説明

多機能触媒添加剤組成物およびその調製方法

【課題】本発明の目的は、多機能触媒添加剤組成物およびその調製方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、無機酸化物; アルミノケイ酸塩またはゼオライト; 貴金属; IA族金属; IIA族金属; IIIA族金属; IVA族金属; VA族金属; 希土類酸化物; 少なくともVIII族金属を含む、流動接触分解プロセスにおける一酸化炭素および窒素酸化物の低減用の多機能触媒添加剤組成物に関する。本組成物は、耐摩耗性であり、担体に組み込まれる。本発明はまた、多機能触媒添加剤組成物を調製するための方法を開示する。本発明はまた、多機能触媒添加剤組成物を含む流動分解触媒を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、流動接触分解(FCC)プロセスにおいて使用される一酸化炭素酸化および窒素酸化物(NOx)還元多機能触媒添加剤組成物を提供する。本発明はまた、廃棄製油所触媒材料を使用して前記多機能触媒添加剤組成物を作製するための方法を提供する。本発明はさらに、分解プロセス中に希釈効果を生じさせることなく一酸化炭素の酸化、NOxの還元、有効な熱回収、および再生中の前記多機能触媒添加剤組成物の利用を強化するための方法を提供する。したがって本発明は、FCC装置の排出を低減させるための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
重質石油留分を軽質で高価値な材料に分解することによってガソリン、灯油およびディーゼル油を製造することは、世界で一般的な商業的慣行である。この転化を達成するための主要な商業的技術の1つは、流動接触分解またはFCCを通じてのものである。FCCでは、減圧軽油などの石油原料の留分と熱い反応性触媒の粒子とを高温および約1〜4気圧の中圧で接触させる。触媒は、原料を蒸発させ、石油原料を約480℃〜590℃の分解温度に上昇させ、かつ吸熱反応熱を供給するほど十分な量および高い温度であるべきである。石油および触媒は、炭化水素転化が生じるように共に流動する。重質石油原料および中間留分のFCC転化プロセス中に副生成物のコークス(炭素)が触媒粒子上に付着し、これにより触媒が不活性化される。炭素付着した触媒粒子は、サイクロン中で分解石油製品から分離される。製品は精留塔において回収され、コークス化触媒は再生塔に輸送される。熱再生触媒はさらなる反応向けにライザーに戻され、これによりサイクルが完結する。FCCプロセスは熱収支が成り立っている。再生塔におけるコークスの燃焼が熱を与えることで、分解システムのすべての熱要件が満たされる。分解中に生成されるコークスの量と再生中に燃焼除去されるコークスの量との間には強い結びつきがあり、加熱された触媒はプロセスの分解側に戻る。この組み合わせは完全に独立しかつ制御可能であるわけではない。一方、それは石油留分の性質に部分的に影響され、これにより所与の一組の分解条件下でコークスはより多くまたは少なくなる。
【0003】
熱収支が成り立つ運転を実現するために、すべての効果および反対効果の均衡を成立させて原料、滞留時間などを調整することは、通常のFCC運転の慣行であった。したがって、システムを満足させるのに十分な量のコークスを触媒に付着させながら所望の生成物スレートを生成するように、原料の種類、供給量、供給温度、触媒の種類、触媒対石油比、接触時間、反応温度などが分解側で調整される。
【0004】
原料または触媒の固有のコークス化傾向といったシステムの変化(精製装置はそれを制御することができない)は、熱交換器によって管理される。特定状況に特有の要件に合わせて運転を調整するために、空気流量および原料予熱器が使用される。
【0005】
排ガスに含まれる、FCC再生塔からの一酸化炭素およびNO、N2O (NOx)のような窒素酸化物の排出を低減させることが精製装置に常に求められていた。これは、一部の例では、一酸化炭素ボイラーおよびスクラバーの使用を通じて達成された。これらは十分に機能するが、相当な設備投資を必要とし、メンテナンスおよび修理に関する問題を引き起こす。例を挙げると、日常または緊急の修理およびメンテナンスのために個別のオンストリーム一酸化炭素酸化システムをオフラインで取り出す場合に特有の、FCC再生塔からの一酸化炭素およびNOx排出の増大が存在する。その結果、排出基準の許容限界内に排ガス純度を維持するには、バックアップ一酸化炭素およびNOx制御システムを設けること、またはFCC全体の運転を改変すること、または排出規制要件を変動させることが必要であると考えられた。
【0006】
下流の一酸化炭素酸化設備の必要性を減少させるかまたは排除することによって、再生塔排ガス中の一酸化炭素およびNOxを低減させるようにFCCプロセスの運転を改変することに向けて相当な前進がなされた。これは、再生塔への空気供給を増大させること、または多機能触媒添加剤の使用によって達成されている。再生塔内で一酸化炭素を燃焼することは、再生塔内の熱を増大させる傾向がある。これは、再生触媒上の残留炭素を低減させ、触媒インベントリーの低減、および/または触媒対石油比の低下、および/または分解温度の上昇を可能にしうるという点で、一部のFCC運転に対して何らかの有益な効果を示す。それは、本質的にコークス発生量が少ない原料を分解することも可能にしうる。というのも、比較的少量のコークスを実質的に完全に二酸化炭素に燃焼することが、比較的少量のコークスを埋め合わせるのに十分な熱を発生させうるためである。
【0007】
