説明

多機能光触媒塗料被膜及びその製造方法

【課題】多機能光触媒的及び衛生的な塗料及びそれらの塗布方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも二つの成分の反応によって作られる多孔質の無機物質ベースの多機能塗料。TiOナノ粒子は、この材料の表面に付着される。第一の成分は水に不溶性のカルシウム化合物であり、第二の成分は水に可溶性の硫酸塩である。該多機能塗料の表面への塗布方法は、最初に、不溶性のカルシウム化合物の懸濁水を含む第一の成分を処理範囲に塗布し、続いて第二の成分の水溶液中に懸濁したTiOナノ粒子の混合物を第一の成分の上に塗布することである。もう一つの方法は、処理表面上にTiOナノ粒子も含む第一の成分の懸濁水を塗布し、そして層の上の第二の成分の水溶液を付着する。全ての成分の混合物は、処理範囲に一度で塗布することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒効果及び衛生的効果を備えたTiOナノ粒子ベースの多機能塗料並びに壁、塗装された表面及び建設資材への該塗料の塗布方法に関する。この多機能被膜は被覆、清浄、衛生、抗菌、カビ防止、光触媒機能及びその他の機能を有する。
【背景技術】
【0002】
現代的なプラスチック及び建物での空気再循環システムの使用は、関連した副次的な悪影響を取り除くことを要求している。すなわち、それは望ましくないアルデヒド及びおよそ200種の他有機物質の徐放、及び冷暖房空調設備(HVAC)システムを通した悪影響の建物全体への拡散である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の塗料及び顔料の基礎的な機能は常に色及び隠蔽力にある。しかしながら、塗料に他の機能を加える益々多くの試みがなされている。歴史的観点から、そのような塗料の最初は、新鮮な形態において、白色の塗料としてそして同様に衛生的な塗料として機能する石灰である。過去10年において、TiOナノ粒子の基礎的な光触媒の効果の利用は非常に人気がある。TiOの光触媒効果の有効性はよく評価されたが、光活性塗料中でのTiOの利用に伴う全ての問題は未だ満足に解決されていない。
【0004】
TiOナノ粒子を無機ケイ酸塩塗料に混合した場合、ナノ粒子の表面は通常酸化ケイ素(SiO)によってカプセル化され、望ましい光触媒作用が阻害される。このSiOによるTiO顔料粒子の表面改質は、ほぼ一世紀の間塗料工業で使用され、塗料を白亜化から防ぐ光触媒効果を減少させた。ケイ酸塩ベースの生成物の光触媒効果は、最良の状態では残っており、それは純粋なTiOの表面の光触媒活性のほんのわずかにしかすぎない。TiOナノ粒子は大抵、これらの種の組成物の光触媒の効果のためよりは、塗料のレオロジーの改良に使用される。
【0005】
TiOナノ粒子の塗料組成物への配合の2番目に多い実施は、アクリレートベースの塗料へそれらを直接混合することである。そのような溶液の問題は照明で周囲のアクリレートを光化学的に破壊し及び文字通り燃焼する、TiOの光触媒の攻撃性にある。その結果、塗料の強い白亜化及び黄変をもたらす。
【0006】
TiOナノ粒子の、シリコンベースの塗料での使用もまた、重大な制限をもたらす。シリコンは、ケイ酸塩と同様に、TiO表面を効果的に遮り、光触媒作用を取り除く。
【0007】
表面に直接的にTiOナノ粒子を作り出すゾル−ゲルの利用は、非常に費用がかかりそしてかなりまれである。ゾル−ゲルのTiOの噴霧被膜の厚さは約50nmであり、TiOのナノ粒子は、壁に静電気的にくっついている。この技術の制約は、ゾル−ゲルのTiOナノ結晶の低い純度及び通常のゾル−ゲル前駆体の高い酸性度にある。他の問題は、得られる光の最低限の部分しか使用しない薄い被膜中での低いTiOの量にある。
【0008】
これまでに知られたTiOナノ粒子の光触媒効果ベースの塗料では、ナノ粒子が塗料組成物中に含有される物質、通常は結合剤に囲まれるため、光触媒作用は減少する。これは、有機物質、特に煙草の煙、ある溶剤、発散物及び塗装された表面上のプラスチックから揮発するアルデヒドの光触媒分解の低下を示す。
【0009】
本発明の光触媒効果及び衛生的効果を有するTiOナノ粒子ベースの多機能塗料は、上述の欠点に対する解決法を与える。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると該塗料は、少なくとも二種の成分の化学反応により創製された、高多孔質の無機物質からなる。
TiOナノ粒子はこの多孔質物質の表面に固定されている。
第一の成分は、カルシウムの水に不溶性の化合物であり、第二の成分は水に可溶性の硫酸塩である。
【0011】
不溶性のカルシウム化合物は好ましくは、可能であればナノメートル領域の粒径を有する(さらなるナノ−炭酸カルシウム)、炭酸カルシウム、石灰及びそれらの混合物の群から選択される。
