説明

多段ポリマー組成物およびその使用方法

【課題】多段ポリマー組成物およびその使用方法を提供する。
【解決手段】(a)40℃以下のガラス転移温度を有する少なくとも1種の軟質ポリマー、および(b)40℃より高いガラス転移温度を有する少なくとも1種の硬質ポリマー:を含む多段ポリマーが提供され、前記硬質ポリマーのガラス転移温度は前記軟質ポリマーのガラス転移温度よりも少なくとも10℃高く、前記硬質ポリマーと前記軟質ポリマーの重量比は1.01:1〜100:1であり、前記多段ポリマーは、液状水にさらし、次に100℃より低い温度で乾燥した後、相対湿度75%の雰囲気中での最大熱転移温度と20℃以下の差で異なる相対湿度0%の大気中での最大熱転移温度を示す。かかる多段ポリマーを含む水性ラテックス、かかる多段ポリマーを含む粉体を含む組成物、かかる多段ポリマーを含む溶液、およびかかる多段ポリマーを毛髪に適用することを含む毛髪をスタイリングする方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くのヘアスタイリング組成物は1以上のポリマーを含有する。ポリマー(単数又は複数)は、これらの組成物を用いてスタイリングされた髪に関する様々な所望の性質の1以上に寄与すると考えられる。このようなポリマーの望ましい性質としては、例えば、耐久性、高湿度に対する耐性、低粘着性、および良好な保持性が挙げられる。例えば、米国特許出願公開番号2004/0096474は、2種の異なるポリマーおよび美容上許容される溶媒を含有するヘアスタイリング組成物を開示している。
【特許文献1】米国特許出願公開番号2004/0096474明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
スタイリングされた髪の望ましい特性、例えば高湿度に対する耐性を改善する組成物を提供することが望まれる。
独立して、ヘアスタイリング組成物の製造に関連する1以上の性質を改善することが望ましい。例えば、いくつかの場合において、粉体の形態のポリマーであって、後にヘアスタイリング組成物に添加できるポリマーを製造することが望まれる。このような場合において、粉体は自由流動性であるのが望まれる。
【0003】
さらに独立して、ヘアスタイリング組成物を髪に適用する前に、ヘアスタイリング組成物自身の特性に関連する1以上の特性を改善することが望まれる。例えば、幾つかの場合において、ヘアスタイリング組成物は液体であり、最適化された粘度を有する液体ヘアスタイリング組成物を提供することが望まれる。例えば、幾つかの場合において、粘度が低下した液体ヘアスタイリング組成物を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの態様において、
(a)40℃以下のガラス転移温度を有する少なくとも1種の軟質ポリマー、および
(b)40℃より高いガラス転移温度を有する少なくとも1種の硬質ポリマー:を含む多段ポリマーが提供され、前記硬質ポリマーのガラス転移温度は前記軟質ポリマーのガラス転移温度よりも少なくとも10℃高く、前記硬質ポリマーと前記軟質ポリマーの重量比は1.01:1〜100:1であり、前記多段ポリマーは、液状水にさらし、次に100℃より低い温度で乾燥した後、相対湿度75%の雰囲気中での最大熱転移温度より20℃以下の差で異なる相対湿度0%の大気中での最大熱転移温度を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
幾つかの実施態様において、本発明の組成物は、ヘアスタイリング組成物において用いられる。本明細書において用いられる場合、「ヘアスタイリング組成物」なる用語は、髪を特定の形状または配置に保持するために髪に使用される、ポンプまたはエアゾルヘアスプレー、スタイリングジェル、スタイリンググレーズ、スプレーフォーム、スタイリングクリーム、スタイリングワックス、スタイリングローション、リキッドフォーム、スプレージェル、ポマード、ドライヤー乾燥用ローション、カールアクチベーター、またはムースを意味する。幾つかの実施態様において、本発明におけるヘアスタイリング組成物はヘアスプレーである。「髪」なる用語は、天然の人間の髪、動物の毛、人工毛、および髪を含むウィッグまたはヘアピースを意味する。
【0006】
本明細書において用いられ、FW Billmeyer,JRによりTextbook of Polymer Science、第2版、1971において定義される「ポリマー」とは、小さな化学繰り返し単位の反応生成物からなる比較的大きな分子である。ポリマーは、直鎖、分枝鎖、星状、ループ状、超分岐、架橋、またはその組み合わせである構造を有することができ;ポリマーは1種類の繰り返し単位を有してもよいし(ホモポリマー)、あるいは1種より多い繰り返し単位を有してもよい(コポリマー)。コポリマーは、ランダム、シーケンス、ブロック、他の配列、あるいはその任意の混合物又は組み合わせで配列された様々な種類の繰り返し単位を有することができる。
【0007】
本明細書において「重合」とは、モノマーを反応させてポリマーを形成することを意味する。
【0008】
重合は、任意の種類の重合法、例えば、乳化重合、ミクロエマルジョン重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、あるいはその組み合わせにより行うことができる。いくつかの場合において、水性エマルジョンを用いて乳化重合が行われ、生成物は水性ポリマーラテックスである。
【0009】
ポリマー分子量は、標準的方法、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーまたは固有粘度により測定することができる。一般に、ポリマーは1000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。ポリマーは非常に高いMwを有することができ;あるポリマーは1000000を超えるMwを有し;典型的なポリマーは1000000以下のMwを有する。あるポリマーは架橋し、架橋ポリマーは無限のMwを有すると考えられる。
【0010】
互いに反応してオリゴマーまたはポリマーの繰り返し単位を形成する分子は、本明細書においては「モノマー」と呼ばれる。典型的なモノマーは400未満の分子量を有する。本発明において有用なモノマーには、例えば、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する分子が含まれる。このようなモノマーには、例えば、ビニルモノマーが含まれ、これは少なくとも1つのビニル基(すなわち、CH2=CR−、ここでRは水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、または別の置換または非置換有機基である)を有する分子である。幾つかの好適なビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体、およびその混合物が挙げられる。エチレン誘導体は、例えば、以下のものの非置換または置換体を包含する:酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、ハロゲン化アルケン、およびその混合物。本明細書において用いられる場合、「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味し;「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し;「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。いくつかの実施態様において、「置換」モノマーは、例えば、1より多い炭素−炭素二重結合を有するモノマー、ヒドロキシル基を有するモノマー、他の官能基を有するモノマー、および官能基の組み合わせを有するモノマーを包含する。
【0011】
あるモノマーを単独または他のモノマーとともに重合することにより調製されるポリマーは、本明細書においては、モノマー単位としてのモノマーを包含するとされる。
【0012】
幾つかの実施態様において、本発明は、1以上の連鎖移動剤の使用を含む。連鎖移動剤は、モノマーのラジカル重合の間の連鎖移動反応に関与できる化合物である。ある好適な連鎖移動剤は、例えば、ハロメタン、ジスルフィド、チオール(メルカプタンとも呼ばれる)、および金属錯体である。少なくとも1つの容易に除去可能な水素原子を有する様々な他の化合物も連鎖移動剤として好適である。好適な連鎖移動剤の混合物も好適である。好適なチオールは、例えば、アリールチオール、アルキルチオール、アルキルジチオール、メルカプトアルカノール、およびチオアルキルカルボン酸のアルキルエステルを包含する。幾つかの好適なチオールは、例えば、ベンゼンチオール、ドデシルメルカプタン、ヘキサンチオール、ブタンチオール、ブチル3−メルカプトプロピオネート、エチル3−メルカプトプロピオネート、ブチルメルカプトアセテート、1,6−ヘキサンジチオール、4−メルカプト−2−ブタノール、4−メルカプト−1−ブタノール、および2−メルカプト−エタノールを包含する。好適なハロメタンは、例えば、クロロホルム、テトラブロモメタン、テトラクロロメタン、およびブロモトリクロロメタンを包含する。幾つかの好適なジスルフィドは、例えば、ジアルキルジスルフィド(例えば、ジエチルジスルフィド)、ジアルキルアリールジスルフィド(例えば、ジベンジルジスルフィド)、およびジアリールジスルフィド(例えば、ジフェニルジスルフィド)を包含する。
【0013】
本明細書において用いられる場合、組成物は、組成物の重量基準で25重量%以上の水を含有しているならば「水性」である。ある水性組成物は、組成物の重量基準で40重量%以上;あるいは50重量%以上の水を含有する。いくつかの水性組成物において、水は連続媒体を形成し、1以上の他の物質が水中に溶解または分散される。水が連続媒体を形成する水性組成物において、水は水と混和性の1種以上のさらなる溶媒と混合されてもよいし、あるいは混合されなくてもよい。水が連続媒体を形成する幾つかの水性組成物において、連続媒体は連続媒体の重量基準で30重量%以上の水;あるいは50重量%以上の水;あるいは75重量%以上の水;あるいは90重量%以上の水を含有する。
