説明

多機能衣料品

【課題】 布等のシート状部材で作成して、少なくとも、帽子,ヘアバンド及びネックウォーマーとして形を変えて使用できるようにし、機能性の向上を図るとともに、収納性の向上を図り、更に、斬新なデザインにして品質の向上を図る。
【解決手段】 縮小位置Sから拡張可能に形成され拡張されて頭部を被覆可能なシート状部材で形成された帽子部1を備え、帽子部1を縮小位置Sでその長手方向が頭部の縦軸を軸とする周方向に沿って頭部に付帯可能な一側表面2及び他側表面3を有した帯状に形成し、この帽子部1の長手方向両端部に帽子部1を頭部に保持するためのシート状部材で形成された帯状の保持部10を連設した。帽子部1は、規則的に折り畳み形成され、帽子部1の縮小位置Sから長手方向に直交する一方側Raに拡張する一方覆部1A及び他方側Rbに拡張する他方覆部1Bを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部を中心に装身される多機能衣料品に係り、特に、帽子の機能を備えた多機能衣料品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衣料品としては、例えば、実用新案登録第3139126号公報(特許文献1)に掲載されたものが知られている。図13に示すように、この衣料品100は、筒状に編み上げられた伸縮性のある編物品であって、一重の状態で筒状に編み上げられた筒状品を、二重に折り返し、折り返したときに形成される内側の筒状部101と外側の筒状部102が、その中心軸周りに互いにねじれた状態となるように、開口部101a,102a同士を縫い合わせている。伸縮性がある故に、ヘッドバンドに用い(図13(a))、ねじれた状態で縫い合わせているので、反対側がすぼまることから、帽子にできる(図13(b))。また、ネックウォーマーとして使用することができる(図13(c))。
【0003】
また、従来においては、例えば、実用新案登録第3083454号公報(特許文献2)に掲載されたものも知られている。図14に示すように、この衣料品110は、頭部に嵌め込まれるバンド部111に庇112を設け、庇112が接続されたバンド部111の前側部113に、支え骨114に張設され縮拡可能な幌115を収納し、縮小時にはサンバイザーとして用い、拡張時には庇付の帽子として用いることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3139126号公報
【特許文献2】実用新案登録第3083454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の前者の衣料品100にあっては、編み物品であることから、これを布等のシート状部材で作成した場合には、伸縮性が少ないことから、対応させにくいという問題があった。また、仮に、布等のシート状部材としても、筒状なので嵩張ることになり収納性に劣るという問題もある。更に、デザインもありふれているという欠点もある。
また、後者の衣料品110にあっては、幌115は縮拡可能であるが、支え骨114があるのでごつごつしており、フイット感が悪いという欠点がある。また、支え骨114をなくすると幌115の保持が不十分になる。更に、庇112もあることから収納性も悪くなっている。更にまた、前者の衣料品100のように、ネックウォーマーとしては使用できないことから、機能性に劣っているという問題があった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、布等のシート状部材で作成して、少なくとも、帽子,ヘアバンド及びネックウォーマーとして形を変えて使用できるようにし、機能性の向上を図るとともに、収納性の向上を図り、更に、斬新なデザインにして品質の向上を図った多機能衣料品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明の多機能衣料品は、縮小位置から拡張可能に形成され拡張されて頭部を被覆可能なシート状部材で形成された帽子部を備え、該帽子部を縮小位置でその長手方向が頭部の縦軸を軸とする周方向に沿って該頭部に付帯可能な一側表面及び他側表面を有した帯状に形成し、該帽子部の長手方向両端部に該帽子部を頭部に保持するためのシート状部材で形成された帯状の保持部を連設した構成としている。ここで、シート状部材とは、綿,麻や化繊などの織物、樹脂シートや革製シート等を含む概念である。
【0008】
これにより、本多機能衣料品を使用するときは、例えば、ヘアバンドとして用いるときは、帽子部を縮小位置にして、主に帽子部を頭部の前側に付帯させ、保持部とともに頭部に巻回する。この場合、帽子部は帯状になっており、また、保持部も帯状であり、全体が帯状になっているとともに、帽子部及び保持部は布等のシート状部材で形成されていることから、帽子部及び保持部を容易に頭部に巻回させることができる。
また、帽子として用いるときは、帽子部を拡張して頭部に被覆するとともに、保持部を頭部に巻回する。この場合、帽子部を拡張するだけで頭部に被覆できるようになるので、操作性が向上させられる、この際、保持部で拡張した帽子部を頭部に対して押さえるようにすると保持が確実になる。
更に、ネックウォーマーとして用いるときは、帽子部を縮小位置にして全体を帯状にした状態で、あるいは、帽子部を拡張した状態にして、首に巻回する。この場合、帽子部を拡張した状態にして首に巻回すると、帽子部がふわふわするので、首との間に帽子部で覆われた空気が介在するようになり、そのため、保温効果が増す。
【0009】
