説明

多次元イオン移動度分光測定の装置と方法

2つ以上のドリフトチェンバーを有し、物質の多次元イオン移動度プロファイルを取得できる多次元イオン移動度分析器の様々な実施形態が開示される。この装置のドリフトチェンバーは、例えば独立した動作条件下で動作させて荷電粒子をそれらの区別可能な化学的/物理的性質に基づいて分離することができる。この装置の第一次元のドリフトチェンバーは、分析器の動作モードに応じてストレージ装置、反応チェンバー、および/またはドリフトチェンバーとして使用することができる。また、サンプル中の全てのケミカル成分のイオン化をそれらの電荷親和性に拘わらず可能とすることができる連続的第一次元イオン化方法を含むが、それに限定はされない、イオン移動度分光計を動作させる様々な方法も提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]本出願は、2006年1月2日に出願された、同時係属中の米国特許仮出願番号60/766,226の優先権と恩恵を主張し、その内容全体をここに引用によって組み込む。
【背景技術】
【0002】
1970年代初頭に発明されて以来、イオン移動度分光測定(Ion Mobility Spectrometry:IMS)は種々の応用に使われる強力な分析ツールに発展してきた。この計器には、独立ケミカル検出システム、色層分析検出器、ハイフネーテッド(hyphenated)IMS質量分析(Mass Spectrometry:MS)システムを含んだ、3つの主要な形態がある。独立した検出システムとしては、IMSは対象物質をイオン化し、ドリフト気体(例えば、キャリア気体)との相互作用に基づいて対象物質を背景から分離し、物質をそのイオン化された形態で検出するその能力に依拠して異なる形態の物質を定性的かつ定量的に検出する。色層分析検出器としては、IMSは色層分析的に分離された物質の複数のイオン移動度スペクトルを取得する。組み合わされたIMS−MSシステムでは、IMSは質量分析の前に対象物質を単離する分離方法として使われる。しかし、IMSの分解能は一般に低いと考えられ、しばしばそのような装置を定性的な使用または関心のある物質に対する干渉物が低レベルの環境における使用に規制する。
【0003】
IMSシステムの基本的な共通要素は、イオン化源、反応領域を含んだドリフト管、イオンシャッターグリッド、ドリフト領域、およびイオン検出器からなる。気体相分析において、分析されるサンプルは不活性キャリア気体によって反応領域に導入され、サンプルのイオン化はしばしばサンプルを反応領域および/または放射性63Ni源を通過させることによって完了される。形成されたイオンはドリフト領域を確立するドリフトリングに印加された電場によってドリフト領域に向けられ、イオンの細いパルスはそれからイオンシャッターグリッドを介してドリフト領域に注入されおよび/または進入を許可される。一旦ドリフト領域に入ると、サンプルのイオンはそれらのイオン移動度に基づいて分離され、検出器におけるそれらの到着時間はイオン質量に関連付けることができるイオン移動度を示すものである。しかし、イオン移動度はイオン質量だけと関連しているのではなく、むしろイオン質量のみに依存するのではないイオン−ドリフト気体相互作用ポテンシャルに根本的に関連していることを理解されたい。
【0004】
IMSの主要な応用の一つは禁制ケミカルのトレース量を検出することである。トレース検出システムは、爆発物およびケミカル剤検出のための現在のセキュリティシステムに幅広く用いられている。典型的には、セキュリティオフィサーがサンプリング表面上を綿棒で拭き、それから有機化合物のトレースが蒸発されてIMSに導入される熱脱離器に綿棒を挿入した時に、プロセスが開始される。これらの応用の殆どにおいて、迅速かつ正確な禁制ケミカルの同定がセキュリティ検査ミッションにとって本質的である。携帯型であるが高性能な検出システムは捜し求められ続けており、極めて望ましいものである。
【発明の開示】
【0005】
本発明は多次元イオン移動度分光測定(Multi-Dimensional Ion Mobility Spectrometry:MDIMS)方法および装置の様々な側面に関する。様々な実施形態において、本発明のMDIMSは、一装置内での複数イオン移動度に基づいた分離ステップを革新的に統合することによって従来のイオン移動度分光測定(IMS)からそれら自身を差別化する。様々な実施形態において、本発明は従来のIMS装置と動作的アプローチよりも高い分解能と高い感度を提供する。
【0006】
本発明の様々な実施形態は、ケミカル種をそれらのイオン移動度に基づいてイオン化し、分離し、検出する統合された多次元飛行時間型イオン移動度分光測定システムを提供する。これらのシステムは一般に、(a)少なくとも一つのイオン化源、(b)少なくとも二つのドリフト領域、および(c)少なくとも一つのイオン検出装置、を含む。様々な実施形態において、これらのシステムは、一組のドリフト条件下で一つのドリフト次元にあるイオンを分離し、その後同じまたは異なる組のドリフト条件下での更なる分離のために分離されたイオンはより高い次元に導入される。様々な実施形態において、分離プロセスは一つ以上の追加ドリフト次元について繰り返すことができる。また、様々な実施形態において、第一のドリフト次元はシステムのイオン化源、反応領域または脱溶媒和領域、およびドリフト領域の一つ以上として使われる。例えば、様々な実施形態において、第一のドリフト次元(第一のドリフト管)内の電場は荷電ドロップレットのための脱溶媒和領域として使うことができる。
【0007】
本発明の装置と方法は、「ドリフト管」を利用する。ここで「ドリフト管」という用語は、イオン移動度分光測定の分野におけるこの用語の受け入れられた意味に従って用いられる。ドリフト管は、電場の影響下でイオンがその中を移動させられる中性の気体を含んだ構造である。「ドリフト管」は、管やシリンダーの形態である必要はないことを理解されたい。技術分野で理解されているように、「ドリフト管」はシリンダーに見られるような円形または楕円形の断面に限定されるものではなく、正方形、長方形、円形、楕円形、半円形、三角形等を含んだ、但しそれらに限定されない、あらゆる断面形状を持つことができる。
【0008】
中性の気体はしばしばキャリア気体、ドリフト気体、バッファ気体等と呼ばれ、これらの用語はここでは入れ替え可能なものと見なす。気体は、関心のあるイオンまたは複数イオンの平均自由経路がドリフト管の次元よりも小さくなるような圧力下にある。つまり気体圧力は粘性流のために選ばれる。チャネル中の気体の粘性流の条件下では。条件は平均自由経路がチャネルの横断次元に比較して非常に小さくなるようなものとなる。これらの圧力において、フロー特性は主に気体分子間の衝突、即ち気体の粘度、によって決められる。フローは層流でも乱流でも良い。定常状態のイオン移動度が達成される前に、イオンがドリフト管の縦の長さに対して無視できる距離しか移動しないようにドリフト管内の圧力は十分に高いことが好ましい。
【0009】
イオンが電気的ドリフト場の影響下でそれに沿って移動するドリフト管の軸は、ここではドリフト軸と呼ばれる。ドリフト軸はしばしばドリフト管の縦軸であるが、必ずしもそうとは限らない。
【0010】
本発明の様々な側面において、イオン移動度分光計を動作させる方法が記載される。一側面においては、限定としてではなく簡潔さのために連続的第一次元イオン化(Continuous First Dimension Ionization:CFDI)モードと呼ばれる動作方法が記載される。技術分野で理解されているように、電荷は一つのイオン化されたケミカル種からより高い親和性の別のケミカル種に転送されることが好ましい。そのような電荷転送プロセスは関心のあるケミカル種のイオン化を深刻に乱し妨げたりもでき、よってIMSやその他の形態の質量分析によるその種の成功した分析を妨げる。本発明のCFDI方法は低電荷親和性イオンのイオンの形成を容易にし、よって様々な実施形態において、IMSの感度を上げることができる。CFDI方法はまたIMSのダイナミック応答レンジも上げ、分光計がサンプル混合物を分析するのに使われた際によりよい定量的情報を提供する。
【0011】
様々な実施形態において、CFDI方法は、第一のドリフト管に気体相サンプルをパルス化し、第一のドリフト管の少なくとも一部に沿った第一の方向にサンプルパルスを気体フローによって搬送することからなる。その結果、第一の方向は第一のドリフト管内のキャリア気体フローの方向と実質的に平行になる。反対に移動する反応物イオンのパルスを使ってサンプルパルス中のケミカル種をイオン化する。サンプルパルスは反応領域またはドリフト領域において分光計に導入できる。いくつかの動作モードでは、キャリア気体とサンプルパルスは0に近づく速度を持つことができるが、サンプルパルスに向かって移動する反応物イオンを持つことになる。例えば、反応物イオンの第一のグループが第一のドリフト管にパルス化され、サンプルパルスに向かっている第二の方向に第一のドリフト管電場によって搬送される。反応物イオンの第一のグループは好ましくは所定の時間において第一のドリフト管にパルス化される。所定の時間は、サンプルパルスと反応物イオンの第一のグループが相互作用する第一のドリフト管内の位置を少なくとも大まかには選択するように選ぶことができる。反応物イオンの第一のグループがサンプルパルスと相互作用すると、一つ以上のケミカル種がイオン化され第一のイオン化されたケミカル種が作り出される。典型的には、最も高い電荷親和性を持ったサンプルパルス中のケミカル種がイオン化されることが好ましい。
【0012】
これも好ましくは第二の所定の時間において、第一のグループの後に、反応物イオンの第二のグループが第一のドリフト管にパルス化され、サンプルパルスに向かって第一のドリフト管の電場によって搬送される。第二の所定の時間は、第一の反応物イオングループについて選ばれたものより遅い必要があるが、サンプルパルスと反応物イオンの第一のグループが相互作用する第一のドリフト管内の位置を少なくとも大まかには選択するように選ぶことができる。様々な実施形態において、第二の所定の時間は、第一のイオン化されたケミカル種の少なくとも一部が第二のドリフト管に抽出される時間を許容するように選ばれる。
【0013】
反応物イオンの第二のグループがサンプルパルスと相互作用すると、一つ以上のケミカル種がイオン化され第二のイオン化されたケミカル種が作り出される。典型的には、第二のイオン化されたケミカル種は二番目に高い電荷親和性を持ったサンプルパルス中の種である。プロセスは繰り返すことができ、例えば反応物イオンの第三のグループを提供して第三のイオン化されたケミカル種を作り出したり、反応物イオンの更なるグループを提供して第四のイオン化されたケミカル種を作り出したり等して、オペレータが望む通りに、関心のあるケミカル種をイオン化する。
【0014】
様々な実施形態において、イオンを第二のドリフト管に移動させる第一のドリフト管の少なくとも一部に渡る電場を生成することにより、第一のドリフト管内の第一のイオン化されたケミカル種の少なくとも一部が第二のドリフト管に抽出される。この電場は第一のドリフト管からイオンを取り除くので、ここではしばしば「蹴り出し」パルスまたは「蹴り出し」場と呼ばれる。好ましくは、例えば場が印加されるタイミングや空間的広がりやその両方を選択することによって、蹴り出し場は実質的に反応物イオンがない第一のドリフト管の一部に印加される。例えば、様々な実施形態において、反応物イオンの第二のグループによる第二のケミカル種のイオン化の前に蹴り出し場が印加される。
【0015】
様々な実施形態において、次の(n+1)番目のイオン化されたケミカル種の形成の前にn番目のイオン化されたケミカル種を抽出するために蹴り出し場が印加される。様々な実施形態において、二つ以上のイオン化されたケミカル種を実質的に同時に抽出するために蹴り出し場が印加される。様々な実施形態において、選択的なイオン化されたケミカル種の抽出と複数のイオン化されたケミカル種の抽出の組み合わせが行われる。
【0016】
従って、様々な実施形態において、本発明のCFDI方法は、(a)第一の時間において第一のドリフト管に気体相サンプルをパルス化し、(b)第一のドリフト管の少なくとも一部に沿った第一の方向に気体相サンプルパルスを搬送し、ただし第一の方向は第一のドリフト管内のキャリア気体フローの方向に実質的に平行であり、(c)第一の時間に対する所定の時間において第一のドリフト管に反応物イオンの複数のパルスを提供し、(d)第一のドリフト管の少なくとも一部に沿った第二の方向に反応物イオンのパルスを電場によって搬送し、ただし第二の方向は第一のドリフト管内のキャリア気体フローの方向に実質的に反平行であり、(e)反応物イオンの複数のパルスの一つ以上からなる反応物イオンのグループを気体相サンプルパルスと相互作用させて気体相サンプルパルス中のケミカル種をイオン化し、(f)全ての関心のあるケミカル種がイオン化されるまで、反応物イオンのグループを気体相サンプルパルスと相互作用させるステップを繰り返し、異なる電荷親和性のケミカル種は第一の方向に沿って異なる位置でイオン化される、ことからなる。
