒸着されたガラス)、錫酸化物(SnO2)、F−添加錫酸化物(F−doped tinoxide)などの各種の伝導性ガラス、シリカ、多孔性シリカ、アルミナ、多孔性アルミナ、二酸化チタン、多孔性二酸化チタン、及びシリコンウェーハなどがある;
2)非多孔性または多孔性形態に加工された珪素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、錫(Sn)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ステンレススチールなど単一元素及び多様な元素からなる非金属、金属、金属の合金;
3)金、銀、銅、白金のようにチオール基(−SH)やアミン基(−NH2)と結合する金属;
4)表面に多様な作用基を有した重合体。例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)及びメリフィールドペプチド樹脂(Merrifield peptide resin)などがある;
5)セレン化亜鉛(ZnSe)、ガリウム砒素(GaAs)及びリン化インジウム(InP)などの半導体;
6)天然または合成ゼオライト及び類似多孔性分子篩;
7)セルロース、澱粉(アミロース及びアミロペクチン)及びリグニンなど天然高分子、合成高分子、または伝導性高分子。
【0027】
より望ましい基質は、多様な形態の多孔性または非多孔性金属、合金、金属及び非金属元素が単独または2種以上含まれている酸化物であり、さらに望ましくは、石英、雲母、ガラス、ITOガラス、錫酸化物、F−doped錫酸化物などの各種の伝導性ガラス、シリカであり、最も望ましくは、ガラスである。
【0028】
本発明の製造方法によれば、まず、基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させる(段階(a))。本発明の望ましい具現例によれば、この段階は、i)種子結晶が付着されていない基質をMFI型ゼオライト合成ジェルに適当な時間を入れて一次形成方法で単層の結晶を基質上に形成させるか、または、ii)ゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶をb軸方向に付着して実施する。より望ましくは、段階(a)は、ゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶をb軸方向に付着して実施する。
【0029】
前記段階(a)を、ゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶をb軸方向に付着して実施する場合、望ましくは段階(a)は、基質に対してゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶に物理的な圧力を付け加えて、前記基質とゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶との間に化学的結合を形成させる方法によって実施される。本発明の方法を説明しながら使われる表現“基質に対して分子篩結晶に物理的に圧力を付け加える”とは、英文表現“physical press of molecular sieve crystals against substrate”に対応されることである。
【0030】
このような物理的な圧力付加は、望ましくは、磨き(rubbing)または分子篩結晶の基質に対する押さえ(pressing against substrate)によって実施され、より望ましくは、磨き方式で圧力を付け加える。磨き過程間に発生する分子篩種子結晶の基質表面に対する圧着、そして、分子篩種子結晶の強制表面移動(forced surface migration)は、高密集度で分子篩種子結晶が基質上に結合することを誘導する最も重要な二つの要因である。
【0031】
基質−分子篩複合体を製造するために、分子篩種子結晶に圧力を加える方法は、当業界に公知された多様な方法で可能である。例えば、手(bare hands)のみを用いて分子篩種子結晶に圧力を加えることができ、弾性体板など磨き道具を持って手ですることもでき、または磨き機械装置を用いて分子篩種子結晶に圧力を加えることができる。
【0032】
前記段階(a)で、ゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶をb軸方向に付着して実施する場合、択一的に(alternatively)段階(a)は、10kHz〜100MHz超音波を用いて前記基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させて実施される。本明細書で、用語“超音波処理(sonication)”は、当業界に公知された通常的な周波数範囲の超音波で処理する過程を意味し、望ましくは10kHz〜100MHz、より望ましくは15kHz〜10MHz、さらに望ましくは20kHz〜10MHz、最も望ましくは25kHz〜1000kHzの超音波を用いて処理する過程を意味する。超音波の範囲が、前記範囲を外れれば、分子篩粒子の結合が良好ではなくなる。また、電力は、適当な範囲内で周波数に合わせて変化させて使用できる。超音波処理時間は多様であるが、望ましくは30秒〜10分、より望ましくは1分〜5分、最も望ましくは1分〜3分である。超音波処理時の温度は、一般的な化学反応温度の範囲で実施することができ、望ましくは20℃〜50℃、より望ましくは20℃〜40℃、最も望ましくは室温である。
【0033】
本発明の望ましい具現例によれば、基質とゼオライト種子結晶との間の結合は、水素結合を通じて可能である。この場合、基質とゼオライト種子結晶は、直接的に水素結合できるかまたは水素結合媒介者(例えば、ポリエチレンイミン)を通じて水素結合できる。
【0034】
本発明の他の望ましい具現例によれば、本発明の基質、またはゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶は、連結化合物(linkerまたはlinking compound)が結合されている。本明細書で、用語“連結化合物”は、基質と分子篩結晶との間の結合を可能にする末端に作用基を有するすべての化合物を意味する。望ましくは、連結化合物は、下記化学式1ないし化学式11で表わす化合物である。
〔化学式1〕
Z−L1−X
〔化学式2〕
MR’4
〔化学式3〕
R3Si−L1−Y
〔化学式4〕
HS−L1−X
〔化学式5〕
HS−L1−SiR3
〔化学式6〕
HS−L1−Y
〔化学式7〕
Z−L2(+)
〔化学式8〕
L3(−)−Y
〔化学式9〕
Z−L3(−)
〔化学式10〕
L2(+)−Y
〔化学式11〕
Z−Y
前記化学式で、Zは、R3Siまたはイソシアネート基(−NCO)であり;ここで、Rは、ハロゲン基、C1〜C4のアルコキシまたはC1〜C4のアルキル基を表わし、3個のRのうち少なくとも一つは、ハロゲン基またはアルコキシ基であり;L1は、置換または非置換のC1〜C17アルキル、アラルキルまたはアリール基であり、一つ以上の酸素、窒素または硫黄原子を含むことができ;Xは、ハロゲン基、イソシアネート(−NCO)基、トシル基またはアザイド基であり;R’は、Rと同じ意味を表わし、4個のR’のうち少なくとも2個は、ハロゲン基またはアルコキシ基であり;Mは、珪素、チタンまたはジルコニウムであり;Yは、ヒドロキシ基、チオール基、アミン基、アンモニウム基、スルホン基及びその塩、カルボキシ酸及びその塩、酸無水物、エポキシ基、アルデヒド基、エステル基、アクリル基、イソシアネート基(−NCO)、糖(sugar)残基、二重結合、三重結合、ジエン(diene)、ジイン(diyne)、アルキルホスフィン、アルキルアミンまたはリガンド交換できる配位化合物であり、Yは、連結化合物の末端だけではなく、中間に位置することもでき;L2(+)は、1個以上の酸素、窒素または硫黄原子を含む置換または非置換のC1〜C17の炭化水素化合物として、その末端、直鎖状または測鎖状に正電荷(+)が少なくとも1個以上の作用基を表わし;L3(−)は、1個以上の酸素、窒素または硫黄原子を含む置換または非置換のC1〜C17の炭化水素化合物として、その末端、直鎖状または測鎖状に負電荷(−)が少なくとも1個以上の作用基を表わす。
【0035】
連結化合物によって基質と分子篩結晶との間の結合が媒介される場合、典型的にイオン結合が関与される。例えば、(連結化合物−分子篩結晶)中間体を(基質−連結化合物)中間体に磨きをすれば、前記二つの中間体の連結化合物の間に安定されたイオン結合が形成される。
【0036】
本発明の方法によって製造される基質−分子篩複合体は、基質と分子篩粒子(すなわち、結晶)の種類、連結化合物の種類、中間連結化合物の種類などによって多様に製造可能であるが、代表的な連結類型は、次の通りである。
【0037】
1)基質−分子篩複合体である。
【0038】
これは、分子篩種子結晶を圧力を加えて基質に結合させて製造される。この場合、連結化合物は利用されず、分子篩種子結晶は基質と水素結合とで結合される。
【0039】
2)基質−水素結合媒介者−分子篩複合体である。
【0040】
基質及び/または分子篩結晶の表面を適した水素結合媒介者でコーティング(スピンコーティングまたは漬けコーティング)し、分子篩種子結晶を基質表面に対して圧力を加えて、基質−水素結合媒介者−分子篩複合体を製造することができる。この複合体は、前記(i)の複合体と比べて、さらに強い強さで安定的に水素結合を形成することができる。
【0041】
3)基質−連結化合物−分子篩複合体である。
【0042】
基質及び/または分子篩結晶の表面に適した連結化合物を結合させた後、分子篩種子結晶を基質表面に対して圧力を加えて、基質−連結化合物−分子篩複合体を製造する。
【0043】
4)基質−連結化合物−連結化合物−分子篩複合体である。
【0044】
基質と連結化合物(中間体1)を結合させて分子篩結晶と連結化合物(中間体2)とを結合させた後に磨きなどを用いて中間体1と中間体2とを結合させて基質−連結化合物−連結化合物−分子篩複合体を製造する。この場合、中間体1の連結化合物と中間体2の連結化合物は、互いに結合することができる作用基を有していなければならない。例えば、イオン結合(アンモニウム基とカルボキシル基またはその塩)などがある。
【0045】
5)基質−連結化合物−中間連結化合物−連結化合物−分子篩複合体である。
【0046】
基質と連結化合物(中間体1)を結合させて分子篩粒子と連結化合物(中間体2)とを結合させた後、中間体1及び中間体2の混合物に中間連結化合物を添加し、磨きで中間体1、中間連結化合物及び中間体2を連結させて製造される。中間連結化合物を中間体1または中間体2と先に結合させ、その後に中間体2または中間体1と結合させることもできる。
【0047】
本発明の特徴中の一つは、多様な厚さを有するMFI型ゼオライト薄膜を成長させることができるということである。このような薄膜を形成させるためには、基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させる時、b軸方向に多様な厚さを有する種子結晶を使う。既存の方法による時、200nm以下の薄い薄膜は形成されないが、本発明の製造方法によれば、厚さの薄い薄膜を製造することができて分子分離膜の透過度、すなわち、効率を大幅に増加させることができる。
【0048】
本発明によれば、前述した段階(a)に後続して、段階(b)では、前記基質を構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させる過程を実施する。
【0049】
本発明の望ましい具現例によれば、本発明の構造指向剤は、アミン、イミンまたは4次アンモニウム塩(quaternary ammonium salt)であり、より望ましくは、下記化学式12に表示される4次水酸化アンモニウムである。
