説明

多機能クロス

【課題】本発明は、自然界鉱石が含有するBGと有意差のない、すなわち人体に無害な低レベルの微量放射線の電離作用を利用した人工的エネルギー、光源等を一切必要とせずに無条件下で、24時間恒常的に有効なる抗菌力、消臭力の機能を有する屋内に好適な感染予防や防臭性に優れた多機能クロスを提供する。
【解決手段】生地にウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスを固定させて形成した感染予防や防臭性に優れた多機能クロスであって、前記多機能クロスは、前記セラミックスの電離作用により、JIS−L−1902菌転写法により評価される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、および黄色ブドウ球菌において0.0以上、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量放射線の電離作用エネルギーを利用した院内感染予防、療養環境改善および加齢臭除去などに用いられる多機能クロスに関するもので、特に、難燃剤リン酸エステル系化合物およびノニオン系界面活性剤を主成分とし、自然界に存在する鉱石より得られる複合酸化物を分散物として含み、自然界と有意差の無い微量放射線の電離作用エネルギーを利用した院内感染予防、療養環境改善、加齢臭等の対策用カーテン、パーテションに好適な感染予防、防臭性に優れた多機能クロスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
21世紀は感染の世紀とも言われ、各国はその感染予防対策が急務とされています。近年、高度化医療に伴う院内感染は多剤性耐性菌を起因とした接触感染によるものが多く、更に現在A型インフルエンザ等の飛沫感染に対する予防対策も課題となっている。
その感染予防策として、うがい、手洗い、抗生物質等の使用を抑えるなどが採られているが、未だより具体的かつ有効な予防策は見出せていない。
【0003】
そのような状況の中、事前の感染予防の環境改善対策として、使用環境における消臭、抗菌、防濁などの環境項を改善することにより院内感染を無くそうとする試みが行われている。その一つとして日常比較的接触度の高い院内の療養病床の間仕切りカーテン、パーテションに消臭、抗菌作用のある素材の使用が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載される光触媒を利用した抗菌防臭性物品などが提案されている。この特許文献1では、紫外線照射により触媒能を発揮する光触媒微粒子と、紫外線照射により蛍光発光する有機系蛍光剤の蛍光増白剤と、光触媒微粒子を繊維に固着させるバインダーを所定割合で混合した処理液を用いた抗菌防臭布で構成されるカーテンが提案されている。
【0005】
また、使用環境における消臭、抗菌、防濁などの環境項を有するマイナスイオンの利用にも関心がもたれ、その中で自然界のジルコニウム鉱石や、それらの複合酸化物を焼成して得られるセラミックスが、マイナスイオンを発生することが知られ、その利用が図られている。
【0006】
例えば、特許文献2には、酸化により光触媒機能を発揮する金属粉体を、表面から内部に入るに従って酸素との結合が僅かずつ欠乏する構造に酸化させて成る光触媒粉体と、天然放射性物質であるトリウムを含む放射性粉体と、多数の繊維が絡み合って構成されるシート状を成し、前記光触媒粉体及び前記放射性粉体を相互に接触乃至は近接させた状態で担持する担持体を備える機能性シートが提案されている。
【0007】
さらには、特許文献3では、竹、桐および茶葉から選ばれた少なくとも1種の植物、多孔性無機物質、並びにモナザイト、バストネサイト、トルマリン鉱石、松鉱石およびレアアース鉱石から選ばれた天然放射性稀有元素を含む少なくとも1種の磁性体鉱物から選ばれた少なくとも1種からなるマイナスイオン発生性物質が、シリコーン樹脂を介して、繊維表面に固着されている繊維構造物が提案されている。
【0008】
なお、一般に自然界に存在するジルコニウム鉱石の中には、低レベルの微量なウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むものがあることは知られている。これらの自然の鉱物から発生する低レベルの微量放射線は、地球上のどこでも存在する、いわゆるバックグランドと優位差が認められない程度の微量放射線であり、電離放射線障害防止規則による、放射性物質の許容限度内、74Bq/g以下であり地球上どこの大気中にも微量に存在する程度で、もとより地球上に存在して人類と共存してきた鉱物であり、健康障害にはならないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−328043号公報
【特許文献2】特開2005−304859号公報