【0014】
幾つかの実施態様において、本発明の実施は、別個のポリマー粒子が連続媒体中に分散されている水性組成物である水性ポリマーラテックスの使用を要件とする。典型的には、ポリマーは乳化重合のプロセスにより調製される。独立して、典型的に連続媒体は、連続媒体の重量基準で75重量%以上の水である。あるラテックスにおいて、ポリマー粒子は10nm以上、あるいは30nm以上、あるいは100nm以上の平均直径を有する。独立して、あるラテックスにおいて、ポリマー粒子は2000nm以下、または1000nm以下、または500nm以下の平均直径を有する。幾つかの場合において、ポリマーラテックスは、ラテックスの重量基準で60重量%以下;あるいは50重量%以下のポリマー固形分を有する。幾つかの場合において、ポリマーラテックスはラテックスの重量基準で25重量%以上;あるいは35重量%以上;あるいは45重量%以上のポリマー固形分を有しうる。
【0015】
本明細書において用いられる場合、ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定法(DSC)により測定される。ポリマーは1より多くのTgを有し得る。Tgの測定は、通常、水を除去するために十分に乾燥されたポリマーサンプルに関して行われる。このような十分に乾燥されたサンプルは、水を含有しているならば、Tgの測定に影響を及ぼさないような少量で水を含有している。Tgの測定は、通常、ポリマーのサンプルが乾燥雰囲気中に保持された状態でも行われる。本明細書において、ポリマーがあるTgを有していると記載されているならば、特定の乾燥度または特定の相対湿度について特に記載がないならば、ポリマーは、十分に乾燥された後に試験され、その後乾燥雰囲気下(すなわち、相対湿度0%)で試験された場合にこのTgを示すことを意味する。
【0016】
本発明の実施において、水にさらされた多段ポリマーを使用することが有用である場合があり、次いでこの多段ポリマーを100℃より低い温度で乾燥させる。例えば、多段ポリマーがヘアスプレーにおいて使用される幾つかの実施態様においては、このような乾燥を行うことができる。多段ポリマーは様々な方法で水にさらすことができると考えられる。「水にさらす」とは、本明細書においては、多段ポリマーが平衡量の水を獲得することを許容するような方法で、多段ポリマーを液状水と接触させることを意味する。水性ラテックス中の成分であることにより(例えば、多段ポリマーが乳化重合により調製される場合)、あるいは水を含有する溶媒中に溶解させることにより、あるいは水中に浸漬することにより、あるいは他の手段により、あるいはその任意の組み合わせにより多段ポリマーを水にさらすことができる。
【0017】
100℃より低い温度で乾燥させた多段ポリマーの挙動を理解するために、サンプルを100℃より低い温度で乾燥させ、得られたサンプルをDSCにより試験するために、水にさらした多段ポリマーのサンプルを得ることが有用である場合がある。幾つかの場合において、ポリマーのガラス転移温度を特定するために通常用いられる方法である通常の方法により熱転移温度を特定することができる。
【0018】
100℃より低い温度で乾燥させた多段ポリマーのサンプルは十分に乾燥させてもよいし、十分に乾燥させなくてもよい。すなわち、サンプルはサンプル中の水の存在により影響を受けるDSC測定において熱転移温度を示すことができる。このような転移温度は、従って前記定義のように、多段ポリマーの標準的ガラス転移温度でない場合がある。このようなサンプルにおける熱転移温度(単一又は複数)が多段ポリマーの標準的ガラス転移温度(単一又は複数)よりも低い場合、サンプルはヒドロ可塑化(hydroplasticized)されたと言われる。
【0019】
DSC測定は、ポリマーサンプルが十分に乾燥されているか、いないかに関わらず、ポリマーサンプルに関して行うことができる。独立して、DSC測定は相対湿度0%の雰囲気を用いた標準的方法において行うことができるか、あるいはDSC測定はより高い相対湿度、例えば、75%の相対湿度の雰囲気中で行うことができる。0でない相対湿度で行われるDSC測定は、ポリマーサンプルが使用の場におかれる場合、例えば、毛髪固定剤として使用される場合、および周囲湿度が変化する場合に、ポリマーサンプルがその特性を変更する可能性があるかどうかを予想することができることが意図される。
【0020】
本発明の多段ポリマーは有用な特性を有する:すなわち、本発明の多段ポリマーが100℃より低い温度で乾燥される場合、得られるサンプルがヒドロ可塑化されるかどうかにかかわらず、得られるサンプルの最大熱転移温度(すなわち、1より多い熱転移温度が観察されるならば、最も高い熱転移温度)は、DSC測定の雰囲気が相対湿度0%から相対湿度75%まで変化する場合、あまり変化しない。一般に、本発明の多段ポリマーが100℃よりも低い温度で乾燥され、次いで相対湿度0%および相対湿度75%でDSCにより測定される場合、相対湿度0%で観察される最大熱転移温度は、相対湿度75%で観察される最大熱転移温度と20℃以下;または10℃以下;または5℃以下の差で異なる。
【0021】
独立して、幾つかの実施態様において、本発明の多段ポリマーが100℃よりも低い温度で乾燥され、次いで相対湿度0%でのDSCにより測定される場合、相対湿度0℃で観察される最大熱転移温度は、多段ポリマーの最大ガラス転移温度よりも10℃以上;または20℃以上;または30℃以上低い。
【0022】
幾つかの実施態様において、本発明の多段ポリマーが100℃より低い温度で乾燥される場合、得られるサンプルがヒドロ可塑化されるかどうかにかかわらず、DSC測定の雰囲気が相対湿度0%から相対湿度75%まで変化する場合、得られるサンプルの最小熱転移温度(すなわち、1より多い熱転移温度が観察されるならば、最も低い熱転移温度)は変化する。幾つかの実施態様において、本発明の多段ポリマーが100℃よりも低い温度で乾燥され、次いで相対湿度0%および相対湿度75%でDSCにより測定される場合、相対湿度0%で観察される最小熱転移温度は、相対湿度75%で観察される最小熱転移温度と10℃以上;または20℃以上;または30℃以上の差で異なる。
【0023】
独立して、幾つかの実施態様において、本発明の多段ポリマーが100℃よりも低い温度で乾燥され、次いで相対湿度0%でのDSCにより測定される場合、相対湿度0℃で観察される最小熱転移温度は、多段ポリマーの最小ガラス転移温度と20℃以下;または10℃以下の差で異なる。
【0024】
本明細書において用いられる場合、「多段」ポリマーは、1より多くの重合段階において調製されるポリマーである。重合段階は、重合が起こり、次いで有効に終了するプロセスである。すなわち、重合段階の終わりには、モノマーがほとんどまたは全く存在せず(すなわち、モノマーの量が、重合段階により製造されるポリマーの重量基準で10重量%以下、または5重量%以下、または2重量%以下である)、かつ重合速度が無視できるか又はゼロである。多段重合プロセスにおいて、第一段階が終了した後、先の段階により調製されたポリマーの存在下で少なくとも1つのさらなる段階が行われる。任意に、1以上の追加の重合段階を行うことができ;各段階は、先の重合段階が有効に終了した後に行われる。
【0025】
幾つかの実施態様において、多段ポリマーは多段乳化重合プロセスにより調製される。すなわち、第一ポリマーは乳化重合のプロセス(第一段階)により調製される。次いで、第一段階により製造されたポリマーの存在下で、第二乳化重合プロセス(第二段階)が行われる。幾つかの実施態様において、第二段階の間に製造されたポリマーの組成は、第一段階の間に調製されるポリマーの組成と異なる。幾つかの実施態様においては、第一段階において調製されるポリマーの一部または全部は、第一段階が行われた容器中に留置され、第二段階は同じ容器中で行われる。幾つかの実施態様においては、第一段階において調製されるポリマーを取り出し、水で希釈して、または希釈せずに新しい容器中に入れ、第二段階をこの新しい容器中で行う。第二段階後、さらなる段階を行ってもよいし、あるいは行わなくてもよい。
【0026】
幾つかの実施態様において、第一段階はポリマーラテックスを製造する乳化重合プロセスである。このような実施態様の幾つかにおいて、第二段階が行われる場合、第二段階において製造されるポリマーのほとんどまたは全部が第一段階において調製されるラテックス粒子上、ラテックス粒子中、またはラテックス粒子に結合して形成される。結果として、粒子のほとんどまたは全部はそれぞれ第一段階からのポリマーおよび第二段階からのポリマーを含有するラテックスである。次の段階が行われるならば、幾つかの場合において、それぞれのその後の段階から得られるポリマーは、先の段階において形成された粒子上、粒子中、または粒子に結合して形成される。
【0027】
本発明は少なくとも1種の軟質ポリマーの使用を要件とする。軟質ポリマーは40℃以下のTgを有するポリマーである。幾つかの実施態様において、−50℃以上;または−25℃以上;または0℃以上;または25℃以上のTgを有する軟質ポリマーが使用される。幾つかの実施態様において、1つのみのガラス転移温度を有する少なくとも1種の軟質ポリマーが使用される。
【0028】
本発明は少なくとも1種の硬質ポリマーの使用を要件とする。硬質ポリマーは40℃より高いTgを有するポリマーである。幾つかの実施態様において、60℃以上;または80℃以上のTgを有する硬質ポリマーが使用される。独立して、幾つかの実施態様において、200℃以下;または150℃以下;または120℃以下のTgを有する硬質ポリマーが使用される。幾つかの実施態様において、1つのみのガラス転移温度を有する少なくとも1種の硬質ポリマーが使用される。
【0029】
本発明の実施において、少なくとも1種の硬質ポリマーおよび少なくとも1種の軟質ポリマーが使用され、前記硬質ポリマーのTgが前記軟質ポリマーのTgよりも少なくとも10℃高くなるように選択される。幾つかの実施態様において、硬質ポリマーのTgは軟質ポリマーのTgより少なくとも20℃高く;あるいは少なくとも30℃高く;あるいは少なくとも40℃高く;あるいは少なくとも50℃高い。
【0030】