水に可溶性の硫酸塩は好ましくは、硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸銀及びそれらの混合物の群から選択される。
【0012】
多機能塗料は厚さが0.1乃至100マイクロメートルの幅である光触媒層を創製する固体中、好ましくは5乃至90質量%のTiOを含有する。
第二の成分(硫酸塩)の第一の成分(不溶性のカルシウムの化合物)に対する質量比は、0.1:10乃至10:1である。
多機能塗料は、好ましくは、固体中に3乃至80質量%のナノ−炭酸カルシウムを含有する。
【0013】
本発明の一つの態様では、多機能被膜の塗布方法は、不溶性の炭酸カルシウム化合物の懸濁水からなる第一の成分を処理範囲に付着させることである。その後、第二の成分(硫酸塩)の水溶液中のTiOナノ粒子の懸濁液をこの被膜の上に塗布する。
【0014】
本発明の他の態様では、全ての成分を同時に塗布することが可能である。
本発明によれば、懸濁したTiOナノ粒子を有する、不溶性のカルシウムの化合物の懸濁水からなる成分の被膜を処理表面に第一に塗布することもまた実用的である。それに続く段階で、第二の成分(硫酸塩)の水溶液が第一の層の上に塗布される。
【0015】
前記多機能塗料が、不溶性のカルシウムの化合物に富む範囲、すなわち漆喰の表面およびコンクリートを覆うことに使用される場合、第二の成分(硫酸塩)の水溶液中のTiOナノ粒子の懸濁液だけでその範囲を処理することが可能である。第二の成分は、表面に多孔質無機物質を創製する不溶性のカルシウムの化合物と反応する。このTiOナノ粒子は形成された多孔質物質の表面に固定される。
【0016】
該塗料は、室温で、通常10乃至50℃で、都合よく作成し及び塗布し得る。
【0017】
天井は空気循環が最も効果的であることから、この多機能塗料は、好ましくは天井に塗布される。特に煙及び調理からの、光触媒的な臭気除去効果の増大のため、天井にファンを取り付けることで空気の乱流を増大し、UVランプで天井を照射することが可能である。
塗料被膜の清浄及びその機能の回復は、強いUV光源での塗装範囲の時折の照射により実現する。
【0018】
本発明によると、コーティング工程の間、結合剤として機能する多孔質無機物質が創製される。この多孔質物質(結合剤)は、TiOナノ粒子の光触媒活性を妨げない。反応
の間、結合性の無機構造の次に同時に他の活性物質が創製される。これらの物質は、無機ナノ粒子の形態で存在し、反応試薬の選択により塗料の特定の機能を可能にする。
該塗料は、懸濁液中に全ての成分が存在する反応混合物を使用して、1段階で表面に塗布することが可能である。
該塗料は、最初の段階で、反応混合物の第一の成分を処理表面に付着させ、そして、その他の成分とともにTiOをその上に塗布するという、2又は3段階で塗布することもまた可能である。
最初に表面上に第一の反応成分とともにTiOを付着させ、そして、その上に他の反応成分を噴霧又は塗装することもまた可能である。
【0019】
炭酸カルシウムナノ粒子−CaCOの第一の成分(図1B)としての使用は簡便である。炭酸カルシウムナノ粒子は、粗いCaCO、石灰−CaO又はより良くは水酸化カルシウム−Ca(OH)にある程度置き換え可能である。
ナノ−炭酸カルシウムとの化学反応で石膏(CaSO・2HO)からなる多孔質、針状、繊維状又は薄板状の構造を与える、水溶性硫酸塩、主にCuSO、AgSO、及びZnSOが第二の成分として使用され、高多孔質の表面及び非常に強力な抗菌特性を有する金属酸化物及び水和した金属酸化物の活性ナノ粒子を新たに形成する。
図2A,B及びCは、硫酸塩のナノ−炭酸カルシウムとの反応により創製された物質の形態を示す。この方法により創製された塗料の化学的な組成物は正確には定義されないが、これらの製造は一貫して再現性があり、それぞれの成分の機能は、試験より明らかである。
【0020】
該物質で実施した抗菌性及び光触媒性試験に基づき、ナノ−炭酸カルシウムと硫酸亜鉛との反応により創製されたナノ粒子の機能は、例えば、付加的に、壊疽や酵母を成長及び拡散から防ぐ、強い抗菌性の環境を創製する能力があると推測することが可能である。表面の機能は光の存在でより強まる。この不均衡は、ZnOの光触媒特性により引き起こされ得る。
不溶性のカルシウム化合物と硫酸塩との反応によって作られた多孔質物質の表面に固定されたTiOナノ粒子の光触媒効果は、抗菌特性及び臭気除去能力を塗料に与えたTiO表面上の有機物質の分解を引き起こす。
【0021】
硫酸銅のナノ−炭酸カルシウムとの反応により創製されたナノ粒子の機能は、カビの拡散の防止、そして抗菌効果である。塗料中の銅ベースのナノ粒子の存在は、カビの防止が必要である場所が望ましい。