【0017】
様々な実施形態において、方法は、第一のドリフト管の少なくとも一部に渡って電場を一つ以上の所定の抽出時間において生成することによって、第一のドリフト管内のイオン化されたケミカル種の少なくとも一部を第二のドリフト管に抽出し、第二のドリフト管は第一のドリフト管の縦軸に実質的に平行または垂直な縦軸を有する、ことからなる。好ましくは、一つ以上の所定の抽出時間は、イオン化されたケミカル種が抽出される第一のドリフト管の一部に実質的に反応物イオンがない時間間隔の間にイオン化されたケミカル種が抽出されるように選択される。
【0018】
様々な実施形態において、本発明のCFDI方法は第二のドリフト管を使い、好ましくは、第二のドリフト管は第一のドリフト管の縦軸に実質的に垂直な縦軸を有する。様々な実施形態において、第二のドリフト管に抽出されたイオン化されたケミカル種はイオン検出器に向けられており、第二のドリフト管の条件下でのそれらの移動度に少なくとも基づいたイオン検出器でのそれらの到着時間によって特徴付けられる。
【0019】
好ましくは、電場強度の気体数密度に対する比(E/N値)は、第一のドリフト管、第二のドリフト管、またはその両方で実質的に一定である。好ましくは、電場強度は、第一のドリフト管、第二のドリフト管、またはその両方で実質的に一定である。しかしながら、第一と第二のドリフト管における条件は異なることができることを理解されたい。例えば、様々な実施形態において、キャリア気体、キャリア気体密度、キャリア気体フローレート、電場強度、および温度の一つ以上は、第一と第二のドリフト管で異なる。
【0020】
様々な実施形態において、本発明のCFDI方法は種々の実用的な応用を有する。例えば、MDIMSの動作の連続的第一次元イオン化方法は、従来のIMSの根本的な欠点、即ち分光計のイオン化源および/または反応領域における電荷の競争、を克服し、よって様々な実施形態において非常に異なる電荷親和性を持った物質についてイオン化の機会を供することを容易にするために使っても良い。CFDI方法の様々な実施形態は、例えば荷電物質を単離してそれらが他の共存している物質に電荷を失うことを妨げ、よって関心のある物質に対するシステム感度を高めることを容易にするために使っても良い。
【0021】
様々な側面において、本発明は三つのドリフト管からなるイオン移動度分光計とそのような装置のための方法を提供する。一側面においては、限定としてではなく簡潔さのために二重極性イオン抽出(Dual Polarity Ion Extraction:DPIE)方法と呼ばれる動作方法が提供される。
【0022】
様々な実施形態において、本発明は、三つのドリフト管であって、IMSの第一次元と(例えば、CFDIによる)イオン形成またはその両方を行う第一のドリフト管と、IMSの第二次元を行う二つの追加のドリフト管(第二と第三のドリフト管)と、からなる多次元イオン移動度分光計を提供する。様々な実施形態において、第二と第三のドリフト管は、イオンの異なる極性におけるIMS、異なるドリフト管条件下のIMS,またはその両方、の第二次元を行うように構成され動作させられる。本発明のそのようなMDIMSの様々な実施形態の例は、例えば図1と図6−9に概略的に説明されている。限定としてではなく簡潔さのために、そのようなイオン移動度分光計システムは二重第二次元イオン移動度分光計(Dual Second Dimension Ion Mobility Spectrometers:DSDIMS)と呼ばれる。
【0023】
従って、様々な実施形態において、本発明は、(a)第一のドリフト軸を有する第一のドリフト管と、(b)第一のドリフト軸と実質的に垂直な第二のドリフト軸と、第一のドリフト管と流体通信する入口を有する第二のドリフト管と、(c)第二のドリフト軸に実質的に平行で第一のドリフト軸に実質的に垂直な第三のドリフト軸を有し、第一のドリフト管と流体通信する入口を有する第三のドリフト管と、(d)第二のドリフト管の入口の反対側に配置された電極と、(e)第三のドリフト管の入口の反対側に配置された電極と、 からなるイオン移動度分光計を提供する。
【0024】
第二と第三のドリフト管は種々のやり方で配置することができる。様々な実施形態において、第二のドリフト管と第三のドリフト管は、第一のドリフト管を跨いで実質的に互いに反対側に配置されている。そのような実施形態の例は、図8に概略的に描かれた実施形態を含むが、それらに限られない。第二と第三のドリフト管の反対側への配置は、第二のドリフト管の入口の反対側に配置されている電極が第三のドリフト管の入口からなり、第三のドリフト管の入口の反対側に配置されている電極が第二のドリフト管の入口からなる構造を提供できる。
【0025】
様々な実施形態において、第二のドリフト管と第三のドリフト管は、実質的に横に並べて配置されている。そのような実施形態の例は、図1、6、7、9に概略的に描かれた実施形態を含むが、それらに限られない。様々な実施形態において、第二と第三のドリフト管の近接さは、第二のドリフト管の入口の反対側に配置されている電極が第三のドリフト管の入口の反対側に配置されている電極と同じ構造である好ましい実施形態を導く。例えば、様々な実施形態において、電位Vがこの電極に印加され、より低い電位が第二のドリフト管の入口に印加される。異なる極性のイオンを第二と第三のドリフト管に引きつけるために、より高い電位が第三のドリフト管の入口に印加される。
【0026】
本発明の二重第二次元イオン移動度分光計(DSDIMS)はIMSのより高い次元を含むことができる。様々な実施形態において、本発明のDSDIMSはまた、(a)第二のドリフト管と流体通信する入口を有し、第二のドリフト軸と実質的に垂直な第四のドリフト軸を有する第四のドリフト管と、(b)第三のドリフト管と流体通信する入口を有し、第三のドリフト軸と実質的に垂直な第五のドリフト軸を有する第五のドリフト管と、からなる。そのような実施形態の例は、図1に概略的に描かれた実施形態を含むが、それらに限られない。様々な実施形態において、第四のドリフト軸と第五のドリフト軸は両方第一のドリフト軸と実質的に垂直である。
【0027】
本発明の多次元IMSシステムについて、幅広いイオン源とイオン検出器構成が考えられる。例えば、様々な実施形態において、本発明のDSDIMSはまた、第一のドリフト管の第一端と流体通信するイオン源と、第一端と反対側の第一のドリフト管の一端に位置するイオン検出器と、からなる。そのような実施形態の例は図1に概略的に描かれた実施形態を含むが、それらに限られない。
【0028】
様々な実施形態において、本発明のDSDIMSはまた、第一のドリフト管の第一端と流体通信する第一のイオン源と、第一端と反対側の第一のドリフト管の一端と流体通信する第二のイオン源と、からなる。そのような実施形態の例は図7に概略的に描かれた実施形態を含むが、それらに限られない。
【0029】
様々な実施形態において、本発明のDSDIMSはまた、第二のドリフト管の入口と第三のドリフト管の入口の間に位置するイオン源、からなる。イオン源は第一のドリフト管と流体通信し、第一にイオン検出器は第一のドリフト管の第一端に位置する。様々な実施形態において、第二のイオン検出器は第一端と反対側の第一のドリフト管の一端に位置する。そのような実施形態の例は図9に概略的に描かれた実施形態を含むが、それらに限られない。
【0030】
様々な側面において、本発明はDSDIMSを動作させる方法を提供する。一側面においては、限定としてではなく簡潔さのために二重極性イオン抽出(Dual Polarity Ion Extraction:DPIE)と呼ばれる動作方法が提供される。様々な実施形態において、DSDIMSを含んだ本発明のMDIMS,はイオンストレージを含むように動作させることができる。例えば、様々な実施形態において、従来のIMSデザインで損害を蒙っていたイオン化とドリフトチェンバーにおけるイオンの損失を低減させるか回避することができる。例えば、DPIEモードで動作するMDIMSは、例えばperoxideとnitroベースの爆発物検出において存在するであろうような、正と負のイオンの実質的同時分析を提供することができる。そのような動作は、様々な実施形態において、従来のIMSアプローチに対して増加した感度を提供する。様々な実施形態において、本発明のDSDIMS構成は、手持ち型計器に好適な非常にコンパクトなフォーマットで提供でき得る。そのような手持ち型装置は、国土セキュリティの領域で広範な使用を見つけることができ得る。
【0031】
従って、様々な実施形態において、本発明は、例えばDSDIMSのようなイオン移動度分光計を動作させる方法を提供し、イオン移動度分光計は、(a)第一のドリフト軸を有する第一のドリフト管と、(b)第一のドリフト軸と実質的に垂直な第二のドリフト軸を有する第二のドリフト管と、(c)第二のドリフト軸に実質的に平行で第一のドリフト軸に実質的に垂直な第三のドリフト軸を有する第三のドリフト管と、(d)第二のドリフト管の入口の反対側に配置された第一の電極と、(e)第三のドリフト管の入口の反対側に配置された第二の電極と、からなる。
【0032】
様々な実施形態における方法は、(a)正イオンケミカル種と負イオンケミカル種からなる気体サンプルを第一のドリフト管に提供し、(b)第一のドリフト管内の第一のキャリア気体との衝突によってケミカル種の一つ以上を第一のドリフト軸に沿って空間的に分離し、(c)正イオンケミカル種の少なくとも一部を第二のドリフト管に移動し、実質的に同時に負イオンケミカル種の少なくとも一部を第三のドリフト管に移動するために、第三のドリフト管の入口の反対側に配置された第一の電極の間に電気的ポテンシャル差を印加し、(d)第二のドリフト管内の第二のキャリア気体との衝突によって正イオンケミカル種の一つ以上を第二のドリフト軸に沿って空間的に分離し、分離された正イオンケミカル種の少なくとも一部をイオン検出器に搬送し、(e)第三のドリフト管内の第三のキャリア気体との衝突によって負イオンケミカル種の一つ以上を第三のドリフト軸に沿って空間的に分離し、分離された負イオンケミカル種の少なくとも一部をイオン検出器に搬送する、ステップからなる。
【0033】
方法は、例えばperoxideベースの爆発物とnitroベースの爆発物に関連するケミカル種のようなサンプル中の一つ以上のケミカル種の有無を、例えば単一の測定で決定するために使うことができる。そのような決定は、第二のドリフト管、第三のドリフト管、またはその両方と関連するイオン検出器における到着時間に基づいて行うことができる。
【0034】
第一、第二、第三のドリフト管におけるドリフト条件は実質的に同じであるかまたは異なることができる。例えば、様々な実施形態において、キャリア気体、キャリア気体密度、キャリア気体フローレート、電場強度、および温度のドリフト管条件は、第一のドリフト管、第二のドリフト管、第三のドリフト管の一つ以上の間で異なる。
【0035】
様々な実施形態において、異なるドリフト条件を使用することは本発明の様々な方法の一側面である。例えば、同じサンプルについて、本発明の様々な実施形態は、一回のデータ取得サイクルで異なる条件下での複数イオン移動度に基づく分離を達成する手段を提供する。条件は、ドリフト気体の種類、温度、圧力、電場強度、フローレート、等を含む。これらの条件は、個々の物質のイオン移動度に基づく分離特性を変更するために調整することができる。よって、様々な実施形態において、好ましくは一回のデータ取得サイクルで、従来のIMSでは分解不能な物質をMDIMSで分離することができる。
【0036】
様々な実施形態において、本発明は、例えばDSDIMSのようなイオン移動度分光計を動作させる方法を提供し、イオン移動度分光計は、(a)第一のドリフト軸を有する第一のドリフト管と、(b)第一のドリフト軸と実質的に垂直な第二のドリフト軸を有する第二のドリフト管と、(c)第二のドリフト軸に実質的に平行で第一のドリフト軸に実質的に垂直な第三のドリフト軸を有する第三のドリフト管と、(d)第二のドリフト管の入口の反対側に配置された第一の電極と、(e)第三のドリフト管の入口の反対側に配置された第二の電極と、からなる。
【0037】
