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多段式トリチウム濃縮装置、及びトリチウム濃縮方法
説明

多段式トリチウム濃縮装置、及びトリチウム濃縮方法

【課題】簡易な構造で試料水中のトリチウム濃度を効率的に所望の濃縮率にまで高めること。
【解決手段】この多段式トリチウム濃縮装置1は、陽極室14及び陰極室15と、陽極室14及び陰極室15に近接して設けられたイオン交換膜7と、陽極室14及び陰極室15内のそれぞれに設けられた陽極8及び陰極9とを有する電解セル3a〜3dを含んで構成され、電解によって試料水中のトリチウム濃度を高めるためのトリチウム濃縮装置であって、複数の電解セル3a〜3dが直列的に連結されており、前段側の電解セルの陰極室15と後段側の電解セルの陽極室14とがチューブ5b,5c,5dによって接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリチウムを含む試料水を濃縮する多段式トリチウム濃縮装置、及びトリチウム濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水資源利用、環境調査、土木建設や、原子力発電設備の安全性調査等の分野において、試料水中の重水素、特にトリチウムの分析が盛んに実施されている。このような分析に際しては、重水素を含む試料水を濃縮してから重水素の濃度を測定することにより、測定精度を向上させている。重水素を濃縮するための装置としては下記特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
下記特許文献1,2に記載の装置では、陰極室と陽極室との間で試料水が循環できる構造となっており、試料水を水素と酸素とに電気分解させて重水素の濃度を上昇させている。また、下記特許文献3に記載の装置では、試料水を電気分解した結果生じた水素同位体を拡散分離し、酸素と再結合することにより水素同位体の濃縮を行う。
【特許文献1】特許第3406390号公報
【特許文献2】特許第3748304号公報
【特許文献3】特開2001−286737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所望のトリチウム濃度範囲に入るように濃縮した溶液(濃縮水)を作成してその濃度を計測する場合に必要な量は、一般的に大きくはなく、国際標準では10mlとされている。しかし、上述した特許文献1,2に記載された装置では、種々の空間的制約から最終的な濃縮水として約50mlを製造しないと運転を停止できなかった。計測にはそこから必要な10mlを分取することになり、残りの4/5の濃縮水は無駄にしなければならず、効率的ではなかった。また、特許文献3に記載された装置は、電解槽や多段交換塔による気体水素の同位体分離作用及び再結合電池等が必要であり構造が複雑化する傾向にあった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、簡易な構造で試料水中のトリチウム濃度を効率的に所望の濃縮率にまで高めることが可能な多段式トリチウム濃縮装置及びトリチウム濃縮方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の多段式トリチウム濃縮装置は、陽極室及び陰極室と、陽極室及び陰極室に近接して設けられたイオン交換膜と、陽極室及び陰極室内のそれぞれに設けられた陽極及び陰極とを有する電解セルを含んで構成され、電解によって試料水中のトリチウム濃度を高めるためのトリチウム濃縮装置であって、複数の電解セルが直列的に連結されており、前段側の電解セルの陰極室と後段側の電解セルの陽極室とが連結管によって接続されている。
【0007】
或いは、本発明のトリチウム濃縮方法は、上記多段式トリチウム濃縮装置を用いて、電解によって試料水中のトリチウム濃度を濃縮するトリチウム濃縮方法であって、第1段目の電解セルの陽極室に試料水を入れた後に第1段目の電解セルを給電することによって電解させ、電解の進行によって第1段目の電解セルの陰極室に浸出してくるトリチウムが濃縮された貯留水を、連結管を通じて第2段目の電解セルの陽極室に導入し、2段目の電解セルからN段目(Nは2以上の整数)の電解セルまで給電及び貯留水の導入を繰り返すことによって、貯留水中のトリチウムを濃縮する。
【0008】