このように、本多機能衣料品によれば、少なくとも、帽子,ヘアバンド及びネックウォーマーとして形を変えて使用できるようになることから、機能性の向上が図られる。また、帽子部を頭部に被覆した場合には、頭部に巻回された保持部に拡張した帽子部が形成されるので、被り物として斬新なデザインになる。更に、ネックウォーマーとして用いる際、帽子部を拡張した状態にして首に巻回した場合にも、拡張された帽子部と帯状の保持部が首に巻回されるので、斬新なデザインとなり、品質が向上させられる。
【0010】
一方、本多機能衣料品の非使用状態においては、身体から外しておく。この場合、帽子部を縮小位置にしておくと、帽子部は帯状になっており、また、保持部も帯状であり、しかも、帽子部及び保持部は布等のシート状部材で形成されていることから、帯状のものを折り畳みあるいは丸めて小さくしておくことができる。そのため、コンパクトになることから、ポケットやカバンなどに収納しやすく、持ち運びも容易になる。
【0011】
そして、必要に応じ、上記帽子部を、該帽子部の長手方向に直交する方向に縮小及び拡張可能になるように規則的に折り畳み形成した構成としている。帽子部を規則的に折り畳み形成したので、縮小位置において確実に帯状にすることができるとともに、拡張時には折り畳みの山部の線と谷部の線が規則的に露出するので、斬新なデザインとなり、それだけ、品質が向上させられる。
【0012】
また、必要に応じ、上記帽子部を、該帽子部の縮小位置における長手方向の中心線に対して該帽子部の縮小位置から該長手方向に直交する一方側に拡張する一方覆部及び他方側に拡張する他方覆部を備えて構成している。これにより、帽子部に連設された帯状の保持部は、帽子部の縮小位置における長手方向の中心線に沿って連設されることになることから、帽子部が拡張すると、帯状の保持部はこの拡張した帽子部の中間から延びることになり、そのため、帽子部を頭部に被覆して保持部により押さえて保持し易くなる。
【0013】
この場合、上記一方覆部と他方覆部との拡張幅を異ならせたことが有効である。拡張幅の小さい方で頭部の額側を被覆し、拡張幅の大きい方で後頭部側を被覆するようにすると、帯状の保持部を頭部に巻回し易い位置に位置させることができ、それだけ、保持を確実にすることができる。
【0014】
更に、必要に応じ、上記帽子部を、その長手方向に沿う一方辺,該一方辺に対向し上記長手方向に沿う他方辺,該一方辺と他方辺との間の一対の側辺を有した矩形状の布地を用い、該布地を縮小位置において所定幅になるように折り畳んで形成するとともに、上記縮小位置において、上記一方覆部を該帽子部の一側表面から他側表面に向けて上記一方側に露出する山部及び谷部が連続する蛇腹状に形成し、上記他方覆部を該帽子部の一側表面から他側表面に向けて上記他方側に露出する山部及び谷部が連続する蛇腹状に形成し、上記一方覆部と他方覆部との接合部が該帽子部の他側表面に露出するように形成し、該折り畳まれた布地の一対の側辺部を夫々縫合して形成した構成としている。一方覆部と他方覆部とを一枚の布地から容易に規則的に折り畳み形成することができる。
【0015】
更にまた、必要に応じ、上記帽子部を、上記縮小位置において、上記布地の一方辺と他方辺とが対峙するように該一方辺と他方辺とを該帽子部の一側表面に露出して形成した構成としている。帽子部を拡張する際に、互いに対峙した布地の一方辺と他方辺とを夫々互いに逆方向に引っ張るだけで、帽子部を拡張させることができ、拡張操作性が向上させられる。また、布地の一方辺と他方辺とが対峙しているので、容易に指をさし入れやすく、この点でも、操作性が向上させられる。
【0016】
また、必要に応じ、上記布地の表裏面を互いに異なるデザインにした構成としている。帽子部をリバーシブルに使用することができ、汎用性を増すことができる。
【0017】
そしてまた、必要に応じ、上記保持部を、上記帽子部の長手方向両端部に基端部が夫々連設され互いに連結されて該帽子部を頭部に保持可能にする一対の帯状部材で構成している。一対の帯状部材同士を結束により連結し、あるいは、工業用ファスナーなど止着手段で連結することにより帽子部を頭部に保持できるので、装着が容易になる。
【0018】
また、必要に応じ、上記保持部を、上記帽子部の長手方向両端部に縫合されて架設される1つの帯状部材で構成している。これにより、帽子部と保持部とで全体がループ状になるので、装着が容易になる。
【0019】
この場合、上記保持部を伸縮可能にしたことが有効である。伸縮するので頭部の大きさが異なっていても、確実に装着することができる。また、伸長させてループを大きくできるので、首に巻回するときに便利になる。
【0020】
更に、必要に応じ、上記保持部を袋状に形成し、該保持部内に一端が上記帽子部の長手方向一端部側に位置し他端が上記帽子部の長手方向他端側に位置するゴム紐を内装し、該保持部が上記ゴム紐の伸縮に対応できるように該ゴム紐の一端及び他端を縫合した構成としている。保持部を容易に伸縮可能に作成できる。
【0021】
更にまた、必要に応じ、上記保持部を袋状に形成し、該保持部の上記帽子部の長手方向一端部側に第1開口を形成し、上記保持部の上記帽子部の長手方向他端側に第2開口を形成し、
第1ゴム紐を上記第1開口から先端が突出可能で基端側が上記第2開口側に位置するように上記保持部内に挿入し、該第1ゴム紐の先端部が上記第2開口側の内部に入り込むことを阻止する第1阻止部を設け、上記第1ゴム紐の基端の上記保持部に対する移動を規制する第1規制部を設け、
第2ゴム紐を上記第2開口から先端が突出し基端側が上記第1開口側に位置するように上記保持部内に挿入し、該第2ゴム紐の先端部が上記第1開口側の内部に入り込むことを阻止する第2阻止部を設け、上記第2ゴム紐の基端の上記保持部に対する移動を規制する第2規制部を設け、
上記第1ゴム紐の先端部と上記第2ゴム紐の先端部とを互いに反対方向に引っ張ることにより上記保持部を縮めるようにした構成としている。
第1ゴム紐と第2ゴム紐とを互いに反対方向に引っ張るだけで頭部に保持部を密着させゴムの弾性力で押さえることができ、装着がきわめて容易になる。