【0050】
【化1】
前記化学式で、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立的に水素原子、C1〜C30のアルキル、アラルキルまたはアリール基を表わし、前記C1〜C30のアルキル、アラルキルまたはアリール基は、ヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄、燐または金属原子を含むことができ、前記化学式は、TPAOH及びトライマーTPAOHを含まない。
【0051】
化学式12で、用語“C1〜C30のアルキル”は、炭素数1〜30の直鎖状または分枝鎖状飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、ペンタデシル及びヘブタデシルなどを含む。
【0052】
望ましくは、アルキル基は、C1〜C4直鎖状または分枝鎖状アルキル基である。
【0053】
用語“アラルキル”は、一つまたはそれ以上のアルキル基による構造に結合されたアリール基を意味し、望ましくは、ベンジル基である。
【0054】
用語“アリール基”は、全体的にまたは部分的に不飽和された置換または非置換のモノサイクリックまたはポリサイクリック炭素環を意味し、望ましくは、モノアリールまたは非アリールである。モノアリールは、炭素数5〜6を有することが望ましく、非アリールは、炭素数9〜10を有することが望ましい。最も望ましくは、前記アリールは、置換または非置換のフェニルである。
【0055】
本発明で使うMFI型ゼオライト合成ジェルは、前記構造指向剤の以外にも次のような原料物質を含む:
1)アルミニウム(Al)原料でアルミニウムイソプロポキシドのようなアルミニウムに有機物が結合された有機無機混成物質、硫酸アルミニウム(aluminium sulfate)のようなAlが含まれた塩状の物質、Alのみでなされた粉末状または塊状を有した金属物質及びアルミナのようなアルミニウム酸化物のすべての物質;
2)シリコン原料でTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)のようなシリコンに有機物が結合された有機無機混成物質、ナトリウムシリカライトのようなSi元素が含まれた塩状の物質、Siのみでなされた粉末状あるいは塊状を有した物質、ガラス粉末、及び石英のようなシリコン酸化物のすべての物質;
3)F原料で、HF、NH4F、NaF、KFなどのようなF−を含んだすべての形態の物質;
4)アルミニウムとシリコン以外の骨格に他種の元素を挿入するために使われる物質。
【0056】
本発明の望ましい具現例によれば、本発明の前記構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルは、[TEOS]X[TEAOH]Y[(NH4)2SiF6]Z[H2O]Wの組成からなる。前記組成で、X:Y:Z:Wの含量比は、(0.1〜30):(0.1〜50):(0.01〜50):(1〜500)であり、望ましくは(0.5〜15):(0.5〜25):(0.05〜25):(25〜400)、より望ましくは(1.5〜10):(1.0〜15):(0.1〜15):(40〜200)、最も望ましくは(3〜6):(1.5〜5):(0.2〜5):(60〜100)である。前記比率を外れる場合、b軸が完璧に基質に対して垂直であるゼオライト結晶体を形成することができなくなる。本方法でのMFI型ゼオライト合成ジェルには、前記組成物の以外にもさらにチタンなどの転移金属、ガリウムなどの13族、及びゲルマニウムなどの14族元素などが添加されることができるが、これに限定されるものではない。このような追加的な原料物質の比率は、0.1〜30の比率の範囲で限定される。
【0057】
本方法において、薄膜生成のための反応温度は、使われるジェルの組成または作ろうとする物質によって50〜250℃まで多様に変化することができる。望ましくは、その反応温度は80〜200℃であり、より望ましくは、120〜180℃である。また、反応温度は、常に固定されたものではなく、多様な段階で温度を変化させながら反応することができる。
【0058】
本方法において、薄膜生成のための反応時間は、0.5時間から20日まで多様に変化することができる。反応時間は、望ましくは2時間〜15日、より望ましくは6時間〜2日、最も望ましくは10時間〜1日である。
【0059】
前記方法で製造したゼオライトb軸に配向されたMFI型ゼオライト薄膜は、既存に形成された物質に比べて完璧にb軸に配向される特徴がある。したがって、本発明の望ましい具現例によれば、本発明の前記基質上に形成されたb軸に配向されたMFI型ゼオライト薄膜はすべてのb軸が、すなわち、すべての直線形チャンネル(straight channel)が基質に垂直方向に配向されることを特徴とする。MFI型ゼオライトの構造は、図1に表示された通りである。ゼオライトまたは類似分子篩薄膜結晶内でのチャンネルは、直線形チャンネルと正弦波形(sinusoidal)チャンネルとで構成されている。したがって、表現“チャンネルが単一方向に整列された”は、直線チャンネルと正弦波状のチャンネルそれぞれが単一配向性を有することを意味する。直線チャンネルと正弦波状のチャンネルの方向性は、互いに同一であるかまたは異なることができる。より詳細には、基質に対してb軸に形成された結晶の配向性は、超結晶のストレートチャンネルが基質面に対して垂直であり、正弦波状のチャンネルは基質面に対して垂直または水平であることを意味する。
【0060】
本方法によって製造されたMFI構造を有するゼオライト及び類似分子篩薄膜の巨視的形態は、次の通りである:
1)基質上に単層構造で直接成長させた分子篩の単一薄膜と、
2)基質上に一つあるいは複数種の分子篩を多層構造で構成した単一薄膜と、
3)基質上に一種あるいは多種の分子篩を化学結合を用いて付着させた単層または多層フィルムと、
4)前記1)項、2)項、3)項に明示された構成体を一部あるいは全部組合わせた複合体。
【0061】
本発明の一態様によれば、本発明は、前記製造方法によって製造され、すべてのb軸が、すなわち、すべての直線形チャンネルが、基質に対して垂直配向されたことを特徴とするMFI型ゼオライト薄膜を提供する。
【0062】
また、このようなMFI型ゼオライト薄膜は、多様な厚さに厚さを調節することができて200nm以下の薄い厚さを有することができるようにし、このような物質は分子透過度が高い。
【0063】
本発明によって製造されたゼオライト薄膜は、分子分離膜、半導体産業での低誘電体物質、非線形光学物質、水分解装置用薄膜、太陽電池用薄膜、光学用部品、航空機用内部または外部部品、化粧品容器、生活容器、鏡及びその他のゼオライトのナノ細孔の特性を用いる薄膜などに多様に応用可能であるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0064】
本発明の特徴及び利点を要約すれば、次の通りである。
【0065】
(a)本発明によって得られたすべてのb軸が基質に垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜は、直線形チャンネルがすべての基質に垂直に整列されることによって既存のTPAOHまたはトライマー−TPAOHを構造指向剤として使う方法を使う時、生成されたMFI薄膜のb軸がいずれも完璧に基質に対して垂直配向されない限界点を乗り越えることができる。
【0066】
(b)本発明によって得られたすべてのb軸が基質に垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜は、多様な厚さを有することができるようになって200nm以下の薄い厚さを有したゼオライト薄膜を形成することができる。
【0067】
(c)すべてのb軸が基質に垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜は、透明な基質を使った場合、透明度が非常に高い。したがって、ナノチャンネル内に多様な機能性分子、高分子、金属ナノ粒子、半導体量子点、量子線などを一定の配向で内包させた薄膜は、多様な光学用、電子用及び電子光学用先端素材として使われる。特に、多孔性アルミナ、多孔性シリカ、メゾ細孔物質上に成長させたb軸が基質に垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜は、分子を分離する分離膜としての機能が非常に優れている。
【0068】
(d)MFI薄膜を分子分離膜として使う場合、厚さが薄いほど分離膜の効率、すなわち、透過度が大きく増加する。既存の方法としては、200nm以下の薄い薄膜が形成されないが、本発明によって製造されたゼオライト薄膜は、薄い厚さを有することができて分子分離膜の効率を大幅に増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲が、これら実施例によって制限されないということは、当業者に自明である。
【0070】
(実施例)
〔実験材料及び方法〕
〔ガラス板上に完璧にb軸に配向されたシリカライト薄膜を成長させるための準備〕
ガラス板(75mm×25mm×1mm、Marienfeld)をピラニア溶液(H2SO4とH2O2との混合比7:3)内に30分間入れた後、取り出して蒸溜水で洗浄して高純度窒素気流下で乾燥させた。このように乾燥されたガラス板をスピンコーティング装置に載せてアルコールに適当な濃度に希釈されたポリエチレンイミン(PEI、Mw=25000、Aldrich)でスピンコーティングし、PEIがコーティングされたガラスであるPEI/Gを作った。このようにして得たPEI/Gを純粋なトルエンで洗浄した後、高純度窒素を吹かして乾燥させた。
【0071】
〔磨きまたは超音波を利用したシリカライト単層膜の製造〕
平らな板上に濾紙あるいはA4用紙を置いて、その上に両面テープを用いてPEI/Gを固定した後、b軸に広くて扁平な面が発達したシリカライト粉末を少量振り撤いた。指または柔らかくて表面が滑らかなシリコン弾性体を用いて粉末を磨いてシリカライト種子結晶のb軸方向がいずれも基質に対して垂直になるように配向させてPEI/G表面に付着させた(参照:大韓民国特許出願第2007−0001317号)。磨き方法の以外にも超音波を用いてシリカライト種子結晶を完璧にb軸方向基質に垂直になるように配向させてガラス表面に付着させた(参照:大韓民国特許登録第668041号)。この場合、トルエン内でガラス板と3−chloropropyltrimethoxy silaneとを反応させてガラス表面にあらかじめ3−chloropropylを付着(コーティング)させた。この際、表面に付着された3−chloropropylグループは、連結化合物として作用してシリカライトをガラス表面に付着させる役割を果たす。超音波を用いてシルラカライトをガラス板上に付着させる場合に使われるシリカライト種子結晶は、中央部にa軸に寄生した結晶が成長していない純粋なシリカライト結晶を使った。
【0072】
〔完璧にb軸に配向されたシリカライト薄膜を成長させるためのジェルの準備〕
シリカライト薄膜を成長させるための合成ジェルの一つの組成は、[TEOS]x[TEAOH]y[(NH4)2SiF6]z[H2O]w(x:y:z:w=4:1.92:0.36:78.4)である。詳細には、200mL容量のプラスチックビーカーに水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH、35w%水溶液、Aldrich)30.29gと水33.24gとを入れた後、よく撹拌した。前記TEAOH溶液のうち40gを100mL容量のプラスチックビーカーに移して、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、98%、Aldrich)31.80gを添加した後、常温で4時間かき混ぜてTEOSを加水分解させた。残りのTEAOH溶液を別途の100mL容量のプラスチックビーカーに移して、98%アンモニウムヘキサフルオロケイ酸塩[(NH4)2SiF6]2.45gを入れた。(NH4)2SiF6が完全に溶けた後、この溶液をTEOSを完全に加水分解させた溶液にゆっくり添加した後、6時間常温に停止された状態で置いた。