或いは、本発明のトリチウム濃縮方法は、陽極室及び陰極室と、陽極室及び陰極室に近接して設けられたイオン交換膜と、陽極室及び陰極室内のそれぞれに設けられた陽極及び陰極とを有する電解セルを含んで構成されたトリチウム濃縮装置を用いて、電解によって試料水中のトリチウム濃度を濃縮するトリチウム濃縮方法であって、電解セルの陽極室に試料水を入れた後に電解セルを給電することによって電解させ、電解の進行によって電解セルの陰極室に浸出してくるトリチウムが濃縮された貯留水を貯留し、陽極室に残留する試料水の量又は陰極室に浸出した貯留水の量に応じて給電を停止させた後に、貯留水を陽極室に還流させ、電解セルを再度給電することにより、陰極室にさらにトリチウムが濃縮された貯留水を貯留し、給電、及び貯留水の貯留と還流を繰り返すことによって、貯留水中のトリチウムを濃縮する。
【0009】
このような多段式トリチウム濃縮装置及びトリチウム濃縮方法によれば、陽極室に供給された試料水は電解セルが給電されることにより電解され、その電解により陽極で発生した水素イオンが、随伴水を伴ってイオン交換膜を通過して陽極室から陰極室に向けて浸出する。その際、試料水中に含まれるHOの分解がHODやHOT(D:ジュウテリウム、T:トリチウム)の分解に対して優先的に発生するので、陰極室に溜まる貯留水中のトリチウムの濃度が上昇する。そして、この貯留水をさらに同一又は別の電解セルの陽極室に導入し、貯留水の電解、陰極室における貯留水の貯留、及び陽極室への貯留水の導入を繰り返すことにより、所望の濃縮率で効率的に試料水中のトリチウムを濃縮させることができる。また、このような試料水の濃縮を、電解セルの多段構成又は電解セルと貯留水の循環機構との組み合わせという簡易な構成によって実現することができる。
【0010】
さらに、イオン交換膜として固体高分子電解質膜を用いることも好ましい。このような固体高分子電解質膜は安定性に優れた材料であるため、陽極で発生した水素イオンを安定して移動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多段式トリチウム濃縮装置及びトリチウム濃縮方法によれば、簡易な構造で試料水中のトリチウム濃度を効率的に所望の濃縮率にまで高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の多段式トリチウム濃縮装置及びトリチウム濃縮方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態にかかる多段式トリチウム濃縮装置1を示す正面図、図2は、図1の電解セル3aの分解斜視図である。多段式トリチウム濃縮装置1は、トリチウムを含む検査対象の試料水のトリチウム濃度を濃縮するための装置であり、試料水容器2aと貯留水容器2bとの間に複数の電解セル3a〜3dが直列に接続された構成を有している。
【0014】
電解セル3aは、図2を参照して、中心部に円形膜状のイオン交換膜7を有し、このイオン交換膜7の両面にイオン交換膜7よりも小径の円板状の陽極8及び陰極9が対向配置されている。このイオン交換膜7は、高いプロトン伝導性を有する固体高分子電解質(SPE:Solid Polymer Electrolyte)膜によって構成されている。陽極8はDSA(Dimensionary Stable Anode)から成り、陰極9はステンレス等の各種金属から成り、それぞれは繊維状に加工された後に円板状に圧縮されたものである。これらの陽極8及び陰極9が、陽極8及び陰極9とほぼ同一の内径を有するリング状のゴムパッキン10,11に嵌め込まれた状態で、2つの円板状の導電性の金属ブロック12,13によって挟まれることにより、イオン交換膜7に対して圧着されて固定されている。
【0015】
上記のような構造により、電解セル3aには、コムパッキン10の内周面、金属ブロック12、及びイオン交換膜7によって仕切られた陽極室14と、コムパッキン11の内周面、金属ブロック13、及びイオン交換膜7によって仕切られた陰極室15とが形成される(図1)。従って、イオン交換膜7が陽極室14及び陰極室15に近接して設けられることで、陽極室14及び陰極室15は、イオン交換膜7によって相互に隔離された構造になっている。さらに、陽極8及び陰極9は、それぞれ、陽極室14及び陰極室15内においてイオン交換膜7に密着した状態にされている。
【0016】
金属ブロック12には、陽極8側の内面12aと外面12bとの間を貫くように2つの貫通孔16a,17aが形成され、金属ブロック13には、陰極9側の内面13aと外面13bとの間を貫くように2つの貫通孔16b,17bが形成されている。この貫通孔16a,17aのそれぞれが外面12bにおいてチューブ6a,5aの端部に接続されることにより、試料水容器2aと陽極室14との間での試料水の流通、及び陽極8で発生した気体の排出が可能にされる。また、貫通孔16b,17bのそれぞれが外面13bにおいてチューブ6b,5bの端部に接続されることにより、後段の電解セル3bと陰極室15との間での試料水の流通、及び陰極9で発生した気体の排出が可能にされる。