【特許文献3】特開2004−232167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2などで提案される酸化チタンなどの光触媒を用いた抗菌防臭布で構成されるカーテンや機能性シートでは、その機能を常に発揮させるためには、光、一般に紫外線の照射が常に要求されるもので、屋外における利用に際しては太陽光の利用が可能であるが、病院などの屋内では光源を別途用意しなくてはならず、昼夜24時間、効果を発揮することが困難であり、さらに光触媒の原料高や光源の使用などによるランニングコストがかかることなどからコスト高となる問題がある。
【0011】
また、特許文献2、3に示される天然放射性稀有元素や放射線粉体を含む織物構造物や機能性シートでは、使用する天然放射性稀有元素や放射線粉体から発生する放射線の放射能濃度が明確ではなく、地球上のどこでも存在する、いわゆる自然界のバックグランドレベルを超えて利用されている恐れがある。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑み、自然界鉱石が含有するバックグランドと有意差のない、すなわち人体に無害な低レベルの微量放射線の電離作用を利用し、かつ人工的エネルギー、光源等を一切必要とせずに無条件下で、24時間恒常的に有効なる抗菌力、消臭力の機能を有する屋内に好適な感染予防、防臭性に優れた多機能クロスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の発明は、生地にウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスを固定させて形成した感染予防や防臭性に優れた多機能クロスであって、この多機能クロスはセラミックスの電離作用により、JIS−L1902菌転写法により評価される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、および黄色ブドウ球菌において0.0以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは多剤性耐性菌MRSAにおいて0.8以上、肺炎桿菌において0.5以上、および黄色ブドウ球菌において1.0以上であり、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第二の発明は、ウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスを固定した生地を2層以上積層して形成した感染予防や防臭性に優れた多機能クロスで、その多機能クロスがセラミックスの電離作用により、JIS−L−1902菌転写法により評価される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、および黄色ブドウ球菌において0.0以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは多剤性耐性菌MRSAにおいて0.8以上、肺炎桿菌において0.5以上、および黄色ブドウ球菌において1.0以上であり、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明の第三の発明は、ウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスを分散質として含む難燃剤リン酸エステル系化合物およびノニオン系界面活性剤を主成分とする含浸剤を、含浸、固定した生地を少なくとも1層以上積層して形成した感染予防や防臭性に優れた多機能クロスで、その多機能クロスがセラミックスの電離作用により、JIS−L−1902菌転写法により評価される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、および黄色ブドウ球菌において0.0以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは多剤性耐性菌MRSAにおいて0.8以上、肺炎桿菌において0.5以上、および黄色ブドウ球菌において1.0以上であり、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の第四の発明は、本発明の第一から第三の発明におけるウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスが、
A群:ヘビーミネラルコンセントレイト(重砂)、サタンダードジルコン、ピュアジルコン、プライムジルコンからなる群、
B群:モナザイト原砂、イットリウム原砂(ゼノタイム)、イルメナイト中間体、バテライトからなる群、
C群:ジルコニア、
D群:バストネサイト、
の1群または2群以上から選ばれる粉砕混合物、または前記粉砕混合物を焼成後に粉砕した粉砕物であることを特徴とする。
【0017】
本発明の第五の発明は、本発明の第一の発明から第四の発明における、多機能クロスの生地に固定もしくは含浸、固定されるセラミックスの量は、平均放射能濃度74[Bq/g]以下で示される量で、より好ましくは35〜60[Bq/g]の平均放射能濃度で示される量であることを特徴とする。