イオン移動度分光計は、第二のドリフト管と第三のドリフト管について異なるドリフト条件で動作させられる。動作は、(a)イオンケミカル種からなる気体サンプルを第一のドリフト管に提供し、(b)ドリフト条件の第一の組の下で第一のドリフト管内の第一のキャリア気体との衝突によってケミカル種の一つ以上を第一のドリフト軸に沿って空間的に分離し、(c)イオンケミカル種の少なくとも一部を第二のドリフト管に移動し、実質的に同時にイオンケミカル種の少なくとも一部を第三のドリフト管に移動するために、第三のドリフト管の入口の反対側に配置された第一の電極の間に電気的ポテンシャル差を印加し、(d)ドリフト条件の第二の組の下で第二のドリフト管内の第二のキャリア気体との衝突によってイオンケミカル種の一つ以上を第二のドリフト軸に沿って空間的に分離し、分離されたイオンケミカル種の少なくとも一部をイオン検出器に搬送し、(e)ドリフト条件の第三の組の下で第三のドリフト管内の第三のキャリア気体との衝突によってイオンケミカル種の一つ以上を第三のドリフト軸に沿って空間的に分離し、分離されたイオンケミカル種の少なくとも一部をイオン検出器に搬送する、ステップからなり、ここでドリフト条件の第二と第三の組は異なる。
【0038】
様々な側面において、本発明は、IMSの三つ以上の次元からなる多次元イオン移動度分光測定システムを提供する。様々な実施形態において、MDIMSは、(a)第一のドリフト管と流体通信するイオン源であって、第一のドリフト管は第一のドリフト軸を有するものと、(b)第一のドリフト軸と実質的に垂直な第二のドリフト軸を有する第二のドリフト管と、(c)第二のドリフト軸に実質的に垂直な第三のドリフト軸を有する第三のドリフト管と、(d)第三のドリフト管と流体通信する第一のイオン検出器と、からなる。様々な実施形態において、第三のドリフト軸は第二のドリフト軸と第一のドリフト軸の両方に実質的に垂直である。
【0039】
様々な側面において、本発明は、IMSの二つ以上の次元からなる多次元IMSシステムを動作させる方法を提供する。例えば、CFDIの方法は、第一のドリフト管(次元)からなる本発明のIMSのあらゆる実施形態と一緒に使うことができることを理解されたい。例えば、本発明のあらゆる実施例において、第一のドリフト管(次元)は、システムのイオン化源、反応領域または脱溶媒和領域、およびドリフト領域の一つ以上として使うことができることを理解されたい。本発明の方法は、一つ以上のドリフト次元に化合物を加えるステップを含むことができ、化合物はカイラルなケミカル種の分離を容易にするものであることも理解されたい。
【0040】
本発明の様々な実施形態は、トレース化合物の検出において有用なツールと方法であることができると考えられる。限定としてではなく例として、本発明の様々な実施形態は、従来の単一次元IMSシステムと比較して向上した分解能と向上した感度の一つ以上を提供でき得ると考えられる。
【0041】
例えば分解能に関しては、本発明の多次元システムの様々な実施形態において達成できる分解能力は約80と100の間と予測される。従来の商業的に利用可能なトレース検出器が供する10−30の分解能力と比較すると、本発明の様々な実施形態はこれらの従来のIMSシステムよりも実用上63個多くのケミカルをイオン移動度スペクトル中で分解することが理論的にでき得る。例えば、商用のシステムにおいて10msのTNTドリフト時間と0.5msの半値ピーク幅を仮定すると、従来システムは分解能力(R=t/wl/2)が20でピーク容量が2ピーク/msとなるであろう。もし移動度分光計の使用可能なドリフト時間レンジが9msであったならば、システムは理論的には単一の移動度スペクトル中に18個の化合物を識別でき得る。これに対して、分解能力が90のシステムでは、理論的に識別し得るピークの総数は81である。そのような改善は、対象爆発物からの干渉物を分離するより高い分解システムを理論的に許容でき、よって例えば汚染された動作環境における誤った警告を減少し得る。
【0042】
例えば感度に関しては、本発明の様々な実施形態は、分光計内部のイオン輸送効率を向上し、従ってシステム感度を向上することを容易にするができる独自な多次元方式を提供する。向上した分解能力によって、検出閾値をより低く設定できる。様々な実施形態において、本発明のMDIMSシステムのシステム感度は、(実験室条件だけでなく)対象とする動作環境下でサブナノグラムのレンジになることができる。
【0043】
様々な側面において、本発明はコンパクトなサイズの多次元IMSに基づく検出システムを提供する。本発明の計器は、様々な実施形態において、例えば、秘密漏洩セキュリティまたは他の用途で有用であり得る爆発性物質の検出のような、ケミカルの検出のための携帯型トレース検出システムとして使用することができる。好ましくは、本発明の新たな検出システムは、同一または同様の動作コントロールを有し、現行システムと同様のユーザインターフェースを組み込む。様々な好ましい実施形態において、海運/産業環境を含んだ複雑な環境における爆発物トレース検出ミッションを行うというチャレンジに答えられるコンパクトな高性能トレース検出システムを提供する。
【0044】
例えば、本発明の様々な実施形態は、例えばSmiths Detectionが製造しそこから入手可能なSmith 500DTのような、ある種の従来のデスクトップユニットと比肩し得るまたはそれよりも良好な性能を持ったコンパクトなサイズでのトレース検出を供するMDIMSを提供することができる。コンパクトな計器実装デザインは、システムの総重量と電力消費を削減する。本発明によるコンパクトなデザイン(または手持ち型の)MDIMSの一つの特定の実施形態は、約12w×8h×4dインチのサイズと、12パウンド未満、いくつかの実施形態では顕著に10パウンド未満、の重量を有する。
【0045】
本発明の様々な実施形態はイオン検出器を含む。幅広いイオン検出器が本発明で使用するのに好適であり、ファラデー板、電子増幅器、光増幅器、電荷光子変換装置、電荷結合装置(CCD),等を含むが、それらに限られない。本発明においてイオン検出器が使われる所ではどこでも、その代わりにイオン検出器システムを使うことができることを理解されたい。この文脈でイオン検出器システムは、イオン検出器と、イオン検出器と本発明のIMS次元の間に配置された質量分析器と、からなる。この目的に好適な質量分析器は、飛行時間(time-of-flight:TOF)およびRF型多極質量分析器を含むが、それらに限られない。
【0046】
別の側面においては、発明の方法の機能が、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、磁気テープ、PROM,EPROM,CD−ROM,DVD−ROMのような、但しそれらに限られない、コンピュータ読み取り可能な媒体上に埋め込まれた、またはコンピュータまたはプロセッサのメモリ内に内在する、製造品が提供される。方法の機能は、例えばFORTRAN,PASCAL,C,C++,BASIC,およびアッセンブリー言語のような、コンピュータ読み取り可能な命令または言語のいくつによってでもコンピュータ読み取り可能な媒体上に埋め込むことができる。更に、コンピュータ読み取り可能な命令は、例えばscriptやmacroによって記述され、または商業的に利用可能なソフトウェア(例えば、EXCELまたはVISUAL BASIC)に機能的に埋め込まれることができる。
【0047】
発明の前述したものおよびその他の側面、実施形態、特徴は、添付した図面と併せて以下の記載からより完全に理解できる。図面において同様の参照符号は、様々な図を通して同様の特徴や構成要素を一般的に参照する。図面は必ずしもスケール通りではなく、その代わりに発明の原理を説明することに強調が置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
様々な側面において、本発明は多次元イオン移動度分光測定(MDIMS)システム、好ましくは一つの統合された分光計に多次元電場デザインを持ったものと、そのようなシステムを動作させる方法を提供する。様々な実施形態において、MDIMSシステムおよび/または方法は、従来の単一次元ドリフト管と比較して向上された感度と分解能を提供する。様々な実施形態において、向上された感度は第一次元をイオンストレージ領域として使ってシステムのデューティーサイクルを向上することによって達成することができる。様々な実施形態において、MDIMSシステムおよび/または方法は、向上された移動度分解能を提供する。様々な実施形態において、これらの向上は、それらの移動度に基づいて分離されたか既に分離されていたイオンを更に分離できるドリフト領域を使うことによって達成することができる。様々な実施形態において、イオン種が第一次元で分離されるにつれて、それらの間のクーロン反発は(例えば蹴り出しパルスを使って)それらを第二IMS次元に転送することによって削減される。よって、様々な実施形態において、より高い移動度分解能は第二次元において経験することができる。様々な実施形態において、第一次元は、IMSの様々な実施形態と適当な電場印加において、MDIMSは正と負のイオンの両方を実質的に同時に検出するのに使うことができる。
【0049】
本発明の様々な詳細な実施形態を更に記載する前に、本発明の装置と方法の様々な実施形態を3次元MDIMS装置という一実施形態の文脈で検討することは、それらのより完全な理解のために有益であり得る。
【0050】
図1A−1Cは、3次元MDIMSシステムの様々な実施形態を描写している。図1Aは、第一次元ドリフト領域102と第二次元ドリフト領域104の側面図である。図1Bは,第二次元ドリフト領域104と第三次元ドリフト領域106の側面図を示す。図1A−1Cにおいて、第二次元は二つのドリフト管104a、104bからなり、第二次元ドリフト管の各々に付随する分離された第三次元ドリフト管106a、106bがある。第二次元104は、単一または二重極性モード動作のために使うことができる。MDIMSの様々な実施形態において、各次元のドリフト軸を直交するジオメトリーに配置するのが好ましい実施形態であるが、同様の結果を達成するためにドリフト軸は平行、反平行、またはその間に角度を持って配置することができることは理解されたい。
【0051】
本MDIMS装置および方法の全てのIMS次元における電気的ドリフト場強度−気体数密度比(E/N値、しばしばタウンゼント(Townsend)の単位で表される)は、ローフィールド環境とときに呼ばれる、定常状態のドリフト環境を確立するように選ばれていることは理解されたい。
【0052】
本発明のMDIMSにより、イオン移動度スペクトルは例えば2−Dまたは3−Dプロットによって表すことができ、非線形な検出ウィンドウを使うことができる。ケミカルはそれらの1−D,2−Dまたは3−D移動度プロファイルで同定することができる。この移動度プロファイリング方法は追加の情報を提供でき、よってケミカル(例えば、爆発物)同定についてより大きな自信を提供することができる。
【0053】
様々な実施形態において、第一次元のドリフト電圧がオフにされている(即ち、実質的にドリフト場がない)間に正と負のイオンが気体フローによって第一のドリフトチェンバーに持ち込まれるフロースルーセルとして第一次元102を使って、DPIE動作モードを行うことができる。所定の時間において、好ましくは第一次元の正と負のイオンが実質的に同時に第二次元の二つの分かれたドリフトチェンバー104a、104bに抽出されるように、イオンは第二次元に蹴り出される。イオンが第二次元104で分離された後、それらは第三またはそれより高い次元において更に分離されて検出されることができる。
【0054】
様々な実施形態において、イオン化されたサンプルは、第一のドリフト領域102に導かれおよび/またはそこで形成され、(従来のIMSに類似する)移動度に基づいた第一次分離を受ける。与えられた所定の時間において、第一次元(第一のドリフト管)で分離されたイオンは、それらが第一次元と実質的に第一のドリフト方向と垂直な方法に分離される第二ドリフト次元104のドリフト領域に蹴り出される。もし望ましければ、IMSの更なる次元により、同じプロセスをより高い次元において続けることができる。
【0055】
図1Cは、図1Aおよび1BのSDSIMSにおけるDPIEプロセスの電場分布のシミュレーション結果を示す。図1Cにおいて、第一次元102の三つの壁(左、下、右)は1000Vにあり、ゲートグリッドはそれぞれ0Vと2000Vに設定される。等ポテンシャル線が図には示されている。第一次元を通ってイオンを運ぶのに使われるサンプル気体フローは、例えば第一次元検出器114の背後の排気であることができる。イオンが第二次元104で分離された後、分離されたイオンを第三次元106に持ち込むために蹴り出し電圧を印加することができる。連続的サンプル検出シナリオでは、シーケンスは繰り返される。正と負のイオンの両方を形成し得るケミカル混合物について、DPIE技術の様々な実施形態は、正と負のイオンの両方の50%より多くを第二次元に抽出することができる。
【0056】
