説明

多機構外科用組成物

【課題】多機構外科用組成物を提供すること。
【解決手段】上記組成物は、以下:求電子性基、求核性基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;ならびに、少なくとも1つの自己集合性ペプチド、を含み、ここで、この自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成するのと同時に、このヒドロゲル前駆物質がヒドロゲル組成物を形成する。一実施形態において、上記自己集合性ペプチドが両親媒性ペプチドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、2009年10月1日に出願された米国仮特許出願第61/247,707号の利益およびこの仮出願に対する優先権を主張し、この仮出願の開示は、その全体が本明細書により参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本開示は、ヒドロゲル組成物を形成するための組成物および方法に関する。ある実施形態では、この組成物は、複数のゲル化機構に基づくヒドロゲル組成物を包含する。
【背景技術】
【0003】
例えば、ペプチド両親媒性物質のような自己集合性ペプチド(self−assembling peptide)は、生物活性模倣物として使用され得る。これらの自己集合性ペプチドは、細胞外マトリクスを模倣するか、または、幹細胞もしくは他の生体物質(biologics)を包囲および輸送するような構造にされ得る。自己集合性ペプチドはまた、組織増殖のための移植可能な足場を形成するためにも使用され得る。自己集合性ペプチドを形成するために使用される特定のアミノ酸残基は、体内で天然に存在する。このことが、自己集合性ペプチドを多数の他の生体適合性物質と区別し、そして、独自の利点を提供し得る。
【0004】
これに対し、ヒドロゲルは、一貫した化学構造を形成することが知られる特定の重合可能な前駆物質と官能基を用いて設計され得る。ヒドロゲルは、例えば、薬物送達、接着剤および/もしくはシーラントとして、ならびに、移植物の形成において、などの目的のために外科用途において使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬物送達における使用、ならびに、接着剤および/またはシーラントとしての使用のための改良された外科用組成物が所望され続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
本開示は、多機構外科用組成物に関する。ある実施形態では、本開示の組成物は、求電子性基、求核性基およびこれらの組み合わせのような官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;ならびに、少なくとも1つの自己集合性ペプチドを含み得;ここで、ヒドロゲル前駆物質は、自己集合性ペプチドが自己集合した(self−assembled)マクロマーを形成するのと同時に、ヒドロゲル組成物を形成する。
【0007】
ある実施形態では、本開示は、求電子性官能基および求核性官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;ならびに、少なくとも1つの自己集合性ペプチドを含むヒドロゲル組成物を提供し;ここで、ヒドロゲル前駆物質は、自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成する前に、ヒドロゲル組成物を形成する。
【0008】
他の実施形態では、本開示は、求電子性官能基および求核性官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;ならびに、少なくとも1つの自己集合性ペプチドを含むヒドロゲル組成物を提供し;ここで、自己集合性ペプチドは、ヒドロゲル前駆物質がヒドロゲルを形成する前に、自己集合したマクロマーを形成する。
【0009】
本開示の組成物から形成された移植物もまた本明細書中に提供される。ある実施形態では、移植物は、少なくとも1つの求電子性ポリマーおよび少なくとも1つの求核性ポリマー;ならびに、少なくとも1つの自己集合性ペプチドを含み得;ここで、求電子性ポリマーと求核性ポリマーは、自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成する前に、組成物を形成する。
【0010】
このような組成物を形成するための方法もまた提供される。ある実施形態では、本開示の方法は、求電子性基、求核性基およびこれらの組み合わせのような官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質を提供する工程;自己集合性ペプチドを提供する工程;ヒドロゲル前駆物質および自己集合性ペプチドをインサイチュで導入する工程;ならびに、自己集合性ペプチドおよびヒドロゲル前駆物質のゲル化をインサイチュで開始させる工程を包含する。
【0011】
したがって、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1) 組成物であって、以下:
求電子性基、求核性基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;ならびに
少なくとも1つの自己集合性ペプチド
を含み、ここで、この自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成するのと同時に、このヒドロゲル前駆物質がヒドロゲル組成物を形成する、組成物。
(項目2) 上記自己集合性ペプチドが両親媒性ペプチドである、上記項目に記載の組成物。
(項目3) 上記求電子性官能基が、カルボジイミダゾール基、塩化スルホニル基、クロロカーボネート基、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、スクシンイミジルエステル基、スルホスクシンイミジルエステル基、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル基、メタンジイソシアネート基、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)基、イソシアネート基、シアノアクリレート、アルデヒド、ゲニピン、ジイソシアネート基、ヘキサメチレンジイソシアネート基、マレイミド基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載の組成物。
(項目4) 上記求核性官能基が、−NH、−SH、−OH、−PHおよび−CO−NH−NHならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載の組成物。
(項目5) 上記少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質が、求電子性基を含有する第1のヒドロゲル前駆物質を、求核性基を含有する第2のヒドロゲル前駆物質と組み合わせて含む、上記項目のいずれかに記載の組成物。
(項目6) 上記第1のヒドロゲル前駆物質の上記求電子性官能基が、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルを含み、上記第2のヒドロゲル前駆物質がトリリジンを含む、上記項目のいずれかに記載の組成物。
(項目7) 上記組成物がさらに生物活性因子を含む、上記項目のいずれかに記載の組成物。
(項目8) ヒドロゲル組成物であって、以下:
求電子性官能基および求核性官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;ならびに
少なくとも1つの自己集合性ペプチド;
を含み、ここで、この自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成する前に、このヒドロゲル前駆物質がヒドロゲル組成物を形成する、ヒドロゲル組成物。
(項目9) 移植物であって、以下:
少なくとも1つの求電子性ポリマーおよび少なくとも1つの求核性ポリマー;ならびに
少なくとも1つの自己集合性ペプチド;
を含み、この自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成する前に、この求電子性ポリマーおよびこの求核性ポリマーが組成物を形成する、移植物。
(項目10) 上記組成物が、フィルム、発泡体、組織足場および薬物送達デバイスからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載の移植物。
(項目11) 上記組成物が、少なくとも部分的にペプチド溶液中で水和される、上記項目のいずれかに記載の移植物。
(項目12) 上記自己集合性ペプチドが水溶液と組み合わされる、上記項目のいずれかに記載の移植物。
(項目13) ヒドロゲル組成物であって、以下:
求電子性官能基および求核性官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;ならびに
少なくとも1つの自己集合性ペプチド;
を含み、ここで、このヒドロゲル前駆物質がヒドロゲルを形成する前に、この自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成する、ヒドロゲル組成物。
(項目14) 上記ヒドロゲルが、約5秒〜約5分でヒドロゲル組成物を形成する、上記項目のいずれかに記載のヒドロゲル組成物。
(項目15) 上記求核性官能基が、コラーゲン、ゼラチンまたは血清からなる群より選択されるポリマーを構成する、上記項目のいずれかに記載のヒドロゲル組成物。
(項目16) 上記求核性官能基がさらに、上記少なくとも1つの自己集合性ペプチドを構成する、上記項目のいずれかに記載のヒドロゲル組成物。
(項目17) インサイチュで組成物を形成するためのキットであって、以下:
求電子性基、求核性基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;
