説明

多段希釈機構に用いられる臨界オリフィス型定流量器の特性測定方法

【課題】多段希釈機構に用いられる臨界オリフィス型定流量器の特性測定時における状態を実際の使用時の状態に可及的に近づけ、希釈率の誤差を減少する。
【解決手段】直列した希釈ユニット31,32からなる希釈機構3に適用される、前記臨界オリフィス型定流量器CFO1の特性測定方法であって、一の希釈ユニット31の余分なガスを導出する導出流路E1に対し、当該希釈ユニット31の希釈用ガスと、他の希釈ユニット32の希釈用ガスとを、それらの合計流量が前記一定流量と等しくなるように、なおかつ、当該希釈ユニット31からの希釈用ガスの流量が使用時流量と等しくなるように流しておき、そのときの当該導出流路E1に設置された臨界オリフィス型定流量器CFO1の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該臨界オリフィス型定流量器CFO1の流量特性を測定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば粒子状物質等を分析するガス分析システム、これに好適に使用される多段希釈機構、及びこの多段希釈機構に用いられる臨界オリフィス型定流量器の特性測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の性能向上によってその排出物質の1つである粒子状物質(PM:Particulate Matters)が微量となり、従来のフィルタ重量法では測定が厳しい状況となってきている。そこで、フィルタ重量法の代替法として開発されたものが、排出ガス中のPMの数を計測する手法である。その具体的な装置構成としては、例えば粒子数計測装置の前段に、内燃機関の排出ガスをエア等で希釈する希釈ユニットを設け、その希釈した排出ガスの一部を当該粒子数計測装置に導いて、その中に含まれる粒子数をカウントするようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
前記希釈ユニットは、入力端と出力端とを連通するメイン流路の途中に希釈用ガス流路が接続されて、入力端から導入された入力ガスに希釈用ガスが混合されて出力端から出力されるという基本構造を有している。
【0004】
ところで、希釈比を増大させたい場合は、このような希釈ユニットを直列接続するが、単純に接続したのでは、後段の希釈ユニットへの入力ガス流量が大きくなりすぎて希釈できなくなる。そこで、特許文献2に示すように、一部又は全部の希釈ユニットに、メイン流路から分岐してその内部を流れるガスの一部を導出する導出流路を設けて出力ガスの流量を減らすようにしている。
【0005】
そのために、この導出流路には、例えば、臨界オリフィス型定流量器が設けられて、この導出流路の流量を一定乃至測定できるように構成されている。臨界オリフィス型定流量器とは、その上流側圧力を下流側圧力よりも一定比率以上高くして絞り部分での流速が音速となるようにしたものであり、その流量Qは、下式(A)に示すように、上流側圧力P及び温度Tにのみ依存して、下流側圧力に依存しないようになる。
Q=600・C・(P+0.1)・(293/T)1/2・・・(A)
【0006】
したがって、吸引ポンプの脈動等に影響を受けず、上流側圧力と温度を一定に保てば一定流量を流すことができ、一方で、上流側圧力及び温度を測定しておけば、そのときの流量を算出することができる。また、このような臨界オリフィス型定流量器においては、使用に先だって、その流量特性を測定する、例えばC(音速コンダクタンス)を求める、必要があり、具体的には、既知の流量を流してそのときの圧力と温度を測定し、それらの値からCを求めるようにしている(以下、この工程を校正とも言う)。
【0007】
しかして、この種のガス分析システムの場合は、臨界オリフィス型定流量器を校正する際、希釈ユニットの希釈ガス用流路から、流量制御手段によって制御された所定流量の希釈用ガスを、臨界オリフィス型定流量器に導き、そのときの上流側圧力と温度を測定するようにしている。所定流量とは、実際の使用での臨界オリフィス型定流量器に設定する流量のことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−194726号公報
【特許文献2】特開2008−164446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、実際の使用において希釈ユニットには、希釈用ガスに加えて入力ガスが導入され、これらが混合して導出流路、すなわち臨界オリフィス型定流量器に流れ込んでくるため、上述した校正時と使用時とでは、状態がかなり異なり、適正な校正になっていない恐れがある。
【0010】
例えば、校正時と使用時とでは、当該希釈ユニットの流量制御手段で制御される希釈用ガスの流量が異なる。すなわち、使用時には、臨界オリフィス型定流量器に入力ガスの一部も流れ込んでくるので、前記希釈用ガスの流量は、前記校正時よりは小さい値となる。