様々な実施形態において、MDIMS装置は、分解能力を顕著に失うことなく各次元間でイオンを運搬することができる。図11を参照すると、様々な実施形態において、イオンが第一次元で分離された時、それらは薄板1110のように見えることができる。第一次元と垂直な方向にそれらを移動するために、マイクロ秒のレンジ内で適当な電極(典型的には、入口と反対側の電極、入口自身、またはその両方)上の電圧が変えられる。これらの蹴り出しの瞬間の間の電場は、一時的に高いおよび低い電場ゾーンを作り出すように操ることができる。高い電場ゾーンの薄板1110は、第二次元の低い電場ゾーンの薄線1120に圧縮することができる。
【0057】
本発明の一つの応用エリアは、麻薬および爆発物のスクリーニングなどのセキュリティへの応用においてしばしば要求されるような、ケミカルのトレース量の検出にある。実際にはそのようなタスクは種々の理由により行うことが困難であり得る。
【0058】
例えば、非常に汚染された環境においてトレース爆発物を検出することは、現行のIMSに基づくトレース検出システムにとって大いなるチャレンジを突きつける。汚染は偽の肯定的または偽の否定的な指標を引き起こすことができる。これらの問題を導くことができる商業的に利用可能なIMSシステムにおいて観察されるいくつかの共通する現象としては、
1. 偽の肯定を引き起こすことができる、対象とする爆発物として似たイオン移動度を有するケミカルからの爆発物検出ウィンドウにおける重複したまたは隣接したピーク;
2. 偽の肯定を引き起こすことができる、爆発物検出ウィンドウを通る定義されていないイオン移動度ピークのシフト;
3. 爆発物検出の偽の否定を引き起こすことができる、汚染物からの高いケミカル背景ノイズ;
がある。本発明のシステムおよび方法の様々な実施形態は、トレースケミカル検出におけるこれらの問題を克服することを容易にすることができる。
【0059】
上述した第一の現象(重複したまたは隣接したピーク)は、本発明の様々な実施形態に従うMDIMSを使って低減することができる。高分解能IMSの性能の例が図2に描かれている。図2は、TNTと4,6-dinitro-o-cresol(4,6 DNOC)のイオン移動度スペクトルを示す。化合物4,6-dinitro-o-cresol(4,6 DNOC)は、ジェット排気のために空港環境において一般に見つかる酸性霧の成分である。TNTと4,6 DNOCは、それぞれ1.59と1.54というとてもよく似たイオン移動度を持つが、約60の分解能力によりそれらは分離され適正に同定されることが分かる。MDIMSシステムにおいて、上の例で示されたような二つの高分解能ドリフトチェンバーは、正と負の両方のイオンの2次元移動度プロファイルを同時に生成するのに使うことができる。2次元イオン移動度データは、爆発物検出により高い自信を提供する。現実的な動作アプローチとして、第一次元移動度スペクトルはより高いスループットのスクリーニングのために取得することができ、第一のドリフトチェンバーから爆発物検出ウィンドウにピークが検出された時、それらはそれから確認のために第二のドリフトチェンバーに持ち込まれる。
【0060】
上述した第二の現象(偽の肯定を引き起こす、爆発物検出ウィンドウを通る定義されていないイオン移動度ピークのシフト)は、ドリフト領域内のイオンと中性分子のクラスターによって引き起こされ得る。従来のIMSでは、この効果を低減するために向流ドリフトフローデザインが使われていたが、従来のIMSデザインの空間的限定のために、中性反応性分子がドリフト領域から完全には除去されない。本発明によるMDIMSの一動作方法では、実質的にイオン化されていないサンプルがドリフトチェンバーに導入されないようにドリフトフローが設定される。
【0061】
第三の現象(爆発物検出において偽の否定を引き起こす、汚染物からの高いケミカル背景ノイズ)は、現行のIMSに基づく検出システムの別の基本的な問題を表している。これはイオン化源の電荷についての競争によって引き起こされ得るもので、例えば、干渉物はサンプルのイオン化効率を低減できるので、従って検出感度を低減できる。現行のIMSに基づくトレース検出システムでは、爆発物検出ウィンドウの閾値はこのマスキング効果を考慮して設定される。本発明のMDIMSシステムおよび動作方法の様々な実施形態のより高い分解能では、警告閾値はより低いレベルに設定することができる。
【0062】
本発明の様々な実施形態において、秒未満の時間フレームにおいて異なる電荷親和性を有するケミカル種の前段分離を達成するために、MDIMSの動作のCFDIモードが使われる。従って、取得された2−Dイオン移動度プロファイルにおいて、爆発物とは異なる電荷親和性を持った干渉物/マスキング剤はプロファイル中の異なる場所に位置し、そのようなことが差別化と同定のプロセスの一部となる。
【0063】
MDIMS装置と動作方法の更なる詳細
図4を参照すると、二重第二イオン移動度次元を有する多次元イオン移動度分光計の様々な実施形態の概略図が提供されている。図4AはMDIMSの前方断面図、図4BはMDIMSの側方断面図である。
【0064】
様々な実施形態において、MDIMSは、例えば(a)反応物イオンと、反応物イオンがサンプルと反応してサンプル同定のために検出される作成物イオンを形成する反応領域を生成する、(b)検出のためのサンプルイオンを生成する、(c)またはその両方の、イオン化源401からなる。反応領域は、例えばイオンを第一次元ドリフト領域418(第一のドリフト管)に導くための実質的に連続した電場を生成するイオンガイド402によって防護することができる。
【0065】
複数ステップ分離(Multiple Step Separation:MSS)モード
MSSモード動作においては、イオンゲート403を開くことによってイオンのパルスが生成されてそれらを第一次元ドリフト領域418に導入し、イオンは第一のドリフト管418内の実質的に連続した電気的ドリフト場に誘導されてそれらの移動度に基づいて分離される。一実施形態では、電場は一連のイオンガイド404によって生成される。各イオンガイドは一つ以上の電極からなることができ、第一のドリフト管に跨ってポテンシャル差を確立するために各電極に異なる電圧を印加することができる。例えば、図4は各第一次元イオンガイドのために使われる四つの電極を示す。
【0066】
MSSモード動作の様々な実施形態において、イオンの第一のグループが第一次元検出器マトリクス405に到達すると、第一次元ドリフト場に垂直な高電場を生成するために蹴り出し電圧を印加することができ、よって第一次元で分離されたイオンは第二次元ドリフト領域に移動される。第二次元の電場を定義するのを助けるために電場分離器スクリーン406を使うことができる。第二の場に導入されたイオンは第二次元ドリフト領域420に跨ってドリフトし続けて、更なる分離を達成することができる。第二次元420のイオンガイド407は、例えばもし分離の第三次元が望ましければ、第一次元のイオンガイド404と同様に配置することができる。もし第三次元が望ましければ、イオンガイドとして完全に正方形の電極を使うことができる。第二次元で分離されたイオンは検出器408で検出することができる。検出器は、分光計に要求される特別な分解能に従った複数の検出器または単一の検出器からなることができる。
【0067】
様々な実施形態において、イオンが第一次元から第二次元に導入された際に、粒子蹴り出し動作を行うことができる。もしイオンの一部だけが蹴り出されたならば、蹴り出しの後に第一次元での移動度測定を再開することができる。よって、イオン移動度スペクトルは第一次元においても独立に取得することができる。完全な蹴り出しは第二次元における感度を向上できるので、これらの動作モードの間を交互することは有益である。加えて、例えば伸長された期間「蹴り出し」電場を印加することによってドリフトチェンバー内の全てのイオンを除去する、クリーンアップ動作を検出サイクルの間に追加することもできる。
【0068】
分光計の低次元動作は、イオン化源からのイオン種の迅速な測量を生成するための高速スクリーニング方法として用いることができる。MSSモードの通常の動作と組み合わせて、イオン種の測量は上位次元動作を誘導するための指標として使うことができる。測量モード動作は、関心のあるイオンを選択的に蹴り出したり、高次元スペクトルを簡素化したり、総合分析を節約したりするために使うこともできる。
【0069】
例えば、異なるドリフト気体を各次元で用いても良く、または異なるドリフト気体温度を各次元で用いても良いように、異なるドリフト/分離条件を各次元について独立に確立することができる。
【0070】
多数の多次元正イオン移動度データを収集し、それに多数の多次元負イオン移動度データが続くような形でMDIMSを動作させることができる。例えば分光計内の電場の極性を交互にすることによってシーケンスを実現することができる。
【0071】
図5は、図4A−4Bと実質的に同様なMDIMS内部の電場配置のシミュレーション結果を示す。図5AはMDIMS内に二つの垂直な電場を配置することができることを示す。図5Bおよび5Cにおいて、二つの半正方形のイオンガイドが例としてシミュレーションされている。図5Bは、第一次元ドリフト領域の側面図を示す。この領域ではイオンが下にドリフトしているが、両方の半正方形電極は同じ電圧に設定され、よってドリフト場に垂直な電場は実質的にない。図5Cを参照すると、第一次元のイオンが第二次元に蹴り出された際に、半正方形イオンガイドに異なる電圧が印加されて蹴り出し場506を作り出す、この特定のシミュレーションでは、上の半正方形イオンガイドは下の半正方形イオンガイドよりも1000V低いポテンシャルにある。蹴り出し動作は、例えばマイクロ秒から数秒のレンジで達成することができる。
【0072】
MSSモード動作中は、ドリフト気体フローの方向は、イオン移動に対向するまたは跨るように設定することができる。例えば、様々な実施形態において、気体ポート413を第二次元ドリフト気体入口として、ポート412を第一次元ドリフト気体入口として、ポート409をサンプルフロー入口として、ポート410を浄化気体出口として使用することができる。その他のポートは、好ましくはそれらが使用されていない時は栓をされるか除去される。各ポートのサイズは分光計内部のフローパターンを達成するために要求されるフローに依存して選択することができ、好ましくはドリフトフローが全ドリフト領域をスウィ−プし余分なサンプル分子やその他のあらゆる反応性中性分子を除去する。
【0073】
様々な実施形態において、ドリフト気体は下位次元に実質的に平行な方向に高位次元へ供給することができる。例えば、ポート415を第二次元ドリフト気体入口として、ポート414を第二次元ドリフト気体出口として、ポート412を第一次元ドリフト気体入口として、ポート410を第一次元ドリフト気体出口として使用することができる。線形フロー条件と平行フローパターンの下で、例えば、次元インターフェース近傍のドリフト気体の制限された混合が期待される。
【0074】
ストレージおよびバースト分析(Storage and Burst Analysis:SBA)モード
SBAモード動作において、サンプルはポート409を通して分光計に提供される。イオン化源401を通して、イオン化されたサンプルは気体フローによって第一次元ドリフト領域418に持ち込まれる。単一極性のイオンのみに関心がある場合には、フローはポート412またはポート411から浄化することができる。SBA動作モードの様々な実施形態において、第一次元ドリフト管は、例えば装置のデューティーサイクルを増加するためのイオンストレージ装置として使用することができる。
【0075】
正と負のイオンの両方に関心がある様々な実施形態において、二重極性イオン抽出(Dual Polarity Ion Extraction:DPIE)方法を使うことができる。図5Aおよび5BはイオンストレージおよびDPIE動作中に生成される電場を示す。例えば、図5Cは第一次元の三つの壁(左、下、右)が1000Vにあり、ゲートグリッドはそれぞれ0Vと2000Vに設定されることを示す。図5Bに示された電場分布は、第一次元502を通してイオンを運ぶための力として気体フローが使われ、第一領域418、502内の電場は蹴り出しパルスが生成されるまでは実質的に0に設定されることを描いている。反応領域416と第一ドリフト領域418の両方の電場が除去された時に、ポート412をサンプルフロー出口として使う場合には、サンプルイオンは気体フローによって第一次元に跨ってのみ運ばれる。様々な実施形態において、検出器405が十分なイオン電流レベルを検出した時に、第二次元420、504に向けた完全な蹴り出しが行われる。連続的サンプル源検出シナリオにおいては、シーケンスは繰り返される。
【0076】
選択的高次元イオン観察(Selective Higher Dimension Ion Monitoring)モード
