説明

多様な治療様式のための主成分としての選択的スプライスフォーム

【課題】腫瘍の発生を予防し又は遅延させ及び腫瘍の緩解を誘導する。
【解決手段】病気又は生理的状態と関係するタンパク質の選択的スプライスフォームに由来するペプチド又は抗体を、治療剤又は予防剤として利用する。タンパク質の血管内皮成長因子(VEGF)ファミリーの選択的スプライスフォームに由来するペプチド又は抗体は、腫瘍の発生を予防し又は遅延させ及び腫瘍の緩解を誘導するのに特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍その他の疾患の予防又は治療のためのタンパク質の選択的スプライスフォームの同定及び利用に関係する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、ワクチンは、ワクチン接種される生物に対して完全に外来の物質から導かれる。それにもかかわらず、生物を、その生物自身に由来するタンパク質に基づくワクチンで免疫化することは、しばしば望ましい。例えば、炎症の制御、排卵の防止又は他の避妊法、アルツハイマー病の阻止、及び腫瘍の成長の予防又は阻止は、すべて、内因性の即ち「自身の」タンパク質での免疫化により利益を得る状態である。
【0003】
ペプチドワクチンを用いて、病んだ又は異常な細胞(例えば、ウイルス、細胞内細菌又は寄生虫を有する細胞及び腫瘍細胞)を有する患者を治療することができる。このペプチドワクチンは、病んだ又は異常な細胞に対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導することができる。細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、病んだ又は異常な細胞を、直接的細胞傷害性により又は特異的及び非特異的助成を他の免疫細胞例えばマクロファージ、B細胞及び他の型のT細胞に与えることにより破壊する。ペプチドワクチンは又、病気の予防及び治療に有用な抗体応答を誘導することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行のペプチドワクチン技術は、所定の病気の病因と関連する内因性の正常タンパク質の同定を含む。次いで、その正常な全タンパク質がワクチンの基礎として利用される。或は、MHCクラスI又はIIモチーフと結合すると予想される内因性タンパク質の部分を同定して、ワクチン生成に利用する。Falk等、Nature 351:290, 1991を参照されたい。しかしながら、部分又は全正常タンパク質配列からのみ造られたペプチドワクチンは、病んだ又は異常な細胞に対して乏しい免疫原性であることがありえるし、正常なタンパク質を発現する身体の細胞に対する免疫反応を誘導することもありうる。
【0005】
ペプチドワクチンの特異的な免疫原性を増大させるための以前の試みは、様々な種類の癌細胞に由来する内因性タンパク質の点突然変異に集中していた。これらの点突然変異は、免疫応答を誘出するために利用することのできる大きな内因性タンパク質配列内の「非自己」の小さい領域を表している。しかしながら、これらの点突然変異は、免疫系により有効に認識されず、かかる技術を使うペプチドワクチンは、強力な免疫学的応答を生成したことはない。
【0006】
ペプチドワクチンは又、癌細胞中にときどき存在する遺伝子再配列(即ち、欠失、染色体再配列)から生じるタンパク質生成物に基づいてきた。例えば、慢性骨髄性白血病細胞における染色体9:22転座は、BCR/Abl融合タンパク質を生じる。このタンパク質は、BCR/Abl融合接合部に「非自己」の領域を含み、ヒト患者においてある種の免疫学的応答を誘出した。しかしながら、かかる遺伝子再配列は稀であり、染色体転座は癌において起きることが知られているだけである。従って、染色体再配列から誘導されたタンパク質生成物から生成されたワクチンの有用性は、限られている。
【0007】
従って、所定の病気において、ある組織に特異的であって、強力な免疫応答例えばCTL又は抗体応答を生じる「非自己」の免疫学的領域をも包含する内因性タンパク質を同定することは望ましい。理想的には、かかる変化した内因性タンパク質は、一般的に生じ、対応する正常タンパク質に対する交叉反応性を殆ど又は全く誘導しない。
【0008】
ある種の遺伝子からの一次RNA転写物は、選択的スプライシングを受けて、遺伝子により生成される主要なmRNAと異なるメッセンジャーRNA(mRNA)を生成することができる。これらの選択的スプライシングを受けたmRNAは、選択的スプライスフォームタンパク質へと翻訳される、該タンパク質は、正常にスプライシングされたmRNAにより生成された対応するタンパク質とは異なるアミノ酸配列を含んでいる。選択的スプライスフォームタンパク質は、しばしば、ある種の生理的又は病気の状態において、組織特異的様式で発現される。従って、これらの選択的スプライスフォームは、所定の病気を患っている患者の限られた数の細胞に存在する。例えば、多くの種類の癌細胞は、選択的スプライスフォームを生成し、それらは、同じ患者の正常細胞では見出されないということが知られている。選択的スプライスフォームが特異的に生成される他の病気には、糖尿病、アルツハイマー病及び全身性エリテマトーデス(SLE)が含まれる。それ故、これらの選択的スプライスフォームは、選択的スプライスフォームを生成する病んだ又は異常な組織に由来する細胞に対するワクチン源としては認識されなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
病んだ又は異常な細胞で生成されたタンパク質の選択的スプライスフォームに由来するペプチドは、高度に免疫原性であるということが、今や、見出されている。かかるペプチドは、ペプチドの「非自己」部分に特異的な強力な免疫応答を誘出する。特に、これらのペプチドは、特異的なCTL応答を誘出することができる。これらのペプチドは、ある種の細胞中の選択スプライスフォームの存在を特徴とする病気の治療又は予防処置において利用することができる。
【0010】
従って、この発明は、選択的スプライスフォームに対してユニークなアミノ酸配列を含むペプチドを提供する(この選択的スプライスフォームは、患者の病んだ又は異常な細胞により生成されるが、その患者の正常細胞には存在しない)。
【0011】
この発明は又、病んだ又は異常な細胞が少なくとも一種の選択的スプライスフォームを生成し、この選択的スプライスフォームは、正常細胞には実質的に存在しない病気を有し又は有する危険にある患者を治療するための免疫原性ペプチドを同定する方法をも提供する。この方法は、少なくとも一種の選択的スプライスフォームをコードする少なくとも一種のmRNAを同定するステップ;少なくとも一種のスプライスフォームの少なくとも一部のアミノ酸配列を決定するステップ;及び選択的スプライスフォームに対してユニークなアミノ酸配列を含む少なくとも一種のペプチドを生成するステップを含む。
【0012】
この発明は又、病んだ又は異常な細胞が少なくとも一種の選択的スプライスフォームを生成し、この選択的スプライスフォームは、正常細胞には実質的に存在しない病気を有し又は有する危険にある患者を治療する方法をも提供する。この方法は、患者に有効量の、選択的スプライスフォームに対してユニークなアミノ酸配列を含む少なくとも一種のペプチドを投与し、それで、これらの病んだ又は異常な細胞に対する免疫応答を生成することを含む。
【0013】
この発明は、更に、腫瘍細胞が少なくとも一種の選択的スプライスフォームを生成し、そのスプライスフォームが非腫瘍細胞には実質的に存在しない腫瘍を有する危険にある患者における腫瘍の発達の開始を防止し又は遅延させる方法をも提供する。この方法は、患者に、有効量の少なくとも一種の、選択的スプライスフォームに対してユニークなアミノ酸配列を含むペプチドを投与し、それで、腫瘍細胞に対する免疫応答を生成することを含む。
【0014】
この発明は、更に、腫瘍細胞が少なくとも一種の選択的スプライスフォームを生成し、この選択的スプライスフォームが非腫瘍細胞には実質的に存在しない腫瘍を有する患者において腫瘍を退行させる方法をも提供する。この方法は、患者に、有効量の少なくとも一種の、選択的スプライスフォームに対してユニークなアミノ酸配列を含むペプチドを投与し、それで、腫瘍細胞に対する免疫応答が生成することを含む。
【0015】
この発明は又、患者においてMHC制限された細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導するこの発明のペプチドを同定する方法であって、末梢血液リンパ球(PBL)を得、これらのPBLをこれらのペプチドの少なくとも一種に曝し、それでPBLを刺激し、刺激されたPBLを、このペプチドが誘導された選択的スプライスフォームを合成し又はペプチドでパルスされた標的細胞とインキュベートし、標的細胞の溶解を検出することを含む当該方法をも提供する。
【0016】
例えば、これらの標的細胞は、放射性物質又は蛍光物質で自家的に標識されうる。標的細胞の溶解の検出は、活性化PBLにより溶解された標的細胞から放出された自家標識の量を測定することにより達成することができる。これらの標的細胞の溶解は又、酵素結合免疫スポット(「ELISPOT」)アッセイによって検出することもできる。
【0017】
この発明は又、選択的スプライスフォーム上の特異的エピトープ又は選択的スプライスフォームにユニークなアミノ酸配列を含むペプチドに結合する抗体をも提供する。これらの抗体は、モノクローナルであってもポリクローナルであってもよく、選択的スプライスフォームエピトープに特異的に結合することのできる抗体断片であってもよい。
【0018】
この発明は又、選択的スプライスフォーム又は選択的スプライスフォームにユニークなアミノ酸配列を含むペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをも提供する。
【0019】
この発明は、更に、病んだ又は異常な細胞が少なくとも一種の選択的スプライスフォームを生成し、この選択的スプライスフォームが正常細胞では実質的に存在しない病気を有し又は有する危険にある患者を治療する方法をも提供する。この方法は、患者に、有効量の、選択的スプライスフォームにユニークなアミノ酸配列に特異的な少なくとも一種の抗体を投与し、それで、患者における少なくとも一つの臨床症状を改善させ、又は患者中の病んだ又は異常な細胞の数を減少させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1Aは、VEGFDにおける選択的スプライスフォーム#1(SEQ ID NO:77)を表すPCR生成物を示すアガロースゲル電気泳動の写真である。プライマーセット3を用いたPCRの第3ラウンドを示している。約300bpの強いバンド(「VEGFD#1」として表示)は、SEQ ID NO:77を表し;1082bpのバンド(「VEGFD」と表示)は、発現された正常にスプライシングを受けたmRNAを表している。M:bpで表した分子量;HC2:HC2 20d2/c細胞からのPCR増幅。 図1Bは、NIH−3T3細胞のPCR増幅の結果を示すアガロースゲル電気泳動の写真である。プライマーセット3を用いたPCRの第3ラウンドを示している。発現された正常にスプライシングを受けたmRNAに対応するバンドだけが存在している(「VEGFD」と表示)。M:bpで表した分子量;NIH:NIH−3T3細胞からのPCR増幅。
【図2】平均腫瘍容積(mm3)の時間(VEGFファミリーの選択的スプライスフォームに由来する様々な免疫原性ペプチドによりワクチン接種したNIH−Swissマウスの経過日数)に対するプロットを示した図である。
【図3】図3A及び3Bは、それぞれ、VEGFファミリーメンバーの選択的スプライスフォームに由来する免疫原性ペプチドで処理したMMTV新生マウスについて、マウス当たりの腫瘍の数の生後日数に対する生存プロット及び各マウスにおける総腫瘍容積の生後日数に対する生存プロットを示した図である。両方の図について、9匹の雌の同腹子マウスに、処理を施さない(「未処理」)か、GM−CSFのみを与える(「GM−CSD」)か、又はVEGFファミリーベースの選択的スプライスフォームとGM−CSFとの組合せを与えた(「Combo」)。生存プロット上の各曲線は、単一動物を表している。
【図4】MMTV新生マウスにおける抗体応答を測定したドットブロットのオートラジオグラフィーを示した図であり、Aは、処理を施さず(「未処理」)、Bは、GMCSFのみを与え(「GM−CSF」)、Cは、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:77及びSEQ ID NO:81並びにGM−CSFの組合せによりワクチン接種したもの(「COMBO」)である。これらのマウスにおける抗体応答を、1μgのBSA、SEQ ID NO:82(「EGFRvIII」)、SEQ ID NO:73(「R−pep」)、SEQ ID NO:81ホモダイマー(「RC−pep」)、SEQ ID NO:77(「H−pep」)、SEQ ID NO:79(「L−pep」)又はSEQ ID NO:75(「V−pep」)に対して測定した(ニトロセルロース膜にスポット)。
【図5】抗γインターフェロン抗体を利用するELISPOTアッセイを利用して同定された溶解事象を示すプロットを示した図である。HC2 20d2/c腫瘍細胞を接種してからSEQ ID NO:73(「R−pep」)、SEQ ID NO:75(「V−pep」)又はSEQ ID NO:82(「EGFRvIII」)にGM−CSFを加えたものにより免疫化したマウス(腫瘍緩解を示した)又はSEQ ID NO:75(「V−pep」)及びGM−CSFを接種したマウス(腫瘍緩解を示さなかった)から単離した脾臓細胞。GM−CSFだけを接種したマウスを対照として用いた(「対照」)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(アミノ酸略号)
本発明のペプチド化合物を記載するのに用いる命名法は、慣用のプラクティスに従って、アミノ基を、各アミノ酸残基の左側に与え、カルボキシ基は、右側に与える。本発明の選択した特定の具体例を表す式において、アミノ及びカルボキシ末端基は、特に示さないが、別途特定しない限り、生理的pH値にあると仮定される。アミノ酸構造式において、各残基は、一般に、下記の一覧表に従うアミノ酸の慣用名に対応する一文字又は三文字記号によって表される。
【0022】
【表1】

【0023】
(定義)
ここで用いる場合、表現「アミノ酸」は、天然及び合成のアミノ酸の両方並びにD及びLアミノ酸の両方を包含する。「標準的アミノ酸」は、天然ペプチド中に見出される20種類のLアミノ酸の何れかを意味する。「標準的でないアミノ酸」は、それが合成により製造されるか天然起源から導かれるかにかかわらず、標準的アミノ酸以外の任意のアミノ酸を意味する。ここで用いる場合、「合成のアミノ酸」は又、化学的に改変されたアミノ酸をも包含し、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)及び置換体を含むがこれらに限られない。本発明のペプチドに含まれるアミノ酸、特にカルボキシ又はアミノ末端のアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化又は他の化学基による置換によって改変することができ、これらは、ペプチドの循環半減期を、それらの生物学的活性に悪影響を及ぼすことなく変化させることができる。加えて、ジスルフィド結合は、この発明のペプチド中に存在してもしなくてもよい。
【0024】
アミノ酸は、下記の一般的構造を有している:
【化1】

【0025】
アミノ酸は、側鎖Rに基づいて、次の7つのグループに分類される:(1)脂肪族側鎖、(2)水酸基(OH)を含む側鎖、(3)硫黄原子を含む側鎖、(4)酸又はアミド基を含む側鎖、(5)塩基性基を含む側鎖、(6)芳香族環を含む側鎖及び(7)プロリン(側鎖がアミノ基に融合したアミノ酸)。
【0026】
「抗体」は、ここで用いる場合、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、キメラ、一本鎖、キメラ且つヒト化抗体、並びにFab断片(Fab又は他の免疫グロブリン発現ライブラリーの生成物を含む)を包含する。
【0027】
用語「ヒト化抗体」は、非ヒト種の免疫グロブリンに由来する相補性決定領域(CDR)を有し且つその抗体分子の残りの部分はヒトの免疫グロブリンに由来する抗体をいう。
【0028】
用語「キメラ抗体」は、異なる種に由来する可変領域と定常領域を含む抗体を意味する。
【0029】
用語「キメラのヒト化抗体」は、少なくとも定常領域がヒトに由来するキメラ抗体を意味する。
【0030】