【0018】
本発明の第六の発明は、本発明の第一の発明から第五の発明のいずれかの多機能クロスを用いた院内感染予防、防臭対策用カーテンである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の多機能クロスを屋内のスクリーン、カーテン、壁紙などに使用すれば、光触媒のように人工的エネルギー(光源)を一切必要とせずに、24時間、昼夜の区別なく恒常的に多機能クロスに付着する多剤性耐性菌MRSA、浮遊する肺炎桿菌を錯体減少させ、さらにアンモニア臭等の室内臭気結合物質を分解、消臭する機能を発揮し、病室内などの家屋内の臭気、空気環境の改善を図ることができ、院内感染予防等に極めて顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の多機能クロスの利用法の一例を示す図である。
【図2】本発明の多機能クロスの利用法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、天然鉱物の複合粉砕物、あるいはそれらの複合酸化物を更に焼成して得られたセラミックスの極微粒子を分散質として用いて生地に固定、あるいは、その分散質を難燃剤リン酸エステル系化合物およびノニオン系界面活性剤を主成分とする含浸溶剤に配合して生地に含浸させた多機能クロスに関するものである。
【0022】
本発明者らは、マイナスイオンを発生して消臭、抗菌、防濁などの環境項を改善する機能を有する天然鉱物の粉砕物または複合粉砕物、或いは更にそれらの複合粉砕物を焼成して形成したセラミックスにおいて、それらから発生する天然マイナスイオン(ここでは、自然に放出されているマイナスイオンを称す)を、直接利用する方法以外の可能性として、自然界の低レベル微量放射線の電離作用に着目し、院内感染菌(MRSA)等の「電離錯体」による菌減少、更にアンモニア臭気結合物質等の「電離分解」による消臭性能について鋭意研究を行った。
【0023】
その結果、低レベル微量放射線におけるマイナスイオン発生数値は、年月日、場所、時刻等により不規則、不安定かつランダムな数値を示すために科学的な根拠となりうる、有効なる利用規準数値が見出せないという課題に突き当たったが、発想視点を自然界低レベル放射線における電離作用に着目して、これらの天然鉱物の複合粉砕物、それらの複合酸化物を更に焼成して形成したセラミックスの電離作用における院内感染菌錯体減少、臭気結合物質の分解消臭機能等を研究した結果、低レベル微量放射線の「有効なる臨界基準数値」を見出し、更に、それらのセラミックスが「核崩壊の連鎖反応の相乗効果」を引き起こすことも見出して本発明に至った。
【0024】
本発明に係る多機能クロスは、セラミックスの電離作用により、JIS−L−1902菌転写法により示される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、および黄色ブドウ球菌において0.0以上、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上であることを特徴とし、さらに、より詳細には、JIS−L−1902菌転写法により示される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、および黄色ブドウ球菌において0.0以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは多剤性耐性菌MRSAにおいて0.8以上、肺炎桿菌において0.5以上、および黄色ブドウ球菌において1.0以上であり、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上の性能を有している多機能クロスである。
【0025】
ここで、菌減少値で示す抗菌力性能は、菌のDNAに電離障害、すなわち細胞分裂障害を与えることにより、菌の増殖を抑え減少させるもので、感染予防に有効であり、また消臭性能は、一般にアンモニア(NH)で代表される臭気結合物質の電子を飛ばすと、臭気結合物質が水素と窒素に分離(電離分解)されることにより消臭作用を発揮するものである。
【0026】
本発明は、多機能クロスを構成する生地にウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスを固定、もしくは含浸、固定させて形成したもので、生地一枚の単層体、あるいは生地を積層した積層体として多機能クロスを構成している。
単層体の多機能クロスでは、固定されたセラミックスの放射線による電離作用によるもので、放射線が物質を通過する際に、その物質を構成する原子、分子にエネルギーを与え、原子、分子から軌道電子を弾き飛ばす(電離)させる性質を利用して、上記電離障害、電離分解を行うものである。
【0027】