様々な実施形態において、高次元検出器マトリクスの特定の電極においてイオン電流を選択的に観察することは、同じ検出器マトリクス内の他の電極上の関心のないイオンを排除することでシステムの選択性を向上することができる。イオン移動度プロファイルは、複数の電極からの信号と共にこの選択的観察方法を使って構築することができる。様々な実施形態において、高次元検出器マトリクスの特定の電極においてイオン電流を選択的に観察することは、同じ検出器マトリクス内の他の電極上の関心のないイオンを排除することでシステムの選択性を向上することができる。
【0077】
MDIMSの様々な実施形態において、高次元ドリフトチェンバーは、減少された長さを有しても良い。それらの実施形態において、装置は単純化される。イオン移動度に基づく分離は低次元で達成され、高次元での更なる分離と共に高次元検出器マトリクス上で検出される。例えば、イオンは第一および第二次元で分離でき、それからそれらは第三次元での更なる分離なしに第三次元検出器マトリクス上で検出される。この場合には、システムの性能を最大化するような最適なイオン移動度分解能とイオン総数を持つ高次元にイオンを移動させるために「蹴り出し」タイミングが制御される。
【0078】
連続的第一次元イオン化(Continuous First Dimension Ionization:CFDI)モード
CFDIモード動作の様々な実施形態において、サンプルは気体のパルスとしてポート412から分光計に導入される。サンプル気体パルスは、例えば、表面からケミカルを熱脱離することによって、色層分析分離の溶離剤として、サンプルを短期間分光計にポンプで入れることによって、パルス化されたバルブを通した導入、等の幅広いやり方で形成することができる。多くの実施形態において、フローは線形フロー条件の下にあり、気体相サンプルの「プラグ」は気体フローによってポート412からイオン化源401の方に向けられている。(好ましくは高密度の)反応物イオンのパルスがイオン化源401によって生成され、サンプル「プラグ」に向けてドリフトするように電気的ドリフト場によって誘導される。反応物イオンのパルスとサンプルが第一次元418内でインターセプトすると、サンプルの一部がイオン化される。サンプルが同一取得周期内で複数の反応物イオンパルスと遭遇すると、サンプル「プラグ」内のケミカルがイオン化される。異なる性質(例えば、電荷親和性)のケミカルはよって分離されて、検出器マトリクス408上の異なる位置で検出されることができる。この気体相滴定方法は、異なる性質を持ったケミカルが共存するイオン混合物のイオン化効率を向上することができる。この手段により、従来のIMSでは検出できないケミカルを検出することができる。
【0079】
図3A−Dを参照すると、CFDIプロセスの概略的表現がドリフト領域302に描かれている。気体相サンプル304は、第一の時間においてドリフト管302にパルス化され、ドリフト管の少なくとも一部に沿って第一の方向305に搬送される。ここで第一の方向はドリフト管内のキャリア気体フローの方向と実質的に平行である。キャリア気体フローと気体相サンプルの速度は0cm/秒に等しいかそれよりも大きい。反応物イオン306の複数のパルスも、第一の時間に対する所定の時間においてドリフト管302に導入され、電気的ドリフト場によってドリフト軸308に沿った第二の方向307に搬送される。ここで第二の方向307はドリフト管内のキャリア気体フロー305の方向と実質的に反平行である。気体サンプル304は、(反応物イオンの複数のパルスの一つ以上からなる)反応物イオンの第一のグループ310と相互作用して気体相サンプルパルス304内のケミカル種をイオン化し、第一のイオン化されたケミカル種314を作り出す。様々な実施形態において、(例えば、電極の組318,320,322に蹴り出し電圧を印加することによって)蹴り出し場が印加されてイオン314をドリフト管の外へかつ別のドリフト次元の中への方向316に移動させる。様々な実施形態において、プロセスは、気体サンプル304と相互作用して更なるイオンケミカル種を作り出すイオンの他のグループ311,312について繰り返される。
【0080】
様々な実施形態において、CFDIは、図4に示された反応領域416においても行うことができる。反応物イオン306の複数のパルスがパルス化するイオンゲート419によって生成されると共に、パルス化されたサンプルが気体ポート410から分光計に導入される。この実装において、イオンゲート403は除去されるかまたは開いたままとされる。反応領域416で生成されたイオンのパルスは、第一次元ドリフト領域417で分離され、もしそれが望ましければ、それから分離されたイオンは更なるイオン移動度分析のために高次元ドリフト領域418に抽出される。様々な実施形態において、CFDI方法は、差分移動度分光計や、イオン移動度分光計や、質量分析器のような分光計と直接インターフェースされた独立したイオン化源として、ドリフト電場の方向とインラインにまたは垂直に使用することができる。CFDIが単一のIMSのために使われる実施形態では、グリッド403の代わりにシャッターグリッド419が使われる。イオン化されたケミカル種は、反応領域416での形成の後、ドリフト領域417をドリフトし続ける。同様に、差分イオン移動度分光計や質量分析器のような他の分光計へのインターフェースも、それらの計器のサンプル入口を反応領域の直後に置くことによって実現することができる。
【0081】
CFDIモードは、異なる化学的性質を持った反応物イオンを使って行うことができる。例えば、初期の反応物イオンと反応する種々の化学試薬を使ってイオンケミストリーを変形することは、異なる化学的性質を持った反応物イオンを生成することができる。これらのイオン種は、例えば分光計に導入されたサンプルをイオン化するのに使うことができる。同様の効果は、例えば異なるイオン種または荷電粒子/ドロップレットを生成することができるイオン化源を使用することによって達成することができる。様々な実施形態において、イオン化ケミストリーを変えることは、サンプル中の対象とするケミカルの実質的に選択的なイオン化を達成するのに使うことができる。例えば、異なる化学的性質を持ったイオンパルスの列は、サンプル中の両立するイオン化性質を持ったケミカルをイオン化するのに使うことができる。
【0082】
選択的イオン導入(Selective Ion Introduction:SII)およびIMSモード
選択的イオン導入(SII)モード動作において、選択されたイオンの一つ以上のグループが高次元に蹴り出される。選択的な蹴り出しは、関心のあるイオンが与えられたタイミングで移動している領域に所定の時間において蹴り出し電圧を印加することによって実現することがでできる。様々な実施形態において、蹴り出しパルスは、下位次元の選択された領域に印加される必要は必ずしもないが、下位次元の長さの一部に渡ってのみ高次元ドリフトチェンバーは下位次元をインターセプトしないので、よって例えばイオンの小さいグループだけが第二次元に蹴り出されることを許容するように選択された位置を設計することができる。MSSモードに対して記載したのと同様の結果は、蹴り出しタイミングを制御し、複数の取得サイクルを行うことによって達成することができる。
【0083】
様々な実施形態において、SIIモードは狭いドリフト時間レンジ内のイオンを分解するのに有効であり得る。例えば、第一のドリフト次元がスクリーンスキャンとして使われ、関心のある化合物(例えば、TNT)が潜在的に有ると検出されたとする。検出ウィンドウ(時間ウィンドウ)で応答したイオンが関心のある化合物であることを更に確認するには、更なる分離のために検出ウィンドウ内のピークを第二次元に選択的に蹴り出すことができる。第二次元から、選択されたウィンドウに落ちたイオンを第三次元に蹴り出すことができる。もしそれが望ましければ、このプロセスはイオン電流を使い尽すまで繰り返すことができる。
【0084】
複数ドリフトチェンバー条件
様々な方法と動作モードにおいて、各ドリフトチェンバーは独立しおよび/または異なるドリフト条件の下で動作させられる。これらの条件は、異なる種類のドリフト気体、異なる化学修飾剤を持ったドリフト気体、異なる温度、異なる圧力、異なる電場強度、異なるフローレート、ドリフト媒体の異なる相、方向、等を含むが、これらに限られない。様々な実施形態において、条件を変更する目的は、それらに固有の化学的および/または物理的性質、それらがどのようにドリフト条件と共に変化することができるか、よってそれらがどのように分光計内の移動度変化をもたらすことができるか、を使ったイオン種の分離を達成することである。例えば、異なるドリフト気体を使ったイオン移動度測定は、異なる性質を持ったイオンがサンプル分光計内で異なるドリフト時間を持つことを実証している(例えば、(1) William F. Siems, Ching Wu, Edward E. Tarver, and Herbert H. Hill, Jr., P. R. Larsen and D. G. McMinn, “Measuring the Resolving Power of Ion Mobility Spectrometers", Analytical Chemistry, 66, 1994, 4195-4201; (2) Ching Wu, William F. Siems, G. Reid Asbury and Herbert H. Hill, Jr., "Electrospray Ionization High Resolution Ion Mobility Spectrometry/Mass Spectrometry", Analytical Chemistry, 70, 1998, 4929-4938; (3) Ching Wu, Wes E. Steiner, Pete S. Tornatore, Laura M. Matz, William F. Siems, Daivd A. Atkinson and Herbert H. Hill, Jr., "Construction and Characterization of a High-Flow, High-Resolution Ion Mobility Spectrometer for Detection of Explosives after Personnel Portal Sampling” Talanta, 57, 2002, 123-134; (4) G. Reid Asbury and Herbert H. Hill, Jr., “Using Different Drift Gases to Change Separation Factor (α) in Ion Mobility Spectrometry”, Analytical Chemistry, 72, 2000, 580-584を参照;これら全ての内容全体はここに引用によって組み込まれる)。
【0085】
MDIMSシステムの様々な実施形態において、第二次元領域のような高次元ドリフト領域は、例えば気体または液体のようなドリフト媒体の異なる相で動作させられることができる。液体相ドリフトセルは、従来のドリフト管デザインの代わりに二つの平行したプレートまたはグリッドによって構築することができる。液体相ドリフトセルは、層に跨って電場を有する液体の薄層であり得る。高次元ドリフトセルは、第一次元ドリフト軸と実質的に平行または実質的に垂直なドリフト軸を有する。高次元ドリフトセルは、低次元ドリフト軸と実質的に垂直な複数の区画(チャネル)を有する。高次元ドリフトセルは、低次元ドリフト管で分離されたサンプルを選択的に収集するために使うことができる。高次元ドリフトセルは、電気泳動、色層分析、UV吸収およびその他の分光装置を含む、但しそれらに限られない、他の分離および検出装置と更にインターフェースすることができる。
【0086】
本発明のMDIMSシステムの様々な実施形態において、低次元(例えば、第一次元)におけるドリフト気体で十分に分離されなかった高次元(例えば、第二次元)におけるイオン種を分離するために、異なるドリフト気体が異なるドリフト管および/またはMDIMSの次元において使われる。ドリフト気体は二つ以上の気体の混合物であり得ることを理解されたい。同様の分離は、他のドリフトチェンバー条件を変動させることによっても成し得る。
【0087】
MDIMS構成の更なる例