自己集合性ペプチド;
このヒドロゲル前駆物質およびこの自己集合性ペプチドをインサイチュで導入するための手段;ならびに
この自己集合性ペプチドおよびこのヒドロゲル前駆物質のゲル化をインサイチュで開始させるための手段
を備える、キット。
(項目18) 上記ゲル化を開始させるための手段が、上記自己集合性ペプチドおよび上記ヒドロゲル前駆物質のゲル化を同時に起こさせる、上記項目のいずれかに記載のキット。
(項目19) 上記ゲル化を開始させるための手段が、上記自己集合性ペプチドのゲル化を上記ヒドロゲル前駆物質のゲル化の前に起こさせる、上記項目のいずれかに記載のキット。
(項目20) 上記ゲル化を開始させるための手段が、上記自己集合性ペプチドのゲル化を上記ヒドロゲル前駆物質のゲル化の後に起こさせる、上記項目のいずれかに記載のキット。
(項目21) 上記求電子性官能基が、カルボジイミダゾール基、塩化スルホニル基、クロロカーボネート基、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、スクシンイミジルエステル基、スルホスクシンイミジルエステル基、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル基、メタンジイソシアネート基、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)基、イソシアネート基、シアノアクリレート、アルデヒド、ゲニピン、ジイソシアネート基、ヘキサメチレンジイソシアネート基、マレイミド基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のキット。
(項目22) 上記求核性官能基が、−NH、−SH、−OH、−PHおよび−CO−NH−NHならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のキット。
(項目23) 上記少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質が、求電子性基を含有する第1のヒドロゲル前駆物質を、求核性基を含有する第2のヒドロゲル前駆物質と組み合わせて含む、上記項目のいずれかに記載のキット。
(項目24) 上記第1のヒドロゲル前駆物質の上記求電子性官能基が、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルを含み、上記第2のヒドロゲル前駆物質がトリリジン、コラーゲン、ゼラチンおよび血清からなる群より選択されるポリマーを含む、上記項目のいずれかに記載のキット。
(項目17a)
インサイチュで組成物を形成するための方法であって、以下:
求電子性基、求核性基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質を提供する工程;
自己集合性ペプチドを提供する工程;
このヒドロゲル前駆物質およびこの自己集合性ペプチドをインサイチュで導入する工程;ならびに
この自己集合性ペプチドおよびこのヒドロゲル前駆物質のゲル化をインサイチュで開始させる工程
を包含する、方法。
(項目18a)
上記自己集合性ペプチドおよび上記ヒドロゲル前駆物質のゲル化が同時に起こる、上記項目に記載の方法。
(項目19a)
上記自己集合性ペプチドのゲル化が上記ヒドロゲル前駆物質のゲル化の前に起こる、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目20a)
上記自己集合性ペプチドのゲル化が上記ヒドロゲル前駆物質のゲル化の後に起こる、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目21a)
上記求電子性官能基が、カルボジイミダゾール基、塩化スルホニル基、クロロカーボネート基、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、スクシンイミジルエステル基、スルホスクシンイミジルエステル基、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル基、メタンジイソシアネート基、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)基、イソシアネート基、シアノアクリレート、アルデヒド、ゲニピン、ジイソシアネート基、ヘキサメチレンジイソシアネート基、マレイミド基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目22a)
上記求核性官能基が、−NH、−SH、−OH、−PHおよび−CO−NH−NHならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目23a)
上記少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質が、求電子性基を含有する第1のヒドロゲル前駆物質を、求核性基を含有する第2のヒドロゲル前駆物質と組み合わせて含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目24a)
上記第1のヒドロゲル前駆物質の上記求電子性官能基が、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルを含み、上記第2のヒドロゲル前駆物質がトリリジン、コラーゲン、ゼラチンおよび血清からなる群より選択されるポリマーを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
【0012】
摘要
本開示は、複数のゲル化機構を有するヒドロゲル組成物を提供する。この組成物は、ヒドロゲルを形成する少なくとも1つの成分を、自己集合したマクロマーを形成し得る自己集合性ペプチドを含む第2の成分と組み合わせて含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本開示は、多機構外科用組成物に関する。この多機構外科用組成物は、異なる機構によって、必要に応じて異なる時点で形成する少なくとも2つの異なる成分を含む。本開示の多機構外科用組成物の別個の成分は、少なくとも1つのヒドロゲルと少なくとも1つの自己集合性ペプチドを含む。
【0014】
ヒドロゲル
本開示の組成物の第1の成分は、ヒドロゲルである。ヒドロゲルは、合成および/または天然のポリマー前駆物質から形成され得る。天然のヒドロゲル前駆物質(例えば、タンパク質、多糖類またはグリコサミノグリカン)は、ヒドロゲルに対する前駆物質として使用され得る。タンパク質、多糖類またはグリコサミノグリカンの誘導体、例えば、ヒアルロン酸、デキストラン、コンドロイチン硫酸塩、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩、アルギナート、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、ポリアミノ酸、コラーゲン、フィブリノーゲン、アルブミン、フィブリン、デンプン、デルマタン硫酸塩、ケラタン硫酸塩、デキストラン硫酸塩、ペントサンポリサルフェート、キトサン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、これらの活性ペプチドドメインおよびこれらの組み合わせもまた使用され得る。
【0015】
本明細書中で使用される場合、合成とは、天然では見られない分子をいい、天然の生体分子の誘導体化バージョン、例えば、修飾側鎖基を持つコラーゲンは含まない。合成で作製されたポリアミノ酸ポリマーは、通常、天然に見られず、また、天然に存在する生体分子と同一ではないように加工されている場合に、合成であると考えられる。本開示に従って使用され得る合成前駆物質の例としては、例えば、以下が挙げられる:ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、co−ポリエチレンオキシドのブロックコポリマーまたはランダムコポリマーのようなポリアルキレンオキシド;ポリビニルアルコール(「PVA」);ポリ(ビニルピロリドン)(「PVP」)、ならびに、上記のものの誘導体および上記のものの組み合わせ。
【0016】
ヒドロゲルは、「インサイチュ」で形成する(生きている動物もしくはヒトの体内の組織で形成が生じることを意味する)単一の前駆物質または複数の前駆物質を含み得る。一般に、これは、組織への適用の時点に活性化されて、ヒドロゲルを形成し得る前駆物質を有することによって達成され得る。
【0017】
ヒドロゲルは、共有結合、イオン結合または疎水性結合のいずれかによって形成され得る。物理的な(非共有結合性の)架橋は、錯体形成(complexation)、水素結合、脱溶媒和(desolvation)、ファンデルワールス相互作用、イオン結合、これらの組み合わせなどから生じ得、そして、インサイチュで組み合わされるまで物理的に隔てられた2つの前駆物質を混合することによってか、または、温度、pH、イオン強度、これらの組み合わせなどを含む生理学的環境における効果的な(prevalent)条件の結果として開始され得る。化学的な(共有結合性の)架橋は、フリーラジカル重合、縮合重合、アニオン性もしくはカチオン性の重合、段階的に伸びる重合(step growth polymerization)、求電子−求核反応、これらの組み合わせなどを含む、多数の機構のうちのいずれかによって達成され得る。
【0018】
一部の実施形態では、ヒドロゲル系は、前駆物質が混合されると自発的に架橋する、生体適合性の複数の前駆物質の系を含み得るが、この場合、2以上の前駆物質は、堆積プロセスの期間には個々に安定である。このような系としては、例えば、ヒドロゲルについて、二官能性もしくは多官能性のアミンであるマクロマーを含む第1の前駆物質と、二官能性もしくは多官能性のエチレンオキシドを含有する部分を含む第2の前駆物質とが挙げられる。
【0019】