【0011】
そうすると、図1に示すように、流量制御手段の流量リニアリティ特性等に誤差があった場合、その誤差分が、臨界オリフィス型定流量器の流量誤差として現れ、ひいては希釈率の誤差となる。PMの計数では、前述したように近時極めて精度の高い測定が求められており、この希釈率の誤差は好ましいものではない。
【0012】
また、使用時において入力ガスが配管途中で加熱されて高温となる場合などでは、従来のように、単に当該希釈ユニットの希釈用ガスのみを臨界オリフィス型定流量器に流し込んで校正するのでは、ガス温度が使用時と異なってしまい、校正が不十分なものとなったりする。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであって、他の希釈ユニットの希釈用ガスをも用いることで、臨界オリフィス型定流量器の特性測定時における状態を実際の使用時の状態に可及的に近づけ、希釈率の誤差を減少することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、請求項1の発明に係る臨界オリフィス型定流量器の特性測定方法は、入力ガスが導かれる入力端と出力端とを接続するメイン流路の途中に合流点を設定し、この合流点に流量制御手段が設けられた希釈用ガス流路を接続することで、予め定めた希釈率となる所定流量の希釈用ガスが当該メイン流路に導入されるように構成した希釈ユニットを複数直列に接続しておき、なおかつ、前記希釈ユニットの一部又は全部には、メイン流路の途中に分岐点を設定し、この分岐点に、臨界オリフィス型定流量器が設けられた導出流路を接続して該メイン流路から一定流量のガスが導出されるように構成した希釈機構に適用されるものである。
【0015】
そして、一の希釈ユニットの導出流路に対し、当該希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスと、1以上の他の希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスとを、それらの合計流量が前記一定流量と等しくなるように、なおかつ、当該希釈ユニットからの希釈用ガスの流量が前記所定流量と等しくなるように流しておき、そのときの当該導出流路における臨界オリフィス型定流量器の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該臨界オリフィス型定流量器の流量特性を測定することを特徴とするものである。
【0016】
このようなものであれば、校正時には、他の希釈ユニットからの希釈用ガスを模擬入力ガスとし、当該一の希釈ユニットの希釈用ガスを使用時と同じ流量だけ流して、この希釈用ガスの流量制御手段の動作ポイントを、使用時と校正時とで一致させるので、上述した誤差を低減できる。これは、後述する請求項2の発明と比して、特に校正を頻繁に行う場合に有効である。
【0017】
請求項2の発明に係る臨界オリフィス型定流量器の特性測定方法は、前記同様の希釈機構に適用されるものであって、一の希釈ユニットの導出流路に対し、当該希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスと、1以上の他の希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスとを、それらの合計流量が前記一定流量と等しくなるように、なおかつ、当該希釈ユニットからの希釈用ガスの流量による前記他の希釈ユニットからの希釈用ガスの流量の希釈率が、前記予め定めた希釈率と等しくなるように流しておき、
そのときの当該導出流路における臨界オリフィス型定流量器の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該臨界オリフィス型定流量器の流量特性を測定することを特徴とする。
【0018】
このようなものでも、従来に比べて、使用時と校正時の状態が近づくので、前述同様の効果を得られる。また請求項1の発明に比べて希釈率を頻繁に変える場合に有効となる。
【0019】
請求項3に係る発明は、前記他の希釈ユニットを、前記一の希釈ユニットに隣接する上流又は下流いずれかの希釈ユニットとしたものであり、このようなものであれば、入力ガスの経路が使用時により近づき、温度を使用時と校正時とで同等にし易くなるので、さらに望ましい。
【0020】
請求項4の発明に係る希釈機構は、入力ガスが導かれる入力端と出力端とを接続するメイン流路の途中に合流点を設定し、この合流点に流量制御手段が設けられた希釈用ガス流路を接続することで、予め定めた希釈率となる所定流量の希釈用ガスが当該メイン流路に導入されるように構成した希釈ユニットを複数直列に接続しておき、なおかつ、前記希釈ユニットの一部又は全部には、メイン流路の途中に分岐点を設定し、この分岐点に、臨界オリフィス型定流量器が設けられた導出流路を接続して該メイン流路から一定流量のガスが導出されるように構成したものである。