本発明の実施において、少なくとも1種の硬質ポリマーおよび少なくとも1種の軟質ポリマーが、硬質ポリマーと軟質ポリマーの重量比が1.01:1〜100:1となるような量で使用される。幾つかの実施態様において、硬質ポリマーと軟質ポリマーの重量比は、1.05:1、又はそれより大(すなわち、重量比がX:1(ここで、Xは1.05以上);あるいは1.1:1、又はそれより大;あるいは1.2:1、又はそれより大;あるいは1.3、又はそれより大;あるいは1.4:1、又はそれより大である。幾つかの実施態様において、硬質ポリマーと軟質ポリマーの重量比は4:1、又はそれより小;あるいは3:1、又はそれより小;あるいは2:1、又はそれより小;あるいは1.6:1、又はそれより小である。
【0031】
幾つかの実施態様において、本発明の多段ポリマーから調製される十分に乾燥されたフィルムは、少なくとも2つの異なるガラス転移温度を示す。1つのガラス転移温度は、軟質ポリマーによるものであり、別のガラス転移温度は硬質ポリマーによることが意図される。別のガラス転移温度の存在は、任意の測定技術、たとえば、示差走査熱量測定法または動力学的機械的分析により観察することができる。例えば、(動力学的機械的分析からの)温度に対するタンデルタ曲線における別のピークの出現は、別のガラス転移温度の存在の証拠と見なされる。
【0032】
本発明の軟質ポリマーは任意の組成を有することができる。幾つかの実施態様において、ポリエステルである軟質ポリマーは使用されない。幾つかの実施態様において、ポリマー主鎖の一部としてエステル結合を有する軟質ポリマーは使用されない。独立して、幾つかの実施態様において、ビニルポリマーである少なくとも1つの軟質ポリマーが使用される。幾つかの実施態様において、ビニルポリマーでない軟質ポリマーは使用されない。
【0033】
ビニルポリマーは、ポリマーの重量基準で50重量%以上のビニルモノマーであるモノマー単位を有するポリマーである。あるビニルポリマーは、ポリマーの重量基準で75重量%以上、または80重量%以上、または90重量%以上、または96重量%以上のビニルモノマー単位を有する。
【0034】
独立して、幾つかの実施態様において、アクリルポリマーである少なくとも1種の軟質ポリマーが使用される。
【0035】
アクリルポリマーは、ポリマーの重量基準で50重量%以上のアクリルモノマーであるモノマー単位を有するポリマーである。あるアクリルポリマーは、ポリマーの重量基準で75重量%以上、または80重量%以上、または90重量%以上のアクリルモノマー単位を有する。アクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、そのエステル(すなわち、「アクリルエステル」)およびそのアミド(すなわち、「アクリルアミド」)が挙げられる。アクリルエステルは置換されていても、置換されていなくてもよい。アクリルエステルは、例えば、C1〜C22アルキル(直鎖、分枝鎖、または環状)エステルを包含し、これは置換されていても、置換されていなくてもよい。幾つかの場合において、アクリルポリマーは、アクリルモノマー以外のビニルモノマーである共重合したモノマー単位を包含する。アクリル以外のビニルモノマーは、例えば、スチレン、置換スチレン、有機酸のビニルエステル、N−ビニル化合物、ジエン、マレイン酸、無水マレイン酸、他の不飽和ジカルボン酸またはその無水物、およびその混合物を包含する。
【0036】
幾つかの実施態様において、アクリル酸の非置換アルキルエステル、例えば、アルキル基が1以上の炭素原子、または2以上の炭素原子を有するエステルであるモノマー単位を含有する軟質ポリマーが使用される。独立して、幾つかの実施態様において、アルキル基が22以下の炭素原子;または8以下の炭素原子;または6以下の炭素原子;または4以下の炭素原子を有するアクリル酸の非置換アルキルエステルが使用される。幾つかの実施態様において、アクリル酸の2以上の異なる非置換アルキルエステルのモノマー単位を含有する軟質ポリマーが使用される。アクリル酸の非置換アルキルエステルが軟質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、アクリル酸の非置換アルキルエステルの量は、例えば、軟質ポリマーの重量基準で40重量%以上;または50重量%以上;または60%重量以上である。独立して、アクリル酸の非置換アルキルエステルが軟質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、アクリル酸の非置換アルキルエステルの量は、例えば、軟質ポリマーの重量基準で95重量%以下;または85重量%以下;または80重量%以下である。
【0037】
独立して、幾つかの実施態様において、アクリル酸またはメタクリル酸の1以上のヒドロキシアルキルエステルを含有する軟質ポリマーが使用される。かかるヒドロキシアルキルエステルのアルキル基は、1以上の炭素原子、または2以上の炭素原子を有してもよい。独立して、かかるヒドロキシアルキルエステル中のアルキル基は、8以下の炭素原子;または4以下の炭素原子を有してもよい。幾つかの実施態様において、メタクリル酸の少なくとも1つのヒドロキシアルキルエステルが使用される。アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルのモノマー単位が軟質ポリマー中に存在する態様において、かかるモノマー単位の量は、軟質ポリマーの重量基準で5重量%以上、または10重量%以上である。独立して、アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルのモノマー単位が軟質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、かかるモノマー単位の量は、例えば、軟質ポリマーの重量基準で50重量%以下;または30重量%以下;または20重量%以下である。
【0038】
独立して、幾つかの実施態様において、1以上の酸官能性モノマー単位を含有する軟質ポリマーが使用される。酸官能性モノマー単位は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、任意の他の不飽和カルボキシル化合物、あるいはその混合物の重合単位であってよい。幾つかの実施態様において、アクリル酸またはメタクリル酸のモノマー単位あるいはその混合物が使用される。幾つかの実施態様において、メタクリル酸のモノマー単位が使用される。酸官能性モノマー単位が軟質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、酸官能性モノマー単位の量は、例えば、軟質ポリマーの重量基準で、1重量%以上;または2重量%以上;または5重量%以上;または10重量%以上である。独立して、酸官能性モノマー単位が存在する幾つかの実施態様において、酸官能性モノマー単位の量は、例えば、軟質ポリマーの重量基準で、30重量%以下;または20重量%以下である。
【0039】
幾つかの実施態様において、軟質ポリマーは、少なくとも1種のモノマーおよび少なくとも1種の連鎖移動剤を含有する混合物の重合により調製される。軟質ポリマーの製造において連鎖移動剤が使用される場合、連鎖移動剤の量は、幾つかの実施態様においては、軟質ポリマーの製造に使用される混合物中のすべてのモノマーの重量基準で0.1重量%以上;または0.2重量%以上;または0.5重量%以上;または0.9重量%以上である。独立して、軟質ポリマーの製造において連鎖移動剤が使用される場合、連鎖移動剤の量は、幾つかの実施態様においては、軟質ポリマーの製造のために使用される混合物中のすべてのモノマーの重量基準で3重量%以下;または2重量%以下;または1.5重量%以下である。
【0040】
本発明の硬質ポリマーは任意の組成を有することができる。本明細書において本発明の軟質ポリマーとして好適であると記載されているポリマー組成は、本発明の硬質ポリマーにも好適である。
【0041】
アクリル酸の非置換アルキルエステルが硬質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、アクリル酸の非置換アルキルエステルの量は、例えば、硬質ポリマーの重量基準で5重量%以上;または10重量%以上;または20重量%以上である。独立して、アクリル酸の非置換アルキルエステルが硬質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、アクリル酸の非置換アルキルエステルの量は、硬質ポリマーの重量基準で、例えば、50重量%以下;または40重量%以下;または30重量%以下である。
【0042】
幾つかの実施態様において、アルキル基が1以上の炭素原子を有するメタクリル酸の非置換アルキルエステルであるモノマー単位を含有する硬質ポリマーが使用される。独立して、幾つかの実施態様において、アルキル基が6個以下の炭素原子;または4個以下の炭素原子;または2個以下の炭素原子を有するメタクリル酸の非置換アルキルエステルが使用される。幾つかの実施態様において、メチルメタクリレートのモノマー単位を含有する硬質ポリマーが使用される。独立して、メタクリル酸の非置換アルキルエステルが硬質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、メタクリル酸の非置換アルキルエステルの量は、例えば、硬質ポリマーの重量基準で10重量%以上;または20重量%以上;または40重量%以上である。独立して、硬質ポリマー中にメタクリル酸の非置換アルキルエステルが存在する幾つかの実施態様において、アクリル酸の非置換アルキルエステルの量は、例えば、硬質ポリマーの重量基準で75重量%以下;または65重量%以下;または55重量%以下である。
【0043】
アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルのモノマー単位が硬質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、かかるモノマー単位の量は、例えば、硬質ポリマーの重量基準で2重量%以上;または5重量%以上;または8重量%以上である。独立して、アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルのモノマー単位が硬質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、かかるモノマー単位の量は、例えば、硬質ポリマーの重量基準で50重量%以下;または25重量%以下;または15重量%以下である。