ヒドロゲルの形成の一部の実施形態は、表面(例えば、患者の組織上)への適用後、急速に架橋してヒドロゲルを形成する前駆物質を混合する工程を包含する。
【0020】
前駆物質は、使用前に溶液中に入れられ得、この溶液が患者に送達される。本開示に従う使用に適切な溶液としては、管腔または空隙内で移植物を形成するために使用され得るものが挙げられる。2つの溶液が用いられる場合、各溶液がヒドロゲルの1つの前駆物質を含み得、これらが接触するとヒドロゲルを形成する。これらの溶液は、別々に保存され得、そして、組織に送達されると混合され得る。
【0021】
さらに、ヒドロゲル系の一部として利用される任意の溶液は、有害もしくは毒性の溶媒を含むべきではない。ある実施形態では、前駆物質は、緩衝化された等張の生理食塩水のような生理学的に適合性の溶液中での用途を可能にするため、水のような溶媒中で実質的に安定であり得る。水溶性コーティングは、薄いフィルムを形成し得るが、ある実施形態ではまた、制御された厚みの三次元ゲルを形成し得る。このゲルはまた生物分解性であり得、その結果、身体から回収される必要がない。本明細書中で使用される場合、生物分解能とは、コーティングの、通常の生理学的条件下で代謝または排泄されるに十分小さい分子への予測可能な分解をいう。
【0022】
ヒドロゲル系の特性は、意図される用途に従って選択され得る。例えば、ヒドロゲルが、生殖器(例えば、ファローピウス管)を一時的に閉塞するために使用される場合、ヒドロゲル系は、有意な膨潤を受け、そして、生物分解性であることが望ましくあり得る。あるいは、ヒドロゲルは、凝固特性を有し得るか、または、その前駆物質が、血液もしくは他の体液と反応して、凝塊を形成し得る。
【0023】
他の用途は、ヒドロゲル系の多様な特徴を必要とし得る。一般に、物質は、示される生体適合性、そして毒性がないことに基づいて選択されるべきである。
【0024】
多様な組織への接着、外科医が正確かつ簡便にヒドロゲルを配置することを可能にする所望の凝固時間、生体適合性のための高い水分含量(ヒドロゲルにとって適切であり得る)、シーラントにおける使用のための機械的強度、および/または、配置後の破壊に耐える耐久性を含む、ヒドロゲルの特定の特性が有用であり得る。したがって、容易に滅菌され、天然物質の使用に伴う疾患の伝染の危険性を回避する合成物質が使用され得る。実際、例えば、FOCALSEAL(登録商標)(Genzyme,Inc.)、COSEAL(登録商標)(Angiotech Pharmaceuticals)およびDURASEAL(登録商標)(Confluent Surgical,Inc)などの市販の製品において使用されているように、合成前駆物質を用いて作製された特定のインサイチュ重合可能なヒドロゲルは、当業者の知識の範囲内である。他の公知のヒドロゲルとしては、例えば、米国特許第6,656,200号;同第5,874,500号;同第5,543,441号;同第5,514,379号;同第5,410,016号;同第5,162,430号;同第5,324,775号;同第5,752,974号;および同第5,550,187号に開示されるものが挙げられる。
【0025】
上述のように、ヒドロゲルは、1以上の前駆物質から作製され得る。前駆物質は、例えば、モノマーまたはマクロマーであり得る。1つのタイプの前駆物質は、エチレン性不飽和の官能基を有し得る。エチレン性不飽和の官能基は、反応を開始させるための開始剤を用いて重合され得る。少なくとも2つのエチレン性不飽和の官能基を持つ前駆物質は、架橋したポリマーを形成し得る。一部の組成物は、ただ1つのこのような官能基を持つ特定の前駆物質と、この前駆物質を架橋するために複数の官能基を持つ追加の架橋剤前駆物質とを有する。エチレン性不飽和の官能基は、種々の技術(例えば、フリーラジカル、縮合、または付加重合)によって重合され得る。ある実施形態では、エチレン性不飽和の官能基を有する前駆物質は、架橋を増強するために開始剤と組み合され得る。適切な開始剤としては、例えば、熱開始剤、光活性化可能な開始剤、酸化−還元(レドックス)系およびこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、適切な開始剤として、紫外線に曝露されると架橋反応を増強するものが挙げられる。
【0026】
このように、ヒドロゲルは、1つの前駆物質(例えば、フリーラジカル重合によって)、2つの前駆物質から形成され得るか、または、3つ以上の前駆物質を用いて、ヒドロゲルの形成のための架橋に関与する1つ以上の前駆物質を用いて作製され得る。
【0027】
ヒドロゲルを形成するための使用され得る他の前駆物質は、求電子性または求核性の官能基を有し得る。求電子性試薬は、求核性試薬と反応して共有結合を形成する。共有架橋または共有結合とは、互いに異なるポリマーを共有結合するように働く、異なるポリマー上の官能基の反応により形成される化学基をいう。特定の実施形態において、第1の前駆物質上の第1のセットの求電子性官能基は、第2の前駆物質上の第2のセットの求核性官能基と反応し得る。これらの前駆物質が反応を可能にする環境中(例えば、pHまたは溶媒に関連して)で混合されると、これらの官能基が互いに反応して、共有結合を形成する。これらの前駆物質は、これらの前駆物質のうちの少なくともいくつかが1つより多くの他の前駆物質と反応し得る場合に、架橋する。例えば、第1のタイプの2つの官能基を有する前駆物質は、この第1のタイプの官能基と反応し得る第2のタイプの少なくとも3つの官能基を有する架橋前駆物質と反応し得る。
【0028】
上述のように、ある実施形態では、官能基は、ヒドロゲルを形成するための求電子−求核反応に関与する求電子性または求核性の基であり得る。求電子性官能基の例としては、以下が挙げられる:カルボジイミダゾール基、塩化スルホニル基、クロロカーボネート基、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル基(NHS)、スクシンイミジルエステル基、スルホスクシンイミジルエステル基、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル基(ENHS)、メタンジイソシアネート基、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)基、イソシアネート基(NCO)、シアノアクリレート、アルデヒド、ゲニピン(genipin)、ジイソシアネート基、ヘキサメチレンジイソシアネート基、マレイミド基、これらの組み合わせなど。
【0029】
存在し得る求核性基としては、例えば、−NH、−SH、−OH、−PHおよび−CO−NH−NH、これらの組み合わせなどが挙げられる。求核性ポリマーのいくつかの非限定的な例としては、コラーゲン、ゼラチン、血清およびトリリジンが挙げられる。
【0030】
上述のように、ある実施形態では、ヒドロゲルは、単一の前駆物質または複数の前駆物質から形成され得る。例えば、ヒドロゲルが複数の前駆物質(例えば、2つの前駆物質)から形成される場合、これらの前駆物質は、第1および第2のヒドロゲル前駆物質と呼ばれ得る。用語「第1のヒドロゲル前駆物質」および「第2のヒドロゲル前駆物質」は各々が、架橋分子の網目構造(例えば、ヒドロゲル)を形成するための反応に参加し得る、ポリマー、官能性ポリマー、高分子、低分子または架橋剤を意味する。
【0031】
ある実施形態では、求核性前駆物質および求電子性前駆物質の両方が架橋反応に使用される限り、第1および第2のヒドロゲル前駆物質の各々が、求核性基のみ、または求電子性官能基のみのいずれかの、ただ1つのカテゴリーの官能基を含む。すなわち、例えば、第1のヒドロゲル前駆物質がアミンのような求核性官能基を有する場合、第2のヒドロゲル前駆物質は、N−ヒドロキシスクシンイミドのような求電子性官能基を有し得る。一方、第1のヒドロゲル前駆物質がスルホスクシンイミドのような求電子性官能基を有する場合、第2のヒドロゲル前駆物質は、アミンまたはチオールのような求核性官能基を有し得る。このように、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、スチレンスルホン酸またはアミン末端二官能性もしくは多官能性ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)のような官能性ポリマーが使用され得る。
【0032】
第1および第2のヒドロゲル前駆物質は、生物学的に不活性かつ水溶性のコアを有し得る。このコアが水溶性であるポリマー領域である場合、使用され得る適切なポリマーとしては、以下が挙げられ得る:ポリエーテル(例えば、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド「(PEO)」、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、co−ポリエチレンオキシドブロックコポリマーまたはランダムコポリマー、およびポリビニルアルコール(「PVA」));ポリ(ビニルピロリドン)(「PVP」);ポリ(アミノ酸);ポリ(多糖類)(例えば、デキストラン、キトサン、アルギナート、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒアルロン酸);ならびにタンパク質(例えば、アルブミン、コラーゲン、カゼイン、およびゼラチン)。ポリエーテル、より特定すると、ポリ(オキシアルキレン)またはポリ(エチレングリコール)またはポリエチレングリコールが、いくつかの実施形態において利用され得る。このコアの分子の性質が小さい場合、種々の親水性官能基の任意のものが、第1および第2のヒドロゲル前駆物質を水溶性にするために使用され得る。ある実施形態では、ヒドロキシル、アミン、スルホネートおよびカルボキシレートなどの官能基(これらは、水溶性である)は、前駆物質を水溶性にするために使用され得る。例えば、スベリン酸(subaric acid)のN−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルは、水に不溶性であるが、スルホネート基をそのスクシンイミド環に付加することによって、スベリン酸のNHSエステルは、そのアミン基に対する反応性に影響を与えることなく、水溶性にされ得る。