【0021】
そして、一の希釈ユニットの導出流路に対し、当該希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスと、1以上の他の希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスとだけが、流入し得るように構成しておき、そのときの各希釈用ガスの合計流量が前記一定流量と等しく、なおかつ、当該希釈ユニットからの希釈用ガスの流量が前記所定流量と等しくなるように前記流量制御手段を制御するとともに、当該導出流路における臨界オリフィス型定流量器の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該臨界オリフィス型定流量器の流量特性を測定する情報処理装置を具備していることを特徴とするものである。
このようなものであれば、請求項1に係る発明と同様の効果を奏し得る。
【0022】
請求項5の発明に係る希釈機構は、入力ガスが導かれる入力端と出力端とを接続するメイン流路の途中に合流点を設定し、この合流点に流量制御手段が設けられた希釈用ガス流路を接続することで、予め定めた希釈率となる所定流量の希釈用ガスが当該メイン流路に導入されるように構成した希釈ユニットを複数直列に接続しておき、なおかつ、前記希釈ユニットの一部又は全部には、メイン流路の途中に分岐点を設定し、この分岐点に、臨界オリフィス型定流量器が設けられた導出流路を接続して該メイン流路から一定流量のガスが導出されるように構成したものである。
【0023】
そして、一の希釈ユニットの導出流路に対し、当該希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスと、1以上の他の希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスとだけが、流入し得るように構成しておき、そのときの各希釈用ガスの合計流量が前記一定流量と等しく、なおかつ、当該希釈ユニットからの希釈用ガスの流量による前記他の希釈ユニットからの希釈用ガスの流量の希釈率が、前記予め定めた希釈率と等しくなるように前記流量制御手段を制御するとともに、当該導出流路における臨界オリフィス型定流量器の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該臨界オリフィス型定流量器の流量特性を測定する情報処理装置を具備していることを特徴とする。
このようなものであれば、請求項2に係る発明と同様の効果を奏し得る。
【0024】
請求項6の発明に係るガス分析システムは、請求項5記載の希釈機構を有するガス分析システムであって、初段の希釈ユニットに導かれ、最終段の希釈ユニットから出力された内燃機関の排出ガスの成分を分析する成分分析手段を具備していることを特徴とする。
このようなものであれば、請求項1等に係る発明の効果がより顕著となる。
【0025】
請求項7の発明に係るガス分析システムは、前記成分分析手段が、臨界オリフィス型定流量手段を内部に備えたものであって、前記希釈ユニットからの希釈用ガスのみが、予め定められた流量だけ該成分分析手段に流入し得るように構成しておき、前記情報処理装置が、そのときの成分分析手段の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該成分分析手段の流量特性を測定するものであることを特徴とする。
【0026】
このようなものであれば、成分分析手段の流量特性をも精度よく測定することができる。
より具体的には、前記成分分析手段が、排出ガス中の粒子状物質を計数する粒子状物質計数器であることが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
上述したように、本発明によれば、希釈ユニットに用いられる臨界オリフィス型定流量器の流量特性測定(校正)時も、使用時とほぼ同一の条件(例えば温度、圧力、流量)を作り出すことができるので、その特性測定精度を大幅に向上させることができ、希釈ユニットの希釈精度を高めることができる。また、その結果として、この種の希釈ユニットを
用いたガス分析システム等の測定精度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】誤差の要因を説明した説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るガス分析システムを内燃機関に接続した全体分析システムを示す概略図である。
【図3】同実施形態におけるガス分析システムの内部構造を示すとともに、その使用時でのガスの流れを表示した流体回路図である。
【図4】同実施形態における粒子状物質計数手段の内部構造を模式的に示した模式図である。