FCCプロセスは、再生塔内で一酸化炭素、NOxなどを排出する。その結果、精製装置に対しては、FCC再生塔排ガスからの一酸化炭素およびNOxの排出を低減させ、かつ使用済み触媒を安全に廃棄するための環境規制が存在する。一酸化炭素の低減は、一部の例では、焼却炉または一酸化炭素ボイラーの使用によって実現された。窒素酸化物の低減はアンモニアの注入によって実現された。焼却炉またはボイラーの使用は相当な設備投資を包含する。一酸化炭素ボイラーもメンテナンスおよび修理に関する問題を生じさせる。様々な理由で一酸化炭素酸化システムを取り出す時は常に、FCC再生塔からの一酸化炭素排出が増大する。使用済み触媒の廃棄は、材料の格下げおよび他の用途での使用のような多くの方法で行われ、あるいは、材料は金属回収および埋め立てに送られる。
【0008】
したがって、排ガス中の有害ガスの排出を許容限界内に維持するには、サポート一酸化炭素制御システムを設けるか、または外部物質の使用によってFCC全体の運転を改変することで、FCC再生塔排ガスからの一酸化炭素およびNOxの排出を低減させることが必要であると考えられた。一酸化炭素酸化プロセス中に発生した熱の有効な利用も必要である。
【0009】
特許文献1は、再生塔の高濃度床における一酸化炭素の燃焼を改善する、白金(Pt)またはレニウム(Re)を含有する触媒を開示している。この特許は、貴金属で改質されたFCC触媒の使用を記載している。しかし、この特許は、製油所廃棄触媒の使用について論じていない。
【0010】
特許文献2および特許文献3は、一酸化炭素酸化を改善するための、シリカ、アルミナ、シリカ/アルミナ、カオリン、および、Pt、ロジウム、オスミウムを含有する混合物を含有する低表面積多孔質担体(50m2/gを超える表面積を有する)の使用を教示している。平均粒径は400〜1200ミクロンの範囲である。これらの特許は0.01〜100ppmの範囲のPtの濃度を開示しているが、Rh、パラジウム(Pd)およびオスミウム(Os)のような他の金属も開示されている。実際の担体または担体材料の組成はこれらの文献において明らかにされていない。これ以外では、これらの文献に開示される粒径は、反応器および再生塔内での均一な流動化を生じさせないことがある、より大きい側に関している。これら両文献に開示される多孔質担体は流動床ボイラーに使用される。これらの特許は製油所廃棄材料を使用せず、最終用途は異なる。
【0011】
特許文献4は、Pdおよびルテニウム(Ru)を含む少量の助触媒が、NOx排出を実質的に増大させることなく一酸化炭素の酸化を強化することを教示している。またPd-Ru助触媒は、過剰量の窒素酸化物を引き起こすことなく、FCCの再生ゾーン内で好適な吸着剤を使用することによる硫黄酸化物の捕捉を強化する。この特許は、製油所からの使用済み材料または廃棄材料の再利用について述べていない。
【0012】
特許文献5は、硫黄含有炭化水素を分解するための方法、ならびに、Pdと、Pd、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、ReおよびRhからなる群より選択される少なくとも1つの他の金属との密接な結合を含む、SO2をSO3に転化するための改善された酸化助触媒を開示している。この文献は一酸化炭素およびNOx反応を開示していない。
【0013】
特許文献6は、少量のPdおよびRuが、FCC再生塔内のNOxレベルに影響を与えることなく一酸化炭素の転化を強化することを教示している。Pd対Ru金属比は0.1〜10重量パーセントで変動する。これには、過剰NOxの形成なしのSOxの除去というさらなる利点もある。しかし、この発明は製油所廃棄材料を使用しなかった。
【0014】
特許文献7は、酸性担体と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属と、酸素貯蔵能力を有する遷移金属酸化物と、Pd金属とを含有する成分を含む組成物を記載している。酸性酸化物担体はシリカアルミナを含有することが好ましい。この文献は、特定のクラスの組成物が、NOxを最小化しながらCO酸化を促進することに非常に有効であることを記載している。この文献では、セリアが担体の不可欠な一部として2〜50重量部の濃度で本質的に使用される。しかし、この発明は製油所廃棄材料を使用しなかった。
【0015】
特許文献8は、CO酸化を促進するための新規触媒調合物を開示している。この文献は、焼成粘土の成形粒子から十分なシリカを苛性溶液で浸出させて粒子に多孔性を付与することによって得られる多孔質シリカアルミナ担体上のPdおよび少なくとも1つの他の貴金属を主に含む。担体粒子は、1.58〜1.64の範囲のAl2O3/SiO2モル比、0.15cc/gの全細孔容積、20〜60m2/gの範囲の表面積、100〜600Åの範囲の細孔構造、150Å〜350Åの範囲の孔径、50〜600ppmの範囲の貴金属Pdおよび300〜500ppmの範囲の貴金属Reを有することが好ましい。対象特許はCO酸化活性のみを扱っており、NO還元は扱っていない。この特許も製油所廃棄材料を使用しなかった。
【0016】
特許文献9は、酸性酸化物担体と、酸化セリウムと、酸化プラセオジムなどのセリア以外のランタニド酸化物と、任意で銅、銀および亜鉛などのIb族、IIb族金属の酸化物と、PtまたはPdとを含む、FCCプロセス中のCOおよびNOx排出を制御するための組成物を記載している。Al2O3、銅改質Al2O3、セリア改質アルミナを使用して異なる調合物が調製される。調製された試料は、100%水蒸気に1500Fで4時間当てることで不活性化された。50〜1500ppmの貴金属PtおよびPd混合物、供給濃度0.1重量%の窒素が使用される。ランタニド系元素の少なくとも1つの酸化物、すなわち酸化セリウム、プラセオジムがこの文献において使用される。希土類金属の使用がプロセスの効率を増大させるにもかかわらず、この発明は製油所廃棄材料を使用しなかった。
【0017】
先行技術において利用可能な材料の量にもかかわらず、希釈効果を示さずにCOおよびNOx低減に関するより良好な物性を有する新規多機能触媒添加剤を作製するために、廃棄製油所触媒材料を再利用するかまたは未使用の優れた担体を使用することが、依然として求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4064039号