一方、積層体の多機能クロスでは、その電離作用の効果のみならず、セラミックスを固定した生地を積層したことにより、本発明のような低レベルの放射線下においても核崩壊の連鎖反応を引き起こすことで、単層体の多機能クロスに比較して、相和的でなく相乗的にマイナスイオンを放出することができ、より高い効果を示している。
【0028】
そこで、使用するウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスは、
A群:ヘビーミネラルコンセントレイト(重砂)、スタンダードジルコン、ピュアジルコン、プライムジルコンからなる群、
B群:モナザイト原砂、イットリウム原砂(ゼノタイム)、イルメナイト中間体、バテライトからなる群、
C群:ジルコニア、
D群:バストネサイト、
の1群または2群以上から選ばれる粉砕混合物、または、その粉砕混合物を焼成後に粉砕した粉砕物のセラミックスが好ましい。
【0029】
これら粉砕混合物のセラミックス、あるいは粉砕混合物を焼成後に粉砕した粉砕物のセラミックスを、クロスに固定する量としては、生地1層(即ち、生地1枚)からなるクロスにおいて、電離放射線障害防止規則による放射性物質の許容限度74Bq/g以下となるような量で、より望ましくはセラミックスから発生する放射線の放射能濃度がセラミックス1g当たり35.0〜60.0Bqの範囲となるような量であることが好ましい。この値未満では表1にも示すように放射線発生の不安定さ(例えば、マイナスイオン数の標準偏差が大きいこと類推できる)の点から、その効果が見られなくなってしまうことがあり限定したものである。また、これを超える値では、その効果に顕著な向上が見られなくなるために限定している。
【0030】
また、2層以上の生地からなるクロスの場合でも、クロスを構成する各生地は、生地1層の場合と同じように、放射能濃度がセラミックス1g当たり74Bq以下、好ましくは35.0〜60.0Bqの範囲となるような量を用いる。
なお、セラミックスの自体の成分組成は、セラミックスを構成するA群、B群、C群、D群から好ましい放射能濃度になるように群種および配合量を適宜選択する。
【0031】
次に、上記セラミックスが固定される生地については、ポリエステルなどの合成繊維、綿や絹などの天然繊維による布、織物など、あるいは紙、プラスチックフィルム、シートなどが用いられるが、これらに制限されるものではなく、用途に応じて適宜選択される。
【0032】
さらに、生地にセラミックスを固定する方法としては、バインダーを含む含浸剤を生地に含浸し、乾燥する含浸法、セラミックスを含むインクによるインク塗布法やコーティング法などを使用することができる。なお、用いるバインダーや界面活性剤などの種類、配合比は、生地にセラミックスを確実に固定できる範囲で適宜選択すればよい。
【0033】
本発明の多機能クロスの利用法には、図1に示すような、全面に本発明のクロスを感染予防、防臭カーテンとして利用した衝立型スクリーン(間仕切り)10、各種カーテン、あるいは内装用壁紙などの全体に本発明のクロスを用いる方法ばかりではなく、壁や既存のスクリーンの一部にクロスを貼り付け(図2)で用いても良い。また、布団やシーツのカバーなどのように覆う形での利用も良い。図1、図2において、1は本発明の多機能クロス、10は衝立型スクリーン、11は本発明の多機能クロスを貼付した抗菌、防臭に優れる装飾カーテン、20はスクリーンポール、21は台カーテンである。
以下に、実施例を用いて本発明を、より詳細に説明する。
【実施例】
【0034】
上記A群、B群、C群、D群より適宜選択して、平均放射能濃度が35.0[Bq/g]、42.4[Bq/g]、60.0[Bq/g]となるように配合した平均粒径4μmのセラミックスを、難燃剤リン酸エステル系化合物およびノニオン系界面活性剤を主成分とする含浸溶剤に添加して作製した含浸剤を、綿標準白布に含浸、固定して試験に供するクロスを作製し、作製したクロスから放出されるマイナスイオン量を微量放射線マイナスイオン換算測定により評価した。その結果を表1に示す。
測定に際しては、微量放射線マイナスイオン換算測定器:COM−3010pro(コムシステム社製)を使用した。
なお、表1中の本発明品1から4のマイナスイオン数は、24回の測定の平均値、および標準偏差で示し、本発明品5、6のマイナスイオン数は、8回の測定結果の平均値、標準偏差である。
【0035】
本発明品1から3はそれぞれ平均放射能濃度が35.0[Bq/g]、42.4[Bq/g]、60.0[Bq/g]のクロス、本発明品4は本発明品1を2枚重ねた2層クロス、本発明品5は本発明品1に示すクロスを作製後10ヶ月間放置したクロス、本発明品6は本発明品4に示す多層体クロスを作製後10か月間放置したクロスをそれぞれ用いた。
【0036】
【表1】

【0037】
次に表1に示したクロスについて多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌、これら3つの菌に対する抗菌性能及びその耐久性、消臭性について調べた実施例を以下に示す。
