説明

多機能X線分析システム

【課題】一台の装置で、小角散乱、X線回折、反射率測定等を容易に行える装置を提供する。
【解決手段】試料分析装置は、第1のX線収束ビームを試料表面に向け、第2のX線平行ビームを試料表面に向けるように構成された照射源を含む。動作アセンブリは、照射源を、X線が試料表面にかすめ角で向けられる第1の光源位置と、X線が表面に試料のブラッグ角近傍で向けられる第2の光源位置との間で移動させる。検出素子アセンブリは、照射源が、第1および第2の光源構成のいずれか、および第1および第2の光源位置のいずれかにあるときに、試料から散乱したX線を角度の関数として感知する。信号処理部は、検出素子アセンブリからの出力信号を受けてこれを処理し、試料の特性を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に分析機器に関し、具体的には、X線を用いた材料分析のための機器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線反射率測定(XRR)は、基板上に蒸着された薄膜層の膜厚、密度および表面品質を測定するための、周知の技術である。こうした反射率計では、通常、X線を試料物質の全反射角近傍のかすめ角で、すなわち試料表面に対して小角度で、試料に照射して動作する。試料から反射されたX線強度を角度の関数として測定することによって、干渉縞のパターンが得られ、これを分析して、干渉縞パターンの作成に関与する膜層の特性を判定する。XRRの代表的なシステムおよび方法が、米国特許第5,619,548号、同第5,923,720号、同6,512,814号、同6,639,968号、および同6,771,735号に記載されており、これらの開示を参考として本明細書に組み込む。
【0003】
X線小角散乱(SAXS)は、表面層の特性を評価するための別の方法である。これは、例えば、Parrillらの「GISAXS−反射X線小角散乱(GISAXS−Glancing Incidence Small Angle X−ray Scattering)」(Journal de Physique IV 3、1993年12月、411−417頁)に記載されており、これを参考として本明細書に組み込む。この方法では、入射X線ビームは表面で全反射する。表面領域内のエバネッセント波は、領域内の微小構造で散乱する。散乱したエバネッセント波を測定することで、その構造に関する情報が得られる。例えば、このようにSAXSを使用することによって、シリコンウェハ上に形成された低誘電率の誘電体の表面層にある空孔の特性を、測定することができる。
【特許文献1】米国特許第5,619,548号
【特許文献2】米国特許第5,923,720号
【特許文献3】米国特許第6,512,814号
【特許文献4】米国特許第6,639,968号
【特許文献5】米国特許第6,771,735号
【特許文献6】米国特許第6,895,075号
【特許文献7】米国特許第6,381,303号
【特許文献8】米国特許第6,389,102号
【特許文献9】米国特許出願第11/000,044号
【特許文献10】米国特許公開第2004/0109531A1号
【特許文献11】米国特許公開第2004/0131151A1号
【特許文献12】米国特許第6,643,354号
【特許文献13】米国特許出願第10/902,177号
【特許文献14】米国特許公開第2001/0043668A1号
【非特許文献1】Parrillら著「GISAXS−反射X線小角散乱(GISAXS−Glancing Incidence Small Angle X−ray Scattering)」(Journal de Physique IV 3、1993年12月、411−417頁)
【非特許文献2】Bowenら著「回折および反射率によるX線測定学(X−Ray metrology by Diffraction and Reflectivity)」(Characterization and Metrology for ULSI Technology, 2000 International Conference,American Institute of Physics, 2001)
【非特許文献3】Goorskyら著、「微小焦点X線管を用いた面内モザイクのかすめ角入射面内回折測定(Grazing Incidence In−plane Diffraction Measurement of In−plane Mosaic with Microfocus X−ray Tubes)」(Crystal Research and Technology,37:7(2002),645−653頁)
【非特許文献4】Kozaczekら著「200mmプロセス品質と安定性の評価のためのX線回折測定学(X−ray Diffraction Metrology for 200 mm Process Qualification and Stability Assessment)」(Advanced Metallization Conference、カナダ、モントリオール、2001年10月8〜11日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その開示が参考として本明細書に組み込まれる米国特許第6,895,075号は、XRRとSAXSを組み合わせて試料の測定を行う方法およびシステムを説明している。XRRとSAXSは、それらによって得られる情報に関しては補完的であるものの、単一のシステムを用いて両方の測定を行うには、内在的な困難がある。試料の照射の観点では、SAXSで精密な測定を行うためには、平行ビームを使用するのが有利である。一方、XRRでは、複数の角度範囲での反射率測定を同時に行えるように、収束角の大きな収束ビームを使用するのが有利な場合がある。米国特許第6,895,075号に開示される実施形態では、X線検査装置は、試料表面の狭い範囲に放射線を照射するように構成された、放射線源を備えている。X線光学素子によって、放射ビームの角度幅および高さを、XRRまたはSAXSに適切なように調整する。
【0005】
検出に関しては、SAXSは通常、試料の表面内での散乱を方位の関数として観察し、一方XRRは、表面に垂直な反射X線を仰角の関数として測定することを基盤としている。米国特許第6,895,075号に記載の実施形態では、検出アセンブリは、照射領域から反射または散乱した放射光を受けるように配置された検出素子のアレイを備えている。このアレイは、2つの動作構成を有しており、そのうちの一方では、アレイの素子が、試料平面に垂直な軸に沿って放射光を分解し、他方では、素子が平面に平行な軸に沿って放射光を分解する。実行する測定の種類によって、機械的または電子的に、適切な構成が選択される。
【0006】
X線回折法(XRD)は、物質の結晶構造を観察するための周知の技術である。XRDでは、試料に単色X線ビームを照射し、回折ピークの位置と強度が測定される。観察される試料に特徴的な散乱角および散乱光強度は、その試料の格子面とその面を占める原子によって決まる。所与の波長λおよび格子面間隔dに対して、ブラッグ条件nλ=2dsinθ(nは散乱次数)を満たす角度θでX線ビームが格子面に入射したときに、回折ピークが観測される。ブラッグ条件を満たす角度θは、ブラッグ角として知られている。応力、固溶体、または他の影響による格子面の歪みは、目に見える変化としてXRDスペクトルに現れる。
【0007】
XRDは、特に、半導体ウェハ上に形成された結晶層の特性を測定するのに使用されてきた。例えば、Bowenらは、「回折および反射率によるX線測定学(X−Ray metrology by Diffraction and Reflectivity)」(Characterization and Metrology for ULSI Technology, 2000 International Conference,American Institute of Physics, 2001)で、高分解能XRDを用いてSiGe構造内のゲルマニウム濃度を測定する方法を説明しており、これを参考として本明細書に組み込む。
【0008】
XRDはまた、かすめ角での入射で試料表面の構造を観察するために使用されてもよい。例えば、Goorskyらは、「微小焦点X線管を用いた面内モザイクのかすめ角入射面内回折測定(Grazing Incidence In−plane Diffraction Measurement of In−plane Mosaic with Microfocus X−ray Tubes)」(Crystal Research and Technology,37:7(2002),645−653頁)で、半導体ウェハのエピタキシャル層構造を分析するためにかすめ角入射XRDを用いることを説明しており、これを参考として本明細書に組み込む。この著者らは、超薄表面と埋込み半導体層の面内格子のパラメータと格子の配向を測定する方法を適用している。
【0009】
本特許出願および請求項との関連において、用語「散乱」および「散乱する」は、試料にX線を照射することによって試料からX線が放射される、あらゆるすべてのプロセスを指すのに用いられる。したがって、これに関連して、「散乱する」は、XRR、XRDおよびSAXSにおける現象、ならびに蛍光X線(XRF)などの当該分野において既知の他の散乱現象を包含する。一方、SAXSと略される「X線小角散乱」という特定の用語は、上述したような、試料平面でのかすめ角散乱という特有の現象を指す。