【特許文献2】米国特許第4915035号
【特許文献3】米国特許第4915037号
【特許文献4】米国特許第4350615号
【特許文献5】米国特許第4544645号
【特許文献6】米国特許第4300997号
【特許文献7】米国特許第6902665号
【特許文献8】米国特許第4608357号
【特許文献9】米国特許第7045056号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
発明の目的
本発明の第1の目的は、先行技術において言及されたものよりも良好な多機能触媒添加剤組成物を提供することにある。
【0020】
本発明の別の目的は、酸化レベルが改善された、FCCにおいて使用される一酸化炭素酸化およびNOx還元触媒組成物を提供することにある。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、未使用担体、または使用済み製油所触媒を使用して再調合された材料を含みうる、多機能触媒添加剤組成物を提供することにある。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、前記多機能触媒添加剤組成物を作製するための方法を提供することにある。
【0023】
本発明の別の目的は、使用済み触媒上のコークスの制御、一酸化炭素およびNOx形成の低減、FCC触媒再生中の有効な熱回収および熱利用を改善することができる、多機能触媒組成物を提供することにある。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、一酸化炭素酸化およびNOx還元の両方について活性であり、先行技術において公知のものと同等またはそれ以上である良好な摩耗強度を有する、多機能触媒組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明の概要
本発明は、(i) 無機酸化物、(ii) 少なくとも1%のアルミノケイ酸塩またはゼオライト、(iii) 少なくとも0.001重量%の貴金属、(iv) 少なくとも0.01重量%のIA族金属、(v) 少なくとも0.01重量%のIIA族金属、(vi) 少なくとも0.45重量%のIIIA族金属、(vii) 少なくとも0.3重量%のIVA族元素、(viii) 少なくとも0.01重量%の少なくともVA族金属、(ix) 少なくとも0.05重量%の希土類酸化物、(x) 少なくとも0.02重量%の少なくともVIII族金属を含む、流動接触分解プロセスにおける一酸化炭素および窒素酸化物の低減用の多機能触媒添加剤組成物を提供する。本組成物は、耐摩耗性であり、かつ担体に組み込まれ、分解に対する付加的利点をさらにもたらす。
【0026】
本発明の別の態様によれば、前記多機能触媒添加剤組成物における担体は、未使用担体または石油分解プロセスからの廃棄製油所触媒である。
【0027】
本発明のさらに別の態様によれば、未使用担体は、20Å〜300Åの範囲、好ましくは20〜100Åの範囲、より好ましくは20〜60Åの範囲の細孔を有する単峰細孔分布、ならびに300〜400m2/gの範囲の表面積、ABD 0.8、および50〜60ミクロンの範囲のAPSを含む。
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、廃棄製油所触媒は、20Å〜50Åおよび80Å〜100Åの範囲の細孔を有する双峰細孔分布、20〜120ミクロンの範囲の粒径分布、70〜85ミクロンの平均粒径、117〜200m2/gの範囲の表面積、30〜35m2/gの範囲のマトリックス表面積、0.03〜0.04ml/gのミクロ細孔容積、0.8〜0.9g/mlの範囲のかさ密度、および2〜5重量%の範囲の摩耗指数を含む。
【0029】
本発明の別の態様によれば、貴金属は、多機能触媒添加剤組成物中0.001重量%〜1重量%の範囲のパラジウムであり、触媒組成物内に均一に分布した元素形態である。
【0030】
本発明のさらに別の態様によれば、IA族金属は多機能触媒添加剤組成物中0.01重量%〜0.25重量%の範囲のナトリウムであり、IIA族金属は0.01〜0.25重量%の範囲のマグネシウムであり、IIIA族金属は0.45〜1.0重量%の範囲のアルミニウムであり、IVA族元素は0.30〜1.0重量%の範囲の炭素であり、V族金属は0.01〜0.25重量%の範囲のバナジウムまたは0.1〜0.7重量%の範囲のリンであり、希土類酸化物は0.05重量%〜1.2重量%の範囲であり、VIII族金属は0.02〜0.07重量%の範囲のニッケルまたは0.1〜0.45重量%の範囲の鉄であり、アルミノケイ酸塩またはゼオライトは1〜56重量%の範囲であり、無機酸化物は1〜50重量%の範囲である。
【0031】
さらに別の態様によれば、本発明は、上記の多機能触媒添加剤組成物を含む流動分解触媒を提供する。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、(i) 担体を加熱によって乾燥させる工程、(ii) 乾燥担体に貴金属を組み込む工程、(iii) 金属組み込み担体を乾燥させ、焼成する工程を含む、流動接触分解プロセスにおける一酸化炭素および窒素酸化物の低減用の多機能触媒添加剤組成物を調製するための方法を提供する。
【0033】
さらに別の態様によれば、本発明は、担体が約60〜80ミクロンの平均粒径を有する未使用担体である、多機能触媒添加剤組成物を調製するための方法を提供する。Ni、V、Na、Fe、Mg、希土類金属のような金属を逐次含浸法もしくは共含浸法または平衡吸着法によって組み込む。その担体を乾燥させ、焼成した後、この焼成材料を貴金属の組み込み用の担体として使用し、乾燥および焼成工程に供する。
【0034】