【0073】
〔シリカライト薄膜の成長〕
シリカライト種子結晶のb軸がいずれも基質に垂直になるように付着されたPEI/G板を攝氏450℃度で加熱して、シリカライトとガラス板との間のPEI連結層を焼成すると同時にシリカライトとガラス板とを直接結合させた。テフロン(登録商標)支持体を用いて焼成後、シリカライトが強く付着されたガラス板を垂直に立てた後、180mL容量のテフロン容器内に入れて既に作ったシリカライト合成用ジェルを注いだ後、容器蓋を閉じてステンレススチール材質の高圧反応器(autoclave)に入れて165℃オーブンで12時間反応させた。反応が終わった後、フィルムが生成された基質を2次蒸溜水に入れて10秒間超音波洗浄機で洗浄した後、2次蒸溜水を流しながら数回拭いて表面に物理的に付いている不純物を除去した。550℃で6時間焼成して細孔内にある有機鋳型(template)を完全に除去した。
【0074】
〔完璧にb軸に配向されたシリカライト薄膜の厚さを調節する方法〕
PEI/G板上にb軸に広くて扁平な面が発達したシリカライト種子結晶を付着させる時、b軸方向に多様な厚さを有する種子結晶を使った。この際、使われる種子結晶のb軸方向の厚さは20〜5000nmであった。
【0075】
〔走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)分析〕
前記方法を用いて透明なガラス板上にすべてのb軸がガラス板に垂直配向された多様な厚さのシリカライト薄膜を形成した。生成された薄膜上に約15nm厚さに白金/パラジウムコーティングをして走査型電子顕微鏡(Hitachi S−4300 FE−SEM)を用いてSEMイメージを得た。
【0076】
〔X線粉末回折(XRD)分析〕
前記実施例によって製造されたシリカライト薄膜の結晶成長方向を糾明するため、CuKα X線を使うX線回折機(Rigaku回折機 D/MAX−1C、Rigaku)を用いてX線粉末回折パターンを得た。
【0077】
〔実験結果〕
図2は、ガラス板上にb軸がガラス板と垂直に配向されたシリカライト種子結晶を磨き方法を用いて付着させたガラス板の全面部SEMイメージである。
【0078】
図3は、図1の種子結晶が付着されたガラス板を、本発明によって開発された反応ジェルに入れて12時間反応させて生成させたシリカライト薄膜のイメージ(top view)である。図3で生成されたシリカライト薄膜のX線回折パターンを分析した結果、すべての結晶のb軸がいずれも完璧に基質に対して垂直成長したことが分かった(図4)。
【0079】
図5は、図4のX線回折パターンで2θ角の17.5゜から18゜の間を大きく拡大したものである。このパターンで17.8゜でのみピークが表われ、このような事実はシリカライト結晶のb軸がいずれも基質に垂直配向されたということを表わす決定的な証拠である。
【0080】
一方、図2の種子結晶が付着されたガラス板を従来の技術によってトライマーTPAOHが添加されたジェルを用いて成長させたシリカライト薄膜を電子顕微鏡を通じて観察した結果(図6)、a軸にも結晶が成長されたということが分かった。
【0081】
図7は、図6で成長させたシリカライト薄膜のX線回折パターンとして2θ角を17.5゜から18゜の間のみ表わしたものである。図7で、7.65゜ピークは、a軸に17.79゜ピークは、b軸に成長したシリカライトを意味し、成長したシリカライトを意味する。その結果、従来のトライマーTPAOHが添加されたジェルを使えば、完璧にb軸が基質に垂直配向されたシリカライト種子結晶からa軸が垂直配向した結晶が成長するという事実が分かった。
【0082】
図8は、図2の種子結晶が付着されたガラス板をTPAOHが添加されたジェルを使って成長させたシリカライト薄膜の電子顕微鏡イメージである(top view、平面イメージ)。その結果、シリカライト結晶が多様な軸に成長されたということが分かった。図8で、成長したシリカライト薄膜のX線回折パターンを分析した結果、図9のようにシリカライト結晶の多様な軸が基質に垂直成長したということが分かった。
【0083】
図10は、多様な厚さのシリカライト種子結晶をb軸がガラス板と垂直になるように配向させた後、本発明によって開発された反応ジェルに入れて12時間反応させて生成させたシリカライト薄膜の反応前及び後の側面の電子顕微鏡イメージである。図10の下端は、各シリカライト薄膜の17.5゜から18゜の間のX線回折パターンを表わし、b軸を表わす一つのピークのみ観察される。図10で確認できるように、本発明の反応ジェルでシリカライト薄膜を製造する場合には、b軸がいずれも基質に垂直配向された多様な厚さのシリカライト薄膜を製造することができるということが分かる。
【0084】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したが、当業者において、このような具体的な技術は、単に望ましい具現例であり、これに本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な特許請求の範囲は、請求項とその等価物によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
多様な厚さを有するすべてのb軸が基質に対して垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜及びその製造方法関連の分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】MFI型ゼオライトの構造イメージである。
【図2】ガラス板上にb軸がガラス板と垂直に配向されたシリカライト種子結晶を磨き方法(大韓民国特許第0789661号)を用いて付着させたガラス板の電子顕微鏡写真である(右から見たイメージ)。
【図3】図2の種子結晶が付着されたガラス板を、本発明によって開発された反応ジェルに入れて12時間反応させて生成させたシリカライト薄膜の電子顕微鏡イメージ(top view)である。
【図4】図3のシリカライト薄膜のX線回折パターンである。
【図5】図4に表わしたX線回折パターンで2θ角の17.5゜から18゜の間を大きく拡大したものである。
【図6】図2の種子結晶が付着されたガラス板をトライマーTPAOHが添加されたジェルを用いて成長させたシリカライト薄膜の電子顕微鏡写真である(top view)。
【図7】図6に表わしたシリカライト薄膜のX線回折パターンのうち2θ角を17.5゜から18゜の間のみ表わしたものである。
【図8】図2の種子結晶が付着されたガラス板をTPAOHが添加されたジェルを使って成長させたシリカライト薄膜の電子顕微鏡イメージである(top view)。
【図9】図8のシリカライト薄膜のX線回折パターンである。
【図10】厚さが相異なるシリカライト種子結晶をb軸がガラス板と垂直になるように配向させた後、本発明によって開発された反応ジェルに入れて12時間反応させて生成させたシリカライト薄膜の反応前(上)及び後(中間)の側面の電子顕微鏡写真である。下は、それぞれの試料に対する(17.5゜<2θ<18゜)の間のX線回折パターンである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、MFI型ゼオライト薄膜の製造方法、すべてのb軸が基質に対して垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜の厚さを調節する方法及び多様な厚さのすべてのb軸が基質に対して垂直配向されたMFI型薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、結晶性アルミノケイ酸塩(crystalline aluminosilicate)を総称する。アルミノケイ酸塩の骨格において、アルミニウムの位置は負電荷を帯びているために、電荷相殺のための陽イオンが細孔(pore)内に存在し、細孔内の残りの空間は、通常水分子で満たされている。ゼオライトが有する3次元的な細孔の構造、形状及びサイズは、ゼオライトの種類によって異なるが、細孔の直径は通常分子サイズに該当する。したがって、ゼオライトは、種類によって細孔内に収容される分子のサイズ選択性(size selectivity)または形状選択性(shape selectivity)を有するために、分子篩(molecular sieve)とも呼ばれる。
【0003】
一方、ゼオライトの骨格構造をなす元素であるシリコン(Si)とアルミニウム(Al)との代わりに複数の異なる元素でシリコンやアルミニウムの一部または全体を置き換えたゼオライト類似分子篩(zeotype molecular sieves)が知られている。例えば、アルミニウムを完全に除去させた多孔性シリカ(silicalite)とシリコンとを燐(P)に置き換えたAlPO4系分子篩、そして、このようなゼオライト及び類似分子篩の骨格にTi、Mn、Co、Fe及びZnなど多様な金属元素を一部置換させて得た類似分子篩が知られている。これらは、ゼオライトから派生されて出た物質として元の鉱物学的分類によれば、ゼオライトに属していないが、当業界ではこれらをいずれもゼオライトと呼ぶ。したがって、本明細書でのゼオライトは、前述した類似分子篩を含む広い意味のゼオライトを意味する。
【0004】
MFI構造を有するゼオライトは、ゼオライトのうち最も活発に使われるゼオライト中の一つであり、その種類は、次の通りである:
1)ZSM−5:シリコンとアルミニウムとが一定比率で形成されたMFI構造のゼオライト;
2)シリカライト−1:シリカのみでなされた構造のゼオライト;
3)TS−1:アルミニウム位置の一部にチタン(Ti)が位置するMFI構造のゼオライト。
【0005】
MFI構造は、図1のようである。
【0006】
このゼオライトの場合、楕円形(0.51x0.55nm)細孔がジグザグ形態で連結されたチャンネルが、a軸方向に流れて円形に近い(0.54x0.56nm)細孔が直線を成し、b軸方向に伸びていて直線形チャンネルを形成する。c軸方向には、チャンネルが開かれていない。
【0007】
粉末状態のMFIゼオライトは、原油のクラッキング触媒、吸着剤、脱水剤、イオン交換剤及びガス浄化剤などで実生活と産業界とで非常に幅広く使われているが、多孔性アルミナなど多孔性基質上に形成された薄膜構造のMFIゼオライト薄膜は、分子をサイズによって分離することができる分子分離膜として広く利用されている(1)。それだけではなく、MFIゼオライト薄膜は、2次及び3次非線形光学薄膜、3次元的メモリ素材(2)、太陽エネルギー集結装置(3〜5)、電極補助物質(6)、半導体量子点及び量子線担体(7〜11)、分子回路(12)、感光装置(13)、発光体(14)、低誘電体薄膜(low dielectric thin filmまたはlow k thin film)(15)、及びサビ防止コーティング剤(16)など幅広く応用されている。
【0008】
前述したように、MFI型ゼオライトの場合、結晶方向によって細孔の形状、サイズ及びチャンネル構造が異なる。したがって、MFI型ゼオライト薄膜の場合、基質に垂直に置かれた結晶の方向によって基質側への細孔の形状、サイズ及びチャンネル構造が変わる。したがって、MFI型ゼオライト薄膜の場合、基質に垂直に置かれた面の結晶方向によって薄膜の特性が非常に鋭敏に変わる。このような理由で当業界では、その間にMFI構造のゼオライト薄膜を特定の方向、すなわち、a軸またはb軸に一定に成長させる方法を開発した。しかし、現在までMFI構造のゼオライト薄膜をすべてのb軸が基質に垂直配向させた多様な厚さの薄膜を生成させた例は存在していない。
