説明

多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー

分散剤として有用な多重グラフト低分子量ポリマーの組成物及び製造方法を記載する。記載される分散剤は、スラッジ及びワニス並びに煤を制御するのに好適である。この生成物は潤滑剤添加剤及び燃料添加剤として有用である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年11月17日出願の米国仮特許出願61/261,914(その全部を参照として本明細書中に包含する)の利益を主張する。
本発明は、約500〜約9950の重量平均分子量を有するポリマー骨格を有する新規な多機能グラフトポリマーに関する。ポリマー骨格に、スラッジ制御、ワニス制御に関連するモノマー、並びに、煤制御、及びそれによって煤制御に関連する粘度制御に関連するモノマーをグラフトし、それによって複数の性能作用を示すグラフトポリマーを与える。本発明はまた、かかる新規な多機能グラフトポリマーを含む潤滑油組成物、及びかかる新規な多機能グラフトポリマーを燃料添加剤として含む燃料、並びにかかる新規な多機能グラフトポリマーを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンを潤滑するために用いる潤滑油組成物は、潤滑粘度の基油又は複数のかかる油の混合物、並びに油の性能特性を向上させるために用いる添加剤を含む。例えば、添加剤は、幾つかの特徴の中でも特に、洗浄性及び分散性を向上させ、エンジンの摩耗を減少させ、熱及び酸化に対する安定性を与え、油の消費を減少させ、腐食を抑制し、分散剤として作用させ、そして摩擦損失を減少させるために用いる。しかしながら、それぞれのかかる添加剤は配合潤滑油とは別の成分であり、コストを増加させる。而して、潤滑油の1つより多い性能特性を制御する多機能添加剤を有することが有益であろう。
【0003】
例えば、米国特許4,234,435においては、ポリアルケンと、マレイン酸又はフマル酸或いはその特定の誘導体のような二塩基性カルボキシル反応物質とから誘導されるカルボン酸アシル化剤が開示されている。アシル化剤を、ポリエチレンポリアミン及びポリオールのようなアシル化するための更なる反応物質と反応させて、潤滑剤添加剤として有用な誘導体を製造することができる。
【0004】
米国特許6,107,258においては、反応性カルボキシル官能基を含むアシル化オレフィンコポリマーを含む、分散性を与える官能化オレフィンコポリマーが開示されている。アシル化ポリマーを、カルボキシル官能基と反応することができる1より多いアミン、チオール、及び/又はヒドロキシル官能基を含むカップリング化合物と反応させる。
【0005】
2002年6月25日に発行のGoldblattらの米国特許6,410,652においては、分散剤粘度指数調節剤として有用なグラフトコポリマー、及びかかるグラフトコポリマーの製造方法が開示されている。開示されている方法は、(a)約20,000〜約500,000の重量平均分子量を有するグラフト可能なポリマー又はコポリマー、エチレン性不飽和の、イオウ、窒素、及び/又は酸素を含有するグラフト可能なモノマー、及びかかるモノマーとグラフト可能なコポリマー又はポリマーをグラフトするのに十分な量の開始剤を準備し;(b)上記のグラフト可能なコポリマー又はポリマーを溶融ブレンド装置中に導入し;(c)上記のグラフト可能なモノマーを溶融ブレンド装置中に導入し;(d)上記の開始剤を溶融ブレンド装置中に導入し(ここで、上記のグラフト可能なポリマー、グラフト可能なモノマー、及び開始剤の少なくとも1つは、極性又は非極性溶媒の少なくともいずれかの存在下で溶融ブレンド装置中に導入する);そして(e)溶融ブレンド装置を運転することによって上記のグラフト可能なコポリマー又はポリマー、モノマー、及び開始剤を反応させて、それによって上記のグラフトコポリマーを生成物として形成する;工程を含む。上記のGoldblattらの米国特許6,410,652においてはまた、基油及び上記のグラフトコポリマーを含む潤滑油組成物も開示されている。
【0006】
2008年5月13日発行のGoldblattらの米国特許7,371,713においては、アミンとアシル化剤との間の反応の生成物として形成されるグラフト可能なモノマーが開示されている。反応生成物は、窒素及び酸素原子を有するグラフト可能なエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマーである。このグラフト可能なモノマーを次に、約10,000〜約750,000の重量平均分子量を有するポリオレフィン骨格上にグラフトして、分散剤粘度指数向上特性を有するグラフトコポリマーを形成する。より詳しくは、上記のポリオレフィン骨格を溶媒中に溶解し、得られる溶液にグラフト可能なモノマー及び開始剤を加える。別の形態においては、溶融ブレンド手順を用いてグラフト可能なモノマーを上記のポリオレフィン上にグラフトすることができる。上記のGoldblattらの米国特許7,371,713においてはまた、炭化水素基油及び上記のグラフトコポリマーを含む潤滑油組成物も開示されている。
【0007】
公開2008/0293600−A1として2008年11月27日に公開されたGoldblattらの米国特許出願11/912,847においては、約10,000〜約1,000,000の重量平均分子量を有するポリオレフィン又はポリエステル骨格にグラフトされているモノマーの2つの群(モノマーの1つの群は分散性、粘度指数向上、並びにスラッジ及びワニス制御を与え、モノマーの他の群は煤処理性能を与える)を含む多機能グラフトポリマーが開示されている。一般に、1つのかかるモノマーの群は、2〜約50個の炭素原子を有し、酸素又は窒素、又は酸素と窒素の両方を含むエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマーを含み、分散性、粘度指数向上、並びにスラッジ及びワニス制御を与える。他のかかるモノマーの群であるアシル化剤は、反応のためのアシル基を与え、アミンと反応して煤処理性能を与えるのに好適な置換基を形成する。一般に、かかるアミンは適当なアシル化剤と縮合反応させることができる第1級及び第2級アミンを含む。
【0008】
Goldblattらの米国特許出願11/912,847においてはまた、炭化水素基油及び上記記載の多機能グラフトポリマーを含む潤滑油も開示されている。多機能グラフトポリオレフィン又はポリエステルは、粘度指数調節剤として、且つ粘度、スラッジ、及びワニス、並びに煤を制御するための添加剤として機能する。かかる潤滑油は、開示されている多機能グラフトポリマーの(a)優れた分散性、及び(b)煤制御特性の両方を利用しており、このためにより低い量の他の添加剤しか必要ではなく、或いはより少ない添加剤しか必要でない。
【0009】
Goldblattらの米国特許出願11/912,847においてはまた上記の多機能グラフトポリマーの有効な製造方法も開示されており、ここでは、ここに記載されている多機能グラフトポリマーを生成させるためにグラフトの順番が重要である。煤処理並びにスラッジ及びワニス制御の両方に関する良好な性能を達成するためには、まずグラフト可能なアシル化剤をポリマー骨格上にグラフトし、それによってアシル基を含むポリマーを形成することが重要である。次に、スラッジ及びワニス処理に関連するモノマー又はモノマーの群を導入する。最後に、アシル基と反応させることができる1種類又は複数のアミンを導入し、アシル化ポリマーと反応させて、それによってグラフトポリマーに煤処理性能を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,234,435号明細書
【特許文献2】米国特許第6,107,258号明細書
【特許文献3】米国特許第6,410,652号明細書
【特許文献4】米国特許第7,371,713号明細書
【特許文献5】米国特許公開第2008/0293600号明細書
【発明の概要】
【0011】
ここで、本発明の発明者らは潤滑油組成物のための新規な多機能グラフト低分子量ポリマーを見出した。
本発明は、好適には約500、乃至約9950又は約9500の重量平均分子量を有するグラフト可能なポリマー;及び、2乃至例えば約50個の炭素原子を有し、窒素及び酸素の少なくとも1つを含むグラフト可能なエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマー;並びに、グラフト可能なカップリング基とアミンとの縮合生成物である第2のモノマー(ここで、グラフト可能なカップリング基はアシル化剤及びエポキシドからなる群から選択することができる);を含む多機能低分子量ポリマーである。
【0012】
エチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマーは、分散性並びに粘度スラッジ及びワニスの制御を与えることができる。第2のモノマー、即ちグラフト可能なカップリング剤とアミンとの縮合生成物は、煤制御特性を与えることができる。
【0013】
好適なカップリング剤は、アシル化剤及びエポキシドからなる群から選択され、少なくとも2つの成分カップリング部位を有し、その少なくとも1つはオレフィン性不飽和の部位であり、ポリマーと反応して、アシル基のようなカップリング基をポリマーの骨格上に与える。カップリング剤は、通常は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、かかる酸の無水物、かかる酸の低級アルキルエステル、かかる酸のハロゲン化物、及びこれらの組合せからなる群から選択されるアシル化剤、或いはエポキシドである。上記のグラフト可能なカップリング基と縮合反応させるアミンは、第1級及び第2級アミンの群から選択される。
【0014】
本発明はまた、溶液中か又は溶融押出によって本発明の上記の多機能低分子量グラフトポリマーを製造する方法も開示する。溶液相プロセスは、上記のグラフト可能なポリマー、開始剤、上記のエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族のグラフト可能なモノマー、上記のグラフト可能なカップリング基、及び上記のアミンを準備する工程を含む。まず、好適には上記のグラフト可能なポリマーを溶媒中に溶解する。本発明の多機能グラフトポリマーを生成させるためには特有のグラフトの順番が好ましい。煤処理並びにスラッジ及びワニス制御の両方に関して良好な性能を達成するためには、例えば適当な開始剤を用いることによって上記のカップリング剤をグラフト可能なポリマー上にグラフトして、骨格上にカップリング基を含むポリマーを形成することが有利である。次に、窒素及び酸素の少なくとも1つを含む上記のエチレン性不飽和のグラフト可能なモノマー、及び開始剤を導入し、エチレン性不飽和モノマーをグラフト可能なポリマー骨格にグラフトする。最後に、グラフト可能なカップリング基と反応させることができる1種類又は複数のアミンを導入して、ポリマー骨格上のカップリング基と反応させる。
【0015】
溶融プロセスは、上記のグラフト可能なポリマー、上記の開始剤、上記のグラフト可能なエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマー、上記のグラフト可能なカップリング剤、及び上記のポリマーとカップリング剤との反応によって形成されるカップリング基と反応させることができる上記のアミンを準備する工程を含む。まず、上記のグラフト可能な低分子量ポリマーを、固体、半固体としてか、又はニートの液体として押出機、ブレンダー、又はミキサーに供給し、所望の反応条件下に保持する。上記のグラフト可能なエチレン性不飽和モノマー、グラフト可能なカップリング剤、及び開始剤を、低分子量のグラフト可能なポリマーと一緒か、又は低分子量のグラフト可能なポリマーと別々に、例えば低分子量のグラフト可能なポリマーの後に導入する。ポリマーと別々に導入する場合には、複数の反応物質は一緒か又は別々に導入することができる。グラフト可能な低分子量ポリマーをグラフト可能なモノマー及びグラフト可能なカップリング剤と反応させた後、カップリング基と反応することができる上記のアミンを、押出機、ブレンダー、又はミキサーに供給し、そこでそれをカップリング基と反応させる。或いは、押出機、ブレンダー、又はミキサー内で製造されたグラフトポリマーの溶液にそれを導入して、溶液中でグラフトポリマーと反応させることができる。
【0016】
本発明はまた、少なくとも約0.05重量%の本発明の多機能ポリマー;及び0乃至例えば約20重量%の他の分散剤を含む潤滑剤基油を含む潤滑油組成物でもある。
本発明はまた、大きな割合の炭化水素ベースの燃料、及び例えば約5〜約5,000重量ppmの本発明の多機能低分子量グラフトポリマー、並びに場合によってはアルコール及びエーテルのような他の成分を含む燃料組成物でもある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1以上の好ましい態様及び幾つかの代表的な実施例に関連して本発明を記載するが、本発明はこれらの態様及び実施例に限定されないことが理解されるであろう。本発明は、特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれる可能性がある全ての代替、修正、及び均等物を包含する。
【0018】
本発明の一態様は、
(a)グラフト可能な部位を有する少なくとも1種類の低分子量ポリマー骨格;
(b)少なくとも2つの成分カップリング部位(例えば、その少なくとも1つはオレフィン性不飽和の部位であり、他はアシル化剤及びエポキシドからなる群から選択される)を有する少なくとも1種類のグラフト可能なカップリング剤;
(c)2乃至例えば約50個の炭素原子を有し、窒素及び酸素の少なくとも1つを含む少なくとも1種類のグラフト可能なエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマー;及び
(d)上記のグラフト可能なカップリング剤とポリマーとの間の反応によって形成される低分子量ポリマー骨格上のカップリング基と反応することができる少なくとも1種類のアミン;
を含む多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーに関する。
【0019】
本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーにおいて、上記のグラフト可能なポリマー骨格は、低分子量ポリオレフィン、低分子量ポリエステル、変性ポリエステル、スチレン含有ポリマー、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0020】
本発明の他の態様は、
(a)潤滑剤基油;
(b)本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマー;及び場合によっては
(c)他の潤滑油添加剤;
を含む潤滑油に関する。
【0021】
本発明の更なる態様は、
(a)炭化水素燃料;
(b)本発明の多機能多重グラフト低分子量グラフトポリマー;及び場合によっては
(c)アルコール及びエーテルのような他の成分;
を含む燃料組成物に関する。
【0022】
本発明の他の態様は、有効量の本発明の多機能分散剤ポリマーを油中に導入することを含む、潤滑油の煤処理性、並びにスラッジ及びワニス制御性を向上させる方法に関する。
本発明の他の態様は、
(a)グラフト可能な部位を有する低分子量ポリマーを、開始剤の存在下で、アシル化剤及びエポキシドからなる群から選択され、少なくとも2つの成分カップリング部位(その少なくとも1つはオレフィン性不飽和の部位である)を有するカップリング剤と反応させて、カップリング剤とポリマー骨格のグラフトポリマー反応生成物を形成し;
(b)工程(a)において形成される低分子量グラフトポリマー反応生成物を、開始剤の存在下で、2乃至例えば約50個の炭素原子を有し、窒素及び酸素の少なくとも1つを含むエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマーと反応させて、上記のエチレン性不飽和モノマー、カップリング基、及び反応のために利用できるカップリング基を有するポリマー骨格の低分子量グラフトポリマー反応生成物を形成し;そして
(c)工程(b)において形成される低分子量グラフトポリマー反応生成物を、カップリング基と反応することができるアミンと反応させて多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーを形成する;
工程を含む多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーの製造方法に関する。
【0023】
本発明による新規な多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーは、ニートか、好適な溶媒中に溶解しているか、又は溶融状態のニートのいずれかの反応物質を用いて製造することができる。一般には、グラフト可能な低分子量ポリマーを開始剤の存在下でカップリング剤と反応させる。かくして形成されるカップリング基を含む低分子量グラフトポリマーを、次に開始剤の存在下で、窒素及び酸素の少なくとも1つを含み、好ましくはスラッジ及びワニス処理特性を与えることができる1種類以上の上記のグラフト可能なモノマーと反応させる。最後に、好ましくは煤処理性能を与えるのに好適な1種類以上のアミンをポリマー骨格上のカップリング基と反応させて、本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーを与える。
【0024】
上記に記載の本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーの製造においては、1種類より多い低分子量ポリオレフィン又は低分子量ポリエステル、或いは1種類以上のポリオレフィン及び/又はポリエステル及び/又は他の好適なポリマーの混合物を用いることができる。同様に、1種類より多い上記のカップリング剤、スラッジ及びワニス処理特性を与えることができるモノマー、開始剤、及び/又はアミンを用いることができる。
【0025】
反応材料:
下記は、スラッジ、ワニス、粘度、及び煤を制御するのに有用な最終生成物を生成させるための、上記のグラフト可能な低分子量ポリマー、グラフト可能なカップリング剤、グラフト可能なエチレン性不飽和モノマー、及びグラフトしたカップリング剤と反応させることができるアミンの例である。
【0026】
低分子量ポリマー:
広範囲のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエステル、及び変性ポリエステル(ペンダントな不飽和を有しても有していなくてもよい)が、本発明においてグラフトするための好適なポリマー骨格として用いるように意図される。意図される材料としては、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、及びより高級のもの、例えばエチレン、プロピレン、イソプレン、ブテン、ブタジエン、イソブチレン、メチルメタクリレート及びメチルアクリレート、スチレン、及びこれらの組合せから生成する低分子量ポリマー(しかしながらこれらに限定されない)が挙げられる。かかる低分子量ポリオレフィン及び低分子量ポリエステルの例としては、1種類以上のモノマーを含む低分子量ポリマー、例えばポリイソブチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、ブタジエン及びスチレンの部分水素化低分子量ポリオレフィン、及びイソプレンの低分子量ポリマー、並びにスチレン及びイソプレンの低分子量ポリマーが挙げられる。また、本発明の多機能低分子量グラフトポリマーを製造するために複数のポリマーの混合物、例えば複数のポリオレフィンの混合物、複数のポリエステルの混合物、及びポリオレフィンとポリエステルとの混合物を用いることも意図される。また、オレフィンとエステルの混合物を用いて混合オレフィン−エステルポリマーを製造することも意図される。また、複数のポリオレフィンの化学的及び物理的混合物、複数のポリエステルの混合物、及びこれらの組合せを用いることも意図される。ここで意図される低分子量ポリマーは、好適には約500、或いは約750、或いは約900、乃至約9950、或いは約9,500、或いは約6,500、或いは約5,000の重量平均分子量を有していてよい。低分子量ポリマーは、好適には約1、乃至約20、或いは約10、或いは約3の多分散度を有する。
【0027】
ここで用いるように意図される特定の材料としては、Ineosによって販売されているもののような低分子量ポリイソブチレン、ExxonMobil Corp.によって販売されているもののような低分子量オレフィンコポリマー、及びEvonikによって販売されているもののようなポリエステルが挙げられる。上記の材料と他の同様の材料の組合せも意図される。
【0028】
カップリング剤:
本発明においてカップリング剤として用いるのに好適なアシル化剤は、少なくとも2つの成分カップリング部位を有し、その少なくとも1つはその構造内にオレフィン性不飽和を有する部位である。通常は、オレフィン性不飽和の位置は−HC=CH−又は−HC=CHに対応する。オレフィン性不飽和の位置がカルボキシ官能基に対してα,β位であるアシル化剤が特に有用である。オレフィン性不飽和モノ、ジ、及びポリカルボン酸、その低級アルキルエステル、そのハロゲン化物、及びその無水物が、本発明において用いるのに好適な代表的なアシル化剤である。好ましくは、本発明において用いるオレフィン性不飽和アシル化剤は、一塩基又は二塩基酸、或いは無水物、低級アルキルエステル、ハロゲン化物のようなその誘導体、或いは2種類以上のかかる誘導体の混合物である。この点に関し、「低級アルキル」とは1〜7個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0029】
好適なアシル化剤としては、モノ不飽和のC〜C50、或いはC〜C20、或いはC〜C10ジカルボン酸、モノ不飽和のC〜C50、例えばC〜C20、或いはC〜C10モノカルボン酸、及びこれらの無水物(即ち、これらのジカルボン酸又はこれらのモノカルボン酸の無水物)、並びに上記の酸及び/又は無水物のいずれかの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの物質を挙げることができる。
【0030】
好適なアシル化剤としては、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、クロロマレイン酸、アコニット酸、メチルクロトン酸、ソルビン酸、3−ヘキセン酸、10−デセン酸、2−ペンテン−1,3,5−トリカルボン酸、桂皮酸、及び上記のものの低級アルキル(例えばC〜Cアルキル)酸エステル、例えばマレイン酸メチル、フマル酸エチル、及びフマル酸メチルが挙げられる。特に好適なアシル化剤は、不飽和ジカルボン酸及びそれらの誘導体、特にマレイン酸、フマル酸、及び無水マレイン酸である。
【0031】
本発明においてカップリング剤として有用なエポキシ誘導体は、一般にその構造内に少なくとも1つのオレフィン性不飽和の部分を有する。エポキシドをポリマー骨格上にグラフトすると、これは例えばアミンと反応させてヒドロキシルアミンを形成することができる。また、グラフトしたエポキシドは、アルコール、メルカプタン、及びカルボン酸のような他の試薬と反応させることもできる。好適なエポキシドとしては、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、及び1,2−エポキシ−5−ヘキセン、並びに3,4−エポキシ−1−ブテンが挙げられる。
【0032】
グラフト可能なエチレン性不飽和モノマー:
スラッジ及びワニス制御を与えるのに有用なエチレン性不飽和モノマーは、非常に広範囲には、2〜約50個の炭素原子を有し、窒素及び酸素の少なくとも1つを含むエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマーである。複数のかかるエチレン性不飽和モノマーの組合せも、本発明においてグラフト可能なモノマーとして用いるように意図される。ここで用いるように意図される具体的なグラフト可能なモノマーとしては以下のもの:N−ビニルイミダゾール(1−ビニルイミダゾールとしても知られる)(VIMA)、1−ビニル−2−ピロリジノン、C−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、1−ビニルピロリジノン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、ジアリルホルムアミド、N−メチル−N−アリルホルムアミド、N−エチル−N−アリルホルムアミド、N−シクロヘキシル−N−アリルホルムアミド、N−アリルジイソオクチルフェノチアジン、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、3−メチル−1−ビニルピラゾール、N−ビニルプリン、N−ビニルピペラジン、ビニルピペリジン、ビニルモルホリン、マレイミド、アクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、並びにこれらの材料又は他の同様の材料の組合せ:が挙げられる。本発明において用いるためのかかるグラフト可能なエチレン性不飽和モノマーは、窒素及び/又は酸素に加えて、イオウ、リン、又はハロゲンの1以上のような他の元素を含んでいてよい。この群の好適なグラフト可能なモノマーの例は、4−メチル−5−ビニルチアゾール、N−アリルジイソオクチルフェノチアジン、2−ビニルチオベンゾチアゾール、2−アリルチオベンゾチアゾール、2−ブテニルチオベンゾチアゾール、N−ビニルフェノチアジン、及びN−アリルフェノチアジンである。本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーの製造において用いるのに好適な他のグラフト可能なエチレン性不飽和モノマーは、米国特許4,146,489の4欄4〜41行、米国特許4,810,754の3欄25〜55行、米国特許4,092,255の3欄27〜47行(これらの開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)に開示されている。
【0033】
カップリング基と反応させるためのアミン:
煤処理性能を与えるのに好適なアミンは、低分子量ポリマー上にグラフトされているカップリング基と縮合反応させることができるもの、即ち第1級及び第2級アミンである。
【0034】
1種類以上のアミンを用いることができる。アシル化することができるアミンは、米国特許4,320,019(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)の4欄60行〜6欄14行;米国特許5,424,367(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)の10欄61行〜13欄18行;及び米国特許5,427,702(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)の13欄5行〜17欄32行;に開示されている。種々のアミンのタイプの中で本発明の実施において有用なものは、アルキルアミン、アルキレンアミン、ヘテロ原子又は複素環を含む分子のアミン、アルキレンポリアミン、芳香族アミン、及びポリオキシアルキレンポリアミンである。
【0035】
アルキルアミン、アルキレンアミン、アルキレンポリアミン、及び複素環を含む分子のアミンの幾つかの例としては、メチレンアミン、エチレンアミン、ブチレンアミン、プロピレンアミン、ペンチレンアミン、ヘキシレンアミン、ヘプチレンアミン、オクチレンアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジオクチルエチルアミン、他のポリメチレンアミン、これらのアミンの環式及びより高級の類縁体、例えばピペラジン、アミノ−アルキル置換ピペラジン、例えば(2−アミノプロピル)ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、及び2−メチル−1−(2−アミノブチル)ピペラジンが挙げられる。好適なポリアミン材料としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(トリメチレン)トリアミン、及びN−オクチル−N’−メチルエチレンジアミンが挙げられる。2種類以上の上記に記載のアルキレンアミンを縮合することによって得られる他のより高級の類縁体、並びに3−モルホリノプロピルアミンのような複素環化合物を用いることもできる。
【0036】
本発明の実施において有用な他のアミンのタイプとしては、アリールアミン及びアルキルアリールアミン並びにN−アリールフェニレンジアミンのようなアミノ芳香族化合物が挙げられる。具体的な芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、4−モルホリンアニリン、ベンジルアミン、フェニルエチルアミン、3−フェニル−1−プロピルアミン、及びN−フェニルフェニレンジアミン、例えばN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン(4−アミノジフェニルアミンとも呼ぶ)、N−フェニル−1,3−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン、N−ナフチル−フェニレンジアミン、N−フェニルナフタレンジアミン、及びN’−アミノプロピル−N−フェニルフェニレンジアミンが挙げられる。上記の複数のアミンの組合せを用いて1つ以上のカップリング剤の基と反応させることができる。
【0037】
好適なポリオキシアルキレンポリアミンの例は、式:
NH(−アルキレン−O−アルキレン)NH (i)
(式中、mは約3〜70、好適には10〜35の値を有する)
及び、
R−(アルキレン(−O−アルキレン)NH3〜6 (ii)
(式中、nは1〜40の値を有し、但し全てのnの合計は約3〜約70、好適には約6〜約35であり、Rは10個以下の炭素原子の多価飽和炭化水素基である)
を有するものである。式(i)又は(ii)のいずれかにおけるアルキレン基は、約2〜7個、好適には約2〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖であってよい。
【0038】
ポリオキシアルキレンジアミン及びポリオキシアルキレントリアミンのようなポリオキシアルキレンポリアミンは、約200〜約4000、好適には約400〜約2000の範囲の平均分子量を有する。好適なポリオキシアルキレンポリアミンとしては、約200〜2000の範囲の平均分子量を有するポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンジアミン並びにポリオキシプロピレントリアミンが挙げられる。
【0039】
本発明の実施において有用な他のアミンのタイプとしては、
式:
【0040】
【化1】