硫酸銀のナノ−炭酸カルシウムとの反応により創製されたナノ粒子の機能は、さらに抗菌性がある。これらのナノ粒子を含有する塗料は、光触媒性TiOの抗菌活性が十分ではない、光が少ない場所及び夜でも簡便に利用できる。
【0022】
本発明によると、組成物、又は成分の濃度比を変更することにより、有る程度塗料の特性を改良することが可能である。塗料を、いくつかの段階で「現場で」創製するか、表面に塗布する前に全ての成分を混合することにより創製するかどうかは、問題ではない。
【0023】
上述の機能を確かにするために、部分的に石膏からなる多孔質の構造を基礎的に創製した。石膏は、硫酸塩のナノ−炭酸カルシウムとの反応の副生成物である。石膏の結晶は、TiOナノ粒子の塊及びその他の活性物質を包まないが、一緒に塗料の層に結合する。
【0024】
図2Dは、亜鉛ベースのナノ粒子のクラスターとそれに組み込まれたTiOとを有する大きな石膏の結晶を構成する構造を示す。その構造は、水の沸点における成分の反応により創製される。これらの塗料が製造される温度は、重要な役割を果たす。一般に、10℃乃至50℃の範囲が塗料の製造及び塗布の両方のために最も簡便である。より低い温度
では、微小な構造が作られるが、成分の反応はより遅い。
【0025】
該塗料の最も有利な組成物は、第一に要求される機能を確保し、第二に多孔質の石膏ベースの結合性構造を創製する、効果的な量の反応基質を含有する。水酸化カルシウムにより潜在的に代用可能である、塗料中のナノ−炭酸カルシウムの含有量は、固体分の3より多くそして80wt%より少なくあるべきである。塗料中のナノ−炭酸カルシウムの最適な比は、固体分の20乃至50wt%である。
【0026】
硫酸塩ベースの化合物(第二の成分)の第一の成分(ナノ−炭酸カルシウム)に対する量は、処理表面の特性に依存して、0.1:1乃至10:1の比にすべきである。
臭気の適切な除去及び有機化合物の光分解のために、塗料中のTiOの量は固体分の10乃至90質量パーセント、最適には50乃至80質量パーセントにすべきである。
要求される機能のために必要な多機能塗料被膜の厚さは0.1乃至100マイクロメートルに変化する。塗料の光触媒機能を強化するために、層の厚さは1乃至10マイクロメートル、最適には2乃至5マイクロメートルの範囲内にすべきである。
【0027】
本発明は、多機能塗料の形状及びその組成物を説明する。それは、清浄性のそして衛生的な多機能塗料の表面の付着もまた解決する。これらの塗料は、TiOナノ粒子と反応成分との組み合わせがベースであり、それらを一緒に混合した後、TiOナノ粒子がその光触媒効果を阻害されずに、表面に固定される、高多孔質無機物質を与える。加えて、反応成分は、反応の間他の活性化合物を創製する。これらの新たに形成された化合物は、塗料に他の望ましい特性、すなわち抗ウイルス性及び抗菌性効果、有機物質を分解して空気を清浄し最終的にはカビ及び壊疽の拡散を防止する光触媒の効力を与える。
【0028】
該塗料の有効性は、空気の循環及び光の強さの増加によって数倍拡大し得る。例えば、これは天井にファン及び蛍光ランプ「ブラックライト」の取り付けによって為し得る。塗料の清浄及び復元は、強いUV光による塗装された範囲の照射によって行われる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】A)はTiOナノ粒子−光触媒機能を確保した塗料の反応しない成分の走査型電子顕微鏡(SEM)の電子顕微鏡写真を示す図であり、B)はCaCOナノ粒子−塗料の反応性成分の走査型電子顕微鏡(SEM)の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図2】A)は、ナノ−炭酸カルシウムの硫酸銅との(CaCOのCuSOとの)反応によって創製された銅ベースの活性成分のナノ粒子のSEMの顕微鏡写真を示す図であり、B)は、ナノ−炭酸カルシウムの硫酸銀との(CaCOのAgSOとの)反応によって創製された銀ベースの活性成分のナノ粒子のSEMの顕微鏡写真を示す図であり、C)は、ナノ−炭酸カルシウムの硫酸亜鉛との(CaCOのZnSOとの)反応によって創製された亜鉛ベースの活性成分のナノ粒子のSEMの顕微鏡写真を示す図であり、D)は、TiOナノ粒子と、石膏の多孔質構造に組み込まれたナノ−炭酸カルシウム(CaCO)との反応によって創製され、高温(100℃)でのナノ−炭酸カルシウム(CaCO)とZnSOとの反応によってもまた創製される亜鉛ベースの活性成分、との混合物のSEMの顕微鏡写真を示す図である。
【図3】図3は、ナノ−炭酸カルシウムの2.5wt%のZnSO水溶液との反応によって創製された構造に組み込まれたTiOナノ粒子を含有する多機能塗料のSEMの顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0030】
以下の例は本発明を説明するものであるが、制限するものではない。
【0031】
実施例1.