【0022】
この場合、上記第1ゴム紐及び上記第2ゴム紐を、夫々、ループ状に形成して二条の紐部が略平行になるようにし、上記第1阻止部,第2阻止部,第1規制部及び第2規制部を、夫々、対応するゴム紐の二条の紐部間であって該紐部に沿って形成され上記保持部を縫合して形成される縫合壁で構成したことが有効である。ゴム紐が縫合壁で分離できるので、からみにくく、確実に押さえ機能を発揮させることができる。
【0023】
また、この場合、上記保持部を、一枚の矩形の布地を用い、互いに対向する一対の辺部同士を縫合して構成し、該縫合により長手方向に延びる袋縫い線を形成し、上記第1開口及び第2開口を、上記袋縫い線上に沿う非縫合部で構成したことが有効である。第1開口及び第2開口を、保持部に穴を開けて形成する場合には、開口縁部を所謂ボタン穴縫いをして布がほつれないようにしなければならないが、第1開口及び第2開口を、互いに対向する一対の辺部で構成できるので、所謂ボタン穴縫いが不要になり、それだけ、製造が容易になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、少なくとも、帽子,ヘアバンド及びネックウォーマーとして形を変えて使用できるようになることから、機能性の向上を図ることができる。また、帽子部を頭部に被覆した場合には、頭部に巻回された保持部に拡張した帽子部が形成されるので、被り物として斬新なデザインにすることができる。更に、ネックウォーマーとして用いる際、帽子部を拡張した状態にして首に巻回した場合にも、拡張された帽子部と帯状の保持部が首に巻回されるので、斬新なデザインとなり、品質を向上させることができる。
【0025】
また、本発明においては、身体から外しておく際には、帽子部を縮小位置にしておくと、帽子部は帯状になっており、また、保持部も帯状であり、しかも、帽子部及び保持部は布等のシート状部材で形成されていることから、帯状のものを折り畳みあるいは丸めて小さくしておくことができる。そのため、コンパクトになることから、ポケットやカバンなどに収納しやすく、収納性が向上させられ、持ち運びも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品をその使用例とともに示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品を縮小位置の状態及び拡張する状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品を帽子として用いる際、縮小位置から拡張させる状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品を帽子として用いたときの状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品において、帽子部に対応する部分を作成する方法の一例を示す工程図(a〜h)である。
【図6】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品において、帽子部に対応する部分を作成する方法の一例を示す工程図(i〜n)である。
【図7】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品において、保持部に対応する部分を作成する方法の一例を示す工程図(a〜f)である。
【図8】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品において、帽子部と保持部の接続部を、その接続方法の一例とともに示す工程図(a,b)である。
【図9】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品において、保持部の変形例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品において、保持部の別の変形例を、これを作成する方法の一例とともに示す工程図(a,b)である。
【図11】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品において、保持部の別の例を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る多機能衣料品において、帽子部の別の態様を示す断面図(a,b)である。
【図13】従来の衣料品の一例を示す図である。
【図14】従来の衣料品の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る多機能衣料品について詳細に説明する。
図1乃至図8には、実施の形態に係る多機能衣料品Tを示している。この多機能衣料品Tの基本的構成は、縮小位置Sから拡張可能に形成され拡張されて頭部を被覆可能な帽子部1と、この帽子部1の両端部に設けられ帽子部1を頭部に保持するための保持部10とからなる。
【0028】
帽子部1は、布等のシート状部材で形成されている。実施の形態では布製であり、縮小位置Sでその長手方向が頭部の縦軸を軸とする周方向に沿って頭部に付帯可能な一側表面2及び他側表面3を有した帯状に形成されている。
詳しくは、図5(a)に示すように、帽子部1は、その長手方向に沿う一方辺4,該一方辺4に対向し長手方向に沿う他方辺5,該一方辺4と他方辺5との間の一対の側辺6を有した矩形状の布地を用いて形成されている。一方辺4及び他方辺5は、折り返しされて縫合されており、端末処理がなされている。布地の表裏面は、互いに異なるデザインになっている。そして、図3及び図6(n)に示すように、帽子部1は、この布地を縮小位置Sにおいて所定幅Hになるように折り畳んで形成されている。所定幅Hは、例えば、H=2cm〜8cmの範囲に設定される。実施の形態では、例えば、H=4cm〜6cmの範囲、具体的には、H=4.5cmに設定されている。また、図2に示すように、帽子部1の長さLは、頭部の外周の1/3程度をカバーできる例えばL=40cm〜50cmに設定されている。