さらに別の態様によれば、本発明は、担体材料の乾燥工程が、(i) 空気中、ガラス反応器内において500℃で4時間加熱する工程、(ii) 室温または室温をわずかに超える温度、好ましくは40℃未満で平衡吸着法または湿式含浸法によって貴金属パラジウムを乾燥担体に組み込む工程、(iii) 金属付着材料を110℃〜120℃で8〜16時間乾燥させた後、450℃〜500℃で3〜4時間焼成する工程からなる、多機能触媒添加剤組成物を調製するための方法を提供する。
【0035】
本発明の別の態様によれば、廃棄製油所触媒は炭素を0.3〜1.0重量%の範囲で含有し、炭素は、上記で論じた他の金属の組み込みの前または後に燃焼される。
【0036】
本発明のさらに別の態様によれば、廃棄製油所触媒は酸素または空気、好ましくは酸素が1%で残りが窒素またはヘリウムのような不活性ガスの存在下で燃焼し、温度は1分当たり2℃の度合いである傾斜で上昇する。
【0037】
本発明のさらに別の態様によれば、貴金属パラジウムは、炭素除去の前または後に乾燥担体に付着する。
【0038】
本発明のさらに別の態様によれば、廃棄触媒担体において燃焼されたコークスおよび付着したパラジウムは、空気中または窒素などの不活性雰囲気下で、1分当たり2℃で最高400〜600℃に上昇する高温に供される。
【0039】
別の態様によれば、本発明は、(i)空気中、ガラス反応器内において500℃で4時間加熱することにより、担体を乾燥させる工程であって、該担体が、未使用担体または石油分解プロセスからの廃棄製油所触媒であり、約60〜80ミクロンの平均粒径を有し、該廃棄製油所触媒が、炭素を0.3〜1.0重量%の範囲で含有する、工程、(ii) 室温または室温をわずかに超える温度、好ましくは40℃未満で平衡吸着法または湿式含浸法によって貴金属パラジウムを乾燥担体に組み込む工程、(iii) 担体を110℃〜120℃で8〜16時間乾燥させる工程、(iv) 担体を450℃〜500℃で3〜4時間焼成する工程、(v) Ni、V、Na、Fe、Mg、希土類金属のような金属を逐次含浸法もしくは共含浸法または平衡吸着法によって組み込む工程を含む、流動接触分解プロセスにおける一酸化炭素および窒素酸化物の低減用の多機能触媒添加剤組成物を調製するための方法を提供する。担体を乾燥させ、焼成した後、この焼成材料を貴金属の組み込み用の担体として使用し、乾燥および焼成工程に供する。
【0040】
さらに別の態様によれば、本発明は、上記の方法によって調製される多機能触媒添加剤組成物を含み、流動接触分解プロセスにおいて、耐摩耗性であり、分解時の希釈効果を示さず、一酸化炭素および窒素酸化物を低減させる、流動分解触媒を提供する。
【0041】
より具体的には、本発明は以下を提供する。
本発明(1)は、
(i) 無機酸化物材料、
(ii) 少なくとも1%のアルミノケイ酸塩またはゼオライト、
(iii) 少なくとも0.001重量%の貴金属、
(iv) 少なくとも0.01重量%のIA族金属、
(v) 少なくとも0.01重量%のIIA族金属、
(vi) 少なくとも0.45重量%のIIIA族金属、
(vii) 少なくとも0.3重量%のIVA族元素、
(viii) 少なくとも0.01重量%の少なくともVA族金属、
(ix) 少なくとも0.05重量%の希土類酸化物、
(x) 少なくとも0.02重量%の少なくともVIII族金属
を含む、流動接触分解プロセスにおける一酸化炭素および窒素酸化物の低減用の多機能触媒添加剤組成物であって、該多機能触媒添加剤組成物が担体に付着し、耐摩耗性である、組成物である。
本発明(2)は、前記担体が未使用担体または石油分解プロセスからの廃棄製油所触媒である、本発明(1)の多機能触媒添加剤組成物である。
本発明(3)は、前記未使用担体が、20Å〜300Åの範囲、好ましくは20〜100Åの範囲、より好ましくは20〜60Åの範囲の細孔を有する単峰細孔分布を有する無機酸化物またはゼオライトを含む、本発明(2)の多機能触媒添加剤組成物である。
本発明(4)は、前記廃棄製油所触媒が、20Å〜50Åおよび80Å〜100Åの範囲の細孔を有する双峰細孔分布を含む、本発明(2)の組成物である。
本発明(5)は、前記貴金属が0.001重量%〜1重量%の範囲のパラジウムであり、さらに該パラジウムが、触媒組成物中に均一に分布した元素形態である、本発明(1)の組成物である。
本発明(6)は、前記IA族金属が0.01重量%〜0.25重量%の範囲のナトリウムである、本発明(1)の組成物である。
本発明(7)は、前記IIA族金属が0.01〜0.25重量%の範囲のマグネシウムである、本発明(1)の組成物である。
本発明(8)は、前記IIIA族金属が0.45〜50重量%の範囲のアルミニウムである、本発明(1)の組成物である。
本発明(9)は、前記IVA族元素が0.01〜1.0重量%の範囲の炭素である、本発明(1)の組成物である。
本発明(10)は、前記V族金属がバナジウムまたはリンであり、該バナジウムが0.01〜0.25重量%の範囲であり、あるいは該リンが0.1〜0.7重量%の範囲である、本発明(1)の組成物である。
本発明(11)は、前記希土類酸化物が0.05重量%〜1.2重量%の範囲である、本発明(1)の組成物である。
本発明(12)は、前記VIII族金属がニッケルまたは鉄であり、該ニッケルが0.02〜0.07重量%の範囲であり、あるいは該鉄が0.1〜0.45重量%の範囲である、本発明(1)の組成物である。
本発明(13)は、前記アルミノケイ酸塩またはゼオライトが1〜56重量%の範囲である、本発明(1)の組成物である。
本発明(14)は、前記無機酸化物がアルミナである、本発明(1)の組成物である。
本発明(15)は、
(i) 未使用担体または石油分解プロセスからの廃棄製油所触媒である担体にNi、V、Na、Fe、Mgまたは希土類金属を含む群より選択される金属を逐次含浸法もしくは共含浸法または平衡吸着法によって組み込む工程、
(ii) 該担体を加熱によって乾燥させる工程、
(iii) 乾燥させた担体に貴金属を組み込む工程、
(iv) 担体を乾燥させる工程、