【0010】
上述の米国特許出願第10/946,426号は、高速XRRおよびXRDに基づいた試料分析システムを説明している。放射源により、X線収束ビームが半導体ウェハなどの試料表面に向けられる。検出素子アレイは、複数の仰角範囲にわたって同時に、試料から散乱したX線を仰角の関数として感知する。システムは、XRRおよびXRDの構成を有している。XRRの構成では、放射源および検出素子アレイは、アレイが試料表面からかすめ角で反射したX線を感知するように配置される。XRDの構成では、放射源および検出素子アレイは、アレイがブラッグ角近傍で試料表面から回折したX線を感知するように配置される。動作アセンブリは、XRRおよびXRDの構成間で、放射源および検出素子アレイをシフトさせるように設けられてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態は、さらに一歩進んだ複合システムを採用しているため、SAXS測定能力も提供される。そのため、放射源と関連付けられたX線光学素子は、収束ビームまたは平行ビームのいずれかを生成するように構成できる。収束ビームは、XRRおよび高分解能XRD測定に用いられ、検出素子アレイは試料平面に垂直な軸に沿って散乱した放射光を分解するように配置される。平行ビームは、高速低分解能XRDならびにSAXS測定を実施するのに用いることができる。SAXSのためには、検出素子アレイは、試料平面に平行な軸に沿って散乱した放射光を分解するように配置される。
【0012】
別の方法としてまたはこれに加えて、かすめ角XRD測定も実施できるように、システムを構成することもできる。
【0013】
したがって、単一のX線源を使用して、所与の試料に対する異なる(および補完的な)X線散乱測定を実施することができる。こうした複合性能は、薄膜層の密度、膜厚、結晶構造、孔隙率、およびその他の性質を判定するための薄膜のX線測定学に、特に有用である。別の方法としてまたはこれに加えて、本発明の原理を、X線分析および測定学の他の分野に適用してもよい。さらに別の方法として、以下に記載する実施形態の態様は、必ずしも多機能性能を提供しない、SAXSなどの一種類の散乱測定に特化されたシステムに用いてもよい。
【0014】
したがって、本発明の一実施形態にしたがって、
第1のX線収束ビームを試料表面に向け、第2のX線平行ビームを試料表面に向けるように構成された照射源と、
放射源を、X線が放射源から試料表面にかすめ角で向けられる第1の光源位置と、X線が試料のブラッグ角近傍で放射源から試料表面に向けられる第2の光源位置との間で移動させるように作動する動作アセンブリと、
放射源が第1および第2の光源構成のいずれか、ならびに第1および第2の光源位置のいずれかにあるときに、試料から散乱したX線を角度の関数として感知し、散乱したX線に応答して出力信号を生成するように構成された検出素子アセンブリと、
出力信号を受けて処理し、試料の特性を判定するように結合した信号処理部とを備える試料分析装置が提供される。
【0015】
開示される実施形態では、放射源は、X線を放射するように機能するX線管と、X線を受けて集光し、収束ビームにするように構成された第1のミラーと、X線を受けて集光し、平行ビームにするように構成された第2のミラーとを包含する。一般に、第1および第2のミラーは、二重湾曲構造を包含する。
【0016】
いくつかの実施形態では、動作アセンブリは、検出素子アセンブリがかすめ角で試料から散乱したX線を感知する第1の検出素子仰角と、検出素子アセンブリがブラッグ角近傍で試料から散乱したX線を感知する第2の検出素子仰角との間で検出素子アセンブリを移動させるように機能する。動作アセンブリはまた、第1の検出素子仰角にある検出素子アセンブリを、検出素子アセンブリがX線の小角度散乱を感知する第1の方位角と、検出素子アセンブリが試料表面の面内構造から回折されたX線を感知する第2のより大きな方位角との間で移動させるように機能してもよい。
【0017】
開示される一実施形態において、検出素子アセンブリは、散乱したX線を試料表面に垂直な第1の軸に沿って分解する第1の検出素子構成と、散乱したX線を試料に平行な第2の軸に沿って分解する第2の検出素子構成とを有する、検出素子アレイを包含する。一般に、信号処理部は、第1の検出素子構成にある検出素子アセンブリからの出力信号を処理して、表面の反射率を表面に対する仰角の関数として判定し、第2の検出素子構成にある検出素子アセンブリからの出力信号を処理して、表面の散乱特性を試料面内の方位角の関数として判定するように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、信号処理部は、放射源が第1のビームを放射し、また第1の光源位置にあるときに、検出素子アセンブリからの出力信号を処理して表面のX線反射率(XRR)スペクトルを獲得し、放射源が第2のビームを放射し、また第1の光源位置にあるときに、検出素子アセンブリからの出力信号を処理して、表面のX線小角散乱(SAXS)スペクトルおよび小角X線回折(XRD)スペクトルの少なくとも一つを獲得し、ならびに、放射源が第2の光源位置にあるときに、検出素子アセンブリからの出力信号を処理して表面の高角度XRDスペクトルを獲得するように構成される。
【0019】
一実施形態では、信号処理部は、放射源が第2の光源位置にあって第1のビームを放射するときに、高分解能XRDスペクトルを獲得し、放射源が第2の光源位置にあって第2のビームを放射するときに、低分解能XRDスペクトルを獲得するように構成される。一般に、動作センサは、高分解能XRDスペクトルを獲得するために、検出素子アセンブリを試料表面からの第1距離に配置し、低分解能XRDスペクトルを獲得するために、検出素子アセンブリを試料表面からの第1距離よりも小さい第2距離に配置するように、構成される。
【0020】
別の方法としてまたはこれに加えて、試料が少なくとも1つの表面層を包含するとき、信号処理部は、XRR、SAXSおよびXRDスペクトルの2つ以上を分析して、少なくとも1つの表面層の特性を判定するように構成されてもよい。一般に、特性には、膜厚、密度、表面品質、空隙率、および結晶構造が挙げられる。
【0021】
開示される一実施形態では、装置は、試料表面に平行にかつ選択領域に近接して配置されて、表面とナイフエッジとの間に空隙を画定し、空隙を通過しないビームの一部分を遮断するナイフエッジを包含する。装置はまた、対象とする角度範囲内に散乱するX線を遮断することなく、空隙を通過してさらにビーム軸に沿って伝播するX線を遮断する、ビーム遮断部を包含してもよい。
【0022】
また、本発明の一実施形態にしたがって、
X線平行ビームを、ビーム軸に沿ってかすめ角で試料の選択領域に向け、X線の一部が方位角範囲全体の領域から散乱するように機能する照射源と、
試料表面に平行に、かつ選択領域に近接して配置されて、表面とナイフエッジとの間に空隙を画定し、空隙を通過しないビームの部分を遮断するナイフエッジと、
方位角範囲の少なくとも一部分に散乱したX線を遮断することなく、空隙を通過してさらにビーム軸に沿って伝播するX線を遮断するように構成されたビーム遮断部と、
散乱したX線を方位角の関数として感知し、散乱したX線に応答して出力信号を生成するように構成された検出素子アセンブリと、
出力信号を受けて処理し、試料特性を判定するように結合された信号処理部とを備える試料分析装置が提供される。
【0023】
開示される実施形態では、装置は、試料表面に垂直であって、放射源およびナイフエッジの間に配置されて、散乱したX線を遮断しながら平行ビームの少なくとも一部分を通過させる、少なくとも1つのスリットを包含する。少なくとも1つのスリットは、放射現に近接して配置された第1のスリットと、ナイフエッジに近接して配置された第2のスリットとを包含してもよい。
【0024】
別の方法としてまたはこれに加えて、検出素子アセンブリは、アレイ長さ、ならびに少なくともアレイ長さに等しい距離離間した前面および背面をもつ排気可能な筐体を有する検出素子のアレイを包含し、アレイは筐体の背面に配置され、筐体は、その前面に窓を包含して、放射光がそれを通過してアレイに衝突するように構成される。
【0025】
さらに、本発明の一実施形態にしたがって、
X線ビームを試料の選択領域に向け、X線の一部が領域から散乱するように機能する照射源と、
試料表面に平行に、かつ選択領域に近接して配置されて、表面とシリンダとの間に空隙を画定し、空隙を通過しないビームの部分を遮断する、X線吸収材料のシリンダを包含するナイフエッジと、
散乱したX線を角度の関数として感知し、散乱したX線に応答して出力信号を生成するように構成された検出素子アセンブリと、
出力信号を受けて処理し、試料特性を判定するように結合された信号処理部とを備える試料分析装置が提供される。
【0026】
開示される実施形態では、X線吸収材料のシリンダは金属線を包含する。
【0027】
さらにまた、本発明の一実施形態にしたがって、
分析中に試料を支持し、配向を調整する取付アセンブリ、