【0041】
(式中、Arは芳香族基であり、Rは、水素、或いは−NH−アリール、−NH−アリールアルキル、−NH−アルキルアリール、又は4〜24個の炭素原子を有する分岐又は直鎖基であり、かかる基はアルキル、アルケニル、アルコキシル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヒドロキシアルキル、又はアミノアルキル基であってよく、Rは、−NH、−(NH(CH−)−NH、CH−(CH−NH、−アリール−NH(ここで、n及びmはそれぞれ1〜10の値を有する)であり、Rは、水素、或いは4〜24個の炭素原子を有していてよいアルキル、アルケニル、アルコキシル、アリールアルキル、又はアルキルアリール基である)
によって表されるN−アリールフェニレンジアミンのようなアミノ芳香族化合物が挙げられる。N−アリールフェニレンジアミン化合物はまた、式:
【0042】
【化2】

【0043】
(式中、R、R、及びRは、水素、或いは1〜10個の炭素原子を含む線状又は分岐の炭化水素基であり、この基はアルキル、アルケニル、アルコキシル、アルキルアリール、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、又はアミノアルキル基であってよく、R、R、及びRは同一であっても異なっていてもよい)
によって表すこともできる。
【0044】
特に好適なN−アリールフェニレンジアミンは、N−フェニルフェニレンジアミン、例えばN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン(ここでは4−アミノジフェニルアミンとも呼ぶ)、N−フェニル−1,3−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン、N−ナフチル−フェニレンジアミン、N−フェニルナフタレンジアミン、及びN’−アミノプロピル−N−フェニルフェニレンジアミンである。最も好ましくは、アミンは4−アミノジフェニルアミン(N−フェニル−1,4−フェニレンジアミンとも呼ばれる)である。
【0045】
他の有用なアミンとしては、アミノ−イミダゾリン、例えば2−ヘプチル−3−(2−アミノプロピル)イミダゾリン、4−メチルイミダゾリン、及び1,3−ビス(2−アミノエチル)イミダゾリン、並びにアミノチアゾール類、例えばアミノチアゾール、アミノベンゾチアゾール、アミノベンゾチアジアゾール、及びアミノアルキルチアゾールが挙げられる。
【0046】
また、アミノカルバゾール、アミノインドール、アミノインダゾリノン、アミノメルカプトトリアゾール、及びアミノペリミジンも有用である。これらに関する構造を下記に示す。アミノカルバゾールは、式:
【0047】
【化3】

【0048】
(式中、R及びRは、水素、或いは1〜14個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、又はアルコキシル基を表し、R及びRは同一であっても異なっていてもよい)
によって表される。
【0049】
アミノインドールは、式:
【0050】
【化4】

【0051】
(式中、Rは、水素、或いは1〜14個の炭素原子を有するアルキル基を表す)
によって表される。
アミノインダゾリノンは、式:
【0052】
【化5】

【0053】
(式中、R10は、水素、或いは1〜14個の炭素原子を有するアルキル基である)
によって表される。
アミノメルカプトトリアゾールは、式:
【0054】
【化6】