「ペプチド」及び「タンパク質」は、交換可能に用いられ、ペプチド結合又は改変ペプチド結合(ペプチド同配体)により共有結合された少なくとも2つのアミノ酸残基よりなる化合物のことをいう。タンパク質又はペプチドを構成するアミノ酸の最大数に制限は課さない。ここに又は請求の範囲に記載のペプチド又はタンパク質を含むアミノ酸は、D又はLアミノ酸であると理解されるが、Lアミノ酸が好適である。ここに記載のペプチド又はタンパク質を構成するアミノ酸は又、天然の過程により(例えば、翻訳後プロセッシング)又は当業者に周知の化学的改変技術によって改変されたものであってもよい。改変は、ペプチド中の何処にあってもよい(ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及びアミノ又はカルボキシル末端を含む)。同じ型の改変が、所定のペプチド中の幾つかの部位で、同程度に存在しても様々な程度に存在してもよいということは理解される。又、所定のペプチドは、多くの種類の改変を含むこともできる。改変には、アセチル化、アセチル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム成分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性の架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解過程、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNA媒介のアミノ酸のタンパク質への追加(例えば、アルギニル化)、及びユビキチン化が含まれる。例えば、Proteins − Structure and Molecular Properties, 第二版、T.E. Creighton, W.H. Freeman and Company, New York, 1993及びWold F, Posttranslational Protein Modifications;Perspective and Prospects, p.1-12(Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B.C. Johnson編、Academic Press,New York, 1983;Seifter等、「Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors」、 Meth. Enzymol.(1990)182:626-646及びRattan等、(1992),「Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging」Ann NY Acad Sci 663:48-62中)を参照されたい。
【0031】
ここで用いる場合、「リーディングフレーム」は、核酸例えば翻訳された場合に所定のペプチドを生成するmRNA中の特定の一連のコドンを意味する。
【0032】
選択的スプライスフォーム(「選択的スプライスフォームタンパク質」とも呼ばれる)は、対応する正常タンパク質中では見出されないアミノ酸配列を含む。選択的スプライスフォーム中でのみ見出されて、対応する正常タンパク質中では見出されないアミノ酸配列は、選択的スプライスフォームに「ユニーク」であるとみなされる。
【0033】
選択的スプライスフォームにユニークなアミノ酸配列を含むペプチドは、それ故、高度に免疫原性である。ここで用いる場合、「正常」タンパク質は、所定遺伝子により生成される全mRNA転写物の大部分を構成するmRNA転写物から生成される任意のタンパク質である。例えば、もし2つのmRNA転写物が、一つの遺伝子により生成されたならば、その遺伝子により生成された全mRNA転写物の50%より多くを構成するmRNA転写物は、正常にスプライシングを受けたmRNA転写物であるとみなされ、それは、「正常な」タンパク質へと翻訳される。この遺伝子により生成された全mRNAの50%未満を構成するmRNA転写物は、選択的スプライシングを受けたmRNAとみなされ、それは、選択的スプライスフォームへと翻訳される。もし一つの遺伝子から3つ以上のmRNA転写物が生成されるならば、他のmRNA転写物と比較して一層多い割合で存在するmRNA転写物が、正常にスプライシングを受けたmRNA転写物とみなされ、それは、「正常な」タンパク質へと翻訳される。正常にスプライシングを受けたmRNAと比較して一層僅かしか存在しないmRNA転写物は、選択的スプライシングを受けたmRNAとみなされ、それらは、選択的スプライスフォームへと翻訳される。例えば、もし遺伝子が、3種類のmRNA転写物を、40:35:25の相対的割合で生成したならば、生成された全mRNA転写物の40%を構成するmRNAが、正常にスプライシングを受けたmRNAとみなされる。生成された全mRNA転写物の35%及び25%を構成する2種類のmRNAは、それぞれ、選択的スプライスフォームであるとみなされる。
【0034】
この発明の目的に関して、遺伝子により生成された正常な又は選択的スプライシングを受けたmRNAのレベルは、そのmRNAから生成されるタンパク質のレベルと直接的に比例するということを仮定する。細胞内の、選択的スプライシングを受けたmRNAの量(従って、選択的スプライスフォームの量)は、しばしば、その遺伝子により生成された全mRNA転写物の比較的少量を占める。例えば、選択的スプライスフォームは、所定遺伝子の全アウトプットの10%以下、5%以下、1%以下又は0.5〜0.1%以下を表しうる。
【0035】
一つの遺伝子から生成されるmRNA転写物の相対的な量は、当分野で周知の技術;例えば、Siebert PD(1993),「Quantitative RT-PCR」Clontech Laboratories, Inc., カリフォルニア、Palo Alto在;Carango P等(1995),Ann.Neurol.38:610-617;及びGrove DS (1999), J.Biomolecular Techniques 10:11-16(これらの全開示を参考として本明細書中に援用する)に記載されたような定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)技術によって測定することができる。mRNA転写物の量は、典型的には、相対的単位で表されるが、質量(例えば、μg)又はモル(例えば、グラム分子量)で表すこともできる。
【0036】
病んだ又は異常な細胞における選択的スプライスフォームの量(タンパク質又はmRNAレベルで評価)は、正常細胞で見出される同じ選択的スプライスフォームのレベルよりも少なくとも50%多くてよい。「病んだ」又は「異常な」細胞は、細胞又は組織の検査において当業者に容易に認められるある種の異常な表現型により同定される。例えば、種々の癌の病理学及び組織学は、Cancer: Principles and Practice of Oncology,(第三版、DeVita VT, Hellman S,及びRosenberg SA編)、1989, J.B.Lipincott Co., ペンシルベニア、Phila.に記載されている(その全開示を参考として本明細書中に援用する)。
【0037】
腫瘍形成性又は新生物形成性の細胞は、培養時に該細胞により示されるある種の増殖特性及び形態により同定することもできる。腫瘍形成性又は新生物形成性細胞は、接触により誘導される増殖阻害に無反応性であり、これらの細胞は、長期間培養された場合、培養器中にフォーカスを形成する。腫瘍形成性又は新生物形成性細胞は又、特徴的な形態的変化、無秩序なコロニー生育パターン、及び足場非依存増殖性の獲得をも示す。腫瘍形成性又は新生物形成性細胞は又、感受性の動物において浸潤性の腫瘍を形成する能力をも有しており、これは、それらの細胞を例えば胸腺切除したマウス又は同種の新生動物に当分野で周知の技術を用いて注射することによって評価することができる。例えば、Combes等(1999),「Cell Transformation Assays as Predictors of Human Carcinogenicity: The Report and Recommendations of ECVAM Workshop 39」、ATLA 27, 745-767(http://altweb.jhsph.edu/science/pubs/ECVAM/ecvam39.htmで入手可能)を参照されたい(その全開示を参考として本明細書中に援用する)。
【0038】
他の種類の病んだ又は異常な細胞を同定するための、組織学的、細胞培養ベースの及びその他の技術も又、当分野で周知である。
【0039】
ここで用いる場合、「実質的に正常細胞に存在しない」選択的スプライスフォームは、選択的スプライスフォームが正常細胞に存在しないか又は無視できる量で存在することを意味し、何れにせよ、病んだ又は異常な細胞中で見出されるレベルの約66%より多くは存在しない。それ故、病んだ又は異常な細胞に対して特異的に向けられた免疫応答は、選択的スプライスフォームにユニークなアミノ酸配列を含む少なくとも一種類のペプチドを投与された患者によって生成されうる。かかるペプチドによる免疫化は、正常細胞に対する免疫応答を誘出しない利点を有している。
【0040】
選択的スプライスフォームの一種は、通常離れている2つのアミノ酸配列を繋ぐことにより形成される新規なアミノ酸配列を含む。この種の選択的スプライスフォームは、mRNAが、通常タンパク質に翻訳されるエクソンの配列の全部又は部分をスキップするが、正常のリーディングフレームが無傷であるようにスプライシングを受けた場合に生成される。こうして、新規なアミノ酸配列が、以前には隣接していなかった2つの「正常」アミノ酸の並置により、「スプライス部位」に造られる。正常タンパク質に由来するアミノ酸配列が、スプライス部位に隣接する。エクソンの配列のスキップは又、mRNAのリーディングフレームをシフトさせることなく新たなコドンを造ることもできる。この例においては、新規なアミノ酸を、正常アミノ酸配列に隣接するスプライス部位に挿入する。両方の種類のスプライス部位は、免疫学的な「非自己」配列と考えられる。
【0041】
他の種類の選択的スプライスフォームは、通常mRNA中に存在しないコード配列から翻訳された新規なアミノ酸配列を含む。かかるコード配列は、選択的スプライシング事象により造られ、該事象においては、イントロン配列又は典型的には正常タンパク質に翻訳されないエクソン配列がmRNAに含まれる。これらのコード配列も又、mRNAのネイティブなリーディングフレームを変化させる選択的スプライシング事象により造られうるものであり、選択的スプライシング部位の下流の「ミスセンス」アミノ酸配列の翻訳を生じる。新規なアミノ酸配列は、免疫学的に「非自己」配列と考えられる。
【0042】
特定の病気の過程に関与する遺伝子及び選択的スプライシングを受けたmRNAを生成することがありそうな遺伝子は、しばしば、病んだ又は異常な細胞において、正常組織由来の細胞と比較して変化した発現パターンを示す。
【0043】
例えば、血管新生(新しい血管の形成)は、腫瘍の持続的成長に決定的に重要な過程である。腫瘍において同定された血管形成のための最も強力な因子の幾つかは、血管内皮成長因子(VEGF)タンパク質ファミリーのメンバーであり、これらは、腫瘍細胞においてアップレギュレートされている。VEGFタンパク質には、VEGF、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、及び胎盤成長因子(PIGF)が含まれる。VEGFタンパク質を生成するmRNAは、様々なスプライシング事象を受けうる。
【0044】
疾病特異的な仕方で選択的スプライシングを受けたmRNAを生成する多くの他の遺伝子が、当分野では知られており、本発明の実施において利用することができる。表1は、かかる遺伝子、それらが関係する病気、それらの遺伝子により造られる選択的スプライスフォーム、及びそれらの選択的スプライスフォームから導かれるこの発明のペプチドの代表的一覧表を含んでいる。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
【表10】

【0054】
表1に示したように、ある種の病気は、選択的スプライスフォームを含む病んだ又は異常な細胞を生成する傾向がある。例えば、選択的スプライスフォームは、感染又はストレス;癌(例えば、急性前骨髄細胞性白血病;急性リンパ芽球性白血病;骨髄芽球性白血病;子宮癌;甲状腺癌;消化器腫瘍;異形性及び新生頚部上皮;メラノーマ;乳癌;前立腺癌;肺癌;子宮内膜癌;奇形癌腫;大腸癌;繊維形成性球形細胞腫瘍;上皮新生物;胃癌;卵巣癌);免疫系の病気(例えば、アレルギー応答、x連鎖無ガンマグロブリン血症、免疫/炎症、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー病);代謝異常(例えば、フェニルケトン尿症、非インシュリン依存性糖尿病);膠原病(例えば、骨形成不全症);動脈の病気(アテローム性動脈硬化症);遺伝性赤血球膜異常(例えば、遺伝性楕円赤血球症);甲状腺ホルモン抑制;子宮内膜増殖症;アルツハイマー病;及びアルコール中毒症により生じた病んだ又は異常な細胞中に存在する。
【0055】
特定の種類の病気において、選択的スプライスフォームは、ある種の遺伝子から生成される傾向がある。例えば、癌において、CD44遺伝子;ステロイドホルモンレセプター遺伝子(例えば、エストロゲンレセプター遺伝子)及びFHIT遺伝子は、様々な選択的スプライスフォームを生成しそれらからこの発明のペプチドが誘導されうる。
【0056】
当業者は、選択的スプライスフォームを潜在的に生成する他の遺伝子を、周知の技術を利用して同定することができ、該技術には、連鎖分析、遺伝子発現アレイ分析、ホモロジー検索、及び点突然変異分析及び、所定の核酸配列中のエクソン使用量を予想することのできる市販のコンピューターソフトウェアが含まれる。
【0057】
特定の疾病過程に関与する遺伝子から転写されたmRNAを、当分野で周知の技術を利用して、選択的スプライシングパターンについて分析することができる。かかる技術には、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ノーザンブロッティング及びイン・シトゥーハイブリダイゼーションが含まれる。mRNA配列を分析するための技術は、例えば、Busting SA(2000), J.Mol.Endocrinol.25:169-193に記載されている(その完全な開示を本明細書中に参考として援用する)。選択的スプライシングを受けたmRNAを同定するための代表的技術もまた、下記に記載する。
【0058】
例えば、所定の病気の遺伝子に関係するヌクレオチド配列を含むデータベースを利用して、選択的にスプライシングされたmRNAを同定することができる。ヌクレオチド配列を含むデータベースには、GenBank、Embase及びthe Cancer Genome Anatomy Project(CGAP)データベースが含まれる。例えば、CGAPデータベースは、様々な種類のヒトの癌から発現された配列タグ(EST)を含む。mRNA又は遺伝子配列を利用して、かかるデータベースに問い合わせて、選択的にスプライシングされたmRNAを表すESTが所定の病気で発現される特定の遺伝子に関して見出されたかどうかを決定することができる。
【0059】
「RNアーゼ防護」と呼ばれる技術も又、選択的にスプライシングされたmRNAを同定するために利用することができる。RNアーゼ防護は、遺伝子配列の合成RNAへの翻訳を含み、それは、病んだ又は異常な細胞に由来するRNAとハイブリダイズされる。ハイブリダイズしたRNAを、次いで、RNA:RNAハイブリッドミスマッチを認識する酵素とインキュベートする。予想されるものよりも小さい断片は、選択的スプライシングを受けたmRNAの存在を示している。推定の選択的スプライシングを受けたmRNAを、当業者に周知の方法によってクローン化して配列決定することができる。
【0060】
逆転写をポリメラーゼ連鎖反応と結合させた技術(「RT−PCR」)も又、選択的スプライシングを受けたmRNAを同定するために利用することができる。RT−PCRにおいては、病気の組織に由来するmRNAを、当業者に周知の方法を利用して、酵素逆転写によってcDNAに変換する。次いで、cDNAの全コード配列を、3’非翻訳領域に位置させたフォワードプライマー及び5’非翻訳領域に位置させたリバースプライマーを利用して、PCRによって増幅する。これらの増幅生成物を、例えば、増幅生成物のサイズを正常にスプライシングされたmRNAからの発現生成物のサイズと比較することにより選択的スプライスフォームについて分析することができる。増幅生成物の相対的サイズを測定する好適方法は、アガロースゲル中でのゲル電気泳動である。増幅生成物の如何なるサイズの変化も、選択的スプライシングを示しうる。
【0061】
PCRの最初のラウンドが、アガロースゲル電気泳動により分析した場合に不明瞭な生成物のバンドを生じるならば、最初のPCR反応の一部を増幅の第二ラウンドで利用することができる。この第二ラウンドの増幅は、好ましくは、第一のプライマーセットの内側に入る一組のプライマーを使用する。この過程(「ネストしたPCR」と呼ばれる)は、当業者に周知である。増幅された生成物が、第二ラウンドの増幅後にアガロースゲル上に依然として不明瞭なバンドを生成するならば、第三ラウンドのネストしたPCRを行なうことができる。一度増幅生成物を表す明確なバンドが生成されたならば、そのバンドをゲルから切り出して、そのDNAを抽出して公知技術によって配列決定する(例えば、Sanger等、(1977),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463(その完全な開示を参考として本明細書中に援用する)によるジデオキシチェーンターミネーション法)。
【0062】
一度選択的スプライシングを受けたmRNAが同定されたならば、そのmRNAによりコードされる選択的スプライスフォームの全部又は部分のアミノ酸配列を、該mRNAを公知の治術により翻訳することによって決定することができる。選択的スプライシングを受けたmRNAによりコードされたアミノ酸配列は又、標準的コドン利用表から予想することもできる。例えば、Lewin B, Genes VI, (Oxford University Press, Inc., New York, 1997)(その全開示を参考として本明細書中に援用する)の第214頁の図9.1を参照されたい。次いで、この配列に基づくペプチドを生成して、この発明の実施に利用することができる。
【0063】
部分配列決定された選択的スプライシングを受けたmRNAに由来する核酸配列(又は選択的スプライスフォームの部分アミノ酸配列に由来する核酸配列)を利用して、この発明のペプチドを同定することができる。例えば、プローブ又はプライマーを、選択的スプライシングを受けたmRNA又は選択的スプライスフォームの部分配列から生成することができる。このプローブ又はプライマーを、公知の分子生物学技術例えばプライマー伸長、核酸配列決定、又は核酸ハイブリダイゼーションと共に利用して、部分配列決定した選択的スプライシングを受けたmRNAに関する更なる配列データを獲得することができる。この発明のペプチドを、この方法において得られた更なる選択的スプライシングを受けたmRNA配列から合成することができる。