【0029】
また、帽子部1は、図3に示すように、帽子部1の長手方向に直交する方向に縮小及び拡張可能になるように規則的に折り畳み形成されており、帽子部1の縮小位置Sにおける長手方向の中心線Pに対して該帽子部1の縮小位置Sから長手方向に直交する一方側Raに拡張する一方覆部1A及び他方側Rbに拡張する他方覆部1Bを備えて構成されている。図3に示すように、縮小位置Sにおいて、一方覆部1Aは、帽子部1の一側表面2から他側表面3に向けて、一方側Raに露出する山部Y(Y1〜Y4)及び谷部X(X1〜X3)が連続する蛇腹状に形成されている。また、他方覆部1Bは、帽子部1の一側表面2から他側表面3に向けて、他方側Rbに露出する山部Y(Y5,Y6)及び谷部X(X4)が連続する蛇腹状に形成されている。山部Yと谷部Xとの間隔は上記の所定幅Hに対応しており、隣接する山部Yと谷部Xとの間の布地は、帯状単体tとして構成される。更に、縮小位置Sで折り畳まれた布地の一対の側辺6部は夫々縫合されている。これにより、一方覆部1Aと他方覆部1Bとを一枚の布地から容易に規則的に折り畳み形成することができる。
【0030】
また、帽子部1は、縮小位置Sにおいて、布地の一方辺4と他方辺5とが対峙するように、一方辺4と他方辺5とを帽子部1の一側表面2に露出して形成されている。一方辺4と他方辺5とは中心線Pに沿うようになる。一方覆部1Aと他方覆部1Bとの接合部7は、帽子部1の他側表面3に露出するように形成されている。接合部7は中心線Pに沿うようになる。そして、一方覆部1Aと他方覆部1Bとの拡張幅は異なって形成されている。実施の形態では、図3に示すように、一方覆部1Aは、山部Yの数が4つ(Y1〜Y4)、谷部Xの数が3つ(X1〜X3)に設定され、他方覆部1Bは、山部Yの数が2つ(Y5,Y6)、谷部Xの数が1つ(X4)に設定されている。また、一方覆部1Aの一側表面2に位置する山部Y1と他側表面3に位置する山部Y4との間の蛇腹部分は、他方覆部1Bの他側表面3に位置する山部Y5を構成する帯状単体t間に集約されて挟まれている。他方覆部1Bの一側表面2に位置する山部Y6と他側表面3に位置する山部Y5との間の蛇腹部分は、一方覆部1Aの一側表面2に位置する山部Y1を構成する帯状単体t間に挟まれている。
【0031】
保持部10は、布等のシート状部材で形成されている。実施の形態では、布製で帯状に形成され、帽子部1の長手方向両端部に連設されている。実施の形態においては、保持部10は、帽子部1の長手方向両端部に縫合されて架設される1つの帯状部材で構成されている。保持部10の幅J(図7(f))は、縮小時における帽子部1の幅Hと同じ、J=Hに設定されている。また、保持部10は、袋状に形成されており、伸縮可能に形成されている。
【0032】
詳しくは、図7(f)に示すように、保持部10の帽子部1の長手方向一端部側には、第1開口11が形成され、保持部10の帽子部1の長手方向他端側には、第2開口12が形成されている。実施の形態では、図7に示すように、保持部10は、一枚の矩形の布地を用い、互いに対向する一対の辺部同士を縫合し、この縫合により長手方向に延びる袋縫い線13を形成し、袋縫い線13が長手方向中心線P上に位置するように、これを裏返したものである。第1開口11及び第2開口12は、袋縫い線13上に沿う非縫合部で構成されている。第1開口11及び第2開口12を、保持部10に穴を開けて形成する場合には、穴の開口縁部を所謂ボタン穴縫いをして布がほつれないようにしなければならないが、第1開口11及び第2開口12を、互いに対向する一対の辺部で構成できるので、所謂ボタン穴縫いが不要になり、それだけ、製造が容易になる。
【0033】
そして、図7(f)に示すように、第1ゴム紐14が、第1開口11から先端が突出可能で基端側が第2開口12側に位置するように保持部10内に挿入されている。第1ゴム紐14は、ループ状に形成されて二条の紐部が略平行になるようにして挿入されている。
保持部10には、第1ゴム紐14の先端部が第2開口12側の内部に入り込むことを阻止する第1阻止部15と、第1ゴム紐14の基端の保持部10に対する移動を規制する第1規制部16とが設けられている。第1阻止部15及び第1規制部16は、第1ゴム紐14の二条の紐部間であって該紐部に沿って形成され保持部10を縫合して形成される縫合壁20で構成されている。具体的には、縫合壁20の第1開口11側の端部20aは、第1開口11の近傍に設けられており、第1阻止部15は、この縫合壁20の端部20aで構成されている。また、第1規制部16は、縫合壁20の第2開口12側の端部20bで構成されている。
更に、第1ゴム紐14の先端部には樹脂製のビーズ玉23が設けられている。この場合、ビーズ玉23が第1開口11より小さい場合は、第1開口11から入り込むことがあるが、入り込んだとしても、縫合壁20の第1開口11側の端部20aに第1ゴム紐14の先端部が係止して奥への挿入が阻止される。尚、ビーズ玉23を第1開口11より大きく形成しておけば、第1開口11から内部に入り込むことを阻止する別の第1阻止部として構成することができる。
【0034】
そしてまた、図7(f)に示すように、第2ゴム紐17が、第2開口12から先端が突出可能で基端側が第1開口11側に位置するように保持部10内に挿入されている。第2ゴム紐17は、ループ状に形成されて二条の紐部が略平行になるようにして挿入されている。