【0017】
さらに、これらの金属ブロック12,13には、陽極8及び陰極9に対して給電するためのリード線18,19が、それぞれ接続されている。このリード線18及び金属ブロック12を介して電源から陽極8に電荷が供給され、リード線19及び金属ブロック13を介して電源から陰極9に電荷が供給される。ここでは、金属ブロック12と陽極8との間、又は金属ブロック13と陰極9との間においては、電解セル3aを組立てた際に接触して電気的接続が達成されるが、電気的なコンタクトを確実にするには金属ブロック12と陽極8、又は金属ブロック13と陰極9の間をリード線で接続しておくことが好ましい。また、金属ブロック12,13は、必ずしも金属である必要はなく、十分な機械的強度を有する絶縁体で構成されてもよい。その場合には、電源から延びるリード線18,19は、陽極8及び陰極9に直接接続されていればよい。さらにまた、電解セル3aは、円形状のイオン交換膜7、陽極8、陰極9、ゴムパッキン10,11、金属ブロック12,13によって構成されていたが、これらの部材の形状は円形には限定されず、正方形を含む矩形などの任意の形状を選択することができる。
【0018】
図1に戻って、電解セル3b〜3dは、電解セル3aと同一の構造を有している。そして、電解セル3a〜3dは、前段の電解セルの陰極室15の貫通孔17bが後段の電解セルの陽極室14の貫通孔17aに接続されるように、チューブ(連結管)5b,5c,5dによって順に連結されている。なお、このチューブ5b,5c,5dは、電解セル3a〜3d間の絶縁を取るために樹脂等の絶縁性材料によって構成されている。そして、最終段の電解セル3dの陰極室15は、チューブ5eを介して貯留水容器2bに接続されている。
【0019】
各電解セル3a〜3dの陽極8及び陰極9には、それぞれ個別に直流電源20a〜20dが接続されている。この直流電源20a〜20dは、それぞれ、電解セル3a〜3dのチューブ6a内の水位を検出する水位センサ21が電気的に接続されており、各電解セル3a〜3dの陽極室14における試料水の水位の変化に応じて電解セル3a〜3dへの給電をオン/オフするように動作する。
【0020】
以下、上述した多段式トリチウム濃縮装置1を用いたトリチウム濃縮方法について説明する。
【0021】
まず、試料水容器2aにトリチウムを含む試料水を入れることにより、電解セル3aの陽極室14に試料水を入れる。その後、試料水容器2aの試料水の水位が水位センサ21の位置を超えている間は、直流電源20aから電解セル3aの陽極8及び陰極9に電荷が供給され、電解セル3a内の試料水において電解が発生する。具体的には、陽極8近傍で酸素ガスが発生すると同時に水素イオンが生成され、随伴水を伴った水素イオンが、イオン交換膜7を通過して陽極室14から陰極室15に向けて浸出するとともに、陰極9近傍で水素ガスが発生する。このような電解の進行によって、トリチウムが濃縮された随伴水が貯留水として陰極室15に徐々に貯留される。
【0022】
このようにして電解セル3aの陰極室15に貯留された貯留水は、チューブ5bを通って電解セル3bの陽極室14に導入される。さらに、随伴水の移動に伴って試料水容器2a内の水位が下降して水位センサ21の位置より下にくると、直流電源20aからの給電は自動的にオフされ、電解セル3aにおける試料水の電解が停止する。その一方、電解セル3bの陽極室14に導入された貯留水の水位が水位センサ21の位置まで上昇すると、直流電源20bから電解セル3bの陽極8及び陰極9に電荷が供給され、電解セル3b内の貯留水において電解が発生する。これにより、電解セル3bの陰極室15に随伴水が徐々に浸出する。
【0023】
その後、第2段目の電解セル3bから第4段目の電解セル3dまで、直流電源20b〜20dによる給電、及び前段の陰極室15から後段の陽極室14への貯留水の導入を順に繰り返すことによって、最終段の電解セル3dの陰極室15に接続された貯留水容器2bに、所望の濃縮倍率までトリチウム濃度が濃縮された貯留水が生成される。
【0024】
次に、多段式トリチウム濃縮装置1による濃縮倍率を評価するために、一段の電解セル3aを用いた場合の試料水の濃縮倍率を測定した結果を示す。
【0025】
まず、試料水容器2aにトリチウムを含む試料水を380g入れて約80分間攪拌のための電解を行い、陽極室14で発生する酸素ガス気泡の攪拌作用により陽極室14のトリチウム濃度を均一化した。そして、陽極室14から60gの試料水を採取し、これを電解前陽極試料水Aとした。その際、陰極室15側に生じた随伴水は取り除いた。この段階で、装置全体を秤量したところ、装置内の試料水は300gであった。
【0026】