X線平行ビームを試料表面上の選択領域に向け、X線の一部が方位角範囲全体の領域から散乱するように機能する照射源と、
散乱したX線を方位角の関数として感知し、散乱したX線に応答して出力信号を生成するように構成した検出素子アセンブリと、
特徴的な表面の傾き角を示す傾きマップを受け入れ、傾きマップに基づいて選択領域の傾き角を判定し、推定傾き角に応答して取付アセンブリを方向付けて試料の配向を調整するように機能する信号処理部であって、配向を調整した後に、出力信号を処理して試料の特性を判定する、信号処理部とを備える試料分析装置が提供される。
【0028】
通常、照射源は、X線の収束ビームを試料の複数の位置それぞれに向けるように機能し、検出素子アセンブリは、表面から反射したX線を表面に対する仰角の関数として感知するように機能し、信号処理部は、反射したX線に応答して各位置のX線反射率(XRR)スペクトルを測定し、XRRスペクトルに基づいて各位置の傾き角を判定するように機能する。
【0029】
またさらに、本発明の一実施形態にしたがって、
第1のX線収束ビームを試料表面に向け、第2のX線平行ビームを試料表面に向けるように構成された照射源を操作し、
放射源を、X線が放射源から試料表面にかすめ角で向けられる第1の光源位置と、X線が試料のブラッグ角近傍で放射源から試料表面に向けられる第2の光源位置との間で移動させ、
放射源が第1および第2の光源構成の両方、ならびに第1および第2の光源位置の両方にあるときに、試料から散乱したX線を角度の関数として感知して、試料特性を判定することを含む、試料分析方法が提供される。
【0030】
さらに、本発明の一実施形態にしたがって、
X線平行ビームを、ビーム軸に沿ってかすめ角で試料の選択領域に向け、X線の一部が方位角範囲全体の領域から散乱するようにし、
ナイフエッジを試料表面に平行に、かつ選択領域に近接して配置して、表面とナイフエッジとの間に空隙を画定し、空隙を通過しないビームの部分を遮断し、
方位角範囲の少なくとも一部分に散乱したX線を遮断することなく、空隙を通過してさらにビーム軸に沿って伝播するX線を遮断するようにビーム遮断部を配置し、
散乱したX線を方位角の関数として感知して、試料の特性を判定することを含む、試料分析方法が提供される。
【0031】
さらにまた、本発明の一実施形態にしたがって、
X線ビームを、試料の選択領域に向け、X線の一部が領域から散乱するようにし、
X線吸収材料のシリンダを、試料表面に平行に、かつ選択領域に近接して配置して、表面とシリンダとの間に空隙を画定し、空隙を通過しないビームの部分を遮断し、
散乱したX線を角度の関数として感知して、試料の特性を判定することを含む、試料分析方法が提供される。
【0032】
さらになお、本発明の一実施形態にしたがって、
試料の傾きマップを生成し、
X線平行ビームを、ビーム軸に沿ってかすめ角で試料の選択領域に向け、X線の一部が方位角範囲全体の領域から散乱するようにし、
傾きマップに基づいて、選択領域の傾き角を判定し、
試料の配向を調整して傾き角を補償し、
配向を調整した後、散乱したX線を方位角の関数として感知して、試料の特性を判定することを含む、試料分析方法が提供される。本発明は、以下の実施形態の詳細な説明を図面と併せて読むことで、より十分に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は、本発明の一実施形態にしたがった、試料22からのX線の散乱を測定し分析するためのシステム20の概略側面図である。システム20は、X線反射率測定(XRR)、X線小角散乱(SAXS)およびX線回折(XRD)を、高分解能モードおよび低分解能モードの両方で実施することができる。試料22は、試料の位置および配向を精密に調整できる、動作ステージ24などの取付アセンブリ上に載置される。X線源26は、試料22の小さな領域50を照射する。試料から散乱したX線は、検出素子アセンブリ32で収集される。
【0034】
光源動作アセンブリ28は、照射源26を、以下に説明するように、異なる種類の測定に対して上側光源位置と下側光源位置との間でシフトさせる。同様に、検出素子動作アセンブリ34は、検出素子アセンブリ32を、上側検出素子位置と下側検出素子位置との間で移動させる。以下により詳細に説明するように、光源アセンブリおよび検出素子アセンブリの下側位置は、一般にSRRとSAXS、さらに任意追加的に小角XRD(GIXRD)に使用され、一方、上側位置は高角XRDに使用される。GIXRDでは、以下に説明し図2に示すように、検出素子アセンブリが横方向にもシフトされる。
【0035】
図1に示す例では、動作アセンブリは曲線軌道30および36を備え、これに沿って、光源アセンブリ26および検出素子アセンブリ32がそれぞれ、領域50からの一定の距離を維持しながら平行移動する。別の方法としてまたはこれに加えて、検出素子動作アセンブリ34は、検出素子アセンブリと領域50との距離を変更可能であってもよく、それによって検出の有効な捕捉角および角度分解能が変更される。光源動作アセンブリはまた、この種の軸方向動作(すなわち、軌道30および36によってもたらされる垂直横方向の動作に加えて、X線ビームの軸に沿った動作)が可能であってもよい。さらに別の方法としてまたはこれに加えて、検出素子動作アセンブリは、以下に説明するように、検出素子アセンブリを回転させる、および/または水平横方向に検出素子アセンブリをシフトさせることが可能であってもよい。
【0036】
曲線軌道30および36は、システム20内で使用してもよい動作アセンブリの一例に過ぎず、このような目的に使用される他の好適なタイプの動作アセンブリが、当業者にとっては明白であろう。例えば、X線源および検出素子アセンブリが別個のプレート上に載置されて、傾けられ、引き上げられ、あるいは引き下げられて、図1に示す位置に置かれてもよい。このようなタイプのすべての動作アセンブリは、本発明の範囲内にあるものと見なされる。本特許出願および請求項で、さらなる詳細な説明なしに用語「動作アセンブリ」が用いられる場合、その用語が使用される文脈によって、光源動作アセンブリと検出素子動作アセンブリのいずれかまたは両方を指すものと解釈されるべきである。
【0037】
あるいは、複数のX線源および/または複数の検出素子アセンブリが、XRRおよびXRD測定に用いられてもよい。この場合、動作アセンブリが不要なこともある。さらに別の方法として、単一のX線管が下側位置と上側位置との間でシフトされてもよく、このとき各位置は、それぞれ固定の光学素子を有する。
【0038】
X線源26は、以下に図3を参照してより詳細に説明するように、収束X線ビームまたは平行ビームのいずれかを生成するように構成されてもよい。図1は、XRRおよび高分解能XRD測定に使用される収束ビームの構成を示し、図2は、SAXS、GIXRD、および従来のXRD測定(本明細書では、平行ビームを使用する高分解能XRDモードと区別して、「低分解能」XRDと称する)に使用される、収束ビームおよび平行ビーム両方の構成を示す。本特許出願および請求項の文脈において、ビームは、その開き(半値全幅−FWHM)が0.5°未満のときに「平行」と見なされる。この平行の度合いは、システム20で形成されるタイプのSAXSおよび低分解能XRD測定には十分であるが、平行度がより良好であれば(例えば、0.3°の開き)、一般により良い測定結果が得られる。
次の表は、システムの選択的な構成の概要を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
次にシステム20の詳細を参照すると、X線源26は通常、光源動作アセンブリ40に搭載されたX線管38を備える。管38は、一般に狭い放射領域を有しているので、試料22表面に精密に焦点を合わせることができる。例えば、管28は、オックスフォード・インストゥルメンツ(Oxford Instruments、カリフォルニア州スコットバレー)で製造されるXTF5011X線管を備える。システム20における反射率測定および散乱測定の標準的なX線エネルギーは、約8.05keV(CuKal)である。あるいは、5.4keV(CrKal)など、他のエネルギーを用いてもよい。
【0041】
図1に示すXRR構成では、集光光学素子42が、管38から放射されたビームを集光して収束ビーム44とし、これが領域50の焦点に収束する。一般に、光学素子42は二重湾曲結晶を備え、これもまた、ビーム44を単色化する。この目的でシステム20に用いられてもよい光学素子が、例えば、米国特許第6,381,303号に記載されており、その開示を参考として本明細書に組み込む。光学素子は、XOS社(XOS Inc.、ニューヨーク州アルバニー)で製造される二重湾曲集光結晶光学素子(Doubly−Bent Focusing Crystal Optic)などの、湾曲結晶モノクロメータを備えてもよい。他の好適な光学素子が、上述の米国特許第5,619,548号および第5,923,720号に記載されている。二重湾曲焦点結晶によって、ビーム44は水平方向および垂直方向の両方に収束し、領域50の一点にほぼ集光される。あるいは、シリンダ状の光学素子を用いてビーム34を集光し、ビームを試料表面上の一つの線に収束させてもよい。さらに可能な光学素子の構成は、当業者には明白であろう。
【0042】