【0064】
この発明のペプチドは、選択的スプライスフォームに対応する正常タンパク質中に見出されない少なくとも一つのアミノ酸又はアミノ酸配列を含まなければならず、又は正常タンパク質中の異なる部分に典型的に位置するアミノ酸配列の少なくとも一つの新規な並置を含まなければならない。一具体例において、この発明のペプチドは、選択的スプライスフォームにユニークなアミノ酸配列のみを含むことができる。この発明のペプチドは、任意の長さであってよいが、好ましくは、4〜50アミノ酸長である。特に好適なペプチドは、7〜25アミノ酸長の例えば8又は9アミノ酸長のこの発明のペプチドである。
【0065】
対応する正常タンパク質との免疫学的交叉反応性を最少にするために、この発明のペプチド中に含まれる正常アミノ酸配列の量を制限することは好ましいことである。ペプチド抗原のプロセッシングに必須であるMHCクラスI分子の認識部位は、8又は9アミノ酸長である。如何なる理論に拘束されることも望まないが、8アミノ酸長以上の正常アミノ酸配列を含むこの発明のペプチドは、正常タンパク質に対する望ましくない免疫応答を生成しうると考えられる。それ故、この発明のペプチドに含まれる連続する正常配列の長さは、好ましくは7アミノ酸未満である。一層好ましくは、連続する正常アミノ酸配列は、6、5、4、3、2又は1アミノ酸長である。この発明のペプチドは、一つより多くの連続するアミノ酸を含むことができるということが予想される。
【0066】
通常離れているアミノ酸配列の融合により造られた選択的スプライスフォームに由来するこの発明のペプチドに関して、スプライス部位に隣接する連続する正常アミノ酸配列が7アミノ酸長以下であることは好ましい。一層好ましくは、スプライス部位に隣接するこれらの連続するアミノ酸配列は、各々、6、5、4、3、2又は1アミノ酸長である。一具体例において、この発明のペプチドは、スプライス部位に隣接する連続する正常アミノ酸配列を含むことができる。如何なる理論に拘束されることも望まないが、かかるペプチドは、MHCクラスI抗原提示のための最適の長さを有したまま、対応する正常タンパク質に対する有意に低い交叉反応性を生じることができると考えられる。
【0067】
この発明のペプチドは、ペプチドを合成するための任意の方法により生成することができる。例えば、これらのペプチドは、対応するmRNAのイン・ビトロ翻訳により得ることができる。これらのペプチドは又、溶液中又は固体支持体上で慣用の技術によって合成するもできる。様々な市販の自動合成装置を利用することができ、公知のプロトコールにしたがって利用することができる。例えば、Stewart及びYoung, Solid Phase Peptide Synthesis, 第二版、Pierce Chemical Co.(1984);Tam等、J.Am.Chem.Soc.105:6442,1983;Merrifield, Science 232:341-347, 1986;及びBarany及びMerrifield, The Peptides, Gross & Meienhofer編、Academic Press, New York, pp.1-284(1979)を参照されたい(これらの全開示を参考として本明細書中に援用する)。
【0068】
或は、この発明のペプチドは、組換えDNA技術を利用して生成することができる。例えば、これらのペプチドをコードする核酸を、選択的スプライシングを受けたmRNAの逆転写により、又は当分野で周知の化学合成技術によって合成することができる。この核酸コード配列に、次いで、適当なリンカーを与え又は当分野で一般に利用可能な発現ベクター中に連結することができる。
【0069】
この発現ベクターは、調節配列例えば開始及び停止コドン、プロモーター及びターミネーター領域並びに複製起点を含むことができる。例えば、細菌宿主と適合性であるプロモーター配列を、所望のコード配列の挿入に便利な制限部位を含むプラスミド中に与えることができる。
【0070】
本発明の免疫原性ペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを、好ましくは、該ペプチドの発現のための適当な細菌宿主に、公知の技術によってトランスフェクトする。酵母又は哺乳動物細胞宿主も又、利用することができる(但し、発現ベクターは、適合性の制御配列を含む)。多くの発現ベクターと宿主の系が知られており、市販されている。
【0071】
この発明のペプチドをコードする核酸を、発現ベクター中の更なるタンパク質コード配列に結合させることができる。これらの結合させたコード配列の発現は、この発明のペプチドを含む融合タンパク質を生成する。追加のコード配列は、この発明の他のペプチドをコードする配列又は他の種類のタンパク質をコードする配列を含むことができる。
【0072】
核酸をクローン化して発現させる他の技術は、例えば、Sambrook等、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(1982),及びAusubel等編、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc., New York(1987), 及び米国特許第4,237,224号、4,273,875号、4,431,739号、4,363,877号及び4,428,941号に記載されている(これらの全開示を参考として本明細書中に援用する)。
【0073】
この発明のペプチドは、更なるアミノ酸(即ち、対応するmRNAによってコードされていないアミノ酸)を含むことができる。例えば、少なくとも一つのアミノ酸例えばチロシン、システイン、リジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸をこれらのペプチドのC又はN末端に加えることができる。これらの更なるアミノ酸は、この発明の二以上のペプチドの相互の結合、この発明の少なくとも一つのペプチドの、これらのペプチドの免疫系への提示を増強することのできる多価プラットフォーム(例えば、ポリリジン、ポリエチレングリコールなど)への結合、一つ以上のこの発明のペプチドの他のタンパク質又は他の分子への結合のために;又はこの発明のペプチドの物理的若しくは化学的特性を改変するために利用することができる。この発明のペプチドの多価プラットフォーム又は他のタンパク質若しくは他の分子への結合のための部位も又、これらのペプチドの末端NH2アシル化(例えば、アセチル化)、チオグリコール酸アミド化、末端カルボキシアミド化(例えば、アンモニア又はメチルアミンによる)又はビオチン化により導入することができる。
【0074】
好ましくは、この発明のペプチドは、ホモ又はヘテロ多量体に結合して一体化される。これらのホモ又はヘテロ多量体は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体又は一層多量の多量体を含むことができる。この発明のペプチドからの多量体の形成は、結合したペプチドの所望の機能(例えば、細胞傷害性T細胞決定基として又は抗体応答のアクチベーターとしての機能)を果たす能力を実質的に干渉すべきでないということは理解される。
【0075】
好適な方法において、この発明のペプチドのホモ又はヘテロ多量体は、システイン残基を介して形成され、これらは、これらのペプチドのN及び/又はC末端に加えられる。次いで、これらのペプチドは、システイン残基の制御された酸化により、多量体を形成する。
【0076】
他の方法においては、ジスルフィド/アミド形成性ヘテロ二官能性薬剤例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジル−ジチオ)プロピオネート(SPDP)を利用して、多量体をこの発明のペプチドから形成する。例えば、これらのペプチドは、一つのペプチド中の第一のSPDP官能基とシステイン残基との間のジスルフィド結合の形成を介して、及び第二のSPDP官能基と他のペプチド中の遊離アミノ基との間のアミド結合の形成を介して結合されうる。他の適当なジスルフィド/アミド形成性ヘテロ二官能性薬剤は、公知であり;例えば、Immun.Rev.62:185,1982(そのすべての開示を参考として援用する)を参照されたい。
【0077】
多量体を、チオエーテル結合を形成する二官能性カップリング剤を用いて、この発明のペプチドから形成することもできる。適当なチオエーテル形成剤は、市販されており、6−マレイミドカプロン酸;2ブロモ酢酸;2−ヨード酢酸;及び4−(N−マレイミド−メチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸の反応性エステルを含む。これらのペプチドの結合を達成するために、これらのチオエーテル形成剤のカルボキシル基を、1−ヒドロキシ−2−ニトロ−4−スルホン酸のスクシンイミド又はナトリウム塩で活性化する。好適な活性化チオエーテルカップリング剤は、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)である。
【0078】
この発明の単量体又は多量体ペプチドは又、上記の技術及び試薬を用いて、他のタンパク質にも結合されうるということは理解される。
【0079】
この発明のペプチドは又、所望の属性例えば改良された薬理学的効果若しくは免疫学的効果を与え又はペプチドの細胞への侵入を促進する必要に応じて改変することもできる。
【0080】
この発明のペプチドの免疫学的効果を改良することのできる改変には、CTL又は抗体誘導活性を増強する改変が含まれる。例えば、ペプチドのN末端の疎水性を、特にN末端の第二残基が既に疎水性であり且つHLA制限分子への結合に関与する場合に、増大させることができる。如何なる理論に拘束されることも望まないが、この発明のペプチドのN末端の疎水性を増大させることは、T細胞への提示の効率を増大させると考えられる。従って、宿主が有意のCTL活性を生成しえないエピトープを含むこの発明のペプチドは、このペプチドのN末端における疎水性残基の置換により作ることができる。
【0081】
この発明のペプチドの免疫学的効果を改良する他の改変には、アミノ酸の挿入、欠失及び置換(保存的又は非保存的)が含まれ、これらは、続く細胞傷害性Tリンパ球への提示のための免疫原性ペプチドのMHC分子への結合親和性を増大させる。「保存的置換」とは、アミノ酸残基を他の生物学的及び/又は化学的に類似するもの例えば疎水性残基又は極性残基で置換することを意味する。生物学的又は化学的に類似するアミノ酸の組合せには、Gly/Ala;Val/Ile/Leu;Asp/Glu;Asn/Gln;Ser/Thr;Lys/Arg;及びPhe/Tyrが含まれる。
【0082】
置換又は削除しうるアミノ酸残基の数及び種類に影響を及ぼす因子には、免疫原性ペプチド上の必須のエピトープ点の間の間隔、及びある種のコンホメーション及び追求しうる機能的属性(例えば、疎水性対親水性)が含まれる。それ故、一のアミノ酸を所定の組合せ内の他のもので置換することは、保存的置換である。他の保存的置換は、当業者には明らかであろう。
【0083】
加えて、この発明のペプチド中のアミノ酸残基の側鎖による寄与は、特定されたアミノ酸(例えば、Ala)を有するペプチド中のアミノ酸残基の系統的置換によって調べることができる。
【0084】
この発明のペプチドは又、それらのイン・ビトロ又はインビボでの安定性を増大するように改変することもできる。かかる改変には、少なくとも一つのD−アミノ酸を含むようにこれらのペプチドを合成することが含まれる。D−アミノ酸含有ペプチドは、L−ペプチド対応物に比べて、ペプチダーゼに対して一層耐性であり、血清及び組織において一層安定である。D−アミノ酸含有ペプチドとして合成したこの発明のペプチドは、対応するL−ペプチドと同じ効力を有するであろうことが予想される。しかしながら、MHC分子に対する結合親和性の如何なる損失でも、D−アミノ酸ペプチドの増大したイン・ビボ安定性によって補償される。この発明のL−アミノ酸含有ペプチドの安定性は又、そのペプチドを、該ペプチドのエキソペプチダーゼによる破壊を阻止するD−アミノ酸で「キャッピング」することによっても増大させることができる。D−アミノ酸含有ペプチドは又、「インベルソ」又は「レトロ−インベルソ」型として、即ち、配列のすべてのL−アミノ酸をD−アミノ酸で置換することにより、又はアミノ酸の配列を逆にしてすべてのL−アミノ酸をD−アミノ酸で置換することによって合成することもできる。
【0085】
この発明のペプチドの免疫応答を誘出する能力に影響を与えないこの発明のペプチドの改変も又、企図される。例えば、免疫原性の保持に必要とされないアミノ酸残基は、置換し又は削除することができる。当業者は、容易に、どのアミノ酸を置換し又は削除することができるかを例えば当分野で周知の突然変異分析技術により決定することができる。一般に、エピトープ及び/又はコンホメーション的に重要な残基の間での付加又は欠失は、ペプチドのMHC分子への結合を破壊しうる立体的干渉及び電荷的干渉を回避するアミノ酸又は部分を使用する。この発明のペプチドの免疫応答を誘出する能力に影響を及ぼさない他の種類の改変は、以前に、「タンパク質」又は「ペプチド」の定義の下で論じている。
【0086】
この発明の少なくとも一つのペプチドを、患者に投与して、これらのペプチドが由来した選択的スプライスフォームに対する免疫応答を刺激することができる。これらのペプチドにより刺激される免疫学的応答には、細胞傷害性Tリンパ球及び/又は抗体応答が含まれる。例えば、この発明のペプチドの投与は、MHC HLAクラスI制限された細胞傷害性Tリンパ球応答を生成することができ、これには、標的抗原に特異的なCD8+Tリンパ球応答が含まれる(ここで、CD8+、MHCクラスI制限されたTリンパ球は活性化されている)。この発明のペプチドの投与は又、MHC HLAクラスII制限された細胞傷害性Tリンパ球応答(標的抗原に特異的なCD4+Tリンパ球応答を含む)を生成することもできる(ここに、CD4+、MHCクラスII制限されたTリンパ球は活性化されている)。
【0087】
ここで用いる場合、「患者」には、病んだ又は異常な細胞が選択的スプライスフォームを生成しそれから免疫原性ペプチドが誘導される病気を有し又は該病気の危険にある動物好ましくは哺乳動物、一層好ましくはヒトが含まれる。この発明のペプチドが由来する選択的スプライスフォームは、患者の正常細胞には実質的に存在しない。これらのペプチドを有する宿主における免疫学的応答の生成は、選択的スプライスフォームの発現と関係する病気の予防又は治療処置を生じる。
【0088】
好ましくは、この発明のペプチドの二種以上を患者に投与する。例えば、少なくとも一の選択的スプライスフォームに由来する、異なるエピトープを規定する二種以上のペプチドを利用することができる。これらの二種以上のペプチドを上記の技術により結合して、多量体を形成することができ、又は多量体を形成せずに一組成物中に(例えば、混合物として)配合することができる。種々の多量体の混合物、又は多量体と単量体の混合物も又この発明の部分である。混合物は、1、2、3、4又は5種類以上のこの発明の種々の単量体又は多量体ペプチドを含むことができる。
【0089】
この発明のペプチドの一種をホモ多量体として投与した場合、複数の反復するエピトープが患者の免疫系に提示される。この発明の二種以上の異なるペプチドをヘテロ多量体として又はペプチド混合物として投与した場合には、複数の異質のエピトープが患者の免疫系に提示される。この複数の同質又は異質エピトープの提示は、患者の免疫系に対する共同効果を生じる。従って、この発明のペプチドの多量体又は混合物としての投与により生成される免疫応答は、この多量体又は混合物を構成する各ペプチドの予想される相加的効果よりも大きい。
【0090】
この発明のペプチドは又、「ヘルパーT」細胞エピトープ(即ち、標的抗原に対する細胞傷害性T細胞の誘導において協同するT細胞を刺激するエピトープ)を提示する他のペプチドと組み合わせて患者に投与することもできる。「ヘルパーT」細胞エピトープを提示するペプチドは、Ferrari等、J.Clin.Invest.88:214-222,1991及び米国特許第4,882,145号に記載されている(これらの全開示を参考として本明細書中に援用する)。
【0091】
ここで用いる場合、この発明のペプチド「と組み合わせて」投与する物質は、該ペプチドと同時に同位置で(即ち、複合体又は混合物として)投与することができ、又は該ペプチドと異なる時点及び/又は場所で投与することができる。例えば、この物質は、この発明のペプチドの投与の前後に同じ場所で投与することができ、又はこの発明のペプチドと同時に離れた場所で投与することができる(例えば、この物質は、該ペプチドが非経口投与されるならば、経口投与することができ、逆もまた成り立ち;或は、この物質は、ペプチドと該物質の両者が非経口投与されるならば、反対側の肢に投与することができる)。ここで用いる場合、この発明のペプチドと「複合体化された」物質は、該ペプチドと共有結合により又は非共有結合によって結合されていてよい。
【0092】
この発明のペプチドは又、CTLをプライムする少なくとも一種の成分と共に患者に投与することもできる。例えば、ある種の脂質は、イン・ビボで、ウイルス抗原に対して、CTLをプライムすることが知られている。CTLをプライムするのに適した脂質には、トリパルミトイル−S−グリセリルシステイニル−セリル−セリン(P3CSS)が含まれるが、これは、ペプチドに共有結合された場合にウイルス特異的細胞傷害性Tリンパ球を効果的にプライムすることができる。Deres等、Natute 342:561-564, 1989を参照されたい(その全開示を参考として本明細書中に援用する)。好適具体例において、この発明のペプチドは、P3CSSと複合体化され、その結果生成したリポペプチドは、患者に投与されて、細胞傷害性Tリンパ球応答を特異的にプライムする。
【0093】
中和抗体の誘導も又、ペプチドに結合体化されたP3CSSでプライムされうる。従って、P3CSSに結合されたこの発明のペプチドは、液性免疫応答を誘出することもできる。
【0094】