保持部10には、第2ゴム紐17の先端部が第1開口11側の内部に入り込むことを阻止する第2阻止部18と、第2ゴム紐17の基端の保持部10に対する移動を規制する第2規制部19とが設けられている。第2阻止部18及び第2規制部19は、第2ゴム紐17の二条の紐部間であって該紐部に沿って形成され保持部10を縫合して形成される縫合壁20で構成されている。具体的には、縫合壁20の第2開口12側の端部20cは、第2開口12の近傍に設けられており、第2阻止部18は、この縫合壁20の端部20cで構成されている。また、第2規制部19は、縫合壁20の第1開口11側の端部20dで構成されている。
更に、第2ゴム紐17の先端部には樹脂製のビーズ玉23が設けられている。この場合、ビーズ玉23が第2開口12より小さい場合は、第2開口12から入り込むことがあるが、入り込んだとしても、縫合壁20の第2開口12側の端部20cに第2ゴム紐17の先端部が係止して奥への挿入が阻止される。尚、ビーズ玉23を第2開口12より大きく形成しておけば、第2開口12から内部に入り込むことを阻止する別の第2阻止部として構成することができる。
また、ゴム紐14,17が縫合壁20で分離できるので、からみにくく、確実に押さえ機能を発揮させることができる。
【0035】
この保持部10は、図8に示すように、帽子部1を形成する縮小位置Sで折り畳まれた布地の一対の側辺6部が、保持部10の袋状の端部に挿入され、縫合線が矩形状及び矩形の対角状になるように、縫合された縫合部21を介して連設されている。この場合、実施の形態において、保持部10は、袋縫い線13が長手方向中心線P上に位置し、帽子部1の一側表面2と同一面側に位置するように、帽子部1に対して連接されている。
これにより、第1ゴム紐14と第2ゴム紐17を伸ばすことにより、保持部10は元の長さになり、頭部に装着あるいは外すことができるようにしている。また、保持部10を頭部に装着した際、第1ゴム紐14の先端部と第2ゴム紐17の先端部とを互いに反対方向に引っ張ることにより保持部10が縮められ、ゴム紐14,17と布地と頭部との摩擦的な接触により、頭部に保持されるようにしている。
【0036】
次に、図5乃至図8を用い、実施の形態に係る多機能衣料品Tの製造方法の一例を示す。縫合はミシンを用いる。図5及び図6に示すように、先ず、予め帽子部1に対応する部分を作成する。予め、矩形状の布地を用意し、相対向する一対の辺の組において、各辺部を折り返し、縫合して端末処理をし、この端末処理をして構成される辺を、一方辺4及び他方辺5とする(図5(a))。一方辺4と他方辺5との間の一対の側辺6は特に端末処理は行わなくても良い。この布地は、帯状単体tの幅をH(実施の形態では、H=4.5cm)としたとき、端末処理をした矩形の布地の側辺6の長さMa(一方辺4及び他方辺5間の長さ)が、Ma=10H(実施の形態ではMa=45cm)になるように、また、一方辺4(他方辺5)の長さMbが、上記の帽子部1の長さLと保持部10との縫合部21の長さN(図8(b))とをたし合わせた、Mb=L+N(実施の形態ではMb=48cm)になるようにする。
【0037】
次に、一方辺4及び他方辺5から(1/2)Hの寸法のところを夫々折る(図5(b))。次に、一方辺4を他方辺5を衝合させて2つ折りにし(図5(c)(d))、それから、一方辺4を他方辺5のあるところを寸法H分逆に折り曲げ(図5(e))、一側表面2を形成する(図5(f))。
それからまた、この一側表面2が形成された布地を、一側表面2が外側になるように、2つ折りにし(図5(g))、更に、2つ折りにする(図5(h))。この状態のものを、アイロン掛けし、折り目に癖をつける(図6(i))。
【0038】
次に、一側表面2を形成した状態(図5(f)と同じ状態)に展開し(図6(j))、一側表面2の反対側の面において、一側表面2を構成する山部Y1のある端部とは反対側の端部の山部Y3から1つ目の折り目(谷部)及び2つ目の折り目(山部)を夫々反転させて山部Y2及び谷部X2とし(図6(k))、再び、この折り目に従って、折り重ね、帽子部1に対応する部分を完成させる(図6(l)(m)(n))。
【0039】
一方、予め、保持部10に対応する部分を作成する。図7に示すように、矩形の布地を用意する。この布地の互いに対向する一対の辺部同士を縫合し(図7(a)(b))、この縫合により長手方向に延びる袋縫い線13を形成し、袋縫い線13が長手方向中心線P上に位置するように、これを裏返す(図7(c))。保持部10の幅Jは、縮小時における帽子部1の幅Hと同じ、J=H(実施の形態では4.5cm)になるようにする。この、袋縫い線13を施す際には、図7(a)に示すように、第1開口11及び第2開口12に対応する部位を、非縫合とする。この非縫合の長さEaは、例えば、Ea=1cmとする。また、非縫合部の外側端部を、保持部の端縁から例えばEb=5cmのところに位置させる。そして、長手方向に沿う側縁と袋縫い線13との間の表裏を、長手方向に所要長さ縫合し、一対の縫合壁20を形成する(図7(d))。縫合壁20の長さHdは、第1及び第2の開口の内側の距離をEcとしたとき、Ed=Ecとすることが望ましい。
【0040】
次に、第1ゴム紐14を、第1開口11から挿入して縫合壁20を周回させてループ状に挿入し、第1開口11から先端を突出させ基端側が第2開口12側に位置するようにする(図7(e))。第2ゴム紐17を、第2開口12から挿入して縫合壁20を周回させてループ状に挿入し、第2開口12から先端を突出させ基端側が第1開口11側に位置するようにする(図7(e))。それから、ゴム紐14,17の先端部にビーズ玉23を設け、保持部10に対応する部分を完成させる(図7(f))。
【0041】
最後に、図8に示すように、保持部10の袋状の両端部に、帽子部1を形成する縮小位置Sで折り畳まれた布地の一対の側辺6部を、夫々、挿入し(図8(a))、縫合線が矩形状及び矩形の対角状になるように、縫合して、縫合部21を介して、保持部10を帽子部1に連設する(図8(b))。この場合、実施の形態において、保持部10は、袋縫い線13が長手方向中心線P上に位置し、帽子部1の一側表面2と同一面側に位置するように、帽子部1に対して連接する。これにより、製品となる。