XRR測定では、収束ビーム44は、通常は約0°〜4.5°の入射角範囲全体にわたって、かすめ角で領域50に衝突するが、これより大きいまたは小さい角度も可能である。この構成において、検出素子アセンブリ32は、反射X線の発散ビーム52を垂直方向の角度範囲全体にわたって、約0°から少なくとも2°、一般には約3°までの仰角(Φ)の関数として収集する。この範囲は、全外反射Φに対する試料の臨界角より上および下の両方を包含する。(例示を明確にするため、図に示される角度範囲は誇張されており、XRR構成で試料22平面より上にある光源26および検出素子アセンブリ38の立ち上がりもやはり誇張されている。この図面およびそれに伴う説明を簡便かつ明確にするため、試料平面は任意にXY平面とされ、ここでY軸は、試料表面上に投射されるX線ビームの軸に平行である。Z軸は、試料平面に対して垂直な、鉛直方向である。)
【0043】
動的なナイフエッジ48およびシャッター46が使用されて、X線入射ビーム44の角度範囲を垂直方向に(すなわち、試料22平面に垂直に)制限してもよい。これらのビーム制限光学素子をXRR構成で使用することは、上述の米国特許第6,512,814号に記載されている。ナイフエッジ48はまた、ビーム遮断部およびビーム制限スリット(図4に示されるが、簡略化のため図1では省略されている)とともに、SAXS構成における背景散乱を低減するために使用されてもよい。試料表面に対するナイフエッジおよびシャッターの高さは、行われる測定の種類、および対象となる測定角度の範囲に応じて調整可能である。
【0044】
検出素子アセンブリ32は、CCDアレイなどの検出素子アレイ54を備える。例示を簡単にするために、図では、比較的少ない数の検出素子を有する一列の検出素子のみが示されているが、アレイ54は通常、線形のアレイまたはマトリックス(二次元)アレイに配列された、より多数の素子を包含する。検出素子アセンブリ32およびアレイ54のさらなる態様が、図4を参照して以下に説明される。
【0045】
信号処理部56は、検出素子アセンブリ32からの出力を受けてこれを分析し、所与のエネルギーまたはエネルギー範囲全体での角度の関数として、試料22から散乱したX線光子束の分布58を判定する。通常、試料22は領域50に、薄膜などの1以上の薄い表面層を有しており、角度の関数としての分布58は、表面層および層の界面による干渉、回折および/または他の散乱効果の特性を示す構造を表す。処理部56は、角度分布の特性を分析して、膜厚、密度、空隙率、組成および層の表面品質など、試料の1以上の表面層の特性を、上述の特許および特許出願に記載の分析方法を用いて判定する。処理部56(または他のコンピュータ)は、他のシステム構成要素の位置および構成を設定し調整する、システム制御部として機能してもよい。
【0046】
システム20の高分解能XRD構成は、試料22上の単結晶膜の物性を評価するのに特に有用である。この構成では、上述の表に示したように、光源26および検出素子アセンブリ32の両方が、試料22のブラッグ角近傍の比較的高い角度にシフトされる。光源26は、領域50のブラッグ角近傍に収束ビーム60を照射し、検出素子アセンブリ32は、ブラッグ角近傍の角度範囲全体で発散ビーム62を受ける。この例では、回折パターンを形成する格子面は試料22表面にほぼ平行であると仮定されるので、ビーム60および62で画定される表面に対する入射角および射出角は、いずれもブラッグ角と等しい。この仮定は、シリコンウェハなどの半導体基板、ならびにそれらの基板上に成長させた単結晶薄膜層に関して当てはまる場合が多い。あるいは、光源26および検出素子アセンブリ32は、試料22表面に平行でない格子面からの回折を測定するために、異なる入射角および射出角に配置されてもよい。
【0047】
図2は、本発明の一実施形態にしたがったシステム20の概略上面図を示している。この図は、管38からのX線が、集光光学素子42および視準光学素子72(例示を明確にするため図1では省略されていた)の両方に衝突する。光源搭載アセンブリ40は、管からのビームが適切な角度で光学素子42に衝突してビーム44が領域50上で収束するように、管38を配置する。X線管38からのビームはまた、視準光学素子72にも適切な角度で衝突し、同様に領域50に衝突する収束ビーム74を生成する。光学素子72は、例えば、8keVの放射光を反射して、開き度<0.3°およびスポットサイズ<100μmのビームを生成する、多機能コーティングを施した二重湾曲ミラーを備えてもよい。この種の光学素子は、アプライドXレイオプティクス(Applied X−ray Optics、AXO、ドイツ、ドレスデン)など、多くの製造元から入手可能である。この光学素子もまた、X線ビームを単色化する。上述した集光光学素子および視準光学素子では、X線管および光学素子は通常、管からのX線が光学素子42に約14°の角度で、また光学素子72に約1°の角度で衝突するように配置される。
【0048】
X線管38ならびに光学素子42および72を配置したことによって、収束ビーム44および平行ビーム74の方位がずれ、すなわちビーム軸が同一線上ではなくなる。X線管38で生成されるビーム、ならびに光学素子42および72の開口は、管または光学素子を移動することなくビームが光学素子42および72の両方に衝突するように、十分な幅があってもよい。あるいは、より幅の狭いビームおよび/または開口が使用される場合、X線管がXRR位置とSAXS位置との間で垂直に平行移動してもよい。いずれの場合も、通常はビーム44および74のどちらか一方が、所与の時間に測定に使用される。したがって、可動の光源ビーム遮断部75は、ビーム44および74の一方のみが試料22に衝突するように、X線管からのビームの一部を遮断するように配置されてもよい。(あるいは、用途によっては、2つのビームが同時に生成されてもよい。)この方位のずれがあることで、XRRモードで生成される発散ビーム52は、SAXSモードで生成される散乱ビーム70とはX方向にずれる。このずれを補償するため、検出素子アセンブリ32は、システム20の操作モードに応じてX方向にシフトされてもよい。あるいは、検出素子アセンブリは、それぞれビーム52および70を捕捉するように配置され配向された、2つの検出素子アレイを備えてもよい。
【0049】
光源および検出素子アセンブリが高角度位置にあり、光源アセンブリが平行ビーム構成にある場合、システム20は低分解能XRD測定に良好に適合する。この種の測定は、半導体ウェハ上にある金属膜中の多結晶など、多結晶構造の位相および組織を評価するのに特に有用である。このような結晶は配向が制御されていないため、作成されるXRDパターンはデバイリングとして特徴づけられる。この現象は、例えば、Kozaczekらの「200mmプロセス品質と安定性の評価のためのX線回折測定学(X−ray Diffraction Metrology for 200 mm Process Qualification and Stability Assessment)」(Advanced Metallization Conference、カナダ、モントリオール、2001年10月8〜11日)に記載されており、これを本明細書に参照として組み込む。
【0050】
この場合にXRDパターンが延在する角度範囲は、通常10〜20°程度である。この範囲をカバーするため、検出素子アセンブリ32を試料22上の領域50に近づけて、検出素子アレイ54が、高分解能構成の場合よりも相対的に広い範囲をカバーするようにすることが望ましい。アレイを試料に近づけることも角度分解能を低下させるが、約0.3°の分解能は、多結晶の位相を識別するのには十分である。この目的のため、光学素子72を選択して、ビーム74の開きが約0.3°を越えないように調整することが望ましい。
【0051】
SAXSの場合、光源アセンブリ26および検出素子アセンブリ32は、より低い位置に配置される。任意選択的に、SAXSの場合、光源動作アセンブリ28を操作して、光源アセンブリ26をXRRのときよりもわずかにXY平面に近づけて、平行ビーム74が適切に低い角度で領域50に衝突するようにする。あるいは、光学素子72をアセンブリ74で光学素子42よりも低い仰角に支持し、ビーム74が、ビーム44よりも低いビーム軸に沿ってアセンブリ26から放射されるようにしてもよい。以下に説明するように、水平(アジマス−θ)方向の角度範囲にわたって散乱X線を収集して分解するため、検出素子アレイ54の配向はSAXS用に回転されてもよい。通常、散乱スペクトルは約0〜3°の範囲にわたって測定される。SAXSの角度分解能を向上させるため、検出素子アセンブリ32は通常、領域50よりも比較的遠い位置に保持される。
【0052】
GIXRDの場合、光源アセンブリ26は、SAXSとほぼ同じ位置に配置される。しかしながら、検出素子アセンブリ32は通常、回折ビーム75を捕捉するために、検出素子動作アセンブリによって試料22平面内でより高い方位角に横方向にシフトされる。入射平行ビーム74に対する回折ビーム75の方位角は、回折に関与する試料表面上の面内構造のブラッグ角によって決定される。ステージ24(図1)は、面内格子が入射ビーム角度と一直線上にならぶように、X−Y平面内で試料22を回転させる構成であってもよい。
【0053】