この発明の実施において、この発明の少なくとも一のペプチドを患者に、病んだ又は異常な細胞に対する免疫応答即ち抗体又は細胞傷害性Tリンパ球応答を誘出するのに十分な量(「有効量」)で投与する。この発明のペプチドを多量体として又は混合物として投与する場合には、この有効量は、投与されたペプチドの累積総量を表す。患者における免疫応答の存在は、例えば、治療中の患者から得られた末梢血液リンパ球(PBL)中の抗原特異的なCTL活性の測定によって測定することができる。或は、患者における免疫応答の存在は、この発明のペプチドに特異的な抗体の力価を測定することにより、又はこの発明のペプチドの皮内注射及びその後の遅延型過敏症(DTH)応答の測定によって測定することができる。
【0095】
所定の患者に投与されるこの発明のペプチドの有効量は、ペプチド組成、投与方法、治療される病気の段階及び重さ、患者の体重及び一般的健康状態、並びに処方する医師の判断などの因子に依存する。一般に、70kgの患者に投与されるこの発明のペプチドの有効量は、約1μg〜2,000mg、好ましくは約1μg〜500mg、一層好ましくは約10μg〜200mg、特に好ましくは約50μg〜100mgである。最適な投与量は、70kgの患者に対して約500μgである。
【0096】
この発明のペプチドは、重い病状(即ち、患者の生命がおびやかされる状況)においてしばしば使用されるということが理解される。かかる症例においては、特に、免疫原性ペプチドの比較的無毒性の故に、相当過剰なペプチド(即ち、70kgの患者当たり2000mgの過剰の有効量)を患者に投与することが可能である。
【0097】
この発明のペプチドの有効量の単一投与又は複数回の投与は、治療する医師により選択された投与量レベル及びパターンにて実施されうる。治療用途のためには、これらのペプチドの初期投与量は、好ましくは、臨床症状が初めて出現した患者又は病気の診断後間もない患者に、症状の少なくとも部分的減少が認められるまで投与する「追加投与量」と共に投与する。治療のための好適な投薬養生法は、患者に、この発明の少なくとも一のペプチドの約10μg〜100mgの初期投与量を投与し、その後、2−4週毎に、この発明の少なくとも一のペプチドの約1μg〜1mgの追加投薬量を、患者の免疫応答の強度又は治療に対する応答の程度に依って、6週間〜3ヵ月の期間にわたって投与することを含む。他の治療用投薬養生法も企図される。
【0098】
予防的用途のためには、この発明の少なくとも一のペプチドの有効量を、好ましくは、一様な投与量で、一定の間隔で、数週間又は数ヶ月の期間にわたって投与する。予防的用途のための好適な投薬養生法は、この発明の少なくとも一のペプチドの約10μg〜100mgの、2−4週間毎の、6〜8ヵ月にわたる投与である。他の予防的投薬養生法も企図される。
【0099】
治療又は予防的用途のために、この発明のペプチドは、該ペプチドを患者の免疫系に曝すのに十分である如何なる経路により投与してもよい。投与の経路には、腸内投与(例えば、経口投与、直腸投与、鼻腔内投与など)及び非経口投与が含まれる。非経口投与には、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、腹腔内投与、膣内投与、嚢内投与(例えば、膀胱内投与)、皮内投与、肺投与、吸入、局所投与又は皮下投与が含まれる。これらのペプチドの制御された配合での患者の身体内への点滴注入法も又、一層遅い時点で存在させるためのこれらのペプチドの全身又は局所的放出と共に、この発明の範囲内に企図される。好適な投与の経路は、筋肉内、鼻腔内、皮内及び皮下送達である。
【0100】
治療的又は予防的処置のために、この発明の少なくとも一のペプチドを、該ペプチドをコードする核酸配列の患者の細胞内での発現によって、患者に投与することもできる。例えば、患者の細胞に、この発明のペプチドをコードする少なくとも一の核酸を発現するように加工した弱毒化したウイルス宿主を感染させることができる。好適な弱毒化ウイルス宿主は、ワクシニアウイルスである。この発明の実施において、この発明のペプチドの少なくとも一つをコードする核酸配列を含む弱毒化ウイルス宿主を、患者に導入し、それで患者の細胞の幾つかにウイルス宿主を感染させる。感染した細胞は、ウイルス宿主の制御下で、この発明のペプチドを発現し、患者において、免疫応答即ちTリンパ球又は抗体応答を誘出する。弱毒化ウイルス宿主として有用なワクシニアウイルスベクター及びそれらのベクターを患者に送達する方法は、当分野で公知であり、例えば、米国特許第4,722,848号(その全開示を参考として本明細書中に援用する)に記載されている。
【0101】
治療的又は予防的治療のために、この発明のペプチドは、ペプチドをコードする核酸配列の細菌宿主内での発現によって患者に投与することもできる。この発明の実施において、この発明のペプチドをコードする少なくとも一の核酸配列を含む細菌宿主を、例えば、皮内又は嚢内点滴注入法によって患者に導入する。細菌宿主は、この発明のペプチドを発現し、患者における免疫応答即ち細胞傷害性Tリンパ球又は抗体応答を誘出する。好適な細菌宿主は、Stover等(Nature 351:456-460, 1991)(全開示を参考として本明細書中に援用する)に記載されたバチルス・カルメット・ゲラン(BCG)である。この発明の実施における利用に適した他の細菌宿主例えばサルモネラ・ティフィ、リステリア・モノサイトゲネスなどは、当業者に公知である。
【0102】
治療的又は予防的処置のために、この発明のペプチドを、酵母宿主中での該ペプチドをコードする核酸配列の発現によって、患者に投与することもできる。この発明の実施において、この発明のペプチドをコードする少なくとも一の核酸配列を含む酵母宿主を、例えば、経口で、又は皮内若しくは嚢内点滴注入法によって患者に導入する。この酵母宿主は、この発明のペプチドを発現し、患者における免疫応答即ち細胞傷害性Tリンパ球又は抗体応答を誘出する。好適な酵母宿主は、サッカロミセス・セレビシエ又はシゾサッカロミセス・ポンベである。
【0103】
この発明のペプチドは、任意の公知のキャリアー又はアジュバントと共に患者に投与することができる。適当なキャリアーには、カサガイヘモシアニン;チログロブリン;アルブミン例えばヒト血清アルブミン;破傷風菌毒素;ポリアミノ酸例えばポリ(D−リジン:D−グルタミン酸)などが含まれる。適当なアジュバントには、完全又は不完全フロイントアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ポリレシチン、乳化油及びミョウバンが含まれる。
【0104】
この発明のペプチドは、免疫刺激化合物と共に患者に投与することもできる。例えば、免疫原性ペプチドを、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)と共に投与することができ、該因子は、ペプチドのプロセッシング及び免疫系への提示のための樹状細胞への提示を増強することが知られたサイトカインである。他の適当な免疫刺激分子には、他のサイトカイン例えばIL−12、IL−2、IL−4、IL−5、IL−1アルファ及びIL−18;並びにハプテン例えばジニトロフェノールが含まれる。
【0105】
この発明のペプチドは又、患者由来の免疫系エフェクター細胞を少なくとも一の該ペプチドにエキソ・ビボで曝すことによって、患者に投与することもできる。ここで用いる場合、「免疫系エフェクター細胞」は、排除のために他の細胞を標的とする免疫系をプライムし、又は標的とされた細胞の排除を達成する細胞(即ち、「キラー」細胞)である。免疫系エフェクター細胞には、樹状細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞及びマクロファージが含まれる。免疫系エフェクター細胞を得る方法及びかかる細胞のエキソ・ビボ処理のための方法は、当分野で公知であり、BLaese等、1995, Science 270:475-80;Kohn等、1995, Nature Medicine 1(10):1017-23;及びFerrari等、1992, Blood 80:1120-24(これらの全開示を参考として本明細書中に援用する)に記載されている。
【0106】
例えば、免疫系の細胞(又は、それらの混合物)を患者から取り出して、培養中に維持することができる。この免疫系エフェクター細胞は、適宜、培養において又は患者から取り出す際に、特定の細胞型について富化させることができる。これらの免疫系細胞を、次いで、免疫原性ペプチドで処理する。これらの細胞のこの発明のペプチドでの処理は、これらの細胞のこれらのペプチドへの曝露、又はこれらのペプチドをコードする核酸のこれらの細胞への導入を含む。この発明のペプチドに直接曝露した細胞については、イン・ビボ投与した場合に患者が寛容でいられる濃度より遥かに過剰の濃度を用いることができる。例えば、細胞を、この発明のペプチドの10マイクロモル溶液で処理することができ、又は、約5〜10mg/mlの好ましくは約0.1ng/ml〜5mg/mlの終濃度で、この発明のペプチドで処理することができる。
【0107】
免疫系エフェクター細胞は、一般に、この発明のペプチドを、培養中のペプチドへの直接的曝露に際して内在化させることができる。しかしながら、この発明のペプチドは、免疫系エフェクター細胞への取込みが増大されるように改変することができる。例えば、これらのペプチドを、投与する前に、以下に一層詳細に記載するように、リポソームにカプセル封入することができる。これらのカプセル封入されたペプチドは、リポソームの細胞膜への融合によって直接細胞内に送達される。この発明のペプチドのリポソーム中へのカプセル封入のための試薬及び技術は、当業者に周知であり、例えば、ProVectin(商標)Protein Delivery Reagent(Imgenex製)に含まれている。
【0108】
この発明のペプチドは又、細胞への取込みを増大させるように、該ペプチドを「タンパク質導入ドメイン」又は「PTD」として知られたリーダー配列と複合体化することによって改変することもできる。PTDは、この化合物の細胞への、「タンパク質導入」として知られた過程による取込みを指示する。Schwarze等、(1999), Science 285:1569-1572を参照されたい。PTDは、当分野で周知であり、任意の公知のPTD配列を含むことができ、該配列は、例えば、アルギニンリッチな配列例えば9〜11アルギニン残基のペプチドを、適宜、Guis等、(1999), Cancer Res.59:2577-2580(その全開示を参考として本明細書中に援用する)に記載されたように、1〜2個のリジン又はグルタミンと共に含む。好適なPTDは、11アルギニン残基の配列又はヒト免疫不全ウイルスTATタンパク質(SEQ ID NO:42)に由来するNH2末端の11アミノ酸タンパク質導入ドメインの配列である。他の適当なPTD配列には、他のアルギニンリッチな配列例えば9若しくは10アルギニン、又は少なくとも1つのリジン若しくはグルタミンと組み合わせた6以上のアルギニンが含まれる。かかるリーダー配列は、当分野で公知であり、例えば、Guis等(1999)(前出)を参照されたい。PTDは、この発明のペプチド上の、該ペプチドの免疫応答を誘出する能力を破壊しない何処にでも位置させることができるが、好ましくは、C末端に位置させる。
【0109】
この発明のペプチドとPTDを含む融合タンパク質を構築するためのキット及び方法は、当分野で公知であり;例えば、キイロショウジョウバエのアンテナペディアDNA結合ドメインに対応する「Penetratin(商標)」と呼ばれる16アミノ酸ペプチドを使用するTransVector(商標)システム(Q-BIOgene);及び1型単純ヘルペスウイルス由来の38kDaのVP22タンパク質を利用するVoyagerシステム(Invitrogen Life Technologies)がある。
【0110】
この発明のペプチドは又、細胞への取込みを増大させるように、該ペプチドを、例えばSrivastavaの米国特許第5,935,576号(HSPに非共有結合により結合されたタンパク質)又はProc.Natl.Acad.Sci.USA 94:13146-13151(HSPに共有結合されたペプチド)に記載されたように(これらの全開示を参考として本明細書中に援用する)、熱ショックタンパク質(HSP)と複合体化することによって改変することもできる。HSP配列とこの発明のペプチドを含む融合タンパク質を標準的技術に従って生成することもできる。
【0111】
この発明のペプチドをコードする核酸を、免疫系エフェクター細胞に、公知の方法により、例えば、上記のように、これらの細胞に発現ベクターをトランスフェクトし又は弱毒化ウイルス宿主をトランスフェクトすることによって導入することができる。この発明のペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターを構築するための技術は、上で議論した通りである。
【0112】
この発明の少なくとも一つのペプチドによる処理の後に、エキソ・ビボ処理した免疫系エフェクター細胞の一部を試験して、その細胞内の適当なレベルのペプチドの存在を確認することができ、残りの処理した細胞を患者に再導入することができる。処理した細胞は、非経口的方法(静脈内注入及び骨髄への直接注入を含む)によって患者に再導入することができる。処理した細胞を、好ましくは、塩溶液にて又は他の製薬上許容しうるキャリアーにて患者に再導入する。再導入すべき処理した細胞の数は、細胞集団の純度に依存するが、典型的な投与量は、患者の体重1kg当たり約105〜108の範囲である。再導入に利用できる細胞の数は、細胞をこの発明のペプチドで処理する前に培養において拡大させることにより増大させることができる。
【0113】
この発明は又、MHC制限された細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導するこの発明のペプチドを同定する方法をも提供する。例えば、末梢血液リンパ球(PBL)を得て、この発明の少なくとも一種のペプチドに曝すことができる。これらのペプチドの特異的な細胞傷害活性を誘導する能力は、刺激されたPBLを自家標識された(例えば、51Cr)標的抗原を内因的に合成する(又は、関心あるペプチドでパルスされた)標的細胞(例えば、HLAマッチしたマクロファージ、T細胞、繊維芽細胞又はBリンパ芽球)とインキュベートして、特異的標識の放出を測定することによって測定する。好ましくは、これらのPBLをこの発明のペプチドのプールに曝し、そこでは、各ペプチドは、約8〜20アミノ酸長であり、好ましくは、9〜12アミノ酸長である。細胞傷害性Tリンパ球活性を誘導するこの発明のペプチドを、これらのプールから選択することができる。
【0114】
細胞傷害性Tリンパ球応答を刺激するこの発明のペプチドが一度同定されれば、この応答のMHC制限エレメントを決定することができる。これは、刺激されたPBL(又は、その短期培養物)を、関心あるペプチド又は適当な対照でパルスしてある公知のHLA型の標識した標的細胞のパネルとインキュベートすることを含む。刺激されたPBLにより溶解された細胞のHLAアレルを溶解されない細胞と比較する。溶解した標的細胞に由来するHLAアレルは、該ペプチドに対する細胞傷害性Tリンパ球応答のためのMHC制限エレメントを表す。
【0115】
刺激されたPBLによる標的細胞の溶解は、自家標識標的細胞からの標識の放出を測定すること、又は酵素結合免疫スポット(「ELISPOT」)アッセイを利用することによって検出することができる。このELISPOT法は、当分野で周知であり、この方法を実施するためのキット及び試薬は、BD Biosciences Pharmingen(カリフォルニア、San Jose, 95131-1807)から市販されている。ELISPOTアッセイは、PBLからのサイトカイン放出を単一細胞レベルで検出することができ、サイトカイン産生細胞頻度の直接的測定を可能にする。
【0116】
簡単にいえば、ELISPOT法は、細胞培養皿又はウェルをサイトカイン捕獲抗体で例えば抗体γインターフェロン抗体でコートすることによって実施する。次いで、培養皿又はウェル上の空いているスポットを、非特異的な結合タンパク質でブロックする。PBLを刺激するのに用いられた選択的スプライスフォームを内因的に合成する標的細胞(例えば、腫瘍細胞)をこの培養皿又はウェルに加える。或は、標的細胞を関心あるペプチドでパルスすることができる。次いで、活性化されたPBLをこの培養皿又はウェルに加える。もし活性化されたPBLが標的細胞を特異的に溶解させたならば、それらのPBLはサイトカイン例えばγインターフェロンを分泌し、それは、最初に培養皿又はウェル上にコートされたサイトカイン捕獲抗体により捕獲される。次いで、γインターフェロンの異なるエピトープを認識した第二抗体を用いて、PBLにより分泌されてサイトカイン捕獲抗体により捕獲された任意のγインターフェロンの存在を検出する。この第二抗体は、検出可能な標識例えば蛍光標識又は放射性標識と結合体化することができる。MHC制限された細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導するこの発明のペプチドのELISPOT法による同定は、以下の実施例5に示す。
【0117】
この発明のペプチドを、当分野で公知の技術によって、ワクチン組成物とも呼ばれる医薬組成物に配合することができる。本発明の医薬組成物は、少なくとも無菌であって且つ発熱物質を含まないことを特徴とする。ここで用いる場合、「医薬配合物」は、ヒト及び獣医分野での利用のための配合物を包含する。本発明の医薬配合物は、少なくとも一のこの発明のペプチドを、溶液、懸濁液又は分散液を形成するための生理的に許容しうるキャリアー媒質と混合して含むことができる。好適な生理的に許容しうるキャリアー媒質は、水、緩衝された水、正常塩溶液、0.4%塩溶液、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などである。
【0118】