【0009】
ガラス板のような基質上にMFI構造のゼオライト薄膜を生成させる方法は、大きく1次成長法(primary growth method)と2次成長法(secondary growth method)とに分ける。1次成長法の場合、前処理なしに基質をMFIゼオライト合成用ジェル内に入れた後、MFIゼオライト膜が自発的に基質上に成長するように誘導する。この際、使われる合成用ジェルは、通常水酸化テトラプロピルアンモニウム(tetraproplyammonium hydroxide、TPAOHと称する)を添加したジェルが使われる。この場合、反応初期には、入れたガラス板上にMFI結晶がb軸のガラス板に垂直配向成長する。しかし、ガラス板上に生成された大部分の結晶の中心部にa軸に配向した結晶が寄生的に成長し始める。それだけではなく、経時的に多様な方向に結晶が育って結局生成された薄膜は多様な配向に置かれる。したがって、ランダムな配向を有する生成されたMFIゼオライト薄膜は、それなりに用途があるが応用性が良くない。特に、分子分離膜として応用する時、最も重要な因子中の一つである分子の透過度(permeability)が格段に減少する。1次成長法の場合、TPAOH以外の他の有機塩基を使う場合、MFIゼオライト薄膜が基質に成長しない。このような問題点を乗り越えるために、2次成長法を使う。
【0010】
2次成長法の場合、MFIゼオライト結晶をあらかじめ付着させた基質をMFI合成ジェルに浸した後、反応を進行させてMFI薄膜を形成する。ここで、すでに付着されたMFI結晶は、種子結晶の役割を果たす。この際、既付着されたMFIゼオライト結晶の配向が追って生成されるMFIゼオライト薄膜の配向に非常に重要な役割を果たす。例えば、基質にMFIゼオライト種子結晶のa軸が基質に垂直配向されれば、生成されるMFIゼオライト薄膜の配向がa軸の基質に垂直方向に配向される傾向があり、種子結晶のb軸が基質に垂直配向されれば、追って生成されるMFIゼオライト薄膜の配向がb軸の基質に垂直方向に配向される傾向がある。一方、本発明者は、MFI結晶をガラス板など各種基質に付着させる方法に対する先導的な研究を遂行して国内外に特許出願または登録した(大韓民国特許第2000−0019667;大韓民国特許第2000−0064534;大韓民国特許第2003−0054157、大韓民国特許第10−2005−0054643;PCT/KR2001/01854;PCT/KR2004/001467;及びPCT/KR2005/001960)。
【0011】
しかし、最終的に生成されるゼオライト薄膜の配向は、種子結晶の配向よりは薄膜を形成するために入れたMFI合成ジェルに添加される有機塩基によって敏感に変わる。例えば、2次成長法に使われたMFI合成ジェル内には、通常TPAOHが添加された。この場合、たとえ付着されたMFIゼオライト種子結晶の配向がいずれもa軸またはb軸の基質に垂直になるように付着されていても、最終的に生成されるMFIゼオライト薄膜の配向はランダムに変わる。しかし、種子結晶の配向がいずれもa軸に配向された場合、トライマー−TPAOH(1−ビス−N,N−(トリプロピルアンモニウムヘキサメチレン)デ−N,N−水酸化トリプロピルアンモニウム)を使えば、主にa軸方向に成長するが、あまり完璧なa軸成長ではない。このように種子結晶の配向とともに薄膜形成のために使われるMFIゼオライト合成用ジェルに添加される有機塩基の組成によって最終的に生成される薄膜の配向が敏感に変わる。
【0012】
また、既存のTPAOHまたはトライマー−TPAOHを添加した合成ジェルを使う場合、最終的に生成された薄膜の厚さを自由に調節するのが容易ではない。例えば、100nmの厚さの種子結晶を付着させた後、トライマーTPAOHを使って24時間2次成長反応をさせる場合、最終的に生成された厚さは、元の厚さに比べて10倍に増加し、TPAOHを使う場合、20倍に増加する。したがって、100nm、150nmなど所望の厚さの薄膜を形成しにくい。一方、ゼオライト薄膜を分子分離膜として使う場合、ゼオライト膜の厚さが厚くなれば、分子透過度(permeability)が格段に減少して経済性が落ちる。したがって、完璧な配向をしながらも厚さが200nm以下の薄いゼオライト薄膜を生成させることができる技術が要求される。
【0013】
本明細書全体に亘って多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体として本明細書に参照に挿入されて本発明が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記問題点を解決するための本発明者は、b軸に配向させた種子結晶から完璧にb軸に配向された薄膜を形成し、さらに厚さ調節も容易な新たな薄膜形成法を開発しようと努力した。その結果、基質上に多様な厚さを有するゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を生成させた後、このような基質を本発明者が発明した構造指向剤(structure−directing agent)を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させた場合、多様な厚さを有すると同時に完璧にb軸にのみ配向された、すなわち、直線形チャンネルがいずれも基板に垂直に配列されたMFI型ゼオライト薄膜が形成されることが分かり、本発明を完成した。
【0015】
したがって、本発明の目的は、基質上にb軸がいずれも垂直配向された、すなわち、直線形チャンネル(straight channel)がいずれも基質面に垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜の製造方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、基質上にb軸がいずれも垂直配向されたMFIゼオライト薄膜の厚さを調節する方法を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、下記の実施例及び請求範囲によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様によれば、本発明は、次の段階を含む基質上にb軸に配向されたMFI型ゼオライト薄膜の製造方法を提供する:(a)基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させる段階と、(b)前記基質を構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れて2次成長法を用いてゼオライトまたは類似分子篩薄膜を成長させる段階。
【0019】
本発明の他の態様によれば、本発明は、次の段階を含む基質上にb軸に配向されたMFI型ゼオライト薄膜の厚さを調節する方法を提供する:(a)基質上に多様な厚さを有するゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させる段階と、(b)前記基質を構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させる段階。
【0020】
本発明者は、b軸に配向させたMFI型種子結晶から完璧にb軸に配向された薄膜を形成し、さらに厚さ調節も容易な新たな薄膜形成法を開発しようと努力した。その結果、基質上に多様な厚さを有するMFI型ゼオライト種子結晶を生成させた後、このような基質を本発明者が発明した構造指向剤を含むゼオライト合成用ジェルに入れてMFI型ゼオライト薄膜を成長させるb軸にのみ配向されたMFI型ゼオライト薄膜が形成されることを発見し、また薄膜形成速度がなだらかに進行するために薄膜の厚さを調節するのが容易であるという点を発見した。
【0021】
本明細書で、用語“b軸に配向されたゼオライト”または“b軸に整列されたゼオライト”は、結晶のb軸方向が基質面に垂直配向されて製造されたゼオライト結晶を意味する。本明細書で、結晶を言及しながら使われる用語“鋳型”は、ゼオライトまたは類似分子篩の結晶を形成させるための有機分子またはイオンを意味する。鋳型は、ゼオライトまたは類似分子篩の合成後、焼成させて完全に除去され、鋳型が占めた空間はゼオライト内の細孔になる。
【0022】
本明細書で使われる用語“分子篩”は、サイズが異なる分子が混合されている時、これらを分離させることができる多孔性物質を意味する。用語“類似分子篩”は、ゼオライトの骨格構造をなす元素であるシリコン(Si)とアルミニウム(Al)との代わりに複数の異なる元素でシリコンやアルミニウムの一部または全体を置き換えたゼオライトを意味する。
【0023】
本明細書で、用語“ゼオライト”は、(i)アルカリまたはアルカリ土類金属の珪酸アルミニウム水化物である鉱物の総称だけではなく、(ii)ゼオライトの珪素(Si)とアルミニウム(Al)とのその一部または全体を多様な他の元素で置き換えたゼオライト類似分子篩も含み、大きな意味では、表面にヒドロキシル基を有するすべての多孔性酸化物または硫化物を含む。
【0024】
本発明は、MFI型ゼオライト薄膜の製造方法に関するものであって、本発明によって製造されるMFI型ゼオライトの骨格成分は、特別に制限されない。本発明の望ましい具現例によれば、本発明によって製造されるMFI型ゼオライトまたは類似分子篩は、ZSM−5、シリカライト、TS−1、AZ−1、Bor−C、ボラライトC、エンシライト、FZ−1、LZ−105、モノクリニックH−ZSM−5、ミュティナイト、NU−4、NU−5、TSZ、TSZ−III、TZ−01、USC−4、USI−108、ZBH及びZKQ−1Bである。
【0025】
本発明の製造方法によれば、前記分子篩の結晶が基質に化学及び物理的に結合される。本発明の方法が適用可能な“基質”は、多孔性または非多孔性の支持体である。本明細書で、用語“基質”は、フィルムまたは薄膜を支持する支持体を意味する。
【0026】
本発明に適した基質の望ましい例は、次の通りである:
1)珪素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、フッ素(F)、錫(Sn)及びインジウム(In)など各種の金属及び非金属元素が単独または2種以上含まれている酸化物。例えば、石英、雲母、ガラス、ITOガラス(インジウム錫酸化物が蒸着されたガラス)、錫酸化物(SnO2)、F−添加錫酸化物(F−doped tinoxide)などの各種の伝導性ガラス、シリカ、多孔性シリカ、アルミナ、多孔性アルミナ、二酸化チタン、多孔性二酸化チタン、及びシリコンウェーハなどがある;
2)非多孔性または多孔性形態に加工された珪素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、錫(Sn)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ステンレススチールなど単一元素及び多様な元素からなる非金属、金属、金属の合金;
3)金、銀、銅、白金のようにチオール基(−SH)やアミン基(−NH2)と結合する金属;
4)表面に多様な作用基を有した重合体。例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)及びメリフィールドペプチド樹脂(Merrifield peptide resin)などがある;
5)セレン化亜鉛(ZnSe)、ガリウム砒素(GaAs)及びリン化インジウム(InP)などの半導体;
6)天然または合成ゼオライト及び類似多孔性分子篩;
7)セルロース、澱粉(アミロース及びアミロペクチン)及びリグニンなど天然高分子、合成高分子、または伝導性高分子。
【0027】