【0044】
酸官能性モノマー単位が硬質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、酸官能性モノマー単位の量は、例えば、硬質ポリマーの重量基準で1重量%以上;または2重量%以上;または5重量%以上;または10重量%以上である。独立して、酸官能性モノマー単位が硬質ポリマー中に存在する幾つかの実施態様において、酸官能性モノマー単位の量は、例えば、硬質ポリマーの重量基準で、30重量%以下;または20重量%以下である。
【0045】
幾つかの実施態様において、硬質ポリマーは、少なくとも1種のモノマー及び少なくとも1種の連鎖移動剤を含有する混合物の重合により製造される。硬質ポリマーの製造において連鎖移動剤が使用される場合、連鎖移動剤の量は、幾つかの実施態様においては、硬質ポリマーの製造において用いられる混合物中の全モノマーの重量基準で0.05重量%以上;または0.1重量%以上である。独立して、連鎖移動剤が硬質ポリマーの製造において用いられる場合、連鎖移動剤の量は、幾つかの実施態様において、硬質ポリマーの製造において用いられる混合物中の全モノマーの重量基準で、0.5重量%以下;または0.4重量%以下である。
【0046】
幾つかの実施態様において、硬質ポリマーは軟質ポリマーの存在下で重合される。独立して、幾つかの実施態様において、軟質ポリマーは硬質ポリマーの存在下で重合される。幾つかの実施態様において、硬質ポリマーおよび軟質ポリマー以外のポリマーを含有しない多段ポリマーが調製される。任意に、軟質ポリマーおよび硬質ポリマーの前に、1以上の追加のポリマーを重合させることができ、硬質ポリマーおよび軟質ポリマーはこのような追加のポリマーの存在下で重合させることができる。独立して任意に、1以上のさらなるポリマーを軟質ポリマーおよび硬質ポリマーの重合の間に重合させることができる。さらに独立して任意に、1以上の追加のポリマーを硬質ポリマーおよび軟質ポリマー両方の存在下で重合させることができる。任意のさらなるポリマーを本明細書において定義される硬質ポリマーまたは軟質ポリマーとみなしてもよいし、みなさなくてもよい。
【0047】
幾つかの特定の実施態様において、多段ポリマーは、乳化重合によりまず軟質ポリマーを調製して、軟質ポリマー粒子の水性ラテックスを製造することにより調製される。軟質ポリマー粒子のラテックスの存在下で、硬質ポリマーを重合させる。幾つかの実施態様において、硬質ポリマーは軟質ポリマー粒子のほとんどまたは全部のまわりに完全または部分的シェルを形成する。このような完全または部分的シェルは、幾つかの場合において、かかる水性ラテックスを単離することにより粉体が調製される場合、得られる粉体が自由流動性になる傾向を増大させることが意図される。
【0048】
幾つかの実施態様において、50000以上;または70000以上;または100000以上の重量平均分子量(Mw)を有する硬質ポリマーが使用される。独立して、幾つかの実施態様において、200000以下;または250000以下;または200000以下のMwを有する硬質ポリマーが使用される。
【0049】
幾つかの実施態様において、25000以上;または30000以上;または40000以上のMwを有する軟質ポリマーが使用される。独立して、幾つかの実施態様において、1000000以下;または300000以下;または100000以下のMwを有する軟質ポリマーが使用される。
【0050】
Mwはサイズ排除クロマトグラフィーにより測定することができる。幾つかの場合において、本発明の実施において先のポリマーの存在下で重合される、興味のあるポリマーのMwを測定することが望ましい。このような場合において、興味のあるポリマーのMwの合理的な推定値は、試験目的で特殊な重合を行うことにより得ることができる;すなわち、興味のあるポリマーを製造する重合プロセスは、先のポリマーが興味のあるポリマーの重合中に存在しない以外は本発明の実施において行われるように行うことができる。この特別の重合の生成物を次にサイズ排除クロマトグラフィーにより測定して、本発明の実施において存在するような興味のあるポリマーのMwの合理的な推定値を得ることができる。
【0051】
幾つかの実施態様において、本発明の多段ポリマーは水性ラテックスの形態において提供される。このようなラテックスは、例えば、ラテックスを美容上許容される溶媒と直接混合することにより使用することができ、ヘアスタイリング組成物における使用に好適なポリマー溶液が形成される。美容上許容される溶媒としては、例えば、モノアルコール、例えば、1〜8個の炭素原子を含有するアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、およびフェニルエチルアルコール;ポリアルコール、例えば、アルキレングリコール、例えば、グリセリン、エチレングリコールおよびプロピレングリコール;グリコールエーテル、例えばモノ、ジ、およびトリエチレングリコールモノアルキルエーテル;ケトン、エーテル、エステル;およびその混合物が挙げられる。
【0052】
例えば、水性ラテックスの形態の本発明の多段ポリマーを水混和性アルコールおよび任意に追加の水と混合することができる。独立して、幾つかの実施態様において、溶液の重量基準で、20重量%以下;または10重量%以下;または7重量%以下のポリマー固形分を有するポリマー溶液が形成される。独立して、幾つかの実施態様において、溶液の重量基準で、1重量%以上;または2重量%以上;または3重量%以上のポリマー固形分を有するポリマー溶液が形成される。例えば、溶液の重量基準で5重量%ポリマー固形分であり、エタノールと水の55:40の比の混合物である溶媒を有する溶液が得られるように、このようなラテックスを水及びエタノールと、選択された量において混合することができる。幾つかの実施態様において、好適な水混和性アルコールはエタノールである。
【0053】
幾つかの実施態様において、本発明の多段ポリマーは粉体として提供される。例えば、このような粉体を提供する一方法は、水性ラテックスとして本発明の多段ポリマーを調製し、次いで多段ポリマーを単離する(すなわち、水性ラテックスからほとんどまたはすべての水を除去する)ことである。2つの一般的単離方法は、例えば、噴霧乾燥および凝集である。
【0054】
幾つかの実施態様において、本発明の1以上の多段ポリマーを含有する粉体を美容上許容される溶媒中に溶解させることができる。このような実施態様において、美容上許容される溶媒は、水を含有してもよいし、含有しなくてもよい。
【0055】
噴霧乾燥においては、通常、霧化チャンバーにおいてホイールまたはノズルによりラテックスが霧化(すなわち、液滴に変換)される。液滴は蒸発化により水を失い、固体粒子になると考えられる。通常、乾燥ガス(通常、加熱された空気または加熱された窒素)が霧化チャンバー中に強制的に送られる。乾燥ガスの温度は、通常、乾燥粉体の所望の温度を提供するために調節される。粉体温度は通常80℃以下;あるいは65℃以下;あるいは55℃以下に維持される。独立して、粉体温度は通常20℃以上;または30℃以上;または40℃以上に維持される。
【0056】
噴霧乾燥プロセスにおいて、1以上の流動助剤(flow aid)を添加してもよいし、あるいは添加しなくてもよい。流動助剤は、粉体の自由に流動する能力を改善するために粉体に添加される有機または無機いずれかの物質である。流動助剤は粉体として霧化チャンバー中に添加することができ;幾つかの場合において、流動助剤は水中に分散された固体として供給され、本発明の多段ポリマーと同時に噴霧乾燥される。流動助剤は、望ましくは、噴霧乾燥の条件よりも高いガラス転移温度または融点を有する。流動助剤は通常5nmから10000nmの平均粒子サイズを有する。流動助剤は望ましくはヘアスタイリング配合物と適合性であり;例えば、流動助剤は望ましくはヘアスタイリング配合物に使用される溶媒中に可溶性であるが、溶媒粘度を有意に増大させない。噴霧乾燥された粉体は通常、噴霧乾燥された粉体の重量基準で15重量%以下;あるいは10重量%以下;あるいは5重量%以下;あるいは3重量%以下の揮発性化合物(すなわち、水および、水が蒸発するのと同じ条件下で粉体から蒸発する他の化合物を含む化合物)の含量を有する。
【0057】
凝集は、ラテックスのポリマー粒子を安定な分散液中に維持する条件を変更することにより行われる。ラテックスはその後不安定になり、ポリマー固形分はさらに容易に水から分離できる。通常の凝集法は、凝集剤、例えば、酸または塩を添加することを含む。凝集剤および凝集剤の濃度の選択は、ラテックスの性質およびラテックスを安定化させるために用いられる方法により決定される。凝集に用いられる塩としては、例えば、塩化物が挙げられる。二価または三価カチオンとの塩は通常、一価カチオンとの塩よりもより有効であると考えられる。凝集により、通常、ラテックス粒子は融合して、通常スラリーと呼ばれる形態になる。スラリーは、通常、例えば、さらなる凝集剤の添加、温度の上昇、流動助剤の添加、脱水(例えば、真空フィルターベルト上で)、遠心分離、圧潰、および乾燥(例えば、フラッシュドライヤーまたは流動床乾燥機または両方)の1以上を用いてさらに処理される。凝集プロセス(乾燥を包含する)から得られる粉体は、通常、凝集プロセスから得られる粉体の重量基準で15重量%以下;または5重量%以下;または2重量%以下;または0.5重量%以下の揮発性化合物の含量を有する。
【0058】
幾つかの実施態様において、本発明の多段ポリマーは溶媒中溶液の形態において用いられる。本明細書において用いられる場合、「溶液」は、溶媒の種類に関係なく、また溶液の粘度に関係なく、溶媒中に多段ポリマーが溶解している任意の組成物を包含する。幾つかの実施態様において(例えば、スプレーに好適な溶液)、溶液は液体であり、従って比較的低い粘度を有する。幾つかの実施態様において、溶液はさらに高い粘度を有することができ、例えば、ゲル、ローション、クリーム、またはペーストであってよい。幾つかの実施態様において、溶液はフォームであってよい。幾つかの実施態様において、溶液は固体、例えば、ワックス状固体であってよい。