【図5】同実施形態におけるガス分析システムの内部構造を示すとともに、その定流量器CFO1を校正するときのガスの流れを表示した流体回路図である。
【図6】同実施形態におけるガス分析システムの内部構造を示すとともに、その定流量器CFO2を校正するときのガスの流れを表示した流体回路図である。
【図7】同実施形態におけるガス分析システムの内部構造を示すとともに、粒子状物質計数手段を校正するときのガスの流れを表示した流体回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明に係るガス分析システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0030】
図2に示すように、本実施形態に係るガス分析システム100は、内燃機関Egの排気管Exから分岐する分岐流路Tdを介して測定ガスである排出ガスの一部をサンプリングし、その中に含まれる固体粒子であるPMの数を計数するものである。なお、ここで言う排出ガスとは、内燃機関から排出される生の排出ガスであるが、例えば、全流希釈トンネルや分流希釈トンネルで希釈された排出ガスであっても構わない。すなわち、本願における排出ガスとは、生の排出ガスの他に、上述したような希釈された排出ガスも含む意味である。
次に、このガス分析システム100の内部構造を図3を参照して説明する。
【0031】
図3における符号PIは、排出ガス導入ポートを示している。内燃機関Egの排出ガスは、前記分岐流路Tdからこの排出ガス導入ポートPIを介して内部に導かれる。そして、この排出ガスは、ガス分析システムに設けられた希釈機構3によって希釈された後、その後段に接続された成分分析手段たる粒子状物質計数手段CPCに導かれて、その内部に含まれるPMの数が計数される。
次に各部を説明する。
前記希釈機構3は、直列に設けられた3段の希釈ユニット31,32,33からなる。
【0032】
各希釈ユニット31,32,33は、入力ガスが導かれる入力端31i,32i,33i及び出力端31o,32o,33oを接続するメイン流路L1,L2,L3と、このメイン流路L1,L2,L3の途中に設定してある合流点L1a,L2a,L3aに接続された希釈用ガス流路D1,D2,D3とを基本構成として具備するものである。この希釈用ガス流路D1,D2,D3には、それぞれ流量制御手段(ここではマスフローコントローラ)MFC1,MFC2,MFC3が設けてあり、この流量制御手段MFC1,MFC2,MFC3によって希釈用ガスの流入流量を制御することで、前記入力ガスを所定希釈率で希釈し、その希釈した混合ガスが出力されるように構成してある。
【0033】
初段希釈ユニット31は、その入力端31iが前記排出ガス導入ポートPIに接続され、その出力端31oが、中段希釈ユニット32の入力端32iに接続されたものである。メイン流路L1における前記合流点L1aよりも下流側には分岐点L1bが設定してあって、この分岐点L1bに導出流路E1が接続してある。この導出流路E1の末端には吸引ポンプP1が、また、その途中には臨界オリフィス型定流量器CFO1が設けてあり、メイン流路L1を流れるガスのうちの予め定めた一定流量のガスがこの導出流路E1から導出され、残りのガスが前記出力端31oから出力されるように構成してある。前記臨界オリフィス型定流量器CFO1は、背景技術でも述べたように、その上流側圧力を下流側圧力よりも一定比率以上高くして絞り部分での流速が音速となるようにし、その流量が、上流側圧力及び温度にのみ依存して、下流側圧力に依存しないようにしたものである。
【0034】
なお、メイン流路L1に設けられた符号311は、サイクロン等のダスト除去手段である。また、希釈用ガス流路D1から分岐して導出流路E1に接続された流路D1‘は、後述する校正時に用いられるバイパス流路である。さらに、排出ガス導入ポートPIからダスト除去手段311までは、温調器T1によって第1温度(ここでは例えば約40〜50℃)に保たれている。また符号V1〜V6は開閉バルブである。
【0035】
中段希釈ユニット32は、前述した基本構成を有するもので、その出力端32oはエバポレータユニットEUを介して最終段の希釈ユニット33に接続されている。このものは、初段の希釈ユニット31のような導出流路は具備していない。前記エバポレータユニットEUは、ここでは揮発性の粒子を除去することを主たる目的として配設してあり、例えば約300〜400℃に保たれている。また、前記ダスト除去手段311からエバポレータユニットEUに至る初段及び中段の希釈ユニット31、32におけるメイン流路L1,L2及びこの中段希釈ユニット32における流量制御手段MFC2の近傍を除く希釈ガス流路D2は、温調器T2によって第2温度(ここでは例えば約150〜250℃)に保たれている。これは配管内壁へのPMの付着や凝集等を防止して、計数誤差を抑制するためである。
【0036】