より望ましい基質は、多様な形態の多孔性または非多孔性金属、合金、金属及び非金属元素が単独または2種以上含まれている酸化物であり、さらに望ましくは、石英、雲母、ガラス、ITOガラス、錫酸化物、F−doped錫酸化物などの各種の伝導性ガラス、シリカであり、最も望ましくは、ガラスである。
【0028】
本発明の製造方法によれば、まず、基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させる(段階(a))。本発明の望ましい具現例によれば、この段階は、i)種子結晶が付着されていない基質をMFI型ゼオライト合成ジェルに適当な時間を入れて一次形成方法で単層の結晶を基質上に形成させるか、または、ii)ゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶をb軸方向に付着して実施する。より望ましくは、段階(a)は、ゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶をb軸方向に付着して実施する。
【0029】
前記段階(a)を、ゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶をb軸方向に付着して実施する場合、望ましくは段階(a)は、基質に対してゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶に物理的な圧力を付け加えて、前記基質とゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶との間に化学的結合を形成させる方法によって実施される。本発明の方法を説明しながら使われる表現“基質に対して分子篩結晶に物理的に圧力を付け加える”とは、英文表現“physical press of molecular sieve crystals against substrate”に対応されることである。
【0030】
このような物理的な圧力付加は、望ましくは、磨き(rubbing)または分子篩結晶の基質に対する押さえ(pressing against substrate)によって実施され、より望ましくは、磨き方式で圧力を付け加える。磨き過程間に発生する分子篩種子結晶の基質表面に対する圧着、そして、分子篩種子結晶の強制表面移動(forced surface migration)は、高密集度で分子篩種子結晶が基質上に結合することを誘導する最も重要な二つの要因である。
【0031】
基質−分子篩複合体を製造するために、分子篩種子結晶に圧力を加える方法は、当業界に公知された多様な方法で可能である。例えば、手(bare hands)のみを用いて分子篩種子結晶に圧力を加えることができ、弾性体板など磨き道具を持って手ですることもでき、または磨き機械装置を用いて分子篩種子結晶に圧力を加えることができる。
【0032】
前記段階(a)で、ゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶をb軸方向に付着して実施する場合、択一的に(alternatively)段階(a)は、10kHz〜100MHz超音波を用いて前記基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させて実施される。本明細書で、用語“超音波処理(sonication)”は、当業界に公知された通常的な周波数範囲の超音波で処理する過程を意味し、望ましくは10kHz〜100MHz、より望ましくは15kHz〜10MHz、さらに望ましくは20kHz〜10MHz、最も望ましくは25kHz〜1000kHzの超音波を用いて処理する過程を意味する。超音波の範囲が、前記範囲を外れれば、分子篩粒子の結合が良好ではなくなる。また、電力は、適当な範囲内で周波数に合わせて変化させて使用できる。超音波処理時間は多様であるが、望ましくは30秒〜10分、より望ましくは1分〜5分、最も望ましくは1分〜3分である。超音波処理時の温度は、一般的な化学反応温度の範囲で実施することができ、望ましくは20℃〜50℃、より望ましくは20℃〜40℃、最も望ましくは室温である。
【0033】
本発明の望ましい具現例によれば、基質とゼオライト種子結晶との間の結合は、水素結合を通じて可能である。この場合、基質とゼオライト種子結晶は、直接的に水素結合できるかまたは水素結合媒介者(例えば、ポリエチレンイミン)を通じて水素結合できる。
【0034】
本発明の他の望ましい具現例によれば、本発明の基質、またはゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶は、連結化合物(linkerまたはlinking compound)が結合されている。本明細書で、用語“連結化合物”は、基質と分子篩結晶との間の結合を可能にする末端に作用基を有するすべての化合物を意味する。望ましくは、連結化合物は、下記化学式1ないし化学式11で表わす化合物である。
〔化学式1〕
Z−L1−X
〔化学式2〕
MR’4
〔化学式3〕
R3Si−L1−Y
〔化学式4〕
HS−L1−X
〔化学式5〕
HS−L1−SiR3
〔化学式6〕
HS−L1−Y
〔化学式7〕
Z−L2(+)
〔化学式8〕
L3(−)−Y
〔化学式9〕
Z−L3(−)
〔化学式10〕
L2(+)−Y
〔化学式11〕
Z−Y
前記化学式で、Zは、R3Siまたはイソシアネート基(−NCO)であり;ここで、Rは、ハロゲン基、C1〜C4のアルコキシまたはC1〜C4のアルキル基を表わし、3個のRのうち少なくとも一つは、ハロゲン基またはアルコキシ基であり;L1は、置換または非置換のC1〜C17アルキル、アラルキルまたはアリール基であり、一つ以上の酸素、窒素または硫黄原子を含むことができ;Xは、ハロゲン基、イソシアネート(−NCO)基、トシル基またはアザイド基であり;R’は、Rと同じ意味を表わし、4個のR’のうち少なくとも2個は、ハロゲン基またはアルコキシ基であり;Mは、珪素、チタンまたはジルコニウムであり;Yは、ヒドロキシ基、チオール基、アミン基、アンモニウム基、スルホン基及びその塩、カルボキシ酸及びその塩、酸無水物、エポキシ基、アルデヒド基、エステル基、アクリル基、イソシアネート基(−NCO)、糖(sugar)残基、二重結合、三重結合、ジエン(diene)、ジイン(diyne)、アルキルホスフィン、アルキルアミンまたはリガンド交換できる配位化合物であり、Yは、連結化合物の末端だけではなく、中間に位置することもでき;L2(+)は、1個以上の酸素、窒素または硫黄原子を含む置換または非置換のC1〜C17の炭化水素化合物として、その末端、直鎖状または測鎖状に正電荷(+)が少なくとも1個以上の作用基を表わし;L3(−)は、1個以上の酸素、窒素または硫黄原子を含む置換または非置換のC1〜C17の炭化水素化合物として、その末端、直鎖状または測鎖状に負電荷(−)が少なくとも1個以上の作用基を表わす。
【0035】
連結化合物によって基質と分子篩結晶との間の結合が媒介される場合、典型的にイオン結合が関与される。例えば、(連結化合物−分子篩結晶)中間体を(基質−連結化合物)中間体に磨きをすれば、前記二つの中間体の連結化合物の間に安定されたイオン結合が形成される。
【0036】
本発明の方法によって製造される基質−分子篩複合体は、基質と分子篩粒子(すなわち、結晶)の種類、連結化合物の種類、中間連結化合物の種類などによって多様に製造可能であるが、代表的な連結類型は、次の通りである。
【0037】
1)基質−分子篩複合体である。
【0038】
これは、分子篩種子結晶を圧力を加えて基質に結合させて製造される。この場合、連結化合物は利用されず、分子篩種子結晶は基質と水素結合とで結合される。
【0039】
2)基質−水素結合媒介者−分子篩複合体である。
【0040】
基質及び/または分子篩結晶の表面を適した水素結合媒介者でコーティング(スピンコーティングまたは漬けコーティング)し、分子篩種子結晶を基質表面に対して圧力を加えて、基質−水素結合媒介者−分子篩複合体を製造することができる。この複合体は、前記(i)の複合体と比べて、さらに強い強さで安定的に水素結合を形成することができる。
【0041】
3)基質−連結化合物−分子篩複合体である。
【0042】
基質及び/または分子篩結晶の表面に適した連結化合物を結合させた後、分子篩種子結晶を基質表面に対して圧力を加えて、基質−連結化合物−分子篩複合体を製造する。
【0043】
4)基質−連結化合物−連結化合物−分子篩複合体である。
【0044】
基質と連結化合物(中間体1)を結合させて分子篩結晶と連結化合物(中間体2)とを結合させた後に磨きなどを用いて中間体1と中間体2とを結合させて基質−連結化合物−連結化合物−分子篩複合体を製造する。この場合、中間体1の連結化合物と中間体2の連結化合物は、互いに結合することができる作用基を有していなければならない。例えば、イオン結合(アンモニウム基とカルボキシル基またはその塩)などがある。
【0045】
5)基質−連結化合物−中間連結化合物−連結化合物−分子篩複合体である。
【0046】
基質と連結化合物(中間体1)を結合させて分子篩粒子と連結化合物(中間体2)とを結合させた後、中間体1及び中間体2の混合物に中間連結化合物を添加し、磨きで中間体1、中間連結化合物及び中間体2を連結させて製造される。中間連結化合物を中間体1または中間体2と先に結合させ、その後に中間体2または中間体1と結合させることもできる。
【0047】
本発明の特徴中の一つは、多様な厚さを有するMFI型ゼオライト薄膜を成長させることができるということである。このような薄膜を形成させるためには、基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させる時、b軸方向に多様な厚さを有する種子結晶を使う。既存の方法による時、200nm以下の薄い薄膜は形成されないが、本発明の製造方法によれば、厚さの薄い薄膜を製造することができて分子分離膜の透過度、すなわち、効率を大幅に増加させることができる。
【0048】
本発明によれば、前述した段階(a)に後続して、段階(b)では、前記基質を構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させる過程を実施する。
【0049】
本発明の望ましい具現例によれば、本発明の構造指向剤は、アミン、イミンまたは4次アンモニウム塩(quaternary ammonium salt)であり、より望ましくは、下記化学式12に表示される4次水酸化アンモニウムである。
【0050】
【化1】
前記化学式で、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立的に水素原子、C1〜C30のアルキル、アラルキルまたはアリール基を表わし、前記C1〜C30のアルキル、アラルキルまたはアリール基は、ヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄、燐または金属原子を含むことができ、前記化学式は、TPAOH及びトライマーTPAOHを含まない。
【0051】
化学式12で、用語“C1〜C30のアルキル”は、炭素数1〜30の直鎖状または分枝鎖状飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、ペンタデシル及びヘブタデシルなどを含む。
【0052】
望ましくは、アルキル基は、C1〜C4直鎖状または分枝鎖状アルキル基である。
【0053】
用語“アラルキル”は、一つまたはそれ以上のアルキル基による構造に結合されたアリール基を意味し、望ましくは、ベンジル基である。
【0054】
用語“アリール基”は、全体的にまたは部分的に不飽和された置換または非置換のモノサイクリックまたはポリサイクリック炭素環を意味し、望ましくは、モノアリールまたは非アリールである。モノアリールは、炭素数5〜6を有することが望ましく、非アリールは、炭素数9〜10を有することが望ましい。最も望ましくは、前記アリールは、置換または非置換のフェニルである。