図7は、複数の高次元ドリフトチェンバー704a、704bが実質的に平行に配置され、複数のイオン化源706a、706bが例えば正と負の両方の極性のイオンを生成するために使われるMDIMSの様々な実施形態を示す。例えば、CFDIモードの動作を使って、サンプルは第一次元の中心にあるポート708bから分光計に導入することができる。異なる極性の二つのイオン化源を、反応物イオンを第一次元の中心に向けて移動させる電場によって第一次元チェンバー702a、702bに誘導される高密度反応物イオンを生成するために使うことができる。ここで、エレクトロスプレーイオン化源が使われ、例えば二次エレクトロスプレーイオン化原理を使ってサンプルをイオン化するために荷電ドロップレットを使うことができる。イオン化されたケミカルは、移動度測定のために高次元704a、704bに持ち込まれる。例えば、この実施形態は、例えば上述したような異なるイオン化モードおよび/またはドリフト条件を使った、異なるイオン化源を使って同一のサンプルを分析するために、使うことができる。例えば、装置は、より多くのイオン化方法を利用するように二つ以上の第一次元反応チェンバーと高次元ドリフトチェンバーの組み合わせを有することができる。高次元は、第一次元からイオンを抽出するように単一または二重極性モード(例えば、DPIE)で動作させられることができる。
【0088】
図8は、低次元802から反対方向に伸びた高次元804a、804bを持つMDIMSの様々な実施形態の概略図である。第二次元は、前述した通り単一または二重極性モードで動作させられることができる。第一次元は、例えばイオンストレージのためのイオンフローセルとして動作させられることができる。この構成は、例えばそれがSBAモードの下で動作させられている時に、異なる極性を持ったイオンが反対側の高次元ドリフトチェンバーに蹴り出されることができるように利用されることができる。高次元ドリフトチェンバーが二重モードチェンバーである様々な実施形態において、例えば二重モードドリフトチェンバーが異なるドリフト条件の下で動作させられることができる独立した分析のためにイオンを両方の二重モードチェンバーに配布するのに、DPIE方法を使うことができる。
【0089】
図9は、第二次元904a、904bのドリフト管の入口の間にイオン化源906とサンプル入口908を持ったMDIMSの様々な実施形態の概略図である。このイオン化源906に形成されたイオンは、例えば第一次元902a、902bの二つの異なるセクションに抽出することができる。各セクションは、正または負の極性モードで動作させられることができる。例えば、様々な実施形態において、MDIMSの第一次元の各セクションは第一次元ドリフトチェンバーとして使われる。第一次元の各セクションは、更なるイオン分離のためにそれ自身の高次元ドリフトチェンバーを有することができる。
【0090】
図10は、イオンの形態のまたは外部イオン化源からのケミカルをサンプリングするための本発明のMDIMSの様々な実施形態を描いている。そのような実施形態は、インターフェース1106を通して第一のドリフト管1104と流体通信する源1102を含む。イオンとここに記載された動作モードに働きかける本発明の方法は、そのような実施形態と共に使うことができる。この実施形態は、IMSシステムの内部のイオン化源と反応領域の必要性を排除する。イオン化されたケミカルは、電場によって(この例では、イオン化源1004とインターフェース1006は異なるポテンシャルに設定されている)か、気体フローによって(この例では、イオン種1008はサンプリングポンプ1009によってインターフェース1006に移動させられる)インターフェース1006に持ち込まれる。一旦サンプルイオン1008がインターフェース1006に移動させられると、それらはイオンゲート1003を通して第一ドリフト次元1002にパルス化される。それらは、第一のイオン検出器1012で検出されるか、その後第二次元ドリフト領域1010に蹴り出されて検出器1014、1005、1011で検出される。
【0091】
IMSnおよびハイフネ−ト(hyphenate)システム
図11Aと11Bは、IMSnと共にSIIモード動作を実現するために使うことができる様々な実施形態の概略例を示す。高次元の物理的サイズを減らし、蹴り出しパルスのタイミングを制御することによって、蹴り出し領域1112にドリフトするイオンの選択されたグループ1114を、それらが更に分離されることができる高次元ドリフトチェンバー1118に持ち込むことができる。同じプロセスは。異なるドリフトチェンバーでn番目の分離が行われるまで続けることができる。相互に接続されたドリフトチェンバーのジオメトリーは、2次元(図11B)または3次元(図11A)であることができ、よって高次の移動度分離を行うことができる回数は、必ずしも分光計に利用可能な物理的スペースによって制限されない。
【0092】
様々な実施形態において、図11AはSIIモード動作を説明する3次元MDIMSの概略を示す。気体相サンプルが、イオンゲート1103と1108の間で、第一次元ドリフト管の反応領域に導入された時、サンプルはイオン化源1102によって作り出された反応物イオンと共にCFDIまたは従来のイオン化方法によってイオン化される。反応物イオンと混合されたサンプルイオンは、第一のドリフト領域1104にパルス化される。イオンガイド1106によって生成された電場の誘導の下で、イオン混合物は第一次元で分離する。関心のあるイオン1114が蹴り出し領域1112にドリフトする所定のタイミングで、蹴り出し電圧を電極の組(スパイトされた(spited)イオンガイド1116とグリッド1130を含む)に印加してイオンを第二次元に抽出することができる。イオン1114が、蹴り出し領域1112と第二次元ドリフト領域1118の間のインターフェースに圧縮されると、複数の分離したイオン1120の細いパルスが第二次元ドリフト領域1118の始まりにおいて作り出される。イオンパルス1120は、イオンガイド1119で防護されたドリフト領域1118で分離される。更に分離されたイオン1124は、第二イオン蹴り出し領域1122から第一および第二次元と直交するドリフト方向1126(紙の内側に向いている)を有する第三ドリフトチェンバーに抽出される。抽出されたイオンは、第三次元またはそれより高いものにおいて上述したプロセスを繰り返す。
【0093】
様々な実施形態において、図11Bは2次元構造を持ったSIIモードで動作するMDIMSの概略を示す。図11Bは、第一次元ドリフト管によって単離された一つのピーク1114aが第二次元に抽出され、それから第二次元ドリフト管によって単離された一つのピークが第二次元と実質的に垂直で第一次元と実質的に反平行なドリフト方向を有する第三次元1132に抽出されることを描いている。この例では、全ての次元のドリフト軸は同一の平面上にある。
【0094】
例えば、様々な実施形態において、図11Aと11Bの構成は、質量分析器のような他の検出器にインターフェースすることができる。IMS−MSシステムは一般に、質量分析の前に移動度に基づく分離を達成するのに使われる。質量分析器へのインターフェースは検出器マトリクス、例えば1122または1136、の背後のイオンドリフト方向とインラインであることができる。図11Bは第二次元検出器マトリクス1138上の開口を通した、またはイオンをインターフェース1128bと1128cに押す蹴り出しパルスを使ったドリフト方向に垂直な、質量分析器1128aへのインターフェースを示す。後者の場合には、より高いイオン輸送効率が期待される。
【0095】
サンプリング装置
サンプルは、フローストリーム中のパルスとして、連続的に、またはそれらの組み合わせでMDIMSに導入することができる。パルス化されたサンプリング方法は、いくつかの動作モードで使うことができる。分光計の前の熱脱離チェンバーを使ってサンプルを提供することができる。例えば、綿棒からのサンプルについて、脱離チェンバーは綿棒を連続的に加熱し、それからMDIMSに高濃度ケミカル蒸気をポンプで入れる。分光計に入ることを許容されるサンプルの量を制御するのにバルブを使うことができる。上述した動作モード次第では、サンプルはイオン化源を持ったMDIMSに連続的に流れ込むことを許容されても良い。脱離チェンバーは、動作のサンプル前段濃縮ステップのために吸収体物質を含んでいることができる。例えば、低濃度または複雑な混合物のサンプルがチェンバーに導入されると、吸収体は関心のある化合物を選択的にトラップして、それからそれらをMDIMSに脱離する。
【0096】
サンプル綿棒
サンプリング効率を向上するには、数多くのやり方がある。様々な実施形態において、完全なサンプル収集を容易にするためにドライな綿棒の代わりに「ウェットな」サンプル綿棒を使うことができる。ウェットな綿棒は綿棒と表面の間の接触を増加することで収集効率を援助することができ、サンプルのより良い物理的ピックアップを提供する。適当な溶剤混合物を選択することによって、対象とする爆発物も綿棒に溶解することができ、よってより高いサンプリング効率を達成する。ウェットな綿棒の操作を容易にするために、マッチするサンプル綿棒と脱離器のデザインを使うことができる。
【0097】
綿棒は、好ましくは指定された溶剤または使用される溶剤にための疎水性と親水性の表面のパターンによりデザインされる。このパターンは、例えば脱離器の内部のヒーターのパターンとマッチすることができる。実用的なサーチシナリオでは、サンプリング表面次第でドライおよびウェットなサンプル綿棒がしばしば使われる。ウェットな綿棒はより高い収集効率を持つので、それは例えばドライな綿棒からの警告を解消するための確認テストのために使うことができ、それは低レベルの爆発物粒子を収集する「完全な拭き取り動作」等において使うことができる。爆発物は綿棒に吸い込まれるか粘着することができるので、それはサンプルを証拠として保留するのにも使うことができる。
【0098】
空気サンプリング
様々な実施形態において、本発明のMDIMSシステムは、周囲の環境における蒸気の連続的なサンプリングと共に動作させられることができる。サンプル周波数は、例えば多量の爆発物やその他の安全性の心配の早期警告の目的を助けるように予め設定することができる。ニトログリセリン、TATP、あるいは爆発物タガント(Taggants)のような一般的な揮発性爆発物は、蒸気相から検出することができる。よって、様々な実施形態において、本発明のMDIMSシステムは「かぎつけ」のために使うことができる。
【0099】
サンプル濃縮
様々な実施形態において、サンプリング能力および/または脱離効率は、高ケミカル親和性化合物、ケミカル抵抗性表面、またはその両方のパターンを脱離チェンバーの内壁上に使用することによって高めることができる。高ケミカル親和性化合物で被覆された表面は、気体相に蒸気を前段濃縮し、および/またはウェットなサンプリングのために使われる溶剤のようなその他のケミカルの存在の中で対象化合物を選択的にトラップするのに使うことができる。脱離されたパーツのための加熱エレメントは、例えば高ケミカル親和性被覆が施されたエリアを加熱するように配置することができる。そのような選択的加熱アプローチは、例えば脱離のために使われる熱を減らし、よって検出システムの総パワー消費を減らすのに使うことができる。
【0100】
サンプルイオン化
本発明のMDIMSシステムは、一つ以上のイオン化源からなることができる。イオン化源は、反応物イオンを生成したり、対象とするケミカルを直接イオン化したり、またはその両方のために使うことができる。好適な源は、放射性イオン化、エレクトロスプレーイオン化、脱離エレクトロスプレーイオン化、表面イオン化、コロナ放電イオン化源を含むが、それらに限定されない。
【0101】
エレクトロスプレーイオン化は、無機爆発物検出のために好ましい源の一つである。ESI−MDIMSは、例えば塩化物ベースの爆発物とブラックパウダーを高い自信を持って検出するのに使うことができる。ウェットなサンプリング方式と共に、例えばエレクトロスプレーイオン化は収集されたサンプルを直接MDIMSにスプレーすることによってウェットなサンプルを処理するのに使うことができる。この方法の一つの実装は、エレクトロスプレー針とエレクトロスプレー電圧を印加することができる電極を有するサンプルホルダーにウェットなサンプルを入れるようにすることである。サンプルがホルダー内部に封印されると、直接または間接的にホルダー/吸い込んだサンプル綿棒に圧力が掛けられ、溶剤と溶解されたサンプルがエレクトロスプレー針に達して、エレクトロスプレーされて非常に荷電されたドロップレットを形成する。エレクトロスプレーサンプルイオンは、分析のためにMDIMSに誘導することができる。MDIMSのためのウェットなサンプリングと直接エレクトロスプレーイオン化の組み合わせは、例えば無機と有機の両方の爆発物およびその他の関心のあるケミカルについての検出能力を提供することができる。
【0102】
検出システム使用可能性の増加