【0033】
ある実施形態では、第1および第2のヒドロゲル前駆物質のうち少なくとも一方が架橋剤である。ある実施形態では、第1および第2のヒドロゲル前駆物質のうち少なくとも一方が高分子であり、本明細書中では、「官能性ポリマー」と呼ばれ得る。
【0034】
第1および第2のヒドロゲル前駆物質の各々が多官能性であり得、これは、これらのヒドロゲル前駆物質の各々が、2つ以上の求電子性官能基もしくは求核性官能基を含み得、その結果、例えば、第1のヒドロゲル前駆物質上の求核性官能基が、第2のヒドロゲル前駆物質上の求電子性官能基と反応して共有結合を形成し得ることを意味する。第1または第2のヒドロゲル前駆物質のうちの少なくとも一方が2より多い官能基を含み、その結果、求電子−求核反応の結果として、前駆物質が合わさって架橋したポリマー生成物を形成する。
【0035】
ある実施形態では、トリリジンのような多官能性求核性ポリマーが、第1のヒドロゲル前駆物質として使用され得、複数のNHS基で官能基化されたマルチアームPEGのような多官能性求電子性ポリマーが第2のヒドロゲル前駆物質として使用され得る。複数のNHS基で官能基化されたマルチアームPEGは、例えば、4つ、6つまたは8つのアームを有し得、そして約2,000ダルトン(Da)〜約40,000Da、ある実施形態においては、約10,000Da〜約20,000Daの分子量を有し得る。適切な第1および第2のヒドロゲル前駆物質の他の例は、米国特許第6,152,943号;同第6,165,201号;同第6,179,862号;同第6,514,534号;同第6,566,406号;同第6,605,294号;同第6,673,093号;同第6,703,047号;同第6,818,018号;同第7,009,034号;および同第7,347,850号に記載されており、これらの各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0036】
ある実施形態では、ヒドロゲルを生物分解性または吸収性にするために、官能基の間に存在する生物分解性結合を有する1以上の前駆物質が含められ得る。いくつかの実施形態では、これらの結合は、例えば、生理学的溶液において加水分解により分解され得るエステルであり得る。このような結合の使用は、タンパク質分解作用によって分解され得るタンパク質結合とは対照的である。生物分解性の結合はまた、必要に応じて、1以上の前駆物質の水溶性コアの一部を形成し得る。あるいは、もしくは加えて、前駆物質の官能基は、これらの間の反応の生成物が生物分解性の結合を生じるように選択され得る。各々のアプローチについて、生物分解性の結合は、結果として生じる生物分解性でかつ生体適合性の架橋ポリマーが、所望の時間で分解するか、または、吸収されるように選択され得る。一般に、生理学的条件下でヒドロゲルを非毒性もしくは低毒性の生成物へと分解する生物分解性の結合が選択され得る。
【0037】
ある実施形態では、ヒドロゲルはまた開始剤を含み得る。開始剤は、ヒドロゲルの形成のための重合反応を開始し得るあらゆる前駆物質または群であり得る。
【0038】
架橋したポリマー性ヒドロゲルを形成するための反応条件は、官能基の性質に依存する。ある実施形態では、反応は、約5〜約12のpHにおいて緩衝化された水溶液中で行われる。緩衝液としては、例えば、ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH10)およびトリエタノールアミン緩衝液(pH7)が挙げられる。いくつかの実施形態では、反応速度を改善するため、または、所与の処方物の粘性を調節するために、エタノールまたはイソプロパノールのような有機溶媒が添加され得る。
【0039】
架橋剤および官能性ポリマーが合成物である場合(例えば、これらがポリアルキレンオキシドに基づくものである場合)、等モル量の反応物を使用することが望ましくあり得る。いくつかの場合、官能基の加水分解に起因する反応のような副反応を補うために、モル過剰の架橋剤が添加され得る。
【0040】
合成の架橋ゲルは生物分解性領域の加水分解に起因して分解する。合成ペプチド配列を含むゲルの分解は、特定の酵素およびその濃度に依存する。いくつかの場合、分解プロセスを架橋するために、特定の酵素が架橋反応の間に添加され得る。
【0041】
架橋剤および架橋可能なポリマーを選択する際、結果として生じる生体適合性の架橋ポリマーが生物分解性であることが望ましい場合、ポリマーの少なくとも1つは、1分子あたり2より多くの官能基と、少なくとも1つの分解可能な領域を有し得る。ある実施形態では、生体適合性の架橋ポリマー前駆物質の各々が2より多くの官能基を有し得、そして、いくつかの実施形態では、4より多くの官能基を有し得る。
【0042】
結果として生じる生体適合性架橋ポリマーの架橋密度は、架橋剤および官能性ポリマーの全体の分子量、ならびに1分子あたりで利用可能な官能基の数によって、制御され得る。架橋の間のより低い分子量(例えば、600Da)は、より高い分子量(例えば、10,000Da)と比較して、ずっと高い架橋密度を与える。弾性ゲルは、3000Daを超える分子量を有する、より高い分子量の官能性ポリマーを用いて得られ得る。
【0043】
架橋密度はまた、架橋剤および官能性ポリマーの溶液の全体的な固形分の百分率により制御され得る。固形分の百分率を増加させると、求電子性基が加水分解による不活性化の前に求核性基と化合する可能性が増大する。架橋密度を制御するなお別の方法は、求電子性基に対する求核性基の化学量論を調節することによる。1:1の比は、最も高い架橋密度をもたらし得るが、反応性官能基の他の比(例えば、求電子性試薬:求核性試薬)が、所望の処方物に合うことが想定される。
【0044】
上記のような生物分解性の架橋剤または低分子は、アルブミン、他の血清タンパク質または血清濃縮物のようなタンパク質と反応して、架橋したポリマー網目構造を生成し得る。一般に、架橋剤の水溶液は、架橋ヒドロゲルを生じるためにタンパク質の濃縮溶液と混合され得る。反応は、架橋の工程の間に、緩衝剤(例えば、ホウ酸緩衝液またはトリエタノールアミン)を添加することによって加速され得る。
【0045】
結果として生じる架橋ヒドロゲルの分解は、架橋剤中の分解セグメントならびに酵素による分解に依存する。いずれの分解酵素も存在しない場合、架橋ポリマーは、単に、生物分解性セグメントの加水分解によって分解し得る。ポリグリコレートが生物分解性セグメントとして使用される実施形態では、架橋ポリマーは、その網目構造の架橋密度に依存して、約1日〜約30日で分解し得る。同様に、ポリカプロラクトンベースの架橋網目構造が使用される実施形態では、分解は、約1ヶ月〜約8ヶ月の期間にわたって起こり得る。この分解時間は、一般に、使用される分解性セグメントのタイプに従って、以下の順序で変動する:ポリグリコレート<ポリラクテート<ポリトリメチレンカーボネート<ポリカプロラクトン。従って、適切な分解性セグメントを使用して、所望の分解プロフィール(数日〜数ヶ月)を有するヒドロゲルを構築することが可能である。
【0046】
生物分解性ブロック(例えば、オリゴヒドロキシ酸ブロック)により生じる疎水性、またはPLURONICポリマーもしくはTETRONICポリマーのPPOブロックの疎水性は、小さい有機薬物分子を溶解する際に有用である。生物分解性ブロックまたは疎水性ブロックの組み込みにより影響を受ける他の特性としては、水吸収、機械的特性および感熱性が挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態では、前駆物質の架橋反応をインサイチュで生じさせるのに適した処方物が調製され得る。一般に、これは、組織への適用の時点に活性化されて、架橋ヒドロゲルを形成し得る前駆物質を有することによって達成され得る。活性化は、前駆物質が架橋前には組織の形状に合っており、付随するゲル化がさもなくばかなり進行し過ぎているという条件で、組織への前駆物質の適用の前、間または後になされ得る。活性化は、例えば、重合プロセスの誘発、フリーラジカル重合の開始、または、互いに反応する官能基との前駆物質の混合を含む。したがって、インサイチュ重合は、患者の表面上、内部、または、表面上および内部の両方の物質が配置される位置で、共有結合を形成して、不溶性物質(例えば、ヒドロゲル)を生成するための化学的部分の活性化を含む。インサイチュ重合可能なポリマーは、患者の体内でポリマーを形成するよう、反応可能な前駆体から調製され得る。したがって、求電子性官能基を持つ前駆物質が、求核性官能基を持つ前駆物質と混合されるか、さもなくば、求核性官能基を持つ前駆物質の存在下で活性化され得る。他の実施形態では、エチレン性不飽和の基を持つ前駆物質が、患者の組織上でインサイチュで重合するように反応開始され得る。なお他の実施形態では、前駆物質は、フィルムの形状のヒドロゲルを形成し得、このフィルムが後にインサイチュで移植され得る。代替的な実施形態では、ヒドロゲルは、発泡体を生じるように凍結乾燥され得、この発泡体が後にインサイチュで移植され得る。
【0048】
組織のコーティングに関して、そして、特定の作用理論に対して本開示を限定はしないが、組織表面との接触後に急速に架橋する反応性前駆物質種は、コーティングされた組織と機械的にかみ合う(interlock)三次元構造を形成し得ると考えられる。このかみ合いは、組織のコーティングされた領域の粘着性、直接的な接触、および連続的な有効範囲(coverage)に寄与している。
【0049】
ある実施形態では、前駆物質は、ポリマー前駆物質が適用される組織に存在するアミンと反応し得る官能基を含み得る。
【0050】
可視化剤