【0055】
本発明で使うMFI型ゼオライト合成ジェルは、前記構造指向剤の以外にも次のような原料物質を含む:
1)アルミニウム(Al)原料でアルミニウムイソプロポキシドのようなアルミニウムに有機物が結合された有機無機混成物質、硫酸アルミニウム(aluminium sulfate)のようなAlが含まれた塩状の物質、Alのみでなされた粉末状または塊状を有した金属物質及びアルミナのようなアルミニウム酸化物のすべての物質;
2)シリコン原料でTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)のようなシリコンに有機物が結合された有機無機混成物質、ナトリウムシリカライトのようなSi元素が含まれた塩状の物質、Siのみでなされた粉末状あるいは塊状を有した物質、ガラス粉末、及び石英のようなシリコン酸化物のすべての物質;
3)F原料で、HF、NH4F、NaF、KFなどのようなF−を含んだすべての形態の物質;
4)アルミニウムとシリコン以外の骨格に他種の元素を挿入するために使われる物質。
【0056】
本発明の望ましい具現例によれば、本発明の前記構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルは、[TEOS]X[TEAOH]Y[(NH4)2SiF6]Z[H2O]Wの組成からなる。前記組成で、X:Y:Z:Wの含量比は、(0.1〜30):(0.1〜50):(0.01〜50):(1〜500)であり、望ましくは(0.5〜15):(0.5〜25):(0.05〜25):(25〜400)、より望ましくは(1.5〜10):(1.0〜15):(0.1〜15):(40〜200)、最も望ましくは(3〜6):(1.5〜5):(0.2〜5):(60〜100)である。前記比率を外れる場合、b軸が完璧に基質に対して垂直であるゼオライト結晶体を形成することができなくなる。本方法でのMFI型ゼオライト合成ジェルには、前記組成物の以外にもさらにチタンなどの転移金属、ガリウムなどの13族、及びゲルマニウムなどの14族元素などが添加されることができるが、これに限定されるものではない。このような追加的な原料物質の比率は、0.1〜30の比率の範囲で限定される。
【0057】
本方法において、薄膜生成のための反応温度は、使われるジェルの組成または作ろうとする物質によって50〜250℃まで多様に変化することができる。望ましくは、その反応温度は80〜200℃であり、より望ましくは、120〜180℃である。また、反応温度は、常に固定されたものではなく、多様な段階で温度を変化させながら反応することができる。
【0058】
本方法において、薄膜生成のための反応時間は、0.5時間から20日まで多様に変化することができる。反応時間は、望ましくは2時間〜15日、より望ましくは6時間〜2日、最も望ましくは10時間〜1日である。
【0059】
前記方法で製造したゼオライトb軸に配向されたMFI型ゼオライト薄膜は、既存に形成された物質に比べて完璧にb軸に配向される特徴がある。したがって、本発明の望ましい具現例によれば、本発明の前記基質上に形成されたb軸に配向されたMFI型ゼオライト薄膜はすべてのb軸が、すなわち、すべての直線形チャンネル(straight channel)が基質に垂直方向に配向されることを特徴とする。MFI型ゼオライトの構造は、図1に表示された通りである。ゼオライトまたは類似分子篩薄膜結晶内でのチャンネルは、直線形チャンネルと正弦波形(sinusoidal)チャンネルとで構成されている。したがって、表現“チャンネルが単一方向に整列された”は、直線チャンネルと正弦波状のチャンネルそれぞれが単一配向性を有することを意味する。直線チャンネルと正弦波状のチャンネルの方向性は、互いに同一であるかまたは異なることができる。より詳細には、基質に対してb軸に形成された結晶の配向性は、超結晶のストレートチャンネルが基質面に対して垂直であり、正弦波状のチャンネルは基質面に対して垂直または水平であることを意味する。
【0060】
本方法によって製造されたMFI構造を有するゼオライト及び類似分子篩薄膜の巨視的形態は、次の通りである:
1)基質上に単層構造で直接成長させた分子篩の単一薄膜と、
2)基質上に一つあるいは複数種の分子篩を多層構造で構成した単一薄膜と、
3)基質上に一種あるいは多種の分子篩を化学結合を用いて付着させた単層または多層フィルムと、
4)前記1)項、2)項、3)項に明示された構成体を一部あるいは全部組合わせた複合体。
【0061】
本発明の一態様によれば、本発明は、前記製造方法によって製造され、すべてのb軸が、すなわち、すべての直線形チャンネルが、基質に対して垂直配向されたことを特徴とするMFI型ゼオライト薄膜を提供する。
【0062】
また、このようなMFI型ゼオライト薄膜は、多様な厚さに厚さを調節することができて200nm以下の薄い厚さを有することができるようにし、このような物質は分子透過度が高い。
【0063】
本発明によって製造されたゼオライト薄膜は、分子分離膜、半導体産業での低誘電体物質、非線形光学物質、水分解装置用薄膜、太陽電池用薄膜、光学用部品、航空機用内部または外部部品、化粧品容器、生活容器、鏡及びその他のゼオライトのナノ細孔の特性を用いる薄膜などに多様に応用可能であるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0064】
本発明の特徴及び利点を要約すれば、次の通りである。
【0065】
(a)本発明によって得られたすべてのb軸が基質に垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜は、直線形チャンネルがすべての基質に垂直に整列されることによって既存のTPAOHまたはトライマー−TPAOHを構造指向剤として使う方法を使う時、生成されたMFI薄膜のb軸がいずれも完璧に基質に対して垂直配向されない限界点を乗り越えることができる。
【0066】
(b)本発明によって得られたすべてのb軸が基質に垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜は、多様な厚さを有することができるようになって200nm以下の薄い厚さを有したゼオライト薄膜を形成することができる。
【0067】
(c)すべてのb軸が基質に垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜は、透明な基質を使った場合、透明度が非常に高い。したがって、ナノチャンネル内に多様な機能性分子、高分子、金属ナノ粒子、半導体量子点、量子線などを一定の配向で内包させた薄膜は、多様な光学用、電子用及び電子光学用先端素材として使われる。特に、多孔性アルミナ、多孔性シリカ、メゾ細孔物質上に成長させたb軸が基質に垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜は、分子を分離する分離膜としての機能が非常に優れている。
【0068】
(d)MFI薄膜を分子分離膜として使う場合、厚さが薄いほど分離膜の効率、すなわち、透過度が大きく増加する。既存の方法としては、200nm以下の薄い薄膜が形成されないが、本発明によって製造されたゼオライト薄膜は、薄い厚さを有することができて分子分離膜の効率を大幅に増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲が、これら実施例によって制限されないということは、当業者に自明である。
【0070】
(実施例)
〔実験材料及び方法〕
〔ガラス板上に完璧にb軸に配向されたシリカライト薄膜を成長させるための準備〕
ガラス板(75mm×25mm×1mm、Marienfeld)をピラニア溶液(H2SO4とH2O2との混合比7:3)内に30分間入れた後、取り出して蒸溜水で洗浄して高純度窒素気流下で乾燥させた。このように乾燥されたガラス板をスピンコーティング装置に載せてアルコールに適当な濃度に希釈されたポリエチレンイミン(PEI、Mw=25000、Aldrich)でスピンコーティングし、PEIがコーティングされたガラスであるPEI/Gを作った。このようにして得たPEI/Gを純粋なトルエンで洗浄した後、高純度窒素を吹かして乾燥させた。
【0071】
〔磨きまたは超音波を利用したシリカライト単層膜の製造〕
平らな板上に濾紙あるいはA4用紙を置いて、その上に両面テープを用いてPEI/Gを固定した後、b軸に広くて扁平な面が発達したシリカライト粉末を少量振り撤いた。指または柔らかくて表面が滑らかなシリコン弾性体を用いて粉末を磨いてシリカライト種子結晶のb軸方向がいずれも基質に対して垂直になるように配向させてPEI/G表面に付着させた(参照:大韓民国特許出願第2007−0001317号)。磨き方法の以外にも超音波を用いてシリカライト種子結晶を完璧にb軸方向基質に垂直になるように配向させてガラス表面に付着させた(参照:大韓民国特許登録第668041号)。この場合、トルエン内でガラス板と3−chloropropyltrimethoxy silaneとを反応させてガラス表面にあらかじめ3−chloropropylを付着(コーティング)させた。この際、表面に付着された3−chloropropylグループは、連結化合物として作用してシリカライトをガラス表面に付着させる役割を果たす。超音波を用いてシルラカライトをガラス板上に付着させる場合に使われるシリカライト種子結晶は、中央部にa軸に寄生した結晶が成長していない純粋なシリカライト結晶を使った。
【0072】
〔完璧にb軸に配向されたシリカライト薄膜を成長させるためのジェルの準備〕
シリカライト薄膜を成長させるための合成ジェルの一つの組成は、[TEOS]x[TEAOH]y[(NH4)2SiF6]z[H2O]w(x:y:z:w=4:1.92:0.36:78.4)である。詳細には、200mL容量のプラスチックビーカーに水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH、35w%水溶液、Aldrich)30.29gと水33.24gとを入れた後、よく撹拌した。前記TEAOH溶液のうち40gを100mL容量のプラスチックビーカーに移して、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、98%、Aldrich)31.80gを添加した後、常温で4時間かき混ぜてTEOSを加水分解させた。残りのTEAOH溶液を別途の100mL容量のプラスチックビーカーに移して、98%アンモニウムヘキサフルオロケイ酸塩[(NH4)2SiF6]2.45gを入れた。(NH4)2SiF6が完全に溶けた後、この溶液をTEOSを完全に加水分解させた溶液にゆっくり添加した後、6時間常温に停止された状態で置いた。
【0073】
〔シリカライト薄膜の成長〕
シリカライト種子結晶のb軸がいずれも基質に垂直になるように付着されたPEI/G板を攝氏450℃度で加熱して、シリカライトとガラス板との間のPEI連結層を焼成すると同時にシリカライトとガラス板とを直接結合させた。テフロン(登録商標)支持体を用いて焼成後、シリカライトが強く付着されたガラス板を垂直に立てた後、180mL容量のテフロン容器内に入れて既に作ったシリカライト合成用ジェルを注いだ後、容器蓋を閉じてステンレススチール材質の高圧反応器(autoclave)に入れて165℃オーブンで12時間反応させた。反応が終わった後、フィルムが生成された基質を2次蒸溜水に入れて10秒間超音波洗浄機で洗浄した後、2次蒸溜水を流しながら数回拭いて表面に物理的に付いている不純物を除去した。550℃で6時間焼成して細孔内にある有機鋳型(template)を完全に除去した。
【0074】
〔完璧にb軸に配向されたシリカライト薄膜の厚さを調節する方法〕
PEI/G板上にb軸に広くて扁平な面が発達したシリカライト種子結晶を付着させる時、b軸方向に多様な厚さを有する種子結晶を使った。この際、使われる種子結晶のb軸方向の厚さは20〜5000nmであった。