【0055】
によって表される。
アミノペリミジンは、式:
【0056】
【化7】

【0057】
(式中、R11は、水素、或いは1〜14個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシル基を表す)
によって表されるものである。
【0058】
他の有用なアミンとしては、2−ヘプチル−3−(2−アミノプロピル)イミダゾリン、4−メチルイミダゾリン、1,3−ビス(2−アミノエチル)イミダゾリン、(2−アミノプロピル)ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジオクチルエチルアミン、N−オクチル−N’−メチルエチレンジアミン、及び2−メチル−1−(2−アミノブチル)ピペラジン、並びにアミノチアゾール、アミノベンゾチアゾール、アミノベンゾチアジアゾール、及びアミノアルキルチアゾールからなる群から選択されるアミノチアゾール類が挙げられる。
【0059】
また、上記の複数のアミンの組合せを用いて1以上のカップリング剤の基と反応させることができることも意図される。
アミン化合物の選択は、部分的にカップリング基の性質によって定まる。1つの好ましいアシル化剤である無水マレイン酸の場合には、無水官能基と有利に反応するアミンが好ましい。形成されるイミド生成物の安定性のために第1級アミンが望ましい。
【0060】
構造的にRNH(ここで、R基は最終生成物のために所望の性能向上官能基を含んでいてよい)として示される第1級アミンを用いることができる。かかる向上としては、とりわけ、摩耗保護、摩擦減少、及び酸化に対する保護を挙げることができる。炭素、水素、酸素、及び窒素に加えてハロゲン、イオウ、又はリンなど(しかしながらこれらに限定されない)の元素を単独か又は組み合わせて導入することも意図される。
【0061】
フリーラジカル開始剤:
広範には、上記のグラフト可能な低分子量ポリマーとカップリング剤との間の反応の条件下で作用させることができる任意のフリーラジカル開始剤を本発明において用いることができる。代表的な開始剤は、米国特許4,146,489(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)の4欄45〜53行に開示されている。意図される具体的な「ペルオキシ」開始剤としては、アルキル、ジアルキル、及びアリールペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシド(ここでは「DTBP」と略称する)、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が挙げられる。また、ペルオキシエステル及びペルオキシケタール開始剤、例えばt−ブチルペルオキシベンゾエート、t−アミルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルジペルオキシフタレート、及びt−ブチルペルオキシイソブチレートも意図される。また、ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及び過酸化水素も意図される。また、アゾ開始剤、例えば2−t−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、2−t−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、及びアゾイソブチロニトリル(AIBN)も意図される。また、ジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、及びペルオキシジカーボネートなど(しかしながらこれらに限定されない)の他の同様の材料も意図される。また、異なるタイプの複数の開始剤の組合せなどの1より多い開始剤の組合せを用いることができることも意図される。
【0062】
開始剤は、その温度以上で反応を速やかに開始させ、その温度以下では反応がゆっくりと進行するか又は全く進行しない特有の最低反応開始温度を有する。したがって、その温度においてグラフト反応を行う最低温度は開始剤の選択によって決定される。
【0063】
溶媒:
溶媒を用いる場合には、適当な極性又は非極性の液体又はプロセス流体を用いることができる。かかる溶媒は材料の取扱いを容易にし、反応物質の均一な分布を促進する。好適な溶媒としては、反応が完了した後にグラフトポリマーから容易に除去することができる揮発性溶媒が挙げられる。用いることができる溶媒は、反応混合物の成分を分散又は溶解することができ、反応中に認められる程度に沈殿しないか又は材料の程度までの副反応を引き起こさないものである。このタイプの溶媒の幾つかの例としては、直鎖又は分岐の脂肪族又は脂環式炭化水素、例えばn−ペンタン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、ジヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレンなどが挙げられる。極性溶媒の具体例としては、脂肪族ケトン(例えばアセトン)、芳香族ケトン、エーテル、エステル、アミド、ニトリル、スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジクロロトルエンなどのような非反応性ハロゲン化芳香族炭化水素もまた溶媒として有用である。複数の溶媒の組合せ、及び極性及び非極性の液体又はプロセス流体の組合せもまた本発明において用いるように意図される。
【0064】
有用な溶媒としてはまた、最終潤滑油生成物中に導入するのに好適なベースストック又はプロセス流体も挙げられる。反応中に大きく沈殿したり又は副反応を許容できない程度まで引き起こすことなく反応混合物の成分を分散又は溶解することができる任意のベースストック又はプロセス流体を用いることができる。水素化異性化及び水素化分解ベースストック、低又は中レベルの芳香族成分を含むベースストック、及び流体ポリ−α−オレフィンはここで用いるように意図される。芳香族物質は開始剤の存在下において互いとか又は他の反応成分と反応性である可能性があるので、芳香族成分は望ましくは低レベルに保持する。しかしながら、芳香族成分を有するベースストック又はプロセス流体の使用は、最適ではないが本発明の範囲内であると意図される。これらとしては、50%未満の芳香族物質、好ましくは30%未満の芳香族物質、より好ましくは25%未満の芳香族物質、或いは20%未満の芳香族物質、或いは10%未満の芳香族物質、或いは5%未満の芳香族物質(これらは重量%である)を含むベースストック又はプロセス流体が挙げられる。
【0065】
この種類の好適なベースストックとしては、ExxonMobilから入手できるグループI、100SUS、130SUS、又は150SUSの低流動溶媒中性基油、及びグループII−EHCベースストック;PetroCanadaから入手できるHT60(P60N)、HT70(P70N)、HT100(P100N)、及びHT160(P160N);並びにChevron USA Products Co.から入手できる100N及び240NのようなRLOPストックが挙げられる。一般に、グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVベースストックのカテゴリーが使用するように意図される。また、ポリ−α−オレフィン(PAO)のような芳香族フリーのストックも溶媒として用いることができる。
【0066】
好適な溶媒又はプロセス流体中の芳香族含量は、好ましくは約0〜約50重量%、或いは約0〜約25重量%、或いは約0〜約15重量%である。
低分子量多機能グラフトポリマーを製造するための溶液反応条件:
良好な煤処理と、粘度、スラッジ、及びワニス制御の両方を示す多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーを製造するために、これらの性能特性を与えるそれぞれのモノマー種を同じ低分子量ポリマー骨格上にグラフトする。煤処理と、粘度、スラッジ、及びワニス制御の両方を示す生成物を生成させるために、アシル化剤及びエポキシド、好ましくは無水マレイン酸のようなアシル化剤からなる群から選択されるカップリング剤を低分子量ポリマー上にグラフトして、アシル化ポリマー、例えば無水コハク酸(SA)カップリング基を含む生成物を形成する。次に、スラッジ及びワニス処理に関係するエチレン性不飽和モノマー又はモノマーの群、例えばN−ビニルイミダゾール(VIMA)を導入してポリマー骨格上にグラフトする。最後に、カップリング基、例えば上記の無水コハク酸基と縮合反応させることができる1種類又は複数のアミン反応物質を導入してカップリング基と反応させ、それによって1種類又は複数のアミン反応物質に応じて、例えばアミド、イミド、又はアミド酸を形成する。したがって、反応物質は、低分子量ポリマー、グラフト可能なカップリング剤、カップリング基と反応させることができるアミン、グラフト可能なエチレン性不飽和モノマーの群、及びグラフト反応を促進するフリーラジカル開始剤を含む。1より多いタイプの反応物質を用いることができるので、反応物質には、ポリオレフィン及び/又はポリエステルから選択される1種類以上のグラフト可能な低分子量ポリマー、1種類以上のグラフト可能なカップリング剤、カップリング基と反応させることができる1種類以上のアミン、1種類以上の上記のグラフト可能なエチレン性不飽和モノマー、及びグラフト反応を促進する1種類以上のフリーラジカル開始剤を含ませることができる。
【0067】
本発明の多機能グラフトポリマーは、ニートか、溶液中か、又は溶融反応器中のいずれかで製造する。一般に、グラフト反応はカップリング剤及びエチレン性不飽和モノマーの少なくとも一部を低分子量ポリマーにグラフトするのに十分な温度において行う。
【0068】
一般に、溶液中での本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーの製造は、以下のようにして行うことができる。グラフトするポリマーを流体形態で準備する。例えば、低分子量ポリマーは、ニートか、或いは潤滑組成物中で用いるのに好適な炭化水素基油、又は任意の他の好適な溶媒又はプロセス流体のような溶媒中に溶解して用いることができる。次に、ニートの低分子量ポリマー又は低分子量ポリマーの溶液を適当な反応温度に加熱する。次に、グラフト可能なカップリング剤を導入して、ペルオキシド分子のような開始剤を用いてポリマー上にグラフトし、それによってカップリング基を含むグラフトポリマーを形成する。例えば、カップリング剤が無水マレイン酸である場合には、無水コハク酸カップリング基を有するポリマーが形成される。この反応の後、グラフト可能なエチレン性不飽和モノマーを導入し、適当な開始剤を用いてポリマー骨格上にグラフトする。本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーのこの製造における最終工程は、低分子量ポリマー上のカップリング基と縮合反応させることができるアミンの反応、例えば無水コハク酸カップリング基を有するポリマーを第1級又は第2級アミンのいずれかと反応させることである。一般に、グラフトポリマーの製造のために必要な反応温度を、プロセスの全工程にわたって一定に保持することを留意すべきである。
【0069】
より詳しくは、低分子量ポリマー溶液を樹脂ケトルのような好適な反応器中に配置し、溶液を不活性ブランケット下で所望の反応温度に加熱して、反応を不活性ブランケット下で行う。最低でも、反応温度は反応にあてられる時間中に開始剤の実質的に全部が消費されるのに十分なものでなければならない。例えば、開始剤としてジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を用いる場合には、反応温度は、約145℃〜約230℃、或いは約155℃〜約210℃、或いは約160℃〜約200℃、或いは約165℃〜約190℃、或いは約165℃〜約180℃の範囲でなければならない。開始剤の分解速度は温度依存性であり、それぞれの開始剤に関して異なる可能性がある。したがって、特定の開始剤の選択は、反応温度又は時間のいずれか或いは両方を調節することを必要とする可能性がある。ある温度を採用したら、温度は通常はグラフトポリマーの製造において必要なプロセスの全工程にわたって一定に保持する。
【0070】
カップリング剤のグラフト:
カップリング剤を低分子量ポリマー溶液に加えて溶解する。カップリング剤と低分子量ポリマーとの意図される割合は、有効割合がポリマー骨格上に直接グラフトされるように選択される。カップリング剤と低分子量ポリマーとのモル比は、ポリマー骨格1モルあたり約0.1、或いは約0.5、或いは約1、或いは約1.5モル、乃至約9.9、或いは約6、或いは約5.5モルのカップリング剤の範囲であってよい。
【0071】
グラフト可能なカップリング剤は、全てを一回か、幾つかの別々の充填か、又は長時間にわたって一定の速度で反応器中に導入することができる。反応混合物へのグラフト可能なカップリング剤の所望の最小添加速度は、1分あたりにグラフト可能なカップリング剤の必要充填量の
少なくとも約0.01%;
或いは少なくとも約0.05%;
或いは少なくとも約0.1%;
或いは少なくとも約0.5%;
或いは少なくとも約1%;
或いは少なくとも約2%;
或いは少なくとも約3%;
或いは少なくとも約4%;
或いは少なくとも約5%;
或いは少なくとも約10%;
或いは少なくとも約20%;
或いは少なくとも約50%;
或いは少なくとも約100%;
から選択される。任意の上記の値は、添加の平均速度又は添加の最小速度を表すことができる。時間をかけて加える場合には、グラフト可能なカップリング剤は、別々の充填か、実質的に一定の速度か、或いは時間と共に変化する速度で加えることができる。
【0072】
所望の最大添加速度は、1分あたりにグラフト可能なカップリング剤の必要充填量の
最大で約0.5%;
或いは最大で約1%;
或いは最大で約2%;
或いは最大で約5%;
或いは最大で約10%;
或いは最大で約20%;
或いは最大で約50%;
或いは最大で約100%;
から選択される。任意の上記の値は、添加の平均速度又は添加の最大速度を表すことができる。
【0073】
グラフト可能なカップリング剤は、ニートの液体としてか、固体又は溶融形態か、或いは「カットバック」、即ち溶媒で希釈して加えることができる。それはニートで導入することができるが、通常は溶媒でカットバックしてそれが反応器に導入される際にモノマーが局所的に濃縮されることを回避する。モノマーは、好適な溶媒又は分散媒体によって、その重量又は体積の約50倍以下、好ましくは約20倍以下、より好ましくは約10倍以下、最も好ましくは少なくとも3倍以下に希釈することができる。
【0074】
開始剤:
ポリマー及びカップリング剤を含む溶液に開始剤を加える。開始剤は、グラフト可能なカップリング剤の前か、それと共にか、或いはその後に加えることができる。開始剤を加える際には、それは全てを一回か、幾つかの別々の充填か、又は長時間にわたって一定の速度で加えることができる。例えば、開始剤は、いずれの時点においても、存在する未反応の開始剤の量が全充填物より遙かに少なく、或いは好ましくは全充填物の少割合のみであるように加えることができる。一態様においては、開始剤は実質的に殆ど又は全てのグラフト可能なカップリング剤を加えた後に加えて、実質的に反応全体中に過剰のグラフト可能なカップリング剤及び低分子量ポリマーの両方が存在するようにすることができる。他の態様においては、開始剤は、グラフト可能なカップリング剤と共にか又はそれと同時に、実質的に同等の速度か又は多少速いか若しくは遅い速度で加えて、未反応の開始剤及び未反応のカップリング剤に対して過剰のポリマーが存在するようにすることができる。この態様に関しては、未反応の開始剤と未反応のカップリング剤との比は、反応の大部分の間、実質的に一定に保持する。
【0075】
開始剤とグラフト可能なカップリング剤との意図される割合、及び反応条件は、二量体、オリゴマー、又は単独重合したグラフト成分又は完全に独立したオリゴマー種を形成するよりも、グラフト可能なカップリング剤の大部分、理想的には全部がポリマー上に直接グラフトされるように選択される。意図される開始剤とグラフト可能なカップリング剤との最小モル割合は、約0.02:1〜約2:1、或いは約0.05:1〜約2:1である。開始剤の具体的な最大割合は意図されていないが、過度に多い開始剤は、ポリマーを分解し、最終配合物において問題を引き起こし、コストを増大させる可能性があり、したがって回避すべきである。