この発明の医薬組成物は又、慣用の製薬用賦形剤及び/又は添加剤を含むこともできる。適当な製薬用賦形剤には、安定剤、抗酸化剤、オスモル濃度調節剤、緩衝剤及びpH調節剤が含まれる。適当な添加剤には、生理的に適合性の緩衝剤(例えば、トロメタミンヒドロクロリド)、キレート化合物(例えば、DTPA又はDTPA−ビスアミド)の添加(例えば、0.01〜10モルパーセント)又はカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミド)又は、適宜、カルシウム若しくはナトリウム塩(例えば、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム)の添加(例えば、1〜50モルパーセント)が含まれる。この発明の医薬組成物は、液体形態での利用のためにパッケージ化することができ、又は凍結乾燥することができる。
【0119】
固体組成物に関しては、慣用の無毒性固体キャリアー(例えば、医薬等級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、シュークロース、炭酸マグネシウムなど)を利用することができる。
【0120】
この発明の医薬化合物を製造する方法は、当業者に公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 第17版、Mack Publishing Company, (1985) ペンシルベニア、Easton在に記載されており、その全開示を参考として本明細書中に援用する。
【0121】
例えば、経口投与のための固体医薬組成物は、上に列記した何れかのキャリアー及び賦形剤及び10〜95%の好ましくは25〜75%のこの発明の少なくとも一種のペプチドを含むことができる。エアゾール投与のための医薬組成物は、微粉形態の0.01〜20重量%の好ましくは1〜10重量%のこの発明の少なくとも一種のペプチドを界面活性剤及び噴射剤と共に含むことができる。適当な界面活性剤には、6〜22炭素原子を含む脂肪酸(例えば、カプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン酸又はオレイン酸)の脂肪族多価アルコール又はその環状無水物とのエステル又は部分エステル;及び混合エステル例えば混合した又は天然のグリセリドが含まれる。界面活性剤は、0.1〜20重量%の好ましくは0.25〜5重量%のエアゾール医薬組成物を含むことができる(残りは、噴射剤である)。キャリアーも又、所望であれば、含ませることができる(例えば、鼻腔内送達のためのレシチン)。
【0122】
この発明のペプチド又はこの発明の医薬組成物は、リポソームにカプセル封入することができる。リポソームは、免疫原性ペプチドの特定の組織例えばリンパ様組織への送達を助け且つこれらのペプチド又は組成物の血中半減期を増大させることもできる。この発明での利用に適したリポソームは、標準的小胞形成性脂質から形成され、該脂質には、通常、中性の又は負に帯電したリン脂質及びステロール例えばコレステロールが含まれる。脂質の選択は、一般に、所望のリポソームサイズ及び血流中のリポソームの半減期などの因子を考慮することにより導かれる。Szoka等、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467,1980;米国特許第4,235,871号、4,501,728号、4,837,028号及び5,019,369号に記載されたような(これらの全開示を参考として本明細書中に援用する)リポソームを製造するための様々な方法が知られている。好ましくは、この発明のペプチドは、リポソームの部分として、単独で又はリポソームに特定の細胞若しくは組織を標的とするようにさせることのできるリガンド分子と共に取り込まれる。リンパ様細胞において優勢なレセプターに結合するリガンド例えばCD45抗原に結合するモノクローナル抗体が好適である。
【0123】
本発明は又、この発明の選択的スプライスフォーム又はペプチドに対する抗体をも提供する。この発明の抗体は、正常タンパク質中に存在しないこの発明の選択的スプライスフォーム又はペプチドのエピトープに特異的に結合する。この抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体又は抗原に結合できる抗体断片であってよい。この発明の抗体は、キメラ、一本鎖及びヒト化抗体並びにFab断片及びFab発現ライブラリーの産物を包含する。由来した抗体の抗原に選択的に結合する幾つかの能力を保持している抗体断片例えばFab抗体断片は、当分野で周知の方法を利用して作成することができる。かかる方法は、一般に、米国特許第5,876,997号(その全開示を参考として本明細書中に援用する)に記載されている。
【0124】
この発明のポリクローナル抗体は、実質的に純粋なこの発明の選択的スプライスフォーム又はペプチドで宿主を免疫化することにより、当分野で周知の技術を利用して生成することができる。免疫化された宿主における抗体力価を、標準的技術例えば固定化したペプチドを用いる酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、経時的にモニターすることができる。所望であれば、これらの抗体分子を、宿主から(例えば、血液又は血清から)採取し又は単離して、更に、公知の技術例えばプロテインAクロマトグラフィーによって精製してIgG画分を得ることができる。
【0125】
免疫化後の適当な時点で、例えば特異的抗体力価が最高のときに、抗体産生細胞を宿主から得て、標準的技術によってモノクローナル抗体を製造することができる。該標準的技術は、例えば、Kohler及びMilstein(1975)Nature 256:495-497及びMishell, B.B.等、Selected Methods In Cellular Immunology, (Freeman WH,編) San Francisco, 1980に記載されたハイブリドーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor等(1983) Immunol.Today 4:72);EBVハイブリドーマ技術(Cole等(1985), Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., p.77-96);又はトリオーマ技術である。Current Protocols in Immunology (1994) Coligan等(編)John Wiley & Sons, Inc., New York, N.Y.も参照されたい。この段落中のすべての引用文献の開示をそのまま参考として本明細書中に援用する。
【0126】
この発明のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞は、ハイブリドーマ培養上清を関心あるポリペプチドに結合する抗体について例えば標準的ELISAアッセイを利用してスクリーニングすることによって検出することができる。或は、この発明の選択的スプライスフォーム又はペプチドに対するモノクローナル抗体を、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレーライブラリー)を関心あるペプチドでスクリーニングすることにより同定して単離することができる。ファージディスプレーライブラリーを生成してスクリーニングするためのキットは、市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System, カタログNo.27-9400-01;及びStratagene SurfZAP Phage Display Kit, カタログNo.240612)。更に、抗体ディスプレーライブラリーの生成及びスクリーニングに適した方法及び試薬は、例えば、米国特許第5,223,409号;PCT公開No.WO92/18619;PCT公開No.WO91/17271;PCT公開No.WO92/20791;PCT公開No.WO92/15679;PCT公開No.WO93/01288;PCT公開No.92/01047;PCT公開No.WO92/09690;PCT公開No.WO90/02809;Fuchs等(1991)Bio/Technology 9:1370-1372;Hay等(1992) Hum.Antibod.Hybridomas 3:81-85;Huse等(1989)Science 246:1275-1281;Griffiths等(1993)EMBO J.12:725-734(これらの全開示を参考として本明細書中に援用する)に見出すことができる。
【0127】
組換え抗体例えばキメラ及び/又はヒト化モノクローナル抗体は、この発明の範囲内にある。かかるキメラ及びヒト化(ヒト化キメラを含む)モノクローナル抗体は、当分野で公知の組換えDNA技術によって生成することができる。該技術は、米国特許第5,225,539号;PCT公開No.WO87/02671;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;PCT公開No.WO86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Better等(1988)Science 240:1041-1043;Liu等(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439-3443;Liu等(1987)J.Immunol.139:3521-3526;Sun等(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214-218;Nishimura等(1987)Cancer Res.47:999-1005;Wood等(1985)Nature 314:446-449;Shaw等(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553-1559;Morrison(1985)Science 229:1202-1207;Oi等(1986)Bio/Techniques 4:214;Jones等(1986)Nature 321:552-525;Verhoeyan等(1988)Science 239:1534;及びBeidler等(1988)J.Immunol.141:4053-4060に記載された方法を利用する(これらの全開示を参考として本明細書中に援用する)。
【0128】
本発明の抗体を利用して、この発明のペプチド又はそれらが由来した選択的スプライスフォームを、標準的技術例えばアフィニティークロマトグラフィー又は免疫沈降法を利用して単離することができる。その上、本発明の抗体を利用して、選択的スプライスフォームの豊富さ及び発現パターンを評価するために、選択的スプライスフォームを(例えば、細胞溶解物又は細胞上清中で)検出することができる。
【0129】
本発明の抗体を利用して、臨床試験手順の部分として、組織中のタンパク質レベルを診断のためにモニターして、例えば、所定の治療養生法の効率を測定することもできる。本発明の抗体を利用するタンパク質レベルの検出は、抗体を検出可能な物質に結合させることによって促進することができる。適当な検出可能な物質には、様々な酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ;アルカリホスファターゼ;β−ガラクトシダーゼ;及びアセチルコリンエステラーゼ) 補欠分子団複合体(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチン)、蛍光物質(例えば、ウンベリフェロン;フルオレセインイソチオシアネート;ローダミン;ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン;ダンシルクロリド;及びフィコエリトリン)及び発光物質(例えば、ルミノール)、生物発光物質(例えば、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリン)、及び放射性物質(例えば、125I、131I、35S又は3H)が含まれる。
【0130】
この発明の抗体は又、病んだ又は異常な細胞が該抗体の結合することのできるエピトープを有する選択的スプライスフォームを生成する病気を有する患者の治療又は予防処置に利用することもできる。この選択的スプライスフォームは、患者の正常細胞には実質的に存在しない。この発明の実施においては、有効量のこの発明の少なくとも一の抗体を患者に投与する。好ましくは、この発明の選択的スプライスフォーム又はペプチドに特異的な少なくとも一のモノクローナル抗体を患者に投与する。
【0131】
本発明の抗体の「有効量」は、患者における少なくとも一の症状を改善するか又は患者における病んだ若しくは異常な細胞の数の減少を引き起こす量である。臨床症状の改善は、通常の知識を有する医師には容易に明らかとなろう。患者の身体中の病んだ又は異常な細胞の数も又、容易に測定することができる。病んだ又は異常な細胞の数を測定するのに適した技術には、直接測定法(例えば、血液又は骨髄中の白血病細胞の濃度を計算する)又は組織塊の大きさからの見積りが含まれる。ここで用いる場合、「組織塊」は、患者の身体内の任意の病んだ又は異常な細胞の局所的集合(例えば、腫瘍)である。組織塊の大きさは、直接的視覚的観察により又は診断用イメージング法例えばX線、磁気共鳴イメージング、超音波、及びシンチグラフィーによって確認することができる。組織塊の大きさを確認するために利用される診断用イメージング法は、当分野で公知のように、コントラスト剤を用いて使用することもできるし該剤を用いなくてもよい。組織塊の大きさは又、物理的手段例えば組織塊の触診又は測定器具例えばカリパスを用いる組織塊の測定によっても確認することができる。本発明の抗体の有効量は、例えば、体重1kg当たり、約0.1〜100mg、好ましくは約50〜100mg、一層好ましくは約10〜20mgであってよい。
【0132】
この発明の抗体は、好ましくは、非経口手段例えば血管内(例えば、動脈内又は静脈内)への注射又は点滴によって患者に投与する。
【実施例】
【0133】
下記の実施例は、説明のために与えるものであり、制限するためのものではない。
【0134】
(実施例1−VEGF免疫原性ペプチドの同定)
血管内皮成長因子(VEGF)タンパク質の選択的スプライスフォームをHC2 20d/c細胞において同定した。該細胞は、EGFレセプターEGFRvIIIの構成的活性型をトランスフェクトしたNIH−3T3細胞である。HC2 20d2/c細胞を、標準的技術によって培養した。HC2 20d2/c細胞からの全RNAを単離して、その後、ポリA+RNAを単離した。このポリA+RNAを、オリゴdTプライマーを利用する第一鎖cDNA合成のためのテンプレートとして利用した。次いで、PCRを、VEGFイソ型からのプライマーを用いて行なった。このPCRに用いたプライマーの配列を以下に与える。これらのプライマーは、5’から3’の向きで表してあり、ヌクレオチド番号は、各プライマーの左に列記した正常cDNA配列に対応している(入手可能な場合)。
【0135】
マウスVEGF
セット1
79-99 CCG AAA CCA TGA ACT TTC TGC (SEQ ID NO:43)
936-916 CTT GGC GAT TTA GCA GCA GAT (SEQ ID NO:44)
セット2
117-137 ACC CTG GCT TTA CTG CTG TAC (SEQ ID NO:45)
909-888 AAA TGG CGA ATC CAG TCC CAC (SEQ ID NO:46)
セット3
126-146 TTA CTG CTG TAC CTC CAC CAT (SEQ ID NO:47)
815-795 GAA GGA TCT CCT CTT CCT TCA (SEQ ID NO:48)
【0136】
マウスVEGFB:
セット1
119-139 CTG CTT GTT GCA CTG CTG CAG (SEQ ID NO:49)
778-758 TCT GGA AAG CAG CTT GTC ACT (SEQ ID NO:50)
セット2
155-175 GCC CCT GTG TCC CAG TTT GAT (SEQ ID NO:51)
739-719 TAC AGG TGA CTG GGT TGA GCT (SEQ ID NO:52)
セット3
182-202 AGC CAC CAG AAG AAA GTG GTG (SEQ ID NO:53)
733-713 TGT CTG GGT TGA GCT CTA AGC (SEQ ID NO:54)
【0137】
マウスVEGFC:
セット1
151-171 AAC ATG CAC TTG CTG TGC TTC (SEQ ID NO:55)
1559-1539 CTC TCC CGC AGT AAT CCA CAT (SEQ ID NO:56)
セット2
292-312 GAG GTC AAG GCT TTT GAA GGC (SEQ ID NO:57)
1521-1501 CTT GGG CCT CTG TTA CCA TGT (SEQ ID NO:58)
セット3
301-321 GCT TTT GAA GGC AAA GAC CTG (SEQ ID NO:59)
1509-1489 TTA CCA TGT GGT CCC ACA GAG (SEQ ID NO:60)
【0138】
マウスVEGFD:
セット1
15-35 GGA GAA TGC CTT TTG CAA CAC (SEQ ID NO:61)
1343-1323 GCC ATT GCA TGG AAA TGT GGC (SEQ ID NO:62)
セット2
57-77 CAA CTG CTT AGT CAT CGG TAG (SEQ ID NO:63)
1234-1214 ACT TGA CAA AGC AGT GAG CTG (SEQ ID NO:64)
セット3
96-116 ATG TAT GGA GAA TGG GGA ATG (SEQ ID NO:65)
1178-1158 GTT GAA TCA AGG GTT CTC CTG (SEQ ID NO:66)