【0059】
多段ポリマーの溶媒中溶液は、任意の方法により得ることができる。例えば、ラテックス中の多段ポリマーの形態が中和後に水溶性になる実施態様が想定される。例えば、水性ラテックス中の多段ポリマー形態が、水溶性溶媒をラテックスに添加することにより処理されて、水および水溶性溶媒の混合物である溶媒中の多段ポリマーの溶液を形成する実施態様も想定される。例えば、ラテックスを水不溶性ポリマーで処理することにより、多段ポリマーがラテックス形態から抽出される実施態様も想定される。例えば、固体多段ポリマーが溶媒中に溶解される実施態様も想定される。
【0060】
溶媒中多段ポリマーの溶液を調製するために用いられる方法と独立して、好適な溶媒としては、例えば、他の溶媒と混合されていない水、他の水溶性溶媒と混合されている水、水と混合されていない水溶性溶媒、および水不溶性溶媒が挙げられる。水と水溶性溶媒の混合物である溶媒が使用される実施態様のうち、幾つかの実施態様において、エタノールと水の比は0.25:1、もしくはそれより大;または0.54:1、もしくはそれより大;または1:1、もしくはそれより大である。独立して、水と水溶性溶媒の混合物である溶媒が使用される実施態様のうち、幾つかの実施態様において、エタノールと水の比は4:1、もしくはそれ未満;または2.3:1、もしくはそれ未満;または1.5:1、もしくはそれ未満である。
【0061】
幾つかの実施態様において、本発明の実施は、多段ポリマーの無水溶液を伴う。無水溶液は溶液の重量基準で5重量%以下の水を含有する溶液である。幾つかの実施態様において、溶液の重量基準で2重量%以下;または1重量%以下;または0.5重量%以下;または0.2重量%以下の水を有する無水溶液が使用される。
【0062】
多段ポリマーがラテックス形態において用いられるヘアスタイリング組成物が使用される実施態様も想定される。このような実施態様において、連続媒体は水または水と水溶性溶媒の混合物であってよい。
【0063】
本発明のポリマー組成物において用いられるポリマーは、ヘアスタイリング組成物と適合性であるべきである。ポリマーの適合性を試験するために、ポリマーをまず相互溶媒中に溶解させて、ポリマーの溶液を形成する。溶媒を蒸発させると、フィルムが残る。不適合ポリマーは、例えば、高温での低い剪断貯蔵弾性率をはじめとする不十分な機械的特性を有する白濁したフィルムを形成するであろう。本発明のポリマー組成物の特性は、乾燥された場合に柔軟性で、強靱なフィルムであって、25℃で1×10パスカル(Pa)〜1×10Paの剪断貯蔵弾性率(G’)および70℃で1×10Pa〜1×10PaのG’、または1×10Pa〜1×10PaのG’を有することを特徴とするフィルムを形成する。
【0064】
本発明のポリマー組成物中のポリマーは、好ましくはヘアスタイリング組成物に添加されて、ヘアスタイリング組成物の重量基準で0.1〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%、最も好ましくは4〜7重量%の合計ポリマー濃度を提供する。典型的には、ゲルは0.5〜4%、好ましくは1%〜2%のポリマー濃度を有し、スプレーは4%〜7%の濃度を有する。
【0065】
本発明のポリマー組成物を含むヘアスタイリング組成物は、スプレーするかまたは髪に手ですり込むことにより湿った髪または乾いた髪に適用される。例えば、例えば、櫛、ブラシ、ローラー、またはカーラーなどの様々なヘアスタイリングの道具のいずれかを用いて、処置された髪を次に所望の形状に機械的に固定する。湿った髪に適用される場合、適用後、スタイリング前、スタイリング中、またはスタイリング後に周囲空気、電気的、または熱風乾燥を用いて、髪を乾燥することができる。幾つかの実施態様においては、ヘアスタイリング組成物を髪に適用する前に、髪を所望の形状に固定する。幾つかの実施態様においては、ヘアスタイリング組成物を髪に適用した後に髪を所望の形状に固定する。
【0066】
ヘアスタイリング組成物において有用なポリマー組成物は、「そのままで」あるいはポリマー組成物中に含まれる酸基の一部または全部の中和により、ヘアスタイリング組成物中に溶解性である。本発明のポリマー混合物中の酸性基、例えば、カルボン酸基は、通常の技術により少なくとも1つの塩基で中和することができ、ヘアスタイリング組成物中にポリマーを溶解させる。ポリマー混合物を中和する塩基は、アミン、アルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、および水酸化アンモニウムの1以上から選択することができる。好適なアミン中和剤としては、例えば、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチル−2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノ−イソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、脂肪族アミン(例えば、ステアリルジメチルアミン)およびモルホリンが挙げられる。好適なアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。好ましくは、中和剤は、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチル−2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、ステアリルジメチルアミン、およびトリイソプロパノールアミンの1以上から選択される。
【0067】
中和剤が本発明の組成物に添加される幾つかの実施態様において、添加される量は、ヘアスタイリング組成物中のポリマー混合物の溶解性を提供するために、およびヘアスタイリング組成物のpHが美容上許容されることを保証するために必要な量である。幾つかの実施態様において、髪固定樹脂中の酸基の量は、モル当量基準で、5%以上;または25%以上;または50%以上である。幾つかの実施態様において、中和される髪固定樹脂中の酸基の量は、モル当量基準で100%以下;または75%以下である。幾つかの実施態様において、中和剤は使用されない。
【0068】
幾つかの実施態様において、本発明の多段ポリマーは所望の範囲内にある溶液粘度を有する。例えば、本発明の多段ポリマーの溶液粘度は次のようにして試験することができる。多段ポリマーのサンプルを水性ラテックスとして提供する。溶液を調製するために、エタノール、追加の水、および水溶性塩基をラテックスに添加することができる。水溶性塩基の量は、多段ポリマー上のカルボン酸基の60モルパーセントを中和するために選択することができる。エタノールおよび追加の水の量は、得られる溶液が、溶液の重量基準で5重量%のポリマー固形分および55重量%のエタノールを有するように選択することができる。幾つかの実施態様において、かかる溶液の粘度は、0.025パスカル・秒(Pa・sec)(25センチポアズ)以下;または0.015Pa・sec(15センチポアズ)以下である。粘度を測定するための適当な一方法は、12rpmで超低アダプターを用いるブルックフィールド粘度計を用いる。
【0069】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つの本発明の多段ポリマーに加えて1以上の追加のポリマーを含むヘアスタイリング組成物が調製される。このような追加のポリマーとしては、例えば、ブチルアクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルピロリドン)/酢酸ビニルコポリマー、オクチルアクリルアミド/アクリレート類/ブチルアミノエチル−メタクリレートコポリマー、ビニルカプロラクタム/ビニル−ピロリドン/ジメチルアミノエチル−メタクリレートコポリマー、メタクリロイルエチル−ベタイン/メタクリレートコポリマー、メタクリル酸/メタクリルエステルコポリマー、アクリレート類/ヒドロキシエステルアクリレートコポリマー、メタクリル酸/アクリル酸エステルコポリマーが挙げられる。本発明のポリマー組成物とブレンドするために有用な追加の髪固定ポリマーとしては、例えば、(INCI名)PVM/MAコポリマーのエチルエステル、PVM/MAコポリマーのブチルエステル、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸/ビニルネオデカノエート、VA/マレイン酸ブチル/イソボルニルアクリレートコポリマー、アクリレート類コポリマー、スルホン化ポリエステル、例えば、ジグリコール/CHDM/イソフタレート/SIPコポリマー、アクリレート類コポリマー、アクリレート類ターポリマー メタクリレート/アクリレート類コポリマー/アミン塩、AMP−アクリレート/ジアセトン−アクリルアミドコポリマー、AMPD−アクリレート/ジアセトン−アクリルアミドコポリマー、アクリレート/t−ブチルアクリルアミドコポリマー、アクリレート類/メタクリレートポリマー、アクリレート類/アクリルアミドコポリマー、PVP/ビニルカプロラクタム/DMAPAアクリレート類コポリマー、ポリビニルカプロラクタム、イソブチレン/エチルマレイミド/ヒドロキシエチルマレイミドコポリマー、アクリレート類/C1−2スクシネート/ヒドロキシアクリレートコポリマー、カルボキシル化ポリウレタン、例えば、ポリウレタン−1、ポリウレタン−6が挙げられる。
【0070】