【0076】
反応混合物への開始剤の所望の最小添加速度は、
1分あたりに必要な開始剤の充填量の
少なくとも約0.005%;
或いは少なくとも約0.01%;
或いは少なくとも約0.1%;
或いは少なくとも約0.5%;
或いは少なくとも約1%;
或いは少なくとも約2%;
或いは少なくとも約3%;
或いは少なくとも約4%;
或いは少なくとも約5%;
或いは少なくとも約20%;
或いは少なくとも約50%;
から選択される。任意の上記の値は、添加の平均速度又は添加の最小速度を表すことができる。開始剤を時間をかけて加える場合には、開始剤は、別々の充填か、実質的に一定の速度か、或いは時間と共に変化する速度で加えることができる。
【0077】
反応混合物への開始剤の所望の最大添加速度は、1分あたりに必要な開始剤の充填量の
最大で約0.1%;
或いは最大で約0.5%;
或いは最大で約1%;
或いは最大で約2%;
或いは最大で約3%;
或いは最大で約4%;
或いは最大で約5%;
或いは最大で約10%;
或いは最大で約20%;
或いは最大で約50%;
或いは最大で約100%;
から選択される。任意の上記の値は、添加の平均速度又は添加の最大速度を表すことができる。
【0078】
開始剤はニートで加えることができるが、通常は溶媒でカットバックして、反応器に導入する際に開始剤が非常に局所的に濃縮されるのを回避する。開始剤は、好適な溶媒又は分散媒体によって、その重量又は体積の約50倍以下、より好ましくは約10倍以下、最も好ましくは約3倍以下に希釈することができる。
【0079】
エチレン性不飽和モノマーのグラフト:
上述したように、温度は、通常はグラフト低分子量ポリマーの製造中は一定に保持する。したがって、ある温度において、スラッジ及びワニス処理に関係する1種類以上の上記のエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマー、例えばVIMAを、開始剤と一緒に導入する。窒素及び酸素の少なくとも1つを含む上記のエチレン性不飽和モノマーと上記の低分子量ポリマーとの意図される割合は、有効割合のモノマーが低分子量ポリマー骨格上に直接グラフトされるように選択する。スラッジ/ワニス制御のために好適なモノマーであるエチレン性不飽和モノマーは、幾つかの別々の充填としてか、実質的に一定の速度か、時間と共に変化する速度か、或いは全部を一度に加えることができる。このモノマーと低分子量ポリマーとのモル比は、低分子量ポリマー1モルあたり約0.1、或いは約0.5、或いは約1、或いは約1.5、乃至約9.9、或いは約6、或いは約5.5モルのモノマーである。
【0080】
グラフト可能なエチレン性不飽和モノマーは、幾つかの別々の充填としてか、実質的に一定の速度か、時間と共に変化する速度か、或いは全部を一度に反応器中に導入することができる。反応混合物へのグラフト可能なエチレン性不飽和モノマーの所望の最小添加速度は、1分あたりに必要なかかるグラフト可能なモノマーの充填量の
少なくとも約0.01%;
或いは少なくとも約0.05%;
或いは少なくとも約0.1%;
或いは少なくとも約0.5%;
或いは少なくとも約1%;
或いは少なくとも約2%;
或いは少なくとも約3%;
或いは少なくとも約4%;
或いは少なくとも約5%;
或いは少なくとも約10%;
或いは少なくとも約20%;
或いは少なくとも約50%;
或いは少なくとも約100%;
から選択される。時間をかけて加える場合には、モノマーは、実質的に一定の速度か、又は時間と共に変化する速度で加えることができる。任意の上記の値は、添加の平均速度、又は時間と共に変化する速度の最小値を表すことができる。所望の最大添加速度は、1分あたりに必要なグラフト可能なモノマーの充填量の
最大で約0.5%;
或いは最大で約1%;
或いは最大で約2%;
或いは最大で約5%;
或いは最大で約10%;
或いは最大で約20%;
或いは最大で約50%;
或いは最大で約100%;
から選択される。任意の上記の値は、添加の平均速度、又は時間と共に変化する速度の最大値を表すことができる。
【0081】
グラフト可能なモノマーは、ニートの液体としてか、固体又は溶融形態か、或いは溶媒でカットバックして加えることができる。ニートで導入することができるが、通常は溶媒でカットバックして、反応器に導入する際にモノマーが局所的に濃縮されるのを回避する。モノマーは、好適な溶媒又は分散媒体によって、その重量又は体積の約50倍以下、好ましくは約10倍以下、より好ましくは約3倍以下に希釈することができる。
【0082】
開始剤は、グラフト可能なモノマーの前か、それと共にか、又はその後に加えることができる。それは、全部を一度か、幾つかの別々の充填か、或いは長時間にわたって一定の速度で反応器中に加えることができる。例えば、開始剤は、いずれの時点においても、存在する未反応の開始剤の量が全充填物より遙かに少なく、或いは好ましくは全充填物の少割合のみであるように加えることができる。一態様においては、開始剤は実質的に殆ど又は全てのグラフト可能なモノマーを加えた後に加えて、実質的に反応全体中に過剰のグラフト可能なモノマー及びポリマーの両方が存在するようにすることができる。他の態様においては、開始剤は、グラフト可能なモノマーと共に、実質的に同等の速度か又は多少速いか若しくは遅い速度で加えて、未反応の開始剤及び未反応のグラフト可能なモノマーに対して過剰のポリマーが存在するようにすることができる。
【0083】
開始剤とグラフト可能なモノマーとの意図される割合、及び反応条件は、二量体、オリゴマー、又は単独重合グラフト部分又は完全に独立したポリマーを形成するよりも、グラフト可能なモノマーの大部分、理想的には全部がポリマー上に直接グラフトされるように選択される。意図される開始剤と上記のエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマーとの最小モル割合は、約0.02:1、好ましくは約0.05:1、乃至約2:1である。開始剤の具体的な最大割合は意図されていないが、過度に多い開始剤は、ポリマーを分解し、或いは最終配合物において問題を引き起こし、コストを増大させる可能性があり、したがって回避すべきである。
【0084】
上記したように、開始剤は、幾つか(又は多数)の別々の充填か、或いは長時間にわたって一定の速度で反応器中に導入することができる。反応混合物への開始剤の所望の最小添加速度は、1分あたりに必要な開始剤の充填量の
少なくとも約0.005%;
或いは少なくとも約0.01%;
或いは少なくとも約0.1%;
或いは少なくとも約0.5%;
或いは少なくとも約1%;
或いは少なくとも約2%;
或いは少なくとも約3%;
或いは少なくとも約4%;
或いは少なくとも約5%;
或いは少なくとも約20%;
或いは少なくとも約50%;
から選択される。開始剤は、実質的に一定の速度か、或いは時間と共に変化する速度で加えることができる。任意の上記の値は、添加の平均速度、又は時間と共に変化する速度の最小値を表すことができる。
【0085】
反応混合物への開始剤の所望の最大添加速度は、1分あたりに必要な開始剤の充填量の
最大で約0.1%;
或いは最大で約0.5%;
或いは最大で約1%;
或いは最大で約2%;
或いは最大で約3%;
或いは最大で約4%;
或いは最大で約5%;
或いは最大で約10%;
或いは最大で約20%;
或いは最大で約50%;
或いは最大で約100%;
から選択される。任意の上記の値は、添加の平均速度、又は時間と共に変化する速度の最大値を表すことができる。
【0086】
開始剤はニートで加えることができるが、通常は溶媒でカットバックして、反応器に導入する際に開始剤が局所的に濃縮されるのを回避する。開始剤は、好適な溶媒又は分散媒体によって、その重量又は体積の約50倍以下、或いは約20倍以下、或いは約10倍以下、或いは約3倍以下に希釈することができる。反応は、特定の反応物質によって要求される程度まで進行させることができる。
【0087】
アミンとグラフトしたカップリング剤との反応生成物の形成:
本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーの製造における次の工程は、アシル化低分子量ポリマー上のカップリング基、通常はアシル基、例えばポリマー上の無水コハク酸置換基を、1種類又は複数のアミン反応物質との縮合反応によって煤処理基に転化させることである。
【0088】
アミン−カップリング剤の反応の形成におけるアミン反応物質とカップリング基、例えばアシル基との意図されるモル比は、約1:10〜約6:1、或いは約1:3〜約4:1、或いは約1:2〜約4:1、或いは約1:2〜約2:1であってよい。例えば、無水コハク酸ポリマー置換基に関しては、アミン反応物質とアシル基との好適なモル比は、約2:1〜1:2、或いは1:1であってよい。
【0089】
溶液は、グラフト反応を行うのに適当な温度のような昇温温度に保持することができ、或いは温度をグラフト反応が起こらない温度に低下させることができる。反応温度を低下させる場合には、アミン反応物質は全部を一度で反応器中に導入してポリマー溶液中にブレンドすることができる。次に、アシル化ポリマーとアミン反応物質との間の反応を行うために反応器温度を上昇させる。或いは、反応器を昇温温度に保持することができ、アミン反応物質を比較的ゆっくりか又は速やかに反応器に供給して、アシル化ポリマーとアミン反応物質との間の反応を進行させることができる。反応物質は、アミンとの反応が完了してアミン−カップリング剤の反応生成物が形成されるまでその温度に保持する。このグラフトポリマーの製造段階中においては不活性ブランケットを保持することができる。
【0090】
アミン反応物質は、幾つかの別々の充填か、長時間にわたって一定の速度か、時間と共に変化する速度か、或いは全部を一度に反応器中に導入することができる。即ち、アミン反応物質の所望の添加速度は、1分あたりに必要なアミン反応物質の充填量の
少なくとも約0.2%;
或いは少なくとも約0.5%;
或いは少なくとも約1%;
或いは少なくとも約2%;
或いは少なくとも約3%;
或いは少なくとも約4%;
或いは少なくとも約5%;
或いは少なくとも約20%;
或いは少なくとも約50%;
或いは少なくとも約100%;
である。任意の上記の値は、添加の平均速度、又は時間と共に変化する速度の最小値を表すことができる。
【0091】
反応が実質的に完了した後に、熱を除去し、反応生成物を混合しながら反応器内で冷却するか、或いは冷却前に取り出すことができる。
グラフトモノマー比:
カップリング剤とエチレン性不飽和モノマーとのモル比の範囲は、約1:100〜約100:1、或いは約1:20〜約20:1、或いは約1:10〜約10:1、或いは約1:2〜約2:1であってよい。
【0092】
カップリング基とアミンとの反応によって形成される生成物とグラフト可能な低分子量ポリマーとのモル比は、カップリング剤に関して上記に記載のものと同等、即ち、低分子量ポリマー1モルあたり約0.1:1、或いは約0.5:1、或いは約1:1、或いは約1.5:1、乃至約9.9:1、或いは約6:1、或いは約5.5:1モルのかかる反応生成物であると理解される。
【0093】
アミン−カップリング剤反応生成物及びエチレン性不飽和窒素含有及び/又は酸素含有モノマーの両方を含むグラフトモノマーとポリマー骨格との合計モル比は、好適には約0.5:1、或いは約1:1、或いは約2:1、或いは約3:1、乃至約20:1、或いは約15:1、或いは約11:1であると意図される。
【0094】
これらのグラフト濃度に基づいて、本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーには、低分子量ポリマー1モルあたり、約0.5モルの煤を制御することができるモノマーであるアミン−カップリング剤反応生成物、及び約0.5モルのスラッジ及びワニスを制御することができるモノマーであるエチレン性不飽和モノマーを含ませることができる。本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーは、低分子量ポリマー1モルあたり、約2モルの煤を制御することができるアミン−カップリング剤反応生成物モノマー、及び約4モルのスラッジ及びワニスを制御することができるエチレン性不飽和窒素及び/又は酸素モノマーを含むように配合することができる。本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーは、低分子量ポリマー1モルあたり、約3モルの煤を制御することができるアミン−カップリング剤反応生成物モノマー、及び約1モルのスラッジ及びワニスを制御することができるエチレン性不飽和モノマーを含むように配合することができる。
【0095】
上記したように、グラフト置換基のそれぞれ、即ちアミン−カップリング剤反応生成物又はエチレン性不飽和モノマーのいずれかとポリマー骨格とのモル比は、0.1:1〜9.9:1の範囲であってよい。グラフト置換基、即ちアミン−カップリング剤反応生成物及びエチレン性不飽和モノマーのそれぞれとポリマー骨格とのモル比のこの範囲に基づくと、1つの置換基と他のものとの相対的なモル比は約1:1〜約100:1の範囲であってよい。例として、第1の置換基が0.1:1のポリマーとのモル比を有し、第2の置換基が1:1のモル比を有する場合には、第2の置換基と第1の置換基との相対的なモル比は10:1である。
【0096】
低分子量多機能グラフトポリマーを製造するための溶融反応条件:
グラフト反応は、押出反応器、加熱溶融ブレンド反応器、バンバリーミル又は他の材料ブレンダー又はミキサー、例えば押出機内において、ポリマー溶融反応条件下で行うことができる。本明細書において用いる押出機という用語は、本発明による溶融ブレンドのために用いることができるより広い種類のブレンダー又はミキサーを例示するものとして理解すべきである。
【0097】
溶融反応を行うためには、運転パラメーター及び条件によって所望の仕様を満足する生成物が生成することを確保するように反応押出機に関する好適なプロセス設計パラメーターを定めることが望ましい。反応押出を行うのに適した運転条件及びパラメーターとしては、反応物質供給口、供給速度コントローラー及びモニターを含む反応物質供給システム、ポリマー供給口、供給速度コントローラー及びモニターを含むポリマー供給システムに関する規準が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー供給システムには、必要に応じて低分子量ポリマー及び高分子量ポリマーを取り扱うための設備を含ませることができる。上記の供給流の考慮事項に加えて、押出機の設計に関する他の規準を考慮すべきである。これらとしては、とりわけ、スクリューのデザイン及びその寸法、バレル直径及び長さ、ダイの形態及び開口断面積、押出機を加熱するか又は時には押出機を冷却するため、及び押出機温度、例えばバレル温度及びダイ温度を制御するためのシステム、スクリュー速度、並びに押出前及び押出後条件の両方が挙げられる。生成物の目標を満足する生成物を生成させるために必要な正確な条件は、当業者によって定めることができる。その運転中においては、押出機は、実質的に好気条件下に保持することができ、或いは嫌気性又は嫌気性に近い運転条件を生成するのに適した不活性化材料でパージするか又は覆うことができる。
【0098】
適当な反応物質供給濃度及び条件は、溶媒ベースのグラフト反応に関して上記に開示した範囲に基づくことができる。これらとしては、1種類又は複数の低分子量ポリマー、1種類又は複数のグラフト可能なエチレン性不飽和モノマーのようなグラフト可能なモノマー、1種類又は複数のアシル化剤、1種類又は複数の開始剤、及び1種類又は複数のアミン反応物質の適当な供給速度、濃度、及び条件が挙げられる。示される濃度及び条件の例としては、とりわけ、グラフト可能なエチレン性不飽和モノマー及びアシル化剤とポリマー及び開始剤の両方との相対濃度、並びにアミン反応物質とアシル化剤との相対濃度が挙げられる。
【0099】
意図される最小及び最大のモル割合は、溶媒ベースの反応に関して上記に規定したものと概して同等である。溶媒ベースの反応に関して示したように、反応物質は、複数の成分の混合物としてか、或いは個々の成分として別々に押出機に供給することができる。