【0139】
マウスPIGF:
セット1
TCT CCT CTG GTA TCA GCG TCT (SEQ ID NO:67)
GCA CTG AAT TCC TGA GTG TCT (SEQ ID NO:68)
セット2
TGG TGA TTG TGC CTT GAA GGA (SEQ ID NO:69)
763-743 TCC ATG CCC CTT ATC ATG GAG (SEQ ID NO:70)
セット3
88-108 TGA AGG ACC TTG GCT CTG GAT (SEQ ID NO:71)
AAT AGA GGG TAG GTA CCA GCA (SEQ ID NO:72)
【0140】
PCRを、各プライマーセット1を用いて行なった。もしPCRのこのラウンドの後で明瞭なバンドが見られたならば、そのバンドを切り出して、そのPCR生成物を5’プライマーを用いて配列決定した。バンドが明瞭でないならば、それを切り出して、PCR生成物を精製し、その精製したPCR生成物の10%を、プライマーセット2を用いる更なる増幅に用いた。
【0141】
或は、もし多数の不明瞭なバンドがあるならば、反応チューブからのPCR生成物を、市販のキット(Qiagen)を用いて精製し、精製した生成物の10%を、プライマーセット2を用いるPCRの他のラウンドに利用した。もし未だバンドが不明瞭であれば、それを切り出して、そのPCR生成物を精製し、精製した生成物の10%を、プライマーセット3を用いる更なる増幅に用いる。第二又は第三の増幅ラウンドからの明瞭なバンドを、適当な5’プライマーを利用して配列決定する。配列を公知の遺伝子配列と比較して選択的スプライスフォームを同定した。
【0142】
一つの選択的スプライスフォームがVEGF及びVEGFBにおいて同定され、2つがVEGFDにおいて見出された(VEGFD#1;SEQ ID NO:77の同定については、図1を参照されたい)。これらの配列のアミノ酸への翻訳は、VEGF選択的スプライスフォームにユニークな4つのVEGFペプチドを与えた(以後、「VEGFペプチド」という)。これらの選択的スプライシングを受けたVEGFmRNAの部分コード配列、及びmRNA部分配列によりコードされるVEGFペプチドは、下記の通りである。
【0143】
VEGF Alt.スプライス#1
【化2】

【0144】
SEQ ID NO:73は、通常は離れている2つの配列を一緒にして、ヌクレオチド505と637の連結を生じるように選択的スプライシングを受けたmRNA(SEQ ID NO:74)によりコードされたペプチドを表している。mRNAのリーディングフレームは、保存されており、新しいコドン(リジン残基をコードするAAA)もスプライス部位に形成されている。
【0145】
VEGFB Alt.スプライス#1
【化3】

【0146】
SEQ ID NO:75は、ヌクレオチド300と678の連結を生じるように選択的スプライシングを受けたmRNA(SEQ ID NO:76)によりコードされたペプチドを表している。このスプライス部位は、ネイティブなバリンをこの位置に再生しているが、その後のコドンは、正常なVEGFBのネイティブなリーディングフレームとはイン・フレームではなく、ヌクレオチド679より先からは新規なアミノ酸配列が生成される。
【0147】
VEGFD Alt.スプライス#1
【化4】

【0148】
SEQ ID NO:77は、ヌクレオチド185と752の連結を生じるように選択的スプライシングを受けたmRNA(SEQ ID NO:78)によりコードされたペプチドを表している。このスプライス部位は、ヌクレオチド752でコドンをVEGFDのネイティブなリーディングフレームに対してシフトさせており、この点より先からは新規なアミノ酸配列が生成される。
【0149】
VEGFD Alt.スプライス#2
【化5】

【0150】
SEQ ID NO:79は、ヌクレオチド238と1047の連結を生じるように選択的スプライシングを受けたmRNA(SEQ ID NO:80)によりコードされたペプチドを表している。このスプライス部位は、ヌクレオチド1047でコドンをVEGFDのネイティブなリーディングフレームに対してシフトさせており、この点より先からは新規なアミノ酸配列が生成される。
【0151】
VEGFの選択的スプライスフォームは、腫瘍に特異的であって正常組織では見出されないということは確認した。HC2 20d2/c細胞モデルについて、NIH−3T3細胞からのmRNAを、上記の3重にネストしたプライマーのセットを用いる同じPCR条件にかけた。NIH−3T3細胞は、それらからHC2 20d2/c細胞株が導かれた細胞である。マウスVEGF、VEGFB又はVEGFDについては、バンドが検出されないか又は正常にスプライシングを受けたmRNAしか検出されなかった。典型的な結果を、図1Bに示したが、NIH−3T3細胞においては、正常にスプライシングを受けたVEGFDmRNAのみが存在した。
【0152】
MMTV−neuマウス腫瘍モデル(下記の実施例3参照)について、正常細胞(繊維芽細胞)を以下のように外植片培養によって単離した。このマウスから皮膚を切り出して、トリプシン処理してから、5%ウシ胎児血清を含むDMEMを培養培地として用いる細胞培養中に置いた。繊維芽細胞をこの切り出した皮膚から移動させて、培養皿に付着させ、そこでそれらを5〜7回の継代培養で増殖させた。この培養繊維芽細胞からのmRNAを採取して、MMTVマウス腫瘍細胞から単離したmRNAと同じPCR条件にかけた(上記の3重にネストしたPCRプライマーセットを使用)。正常なMMTV−neuマウス細胞からのmRNAのPCR増幅は、VEGFBからの選択的スプライスフォームのバンドを示さなかったが、図1Bに示したものと同様の無傷のVEGFDのバンドを示した(正常にスプライシングを受けたmRNAを表す)。
【0153】
上に列記したVEGFペプチドを、慣用の方法によって合成した。正常VEGFファミリーメンバーの潜在的免疫認識を回避するために、これらのVEGFペプチドは、対応する正常タンパク質に由来する6以下の連続するアミノ酸を含んだ。ペプチドホモダイマーを、SEQ ID NO:73のC末端にシステイン残基を加えてRTKPEKCDKPRRC(SEQ ID NO:81)を与えることにより作成した。二量体形成を、SEQ ID NO:81の加えたC末端システイン残基の制御された酸化により達成した。
【0154】
(実施例2−VEGFペプチドでの処理による腫瘍の緩解)
これらのVEGFペプチド及びSEQ ID NO:85のホモダイマーを、マウス腫瘍モデルにおいて抗腫瘍免疫応答を誘出するそれらの能力について評価した。全部で112匹の同系マウスを各14匹の8つの処理グループに分けて、HC2 20d2/c腫瘍細胞を注射した。注射の4日後に、第一から第五の処理グループには、左鼠蹊部に、アジュバントとしての45ngのマウスGM−CSFと混合した100μlのPBS中に希釈したSEQ ID NO:73、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:77、SEQ ID NO:79、又はSEQ ID NO:81のダイマー100μgをワクチン接種した。リン酸緩衝塩溶液(PBS)の総容積は、150μlであり、キャリアーとしての2mg/mlのマウス血清アルブミンを含んだ。第六の処理グループには、4種のVEGFペプチド全部とSEQ ID NO:81のホモダイマー(各60μg)の組合せ(全体で200μlの、45ngのマウスGM−CSFと2mg/mlのマウス血清アルブミンを含むPBS中)を用いて上記のようにワクチン接種した。第七の処理グループには、EGFRvIII(SEQ ID NO:82)と呼ばれる変異型上皮成長因子レセプター(EGFR)タンパク質から誘導したペプチド100μgを用いて上記のようにワクチン接種した。このワクチン組成物は又、45ngのマウスGM−CSF及び2mg/mlのマウス血清アルブミンをも含んだ。EGFRvIIIの突然変異は、EGFR遺伝子におけるゲノム再配列の結果であり、EGFRvIIIペプチド(SEQ ID NO:82)は、変異型レセプターを発現する腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導することが報告されている。第八の処理グループは、GM−CSF及び2mg/mlのマウス血清アルブミン(ペプチドを含まないPBS中)を用いてワクチン接種した(対照用)。その後3日間にわたって、すべての処理グループは、毎日一回、45ngのGM−CSFの注射を、最初のワクチン接種領域に受けた。
【0155】
GM−CSFのみを受けたマウスは、ワクチン接種の5日後には概して腫瘍の発達を示し、その後、中位のレベルの緩解を示した(図2「HC2のみ」)。この緩解は、HC2 20d2/c腫瘍細胞で発現された変異型EGFRvIIIタンパク質の自然な拒絶のためであるというのが、最もありそうなことである。EGFRvIIIペプチドを受けたマウスも又、凡そ5日にわたって腫瘍の発達を示したが、この発達は、対照用マウスほど劇的ではなく、その後、明瞭な緩解を示した(図2、「APLEEK」)。EGFRvIIIワクチン接種について観察された緩解パターンは、このペプチドを用いて得られた以前の結果と類似している(Moscatello, D.K., Cancer Research 57:1419-1424, 1997)。
【0156】
図2は、4種類の単量体のVEGFペプチド全部とSEQ ID NO:81のホモダイマーが腫瘍の緩解をある程度誘導し、それがワクチン接種後12日に最も顕著であることを示している。これらのペプチドの内SEQ ID NO:75とSEQ ID NO:81の2種(図2、「VVKQL」及び「HGPVK」)については、緩解が、ワクチン接種後凡そ20日未満で見られているが、その後は発達している。追加のシステインを有しないで合成されたSEQ ID NO:73のペプチドをワクチン接種されたマウス(図2、「RTKPEK no C」)は、EGFRvIIIペプチドについて見られたのと類似の緩解パターンを示した。SEQ ID NO:81ホモダイマー又はSEQ ID NO:79ペプチドをワクチン接種されたマウス(図2、「PTKPEK w/C」及び「LERSE」)は、研究の終了までに腫瘍容積の概して強力な減少を示した(SEQ ID NO:81ホモダイマーで処理したグループは、最初、腫瘍の発達を示したが)。4種類のVEGFペプチド全部とSEQ ID NO:81のホモダイマーの組合せをワクチン接種されたマウスは、腫瘍の発達を示さず、すべての処理グループの内で最大の腫瘍容積の減少を示した(図2、「Combo 5」)。
【0157】
これらの結果は、VEGFファミリースプライスフォームベースのペプチドを含むワクチン組成物の投与が、有効な抗腫瘍免疫応答を誘出して腫瘍の緩解を引き起こすことを示している。その上、VEGFペプチドの多量体又は混合物の投与は、抗腫瘍効果を更に増強することができる。
【0158】
(実施例3−VEGFペプチドを用いた治療による乳癌発生の遅延)
VEGFペプチドのMMTV−neuマウスにおける腫瘍の発生を防止し又は遅延させる能力を評価した。MMTV−neuマウスは、ヒトのneuオンコジーンの発癌型を、このオンコジーンの乳房組織での発現を駆動するMMTVプロモーターの制御下に有するトランスジェニックマウスである。100%の雌のMMTV−neuマウスが、生後5〜6ヶ月以内に多数の乳癌を発生し、これは、発達して最終的にこの動物を死に至らしめる。VEGFファミリーメンバーの選択的スプライスフォームに関するMMTV−neuマウスの乳癌の分析は、VEGFペプチドSEQ ID NO:73及びSEQ ID NO:77を含む選択的スプライスフォームを示した。
【0159】
9匹の同腹子の雌MMTV−neuマウスを実験に用いた。3匹のマウスよりなる一の処理グループには、6週齢で、各60μgのSEQ ID NO:73、SEQ ID NO:77及びSEQ ID NO:81ホモダイマーの組合せ(45ngのGM−CSFをアジュバントとして含む)を最初に接種した。次いで、これらのマウスを、5、6及び7月齢で、同じ組成物をワクチン接種した。3匹のマウスよりなる対照用グループは、45ngのアジュバントとしてのGM−CSFのみを受けた。両グループのマウスに、更に3日間にわたって、最初の注射部位に45ngのGM−CSFを注射した。ワクチン接種の同サイクルを、5,6及び7月齢において反復した。3匹の雌よりなる第二の対照用グループは、処理を受けなかった。
【0160】
結果を図3に与えてあるが、同図は、未処理又はGM−CSFのみを受けたマウスが生後158日までに腫瘍を発達させたことを示している。両対照用グループのすべての動物は、生後192日までに腫瘍を有した(図3A、「GM−CSF」及び「未処理」)。対照的に、処理グループ内のマウスは、192日齢まで腫瘍を発生しておらず、処理グループ内のすべての動物は、生後226日まで腫瘍を有しなかった(図3A、「Combo」)。動物当たりの総腫瘍容積も又、処理グループと対照用グループの間での全体的腫瘍量における差異を示した。240日までに、未処理マウスの2匹とGM−CSFのみのマウス一匹は、3000mm3を超える総腫瘍容積に達し、これらの動物を犠牲にせざるを得なかった(図3B、「GM−CSF」及び「未処理」)。しかしながら、処理グループにおいては、240日目における最大腫瘍量は、1200mm3未満であった。
従って、VEGFペプチドを含む組成物によるワクチン接種は、ヒト乳癌のマウスモデルにおいて腫瘍形成の開始を遅延させ且つ有意に減少した腫瘍量を生じた。
【0161】
(実施例4−VEGFペプチドの組合せをワクチン接種されたMMTV−Neuマウスにおける抗体応答)
「ドットブロット」分析を行なって、VEGFペプチドの組合せを用いてワクチン接種したMMTV−neuマウスにおいて抗体応答が生じるかどうかを評価した。3匹の雌MMTVマウスに、各60μgのSEQ ID NO:73、SEQ ID NO:77及びSEQ ID NO:81ホモダイマーの組合せ(45ngのアジュバントとしてのGM−CSFを含む)を実施例3のように注射した(COMBO)。3匹の未処理の雌MMTV−neuマウス(未処理)及び3匹の45ngのGM−CSFのみを注射された雌MMTV−neuマウス(GM−CSF)を対照として用いた。ドットブロットを、1μgのBSA、SEQ ID NO:82(「EGFRvIII」)、SEQ ID NO:73(「R−pep」)、SEQ ID NO:81ホモダイマー(「RC−pep」)、SEQ ID NO:81(「H−pep」)、SEQ ID NO:79(「L−pep」)又はSEQ ID NO:75(「V−pep」)を、ニトロセルロース膜上に、別々にスポットすることにより調製した。各実験用及び対照用動物について一枚の膜を調製した。次いで、これらの膜を、適当な対照又は実験用動物から最後の注射の2ヶ月後に得て1:100に希釈した血清とインキュベートした。次いで、これらの膜を洗って、125I抗マウス二次抗体とインキュベートし、再び洗って、X線フィルムに露出した。
【0162】
未処理の動物(未処理;図4A)又はGM−CSFのみを受けた動物(GM−CSF;図4B)は、試験した何れのVEGF又は対照用ペプチドに対する抗体応答も示さなかった。対照的に、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:77及びSEQ ID NO:85で免疫化された3匹の動物(COMBO;図4C)はすべて、SEQ ID NO:77に対する強い抗体反応を示した。加えて、これらの動物の2匹は、SEQ ID NO:73及びSEQ ID NO:81に対する抗体応答を示した。しかしながら、免疫化グループからの何れの動物も、BSA対照又は3つの対照用ペプチド(EGFRvIII、L−pep及びV−pep)(これらは、動物に接種していない)に対する抗体反応を示さなかった。
【0163】
(実施例5−VEGFペプチドによる細胞傷害性Tリンパ球活性の生成)
ELISPOTアッセイを行なって、細胞傷害性Tリンパ球活性が、VEGFファミリーペプチドによって誘出されることを下記のように示した。HC2 20d2/c腫瘍細胞を接種してから、SEQ ID NO:73(「R−pep」)、SEQ ID NO:75(「V−pep」)又はSEQ ID NO:82(「EGFRvIII」)とGM−CSF(腫瘍の緩解を示した)で免疫化したマウスから単離し、又はSEQ ID NO:75(「V−pep」)及びGM−CSF(緩解を示さなかった)を接種したマウスから脾臓細胞を単離した(アッセイで評価した)。GM−CSFのみを接種されたマウス由来の脾臓細胞を、対照(「対照」)として用いた。10μg/mlの免疫化ペプチドで、又はマウス血清アルブミン(GM−CSFのみで処理した動物からの脾臓細胞用)でパルスされたHC2 20d2/c腫瘍細胞を、それぞれ、治療及び対照用脾臓細胞についての標的細胞として利用した。未処理のHC2 20d2/c腫瘍細胞を負の対照標的細胞として利用した。
【0164】
これらの脾臓細胞を、三連で、様々な割合(10:1〜2:1)で標的細胞とインキュベートし、溶解事象を、抗γインターフェロン抗体をサイトカイン捕獲抗体として利用するELISPOTを用いて同定した。106細胞当たりの特異的スポットを、未処理標的細胞からの溶解事象をバックグラウンドとして利用し、その後、線形緩解分析を行なって定量した。結果を図5に示した。
【0165】
図5は、SEQ ID NO:73(「R−pep」)又はSEQ ID NO:75(「V−pep」)で免疫化して腫瘍の緩解を経験したマウスが、標的細胞をワクチン接種用ペプチドでパルスしたときに強いCTL応答を有したことを示している。これらの応答は、SEQ ID NO:82(「EGFRvIII」)で処理したマウス(腫瘍緩解を受けた)について見られたものより強かった。対照的に、GM−CSFのみで処理したマウス又はSEQ ID NO:73(「V−pep」)をワクチン接種したマウスに由来する脾臓細胞(これらの何れも、腫瘍緩解を受けてない)は、乏しいCTL応答を示した。
【0166】