(v) 担体を焼成する工程
を含む、本発明(1)の流動接触分解プロセスにおける一酸化炭素および窒素酸化物の低減用の多機能触媒添加剤組成物を調製するための方法である。
本発明(16)は、工程(ii)における前記乾燥が空気中、ガラス反応器内において500℃で4時間加熱することによる、本発明(15)の方法である。
本発明(17)は、前記貴金属がパラジウムであり、炭素除去の前または後に室温または室温をわずかに超える温度、好ましくは40℃未満で平衡吸着法または湿式含浸法によって乾燥担体に組み込まれる、本発明(15)の方法である。
本発明(18)は、工程(iv)における前記乾燥が110℃〜120℃で8〜16時間である、本発明(15)の方法である。
本発明(19)は、担体の前記焼成が450℃〜500℃で3〜4時間である、本発明(15)の方法である。
本発明(20)は、前記廃棄製油所触媒が炭素を0.3〜1.0重量%の範囲で含有し、金属の組み込みの前または後に好ましくは酸素または空気、好ましくは酸素1%の存在下の制御された雰囲気下で燃焼され、1分当たり2℃の速度で加熱される、本発明(15)の方法である。
本発明(21)は、廃棄触媒担体において燃焼されたコークスおよび付着したパラジウムが、空気中または窒素などの不活性雰囲気下で、1分当たり2℃で最高400〜600℃に上昇する高温に供される、本発明(15)〜(20)のいずれか一発明の方法である。
本発明(22)は、
(i) 担体にNi、V、Na、Fe、Mgまたは希土類金属を含む群より選択される金属を逐次含浸法もしくは共含浸法または平衡吸着法によって組み込む工程、
(ii)空気中、ガラス反応器内において500℃で4時間加熱することにより、担体を乾燥させる工程であって、該担体が、未使用担体または石油分解プロセスからの廃棄製油所使用済み触媒であり、約60〜80ミクロンの平均粒径を有し、該廃棄製油所使用済み触媒が、炭素を0.3〜1.0重量%の範囲で含有する、工程、
(iii) 室温または室温をわずかに超える温度、好ましくは40℃未満で平衡吸着法または湿式含浸法によって貴金属パラジウムを乾燥担体に組み込む工程、
(iv) 担体を110℃〜120℃で8〜16時間乾燥させる工程、
(v) 担体を450℃〜500℃で3〜4時間焼成する工程
を含む、本発明(15)の方法である。
本発明(23)は、好ましくは本発明(15)〜(22)のいずれか一発明の方法によって調製される本発明(1)〜(14)のいずれか一発明の多機能触媒添加剤組成物を含み、流動接触分解プロセスにおいて、耐摩耗性であり、分解時の希釈効果を示さず、ならびに一酸化炭素および窒素酸化物を低減させる、流動分解触媒である。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、多機能触媒添加剤組成物およびその調製方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】多機能添加剤を作製するために使用される担体の孔径分布の比較。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明の詳細な説明
本発明を要約してきたが、本発明を下記の説明および非限定的実施例を参照して以下で詳細に説明する。
【0045】
再生ゾーンにおける触媒からのコークス付着物の燃焼は、炭素の酸化およびNOの還元として単純化し、下記の化学方程式によって表すことができる。
(1) C + O2 → CO2
(2) 2C + O2 → 2CO
(3) 2CO + O2 → 2CO2
(4) CO + 2NO → N2 + CO2
【0046】
反応(1)および(2)はいずれも、触媒温度が約500〜700℃の範囲でありうる典型的な触媒再生条件下で生じ、この範囲内の温度で触媒を再生する際の気固化学相互作用を例示する。任意の温度増大の効果は、炭素の酸化速度の増大、および触媒粒子からのコークスの除去の完全性向上に反映される。また、気相反応(3)は、温度増大および圧力上昇によって、特に過剰の酸素が存在する際に加速される。さらなる多機能触媒添加剤を使用する場合、いくらか低い温度を使用することがある。再生塔内でNO濃度がより大きい場合、反応(4)が最も好ましい。それはNOおよびCOの両方の低減に役立つ。助触媒を触媒に組み込ませるか、または再生ゾーンに別々に導入することができる。炭素からの一酸化炭素の形成に関連する上記反応に加えて、コークス中の水素から水も形成される。
【0047】
流動化触媒中のコークスを再生触媒上の所望の低レベルの残留コークスまで燃焼するために十分な理論量の酸素の使用は、希薄触媒相中に酸素および一酸化炭素の可燃性混合物を放出するという頻繁に起こる望ましくない効果を示す。これは、後燃えと一般に呼ばれるさらなる酸化を経ることがある。後燃えは、800℃に到達することがある希薄触媒相の温度の実質的増大を引き起こす。希薄触媒相中のそのような高温は、触媒の不活性化を引き起こし、それにより、炭化水素反応ゾーンにおける所望の触媒活性を維持するためにプロセスに対するさらなる触媒交換を必要とすることがある。さらに、これらの高温は、再生ゾーンのハードウェア構成要素の損傷を引き起こすことがある。
【0048】
本発明を以下の実施例によって例示し、裏づける。これらは単に代表的な例であり、本発明の範囲を限定するようには決して意図されていない。
【0049】
本明細書および/または以下の実施例において、別途明記しない限り、以下の用語は本明細書において示される定義を有する。
(i)「未使用」FCC触媒は、製造者が供給する複合粉末材料である。
(ii)「平衡触媒」(E-Cat)は、ある期間にわたるプロセス中に発生する。
(iii) 分解について無視できる活性しか示さない使用済みFCC触媒は、ある期間にわたるプロセス中に発生する。
【実施例】
【0050】
実施例1