【0100】
反応物質は、ニートか、或いは上昇した種の濃度の局在化領域を回避するために、且つ反応物質供給流を制御する方法として溶媒で「カットバック」、即ち希釈して加えることができる。代表的な溶媒としては、揮発性及び非揮発性の流体が挙げられる。考えられる溶媒としては、本明細書において規定するような潤滑剤組成物において通常用いられる基油、ミネラルスピリット、非極性溶媒、極性溶媒、並びに、水、メタノール、及びアセトンのような溶媒を含む当業者に公知に他の溶媒が挙げられる。溶媒に対する反応物質の濃度は、約10重量%〜約90重量%の範囲であってよい。一般に、反応押出によってグラフト反応を行うための濃度及び条件は、試薬が反応して二量体、オリゴマー、又は単独重合グラフト成分又は更には独立したホモポリマーを形成するよりも、低分子量ポリマー上へ反応性試薬が直接グラフトされるのを促進するように選択される。通常は、反応物質は、ニートか、或いは上記したように上昇した濃度の局在化領域を回避するために、例えば75%の溶媒で「カットバック」して導入する。
【0101】
グラフト反応を実施する際には、低分子量ポリマーを、実質的に「ニート」の材料として一定の速度で押出機に供給してその適当な反応条件にかける。グラフト可能なアシル化剤、グラフト可能なエチレン性不飽和モノマー、開始剤、及びアミン化合物も、一定の速度で押出機中に計量投入する。これは、ポリマーのものと同じ供給口を通してか、又は別の反応物質供給口を通して行うことができる。即ち、グラフト可能な反応物質及び開始剤は、実質的にポリマーと一緒に同じ押出機区域中に供給して、それによって反応物質と反応させるか、或いはグラフト可能な試薬及び開始剤の供給は、ポリマー供給口の下流において、適当なスクリューシール部材を用いることによってポリマー供給口から離隔されている反応区域中に導入することによって若干遅らせることができる。開始剤に関しては、それぞれのグラフト可能な試薬の前か、一緒か、又はその後のいずれかに、即ち同じ押出機区域中か、又はグラフト可能な試薬の前か又は後のいずれかの区域中に導入することができる。反応区域は、適当なスクリューシール部材によって定められる。
【0102】
全ての反応物質、即ち低分子量ポリマー、アシル化剤、エチレン性不飽和モノマー、及び開始剤の絶対供給速度、及びポリマーに対する後者3つの相対濃度は、所望の生成物組成が得られるように調節して一定に保持される。グラフト可能な試薬に加えて、アシル化剤と反応することができるアミンを、グラフトしたポリマーの下流で押出機に供給して、低分子量多機能分散剤グラフトポリマーの製造を完了させることができる。
【0103】
低分子量多機能多重グラフトポリマーの製造の一態様においては、押出プロセスによって1つ、即ち第1の反応物質のみをグラフトすることができ、一方で、溶液プロセスを用いて低分子量多機能多重グラフトポリマーの製造を完了させる。他の態様においては、押出プロセスを用いて2つの反応物質をグラフトすることができ、溶液プロセスを用いて生成物の製造を完了させることができる。他の態様においては、製造は、全体的に押出プロセスを用いて行うことができる。
【0104】
1種類以上のポリマー、アシル化剤、グラフト可能なエチレン性不飽和モノマー、開始剤、及びアミンを用いて、本発明の多機能グラフトポリマーを製造することができる。好ましい態様においては、1種類の低分子量ポリマー、1種類のアシル化剤、1種類のグラフト可能なエチレン性不飽和モノマー、1種類以上の開始剤、及び1種類のアミンを、低分子量多機能多重グラフトポリマーの製造において用いることができる。別の態様においては、1種類より多い低分子量ポリマー、1種類より多いアシル化剤、1種類より多いグラフト可能なエチレン性不飽和モノマー、1種類より多い開始剤、及び1種類より多いアミンを、グラフトのために用いることができる。更に、ポリマー反応物質に、低及び高分子量ポリマーの両方を含ませることができる。
【0105】
本発明の別の態様においては、上記で説明したように、グラフト可能なモノマー、即ちアシル化モノマー、窒素及び/又は酸素を含むエチレン性不飽和モノマー、及びこれらの組合せ、並びに開始剤を、適当な相対濃度で一緒に導入することができる。滞留時間、押出機区域温度、スクリュー速度、反応物質供給速度に関する運転条件を注意深く選択することによって、押出機プロセスを、種々の異なる反応物質、ここに開示する任意の種々のポリマー、ここに開示する任意のグラフト可能なモノマー、ここに開示する任意の開始剤、及びここに開示する任意のアミンを使用するようにカスタマイズすることができる。必要な場合には、抑制剤を用いて新規な生成物を得ることができる。
【0106】
一態様においては、反応物質、例えば1種類又は複数のアシル化剤、1種類又は複数のグラフト可能なエチレン性不飽和モノマー、1種類又は複数の開始剤、及び縮合反応のための1種類又は複数のアミンを別々に供給する。低分子量ポリマーが押出機に供給する最初の反応物質であると有利である。
【0107】
溶融反応はまた、9950以下の重量平均分子量を有する低分子量ポリマー、及び10,000、乃至750,000又は500,000の重量平均分子量を有する高分子量ポリマーの両方の混合物を用いて行うこともできる。例えば、2種類のタイプのポリマーを同時か又は別々に押出機に供給することができる。これらのタイプのポリマーは、押出機中に導入する前に一緒にブレンドすることができ、或いは2つの別々のポリマー供給流を用いる場合には、ポリマーのブレンドを押出機内で行うことができる。他の反応物質、即ちアシル化剤、グラフト可能なエチレン性不飽和モノマー、開始剤、及びアシル化したポリマーと反応することができるアミンの導入の前に複数のタイプのポリマーをブレンドすると有利である。或いは、2つのタイプのポリマーを別々に反応区域中に供給し、次にアシル化剤、グラフト可能なエチレン性不飽和モノマー、開始剤、及びアシル化したポリマーと反応することができるアミンと反応させることができる。或いは、低及び高分子量ポリマーの両方を含む多機能グラフト生成物は、最初に押出機内でグラフト反応を行い、このグラフト反応の後に溶媒中で反応を行い、即ち溶液中で多機能生成物の生成を完了させることによって生成させることができる。一態様においては、ポリマーは押出機に供給する最初の反応物質である。或いは、高及び低分子量ポリマーの両方を用いる全反応を溶液中で行うことができる。
【0108】
高分子量ポリマー及び他のポリマー:
広範囲のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエステル、及び変性ポリエステル(ペンダントな不飽和を有していても有していなくてもよい)は、高分子量ポリマーとして用いるように意図される。かかるポリオレフィン及びポリエステルの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、2種類以上のモノマーを含むポリマー、ポリイソブテン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、ブタジエン及びスチレンの部分水素化ポリオレフィン、及びイソプレンのコポリマー、例えばスチレンとイソプレンのコポリマーなど(しかしながらこれらに限定されない)のホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、及びより高級のものが挙げられる。EPDM(エチレン/プロピレン/ジエンモノマー)ポリマー、エチレン−プロピレンオクテンターポリマー、及びエチレン−プロピレンENBターポリマーもここで用いるように意図される。また、本発明の多機能グラフトポリマーを製造するために複数のポリオレフィンの混合物及び複数のポリエステルの混合物を用いることも意図される。また、ポリオレフィン及びポリエステルの化学的及び物理的混合物を用いることも意図される。ここで意図する高分子量ポリオレフィンは、約10,000〜約750,000、或いは約20,000〜約500,000の重量平均分子量を有していてよい。高分子量ポリオレフィンは、約1〜約15の多分散度を有していてよい。ここで意図する高分子量ポリエステルは、約10,000〜約750,000、或いは約20,000〜約750,000の重量平均分子量を有していてよい。
【0109】
溶融反応生成物は、ニートか又は適当な溶媒中に溶解して用いることができる。一態様においては、グラフトポリマー生成物は、低分子量多機能多重グラフトポリマーの取扱いを容易にするため、且つグラフト生成物を用いる潤滑剤のブレンドを容易にするために、適当な溶媒又はベースストック中に溶解する。
【0110】
潤滑油組成物:
本発明の潤滑油組成物は、好ましくは示されている割合の以下の成分を含む。
A.約60重量%、或いは約65重量%、或いは約70重量%、乃至約99重量%の1種類以上の基油;
B.約0.02重量%、或いは約0.05重量%、或いは約0.15重量%、或いは約0.25重量%、乃至約20重量%、或いは約10重量%、或いは約5重量%、或いは約2重量%の1種類以上の本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマー;
C.約0重量%、或いは約0.05重量%、或いは約0.15重量%、或いは約0.1重量%、乃至約15重量%、或いは約10重量%、或いは約5重量%、或いは約2.5重量%の10,000より大きい重量平均分子量を有する1種類以上のグラフトしたより高分子量のポリマー;
D.約0重量%、或いは約0.5重量%、或いは約0.15重量%、或いは約0.1重量%、乃至約15重量%、或いは約10重量%、或いは約5重量%、或いは約2.5重量%の1種類以上のグラフトしたポリマー以外のポリマー;
E.0重量%、或いは約0.2重量%、或いは約0.5重量%、或いは約0.7重量%、乃至約15重量%、或いは約10重量%、或いは約8重量%、或いは約6重量%の本発明にしたがってグラフトされていない1種類以上の分散剤;
F.約0重量%、或いは約0.3重量%、或いは約0.5重量%、乃至約10重量%、或いは約8重量%、或いは約6重量%,或いは約4重量%の1種類以上の洗浄剤;
G.約0重量%、或いは約0.04重量%、或いは約0.06重量%、乃至約5重量%、或いは約3重量%、或いは約2重量%の1種類以上の耐摩耗剤;
H.約0重量%、或いは約0.05重量%、或いは約0.1重量%、乃至約5重量%、或いは約3重量%、或いは約2.5重量%、或いは約2重量%の1種類以上の酸化防止剤;及び
I.約0重量%、或いは約0.005重量%、乃至約4重量%、或いは約3重量%、或いは約2重量%、或いは約1.5重量%の、摩擦調節剤、流動点降下剤、及び消泡剤のような少量の成分。
【0111】
C〜Iの割合は、商業的に入手できる形態を基準として計算することができる。上記に示すそれぞれの成分の機能及び特性及びかかる成分の幾つかの例を下記に要約する。
基油:
本発明のグラフト可能な低分子量ポリマーのための溶媒又はプロセス溶媒として好適であると既に示されている石油又は合成基油(グループI、II、III、IV、及びV)のいずれも、基油として用いることができる。実際には、任意の通常の潤滑油又はその組合せを用いることもできる。
【0112】
多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマー;
本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーは、煤、スラッジ、及びワニス処理性を有するので、これは潤滑剤配合物において用いられる煤、スラッジ、及びワニスを制御するために用いられる添加剤の一部又は全部に代えて用いることができる。
【0113】
また、従来技術において開示されているグラフトした低分子量ポリオレフィン及び/又は低分子量ポリエステルを、本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリオレフィン及び/又はグラフトポリエステルと組み合わせて用いることもできる。
【0114】
グラフト及び非グラフト粘度調節剤:
例えばポリオレフィン及びポリエステルなどの通常の粘度指数改良ポリマーを、本発明の潤滑油配合物において用いることができる。本発明において用いるように意図されるポリマーの幾つかの例としては、米国特許4,092,255(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)の1欄29〜32行に示唆されているものが挙げられ;本発明において用いるように意図されるポリマーとしては、例えば、ポリイソブテン、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ブタジエン及びスチレンの水素化及び部分水素化低分子量ポリマー、エチレン及びプロピレンのアモルファスポリオレフィン、エチレン−プロピレンジエン低分子量ポリマー、ポリイソプレン、及びスチレン−イソプレンが挙げられる。同様に、米国特許4,092,255;5,814,586;及び5,874,389、並びにその中で引用されている参照文献に開示されているもののような官能化ポリオレフィンは、その全部を参照として本明細書中に包含する。
【0115】
分散剤:
分散剤は、不溶性のエンジンオイル酸化生成物の懸濁を助けて、スラッジの凝集及び金属部品上への微粒子の沈殿及び堆積を抑止する。好適な分散剤としては、油溶性ポリイソブチレン無水コハク酸と、テトラエチレンペンタミン及びそのホウ酸塩のようなエチレンアミンとの反応生成物のようなアルキルスクシンイミドが挙げられる。
【0116】
かかる通常の分散剤は本発明において用いるように意図される。分散剤の幾つかの例としては、米国特許4,092,255の1欄38〜41行に列記されているものが挙げられる。本発明において用いるように意図される分散剤としては、例えば、スクシンイミドカルボニルに対してα−位の炭素上にイソブテン又はプロピレンのポリオレフィンのようなポリオレフィンを有するスクシンイミド又はコハク酸エステルが挙げられる。これらの添加剤は、エンジン又は他の機械の清浄性を保持するのに有用である。
【0117】
洗浄剤:
エンジンの清浄性を保持するために用いる洗浄剤を、本潤滑油組成物中に含ませることができる。これらの材料としては、スルホン酸、アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール、アルキルサリチレート、ナフテネート、及び他の可溶性モノ及びジカルボン酸の金属塩が挙げられる。塩基性アルカリ土類金属スルホネートのような塩基性金属塩、特にカルシウム及びマグネシウム塩が洗浄剤としてしばしば用いられる。かかる洗浄剤は、不溶性の粒子状材料をエンジン又は他の機械内に懸濁状態で保持するのに特に有用である。本発明において用いるように意図される洗浄剤の他の例としては、米国特許4,092,255の1欄35〜36行に示されているものが挙げられる。本発明において用いるように意図される洗浄剤としては、例えば多価金属のスルホン酸塩、フェネート、又は有機ホスフェートが挙げられる。
【0118】
耐摩耗剤:
耐摩耗剤は、それらの名称が示すように金属部品の摩耗を減少させる。亜鉛ジアルキルジチオホスフェート及び亜鉛ジアリールジチオホスフェート、並びに有機モリブデン化合物、例えばモリブデンジアルキルジチオカルバメートが、通常の耐摩耗剤の代表例である。
【0119】
酸化防止剤:
酸化抑制剤又は酸化防止剤は、潤滑油が使用中に劣化する傾向を減少させる。この劣化は、油粘度の増加、油中の酸化生成物の存在、及び金属表面上のスラッジ及びワニス状の堆積物のような酸化の生成物によって示される可能性がある。かかる酸化抑制剤としては、好適にはC〜C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、例えばカルシウムノニルフェノールスルフィド、ジオクチルフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ホスホ硫化又は硫化炭化水素、及び有機モリブデン化合物、例えばモリブデンジアルキルジチオカルバメートが挙げられる。本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーを使用することによって、通常の酸化防止剤の使用を減少又は排除することができる。
【0120】
少量の成分:
他の少量の成分は、本発明の多機能多重グラフトモノマー低分子量グラフトポリマーを含む潤滑油組成物中に含ませるように意図される。かかる添加剤の非包括的なリストとしては、流動点降下剤、錆抑制剤、並びに極圧添加剤、摩擦調節剤、シール膨潤剤、消泡剤、及び染料が挙げられる。
【0121】
燃料組成物:
本発明の燃料組成物は、大きな割合のガソリン、ディーゼル燃料、又は航空燃料のような炭化水素ベースの液体燃料を含む。かかる燃料組成物は、燃料に分散剤及び洗浄剤特性を与えるために本発明の多機能グラフトポリマーを含む。本発明の多機能低分子量グラフトポリマーは、約5重量ppm、或いは約10重量ppm、或いは約25重量ppm、或いは約50重量ppm、或いは約60重量ppm、乃至約5,000重量ppm、或いは約1,500重量ppm、或いは約1,000重量ppmの範囲のレベルでかかる燃料組成物中に存在させる。これらの燃料にはまた、アルコール及びエーテルのような他の成分、並びに他の添加剤を含ませることもできる。
【実施例】
【0122】
実施例1:低分子量多機能グラフトポリマーの製造:
電気加熱マントル、スターラー、温度計、計量シリンジポンプ供給システム、及び気体導入口を取り付けた500mLの樹脂ケトルに、1000の重量平均分子量を有する350g(0.35モル)の低分子量エチレン−プロピレンポリマーを充填した。
【0123】
気体導入口によって、気体を溶液の表面の下方又は上方のいずれかに供給することができた。溶液を170℃に加熱し、製造中にわたってその温度に保持した。加熱中において、低分子量エチレン−プロピレンポリマーを、溶液の表面下に供給した不活性化ガス(CO)でパージした。溶液が170℃の温度に達したら、パージガスの向きを変えて、低分子量ポリマーの表面の上方に流した。グラフト生成物の製造中にわたってブランケットガスの流れを保持した。
【0124】
約38g(0.39モル)の無水マレイン酸の単一の充填物を低分子量ポリマーに加え、溶解した。次に、ヘプタンで約50mLにした約15g(0.1モル)のジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を含む溶液を60分間かけて反応器に計量添加した。グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に30分間継続させた。次に、未反応の無水マレイン酸及びヘプタンをストリッピングするために、パージガスの向きを変えて低分子量ポリマー溶液下に4時間流した。DTBPは、低分子量ポリマー上へ無水マレイン酸をグラフトして対応する無水コハク酸(SA)のアシル化グラフト生成物を形成するのを促進した。
【0125】
次の工程は、前の工程で製造されたアシル化低分子量ポリマー上への1−ビニルイミダゾール(VIMA)のグラフトであった。製造のこの部分を行うために、2つの溶液(1つはアセトンで約50mLにした約35g(0.37モル)のVIMAを含むものであり、他はヘプタンで約50mLにした約15g(0.1モル)のDTBPを含むものであった)を調製した。シリンジポンプを用いて、これらの溶液を60分間かけて反応器に同時に供給した。次に、グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に更に30分間進行させた。VIMAの反応が実質的に完了した後、約72g(0.39モル)のN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンの充填物を約1時間かけて混合物に加え、前の工程で形成された二重グラフト低分子量ポリマー上のアシル基と反応させて、低分子量二重モノマーグラフトポリマー生成物を生成させた。ここでも、ヘプタン及びアセトンのような揮発性物質をストリッピングするために、パージガスの向きを変えて低分子量ポリマー溶液下に流した。
【0126】
実施例2:低分子量多機能グラフトポリマーの製造:
電気加熱マントル、スターラー、温度計、計量シリンジポンプ供給システム、及び気体導入口を取り付けた500mLの樹脂ケトルに、4000の重量平均分子量を有する350g(0.088モル)の低分子量エチレン−プロピレンポリマーを充填した。
【0127】
気体導入口によって、気体を溶液の表面の下方又は上方のいずれかに供給することができた。溶液を170℃に加熱し、製造中にわたってその温度に保持した。加熱中において、低分子量ポリマーを、溶液の表面下に供給した不活性化ガス(CO)でパージした。溶液が170℃の温度に達したら、パージガスの向きを変えて、低分子量ポリマーの表面の上方に流した。グラフト生成物の製造中にわたってブランケットガスの流れを保持した。
【0128】
約10g(0.1モル)の無水マレイン酸の単一の充填物を低分子量ポリマーに加え、溶解した。次に、ヘプタンで約30mLにした約4.4g(0.03モル)のジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を含む溶液を60分間かけて反応器に計量添加した。
【0129】
グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に30分間継続させた。次に、未反応の無水マレイン酸及びヘプタンをストリッピングするために、パージガスの向きを変えて低分子量ポリマー溶液下に4時間流した。DTBPは、低分子量ポリマー上へ無水マレイン酸をグラフトして対応する無水コハク酸(SA)のアシル化グラフト生成物を形成するのを促進した。
【0130】
次の工程は、前の工程で製造されたアシル化低分子量ポリマー上への1−ビニルイミダゾール(VIMA)のグラフトであった。製造のこの部分を行うために、2つの溶液(1つはアセトンで約30mLにした約9g(0.098モル)のVIMAを含むものであり、他はヘプタンで約30mLにした約4.3g(0.029モル)のDTBPを含むものであった)を調製した。シリンジポンプを用いて、これらの溶液を60分間かけて反応器に同時に供給した。次に、グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に更に30分間進行させた。VIMAの反応が実質的に完了した後、約18g(0.098モル)のN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンの充填物を4時間かけて混合物に加え、前の工程で形成された二重グラフト低分子量ポリマー上のアシル基と反応させて、二重モノマーグラフトポリマー生成物を生成させた。ここでも、ヘプタン及びアセトンのような揮発性物質をストリッピングするために、パージガスの向きを変えて低分子量ポリマー溶液下に流した。
【0131】
実施例3:低分子量多機能グラフトポリマーの製造:
電気加熱マントル、スターラー、温度計、計量シリンジポンプ供給システム、及び気体導入口を取り付けた500mLの樹脂ケトルに、6000の重量平均分子量を有する350gの低分子量エチレン−プロピレンポリマーの30重量%溶液を充填した。この溶液は、約105g(0.0175モル)の低分子量ポリマーを245gの商業的に入手できる水素化精製ベースストック中に溶解することによって調製した。
【0132】
気体導入口によって、気体を溶液の表面の下方又は上方のいずれかに供給することができた。溶液を170℃に加熱し、製造中にわたってその温度に保持した。加熱中において、低分子量ポリマー溶液を、溶液の表面下に供給した不活性化ガス(CO)でパージした。溶液が170℃の温度に達したら、パージガスの向きを変えて、低分子量ポリマー溶液の表面の上方に流した。グラフト生成物の製造中にわたってブランケットガスの流れを保持した。
【0133】
約5.7g(0.058モル)の無水マレイン酸の単一の充填物を低分子量ポリマー溶液に加え、溶解した。次に、ヘプタンで約20mLにした約2.7g(0.019モル)のジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を含む溶液を60分間かけて反応器に計量添加した。グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に30分間継続させた。次に、ヘプタン及び未反応の無水マレイン酸をストリッピングするために、パージガスの向きを変えて低分子量ポリマー溶液下に4時間流した。DTBPは、低分子量ポリマー上へ無水マレイン酸をグラフトして対応する無水コハク酸(SA)のアシル化グラフト生成物を形成するのを促進した。
【0134】
次の工程は、前の工程で製造されたアシル化低分子量ポリマー上への1−ビニルイミダゾール(VIMA)のグラフトであった。製造のこの部分を行うために、2つの溶液(1つはアセトンで約20mLにした約5.3g(0.056モル)のVIMAを含むものであり、他はヘプタンで約20mLにした約2.77g(0.019モル)のDTBPを含むものであった)を調製した。シリンジポンプを用いて、これらの溶液を60分間かけて反応器に同時に供給した。次に、グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に更に30分間進行させた。VIMAの反応が実質的に完了した後、約10.7g(0.058モル)のN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンの充填物を混合物に速やかに加え、前の工程で形成された二重グラフト低分子量ポリマー上のアシル基と反応させて、それによって二重モノマーグラフトポリマー生成物を生成させた。ここでも、ヘプタン及びアセトンのような揮発性物質をストリッピングするために、パージガスの向きを変えて低分子量ポリマー溶液下に流した。
【0135】
実施例4:低分子量多機能グラフトポリマーの製造:
電気加熱マントル、スターラー、温度計、計量シリンジポンプ供給システム、及び気体導入口を取り付けた500mLの樹脂ケトルに、4000の重量平均分子量を有する350g(0.088モル)の低分子量エチレン−プロピレンポリマーを充填した。
【0136】
気体導入口によって、気体を溶液の表面の下方又は上方のいずれかに供給することができた。溶液を170℃に加熱し、製造中にわたってその温度に保持した。加熱中において、低分子量ポリマーを、溶液の表面下に供給した不活性化ガス(CO)でパージした。溶液が170℃の温度に達したら、パージガスの向きを変えて、低分子量ポリマーの表面の上方に流した。グラフト生成物の製造中にわたってブランケットガスの流れを保持した。
【0137】
約20g(0.2モル)の無水マレイン酸の単一の充填物を低分子量ポリマー溶液に加え、溶解した。次に、ヘプタンで約30mLにした約8.8g(0.06モル)のジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を含む溶液を60分間かけて反応器に計量添加した。グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に30分間継続させた。次に、未反応の無水マレイン酸及びヘプタンをストリッピングするために、パージガスの向きを変えて低分子量ポリマー溶液下に4時間流した。DTBPは、低分子量ポリマー上へ無水マレイン酸をグラフトして対応する無水コハク酸のアシル化グラフト生成物を形成するのを促進した。
【0138】
次の工程は、前の工程で製造されたアシル化低分子量ポリマー上への1−ビニルイミダゾール(VIMA)のグラフトであった。製造のこの部分を行うために、2つの溶液(1つはアセトンで約40mLにした約27g(0.29モル)のVIMAを含むものであり、他はヘプタンで約40mLにした約12.9g(0.088モル)のDTBPを含むものであった)を調製した。シリンジポンプを用いて、これらの溶液を60分間かけて反応器に同時に供給した。次に、グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に更に30分間進行させた。VIMAの反応が実質的に完了した後、約37g(0.2モル)のN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンの充填物を混合物に速やかに加え、前の工程で形成された二重グラフト低分子量ポリマー上のアシル基と反応させて、それによって二重モノマーグラフトポリマー生成物を生成させた。ここでも、ヘプタン及びアセトンのような揮発性物質をストリッピングするために、パージガスの向きを変えて低分子量ポリマー溶液下に流した。
【0139】
実施例5:低分子量多機能グラフトポリマーの溶融製造:
57のL/Dを有する2インチバレルの二軸対向回転押出機を用いて、低分子量多機能グラフトポリマーを製造した。押出機には熱油加熱システムを取り付けた。反応物質供給システムは柔軟なものであった。例えば、ポリマー供給システムは、ニートの低分子量ポリマー、低分子量及び高分子量ポリマーのスラリー、並びに高分子量ポリマーを取り扱うように設計した。溶融反応器又は押出機の反応のためには反応物質の供給速度が重要であるので、供給システムが、反応物質を可能な限り最良に、連続的に、一定で且つ均一な速度で供給して、所望のグラフト生成物の組成を生成させるのに必要な供給速度を満足することを確保することが必要であった。反応物質供給システムは、無水マレイン酸、ジ−t−ブチルペルオキシド、VIMA、及びN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンを取り扱うように用いることができた。上記したように、供給システムは、反応物質の正確に計量された連続的且つ一定の供給速度を与えるように設計した。押出機は、それぞれの反応物質が別々の密封された区域中に導入されるように設計した。
【0140】
低分子量多機能グラフトポリマーの製造は、9000の重量平均分子量を有する低分子量ポリマーを、1モル/時の速度で第1の密封された区域中に導入することによって行った。無水マレイン酸を、1モル/時の速度で第2の密封された区域中に計量投入した。無水マレイン酸をポリマー中に満足に分散させるために混合部材を用いた。次に、混合物を第3の密封された反応区域中に導入し、その中にDTBPを約0.2モル/時の速度で供給した。アシル化低分子量ポリマーを次の密封された反応区域中に供給し、その中にVIMAを1モル/時の速度で供給した。この混合物を次の密封された反応区域中に供給し、その中にDTBPを0.2モル/時の速度で供給した。その中にN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンを0.5モル/時の速度で供給した次の反応区域内において、低分子量多機能グラフトポリマーの製造が完了した。多孔ダイを通して最終生成物を水浴中に押出して回収した。
【0141】
実施例6:低分子量多機能グラフトポリマーの溶融及び溶液製造:
また、溶融及び溶液プロセスの組み合わせを用いて多機能低分子量グラフトポリマーを製造した。このプロセスの第1工程は溶融プロセスであった。これは、9000の重量平均分子量を有する低分子量ポリマーを1モル/時の速度で第1の密封された区域中に導入することによって行った。無水マレイン酸を1.5モル/時の速度で第2の密封された区域中に計量投入した。無水マレイン酸をポリマー溶融体中に満足に分散させるために混合部材を用いた。次に、混合物を第3の密封された反応区域中に導入し、その中にDTBPを約0.4モル/時の速度で供給してアシル化ポリマーを形成した。多孔ダイを通してアシル化ポリマーを水浴中に押出して回収した。アシル化ポリマーの30%溶液を調製した。この溶液は、450g(0.0.05モル)のアシル化ポリマーを1050gの商業的に入手できる水素化精製ベースストック中に溶解することによって調製した。
【0142】
プロセスの溶液段階は、電気加熱マントル、スターラー、温度計、計量シリンジポンプ供給システム、及び気体導入口を取り付けた500mLの樹脂ケトル内で行った。樹脂ケトルに、約9000の重量平均分子量を有する350gのアシル化低分子量ポリマーの30重量%溶液を充填した。170℃の温度に昇温した後、アセトンで約20mLにした7g(0.077モル)の1−ビニルイミダゾール(VIMA)、及びヘプタンで約20mLにした約5g(0.034モル)のDTBPを、60分間かけて同時に計量投入した。次に、グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に更に30分間進行させた。VIMAの反応が実質的に完了した後、約5.5g(0.03モル)のN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンの充填物を混合物に4時間かけて混合物に加え、前の工程で形成された二重グラフト低分子量ポリマー上のアシル基と反応させて、それによって二重モノマーグラフトポリマー生成物を生成させた。ここでも、ヘプタン及びアセトンのような揮発性物質をストリッピングするために、パージガスの向きを変えて低分子量ポリマー溶液下に流した。