その後、直流電源20aの電流値を27Aに設定して電解を開始すると、随伴水が徐々に陰極室15側に貯留される。電解処理開始後180分経過したタイミングで、陰極室15側に貯留した随伴水73gを採取し、これを陰極試料水Bとした。さらに電解を再開し、電解処理開始後300分後に陰極室15側に貯留した随伴水49gを採取し、これを陰極試料水Cとし、電解処理開始後450分後に陰極室15側に貯留した随伴水61gを採取し、これを陰極試料水Dとして電解を停止させた。電解停止後に陽極室14側に残留した試料水を43g採取し、電解後陽極試料水Eとした。
【0027】
この電解の際に分解ガスによって失われる水蒸気は、0〜1°Cに冷却された冷却管によって凝縮還流させた。この場合の水蒸気圧を5mmHgとみなしたとき、水1gの分解量に対して水蒸気損失量は0.01gと推定された。
【0028】
最後に、各試料水を蒸留精製して40.00gを採取し、それらのトリチウム濃度[Bq/kg±2σ]を文部科学省が基準化したトリチウム分析法によって測定したところ、次のとおりとなった。すなわち、試料水Aは73±1、試料水Eは74±1、試料水B,C,Dはそれぞれ、95±2,96±2,96±2と得られた。
【0029】
この電解セル3aによる試料水の濃縮倍率の測定結果から、電解処理前後の陽極室14内の試料水A,Eにおいてはトリチウムの濃縮が起こらなかったことがわかる。また、電解処理時間の異なる試料水B,C,Dの結果から、電解時間に関わらず濃縮倍率はほぼ一定に保たれることがわかった。つまり、トリチウムの濃縮は電解セル3aの陰極室15のみで起こること、陰極室15のトリチウム濃度は電解時間に依存しないことが判明した。
【0030】
この際、装置を含めた秤量値から、450分電解処理後の総分解水量は68.4gであり、陰極室15側に貯留した総水量が188.4gであった。従って、分解水量を時間で除して得られる電解電流値は26.95Aであり、水1gの分解に伴って188.4/68.4=2.75gの随伴水が水素イオンとともに陰極9側に輸送されたことがわかった。
【0031】
以上をまとめると、1段の電解セル3aを用いた電解処理によって、試料水の水量は2.75/3.75=1/1.36倍に減少し、トリチウムの濃度は1.30倍に濃縮され、得られる濃縮処理後の試料水は電解時間の経過に従って増加するだけで濃縮倍率は変化しないことが明らかになった。従って、4段の電解セル3a〜3dを有する多段式トリチウム濃縮装置1によれば、最終的な貯留水の水量は1/1.36の4乗倍になり、トリチウム濃度は1.30の4乗倍になることが容易に予想できる。
【0032】
以上説明した多段式トリチウム濃縮装置1及びそれを用いたトリチウム濃縮方法によれば、電解セル3aの陽極室14に供給された試料水は電解セル3aが給電されることにより電解され、その電解により陽極8で発生した水素イオンが、随伴水を伴ってイオン交換膜7を通過して陽極室14から陰極室15に向けて浸出する。その際、試料水中に含まれるHOの分解がHODやHOT(D:ジュウテリウム、T:トリチウム)の分解に対して優先的に発生するので、陰極室15に溜まる貯留水中のトリチウムの濃度が上昇する。そして、この貯留水をさらに後段の電解セル3b〜3dの陽極室14に順に導入し、貯留水の電解、陰極室15における貯留水の貯留、及び後段の陽極室14への貯留水の導入を繰り返すことにより、所望の濃縮率で効率的に試料水中のトリチウムを濃縮させることができる。また、このような試料水の濃縮を、電解セルの多段構成という簡易な構成によって実現することができる。
【0033】
また、イオン交換膜7として固体高分子電解質膜を用いているので、陽極8で発生した水素イオンを安定して移動させることができる。これによって、陰極室15側において濃縮された試料水をより効率的に生成することができる。また、このイオン交換膜7に陽極8及び陰極9が密着しているので、電解により生じた水素イオンの大部分を随伴水とともに陰極室15に浸出させることができるので、陰極室15側のトリチウム濃度のみを効果的に濃縮することができる。
【0034】
また、電解セル3a〜3d内における随伴水の陽極室14から陰極室15への1回の浸出によって一定の濃縮倍率の試料水が生成されるので、電解セル3a〜3dの段数を変更することで最終的な濃縮倍率を自由に設定することができる。例えば、1段の濃縮処理の濃縮倍率がZである場合は、この濃縮処理を繰り返せば最終的な濃縮倍率はZのN乗となり、Z=1.3で10段の場合の濃縮倍率は14倍、15段では51倍、20段では190倍となる。
【0035】