図3Aおよび3Bは、本発明の一実施形態にしたがった、検出素子アレイ54の第1および第2の動作構成それぞれの概略前面図である。図3Aに示される第1の構成は、XRRおよび高角度XRDに使用され、図3Bに示される第2の構成は、SAXSおよびGIXRD測定に使用される。これらの図では、アレイ54は、一列の検出素子76を備えるものとして示されており、この素子は、XRRおよび高角度XRD用の試料22平面に垂直なZ軸と、SAXSおよびGIXRD用の試料平面に平行なX軸の、2つの軸のいずれかに沿って入射光を分解するように整列可能なアレイ軸を有している。
【0054】
検出素子76は高いアスペクト比を有しており、すなわち、アレイ軸を横断する方向の幅が、軸に沿った長さよりも十分に大きい。高アスペクト比を有することで、アレイ54が、アレイ軸に沿って角度が増大する比較的広い領域にわたってX線光子を収集できるため、システム20の信号/雑音比を向上させるのに有用である。図中で、素子76の寸法は例示だけのために示されており、本発明の原理は、用途の必要性および好適な検出機器の能力によって、より小さいあるいはより大きいアスペクト比の素子にも適用できる。
【0055】
検出素子アレイ54は、線形アレイまたはマトリックスアレイのいずれかを備えていてもよい。マトリックスアレイの場合、アレイの各列にある複数の検出素子が、高アスペクト比の単一素子として有効に機能するように、ラインビニング(line-binning)モードでアレイが動作してもよい。この場合、アレイ54は、物理的には検出素子の二次元のマトリックスを備えるが、機能的には、図4Aおよび4Bに示されたビニング方向によって、アレイは一列の検出素子の形態をとる。あるいは、アレイ54は好適な読み出し回路を有するPINダイオードのアレイを備えてもよく、このダイオードとしては、その開示を本明細書に参考として組み込む米国特許第6,389,102号に開示されるような、集中処理電子機器などが挙げられてもよい。システム20に使用可能な検出素子アレイの種類に関するさらなる詳細、およびそのようなアレイをXRRおよびSAXSに適合させることに関しては、上述の米国特許第6,895,075号に記載されている。
【0056】
検出素子動作アセンブリ34は、図3Aおよび3Bに示す配向の間で検出素子アセンブリ32を機械的に回転させるように構成されてもよい。あるいは、検出素子アセンブリ32自体が、図3Aおよび3Bに示す配向の間で検出素子アレイ54を回転させるアレイ動作デバイス(図示せず)を備えてもよい。いずれの場合のハードウェアも、実行される測定の種類によって、アレイを垂直軸と平行軸との間で90°回転させる。回転点がアレイ54の中心に近い場合、SAXS測定のときは下方向(試料22の平面により近く)に、XRRのときは上方向に、アレイをシフトさせる必要がある場合もある。あるいは、アレイの垂直方向への移動が不要なように、回転点を試料平面近くに固定してもよい。一般に、SAXS構成では、アレイ54の中心は入射ビーム74の軸近くにはない。SAXSは通常、入射ビーム軸に対称なので、実質的に失われる情報はなく、軸の片側あるいは両側の散乱放射を測定するようにアレイ54を配置して、散乱を測定する角度範囲を増大させてもよい。
【0057】
図4は、本発明の一実施形態にしたがった、システム20の概略上面図であり、SAXS測定に使用されるシステム構成のさらなる詳細を示している。SAXS信号は一般に弱いため、システム20は、擬似X線が検出素子アレイ54に衝突して実際のSAXS信号を阻害する現象を生じさせる可能性がある背景散乱を低減するために、新規なビーム制御光学素子を使用する。具体的には、この図に示すように、システムは、散乱防止スリット80および回折防止スリット82、ならびにナイフエッジ48およびビーム遮断部84を備える。各構成要素の目的を以下に説明する。
【0058】
視準光学素子72は、図4にAとして示された出力開口を有しており、ここからX線が検出素子アレイ54に向かって回折および/または散乱してもよい。(例えば、上述のXenocsミラーの場合、出力開口は1.2×1.2mmであり、平行出力ビームは約0.3°の開き角を有する。開口Aの中心は試料平面より、通常は約1mm以下のわずかな距離だけ上にある。)スリット82は、開口から散乱した放射光が、検出素子アレイ54に直接衝突するか、または試料22に衝突して検出素子アレイに反射するかのいずれかを阻害する。代表的な一実施形態では、スリット82は幅約0.4mmであり、ナイフエッジ48の前面で、試料22からわずかに(通常は20mm未満)上に配置される。最良の結果を得るため、スリット82の下部はできるだけ試料表面近くに、通常は表面の上約80μm未満の位置に配置される。
【0059】
スリット80は通常、光学素子72の出力開口の近くに配置されて、この開口から回折したX線を遮断する。代表的な一実施形態では、スリット80は幅約1mmであり、焦点領域50から約160mmのところにある開口Aから約10mm未満の位置に配置される。スリット80は通常、試料22平面の上および下の両方に延在する。
【0060】
ナイフエッジ48もまた、試料22よりわずかに上のところに配置される。ナイフエッジは、光学素子72の開口から散乱して、スリット82で阻害されなかった放射光を遮断し、またスリット80および82自体から、あるいは光学素子72と領域50との間の大気分子から散乱した放射光も遮断する。ナイフエッジの可能な一つの構成を、図5を参照して以下に説明する。
【0061】
光学素子72からの適切な平行X線は、スリット80および82を、またナイフエッジ48の下を通過して、試料22上の領域50に衝突する。入射X線のほとんどは、Y軸に沿って試料から鏡面反射するか、あるいは反射せずにナイフエッジ48の下を直接通過する。これらのX線は次いで大気分子で散乱され、その結果多様な角度で検出素子アレイ54に衝突する。この望ましくない散乱を低減するために、ビーム遮断部84は、ナイフエッジ48の後ろに近接して、また試料22からわずかに上の位置に配置される。代表的な一実施形態では、ビーム遮断部は、ナイフエッジの後ろ約30mm、試料表面の上約70μmの位置にある。ビーム遮断部は通常、図に示すように中心からずらして、ビーム軸をわずかに(例えば、約250μm)横切るように配置されて、直接のまたは鏡面反射したビームを遮断する。その結果、検出素子アレイ54は、Y軸から水平に離れた領域50から散乱したX線束のほぼ全体を受け、大気分子からの寄生的な散乱はほとんど遮断される。
【0062】
寄生的な散乱をさらに防ぐために、検出素子アセンブリ32は、ベリリウムなどの好適なX線透過材料で作成された、検出素子アレイ54の正面から離れた窓86を備えてもよい。窓は、検出素子アレイ54に隣接した排気可能な筐体88を画定する。通常、アレイ54から窓86までの距離は、少なくとも(アレイ軸に沿って、すなわち図3BのX方向に沿って測定した)アレイ長さに等しく、アレイ長さの2〜3倍またはそれ以上であってもよい。操作中には、筐体を排気する。検出素子アレイのすぐ前の領域にある大気を除去し、窓をアレイから離間させることは、アレイ近傍でのX線の寄生的な散乱をさらに低減させるのに有用である。この種の窓構造のさらなる詳細は、上述の米国特許第6,512,814号に記載されている。
【0063】
図5は、本発明の一実施形態にしたがった、ナイフエッジ48の細部の概略図である。この実施形態では、試料22表面に隣接したナイフの下端部は、金属線90などのシリンダ状のX線吸収材料で作成される。例えば、光子エネルギー8keVを有するX線の場合、ワイヤ90は、直径200μmのタンタル線を備える。この構成により、試料を傷つける恐れなく、ナイフの下端部が試料表面に非常に近く、表面の上3μm程度の位置に置かれる。
【0064】
ワイヤ90は、精密に試料と直線に並べることができ、それにより表面上の小さな空隙が得られるが、この有効な高さは、通常は0〜4°である対象となる角度領域全体にわたって均一である。エッジが平坦なナイフを使用した場合とは異なり、この整列はワイヤをその軸周りで回転させても不変である。一般に、ナイフエッジと表面との間の空隙のサイズおよびその均一性によって、表面に対するX線焦点のサイズおよび均一性が画定される。この種の小さく均一な空隙がワイヤ90によってもたらされることで、システム20で行われる散乱測定の空間分解能および角精度が向上する。本実施形態に基づいて、本特許出願および請求項の文脈において、用語「ナイフエッジ」は、試料表面近くに配置されてこの種の空隙を作り、空隙の外のX線を遮断する、あらゆるタイプの直線エッジ(鋭敏である必要はない)を指すことが理解されよう。
【0065】
図6は、本発明の一実施形態にしたがって、システム20でSAXS測定を実施するための方法を概略的に説明するフローチャートである。SAXS信号の強度は、領域50の表面に対するビーム74(図4)の平均入射角に大きく依存する。一方、入射角は、試料の傾きの影響を直接受ける。標準的なSAXSでの適用において、ビーム74は約0.4°で試料表面に衝突するようにされる。SAXS測定が試料22表面の異なる位置で実行され、傾きが例えば±0.1°変化した場合、入射角は表面全体で0.3〜0.5°変化する。この角度の変化によって、異なる位置で測定されるSAXSスペクトルの強度は、見かけ上大きく変化する。
【0066】