見かけのかさ密度0.85g/cc、表面積332m2/g、粒径20〜120ミクロンおよび摩耗指数10を有する市販の多孔質γ-アルミナ粉末を使用して、一酸化炭素およびNOxを低減させる多機能触媒添加剤を調製した。担体材料は、20〜100Åの範囲に大多数の細孔を有する単峰孔径分布を含む。空気中、ガラス反応器内において500℃で4時間加熱することによって担体を乾燥させた後、貴金属パラジウム(Pd)を組み込んだ。Pd金属塩、好ましくは硝酸パラジウムを使用する湿式含浸法で担体に異なる量のPd (0.1、0.15および0.2重量%)を付着させることによって、3組の一酸化炭素およびNOx低減触媒添加剤を調製した。含浸後、材料を110〜120℃で10時間乾燥させ、490〜500℃で4時間焼成した。これらの試料をそれぞれ触媒1、2、3と呼んだ。
【0051】
固定床ガラス反応器、凝縮器、気液分離器、ならびにオンラインNOxコンバータ、CO-CO2およびNOx分析計からなる個別の構成において、一酸化炭素およびNOx低減活性試験を行った。電気炉およびPID温度調節器/プログラマーを使用して反応器を加熱した。CO-CO2およびNOxを含有する校正用ガスを用いて分析計を校正した後、実験を開始した。プロセス中に炭素および窒素性化合物がその上に付着した公知の重量の製油所使用済み触媒を、酸化触媒を加えることなく基材として使用した。各実験において10重量%の添加剤を基材と共に使用した。空気との酸化反応中に形成された一酸化炭素およびNOxの量を、触媒の活性を測定するための基準とした。各実験を少なくとも2回繰り返し、平均値を取った。形成されたCO2の量が十分に多く、分析計の限界を超えることから、形成された一酸化炭素およびNOxの量のみをこの試験で検討した。上記触媒は、表1に示す以下の特性および活性を有していた。
【0052】
(表1)実施例1の物性および活性

SA: 表面積、AI: 磨耗指数、ABD: 見かけのかさ密度、APS: 平均粒径
【0053】
上記の一酸化炭素およびNOx低減触媒添加剤は、良好な活性を有しているにもかかわらず、運転中に問題を生じさせうるそれらの低い摩耗強度およびAPSのような物性が理由で、プラントにおける使用が考えられない。
【0054】
実施例2
表面積190m2/gおよび30〜300Åの範囲の単峰細孔を有する別の市販のγアルミナ担体を使用して、別のより良好な一酸化炭素およびNOx低減触媒添加剤を作製した。担体を空気中500℃で4時間乾燥させた後、貴金属パラジウムを組み込んだ。パラジウム金属塩、好ましくは硝酸パラジウムを使用する湿式含浸法で担体に異なる量のPd (0.1、0.15、0.2および0.25重量%)を付着させることによって、4つの触媒を調製した。含浸材料を実施例1に記載のように乾燥させ、焼成した。これらの触媒添加剤をそれぞれ触媒4、5、6および7と呼んだ。実施例1に記載のものと同様の構成で、基材中に10%の添加剤を取り込んで活性試験を行った。結果を表2に示す。
【0055】
(表2)実施例2の物性および活性試験

【0056】
これらの触媒添加剤も、プラントにおいて問題を生じさせうる低い摩耗強度が理由で、良好であるとは考えられない。
【0057】
実施例3
別の大きな進歩となる発明において、製油所で廃棄される使用済み分解触媒を担体として使用することによって、一酸化炭素およびNOx低減用の多機能添加剤を調製した。異なる種類の原料および触媒を処理する異なる条件下で運転される2つの異なるFCC装置から、廃棄製油所使用済み触媒試料を回収した。文献(Fluid Catalytic Cracking Hand Book by Reza Sadeghbeigi published by Gulf publishing Company Houston, Texas 1995 Pages 79-120)に基づくと、FCC使用済み触媒は、その触媒活性が未使用触媒の高活性に比べて減少した、アルミナ、シリカおよび自然粘土系材料を含有する複合材料であると考えられる。活性の損失は、主に一連の水熱反応および分解反応による。公開情報に基づくと、使用済み触媒は、大部分が「Y」型または「X」型のような幅広い細孔を有する約10〜45重量%のゼオライト、ならびに20〜45重量%のアルミナ成分を含有し、残りが粘土、シリカ、遷移金属および炭素であると考えられる。廃棄使用済み触媒は、約60〜80ミクロンの平均粒径を有する微粉であった。これらの実験において使用した市販触媒の特定の試料は、定常状態条件下で運転される2つの異なる商業的FCCプラントのストリッパー出口から取り出した。廃棄触媒の物性を以下に示す。担体材料として使用した使用済み触媒は、20〜50Åおよび80〜100Åの範囲の2種類の細孔を有する双峰細孔分布を含む(図1)。純粋な酸素/空気、または適切な組成中のその混合物の存在下、加熱速度を2〜50℃/分で制御して300〜550℃の温度で2〜6時間加熱することによって、廃棄触媒上のコークスを燃焼除去した。2つの異なるFCC装置から収集したこれらの処理済み使用済み触媒を担体として使用し、貴金属パラジウム0.2重量%の固定組成で実施例1および2に記載のものと同一の手順に従って、2つの触媒添加剤を調製した。貴金属の組み込み前、担体として使用した処理済み使用済み触媒は、0.1〜0.45重量%の鉄(Fe)、0.02〜0.07重量%のニッケル(Ni)、0.02〜0.06重量%のバナジウム(V)、0.01〜0.25重量%のナトリウム(Na)、0.01〜0.6重量%のリン(P)、0.01〜0.7重量%の酸化マグネシウム(MgO)、0.05〜1.2重量%の酸化レニウム(Re2O3)のような他の金属も含有していた。2つの異なるFCC装置から収集した処理済み使用済み触媒を使用して本実施例において調製した触媒を触媒8および9と呼んだ。上記実施例に記載の様式と同様にして、10重量%の触媒添加剤を基材と共に使用して活性試験を行った。結果を以下に示す。
【0058】
(表3)実施例3の物性および活性試験

*括弧内に示される値は基材について示す。
【0059】