向上されたシステム準備完了状態。既存のIMSに基づくトレース検出システムは、典型的には要求の高くない情況における空港動作環境においてはスループット要求を満たすことができるが、非常に汚染されたサンプルがシステムに導入された時にはサンプルスループットは制限される。システム内の汚染物の蓄積は、長い焼き出し時間および/または有機溶剤を使った複雑なクリーニング手順を要求し得る。システムと検出器のサンプル転送部分内部の冷たいスポットや活性化した表面のほかに、低分子重量汚染物と湿気をブロックするのに使われる(例えば、それぞれSmiths DetectionとGE Securityによって製造され、それらから入手可能なSabre 4000とVaporTracer計器の両方に見つけられるような)薄膜入口は、より高い分子重量汚染物を蓄積する最も一般的なパーツの一つである。この「メモリ効果」の主要な源を排除するために、本発明のMDIMSの様々な実施形態はパルス化された入口システムを使う。
【0103】
パルス化された入口の様々な実施形態において、検出器は、典型的には約20秒未満という、短い期間の間だけ外部世界に露出される。バルブは、サンプルがサンプリングチェンバー内の最も高い濃度に達した時だけ開く。チェンバーは蓄積されたケミカルを掃除するために周期的に瞬間加熱することができる。パルス化されたサンプル入口動作方式は、本発明のMDIMSシステムの様々な実施形態と両立し、ドリフトチェンバーに導入された湿気の総量を制御するのを助けることができる。湿度センサもシステムの一部となるようにしてシステム処理のための追加カリブレーション情報を提供することができる。
【0104】
従来のシステムにおける最も一般的なユーザエラーの一つはミスカリブレーションである。発明の好ましいシステムは、パワーがオンにされた時と周期的にオペレータの注意を要求することなしにシステムをカリブレートすることができる自己カリブレーション/自己診断アルゴリズムを供する。様々な実施形態において、カリブラント(calibrant)は好ましくは計器の寿命の間もつ。この特徴は更にシステムの準備完了状態を向上することができる。
【0105】
本発明の装置は、非常に携帯可能な計器として構築することができる。あらゆる分析装置のように、動作特徴の数とシステムの携帯可能性の間にはしばしばトレードオフがある。本発明のMDIMSデザインと動作方法の様々な実施形態において、総パワー消費と検出器サイズを減らすことができる。パワーの比較的大きい部分は、サンプル脱離と効果的掃除動作を含んだフロントエンドへの用途に割り当てることができる。例えば近代的PDAデザインなどの上の、低パワー消費コンピュータに基づくシステムが、好ましくは携帯型システムのエレメントとして使われる。携帯可能性と使用可能な特徴の間で選択することにバランスをとれると、本発明の様々な実施形態は、10パウンド未満で、8パウンド未満ですらあり得る手頃なサイズを持つMDIMS検出システムを提供する。
【0106】
MDIMSの様々な実施形態において、図12A−CはコンパクトなMDIMSの例の概略を示す。装置は、一つの第一次元チェンバー1202、二つの第二次元ドリフトチェャンバー1204a、1204b、二つの第三次元チェンバー1206a、1206bを含み、最大の次元が<10cmである、3次元で構成される。図12Cは、MDIMSのスケール通りの3次元図面である。構成はCFDIとDPIEの両方をSIIモードと共に実現するものである。CFDI動作では、反応物イオンはイオン源1210内で形成され、反応領域1208にパルス化されてパルス化されたサンプル1212を選択的にイオン化する。イオン化されたサンプルは第一次元ドリフトチェンバー1202内で分離され、それから高次元ドリフト領域1204と1206内で更に分離される。
【0107】
DPIE動作では、正と負の両方のイオンがイオン化源1210内で形成され、反応領域1208が電場の流出なしでキャリアフローによって第一次元1202に運び込まれる。正と負のイオンは、それぞれ第二次元ドリフトチェンバー1204aと1204bに抽出される。サンプルイオンは、ソフトウェア制御されている計器の用途に応じて第一次元1214、第二次元1216、または第三次元1218aと1218b内の検出器マトリクス上で検出される。高速スクリーニング動作のついては、イオンは高スループットのために低次元で検出される。最高の分解能のためには、イオンは第三次元検出器で測定される。構成の工業図面が図13Aと13Bに示されている。実用的なユニットは、サンプル入口1302、サンプル入口制御バルブ1304、イオン化源1306aと1306b、第一次元ドリフト領域1308を含む。ドリフトフローは、第二ドリフト領域1320a、1320bと第三ドリフト領域1318a、1318bに渡ってスウィ−プするように設計されている。ドリフト気体入口1310と1312において、ドリフトチェンバー全体に跨って平等なドリフトフローを保証するためにフロー分配システムが使われる。ドリフト気体はポート1314と1316については浄化(purge)である。
【0108】
図14Aと14Bは、図12と図13で説明された検出器に基づいた携帯型システムの工業図面を示す。携帯パッケージは、気体システム1406、エレクトロニクスおよびコンピュータ制御1404、ユーザインターフェースおよびディスプレイ1410、バッテリーパワー1408、MDIMS1402を含む。
【0109】
将来の改善の備えを容易にするために、モジュール化されたデザインアプローチが好ましくは本発明のMDIMSにおいて使われる。例えば、異なるイオン化源が異なる応用については望まれても良い。そのような源は、例えばコロナ放電、エレクトロスプレーイオン化、または脱離エレクトロスプレーイオン化であっても良い。モジュール的デザインの備えはイオン源の荷電を容易にすることができる。
【0110】
別の側面では、上述した一つ以上の方法の機能は、汎用プロセッサまたはコンピュータ上のコンピュータ読み取り可能な命令として実装されても良い。コンピュータは、分離した形態や着脱可能な形態であっても良く、またはMDIMSシステムに統合されていても良い。コンピュータ読み取り可能な命令は、例えばFORTRAN,PASCAL,C,C++またはBASICのような数々のハイレベル言語のいずれの一つによって書かれていても良い。更に、コンピュータ読み取り可能な命令はscript、macro、またはEXCELやVISUAL BASICのような商業的に利用可能なソフトウェアに埋め込まれた機能によって書かれていてもよい。加えて、コンピュータ読み取り可能な命令は、コンピュータ上に内存するマイクロプロセッサに向けたアッセンブリー言語によって実装することができる。例えば、コンピュータ読み取り可能な命令は、もしそれがIBMのPCまたはPCクローン上で走るように構成されていれば、Intel 80x86アッセンブリー言語によって実装することができる。一実施形態では、コンピュータ読み取り可能な命令は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、またはCD−ROM(あるいはその他のあらゆるタイプのデータ格納媒体)のようなコンピュータ読み取り可能なプログラム媒体を含む、但しそれらに限定されない、製造品上に埋め込まれることができる。
【0111】
特許、特許出願、記事、書籍、論文、ウェブページを含む、但しそれらに限定されない、この出願で引用された全ての文献や同様の資料は、そのような文献や同様の資料のフォーマットに拘わらず、それらの全体が明示的に引用によって組み込まれる。組み込まれた文献や同様の資料の一つ以上が、定義された用語、用語の用法、記載された技術等を含む、但しそれらに限られないこの出願と、異なっていたり矛盾していたりする場合には、この出願が統制する。
【0112】
ここで用いられたセクションの見出しは、組織化の目的だけのためであり、記載された主題をいかなるやり方でも制限しているものとは解釈されるべきではない。
【0113】
請求項は、そのように表明されない限り、記載された順序や要素に限定されているように読まれるべきではない。本発明は様々な実施形態と例との関連で記載されたが、本発明がそのような実施形態や例に限定されることは意図されていない。反対に、当業者には正しく認識されるであろうように、本発明は様々な変更、変形、同等物を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1A、1Bは、本発明の3次元の多次元イオン移動度分光計(MDIMS)装置の一実施形態の断面図を概略的に示す。図1Cは、第一から第二次元にイオンを「蹴り出す」間の、IMSの第一および第二次元内のシミュレートされた電位線を示す。第二次元は、例えば単一および/または二重極性モード動作に使用することができる。
【図2】図2は、ジェット排気による空港環境において共通して見つけられる酸化霧の成分である、4,6-dinitro-o-cresol(4,6 DNOC)からのTNTの分解能を示すイオン移動度スペクトルである。スペクトルは、本発明による構成のMDIMSで取得された。
【図3】図3は、CFDIプロセスの様々な概念を概略的に説明する。
【図4】図4A、4Bは、2つの垂直な電場領域を有する本発明の多次元イオン移動度分光計の様々な実施形態の概略図であって、図4Aは前方断面図を描写し、図4BはMDIMSの側方断面図を描写する。
【図5】図5A〜5Cは、図4A〜4BのMDIMS内の電場分布のシミュレーションを示す。図5Aは、両次元の第一および第二のドリフト領域内のドリフト電場を描写する。図5Bは、第一次元内の移動度測定中の第一次元電場の側方断面図である。図5Cは、「蹴り出し」電圧が印加されてイオンを第二次元に持っていく時の第一次元電場分布の側方断面図を描写する。
【図6】図6Aは、SDSIMSの様々な実施形態の概略図である。様々な実施形態において、第一次元内の正と負のイオンは第二次元の2つの分離ドリフト領域に抽出することができ、正と負のイオンはよって実質的に同時に測定することができる。図6B、6Cは、第二次元内の電場分布のシミュレーション結果である。図6Bは、「蹴り出し」パルスの印加前および/または後の電場を描写する。図6Cは、「蹴り出し」パルス印加中の場を描写する。
【図7】図7は、平行な位置に複数の第二次元と複数のイオン化源を持ったSDSIMSの様々な実施形態の概略図である。
【図8】図8は、反対の位置に複数の次元を持ったSDSIMSの様々な実施形態の概略図である。
【図9】図9は、例えば異なる極性と共に使用することができる、単一のサンプル源と複数の第一次元チェンバーを持ったSDSIMSの様々な実施形態の概略図である。
【図10】図10は、イオンの形態のおよび/または外部イオン化源からのサンプリングケミカルのためのMDIMSの様々な実施形態の概略図である。
【図11】図11A、11Bは、例えばSIIおよびMS実装に便利なMDIMSの様々な実施形態の概略図である。
【図12】図12A〜12Cは、本発明の様々な実施形態による携帯型3次元計器のための一つのMDIMS構成チョイスの様々な実施形態を説明する。図12A、12Bは概略2次元断面図を提供し、図12Cは概略3次元断面図を提供する。
【図13】図13A、13Bは、図14A〜14DのMDIMSシステムの概略スケール図面である。
【図14】図14A〜14Dは、本発明の様々な実施形態を組み込んだ携帯型MDIMSの好ましい実施形態の概略スケール図である。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a 出力においてイオンを生成するイオン源と、
b イオン源の出力に結合された第一のドリフト管であって、第一のドリフト管は第一のドリフト軸を有するものと、
c 第一のドリフト管に結合された第二のドリフト管であって、第二のドリフト管は第二のドリフト軸を有するものと、
d 第二のドリフト管に結合された入力を有するイオン検出器と、
からなるイオン移動度分光測定システム。
【請求項2】
イオン源はCFDIイオン源からなる、請求項1の分光測定システム。
【請求項3】
第一のドリフト管に結合された入力を有するイオン検出器、から更になる請求項1の分光測定システム。
【請求項4】
イオン検出器はイオン移動度型分光計からなる、請求項1の分光測定システム。
【請求項5】
イオン検出器は質量分析器からなる、請求項1の分光測定システム。
【請求項6】
第二のドリフト管の第二のドリフト軸は、実質的に0と実質的に90度の間にある、第一のドリフト管の第一のドリフト軸に対する角度を有する、請求項1の分光測定システム。
【請求項7】
第二のドリフト管の第二のドリフト軸は、第一のドリフト管の第一のドリフト軸に実質的に垂直である、請求項6の分光測定システム。
【請求項8】
第二のドリフト管に結合された第三のドリフト管であって、第三のドリフト管は第三のドリフト軸を有するもの、から更になる請求項1の分光測定システム。
【請求項9】
第三のドリフト管の第三のドリフト軸は、第二のドリフト管の第二のドリフト軸に実質的に垂直である、請求項8の分光測定システム。
【請求項10】