【0075】
〔走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)分析〕
前記方法を用いて透明なガラス板上にすべてのb軸がガラス板に垂直配向された多様な厚さのシリカライト薄膜を形成した。生成された薄膜上に約15nm厚さに白金/パラジウムコーティングをして走査型電子顕微鏡(Hitachi S−4300 FE−SEM)を用いてSEMイメージを得た。
【0076】
〔X線粉末回折(XRD)分析〕
前記実施例によって製造されたシリカライト薄膜の結晶成長方向を糾明するため、CuKα X線を使うX線回折機(Rigaku回折機 D/MAX−1C、Rigaku)を用いてX線粉末回折パターンを得た。
【0077】
〔実験結果〕
図2は、ガラス板上にb軸がガラス板と垂直に配向されたシリカライト種子結晶を磨き方法を用いて付着させたガラス板の全面部SEMイメージである。
【0078】
図3は、図1の種子結晶が付着されたガラス板を、本発明によって開発された反応ジェルに入れて12時間反応させて生成させたシリカライト薄膜のイメージ(top view)である。図3で生成されたシリカライト薄膜のX線回折パターンを分析した結果、すべての結晶のb軸がいずれも完璧に基質に対して垂直成長したことが分かった(図4)。
【0079】
図5は、図4のX線回折パターンで2θ角の17.5゜から18゜の間を大きく拡大したものである。このパターンで17.8゜でのみピークが表われ、このような事実はシリカライト結晶のb軸がいずれも基質に垂直配向されたということを表わす決定的な証拠である。
【0080】
一方、図2の種子結晶が付着されたガラス板を従来の技術によってトライマーTPAOHが添加されたジェルを用いて成長させたシリカライト薄膜を電子顕微鏡を通じて観察した結果(図6)、a軸にも結晶が成長されたということが分かった。
【0081】
図7は、図6で成長させたシリカライト薄膜のX線回折パターンとして2θ角を17.5゜から18゜の間のみ表わしたものである。図7で、7.65゜ピークは、a軸に17.79゜ピークは、b軸に成長したシリカライトを意味し、成長したシリカライトを意味する。その結果、従来のトライマーTPAOHが添加されたジェルを使えば、完璧にb軸が基質に垂直配向されたシリカライト種子結晶からa軸が垂直配向した結晶が成長するという事実が分かった。
【0082】
図8は、図2の種子結晶が付着されたガラス板をTPAOHが添加されたジェルを使って成長させたシリカライト薄膜の電子顕微鏡イメージである(top view、平面イメージ)。その結果、シリカライト結晶が多様な軸に成長されたということが分かった。図8で、成長したシリカライト薄膜のX線回折パターンを分析した結果、図9のようにシリカライト結晶の多様な軸が基質に垂直成長したということが分かった。
【0083】
図10は、多様な厚さのシリカライト種子結晶をb軸がガラス板と垂直になるように配向させた後、本発明によって開発された反応ジェルに入れて12時間反応させて生成させたシリカライト薄膜の反応前及び後の側面の電子顕微鏡イメージである。図10の下端は、各シリカライト薄膜の17.5゜から18゜の間のX線回折パターンを表わし、b軸を表わす一つのピークのみ観察される。図10で確認できるように、本発明の反応ジェルでシリカライト薄膜を製造する場合には、b軸がいずれも基質に垂直配向された多様な厚さのシリカライト薄膜を製造することができるということが分かる。
【0084】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したが、当業者において、このような具体的な技術は、単に望ましい具現例であり、これに本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な特許請求の範囲は、請求項とその等価物によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
多様な厚さを有するすべてのb軸が基質に対して垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜及びその製造方法関連の分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】MFI型ゼオライトの構造イメージである。
【図2】ガラス板上にb軸がガラス板と垂直に配向されたシリカライト種子結晶を磨き方法(大韓民国特許第0789661号)を用いて付着させたガラス板の電子顕微鏡写真である(右から見たイメージ)。
【図3】図2の種子結晶が付着されたガラス板を、本発明によって開発された反応ジェルに入れて12時間反応させて生成させたシリカライト薄膜の電子顕微鏡イメージ(top view)である。
【図4】図3のシリカライト薄膜のX線回折パターンである。
【図5】図4に表わしたX線回折パターンで2θ角の17.5゜から18゜の間を大きく拡大したものである。
【図6】図2の種子結晶が付着されたガラス板をトライマーTPAOHが添加されたジェルを用いて成長させたシリカライト薄膜の電子顕微鏡写真である(top view)。
【図7】図6に表わしたシリカライト薄膜のX線回折パターンのうち2θ角を17.5゜から18゜の間のみ表わしたものである。
【図8】図2の種子結晶が付着されたガラス板をTPAOHが添加されたジェルを使って成長させたシリカライト薄膜の電子顕微鏡イメージである(top view)。
【図9】図8のシリカライト薄膜のX線回折パターンである。
【図10】厚さが相異なるシリカライト種子結晶をb軸がガラス板と垂直になるように配向させた後、本発明によって開発された反応ジェルに入れて12時間反応させて生成させたシリカライト薄膜の反応前(上)及び後(中間)の側面の電子顕微鏡写真である。下は、それぞれの試料に対する(17.5゜<2θ<18゜)の間のX線回折パターンである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階を含む基質上にb軸がいずれも基質面に対して垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜の製造方法:
(a)基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を生成または付着させる段階と、
(b)前記基質を構造指向剤(structure-directing agent)を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させる段階。
【請求項2】
次の段階を含む基質上にb軸がいずれも垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜の厚さを調節する方法:
(a)基質上に多様な厚さを有するゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を生成させる段階と、
(b)前記基質を構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させる段階。
【請求項3】
前記段階(a)は、
種子結晶が付着されていない基質をMFI型ゼオライト合成ジェルに入れて実施することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記段階(a)は、
ゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶をb軸方向に付着して実施することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼオライトまたは類似分子篩は、
ZSM−5、シリカライト、TS−1、AZ−1、Bor−C、ボラライトC、エンシライト、FZ−1、LZ−105、モノクリニックH−ZSM−5、ミュティナイト、NU−4、NU−5、TSZ、TSZ−III、TZ−01、USC−4、USI−108、ZBH及びZKQ−1Bで構成された群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記基質は、
(i)金属及び非金属元素が単独または2種以上含まれている酸化物として表面にヒドロキシ基を有する物質、(ii)チオール基(−SH)またはアミン基(−NH2)と結合する単一金属及び金属の合金、(iii)表面に作用基を有する重合体、(iv)半導体化合物、(v)ゼオライトまたはその類似分子篩、または(vi)表面にヒドロキシル基を有しているか、ヒドロキシル基を有するようにする天然高分子、合成高分子または伝導性高分子であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記段階(a)は、
前記基質に対してゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶に物理的に圧力を付け加えて、前記基質とゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶との間に化学的結合を形成させる方法によって実施されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記物理的に圧力を付け加える段階は、磨き(rubbing)または分子篩結晶の基質に対する押さえ(pressing against substrate)によって実施されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記段階(a)は、
10kHz〜100MHz超音波を用いて、前記基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させて実施されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記基質、またはゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶は、
連結化合物が結合されていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記連結化合物は、
次の化学式1ないし化学式11の化合物で構成された群から選択される化合物であることを特徴とする請求項10に記載の方法:
〔化学式1〕
Z−L1−X
〔化学式2〕
MR’4
〔化学式3〕
R3Si−L1−Y
〔化学式4〕
HS−L1−X
〔化学式5〕
HS−L1−SiR3
〔化学式6〕
HS−L1−Y
〔化学式7〕
Z−L2(+)
〔化学式8〕
L3(−)−Y
〔化学式9〕
Z−L3(−)
〔化学式10〕
L2(+)−Y
〔化学式11〕
Z−Y
前記化学式で、Zは、R3Siまたはイソシアネート基(−NCO)であり、ここで、Rは、ハロゲン基、C1〜C4のアルコキシまたはC1〜C4のアルキル基を表わし、3個のRのうち少なくとも一つは、ハロゲン基またはアルコキシ基であり;L1は、置換または非置換のC1〜C17アルキル、アラルキルまたはアリール基であり、一つ以上の酸素、窒素または硫黄原子を含むことができ;Xは、ハロゲン基、イソシアネート(−NCO)基、トシル基またはアザイド基であり;R’は、Rと同じ意味を表わし、4個のR’のうち少なくとも2個は、ハロゲン基またはアルコキシ基であり;Mは、珪素、チタンまたはジルコニウムであり;Yは、ヒドロキシ基、チオール基、アミン基、アンモニウム基、スルホン基及びその塩、カルボキシ酸及びその塩、酸無水物、エポキシ基、アルデヒド基、エステル基、アクリル基、イソシアネート基(−NCO)、糖(sugar)残基、二重結合、三重結合、ジエン(diene)、ジイン(diyne)、アルキルホスフィン、アルキルアミンまたはリガンド交換できる配位化合物であり、Yは、連結化合物の末端だけではなく、中間に位置することもでき;L2(+)は、1個以上の酸素、窒素または硫黄原子を含む置換または非置換のC1〜C17の炭化水素化合物として、その末端、直鎖状または測鎖状に正電荷(+)が少なくとも1個以上の作用基を表わし;L3(−)は、1個以上の酸素、窒素または硫黄原子を含む置換または非置換のC1〜C17の炭化水素化合物として、その末端、直鎖状または測鎖状に負電荷(−)が少なくとも1個以上の作用基を表わす。