最終段の希釈ユニット33は、その入力端33iが前記エバポレータユニットEUの出口に接続され、その出力端33oが前記粒子状物質計数手段CPCに接続されたものである。メイン流路L3には、前記合流点L3aより下流側に分岐点L3bが設定してあって、この分岐点L3bに導出流路E3が接続してある。この導出流路E3の末端には吸引ポンプP2が、また、その途中には臨界オリフィス型定流量器CFO2が設けてあり、メイン流路L3を流れるガスから予め定めた一定流量のガスが当該導出流路E3から導出され、残りのガスが前記粒子状物質計数手段CPCに導入されるように構成してある。なお、前記粒子状物質計数手段CPCの出口は導出流路E3の末端部に接続してあり、前記吸引ポンプP2がこれら導出流路E3及び粒子状物質計数手段CPCに共通に用いられている。
【0037】
前記粒子状物質計数手段CPCは、図4に示すように、導入されたガスを、アルコールやブタノールなどの有機ガスを含む過熱部A1に導き、さらにその後、凝縮部A2で冷却することによって、排出ガス中のPMに有機ガスを凝縮付着させて、このPMを大きな径に成長させ、成長したPMをスリットA3から排出して、出てきた粒子をレーザ光Rにて計数するものである。この粒子状物質計数手段CPCは、下流に臨界オリフィス型定流量手段を有し、粒子状物質計数手段CPCには一定流量のガスが流れることになる。
【0038】
さらにこの実施形態では、前記流量制御手段等を制御する情報処理装置7を設けている。この情報処理装置は、CPU、メモリ、入力手段、ディスプレイ等を備え、メモリに格納した所定プログラムにしたがってCPUや周辺機器が協働して動作する汎用乃至専用のいわゆるコンピュータであり、この実施形態では、前記プラグラムによって、この情報処理装置7が、希釈ガス制御部71としての機能を少なくとも果たすように構成してある。
以上に構成したガス分析システム100の使用時の動作を以下に説明する。
まず、前提としてバルブV1、V3、V4、V5、V6を開けるとともにバルブV2を閉じておく。
【0039】
しかして、定流量器CFO1を流れる流量がQb1、定流量器CFO2を流れる流量がQb2、粒子状物質計数手段CPCを流れる流量がQCPCに設定されており、また、各希釈ユニット31〜33での希釈率(入力ガス流量/入力ガス流量+希釈用ガス流量)が、それぞれRd1、Rd2、Rd3に定められていたとする。
ここで、Rd1、Rd2、Rd3は下記の式(1)〜(3)で表される。
d1=qin1/(qin1+qd1)・・・(1)
d2=qin2/(qin2+qd2)・・・(2)
d3=qin3/(qin3+qd3)・・・(3)
【0040】
なお、Rd1、Rd2、Rd3は、それぞれ初段希釈ユニット31、中段希釈ユニット32、最終段希釈ユニットで33の希釈率、qin1、qin2、qin3は、それぞれ初段希釈ユニット31、中段希釈ユニット32、最終段希釈ユニットで33への入力ガス流量、qd1、qd2、qd3は、それぞれ初段希釈ユニット31、中段希釈ユニット32、最終段希釈ユニットで33での希釈用ガス流量である。
【0041】
したがって、各希釈用ガス流路D1,D2,D3を流れる希釈用ガスの流量は以下の式(4)〜(6)ように定まり、前記希釈ガス制御部71は、その流量を目標値として各流量制御手段MFC1,MFC2,MFC3に与え、各流量制御手段は、前記目標値となるように希釈用ガス流量を制御する。
d1=(1−Rd1)・(qin2+Qb1
=(1−Rd1)・{Rd2・Rd3・(Qb2+QCPC)+Qb1}・・・(4)
d2=(1−Rd2)・qin3
=(1−Rd2)・Rd3・(Qb2+QCPC)・・・(5)
d3=(1−Rd3)・(Qb2+QCPC)・・・(6)
なお、このときに排出ガス導入ポートPIから導入される排出ガスの流量qexは、以下の式から導くことができる。
ex=Rd1・{Rd2・Rd3・(Qb2+QCPC)+Qb1}・・・(7)
具体的な数値を挙げて説明する。
【0042】
定流量器CFO1の流量Qb1=4.5L/min、定流量器の流量Qb2=3.5L/min、粒子数計数手段を流れる流量Qcpc=0.5L/min、希釈率Rd1=1/10、希釈率Rd2=1/2、希釈率Rd3=1/5に定めたとする。
【0043】
そうすると、前式から、実際の使用時に各希釈ガス用流路D1〜D3に流すべき流量は、qd1=4.41L/min、qd2=0.4L/min、qd3=3.2L/minとなる。また、排出ガスの導入流量qex=0.45L/minとなる。
【0044】
なお、この使用時の希釈用ガスの流量から、流量制御手段MFC1には、max5.5L/min、流量制御手段MFC2には、max1.0L/min、流量制御手段MFC3には、max5.5L/minのものを用いている。
しかして、この実施形態では、前記各定流量器CFO1,CFO2の使用に先立っての特性測定(校正)を以下のように行っている。