【0042】
このように製造される本発明の実施の形態に係る多機能衣料品Tを使用するときは、以下のようにする。
<ヘアバンドとして使用>
ヘアバンドとして用いるときは、図1(a)に示すように、帽子部1を縮小位置Sにして、主に帽子部1を頭部の前側に付帯させ、保持部10とともに頭部に巻回する。帽子部1は規則的に折り畳み形成されているので、縮小位置Sにおいて確実に帯状にすることができる。この場合、帽子部1は帯状になっており、また、保持部10も帯状であり、全体が帯状になっているとともに、帽子部1及び保持部10は布製であることから、帽子部1及び保持部10を容易に頭部に巻回させることができる。特に、保持部10は、帽子部1の長手方向両端部に縫合されて架設されているので、帽子部1と保持部10とで全体がループ状になっており、そのため、装着が容易になる。この状態で、第1ゴム紐14と第2ゴム紐17とを互いに反対方向に引っ張る。この場合、頭部に帽子部1及び保持部10を密着させゴムの弾性力で押さえることができるので、確実に装着することができる。また、第1ゴム紐14及び第2ゴム紐17により、保持部10が伸縮するので頭部の大きさが異なっていても、確実に装着することができる。
【0043】
<帽子として使用>
また、帽子として用いるときは、図1(b),図2乃至図4に示すように、帽子部1を拡張して頭部に被覆するとともに、保持部10を頭部に巻回する。
帽子部1を拡張するだけで頭部に被覆できるようになるので、操作性が向上させられる。この帽子部1の拡張の際には、一方覆部1Aを長手方向に直交する一方側Raに拡張し、他方覆部1Bを他方側Rbに拡張する。この場合、一方覆部1Aと他方覆部1Bとの拡張幅が異なっているので、拡張幅の小さい方で頭部の額側を被覆し、拡張幅の大きい方で後頭部側を被覆するようにすることができる。そのため、帯状の保持部10を頭部に巻回し易い位置に位置させることができ、それだけ、保持を確実にすることができる。
また、帽子部1の拡張の際には、布地の一方辺4と他方辺5とが対峙して一側表面2に露出しているので、互いに対峙した布地の一方辺4と他方辺5とを夫々互いに逆方向に引っ張るだけで、帽子部1を拡張させることができ、拡張操作性が向上させられる。また、布地の一方辺4と他方辺5とが対峙しているので、容易に指をさし入れやすく、この点でも、操作性が向上させられる。
【0044】
また、保持部10で拡張した帽子部1を頭部に対して押さえるようにすると保持が確実になる。この際には、第1ゴム紐14と第2ゴム紐17とを互いに反対方向に引っ張る。この場合、頭部に帽子部1及び保持部10を密着させゴムの弾性力で押さえることができるので、確実に装着することができる。また、第1ゴム紐14及び第2ゴム紐17により、保持部10が伸縮するので頭部の大きさが異なっていても、確実に装着することができる。また、帽子部1は、長手方向に直交する一方側Raに拡張する一方覆部1A及び他方側Rbに拡張する他方覆部1Bを備えているので、帽子部1に連設された帯状の保持部10は、帽子部1の縮小位置Sにおける長手方向の中心線Pに沿って連設されることになることから、帽子部1が拡張すると、帯状の保持部10はこの拡張した帽子部1の中間から延びることになり、そのため、帽子部1を頭部に被覆して保持部10により押さえて保持し易くなる。
【0045】
帽子部1を頭部に被覆した状態では、図4に示すように、頭部に巻回された保持部10に拡張した帽子部1が形成されるので、被り物として斬新なデザインになる。特に、帽子部1を規則的に折り畳み形成したので、拡張時には折り畳みの山部Yの線と谷部Xの線が規則的に露出するので、斬新なデザインとなり、それだけ、品質が向上させられる。
【0046】
<ネックウォーマー(マフラー)として使用>
ネックウォーマーとして用いるときは、図1(c)に示すように、帽子部1を縮小位置Sにして全体を帯状にした状態で、あるいは、帽子部1を拡張した状態にして、首に巻回する。この状態で、第1ゴム紐14と第2ゴム紐17とを互いに反対方向に引っ張ると、ループの大きさを調整できるので、確実に装着することができる。また、第1ゴム紐14及び第2ゴム紐17により、保持部10が伸縮するので頭部の大きさが異なっていても、確実に装着することができる。この場合、帽子部1を拡張した状態にして首に巻回すると、帽子部1がふわふわするので、首との間に帽子部1で覆われた空気が介在するようになり、そのため、保温効果が増す。首に装着した状態では、拡張された帽子部1と帯状の保持部10が首に巻回されるので、斬新なデザインとなり、品質が向上させられる。
【0047】
また、本多機能衣料品Tによれば、布地の表裏面を互いに異なるデザインにした構成としているので、帽子部1をリバーシブルに使用することができ、汎用性を増すことができる。その他、本多機能衣料品Tによれば、上記の使用に限定されず、例えば、顔を覆うフェイスマスクとして用いても良い。また、腕や足首に巻いたりすることもでき、適宜に用いて良い。このように、本多機能衣料品Tによれば、少なくとも、帽子,ヘアバンド及びネックウォーマーとして形を変えて使用できるようになることから、機能性の向上が図られる。
【0048】
一方、本多機能衣料品Tの非使用状態においては、身体から外しておく。この場合、帽子部1を縮小位置Sにしておくと、帽子部1は帯状になっており、また、保持部10も帯状であり、しかも、帽子部1及び保持部10は布製であることから、帯状のものを折り畳みあるいは丸めて小さくしておくことができる。そのため、コンパクトになることから、ポケットやカバンなどに収納しやすく、持ち運びも容易になる。この場合、帽子部1は、規則的に折り畳み形成されているので、縮小位置Sにおいて確実に帯状にすることができる。