幾つかの実施態様、例えば、スプレー以外の手段により髪に適用されるヘアスタイリング組成物がジェル、ムース、ローション、ポマード、セラム、または他の形態において調製される実施態様において、追加のポリマーとしては、例えば、アクリレートコポリマー、アクリレート類/ヒドロキシエステルアクリレート類コポリマー、アクリレート類C1−2スクシネート/ヒドロキシアクリレート類コポリマー、アリルステアレート/酢酸ビニル(VA)コポリマー、AMPアクリレート/ジアセトンアクリルアミドコポリマー、PVM/MAコポリマーのエチルエステル、PVM/MAコポリマーのブチルエステル、PVM/MAコポリマーのイソプロピルエステル、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、無水フタル酸/グリセリン/グリシジルデカノエートコポリマー、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチルアクリレート、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP/VA、PVP/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、PVP/エイコセンコポリマー、PVP/エチルエタクリレート/メタクリル酸コポリマー、PVP/ヘキサデカンコポリマー、PVP/VAイタコン酸ポリマー、アクリル酸ナトリウム/ビニルアルコールコポリマー、デンプンジエチルアミノエチルエーテル、ステアリルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、VA/クロトネートコポリマー、VA/クロトン酸コポリマー、VA/クロトン酸/メタクリルオキシベンゾフェノン−1コポリマー、VA/クロトン酸/ビニルネオデカノエートコポリマー、イソブチレン/エチルマレイミド/ヒドロキシエチルマレイミドコポリマー、PVP/DMAPAアクリレートコポリマー、ポリイミド−1、ポリクアテルニウム−4、ポリクアテルニウム−11、PQ−7、PQ−39、PQ−2、PQ−10、PQ−16、PQ−46、PQ−28、PQ−55、PQ−68、PVP/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ビニルカプロラクタム/PVP/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、PVPおよびジメチコン、PQ−28およびジメチコンが挙げられる。
【0071】
本発明の少なくとも1つの多段ポリマーに加えて幾つかの実施態様において用いることができる追加のポリマーのさらなる例としては、ポリウレタン−14(および)AMP−アクリレート類コポリマー、アクリレート類/ジアセトンアクリルアミドコポリマー、アミノエチルプロパンジオール−アクリレート類/アクリルアミドコポリマー、アミノエチルプロパンジオール−AMPD−アクリレート類/ジアセトンアクリルアミドコポリマー、AMP−アクリレート/C1−8アルキルアクリレート類/C1−8アルキルアクリルアミドコポリマー、AMP−アクリレートコポリマー、およびAMP−アクリレート類/ジアセトンアクリルアミドコポリマーが挙げられる。幾つかの実施態様において、本発明の少なくとも1つの多段ポリマーは、オクチルアクリルアミド/アクリレート類/ブチルアミノエチル−メタクリレートコポリマーの少なくとも1種とブレンドされる。
【0072】
さらに、いくつかの実施態様において、本発明の多段ポリマーに加えて、1以上の両性ポリマーを含有する組成物を使用できる。両性ポリマーが使用される実施態様において、組成物は本明細書において多段ポリマーに加えて使用するのに適しているとして記載された1種以上の他のポリマーを含有してもよいし、含有しなくてもよい。両性ポリマーは、ポリマーと共有結合した少なくとも1つのアニオン性基およびポリマーと共有結合した少なくとも1つのカチオン性基を有するポリマーである。アニオン性基は、ポリマーが水性組成物中にある場合、基がアニオンとして存在するpH値の範囲がある基である。カチオン性基は、ポリマーが水性組成物中にある場合、基がカチオンとして存在するpH値の範囲(アニオン性基がアニオンとして存在するpH値の範囲と同じであってもよいし、重複していてもよいし、あるいは異なっていてもよい)がある基である。いくつかの好適な両性ポリマーは、例えば、オクチルアクリルアミド/アクリレート類/ブチルアミノエチル−メタクリレートコポリマー、ビニルカプロラクタム/ビニル−ピロリドン/ジメチルアミノエチル−メタクリレートコポリマー、メタクリロイルエチル−ベタイン/メタクリレートコポリマー、AMP−アクリレート類/ジアセトン−アクリルアミドコポリマー、AMPD−アクリレート類/ジアセトン−アクリルアミドコポリマー、アクリレート類/t−ブチルアクリルアミドコポリマー、アクリレート類/メタクリレートポリマー、アクリレート類/アクリルアミドコポリマー、PVP/ビニルカプロラクタム/DMAPAアクリレート類コポリマー、ポリビニルカプロラクタム、イソブチレン/エチルマレイミド/ヒドロキシエチルマレイミドコポリマーである。いくつかの実施態様において、1以上のオクチルアクリルアミド/アクリレート類/ブチルアミノエチル−メタクリレートコポリマーが使用される。
【0073】
幾つかの実施態様において、本明細書において前記のようにして測定して(すなわち、エタノールと水の重量比が55:40であるエタノールと水の混合物である溶媒中、溶液の重量基準で5重量%ポリマー固形分である溶液中)、本発明の多段ポリマーの溶液粘度と同じか、あるいはこれより低い溶液粘度を有する追加のポリマーが使用される。幾つかの実施態様において、追加のポリマーは、本明細書において前記のようにして測定されたブレンドの溶液粘度が、追加のポリマー単独の溶液粘度よりも低く、かつ本発明の多段ポリマー単独の溶液粘度よりも低くなるように選択される。
【0074】
本発明のポリマー組成物に加えて、ヘアスタイリング組成物は、化粧品において用いられる任意の他の成分、例えば、芳香剤、ヘアスタイリング組成物それ自体または髪の繊維を着色できる染料、保存料、金属イオン封鎖剤、増粘剤、シリコーン、軟化剤、泡相乗剤、泡安定剤、太陽光フィルター、ペプチド化剤、コンディショニング剤、光沢剤(shine agent)タンパク質、ハーブ、植物性薬品、中和剤、可塑剤、およびアニオン性、非イオン性、カチオン性または両性界面活性剤、あるいはその混合物も含み得る。
【0075】
典型的には組成物の表面張力を低下させるために、1以上の界面活性剤をヘアスタイリング組成物に添加することができる。界面活性剤がヘアスタイリング組成物中に存在する場合、好ましくは組成物の総重量に基づいて0.001〜1%の濃度で存在する。
【0076】
1以上の可塑剤を本発明のヘアスタイリング組成物に添加することができる。可塑剤がヘアスタイリング組成物中に存在する場合、これらは好ましくは組成物の総重量に基づいて0.001〜1%の濃度で存在する。ヘアスタイリング組成物において用いることができる可塑剤としては、たとえば、ジメチコンコポリオール、ジメチコン、フェニルトリメチコン、トリアルキルシトレート、シクロメチコン、ジシロキサン、および当該分野において公知で、典型的に用いられる他のものが挙げられる。
【0077】
本発明のポリマー組成物を含むヘアスタイリング組成物は、好ましくは、溶媒が任意の美容上許容される溶媒である溶液である。水または他の溶媒を単独または混合物において用いることができる。幾つかの実施態様において、溶媒は水、または、水と水以外の水混和性溶媒(例えば、1以上のアルコール、例えば、エタノール)の混合物である。幾つかの実施態様において、溶媒は、溶媒の重量基準で10重量%以下;または5重量%以下;または1重量%以下の水を有する。このような溶媒は、ヘアスタイリング組成物の重量基準で、ヘアスタイリング組成物の99.9パーセントまでの割合で存在することができる。
【0078】
エアゾルスプレーを用いるヘアスタイリング組成物において、1以上のプロペラントが用いられる。好ましくは、プロペラントはヘアスタイリング組成物の総重量に基づいて、10〜70%、さらに好ましくは30〜60%の総濃度で用いられる。適当なプロペラントとしては、たとえば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、およびペンタンなどの炭化水素;ジメチルエーテルなどのエーテル;フルオロカーボン(例えば、ジフルオロエタン)、およびその混合物が挙げられる。好ましいプロペラントは、ジメチルエーテル、1,1−ジフルオロエタン、プロパン、n−ブタンおよびイソブタンの1種以上から選択される。これらのプロペラントは、商業的に入手可能である。
【0079】
1以上の、イソチアゾロン類、ヨードプロピニルブチルカーバメート、ベンジルアルコール、イミダゾリジニルウレア、安息香酸、メチルイソチアゾリノン類、アルキルパラベン類、およびその混合物を含む保存料をヘアスタイリング組成物中において用いることができる。
【0080】
ジェル、ムース、ローション、ポマード、セラム、または他の形態(スプレー以外の手段により髪に適用される)において髪に適用されるヘアスタイリング組成物において1以上の増粘剤が望まれる場合がある。適当な増粘剤としては、たとえば、ポリカルボン酸増粘剤、たとえば、アクリレート類/ステアレス−20メタクリレートコポリマー、アクリレート類コポリマー、またはアクリレート類C10−30アルキルアクリレートクロスポリマー(crosspolymer);カーボマー(carbomers)、ヒドロキシエチルセルロース、PVM/MAデカジエンクロスポリマー、ステアレス−10アリルエーテル/アクリレートコポリマー、疎水的に改質されたポリエトキシル化ウレタン増粘剤、デンプンベースの増粘剤、およびポリアミド増粘剤が挙げられる。追加の好適な増粘剤としては、例えば、アクリルレオロジー調節剤、例えば、アクリレート/ステアレス−20メタクリレートコポリマー、アクリレート/ベヘネス−25メタクリレートコポリマー、アクリレートコポリマー、PEG−150/デシルアルコール/SMDIコポリマー、PEG−150/ステアリルアルコール/SMDIコポリマー、PEG−150/ジステアレート、アクリレート類/ステアレス−20メタクリレートクロスポリマー、およびアクリレート類/ビニルネオデカノエートクロスポリマーが挙げられる。好適な増粘剤の混合物も好適である。増粘剤は、使用される場合には、好ましくは組成物の総重量に基づいて0.001〜5%の総濃度で存在する。
【0081】
幾つかの実施態様において、1以上のアクリルレオロジー改良剤の使用は、幾つかの実施態様において、組成物の性能をさらに改善することが想定される。例えば、1以上のアクリルレオロジー改良剤の使用は、幾つかの実施態様において、ヘアスタイリング組成物が髪に適用された後、その堅さ、耐湿性、またはその両方を改善することができる。レオロジー改良剤の種類および量は、使用される場合、ヘアスタイリング組成物の所望の粘度が維持される(例えば、髪上にスプレーするために設計された組成物は、通常、ジェルとして髪に適用されるように設計された組成物よりも低い粘度を有する)ように選択されることが想定される。