前駆物質および/または架橋ポリマーは、外科処置中のそれらの可視性を改善するために、可視化剤を含有し得る。可視化剤は、移植可能な医療デバイスにおいて使用するために適切な、種々の非毒性有色物質(例えば、色素)から選択され得る。適切な色素は、当業者の知識の範囲内であり、そして例えば、ヒドロゲルがインサイチュで形成される際にこのヒドロゲルの厚さを可視化するための色素(例えば、米国特許第7,009,034号に記載されるような)が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、適切な色素としては、例えば、FD&C Blue#1、FD&C Blue#2、FD&C Blue#3、FD&C Blue#6、D&C Green#6、メチレンブルー、インドシアニングリーン、他の有色色素、これらの組み合わせなどが挙げられ得る。さらなる可視化剤(例えば、蛍光性化合物(例えば、フルオレセインまたはエオシン)、X線造影剤(例えば、ヨウ素化化合物)、超音波造影剤、およびMRI造影剤(例えば、ガドリニウム含有化合物)が使用され得ることが、想定される。
【0051】
可視化剤は、架橋剤または官能性ポリマーの溶液のいずれに存在してもよい。有色物質は、生体適合性の架橋ポリマーに組み込まれても組み込まれなくてもよい。しかし、ある実施形態では、可視化剤は、架橋剤または官能性ポリマーと反応し得る官能基を有さない。
【0052】
可視化剤は、少量で使用され得、ある実施形態では、1%(重量/体積)未満、他の実施形態では、0.01%(重量/体積)未満、そしてなお他の実施形態では、0.001%(重量/体積)未満の濃度で使用され得る。
【0053】
自己集合性ペプチド
本開示の組成物の第2の成分は、それ自体でマクロマーを形成する自己集合性ペプチドを含む。用語「ペプチド」は、本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「タンパク質」を包含し、化学結合(たとえば、ペプチド結合)によって一緒に連結された、一続きの少なくとも2つのアミノ酸残基をいう。文脈に応じて、「ペプチド」は、個々のペプチド、または、同じかもしくは異なる配列を有するペプチドの集合物をいう場合もあり、この任意の集合物は、天然に存在するα−アミノ酸残基のみ、天然に存在しないα−アミノ酸残基のみ、またはその両方を含み得る。自己集合性ペプチドは、例えば、ペプチド両親媒性物質、および、β−シートまたはα−ヘリックスを形成する配列を持つペプチドを包含する。
【0054】
ペプチドは、D−アミノ酸、L−アミノ酸またはこれらの組み合わせを含み得る。自己集合性ペプチド中に存在し得る適切な天然に存在する疎水性アミノ酸残基としてはAla、Val、Ile、Met、Phe、Tyr、Trp、Ser、ThrおよびGlyが挙げられる。親水性アミノ酸残基は、塩基性アミノ酸(例えば、Lys、Arg、His、Orn);酸性アミノ酸(例えば、Glu、Asp);または、水素結合を形成するアミノ酸(例えば、Asn、Gln)であり得る。L−アミノ酸の分解は、宿主の組織によって再利用され得るアミノ酸をもたらす。L型構造のアミノ酸残基は、体内で天然に存在し、このクラスの化合物から形成されるペプチドを多数の他の生体適合性物質と区別する。L型構造のアミノ酸は、RGD付着配列のような生物学的に活性な配列を含む。
【0055】
自己集合性ペプチド内のアミノ酸残基は、天然に存在するアミノ酸残基であっても天然に存在しないアミノ酸残基であってもよい。天然に存在するアミノ酸は、標準的な遺伝子コードによってコードされるアミノ酸残基、標準的アミノ酸の修飾によって形成され得るアミノ酸(例えば、ピロリジンまたはセレノシステイン)、ならびに、非標準的アミノ酸(例えば、L型構造の代わりにD型構造を有するアミノ酸)を包含し得る。天然に存在しないアミノ酸は、自然状態では見られないが、これらは、ペプチド鎖に組み込まれ得る。これらとしては、例えば、D−アロイソロイシン(2R,3S)−2−アミノ−3−メチルペンタン酸、L−シクロペンチルグリシン(S)−2−アミノ−2−シクロペンチル酢酸が挙げられる。
【0056】
本開示に従って使用される自己集合性ペプチドは、これらが、本明細書中に記載される1つ以上の目的に有用な程度に自己集合能を保持する限り、長さが多様であり得る。2つのα−アミノ酸残基程度の少ない残基、または、約30残基程度の多い残基を有するペプチドが適切であり得る。ある実施形態では、αアミノ酸アナログが使用され得る。特に、D型のα−アミノ酸残基が使用され得る。有用なペプチドはまた分枝していてもよい。
【0057】
ある実施形態では、自己集合性ペプチド内の1以上のアミノ酸残基は、アシル基、炭化水素基、ホスフェート基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基または結合体化のためのリンカーのような化学的実体の付加によって官能基化され得る。この官能基は、ペプチド間結合、または、ペプチドとヒドロゲルまたはヒドロゲル前駆物質との間の結合を提供し得る。例えば、両親媒性ペプチドの疎水性部分が、アセチレン基で官能基化され得る。あるいは、ヒアルロン酸(HA)が、超分子レベルの両親媒性ペプチドと反応され得る。
【0058】
所与のペプチドのいずれかもしくは両方の末端が修飾され得る。例えば、それぞれ、カルボキシル末端残基およびアミノ末端残基のカルボキシル基および/またはアミノ基は、保護されていても保護されていなくてもよい。末端の電荷もまた改変され得る。例えば、さもなくば存在し得る「余分な」正電荷(例えば、N末端アミノ酸の側鎖から生じない電荷)を中和するために、アシル基(RCO−−、ここで、Rは有機基である(例えば、アセチル基(CHCO−−))のような基もしくはラジカルが、ペプチドのN末端に存在し得る。同様に、さもなくばC末端に存在し得る「余分な」負電荷(例えば、C末端アミノ酸残基の側鎖から生じない電荷)を中和するために、アミン基(NH)のような基が使用され得る。アミンが使用される場合、C末端はアミド(−−CONH)を有し得る。末端の電荷の中和は、自己集合を促進し得る。当業者は、他の適切な基を選択し得る。
【0059】
ある実施形態では、自己集合性ペプチドは、治療用ペプチドであり得る。治療用ペプチドとしては、例えば、バソプレシンアナログ、GNRH/LHRHアゴニスト(例えば、リュープロレリンまたはゴセレリン)、ソマトスタチンアナログ、免疫調節因子ペプチド、カルシトニンおよび血小板凝集インヒビターが挙げられる。
【0060】
上述のように、ある実施形態では、自己集合性ペプチドは、両親媒性ペプチドであり得る。両親媒性ペプチドは、ペプチドに両親媒性の性質を伝える多様な配列を有し得る(例えば、ペプチドは、ほぼ等しい数の疎水性および親水性のアミノ酸残基を有し得る)。両親媒性ペプチドは、親水性である少なくとも1つの部分と、疎水性である少なくとも1つの部分とを含み得る。
【0061】
本開示に従って利用され得る自己集合性ペプチドのいくつかの例としては、例えば、EAK16−II(AnaSpec,Inc.から市販されている);膵島アミロイドポリペプチドhIAPP(22−27)(AnaSpec,Inc.から市販されている);RAD16−I、これらの組み合わせなどが挙げられる。他の自己集合性ペプチドとしては、Nagai,et al.「Slow Release of Molecules in Self−Assembling Peptide Nanofiber Scaffold」,Journal of Controlled Release Vol.115,pp.18−25(2006);Schneider,et al.「Self−Assembling Peptide Nanofiber Scaffolds Accelerate Wound Healing」,PLoS ONE,Issue 1,pp.1−8(2008);Hartgerink,et al.「Peptide−Amphiphile Nanofibers:A Versatile Scaffold for the Preparation of Self−Assembling Materials」,PNAS Early Edition,pp.1−6(2001);およびSilva,et al.「Selective Differentiation of Neural Progenitor Cells by High−Epitope Density Nanofibers」,Science,Vol.303,pp.1352−1355(2004)によって開示されるものが挙げられ、これらの文献の各々の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0062】
限定されないが、自己集合性ペプチドの側鎖(またはR基)は、正および/または負に荷電したイオン性側鎖を持つ極性表面と、生理学的pHにおいて中性もしくは非荷電と考えられる側鎖(例えば、アラニン残基もしくは他の疎水性基を有する残基の側鎖)を持つ非極性表面の2つの表面に区切られると考えられる。1つのペプチドの極性表面上の正に荷電したアミノ酸残基および負に荷電したアミノ酸残基は、別のペプチドの反対の電荷を持つ残基と相補的なイオン対を形成し得、こうして、自己集合し得る。それゆえ、これらのペプチドは、イオン性の自己集合性ペプチドと呼ばれ得る。
【0063】
イオン性残基が、極性表面上で、1つの正に荷電した残基と1つの負に荷電した残基が交互に並ぶ場合(−+−+−+−+)、このペプチドは、「モジュラスI(modulus I)」と記述され得る;イオン性残基が、極性表面上で、2つの正に荷電した残基と2つの負に荷電した残基が交互に並ぶ場合(−−++−−++)、このペプチドは、「モジュラスII」と記述され得る;イオン残基が、極性表面上で、3つの正に荷電した残基と3つの負に荷電した残基が交互に並ぶ場合(+++−−−+++−−−)、このペプチドは、「モジュラスIII」と記述され得る;イオン性残基が、極性表面上で、4つの正に荷電した残基と4つの負に荷電した残基が交互に並ぶ場合(++++−−−−++++−−−−)、このペプチドは、「モジュラスIV」と記述され得る。これらのペプチドにおける正に荷電した残基(リジンおよびアルギニン)は、塩の存在下で、負に荷電した残基(アスパラギン酸およびグルタミン酸)で置き換えられて、β−シートマクロマー構造を形成し得る。
【0064】