また、電解セル3a〜3dの陽極室14内に残留する試料水の水位が水位センサ21の位置を下回った場合に電解を停止させることにより、イオン交換膜7の保水状態を維持することができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、本発明の第2実施形態にかかるトリチウム濃縮装置101を示す正面図である。
【0037】
トリチウム濃縮装置101は、試料水容器102aと、貯留水容器102bと、電解セル3と、ポンプ(循環機構)104とによって構成されている。電解セル3の構成は第1実施形態における電解セル3aと同一である。試料水容器102aは、2つのチューブ5a,6aによって電解セル3の陽極室14に繋がっており、貯留水容器102bは、2つのチューブ5b,6bによって電解セル3の陰極室15に繋がっている。
【0038】
さらに、電解セル3のリード線18,19には直流電源20が接続されており、直流電源20から陽極8及び陰極9に電荷が供給される。また、直流電源20にはチューブ5aの途中に設けられた水位センサ121が電気的に接続され、陽極室14及び試料水容器102aにおける試料水の水位の変化に応じて直流電源20からの給電がオン/オフされるように設定されている。
【0039】
ポンプ104には吸水管104a及び排水管104bが取り付けられ、吸水管104aはチューブ5bに分岐して接続されており、排水管104bはチューブ5aに分岐して接続されている。このポンプ104は、陰極室15に繋がる貯留水容器102bに溜まった随伴水を陽極室14に繋がるチューブ5aに送ることにより、電解セル3の陰極室15に生成された濃縮処理後の随伴水を、電解セル3の陽極室14に還流させる働きを有する。さらに、ポンプ104にはチューブ5bの途中に設けられた水位センサ122が電気的に接続され、陰極室15及び貯留水容器102bに溜まった随伴水の水位の変化に応じてポンプ104が起動又は停止するように設定されている。
【0040】
以下、上述したトリチウム濃縮装置101を用いたトリチウム濃縮方法について説明する。
【0041】
まず、試料水容器102aにトリチウムを含む試料水を入れることにより、電解セル3の陽極室14に試料水を導入する。この際、試料水容器102aの試料水の水位が水位センサ121の位置を超えている間は、直流電源20から陽極8及び陰極9に電荷が供給され、試料水において電解が発生する。電解の進行に伴って、トリチウムが濃縮された随伴水が陰極室15に浸出して、貯留水容器102bに貯留される。
【0042】
随伴水の移動に伴って試料水容器102a内に残留する試料水の水位が下降して水位センサ121の位置より下にくると、直流電源20からの給電が自動的にオフされ、電解セル3における試料水の電解が停止する。その後、直流電源20の給電のオフが検出されることによりポンプ104が自動的に起動され、貯留水容器102b内に貯留された随伴水が陽極室14内に導入される。その後、貯留水容器102bに貯留された随伴水の水位が水位センサ122の位置まで下降すると、ポンプ104が自動的に停止され、随伴水の循環が止められる。
【0043】
ポンプ104が起動から停止に切り替わるタイミングで直流電源20からの給電が再度オンされ、電解セル3における試料水の電解が再度開始される。これにより、随伴水が陰極室15に浸出して貯留水容器102b内に貯留する。以降、水位センサ121,122によって検知される水位が、いずれも両センサの位置より低いレベルになるまで電解セル3に対する給電、随伴水の貯留及び循環が繰り返される。
【0044】
以上説明したトリチウム濃縮装置101を用いたトリチウム濃縮方法によっても、試料水量と濃縮水量とを一定値に設定することで所望の濃縮率で効率的に試料水中のトリチウムを濃縮させることができる。また、このような試料水の濃縮を、単一の電解セルと循環機構との組み合わせという簡易な構成によって実現することができる。
【0045】
ここで、トリチウム濃縮装置101を用いたトリチウム濃縮方法によって試料水を濃縮させた場合の測定結果を、従来型の装置と比較して示す。この場合、試料水容器102aにトリチウムを含む試料水を600g入れて、直流電源20及びポンプ104の自動運転によって繰り返し濃縮処理を行った。その際に、トリチウム濃縮装置101によって陰極室15側に生成される試料水の水量は27±1gであり、濃縮倍率は10.3±0.2倍という結果が得られた。これに対して、特許第3748304号公報に記載された装置を用いた場合、装置全体で生成される試料水の水量は54±1gであり、濃縮倍率は7.0±0.2倍という結果であった。この結果により、陽極室と陰極室とを隔離した多段階の電解方式によってトリチウムの濃縮が効率的に起きることが実証された。また、同一の試料水を供給したときの濃縮水量も従来に比較して約1/2まで減らせることがわかった。