【0143】
実施例7:低分子量多機能グラフトポリマーの製造:
電気加熱マントル、スターラー、温度計、計量シリンジポンプ供給システム、及び気体導入口を取り付けた500mLの樹脂ケトルに、100℃において1264.4cStのKVisを有する1300MWのポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)25重量%を含む溶液を充填した。この溶液は、Dover Chemical Co.によって供給された125g(0.096モル)のPIBSAを375gのFHR100ベースストック中に溶解することによって調製した。この溶液のKVisは100℃において12.5cStであった。
【0144】
気体導入口によって、気体を溶液の表面の下方又は上方のいずれかに供給することができた。溶液を170℃に加熱し、製造中にわたってその温度に保持した。加熱中において、PIBSAを、溶液の表面下に供給した不活性化ガス(CO)でパージした。溶液が170℃の温度に達したら、パージガスの向きを変えて、PIBSA溶液の表面の上方に流した。グラフト生成物の製造中にわたってブランケットガスの流れを保持した。
【0145】
PIBSAを溶解した後の次の工程は、PIBSA上への1−ビニルイミダゾール(VIMA)のグラフトであった。製造のこの部分を行うために、2つの溶液(1つはアセトンで約60mLにした約40g(0.44モル)のVIMAを含むものであり、他はヘプタンで約60mLにした約10g(0.068モル)のDTBPを含むものであった)を調製した。シリンジポンプを用いて、これらの溶液を60分間かけて同時に供給した。次に、グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に更に30分間進行させた。VIMAの反応が実質的に完了した後、アセトン中に希釈した約17.6g(0.096モル)のN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンの充填物を混合物に速やかに加えた。PIBSA上のアシル基とN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンとの反応を60分間進行させ、それによって低分子量多機能グラフトポリマーを形成した。生成物の赤外スペクトルは、グラフトしたVIMA、並びにアミンと無水物から生成した縮合生成物の両方に関係するピークを示した。
【0146】
実施例8:低分子量多機能グラフトポリマーの製造:
電気加熱マントル、スターラー、温度計、計量シリンジポンプ供給システム、及び気体導入口を取り付けた500mLの樹脂ケトルに、100℃において1264.4cStのKVisを有する1300MWのポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)25重量%を含む溶液を充填した。この溶液は、Dover Chemical Co.によって供給された125g(0.096モル)のPIBSAを375gのFHR100ベースストック中に溶解することによって調製した。この溶液のKVisは100℃において12.5cStであった。
【0147】
気体導入口によって、気体を溶液の表面の下方又は上方のいずれかに供給することができた。溶液を170℃に加熱し、製造中にわたってその温度に保持した。加熱中において、PIBSAを、溶液の表面下に供給した不活性化ガス(CO)でパージした。溶液が170℃の温度に達したら、パージガスの向きを変えて、PIBSA溶液の表面の上方に流した。グラフト生成物の製造中にわたってブランケットガスの流れを保持した。
【0148】
PIBSAを溶解した後の次の工程は、PIBSA上への1−ビニルイミダゾール(VIMA)のグラフトであった。製造のこの部分を行うために、2つの溶液(1つはアセトンで60mLにした約38.8g(0.43モル)のVIMAを含むものであり、他はヘプタンで約60mLにした約9.7g(0.066モル)のDTBPを含むものであった)を調製した。シリンジポンプを用いて、これらの溶液を60分間かけて同時に供給した。次に、グラフト反応を、開始剤の供給にあてられた60分間の後に更に30分間進行させた。反応生成物は100℃において21cStのKVisを有していた。VIMAの反応が実質的に完了した後、約15mLのアセトン中に希釈した約17.6g(0.096モル)のN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンの充填物を混合物に速やかに加えた。PIBSA上のアシル基とN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンとの反応を60分間進行させ、それによって低分子量多機能グラフトポリマーを形成した。生成物の溶液は、100℃において26.3cStのKVisを有していた。生成物の赤外スペクトルは、グラフトしたVIMA、並びにアミンと無水物から生成した縮合生成物の両方に関係するピークを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)グラフト可能な部位、及び約500〜約9950の範囲の重量平均分子量を有する少なくとも1種類の低分子量ポリマー;
(b)2〜約50個の炭素原子を有し、窒素及び酸素の少なくとも1つを含む少なくとも1種類のエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマー;
(c)アシル化剤及びエポキシドからなる群から選択され、少なくとも2つの成分カップリング部位を有する少なくとも1種類のカップリング剤;及び
(d)カップリング剤と上記のポリマーとの間の反応によって形成される上記のポリマーの骨格上のカップリング基と反応することができる少なくとも1種類のアミン;
のグラフト低分子量ポリマーを含む多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項2】
低分子量ポリマーが、ポリオレフィン、ポリエステル、混合オレフィン−エステルポリマー、ポリスチレン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項3】
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタン、ブタジエン、イソブチレン、スチレン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、又はこれらの組合せから製造される少なくとも1種類の低分子量ポリマーを含む、請求項2に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項4】
ポリマーが、ホモポリマー、コポリマー、及びターポリマーからなる群から選択される、請求項2に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項5】
ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、2種類以上のモノマーを含む低分子量ポリマー、ポリイソブテン、ポリアルキルスチレン、ブタジエン及びスチレンの部分水素化ポリオレフィン、及びイソプレンのコポリマー、スチレンとイソプレンのコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーポリマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項6】
ポリマーが、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、及びこれらの混合物から誘導されるポリマーからなる群から選択される、請求項2に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項7】
ポリマーが、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、及びこれらの混合物から誘導されるポリマーからなる群から選択される、請求項2に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項8】
ポリマーが約500〜約6,500の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項9】
ポリマーが約750〜約5,000の重量平均分子量を有する、請求項8に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項10】
ポリマーが約900〜約5,000の重量平均分子量を有する、請求項9に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項11】
ポリマーが約1〜約20の多分散度を有する、請求項2に記載の多機能多重グラフトポリマー。
【請求項12】
ポリマーが約1〜約15の多分散度を有する、請求項11に記載の多機能多重グラフトポリマー。
【請求項13】
エチレン性不飽和モノマーが、1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−ピロリジノン、N−アリルイミダゾール、1−ビニルピロリジノン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、ジアリルホルムアミド、N−メチル−N−アリルホルムアミド、N−エチル−N−アリルホルムアミド、N−シクロヘキシル−N−アリルホルムアミド、N−アリルジイソオクチルフェノチアジン、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、3−メチル−1−ビニルピラゾール、N−ビニルプリン、N−ビニルピペラジン、ビニルピペリジン、ビニルモルホリン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項14】
エチレン性不飽和モノマーが、1−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、ジアリルホルムアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項15】
エチレン性不飽和モノマーが1−ビニルイミダゾールを含む、請求項14に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項16】
エチレン性不飽和モノマーが、イオウ、リン、ハロゲン、又はこれらの組合せを含む、請求項1又は13に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項17】
ポリマー1モルあたり約0.1モル〜約9.9モルのエチレン性不飽和モノマーを含む、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項18】
ポリマー1モルあたり約1モル〜約6モルのエチレン性不飽和モノマーを含む、請求項17に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項19】
ポリマー1モルあたり約1.5モル〜約5.5モルのエチレン性不飽和モノマーを含む、請求項18に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項20】
アシル化剤が、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、かかるカルボン酸の無水物、かかるカルボン酸の低級アルキルエステル、かかるカルボン酸のハロゲン化物、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項21】
アシル化剤が、モノ不飽和C〜C10ジカルボン酸、モノ不飽和C〜C10モノカルボン酸、これらの無水物、及びかかるアシル化剤の2以上の混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項22】
アシル化剤が、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、クロロマレイン酸、アコニット酸、メチルクロトン酸、ソルビン酸、3−ヘキセン酸、10−デセン酸、2−ペンテン−1,3,5−トリカルボン酸、桂皮酸、これらの低級アルキルエステル、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項21に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項23】
ポリマー1モルあたり約0.1モル〜約9.9モルのカップリング剤を有する、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項24】
ポリマー1モルあたり約1モル〜約6モルのカップリング剤を有する、請求項23に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項25】
ポリマー1モルあたり約1.5モル〜約5.5モルのカップリング剤を有する、請求項24に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項26】
カップリング剤とエチレン性不飽和モノマーとのモル比が約1:100〜100:1である、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項27】
カップリング剤とエチレン性不飽和モノマーとのモル比が約1:20〜20:1である、請求項26に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項28】
カップリング剤とエチレン性不飽和モノマーとのモル比が約1:10〜10:1である、請求項27に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項29】
カップリング剤とエチレン性不飽和モノマーとのモル比が約1:2〜2:1である、請求項28に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項30】
カップリング剤とエチレン性不飽和モノマーとのモル比が約1:1である、請求項29に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項31】
上記アミンが第1級アミン及び第2級アミンからなる群から選択される、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項32】
アミンが、メチレンアミン、エチレンアミン、ブチレンアミン、プロピレンアミン、ペンチレンアミン、ヘキシレンアミン、ヘプチレンアミン、オクチレンアミン、アミノ−アルキル−置換ピペラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(トリメチレン)トリアミン、3−モルホリノプロピルアミン、アニリン、4−モルホリンアニリン、ベンジルアミン、フェニルエチルアミン、3−フェニル−1−プロピルアミン、N−フェニルフェニレンジアミン、N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン、N−ナフチル−フェニレンジアミン、N−フェニルナフタレンジアミン、N’−アミノプロピル−N−フェニルフェニレンジアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジオクチルエチルアミン、(2−アミノプロピル)ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、2−メチル−1−(2−アミノブチル)ピペラジン、式:
【化1】