第三のドリフト管の第三のドリフト軸は、第一のドリフト管の第一のドリフト軸と第二のドリフト管の第二のドリフト軸の両方に実質的に垂直である、請求項8の分光測定システム。
【請求項11】
第三のドリフト管に結合されたイオン検出器、から更になる請求項8の分光測定システム。
【請求項12】
イオン化されたケミカル種をサンプリングする電場およびフロー補助インターフェース、から更になる請求項1の分光測定システム。
【請求項13】
第一のドリフト管内の電場強度の気体数密度に対する比は実質的に一定である、請求項1の分光測定システム。
【請求項14】
イオン化されたケミカル種が第二のドリフト管をイオン検出器まで横切る間は、第二のドリフト管内の電場強度の気体数密度に対する比は実質的に一定である、請求項1の分光測定システム。
【請求項15】
a ケミカル種をイオン化し、
b イオン化されたケミカル種を、第一のドリフト管の第一のドリフト軸まで搬送し、
c イオン化されたケミカル種を、第一のドリフト管に結合された第二のドリフト管の第二のドリフト軸まで搬送し、
d 第二のドリフト管内のイオンを検出する、
ことからなるイオン移動度分光測定システムを動作させる方法。
【請求項16】
ケミカル種はCFDIでイオン化される、請求項15の方法。
【請求項17】
第二のドリフト管の第二のドリフト軸は、実質的に0と90度の間にある、第一のドリフト管の第一のドリフト軸に対する角度を有する、請求項15の方法。
【請求項18】
第二のドリフト管の第二のドリフト軸は、第一のドリフト管の第一のドリフト軸に実質的に垂直である、請求項17の方法。
【請求項19】
イオン化されたケミカル種を、第三のドリフト管の第三のドリフト軸まで搬送する、ことから更になる請求項15の方法。
【請求項20】
第三のドリフト管の第三のドリフト軸は、第二のドリフト管の第二のドリフト軸に実質的に垂直である、請求項15の方法。
【請求項21】
第三のドリフト管の第三のドリフト軸は、第一のドリフト管の第一のドリフト軸と第二のドリフト管の第二のドリフト軸の両方に実質的に垂直である、請求項15の方法。
【請求項22】
第三のドリフト管内のイオンを検出する、ことから更になる請求項15の方法。
【請求項23】
a 第一の時間において第一のドリフト管に気体相サンプルをパルス化し、
b 第一のドリフト管の少なくとも一部に沿った第一の方向に気体相サンプルパルスを搬送し、
c 第一の時間に対する所定の時間において第一のドリフト管に反応物イオンの複数のパルスを提供し、
d 第一のドリフト管の少なくとも一部に沿った第二の方向に反応物イオンのパルスを搬送する電場を生成し、ただし第二の方向は第一のドリフト管内のキャリア気体フローの方向に実質的に反平行であり、
e 反応物イオンの複数のパルスの一つ以上からなる反応物イオンのグループを気体相サンプルパルスと相互作用させて気体相サンプルパルス中のケミカル種をイオン化する、
ことからなるイオン移動度分光計を動作させる方法。
【請求項24】
第一の方向は第一のドリフト管内のキャリア気体フローの方向に実質的に平行である、請求項23の方法。
【請求項25】
全ての関心のあるケミカル種がイオン化されるまで、反応物イオンのグループを気体相サンプルパルスと相互作用させるステップを繰り返し、異なる電荷親和性のケミカル種は第一のドリフト管内で異なる時間においてイオン化される、ことから更になる請求項23の方法。
【請求項26】
パルス化された気体相サンプルは第一のドリフト管の反応領域に持ち込まれる、請求項23の方法。
【請求項27】
第一のドリフト管の少なくとも一部に渡って電場を一つ以上の所定の抽出時間において生成することによって、第一のドリフト管内のイオン化されたケミカル種の少なくとも一部を第二のドリフト管に抽出し、第二のドリフト管は第一のドリフト管のドリフト軸に実質的に垂直なドリフト軸を有する、ことから更になる請求項23の方法。
【請求項28】
第二のドリフト管に抽出されたイオン化されたケミカル種はイオン検出器に向けられており、第二のドリフト管の条件下でのそれらの移動度に少なくとも基づいたイオン検出器でのそれらの到着時間によって特徴付けられる、請求項23の方法。
【請求項29】
キャリア気体の種類、キャリア気体密度、キャリア気体フローレート、キャリア気体圧力、ドリフト媒体の相、電場強度、および温度を含んだ第二のドリフト管内のドリフト管条件の少なくとも一つは、第一のドリフト管内の第二のドリフト管内のドリフト管条件と異なる、請求項23の方法。
【請求項30】
a 第一のドリフト管にサンプルを導入し、
b 少なくともいくつかのサンプルをイオン化して、イオンケミカル種を形成し、
c イオンケミカル種をドリフト条件の第一の組の下で第一のドリフト気体と相互作用させることによって、イオンケミカル種の少なくともいくつかを第一のドリフト軸に沿って分離し、
d 第二のドリフト管に直近の電場を生成してイオンケミカル種を第二のドリフト管に抽出し、
e イオンケミカル種をドリフト条件の第二の組の下で第二のドリフト気体と相互作用させることによって、イオンケミカル種の少なくともいくつかを第二のドリフト軸に沿って分離し、
f 分離されたイオンケミカル種の少なくともいくつかをイオン検出器で検出する、
ことからなるイオン移動度分光測定の方法。
【請求項31】
イオンケミカル種の少なくともいくつかを分離することは、イオンケミカル種を時間によって分離することからなる、請求項30の方法。
【請求項32】
イオンケミカル種の少なくともいくつかを分離することは、イオンケミカル種を空間的に分離することからなる、請求項30の方法。
【請求項33】
イオンケミカル種を導入することは、イオンケミカル種を所定の時間において導入することからなる、請求項30の方法。
【請求項34】
所定の時間は、イオン化されたケミカル種が実質的に反応物イオンのないものとなるように選択されている、請求項33の方法。
【請求項35】
条件の第二の組は条件の第一の組と同一である、請求項30の方法。
【請求項36】
条件の第一の組と第二の組の少なくとも一つは、電場の向き、電場の強度、ドリフト気体の組成、ドリフト気体の相、ドリフト気体の温度、ドリフト気体の圧力、ドリフト気体のフローレート、および電場の方向に対するドリフト気体のフロー方向、の少なくとも一つからなる、請求項30の方法。
【請求項37】
分離されたイオンケミカル種の少なくともいくつかをイオン検出器で検出する前に、イオンケミカル種をドリフト条件の第三の組の下で第三のドリフト気体と相互作用させることによって、イオンケミカル種の少なくともいくつかを第二のドリフト軸に沿って空間的に分離する、ことから更になる請求項30の方法。
【請求項38】
第一のドリフト管内の高速背景イオンを検出する、ことから更になる請求項30の方法。
【請求項39】
第二のドリフト管に直近の電場を生成するタイミングを高速背景イオンの検出から制御する、ことから更になる請求項38の方法。
【請求項40】
第一と第二のドリフト管内のドリフト時間を測定し、測定から多次元イオン移動度プロファイルを構築してケミカル種を同定する、ことから更になる請求項30の方法。
【請求項41】
分離されたイオンケミカル種の少なくともいくつかをイオン検出器で検出することは、特定のイオンを選択的に検出することからなる、請求項30の方法。
【請求項42】
第一次元のドリフト管内に大量のサンプルイオンを蓄積し、それからそれらを第二のドリフト管内に蹴り出すこと、から更になる請求項30の方法。
【請求項43】
第一のドリフト気体フローの方向は第一のドリフト軸の方向に実質的に平行である、請求項30の方法。
【請求項44】
検出されたイオンケミカル種を、ドリフト条件の第二の組の下でのそれらの移動度に少なくとも基づいたそれらの検出到着時間によって特徴付ける、ことから更になる請求項30の方法。
【請求項45】
a 第一のドリフト軸を有する第一のドリフト管と、
b 第一のドリフト軸と実質的に垂直な第二のドリフト軸と、第一のドリフト管に結合された入口を有する第二のドリフト管と、
c 第二のドリフト軸に実質的に平行で第一のドリフト軸に実質的に垂直な第三のドリフト軸を有し、第一のドリフト管に結合された入口を有する第三のドリフト管と、
d 第二のドリフト管の入口の直近に位置する電極と、
e 第三のドリフト管の入口の直近に位置する電極と、
からなるイオン移動度分光計システム。
【請求項46】
第二のドリフト管と第三のドリフト管は、第一のドリフト管を跨いで実質的に互いに反対側に配置されている、請求項45の分光計システム。
【請求項47】
第二のドリフト管と第三のドリフト管は、実質的に横に並べて配置されている、請求項45の分光計システム。
【請求項48】
第二のドリフト管の入口の反対側に配置されている電極が第三のドリフト管の入口からなり、第三のドリフト管の入口の反対側に配置されている電極が第二のドリフト管の入口からなる、請求項45の分光計システム。
【請求項49】
a 第二のドリフト管に結合された入口を有し、第二のドリフト軸と実質的に垂直な第四のドリフト軸を有する第四のドリフト管と、
b 第三のドリフト管に結合された入口を有し、第三のドリフト軸と実質的に垂直な第五のドリフト軸を有する第五のドリフト管と、
から更になる請求項45の分光計システム。
【請求項50】
第四のドリフト軸と第五のドリフト軸は両方第一のドリフト軸と実質的に垂直である、請求項45の分光計システム。
【請求項51】
第一のドリフト管の第一端に結合された出力を有するイオン源と、第一のドリフト管の一端に結合された入力を有するイオン検出器と、から更になる請求項45の分光計システム。
【請求項52】
第一のドリフト管の第一端に結合された第一のイオン源と、第一のドリフト管の一端に結合された第二のイオン源と、から更になる請求項45の分光計システム。
【請求項53】
第二のドリフト管の入口と第三のドリフト管の入口の間に位置するイオン源であってイオン源は第一のドリフト管に結合されているものと、第一のドリフト管の第一端に位置する第一のイオン検出器と、から更になる請求項45の分光計システム。
【請求項54】
第一端と反対側の第一のドリフト管の一端に位置する第二のイオン検出器、から更になる請求項45の分光計システム。
【請求項55】
a 正イオンケミカル種と負イオンケミカル種からなる気体サンプルを第一のドリフト管に提供し、
b イオンケミカル種を第一のドリフト管のドリフト領域にキャリア気体フローで搬送し、
c 第二と第三のドリフト管の入口の直近に電場を印加して、正イオンケミカル種の少なくとも一部を第二のドリフト管に抽出し、負イオンケミカル種の少なくとも一部を第三のドリフト管に抽出し、
d 第二のドリフト管内の第二のキャリア気体との衝突によって正イオンケミカル種の一つ以上を第二のドリフト軸に沿って空間的に分離し、分離された正イオンケミカル種の少なくとも一部をイオン検出器で検出し、
e 第三のドリフト管内の第三のキャリア気体との衝突によって負イオンケミカル種の一つ以上を第三のドリフト軸に沿って空間的に分離し、分離された負イオンケミカル種の少なくとも一部をイオン検出器で検出する、
ことからなるイオン移動度分光計を動作させる方法。
【請求項56】
サンプル中のケミカル種の有無は、分離された正イオンケミカル種を検出するイオン検出器における到着時間に基づいて決定される、請求項55の方法。
【請求項57】
サンプル中のケミカル種の有無は、分離された負イオンケミカル種を検出するイオン検出器における到着時間に基づいて決定される、請求項55の方法。
【請求項58】
サンプル中のケミカル種の有無は、分離された正と負のイオンケミカル種の両方を検出するイオン検出器における到着時間に基づいて決定される、請求項55の方法。
【請求項59】
第一のキャリア気体、第二のキャリア気体、および第三のキャリア気体の一つ以上は同一のキャリア気体である、請求項55の方法。
【請求項60】
第一のドリフト管、第二のドリフト管、および第三のドリフト管の一つ以上へのケミカル種の分離を容易にする一つ以上の組成物をキャリア気体に導入する、ことから更になる請求項55の方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【公表番号】特表2009−522552(P2009−522552A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548771(P2008−548771)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/049594
【国際公開番号】WO2007/079234
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508197723)エクセリムス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】