最初に初段希釈ユニット31の定流量器CFO1に係る校正について説明する。
【0045】
まず、この定流量器CFO1に対して、使用時に流れるガスと等流量の希釈用ガスを校正ガスとして導入する。
具体的には、図5に示すように、バルブV1、V3、V4、V5を閉じるとともにバルブV2、V6を開けておき、当該初段希釈ユニット31の希釈用ガス流路D1と中段希釈ユニット32の希釈用ガス流路D2とからだけ、かつ、それらを流れる希釈ガスの全てが、初段希釈ユニット31の定流量器CFO1に流れ込むようにする。また、温調機構T2を調整して、使用時と略同じ温度のガスが定流量器CFO1に流れ込むようにしておく。
【0046】
このとき、当該初段希釈ユニット31の希釈用ガス流路D1には、流量制御手段MFC1を調整して、使用時と同じ流量のガスが流れるようにする。前記数値例で言えば、4.41L/minである。
【0047】
そして、定流量器CFO1の所定流量である4.5L/minに足りない分の0.09L/minを、入力ガスに見立てて中段希釈ユニット32の希釈用ガス流路D2から初段希釈ユニット31の入力ガスに代替するものとして与える。
【0048】
そして、この状態での定流量器CFO1の上流側圧力と温度を圧力センサP1及び温度センサT1で測定して、例えば前記式(A)に代入し、この定流量器CFO1の音速コンダクタンスCを特定する。
【0049】
次に、最終段希釈ユニット33の定流量器CFO2の校正について説明する。
図6に示すように、バルブV1、V2、V3、V4、V6を閉じるとともにバルブV5を開けておき、当該最終段希釈ユニット33の希釈用ガス流路D3と中段希釈ユニット32の希釈用ガス流路D2とからだけ、かつ、それらを流れる希釈ガスの全てが、最終段希釈ユニット33の定流量器CFO2に流れ込むようにする。また、エバポレータユニットEUを動作させるとともに温調機構T2を調整して、使用時と略同じ温度のガスが定流量器CFO2に流れ込むようにしておく。
【0050】
このとき、当該最終段希釈ユニット33の希釈用ガス流路D3には、流量制御手段MFC3を調整して、使用時と同じ流量のガスが流れるようにする。前記数値例で言えば、3.2L/minである。そして、定流量器CFO2の所定流量である3.5L/minに足りない分の0.3L/minを、入力ガスに見立てて、中段希釈ユニット32の希釈用ガス流路D2から最終段希釈ユニット33の入力ガスに代替するものとして与える。
【0051】
そして、この状態での定流量器CFO2の上流側圧力と温度を圧力センサP2及び温度センサT2で測定して、例えば前記式(A)に代入し、この定流量器CFO2の音速コンダクタンスCを特定する。
【0052】
なお、上述した校正に係る各動作、例えばバルブV1〜V6の開閉、流量制御手段MFC1〜MFC3の制御、圧力・温度の測定、音速コンダクタンスCの算出・記憶は、全て情報処理装置7が自動で行い、オペレータは単に校正する旨の命令入力をするだけでよい。もちろん、オペレータが逐次手作業で設定や算出してもよい。
【0053】
さらにこの実施形態では、粒子状物質計数手段CPCの流量校正も行うようにしている。このときは、図7に示すように、バルブV1、V2、V3、V6を閉じるとともにバルブV4、V5を開け、最終段希釈ユニット33の希釈用ガス流路D3と中段希釈ユニット32の希釈用ガス流路D2とからだけ、かつ、それらを流れる希釈ガスの全てが、定流量器CFO2及び粒子状物質計数手段CPCのスリットA3に流れ込むようにする。また、エバポレータユニットEUを動作させるとともに温調機構T2を調整して、そのガスが使用時と略同じ温度となるようにしておく。
【0054】
すでに定流量器CFO2の校正は終了しているので、ここには3.5L/minが流れる。一方で、粒子状物質計数手段CPCには、使用時と同じ流量である0.5L/minを流すため、最終段希釈ユニット33の希釈用ガス流路D3からは、使用時と同じ3.2L/minを流し、足りない0.8L/minを入力ガスに見立てて、これを中段希釈ユニット32の希釈用ガス流路D2から供給する。
【0055】
そして、この状態での粒子状物質計数手段CPCの上流側圧力と温度を圧力センサP2及び温度センサT3で測定して、例えば前記式(A)に代入し、粒子状物質計数手段CPCの音速コンダクタンスCを特定する。
【0056】
しかして、このようなものであれば、校正時には、他の希釈ユニットからの希釈用ガスを模擬入力ガスとし、当該一の希釈ユニットの希釈用ガスを使用時と同じ流量だけ流して、この希釈用ガスの流量制御手段の動作ポイントを、使用時と校正時とで一致させるので、流量制御手段の誤差を低減できる。かかる態様は、特に校正を頻繁に行う場合に有効である。
【0057】
また、本実施形態では、他の希釈ユニットとして、一の希釈ユニットに隣接するものを用いていたので、入力ガスの経路を使用状態により近づけることができ、温度を使用時と校正時とで同等にし易くなるといった効果を得られる。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0058】