自己集合性ペプチドからのマクロマー構造の形成に重要なさらなる因子としては、例えば、ペプチドの長さ、分子間相互作用の程度、および、互い違いの配列(staggered array)を形成する能力が挙げられる。ペプチドベースの構造は、ペプチドの異種混合物(すなわち、所与のモジュラス、または、2以上の上記モジュラスに当てはまる1より多いタイプのペプチドを含む混合物)から形成され得る。ある実施形態では、各タイプのペプチドは、単独では自己集合し得ないが、異種ペプチドの組み合わせが、自己集合し得る(すなわち、混合物中のペプチドが、互いに相補的かつ構造的に適合性である)。他の実施形態では、混合物中の各タイプのペプチドは、それ自体で自己集合し得る。すなわち、同じ配列の自己相補性かつ自己適合性ペプチドの均質な混合物、もしくは、同じ反復サブユニットを含む均質な混合物、または、互いに対して相補的かつ構造的に適合性である異なるペプチドの異種混合物のいずれかが使用され得る。
【0065】
(自己集合性ペプチド上の)アミノ酸の選択は、β−シートの形成のような二次構造に影響を与えるために使用され得る。いくつかの自己集合性ペプチドは、β−シートマクロマーではなく、α−ヘリックスおよびランダムコイルを形成し得る。
【0066】
2以上のペプチドがまた、例えば、キラル双極子−双極子相互作用、π−πスタッキング、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性力、静電的相互作用および/または立体的斥力(repulsive steric force)のような相互作用によって連結され得る。
【0067】
単一アミノ酸残基によって、または、複数のアミノ酸残基によって(例えば、反復カルテットを含めるか、または排除することによって)体現されるものとは異なる、他の有用な自己集合性ペプチドが作製され得る。例えば、1以上のシステイン残基がペプチド内に組み込まれ得、そして、これらの残基は、ジスルフィド結合の形成によって互いに結合し得る。この様式で結合された構造は、システイン残基を含まない類似のペプチドを用いて作製された構造と比較して増大した機械的強度を有し得る。
【0068】
自己集合性ペプチドは、化学合成されても、当業者の知識の範囲内の方法により、天然もしくは組換えによって生成された供給源から精製されてもよい。例えば、ペプチドは、標準的なf−moc化学を用いて合成され、そして、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製され得る。f−moc化学は、アミノ酸側鎖の、9H−フルオレン−9H−イルメチルオキシカルボニル(f−moc)での保護を包含する。第二の保護されたアミノ酸が樹脂に結合される。保護されたアミノ酸が、樹脂に結合されたアミノ酸に曝露され、そして、ピペリジンのような穏やかな塩基性溶液によってf−mocが除去され、それによって、アミノ酸が結合することを可能にする。この様式で、アミノ酸の特定の配列がペプチドを形成するために使用され得る。所望の配列が形成されると、結果として生じたペプチドが樹脂から切断される。
【0069】
ある実施形態では、ヒドロゲル、自己集合性ペプチドまたはこの両方が、適用のために溶媒と組み合され得る。利用され得る溶媒は、生体適合性の溶媒を含む。両親媒性の物質について、溶媒は、ペプチドのある部分については良好な溶媒であり、そして、ペプチドの他の部分については劣った溶媒であるはずである。親水性溶媒に加えた場合、ペプチドは自己集合してミセルを形成し、親水性部分はこのミセルの外側に並び、そして、疎水性部分はこのミセルの内部近くに集まる。特定の条件下では、形成されるミセルは、直鎖状のミセルまたはナノファイバー状のマクロマーである。官能基化された任意のペプチドが反応して、自己集合したマクロマー構造に安定性を与え得る。自己集合した構造が直鎖状のミセルまたはナノファイバー状のマクロマーである場合、官能基は、放射状の架橋、ならびに、直鎖状のミセルまたはナノファイバー状のマクロマーの長さに沿った長手方向の架橋を提供し得る。
【0070】
適切な溶媒としては、水、生理食塩水、塩緩衝液および細胞培地のような水性溶媒が挙げられる。また、他の極性および非極性の溶媒は、ペプチドの自己集合機構と干渉しない場合用いられ得ることが想定される。
【0071】
ある実施形態では自己集合したマクロマーとして本明細書において時折言及される、多様な程度の堅さまたは弾性を有する自己集合性ペプチドの生成物が形成され得る。結果として生じるマクロマーの構造は、低い弾性係数(例えば、標準的なコーンプレートレオメーターにおいてなど、標準的な方法によって測定した場合に、1〜10kPaの範囲の係数)を有し得る。低い値が望ましくあり得る。なぜなら、低い値は、動きの結果として、圧力に応じて、そして/または、細胞収縮の事象において、構造の変形を可能にするからである。より具体的には、堅さは、前駆物質分子(例えば、自己集合性ペプチド)の長さ、配列および/または濃度を変更することによるものを含め、多様な方法で制御され得る。堅さを増大させるための他の方法もまた採用され得る。
【0072】
自己集合性ペプチドによって形成されるマクロマーの架橋の程度は、標準的な方法を用いて、光散乱、ゲル濾過、または、走査電子顕微鏡によって決定され得る。さらに、架橋は、マトリクスメタロプロテアーゼなどのプロテアーゼによる消化の後の構造のHPLCまたは質量分析法による解析によって検討され得る。物質の強度は、架橋の前後で決定され得る。
【0073】
自己集合性ペプチドによって形成されるマクロマー構造の半減期(例えば、インビボ半減期)もまた、後にマクロマー構造を形成する前駆物質中にプロテアーゼ切断部位もしくはペプチダーゼ切断部位を組込むことによって調節され得る。次いで、インビボで天然に存在するか、または、導入される(例えば、適用の間に)プロテアーゼまたはペプチダーゼが、分解を促進し得る。本明細書中に記載される修飾の組み合わせがなされ得る。例えば、プロテアーゼ切断部位およびシステイン残基を含む自己集合性ペプチド、ならびに/または、架橋剤、これらを含むキットおよびデバイス、ならびに、これらを使用する方法が利用され得る。
【0074】
ある実施形態では、自己集合性ペプチドによるマクロマーの形成は、例えば、UV光またはイオンによって開始され得る。長波長のUVおよび可視光で光活性化可能な開始剤としては、例えば、エチルエオシン群、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン群、他のアセトフェノン誘導体、チオキサントン群、ベンゾフェノン群、カンファーキノン群、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0075】
アニオンおよびカチオンを含む広範な種々のイオン(二価、一価または三価のいずれか)がペプチドの自己集合を開始するために使用され得る。例えば、Ca2+、Mg2+などのような二価のイオンへの曝露によって自己集合を開始し得、自己集合を誘導または増強するために必要とされるこのようなイオンの濃度は、少なくとも5mM(例えば、少なくとも10mM、20mMまたは50mM)であり得る。より低い濃度もまた、遅い速度ではあるが、集合を促進する。所望される場合、自己集合性ペプチドは、遅い速度ではあるが、自己集合を可能にする濃度において疎水性物質(例えば、薬学的に受容可能なオイル)を用いて送達され得る。
【0076】
多機構組成物の形成
本開示のヒドロゲルおよび自己集合性ペプチドは、同時に、または別々に、形成のために誘導され得る。本明細書中で使用される場合、「同時に」とは、ヒドロゲルおよび自己集合性ペプチドの形成が、ちょうど同時もしくはほぼちょうど同時に起こり始めることを意味する。他の実施形態では、ヒドロゲルがまずある構造を形成し、その構造の内部に自己集合性ペプチドがマクロマー形成の間に整列し得る。他の実施形態では、均質な形成を確実にするために、まず自己集合性ペプチドが形成され、その後、ヒドロゲルが形成される。ヒドロゲルおよび自己集合したペプチドは、物理的に絡ませられ得るか;一連の交互に貫通し合った網目構造となり得るか;層化され得るか;一緒に編まれ得;ヒドロゲルが、自己集合したマクロマーを包囲し得るか;自己集合したマクロマーがヒドロゲルを包囲し得るか;これらの組み合わせなどであり得る。また、本明細書においては、ヒドロゲルと自己集合したマクロマーは、自己集合したマクロマーのペプチドが相互作用するのと同じ様式によって(すなわち、例えば、イオン結合、共有結合、キラル双極子−双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性力、π−πスタッキング静電相互作用、または立体的斥力などの結合の形成によって化学的に)相互作用し得ることが想定される。
【0077】
ある実施形態では、多機構ヒドロゲルは、形成後に多孔性である。他の実施形態では、多機構ヒドロゲルは、形成後に滑らかもしくは非孔性である;ある実施形態では、形成されたヒドロゲルを脱水させることによって滑らかなヒドロゲルが形成され得る。ヒドロゲルおよび自己集合したマクロマーのいずれかもしくは両方が、非吸収性であっても吸収性であってもよい。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルおよび自己集合したマクロマーの両方が吸収性である。あるいは、ヒドロゲルが非吸収性であり得、そして自己集合したマクロマーが吸収性であり得るか、また、逆の場合もある。また、ヒドロゲルおよび自己集合したマクロマーの各々が、吸収性の成分および非吸収性の成分の両方を含み得ることも想定される。
【0078】
ヒドロゲルおよび/または自己集合したマクロマーの処方物は、インサイチュで、または、移植前にゲル化し得る。インサイチュでの形成は、組織への適用時に活性化されて、架橋ヒドロゲルを形成し得るヒドロゲル前駆物質を有することによって達成され得る。インサイチュでの形成について、架橋の開始は、前駆物質が架橋前には組織の形状に合っており、付随する形成がさもなくばかなり進行し過ぎているという条件で、組織への前駆物質の適用の前、間または後になされ得る。
【0079】