【0049】
図9には、保持部10の変形例を示している。これは、布地を袋状に形成し、第1開口11及び第2開口12を、長手方向中心線Pを境に両側であって左右に形成し、即ち対角位置にあるように形成し、この開口の開口縁部を、所謂ボタン穴縫いをして布がほつれないようにする。また、長手方向中心線Pと側縁との間の表裏を、長手方向に所要長さ縫合し、一対の縫合壁20を形成する。それから、第1ゴム紐14を、第1開口11から挿入して一方側の縫合壁20を周回させてループ状に挿入し、第1開口11から先端を突出させ基端側が第2開口12側に位置するようにする。それから、先端部にビーズ玉23を設ける。また、第2ゴム紐17を、第2開口12から挿入して他方の縫合壁20を周回させてループ状に挿入し、第2開口12から先端を突出させ基端側が第1開口11側に位置するようにする。それから、先端部にビーズ玉23を設ける。この場合、開口11,12の開口縁部を所謂ボタン穴縫いしているので、手間がかかるが、見栄えが良くなる。他の作用,効果は上記と同様である。
【0050】
図10には、保持部10の別の変形例を示している。これは、保持部10を袋状に形成し、この保持部10内に一端が上記帽子部1の長手方向一端部側に位置し他端が上記帽子部1の長手方向他端側に位置するゴム紐30を内装し、保持部10をひだが形成されるように縮めてゴム紐の一端及び他端を保持部10の端部に縫合し、保持部10がゴム紐の伸縮に対応できるようにして、保持部10を伸縮可能にしている。保持部10を容易に伸縮可能に作成できる。他の作用,効果は上記と同様である。
【0051】
図11には、保持部10の別の例を示している。この保持部10は、帽子部1の長手方向両端部に基端部が夫々連設され先端部側を互いに結束することにより帽子部1を頭部に保持可能にする一対の帯状部材で構成されている。一対の帯状部材同士を結束により連結することにより帽子部1を頭部に保持できるので、装着が容易になる。また、一方の帯状部材に係合部を有し、他方の帯状部材に係合部に係合する被係合部を有した工業用ファスナーからなる止着手段(図示せず)を設け、この工業用ファスナーで連結するようにしても良い。ボタンとボタン穴からなる止着手段(図示せず)、フックとこれに係合するリングからなる止着手段(図示せず)を設けて連結するようにしても良く、適宜変更してよい。他の作用,効果は上記と同様である。
【0052】
尚、上記実施の形態では、第1ゴム紐14及び第2ゴム紐17をループ状にしてその先端部にビーズ玉23を設けたが、必ずしも設けなくても良い。この場合、第1ゴム紐14及び第2ゴム紐17が単にループ状になっているので、第1ゴム紐14の先端部及び第2ゴム紐17の先端部を保持部10内部に入れて収納して見えないように隠すことができ、見栄えを良くすることができる。この際、第1ゴム紐14及び第2ゴム紐17はループ状なので、第1ゴム紐14の先端部が第1開口11から入り込み、あるいは、第2ゴム紐17の先端部が第2開口12から入り込んだとしても、第1阻止部15(縫合壁20の第1開口11側の端部20a)に第1ゴム紐14の先端部が係止し、あるいは、第2阻止部18(縫合壁20の第2開口12側の端部20c)に第2ゴム紐17の先端部が係止し、奥への挿入が阻止される(図7(f))。また、第1阻止部15は第1開口11の近傍に位置し、第2阻止部18は第2開口12の近傍に位置しているので、第1ゴム紐14の先端部及び第2ゴム紐17の先端部の引き出しも容易になる。そしてまた、ビーズ玉23を用いない場合には、例えば、医療の分野において、この多機能衣料品を装着してレントゲン撮影やMRI等のCTスキャンを行う場合に、撮影の障害になるものがなく、極めて有用になる。また、ゴムが経年変化しても容易に交換が可能である。
【0053】
また、上記実施の形態では、帽子部1の構成を、図3に示すように、一方覆部1Aにおいて、山部Yの数を4つ、谷部Xの数を3つに設定し、他方覆部1Bにおいて、山部Yの数を2つ、谷部Xの数を1つに設定したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図12(a)に示すように、一方覆部1Aにおいて、山部Yの数を5つ、谷部Xの数を4つに設定し、他方覆部1Bにおいて、山部Yの数を3つ、谷部Xの数を2つに設定し、あるいはまた、図12(b)に示すように、一方覆部1Aにおいて、山部Yの数を6つ、谷部Xの数を5つに設定し、他方覆部1Bにおいて、山部Yの数を5つ、谷部Xの数を4つに設定する等、適宜変更して差し支えない。
尚また、上記の実施の形態においては、帽子部1及び保持部10を、綿,麻や化繊などの織物を主とする布製にしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、樹脂シートや革製シート等、他のシート状部材で構成してよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、あらゆる人が装着できる多機能衣料品であり、病気や加齢等による脱毛や薄毛などの人が用いることもできる。抗がん剤によるがん治療や加齢に起因して頭髪を失ったりで頭髪が薄くなったりしてしまった場合、精神的に大きな苦痛や負担及び身体的にも影響をもたらす。そのため、その頭部の状態を人目に曝すことのないように装うこと、また、頭髪に代わって、頭皮の保護、頭部体温の調節等を補完できるようにすることが重要になっている。本発明によれば、誰でも装着し易く、しかも、帽子にしたときの保持が確実で、デザインも斬新なことから、脱毛や薄毛を人目に曝さないように身だしなみを整えるという目的をごく自然な状態で達成することを可能とし、極めて有用になる。
【符号の説明】
【0055】
T 多機能衣料品
1 帽子部