例えば、前記実施形態では、1つの希釈ユニットにおいて、その希釈用ガスの流量を使用時と同じ流量としていたが、希釈率が使用時と同じになるようにしてもよい。具体例として定流量器CFO1に係る校正について言えば、この初段希釈ユニット31での設定希釈率Rd1は、1/10、定流量器CFO1の設定流量は4.5L/minだから、希釈用ガス流路D1の流量制御手段MFC1には、4.5L/minの9/10である4.05L/minを流し、中断希釈ユニット32の希釈用ガスを入力ガスとして、ここから残りの0.45L/minを流す。これにより、この初段希釈ユニット31での入力ガスと希釈用ガスの希釈率が使用時と等しくなる。
【0059】
このようなものであれば、希釈率を使用時と校正時とで合致させることができるので、前述同様の効果を得られる。また、請求項1の発明に比べて希釈率を頻繁に変える場合に有効となる。なお、希釈率を小さくしていけば、究極的には、この態様と前記実施形態とでは、同一のものとなる。
【0060】
また、模擬入力ガスとして導かれる希釈用ガスは、他のどの希釈ユニットでもよいし、複数を用いてもよいが、入力ガスの流量に近い流量制御レンジを有する他の流量制御手段の希釈ガスを用いることが、精度の点ではより好ましい。したがって、希釈率の設定によっては、校正に用いる他の希釈ユニットを変更してもよい。
さらに、希釈ユニットは2つでもよいし、4つ以上でも構わない。希釈機構は、ガス分析システム以外のものにも適用可能である。
【0061】
前記成分分析手段としては、粒子状物質計数手段に限られるものではない。例えば、非分散赤外吸収法(NDIR)分析手段、水素炎イオン化法(FID)分析手段、化学発光法(CLD)分析手段、等様々な内燃機関の排出ガスの成分分析を行うためのものであっても構わない。更にこの場合、臨界オリフィス型定流量手段や、マスフローメータ、マスフローコントローラ、キャピラリ等、ガス流量を計測もしくは制御できる手段を設けることで、より正確なガスサンプリング、及び、ガス分析システムの流量制御ができる。
【0062】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
100 ・・・ガス分析システム
3・・・希釈機構
31,32,33・・・希釈ユニット
31i,32i,33i・・・入力端
31o,32o,33o・・・出力端
L1,L2,L3・・・メイン流路
L1a,L2a,L3a・・・合流点
L1b,L3b・・・分岐点
D1,D2,D3・・・希釈用ガス流路
E1、E3・・・導出流路
MFC1,MFC2,MFC3・・・流量制御手段
CFO1,CFO2・・・臨界オリフィス型定流量器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ガスが導かれる入力端と出力端とを接続するメイン流路の途中に合流点を設定し、この合流点に流量制御手段が設けられた希釈用ガス流路を接続することで、予め定めた希釈率となる所定流量の希釈用ガスが当該メイン流路に導入されるように構成した希釈ユニットを複数直列に接続しておき、なおかつ、前記希釈ユニットの一部又は全部には、メイン流路の途中に分岐点を設定し、この分岐点に、臨界オリフィス型定流量器が設けられた導出流路を接続して該メイン流路から一定流量のガスが導出されるように構成した希釈機構に適用される、前記臨界オリフィス型定流量器の特性測定方法であって、
一の希釈ユニットの導出流路に対し、当該希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスと、1以上の他の希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスとを、それらの合計流量が前記一定流量と等しくなるように、なおかつ、当該希釈ユニットからの希釈用ガスの流量が前記所定流量と等しくなるように流しておき、
そのときの当該導出流路における臨界オリフィス型定流量器の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該臨界オリフィス型定流量器の流量特性を測定することを特徴とする定流量器特性測定方法。
【請求項2】
入力ガスが導かれる入力端と出力端とを接続するメイン流路の途中に合流点を設定し、この合流点に流量制御手段が設けられた希釈用ガス流路を接続することで、予め定めた希釈率となる所定流量の希釈用ガスが当該メイン流路に導入されるように構成した希釈ユニットを複数直列に接続しておき、なおかつ、前記希釈ユニットの一部又は全部には、メイン流路の途中に分岐点を設定し、この分岐点に、臨界オリフィス型定流量器が設けられた導出流路を接続して該メイン流路から一定流量のガスが導出されるように構成した希釈機構に適用される、前記臨界オリフィス型定流量器の特性測定方法であって、