第一段階として、アクリル塗料であらかじめ塗装された壁に、9:1の質量比のナノ−炭酸カルシウム(CaCO)と水酸化カルシウム(Ca(OH))の混合物の懸濁水を塗布した。この懸濁液は、両方の成分を20質量%含有していた。この層は、多機能複合塗料の第二の成分のための反応ベースを創製した。第二の段階として、第一の層が乾燥した後、2.5質量%のZnSO溶液中の7質量%のTiOナノ粒子を含有する懸濁液を処理表面の上に噴霧した。実際には不活性のTiOは、どのような反応にも関与せず、その結果として、それは、ナノ−炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの混合物と、硫酸亜鉛との反応によって創製された繊維状の構造に固定された。創製された塗料の被膜を図3に示す。創製された塗料の正確な組成物は、正確には明らかになっていないが、該塗料は、酸化亜鉛、酸化亜鉛水和物、炭酸亜鉛、部分的に未反応であるCaCO及びCaO、及び石膏−CaSO・2HOのナノ粒子からなる構造に機械的に固定される、TiOナノ粒子の塊からなると仮定することが可能である。太陽光中、この5マイクロメートル厚の塗料被膜は、1本の煙草からの煙によって汚染された空気の清浄を、参照の部屋と比較して4倍の速さで示した。この煙草の匂いは、参照の部屋と対比してカビ臭さを残さず、20分後に多機能塗料で塗装された部屋から完全に消失した。4時間経過してもなお大腸菌が完全には死滅しない参照のアクリル塗料と正反対に、この塗料被膜の殺菌機能は、すべてのバクテリア汚染の即時の死滅を示した。
【0032】
実施例2.
第一段階として、質量比1:1の、炭酸カルシウムとTiOナノ粒子の懸濁水を漆喰の表面に塗布した。この懸濁液は、両方の物質を10質量%含有していた。この層が乾燥した後、複合多機能塗料の成分の第二の成分のための反応ベースを創製した。第二段階として、5質量%のZnSO溶液をその表面に噴霧した。第一の実施例と同様に、該塗料が乾燥した後、不活性なTiOは、ナノ−炭酸カルシウムの硫酸亜鉛との反応によって創製された、多孔質で繊維状の構造の上に固定された。太陽光中、この塗料被膜は、実施例1と同様の臭気除去能力を示した。
【0033】
実施例3.
0.9kgの硫酸亜鉛及び5グラムの硫酸銀を含有する10リットルの溶液を、1kgのナノ‐炭酸カルシウム及び1kgのTiOナノ粒子を含む10リットルの冷たい懸濁水に加え、強く混合した。数時間後、このゆっくりとした反応混合物を、事前にアクリル塗料で塗装した壁にローラーで塗布した。この塗料被膜が完全に乾燥した後、約10マイクロメートル厚の多孔質の光触媒の層が創製された。それは、光の存在がなくとも強い抗菌機能を有した。
【0034】
実施例4.
0.07kgのナノ−炭酸カルシウム及び0.1kgのTiOナノ粒子を含有する1リットルの冷たい懸濁水を第一に製造した。分離容器中、0.1kgのCuSO及び5グラムのAgNOと、0.2kgのナノ−炭酸カルシウムとの反応によって、1リットルの懸濁水中に活性成分を製造した。両方の懸濁液を一緒に混ぜ合わせ、適切に混合した。その後、0.1kgの硫酸亜鉛を含有する1リットルの水溶液を混合した。創製した混合液をわずかに水で希釈し、ブラシで表面に塗布した。この塗料が完全に乾燥した後、その結果として、約50マイクロメートル厚の多機能塗料の多孔質の層が作られた。
【0035】
実施例5.