【請求項12】
前記構造指向剤は、
アミン、イミンまたは4次アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記構造は、
次の化学式12に表示される4次水酸化アンモニウムであることを特徴とする請求項12に記載の方法:
【化1】
前記化学式で、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立的に水素原子、C1〜C30のアルキル、アラルキルまたはアリール基を表わし、前記C1〜C30のアルキル、アラルキルまたはアリール基は、ヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄、燐または金属原子を含むことができ、前記化学式は、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)及びトライマー水酸化テトラプロピルアンモニウム(トライマーTPAOH)を含まない。
【請求項14】
前記構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルは、
[TEOS]X[TEAOH]Y[(NH4)2SiF6]Z[H2O]Wの組成からなり、前記X:Y:Z:Wの含量比は、(0.1〜30):(0.1〜50):(0.01〜50):(1〜500)であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記請求項1または請求項2の方法によって製造され、b軸(直線形チャンネル)がいずれも基質に対して垂直配向されたストレートチャンネル(straight channel)を含むことを特徴とするMFI型ゼオライト薄膜。
【請求項1】
次の段階を含む基質上にb軸がいずれも基質面に対して垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜の製造方法:
(a)基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を生成または付着させる段階と、
(b)前記基質を構造指向剤(structure-directing agent)を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させる段階。
【請求項2】
次の段階を含む基質上にb軸がいずれも垂直配向されたMFI型ゼオライト薄膜の厚さを調節する方法:
(a)基質上に多様な厚さを有するゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を生成させる段階と、
(b)前記基質を構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルに入れてゼオライトまたは類似分子篩の結晶を成長させる段階。
【請求項3】
前記段階(a)は、
種子結晶が付着されていない基質をMFI型ゼオライト合成ジェルに入れて実施することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記段階(a)は、
ゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶をb軸方向に付着して実施することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼオライトまたは類似分子篩は、
ZSM−5、シリカライト、TS−1、AZ−1、Bor−C、ボラライトC、エンシライト、FZ−1、LZ−105、モノクリニックH−ZSM−5、ミュティナイト、NU−4、NU−5、TSZ、TSZ−III、TZ−01、USC−4、USI−108、ZBH及びZKQ−1Bで構成された群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記基質は、
(i)金属及び非金属元素が単独または2種以上含まれている酸化物として表面にヒドロキシ基を有する物質、(ii)チオール基(−SH)またはアミン基(−NH2)と結合する単一金属及び金属の合金、(iii)表面に作用基を有する重合体、(iv)半導体化合物、(v)ゼオライトまたはその類似分子篩、または(vi)表面にヒドロキシル基を有しているか、ヒドロキシル基を有するようにする天然高分子、合成高分子または伝導性高分子であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記段階(a)は、
前記基質に対してゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶に物理的に圧力を付け加えて、前記基質とゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶との間に化学的結合を形成させる方法によって実施されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記物理的に圧力を付け加える段階は、磨き(rubbing)または分子篩結晶の基質に対する押さえ(pressing against substrate)によって実施されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記段階(a)は、
10kHz〜100MHz超音波を用いて、前記基質上にゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶を付着させて実施されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記基質、またはゼオライトまたは類似分子篩の種子結晶は、
連結化合物が結合されていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記連結化合物は、
次の化学式1ないし化学式11の化合物で構成された群から選択される化合物であることを特徴とする請求項10に記載の方法:
〔化学式1〕
Z−L1−X
〔化学式2〕
MR’4
〔化学式3〕
R3Si−L1−Y
〔化学式4〕
HS−L1−X
〔化学式5〕
HS−L1−SiR3
〔化学式6〕
HS−L1−Y
〔化学式7〕
Z−L2(+)
〔化学式8〕
L3(−)−Y
〔化学式9〕
Z−L3(−)
〔化学式10〕
L2(+)−Y
〔化学式11〕
Z−Y
前記化学式で、Zは、R3Siまたはイソシアネート基(−NCO)であり、ここで、Rは、ハロゲン基、C1〜C4のアルコキシまたはC1〜C4のアルキル基を表わし、3個のRのうち少なくとも一つは、ハロゲン基またはアルコキシ基であり;L1は、置換または非置換のC1〜C17アルキル、アラルキルまたはアリール基であり、一つ以上の酸素、窒素または硫黄原子を含むことができ;Xは、ハロゲン基、イソシアネート(−NCO)基、トシル基またはアザイド基であり;R’は、Rと同じ意味を表わし、4個のR’のうち少なくとも2個は、ハロゲン基またはアルコキシ基であり;Mは、珪素、チタンまたはジルコニウムであり;Yは、ヒドロキシ基、チオール基、アミン基、アンモニウム基、スルホン基及びその塩、カルボキシ酸及びその塩、酸無水物、エポキシ基、アルデヒド基、エステル基、アクリル基、イソシアネート基(−NCO)、糖(sugar)残基、二重結合、三重結合、ジエン(diene)、ジイン(diyne)、アルキルホスフィン、アルキルアミンまたはリガンド交換できる配位化合物であり、Yは、連結化合物の末端だけではなく、中間に位置することもでき;L2(+)は、1個以上の酸素、窒素または硫黄原子を含む置換または非置換のC1〜C17の炭化水素化合物として、その末端、直鎖状または測鎖状に正電荷(+)が少なくとも1個以上の作用基を表わし;L3(−)は、1個以上の酸素、窒素または硫黄原子を含む置換または非置換のC1〜C17の炭化水素化合物として、その末端、直鎖状または測鎖状に負電荷(−)が少なくとも1個以上の作用基を表わす。
【請求項12】
前記構造指向剤は、
アミン、イミンまたは4次アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記構造は、
次の化学式12に表示される4次水酸化アンモニウムであることを特徴とする請求項12に記載の方法:
【化1】
前記化学式で、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立的に水素原子、C1〜C30のアルキル、アラルキルまたはアリール基を表わし、前記C1〜C30のアルキル、アラルキルまたはアリール基は、ヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄、燐または金属原子を含むことができ、前記化学式は、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)及びトライマー水酸化テトラプロピルアンモニウム(トライマーTPAOH)を含まない。
【請求項14】
前記構造指向剤を含むMFI型ゼオライト合成ジェルは、
[TEOS]X[TEAOH]Y[(NH4)2SiF6]Z[H2O]Wの組成からなり、前記X:Y:Z:Wの含量比は、(0.1〜30):(0.1〜50):(0.01〜50):(1〜500)であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記請求項1または請求項2の方法によって製造され、b軸(直線形チャンネル)がいずれも基質に対して垂直配向されたストレートチャンネル(straight channel)を含むことを特徴とするMFI型ゼオライト薄膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−280481(P2009−280481A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300898(P2008−300898)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(508349573)インダストリー−ユニバーシティ コオペレイション ファウンデイション ソガン ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】Industry−University Cooperation Foundation Sogang University
【住所又は居所原語表記】1,Sinsu−dong,Mapo−gu,Seoul,121−742,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(508349573)インダストリー−ユニバーシティ コオペレイション ファウンデイション ソガン ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】Industry−University Cooperation Foundation Sogang University
【住所又は居所原語表記】1,Sinsu−dong,Mapo−gu,Seoul,121−742,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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