【0046】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、多段式トリチウム濃縮装置1においては、直流電源を電解セルの個数より少なくし、少なくとも1つの直流電源を複数の電極セルに並列接続するようにしてもよい。こうすれば、各電解セルに対する給電のための電源の個数を削減することができる。

【0047】
また、トリチウム濃縮装置101においては、ポンプ104が陰極室15及び貯留水容器102bに溜まった試料水の水位が一定レベルを超えている場合に起動するように設定されているが、陽極室14及び試料水容器102aに溜まった試料水の水位が一定レベルを下回った場合に起動するように設定されていてもよい。同様に、直流電源20は陽極室14及び試料水容器102aにおける試料水の水位に応じてオン/オフされるように設定されているが、陰極室15及び貯留水容器102bに溜まった試料水の水位に応じてオン/オフするように制御されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の好適な一実施形態にかかる多段式トリチウム濃縮装置を示す正面図である。
【図2】図1の電解セル分解斜視図である。
【図3】本発明の変形例にかかるトリチウム濃縮装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…多段式トリチウム濃縮装置、3,3a〜3d…電解セル、5b,5c,5d…チューブ(連結管)、7…イオン交換膜、8…陽極、9…陰極、14…陽極室、15…陰極室、20,20a〜20d…直流電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極室及び陰極室と、前記陽極室及び前記陰極室に近接して設けられたイオン交換膜と、前記陽極室及び前記陰極室内のそれぞれに設けられた陽極及び陰極とを有する電解セルを含んで構成され、電解によって試料水中のトリチウム濃度を高めるためのトリチウム濃縮装置であって、
複数の前記電解セルが直列的に連結されており、前段側の前記電解セルの陰極室と後段側の前記電解セルの陽極室とが連結管によって接続されている、
ことを特徴とする多段式トリチウム濃縮装置
【請求項2】
前記イオン交換膜は固体高分子電解質膜である、
ことを特徴とする請求項1に記載の多段式トリチウム濃縮装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多段式トリチウム濃縮装置を用いて、電解によって試料水中のトリチウム濃度を濃縮するトリチウム濃縮方法であって、
第1段目の前記電解セルの前記陽極室に試料水を入れた後に前記第1段目の電解セルを給電することによって電解させ、
前記電解の進行によって前記第1段目の電解セルの前記陰極室に浸出してくるトリチウムが濃縮された貯留水を、前記連結管を通じて第2段目の前記電解セルの前記陽極室に導入し、
前記2段目の電解セルからN段目(Nは2以上の整数)の前記電解セルまで前記給電及び前記貯留水の導入を繰り返すことによって、前記貯留水中のトリチウムを濃縮する、
ことを特徴とするトリチウム濃縮方法。
【請求項4】
陽極室及び陰極室と、前記陽極室及び前記陰極室に近接して設けられたイオン交換膜と、前記陽極室及び前記陰極室内のそれぞれに設けられた陽極及び陰極とを有する電解セルを含んで構成されたトリチウム濃縮装置を用いて、電解によって試料水中のトリチウム濃度を濃縮するトリチウム濃縮方法であって、
前記電解セルの前記陽極室に試料水を入れた後に前記電解セルを給電することによって電解させ、
前記電解の進行によって前記電解セルの前記陰極室に浸出してくるトリチウムが濃縮された貯留水を貯留し、
前記陽極室に残留する前記試料水の量又は前記陰極室に浸出した前記貯留水の量に応じて前記給電を停止させた後に、前記貯留水を前記陽極室に還流させ、
前記電解セルを再度給電することにより、前記陰極室にさらにトリチウムが濃縮された貯留水を貯留し、
前記給電、及び前記貯留水の貯留と還流を繰り返すことによって、前記貯留水中のトリチウムを濃縮する、
ことを特徴とするトリチウム濃縮方法。
【請求項5】
前記イオン交換膜として固体高分子電解質膜を用いる、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の重水素濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−6637(P2010−6637A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167551(P2008−167551)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】