(実施例6−VEGFペプチドの混合物による細胞傷害性Tリンパ球活性の生成)
ELISPOTアッセイを行なって、下記のように、細胞傷害性Tリンパ球活性が、VEGFファミリーペプチドによって誘出されることを示す。HC2 20d2/c腫瘍細胞を接種してから各60μgのSEQ ID NO:73、SEQ ID NO:77及びSEQ ID NO:81ホモダイマーの組合せ及び45ngのGM−CSF(アジュバント)で又はSEQ ID NO:82(「EGFRvIII」)及び45ngのGM−CSFで免疫化したマウスから脾臓細胞を単離する。GM−CSFのみを接種されたマウスを対照(「対照」)として用いる。10μg/mlの免疫化用ペプチド、マウス血清アルブミンでパルスしたHC2 20d2/c腫瘍細胞(陽性対照)又は未処理のHC2 20d2/c腫瘍細胞(負の対照)を標的細胞として用いる。これらの脾臓細胞を、様々な割合(10:1〜2:1)で、標的細胞と、三連で、インキュベートして、溶解事象を、抗γインターフェロン抗体をサイトカイン捕獲抗体として利用するELISPOTアッセイにより同定する。106細胞当たりの特異的スポットを、未処理標的細胞からの溶解事象をバックグラウンドとして利用してから線形緩解分析を行なって定量する。
【0167】
この実験を、次の、各60μgの示したVEGFペプチドの組合せを用いて反復する:
1)SEQ ID NO:73及びSEQ ID NO:77;
2)SEQ ID NO:77及びSEQ ID NO:81;及び
3)SEQ ID NO:73及びSEQ ID NO:81。
【0168】
(実施例7−ペプチド、多量体ペプチド及びペプチド混合物による腫瘍の予防及び緩解)
乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、皮膚癌、リンパ腫、膀胱癌及び膵臓癌に関係する選択的スプライスフォームに由来するこの発明のペプチドを、実験用マウスモデルにおいて、腫瘍を予防し又は腫瘍の緩解を誘導するそれらの能力について試験する。
【0169】
(癌のマウスモデル)
これらの実験で用いるマウスモデルは、内因的に該当する癌を発生し又は該当する腫瘍由来の細胞株の成長及び腫瘍形成性を支持するものである。乳癌については、ヘテロ接合のpten遺伝子の欠損を有するマウス又はMMTV−neuトランスジェニックマウスを用い;卵巣癌については、BRCA1又はBRCA2にヘテロ接合の突然変異を有するマウスを用い;前立腺癌については、SV40初期遺伝子をプロバシンプロモーターの制御下に有するトランスジェニックマウスを用い;リンパ腫については、ホモ接合のp53又はp19ARF遺伝子の欠損を有するマウスを用い;膀胱癌については、N−ブチル−N−(−4−ヒドロキシブチル)ニトロサミン(BBN)を給餌したマウスを用いる。肺癌及び膀胱癌のマウスモデルは、それぞれ、ルイス肺癌細胞株又はPANC02マウス膵臓腺癌細胞株に由来する細胞を適当なマウス系統に導入することによって得ることができる。皮膚癌のマウスモデルは、DMBA(7,12−ジメチルベンズ[α]アントラセン)の局所的塗布によってマウスに腫瘍を誘導することにより得ることができる。
【0170】
(腫瘍の予防)
上記の癌と関係するこの発明のペプチドは、上記のように同定されて合成される。
【0171】
腫瘍が腫瘍形成性化合物により誘導され又は移植された腫瘍細胞から生成されるマウスモデルについては、これらのマウスを最初に約50〜500μgのペプチドに45ngのGM−CSFを混合したものをワクチン接種する。次いで、これらのマウスに、同じ組成物を2〜4週の間隔で2回以上注射する。GM−CSFのみを受けたマウスを、対照として用いる。3回目の注射の後に、マウスに腫瘍細胞を接種し又は当該宿主において高い発生率(即ち、75〜90%以上)で腫瘍を生成することが知られた量の腫瘍形成性化合物に曝す。次いで、これらのマウスを、最初の腫瘍の提示の時点につきモニターし、その後、腫瘍の大きさを一日おきに測定する。
【0172】
自発的に腫瘍を発生するマウスモデルについては、45ngのGM−CSFを混合した約50〜500μgのペプチドにより最初のワクチン接種を、免疫系がマウスにおいて発生する時点である6週齢で行ない、その後、2〜4週間隔で行なう。GM−CSFのみを受けたマウスを対照として用いる。次いで、これらのマウスを、腫瘍の最初の提示の時点につきモニターし、その後、腫瘍の大きさを一日おきに測定する。
【0173】
(腫瘍の緩解)
上記の癌と関係するこの発明のペプチドは、上記のように同定されて合成される。
【0174】
腫瘍が腫瘍形成性化合物により誘導され又は移植された腫瘍細胞から生成されるマウスモデルについては、これらのマウスに最初に腫瘍細胞を接種するか又は腫瘍形成性化合物に曝す。腫瘍が発生すると予想される時点より前の約4日間に、これらのマウスを約50〜500μgのペプチドに45ngのGM−CSFを混合したものをワクチン接種し、同じ組成物を2〜4週の間隔で2回以上注射する。GM−CSFのみを受けたマウスを、対照として用いる。これらのマウスを、最初の腫瘍の提示の時点につきモニターし、その後、腫瘍の大きさを一日おきに測定する。
【0175】
自発的に腫瘍を発生するマウスモデルについては、45ngのGM−CSFを混合した約50〜500μgのペプチドにより最初のワクチン接種を、免疫系がマウスにおいて発生する時点である6週齢で行ない、その後、2〜4週間隔で行なう。GM−CSFのみを受けたマウスを対照として用いる。これらのマウスを、腫瘍の最初の提示の時点につきモニターし、その後、腫瘍の大きさを一日おきに測定する。
【0176】
(多量体ペプチドによる腫瘍の予防及び緩解)
癌のマウスモデルにおける腫瘍の予防及び緩解を示すための上記の実験を、特定の癌に関係するこの発明の二量体、三量体、四量体、五量体又は六量体のペプチドを用いて反復する。
【0177】
(ペプチド混合物による腫瘍の予防及び緩解)
癌のマウスモデルにおける腫瘍の予防及び緩解を示すための上記の実験を、特定の癌に関係するこの発明の2,3,4,5又は6種類のペプチドの混合物を用いて反復する。
【0178】
(実施例8−ヒトの選択的スプライスフォームを発現する同系マウス腫瘍細胞により形成される腫瘍の予防及び緩解)
表1に記載のような、癌と関連するヒト起源のこの発明のペプチドは、上記のように同定されて合成される。ヒトの選択的スプライスフォーム配列の幾つか又は全部を発現することのできる発現ベクター(これらから、ワクチン接種用のペプチドが誘導される)を、標準的技術によって構築する。
【0179】
(同系マウスの腫瘍モデル)
NIH−3T3細胞株を、SV40T抗原でトランスフェクトして腫瘍形成性とする。或は、NIH−3T3細胞株を、細胞培養中で30〜40継代培養して連続的に維持することによって腫瘍形成性にし、自発的に生じる腫瘍形成性細胞を単離して増殖させる。
【0180】
これらの腫瘍形成性NIH−3T3細胞に、上記のプラスミド発現ベクターをトランスフェクトして、ヒトの選択的スプライスフォーム配列を発現する細胞を標準的技術により選択して増殖させる。ヒトの選択的スプライスフォーム配列を発現する腫瘍形成性NIH−3T3細胞をNIHスイスマウスに注射して、腫瘍を形成させる。これらの腫瘍を何匹かの動物から切り出して、細胞培養にて増殖させる(この細胞培養において、細胞は、動物において腫瘍を形成する能力を維持する)。これらのヒト配列の発現を確認する。次いで、これらの細胞を、その後の腫瘍予防/緩解実験に用いる。
【0181】
(腫瘍の予防)
NIHスイスマウスに、最初に、上記のヒト起源のこの発明の少なくとも一のペプチド約50〜500μgを45ngのGM−CSFと混合したものをワクチン接種する。次いで、これらのマウスに、同じ組成物を2回以上、2〜4週の間隔で注射する。GM−CSFのみを受けたマウスを対照として用いる。3回目の注射の後に、これらのマウスに、上記のように、ヒトの選択的スプライスフォーム配列を発現する同系腫瘍細胞を接種する。次いで、これらのマウスを、最初の腫瘍の提示の時点についてモニターし、その後、腫瘍の大きさを一日おきに測定する。
【0182】
(腫瘍の緩解)
NIHスイスマウスに、最初に、上記のように、ヒトの選択的スプライスフォームを発現している同系の腫瘍細胞を接種する。接種後4日目に、これらのマウスに、上記のヒト起源のこの発明の少なくとも一のペプチド約50〜500μgを45ngのGM−CSFと混合したものをワクチン接種する。これらのマウスに、同じ組成物を2〜4週の間隔で2回以上注射する。GM−CSFのみを受けたマウスを対照として用いる。これらのマウスを、最初の腫瘍の提示の時点についてモニターし、その後、腫瘍の大きさを一日おきに測定する。
【0183】
ここで言及したすべての文献を、そのまま参考として援用する。本発明は、好適具体例及び様々な図と共に説明したが、本発明の同じ機能を実施するために、他の類似の具体例を利用し又は記載した具体例に対する改変及び追加を本発明から離れることなく為しうるということは理解されるべきである。それ故、本発明は、如何なる単一の具体例にも限定されるべきでなく、添付の請求の範囲の記載に従って、広さ及び範囲を解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的スプライスフォームにユニークなアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項2】
4〜50アミノ酸長である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
7〜15アミノ酸長である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
8又は9アミノ酸長である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項5】
7つ以下の隣接するアミノ酸よりなる少なくとも一つの正常アミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
6,5,4,3,2又は1つの隣接するアミノ酸よりなる少なくとも一つの正常アミノ酸配列を含む、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
5又は6つの隣接するアミノ酸よりなる少なくとも一つの正常アミノ酸配列を含む、請求項5に記載のペプチド。
【請求項8】
スプライス部位、7つ以下の隣接するアミノ酸よりなる第一の正常アミノ酸配列及び7つ以下の隣接するアミノ酸よりなる第二の正常アミノ酸配列を含み、第一及び第二の正常アミノ酸配列が選択的スプライス部位に隣接している、請求項5に記載のペプチド。
【請求項9】
第一の正常アミノ酸配列が、6,5,4,3,2又は1つの隣接するアミノ酸を有し且つ第二の正常アミノ酸配列が、6,5,4,3,2又は1つの隣接するアミノ酸を有する、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
第一及び第二の正常アミノ酸配列が、各々、3又は4つの隣接するアミノ酸を有する、請求項8に記載のペプチド。
【請求項11】
ペプチドを多価プラットフォーム又は他のタンパク質に結合させるための少なくとも一の改変を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項12】
改変が、ペプチドのC又はN末端に追加された更なるアミノ酸を含む、請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
ペプチドのC又はN末端に追加されたアミノ酸を、チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸及びアスパラギン酸よりなる群から選択する、請求項12に記載のペプチド。
【請求項14】
ペプチドのC又はN末端に追加されたアミノ酸が、システインである、請求項13に記載のペプチド。
【請求項15】
改変を、末端NH2のアシル化;チオグリコール酸のアミド化;末端カルボキシのアミド化;及びビオチン化によるカップリング部位の導入よりなる群から選択する、請求項11に記載のペプチド。
【請求項16】
少なくとも一つのD−アミノ酸を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項17】
SEQ ID NO:73;SEQ ID NO:75;SEQ ID NO:77;及びSEQ ID NO:79よりなる群から選択する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項18】
請求項1に記載の2つ以上のペプチドを含む多量体。
【請求項19】
ホモ多量体である、請求項18に記載の多量体。
【請求項20】
二量体;三量体;四量体;五量体;及び六量体よりなる群から選択する、請求項19に記載の多量体。
【請求項21】
二量体である、請求項20に記載の多量体。
【請求項22】
SEQ ID NO:81の2つのペプチドを含む、請求項21に記載の多量体。
【請求項23】
ヘテロ多量体である、請求項18に記載の多量体。
【請求項24】
二量体;三量体;四量体;五量体;及び六量体よりなる群から選択する、請求項23に記載の多量体。
【請求項25】
病んだ又は異常な細胞が少なくとも一の選択的スプライスフォームを生成し、該選択的スプライスフォームは正常細胞には実質的に存在しない病気を有するか又は有する危険にある患者を治療するための免疫原性ペプチドを同定する方法であって、下記のステップ:
1)少なくとも一の選択的スプライスフォームをコードする少なくとも一のmRNAを同定し;
2)少なくとも一の選択的スプライスフォームの少なくとも部分アミノ酸配列を決定し;そして
3)該選択的スプライスフォームにユニークなアミノ酸配列を含む少なくとも一のペプチドを生成する
ことを含む上記の方法。
【請求項26】
病んだ又は異常な細胞が少なくとも一の選択的スプライスフォームを生成し、該選択的スプライスフォームは正常細胞には実質的に存在しない病気を有するか又は有する危険にある患者を治療する方法であって、有効量の請求項1に記載の少なくとも一のペプチドを患者に投与し、それで該病んだ又は異常な細胞に対する免疫応答が生成されることを含む当該方法。
【請求項27】
免疫応答が、MHC HLA−クラスI又はクラスII制限された細胞傷害性Tリンパ球応答又は抗体応答である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
細胞傷害性Tリンパ球応答が、CD8+Tリンパ球応答であり、CD8+、MHC クラスI−制限されたTリンパ球が活性化される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
細胞傷害性Tリンパ球応答が、CD4+Tリンパ球応答であり、CD4+、MHC クラスII−制限されたTリンパ球が活性化される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
患者が、ヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも一のペプチドを、SEQ ID NO:3;SEQ ID NO:5;SEQ ID NO:8;SEQ ID NO:10;SEQ ID NO:12;SEQ ID NO:26;SEQ ID NO:29;SEQ ID NO:35;SEQ ID NO:36;SEQ ID NO:38;SEQ ID NO:39;SEQ ID NO:73;SEQ ID NO:75;SEQ ID NO:77;及びSEQ ID NO:79よりなる群から選択する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
病んだ又は異常な細胞に対して生成される免疫応答が、患者への投与前にペプチドを改変することにより増強される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
ペプチドを、ペプチドN末端の疎水性を増大させることにより改変する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ペプチドを、少なくとも一のアミノ酸の挿入、欠失又は置換により改変し、該改変が、ペプチドのMHC分子への結合親和性を増大させる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
ペプチドの安定性が、ペプチドを患者に投与する前に改変することにより増大させる、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
ペプチドを、ペプチドのD−アミノ酸によるキャッピング、ペプチドの少なくとも一のL−アミノ酸をD−アミノ酸で置換すること、又はペプチドのアミノ酸配列を逆転させて且つ少なくとも一のL−アミノ酸をD−アミノ酸で置換することにより改変する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
2種以上のペプチドを患者に投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
2種以上のペプチドが、多量体を構成する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
多量体が、ホモ多量体である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
多量体を、二量体;三量体;四量体;五量体;及び六量体よりなる群から選択する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
多量体が、二量体である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
SEQ ID NO:81の2つのペプチドを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
多量体が、ヘテロ多量体である、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