例えば、システム20の通常の適用では、試料22は半導体ウェハであり、ステージ表面にある吸気口(図示せず)を介して吸引されることによって、ステージ24上の定位置に保持される。このような状況では、ウェハはステージの形状に適合し、吸引力によって変形する。結果として、ウェハの局所的な傾き角は、ウェハ表面の位置によって違ってくる。
【0067】
図6の方法は、システム20のXRR測定機能を用いて、SAXSにおける試料の傾きに伴う問題を解決する。この目的のため、システム20は、傾きマッピングステップ100で、XRRモードで動作して試料22の傾きをマッピングする。この目的に用いてもよい傾きのマッピングの代表的な方法が、本特許出願の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/000,044号に記載されており、その開示を参考として本明細書に組み込む。マップを生成するために、試料の表面がいくつかの領域に分割され、各領域の表面の傾きが測定されて傾き値が得られる。(このマップは、SAXS試料自体を用いて作成されてもよいし、あるいは裸のシリコンウェハなど参照用の試料を用いてもよい。)表面の傾きを判定するのに、あらゆる好適な方法が使用されてもよい。XRRを用いて傾きを測定するための代表的な方法が、その開示を本明細書に参考として組み込む米国特許公開US2004/0109531 A1およびUS2004/0131151 A1と、ならびに上述の米国特許6,895,075で開示されている。別の方法としてまたはこれに加えて、例えば,その開示を本明細書に参考として組み込む米国特許6,643,354に記載されるように、傾き測定用の光学的方法が使用されてもよい。傾きマップはシステム制御部に記録される(上述のように、処理部56が行ってもよい)。
【0068】
傾きマップが生成された後、モード設定ステップ102で、光源アセンブリ26および検出素子アセンブリ32は、上述のようにSAXS測定用に設定される。次に、部位選択ステップ104で、ステージ24が操作されて、X線ビーム74が所望の試験部位に衝突するように試料22が移動される。通常、試料22上の複数の部位がこの目的のために予め選択され、ステージ24は、各部位が領域50内に順に配置されるように、試料を移動させる。システム制御部は、傾き決定ステップ106で、その部位の記録された傾き値を傾きマップ上で調べる。あるいは、その特定の部位に対する記録された傾き値がない場合、システム制御部は、近接する地点の傾き値を傾きマップ上で調べて、補間によって試験部位の近似傾き値を検出してもよい。図2に示したように、XRRビーム軸およびSAXSビーム軸が互いにずれている場合、傾き値に対して回転による転換を行って、X−Y面での角度のずれを相殺してもよい。
【0069】
次いで、傾き補正ステップ108で、システム制御部がステージ24に対して、試料22の配向角を調整して、現在の試験部位での傾きを補償するように指示を出す。換言すれば、現在の試験部位がX軸周りで+0.1°傾いていることが傾きマップから判断された場合、ステージ24は−0.1°の傾きを加える。あるいは、試料の傾きを補償するために、光源アセンブリ26のX線ビーム軸が調整されてもよい。傾きが適切に調整されると、データ収集ステップ110で、光源アセンブリおよび検出素子アセンブリが作動し、処理部56が試験部位のSAXSスペクトルを収集し分析する。次いでこの工程が、残りの試験部位に対して繰り返される。
【0070】
上記で説明した実施形態では、主に半導体ウェハの表面層特性を判定することを扱っているものの、本発明の原理は、X線ベースの分析の他の応用、ならびにX線だけではなく他のイオン化照射帯域も使用した、他の種類の照射を基にした分析にも同様に用いることができる。さらに、例えば、その開示を参考として本明細書に組み込む米国特許出願第6,381,303号に記載されるように、蛍光X線測定など、照射を基にした分析の他の方法を組み込むために、システム20を変更してもよい。別の方法としてまたはこれに加えて、システム20は、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示を参考として本明細書に組み込む米国特許出願第10/902,177号(2004年7月30日出願)に記載されるように、拡散XRR測定を実施するように構成してもよい。
【0071】
さらに、本発明の特徴は、複数の異なるX線分析モードを組み合わせたシステム20に関連して上記に説明されているものの、代替案として、これらの特徴の一部が、SAXS、XRD(高角度またはかすめ角)および/またはXRRなどの、1つあるいは2つの動作モードのみを提供するシステムに組み入れられてもよい。
【0072】
本発明の原理はまた、実稼働環境で使用するための測定システムおよびツールに適用されてもよい。例えば、本発明の代替実施形態(図示せず)では、本来位置検査を実行するために、システム20の要素が半導体ウェハ作製ツールと一体化される。当該技術分野で既知のように、通常、作製ツールは蒸着装置を含む真空チャンバを備えて、ウェハ上に薄膜を形成する。例えば、その開示を参考として本明細書に組み込む米国特許公開US2001/0043668 A1に記載されるように、チャンバはX線窓を有している。X線源アセンブリ26は次に、窓の1つを介してウェハ上の領域50を照射してもよく、上述したようなXRR、XRDまたはSAXS構成の1つ以上で、検出素子アセンブリ32は別の窓を介して散乱X線を受ける。別の代替実施形態では、システム20は、他のステーションとともに製造工程を実施するのに使用される、集合ツールのステーションとして構成されてもよい。
【0073】
したがって、上述の実施形態は例示のために挙げられたものであり、本発明は上記に具体的に示して説明したものに限定されないことは明らかであろう。本発明の範囲は、上記に説明した多様な特徴の組合せおよび副次的な組合せ、ならびに、当業者が上述の説明を読むことで想起することができ、先行技術には開示されていない、それらの変形および修正を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態にしたがったX線測定システムの概略側面図である。
【図2】本発明の一実施形態にしたがったX線測定システムの概略上面図である。
【図3A】本発明の一実施形態にしたがった、XRR用に構成された検出素子アレイの概略前面図である。
【図3B】本発明の一実施形態にしたがった、SAXS用に構成された検出素子アレイの概略前面図である。
【図4】本発明の一実施形態にしたがった、SAXS測定システムの概略上面図である。
【図5】本発明の一実施形態にしたがった、表面に入射するX線ビームの焦点を制御するために使用されるナイフエッジの細部の概略図である。
【図6】本発明の一実施形態にしたがったSAXS測定方法を概略的に説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
20:システム
22:試料
24:ステージ
26:X線源
28、40:光源動作アセンブリ
30、36:動作アセンブリは曲線軌道
32:検出素子アセンブリ
34:検出素子動作アセンブリ
38:管
42:光学素子
44:収束ビーム
46:シャッター
48:ナイフエッジ
50:領域
54:アレイ
56:処理部
58:分布
70:散乱ビーム
72:視準光学素子
74:X線ビーム
75:光源ビーム遮断部
76:検出素子
80:スリット
82:回折防止スリット
86:窓
88:筐体
90:ワイヤ
100:傾きマッピングステップ
102:モード設定ステップ
104:部位選択ステップ
106:傾き決定ステップ
108:傾き補正ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料分析装置であって、
第1のX線収束ビームを試料表面に向け、第2のX線平行ビームを前記試料表面に向けるように構成された照射源と、
前記照射源を、前記X線が前記照射源から前記試料表面にかすめ角で向けられる第1の光源位置と、前記X線が前記照射源から前記試料表面に前記試料のブラッグ角近傍で向けられる第2の光源位置との間で移動させるように動作する動作アセンブリと、
前記照射源が、前記第1および第2の光源構成のいずれか、および前記第1および第2の光源位置のいずれかにあるときに、前記試料から散乱した前記X線を角度の関数として感知し、前記散乱したX線に応答して出力信号を生成するように構成された検出素子アセンブリと、
前記出力信号を受けてこれを処理し、試料の特性を判定するように結合された信号処理部とを備える、試料分析装置。
【請求項2】
前記照射源が、
前記X線を放射するように動作するX線管と、
前記X線を受けて前記収束ビームに集光するように構成された第1のミラーと、