ヒドロゲルの形成をもたらす架橋反応は、いくつかの実施形態では、約1秒〜約5分の時間内に、ある実施形態では、約3秒〜約1分の時間内に生じ得;これらの技術分野の当業者は、これらの明示された範囲内のあらゆる範囲および値が企図されることを直ちに理解する。いくつかの場合、形成は10秒未満で生じ得る。
【0080】
ある実施形態では、自己集合性ペプチドは、組成物が身体組織に曝露されるか、または、身体組織と接触するときに、自己集合性マクロマーを形成し得る。組織接触後の自己集合は、例えば、約1秒より長い時間の後に生じ得る。
【0081】
ある実施形態では、ヒドロゲルおよび自己集合したマクロマーの形成は、同時に生じ得る。ある実施形態では、ヒドロゲル前駆物質の架橋は、自己集合したマクロマーの形成の前に生じる。ある実施形態では、ヒドロゲルは、1分未満で形成する。次いで、この形成されたヒドロゲルは、自己集合性ペプチドの均質な配置のための足場として機能し得、この自己集合性ペプチドは、ある実施形態では、1分より長い時間でマクロマーを形成する。ヒドロゲルおよび自己集合したマクロマーの互い違いに配置された形成は、インサイチュで、または、移植の前に生じ得る。なお他の実施形態では、自己集合性ペプチドは、ヒドロゲルの形成の前に自己集合したマクロマーを形成し得る。例えば、ある実施形態では、自己集合したマクロマーは、組織の接触の直後に形成され得るが、ヒドロゲルは、組織との接触から約5秒〜約5分で形成される。
【0082】
ヒドロゲルおよび自己集合したマクロマーのための任意の開始剤は、同じであっても異なっていてもよい。ある実施形態では、ヒドロゲルおよび自己集合したマクロマーの両方についての開始剤群が同じである場合、開始剤群は、例えば、UV光またはイオンであり得る。
【0083】
本開示の組成物は、組成物の重量の約1.5重量%〜約25重量%の量、ある実施形態では、組成物の重量の約3重量%〜約15重量%の量のヒドロゲルを含み得、自己集合したマクロマーは、組成物の重量の約0.5重量%〜約10重量%の量、ある実施形態では、組成物の重量の約1重量%〜約3重量%の量で存在する。
【0084】
添加物
本開示の多機構ヒドロゲルは、少なくとも1つの生物活性因子を含み得る。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルおよび/または自己集合したマクロマーは、少なくとも1つの生物活性因子を有し得る。用語「生物活性因子」とは、本明細書中で使用される場合、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質混合物を包含する。その結果、生物活性因子は、それ自体が薬理活性を有しても有さなくてもよい(例えば、色素)。あるいは、生物活性薬剤は、治療効果または予防効果を提供する任意の薬剤、組織成長、細胞増殖および/または細胞分化に影響を与えるかまたは関与する化合物、生物学的作用(例えば、免疫応答)を惹起することが可能であり得る化合物、あるいは1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たし得る化合物であり得る。
【0085】
本開示にしたがって利用され得る生物活性因子の分類の例としては、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、抗癒着物質、麻酔薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心血管系の薬物、診断剤、交感神経作用薬、コリン作用薬、抗ムスカリン作用薬、鎮痙薬、ホルモン剤、増殖因子、筋弛緩薬、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性因子、免疫抑制薬、消化管系の薬物、利尿薬、ステロイド、麻薬、脂質、リポ多糖類、多糖類、ペプチド、タンパク質、ホルモンおよび酵素が挙げられる。また、生物活性因子の組み合わせが使用され得ることも意図される。
【0086】
本開示の組成物中に生物活性因子として含められ得る適切な抗菌剤としては、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしても公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンおよび硫酸クロルヘキシジンを含む)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリル酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク質および銀スルファジアジンを含む)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール)、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil))、ノンオキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシンBのような抗菌性のタンパク質およびペプチドが、生物活性因子として含められ得る。
【0087】
生物活性因子として含められ得る他の生物活性因子としては、以下が挙げられる:局所麻酔薬;非ステロイド性避妊剤;副交感神経作用剤;精神療法剤(psychotherapeutic agent);精神安定薬;うっ血除去薬;沈静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛剤(anti−migraine agent);抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心血管系の薬剤(例えば、冠動脈拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチラート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイド受容体アンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗癌剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬物;エストロゲン;抗菌薬;抗生物質;抗真菌薬;抗ウイルス薬;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;および免疫学的因子。
【0088】
ヒドロゲルおよび/または自己集合したマクロマー中に含められ得る適切な生物活性因子の他の例としては、以下が挙げられる:ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、アナログ、ムテイン、ならびにこれらの活性フラグメント(例えば、免疫グロブリン、抗体)、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍因子および腫瘍抑制遺伝子(tumor suppressor)、血液タンパク質、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原、およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子(例えば、神経増殖因子、インスリン様増殖因子);タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニストおよびタンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNAおよびRNA);オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;ならびにリボザイム。
【0089】
ある実施形態では、単一の生物活性因子が本開示の多機構組成物において利用され得るか、または、代替的な実施形態では、生物活性因子の任意の組み合わせが本開示の多機構組成物において利用され得る。
【0090】
生物活性因子と組み合わされ、多機構組成物において利用され得る吸収性材料としては、可溶性ヒドロゲル(例えば、ゼラチンまたはデンプン)またはセルロースベースのヒドロゲルが挙げられる。ある実施形態では、吸収性材料は、アルギナートまたはヒアルロン酸であり得る。多機構組成物において利用され得る吸収性材料の他の例としては、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、ジオキサノン、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、これらのホモポリマー、これらのコポリマーおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0091】
投与
多機構外科用組成物は、使用前に溶液中に配置され得、この溶液が患者に送達される。ヒドロゲル系の溶液は、有害もしくは毒性の溶媒を含むべきではない。ある実施形態では、多機構組成物は、緩衝化された等張の生理食塩水のような生理学的に適合性の溶液中での用途を可能にするため、実質的に水中に可溶性であり得る。前駆物質の溶液を適用するために、米国特許第4,874,368号;同第4,631,055号;同第4,735,616号;同第4,359,049号;同第4,978,336号;同第5,116,315号;同第4,902,281号;同第4,932,942号;同第6,179,862号;同第6,673,093号;および同第6,152,943号に記載されるもののような、デュアルシリンジまたは同様のデバイスを使用し得る。
【0092】
用途
多機構組成物は、公知のヒドロゲル組成物の基質として、または、公知のヒドロゲル組成物と組み合わせて使用され得る。例えば、多機構組成物は、組織接着剤として、インサイチュで移植物を組織に接着させるため、インサイチュでの組織の再形成のため、上に列挙された生物活性因子の徐放性送達を形成するため、そして、当業者の知識の範囲内の他の用途のために使用され得る。
【0093】