これら2つの酸化触媒添加剤は、より良好な物性、良好な摩擦強度および活性を有する。これらの触媒添加剤の活性が上記実施例に比べて低いにもかかわらず、それらのより良好な物性に起因して、装置内の触媒の保持率はより良好である。したがって、これらの触媒は、全体的性能において他のものよりも優れていると考えられる。
【0060】
実施例4
別の態様において、廃棄使用済み分解触媒を担体として使用することによって、一酸化炭素・NOx低減触媒添加剤を調製した。コークス燃焼手順は実施例3に記載のものと同様とした。他の実施例と対照的に、1つの貴金属パラジウム以外に他の貴金属白金も加えた。硝酸パラジウムおよびヘキサクロロ白金酸金属塩をそれぞれ使用して逐次湿式含浸法により担体に異なる量の(PtおよびPd) (0.01および0.06、0.01および0.05、0.025および0.025重量%)を付着させることによって、3組の触媒添加剤を調製した。含浸材料を実施例1で説明したように乾燥させ、焼成した。これらの試料を触媒10、11、12と呼んだ。活性結果および物性を表4に示す。実施例1において引用したすべての他の補助金属はこの実施例にも存在している。
【0061】
(表4)実施例4の物性および活性試験

*括弧内に示される値は基材について示す。
【0062】
これらの触媒は、より良好な物性を有するにもかかわらず、他の調合物に比べて低い活性が理由で良好な触媒とは考えられない。
【0063】
実施例5
合成担体
一酸化炭素およびNOx低減触媒添加剤を作製するための担体としてのFCC廃棄使用済み触媒の使用の好適性を確実にするために、Catalysis Today, 141, issues 1-2 (115-119), 2009に記載の手順に従って、未使用アルミナ、ゼオライトおよび粘土をFCC触媒と同一の組成で使用する合成担体を金属および水蒸気不活性化により調製およびシミュレートして、平衡触媒を作製した。上記実施例3に記載のものと同一のコークス燃焼後触媒を、一酸化炭素およびNOx低減触媒を作製するための担体として0.2重量%のPd金属付着と共に、上記実施例に記載の方法に従って使用し、一酸化炭素およびNOx低減に対する、様々な金属およびそれらの濃度の有益および不利益な効果も試験した。結果は表5に示す通りである。
【0064】
(表5)実施例5の物性および活性試験

*括弧内の値は基本ケースの値である。
【0065】
上記結果は、上記で論じた範囲のNi、V、Na、Feおよび希土類酸化物のような金属の存在下であってもFCC使用済み触媒を非常に有効に使用することができることを示す。
【0066】
一酸化炭素酸化およびNOx還元触媒を作製するために本発明を有益に適用することができる。本発明によれば、その上に付着した微量金属の量が限定される、未使用FCC触媒、または好ましくは慎重にコークス燃焼されたFCC使用済み触媒が、CO酸化およびNOx還元触媒を作製するための優れた担体として働く。コークス燃焼後に担体として使用される廃棄使用済み触媒は、良好な分解活性も有し(表6)、接触流動床装置において長い寿命をより良好な摩擦強度と共に有する(表7)。さらに、廃棄触媒は、減圧軽油(VGO)に一般に存在する硫黄および窒素性化合物と接触する微分散パラジウム金属への接近可能性を抑制する他の金属を含有し、したがって添加剤の寿命が増大する。
【0067】
(表6)一酸化炭素酸化添加剤の分解活性

(Kayserが設計し、M/s Xytel USAが供給する固定流動床反応器(ACE-R)において分解反応を行った)。反応条件は温度500℃、触媒/石油: 6.5、原料注入速度: 2グラム/分、触媒使用量: 6.5グラムとした。
【0068】
(表7)一酸化炭素およびNOx低減触媒添加剤を作製するために使用した異なる担体の物理化学的特性決定を示す

注: 1、2、3、4 − 市場から調達した市販担体。
5および6 − 製油所からの廃棄使用済み触媒から調製した担体(実施例3および4)。
【0069】
本発明の主な利点は以下の通りである。
1. FCC用の一酸化炭素およびNOx低減触媒を作製する方法は、異なる細孔を有する新規担体を使用する。
2. 一酸化炭素酸化およびNOx還元触媒は、より良好な耐摩擦性を有する。
3. FCC用多機能触媒添加剤を作製する方法は費用対効果が高い。
4. COおよびNOx低減活性に加えて分解活性というさらなる利点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 無機酸化物材料、
(ii) 少なくとも1%のアルミノケイ酸塩またはゼオライト、
(iii) 少なくとも0.001重量%の貴金属、
(iv) 少なくとも0.01重量%のIA族金属、
(v) 少なくとも0.01重量%のIIA族金属、
(vi) 少なくとも0.45重量%のIIIA族金属、
(vii) 少なくとも0.3重量%のIVA族元素、
(viii) 少なくとも0.01重量%の少なくともVA族金属、
(ix) 少なくとも0.05重量%の希土類酸化物、
(x) 少なくとも0.02重量%の少なくともVIII族金属
を含む、流動接触分解プロセスにおける一酸化炭素および窒素酸化物の低減用の多機能触媒添加剤組成物であって、該多機能触媒添加剤組成物が担体に付着し、耐摩耗性である、組成物。
【請求項2】
前記担体が未使用担体または石油分解プロセスからの廃棄製油所触媒である、請求項1記載の多機能触媒添加剤組成物。
【請求項3】
前記未使用担体が、20Å〜300Åの範囲、好ましくは20〜100Åの範囲、より好ましくは20〜60Åの範囲の細孔を有する単峰細孔分布を有する無機酸化物またはゼオライトを含む、請求項2記載の多機能触媒添加剤組成物。
【請求項4】
前記廃棄製油所触媒が、20Å〜50Åおよび80Å〜100Åの範囲の細孔を有する双峰細孔分布を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