【0082】
独立して、または付加的に、1以上のアクリルレオロジー改良剤の使用は、幾つかの実施態様において、ヘアスタイリング組成物が髪に適用される前に存在する場合、ヘアスタイリング組成物の性質を改善し得る。例えば、1以上のアクリルレオロジー改良剤は、幾つかの実施態様において、ムースのフォーム密度またはフォーム安定性あるいは両者を改善し得る。
【0083】
他の添加剤、たとえば当業者により通常用いられるものをヘアスタイリング組成物に添加することができる。ヘアスタイリング組成物において用いられる他の添加剤は、所望のヘアスタイリング組成物の種類によって変わる。他の添加剤としては、たとえば、湿潤剤(moisturizer)(たとえば、グリセリン、加水分解されたシルクタンパク質、および加水分解された小麦タンパク質);パンテノールなどのコンディショニング剤;コンディショニング剤(米国特許第5,164,177号は適当なコンディショニング剤に関してさらに一般的および具体的詳細について参照される);乳化剤;帯電防止助剤;抽出物;タンパク質;ビタミン;着色剤;UVプロテクター;芳香剤、および腐食防止剤が挙げられる。このような他の添加剤は、典型的にはヘアスタイリング組成物の0.005〜5%、さらに好ましくは0.01〜1%を構成する。
【0084】
ヘアスタイリング組成物において好適でありうる界面活性剤、溶媒、他の保存料、および増粘剤を含む添加剤は、国際化粧品成分辞典、第9版、2002年、Cosmetics Toiletries Fragrances Association(CFTA)、ワシントンDC出版にみることができる。
【0085】
ヘアスタイリング組成物における使用に加えて、本発明の組成物は、ヘアケア、スキンケア、化粧品、または他の関連する用途において有用な他の組成物における使用も想定される。例えば、本発明の組成物は、ヘアマスク、ヘアコンディショナー、ヘアシャンプー、アイマスカラ、ボディーウォッシュ、スキンマスク、スキンローション、カラー化粧品、化粧品、口紅、または他の関連する用途における使用が想定される。
【0086】
本明細書および請求の範囲の目的に関して、本明細書において記載される範囲および比の値は組み合わせ可能であると理解すべきである。例えば、60〜120および80〜110の範囲が特定のパラメータについて記載されている場合、60〜110および80〜120の範囲も想定される。さらに、独立して、特定のパラメータが好適な最小値1、2、および3を有すると開示されているならば、またこのパラメータが好適な最大値9および10を有すると開示されているならば、次の範囲はすべて想定される:1〜9、1〜10、2〜9、2〜10、3〜9および3〜10。
【実施例】
【0087】
実施例1
多段ポリマーP1
オーバーヘッドスターラー、凝縮器、窒素アダプターおよび熱電対を装備された3リットルの四つ首丸底フラスコに、430部の水、10.9部の安息香酸、および19.2部のRhodafac RS−610A(Rhodiaから入手可能)を添加した。別に、183部の水、6.4部のRhodafac RS−610A、80部のブチルアクリレート(BA)、200部のエチルアクリレート(EA)、60部のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、60部のメタクリル酸(MAA)、および4部のn−ドデシルメルカプタン(n−DDM)を混合することにより、ステージ1モノマーエマルジョンを調製した。窒素を流しながら、反応器および内容物を85℃に加熱し、42部の前記ステージ1モノマーエマルジョンを撹拌しながら添加し、続いて15部の水中に溶解させた過硫酸ナトリウム1部の開始剤溶液を添加した。残りのモノマーエマルジョンを次に48分にわたって供給し、その間、温度を85℃に維持した。1部の過硫酸ナトリウムおよび73部の水を含有するコフィード開始剤溶液をこのモノマーフィードならびに後に記載するステージ2モノマーと同時にゆっくりと添加した。ステージ1モノマーが完全に供給された後、270部の水、9.6部のRhodafac RS−610A、150部のBA、282部のメチルメタクリレート(MMA)、60部のHEMA、108部のMAA、および1.8部のn−DDMを混合することによりステージ2モノマーを調製した。ステージ2モノマーエマルジョンを72分にわたって供給し、その間、温度を85℃に維持した。
【0088】
モノマーエマルジョンおよび開始剤供給が完了した後、反応混合物は硫酸第一鉄、t−ブチルヒドロペルオキシド、過硫酸アンモニウムおよびD−イソアスコルビン酸の組み合わせで「チェイス(chase)」され、残りのモノマー量を低減させた。次いで、反応混合物は室温に冷却され濾過された。調製されたエマルジョンポリマーは、47%の固形分を有していた。
【0089】
実施例2
比較ポリマーCB、CC、およびCDの調製
実施例1の方法を用いて、各ステージのそれぞれにおいてポリマーP1にけるのと同じ組成を有するが、ステージ1およびステージ2の量が、第二段ポリマーと第一段ポリマーの重量比が40:60となるように調節された多段ポリマー(比較ポリマーCB)を調製した。第一段におけるn−DDMの量は、第一段におけるモノマーの重量基準で1重量%であった。第二段におけるn−DDMの量は、第二段におけるモノマーの重量基準で0.6重量%であった。
【0090】
60℃、真空下で乾燥することにより、比較ポリマーCBのフィルムを調製した。通気パン中、DSC装置中で140℃に加熱することにより、比較ポリマーCBのフィルムを十分に乾燥し、DSC装置中で冷却し、次いで第二の加熱の間、DSCにより測定した。比較ポリマーCBは43℃および97℃のガラス転移温度を示した。
比較ポリマーCCはNational Starchから得られるResyn(商標)28−2930であった。
比較ポリマーCDはNational Starchから得られるAmphomer(商標)LV−71であった。
【0091】
実施例3
多段ポリマーAの調製
実施例1の方法を用い、各ステージのそれぞれにおいてポリマーP1におけるのと同じ組成を有するが、第二ステージポリマーと第一ステージポリマーの重量比が60:40となるようにステージ1とステージ2の量が調節された多段ポリマー(ポリマーA)を調製した。第一段中のn−DDMの量は第一段中のモノマーの重量基準で1重量%であった。第二段中のn−DDMの量は、第二段中のモノマーの重量基準で0.3重量%であった。
【0092】
60℃、真空下で乾燥することにより、ポリマーAのフィルムを調製した。通気パン中、DSC装置中で140℃に加熱することによりポリマーAのフィルムを十分に乾燥させ、DSC装置中で冷却し、次いで第二加熱中にDSCにより測定した。ポリマーAは34℃および89℃のガラス転移温度を示した。
【0093】
さらに、ステージ1により製造されたポリマーのサンプルを調製し、ポリマーAのフィルムについて使用されたのと同じ方法を用いてそのフィルムを調製し(ステージ2ポリマーの非存在下)、乾燥させ、DSCにより試験した。このサンプルは30℃のガラス転移温度を示した。
【0094】
さらに、ステージ2により製造されたポリマーのサンプルをステージ1ポリマーの非存在下で調製した。ポリマーAのフィルムについて使用されたのと同じ方法を用いてそのフィルムを調製し、乾燥させ、DSCにより試験した。このサンプルは93℃のガラス転移温度を示した。
【0095】
実施例4
Tg対相対湿度
ポリマーAならびに比較ポリマーCBおよびCCのサンプルを60℃、真空下で乾燥させた。各サンプルをある相対湿度(RH)で調整し、次いでパン中で密封した。密封されたパン中のサンプルを、次いで第一加熱中の示差走査熱量測定による熱転移について試験した。比較ポリマーCBおよびCCの場合において、1つのみの熱転移が各測定において検出され、一方、ポリマーAは各測定において2つの熱転移を示した。結果は次の通りである。熱転移温度結果を℃で報告する。
【0096】
【表1】

【0097】
実施例5
高湿度カール保持性
International Hair Importer(New York)から入手したヨーロッパ人のブラウンバージンヘアの毛髪見本(長さ20.3cm(8インチ)、2.0±0.1グラム)を使用した。髪をマイルドシャンプー中で洗浄し、湿った状態で22ミリメートル(mm)×70mmカーラー上でカールさせ、ヘアピンでその位置に保持した。カールされた毛髪を実験台上で一晩空気乾燥させ、45℃オーブン中で20分間乾燥させた後、処置した。
【0098】
溶液粘度を測定するためのサンプルを調製するために前記のようにして溶液を調製した。各溶液中、ポリマーは60モル%中和され、溶液の重量基準で、ポリマー固形分は5重量%であり、エタノール含量は55重量%であった。
【0099】
カールされた毛髪に前面に2回、後方に2回、15.2cm(6インチ)の距離からヘアスプレーを用いて溶液を均一にスプレーした。噴霧装置は190μL(マイクロリットル)の配合物を1回の圧縮で送達した。噴霧装置製品はSequistPerfect、Cary、ILにより製造された「Euromist Classic」であった。カールし、処理された毛髪を22.5℃、相対湿度55%の調節された環境中で1時間乾燥させた。毛髪を乱さないでカーラーを慎重にはずした。カールを90%RH、25℃の湿度チャンバー中、クリップにより吊した。初期カール長さを記録した。カールした毛髪の長さを4時間後に再び記録した。カール保持性は
[(L(0)−L(t))/(L(0)−L(i))×100]
(式中、L(0)は完全に伸長されたカール長さであり、L(i)は初期カール長さであり、L(t)は4時間後のカール長さである)として決定される。ポリマーAで処理された毛髪は75%のカール保持性を示し、一方、比較ポリマーCBで処理された毛髪は54%のカール保持性を示した。
【0100】
実施例6
カールした毛髪の引っ張り試験