10質量%のZnSOの水溶液中に7質量%のTiOナノ粒子を含有する懸濁液をコンクリートの表面に噴霧した。乾燥後、その結果、コンクリートのカルシウム成分のZnSOとの反応によって創製された多孔質及び繊維状の構造に組み込まれた、TiOナノ粒子を有する塗料被膜が作られた。この創製された層は、非常に良好な光触媒活性を
示し、それは、地衣類、藻類及びコンクリートの腐食を引き起こす他の微生物を殺した。該塗料は、コンクリート表面を、少なくとも1年間はこれらの微生物が存在しない状態を維持した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この多機能塗料は、病院、生物実験室、事務所、及び居住施設の建物、すなわちアレルギー体質の人ための部屋中で、衛生的な塗料の被膜として使用し得る。これらは、ひどく不快な臭いを、部屋及び職場、例えばレストラン、から除去する。これらの塗装された表面は、例えば、建物の外壁、コンクリート防音壁などに用い、自動車の発散から空気を清浄にすることにもまた好適である。これらは、簡便に、家畜の生産において、特定の種類の病気感染の危険性を低下させることに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの成分の反応よって創製された高多孔質の無機物質に固定されたTiOナノ粒子ベースの、光触媒効果及び衛生効果を有する多機能塗料であって、
第一の成分は、水に不溶性のカルシウム化合物であり、そして第二の成分は水に可溶性の硫酸塩であることを特徴とする、多機能塗料。
【請求項2】
前記不溶性のカルシウム化合物は、ナノ−炭酸カルシウム、石灰、水酸化カルシウム及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の多機能塗料。
【請求項3】
前記水に可溶性の硫酸塩は、硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸銀及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の多機能塗料。
【請求項4】
固体中のTiOの含有量が、5乃至90質量パーセントであり、そして、前記光触媒塗料被膜の厚さが0.1乃至100マイクロメートルの範囲内であることを特徴とする、請求項1乃至4に記載の多機能塗料。
【請求項5】
前記第二の成分(硫酸塩)と前記第一の成分(不溶性のカルシウム化合物)との質量比が0.1:1乃至10:1であることを特徴とする、請求項1乃至5に記載の多機能塗料。
【請求項6】
前記固体中の前記ナノ−炭酸カルシウムの含有量が、3乃至80質量パーセントであることを特徴とする、請求項1及び2に記載の多機能塗料。
【請求項7】
不溶性のカルシウム化合物の懸濁水を含有する、前記第一の成分を処理範囲に付着させ、そして連続的に、前記第二の成分の水溶液中に懸濁したTiOナノ粒子を第一の層の上に塗布することを含むことを特徴とする、請求項1乃至6に記載の多機能塗料を表面に塗布する方法。
【請求項8】
不溶性のカルシウム化合物の懸濁水を含有する前記第一の成分と前記第二の成分及び懸濁したTiOナノ粒子の混合物を全部表面に塗布することを特徴とする、請求項1乃至6に記載の多機能塗料を1段階で表面に塗布する方法。
【請求項9】
不溶性のカルシウム成分の懸濁水及び懸濁したTiOナノ粒子を含有する前記第一の成分を処理範囲上に塗布し、続いて、第一の層の上に前記第二の成分の水溶液を塗布することを特徴とする、請求項1乃至6に記載の多機能塗料を2段階で表面に塗布する方法。
【請求項10】
不溶性のカルシウム化合物が豊富な表面上、すなわち漆喰及びコンクリート上に、請求項1乃至6の多機能塗料を塗布する方法であって、前記第二の成分の水溶液中に懸濁したTiOナノ粒子を処理表面に塗布することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記塗料の塗布を10乃至50℃の温度で行うことを特徴とする、請求項8乃至11に記載の方法。
【請求項12】
塗料の清浄及びその機能の回復を、強いUV光源での塗装範囲の時折の照射によって実現することを特徴とする、請求項1乃至6に記載の多機能塗料によって覆われた表面の清浄方法。
【請求項13】
請求項1乃至6に記載の多機能塗料を部屋の天井に塗布し、天井で強制空気乱流を起こ
し、そして塗装範囲をUV光で照射することを特徴とする、臭気を、すなわち換気が不十分な部屋内の臭気を除去する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−506647(P2011−506647A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537244(P2010−537244)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/CZ2008/000146
【国際公開番号】WO2009/074120
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(510162687)
【Fターム(参考)】