多量体を、二量体;三量体;四量体;五量体;及び六量体よりなる群から選択する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
2種以上のペプチドが、混合物を構成する、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
2種以上のペプチドが、一種又はそれより多くの選択的スプライスフォームに由来する重複するエピトープを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも一のペプチドを、ヘルパーT細胞エピトープを提示するペプチドと共に患者に投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項48】
少なくとも一のペプチドを、細胞傷害性Tリンパ球をプライムする少なくとも一の成分と共に患者に投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項49】
細胞傷害性Tリンパ球をプライムする少なくとも一の成分が、トリパルミトイル−S−グリセリルシステイニル−セリル−セリン(P3CSS)を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
有効量が、70kgの患者に対して、少なくとも一のペプチド約1μg〜約2,000mgである、請求項26に記載の方法。
【請求項51】
有効量が、70kgの患者に対して、少なくとも一のペプチド約1μg〜約500mgである、請求項26に記載の方法。
【請求項52】
有効量が、70kgの患者に対して、少なくとも一のペプチド約10μg〜約200mgである、請求項26に記載の方法。
【請求項53】
有効量が、70kgの患者に対して、少なくとも一のペプチド約50μg〜約100mgである、請求項26に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも一のペプチドの有効量を、単一投与で投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも一のペプチドの有効量を、複数回の投与で投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項56】
少なくとも一のペプチドの有効量を、腸内投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項57】
腸経路の投与を、経口投与;直腸投与;及び鼻腔内投与よりなる群から選択する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
少なくとも一のペプチドの有効量を、非経口投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項59】
非経口経路の投与を、静脈内投与;筋肉内投与;動脈内投与;腹腔内投与;膣内投与;嚢内投与;皮内投与;肺内投与;吸入;局所投与;皮下投与;及び身体内への点滴注入法よりなる群から選択する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
少なくとも一のペプチドを、キャリアー又はアジュバントと共に患者に投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項61】
キャリアーを、カサガイヘモシアニン;チログロブリン;アルブミン;破傷風毒素;及びポリアミノ酸よりなる群から選択する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
アジュバントを、完全フロイントアジュバント;不完全フロイントアジュバント;リン酸アルミニウム;水酸化アルミニウム;ポリレシチン;乳化油;及びミョウバンよりなる群から選択する、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
少なくとも一のペプチドを、免疫刺激化合物と共に患者に投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項64】
免疫刺激化合物を、サイトカイン及びハプテンよりなる群から選択する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
サイトカインを、GM−CSF;IL−12;IL−2;IL−4;IL−1α;及びIL−18よりなる群から選択する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも一のペプチドの有効量を、少なくとも一のペプチドをコードする少なくとも一の核酸配列の患者の細胞内での発現により、患者に投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項67】
患者の細胞に、少なくとも一の核酸を含む弱毒化ウイルス宿主を感染させる、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
弱毒化ウイルス宿主がワクシニアウイルスである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも一の核酸を含む細菌宿主を患者に導入する、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
細菌宿主を、BCG;サルモネラ・ティフィ;及びリステリア・モノサイトゲネスよりなる群から選択する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも一の核酸を含む酵母宿主を患者に導入する、請求項66に記載の方法。
【請求項72】
酵母宿主が、サッカロミセス・セレビシエ又はシゾサッカロミセス・ポンベである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
病気を、ストレス;癌;免疫系の病気;代謝異常;結合組織異常;動脈の病気;遺伝性赤血球膜異常;甲状腺ホルモン抑制;子宮内膜増殖症;アルツハイマー病;及びアルコール中毒症よりなる群から選択する、請求項26に記載の方法。
【請求項74】
癌を、急性前骨髄細胞性白血病;急性リンパ芽球性白血病;骨髄芽球性白血病;子宮癌;甲状腺癌;消化器腫瘍;異形性及び新生頚部上皮;メラノーマ;子宮内膜癌;奇形癌;大腸癌;繊維形成性球形細胞腫瘍;胃癌;乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、皮膚癌、リンパ腫、膀胱癌、及び膵臓癌よりなる群から選択する、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
病気を、アレルギー応答;x連鎖無ガンマグロブリン血症;免疫/炎症;全身性エリテマトーデス;グッドパスチャー病;フェエニルケトン尿症;非インシュリン依存性糖尿病;骨形成不全症;アテローム性動脈硬化症;及び遺伝性楕円赤血球症よりなる群から選択する、請求項26に記載の方法。
【請求項76】
選択的スプライスフォームが、CD44遺伝子;エストロゲンレセプター遺伝子;又はFHIT遺伝子から生成される、請求項26に記載の方法。
【請求項77】
少なくとも一のペプチドの患者への投与が、下記のステップ:
1)免疫系エフェクター細胞を患者から取り出し;
2)免疫系エフェクター細胞を、患者の身体外の培養中に維持し;
3)免疫系エフェクター細胞を、適宜、特定の免疫系エフェクター細胞型について富化させ;
4)培養した免疫系エフェクター細胞を少なくとも一のペプチドで処理し;
5)適宜、処理した免疫系エフェクター細胞を試験して、それらの細胞内の少なくとも一のペプチドの存在を確認し、そして
6)処理した免疫系エフェクター細胞を患者に再導入する
ことを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項78】
免疫系エフェクター細胞を、樹状細胞;リンホカイン活性化キラー細胞;ナチュラルキラー細胞;T細胞;マクロファージ;及びこれらの組合せよりなる群から選択する、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
免疫系エフェクター細胞の、少なくとも一のペプチドによる処理が、該細胞の該少なくとも一のペプチドへの直接的曝露を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
免疫系エフェクター細胞の、少なくとも一のペプチドによる処理が、少なくとも一のペプチドをコードする少なくとも一の核酸の該細胞への導入を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
処理した免疫系エフェクター細胞を、静脈内点滴又は骨髄への直接的注射により患者に再導入する、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
患者の体重1kg当たり約105〜108の処理した免疫系エフェクター細胞を患者に再導入する、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
腫瘍細胞が少なくとも一の選択的スプライスフォームを生成し、該スプライスフォームが正常細胞には実質的に存在しない腫瘍を有する危険にある患者における腫瘍の発生の開始を防止し又は遅延させる方法であって、患者に有効量の請求項1に記載の少なくとも一のペプチドを投与し、それで該腫瘍細胞に対する免疫応答を生成することを含む当該方法。
【請求項84】
腫瘍が、子宮癌;甲状腺癌;消化器癌;異形性及び新生頚部上皮;メラノーマ;子宮内膜癌;奇形癌;大腸癌;繊維形成性球形細胞腫瘍;胃癌;乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、皮膚癌、リンパ腫、膀胱癌、及び膵臓癌よりなる群から選択する癌に由来する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
患者が、ヒトである、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
2種以上のペプチドを患者に投与する、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
2種以上のペプチドが、多量体を構成する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
多量体を、二量体;三量体;四量体;五量体;及び六量体よりなる群から選択する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
多量体が、二量体であって、SEQ ID NO:81の2つのペプチドを含む、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
2種以上のペプチドが、混合物を構成する、請求項86に記載の方法。
【請求項91】
少なくとも一のペプチドを、SEQ ID NO:8;SEQ ID NO:10;SEQ ID NO:26;SEQ ID NO:29;SEQ ID NO:73;SEQ ID NO:75;SEQ ID NO:77;及びSEQ ID NO:79よりなる群から選択する、請求項83に記載の方法。
【請求項92】
腫瘍細胞が少なくとも一の選択的スプライスフォームを生成し、該選択的スプライスフォームは非腫瘍細胞には実質的に存在しない腫瘍を有する患者における腫瘍を緩解させる方法であって、患者に、有効量の請求項1に記載の少なくとも一のペプチドを投与し、それで該腫瘍細胞に対する免疫応答を生成することを含む当該方法。
【請求項93】
腫瘍が、子宮癌;甲状腺癌;消化器癌;異形性及び新生頚部上皮;メラノーマ;子宮内膜癌;奇形癌;大腸癌;繊維形成性球形細胞腫瘍;胃癌;乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、皮膚癌、リンパ腫、膀胱癌、及び膵臓癌よりなる群から選択する癌に由来する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
患者が、ヒトである、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
2種以上のペプチドを患者に投与する、請求項88に記載の方法。
【請求項96】
2種以上のペプチドが、多量体を構成する、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
多量体を、二量体;三量体;四量体;五量体;及び六量体よりなる群から選択する、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
多量体が、二量体であって、SEQ ID NO:81の2つのペプチドを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
2種以上のペプチドが、混合物を構成する、請求項95に記載の方法。
【請求項100】
少なくとも一のペプチドを、SEQ ID NO:8;SEQ ID NO:10;SEQ ID NO:26;SEQ ID NO:29;SEQ ID NO:73;SEQ ID NO:75;SEQ ID NO:77;及びSEQ ID NO:79よりなる群から選択する、請求項92に記載の方法。
【請求項101】
MHC制限された細胞傷害性Tリンパ球応答を患者において誘導するペプチドを同定する方法であって、下記のステップ:
1)末梢血液リンパ球を得;
2)それらの末梢血液リンパ球を、請求項1に記載の少なくとも一のペプチドに曝し、それでそれらの末梢血液リンパ球を刺激し;
3)刺激された末梢血液リンパ球を、該ペプチドが由来した選択的スプライスフォームを内因的に合成するか又は該ペプチドでパルスされた標的細胞とインキュベートし;そして
4)標的細胞の溶解を検出する
ことを含む当該方法。
【請求項102】
標的細胞が自己標識され、標的細胞溶解の検出が、溶解した標的細胞からの自己標識の放出を測定することを含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
標的細胞溶解の検出が、標的細胞の溶解に際して活性化末梢血液リンパ球から放出された少なくとも一種のサイトカインの検出を含む、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
少なくとも一種のサイトカインが、γインターフェロンである、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
SEQ ID NO:73;SEQ ID NO:75;SEQ ID NO:77;及びSEQ ID NO:79よりなる群から選択するペプチド上の特異的エピトープに結合する抗体又は抗体断片。
【請求項106】
ヒト化された、請求項105に記載の抗体。
【請求項107】
ポリクローナル抗体である、請求項105に記載の抗体。
【請求項108】
モノクローナル抗体である、請求項105に記載の抗体。
【請求項109】
請求項108に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項110】
病んだ又は異常な細胞が少なくとも一の選択的スプライスフォームを生成し、該選択的スプライスフォームが正常細胞には実質的に存在しない病気を有するか有する危険にある患者を治療する方法であって、該選択的スプライスフォームにユニークなアミノ酸配列に特異的な少なくとも一の抗体の有効量を患者に投与し、それで該患者における少なくとも一の臨床症状が改善され又は該患者における病んだ若しくは異常な細胞の数が減少することを含む当該方法。
【請求項111】
少なくとも一の抗体が、モノクローナル抗体である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
少なくとも一の抗体が、ヒト化されている、請求項110に記載の方法。
【請求項113】
モノクローナル抗体が、SEQ ID NO:3;SEQ ID NO:5;SEQ ID NO:8;SEQ ID NO:10;SEQ ID NO:12;SEQ ID NO:26;SEQ ID NO:29;SEQ ID NO:35;SEQ ID NO:36;SEQ ID NO:38;SEQ ID NO:39;SEQ ID NO:73;SEQ ID NO:75;SEQ ID NO:77;及びSEQ ID NO:79よりなる群から選択するペプチド上の特異的エピトープに結合する、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
有効量が、体重1kg当たり約0.1〜100mgである、請求項110に記載の方法。
【請求項115】
有効量が、体重1kg当たり約50〜100mgである、請求項110に記載の方法。
【請求項116】
有効量が、体重1kg当たり約10〜20mgである、請求項110に記載の方法。
【請求項117】
請求項1に記載の少なくとも一のペプチド及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬組成物。
【請求項118】
リポソームにカプセル封入された、請求項117に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−24235(P2010−24235A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245492(P2009−245492)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【分割の表示】特願2003−500213(P2003−500213)の分割
【原出願日】平成14年5月28日(2002.5.28)
【出願人】(503365741)トマス ジェファソン ユニバーシティ (3)
【Fターム(参考)】