前記貴金属が0.001重量%〜1重量%の範囲のパラジウムであり、さらに該パラジウムが、触媒組成物中に均一に分布した元素形態である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記IA族金属が0.01重量%〜0.25重量%の範囲のナトリウムである、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記IIA族金属が0.01〜0.25重量%の範囲のマグネシウムである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記IIIA族金属が0.45〜50重量%の範囲のアルミニウムである、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記IVA族元素が0.01〜1.0重量%の範囲の炭素である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記V族金属がバナジウムまたはリンであり、該バナジウムが0.01〜0.25重量%の範囲であり、あるいは該リンが0.1〜0.7重量%の範囲である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記希土類酸化物が0.05重量%〜1.2重量%の範囲である、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記VIII族金属がニッケルまたは鉄であり、該ニッケルが0.02〜0.07重量%の範囲であり、あるいは該鉄が0.1〜0.45重量%の範囲である、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記アルミノケイ酸塩またはゼオライトが1〜56重量%の範囲である、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記無機酸化物がアルミナである、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
(i) 未使用担体または石油分解プロセスからの廃棄製油所触媒である担体に、Ni、V、Na、Fe、Mgまたは希土類金属を含む群より選択される金属を逐次含浸法もしくは共含浸法または平衡吸着法によって組み込む工程、
(ii) 該担体を加熱によって乾燥させる工程、
(iii) 乾燥させた担体に貴金属を組み込む工程、
(iv) 担体を乾燥させる工程、
(v) 担体を焼成する工程
を含む、請求項1記載の、流動接触分解プロセスにおける一酸化炭素および窒素酸化物の低減用の多機能触媒添加剤組成物を調製するための方法。
【請求項16】
工程(ii)における前記乾燥が空気中、ガラス反応器内において500℃で4時間加熱することによる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記貴金属がパラジウムであり、炭素除去の前または後に室温または室温をわずかに超える温度、好ましくは40℃未満で平衡吸着法または湿式含浸法によって乾燥担体に組み込まれる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
工程(iv)における前記乾燥が110℃〜120℃で8〜16時間である、請求項15記載の方法。
【請求項19】
担体の前記焼成が450℃〜500℃で3〜4時間である、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記廃棄製油所触媒が炭素を0.3〜1.0重量%の範囲で含有し、金属の組み込みの前または後に好ましくは酸素または空気、好ましくは酸素1%の存在下の制御された雰囲気下で燃焼され、1分当たり2℃の速度で加熱される、請求項15記載の方法。
【請求項21】
廃棄触媒担体において燃焼されたコークスおよび付着したパラジウムが、空気中または窒素などの不活性雰囲気下で、1分当たり2℃で最高400〜600℃に上昇する高温に供される、請求項15〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
(i) 担体に、Ni、V、Na、Fe、Mgまたは希土類金属を含む群より選択される金属を逐次含浸法もしくは共含浸法または平衡吸着法によって組み込む工程、
(ii)空気中、ガラス反応器内において500℃で4時間加熱することにより、担体を乾燥させる工程であって、該担体が、未使用担体または石油分解プロセスからの廃棄製油所使用済み触媒であり、約60〜80ミクロンの平均粒径を有し、該廃棄製油所使用済み触媒が、炭素を0.3〜1.0重量%の範囲で含有する、工程、
(iii) 室温または室温をわずかに超える温度、好ましくは40℃未満で平衡吸着法または湿式含浸法によって貴金属パラジウムを乾燥担体に組み込む工程、
(iv) 担体を110℃〜120℃で8〜16時間乾燥させる工程、
(v) 担体を450℃〜500℃で3〜4時間焼成する工程
を含む、請求項15記載の方法。
【請求項23】
好ましくは請求項15〜22のいずれか一項記載の方法によって調製される請求項1〜14のいずれか一項記載の多機能触媒添加剤組成物を含み、流動接触分解プロセスにおいて、耐摩耗性であり、分解時の希釈効果を示さず、ならびに一酸化炭素および窒素酸化物を低減させる、流動分解触媒。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−236191(P2012−236191A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−105916(P2012−105916)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【出願人】(508375402)バーラト ペトローリアム コーポレーション リミテッド (3)
【Fターム(参考)】