多機構組成物は、開胸式および最小侵襲性の両方の外科処置において使用され得る。例えば、多機構組成物は、腹腔鏡、内視鏡または関節鏡外科手術の間に使用され得る。
【0094】
当業者が本明細書中に記載される本開示の特徴をより良く実施することが可能となるように、本開示の特徴を例示する以下の実施例が提供されるが、この実施例は限定的なものではない。
【実施例】
【0095】
実施例1
コラーゲン溶液を予め形成された自己集合性ペプチドのナノファイバーと組み合わせる。自己集合性ペプチドは、全て負に荷電しているか、または、正に荷電したものと負に荷電したものの混合物のいずれかである。次に、コラーゲン溶液を、シリンジを用いてインサイチュで噴霧し、この間、求電子性官能基を含む第2のシリンジを同時に噴霧する。
【0096】
実施例2
求核性官能性ポリマー溶液と求電子性官能性ポリマー溶液を同時にインサイチュで噴霧する。求核性溶液または求電子性溶液のいずれかに自己集合性ペプチドが含まれており、その結果、これらは可溶性である。一度インサイチュで混合されると、ペプチドは自己集合して、ペプチドマクロマーを生成し、この間、求電子性ポリマーおよび求核性ポリマーが反応して架橋したゲルを形成する。
【0097】
実施例3
求核性前駆物質および求電子性前駆物質を、鋳型内に同時に噴霧して、規定された寸法のヒドロゲルを生成する。次に、このヒドロゲルを凍結乾燥して発泡体を生成する。インサイチュで移植する前に、この発泡体を、自己集合性ペプチド溶液(水性)中に浸漬させる。一度移植されると、このペプチドは自己集合を開始し、ペプチドマクロマーを生成する。
【0098】
上記説明は、多数の詳細を含むが、これらの詳細は、本開示の範囲の限定であると解釈されるべきではなく、単に、本開示の好ましい実施形態の説明であると解釈されるべきである。当業者は、本開示の範囲および趣旨内で、他の多くの可能なバリエーションを予測する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、以下:
求電子性基、求核性基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;ならびに
少なくとも1つの自己集合性ペプチド
を含み、ここで、該自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成するのと同時に、該ヒドロゲル前駆物質がヒドロゲル組成物を形成する、組成物。
【請求項2】
前記自己集合性ペプチドが両親媒性ペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記求電子性官能基が、カルボジイミダゾール基、塩化スルホニル基、クロロカーボネート基、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、スクシンイミジルエステル基、スルホスクシンイミジルエステル基、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル基、メタンジイソシアネート基、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)基、イソシアネート基、シアノアクリレート、アルデヒド、ゲニピン、ジイソシアネート基、ヘキサメチレンジイソシアネート基、マレイミド基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記求核性官能基が、−NH、−SH、−OH、−PHおよび−CO−NH−NHならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質が、求電子性基を含有する第1のヒドロゲル前駆物質を、求核性基を含有する第2のヒドロゲル前駆物質と組み合わせて含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1のヒドロゲル前駆物質の前記求電子性官能基が、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルを含み、前記第2のヒドロゲル前駆物質がトリリジンを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物がさらに生物活性因子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ヒドロゲル組成物であって、以下:
求電子性官能基および求核性官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;ならびに
少なくとも1つの自己集合性ペプチド;
を含み、ここで、該自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成する前に、該ヒドロゲル前駆物質がヒドロゲル組成物を形成する、ヒドロゲル組成物。
【請求項9】
移植物であって、以下:
少なくとも1つの求電子性ポリマーおよび少なくとも1つの求核性ポリマー;ならびに
少なくとも1つの自己集合性ペプチド;
を含み、該自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成する前に、該求電子性ポリマーおよび該求核性ポリマーが組成物を形成する、移植物。
【請求項10】
前記組成物が、フィルム、発泡体、組織足場および薬物送達デバイスからなる群より選択される、請求項9に記載の移植物。
【請求項11】
前記組成物が、少なくとも部分的にペプチド溶液中で水和される、請求項9に記載の移植物。
【請求項12】
前記自己集合性ペプチドが水溶液と組み合わされる、請求項9に記載の移植物。
【請求項13】
ヒドロゲル組成物であって、以下:
求電子性官能基および求核性官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;ならびに
少なくとも1つの自己集合性ペプチド;
を含み、ここで、該ヒドロゲル前駆物質がヒドロゲルを形成する前に、該自己集合性ペプチドが自己集合したマクロマーを形成する、ヒドロゲル組成物。
【請求項14】
前記ヒドロゲルが、約5秒〜約5分でヒドロゲル組成物を形成する、請求項13に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項15】
前記求核性官能基が、コラーゲン、ゼラチンまたは血清からなる群より選択されるポリマーを構成する、請求項13に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項16】
前記求核性官能基がさらに、前記少なくとも1つの自己集合性ペプチドを構成する、請求項15に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項17】
インサイチュで組成物を形成するためのキットであって、以下:
求電子性基、求核性基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される官能基を含有する少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質;
自己集合性ペプチド;
該ヒドロゲル前駆物質および該自己集合性ペプチドをインサイチュで導入するための手段;ならびに
該自己集合性ペプチドおよび該ヒドロゲル前駆物質のゲル化をインサイチュで開始させるための手段
を備える、キット。
【請求項18】
前記ゲル化を開始させるための手段が、前記自己集合性ペプチドおよび前記ヒドロゲル前駆物質のゲル化を同時に起こさせる、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記ゲル化を開始させるための手段が、前記自己集合性ペプチドのゲル化を前記ヒドロゲル前駆物質のゲル化の前に起こさせる、請求項17に記載のキット。
【請求項20】
前記ゲル化を開始させるための手段が、前記自己集合性ペプチドのゲル化を前記ヒドロゲル前駆物質のゲル化の後に起こさせる、請求項17に記載のキット。
【請求項21】
前記求電子性官能基が、カルボジイミダゾール基、塩化スルホニル基、クロロカーボネート基、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、スクシンイミジルエステル基、スルホスクシンイミジルエステル基、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル基、メタンジイソシアネート基、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)基、イソシアネート基、シアノアクリレート、アルデヒド、ゲニピン、ジイソシアネート基、ヘキサメチレンジイソシアネート基、マレイミド基およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17に記載のキット。
【請求項22】
前記求核性官能基が、−NH、−SH、−OH、−PHおよび−CO−NH−NHならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17に記載のキット。
【請求項23】
前記少なくとも1つのヒドロゲル前駆物質が、求電子性基を含有する第1のヒドロゲル前駆物質を、求核性基を含有する第2のヒドロゲル前駆物質と組み合わせて含む、請求項17に記載のキット。
【請求項24】
前記第1のヒドロゲル前駆物質の前記求電子性官能基が、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルを含み、前記第2のヒドロゲル前駆物質がトリリジン、コラーゲン、ゼラチンおよび血清からなる群より選択されるポリマーを含む、請求項17に記載のキット。

【公開番号】特開2011−74075(P2011−74075A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223973(P2010−223973)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】