実施例5の手順に従って、カールした毛髪見本を調製した。カールした毛髪をDia−Stron(商標)ミニチュア引っ張り試験機MTT160型装置(Dia−Stron Limited、Unit 9 Focus 303 Business Centre、Andover、Hampshire SP10 5NY UK、または390 Reed Road、Broomall、Pa19008、USA)中に入れ、カールをその初期直径の25%まで圧縮するための負荷を測定した。各毛髪について、圧縮は2〜5回繰り返された。測定は室温、55%相対湿度で行われた。カール圧縮のサイクル中の応力対ひずみの曲線が記録された。ピーク力および弾性率(応力対ひずみの勾配)を記録し、計算して、ポリマーフィルム堅さを特徴づけた。値が高いほど、髪上のフィルムは堅く、バリバリしている。
【0101】
弾性率値はポリマーAについて8.9であり、比較ポリマーCBについて5であった。
【0102】
別の測定において、弾性率値はポリマーAについて8.6であり、比較ポリマーCCについて3.8であった。
【0103】
ピーク力値はポリマーAについて244グラムフォース(gmf)であり、比較ポリマーCBについて156gmfであった。
【0104】
別の測定において、ピーク力値はポリマーAについて209gmfであり、比較ポリマーCCについて109gmfであった。
【0105】
実施例7
溶液粘度
実施例1の方法を用い、表示されたn−DDMの量(この段階におけるモノマーの重量基準の重量%として)および表示された第二段と第一段の重量比で、追加の水性ラテックス多段ポリマーを調製した。
【0106】
様々なポリマーのラテックス形態をそれぞれ次のようにして処理して、溶液を調製した:エタノールをラテックスに添加し、続いて追加の水を添加し、続いて中和剤を添加した。60モルパーセントのポリマーの酸基を中和するために中和剤の量を選択した。エタノールおよび水である溶媒を用い、55:40のエタノールと水の重量比で、溶液の重量基準で5重量%ポリマー固形分の溶液を得るために、エタノールおよび追加の水の量を選択した。12rpmで超低アダプターを用い、各溶液の粘度を次いでブルックフィールド粘度計で測定した。結果は次の通りであった。粘度をミリパスカル*秒(mPa*s)(数値的にセンチポアズと同じ)で報告した。
【0107】
【表2】

【0108】
注(1):第二段ポリマーと第一段ポリマーの重量比
注(2):調製せず
注(3):ステージ比60/40の実施例7〜5はポリマーAと同じである。
【0109】
実施例8
動力学的機械的分析
各ポリマーについて、乾燥フィルムを調製した。サンプルをDynamic Temperature Ramp Mode中、8mm平行プレートを用いて、Rheometric Mechanical Spectrometer(RNS−800)で試験した。プレートは最大スキャン温度でゼロ化された。サンプルを下のプレートに置き、次いで軟質サンプルが2つのプレート間のギャップを満たすために十分な力で上のプレートをサンプルと接触させた。0.05%の適用ひずみ、6.28rad/sの適用頻度、約180℃から約2℃まで2℃/分の冷却速度で、すべてのスキャンを行った。動的貯蔵(G’)および損失(G”)弾性率を温度および損失正接(タンデルタ)の関数として記録した。
【0110】
ポリマーAを比較ポリマーCCおよびCDと比較した。
【0111】
ダンデルタ結果において、ポリマーAは2つのピークを64℃および125℃に示し、一方、比較ポリマーCDは167℃で1つのピークを示した。25℃で、ポリマーAは2.2×10dyn/cmのG’を示し、比較ポリマーCCは1.0×10dyn/cmのG’を示し、比較ポリマーCDは6.5×10dyn/cmのG’を示した。
【0112】
実施例9
バウンシングカール試験
毛髪見本を実施例5におけるのと同様にして調製した。処理されたカールをはずみ装置上にかけた。カールの初期長さを測定し、記録した。毛髪を70サイクル/分で「バウンス」させた。バウンシング試験の6〜8時間後、カールの長さを測定した。カール保持性(%)を計算して、スタイル保持性および耐久性を特徴づけた。
【0113】
Dia−Stron(商標)カール圧縮試験によるカール圧縮のサイクルの間、応力対ひずみ曲線を記録した。応力対ひずみ曲線の勾配を弾性率として計算し;第一圧縮と第二圧縮の間の弾性率値の保持率を弾性率保持率として計算して、毛髪上のフィルムの堅さ耐久性を特徴づけた。結果は次の通りであった。
【表3】

【0114】
実施例10
凝集
予熱された30%固形分ラテックス600gを、1200gの希塩化カルシウムに約1分かけて添加することにより、それぞれ3Lのバッチ凝集を開始させた。ラテックス添加の間中、スターラーを約500rpmに固定した。ラテックスの添加後、1または2分待機した。一般に4.0、6.0、または10.0%固形分(全ラテックス固形分基準)の流動助剤を次にスラリーに数秒にわたって添加した。流動助剤は少なくとも70℃のTgおよび50〜300nmの平均粒子サイズを有するアクリルポリマーのラテックスであった。流動助剤添加の約0.5〜1.0分後、任意の15〜45gの0.2g/ml CaClを添加した。撹拌速度を400rpmに減じ、加熱ジャケットを高温にして、スラリーを所望の最終温度75〜90℃に加熱した。スラリーが所望の加熱温度に達したら、マグネチックスターラーで撹拌し、少なくとも60℃に冷却した後、真空濾過し、洗浄し、一次ラテックス固形分基準で7:1にした。最後に、ウェットケーキを一夜約45℃で、真空オーブン中で乾燥させた。
【0115】
塩化カルシウムを用いてポリマーBを凝集させる試みは、流動助剤を使用しなければ、ポリマーは凝集後数日で融合することを示した。一方、ポリマーAは、容易に凝集し、流動助剤の使用に関係なく実験中流動性のままであった。ポリマーAの凝集により、80℃タンクから、227.92μmの平均サイズ、47μm未満0%、600μm超1.93%、1.391のスパンの粒子が製造された。「スパン」は、式(D90−D10)/D50(式中、D10は粒子の10%(粒子の全重量基準の重量基準)がD10より小さい直径であり、D50は粒子の50%(粒子の全重量基準の重量基準)がD50よりも小さい直径であり、およびD90は粒子の90%(粒子の全重量基準の重量基準)がD90よりも小さい直径である)により決定される。
【0116】
実施例11
噴霧乾燥
スプレーノズルを備えたタワー噴霧乾燥機を次の操作条件で使用して、約49℃の推定粉体温度を得た:ノズル圧は1550psiであり、エマルジョンフィード速度は1806部/時であった。流動助剤は使用しなかった。200マイクロメートルの平均粉体粒子直径を有する自由流動性粉体が製造された。得られた粉体は手で圧潰された場合にくっついて固体にならなかったので、非圧縮粉体であることは明らかであった。
【0117】
実施例12
両性ポリマーとのブレンド
混合されたエタノールおよび水である溶媒(エタノールと水の重量比が1:375:1である)中で溶液を調製できた。各溶液は溶液の重量基準で5重量%のポリマー固形分を有することができた。各溶液の粘度を実施例7と同様に測定できた。
【0118】
各溶液はオクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチル−メタクリレートコポリマー(Amphomer)および第二ポリマー(2ndP)を有することができた。調製できたブレンド、および測定される粘度は次の通りであった。
【0119】
【表4】

【0120】
AmphomerとポリマーAの各ブレンドについての粘度値は、各ポリマー単独について測定される粘度の重量平均よりも有意に少ない。重量平均はVWA=R*VAM+(1−R)*VPAである(式中、RはAmphomerとポリマーAの重量比であり、VAMはAmphomer単独の溶液の粘度であり、およびVPAはポリマーA単独の溶液の粘度である)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)40℃以下のガラス転移温度を有する少なくとも1種の軟質ポリマー、および
(b)40℃より高いガラス転移温度を有する少なくとも1種の硬質ポリマー(前記硬質ポリマーのガラス転移温度は前記軟質ポリマーのガラス転移温度よりも少なくとも10℃高く、前記硬質ポリマーと前記軟質ポリマーの重量比は1.01:1〜100:1である):
を含む多段ポリマーであって、
前記多段ポリマーを液状水にさらし、次に100℃より低い温度で乾燥した後、相対湿度75%の雰囲気中での最大熱転移温度と20℃以下の差で異なる相対湿度0%の雰囲気中での最大熱転移温度を示す多段ポリマー。
【請求項2】
前記硬質ポリマーが少なくとも1種のモノマーおよび少なくとも1種の連鎖移動剤を含む混合物を重合することにより製造され、前記連鎖移動剤の量が前記混合物中のすべてのモノマーの重量基準で0.5重量%以下である請求項1記載の多段ポリマー。
【請求項3】
請求項1記載の多段ポリマーを含む水性ポリマーラテックス。
【請求項4】
(i)組成物の重量基準で0〜15重量%の揮発性化合物、および
(ii)請求項1記載の少なくとも1種の多段ポリマーを含む少なくとも1種の粉体:
を含む組成物。
【請求項5】
多段ポリマーを含む水性ラテックスを提供し、次いで噴霧乾燥または凝集を含むプロセスにより前記多段ポリマーを単離することにより、前記粉体が製造される請求項4記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の溶媒および少なくとも1種の請求項1記載の多段ポリマーを含む溶液。
【請求項7】
前記溶媒が水、または少なくとも1種の水溶性アルコール、または水と少なくとも1種の水溶性アルコールとの混合物を含む請求項6記載の溶液。
【請求項8】
前記溶液が無水である請求項6記載の溶液。
【請求項9】
前記溶液が少なくとも1種の両性ポリマーをさらに含む請求項6記載の溶液。
【請求項10】
(A)髪を所望の形状にする工程、および
(B)請求項7記載の溶液を前記髪に適用する工程:を含む髪をスタイリングする方法。

【公開番号】特開2007−332370(P2007−332370A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−143101(P2007−143101)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】