前記X線を受けて前記平行ビームに集光するように構成された第2のミラーとを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1および第2のミラーが二重湾曲構造を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記動作アセンブリが、前記検出素子アセンブリが前記試料からかすめ角で散乱した前記X線を感知する第1の検出素子仰角と、前記検出素子アセンブリが前記表面からブラッグ角の近傍で散乱した前記X線を感知する第2の検出素子仰角との間で、前記検出素子アセンブリを移動するように動作する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記動作アセンブリが、前記第1の検出素子仰角にある前記検出素子アセンブリを、前記検出素子アセンブリが前記X線の小角散乱を感知する第1の方位角と、前記検出素子アセンブリが前記試料表面の面内構造から回折された前記X線を感知する第2のより大きい方位角との間で移動させるように動作する、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記検出素子アセンブリが、前記試料表面に垂直な第1の軸に沿って前記散乱したX線を分解する第1の検出素子構成と、前記表面に平行な第2の軸に沿って前記散乱したX線を分解する第2の検出素子構成とを有する検出素子アレイを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記信号処理部が、前記第1の検出素子構成にある前記検出素子アセンブリからの前記出力信号を処理して、前記表面からの反射率を前記表面に対する仰角の関数として判定し、前記第2の検出素子構成にある前記検出素子アセンブリからの前記出力信号を処理して、前記表面の散乱特性を前記表面平面の方位角の関数として判定するように構成された、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記信号処理部が、前記照射源が前記第1のビームを照射し、かつ前記第1の光源位置にあるときに、前記検出素子アセンブリからの前記出力信号を処理して、前記表面のX線反射率(XRR)スペクトルを獲得し、前記照射源が前記第2のビームを照射し、かつ前記第1の光源位置にあるときに、前記検出素子アセンブリからの前記出力信号を処理して、前記表面のX線小角散乱(SAXS)スペクトルおよび小角X線回折(XRD)スペクトルの少なくとも一つを獲得し、また前記照射源が前記第2の光源位置にあるときに、前記検出アセンブリからの前記出力信号を処理して、前記表面の高角度XRDスペクトルを獲得するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記信号処理部が、前記照射源が前記第2の光源位置にあって前記第1のビームを照射しているときに高分解能XRDスペクトルを獲得し、前記照射源が前記第2の光源位置にあって前記第2のビームを照射しているときに低分解能XRDスペクトルを獲得するように構成された、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
動作センサが、前記高分解能XRDスペクトルを獲得するように、前記検出素子アセンブリを前記試料表面からの第1の距離に配置し、前記低分解能XRDスペクトルを獲得するように、前記検出素子アセンブリを、前記第1の距離よりも小さい前記表面からの第2の距離に配置するように構成された、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記試料が少なくとも1つの表面層を備え、前記信号処理部が、前記XRR、SAXSおよびXRDスペクトルの2つ以上を共に分析するように構成されて、前記少なくとも1つの表面層の特性を判定する、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記特性が、膜厚、密度、表面品質、空隙率、および結晶構造の少なくとも1つを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記試料表面に平行に、かつ選択領域に隣接して配置されたナイフエッジを備え、前記表面と前記ナイフエッジとの間に空隙を画定して、前記空隙を通過しない前記ビームの一部を遮断する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
対象となる角度範囲に散乱する前記X線を遮断することなく、前記空隙を通過してさらに前記ビーム軸に沿って伝播する前記X線を遮断するように構成されたビーム遮断部を備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記ナイフエッジがX線吸収材料のシリンダを備える、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
分析中に前記試料の配向を受けてこれを調整する搭載アセンブリを備え、前記照射源が、前記X線ビームを前記試料表面の選択領域に向けるように構成され、前記信号処理部が、前記表面の特徴的な傾き角を示す傾きマップを受けて、前記傾きマップを基に前記選択領域の傾き角を決定し、前記搭載アセンブリで前記試料の配向を調整させて前記推定された傾き角を補償するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
X線平行ビームをビーム軸に沿ってかすめ角で試料表面の選択領域に向け、前記X線の一部が方位角の範囲で前記領域から散乱するように構成された照射源と、
前記試料表面に平行に、かつ前記選択領域に隣接して配置され、前記表面とナイフエッジとの間に空隙を画定して、前記空隙を通過しない前記ビームの一部を遮断するナイフエッジと、
方位角範囲の少なくとも一部分に散乱したX線を遮断することなく、空隙を通過してさらにビーム軸に沿って伝播するX線を遮断するように構成されたビーム遮断部と、
前記散乱したX線を方位角の関数として感知し、前記散乱したX線に応答して出力信号を生成するように構成された検出素子アセンブリと、
前記出力信号を受けてこれを処理し、試料の特性を判定するように結合された信号処理部とを備える、試料分析装置。
【請求項18】
前記試料表面に垂直に、かつ前記照射源と前記ナイフエッジとの間に配置された少なくとも1つのスリットを備え、前記散乱したX線を遮断しながら前記平行ビームの少なくとも一部を通過させる、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのスリットが、前記照射源に近接して配置された第1のスリットと、前記ナイフエッジに近接して配置された第2のスリットとを備える、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記検出素子アセンブリが、
アレイ長さを有する検出素子のアレイと、
少なくとも前記アレイ長さに等しい距離離間した前面および背面を有する排気可能な筐体とから成り、前記アレイが前記筐体の背面に配置され、前記筐体が、その前面に窓を備えて、放射光がそれを通過して前記アレイに衝突するように構成される、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記ナイフエッジがX線吸収材料のシリンダを備える、請求項17に記載の装置。
【請求項22】
X線を試料の選択領域に向け、前記X線の一部が前記領域から散乱するように構成された照射源と、
前記試料表面に平行に、かつ前記選択領域に隣接して配置され、前記表面とナイフエッジとの間に空隙を画定して、前記空隙を通過しない前記ビームの一部を遮断する、X線吸収材料のシリンダを有するナイフエッジと、
前記散乱したX線を角度の関数として感知し、前記散乱したX線に応答して出力信号を生成するように構成された検出素子アセンブリと、
前記出力信号を受けてこれを処理し、試料の特性を判定するように結合された信号処理部とを備える試料分析装置。
【請求項23】
前記X線吸収材料のシリンダが金属線を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
分析中に前記試料の配向を受けてこれを調整する搭載アセンブリと、
X線平行ビームを前記搭載アセンブリ上の前記試料表面の選択領域に向け、前記X線の一部が方位角の範囲で前記領域から散乱するように構成された照射源と、
前記散乱したX線を方位角の関数として感知し、前記散乱したX線に応答して出力信号を生成するように構成された検出素子アセンブリと、
前記表面の特徴的な傾き角を示す傾きマップを受けて、前記傾きマップを基に前記選択領域の傾き角を決定し、前記推定された傾き角に応答して前記搭載アセンブリで前記試料の配向を調整させる信号処理部であって、配向の調整後に前記出力信号を受けてこれを処理し、試料の特性を判定するように結合された信号処理部とを備える試料分析装置。
【請求項25】
前記照射源が、前記X線の収束ビームを前記表面の複数の位置のそれぞれに向けるように構成され、前記検出素子アセンブリが、前記表面から反射した前記X線を前記表面に対する仰角の関数として感知し、前記信号処理部が、前記反射したX線に応答して前記位置のそれぞれのX線反射率(XRR)スペクトルを測定し、前記XRRスペクトルに基づいて前記位置それぞれの傾き角を決定する、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
第1のX線収束ビームを試料表面に向け、第2のX線平行ビームを前記試料表面に向けるように照射源を操作し、
前記照射源を、前記X線が前記照射源から前記試料表面にかすめ角で向けられる第1の光源位置と、前記X線が前記照射源から前記試料表面に前記試料のブラッグ角近傍で向けられる第2の光源位置との間で移動させ、