一の希釈ユニットの導出流路に対し、当該希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスと、1以上の他の希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスとを、それらの合計流量が前記一定流量と等しくなるように、なおかつ、当該希釈ユニットからの希釈用ガスの流量による前記他の希釈ユニットからの希釈用ガスの流量の希釈率が、前記予め定めた希釈率と等しくなるように流しておき、
そのときの当該導出流路における臨界オリフィス型定流量器の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該臨界オリフィス型定流量器の流量特性を測定することを特徴とする定流量器特性測定方法。
【請求項3】
前記他の希釈ユニットが、前記一の希釈ユニットに隣接する上流又は下流いずれかの希釈ユニットである請求項1又は2記載の定流量器特性測定方法。
【請求項4】
入力ガスが導かれる入力端と出力端とを接続するメイン流路の途中に合流点を設定し、この合流点に流量制御手段が設けられた希釈用ガス流路を接続することで、予め定めた希釈率となる所定流量の希釈用ガスが当該メイン流路に導入されるように構成した希釈ユニットを複数直列に接続しておき、なおかつ、前記希釈ユニットの一部又は全部には、メイン流路の途中に分岐点を設定し、この分岐点に、臨界オリフィス型定流量器が設けられた導出流路を接続して該メイン流路から一定流量のガスが導出されるように構成した希釈機構において、
一の希釈ユニットの導出流路に対し、当該希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスと、1以上の他の希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスとだけが、流入し得るように構成しておき、
そのときの各希釈用ガスの合計流量が前記一定流量と等しく、なおかつ、当該希釈ユニットからの希釈用ガスの流量が前記所定流量と等しくなるように前記流量制御手段を制御するとともに、当該導出流路における臨界オリフィス型定流量器の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該臨界オリフィス型定流量器の流量特性を測定する情報処理装置を具備していることを特徴とする希釈機構。
【請求項5】
入力ガスが導かれる入力端と出力端とを接続するメイン流路の途中に合流点を設定し、この合流点に流量制御手段が設けられた希釈用ガス流路を接続することで、予め定めた希釈率となる所定流量の希釈用ガスが当該メイン流路に導入されるように構成した希釈ユニットを複数直列に接続しておき、なおかつ、前記希釈ユニットの一部又は全部には、メイン流路の途中に分岐点を設定し、この分岐点に、臨界オリフィス型定流量器が設けられた導出流路を接続して該メイン流路から一定流量のガスが導出されるように構成した希釈機構において、
一の希釈ユニットの導出流路に対し、当該希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスと、1以上の他の希釈ユニットにおける希釈用ガス流路からの希釈用ガスとだけが、流入し得るように構成しておき、
そのときの各希釈用ガスの合計流量が前記一定流量と等しく、なおかつ、当該希釈ユニットからの希釈用ガスの流量による前記他の希釈ユニットからの希釈用ガスの流量の希釈率が、前記予め定めた希釈率と等しくなるように前記流量制御手段を制御するとともに、当該導出流路における臨界オリフィス型定流量器の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該臨界オリフィス型定流量器の流量特性を測定する情報処理装置を具備していることを特徴とする希釈機構。
【請求項6】
請求項5記載の希釈機構を有するガス分析システムであって、初段の希釈ユニットに導かれ、最終段の希釈ユニットから出力された内燃機関の排出ガスの成分を分析する成分分析手段を具備しているガス分析システム。
【請求項7】
前記成分分析手段が、臨界オリフィス型定流量手段を内部に備えたものであって、前記希釈ユニットからの希釈用ガスのみが、予め定められた流量だけ該成分分析手段に流入し得るように構成しておき、
前記情報処理装置が、そのときの成分分析手段の少なくとも上流側圧力に基づいて、当該成分分析手段の流量特性を測定する請求項6記載のガス分析システム。
【請求項8】
前記成分分析手段が、排出ガス中の粒子状物質を計数する粒子状物質計数器である請求項6又は7記載のガス分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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