なお、電離作用による多機能クロスに関する抗菌性能は、JIS−L−1902菌転写法を使用した菌減少値により評価した。
このJIS−L−1902菌転写法は、実際の使用環境に類似する乾燥下の標準生地検体に直接MRSA菌を転写するもので、従来の標準生地検体を培養液に浸す高湿下でのJIS−L−1902菌液吸収法に比べて現実的な実効性能に優れた方法である。
本発明では、各菌を接種後4時間経過後の菌減少値、および抗菌性能の耐久性を調べるために、接種後にJAFET標準配合洗剤を使用したJIS−L−0217−103法の洗濯方法による洗濯を5回、多剤性耐性菌MARSに関しては、5回並びに10回行い、洗濯後の生菌数、および菌減少値を評価した。
【実施例1】
【0038】
本発明クロスの多剤性耐性菌MRSAに対する抗菌性能およびその耐久性について評価した。
耐久性は、JIS−L−0217−103法の洗濯試験(5回、10回)を行い、その洗濯試験後のクロスの抗菌性能を評価した。供試材には、本発明品1のクロスを用いた。その結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【実施例2】
【0040】
本発明クロスの肺炎桿菌に対する抗菌性能およびその耐久性について評価した。
耐久性は、JIS−L−0217−103法の洗濯試験(5回)を行い、その洗濯試験後のクロスの肺炎桿菌に対する抗菌性能を評価した。供試材には、本発明品2のクロスを用いた。その結果を表3に示す。
【0041】
【表3】

【実施例3】
【0042】
本発明クロスの黄色ブドウ球菌に対する抗菌性能およびその耐久性について評価した。
耐久性は、JIS−L−0217−103法の洗濯試験(5回)を行い、その洗濯試験後のクロスの黄色ブドウ球菌に対する抗菌性能を評価した。供試材には、本発明品3のクロスを用いた。その結果を表4に示す。
【0043】
【表4】

【実施例4】
【0044】
本発明クロスのアンモニア臭に対する防臭性およびその効果の耐久性について評価した。
耐久性は、JIS−L−0217−103法の洗濯試験を5回および10回行った後、JIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率を評価した。消臭率は、試験開始直後のアンモニア濃度を初発濃度とし、2時間および24時間経過後のアンモニア濃度を測定して求めた。供試材は本発明品1のクロスを用いた。その結果を表5に示す。なお、比較として、供試材を用いないブランク状態の経時変化を測定して併記した。
【0045】
【表5】

【実施例5】
【0046】
本発明品1のクロスを用いて、図1に示す衝立型スクリーンを作製し、10か月の長期間にわたり療養病室内に間仕切りとして設置して、その効果を評価した。
設置した当初より部屋全体が非常に感じよく、昼夜を問わずに爽やかに感じられるようになり、試験期間中、快適に過ごせるようになった。また、消臭に関しても極めて高い消臭効果を示し、臭いが気にならないレベルを維持していたとの好評を得ている。
【0047】
(従来例)
従来例として綿標準白布を用いて、菌減少値を本発明品1と同様に測定し、その結果を表1に示す。また、この綿標準白布を実施例1、2、3に対する従来例として用いて、抗菌性能を比較し、その結果を表2、3、4に示す。
【0048】
表1から表5で明らかなように、本発明の多機能クロスは、低レベル放射線の電離作用の利用により、極めて良好な抗菌性能や防臭性を示していることがわかる。また、その経時的な性能劣化も無く長期間の使用が可能であり、表2から表5に示される洗濯試験の結果からは、本発明のクロスが有する効果の耐久性にも優れていることがわかる。
特に、表1の本発明品4、6に示す2層体とした多機能クロスの場合には、単純に単層体の2倍のマイナスイオンが放出されるのではなく、相乗的に4〜5倍の多さになっているのがわかり、より大きな効果を示すものである。
【0049】
さらに本発明の多機能クロスは、時間軸においてマイナスイオン数の放出の変動が大きいことが、表1のマイナスイオン数の標準偏差から伺えるが、これは本発明の利点であり絶えず変動することにより耐性菌の形成を抑制する働きを担うものと考えられる。
特に、本発明の多層体のクロスでは効果の著しい向上が見られると同時に、低レベル微量放射線の崩壊における連鎖反応の相乗効果が、不規則、不安定で更にランダムな数値を示すことから、新たなる耐性菌発生への抑制作用がより大きいと考えられる。
【0050】
また、本発明の多機能クロスは、光触媒を用いたクロスのように紫外線などの光源を必要とせず夜間のような暗闇の中においても24時間効果を発揮するものである。
【符号の説明】
【0051】
1 本発明の多機能クロス
10 衝立型スクリーン
11 本発明の多機能クロスを貼付した装飾カーテン(タペストリー)
20 スクリーンポール