1A 一方覆部
1B 他方覆部
S 縮小位置
2 一側表面
3 他側表面
4 一方辺
5 他方辺
6 側辺
7 接合部
P 中心線
Ra 一方側
Rb 他方側
Y 山部
X 谷部
t 帯状単体
10 保持部
11 第1開口
12 第2開口
13 袋縫い線
14 第1ゴム紐
15 第1阻止部
16 第1規制部
17 第2ゴム紐
18 第2阻止部
19 第2規制部
20 縫合壁
21 縫合部
30 ゴム紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小位置から拡張可能に形成され拡張されて頭部を被覆可能なシート状部材で形成された帽子部を備え、該帽子部を縮小位置でその長手方向が頭部の縦軸を軸とする周方向に沿って該頭部に付帯可能な一側表面及び他側表面を有した帯状に形成し、該帽子部の長手方向両端部に該帽子部を頭部に保持するためのシート状部材で形成された帯状の保持部を連設したことを特徴とする多機能衣料品。
【請求項2】
上記帽子部を、該帽子部の長手方向に直交する方向に縮小及び拡張可能になるように規則的に折り畳み形成したことを特徴とする請求項1記載の多機能衣料品。
【請求項3】
上記帽子部を、該帽子部の縮小位置における長手方向の中心線に対して該帽子部の縮小位置から該長手方向に直交する一方側に拡張する一方覆部及び他方側に拡張する他方覆部を備えて構成したことを特徴とする請求項2記載の多機能衣料品。
【請求項4】
上記一方覆部と他方覆部との拡張幅を異ならせたことを特徴とする請求項3記載の多機能衣料品。
【請求項5】
上記帽子部を、その長手方向に沿う一方辺,該一方辺に対向し上記長手方向に沿う他方辺,該一方辺と他方辺との間の一対の側辺を有した矩形状の布地を用い、該布地を縮小位置において所定幅になるように折り畳んで形成するとともに、上記縮小位置において、上記一方覆部を該帽子部の一側表面から他側表面に向けて上記一方側に露出する山部及び谷部が連続する蛇腹状に形成し、上記他方覆部を該帽子部の一側表面から他側表面に向けて上記他方側に露出する山部及び谷部が連続する蛇腹状に形成し、上記一方覆部と他方覆部との接合部が該帽子部の他側表面に露出するように形成し、該折り畳まれた布地の一対の側辺部を夫々縫合して形成したことを特徴とする請求項3または4記載の多機能衣料品。
【請求項6】
上記帽子部を、上記縮小位置において、上記布地の一方辺と他方辺とが対峙するように該一方辺と他方辺とを該帽子部の一側表面に露出して形成したことを特徴とする請求項5記載の多機能衣料品。
【請求項7】
上記布地の表裏面を互いに異なるデザインにしたことを特徴とする請求項5または6記載の多機能衣料品。
【請求項8】
上記保持部を、上記帽子部の長手方向両端部に基端部が夫々連設され互いに連結されて該帽子部を頭部に保持可能にする一対の帯状部材で構成したことを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載の多機能衣料品。
【請求項9】
上記保持部を、上記帽子部の長手方向両端部に縫合されて架設される1つの帯状部材で構成したことを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載の多機能衣料品。
【請求項10】
上記保持部を伸縮可能にしたことを特徴とする請求項9記載の多機能衣料品。
【請求項11】
上記保持部を袋状に形成し、該保持部内に一端が上記帽子部の長手方向一端部側に位置し他端が上記帽子部の長手方向他端側に位置するゴム紐を内装し、該保持部が上記ゴム紐の伸縮に対応できるように該ゴム紐の一端及び他端を縫合したことを特徴とする請求項10記載の多機能衣料品。
【請求項12】
上記保持部を袋状に形成し、該保持部の上記帽子部の長手方向一端部側に第1開口を形成し、上記保持部の上記帽子部の長手方向他端側に第2開口を形成し、
第1ゴム紐を上記第1開口から先端が突出可能で基端側が上記第2開口側に位置するように上記保持部内に挿入し、該第1ゴム紐の先端部が上記第2開口側の内部に入り込むことを阻止する第1阻止部を設け、上記第1ゴム紐の基端の上記保持部に対する移動を規制する第1規制部を設け、
第2ゴム紐を上記第2開口から先端が突出可能で基端側が上記第1開口側に位置するように上記保持部内に挿入し、該第2ゴム紐の先端部が上記第1開口側の内部に入り込むことを阻止する第2阻止部を設け、上記第2ゴム紐の基端の上記保持部に対する移動を規制する第2規制部を設け、
上記第1ゴム紐の先端部と上記第2ゴム紐の先端部とを互いに反対方向に引っ張ることにより上記保持部を縮めるようにしたことを特徴とする請求項10記載の多機能衣料品。
【請求項13】
上記第1ゴム紐及び上記第2ゴム紐を、夫々、ループ状に形成して二条の紐部が略平行になるようにし、上記第1阻止部,第2阻止部,第1規制部及び第2規制部を、夫々、対応するゴム紐の二条の紐部間であって該紐部に沿って形成され上記保持部を縫合して形成される縫合壁で構成したことを特徴とする請求項12記載の多機能衣料品。
【請求項14】
上記保持部を、一枚の矩形の布地を用い、互いに対向する一対の辺部同士を縫合して構成し、該縫合により長手方向に延びる袋縫い線を形成し、上記第1開口及び第2開口を、上記袋縫い線上に沿う非縫合部で構成したことを特徴とする請求項11または12記載の多機能衣料品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−122172(P2012−122172A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275873(P2010−275873)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(507148456)学校法人 岩手医科大学 (19)