(式中、Arは芳香族基であり、Rは、水素、−NH−アリール、−NH−アリールアルキル、−NH−アルキルアリール、或いは、アルキル、アルケニル、アルコキシル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヒドロキシアルキル、又はアミノアルキル基であってよい、4〜24個の炭素原子を有する分岐又は直鎖の基であり、Rは、−NH、−(NH(CH−)−NH、CH−(CH−NH、−アリール−NH(ここで、n及びmはそれぞれ1〜10の値を有する)であり、Rは、水素、或いは4〜24個の炭素原子を有していてよいアルキル、アルケニル、アルコキシル、アリールアルキル、又はアルキルアリール基である)
よって表されるか;或いは式:
【化2】

(式中、R、R、及びRは、水素、或いは1〜10個の炭素原子を含み、アルキル、アルケニル、アルコキシル、アルキルアリール、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、又はアミノアルキル基であってよい線状又は分岐の炭化水素基であり、R、R、及びRは同一であっても異なっていてもよい)
によって表されるN−アリールフェニレンジアミン;式:
【化3】

(式中、R及びRは、水素、或いは1〜14個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、又はアルコキシル基を表し、R及びRは同一であっても異なっていてもよい)
によって表されるアミノカルバゾール;式:
【化4】

(式中、Rは、水素、或いは1〜14個の炭素原子を有するアルキル基を表す)
によって表されるアミノインドール;式:
【化5】

(式中、R10は、水素、或いは1〜14個の炭素原子を有するアルキル基である)
によって表されるアミノインダゾリノン;式:
【化6】

によって表されるアミノメルカプトトリアゾール;及び式:
【化7】

(式中、R11は、水素、或いは1〜14個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシル基を表す)
によって表されるアミノペリミジン;及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項31に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項33】
アミンがN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンである、請求項32に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項34】
アミンとカップリング剤とのモル比が約1:10〜約6:1である、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項35】
アミンとカップリング剤とのモル比が約1:3〜約4:1である、請求項34に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項36】
アミンとカップリング剤とのモル比が約1:2〜約2:1である、請求項35に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項37】
ポリマー1モルあたりのエチレン性不飽和モノマー及びカップリング剤とアミンとの反応生成物の合計モル数が約0.5モル乃至約20モル以下である、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項38】
ポリマー1モルあたりのエチレン性不飽和モノマー及びカップリング剤とアミンとの反応生成物の合計モル数が約1モル乃至約15モル以下である、請求項37に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項39】
ポリマー1モルあたりのエチレン性不飽和モノマー及びカップリング剤とアミンとの反応生成物の合計モル数が約2モル乃至約11モル以下である、請求項39に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項40】
カップリング剤とアミンの反応生成物とポリマー、及びエチレン性不飽和モノマーとポリマーとのモル比がそれぞれ約0.1:1〜約9.9:1である、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項41】
(a)約500〜約9950の範囲の重量平均分子量を有する低分子量ポリマーとカップリング剤を開始剤の存在下で反応させて、ポリマーの骨格の上に反応に利用できるカップリング基を有するグラフト反応生成物を形成し;
(b)工程(a)において形成されるグラフト反応生成物を開始剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーと反応させて、エチレン性不飽和モノマーと低分子量ポリマーとのグラフト反応生成物を形成し;そして
(c)工程(b)において形成されるグラフト生成物を、ポリマーの骨格上のカップリング基と反応することができるアミンと反応させて多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマーを形成する;
ことを含む多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマーの製造方法。
【請求項42】
工程(a)において、低分子量ポリマー及び10,000〜750,000の重量平均分子量を有する高分子量ポリマーの混合物を上記のカップリング剤と反応させ、得られるグラフト反応生成物を工程(b)において反応させて、上記のエチレン性不飽和モノマーと低分子量ポリマー及び高分子量ポリマーとのグラフト反応生成物を形成し、それぞれを次に工程(c)においてそれぞれのかかるポリマーの骨格上のカップリング基と反応することができるアミンと反応させる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
(a)溶液中において、約500〜約9950の範囲の重量平均分子量を有する低分子量ポリマーとカップリング剤を開始剤の存在下で反応させて、反応に利用することができるカップリング基を有するグラフト反応生成物を形成し;
(b)工程(a)において形成されるグラフト反応生成物を、溶液中において、開始剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーと反応させて、エチレン性不飽和モノマーと低分子量ポリマーとのグラフト反応生成物を形成し;そして
(c)工程(b)において形成されるグラフト反応生成物を、溶液中において、ポリマーの骨格上のカップリング基と反応することができるアミンと反応させて多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマーを形成する;
ことを含む多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマーの製造方法。
【請求項44】
反応を、グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVベースストック、並びにこれらの混合物から選択される溶媒中で行う、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
溶媒が、直鎖又は分岐の脂肪族又は脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、及びこれらの混合物から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
溶媒が水素化分解ベースストックである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
溶媒がフィッシャー・トロプシュ誘導炭化水素ベースストックである、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
溶媒が約0〜約50重量%の芳香族炭化水素を含むベースストックである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
溶媒が約0〜約25重量%の芳香族炭化水素を含むベースストックである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
溶媒が極性の有機又は無機溶媒である、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
工程(a)において、上記の低分子量ポリマー及び10,000〜750,000の重量平均分子量を有する高分子量ポリマーの混合物を上記のカップリング剤と反応させ、得られるグラフト反応生成物を工程(b)において反応させて、上記のエチレン性不飽和モノマーと低分子量ポリマー及び高分子量ポリマーとのグラフト反応生成物を形成し、それぞれを次に工程(c)においてそれぞれのかかるポリマーの骨格上のカップリング基と反応することができるアミンと反応させる、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
(a)約500〜約9950の範囲の重量平均分子量を有する低分子量ポリマーを溶融体としてカップリング剤と熱的か又は開始剤の存在下で反応させて、反応に利用できるカップリング基を有するグラフト反応生成物を形成し;
(b)工程(a)において形成されるグラフト反応生成物を溶融体としてか又は溶液中で熱的か又は開始剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーと反応させて、上記のエチレン性不飽和モノマーと低分子量ポリマーとのグラフト反応生成物を形成し;そして
(c)工程(b)において形成されるグラフト反応生成物を溶融体としてか又は溶液中で、ポリマーの骨格上のカップリング基と反応することができるアミンと反応させて上記の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマーを形成する;
工程を含む多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマーの製造方法。
【請求項53】
工程(a)において、まず上記の低分子量ポリマーを溶融し,次にカップリング剤及び開始剤と混合する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
工程(a)において、上記の低分子量ポリマー及び10,000〜750,000の重量平均分子量を有する高分子量ポリマーの混合物を上記のカップリング剤と反応させ、得られるグラフト反応生成物を工程(b)において反応させて、上記のエチレン性不飽和モノマーと低分子量ポリマー及び高分子量ポリマーとのグラフト反応生成物を形成し、それぞれを次に工程(c)においてそれぞれのかかるポリマーの骨格上のカップリング基と反応することができるアミンと反応させる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
有効量の請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマーを油中に導入することを含む、潤滑油の煤処理性、粘度、スラッジ及びワニス制御性を向上させる方法。
【請求項56】
(a)潤滑剤基油;
(b)少なくとも約0.0005重量%乃至約25重量%の請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー;及び
(c)0重量%〜約25重量%の他の潤滑油添加剤;
を含む潤滑油。
【請求項57】
少なくとも約0.005重量%乃至約20重量%の請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマーを含む、請求項56に記載の潤滑油。
【請求項58】
少なくとも約0.05重量%乃至約15重量%の請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマーを含む、請求項56に記載の潤滑油。
【請求項59】
約0.05%〜約80%の請求項1に記載の化合物を含む潤滑油濃縮液。
【請求項60】
約0.5%〜約50%の請求項1に記載の化合物を含む潤滑油濃縮液。
【請求項61】
(a)場合によってはアルコール及びエーテルを含む炭化水素ベースの燃料;及び(b)約5〜約5,000重量ppmの範囲のレベルの請求項1に記載の多機能低分子量多重グラフトポリマー;を含む燃料組成物。
【請求項62】
(a)場合によってはアルコール及びエーテルを含む炭化水素ベースの燃料;及び(b)約10〜約5,000重量ppmの範囲のレベルの請求項1に記載の多機能低分子量多重グラフトポリマー;を含む、請求項61に記載の燃料組成物。
【請求項63】
(a)場合によってはアルコール及びエーテルを含む炭化水素ベースの燃料;及び(b)約25〜約1,500重量ppmの範囲のレベルの請求項1に記載の多機能低分子量多重グラフトポリマー;を含む、請求項62に記載の燃料組成物。
【請求項64】
ポリマー骨格が約1〜約5の多分散度を有する、請求項11に記載の多機能多重グラフトポリマー。
【請求項65】
エチレン性不飽和モノマーが、4−メチル−5−ビニルチアゾール、N−アリルジイソオクチルフェノチアジン、2−ビニルチオベンゾチアゾール、2−アリルチオベンゾチアゾール、2−ブテニルチオベンゾチアゾール、N−ビニルフェノチアジン、及びN−アリルフェノチアジンからなる群から選択される、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項66】
エチレン性不飽和モノマーが4−メチル−5−ビニルチアゾールを含む、請求項16に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項67】
カップリング剤が少なくとも1つのオレフィン性不飽和部位を有する、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項68】
カップリング剤とアミンとの反応生成物対ポリマーのモル比、及びエチレン性不飽和モノマー対ポリマーのモル比がそれぞれ約1:1〜約9.9:1である、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項69】
カップリング剤とアミンの反応生成物対ポリマーのモル比、及びエチレン性不飽和モノマー対ポリマーのモル比がそれぞれ約1:1〜約6:1である、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項70】
カップリング剤とアミンの反応生成物対ポリマーのモル比、及びエチレン性不飽和モノマー対ポリマーのモル比がそれぞれ約1:1〜約5.5である、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項71】
カップリング剤とアミンの反応生成物対ポリマーのモル比、及びエチレン性不飽和モノマー対ポリマーのモル比がそれぞれ約0.1:1〜約6:1である、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項72】
低分子量ポリマーが約500〜約9500の範囲の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の多機能多重グラフトモノマー低分子量ポリマー。
【請求項73】
低分子量ポリマーが約500〜約9500の範囲の重量平均分子量を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項74】
低分子量ポリマーが約500〜約9500の範囲の重量平均分子量を有する、請求項43に記載の方法。
【請求項75】
低分子量ポリマーが約500〜約9500の範囲の重量平均分子量を有する、請求項52に記載の方法。
【請求項76】
請求項42に記載の方法によって製造されるポリマー。
【請求項77】
請求項51に記載の方法によって製造されるポリマー。
【請求項78】
請求項54に記載の方法によって製造されるポリマー。
【請求項79】
(a)グラフト可能な部位及び約500〜約9950の範囲の重量平均分子量を有する少なくとも1種類の低分子量ポリマー、並びにグラフト可能な部位を有し且つ10,000〜750,000の重量平均分子量ポリマーを有する少なくとも1種類の高分子量ポリマーの混合物;
(b)2〜約50個の炭素原子を有し、窒素及び酸素の少なくとも1つを含む少なくとも1種類のエチレン性不飽和の脂肪族又は芳香族モノマー;
(c)アシル化剤及びエポキシドからなる群から選択され、少なくとも2つの成分カップリング部位を有する少なくとも1種類のカップリング剤;及び
(d)カップリング剤と上記のポリマーと間の反応によって形成される上記のポリマーの骨格上のカップリング基と反応することができる少なくとも1種類のアミン;
のグラフトポリマーを含む多機能多重グラフトモノマーポリマー。

【公表番号】特表2013−511595(P2013−511595A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539975(P2012−539975)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/056879
【国際公開番号】WO2011/062914
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(593136890)カストロール・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】CASTROL LIMITED
【Fターム(参考)】