21 台カーテン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地にウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスを固定させて形成した感染予防や防臭性に優れた多機能クロスであって、
前記多機能クロスは、前記セラミックスの電離作用により、JIS−L−1902菌転写法により評価される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、および黄色ブドウ球菌において0.0以上、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上であることを特徴とする多機能クロス。
【請求項2】
ウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスを固定した生地を2層以上積層して形成した感染予防や防臭性に優れた多機能クロスであって、
前記多機能クロスは、前記セラミックスの電離作用により、JIS−L−1902菌転写法により評価される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、および黄色ブドウ球菌において0.0以上、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上であることを特徴とする多機能クロス。
【請求項3】
ウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスを分散質として含む難燃剤リン酸エステル系化合物およびノニオン系界面活性剤を主成分とする含浸剤を、含浸、固定した生地を少なくとも1層以上積層して形成した感染予防や防臭性に優れた多機能クロスであって、
前記多機能クロスは、前記セラミックスの電離作用により、JIS−L−1902菌転写法により評価される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、および黄色ブドウ球菌において0.0以上、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上であることを特徴とする多機能クロス。
【請求項4】
前記多機能クロスが、前記セラミックスの電離作用により、JIS−L−1902菌転写法により評価される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSA、肺炎桿菌、および黄色ブドウ球菌において0.5以上、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の多機能クロス。
【請求項5】
前記多機能クロスが、前記セラミックスの電離作用により、JIS−L−1902菌転写法により評価される菌減少値が、多剤性耐性菌MRSAにおいて0.8以上、肺炎桿菌において0.5以上、および黄色ブドウ球菌において1.0以上、かつJIS−L−2017−103法の消臭試験によるアンモニア臭の消臭率80%以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の多機能クロス。
【請求項6】
前記ウラン系列核種元素またはトリウム系列核種元素を含むセラミックスが、
A群:ヘビーミネラルコンセントレイト(重砂)、サタンダードジルコン、ピュアジルコン、プライムジルコンからなる群、
B群:モナザイト原砂、イットリウム原砂(ゼノタイム)、イルメナイト中間体、バテライトからなる群、
C群:ジルコニア、
D群:バストネサイト、
の1群または2群以上から選ばれる粉砕混合物、または前記粉砕混合物を焼成後に粉砕した粉砕物である請求項1から5のいずれか1項に記載の多機能クロス。
【請求項7】
前記多機能クロスの生地に固定もしくは含浸、固定される前記セラミックスの量が、74[Bq/g]の平均放射能濃度で示される量以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の多機能クロス。
【請求項8】
前記多機能クロスの生地に固定もしくは含浸、固定される前記セラミックスの量が、35.0〜60.0[Bq/g]の平均放射能濃度で示される量である請求項1から6のいずれか1項に記載の多機能クロス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の多機能クロスを用いた院内感染予防、防臭対策用カーテン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−106037(P2011−106037A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259559(P2009−259559)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(501299370)株式会社イージー循環研究所 (3)
【出願人】(504424524)
【Fターム(参考)】