前記照射源が、前記第1および第2の光源構成の両方、および前記第1および第2の光源位置の両方にあるときに、前記試料から散乱した前記X線を角度の関数として感知して、前記試料の特性を判定する試料分析方法。
【請求項27】
前記照射源が、
X線源からの前記X線を前記収束ビームに集光する第1のミラーを配置し、
前記X線源からの前記X線を前記平行ビームに集光する第2のミラーを配置することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1および第2のミラーが二重湾曲構造を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記X線を感知することが、前記散乱したX線を検出素子を用いて捕捉し、前記検出素子を、前記照射源が前記第1の光源位置にあるときに、前記検出素子が前記試料からかすめ角で散乱した前記X線を感知する第1の検出素子仰角と、前記照射源が前記第2の光源位置にあるときに、前記検出素子が前記表面からブラッグ角の近傍で散乱した前記X線を感知する第2の検出素子仰角との間で、前記検出素子を移動させることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記検出素子を移動させることが、前記第1の検出素子仰角にある前記検出素子を、前記検出素子アセンブリが前記X線の小角散乱を感知する第1の方位角と、前記検出素子アセンブリが前記試料表面の面内構造から回折された前記X線を感知する第2のより大きい方位角との間で移動させることをさらに特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記X線を感知することが、前記試料表面に垂直な第1の軸に沿って前記散乱したX線を分解する第1の検出素子構成と、前記表面に平行な第2の軸に沿って前記散乱したX線を分解する第2の検出素子構成とに配置することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記X線を感知することが、前記第1の検出素子構成にある前記検出素子アレイの出力を処理して、前記表面からの反射率を前記表面に対する仰角の関数として判定し、前記第2の検出素子構成にある前記検出素子アレイの出力を処理して、前記表面の散乱特性を前記表面平面の方位角の関数として判定することを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記X線を感知することが、前記照射源が前記第1の光源位置にあって前記表面に前記第1のビームを向けているときに、前記表面のX線反射率(XRR)スペクトルを獲得し、前記照射源が前記第1の光源位置にあって前記表面に前記第1のビームを向けているときに、前記表面のX線小角散乱(SAXS)スペクトルおよび小角X線回折(XRD)スペクトルの少なくとも一つを獲得し、また前記照射源が前記第2の光源位置にあるときに、前記表面の高角度XRDスペクトルを獲得することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記XRDスペクトルを獲得することが、前記照射源が前記第2の光源位置にあって前記表面に前記第1のビームを向けているときに高分解能XRDスペクトルを獲得し、前記照射源が前記第2の光源位置にあって前記表面に前記第2のビームを向けているときに低分解能XRDスペクトルを獲得することを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記X線を感知することが、前記高分解能XRDスペクトルを獲得するために、前記試料表面からの第1の距離で前記散乱したX線を受けるように検出素子を配置し、前記低分解能XRDスペクトルを獲得するために、前記第1の距離よりも小さい前記表面からの第2の距離で前記散乱したX線を受けるように前記検出素子を配置することを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記試料が少なくとも1つの表面層を備え、前記少なくとも1つの表面層の特性を判定するために、前記XRR、SAXSおよびXRDスペクトルの2つ以上を共に分析することを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記特性が、膜厚、密度、表面品質、空隙率、および結晶構造の少なくとも1つを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記試料表面に平行に、かつ選択領域に隣接してナイフエッジを配置し、前記表面と前記ナイフエッジとの間に空隙を画定して、前記空隙を通過しない前記ビームの一部を遮断することを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
対象となる角度範囲に散乱する前記X線を遮断することなく、前記空隙を通過してさらに前記ビーム軸に沿って伝播する前記X線を遮断するビーム遮断部を配置することを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ナイフエッジがX線吸収材料のシリンダを備える、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記照射源を操作することが、前記X線ビームを前記試料表面の選択領域に向けることを特徴とし、さらに、
前記表面の特徴的な傾き角を示す傾きマップを提供し、
前記傾きマップに基づいて前記選択領域の傾き角を決定し、
前記試料の配向を調整して前記推定された傾き角を補償することを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項42】
X線平行ビームをビーム軸に沿ってかすめ角で試料表面の選択領域に向けて、前記X線の一部が方位角の範囲で前記領域から散乱するようにし、
前記試料表面に平行に、かつ前記選択領域に隣接してナイフエッジを配置して、前記表面と前記ナイフエッジとの間に空隙を画定して、前記空隙を通過しない前記ビームの一部を遮断し、
方位角範囲の少なくとも一部に散乱する前記X線を遮断することなく、前記空隙を通過してさらに前記ビーム軸に沿って伝播する前記X線を遮断するようにビーム遮断部を配置し、
前記散乱したX線を方位角の関数として感知して試料の特性を判定する試料分析方法。
【請求項43】
前記試料表面に垂直に、前記X線平行ビームの光源と前記ナイフエッジとの間に少なくとも1つのスリットを配置して、前記少なくとも1つのスリットが、前記散乱したX線を遮断しながら前記平行ビームの少なくとも一部を通過させる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つのスリットが、前記照射源に近接して配置された第1のスリットと、前記ナイフエッジに近接して配置された第2のスリットとを備える、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ナイフエッジがX線吸収材料のシリンダを備える、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
X線ビームを試料の選択領域に向けて、前記X線の一部が前記領域から散乱するようにし、
前記試料表面に平行に、かつ前記選択領域に隣接してX線吸収材料のシリンダを配置して、前記表面と前記シリンダとの間に空隙を画定して、前記空隙を通過しない前記ビームの一部を遮断し、
前記散乱したX線を角度の関数として感知して試料の特性を判定する試料分析方法。
【請求項47】
前記X線吸収材料のシリンダが金属線を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
試料の傾きマップを生成し、
X線平行ビームをビーム軸に沿ってかすめ角で前記試料の選択領域に向けて、前記X線の一部が方位角の範囲で前記領域から散乱するようにし、
前記傾きマップに基づいて前記選択領域の傾き角を決定し、
前記試料の配向を調整して前記傾き角を補償し、
配向の調整後に前記散乱したX線を方位角の関数として感知して試料の特性を判定する試料分析方法。
【請求項49】
前記傾きマップを生成することが、表面の複数の位置それぞれからのX線反射率(XRR)スペクトルを測定し、前記XRRスペクトルに基づいて前記位置それぞれの傾き角を決定することを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記XRRスペクトルを測定することが、前記X線の収束ビームを前記複数の位置それぞれに向け、前記表面から反射した前記X線を前記表面に対する仰角の関数として検出することを特徴とする、請求項49に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−138837(P2006−138837A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−274293(P2005−274293)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(505355081)ジョルダン バレー アプライド ラディエイション リミテッド (1)
【Fターム(参考)】